JP2004243740A - インクジェット用記録材料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】5μm以上の平均二次粒子径を有する沈降法シリカを、カチオン性化合物の存在下、水性媒体中でメディアミルを使用して平均二次粒子径400nm以下に微粉砕した粒子、ほう酸またはほう酸塩、及び該粒子に対して20質量%未満のポリビニルアルコールを含有する多孔質のインク受容層を有するインクジェット用記録材料において、ヒドラジン誘導体を含有することを特徴とするインクジェット用記録材料。
【選択図】 なし。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット用記録材料に関し、更に詳しくは、フォトライクな高い光沢を有し、インク吸収性に優れ、且つ印字画像の保存性が改良されたインクジェット用記録材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式に使用される記録材料として、通常の紙やインクジェット用記録用紙と称される支持体上に非晶質シリカ等の顔料をポリビニルアルコール等の水溶性バインダーからなる多孔質のインク吸収層を設けてなる記録材料が知られている。
【0003】
近年、フォトライクな光沢を有する記録材料として、気相法シリカのような超微粒子、あるいは数百nm程度まで粉砕した湿式法シリカをインク受容層の無機微粒子として用いることが提案されている。例えば、特公平3−56552号、特開平10−119423号、同2000−211235号、同2000−309157号公報に気相法シリカの使用例が、特開平9−286165号、同平10−181190号公報に粉砕沈降法シリカの使用例が開示されている(特許文献1)。しかしながら、本発明が目的とする高いレベルの光沢とインク吸収性を同時に満足させ、且つ印字画像の保存性を十分に向上させるまでには至っていなかった。
【0004】
ここで、印字画像の保存性とは、光による変色、あるいは空気中のオゾンや窒素酸化物等の微量ガスによる変色に対して抵抗性があることを云う。以降、前者を耐光性、後者を耐ガス性という。これらの耐光性や耐ガス性を向上させるために、特定の化合物、例えばヒドラジン誘導体をインク受容層に含有させることが知られている(特許文献2、3)。しかしながら、これらの文献に記載されている記録材料では、前述したように高いレベルの光沢とインク吸収性を同時に満足させ、且つ印字画像の保存性を十分に向上させるまでには至っていなかった。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−181190号公報(第2頁〜第4頁)
【特許文献2】
特開2002−321447号公報(第4頁〜第8頁)
【特許文献3】
特開2002−337448号公報(第4頁〜第6頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、フォトライクな高い光沢を有し、発色性に優れ、且つ印字画像の保存性が改良されたインクジェット用記録材料を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、5μm以上の平均二次粒子径を有する沈降法シリカを、カチオン性化合物の存在下、水性媒体中でメディアミルを使用して平均二次粒子径400nm以下に微粉砕した粒子、ほう酸またはほう酸塩、及び該粒子に対して20質量%未満のポリビニルアルコールを含有する多孔質のインク受容層を有するインクジェット用記録材料において、ヒドラジン誘導体を含有することを特徴とするインクジェット用記録材料によって達成された。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。非晶質合成シリカは、製造法によって湿式法シリカ、気相法シリカ、及びその他に大別することができる。湿式法シリカは、さらに製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。沈降法シリカは珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の行程を経て製品化される。沈降法シリカとしては、例えば日本シリカ(株)からニップシールとして、(株)トクヤマからトクシール、ファインシールとして市販されている。ゲル法シリカは珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造する。この場合、熟成中に微小粒子が溶解し、比較的大きな一次粒子間に一次粒子どうしを結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。例えば、水澤化学(株)からミズカシルとして、グレースジャパン(株)からサイロジェットとして市販さている。ゾル法シリカは、コロイダルシリカとも呼ばれ、ケイ酸ソーダの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られ、例えば日産化学(株)からスノーテックスとして市販されている。
【0009】
気相法シリカは、乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって製造される。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られており、日本アエロジル(株)からアエロジル、トクヤマ(株)からQSタイプとして市販されている。
【0010】
本発明のインク受容層には5μm以上の平均二次粒子径を有する沈降法シリカを、カチオン性化合物の存在下、水性媒体中でメディアミルを使用して平均二次粒子径400nm以下に微粉砕した粒子を含有する。メディアミルとしてはボールミル、遊星型ボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等が挙げられるが、特にビーズミルが好ましく使用できる。
【0011】
水中でシリカとカチオン性化合物を混合すると凝集物を生成することが多いが、これを粉砕処理することによって、水のみにシリカを分散するよりも高濃度分散が可能となり、その結果分散効率が上昇し、より微粒子に粉砕することができる。更に高濃度分散液を使用することによって、塗布液調製時に塗布液の高濃度化が可能になり、生産効率が向上する等の利点がある。この際平均二次粒子径が5μm以上の沈降法シリカを使用することによって、初期の凝集物発生による粘度上昇が抑制され、より高濃度分散が可能となるため有利である。平均二次粒子径の上限は特に無いが、通常沈降法シリカの平均二次粒子径は200μm以下である。
【0012】
カチオン性化合物としては、カチオン性ポリマーまたは水溶性金属化合物を使用できる。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、特開昭59−20696号、同昭59−33176号、同昭59−33177号、同昭59−155088号、同昭60−11389号、同昭60−49990号、同昭60−83882号、同昭60−109894号、同昭62−198493号、同昭63−49478号、同昭63−115780号、同昭63−280681号、同平1−40371号、同平6−234268号、同平7−125411号、同平10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。特に、カチオン性ポリマーとしてジアリルアミン誘導体が好ましく用いられる。分散性および分散液粘度の面で、これらのカチオンポリマーの分子量は、2,000〜10万程度が好ましく、特に2,000〜3万程度が好ましい。
【0013】
水溶性金属化合物としては、例えば水溶性の多価金属塩が挙げられる。カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、チタン、ジルコニウム、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)ニ水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、p−フェノールスルホン酸亜鉛、塩化チタン、硫酸チタン、乳酸チタン、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等が挙げられる。
【0014】
上記の水溶性多価金属化合物の中でも、アルミニウムもしくは周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)からなる化合物が好ましい。特に好ましくは水溶性アルミニウム化合物である。水溶性アルミニウム化合物としては、例えば無機塩としては塩化アルミニウムまたはその水和物、硫酸アルミニウムまたはその水和物、アンモニウムミョウバン等が知られている。さらに、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が知られており、好ましく用いられる。
【0015】
前記塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物とは、主成分が下記の一般式1、2、または3で示され、例えば[Al6(OH)15]3+、[Al8(OH)20]4+、[Al13(OH)34]5+、[Al21(OH)60]3+、等のような塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
【0016】
[Al2(OH)nCl6−n]m 一般式1
[Al(OH)3]nAlCl3 一般式2
Aln(OH)mCl(3n−m) 0<m<3n 一般式3
【0017】
これらのものは多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名で水処理剤として、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名で、また、(株)理研グリーンよりピュラケムWTの名で、また他のメーカーからも同様の目的を持って上市されており、各種グレードの物が容易に入手できる。
【0018】
本発明に用いられる周期表4A族元素を含む水溶性化合物としては、チタンまたはジルコニウムを含む水溶性化合物がより好ましい。チタンを含む水溶性化合物としては、塩化チタン、硫酸チタンが挙げられる。ジルコニウムを含む水溶性化合物としては、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム化合物等が挙げられる。本発明に於いて、水溶性とは常温常圧下で水に1質量%以上溶解することを目安とする。
【0019】
本発明の平均二次粒子径が400nm以下の沈降法シリカ微粒子を得る具体的な方法としては、まず水中にシリカ及びカチオン性ポリマー及び/またはカチオン性金属化合物の少なくとも1種を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機、プロペラ羽根型分散機、またはローターステーター型分散機等の分散装置の少なくとも1つを用いて予備分散液を得る。シリカとカチオン性ポリマー及び/またはカチオン性金属化合物の添加順序は特に限定されないが、カチオン性ポリマー及び/またはカチオン性金属化合物を水性媒体中に添加後にシリカを添加する方が凝集物発生が少ない点で好ましい。必要であれば更に適度の低沸点溶剤等を添加してもよい。カチオン性ポリマーまたは水溶性金属化合物の量は、シリカに対して0.5〜20質量%、好ましくは1〜10質量%である。この範囲にすることによって、シリカ予備分散液の粘度が高くなりすぎず、固形分濃度を高くする事ができる。本発明のシリカ予備分散物の固形分濃度は高いほうが好ましいが、あまり高濃度になると分散不可能となるため、好ましい範囲としては20〜60質量%、より好ましくは30〜50質量%である。
【0020】
上記の方法で得られたシリカ予備分散物をビーズミルで粉砕処理する。ビーズミルとは、内部に撹拌装置を有する容器中にビーズを内填し、容器中に液状物を入れて撹拌装置を回転させてビーズ同士を衝突させることで液状物にせん断力を与えて処理する装置である。ビーズの粒径は0.1〜10mmが一般的であるが、好ましくは0.2〜1mm、より好ましくは0.3〜0.6mmである。ビーズにはガラスビーズ、セラミックスビーズ、金属ビーズ等が有るが、耐摩耗性及び分散効率からはジルコニアビーズが好ましい。また、容器中のビーズの添加充填率は一般的には40〜80容量%であり、好ましくは55〜80容量%である。上記分散条件によって、シリカ分散物を効率良く、粗粒残存や凝集物発生もなく、平均二次粒子径が400nm以下に粉砕することが可能である。予備分散物を連続で処理する場合で通し回数が1回では粗粒が残りやすい場合には、2回以上処理するほうが好ましい。本発明では粗粒が出来ない範囲で濃度が高い方が、塗布液の高濃度化が可能になり好ましい。本発明のシリカ分散物の固形分濃度の好ましい範囲としては20〜60質量%、より好ましくは30〜50質量%である。市販のビーズミルとしては浅田鉄工社製のナノミル、アイメックス社製のウルトラビスコミル、及びマツボー社製のアミュラー型OBミル、シンマルエンタープライゼス社製のダイノミル等が挙げられる。
【0021】
本発明では無機微粒子とともにポリビニルアルコールをバインダーとして使用する。ポリビニルアルコールは透明性が高く、比較的室温付近での膨潤性が低いため膨潤によるインク吸収阻害が少ないなどの特徴がある。好ましくは、完全または部分ケン化のポリビニルアルコール、またはカチオン変性ポリビニルアルコールである。特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したものである。平均重合度200〜5000のものが好ましい。
【0022】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールである。
【0023】
また、塗布性、膜物性、インク吸収性等を改良するためにポリビニルアルコールと他の親水性バインダー或いは疎水性バインダーを併用しても良い。この場合、他の親水性バインダー或いは疎水性バインダーの含有量はポリビニルアルコールに対して20質量%以下が好ましい。
【0024】
本発明は、ポリビニルアルコールの架橋剤としてほう酸またはほう酸塩を含有する。本発明で使用されるほう酸は、オルトほう酸、メタほう酸、次ほう酸等が、ほう酸塩としてはそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。好ましくは、ほう酸およびほう砂である。
【0025】
また、ほう酸またはほう酸塩と他の架橋剤(硬膜剤)を併用してもよい。併用できる架橋剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル尿素)、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、米国特許第3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、同2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ムコクロル酸の如きハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体などが挙げられる。
【0026】
本発明のインク受容層において、ポリビニルアルコールの含有比率(質量比)は、沈降法シリカ微粒子の20質量%未満である。好ましくは10〜19質量%であり、特に好ましくは12〜18質量%である。また、本発明のインク受容層において、ポリビニルアルコールに対する、ほう酸またはほう酸塩の含有率は、0.02〜50質量%で、特に0.5〜35質量%が好ましい。上記範囲にすることによって、高いインク吸収性と表面光沢が得られ、且つ良好な印字画像の保存性が得られる。
【0027】
平均二次粒子径400nm以下に粉砕した沈降法シリカ微粒子を含有するインク受容層の乾燥塗布量の範囲は、8〜40g/m2であり、好ましくは10〜30g/m2である。この範囲は、インク吸収性、発色性、インク受容層の強度、及び画像の保存性の面で好ましい。
【0028】
本発明に用いられるヒドラジン誘導体は、好ましくは下記化1で表される。
【0029】
【化1】
【0030】
化1中、R1〜R4は独立して水素原子、置換もしくは未置換の脂肪族基、芳香族基、複素環基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルホニル基、スルホキシ基、ホスホリル基、イミノメチレン基等を表し、これらは連結して環を形成してもよく、またポリマーになっていてもよい。
【0031】
上記の置換基としては、例えばアルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、アミノ基、ヒドラジノ基、カルボニル基、カルバモイル基等が挙げられ、これらの置換基はさらに別の置換基を有していてもよい。
【0032】
R1〜R4の少なくとも1つに置換もしくは非置換のカルボニル基またはスルホニル基を有するヒドラジン誘導体が好ましい。特に、印字画像の保存性及びインク吸収性の面で、R1〜R4の少なくとも1つがカルバモイル基でセミカルバジド構造を有するヒドラジン誘導体、R1〜R4の少なくとも1つがヒドラジノカルボニル基でカルボヒドラジド構造を有するヒドラジン誘導体が好ましい。さらに、R1とR2がアルキル基であり、R3またはR4がカルバモイル基またはヒドラジノカルボニル基である場合がより好ましい。本発明に用いられるヒドラジン誘導体としては以下の化合物が例示される。
【0033】
【化2】
【0034】
【化3】
【0035】
【化4】
【0036】
【化5】
【0037】
本発明のヒドラジン誘導体のインクジェット用記録材料中における含有量は、0.1〜50ミリモル/m2が好ましく、0.2〜20ミリモル/m2がより好ましい。
【0038】
本発明のヒドラジン誘導体は、インクジェット用記録材料を構成するどの層に含有させてもよいが、好ましくはインク受容層中に含有させる。また、インク受容層が複数層存在する場合は、微粉砕した沈降法シリカを含有する層または他のいずれか一層に含有させてもよいし、複数層に含有させてもよい。
【0039】
本発明のヒドラジン誘導体をインク受容層に含有させる方法としては、例えば、これらの誘導体を塗工液に加える方法、予め支持体上に設けたインク受容層に、本発明の化合物を含む溶液を塗布する方法、あるいは無機微粒子のスラリーに本発明の化合物を添加した後、他の加剤を加えて塗液とし支持体に塗布する方法等がある。
【0040】
本発明では上記微粉砕した沈降法シリカ粒子、該粒子に対して20質量%未満のポリビニルアルコール、ほう酸またはほう酸塩を併用し、且つヒドラジン誘導体を含有することによって、空隙量が大きく高いインク吸収性を有し、高光沢であり、且つ保存性の良好なインクジェット用記録材料を得ることができた。
【0041】
無機微粒子を主体に含有する多孔質のインク受容層は、ポリビニルアルコール等の親水性バインダーの含有量を少なくすることによって、インク受容層中の空隙率が高くなってインク吸収容量が増大する。しかし、親水性バインダー量を低減することは、インク受容層が脆弱になり、ひび割れが起こりやすくなる。また、空隙率を高くすることは、耐ガス性を悪化させる。インク受容層にひび割れが目立つと商品価値を失い、また微細なひび割れであっても光沢を低下させる。
【0042】
しかしながら、本発明の微粉砕した沈降法シリカを主体に含有するインク受容層は、親水性バインダーであるポリビニルアルコールの量を沈降法シリカに対して20質量%未満に低減しても、ひび割れは起こらず、更にヒドラジン誘導体を併せて含有することによって耐ガス性及び耐光性が良化することが分かった。上記した意味に於いて、本発明におけるポリビニルアルコールの含有量の下限は、前述したようにシリカに対して10質量%程度である。一方、気相法シリカを主体に含有するインク受容層は、ポリビニルアルコールを気相法シリカに対して20質量%未満に低減するとひび割れが起こりやすくなり、また耐ガス性も悪化する。
【0043】
本発明のインクジェット記録材料の製造過程において、支持体上にインク受容層を塗布した後の乾燥時に、60℃を超えない温度雰囲気で乾燥することによって、更に空隙量が大きく、高光沢のインク受容層を得ることができ好ましい。比較的低温に維持することによって、ポリビニルアルコールとほう酸またはほう酸塩によって形成される構造体中に沈降法シリカ微粒子が固定された状態を維持したまま、且つ徐々に水分が蒸発するので塗膜表面が平滑に保たれたまま乾燥されるため、表面欠陥が少なく、本発明が目的とする高インク吸収性と高光沢、且つ保存性に関しても有利な空隙構造が得られると考えられる。更に、塗布されたインク受容層を一旦20℃以下の雰囲気下で冷却し、その後60℃以下の、好ましくは30〜55℃程度の雰囲気下で乾燥することが好ましい。
【0044】
また、本発明は原料の沈降法シリカが安価であること、本発明の微粉砕沈降法シリカは高濃度分散可能であるので塗布・乾燥工程の生産性が高いことなどの利点がある。
【0045】
本発明のインク受容層各層は、耐水性改良目的等で更にカチオン性化合物を含有するのが好ましい。カチオン性化合物の例としては、沈降法シリカの粉砕の説明で挙げたカチオン性ポリマー、及び水溶性金属化合物が挙げられる。特に、分子量5,000〜10万程度のカチオン性ポリマー、及びアルミニウムもしくは周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)からなる化合物が好ましい。カチオン性化合物は一種類を使用しても、複数の化合物を併用しても良い。
【0046】
本発明において、インクジェット用記録材料には、少なくとも1つの上記微粉砕沈降法シリカを含有するインク受容層に加え、さらに他の構成のインク吸収層、あるいは保護層等を設けてもよい。但し、微粉砕沈降法シリカ含有層より上に層を設ける場合にはインク吸収性を損なわない層であることが必要である。
【0047】
本発明において、各層のインク受容層には、更に、界面活性剤、硬膜剤、着色染料、着色顔料、インク染料の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0048】
本発明において、インク受容層を構成している各層の塗布方法は、公知の塗布方法を用いることができる。例えば、スライドビード方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、エアナイフ方式、ロールコーティング方式、ケッドバーコーティング方式等がある。
【0049】
本発明に用いられる支持体としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、セロファン、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のフィルム、ポリオレフィン樹脂被覆紙等の耐水性支持体、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗被紙等の吸水性支持体等が用いられる。好ましくは耐水性支持体が用いられる。耐水性支持対の中でもポリオレフィン樹脂被覆紙が好ましい。これらの支持体の厚みは、約50〜250μm程度のものが好ましく使用される。
【0050】
フィルム支持体、樹脂被覆紙にインク受容層の塗布液を塗布する場合、塗布に先立って、好ましくはコロナ放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、プラズマ処理等が行われる。
【0051】
本発明は、支持体、特に耐水性支持体であるフィルムや樹脂被覆紙を使用する場合には、インク受容層を設ける面上に天然高分子化合物や合成樹脂を主体とするプライマー層を設けるのが好ましい。該プライマー層の上に、本発明の無機微粒子含有のインク受容層を塗布した後、冷却し、比較的低温で乾燥することによって、更にインク受容層の透明性が向上する。
【0052】
支持体上に設けられるプライマー層はゼラチン、カゼイン等の天然高分子化合物や合成樹脂を主体とする。係る合成樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニリデン、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0053】
上記プライマー層は、支持体上に0.01〜5μmの膜厚(乾燥膜厚)で設けられる。好ましくは0.05〜5μmの範囲である。
【0054】
本発明における支持体には筆記性、帯電防止性、搬送性、カール防止性などのために、各種のバックコート層を塗設することができる。バックコート層には無機帯電防止剤、有機帯電防止剤、親水性バインダー、ラテックス、顔料、硬化剤、界面活性剤などを適宜組み合わせて含有せしめることができる。
【0055】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。尚、部及び%は質量部、質量%を示す。
【0056】
実施例1
<ポリオレフィン樹脂被覆紙支持体の作製>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)の1:1混合物をカナディアン スタンダード フリーネスで300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5質量%、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1.0質量%、カチオン化澱粉を対パルプ2.0質量%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5質量%添加し、水で希釈して1%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量170g/m2になるように抄造し、乾燥調湿してポリオレフィン樹脂被覆紙の原紙とした。抄造した原紙に、密度0.918g/cm3の低密度ポリエチレン100質量%の樹脂に対して、10質量%のアナターゼ型チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、200m/分で厚さ35μmになるように押出コーティングし、微粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した。もう一方の面には密度0.962g/cm3の高密度ポリエチレン樹脂70質量部と密度0.918の低密度ポリエチレン樹脂30質量部のブレンド樹脂組成物を同様に320℃で溶融し、厚さ30μmになるように押出コーティングし、粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した。
【0057】
上記ポリオレフィン樹脂被覆紙表面に高周波コロナ放電処理を施した後、下記組成の下引き層をゼラチンが50mg/m2となるように塗布乾燥して支持体を作成した。
【0058】
<下引き層>
石灰処理ゼラチン 100部
スルフォコハク酸−2−エチルヘキシルエステル塩 2部
クロム明ばん 10部
【0059】
<シリカ分散液1>
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9,000、4部)と沈降法シリカ(ニップシールVN3、平均二次粒径23μm、100部)を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機(ブレード周速30m/秒)を使用して予備分散液を作成した。次に得られた予備分散物をビーズミルに、直径0.3mmのジルコニアビーズ、充填率80容量%、円盤周速10m/秒の条件で1回通過させて、固形分濃度30質量%、平均二次粒子径200nmのシリカ分散液1を得た。
【0060】
<記録シート1>
上記支持体上に、上記シリカ分散液1と他の薬品を混合して下記組成のインク受容層用塗液を調整し、沈降法シリカの塗布量が17g/m2になるように塗布・乾燥した。塗布後の乾燥条件は、5℃で30秒間冷却後、全固形分濃度が90質量%までを45℃10%RHで乾燥し、次いで35℃10%RHで乾燥した。
【0061】
<記録シート2>
上記記録シート1の本発明の化合物(5)に代えて本発明の化合物(17)を2.5ミリモル/m2加えた。
<記録シート3>
上記記録シート1の本発明の化合物(5)に代えて本発明の化合物(18)を2.5ミリモル/m2加えた。
【0062】
<記録シート4>
上記記録シート1の本発明の化合物(5)に代えて本発明の化合物(21)を2.5ミリモル/m2加えた。
【0063】
<記録シート5>
上記記録シート1の本発明の化合物(5)に代えて本発明の化合物(25)を2.5ミリモル/m2加えた。
【0064】
<記録シート6>
上記記録シート1の本発明の化合物(5)に代えて本発明の化合物(26)を2.5ミリモル/m2加えた。
【0065】
<記録シート7>
上記記録シート1の本発明の化合物(5)を添加しなかった以外は、記録シート1と同様にして記録シート7を作成した。
【0066】
<記録シート8>
上記記録シート5からほう酸を抜いた以外は記録シート5と同様にして記録シート8を作成した。
【0067】
<記録シート9>
インク受容層塗布液1に代えて下記組成のインク受容層塗布液2を用いた以外は記録シート1と同様にして記録シート9を作成した。
【0068】
<記録シート10>
上記記録シート9の本発明の化合物(25)を添加しなかった以外は、記録シート9と同様にして記録シート10を作成した。
【0069】
<記録シート11>
<シリカ分散液2>
上記シリカ分散液1と同様に調製した予備分散液を、ジルコニアビーズの直径を0.3mmから3mmに代えてビーズミルで処理し、平均二次粒子径800nmのシリカ分散液2を得た。
【0070】
インク受容層塗布液1に代えて下記組成のインク受容層塗布液3を用いた以外は記録シート1と同様にして記録シート11を作成した。
【0071】
<記録シート12>
<シリカ分散液3>
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9,000、4部)と気相法シリカ(平均一次粒子径12nm)を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機(ブレード周速30m/秒)を使用して予備分散液を作成した。次に得られた予備分散物をを高圧ホモジナイザーにて処理し、平均二次粒子径200nmのシリカ分散液3を得た。
【0072】
インク受容層塗布液1に代えて下記組成のインク受容層塗布液4を用いた以外は記録シート1と同様にして記録シート12を作成した。
【0073】
<記録シート13>
インク受容層塗布液1に代えて下記組成のインク受容層塗布液5を用いた以外は記録シート1と同様にして記録シート13を作成した。
【0074】
得られた各々のインクジェット記録シートについて下記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0075】
<インク吸収性>
市販のインクジェットプリンター(キヤノン社製、BJF−870)にてレッド、ブルー、グリーン、ブラックのベタ印字を行い、印字直後にPPC用紙を印字部に重ねて軽く圧着し、PPC用紙に転写したインク量の程度を目視で観察した。下記の基準で評価した。
◎:全く転写しない。
○:少しの転写が観察される。
△:印字部全体に薄い転写が観察される。
×:印字部全体に濃い転写が観察される。
【0076】
<白紙部光沢性>
記録材料の印字前の白紙部光沢感を斜光で観察し、下記の基準で評価した。
○:カラー写真並の高い光沢感が有る。
△:アート、コート紙並の光沢感が有る。
×:上質紙並の沈んだ光沢感が有る。
【0077】
<耐光性>
インクジェットプリンター(キヤノン社製、BJF−870)を用いてシアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックのベタ印字を行い、透明フィルムで密閉し、アトラス社製サンテストCPS光退色試験機にて600W/m2で72時間照射した後、印字部の濃度を測定し、画像残存率(照射後濃度/照射前の濃度)を求め、各色の中で最も残存率が低いものを表示した。
【0078】
<耐ガス性>
上記耐光性試験と同様に印字後、通風の良い暗室内壁面に室温で6ヶ月間曝露した後、印字部の濃度を測定し、画像残存率(曝露後濃度/曝露前の濃度)を求め、各色画像の内、最も残存率が低いものを表示した。
【0079】
【表1】
【0080】
上記結果から明らかなように本発明の記録シート1〜6は、インク吸収性、白紙部光沢性が良好で、且つ保存性も優れている。記録シート7は本発明のヒドラジン誘導体を含有しない場合で、耐光性及び耐ガス性が大きく低下した。記録シート5からほう酸を抜いた記録シート8では、白紙部光沢性と耐ガス性が大きく低下した。また、ポリビニルアルコール量をシリカ粒子に対して25質量%まで増加した記録シート9、10では、良好な耐ガス性を示したが、インク吸収性が低下した。平均二次粒子径が800nmのシリカ粒子を使用した記録シート11では、白紙部光沢が低下した。また、気相法シリカを使用しポリビニルアルコールをシリカ粒子に対して15質量%とした記録シート12は十分に高い白紙部光沢が得られず、また保存性も記録シート3より劣っており、ポリビニルアルコール量を25質量%とした記録シート13はインク吸収性が低下した。
【0081】
【発明の効果】
上記結果から明らかなように、本発明によれば、フォトライクな高い光沢を有し、インク吸収性が良好で、且つ印字画像の保存性が改良されたインクジェット用記録材料が得られる。
Claims (2)
- 5μm以上の平均二次粒子径を有する沈降法シリカを、カチオン性化合物の存在下、水性媒体中でメディアミルを使用して平均二次粒子径400nm以下に微粉砕した粒子、ほう酸またはほう酸塩、及び該粒子に対して20質量%未満のポリビニルアルコールを含有する多孔質のインク受容層を有するインクジェット用記録材料において、ヒドラジン誘導体を含有することを特徴とするインクジェット用記録材料。
- 前記ヒドラジン誘導体が、セミカルバジドまたはカルボヒドラジド構造を有するヒドラジン誘導体である請求項1に記載のインクジェット用記録材料。
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JP2003038634A JP2004243740A (ja) | 2003-02-17 | 2003-02-17 | インクジェット用記録材料 |
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CN102501674A (zh) * | 2011-10-14 | 2012-06-20 | 江苏格美高科技发展有限公司 | 水性高光防水聚丙烯写真纸及其制备方法 |
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2003
- 2003-02-17 JP JP2003038634A patent/JP2004243740A/ja active Pending
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