JP2004223993A - インクジェット用記録材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】フォトライクな高い光沢と優れたインク吸収性を有し、保存時ひび割れ、具体的には高湿下で保存した場合の白紙部のひび割れや画像を印字した部分の経時によるひび割れのないインクジェット用記録材料を提供する。
【解決手段】支持体上に1層以上のインク受容層を有するインクジェット用記録材料において、該インクジェット用記録材料が、該インク受容層が湿式粉砕シリカを主体に含有しており、かつホウ酸またはホウ酸塩及びメチロールアミノ系化合物を合わせて含有していることを特徴とするインクジェット用記録材料。
【選択図】 なし。
【解決手段】支持体上に1層以上のインク受容層を有するインクジェット用記録材料において、該インクジェット用記録材料が、該インク受容層が湿式粉砕シリカを主体に含有しており、かつホウ酸またはホウ酸塩及びメチロールアミノ系化合物を合わせて含有していることを特徴とするインクジェット用記録材料。
【選択図】 なし。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット用記録材料に関し、更に詳しくは、高い光沢でインク吸収性に優れ、更に高湿下でのひび割れ、及び経時での画像のひび割れが改良されたインクジェット用記録材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式に使用される記録材料として、通常の紙やインクジェット記録用紙と称される支持体上に非晶質シリカ等の顔料をポリビニルアルコール等の水溶性バインダーからなる多孔質のインク吸収層を設けてなる記録材料が知られている。
【0003】
例えば、特開昭55−51583号、同昭56−157号、同昭57−107879号、同昭57−107880号、同昭59−230787号、同昭62−160277号、同昭62−184879号、同昭62−183382号、及び同昭64−11877号公報等に開示のごとく、シリカ等の含珪素顔料を水系バインダーと共に紙支持体に塗布して得られる記録材料が提案されている。また、特開平9−286165号、同平10−181190号公報には、沈降法シリカ凝集体を機械的手段で10〜300nmに粉砕したシリカ微粒子を用いることが開示されている(特許文献1、2)。
【0004】
一方、フォトライクの記録シートが要望される中、益々光沢性が重要視されてきており、ポリオレフィン樹脂被覆紙(紙の両面にポリエチレン等のポリオレフィン樹脂をラミネートしたもの)やポリエステルフィルム等の耐水性支持体上に超微粒子シリカ(例えば、前記湿式粉砕シリカ)を主体とするインク受容層が塗設された記録材料が提案されている。
【0005】
しかしながら、耐水性支持体に湿式粉砕シリカのような無機微粒子を多量に塗布し、バインダーの比率が低い多孔質記録材料は、記録材料を高湿の環境で保管する場合や、水が掛かった場合には未印字の記録材料表面にひび割れが発生する問題や、印字画像の経時でのひび割れが発生しやすいという問題を有している。
【0006】
また一方では、無機微粒子とポリビニルアルコール等の親水性バインターからなるインク受容層に架橋剤を含有させることが知られている。例えば、特開平9−22139号、特開2001−146068号公報等である。(特許文献3、4)。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−286165号公報(第2頁〜第5頁)
【特許文献2】
特開平10−181190号公報(第2頁〜第4頁)
【特許文献3】
特開平9−22139号公報(第2頁〜第5頁)
【特許文献4】
特開2001−146068号公報(第2頁〜第5頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高光沢性と高いインク吸収性を有し、高湿下でのひび割れ、経時での画像ひび割れが改良されたインクジェット用記録材料を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について種々検討した結果、主として下記の手段により本発明の目的が達成された。
【0010】
(1)支持体上に1層以上のインク受容層を有するインクジェット用記録材料において、該インクジェット用記録材料が、該インク受容層が湿式粉砕シリカを主体に含有しており、かつホウ酸またはホウ酸塩及びメチロールアミノ系化合物を合わせて含有していることを特徴とするインクジェット用記録材料。
【0011】
(2)前記インク受容層の湿式粉砕シリカが、5μm以上の平均二次粒子径を有する沈降法シリカを、カチオン性化合物の存在下、水性媒体中でメディアミルを使用して平均粒子径500nm以下に粉砕した微粒子である(1)に記載のインクジェット用記録材料。
【0012】
(3)前記メチロールアミノ系化合物がメチロールメラミン系化合物である(1)または(2)に記載のインクジェット用記録材料。
【0013】
(4)前記支持体が耐水性支持体である(1)〜(3)の何れか1項に記載のインクジェット用記録材料。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる支持体としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、セロファン、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のフィルム、樹脂被覆紙等の耐水性支持体、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗被紙等の吸水性支持体等が用いられる。好ましくは耐水性支持体が用いられる。特にこれらの支持体の厚みは、約50〜250μm程度のものが好ましく使用される。
【0015】
非晶質合成シリカは、製造法によって気相法シリカ、湿式法シリカ、及びその他に大別することができる。湿式法シリカは、さらに製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。沈降法シリカは珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の行程を経て製品化される。この方法で製造されたシリカ二次粒子は緩やかな凝集粒子となり、比較的粉砕し易い粒子が得られる。沈降法シリカとしては、例えば日本シリカ(株)からニップシールとして、(株)トクヤマからトクシール、ファインシールとして市販されている。ゲル法シリカは珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造する。この場合、熟成中に小さなシリカ粒子が溶解し、大きな粒子の一次粒子間に一次粒子どうしを結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。例えば、水澤化学(株)からミズカシルとして、グレースジャパン(株)からサイロジェットとして市販さている。ゾル法シリカは、コロイダルシリカとも呼ばれ、ケイ酸ソーダの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られ、例えば日産化学工業(株)からスノーテックスとして市販されている。
【0016】
本発明のインク受容層には湿式粉砕シリカを主体に含有する。好ましくは平均粒子径が500nm以下になるまで粉砕された沈降法シリカを主体に含有していることであり、更に平均粒子径300nm以下になるまで粉砕された沈降法シリカを主体に含有していることがより好ましい。ここで主体に含有するとはインク受容層の全固形分に対して50質量%以上含有することであり、好ましくは60質量%以上であり、更に65質量%以上含有することがより好ましい。通常の方法で製造された沈降法シリカは、1μm以上の平均二次粒子径を有するため、これを微粉砕して使用する。粉砕方法としては、水性媒体中に分散したシリカを機械的に粉砕する湿式分散法が好ましく使用できる。湿式分散機としては、ボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜施回型分散機等を使用することができるが、本発明では特にビーズミル等のメディアミルの使用が好ましい。
【0017】
本発明の沈降法シリカの粉砕は、カチオン性化合物の存在下で行うことが好ましい。水中に分散されたシリカにカチオン性化合物を添加すると凝集物が発生することが多いが、これを粉砕処理することによって、水のみに分散するよりも高濃度分散が可能となり、その結果分散効率が上昇し、より微粒子に粉砕することができる。更に、高濃度分散液を使用することによって、塗布液調製時に塗布液の高濃度化が可能になり、生産効率が向上する等の利点がある。特にこの際平均二次粒子径が5μm以上の沈降法シリカを使用すると、初期の凝集物発生による粘度上昇が抑制され、より高濃度での分散が可能となるため、さらに有利である。平均二次粒子径の上限は特にないが、通常沈降法シリカの平均二次粒子径は200μm以下である。
【0018】
カチオン性化合物としては、カチオン性ポリマーまたは水溶性金属化合物を使用できる。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、特開昭59−20696号、同昭59−33176号、同昭59−33177号、同昭59−155088号、同昭60−11389号、同昭60−49990号、同昭60−83882号、同昭60−109894号、同昭62−198493号、同昭63−49478号、同昭63−115780号、同昭63−280681号、同平1−40371号、同平6−234268号、同平7−125411号、同平10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。特に、カチオン性ポリマーとしてジアリルアミン誘導体が好ましく用いられる。これらのカチオンポリマーの分子量は、2,000〜10万程度が好ましく、特に2,000〜3万程度が好ましい。分子量が10万よりも大きくなると、分散液が高粘度となりすぎるため好ましくない。
【0019】
水溶性金属化合物としては、例えば水溶性の多価金属塩が挙げられる。カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、チタン、ジルコニウム、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)ニ水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、p−フェノールスルホン酸亜鉛、塩化チタン、硫酸チタン、乳酸チタン、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸二十六水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等が挙げられる。
【0020】
上記の水溶性多価金属化合物の中でも、アルミニウムもしくは周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)からなる化合物が好ましい。特に好ましくは水溶性アルミニウム化合物である。水溶性アルミニウム化合物としては、例えば無機塩としては塩化アルミニウムまたはその水和物、硫酸アルミニウムまたはその水和物、アンモニウムミョウバン等が知られている。さらに、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が知られており、好ましく用いられる。
【0021】
本発明に用いられる周期表4A族元素を含む水溶性化合物としては、チタンまたはジルコニウムを含む水溶性化合物がより好ましい。チタンを含む水溶性化合物としては、塩化チタン、硫酸チタンが挙げられる。ジルコニウムを含む水溶性化合物としては、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム化合物等が挙げられる。本発明に於いて、水溶性とは常温常圧下で水に1重量%以上溶解することを目安とする。
【0022】
本発明の平均二次粒子径が500nm以下の沈降法シリカ微粒子を得る具体的な方法としては、まず水中にシリカ及びカチオン性ポリマー及び/またはカチオン性金属化合物の少なくとも1種を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機、プロペラ羽根型分散機、またはローターステーター型分散機等の分散装置の少なくとも1つを用いて予備分散液を得る。必要であれば更に適度の低沸点溶剤等を添加してもよい。カチオン性ポリマーまたは水溶性金属化合物の量は、シリカに対して0.5〜20質量%、好ましくは2〜10質量%である。この範囲にすることによって、シリカ予備分散液の粘度が高くなりすぎず、固形分濃度を高くする事ができる。本発明のシリカ予備分散物の固形分濃度は高いほうが好ましいが、あまり高濃度になると分散不可能となるため、好ましい範囲としては20〜60質量%、より好ましくは30〜50質量%である。
【0023】
上記の方法で得られたシリカ予備分散物をビーズミルで粉砕処理する。ビーズミルとは、内部に撹拌装置を有する容器中にビーズを内填し、容器中に液状物を入れて撹拌装置を回転させてビーズ同士を衝突させることで液状物にせん断力を与えて処理する装置である。ビーズの粒径は0.1〜10mmが一般的であるが、好ましくは0.2〜1mm、より好ましくは0.3〜0.6mmである。ビーズにはガラスビーズ、セラミックスビーズ、金属ビーズ等があるが、耐摩耗性及び分散効率からはジルコニアビーズが好ましい。また、容器中のビーズの添加充填率は一般的には40〜80容量%であり、好ましくは55〜80容量%である。上記分散条件によって、シリカ分散物を効率良く、粗粒残存や凝集物発生もなく、平均二次粒子径が500nm以下に粉砕することが可能である。予備分散物を連続で処理する場合で通し回数が1回では粗粒が残りやすい場合には、2回以上処理するほうが好ましい。本発明では粗粒が出来ない範囲で濃度が高い方が、塗布液の高濃度化が可能になり好ましい。本発明のシリカ分散物の固形分濃度の好ましい範囲としては20〜60質量%、より好ましくは30〜50質量%である。市販のビーズミルとしては浅田鉄工社製のナノミル、アイメックス社製のウルトラビスコミル、及びマツボー社製のアミュラー型OBミル、シンマルエンタープライゼス社製のダイノミル等が挙げられる。
【0024】
本発明において、インク受容層で湿式粉砕シリカ微粒子とともに用いられる親水性バインダーとしては、公知の各種バインダーを用いることができるが、透明性が高くインクのより高い浸透性が得られる親水性バインダーが好ましく用いられる。親水性バインダーの使用に当たっては、親水性バインダーがインクの初期の浸透時に膨潤して空隙を塞いでしまわないことが重要であり、この観点から比較的室温付近で膨潤性の低い親水性バインダーが好ましく用いられる。特に好ましい親水性バインダーは完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。
【0025】
ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したものである。平均重合度200〜5000のものが好ましい。
【0026】
また、カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールである。
【0027】
本発明のインク受容層において、湿式粉砕シリカと親水性バインダーの含有比率(質量比)は、好ましくは70:30〜95:5であり、さらに好ましくは80:20〜92:8である。上記範囲にすることによって、高いインク吸収性と表面光沢が得られる。また、本発明のインク受容層において、ポリビニルアルコールに対する、ホウ酸またはホウ酸塩の含有率は、0.02〜50質量%で、特に0.5〜35質量%が好ましい。
【0028】
本発明では、湿式粉砕シリカを主体に含有するインク受容層にメチロールアミノ系化合物を含有する。本発明でメチロールアミノ系化合物とは、メチロールアミノ系のモノマーを構成単位として、単体または複数個重合した化合物であり、アルキル化メチロールアミノ系化合物等の変性されたメチロールアミノ系化合物も含まれる。メチロールアミノ系化合物としては、メチロールメラミン系化合物、メチロール尿素系化合物等が使用される。具体例としては、住友化学社製のスミレーズレジン613、8%AC、607syrup等、大日本インキ化学工業製のベッカミンPM−N、ベッカミンJ−101等のメラミン系化合物、スミレーズレジン302、636、703、712、EU等の尿素系化合物等が挙げられ、それらの中から1種以上が使用される。本発明の画像の経時ひび割れ防止効果からはメチロールメラミン系化合物が好ましく使用される。インク受容層へ添加する場合の添加量は、ポリビニルアルコールの固形分に対して0.3〜50質量%であり、好ましくは0.5〜30質量%である。
【0029】
本発明では、インクジェット用記録材料を構成する少なくとも1層、好ましくは少なくとも1層のインク受容層にホウ酸またはホウ酸塩を含有する。ホウ酸塩としては、オルトホウ酸塩、メタホウ酸塩、二ホウ酸塩、四ホウ酸塩、五ホウ酸塩等が挙げられる。これらホウ酸またはホウ酸塩を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。インク受容層へ添加する場合の添加量は、ポリビニルアルコールの固形分に対して0.5〜50質量%、好ましくは1〜40質量%である。
【0030】
インク受容層の乾燥塗布量の範囲は、8〜40g/m2であり、好ましくは10〜30g/m2である。この範囲は、インク吸収性、表面光沢、耐折り割れ性(記録材料を取り扱い際に曲率を高くしてしまった場合に生じてしまう塗層のひび割れ)の面で好ましい。
【0031】
本発明のインク受容層各層は、耐水性改良目的等で更にカチオン性化合物を含有するのが好ましい。カチオン性化合物の例としては、沈降法シリカの粉砕の説明で挙げたカチオン性ポリマー、及び水溶性金属化合物が挙げられる。特に、分子量5,000〜10万程度のカチオン性ポリマー、及びアルミニウムもしくは周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)からなる化合物が好ましい。カチオン性化合物は一種類を使用しても、複数の化合物を併用しても良い。
【0032】
本発明において、インク受容層には、更に、界面活性剤、硬膜剤の他に着色染料、着色顔料、インク染料の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0033】
本発明において、インク受容層は、湿式粉砕シリカを主体とするインク受容層以外に層を設けてもよいが、その場合にはインク浸透性を損なわない層であることが必要である。例えば、耐傷性を改良する目的で、インク受容層上にコロイダルシリカを主体とした保護層をインク吸収性を低下させない程度、固形分で5g/m2程度以下で設けても良い。コロイダルシリカの一般的な一次粒子の平均粒径は5〜100nm程度であり、平均粒径が10〜500nm程度の二次粒子を形成しているほうがインク吸収性からは好ましい。市販の球状のものとして日産化学工業社製、スノーテックス20等、触媒化成工業社製、カタロイドUSB等が挙げられ、鎖状のものとして日産化学社製、スノーテックスUP等が挙げられ、パールネックレス状のものとして日産化学社製、スノーテックスPS−M等が使用出来る。また、コロイダルシリカの表面がカチオン性に修飾されたコロイダルシリカも好ましく使用でき、なかでもアルミニウム化合物により表面をカチオン性に修飾されていることが好ましい。アルミナ修飾コロイダルシリカとしては日産化学工業社製、スノーテックスAK−L、スノーテックスAK−UP、スノーテックスPS−M−AK等が挙げられる。
【0034】
本発明のインクジェット用記録材料の製造方法は、記録材料を構成する層が、例えば下塗り層、インク受容層、および保護層を有する場合には、少なくともいずれかの層中に湿式粉砕シリカ、ホウ酸またはホウ酸塩、ポリビニルアルコール、及びメチロールアミノ系化合物を含有させてもよいが、少なくとも1層のインク受容層が湿式粉砕シリカ、ホウ酸またはホウ酸塩、ポリビニルアルコール、及びメチロールアミノ系化合物をあわせて含有する1層以上のインク受容層用の塗布液を耐水性支持体上に塗布、乾燥してインク受容層を形成する方法が一般的である。メチロールアミノ系化合物の活性劣化防止や液性の経時変化防止からは、湿式粉砕シリカ、ホウ酸またはホウ酸塩、及びポリビニルアルコールを含有するインク受容層用の塗布液とメチロールアミノ系化合物含有液を同時に塗布する方法、メチロールアミノ系化合物を除いたインク受容層用の塗布液を塗布、乾燥した後でメチロールアミノ系化合物含有液を塗布する方法、またはメチロールアミノ系化合物を除いたインク受容層用の主液に塗布直前にメチロールアミノ系化合物含有液を添加し、混合後に塗布する方法が好ましく、特にインク受容層用の主液を送液中のインラインでメチロールアミノ系化合物含有液を添加し、混合する方法が、画像の経時ひび割れがより向上するので好ましい。その理由としてはメチロールアミノ系化合物の活性劣化が少なく、塗布液中に均一混合されるのでメチロールアミノ系化合物とポリビニルアルコールや湿式粉砕シリカとの結合数が多くなり、強くなるためと推測される。ここで塗布直前とは一般的に塗布する数分前から数秒前である。2液を添加後に使用する混合装置としては、例えばインラインミキサー、スタチックミキサー等がKenics社、Sulger社、晃立社、東レ社より市販されている装置が使用出来る。
【0035】
本発明では、インク受容層用の、湿式粉砕シリカ、ホウ酸またはホウ酸塩、ポリビニルアルコール、およびメチロールアミノ系化合物を含有する塗布液のpHは、特に限定されないが、3〜6、好ましくは3〜5.5とすることで印字画像の経時でのひび割れが更に良化する。塗布液のpH調整は、酸またはアルカリを適当に組み合わせて行われる。酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、コハク酸等の有機酸が用いられ、アルカリとしては、水酸化ナトリウム、アンモニア水、炭酸カリウム、リン酸三ナトリウム、または弱アルカリとして、酢酸ナトリウム等の弱酸のアルカリ金属塩が用いられる。
【0036】
本発明により印字画像の経時でのひび割れが改良される理由は不明であるが、インク受容層に各材料を添加する場合について以下の推測を記載する。即ち、記録材料のインク受容層中のポリビニルアルコール同士の水素結合や、無機微粒子とポリビニルアルコールとの結合が、印字することでインク中の水や有機溶剤により結合力が弱くなってひび割れが発生しやすくなっているが、メチロールアミノ系化合物、および含ホウ素化合物を併用することで、ポリビニルアルコールの水酸基や無機微粒子の活性基との結合、またはそれらの結合を促進することで結合の阻害を抑えると推測され、メチロールアミノ系化合物、および含ホウ素化合物に加えて更に水溶性金属化合物が存在することにより、それらの結合数が増加し、結合力が更に強化されることにより、空気中やインク中の水等の溶剤により結合力が低下せず、温度や湿度が変化しても画像にひび割れが発生しにくくなると推測される。特にメチロールアミノ系化合物としてはメチロールメラミン系化合物が好ましく、更にインク受容層用の塗布液のpHを3.5〜5.5とし、インク受容層に加温処理等で40℃以上の温度をかけることでメチロール基とポリビニルアルコールや無機微粒子の活性基との反応性が上がり、インク受容層の未印字部の高湿ひび割れや画像の経時ひび割れが良化すると推測される。
【0037】
本発明のインク受容層には、画像の耐水性を改良するためにカチオン性ポリマーを含有させてもよい。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、特開昭59−20696号、同59−33176号、同59−33177号、同59−155088号、同60−11389号、同60−49990号、同60−83882号、同60−109894号、同62−198493号、同63−49478号、同63−115780号、同63−280681号、特開平1−40371号、同6−234268号、同7−125411号、同10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。これらのカチオンポリマーの分子量は、5,000以上が好ましく、更に5,000〜10万程度が好ましい。
【0038】
これらのカチオン性ポリマーの使用量は画像のひび割れからは少ない方が好ましく、無機微粒子に対して1〜7質量%、好ましくは2〜5質量%である。
【0039】
本発明において、インク受容層には更に、界面活性剤、着色染料、着色顔料、インク染料の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐水化剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0040】
本発明のインク受容層には、更に皮膜の脆弱性を改良するために各種油滴を含有することができる。そのような油滴としては室温における水に対する溶解性が0.01質量%以下の疎水性高沸点有機溶媒(例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等)や重合体粒子(例えば、スチレン、ブチルアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等の重合性モノマーを一種以上重合させた粒子)を含有させることができる。そのような油滴は好ましくは親水性バインダーに対して10〜50質量%の範囲で用いることができる。
【0041】
本発明において、インク受容層を構成している各層の塗布方法は、公知の塗布方法を用いることができる。例えば、スライドビード方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、エアナイフ方式、ロールコーティング方式、ケッドバーコーティング方式等がある。
【0042】
フィルム支持体、樹脂被覆紙にインク受容層の塗布液を塗布する場合、塗布に先立って、好ましくはコロナ放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、プラズマ処理等が行われる。
【0043】
本発明は、支持体、特に耐水性支持体であるフィルムや樹脂被覆紙を使用する場合には、インク受容層を設ける面上に天然高分子化合物や合成樹脂を主体とするプライマー層を設けるのが好ましい。該プライマー層の上に、本発明の無機微粒子含有のインク受容層を塗布した後、冷却し、比較的低温で乾燥することによって、更にインク受容層の透明性が向上する。
【0044】
支持体上に設けられるプライマー層はゼラチン、カゼイン等の天然高分子化合物や合成樹脂を主体とする。係る合成樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニリデン、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0045】
上記プライマー層は、支持体上に0.01〜5μmの膜厚(乾燥膜厚)で設けられる。好ましくは0.05〜5μmの範囲である。
【0046】
本発明における支持体には筆記性、帯電防止性、搬送性、カール防止性などのために、各種のバックコート層を塗設することができる。バックコート層には無機帯電防止剤、有機帯電防止剤、親水性バインダー、ラテックス、顔料、硬化剤、界面活性剤などを適宜組み合わせて含有せしめることができる。
【0047】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。尚、部及び%は質量部、質量%を示す。
【0048】
実施例1
<ポリオレフィン樹脂被覆紙支持体の作製>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)の1:1混合物をカナディアン スタンダード フリーネスで300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5重量%、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1.0重量%、カチオン化澱粉を対パルプ2.0重量%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5重量%添加し、水で希釈して1%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量170g/m2になるように抄造し、乾燥調湿してポリオレフィン樹脂被覆紙の原紙とした。抄造した原紙に、密度0.918g/cm3の低密度ポリエチレン100重量%の樹脂に対して、10重量%のアナターゼ型チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、200m/分で厚さ35μmになるように押出コーティングし、微粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した。もう一方の面には密度0.962g/cm3の高密度ポリエチレン樹脂70重量部と密度0.918の低密度ポリエチレン樹脂30重量部のブレンド樹脂組成物を同様に320℃で溶融し、厚さ30μmになるように押出コーティングし、粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した。
【0049】
上記ポリオレフィン樹脂被覆紙表面に高周波コロナ放電処理を施した後、下記組成の下引き層をゼラチンが50mg/m2となるように塗布乾燥して支持体を作製した。
【0050】
<下引き層>
石灰処理ゼラチン 100部
スルフォコハク酸−2−エチルヘキシルエステル塩 2部
クロム明ばん 10部
【0051】
<シリカ分散液1の作製>
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9,000、4部)と沈降法シリカ(ニップシールVN3、平均二次粒径23μm、100部)を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機(ブレード周速30m/秒)を使用して予備分散液を作製した。次に得られた予備分散物をビーズミルに、直径0.3mmのジルコニアビーズ、充填率80容量%、円盤周速10m/秒の条件で1回通過させて、固形分濃度30質量%、平均二次粒子径200nmのシリカ分散液1を得た。
【0052】
前記支持体に下記組成のインク受容層塗布液を、乾燥塗布量が22g/m2になるように、スライドビード塗布装置で塗布し、乾燥することにより実施例1のインクジェット記録材料を得た。
【0053】
<インク受容層塗布液>
シリカ分散液1 104部
ほう酸 3部
ポリビニルアルコール 15部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
界面活性剤 0.3部
メチロールメラミン系化合物
(大日本インキ化学工業(株)製ベッカミンPM−N) 3部
【0054】
実施例2
実施例1のメチロールメラミン系化合物の添加量を1部に変更した以外は実施例1と同様にして実施例2のインクジェット記録材料を得た。
【0055】
実施例3
実施例1のメチロールメラミン系化合物を住友化学社製、スミレーズレジン613に変更した以外は実施例1と同様にして実施例3のインクジェット記録材料を得た。
【0056】
比較例1
実施例1からメチロールメラミン系化合物を抜いた以外は実施例1と同様にして比較例1のインクジェット記録材料を得た。
【0057】
比較例2
比較例1からホウ酸を抜いた以外は比較例1と同様にして塗布乾燥を行ったが乾燥時にひび割れが生じてしまいインクジェット記録材料を得られなかった。
【0058】
比較例3
実施例1からメチロールメラミン系化合物を抜き、替わりにエポキシ系化合物を3部添加して比較例3のインクジェット記録材料を得た。エポキシ系架橋剤としてはナガセ化成工業(株)製デナコールEX421を使用した。
【0059】
比較例4
比較例3のエポキシ系化合物の添加量を10部とした以外は比較例3と同様にして比較例4のインクジェット記録材料を得た。
【0060】
比較例5
比較例3のエポキシ系化合物をイソシアネート系化合物に替えた以外は比較例3と同様にして比較例5のインクジェット記録材料を得た。イソシアネート系化合物としては大日本インキ化学工業(株)製CR−60Nを使用した。
【0061】
比較例6
比較例3のエポキシ系化合物をグリオキザールに替えた以外は比較例3と同様にして比較例6のインクジェット記録材料を得た。
【0062】
上記のようにして作製したインクジェット記録材について下記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0063】
<白紙部光沢>
記録材料の印字前の白紙部光沢感を斜光で観察し、下記の基準で評価した。
○:カラー写真並の高い光沢感がある。
△:アート、コート紙並の光沢感がある。
×:上質紙並の沈んだ光沢感がある。
【0064】
<白紙部の高湿ひび割れ>
未印字の記録材料を40℃、85%RHの雰囲気で48時間放置後、23℃50%RHで24時間放置し、インク受容層表面のひび割れを下記の基準で評価した。
◎:全くひび割れなし。
○:一部に極微細なひび割れあるが実使用で問題なし。
△:ひび割れがはっきりとある。
×:全面にひび割れ有。
【0065】
<インク吸収性>
インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、PM−880C)にてシアン、マゼンタ、イエロー単色100%と、3重色300%をそれぞれ印字して、印字直後にPPC用紙を印字部に重ねて軽く圧着し、PPC用紙に転写したインク量の程度を目視で観察した。下記の基準で総合で評価した。
◎:全く転写しない。
○:100%部分には転写がなく、300%部分にはわずかに転写がある。
△:100%部分では転写がなく、300%部分でははっきりと転写する。
×:100%部分で転写がある。実使用不可。
【0066】
<画像の経時ひび割れ>
インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、MC2000)にてシアン、マゼンタ、イエロー、ブルー(シアン+マゼンタ)、グリーン(シアン+イエロー)、レッド(マゼンタ+イエロー)の各色をインク吐出量を0%〜maxまでのグラデーションパターンにして印字したシートを市販の写真用アルバムの中に入れ、23℃50%RHの環境で静置し、一ヶ月放置後に印字面のひび割れを下記の基準で目視にて評価した。
◎:全くひび割れなし。
○:一部に極微細なひび割れあるが実使用で問題なし。
△:ひび割れがはっきりとある。
×:全面にひび割れ有。
【0067】
【表1】
【0068】
上記結果から、本発明によれば高い光沢で、高湿下でのひび割れがなく、また、経時での画像のひび割れのないインクジェット記録材料が得られる。また、メチロールアミノ系化合物を含有することによりインク吸収性も向上しており、インク吸収性も優れたインクジェット記録材料が得られる。
【0069】
【発明の効果】
上記結果から明らかなように、本発明によれば、高い光沢でインク吸収性に優れ、更に高湿下でのひび割れ、及び経時での画像のひび割れのないインクジェット用記録材料が得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット用記録材料に関し、更に詳しくは、高い光沢でインク吸収性に優れ、更に高湿下でのひび割れ、及び経時での画像のひび割れが改良されたインクジェット用記録材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式に使用される記録材料として、通常の紙やインクジェット記録用紙と称される支持体上に非晶質シリカ等の顔料をポリビニルアルコール等の水溶性バインダーからなる多孔質のインク吸収層を設けてなる記録材料が知られている。
【0003】
例えば、特開昭55−51583号、同昭56−157号、同昭57−107879号、同昭57−107880号、同昭59−230787号、同昭62−160277号、同昭62−184879号、同昭62−183382号、及び同昭64−11877号公報等に開示のごとく、シリカ等の含珪素顔料を水系バインダーと共に紙支持体に塗布して得られる記録材料が提案されている。また、特開平9−286165号、同平10−181190号公報には、沈降法シリカ凝集体を機械的手段で10〜300nmに粉砕したシリカ微粒子を用いることが開示されている(特許文献1、2)。
【0004】
一方、フォトライクの記録シートが要望される中、益々光沢性が重要視されてきており、ポリオレフィン樹脂被覆紙(紙の両面にポリエチレン等のポリオレフィン樹脂をラミネートしたもの)やポリエステルフィルム等の耐水性支持体上に超微粒子シリカ(例えば、前記湿式粉砕シリカ)を主体とするインク受容層が塗設された記録材料が提案されている。
【0005】
しかしながら、耐水性支持体に湿式粉砕シリカのような無機微粒子を多量に塗布し、バインダーの比率が低い多孔質記録材料は、記録材料を高湿の環境で保管する場合や、水が掛かった場合には未印字の記録材料表面にひび割れが発生する問題や、印字画像の経時でのひび割れが発生しやすいという問題を有している。
【0006】
また一方では、無機微粒子とポリビニルアルコール等の親水性バインターからなるインク受容層に架橋剤を含有させることが知られている。例えば、特開平9−22139号、特開2001−146068号公報等である。(特許文献3、4)。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−286165号公報(第2頁〜第5頁)
【特許文献2】
特開平10−181190号公報(第2頁〜第4頁)
【特許文献3】
特開平9−22139号公報(第2頁〜第5頁)
【特許文献4】
特開2001−146068号公報(第2頁〜第5頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高光沢性と高いインク吸収性を有し、高湿下でのひび割れ、経時での画像ひび割れが改良されたインクジェット用記録材料を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について種々検討した結果、主として下記の手段により本発明の目的が達成された。
【0010】
(1)支持体上に1層以上のインク受容層を有するインクジェット用記録材料において、該インクジェット用記録材料が、該インク受容層が湿式粉砕シリカを主体に含有しており、かつホウ酸またはホウ酸塩及びメチロールアミノ系化合物を合わせて含有していることを特徴とするインクジェット用記録材料。
【0011】
(2)前記インク受容層の湿式粉砕シリカが、5μm以上の平均二次粒子径を有する沈降法シリカを、カチオン性化合物の存在下、水性媒体中でメディアミルを使用して平均粒子径500nm以下に粉砕した微粒子である(1)に記載のインクジェット用記録材料。
【0012】
(3)前記メチロールアミノ系化合物がメチロールメラミン系化合物である(1)または(2)に記載のインクジェット用記録材料。
【0013】
(4)前記支持体が耐水性支持体である(1)〜(3)の何れか1項に記載のインクジェット用記録材料。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる支持体としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、セロファン、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のフィルム、樹脂被覆紙等の耐水性支持体、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗被紙等の吸水性支持体等が用いられる。好ましくは耐水性支持体が用いられる。特にこれらの支持体の厚みは、約50〜250μm程度のものが好ましく使用される。
【0015】
非晶質合成シリカは、製造法によって気相法シリカ、湿式法シリカ、及びその他に大別することができる。湿式法シリカは、さらに製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。沈降法シリカは珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の行程を経て製品化される。この方法で製造されたシリカ二次粒子は緩やかな凝集粒子となり、比較的粉砕し易い粒子が得られる。沈降法シリカとしては、例えば日本シリカ(株)からニップシールとして、(株)トクヤマからトクシール、ファインシールとして市販されている。ゲル法シリカは珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造する。この場合、熟成中に小さなシリカ粒子が溶解し、大きな粒子の一次粒子間に一次粒子どうしを結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。例えば、水澤化学(株)からミズカシルとして、グレースジャパン(株)からサイロジェットとして市販さている。ゾル法シリカは、コロイダルシリカとも呼ばれ、ケイ酸ソーダの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られ、例えば日産化学工業(株)からスノーテックスとして市販されている。
【0016】
本発明のインク受容層には湿式粉砕シリカを主体に含有する。好ましくは平均粒子径が500nm以下になるまで粉砕された沈降法シリカを主体に含有していることであり、更に平均粒子径300nm以下になるまで粉砕された沈降法シリカを主体に含有していることがより好ましい。ここで主体に含有するとはインク受容層の全固形分に対して50質量%以上含有することであり、好ましくは60質量%以上であり、更に65質量%以上含有することがより好ましい。通常の方法で製造された沈降法シリカは、1μm以上の平均二次粒子径を有するため、これを微粉砕して使用する。粉砕方法としては、水性媒体中に分散したシリカを機械的に粉砕する湿式分散法が好ましく使用できる。湿式分散機としては、ボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜施回型分散機等を使用することができるが、本発明では特にビーズミル等のメディアミルの使用が好ましい。
【0017】
本発明の沈降法シリカの粉砕は、カチオン性化合物の存在下で行うことが好ましい。水中に分散されたシリカにカチオン性化合物を添加すると凝集物が発生することが多いが、これを粉砕処理することによって、水のみに分散するよりも高濃度分散が可能となり、その結果分散効率が上昇し、より微粒子に粉砕することができる。更に、高濃度分散液を使用することによって、塗布液調製時に塗布液の高濃度化が可能になり、生産効率が向上する等の利点がある。特にこの際平均二次粒子径が5μm以上の沈降法シリカを使用すると、初期の凝集物発生による粘度上昇が抑制され、より高濃度での分散が可能となるため、さらに有利である。平均二次粒子径の上限は特にないが、通常沈降法シリカの平均二次粒子径は200μm以下である。
【0018】
カチオン性化合物としては、カチオン性ポリマーまたは水溶性金属化合物を使用できる。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、特開昭59−20696号、同昭59−33176号、同昭59−33177号、同昭59−155088号、同昭60−11389号、同昭60−49990号、同昭60−83882号、同昭60−109894号、同昭62−198493号、同昭63−49478号、同昭63−115780号、同昭63−280681号、同平1−40371号、同平6−234268号、同平7−125411号、同平10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。特に、カチオン性ポリマーとしてジアリルアミン誘導体が好ましく用いられる。これらのカチオンポリマーの分子量は、2,000〜10万程度が好ましく、特に2,000〜3万程度が好ましい。分子量が10万よりも大きくなると、分散液が高粘度となりすぎるため好ましくない。
【0019】
水溶性金属化合物としては、例えば水溶性の多価金属塩が挙げられる。カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、チタン、ジルコニウム、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)ニ水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、p−フェノールスルホン酸亜鉛、塩化チタン、硫酸チタン、乳酸チタン、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸二十六水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等が挙げられる。
【0020】
上記の水溶性多価金属化合物の中でも、アルミニウムもしくは周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)からなる化合物が好ましい。特に好ましくは水溶性アルミニウム化合物である。水溶性アルミニウム化合物としては、例えば無機塩としては塩化アルミニウムまたはその水和物、硫酸アルミニウムまたはその水和物、アンモニウムミョウバン等が知られている。さらに、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が知られており、好ましく用いられる。
【0021】
本発明に用いられる周期表4A族元素を含む水溶性化合物としては、チタンまたはジルコニウムを含む水溶性化合物がより好ましい。チタンを含む水溶性化合物としては、塩化チタン、硫酸チタンが挙げられる。ジルコニウムを含む水溶性化合物としては、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム化合物等が挙げられる。本発明に於いて、水溶性とは常温常圧下で水に1重量%以上溶解することを目安とする。
【0022】
本発明の平均二次粒子径が500nm以下の沈降法シリカ微粒子を得る具体的な方法としては、まず水中にシリカ及びカチオン性ポリマー及び/またはカチオン性金属化合物の少なくとも1種を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機、プロペラ羽根型分散機、またはローターステーター型分散機等の分散装置の少なくとも1つを用いて予備分散液を得る。必要であれば更に適度の低沸点溶剤等を添加してもよい。カチオン性ポリマーまたは水溶性金属化合物の量は、シリカに対して0.5〜20質量%、好ましくは2〜10質量%である。この範囲にすることによって、シリカ予備分散液の粘度が高くなりすぎず、固形分濃度を高くする事ができる。本発明のシリカ予備分散物の固形分濃度は高いほうが好ましいが、あまり高濃度になると分散不可能となるため、好ましい範囲としては20〜60質量%、より好ましくは30〜50質量%である。
【0023】
上記の方法で得られたシリカ予備分散物をビーズミルで粉砕処理する。ビーズミルとは、内部に撹拌装置を有する容器中にビーズを内填し、容器中に液状物を入れて撹拌装置を回転させてビーズ同士を衝突させることで液状物にせん断力を与えて処理する装置である。ビーズの粒径は0.1〜10mmが一般的であるが、好ましくは0.2〜1mm、より好ましくは0.3〜0.6mmである。ビーズにはガラスビーズ、セラミックスビーズ、金属ビーズ等があるが、耐摩耗性及び分散効率からはジルコニアビーズが好ましい。また、容器中のビーズの添加充填率は一般的には40〜80容量%であり、好ましくは55〜80容量%である。上記分散条件によって、シリカ分散物を効率良く、粗粒残存や凝集物発生もなく、平均二次粒子径が500nm以下に粉砕することが可能である。予備分散物を連続で処理する場合で通し回数が1回では粗粒が残りやすい場合には、2回以上処理するほうが好ましい。本発明では粗粒が出来ない範囲で濃度が高い方が、塗布液の高濃度化が可能になり好ましい。本発明のシリカ分散物の固形分濃度の好ましい範囲としては20〜60質量%、より好ましくは30〜50質量%である。市販のビーズミルとしては浅田鉄工社製のナノミル、アイメックス社製のウルトラビスコミル、及びマツボー社製のアミュラー型OBミル、シンマルエンタープライゼス社製のダイノミル等が挙げられる。
【0024】
本発明において、インク受容層で湿式粉砕シリカ微粒子とともに用いられる親水性バインダーとしては、公知の各種バインダーを用いることができるが、透明性が高くインクのより高い浸透性が得られる親水性バインダーが好ましく用いられる。親水性バインダーの使用に当たっては、親水性バインダーがインクの初期の浸透時に膨潤して空隙を塞いでしまわないことが重要であり、この観点から比較的室温付近で膨潤性の低い親水性バインダーが好ましく用いられる。特に好ましい親水性バインダーは完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。
【0025】
ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したものである。平均重合度200〜5000のものが好ましい。
【0026】
また、カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールである。
【0027】
本発明のインク受容層において、湿式粉砕シリカと親水性バインダーの含有比率(質量比)は、好ましくは70:30〜95:5であり、さらに好ましくは80:20〜92:8である。上記範囲にすることによって、高いインク吸収性と表面光沢が得られる。また、本発明のインク受容層において、ポリビニルアルコールに対する、ホウ酸またはホウ酸塩の含有率は、0.02〜50質量%で、特に0.5〜35質量%が好ましい。
【0028】
本発明では、湿式粉砕シリカを主体に含有するインク受容層にメチロールアミノ系化合物を含有する。本発明でメチロールアミノ系化合物とは、メチロールアミノ系のモノマーを構成単位として、単体または複数個重合した化合物であり、アルキル化メチロールアミノ系化合物等の変性されたメチロールアミノ系化合物も含まれる。メチロールアミノ系化合物としては、メチロールメラミン系化合物、メチロール尿素系化合物等が使用される。具体例としては、住友化学社製のスミレーズレジン613、8%AC、607syrup等、大日本インキ化学工業製のベッカミンPM−N、ベッカミンJ−101等のメラミン系化合物、スミレーズレジン302、636、703、712、EU等の尿素系化合物等が挙げられ、それらの中から1種以上が使用される。本発明の画像の経時ひび割れ防止効果からはメチロールメラミン系化合物が好ましく使用される。インク受容層へ添加する場合の添加量は、ポリビニルアルコールの固形分に対して0.3〜50質量%であり、好ましくは0.5〜30質量%である。
【0029】
本発明では、インクジェット用記録材料を構成する少なくとも1層、好ましくは少なくとも1層のインク受容層にホウ酸またはホウ酸塩を含有する。ホウ酸塩としては、オルトホウ酸塩、メタホウ酸塩、二ホウ酸塩、四ホウ酸塩、五ホウ酸塩等が挙げられる。これらホウ酸またはホウ酸塩を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。インク受容層へ添加する場合の添加量は、ポリビニルアルコールの固形分に対して0.5〜50質量%、好ましくは1〜40質量%である。
【0030】
インク受容層の乾燥塗布量の範囲は、8〜40g/m2であり、好ましくは10〜30g/m2である。この範囲は、インク吸収性、表面光沢、耐折り割れ性(記録材料を取り扱い際に曲率を高くしてしまった場合に生じてしまう塗層のひび割れ)の面で好ましい。
【0031】
本発明のインク受容層各層は、耐水性改良目的等で更にカチオン性化合物を含有するのが好ましい。カチオン性化合物の例としては、沈降法シリカの粉砕の説明で挙げたカチオン性ポリマー、及び水溶性金属化合物が挙げられる。特に、分子量5,000〜10万程度のカチオン性ポリマー、及びアルミニウムもしくは周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)からなる化合物が好ましい。カチオン性化合物は一種類を使用しても、複数の化合物を併用しても良い。
【0032】
本発明において、インク受容層には、更に、界面活性剤、硬膜剤の他に着色染料、着色顔料、インク染料の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0033】
本発明において、インク受容層は、湿式粉砕シリカを主体とするインク受容層以外に層を設けてもよいが、その場合にはインク浸透性を損なわない層であることが必要である。例えば、耐傷性を改良する目的で、インク受容層上にコロイダルシリカを主体とした保護層をインク吸収性を低下させない程度、固形分で5g/m2程度以下で設けても良い。コロイダルシリカの一般的な一次粒子の平均粒径は5〜100nm程度であり、平均粒径が10〜500nm程度の二次粒子を形成しているほうがインク吸収性からは好ましい。市販の球状のものとして日産化学工業社製、スノーテックス20等、触媒化成工業社製、カタロイドUSB等が挙げられ、鎖状のものとして日産化学社製、スノーテックスUP等が挙げられ、パールネックレス状のものとして日産化学社製、スノーテックスPS−M等が使用出来る。また、コロイダルシリカの表面がカチオン性に修飾されたコロイダルシリカも好ましく使用でき、なかでもアルミニウム化合物により表面をカチオン性に修飾されていることが好ましい。アルミナ修飾コロイダルシリカとしては日産化学工業社製、スノーテックスAK−L、スノーテックスAK−UP、スノーテックスPS−M−AK等が挙げられる。
【0034】
本発明のインクジェット用記録材料の製造方法は、記録材料を構成する層が、例えば下塗り層、インク受容層、および保護層を有する場合には、少なくともいずれかの層中に湿式粉砕シリカ、ホウ酸またはホウ酸塩、ポリビニルアルコール、及びメチロールアミノ系化合物を含有させてもよいが、少なくとも1層のインク受容層が湿式粉砕シリカ、ホウ酸またはホウ酸塩、ポリビニルアルコール、及びメチロールアミノ系化合物をあわせて含有する1層以上のインク受容層用の塗布液を耐水性支持体上に塗布、乾燥してインク受容層を形成する方法が一般的である。メチロールアミノ系化合物の活性劣化防止や液性の経時変化防止からは、湿式粉砕シリカ、ホウ酸またはホウ酸塩、及びポリビニルアルコールを含有するインク受容層用の塗布液とメチロールアミノ系化合物含有液を同時に塗布する方法、メチロールアミノ系化合物を除いたインク受容層用の塗布液を塗布、乾燥した後でメチロールアミノ系化合物含有液を塗布する方法、またはメチロールアミノ系化合物を除いたインク受容層用の主液に塗布直前にメチロールアミノ系化合物含有液を添加し、混合後に塗布する方法が好ましく、特にインク受容層用の主液を送液中のインラインでメチロールアミノ系化合物含有液を添加し、混合する方法が、画像の経時ひび割れがより向上するので好ましい。その理由としてはメチロールアミノ系化合物の活性劣化が少なく、塗布液中に均一混合されるのでメチロールアミノ系化合物とポリビニルアルコールや湿式粉砕シリカとの結合数が多くなり、強くなるためと推測される。ここで塗布直前とは一般的に塗布する数分前から数秒前である。2液を添加後に使用する混合装置としては、例えばインラインミキサー、スタチックミキサー等がKenics社、Sulger社、晃立社、東レ社より市販されている装置が使用出来る。
【0035】
本発明では、インク受容層用の、湿式粉砕シリカ、ホウ酸またはホウ酸塩、ポリビニルアルコール、およびメチロールアミノ系化合物を含有する塗布液のpHは、特に限定されないが、3〜6、好ましくは3〜5.5とすることで印字画像の経時でのひび割れが更に良化する。塗布液のpH調整は、酸またはアルカリを適当に組み合わせて行われる。酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、コハク酸等の有機酸が用いられ、アルカリとしては、水酸化ナトリウム、アンモニア水、炭酸カリウム、リン酸三ナトリウム、または弱アルカリとして、酢酸ナトリウム等の弱酸のアルカリ金属塩が用いられる。
【0036】
本発明により印字画像の経時でのひび割れが改良される理由は不明であるが、インク受容層に各材料を添加する場合について以下の推測を記載する。即ち、記録材料のインク受容層中のポリビニルアルコール同士の水素結合や、無機微粒子とポリビニルアルコールとの結合が、印字することでインク中の水や有機溶剤により結合力が弱くなってひび割れが発生しやすくなっているが、メチロールアミノ系化合物、および含ホウ素化合物を併用することで、ポリビニルアルコールの水酸基や無機微粒子の活性基との結合、またはそれらの結合を促進することで結合の阻害を抑えると推測され、メチロールアミノ系化合物、および含ホウ素化合物に加えて更に水溶性金属化合物が存在することにより、それらの結合数が増加し、結合力が更に強化されることにより、空気中やインク中の水等の溶剤により結合力が低下せず、温度や湿度が変化しても画像にひび割れが発生しにくくなると推測される。特にメチロールアミノ系化合物としてはメチロールメラミン系化合物が好ましく、更にインク受容層用の塗布液のpHを3.5〜5.5とし、インク受容層に加温処理等で40℃以上の温度をかけることでメチロール基とポリビニルアルコールや無機微粒子の活性基との反応性が上がり、インク受容層の未印字部の高湿ひび割れや画像の経時ひび割れが良化すると推測される。
【0037】
本発明のインク受容層には、画像の耐水性を改良するためにカチオン性ポリマーを含有させてもよい。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、特開昭59−20696号、同59−33176号、同59−33177号、同59−155088号、同60−11389号、同60−49990号、同60−83882号、同60−109894号、同62−198493号、同63−49478号、同63−115780号、同63−280681号、特開平1−40371号、同6−234268号、同7−125411号、同10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。これらのカチオンポリマーの分子量は、5,000以上が好ましく、更に5,000〜10万程度が好ましい。
【0038】
これらのカチオン性ポリマーの使用量は画像のひび割れからは少ない方が好ましく、無機微粒子に対して1〜7質量%、好ましくは2〜5質量%である。
【0039】
本発明において、インク受容層には更に、界面活性剤、着色染料、着色顔料、インク染料の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐水化剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0040】
本発明のインク受容層には、更に皮膜の脆弱性を改良するために各種油滴を含有することができる。そのような油滴としては室温における水に対する溶解性が0.01質量%以下の疎水性高沸点有機溶媒(例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等)や重合体粒子(例えば、スチレン、ブチルアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等の重合性モノマーを一種以上重合させた粒子)を含有させることができる。そのような油滴は好ましくは親水性バインダーに対して10〜50質量%の範囲で用いることができる。
【0041】
本発明において、インク受容層を構成している各層の塗布方法は、公知の塗布方法を用いることができる。例えば、スライドビード方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、エアナイフ方式、ロールコーティング方式、ケッドバーコーティング方式等がある。
【0042】
フィルム支持体、樹脂被覆紙にインク受容層の塗布液を塗布する場合、塗布に先立って、好ましくはコロナ放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、プラズマ処理等が行われる。
【0043】
本発明は、支持体、特に耐水性支持体であるフィルムや樹脂被覆紙を使用する場合には、インク受容層を設ける面上に天然高分子化合物や合成樹脂を主体とするプライマー層を設けるのが好ましい。該プライマー層の上に、本発明の無機微粒子含有のインク受容層を塗布した後、冷却し、比較的低温で乾燥することによって、更にインク受容層の透明性が向上する。
【0044】
支持体上に設けられるプライマー層はゼラチン、カゼイン等の天然高分子化合物や合成樹脂を主体とする。係る合成樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニリデン、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0045】
上記プライマー層は、支持体上に0.01〜5μmの膜厚(乾燥膜厚)で設けられる。好ましくは0.05〜5μmの範囲である。
【0046】
本発明における支持体には筆記性、帯電防止性、搬送性、カール防止性などのために、各種のバックコート層を塗設することができる。バックコート層には無機帯電防止剤、有機帯電防止剤、親水性バインダー、ラテックス、顔料、硬化剤、界面活性剤などを適宜組み合わせて含有せしめることができる。
【0047】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。尚、部及び%は質量部、質量%を示す。
【0048】
実施例1
<ポリオレフィン樹脂被覆紙支持体の作製>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)の1:1混合物をカナディアン スタンダード フリーネスで300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5重量%、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1.0重量%、カチオン化澱粉を対パルプ2.0重量%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5重量%添加し、水で希釈して1%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量170g/m2になるように抄造し、乾燥調湿してポリオレフィン樹脂被覆紙の原紙とした。抄造した原紙に、密度0.918g/cm3の低密度ポリエチレン100重量%の樹脂に対して、10重量%のアナターゼ型チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、200m/分で厚さ35μmになるように押出コーティングし、微粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した。もう一方の面には密度0.962g/cm3の高密度ポリエチレン樹脂70重量部と密度0.918の低密度ポリエチレン樹脂30重量部のブレンド樹脂組成物を同様に320℃で溶融し、厚さ30μmになるように押出コーティングし、粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した。
【0049】
上記ポリオレフィン樹脂被覆紙表面に高周波コロナ放電処理を施した後、下記組成の下引き層をゼラチンが50mg/m2となるように塗布乾燥して支持体を作製した。
【0050】
<下引き層>
石灰処理ゼラチン 100部
スルフォコハク酸−2−エチルヘキシルエステル塩 2部
クロム明ばん 10部
【0051】
<シリカ分散液1の作製>
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9,000、4部)と沈降法シリカ(ニップシールVN3、平均二次粒径23μm、100部)を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機(ブレード周速30m/秒)を使用して予備分散液を作製した。次に得られた予備分散物をビーズミルに、直径0.3mmのジルコニアビーズ、充填率80容量%、円盤周速10m/秒の条件で1回通過させて、固形分濃度30質量%、平均二次粒子径200nmのシリカ分散液1を得た。
【0052】
前記支持体に下記組成のインク受容層塗布液を、乾燥塗布量が22g/m2になるように、スライドビード塗布装置で塗布し、乾燥することにより実施例1のインクジェット記録材料を得た。
【0053】
<インク受容層塗布液>
シリカ分散液1 104部
ほう酸 3部
ポリビニルアルコール 15部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
界面活性剤 0.3部
メチロールメラミン系化合物
(大日本インキ化学工業(株)製ベッカミンPM−N) 3部
【0054】
実施例2
実施例1のメチロールメラミン系化合物の添加量を1部に変更した以外は実施例1と同様にして実施例2のインクジェット記録材料を得た。
【0055】
実施例3
実施例1のメチロールメラミン系化合物を住友化学社製、スミレーズレジン613に変更した以外は実施例1と同様にして実施例3のインクジェット記録材料を得た。
【0056】
比較例1
実施例1からメチロールメラミン系化合物を抜いた以外は実施例1と同様にして比較例1のインクジェット記録材料を得た。
【0057】
比較例2
比較例1からホウ酸を抜いた以外は比較例1と同様にして塗布乾燥を行ったが乾燥時にひび割れが生じてしまいインクジェット記録材料を得られなかった。
【0058】
比較例3
実施例1からメチロールメラミン系化合物を抜き、替わりにエポキシ系化合物を3部添加して比較例3のインクジェット記録材料を得た。エポキシ系架橋剤としてはナガセ化成工業(株)製デナコールEX421を使用した。
【0059】
比較例4
比較例3のエポキシ系化合物の添加量を10部とした以外は比較例3と同様にして比較例4のインクジェット記録材料を得た。
【0060】
比較例5
比較例3のエポキシ系化合物をイソシアネート系化合物に替えた以外は比較例3と同様にして比較例5のインクジェット記録材料を得た。イソシアネート系化合物としては大日本インキ化学工業(株)製CR−60Nを使用した。
【0061】
比較例6
比較例3のエポキシ系化合物をグリオキザールに替えた以外は比較例3と同様にして比較例6のインクジェット記録材料を得た。
【0062】
上記のようにして作製したインクジェット記録材について下記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0063】
<白紙部光沢>
記録材料の印字前の白紙部光沢感を斜光で観察し、下記の基準で評価した。
○:カラー写真並の高い光沢感がある。
△:アート、コート紙並の光沢感がある。
×:上質紙並の沈んだ光沢感がある。
【0064】
<白紙部の高湿ひび割れ>
未印字の記録材料を40℃、85%RHの雰囲気で48時間放置後、23℃50%RHで24時間放置し、インク受容層表面のひび割れを下記の基準で評価した。
◎:全くひび割れなし。
○:一部に極微細なひび割れあるが実使用で問題なし。
△:ひび割れがはっきりとある。
×:全面にひび割れ有。
【0065】
<インク吸収性>
インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、PM−880C)にてシアン、マゼンタ、イエロー単色100%と、3重色300%をそれぞれ印字して、印字直後にPPC用紙を印字部に重ねて軽く圧着し、PPC用紙に転写したインク量の程度を目視で観察した。下記の基準で総合で評価した。
◎:全く転写しない。
○:100%部分には転写がなく、300%部分にはわずかに転写がある。
△:100%部分では転写がなく、300%部分でははっきりと転写する。
×:100%部分で転写がある。実使用不可。
【0066】
<画像の経時ひび割れ>
インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、MC2000)にてシアン、マゼンタ、イエロー、ブルー(シアン+マゼンタ)、グリーン(シアン+イエロー)、レッド(マゼンタ+イエロー)の各色をインク吐出量を0%〜maxまでのグラデーションパターンにして印字したシートを市販の写真用アルバムの中に入れ、23℃50%RHの環境で静置し、一ヶ月放置後に印字面のひび割れを下記の基準で目視にて評価した。
◎:全くひび割れなし。
○:一部に極微細なひび割れあるが実使用で問題なし。
△:ひび割れがはっきりとある。
×:全面にひび割れ有。
【0067】
【表1】
【0068】
上記結果から、本発明によれば高い光沢で、高湿下でのひび割れがなく、また、経時での画像のひび割れのないインクジェット記録材料が得られる。また、メチロールアミノ系化合物を含有することによりインク吸収性も向上しており、インク吸収性も優れたインクジェット記録材料が得られる。
【0069】
【発明の効果】
上記結果から明らかなように、本発明によれば、高い光沢でインク吸収性に優れ、更に高湿下でのひび割れ、及び経時での画像のひび割れのないインクジェット用記録材料が得られる。
Claims (4)
- 支持体上に無機微粒子と親水性バインダーを含有するインク受容層を少なくとも1層以上塗設したインクジェット用記録材料において、該インク受容層が湿式粉砕シリカを主体に含有しており、かつホウ酸またはホウ酸塩及びメチロールアミノ系化合物を合わせて含有していることを特徴とするインクジェット用記録材料。
- 前記インク受容層の湿式粉砕シリカが、5μm以上の平均二次粒子径を有する沈降法シリカを、カチオン性化合物の存在下、水性媒体中でメディアミルを使用して平均粒子径500nm以下に粉砕した微粒子である請求項1に記載のインクジェット用記録材料。
- 前記メチロールアミノ系化合物がメチロールメラミン系化合物である請求項1または2に記載のインクジェット用記録材料。
- 前記支持体が耐水性支持体である請求項1〜3の何れか1項に記載のインクジェット用記録材料。
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2003
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