JPWO2009011242A1 - 表面処理炭酸カルシウム及びインクジェット印刷記録媒体 - Google Patents

表面処理炭酸カルシウム及びインクジェット印刷記録媒体 Download PDF

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Abstract

水溶性表面処理剤によって表面処理したことにより、吸水性が向上した表面処理炭酸カルシウムと、該表面処理炭酸カルシウムを配合したインク受容層を有するインキ吸収性、発色性の高いインクジェット印刷記録紙を提供することを目的とする。(1)原料炭酸カルシウムを水溶性表面処理剤の溶液で表面処理することにより得られる、BET比表面積が50〜120m2/gである表面処理炭酸カルシウム、及び(2)シート状支持体の片面又は両面にインク受容層を有するインクジェット印刷記録媒体であって、前記インク受容層が前記表面処理炭酸カルシウムを含有する、インクジェット印刷記録媒体。

Description

本発明は、吸水性が向上した表面処理炭酸カルシウム及びそれを用いたインク吸収性・発色性が高いインクジェット印刷記録媒体に関する。
インクジェット記録方式は、記録媒体とプリンタが直接接触しないノンインパクト式の印字方式であり、各種の噴射方式によってノズルから記録媒体に向けて微小なインク液滴を噴射させて画像を形成する。インクジェット記録用インクは、安定した液滴を形成させるために多量の溶媒を含むため、記録媒体上に良好な画質を得るためには、記録媒体がインク液滴を速やかに吸収する必要がある。特に、近年、プリンタの高速化や多色インクの採用などにより、各色のインクドットが重なって印刷された場合に、インク同士が混ざり合ってにじみが生じないことが重要であり、記録媒体の表面付近での高いインク吸収性が求められている。
インクジェットプリンタのインク噴射技術の進歩により、噴射されるインクの液滴が飛躍的に小さくなったことから、簡易な文書の印刷には、普通紙タイプの記録媒体をインクジェット印刷に使用することも可能となっている。他方、高精細な画像の再現や銀塩写真レベルの高画質を得るためには、記録媒体の記録面にインク受容層と呼ばれる塗被層を設ける方法が一般的である。
上記インク受容層は、インクを吸収させる顔料、顔料を支持体上に結合させる接着剤、インクをインク受容層に固着するためのインク定着剤、各種助剤等から構成される。そして、上記顔料としては、インクの吸収性・発色性に優れた合成非晶質シリカや合成アルミナ等の多孔質顔料が一般的に使用されている(例えば、非特許文献1)。
しかしながら、シリカやアルミナは高価な顔料であり、且つ極微細で多孔質な顔料粒子であるために強度が弱い。強度を高めるために接着剤配合量を多くする方策があるが、接着剤配合量を多くするとインキ吸収性が低下するという問題がある。
近年では、家庭用インクジェットプリンタの普及に伴い、安価な顔料として炭酸カルシウムの使用が提案されている。しかしながら、炭酸カルシウムはシリカ等の顔料と比較してインク吸収性及び発色性が悪く、インクジェット印刷適性が劣っている。そのため、印刷適性改善のための手法が検討されている。
例えば、特許文献1、2には、カルサイト又はアラゴナイト型結晶系を有する特定の比表面積の炭酸カルシウムや多孔質で且つ特定の吸油量を有する炭酸カルシウムを用いてインク受容層を形成することが記載されている。しかしながら、上記炭酸カルシウムを用いる場合には、インク吸収性はコントロールできるが、インクが顔料粒子の内部に吸収されるためにインク発色性が不充分である。
特許文献3、4には、炭酸カルシウムをカチオン剤で改質することやカチオン性樹脂によって分散させた炭酸カルシウムを用いることが記載されている。しかしながら、上記炭酸カルシウムを用いる場合には、インクの定着性や顔料の分散性はコントロールできるが、インク吸収性が不充分である。
特許文献5、6には、炭酸カルシウムの表面にシリカ粒子を析出させた炭酸カルシウム−シリカ複合粒子を用いることが記載されている。しかしながら、上記炭酸カルシウムを用いる場合には、シリカ被覆の特徴を活かしてインクの吸収性は得られるが、インクの発色性が不充分である。
このように、インクを吸収する顔料として炭酸カルシウムを用いた、良好なインク吸収性と発色性とを有するインクジェット印刷記録媒体は未だ得られていないのが現状である。
特開平6―293179号公報 特開平11―240248号公報 特開平10―129113号公報 特開2001―72413号公報 特開2005−66925号公報 特開2007−70164号公報 「インクジェット記録におけるインク・メディア・プリンターの開発技術」、第1刷、発行人 高薄 一弘
本発明は、インク受容層に炭酸カルシウムを顔料として含むインクジェット印刷記録媒体であって、インク吸収性及び発色性が向上したインクジェット印刷記録媒体を提供する。また、インク吸収性及び発色性の向上に寄与する、表面処理炭酸カルシウムを提供する。
本発明者は、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の表面処理を経て得られる表面処理炭酸カルシウム及びそれをインク受容層中の顔料として用いたインクジェット印刷記録媒体(「インクジェット記録紙」とも言う)によれば前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の表面処理炭酸カルシウム及びインクジェット記録紙に関する。
1.原料炭酸カルシウムを水溶性表面処理剤で表面処理することにより得られる、BET比表面積が50〜120m/gである表面処理炭酸カルシウム。
2.前記水溶性表面処理剤が、カチオン性又はノニオン性の水溶性界面活性剤である、項1に記載の表面処理炭酸カルシウム。
3.前記水溶性表面処理剤が、水溶性の無機酸又は有機酸である、項1に記載の表面処理炭酸カルシウム。
4.前記表面処理炭酸カルシウムが、前記原料炭酸カルシウム100重量部に対して0.5〜8重量部の前記水溶性表面処理剤を有する、項1に記載の表面処理炭酸カルシウム。
5.前記表面処理炭酸カルシウム100重量部及び3重量部のポリビニルアルコール水溶液(但し、ポリビニルアルコールはケン化度86.5〜89モル%、重合度1000〜1500)を混合して得られる固形分濃度25%の塗液から形成される乾燥塗膜表面と水滴との接触角が30度以下である、項1のいずれかに記載の表面処理炭酸カルシウム。
6.シート状支持体の片面又は両面にインク受容層を有するインクジェット印刷記録媒体であって、前記インク受容層は項1のいずれかに記載の表面処理炭酸カルシウムを含有する、インクジェット印刷記録媒体。
本発明の表面処理炭酸カルシウムは、水溶性表面処理剤の溶液により表面処理されているため、炭酸カルシウム粒子どうしの間隙での吸水性が向上している。そのため、当該表面処理炭酸カルシウムをインク受容層に含まれる顔料として用いる場合には、インク吸収性及び発色性の高いインクジェット印刷記録媒体を提供することができる。
具体的には、本発明の表面処理炭酸カルシウム粒子は、水溶性界面活性剤で表面処理されているために粒子表面での液滴の接触角が小さい。そのため、当該表面処理炭酸カルシウムを顔料として含むインク受容層に水性インクを用いてインクジェット印刷した場合に、インクの濡れ性が高く、それによりインクの吸収速度が速い。このため、インク同士が混じり難く、にじみが発生し難い。
また、本発明の表面処理炭酸カルシウムは、比表面積が50〜120m/gと大きく、インクを吸着する面積が大きい。
更に、本発明のインクジェット記録媒体においては、インクの吸収速度の高い表面処理炭酸カルシウムを含むため、インク中の染料又は顔料の定着と溶媒の吸収がほぼ同時にすばやく起こり、インク染料又は顔料がインク受容層の表面付近に留まるため、高い発色性を発揮する。
≪表面処理炭酸カルシウム≫
本発明の表面処理炭酸カルシウムは、原料炭酸カルシウムを水溶性表面処理剤の溶液で表面処理することにより得られ、BET比表面積が50〜120m/gであることを特徴とする。
原料炭酸カルシウム
原料炭酸カルシウムとしては限定的ではなく、天然カルシウム(重質炭酸カルシウム)及び合成炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム又は膠質炭酸カルシウム)をいずれも使用できる。これらの中でも、粒子形状や粒度分布が均一である点で合成炭酸カルシウムが好ましい。
天然炭酸カルシウムは、石灰石を機械的に粉砕、分級することにより生産するため粒度分布が比較的広く、粒子形も不均一になる傾向がある。これに対して、合成炭酸カルシウムは粒度分布が狭く、粒子形が比較的均一であるため、粒子どうしが最密充填し難く、空隙容積が大きくなり、インキ吸収性が高くなる。
原料炭酸カルシウムの平均粒子径は電子顕微鏡で観察した場合、0.01〜0.5μm程度が好ましく、0.02〜0.1μm程度がより好ましい。
(沈降性)合成炭酸カルシウムは、石灰乳−炭酸ガス反応法、塩化カルシウム−ソーダ灰反応法、石灰乳−ソーダ灰反応法等の公知の方法により得ることができる。石灰乳−炭酸ガス反応法の一例を示すと、石灰石原石を、コークス又は石油系燃料(重油又は軽油)、天然ガス、LPG等で燃焼することによって生石灰とし、この生石灰を水和して水酸化カルシウムスラリーとし、これに燃焼時に副生成物として発生する炭酸ガスをバブリングして反応させることによって、炭酸カルシウムを生成することができる。炭酸ガス反応時の条件を設定することによって、所望のサブミクロンオーダーの微粒子を得ることができる。この他にも、加水分解により水酸化亜鉛となるような亜鉛塩を、水酸化カルシウムスラリーに添加し、これと同時に炭酸ガスをバブリングして反応させ、上記炭酸カルシウムよりもさらに微細な炭酸カルシウムを製造する方法も適用することができる(特許第401044号等)。
原料炭酸カルシウムのBET比表面積は、特に限定されるものではなく、得られた表面処理炭酸カルシウムの比表面積が50〜120m/gとなるようなものであればよいが、例えば、50〜100m/gが好ましく、50〜80m/gがより好ましい。
本明細書において、BET比表面積は、比表面積測定装置(商品名:フローソーブII2300、(株)島津製作所製)を用い、窒素ガス吸着法(BET法)により測定した値である。
原料炭酸カルシウムの粒子形状は、特に限定されるものではなく、球形又はn面体(nは自然数)等のどのような形状であってもよいが、球形又は立方体であることが好ましい。いずれの場合も、粒子の長軸と短軸との長さの比は、0.8〜1程度であることが好ましく、0.9〜1程度であることがより好ましく、1程度であることが特に好ましい。また、粒子形状はできるだけ均一であることが好ましい。
水溶性表面処理剤
水溶性表面処理剤としては、特に限定されるものではなく、表面処理炭酸カルシウム表面における液体の接触角の低下に効果が高いものであれば用いることができ、たとえば、水溶性界面活性剤や水溶性の無機酸や有機酸が挙げられる。
水溶性界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性の水溶性界面活性剤が使用可能であるが、これらの中でもカチオン性又はノニオン性の水溶性界面活性剤が好ましい。これは、アニオン性界面活性剤を用いた場合、インキ吸収性は向上するが、その構造や添加量によってインキ受容層にインキを定着させる目的で添加されるカチオン性ポリマーと凝集を起こしやすく、画質の低下につながる場合があるためである。一方、水溶性界面活性剤がカチオン性又はノニオン性の場合は、前記カチオン性ポリマーと反応しないため、インキ定着性を阻害しないという効果も期待される。
カチオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、4級アンモニウム塩型又は3級アミン型のものを用いることができ、具体的には、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヤシアルキルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム等の塩化アルキルトリメチルアンモニウム(アルキル基の炭素数:10〜25が好ましく、10〜16がより好ましい);塩化ヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム等の塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(アルキル基の炭素数:10〜20が好ましく、10〜16がより好ましい);ヤシアルキルアミン塩酸塩、テトラデシルアミン塩酸塩、オクタデシルアミン酢酸塩等のアルキルアミン塩酸塩(アルキル基の炭素数:8〜20が好ましく、8〜16がより好ましい)等を挙げることができる。これらの中でも、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウムが好ましい。
ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン系、ソルビタン系、ポリオキシエチレンソルビタン系の界面活性剤などが挙げられる。これらの中でも、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン系界面活性剤が好ましい。
水溶性の有機酸としては、例えば、酢酸、シュウ酸などを挙げることができ、水溶性の無機酸としては、硝酸、硫酸、炭酸、リン酸などを挙げることができる。これらの中でも、リン酸、炭酸、硫酸が好ましい。
表面処理炭酸カルシウム
本発明の表面処理炭酸カルシウムは、原料炭酸カルシウム100重量部に対して0.5〜8重量部の水溶性表面処理剤を有することが好ましく、1.0〜5重量部であることがより好ましい。前記範囲内にすることで、表面処理炭酸カルシウムの吸水性を充分に向上させることができ、かつ、該表面処理炭酸カルシウムを含むインク受理層のインキ吸収性及び発色性を向上させることができる。
また、表面処理に用いる水溶性表面処理剤の量としては、特に限定されるものではなく、原料炭酸カルシウム上の水溶性表面処理剤量が前記範囲内になるような量であればよい。表面処理に用いる水溶性表面処理剤の量が少なすぎると、表面処理炭酸カルシウムの接触角低下効果が充分に得られない傾向があり、また多過ぎると炭酸カルシウムに表面処理されなかった余剰の水溶性表面処理剤とインク定着剤あるいはインクが結合し、インクが表面処理炭酸カルシウムの表面に定着することを阻害し、それによって印刷物の耐水性が低下する傾向がある。
接触角
本発明の表面処理炭酸カルシウムの接触角は、30度以下であることが好ましく、25度以下であることがより好ましく、20度以下がさらに好ましい。接触角が30度以下であると、インクとの濡れ性が向上するため、該炭酸カルシウムを含むインク受理層のインクに対する濡れ性が向上する。それにより、インクの吸収速度が速くなり、かつインク滴の水平方向への広がりを抑制し、垂直方向へ浸透しやすくなることから、インクドットが重なって印刷された場合にも、にじみが発生しにくい。
なお、本明細書における表面炭酸カルシウム粒子の接触角は、以下の方法により測定した値をいう。つまり、
(1)表面処理炭酸カルシウム100重量部(固形分)とポリビニルアルコール水溶液(ケン化度86.5〜89.0モル%、重合度1000〜1500)3重量部を混合した固形分濃度25%の塗液を作製する。
(2)アプリケーターを用いてPET樹脂製のフィルム上に前記塗布液を50μm(塗布時膜厚)に塗布し、23℃、20分で乾燥し、塗膜を作製する。
(3)得られた塗膜表面に蒸留水を滴下し、接触角計(協和界面科学(株)製、ドロップマスター700)を用いて接触角を測定する。
比表面積
本発明の表面処理炭酸カルシウムのBET比表面積は、50〜120m/gであり、50〜100m/gであることが好ましく、60〜80m/gであることがより好ましい。表面処理炭酸カルシウムの比表面積が小さすぎると、インキ吸収性は高くなるが、インク滴が水平方向へ広がりやすくなることで、精細性が低下する傾向があり、比表面積が大きすぎると空隙は増加するが、毛管半径が小さくなることによって抵抗が大きくなり、インキ吸収性が低下する傾向がある。
表面処理方法
前記水溶性表面処理剤で炭酸カルシウムの表面を処理する方法としては、特に限定されず、従来から知られている方法を用いることができる。例えば、所定の大きさの一次粒子となるように合成された炭酸カルシウムの懸濁液に水溶性表面処理剤を投入し、炭酸カルシウムの表面に水溶性表面処理剤を吸着させることにより表面処理を行い、次いで、処理物を濾別し、乾燥あるいは所定の濃度にスラリー化させることにより、水溶性表面処理剤で処理した表面処理炭酸カルシウムを製造することができる。また、水溶性表面処理剤を予め水溶液にして炭酸カルシウムの懸濁液に添加してもよい。その場合の水溶性表面処理剤水溶液の濃度は特に限定されるものではなく、原料炭酸カルシウム上の水溶性表面処理剤量が前述の範囲内になればよいが、例えば、5〜50重量%であることが好ましく、8〜30重量%であることがより好ましい。
また、処理を均一に行わせるために、攪拌機、あるいは、ビーズミル、サンドミルのような湿式磨砕機を使用してもよい。
≪インクジェット印刷記録媒体(記録紙)≫
本発明のインクジェット印刷記録媒体は、シート状支持体の片面又は両面にインク受容層を有し、前記インク受容層は前記表面処理炭酸カルシウムを含有することを特徴とする。
インク受容層には、本発明の表面処理炭酸カルシウム以外にも、必要により接着剤、上記表面処理炭酸カルシウム以外の顔料、インク定着剤等を含むことができる。
支持体
本発明のインクジェット記録媒体の支持体としては、特に限定されるものではないが、透明又は不透明支持体を使用することができ、例えば、セロハン、ポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエステル等のプラスチックフィルム類、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗工紙、箔紙、クラフト紙、ポリエチレンラミネート紙、含浸紙、蒸着紙、水溶性紙等の紙類、金属フォイル、合成紙などを挙げることができる。
表面処理炭酸カルシウムの含有量
表面処理炭酸カルシウム粒子の含有量としては、特に限定されるものではないが、インク受容層乾燥全重量中20〜95重量%であることが好ましく、40〜95重量%であることがより好ましい。表面処理炭酸カルシウムの含有量が前記範囲内であることにより、高いインキ吸収性・発色性が得られる。
顔料
上記表面処理炭酸カルシウム以外の顔料としては、特に限定されるものではないが、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムなどの白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂などの有機顔料など挙げることができる。
本発明の表面処理炭酸カルシウムとその他の顔料の配合割合としては特に限定されるものではないが、例えば、インク受容層における全顔料(表面処理炭酸カルシウムとその他の顔料の合計量)100重量部中の配合割合が5重量部以上であることが好ましく、30部以上であることが好ましい。表面処理炭酸カルシウムの配合割合が少なすぎると、吸水性と発色性の効果が充分に得られない傾向がある。また、配合割合の上限値としては特に限定されるものではないが、例えば、100重量部以下であることが好ましく、95重量部以下であることがより好ましい。
また、顔料(表面処理炭酸カルシウムとその他の顔料の合計量)の含有量としては、特に限定されるものではないが、インク受容層乾燥全重量中60〜95重量%であることが好ましく、70〜90重量%であることがより好ましい。
接着剤
接着剤としては、特に限定されるものではなく、例えば公知の樹脂から適宣選択することができ、水溶性高分子接着剤、合成エマルジョン系接着剤等の、水に溶解又は分散可能な接着剤が好ましい。
水溶性高分子接着剤としては、デンプン又はその変性物、ポリビニルアルコール及びその変性物、カゼインなどを挙げることができ、合成エマルジョン系接着剤としては、アクリル樹脂系エマルジョン、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン、スチレンブタジエンラテックス、ウレタン樹脂系エマルジョンなどを挙げることができるが、これらの中でも、発色性の点から水溶性高分子接着剤を使用することが好ましい。接着剤として具体的には、完全ケン化型ポリビニルアルコール、部分ケン化型ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、酸化デンプン、ヒドロキシルエチルエーテル化デンプン、リン酸エステル化デンプンなどが挙げられるが、これらの中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。
接着剤の配合量としては、全顔料100重量部に対して2〜50重量部であることが好ましく、5〜20重量部であることがより好ましい。接着剤の配合量が少なすぎると接着強度が低下する傾向があり、多すぎるとインク受容層中の空隙率の低下により、インキ吸収性が低下する傾向がある。
インク定着剤
本発明においては、アニオン性物質を含むインクジェット用インクをインクジェット記録媒体に定着させ、インクジェット記録媒体に耐水性を付与するために、インク定着剤となるカチオン性樹脂をインク受容層中に含むことが好ましい。
本発明で使用されるカチオン性水溶性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、二級アミン、三級アミン、及び四級アンモニウム塩としてポリエチレンイミン塩、ジメチルアミンエピハロヒドリン縮合体、ポリビニルアミン塩、ポリアリルアミン塩、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート四級塩、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩、ジアリルアミンアクリルアミド共重合体塩、ポリスチレンの四級アンモニウム塩等が挙げられ、これらを1種単独で、又は2種類以上を配合して使用することができる。
インク定着剤の配合量としては、全顔料100重量部に対して1〜20重量部であることが好ましく、1〜10重量部であることがより好ましい。インク定着剤の配合量が少なすぎると耐水性が不充分になる傾向があり、多すぎると空隙率の低下によってインキ吸収性が低下する傾向がある。
助剤
本発明のインク受容層には、その他分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤等通常の塗工紙用組成物に配合される各種助剤を適宜使用することができ、これらの添加量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することができる。
インクジェット記録媒体の製造方法
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法としては、特に制限されるものではなく、公知の方法により製造することができる。
表面処理炭酸カルシウムおよび任意に上記各成分を適宜配合して調製された塗工組成液を、一般の塗工紙製造に用いられているブレードコータ、エアナイフコータ、ロールコータ、バーコータ、スプレーコータ、カーテンコータ、キャストコータ等の塗工装置を設けたオンマシンあるいはオフマシンコータによって支持体上に単層あるいは多層塗被することができる。
塗工組成液の塗工量は、原紙片面当たり、固形分で7〜20g/mの範囲で塗工することが好ましい。また白紙光沢度、平滑度を上げるためにスーパーカレンダ、ソフトカレンダで等の仕上げ装置で処理をすることも可能である。
本発明のインクジェット印刷記録媒体は、高いインキ吸収性及び発色性を有するものであり、インクジェット印刷に好適に用いることができる。
以下、実施例、比較例及び試験例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
実施例1
BET比表面積70.2m/gの原料炭酸カルシウム(平均粒子径0.03μm)を用意した。原料炭酸カルシウムと蒸留水とを混合して固形分濃度8重量%のスラリーを調製した。原料炭酸カルシウム100重量部に対して5重量部の水溶性表面処理剤I(処理剤I、塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウム、アルキル基の炭素数:12〜16)を室温下でスラリーに添加した。スラリーを撹拌して原料炭酸カルシウムを表面処理した。表面処理後、スラリーをフィルタープレスにより脱水した。
表面処理炭酸カルシウムのBET比表面積及び接触角を測定した。結果を表1に示す。
実施例2
BET比表面積80m/gの原料炭酸カルシウム(平均粒子径0.02μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウムを得た。
表面処理炭酸カルシウムのBET比表面積及び接触角を測定した。結果を表1に示す。
実施例3
水溶性表面処理剤II(処理剤II、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)を用いた以外は、実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウムを得た。
表面処理炭酸カルシウムのBET比表面積及び接触角を測定した。結果を表1に示す。
実施例4
水溶性表面処理剤III(処理剤III、オルトリン酸)水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウムを得た。
表面処理炭酸カルシウムのBET比表面積及び接触角を測定した。結果を表1に示す。
比較例1
実施例1で用いた原料炭酸カルシウムをそのまま顔料とした。
顔料のBET比表面積及び接触角を測定した。結果を表1に示す。
比較例2
BET比表面積50m/gの原料炭酸カルシウム(平均粒子径0.04μm)をそのまま顔料とした。
顔料のBET比表面積及び接触角を測定した。結果を表1に示す。
比較例3
BET比表面積292.5m/gの合成シリカ(ファインシールX−45、(株)トクヤマ製、0.01μm、)をそのまま顔料とした。
顔料のBET比表面積及び接触角を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2009011242
実施例5〜8(記録紙の作製)
実施例1〜4で調製した各顔料(表面処理炭酸カルシウム)100重量部と、ポリビニルアルコール(接着剤、日本合成化学工業(株)製、ゴーセノールGM−14R)5重量部と、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体(カチオン性樹脂、日東紡績(株)製、PAS−H−5L)2重量部とを混合し、固形分濃度20重量%の塗料をそれぞれ調製した。
上記塗料を坪量80g/mの上質原紙にコーティングロッドで塗工量片面当たり15g/mになるように平滑に手塗りし、110℃で1分間乾燥し、インクジェット記録紙を作製した。
乾燥塗膜(インク受容層)中の表面処理炭酸カルシウムの含有量は、93重量%(実施例5〜8)であった。
実施例9
実施例1で調製した表面処理炭酸カルシウムと合成シリカ(ファインシールX−45、(株)トクヤマ製)との50/50混合物(重量比)を顔料とした。当該顔料100重量部と、ポリビニルアルコール(接着剤、日本合成化学工業(株)製、ゴーセノールGM−14R)20重量部と、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体(カチオン性樹脂、日東紡績(株)製、PAS−H−5L)6重量部とを混合し、固形分濃度20重量%の塗料を調製した。
上記以外は実施例5〜8と同様にしてインクジェット記録紙を作製した。
乾燥塗膜(インク受容層)中の表面処理炭酸カルシウムの含有量は、39.7重量%であり、当該顔料(表面処理炭酸カルシウムと合成シリカの合計量)の含有量は79.3重量%であった。
比較例4〜5
比較例1〜2で用意した各顔料(非処理炭酸カルシウム)を用いた以外は、実施例5〜8と同様にしてインクジェット記録紙を作製した。
乾燥塗膜(インク受容層)中の非処理炭酸カルシウムの含有量は、93重量%(比較例4〜5)であった。
比較例6
比較例3で用意した合成シリカ(ファインシールX−45、(株)トクヤマ製)を100重量部と、ポリビニルアルコール(接着剤、日本合成化学工業(株)製、ゴーセノールGM−14R)30重量部と、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体(カチオン性樹脂、日東紡績(株)製、PAS−H−5L)10重量部とを混合し、固形分濃度15重量%の塗料をそれぞれ調製した。
上記以外は実施例5〜8と同様にしてインクジェット記録紙を作製した。
乾燥塗膜(インク受容層)中の合成シリカの含有量は、71.4重量%であった。
試験例1
実施例5〜9及び比較例4〜6で作製したインクジェット記録紙の吸水性とインクジェット印刷適性を評価した。インクジェット印刷適性は、具体的には、インク吸収性、発色性、にじみの有無の観点から評価した。
各評価の実施方法を下記に示す。また評価結果を表2に示す。
<吸水性>
ブリストー式吸水試験機を用いて吸水性を評価した。具体的には、評価液として蒸留水を用いて吸水係数Ka(ml/(m・ms1/2))を算出し、下記基準に従って評価した。
◎:0.8以上
○:0.4以上0.8未満
△:0.4未満
<インクジェット記録適性>
EPSON製インクジェットプリンタ(PM−G850、セイコーエプソン(株)製)及びCanon製インクジェットプリンタ(iP4200、キャノン(株)製)を用いてインクジェット印刷し、下記手法により、インク吸収性、発色性及びにじみの有無を評価した。
(インク吸収性)
ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各ベタ印刷部及び写真画像(JIS X 9201(ISO 12640) 高精細カラーディジタル標準画像 N1)印刷部について、印刷直後のインク吸収性を目視で観察し、下記評価基準により評価した。
◎:表面に残留したインクが全く認められず、吸収が非常に速い
○:表面に残留したインクがほぼ認められず、吸収が速い
△:インクの吸収が遅く、印刷部の表面に残留インクが認められる。
(発色性)
ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各ベタ印刷部分の各色濃度をカラー反射濃度計DM−400(大日本スクリーン製造(株)製)を用いて測定し、4色の測定値の合計により評価した。
(にじみの有無)
イエローのベタ印刷部分にブラック及びマゼンタによって数字を重ね印字し、印字部分のにじみを目視により観察した。評価基準は下記の通りであり、評価結果が◎又は○であれば実使用において問題なく使用可能である。
◎:にじみが全く認められない
○:にじみがわずかに認められる
△:にじみが明確に認められる
Figure 2009011242
表2の結果から明らかなように、表面処理炭酸カルシウムを用いた本発明のインクジェット記録紙(実施例5〜8)は良好なインク吸収性を示し、非処理炭酸カルシウムを用いたインクジェット記録紙(比較例4〜5)よりもインク吸収性が向上した。また、インク吸収性の向上により、印刷画像のにじみが低減した。更に、合成シリカを用いた場合(比較例6)よりも発色性が高く、本発明の記録紙は良好なインクジェット適性が得られた。
表面処理炭酸カルシウムと合成シリカとを併用したインクジェット記録紙(実施例9)は良好な吸水性を示した。また、合成シリカのみを用いた場合(比較例6)よりも発色性が高く、良好なインクジェット適性が得られた。
非処理炭酸カルシウムを用いた場合(比較例4〜5)は、インク吸収性が悪く、且つにじみが生じやすいため、合成シリカのみを用いた場合(比較例6)と比較してインクジェット適性が劣った。

Claims (6)

  1. 原料炭酸カルシウムを水溶性表面処理剤で表面処理することにより得られる、BET比表面積が50〜120m/gである表面処理炭酸カルシウム。
  2. 前記水溶性表面処理剤が、カチオン性又はノニオン性の水溶性界面活性剤である、請求項1に記載の表面処理炭酸カルシウム。
  3. 前記水溶性表面処理剤が、水溶性の無機酸又は有機酸である、請求項1に記載の表面処理炭酸カルシウム。
  4. 前記表面処理炭酸カルシウムが、前記原料炭酸カルシウム100重量部に対して0.5〜8重量部の前記水溶性表面処理剤を有する、請求項1に記載の表面処理炭酸カルシウム。
  5. 前記表面処理炭酸カルシウム100重量部及び3重量部のポリビニルアルコール水溶液(但し、ポリビニルアルコールはケン化度86.5〜89モル%、重合度1000〜1500)を混合して得られる固形分濃度25%の塗液から形成される乾燥塗膜表面と水滴との接触角が30度以下である、請求項1のいずれかに記載の表面処理炭酸カルシウム。
  6. シート状支持体の片面又は両面にインク受容層を有するインクジェット印刷記録媒体であって、前記インク受容層は請求項1のいずれかに記載の表面処理炭酸カルシウムを含有する、インクジェット印刷記録媒体。
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