JP2004255594A - インクジェット記録材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】インク吸収性、発色性、及び耐折り割れ性に優れ、更に光沢性及び耐傷性にも優れたインクジェット記録材料を提供する。
【解決手段】支持体に近い方から順に、湿式法シリカを水性媒体中で平均二次粒子径が500nm以下まで粉砕したシリカ微粒子(湿式粉砕シリカ)と、該シリカ微粒子に対して20質量%未満のポリビニルアルコールとを含有するインク受容層、気相法シリカと該気相法シリカに対して25質量%未満のポリビニルアルコールを含有するインク受容層、とを少なくとも有する。
【選択図】 なし。
【解決手段】支持体に近い方から順に、湿式法シリカを水性媒体中で平均二次粒子径が500nm以下まで粉砕したシリカ微粒子(湿式粉砕シリカ)と、該シリカ微粒子に対して20質量%未満のポリビニルアルコールとを含有するインク受容層、気相法シリカと該気相法シリカに対して25質量%未満のポリビニルアルコールを含有するインク受容層、とを少なくとも有する。
【選択図】 なし。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録材料に関し、特にインク吸収性、発色性、及び耐折り割れ性に優れ、更に光沢性及び耐傷性にも優れたインクジェット記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式に使用される記録材料として、通常の紙やインクジェット記録用紙と称される支持体上に非晶質シリカ等の顔料をポリビニルアルコール等の水溶性バインダーからなる多孔質のインク吸収層を設けてなる記録材料が知られている。
【0003】
例えば、特開昭55−51583号、同昭56−157号、同昭57−107879号、同昭57−107880号、同昭59−230787号、同昭62−160277号、同昭62−184879号、同昭62−183382号、及び同昭64−11877号公報等に開示のごとく、シリカ等の含珪素顔料を水系バインダーと共に紙支持体に塗布して得られる記録材料が提案されている。また、特開平9−286165号、同平10−181190号公報等には、沈降法シリカ凝集体を機械的手段で10〜300nmに粉砕したシリカ微粒子を用いることが開示されている(特許文献1、2)。
【0004】
また、フォトライクの記録材料が要望される中、益々光沢性が重要視されてきており、ポリオレフィン樹脂被覆紙(紙の両面にポリエチレン等のポリオレフィン樹脂をラミネートしたもの)やポリエステルフィルム等の耐水性支持体上に超微粒子シリカ(例えば、前記湿式粉砕シリカ)を主体とするインク受容層が塗設された記録材料が提案されている。
【0005】
フォトライクな高い光沢を有する記録材料として、インク受容層を2層以上の構成にして上層に比較的光沢の高い層を設けた記録材料が提案されている。例えば、特開平3−215080号、同平7−89216号、同平7−89220号、同平7−117335号、特開2000−37944号、同2001−277712号公報、国際特許出願WO02/34541A1号公報等である。(特許文献3、4)
【0006】
一方、フォトライクな画質を実現するためにインクジェットプリンター側ではフォトインクなどと呼ばれる淡色インクやグレー、ダークイエロー等の中間色インク等を使用することにより、より高画質な記録方法が提案、発売されている。
【0007】
それに伴いインクジェット記録材料側ではより高いインク吸収性が要求されている。インク受容層の厚くすることは高いインク吸収性を実現させるためには有効な手段であるが、記録材料取り扱い時にわずかな曲率でもインク受容層にひび割れ(折り割れ)が生じてしまう。これは記録材料に高いインク吸収性を確保させるためにもともと脆弱性が高いインク受容層の構成になってしまっている上に、更にその脆弱性の高い塗層を分厚くするためである。
【0008】
前記折り割れを良化させる手法としては、インク受容層中の無機顔料/バインダー比を小さくすることやバインダーの架橋剤として添加しているホウ酸またはホウ酸塩の添加量を減少させることが有効ではある。しかしながら、無機顔料/バインダー比を小さくする手法ではインク吸収性が悪化してしまう。また、ホウ酸またはホウ酸塩の添加量を減少させる手法でもインク吸収性の悪化が生じ、更には光沢が低下したり光沢ムラが生じてしまったりする。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−286165号公報(第2頁〜第5頁)
【特許文献2】
特開平10−181190号公報(第2頁〜第4頁)
【特許文献3】
特開平7−89216号公報(第2頁〜第4頁)
【特許文献4】
特開2001−277712号公報(第2頁〜第4頁)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、第1にインク吸収性、発色性、及び耐折り割れ性に優れたインクジェット記録材料を提供することであり、第2にインク吸収性、発色性、及び耐折り割れ性に優れ、更に光沢性及び耐傷性にも優れたインクジェット記録材料を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について種々検討した結果、主として下記の手段により本発明の目的が達成された。
【0012】
(1)支持体に近い方から順に、湿式法シリカを水性媒体中で平均二次粒子径が500nm以下まで粉砕したシリカ微粒子(湿式粉砕シリカ)と、該シリカ微粒子に対して20質量%未満のポリビニルアルコールとを含有するインク受容層、気相法シリカと該気相法シリカに対して25質量%未満のポリビニルアルコールを含有するインク受容層、とを少なくとも有することを特徴とするインクジェット記録材料。
【0013】
(2)支持体より最も遠い層にコロイダルシリカを主体として含有する層を有することを特徴とする前記請求項1記載のインクジェット記録材料。
【0014】
(3)前記湿式法シリカを含有するインク受容層がホウ酸またはホウ酸塩を含有する(1)に記載のインクジェット記録材料。
【0015】
(4)前記気相法シリカの乾燥塗布量が4g/m2以下である(1)に記載のインクジェット記録材料。
【0016】
(5)前記気相法シリカを含有するインク受容層がホウ酸またはホウ酸塩を含有する(1)に記載のインクジェット記録材料。
【0017】
(6)前記支持体が耐水性支持体である(1)に記載のインクジェット記録材料。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる支持体としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、セロファン、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のフィルム、樹脂被覆紙等の耐水性支持体、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗被紙等の吸水性支持体等が用いられる。印字後のコックリング(シワの発生)防止の面で耐水性支持体を用いることが好ましい。しかしながら、耐水性支持体を使用する場合にはインク受容層のみでインクを吸収する必要があるため、より高いインク吸収性が要求される。特にこれらの支持体の厚みは、約50〜250μm程度のものが好ましく使用される。
【0019】
非晶質合成シリカは、製造法によって気相法シリカ、湿式法シリカ、及びその他に大別することができる。気相法シリカは、乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって製造される。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られており、日本アエロジル(株)からアエロジル、トクヤマ(株)からQSタイプとして市販されている。
【0020】
本発明に用いられる気相法シリカの一次粒子の平均粒径は50nm以下が好ましく、より好ましくは5〜30nmである。気相法シリカをインク受容層に用いるに際し、凝集粒子の平均粒子径が300nm以下まで高圧ホモジナイザーやメディアミルを用いて微細化するのが好ましい。
【0021】
湿式法シリカは、製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類されるが、本発明では沈降法シリカ及びゲル法シリカが用いられる。特に好ましくは沈降法シリカである。沈降法シリカは珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の行程を経て製品化される。この方法で製造されたシリカ二次粒子は緩やかな凝集粒子となり、比較的粉砕し易い粒子が得られる。沈降法シリカとしては、例えば日本シリカ工業(株)からニップシールとして、(株)トクヤマからトクシール、ファインシールとして市販されている。ゲル法シリカは珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造する。この場合、熟成中に小さなシリカ粒子が溶解し、大きな粒子の一次粒子間に一次粒子どうしを結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。例えば、水澤化学工業(株)からミズカシルとして、グレースジャパン(株)からサイロジェットとして市販されている。
【0022】
本発明のインク受容層には平均二次粒子径が500nm以下、好ましくは50〜300nmになるまで粉砕された湿式法シリカを含有する。通常の方法で製造された湿式法シリカは、1μm以上の平均二次粒子径を有するため、これを微粉砕して使用する。粉砕方法としては、水性媒体中に分散したシリカを機械的に粉砕する湿式分散法が好ましく使用できる。湿式分散機としては、ボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜施回型分散機等を使用することができるが、本発明では特にビーズミル等のメディアミルの使用が好ましい。
【0023】
本発明の湿式法シリカの粉砕は、カチオン性化合物の存在下で行うことが好ましい。水中に分散されたシリカにカチオン性化合物を添加すると凝集物が発生することが多いが、これを粉砕処理することによって、水のみに分散するよりも高濃度分散が可能となり、その結果分散効率が上昇し、より微粒子に粉砕することができる。更に、高濃度分散液を使用することによって、塗布液調製時に塗布液の高濃度化が可能になり、生産効率が向上する等の利点がある。特にこの際平均二次粒子径が5μm以上の湿式法シリカを使用すると、初期の凝集物発生による粘度上昇が抑制され、より高濃度での分散が可能となるため、さらに有利である。平均二次粒子径の上限は特にないが、通常湿式法シリカの平均二次粒子径は200μm以下である。
【0024】
カチオン性化合物としては、カチオン性ポリマーまたは水溶性金属化合物を使用できる。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、特開昭59−20696号、同昭59−33176号、同昭59−33177号、同昭59−155088号、同昭60−11389号、同昭60−49990号、同昭60−83882号、同昭60−109894号、同昭62−198493号、同昭63−49478号、同昭63−115780号、同昭63−280681号、同平1−40371号、同平6−234268号、同平7−125411号、同平10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。特に、カチオン性ポリマーとしてジアリルアミン誘導体が好ましく用いられる。これらのカチオンポリマーの分子量は、2,000〜10万程度が好ましく、特に2,000〜3万程度が好ましい。分子量が10万よりも大きくなると、分散液が高粘度となりすぎるため好ましくない。
【0025】
水溶性金属化合物としては、例えば水溶性の多価金属塩が挙げられる。カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、チタン、ジルコニウム、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)ニ水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、p−フェノールスルホン酸亜鉛、塩化チタン、硫酸チタン、乳酸チタン、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等が挙げられる。
【0026】
上記の水溶性多価金属化合物の中でも、アルミニウムもしくは周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)からなる化合物が好ましい。特に好ましくは水溶性アルミニウム化合物である。水溶性アルミニウム化合物としては、例えば無機塩としては塩化アルミニウムまたはその水和物、硫酸アルミニウムまたはその水和物、アンモニウムミョウバン等が知られている。さらに、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が知られており、好ましく用いられる。
【0027】
前記塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物とは、主成分が下記の一般式1、2、または3で示され、例えば[Al6(OH)15]3+、[Al8(OH)20]4+、[Al13(OH)34]5+、[Al21(OH)60]3+、等のような塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
【0028】
[Al2(OH)nCl6−n]m 一般式1
[Al(OH)3]nAlCl3 一般式2
Aln(OH)mCl(3n−m) 0<m<3n 一般式3
【0029】
これらのものは多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名で水処理剤として、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名で、また、(株)理研グリーンよりピュラケムWTの名で、また他のメーカーからも同様の目的を持って上市されており、各種グレードの物が容易に入手できる。
【0030】
本発明に用いられる周期表4A族元素を含む水溶性化合物としては、チタンまたはジルコニウムを含む水溶性化合物がより好ましい。チタンを含む水溶性化合物としては、塩化チタン、硫酸チタンが挙げられる。ジルコニウムを含む水溶性化合物としては、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム化合物等が挙げられる。本発明に於いて、水溶性とは常温常圧下で水に1質量%以上溶解することを目安とする。
【0031】
本発明の平均二次粒子径が500nm以下の湿式粉砕シリカ微粒子を得る具体的な方法としては、まず水中にシリカ及びカチオン性ポリマー及び/またはカチオン性金属化合物の少なくとも1種を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機、プロペラ羽根型分散機、またはローターステーター型分散機等の分散装置の少なくとも1つを用いて予備分散液を得る。必要であれば更に適度の低沸点溶剤等を添加してもよい。カチオン性ポリマーまたは水溶性金属化合物の量は、シリカに対して0.5〜20質量%、好ましくは2〜10質量%である。この範囲にすることによって、シリカ予備分散液の粘度が高くなりすぎず、固形分濃度を高くする事ができる。本発明のシリカ予備分散物の固形分濃度は高いほうが好ましいが、あまり高濃度になると分散不可能となるため、好ましい範囲としては20〜60質量%、より好ましくは30〜50質量%である。
【0032】
上記の方法で得られたシリカ予備分散物をビーズミルで粉砕処理する。ビーズミルとは、内部に撹拌装置を有する容器中にビーズを内填し、容器中に液状物を入れて撹拌装置を回転させてビーズ同士を衝突させることで液状物にせん断力を与えて処理する装置である。ビーズの粒径は0.1〜10mmが一般的であるが、好ましくは0.2〜1mm、より好ましくは0.3〜0.6mmである。ビーズにはガラスビーズ、セラミックスビーズ、金属ビーズ等が有るが、耐摩耗性及び分散効率からはジルコニアビーズが好ましい。また、容器中のビーズの添加充填率は一般的には40〜80容量%であり、好ましくは55〜80容量%である。上記分散条件によって、シリカ分散物を効率良く、粗粒残存や凝集物発生もなく、平均二次粒子径が500nm以下に粉砕することが可能である。予備分散物を連続で処理する場合で通し回数が1回では粗粒が残りやすい場合には、2回以上処理するほうが好ましい。本発明では粗粒が出来ない範囲で濃度が高い方が、塗布液の高濃度化が可能になり好ましい。本発明のシリカ分散物の固形分濃度の好ましい範囲としては20〜60質量%、より好ましくは30〜50質量%である。市販のビーズミルとしては浅田鉄工社製のナノミル、アイメックス社製のウルトラビスコミル、及びマツボー社製のアミュラー型OBミル、シンマルエンタープライゼス社製のダイノミル等が挙げられる。
【0033】
本発明の粉砕された湿式法シリカの平均二次粒子径、及び微細化された気相法シリカの平均凝集粒子径は希薄分散液をレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置で測定して得られる。
【0034】
本発明において、インク受容層で無機微粒子とともに用いられる親水性バインダーは、完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールが主体である。
【0035】
ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したものである。平均重合度200〜5000のものが好ましい。
【0036】
また、カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールである。
【0037】
本発明は、ポリビニルアルコールと共に架橋剤(硬膜剤)を用いることが好ましい。架橋剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル尿素)、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、米国特許第3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、同2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ムコクロル酸の如きハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、クロム明ばん、硫酸ジルコニウム、ホウ酸、ホウ酸塩、ホウ砂の如き無機架橋剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特にホウ酸、またはホウ酸塩が好ましい。本発明で使用されるホウ酸は、オルトホウ酸、メタホウ酸、次ホウ酸等が、ホウ酸塩としてはそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0038】
本発明では上記以外の他の親水性バインダーも併用することができるが、ポリビニルアルコールに対して20質量%以下であることが好ましい。ポリビニルアルコールの使用量としては、気相法シリカに対して25質量%未満である必要があり、より好ましくは16〜24質量%の範囲である。25質量%以上添加した場合にはインク吸収性が著しく低下する。
【0039】
湿式粉砕シリカを含有するインク受容層における親水性バインダーの含有比率使用量としては、湿式粉砕シリカに対して20質量%未満である必要があり、好ましくは8〜19質量%である。上記範囲にすることによって、高いインク吸収性が得られる。
【0040】
また、本発明の各インク受容層において、ポリビニルアルコールに対する、ホウ酸またはホウ酸塩の含有率は、0.5〜50質量%で、特に3〜30質量%がインク吸収性及び耐折り割れ性の面で好ましい。
【0041】
本発明は液塗布時における製造工程で支持体への塗布工程と乾燥工程との間に冷却工程を経ることにより塗液温度を10℃以下に冷却させることが好ましい。ポリビニルアルコールと架橋剤としてホウ酸またはホウ酸塩を使用することによって、この冷却工程を経ると塗液が不動化するほどゼリー状になる。その後、ゼリー状を維持したままの比較的低温で塗液を乾燥させてやることで空隙率の高いインク受容層を製造することができる。このゼリー状になることが不十分な場合には空隙率の高いインク受容層を形成されなかったり、乾燥工程中にドライヤーの風圧による光沢ムラが生じたりしてしまう。
【0042】
インク受容層の乾燥塗布量の範囲は、8〜40g/m2であり、好ましくは10〜35g/m2である。このうち気相法シリカを含有するインク受容層の乾燥塗布量の範囲は、0.2〜4g/m2であり、好ましくは0.5〜4g/m2である。上記範囲は、インク吸収性、発色性、耐折り割れ性の面で好ましい。
【0043】
本発明のインク受容層各層は、耐水性改良目的等で更にカチオン性化合物を含有するのが好ましい。カチオン性化合物の例としては、湿式法シリカの粉砕の説明で挙げたカチオン性ポリマー、及び水溶性金属化合物が挙げられる。特に、分子量5,000〜10万程度のカチオン性ポリマー、及びアルミニウムもしくは周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)からなる化合物が好ましい。カチオン性化合物は一種類を使用しても、複数の化合物を併用しても良い。
【0044】
本発明において、各層のインク受容層には、更に、界面活性剤、硬膜剤の他に着色染料、着色顔料、インク染料の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0045】
本発明において、インク受容層は、上記インク受容層以外に層を設けてもよいが、その場合にはインク浸透性を損なわない層であることが必要である。例えば、光沢性及び耐傷性を改良する目的で、インク受容層上にコロイダルシリカを主体とした保護層をインク吸収性を低下させない程度、固形分で5g/m2程度以下で設けるのが好ましい。ここで主体に含有するとはインク受容層の全固形分に対して50質量%以上含有することであり、好ましくは60質量%以上であり、更に65質量%以上含有することがより好ましい。コロイダルシリカの一般的な一次粒子の平均粒径は5〜100nm程度であり、平均粒径が10〜500nm程度の二次粒子を形成している方がインク吸収性からは好ましい。市販の球状のものとして日産化学工業(株)製、スノーテックス20等、触媒化成工業(株)製、カタロイドUSB等が挙げられ、鎖状のものとして日産化学工業(株)製、スノーテックスUP等が挙げられ、パールネックレス状のものとして日産化学工業(株)製、スノーテックスPS−M等が使用出来る。また、コロイダルシリカの表面がカチオン性に修飾されたコロイダルシリカも好ましく使用でき、なかでもアルミニウム化合物により表面をカチオン性に修飾されていることが好ましい。アルミナ修飾コロイダルシリカとしては日産化学工業(株)製、スノーテックスAK−L、スノーテックスAK−UP、スノーテックスPS−M−AK等が挙げられる。
【0046】
本発明において、上記コロイダルシリカを主体に含有する層には皮膜としての特性を維持するためにバインダーを含有するのが好ましい。バインダーの含有量は、前記した無機微粒子に対して1〜30質量%の範囲が好ましい。バインダーとしては、公知の各種バインダーを用いることができるが、特に好ましい親水性バインダーは完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。
【0047】
本発明において、インク受容層を構成している各層の塗布方法は、公知の塗布方法を用いることができる。例えば、スライドビード方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、エアナイフ方式、ロールコーティング方式、ケッドバーコーティング方式等がある。
【0048】
本発明では、スライドビード方式等のようなインク受容層を構成する各層を乾燥工程を設けないで殆ど同時に塗布することが生産効率の点からも好ましい。
【0049】
フィルム支持体、樹脂被覆紙にインク受容層の塗布液を塗布する場合、塗布に先立って、好ましくはコロナ放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、プラズマ処理等が行われる。
【0050】
本発明は、支持体、特に耐水性支持体であるフィルムや樹脂被覆紙を使用する場合には、インク受容層を設ける面上に天然高分子化合物や合成樹脂を主体とするプライマー層を設けるのが好ましい。該プライマー層の上に、本発明の無機微粒子含有のインク受容層を塗布した後、冷却し、比較的低温で乾燥することによって、更にインク受容層の透明性が向上する。
【0051】
支持体上に設けられるプライマー層はゼラチン、カゼイン等の天然高分子化合物や合成樹脂を主体とする。係る合成樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニリデン、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0052】
上記プライマー層は、支持体上に0.01〜5μmの膜厚(乾燥膜厚)で設けられる。好ましくは0.05〜5μmの範囲である。
【0053】
本発明における支持体には筆記性、帯電防止性、搬送性、カール防止性などのために、各種のバックコート層を塗設することができる。バックコート層には無機帯電防止剤、有機帯電防止剤、親水性バインダー、ラテックス、顔料、硬化剤、界面活性剤などを適宜組み合わせて含有せしめることができる。
【0054】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。尚、部及び%は質量部、質量%を示す。
【0055】
実施例1
<ポリオレフィン樹脂被覆紙支持体の作製>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)の1:1混合物をカナディアン スタンダード フリーネスで300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5重量%、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1.0重量%、カチオン化澱粉を対パルプ2.0重量%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5重量%添加し、水で希釈して1%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量170g/m2になるように抄造し、乾燥調湿してポリオレフィン樹脂被覆紙の原紙とした。抄造した原紙に、密度0.918g/cm3の低密度ポリエチレン100重量%の樹脂に対して、10重量%のアナターゼ型チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、200m/分で厚さ20μmになるように押出コーティングし、微粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した。もう一方の面には密度0.962g/cm3の高密度ポリエチレン樹脂70重量部と密度0.918の低密度ポリエチレン樹脂30重量部のブレンド樹脂組成物を同様に320℃で溶融し、厚さ30μmになるように押出コーティングし、粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した。
【0056】
上記ポリオレフィン樹脂被覆紙表面に高周波コロナ放電処理を施した後、下記組成の下引き層をゼラチンが50mg/m2となるように塗布乾燥して支持体を作製した。
【0057】
<下引き層>
石灰処理ゼラチン 100部
スルフォコハク酸−2−エチルヘキシルエステル塩 2部
クロム明ばん 10部
【0058】
上記支持体に下記組成のインク受容層塗布液A及びBを、シリカの乾燥塗布量がそれぞれ23g/m2、及び2g/m2になるように、スライドビード塗布装置で同時塗布し、乾燥し実施例1の記録材料を得た。なお、インク受容層Aが支持体に近い下層、インク受容層Bが上層である。塗布後の乾燥条件は、0℃で30秒間冷却後、全固形分濃度が90重量%までを42℃10%RHで乾燥し、次いで35℃10%RHで乾燥した。
【0059】
<湿式粉砕シリカ分散液1>
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9千、4部)と湿式法シリカ(ニップシールVN3、日本シリカ工業(株)製、平均二次粒径23μm、100部)を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機(ブレード周速30m/秒)を使用して予備分散液1を作製した。次に得られた予備分散液1をビーズミルに、直径0.3mmのジルコニアビーズ、充填率80容量%、円盤周速10m/秒の条件で1回通過させて、固形分濃度30質量%、平均二次粒子径200nmの湿式粉砕シリカ分散液1を得た。
【0060】
<気相法シリカ分散液2>
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9千、4部)と気相法シリカ(アエロジル300、日本アエロジル(株)製、平均一次粒子径7nm、100部)を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機(ブレード周速30m/秒)を使用して予備分散液2を作製した。次に得られた予備分散液2を高圧ホモジナイザーにて処理し平均凝集粒子径140nmの気相法シリカ分散液2を得た。
【0061】
<インク受容層塗布液A>
湿式粉砕シリカ分散液1(シリカ固形分として) 100部
ホウ酸 2.5部
ポリビニルアルコール 15部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
界面活性剤 0.1部
メチロールメラミン系化合物 3部
(大日本インキ化学工業(株)製ベッカミンPM−N)
【0062】
<インク受容層塗布液B>
気相法シリカ分散液2(シリカ固形分として) 100部
ホウ酸 5部
ポリビニルアルコール 23部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
界面活性剤 0.3部
【0063】
実施例2
上記インク受容層塗布液A及びBを、シリカの乾燥塗布量がそれぞれ18g/m2、及び7g/m2になるようにした以外は実施例1と同様にして実施例2の記録材料を作製した。
【0064】
比較例1
上記インク受容層塗布液Aを塗布せず、インク受容層塗布液Bのみを25g/m2塗布した以外は実施例1と同様にして比較例1の記録材料を作製した。
【0065】
比較例2
上記インク受容層塗布液Bを塗布せず、インク受容層塗布液Aのみを25g/m2塗布した以外は実施例1と同様にして比較例2の記録材料を作製した。
【0066】
比較例3
上記インク受容層塗布液Aにおいてポリビニルアルコール添加量を25部、ホウ酸添加量4.2部とした以外はインク受容層塗布液Aと同様にしてインク受容層塗布液Cを作製し、インク受容層塗布液Aの替わりにインク受容層塗布液Cを塗布した以外は実施例1と同様にして比較例3の記録材料を作製した。
【0067】
比較例4
上記インク受容層塗布液Bにおいてポリビニルアルコール添加量を27部、ホウ酸添加量を6部とした以外はインク受容層塗布液Bと同様にしてインク受容層塗布液Dを作製し、インク受容層塗布液Dの替わりにインク受容層塗布液Dを塗布した以外は実施例1と同様にして比較例4の記録材料を作製した。
【0068】
比較例5
上記予備分散液1に、ジルコニアビーズの直径を0.3mmから3mmに替えて湿式粉砕シリカ分散液3を作製した。該湿式粉砕シリカ分散液3の平均二次粒子径は800nmであった。上記インク受容層塗布液Aにおいて湿式粉砕シリカ分散液1の替わりに上記湿式粉砕シリカ分散液3を使用した以外はインク受容層塗布液Aと同様にしてインク受容層塗布液Eを作製し、インク受容層塗布液Aの替わりにインク受容層塗布液Eを塗布した以外は実施例1と同様にして比較例5の記録材料を作製した。
【0069】
上記のようにして作製したインクジェット記録材料について下記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0070】
<インク吸収性>
インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製、PM−880C)にてシアン、マゼンタ、イエロー単色100%と、3重色300%をそれぞれ印字して、印字直後にPPC用紙を印字部に重ねて軽く圧着し、PPC用紙に転写したインク量の程度を目視で観察し、下記の基準で総合で評価した。
◎:全く転写しない。
○:100%部分には転写がなく、300%部分にはわずかに転写がある。
×:100%部分では転写がなく、300%部分ではインクがあふれており、PPC用紙にはっきりと転写する。
××:100%部分で転写がある。
【0071】
<発色性>
風景と人物像を含む画像をインクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製、PM−880C)にて印字し、見た目の風合いを下記基準にて判定した。
○:カラー写真並みの風合いを有する
×:カラー写真に比べ見劣りする
××:カラー写真に比べ大いに見劣りする
なお、比較例4はインクがあふれてしまっていたため、本評価を行うことができなかった。
【0072】
<耐折り割れ性>
記録材料を10℃20%RHの条件下にて24時間シーズニングし、同温湿度条件にて折り割れ性を判定した。判定方法は、記録材料を12cmの長さに裁断し、インク受容層を外側にして円弧状に折り曲げていき破砕音が聞こえた時の円弧の直径を測定する方法である。数値が小さい、つまり、直径が小さい方がより耐折り割れ性が良好であり折り割れがしにくいことを示す。2インチコアのロール状に巻き取られた製品も市販されていることから、少なくとも50mm以下の数値を示す必要がある。
【0073】
【表1】
【0074】
上記結果から実施例1のインクジェット記録材料は、良好なインク吸収性、及び発色性を有しており、耐折り割れ性に優れていることがわかる。
【0075】
実施例3
下記配合のインク受容層塗布液Fを作製し、支持体に近い方から実施例1で用いたインク受容層塗布液A、インク受容層塗布液B、インク受容層塗布液Fの順でスライドビード塗布装置で同時塗布し、乾燥し実施例3の記録材料を得た。乾燥時の温度条件は実施例1と同様に行った。各層のシリカの乾燥塗布量は支持体に近い方からそれぞれ23g/m2、2g/m2、及び1g/m2になるように塗布した。
【0076】
<インク受容層塗布液F>
コロイダルシリカ(シリカ固形分として) 100部
(日産化学工業(株)製スノーテックスAK−L、平均粒子径40nm)
ポリビニルアルコール 5部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
界面活性剤 0.3部
【0077】
上記実施例3のインクジェット記録材料は、インク吸収性、発色性及び耐折り割れ性は実施例1と同等であった。更に光沢性及び耐傷性に関しては実施例1よりも優れていた。耐傷性はインクジェット記録材料を3cm×4cmに切り取り印字面とは反対面を1200gのおもりに貼り付けた。このおもりに貼り付けられたサンプルを印字面を下にしてPPC用紙の上にのせて、50cm/minの速度でおもりに貼り付けられたサンプルを20cm引っ張り、印字部の画像の乱れとPPC用紙への転写度合いを目視にて判定、評価した。
【0078】
上記結果から、支持体から最も遠い層にコロイダルシリカを主体に含有する層を有すること層を有することによって、良好なインク吸収性、発色性及び耐折り割れ性を有して、更に高光沢で耐傷性にも優れていることがわかる。
【0079】
【発明の効果】
上記結果から明らかなように、本発明によれば、インク吸収性、発色性、及び耐折り割れ性に優れ、更に光沢性及び耐傷性にも優れたインクジェット記録材料が得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録材料に関し、特にインク吸収性、発色性、及び耐折り割れ性に優れ、更に光沢性及び耐傷性にも優れたインクジェット記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式に使用される記録材料として、通常の紙やインクジェット記録用紙と称される支持体上に非晶質シリカ等の顔料をポリビニルアルコール等の水溶性バインダーからなる多孔質のインク吸収層を設けてなる記録材料が知られている。
【0003】
例えば、特開昭55−51583号、同昭56−157号、同昭57−107879号、同昭57−107880号、同昭59−230787号、同昭62−160277号、同昭62−184879号、同昭62−183382号、及び同昭64−11877号公報等に開示のごとく、シリカ等の含珪素顔料を水系バインダーと共に紙支持体に塗布して得られる記録材料が提案されている。また、特開平9−286165号、同平10−181190号公報等には、沈降法シリカ凝集体を機械的手段で10〜300nmに粉砕したシリカ微粒子を用いることが開示されている(特許文献1、2)。
【0004】
また、フォトライクの記録材料が要望される中、益々光沢性が重要視されてきており、ポリオレフィン樹脂被覆紙(紙の両面にポリエチレン等のポリオレフィン樹脂をラミネートしたもの)やポリエステルフィルム等の耐水性支持体上に超微粒子シリカ(例えば、前記湿式粉砕シリカ)を主体とするインク受容層が塗設された記録材料が提案されている。
【0005】
フォトライクな高い光沢を有する記録材料として、インク受容層を2層以上の構成にして上層に比較的光沢の高い層を設けた記録材料が提案されている。例えば、特開平3−215080号、同平7−89216号、同平7−89220号、同平7−117335号、特開2000−37944号、同2001−277712号公報、国際特許出願WO02/34541A1号公報等である。(特許文献3、4)
【0006】
一方、フォトライクな画質を実現するためにインクジェットプリンター側ではフォトインクなどと呼ばれる淡色インクやグレー、ダークイエロー等の中間色インク等を使用することにより、より高画質な記録方法が提案、発売されている。
【0007】
それに伴いインクジェット記録材料側ではより高いインク吸収性が要求されている。インク受容層の厚くすることは高いインク吸収性を実現させるためには有効な手段であるが、記録材料取り扱い時にわずかな曲率でもインク受容層にひび割れ(折り割れ)が生じてしまう。これは記録材料に高いインク吸収性を確保させるためにもともと脆弱性が高いインク受容層の構成になってしまっている上に、更にその脆弱性の高い塗層を分厚くするためである。
【0008】
前記折り割れを良化させる手法としては、インク受容層中の無機顔料/バインダー比を小さくすることやバインダーの架橋剤として添加しているホウ酸またはホウ酸塩の添加量を減少させることが有効ではある。しかしながら、無機顔料/バインダー比を小さくする手法ではインク吸収性が悪化してしまう。また、ホウ酸またはホウ酸塩の添加量を減少させる手法でもインク吸収性の悪化が生じ、更には光沢が低下したり光沢ムラが生じてしまったりする。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−286165号公報(第2頁〜第5頁)
【特許文献2】
特開平10−181190号公報(第2頁〜第4頁)
【特許文献3】
特開平7−89216号公報(第2頁〜第4頁)
【特許文献4】
特開2001−277712号公報(第2頁〜第4頁)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、第1にインク吸収性、発色性、及び耐折り割れ性に優れたインクジェット記録材料を提供することであり、第2にインク吸収性、発色性、及び耐折り割れ性に優れ、更に光沢性及び耐傷性にも優れたインクジェット記録材料を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について種々検討した結果、主として下記の手段により本発明の目的が達成された。
【0012】
(1)支持体に近い方から順に、湿式法シリカを水性媒体中で平均二次粒子径が500nm以下まで粉砕したシリカ微粒子(湿式粉砕シリカ)と、該シリカ微粒子に対して20質量%未満のポリビニルアルコールとを含有するインク受容層、気相法シリカと該気相法シリカに対して25質量%未満のポリビニルアルコールを含有するインク受容層、とを少なくとも有することを特徴とするインクジェット記録材料。
【0013】
(2)支持体より最も遠い層にコロイダルシリカを主体として含有する層を有することを特徴とする前記請求項1記載のインクジェット記録材料。
【0014】
(3)前記湿式法シリカを含有するインク受容層がホウ酸またはホウ酸塩を含有する(1)に記載のインクジェット記録材料。
【0015】
(4)前記気相法シリカの乾燥塗布量が4g/m2以下である(1)に記載のインクジェット記録材料。
【0016】
(5)前記気相法シリカを含有するインク受容層がホウ酸またはホウ酸塩を含有する(1)に記載のインクジェット記録材料。
【0017】
(6)前記支持体が耐水性支持体である(1)に記載のインクジェット記録材料。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる支持体としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、セロファン、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のフィルム、樹脂被覆紙等の耐水性支持体、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗被紙等の吸水性支持体等が用いられる。印字後のコックリング(シワの発生)防止の面で耐水性支持体を用いることが好ましい。しかしながら、耐水性支持体を使用する場合にはインク受容層のみでインクを吸収する必要があるため、より高いインク吸収性が要求される。特にこれらの支持体の厚みは、約50〜250μm程度のものが好ましく使用される。
【0019】
非晶質合成シリカは、製造法によって気相法シリカ、湿式法シリカ、及びその他に大別することができる。気相法シリカは、乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって製造される。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られており、日本アエロジル(株)からアエロジル、トクヤマ(株)からQSタイプとして市販されている。
【0020】
本発明に用いられる気相法シリカの一次粒子の平均粒径は50nm以下が好ましく、より好ましくは5〜30nmである。気相法シリカをインク受容層に用いるに際し、凝集粒子の平均粒子径が300nm以下まで高圧ホモジナイザーやメディアミルを用いて微細化するのが好ましい。
【0021】
湿式法シリカは、製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類されるが、本発明では沈降法シリカ及びゲル法シリカが用いられる。特に好ましくは沈降法シリカである。沈降法シリカは珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の行程を経て製品化される。この方法で製造されたシリカ二次粒子は緩やかな凝集粒子となり、比較的粉砕し易い粒子が得られる。沈降法シリカとしては、例えば日本シリカ工業(株)からニップシールとして、(株)トクヤマからトクシール、ファインシールとして市販されている。ゲル法シリカは珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造する。この場合、熟成中に小さなシリカ粒子が溶解し、大きな粒子の一次粒子間に一次粒子どうしを結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。例えば、水澤化学工業(株)からミズカシルとして、グレースジャパン(株)からサイロジェットとして市販されている。
【0022】
本発明のインク受容層には平均二次粒子径が500nm以下、好ましくは50〜300nmになるまで粉砕された湿式法シリカを含有する。通常の方法で製造された湿式法シリカは、1μm以上の平均二次粒子径を有するため、これを微粉砕して使用する。粉砕方法としては、水性媒体中に分散したシリカを機械的に粉砕する湿式分散法が好ましく使用できる。湿式分散機としては、ボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜施回型分散機等を使用することができるが、本発明では特にビーズミル等のメディアミルの使用が好ましい。
【0023】
本発明の湿式法シリカの粉砕は、カチオン性化合物の存在下で行うことが好ましい。水中に分散されたシリカにカチオン性化合物を添加すると凝集物が発生することが多いが、これを粉砕処理することによって、水のみに分散するよりも高濃度分散が可能となり、その結果分散効率が上昇し、より微粒子に粉砕することができる。更に、高濃度分散液を使用することによって、塗布液調製時に塗布液の高濃度化が可能になり、生産効率が向上する等の利点がある。特にこの際平均二次粒子径が5μm以上の湿式法シリカを使用すると、初期の凝集物発生による粘度上昇が抑制され、より高濃度での分散が可能となるため、さらに有利である。平均二次粒子径の上限は特にないが、通常湿式法シリカの平均二次粒子径は200μm以下である。
【0024】
カチオン性化合物としては、カチオン性ポリマーまたは水溶性金属化合物を使用できる。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、特開昭59−20696号、同昭59−33176号、同昭59−33177号、同昭59−155088号、同昭60−11389号、同昭60−49990号、同昭60−83882号、同昭60−109894号、同昭62−198493号、同昭63−49478号、同昭63−115780号、同昭63−280681号、同平1−40371号、同平6−234268号、同平7−125411号、同平10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。特に、カチオン性ポリマーとしてジアリルアミン誘導体が好ましく用いられる。これらのカチオンポリマーの分子量は、2,000〜10万程度が好ましく、特に2,000〜3万程度が好ましい。分子量が10万よりも大きくなると、分散液が高粘度となりすぎるため好ましくない。
【0025】
水溶性金属化合物としては、例えば水溶性の多価金属塩が挙げられる。カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、チタン、ジルコニウム、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)ニ水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、p−フェノールスルホン酸亜鉛、塩化チタン、硫酸チタン、乳酸チタン、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等が挙げられる。
【0026】
上記の水溶性多価金属化合物の中でも、アルミニウムもしくは周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)からなる化合物が好ましい。特に好ましくは水溶性アルミニウム化合物である。水溶性アルミニウム化合物としては、例えば無機塩としては塩化アルミニウムまたはその水和物、硫酸アルミニウムまたはその水和物、アンモニウムミョウバン等が知られている。さらに、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が知られており、好ましく用いられる。
【0027】
前記塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物とは、主成分が下記の一般式1、2、または3で示され、例えば[Al6(OH)15]3+、[Al8(OH)20]4+、[Al13(OH)34]5+、[Al21(OH)60]3+、等のような塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
【0028】
[Al2(OH)nCl6−n]m 一般式1
[Al(OH)3]nAlCl3 一般式2
Aln(OH)mCl(3n−m) 0<m<3n 一般式3
【0029】
これらのものは多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名で水処理剤として、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名で、また、(株)理研グリーンよりピュラケムWTの名で、また他のメーカーからも同様の目的を持って上市されており、各種グレードの物が容易に入手できる。
【0030】
本発明に用いられる周期表4A族元素を含む水溶性化合物としては、チタンまたはジルコニウムを含む水溶性化合物がより好ましい。チタンを含む水溶性化合物としては、塩化チタン、硫酸チタンが挙げられる。ジルコニウムを含む水溶性化合物としては、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム化合物等が挙げられる。本発明に於いて、水溶性とは常温常圧下で水に1質量%以上溶解することを目安とする。
【0031】
本発明の平均二次粒子径が500nm以下の湿式粉砕シリカ微粒子を得る具体的な方法としては、まず水中にシリカ及びカチオン性ポリマー及び/またはカチオン性金属化合物の少なくとも1種を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機、プロペラ羽根型分散機、またはローターステーター型分散機等の分散装置の少なくとも1つを用いて予備分散液を得る。必要であれば更に適度の低沸点溶剤等を添加してもよい。カチオン性ポリマーまたは水溶性金属化合物の量は、シリカに対して0.5〜20質量%、好ましくは2〜10質量%である。この範囲にすることによって、シリカ予備分散液の粘度が高くなりすぎず、固形分濃度を高くする事ができる。本発明のシリカ予備分散物の固形分濃度は高いほうが好ましいが、あまり高濃度になると分散不可能となるため、好ましい範囲としては20〜60質量%、より好ましくは30〜50質量%である。
【0032】
上記の方法で得られたシリカ予備分散物をビーズミルで粉砕処理する。ビーズミルとは、内部に撹拌装置を有する容器中にビーズを内填し、容器中に液状物を入れて撹拌装置を回転させてビーズ同士を衝突させることで液状物にせん断力を与えて処理する装置である。ビーズの粒径は0.1〜10mmが一般的であるが、好ましくは0.2〜1mm、より好ましくは0.3〜0.6mmである。ビーズにはガラスビーズ、セラミックスビーズ、金属ビーズ等が有るが、耐摩耗性及び分散効率からはジルコニアビーズが好ましい。また、容器中のビーズの添加充填率は一般的には40〜80容量%であり、好ましくは55〜80容量%である。上記分散条件によって、シリカ分散物を効率良く、粗粒残存や凝集物発生もなく、平均二次粒子径が500nm以下に粉砕することが可能である。予備分散物を連続で処理する場合で通し回数が1回では粗粒が残りやすい場合には、2回以上処理するほうが好ましい。本発明では粗粒が出来ない範囲で濃度が高い方が、塗布液の高濃度化が可能になり好ましい。本発明のシリカ分散物の固形分濃度の好ましい範囲としては20〜60質量%、より好ましくは30〜50質量%である。市販のビーズミルとしては浅田鉄工社製のナノミル、アイメックス社製のウルトラビスコミル、及びマツボー社製のアミュラー型OBミル、シンマルエンタープライゼス社製のダイノミル等が挙げられる。
【0033】
本発明の粉砕された湿式法シリカの平均二次粒子径、及び微細化された気相法シリカの平均凝集粒子径は希薄分散液をレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置で測定して得られる。
【0034】
本発明において、インク受容層で無機微粒子とともに用いられる親水性バインダーは、完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールが主体である。
【0035】
ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したものである。平均重合度200〜5000のものが好ましい。
【0036】
また、カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールである。
【0037】
本発明は、ポリビニルアルコールと共に架橋剤(硬膜剤)を用いることが好ましい。架橋剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル尿素)、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、米国特許第3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、同2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ムコクロル酸の如きハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、クロム明ばん、硫酸ジルコニウム、ホウ酸、ホウ酸塩、ホウ砂の如き無機架橋剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特にホウ酸、またはホウ酸塩が好ましい。本発明で使用されるホウ酸は、オルトホウ酸、メタホウ酸、次ホウ酸等が、ホウ酸塩としてはそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0038】
本発明では上記以外の他の親水性バインダーも併用することができるが、ポリビニルアルコールに対して20質量%以下であることが好ましい。ポリビニルアルコールの使用量としては、気相法シリカに対して25質量%未満である必要があり、より好ましくは16〜24質量%の範囲である。25質量%以上添加した場合にはインク吸収性が著しく低下する。
【0039】
湿式粉砕シリカを含有するインク受容層における親水性バインダーの含有比率使用量としては、湿式粉砕シリカに対して20質量%未満である必要があり、好ましくは8〜19質量%である。上記範囲にすることによって、高いインク吸収性が得られる。
【0040】
また、本発明の各インク受容層において、ポリビニルアルコールに対する、ホウ酸またはホウ酸塩の含有率は、0.5〜50質量%で、特に3〜30質量%がインク吸収性及び耐折り割れ性の面で好ましい。
【0041】
本発明は液塗布時における製造工程で支持体への塗布工程と乾燥工程との間に冷却工程を経ることにより塗液温度を10℃以下に冷却させることが好ましい。ポリビニルアルコールと架橋剤としてホウ酸またはホウ酸塩を使用することによって、この冷却工程を経ると塗液が不動化するほどゼリー状になる。その後、ゼリー状を維持したままの比較的低温で塗液を乾燥させてやることで空隙率の高いインク受容層を製造することができる。このゼリー状になることが不十分な場合には空隙率の高いインク受容層を形成されなかったり、乾燥工程中にドライヤーの風圧による光沢ムラが生じたりしてしまう。
【0042】
インク受容層の乾燥塗布量の範囲は、8〜40g/m2であり、好ましくは10〜35g/m2である。このうち気相法シリカを含有するインク受容層の乾燥塗布量の範囲は、0.2〜4g/m2であり、好ましくは0.5〜4g/m2である。上記範囲は、インク吸収性、発色性、耐折り割れ性の面で好ましい。
【0043】
本発明のインク受容層各層は、耐水性改良目的等で更にカチオン性化合物を含有するのが好ましい。カチオン性化合物の例としては、湿式法シリカの粉砕の説明で挙げたカチオン性ポリマー、及び水溶性金属化合物が挙げられる。特に、分子量5,000〜10万程度のカチオン性ポリマー、及びアルミニウムもしくは周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)からなる化合物が好ましい。カチオン性化合物は一種類を使用しても、複数の化合物を併用しても良い。
【0044】
本発明において、各層のインク受容層には、更に、界面活性剤、硬膜剤の他に着色染料、着色顔料、インク染料の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0045】
本発明において、インク受容層は、上記インク受容層以外に層を設けてもよいが、その場合にはインク浸透性を損なわない層であることが必要である。例えば、光沢性及び耐傷性を改良する目的で、インク受容層上にコロイダルシリカを主体とした保護層をインク吸収性を低下させない程度、固形分で5g/m2程度以下で設けるのが好ましい。ここで主体に含有するとはインク受容層の全固形分に対して50質量%以上含有することであり、好ましくは60質量%以上であり、更に65質量%以上含有することがより好ましい。コロイダルシリカの一般的な一次粒子の平均粒径は5〜100nm程度であり、平均粒径が10〜500nm程度の二次粒子を形成している方がインク吸収性からは好ましい。市販の球状のものとして日産化学工業(株)製、スノーテックス20等、触媒化成工業(株)製、カタロイドUSB等が挙げられ、鎖状のものとして日産化学工業(株)製、スノーテックスUP等が挙げられ、パールネックレス状のものとして日産化学工業(株)製、スノーテックスPS−M等が使用出来る。また、コロイダルシリカの表面がカチオン性に修飾されたコロイダルシリカも好ましく使用でき、なかでもアルミニウム化合物により表面をカチオン性に修飾されていることが好ましい。アルミナ修飾コロイダルシリカとしては日産化学工業(株)製、スノーテックスAK−L、スノーテックスAK−UP、スノーテックスPS−M−AK等が挙げられる。
【0046】
本発明において、上記コロイダルシリカを主体に含有する層には皮膜としての特性を維持するためにバインダーを含有するのが好ましい。バインダーの含有量は、前記した無機微粒子に対して1〜30質量%の範囲が好ましい。バインダーとしては、公知の各種バインダーを用いることができるが、特に好ましい親水性バインダーは完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。
【0047】
本発明において、インク受容層を構成している各層の塗布方法は、公知の塗布方法を用いることができる。例えば、スライドビード方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、エアナイフ方式、ロールコーティング方式、ケッドバーコーティング方式等がある。
【0048】
本発明では、スライドビード方式等のようなインク受容層を構成する各層を乾燥工程を設けないで殆ど同時に塗布することが生産効率の点からも好ましい。
【0049】
フィルム支持体、樹脂被覆紙にインク受容層の塗布液を塗布する場合、塗布に先立って、好ましくはコロナ放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、プラズマ処理等が行われる。
【0050】
本発明は、支持体、特に耐水性支持体であるフィルムや樹脂被覆紙を使用する場合には、インク受容層を設ける面上に天然高分子化合物や合成樹脂を主体とするプライマー層を設けるのが好ましい。該プライマー層の上に、本発明の無機微粒子含有のインク受容層を塗布した後、冷却し、比較的低温で乾燥することによって、更にインク受容層の透明性が向上する。
【0051】
支持体上に設けられるプライマー層はゼラチン、カゼイン等の天然高分子化合物や合成樹脂を主体とする。係る合成樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニリデン、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0052】
上記プライマー層は、支持体上に0.01〜5μmの膜厚(乾燥膜厚)で設けられる。好ましくは0.05〜5μmの範囲である。
【0053】
本発明における支持体には筆記性、帯電防止性、搬送性、カール防止性などのために、各種のバックコート層を塗設することができる。バックコート層には無機帯電防止剤、有機帯電防止剤、親水性バインダー、ラテックス、顔料、硬化剤、界面活性剤などを適宜組み合わせて含有せしめることができる。
【0054】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。尚、部及び%は質量部、質量%を示す。
【0055】
実施例1
<ポリオレフィン樹脂被覆紙支持体の作製>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)の1:1混合物をカナディアン スタンダード フリーネスで300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5重量%、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1.0重量%、カチオン化澱粉を対パルプ2.0重量%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5重量%添加し、水で希釈して1%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量170g/m2になるように抄造し、乾燥調湿してポリオレフィン樹脂被覆紙の原紙とした。抄造した原紙に、密度0.918g/cm3の低密度ポリエチレン100重量%の樹脂に対して、10重量%のアナターゼ型チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、200m/分で厚さ20μmになるように押出コーティングし、微粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した。もう一方の面には密度0.962g/cm3の高密度ポリエチレン樹脂70重量部と密度0.918の低密度ポリエチレン樹脂30重量部のブレンド樹脂組成物を同様に320℃で溶融し、厚さ30μmになるように押出コーティングし、粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した。
【0056】
上記ポリオレフィン樹脂被覆紙表面に高周波コロナ放電処理を施した後、下記組成の下引き層をゼラチンが50mg/m2となるように塗布乾燥して支持体を作製した。
【0057】
<下引き層>
石灰処理ゼラチン 100部
スルフォコハク酸−2−エチルヘキシルエステル塩 2部
クロム明ばん 10部
【0058】
上記支持体に下記組成のインク受容層塗布液A及びBを、シリカの乾燥塗布量がそれぞれ23g/m2、及び2g/m2になるように、スライドビード塗布装置で同時塗布し、乾燥し実施例1の記録材料を得た。なお、インク受容層Aが支持体に近い下層、インク受容層Bが上層である。塗布後の乾燥条件は、0℃で30秒間冷却後、全固形分濃度が90重量%までを42℃10%RHで乾燥し、次いで35℃10%RHで乾燥した。
【0059】
<湿式粉砕シリカ分散液1>
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9千、4部)と湿式法シリカ(ニップシールVN3、日本シリカ工業(株)製、平均二次粒径23μm、100部)を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機(ブレード周速30m/秒)を使用して予備分散液1を作製した。次に得られた予備分散液1をビーズミルに、直径0.3mmのジルコニアビーズ、充填率80容量%、円盤周速10m/秒の条件で1回通過させて、固形分濃度30質量%、平均二次粒子径200nmの湿式粉砕シリカ分散液1を得た。
【0060】
<気相法シリカ分散液2>
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9千、4部)と気相法シリカ(アエロジル300、日本アエロジル(株)製、平均一次粒子径7nm、100部)を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機(ブレード周速30m/秒)を使用して予備分散液2を作製した。次に得られた予備分散液2を高圧ホモジナイザーにて処理し平均凝集粒子径140nmの気相法シリカ分散液2を得た。
【0061】
<インク受容層塗布液A>
湿式粉砕シリカ分散液1(シリカ固形分として) 100部
ホウ酸 2.5部
ポリビニルアルコール 15部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
界面活性剤 0.1部
メチロールメラミン系化合物 3部
(大日本インキ化学工業(株)製ベッカミンPM−N)
【0062】
<インク受容層塗布液B>
気相法シリカ分散液2(シリカ固形分として) 100部
ホウ酸 5部
ポリビニルアルコール 23部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
界面活性剤 0.3部
【0063】
実施例2
上記インク受容層塗布液A及びBを、シリカの乾燥塗布量がそれぞれ18g/m2、及び7g/m2になるようにした以外は実施例1と同様にして実施例2の記録材料を作製した。
【0064】
比較例1
上記インク受容層塗布液Aを塗布せず、インク受容層塗布液Bのみを25g/m2塗布した以外は実施例1と同様にして比較例1の記録材料を作製した。
【0065】
比較例2
上記インク受容層塗布液Bを塗布せず、インク受容層塗布液Aのみを25g/m2塗布した以外は実施例1と同様にして比較例2の記録材料を作製した。
【0066】
比較例3
上記インク受容層塗布液Aにおいてポリビニルアルコール添加量を25部、ホウ酸添加量4.2部とした以外はインク受容層塗布液Aと同様にしてインク受容層塗布液Cを作製し、インク受容層塗布液Aの替わりにインク受容層塗布液Cを塗布した以外は実施例1と同様にして比較例3の記録材料を作製した。
【0067】
比較例4
上記インク受容層塗布液Bにおいてポリビニルアルコール添加量を27部、ホウ酸添加量を6部とした以外はインク受容層塗布液Bと同様にしてインク受容層塗布液Dを作製し、インク受容層塗布液Dの替わりにインク受容層塗布液Dを塗布した以外は実施例1と同様にして比較例4の記録材料を作製した。
【0068】
比較例5
上記予備分散液1に、ジルコニアビーズの直径を0.3mmから3mmに替えて湿式粉砕シリカ分散液3を作製した。該湿式粉砕シリカ分散液3の平均二次粒子径は800nmであった。上記インク受容層塗布液Aにおいて湿式粉砕シリカ分散液1の替わりに上記湿式粉砕シリカ分散液3を使用した以外はインク受容層塗布液Aと同様にしてインク受容層塗布液Eを作製し、インク受容層塗布液Aの替わりにインク受容層塗布液Eを塗布した以外は実施例1と同様にして比較例5の記録材料を作製した。
【0069】
上記のようにして作製したインクジェット記録材料について下記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0070】
<インク吸収性>
インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製、PM−880C)にてシアン、マゼンタ、イエロー単色100%と、3重色300%をそれぞれ印字して、印字直後にPPC用紙を印字部に重ねて軽く圧着し、PPC用紙に転写したインク量の程度を目視で観察し、下記の基準で総合で評価した。
◎:全く転写しない。
○:100%部分には転写がなく、300%部分にはわずかに転写がある。
×:100%部分では転写がなく、300%部分ではインクがあふれており、PPC用紙にはっきりと転写する。
××:100%部分で転写がある。
【0071】
<発色性>
風景と人物像を含む画像をインクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製、PM−880C)にて印字し、見た目の風合いを下記基準にて判定した。
○:カラー写真並みの風合いを有する
×:カラー写真に比べ見劣りする
××:カラー写真に比べ大いに見劣りする
なお、比較例4はインクがあふれてしまっていたため、本評価を行うことができなかった。
【0072】
<耐折り割れ性>
記録材料を10℃20%RHの条件下にて24時間シーズニングし、同温湿度条件にて折り割れ性を判定した。判定方法は、記録材料を12cmの長さに裁断し、インク受容層を外側にして円弧状に折り曲げていき破砕音が聞こえた時の円弧の直径を測定する方法である。数値が小さい、つまり、直径が小さい方がより耐折り割れ性が良好であり折り割れがしにくいことを示す。2インチコアのロール状に巻き取られた製品も市販されていることから、少なくとも50mm以下の数値を示す必要がある。
【0073】
【表1】
【0074】
上記結果から実施例1のインクジェット記録材料は、良好なインク吸収性、及び発色性を有しており、耐折り割れ性に優れていることがわかる。
【0075】
実施例3
下記配合のインク受容層塗布液Fを作製し、支持体に近い方から実施例1で用いたインク受容層塗布液A、インク受容層塗布液B、インク受容層塗布液Fの順でスライドビード塗布装置で同時塗布し、乾燥し実施例3の記録材料を得た。乾燥時の温度条件は実施例1と同様に行った。各層のシリカの乾燥塗布量は支持体に近い方からそれぞれ23g/m2、2g/m2、及び1g/m2になるように塗布した。
【0076】
<インク受容層塗布液F>
コロイダルシリカ(シリカ固形分として) 100部
(日産化学工業(株)製スノーテックスAK−L、平均粒子径40nm)
ポリビニルアルコール 5部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
界面活性剤 0.3部
【0077】
上記実施例3のインクジェット記録材料は、インク吸収性、発色性及び耐折り割れ性は実施例1と同等であった。更に光沢性及び耐傷性に関しては実施例1よりも優れていた。耐傷性はインクジェット記録材料を3cm×4cmに切り取り印字面とは反対面を1200gのおもりに貼り付けた。このおもりに貼り付けられたサンプルを印字面を下にしてPPC用紙の上にのせて、50cm/minの速度でおもりに貼り付けられたサンプルを20cm引っ張り、印字部の画像の乱れとPPC用紙への転写度合いを目視にて判定、評価した。
【0078】
上記結果から、支持体から最も遠い層にコロイダルシリカを主体に含有する層を有すること層を有することによって、良好なインク吸収性、発色性及び耐折り割れ性を有して、更に高光沢で耐傷性にも優れていることがわかる。
【0079】
【発明の効果】
上記結果から明らかなように、本発明によれば、インク吸収性、発色性、及び耐折り割れ性に優れ、更に光沢性及び耐傷性にも優れたインクジェット記録材料が得られる。
Claims (6)
- 支持体に近い方から順に、湿式法シリカを水性媒体中で平均二次粒子径が500nm以下まで粉砕したシリカ微粒子と、該シリカ微粒子に対して20質量%未満のポリビニルアルコールとを含有するインク受容層、気相法シリカと該気相法シリカに対して25質量%未満のポリビニルアルコールを含有するインク受容層、とを少なくとも有することを特徴とするインクジェット記録材料。
- 支持体より最も遠い層にコロイダルシリカを主体として含有する層を有することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録材料。
- 前記湿式法シリカを含有するインク受容層がホウ酸またはホウ酸塩を含有する請求項1に記載のインクジェット記録材料。
- 前記気相法シリカの乾燥塗布量が4g/m2以下である請求項1に記載のインクジェット記録材料。
- 前記気相法シリカを含有するインク受容層がホウ酸またはホウ酸塩を含有する請求項1に記載のインクジェット記録材料。
- 前記支持体が耐水性支持体である請求項1に記載のインクジェット記録材料。
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