JP2004001449A - 校正用インクジェット記録材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】印刷校正に適し、コックリング、インク吸収性に優れ、光による経時褪色の少ない、校正対象の印刷用紙に面感が類似し、インクジェットの印字画像と校正対象の印刷用紙に印刷した画像との見栄えが類似した校正用インクジェット記録材料を提供することにある。
【解決手段】耐水性支持体上に、無機微粒子と親水性バインダーを含有する少なくとも1層のインク受像層を設けたインクジェット記録材料において、該耐水性支持体のJIS−B0601に記載されるカットオフ値0.8mmの中心線平均粗さ(Ra75)が1.0μm以下であり、少なくとも該耐水性支持体から最も離れた最上層の該インク受像層が平均粒径1〜10μmのマット剤及び平均粒径1μm以下の有色顔料を含有することを特徴とする校正用インクジェット記録材料。
【選択図】 無し

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録方式を利用した、コックリングの無い、インク吸収性が良好な、印刷校正用に使用されるインクジェット記録材料に関するものである。更に詳しくは、校正対象の印刷用紙に面感が類似し、インクジェットで印字した画像と印刷用紙に印刷したものとの見栄えが類似した、印刷校正用に適した校正用インクジェット記録材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェットプリンターやプロッターの目ざましい進歩により、フルカラーでしかも高精細な画像が容易に得られるようになってきた。
【0003】
インクジェット記録方式は、種々の作動原理によりインクの微小液滴を飛翔させて紙等の記録シートに付着させ、画像・文字等の記録を行うものである。インクジェットプリンターやプロッターはコンピューターにより作成した文字や各種図形等の画像情報のハードコピー作成装置として、種々の用途に於いて近年急速に普及している。特に多色インクジェット方式により形成されるカラー画像は製版方式による多色印刷やカラー写真方式による印画に比較しても遜色のない記録を得ることが可能であり、更に作成部数が少ない用途に於いては、印刷技術や写真技術よりも安価で済むことから広く応用されつつある。
【0004】
近年、インクジェット記録方式を利用した記録材料を使用して、印刷物の仕上がりを事前に確認する為に印刷校正用として利用されることも多くなってきた。最近のプリンターでは印刷校正用専用機とした製品も市場に出てきており、それに対応した記録材料の商品化が望まれていた。ここで印刷校正用として使用されるインクジェット記録材料は、印刷用紙の色や面感を忠実に再現することが最も重要である。
【0005】
また、一般に印刷に用いられる印刷用紙の色合いは、純粋な白ではなく、目的に応じて色合いを持たせているのが一般的である。一方インクジェット記録材料は、インク吸収性、色彩再現性などを要求され、使用する顔料や接着剤及び各種添加剤に工夫がなされている。顔料としては吸収性を得るために多孔性の合成顔料を使用することが多く、しかもインクジェット画像の色彩性を鮮明にするために、その色合いは顔料に由来した独特の白さのものとなる。
【0006】
既存のインクジェット記録材料は、印刷校正用として利用するには、対象とする印刷用紙との明度、色度や面感が大きく異なっており、また、光源の違いによる色相の変動、経時での光による褪色が大きいといった問題から、満足する品質を得ることは難しかった。
【0007】
従来、色剤を添加して色相を印刷用紙に合わせる方法が特開2001−277702号公報に記載されている(特許文献1参照)。しかしながら、耐水性支持体を用い、色剤に有色顔料を用いることの記載や、それらによるコックリング、経時褪色の改良及び面感に関する記載はない。
【0008】
また、インク吸収層の平均表面粗さを特定して面感を調整する方法が特開2000−52649号公報に記載されている(特許文献2参照)。しかしながら、耐水性支持体の表面粗さに関する記載はなく、インク吸収層のみで校正対象とする印刷用紙に面感をあわせるのは困難である。
【0009】
また、耐水性支持体の中心線平均粗さ(Ra)を特定して、光沢差を改善する、または、高い光沢、平滑性を得る方法が特開平7−25133号、特開2001−341409号に記載されている(特許文献3、4参照)。しかしながら、有色顔料、マット剤の粒径を特定して面感を調整する記載や校正用として使用する記載はない。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−277702号公報(第2頁〜第3頁)
【特許文献2】
特開2000−52649号公報(第2頁)
【特許文献3】
特開平7−25133号公報(第2頁)
【特許文献4】
特開2001−341409号公報(第2頁)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、印刷校正に適し、コックリング、インク吸収性に優れ、光による経時褪色の少ない、校正対象の印刷用紙に面感が類似し、インクジェットの印字画像と校正対象の印刷用紙に印刷した画像との見栄えが類似した校正用インクジェット記録材料を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、主として、耐水性支持体上に、無機微粒子と親水性バインダーを含有する少なくとも1層のインク受像層を設けたインクジェット記録材料において、該耐水性支持体のJIS−B0601に記載されるカットオフ値0.8mmの中心線平均粗さ(Ra75)が1.0μm以下であり、少なくとも該耐水性支持体から最も離れた最上層の該インク受像層(以下最上層のインク受像層と記載する)が平均粒径1〜10μmのマット剤、及び平均粒径1μm以下の有色顔料を含有することを特徴とする校正用インクジェット記録材料によって解決された。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の校正用インクジェット記録材料を詳細に説明する。
本発明に用いられる耐水性支持体としては、合成紙、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロハン、セルロイド等のプラスチック樹脂フィルム、及び紙の両面にポリオレフィン樹脂をラミネートした樹脂被覆紙等が挙げられる。本発明においてこれら耐水性支持体は、校正対象印刷用紙に面感を類似させるため、JIS−B0601に記載されるカットオフ値0.8mmの中心線平均粗さ(Ra75)が1.0μm以下である必要があり、例えば、熱可塑性樹脂の熱溶融押出ラミネート法でのクーリングロールに鏡面加工もしくは微粗面加工したものや、熱カレンダー処理を行い表面を平滑にしたもの等を用いることができる。Ra75が1.0μmを越えるものを使用しても、インク受像層によって校正対象印刷用紙に面感を類似させることができず、本発明では使用することができない。本発明では、特に校正対象印刷用紙に面感が類似させやすいため、樹脂被覆紙が好ましく用いられる。
【0014】
本発明において好ましく用いられる樹脂被覆紙を構成する原紙は、特に制限はなく、一般に用いられている紙が使用できるが、より好ましくは例えば写真用支持体に用いられているような平滑な原紙が好ましい。原紙を構成するパルプとしては天然パルプ、再生パルプ、合成パルプ等を1種もしくは2種以上混合して用いられる。この原紙には一般に製紙で用いられているサイズ剤、紙力増強剤、填料、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料等の添加剤が配合される。
【0015】
さらに、表面サイズ剤、表面紙力剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、染料、アンカー剤等が表面塗布されていてもよい。
【0016】
また、原紙の厚みに関しては特に制限はないが、紙を抄造中または抄造後カレンダー等にて圧力を印加して圧縮するなどした表面平滑性の良いものが好ましく、その坪量は30〜250g/mが好ましい。
【0017】
樹脂被覆紙の樹脂としては、ポリオレフィン樹脂や電子線で硬化する樹脂を用いることができる。ポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテンなどのオレフィンのホモポリマーまたはエチレン−プロピレン共重合体などのオレフィンの2つ以上からなる共重合体及びこれらの混合物であり、各種の密度、溶融粘度指数(メルトインデックス)のものを単独にあるいはそれらを混合して使用できる。
【0018】
また、樹脂被覆紙の樹脂中には、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウムなどの白色顔料、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩、イルガノックス1010、イルガノックス1076などの酸化防止剤、コバルトブルー、群青、セシリアンブルー、フタロシアニンブルーなどのブルーの顔料や染料、コバルトバイオレット、ファストバイオレット、マンガン紫などのマゼンタの顔料や染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤などの各種の添加剤を適宜組み合わせて加えるのが好ましい。
【0019】
本発明において好ましく用いられる支持体である樹脂被覆紙は、走行する原紙上にポリオレフィン樹脂の場合は、加熱溶融した樹脂を流延する、いわゆる押出コーティング法により製造され、その両面が樹脂により被覆される。また、電子線により硬化する樹脂の場合は、グラビアコーター、ブレードコーターなど一般に用いられるコーターにより樹脂を塗布した後、電子線を照射し、樹脂を硬化させて被覆する。また、樹脂を原紙に被覆する前に、原紙にコロナ放電処理、火炎処理などの活性化処理を施すことが好ましい。支持体のインク受像層が塗布される面(表面)は、光沢面を有する。裏面に樹脂を被覆する必要はないが、カール防止の点から樹脂被覆したほうが好ましい。裏面は通常無光沢面であり、表面あるいは必要に応じて表裏両面にもコロナ放電処理、火炎処理などの活性処理を施すことができる。
【0020】
本発明に用いられる樹脂被覆紙において、インク受像層が塗設される面に、インク受像層と支持体との接着強度を強くする等の理由から、下引き層を有することができる。この下引き層は、インク受像層が塗設される前に、予め支持体の樹脂層表面に塗布乾燥されたものである。この下引き層は、皮膜形成可能な水溶性ポリマーやポリマーラテックス等を主体に含有する。好ましくは、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース等の水溶性ポリマーであり、特に好ましくはゼラチンである。これらの水溶性ポリマーの付着量は、10〜500mg/mが好ましく、20〜300mg/mがより好ましい。更に、下引き層には、他に界面活性剤や硬膜剤を含有するのが好ましい。また、樹脂被覆紙に下引き層を塗布する前には、コロナ放電することが好ましい。
【0021】
本発明における支持体には帯電防止性、搬送性、カール防止性などのために、各種のバックコート層を塗設することができる。バックコート層には無機帯電防止剤、有機帯電防止剤、親水性バインダー、ラテックス、硬化剤、顔料、界面活性剤などを適宜組み合わせて含有せしめることができる。
【0022】
また、本発明のインク受像層に用いられる無機微粒子は、平均粒径が1μmより小さい物であり、合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン等公知のものが使用される。好ましくは、合成シリカ、アルミナ、及びアルミナ水和物が使用され、校正対象印刷用紙に面感を類似させやすいために、合成シリカを用いることが特に好ましい。
【0023】
合成シリカは、製造法によって気相法シリカ、湿式法シリカ、及びその他に大別することができる。湿式法シリカは、さらに製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。沈降法シリカは珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の行程を経て製品化される。この方法で製造されたシリカ二次粒子は緩やかな凝集粒子となり、比較的粉砕し易い粒子が得られる。沈降法シリカとしては、例えば日本シリカ(株)からニップシールとして、(株)トクヤマからトクシール、ファインシールとして市販されている。ゲル法シリカは珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造する。この場合、熟成中に小さなシリカ粒子が溶解し、大きな粒子の一次粒子間に一次粒子どうしを結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。例えば、水澤化学(株)からミズカシルとして、グレースジャパン(株)からサイロジェットとして市販されている。ゾル法シリカは、コロイダルシリカとも呼ばれ、ケイ酸ソーダの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られ、例えば日産化学工業(株)からスノーテックスとして市販されている。
【0024】
本発明において、好ましく用いられる湿式法シリカは、沈降法シリカあるいは、ゲル法シリカであり、より好ましくは沈降法シリカである。これらの湿式法シリカは、通常1μm以上の平均二次粒径を有するため、これを微粉砕して使用する。粉砕方法としては、水性媒体中に分散したシリカを機械的に粉砕する湿式分散法が好ましく使用できる。湿式分散機としては、ボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜施回型分散機等を使用することができるが、本発明では特にビーズミル等のメディアミルの使用が好ましい。
【0025】
本発明の湿式法シリカの粉砕は、カチオン性化合物の存在下で行うことが好ましい。水中に分散されたシリカにカチオン性化合物を添加すると凝集物が発生することが多いが、これを粉砕処理することによって、水のみに分散するよりも高濃度分散が可能となり、その結果分散効率が上昇し、より微粒子に粉砕することができる。更に、高濃度分散液を使用することによって、塗布液調製時に塗布液の高濃度化が可能になり、生産効率が向上する等の利点がある。特にこの際平均二次粒径が5μm以上の湿式法シリカを使用すると、初期の凝集物発生による粘度上昇が抑制され、より高濃度での分散が可能となるため、さらに有利である。平均二次粒径の上限は特にないが、通常湿式法シリカの平均二次粒径は200μm以下である。
【0026】
カチオン性化合物としては、カチオン性ポリマーまたは水溶性金属化合物を使用できる。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、特開昭59−20696号、同昭59−33176号、同昭59−33177号、同昭59−155088号、同昭60−11389号、同昭60−49990号、同昭60−83882号、同昭60−109894号、同昭62−198493号、同昭63−49478号、同昭63−115780号、同昭63−280681号、同平1−40371号、同平6−234268号、同平7−125411号、同平10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。特に、カチオン性ポリマーとしてジアリルアミン誘導体が好ましく用いられる。これらのカチオンポリマーの分子量は、2,000〜10万程度が好ましく、特に2,000〜3万程度が好ましい。分子量が10万よりも大きくなると、分散液が高粘度となりすぎるため好ましくない。
【0027】
水溶性金属化合物としては、例えば水溶性の多価金属塩が挙げられる。カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、チタン、ジルコニウム、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)ニ水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、p−フェノールスルホン酸亜鉛、塩化チタン、硫酸チタン、乳酸チタン、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸二十六水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等が挙げられる。
【0028】
上記の水溶性多価金属化合物の中でも、アルミニウムもしくは周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)からなる化合物が好ましい。特に好ましくは水溶性アルミニウム化合物である。水溶性アルミニウム化合物としては、例えば無機塩としては塩化アルミニウムまたはその水和物、硫酸アルミニウムまたはその水和物、アンモニウムミョウバン等が知られている。さらに、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が知られており、好ましく用いられる。
【0029】
本発明に用いられる周期表4A族元素を含む水溶性化合物としては、チタンまたはジルコニウムを含む水溶性化合物がより好ましい。チタンを含む水溶性化合物としては、塩化チタン、硫酸チタンが挙げられる。ジルコニウムを含む水溶性化合物としては、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム化合物等が挙げられる。本発明に於いて、水溶性とは常温常圧下で水に1質量%以上溶解することを目安とする。
【0030】
本発明の平均二次粒径が500nm以下の湿式法シリカ微粒子を得る具体的な方法としては、まず水中にシリカ及びカチオン性ポリマー及び/またはカチオン性金属化合物の少なくとも1種を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機、プロペラ羽根型分散機、またはローターステーター型分散機等の分散装置の少なくとも1つを用いて予備分散液を得る。必要であれば更に適度の低沸点溶剤等を添加してもよい。カチオン性ポリマーまたは水溶性金属化合物の量は、シリカに対して0.5〜20質量%、好ましくは2〜10質量%である。この範囲にすることによって、シリカ予備分散液の粘度が高くなりすぎず、固形分濃度を高くする事ができる。本発明のシリカ予備分散物の固形分濃度は高いほうが好ましいが、あまり高濃度になると分散不可能となるため、好ましい範囲としては20〜60質量%、より好ましくは30〜50質量%である。
【0031】
上記の方法で得られたシリカ予備分散物をビーズミルで粉砕処理する。ビーズミルとは、内部に撹拌装置を有する容器中にビーズを内填し、容器中に液状物を入れて撹拌装置を回転させてビーズ同士を衝突させることで液状物にせん断力を与えて処理する装置である。ビーズの粒径は0.1〜10mmが一般的であるが、好ましくは0.2〜1mm、より好ましくは0.3〜0.6mmである。ビーズにはガラスビーズ、セラミックスビーズ、金属ビーズ等があるが、耐摩耗性及び分散効率からはジルコニアビーズが好ましい。また、容器中のビーズの添加充填率は一般的には40〜80容量%であり、好ましくは55〜80容量%である。上記分散条件によって、シリカ分散物を効率良く、粗粒残存や凝集物発生もなく、平均二次粒径が500nm以下に粉砕することが可能である。予備分散物を連続で処理する場合で通し回数が1回では粗粒が残りやすい場合には、2回以上処理するほうが好ましい。本発明では粗粒が出来ない範囲で濃度が高い方が、塗布液の高濃度化が可能になり好ましい。本発明のシリカ分散物の固形分濃度の好ましい範囲としては20〜60質量%、より好ましくは30〜50質量%である。市販のビーズミルとしては浅田鉄工社製のナノミル、アイメックス社製のウルトラビスコミル、及びマツボー社製のアミュラー型OBミル、シンマルエンタープライゼス社製のダイノミル等が挙げられる。
【0032】
気相法シリカは、乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは日本アエロジル株式会社からアエロジル、株式会社トクヤマからQSタイプとして市販されており入手することができる。本発明に用いられる気相法シリカは、平均一次粒径が50nm以下であることが好ましい。
【0033】
本発明のインク受像層に含有されるアルミナ、及びアルミナ水和物は、酸化アルミニウムやその含水物であり、結晶質でも非晶質でもよく、不定形や、球状、板状等の形態を有しているものが使用される。両者の何れかを使用していてもよいし、併用してもよい。
【0034】
本発明のアルミナとしては酸化アルミニウムのγ型結晶であるγ−アルミナが好ましく、中でもδグループ結晶が好ましい。γーアルミナは一次粒子を10nm程度まで小さくすることが可能であるが、通常は、数千から数万nmの二次粒子結晶を超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で50〜300nm程度まで粉砕したものが好ましく使用できる。
【0035】
アルミナ水和物は、Al・nHO(n=1〜3)の構成式で表される。nが1の場合がベーマイト構造のアルミナ水和物を表し、nが1より大きく3未満の場合が擬ベーマイト構造のアルミナ水和物を表す。アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等の公知の製造方法により得られる。
【0036】
上記アルミナ水和物の平均一次粒径は、5〜50nmが好ましく、特に5〜30nmでかつ平均アスペクト比(平均厚さに対する平均粒径の比)が2以上の平板状の粒子を用いるのが好ましい。
【0037】
本発明の校正用インクジェット記録材料は、無機微粒子と親水性バインダーを含有するインク受像層は2層以上であっても良く、インク受像層には、無機微粒子を固形分で合計8g/m以上含有するのが好ましく、10〜35g/mの範囲で用いるのがより好ましい。この範囲により、インク吸収性、塗層強度が良好である。
【0038】
本発明において、無機微粒子は、インク受像層の主たる割合、すなわちインク吸収層の全固形分に対して無機微粒子を50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上含有することが好ましい。
【0039】
本発明の無機微粒子のBET法による比表面積は10m/g以上、好ましくは20m/g以上である。特に好ましく用いられる気相法シリカのBET法による比表面積は80m/g以上であり、より高い光沢を得るためにはBET法による比表面積が130m/g以上、特に200m/g以上のものを用いることである。本発明で云うBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて、表面積が得られる。
【0040】
また、本発明において、校正用インクジェット記録材料と校正対象の印刷用紙との色差の成分の絶対値は1.5以下であることが、校正対象印刷用紙に色合いを類似させやすいために好ましい。そのためには、本発明の校正用インクジェット記録材料に、平均粒径が1.0μm以下の有色顔料により調整する必要がある。本発明の校正用インクジェット記録材料と校正対象の印刷用紙との色差の成分の絶対値とは、校正用インクジェット記録材料のJIS−Z8722、並びにJIS−Z8720で規定される色の測定方法及び測定光源に従って測定され、JIS−Z8729で規定される明度指数(L*)及び知覚色度指数(a*、b*)の値と、校正対象の印刷用紙の明度指数(L*)及び知覚色度指数(a*、b*)の値から、JIS−Z8730で規定される色差の成分(△L*、△a*、△b*)の絶対値を計算したものである。更に具体的には、測定条件はD−n P、(JIS−Z8722中の6.3.2参照)、光源を標準の光D65を用いて行う。
【0041】
また、本発明の校正用インクジェット記録材料の無機微粒子と親水性バインダーを含有する少なくとも最上層のインク受像層には、校正対象の印刷用紙に応じて面感等を類似させる目的で、平均粒径1〜10μmの無色または白色のマット剤を添加する必要があり、平均粒径2〜4μmのマット剤を使用するのが特に好ましい。平均粒径1μm未満、もしくは、10μmを超えるものを使用した場合には、面感等が校正対象の印刷用紙同様のものが得られない。また、マット剤の添加量は、校正対象印刷用紙により決定されるが、添加されるインク受像層の全固形分質量に対して通常0.1〜10質量%使用される。また、マット剤は単分散のものあるいは多分散のものであってもよく、その分散度(標準偏差/平均粒径)は0.2〜10のものを用いることができる。
【0042】
本発明で使用される平均粒径1〜10μmの無色または白色のマット剤としては、平均一次粒径、または平均二次粒径が1〜10μmの無機または有機顔料が使用できる。例えば、ケイソウ土、クレー、焼成クレー、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、二酸化チタン被覆雲母、硫酸バリウム、モリブデンホワイト、亜鉛華、リトポン、硫化亜鉛、石膏、鉛白、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、ゼオライト、水酸化マグネシウム、酸化チタン、シリカ、ガラス粉、硫酸バリウム等の無機顔料、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリレート共重合樹脂等の有機顔料など、公知のものが挙げられる。面感を校正対象の印刷用紙に近づけやすい、無機顔料を用いることが特に好ましい。
【0043】
本発明のインク受像層の少なくとも最上層には、着色剤として、平均一次粒径、または平均二次粒径として1μm以下、好ましくは0.1〜1μmの有色顔料を使用する。着色剤として有色染料を用いると、光褪色が激しく、また、校正対象印刷用紙に面感を類似させるのが困難であり、有色顔料を用いる必要がある。中心線平均粗さ(Ra75)が1.0μm以下の耐水性支持体を用いても、有色顔料が平均粒径1μmを超える場合、色合いも含めた面感が校正対象印刷用紙に類似しなくなるため使用できない。より好ましくは、有色顔料が面感に影響を与えないために、耐水性支持体の中心線平均粗さ(Ra75)をr、有色顔料の平均粒径をdとすると、r≧dを満たす有色顔料を用いることである。
【0044】
本発明で使用される有色顔料としては、例えば、チタンブラック、チタニウムイエロー、群青、紺青、コバルト青、カーボンブラック、鉄黒、酸化亜鉛、酸化コバルト、酸化珪素、水酸化アルミニウム、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、染色レーキ、澱粉、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン樹脂などの合成樹脂粒子、シリコーン粒子などの有色顔料があげられるが、これらに限定されるものではない。また、本発明の有色顔料として、白色度を向上させて色合いを類似させるため、白色の顔料も使用しても良い。例えば、ケイソウ土、クレー、焼成クレー、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、二酸化チタン被覆雲母、硫酸バリウム、モリブデンホワイト、亜鉛華、リトポン、硫化亜鉛、石膏、鉛白、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、ゼオライト、水酸化マグネシウム、酸化チタン、シリカ、ガラス粉、硫酸バリウム等の無機顔料、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリレート共重合樹脂等の有機顔料など、公知のものが挙げられる。
【0045】
本発明でインク受像層に添加される有色顔料の固形分量は、所望の色合いが出せるものであれば、校正対象印刷用紙により特に限定されないが、添加されるインク受像層中の全固形分質量に対して通常0.001〜1質量%使用される。
【0046】
本発明では、耐水性支持体のJIS−B0601に記載されるカットオフ値0.8mmの中心線平均粗さ(Ra75)が1.0μm以下の耐水性支持体を用い、少なくとも最上層のインク受像層に平均粒径1〜10μmの無色または白色のマット剤および平均粒径1μm以下の有色顔料を含有させることで、校正対象の印刷用紙に類似させることができる。平均粒径1〜10μmの無色または白色のマット剤、平均粒径1μm以下の有色顔料を併用する理由として、マット剤を用いることなく、有色顔料のみで校正対象印刷用紙に類似させようとしても、色感をあわせると面感が類似せず、逆に面感をあわせると色感が類似しないというように、面感、色感を同時に満足するものを製作することは困難であり、また、マット剤のみを用いることで校正対象印刷用紙に類似させようとしても、色感を類似させることが困難であり、両者を併用する必要があるからである。
【0047】
無機微粒子と親水性バインダーを含有するインク受像層が2層以上である本発明の校正用インクジェット記録材料において、少なくとも最上層のインク受像層に平均粒径1〜10μmの無色または白色のマット剤、平均粒径1μm以下の有色顔料を添加する必要があるが、最上層以外のインク受像層に平均粒径1〜10μmの無色または白色のマット剤、平均粒径1μm以下の有色顔料を添加することが可能である。最上層のインク受像層のみに平均粒径1〜10μmの無色または白色のマット剤、平均粒径1μm以下の有色顔料を添加することにより、マット剤が表面に突出し、有色顔料が上層に影響されずに発色するため、より好ましい。
【0048】
本発明のインク受像層には、皮膜としての特性を維持するために親水性バインダーが用いられ、特に、透明性が高くインクのより高い浸透性が得られる水溶性バインダーが用いられる。親水性バインダーの使用に当たっては、親水性バインダーがインクの初期の浸透時に膨潤して空隙を塞いでしまわないことが重要であり、この観点から比較的室温付近で膨潤性の低い親水性バインダーが好ましく用いられる。ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、澱粉、デキストリン、カルボキシメチルセルロース等やそれらの誘導体が使用されるが、好ましい親水性バインダーは完全または部分ケン化のポリビニルアルコール、またはゼラチンである。特に好ましくはケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したポリビニルアルコールであり、平均重合度200〜5000のものが好ましい。また、親水性バインダー量は、無機微粒子に対して40質量%以下、好ましくは35質量%以下であり、特に10〜30質量%が好ましい。
【0049】
本発明は、上記親水性バインダーと共に架橋剤(硬膜剤)を用いることが好ましい。架橋剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5トリアジン、米国特許第3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、同2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ムコクロル酸の如きハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、クロム明ばん、硫酸ジルコニウム、ほう酸及びほう酸塩の如き無機架橋剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特にほう酸またはほう酸塩が好ましい。
【0050】
本発明において、無機微粒子と親水性バインダーを含有するインク受像層の膜面pHが2.0〜6.5であることが好ましい。その理由として、pHが2.0より低いと光沢感が失われ、又6.5を超えると未プリント部が経時で劣化することがあげられる。インク受像層の膜面pHは、J.TAPPI紙パルプ試験方法N0.49に記載の方法に従って、蒸留水を用い、30秒後に測定した表面pHである。
【0051】
インク受像層のpHは、塗布液の段階で調整するのが好ましいが、塗布液のpHと塗布乾燥された状態での膜面pHとは必ずしも一致しないため、塗布液と膜面pHとの関係を予め実験等によって求めておくことが所定の膜面pHにするために必要である。インク受像層塗布液のpHは、酸またはアルカリを適当に組み合わせて行われる。酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、コハク酸等の有機酸が用いられ、アルカリとしては、水酸化ナトリウム、アンモニア水、炭酸カリウム、リン酸三ナトリウム、または弱アルカリとして、酢酸ナトリウム等の弱酸のアルカリ金属塩が用いられる。
【0052】
本発明のインク受像層は、更に皮膜の脆弱性を改良するために各種油滴を含有することができる。そのような油滴としては室温における水に対する溶解性が0.01質量%以下の疎水性高沸点有機溶媒(例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等)や重合体粒子(例えば、スチレン、ブチルアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等の重合性モノマーを一種以上重合させた粒子)を含有させることができる。そのような油滴は好ましくは親水性バインダーに対して10〜50質量%の範囲で用いることができる。
【0053】
本発明において、インク受像層に界面活性剤を添加することができる。用いられる界面活性剤はアニオン系、カチオン系、ノニオン系、ベタイン系のいずれのタイプでもよく、また低分子のものでも高分子のものでもよい。1種もしくは2種以上界面活性剤をインク受理層塗液中に添加するが、2種以上の界面活性剤を組み合わせて使用する場合は、アニオン系のものとカチオン系のものとを組み合わせて用いることは好ましくない。界面活性剤の添加量はインク受像層を構成するバインダー100gに対して0.001〜5gが好ましく、より好ましくは0.01〜3gである。
【0054】
本発明において、インク受像層には更に、インク染料の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0055】
本発明において、インク受像層の塗布方法は任意の方法が用いられ、例えばスライドリップ方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、エアナイフ方式、ロールコーティング方式、ロッドバーコーティング方式等がある。本発明ではインク受像層塗布組成物の塗液を高濃度で塗布しても良好な面質が得られるのはカーテン方式である。カーテン塗布により支持体の表面形状によらない均一なインク受像層が得られ、インク受像層の乾燥効率が高くなり、乾燥工程での表面の風紋等の発生が少ないので均一な表面と優れたインク吸収性のインクジェット記録材料が得られる。
【0056】
本発明でインク受像層をカーテン方式で塗布する場合には、インク受像層塗布組成物の塗液粘度は一般的には40〜2500mPa・sであり、好ましくは100〜2000mPa・sである。40mPa・sより低いとカーテン膜の延伸時の乱れが発生しやすく、2500mPa・sより高いとカーテン膜の落下点が下流に移動するので空気同伴により塗布むらが発生しやすい。インク受像層塗布組成物の塗布液固形分濃度は、上記の粘度範囲内に調整されるが、一般的には14〜40質量%である。塗布液を高濃度で塗布することで乾燥効率が向上するのに加えて水等が蒸発するときの表面の荒れを抑えることができるので好ましい。
【0057】
本発明において、インクジェット記録材料には、無機微粒子と親水性バインダーを含有するインク受像層に加え、さらに親水性バインダーや無機微粒子含有の、質感を変えない保護層を設けてもよい。
【0058】
【実施例】
以下に、本発明の実施例をあげて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。又、実施例において示す「部」及び「%」は、特に明示しない限り質量部及び質量%を示す。
【0059】
<ポリオレフィン樹脂被覆紙支持体の作製>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)の1:1混合物をカナディアン  スタンダード フリーネスで300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5%、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1.0%、カチオン化澱粉を対パルプ2.0%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5%添加し、水で希釈して1%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量170g/mになるように抄造し、乾燥調湿してポリオレフィン樹脂被覆紙の原紙とした。抄造した原紙に、密度0.918g/cmの低密度ポリエチレン100%の樹脂に対して、10%のアナターゼ型チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、200m/分で厚さ30μmになるように押出コーティングし、微粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆して表面の樹脂被覆紙層を設けた。もう一方の面には密度0.962g/cmの高密度ポリエチレン樹脂70部と密度0.918の低密度ポリエチレン樹脂30部のブレンド樹脂組成物を同様に320℃で溶融し、厚さ30μmになるように押出被覆して裏面の樹脂被覆層を設けた。
【0060】
上記ポリオレフィン樹脂被覆紙の表面の樹脂被覆層に高周波コロナ放電処理を施した後、下記組成の下引き層をゼラチンが50mg/mとなるように塗布乾燥して耐水性支持体Aを作製した。下引き層を設ける前の表面の樹脂被覆層の中心線平均粗さRa75は0.8μmであった。
【0061】
<下引き層>
石灰処理ゼラチン                       100部
スルフォコハク酸−2−エチルヘキシルエステル塩          2部
クロム明ばん                          10部
【0062】
また、耐水性支持体Aの表面の樹脂被覆層を設ける際に用いたクーリングロールを更に凹凸の粗い粗面に型付けされたものに代えた以外は同様にして、耐水性支持体Bを作製した。下引き層を設ける前の表面の樹脂被覆層の中心線平均粗さRa75は1.5μmであった。
【0063】
また、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)の1:1混合物をカナディアン  スタンダード  フリーネスで300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5%、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1.0%、カチオン化澱粉を対パルプ2.0%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5%添加し、水で希釈して1%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量170g/mになるように抄造し、乾燥調湿して紙支持体Cとした。
【0064】
上述した耐水性支持体Aの表面に、インク受像層として下記配合からなる塗布液をスライド塗布装置により塗布量が固形分22g/mになるように塗布、乾燥してインク受像層を設け、実施例1のインクジェット記録材料を作製した。
【0065】
<インク受像層配合>
気相法シリカ                          100部
(平均粒径7nm、BET法による比表面積300m/g)
ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー         4部
(第一工業製薬(株)製、シャロールDC902P、分子量9000)
ほう酸                               3部
ポリビニルアルコール                       20部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
界面活性剤                           0.3部
有色顔料A                          0.01部
(TB500、平均粒径0.3μm、大日精化社製)
有色顔料B                         0.016部
(TB910、平均粒径0.3μm、大日精化社製)
マット剤                              1部
(湿式シリカP78A、平均粒径3μm、水澤化学社製)
【0066】
実施例1のインクジェット記録材料において、耐水性支持体Aの代わりに耐水性支持体Bを用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1のインクジェット記録材料を作製した。
【0067】
実施例1のインクジェット記録材料において、耐水性支持体Aの代わりに紙支持体Cを用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2のインクジェット記録材料を作製した。
【0068】
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受像層の有色顔料の配合量を有色顔料A0.01部、有色顔料B0.01部に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2のインクジェット記録材料を作製した。
【0069】
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受像層の気相法シリカとジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマーの代わりに湿式粉砕シリカ分散液(平均粒径200nm)を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3のインクジェット記録材料を作製した。尚、湿式粉砕シリカ分散液は下記の通り作製した。
【0070】
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9,000、4部)と沈降法シリカ(ニップシールVN3、平均二次粒径23μm、100部)を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機(ブレード周速30m/秒)を使用して予備分散液を作製した。次に得られた予備分散物をビーズミルに、直径0.3mmのジルコニアビーズ、充填率80容量%、円盤周速10m/秒の条件で1回通過させて、固形分濃度30質量%、平均二次粒径200nmの湿式粉砕シリカ分散液を得た。
【0071】
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受像層の気相法シリカの代わりにアルミナ水和物(平均粒径15nm)を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例4のインクジェット記録材料を作製した。
【0072】
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受像層のポリビニルアルコールの代わりにゼラチン(ニッタゼラチン社製、IK−2000)を80部用いた以外は実施例1と同様にして、実施例5のインクジェット記録材料を作製した。
【0073】
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受像層の有色顔料の配合を有色顔料A0.01部、有色顔料B0.02部と変更した以外は実施例1と同様にして、実施例6のインクジェット記録材料を作製した。
【0074】
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受像層のマット剤としてポリスチレン樹脂(平均粒径4μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例7のインクジェット記録材料を作製した。
【0075】
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受像層のマット剤として湿式シリカP527(水澤化学社製、平均粒径1.5μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例8のインクジェット記録材料を作製した。
【0076】
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受像層のマット剤として湿式シリカP766(水澤化学社製、平均粒径6.5μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例9のインクジェット記録材料を作製した。
【0077】
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受像層の有色顔料Aに代えて、平均粒径0.9μmとなるように分散したPig.Orange−13を用い、また、インク受像層の有色顔料Bに代えて、平均粒径0.9μmとなるように分散したPig.Yellow−83を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例10のインクジェット記録材料を作製した。
【0078】
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受像層のマット剤として湿式シリカP526U(水澤化学社製、平均粒径0.6μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例3のインクジェット記録材料を作製した。
【0079】
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受像層のマット剤として湿式シリカニップジェルBY−001(日本シリカ工業社製、平均粒径14μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例4のインクジェット記録材料を作製した。
【0080】
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受像層の有色顔料Aに代えて、平均粒径1.5μmとなるように分散したPig.Orange−13を用い、また、インク受像層の有色顔料Bに代えて、平均粒径1.5μmとなるように分散したPig.Yellow−83を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例5のインクジェット記録材料を作製した。
【0081】
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受像層の有色顔料Aの代わりに染料着色剤(Aizen Primula Orange FPH、保土谷化学工業社製)、有色顔料Bの代わりに染料着色剤(EM Yellow 2MN−2、東洋インキ社製)を同量用いた以外は実施例1と同様にして、比較例6のインクジェット記録材料を作製した。
【0082】
実施例1〜10、及び比較例1〜6のインクジェット記録材料において、インク受像層のマット剤の量を1部から4部に変更することで、実施例11〜20、及び比較例7〜12のインクジェット記録材料を得た。
【0083】
実施例1〜10及び比較例1〜6については、校正対象の印刷用紙Aとして三菱製紙社製アート紙(特菱アート両面N(坪量127g/m))、実施例11〜20及び比較例7〜12については校正対象の印刷用紙Bとして三菱製紙社製コート紙(パールコート(坪量127g/m))を使用した。
【0084】
実施例1〜20及び比較例1〜12のインクジェット記録材料と校正対象の印刷用紙の評価は、以下に示す方法により行い、結果を表1に示す。
【0085】
<明度、色度、色差の成分の絶対値>
明度指数L*、知覚色度指数a*及びb*は、色彩色差計(Gretag Spectrolino)を使用して、得られたインクジェット記録材料を測定した。色差の成分は、各インクジェット記録材料のJIS−Z8722、並びにJIS−Z8720で規定される色の測定方法及び測定光源に従って測定され、JIS−Z8729で規定される明度指数(L*)及び知覚色度指数(a*、b*)の値と、校正対象の印刷用紙の明度指数(L*)及び知覚色度指数(a*、b*)の値から、JIS−Z8730で規定される色差の成分(△L*、△a*、△b*)の絶対値を計算したものである。更に具体的には、測定条件はD−n P、(JIS−Z8722中の6.3.2参照)、光源を標準の光D65を用いて行っている。
【0086】
<光褪色性評価>
インクジェット記録材料の光褪色は、該記録材料をキセノンウエザオメーター(アトラスCi4000、0.2W/m(340nm))にて120時間処理し、光褪色の度合いを評価した。処理前後の色がほとんど変わらないものを○、若干変化するものを△、色の変化が強く感じられるものを×とした。
【0087】
<見栄え評価>
得られたインクジェット記録材料に、インクジェットプリンター(MC7000C:セイコーエプソン社製)で、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローのベタ画像とJIS−X9201記載の標準画像N3(果物かご)を印字し、印刷物としての色感を総合的に評価した。尚、評価では対象印刷用紙にオフセット印刷で同様の印刷を施したものとの比較で評価した。感覚的違いの少ないものを○、違いがやや感じられるものを△、違いが強く感じられるものを×とした。
【0088】
<面感評価>
各記録材料の面感を印刷用紙と比較し、感覚的に評価した。校正対象印刷用紙との感覚的違いの少ないものを○、違いがやや感じられるものを△、違いが強く感じられるものを×とした。
【0089】
<コックリング評価>
コックリング評価は、インクジェットプリンター(PM950C:セイコーエプソン社製)を用い、青印字の重色ベタ印字を行い、紙しわの状態を目視にて評価した。紙しわの発生がほとんどないものを○、紙しわの発生が若干あるものを△、紙しわがひどく発生するものを×とした。
【0090】
【表1】
Figure 2004001449
【0091】
表1から、耐水性支持体のJIS−B0601に記載されるカットオフ値0.8mmの中心線平均粗さ(Ra75)が1.0μm以下であり、インク受像層が平均粒径1〜10μmのマット剤及び平均粒径1μm以下の有色顔料を含有する実施例1〜20のインクジェット記録材料は、印刷校正用に使用した場合、その表面の組成が全く異なるにも関わらず、本番印刷後の印刷物に極めて近い面感を実現でき、校正用に適したインクジェット記録材料であることが分かる。それに対し、比較例1〜12では印刷用紙に近い面感を得られず、見栄えも全く異なり、校正用途には不適であることが分かる。
【0092】
上述した耐水性支持体Aの表面に、下記2種類の配合のインク受像層D1、D2塗布液をこの順で同時にスライドビード塗布装置で塗布量がD1が固形分16g/m、D2が固形分8g/mになるように塗布、乾燥してインク受像層を設け、実施例21のインクジェット記録材料を作製した。
【0093】
<インク受像層D1配合>
気相法シリカ                         100部
(平均粒径7nm、BET法による比表面積300m/g)
ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー         4部
(第一工業製薬(株)製、シャロールDC902P、分子量9000)
ほう酸                               3部
ポリビニルアルコール                       20部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
界面活性剤                           0.3部
【0094】
<インク受像層D2配合>
アルミナ水和物                         100部
(平均粒径15nm)
ポリビニルアルコール                       10部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
ホウ酸                               1部
界面活性剤                           0.3部
有色顔料A                          0.01部
(TB500、平均粒径0.3μm、大日精化社製)
有色顔料B                         0.016部
(TB910、平均粒径0.3μm、大日精化社製)
マット剤                              1部
(湿式シリカP78A、平均粒径3μm、水澤化学社製)
【0095】
実施例21のインクジェット記録材料において、有色顔料A、有色顔料B、マット剤を、有色顔料Aを0.005部、有色顔料Bを0.008部、マット剤を0.5部D1に添加した以外は実施例21と同様にして、比較例13のインクジェット記録材料を作製した。
【0096】
実施例21のインクジェット記録材料において、有色顔料A、有色顔料B、マット剤のうち、有色顔料Aを0.0025部、有色顔料Bを0.004部、マット剤を0.25部をD1に、有色顔料Aを0.005部、有色顔料Bを0.008部、マット剤を0.5部をD2に添加した以外は実施例21と同様にして、実施例22のインクジェット記録材料を作製した。
【0097】
実施例21〜22、及び比較例13のインクジェット記録材料において、インク受像層のマット剤の量を1部から4部に変更することで実施例23〜24、及び比較例14のインクジェット記録材料を得た。
【0098】
実施例21〜22及び比較例13については、校正対象の印刷用紙Aとして三菱製紙社製アート紙(特菱アート両面N(坪量127g/m))、実施例23〜24及び比較例14については校正対象の印刷用紙Bとして三菱製紙社製コート紙(パールコート(坪量127g/m))を使用した。
【0099】
実施例21〜24及び比較例13〜14のインクジェット記録材料と校正対象の印刷用紙の評価は、上記に示した方法により行い、結果を表2に示す。
【0100】
【表2】
Figure 2004001449
【0101】
表2から、耐水性支持体のJIS−B0601に記載されるカットオフ値0.8mmの中心線平均粗さ(Ra75)が1.0μm以下であり、インク受像層が平均粒径1〜10μmのマット剤及び平均粒径1μm以下の有色顔料を含有する実施例21〜24のインクジェット記録材料は、印刷校正用に使用した場合、その表面の組成が全く異なるにも関わらず、本番印刷後の印刷物に極めて近い面感を実現でき、校正用に適したインクジェット記録材料であることが分かる。それに対し、比較例13〜14では印刷用紙に近い面感を得られず、見栄えも全く異なり、校正用途には不適であることが分かる。
【0102】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明を実施することにより印刷校正用に適しインクジェット適性のある校正用インクジェット記録材料を提供することが可能となる。

Claims (9)

  1. 耐水性支持体上に、無機微粒子と親水性バインダーを含有する少なくとも1層のインク受像層を設けたインクジェット記録材料において、該耐水性支持体のJIS−B0601に記載されるカットオフ値0.8mmの中心線平均粗さ(Ra75)が1.0μm以下であり、少なくとも該耐水性支持体から最も離れた最上層の該インク受像層が平均粒径1〜10μmの無色または白色のマット剤及び平均粒径1μm以下の有色顔料を含有することを特徴とする校正用インクジェット記録材料。
  2. 前記無機微粒子が、合成シリカ、アルミナ、およびアルミナ水和物のうち少なくとも1種である請求項1に記載の校正用インクジェット記録材料。
  3. 前記合成シリカが、平均一次粒径50nm以下の気相法シリカである請求項2に記載の校正用インクジェット記録材料。
  4. 前記合成シリカが、湿式法シリカを、カチオン性化合物の存在下、水性媒体中でメディアミルを使用して平均粒径500nm以下に粉砕した湿式粉砕シリカである請求項2に記載の校正用インクジェット記録材料。
  5. 前記校正用インクジェット記録材料において、耐水性支持体のJIS−B0601に記載されるカットオフ値0.8mmの中心線平均粗さ(Ra75)をr、有色顔料の平均粒径をdとするとr≧dを満たす、請求項1〜4の少なくともいずれかに記載の校正用インクジェット記録材料。
  6. 前記親水性バインダーがポリビニルアルコールもしくはゼラチンである請求項1〜5の少なくともいずれかに記載の校正用インクジェット記録材料。
  7. 前記マット剤が無機顔料である請求項1〜6の少なくともいずれかに記載の校正用インクジェット記録材料。
  8. 前記耐水性支持体が樹脂被覆紙である請求項1〜7の少なくともいずれかに記載の校正用インクジェット記録材料。
  9. 請求項1〜8の少なくともいずれかに記載の校正用インクジェット記録材料であり、該校正用インクジェット記録材料と校正対象印刷用紙とのJIS Z8730で規定される明度指数(L*)及び知覚色度指数(a*、b*)の色差の成分(△L*、△a*、△b*)の絶対値が、それぞれ1.5以下であることを特徴とする校正用インクジェット記録材料。
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