JPWO2008126944A1 - 高温強度、靭性に優れた鋼材並びにその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このような動向に対応すべく、鋼材の600℃における高温強度の強化機構、(1)フェライト結晶粒径の微細化、(2)合金元素による固溶体強化、(3)硬化相による分散強化、(4)微細析出物による析出強化、のうち、主に析出強化を利用した耐火鋼材が開発されている。
従来、析出強化に寄与する元素であるMo、Ti、Nb等を添加し、炭化物、窒化物等によって高温強度を確保する耐火鋼材が数多く提案されているが、近年、Moの多量の添加による製造コストの上昇、溶接性の低下が問題になった。
このような問題に対して、C及びMoの低減と熱間圧延の終了温度及び巻取温度の制御によって、高温強度の確保と、靭性と溶接性の改善を図った熱延鋼帯が提案されている(例えば、特開平7−300618号公報、参照)。
しかし、これは巻取時に微細なMo、Nbの炭化物を析出させるものであり、固溶Nbを利用していない点で高温強度が十分でなく、また、Tiを含有させ、溶接熱影響部(Heat Affeced Zone、HAZという。)への窒化物の析出を抑制したものではないため、HAZの靭性の低下が懸念される。
また、C及びMoを低減し、固溶Nbによって高温高度を高め、固溶C及び固溶Nを減じて冷間加工の成形性を確保した鋼板及び鋼管が提案されている(例えば、特開平10−176237号公報、特開2000−54061号公報、特開2000−282167号公報、参照)。しかし、これらはTi/Nが高いため、粗大なTiNが析出し、特にHAZの靭性の低下が懸念される。
また、高温強度、靭性及び溶接性の確保のため、Moを減じ、Cuの固溶及び析出を利用した耐火鋼材も提案されている(例えば、特開2002−115022号公報、参照)。これは、固溶Nbによって高温強度を高めるものではなく、Nbの添加により、再結晶温度を低下させて結晶粒を細粒化し、また、Nbの析出強化を利用するものである。
さらに、以上例示した特許文献で提案されている鋼材は、何れも、HAZにおける再熱脆化を考慮したものではなかった。再熱脆化とは、HAZが再び高温に加熱された際、炭化物、窒化物の析出によって脆化する、高温脆化である。
また、主として高層建築物の柱材として使用される極厚H形鋼についても、板厚サイズの増大にともない、その製造工程が低圧下量、低冷却速度となるため、薄手の鋼材と比較して充分な加工熱処理を施すことがより難しくなるため、従来技術において、強度を確保するには合金元素を多量に添加することが必要であり、その場合に靭性低下、溶接性低下などを併発する問題が生じていた。
本発明は、C及びNの含有量を制限し、適量のNbを添加して、CとNbの関係を規定して固溶Nbのドラッグ効果(固溶したNbが転位などの格子欠陥に濃化し、欠陥や転位の移動の抵抗となり強度を向上させる現象)を利用して高温強度を高め、更に、微細なTi系酸化物を結晶粒界のピンニングと粒内変態の生成に利用して、HAZの粗大化を抑制して、板厚による機械特性変動の少なく、耐再熱脆化などの高温特性の向上を図り、さらには、母材やHAZの靭性を確保するために、Tiを添加する際の溶鋼中の溶存酸素濃度を調整して、鋼中にTiの微細な酸化物を分散させた鋼材及びその製造方法である。
そのような本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1) 質量%で、C:0.001%以上0.030%以下、Si:0.05%以上0.50%以下、Mn:0.40%以上2.00%以下、Nb:0.03%以上0.50%以下、Ti:0.005%以上0.040%未満、N:0.0008%以上0.0050%未満を含有し、P:0.030%以下、S:0.020%以下に制限し、残部がFe及び不可避不純物からなり、CとNbの含有量が、
C−Nb/7.74≦0.004
を満足し、粒径が0.05〜10μmであるTi系酸化物を30〜300個/mm2の密度で有することを特徴とする高温特性と靭性に優れた鋼材。
(2) 質量%で、V:0.10%以下、Mo:0.10%未満の一方又は双方を含有することを特徴とする上記(1)に記載の高温特性と靭性に優れた鋼材。
(3) 質量%で、Zr:0.03%以下、Hf:0.01%以下の一方又は双方を含有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の高温特性と靭性に優れた鋼材。
(4) 質量%で、Cr:1.5%以下、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下の1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記(1)〜(3)の何れかに記載の高温特性と靭性に優れた鋼材。
(5) 質量%で、Mg:0.005%以下、Al:0.030%以下、REM:0.01%以下、Ca:0.005%以下の1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記(1)〜(4)の何れかに記載の高温特性と靭性に優れた鋼材。
(6) NbとCの質量濃度積が0.0015以上であることを特徴とする上記(1)〜(5)の何れかに記載の高温特性と靭性に優れた鋼材。
(7) 鋼材が耐火鋼材であることを特徴とする上記(1)〜(6)の何れかに記載の高温特性と靭性に優れた鋼材。
(8) 鋼材がフランジ厚40mm以上の極厚H形鋼であることを特徴とする上記(1)〜(6)の何れかに記載の高温特性と靭性に優れた鋼材。
(9) 上記(1)〜(6)の何れかに記載の成分からなる鋼を、溶存酸素を0.003〜0.015質量%に調整した後、Tiを添加して溶製し、鋳造して得られた鋼片を1100〜1350℃に加熱し、熱間圧延することを特徴とする高温特性と靭性に優れた鋼材の製造方法。
(10) 1000℃以下での累積圧下率を10%以上として熱間圧延することを特徴とする上記(9)に記載の高温特性と靭性に優れた鋼材の製造方法。
(11) 熱間圧延後、800℃から500℃までの温度範囲を0.1〜10℃/sの平均冷却速度で冷却することを特徴とする上記(9)又は(10)に記載の高温特性と靭性に優れた鋼材の製造方法。
本発明によれば、十分な常温強度及び高温強度を有し、母材とHAZの靭性及び耐再熱脆化特性に優れた鋼材、特に、耐火H形鋼や極厚H形鋼を、冷間加工及び調質熱処理を施すことなく製造すること、あるいは、板厚の大きいサイズ、例えば、フランジ厚で140mm程度までの極厚H形鋼において、熱間圧延ままで、強度、靭性を確保しつつ製造することが可能になる。
鋼材のうち、熱間圧延で製造するH形鋼は、その形状からフランジ、ウェブ、フィレットの部位に分類され、各々の形状に応じて、圧延温度履歴及び冷却速度が異なるため、同一成分でも機械特性が部位により大きく変化することがあるが、本発明の成分組成を有する鋼は、強度、靭性に及ぼす圧延仕上げ温度依存性及び冷却速度依存性が比較的小さく、H形鋼の断面部位内での材質のばらつきを軽減でき、また、板厚による材質の変化を小さくすることができるため、特に、極厚H形鋼のような板厚の大きなサイズでの強度、靭性の確保及びH形鋼断面内ばらつきの低減が可能となる。
図2は、Ti酸化物の数密度分布が鋼材のHAZの靭性に及ぼす影響を示す図である。
図3は、Ti酸化物の数密度分布が鋼材の再熱脆化特性に及ぼす影響を示す図である。
図4は、Tiを添加する前の溶存酸素量とTi量の関係がTi系酸化物の密度に及ぼす影響を示す図である。
図5は、本発明法を実施する装置配置例として形鋼製造プロセスの略図である。
図6は、H形鋼の断面形状及び機械試験片の採取位置を示す図である。
その結果、Nbの効果を最大限に発揮させるための、低C化、低N化、及び、Tiの添加について、以下の知見を得た。
低C化及び低N化は、ポリゴナルフェライトの生成の抑制及び固溶Nbの確保に有効である。Nbの炭化物であるNbC及び窒化物であるNbNは、ポリゴナルフェライトの生成核となり、かつ、これらの析出によって固溶Nbが減少する。特に、少量のNbの炭化物、窒化物が微細に析出すれば、析出強化による強度向上に寄与するが、溶接後、再び高温に加熱されると、HAZのオーステナイトの結晶粒界(以下、γ粒界ともいう。)にNbCが析出して再熱脆化を発現することがある。
したがって、耐再熱脆化特性を確保するためには、C添加量及びN添加量の上限を規定することは極めて重要である。また、炭素含有量が0.03%超では、部分的に島状マルテンサイトを生成し、靭性が著しく低下することがあるという問題も判明した。
さらに、Tiによる制御脱酸によって、微細なTi系酸化物を鋼中に分散させると、結晶粒をピンニングしてその成長を抑制するため、結晶粒径が微細になる。特に、HAZに見られるような1400℃加熱、急冷といった熱サイクルでの結晶粒粗大化を防止させることができる。
これにより、HAZ靭性が向上するだけでなく、HAZの高温脆化も抑制されることがわかった。
以上の知見を基に、本発明者は、さらに、(1)C及びNbと鋼材の高温強度との関係、(2)一次脱酸で溶存酸素を調整後、Tiを添加して更に脱酸した場合のTi系酸化物の粒径及び数密度分布がHAZ靭性及び耐再熱脆化特性に及ぼす影響について詳細な検討を行った。
本発明者は、質量%で、C:0.001%以上0.030%以下、Si:0.05%以上0.50%以下、Mn:0.4%以上2.0%以下、Nb:0.03%以上0.50%以下、Ti:0.005%以上0.040%未満、N:0.0008%以上0.0050%未満を含有し、P:0.03%以下、S:0.02%以下に制限し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼を、Tiを添加する際の溶存酸素量を変化させて溶製し、鋳造して得られた鋼片を1100〜1350℃に加熱し、1000℃以下での累積圧下率を30%以上として、熱間圧延し、板厚10〜40mmの鋼板を製造した。
鋼板から、JIS Z 2201に準拠して引張試験片を採取し、常温での引張試験をJIS Z 2241に準拠して行い、600℃での引張試験をJIS G 0567に準拠して行った。また、鋼板から小片を採取して、昇温速度10℃/sで1400℃に加熱して1s保持し、800℃から500℃までの冷却に要する時間を10sとして冷却する、HAZの熱履歴を模擬する熱処理(HAZ再現熱処理という。)を施した後、試験片に加工し、JIS Z 2242に準拠してシャルピー衝撃試験を行った。また、Ti系酸化物の粒径と密度を、走査型電子顕微鏡を用いて測定した。
図1は、C及びNbの含有量と高温強度の関係、具体的には、600℃における0.2%耐力(600℃YS)を、C−Nb/7.74に対して示したものである。図において、○及び●は常温の引張強度が400MPa級の鋼材の600℃YSであり、□は490MPa級の鋼材の600℃YSである。
図1から、C−Nb/7.74が0.004以下になると、常温の引張強度が400MPa級、490MPa級の鋼材の、600℃における0.2%耐力が目標値を超え、良好な高温強度が得られることがわかる。
図2は、鋼中において粒径0.05〜10μmのTi系酸化物の数密度分布がHAZ靭性に及ぼす影響を示したものである。図2から、良好なHAZ靭性を得るには、粒径が0.05〜10μmのTi系酸化物を30〜300個/mm2の割合で分散含有することが必要であることがわかる。
また、丸棒の引張試験片を用いて、昇温速度10℃/sで1400℃に加熱して1s保持し、800℃から500℃までの冷却に要する時間を10sとして100℃に冷却するHAZ再現熱処理を施した後、昇温速度を10℃/sとして600℃に再加熱し、絞り値、即ち再熱絞りを測定した。
その結果、図3に示すように、Ti系酸化物の分散が上記の範囲にあるHAZ靭性に優れる鋼材では、再熱絞りも30%以上という良好な結果が得られ、耐再熱脆化特性にも優れることが確認された。
図4は、Tiを添加する前の溶存酸素量とTi量の関係がTi系酸化物の密度に及ぼす影響を示したものである。図4の数値は、粒径が0.05〜10μmのTi系酸化物の密度である。図4から、良好なHAZ靭性を有する粒径0.05〜10μmのTi系酸化物を、30〜300個/mm2の割合で含有する鋼材を得るためには、Ti添加前の一次脱酸後の溶存酸素を、質量%で、0.003〜0.015%、好ましくは0.003〜0.010%に調整し、Tiの含有量を0.005〜0.040%未満、好ましくは0.005〜0.020%とする必要があることがわかる。
以上のように、特に、Bを含有しない耐火形鋼では、低C化及び低N化した上で、さらに、CとNbの関係及びTi系酸化物の粒径、数密度を最適化すると、固溶Nbが確保され、HAZのγ粒界への炭化物及び窒化物の析出が抑制され、再熱脆化の防止に極めて有効であることがわかった。
また、本成分系のさらなるメリットとして、固溶Nbによる適度な焼入れ性を維持するとともに、鋼材強度や靭性に寄与する元素のバランスが極めて良好であり、加熱後の冷却過程における冷却速度による強度や靭性の依存性がほとんどなく、特性のばらつきが非常に少ないため、板厚の大きいサイズに適用した場合には、強度、靭性が、あらゆる部位において高位で維持でき、極厚H形鋼に適した化学成分であることがわかった。
以上の知見に基づく本発明につき、以下、詳細に説明する。まず、Ti系酸化物について説明する。
Ti系酸化物の粒径、密度:
本発明は、微細に分散したTi系酸化物を利用して、特にHAZの結晶粒粗大化をピンニングの効果によって抑制し、HAZ靭性及び再熱脆化特性を向上させた耐火鋼である。この、ピンニングに有効なTi系酸化物の粒径の下限は、0.05μm以上である。Ti系酸化物の粒径が10μmを超えると、破壊の起点となって靭性を阻害する。
また、HAZ靭性及び再熱脆化恃性の向上には、30〜300個/mm2が有効である。粒径が0.05〜10μmのTi系酸化物の密度が、30個/mm2未満では、ピンニングの効果が不十分である。一方、粒径が0.05〜10μmのTi系酸化物の密度が300個/mm2を超えると、亀裂の伝播が促進されて靭性を損なう。
なお、Ti系酸化物とは、TiO2、Ti2O3、これらとSiO2などのSi系酸化物及びAl2O3などのAl系酸化物との複合酸化物、MnSなどの硫化物、TiNなどの窒化物が複合析出したTiを含む酸化物の総称である。
Ti系酸化物の粒径及び密度は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定することができる。Ti系酸化物の同定には、エネルギー分散型X線分析装置を有するSEMを使用することが好ましい。Ti系酸化物は、液相中で晶出し、熱間圧延でも延伸しないため、球状の介在物として観察される。エネルギー分散型X線分析装置を使用すると、球状の介在物がTiを含有する酸化物であることを確認することができる。
SEMにより、5000〜10000倍で、数視野、好ましくは20視野以上を観察し、介在物の個数を数えて、観察部位の面積で割ることにより、密度を算出することができる。なお、粒径が0.05μm未満或いは10μm超の介在物は靭性改善に寄与しないため、密度の算出の際には無視する。
Ti添加前の溶存酸素量:
粒径が0.05〜10μm、密度が30〜300個/mm2のTi系酸化物を鋼中に存在させるには、鋼を溶製する際の、Tiを添加する前の溶存酸素量が重要である。Ti添加前の溶存酸素量が0.003%未満であると、Ti系酸化物の粒径が小さくなり、密度が低下する。一方、Ti添加前の溶存酸素量が、0.015%超になると、Ti系酸化物の粒径が10μmを超えて粗大化し、靭性を阻害する。したがって、Tiを添加する前の溶存酸素量を0.003〜0.015%の範囲とした。鋼を溶製する際、Tiを添加する前にSi及びMnを脱酸剤として用いて脱酸を行えば、溶存酸素量を0.003〜0.015%とすることができる。
次に、本発明の耐火鋼の成分について説明する。
Cは、鋼を強化する元素であり、構造用鋼として必要な強度を得るには、0.001%以上の添加が必要である。一方、0.030%超のCを添加すると、HAZに粗大な炭化物を生じて、靭性及び再熱脆性を低下させ、また、ベイナイト相のラス間に島状マルテンサイトを生成し、母材の靭性が低下する。したがって、C量の下限を0.001%、上限を0.030%とした。なお、再熱脆性及び靭性確保の観点から、下限を0.005%、上限を0.020%とすることが好ましい。
Siは、本発明において重要な脱酸剤であり、また、強度の向上にも寄与する元素である。Tiを添加する前の溶鋼の溶存酸素を0.003〜0.015質量%にするために、また、母材の強度確保のためには、0.05%以上のSi添加が必要である。一方、Si量が0.50%を超えると低融点の酸化物を生成し、スケール剥離性が悪化する。そのため、Si量を0.05%以上0.50%以下とする。また、Si量が0.40%を超えると、溶融メッキ時のムラが発生し、美観性が損なわれことがある。したがって、Si量の上限を0.40%以下とすることが好ましい。
Mnは、本発明において重要な脱酸剤であり、また、焼入れ性を上昇させ、ベイナイト組織の生成量を増加させて、強度及び靭性の向上に寄与する元素である。Tiを添加する前の溶鋼の溶存酸素を0.003〜0.015質量%にするために、また、母材の強度、靭性を確保するためには、0.40%以上の添加が必要である。一方、Mnは、連続鋳造において鋼片を製造する際、鋼片の中心に偏析し易い元素であり、2.00%を超えるMnを添加すると、偏析部の焼入れ性が過度に上昇して靭性が悪化する。
したがって、Mn量を0.40%以上、2.00%以下とする。特に、Mn以外の強化元素の添加量が少ない場合には、Mn添加によって強度を確保するため、1.10%以上を添加することが好ましい。
Nbは、本発明において極めて重要である固溶Nbの確保のために添加する。固溶Nbの確保により、焼入性を上昇させて常温強度を高め、また転位のドラッグ効果により変形抵抗を増加させて高温域においても強度を確保させることができる。このような効果を発現する固溶Nbを確保するため、Nbを0.03%以上添加することが必要である。一方、0.50%超のNbを添加すると、HAZ靭性が劣化するため、上限を0.50%とした。高温強度を更に高めるためには、Nbを0.10%以上添加することが好ましい。
また、Nbは強力な炭化物形成元素であり、過剰なCとNbCを形成して析出するため固溶Nbが減少する。そのため、固溶Nbを確保して、高温強度を向上させるには、
C−Nb/7.74≦0.004
を満たすことが必要である。なお、ここでC、Nbは、それぞれC、Nbの含有量であり、単位は質量%である。
C−Nb/7.74の下限は、Cの下限値とNbの上限値から求めることができるので、特に規定しない。
NbとCの質量濃度積は、固溶Nb量の指標であり、高温強度をさらに向上させるためには、0.0015以上とすることが好ましい。NbとCの質量濃度積とは、質量%で表されるNb及びCの含有量の積である。NbとCの質量濃度積の上限は、Nb及びCの含有量の上限値から求められるので、特に規定しない。
Tiは、上述のようにTi系酸化物を形成する重要な元素である。また、炭化物及び窒化物を生成する元素であり、高温で安定なTiNを形成し易い。TiNの形成によって、NbNの析出を抑制することができるため、Tiの添加は、固溶Nbの確保にも極めて有効である。この効果を得るには、Tiを0.005%以上添加することが必要である。一方、Tiを0.040%以上添加すると、Ti系酸化物、TiNが粗大化し、靭性を損なう。
そのため、Ti量を0.005%以上、0.040%未満とする。微細なTi系酸化物の量を確保し、靭性を向上させる観点から、上限は0.020%が好ましい。
Nは、窒化物を生成する不純物元素である。N量の低減は、固溶Nbの確保に有効であり、上限を0.0050%未満とする。Nの含有量は極力低濃度であることが好ましいが、0.0008%未満とするには、製造コストが増大する。また、靭性確保の観点から、N量の上限を0.0045%とすることが好ましい。
P、Sは不純物であり、過剰に含有すると、凝固偏析による溶接割れ及び靭性の低下を生じる。したがって、P及びSは極力低減すべきであり、それぞれの含有量の上限を0.030%、及び、0.020%とする。
本発明では、さらに、この成分系に、必要に応じてV、Mo、Zr、Hf、Cr、Cu、Ni、Mg、Al、REM、及び/又は、Caを適宜添加することにより、特性を向上させることができる。以下、それらの選択的に添加する成分について説明する。
Vは、析出強化元素として知られているが、C含有量の低い本発明では、固溶強化に寄与する。Vは、0.10%超を添加しても効果が飽和し、経済性も損なわれるので、上限を0.10%とすることが好ましい。
Moは、固溶強化及び焼入れ性の向上による組織強化に寄与する元素であり、目標とする強度に応じて添加することが好ましい。しかし、0.10%以上のMoを添加すると経済性が損なわれ、また、HAZの靭性及び高温脆性が低下することがあるので、上限を0.10未満とすることが好ましい。
Zrは、TiNよりも高温で安定な窒化物であるZrNを生成する元素である。ZrNの生成により、Tiを単独で添加した場合よりも、鋼中の固溶Nの低減に有効に寄与し、固溶B、固溶Nbを確保できる。Zrの含有量が0.03%超になると、鋳造前の溶鋼中に粗大なZrNが生成し、常温での靭性及びHAZの靭性を損なう。したがって、Zrの濃度は0.03%以下とすることが好ましい。また、NbNの析出を抑制し、高温強度、絞りの低下を防止するためには、0.005%以上の添加が好ましい。
Hfは、Tiと同様、窒化物を生成する元素であり、固溶Nの低減に寄与する。しかし、0.01%を超えるHfを添加すると、HAZの靭性が低下することがある。したがって、Hfの上限を0.01%とすることが好ましい。
Cr、Cu、及び、Niは、焼入れ性の向上により、強度上昇に寄与する元素である。Cr及びCuは、過剰に添加すると、靭性を損なうことがあるため、それそれ、上限を、1.5%、及び、1.0%とすることが好ましい。また、Niは、経済性の観点から、上限を1.0%とすることが好ましい。
Mgは、強力な脱酸元素であるとともに、高温で安定なMg系酸化物を生成し、溶接時に高温に加熱された場合でも鋼中に固溶せず、γ粒をピンニングする機能を有する。これにより、HAZの組織を微細化し、靭性の低下を抑制する。ただし、0.005%を超えるMgを添加すると、Mg系酸化物が粗大化し、γ粒のピンニングに寄与しなくなり、粗大な酸化物を生成して靭性を損なうことがあるため、上限を0.005%とすることが好ましい。
Alは、強力な脱酸剤であり、一次脱酸後の溶存酸素濃度を0.003〜0.015%に制御するために添加してもよい。しかし、0.030%超のAlを含有すると、島状マルテンサイトを形成し、靭性を損なうことがあるため、上限を0.030%とする。靭性向上の観点から、上限は、0.02%が好ましい。
REM(希土類元素)は、鋼中で酸化反応及び硫化反応し、酸化物及び硫化物を生成する。これらの酸化物及び硫化物は高温で安定であり、溶接時に高温に加熱された場合でも鋼中に固溶せず、粒界をピンニングする機能を有する。この機能により、HAZの組織を微細化し、靭性の低下を抑制することができる。
この効果を得るには、すべての希土類元素の合計の含有量を、0.001%以上として添加することが好ましい。一方、REMを、0.01%を超えて添加すると、酸化物や硫化物の体積分率が高くなり、靭性を低下させることがあるので、上限を0.01%とすることが好ましい。
Caは、少量を添加することにより、熱間圧延での硫化物の圧延方向への延伸を抑制する効果を発現する。これにより、靭性が向上し、特に、板厚方向のシャルピー値の改善に寄与する。この効果を得るには、Caを0.001%以上添加することが好ましい。一方、Caを、0.005%を超えて添加すると、酸化物や硫化物の体積分率が高くなり、靭性を低下させることがあるため、上限を0.005%とすることが好ましい。
本発明の鋼の金属組織は特に限定しないが、焼き入性を高める元素の含有量を調整して、要求される強度に応じたものとすればよい。強度を高めるには、マッシブフェライト、ベイナイトの一方又は双方の面積率を高めることが好ましい。
マッシブフェライトは、冷却過程でオーステナイトが同一組成のフェライトに拡散変態した組織であり、変態前後の組成が同一であることから、Cの拡散ではなく、Fe原子の自己拡散、即ち、格子の再配列が律速段階になる。したがって、マッシブフェライトは、原子の移動距離が短く、比較的速い変態速度で生成するため、結晶粒径がポリゴナルフェライトよりも大きく、転位密度が高い。
このような機構で生成するマッシブフェライトは、ポリゴナルフェライトとは、光学顕微鏡による組織観察では、結晶粒径が相違するものの、形態には差異がない。したがって、これらを明確に区別するには、透過型電子顕微鏡による観察が必要である。また、ベイナイトは板状組織であり、マッシブフェライト及びポリゴナルフェライトと、光学顕微鏡によって判別することが可能である。
なお、マッシブフェライト、ベイナイト、ポリゴナルフェライト以外に、少量のマルテンサイト、残留オーステナイト、パーライトが生じていることがある。
マッシブフェライト、ベイナイトの生成は、鋼の焼き入性を高めることによって促進される。そのため、焼き入性指標であるCeqを0.05以上とすることが好ましい。また、Ceqが高すぎると、強度が上昇して靭性を損なうことがあるため、上限を0.60以下とすることがさらに好ましい。なお、
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
であり、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、Vはそれぞれの元素の含有量[質量%]である。
次に製造方法について説明する。
鋼は、上述のように、Si、Mnを脱酸剤として使用し、Ti添加前の溶存酸素量を調整して溶製し、鋳造して鋼片とする。生産性の観点から、連続鋳造が好ましい。
得られた鋼片は、熱間圧延によって鋼板又は形鋼に成形され、冷却される。なお、本発明が対象とする鋼材は、圧延された鋼板、H形鋼、I形鋼、山形鋼、溝形鋼、不等辺不等厚山形鋼等の形鋼が含まれる。
このうち、耐火性及び耐再熱脆化特性が要求される建材には、特にH形鋼が好適である。また、柱材として使用する場合には、極厚H形鋼に代表される板厚の大きなサイズの鋼材が好適である。
粒径が0.05〜10μmのTi系酸化物を30〜300個/mm2の割合で含有する本発明の鋼材を得るためには、Ti添加前の一次脱酸後における溶存酸素の調整が非常に重要であり、溶存酸素量を質量%で0.003〜0.015%に調整する必要がある。Ti系酸化物を生成するためには0.003%以上の溶存酸素量が必要であり、0.015%を超えるとTi酸化物の粒径が大きくなるため粒径が0.05〜10μmの個数が十分に得られなくなる。この観点から、溶存酸素は0.010%を上限にすることが好ましい。
熱間圧延によって鋼材を製造するには、塑性変形を容易にし、Nbを十分に固溶させるため、鋼片の加熱温度の下限を1100℃とすることが必要である。また、熱間加工により形鋼を製造する場合には、塑性変形を更に容易にするため、加熱温度を1200℃以上とすることが好ましい。鋼片の加熱温度の上限は、加熱炉の性能、経済性から1350℃とした。鋼のミクロ組織を微細化するには、鋼片の加熱温度の上限を1300℃とすることが好ましい。
熱間圧延では、1000℃以下での累積圧下率を10%以上とすることが好ましい。これにより、熱間加工での再結晶を促進させてγ粒を細粒化し、靭性及び強度を向上させることができる。
製品の板厚が40mm未満の場合は、圧延前の素材の板厚制約が少なく、1000℃以下の累積圧下率を30%以上確保することで強度向上が可能となるため、板厚が40mm未満の場合、累積圧下率の範囲は30%以上とすることが好ましい。
また、熱間加工を、鋼の組織がオーステナイト単相である温度範囲(γ単相領域という。)で完了させるか、又は相変態によって生成するフェライトの体積分率が低い状態で完了させることにより、降伏強度の著しい上昇、靭性の低下及び靭性の異方性の発生等、機械特性の低下を回避することができる。したがって、熱間圧延の終了温度を800℃以上とすることが好ましい。
さらに、熱間圧延後は、制御冷却により、800〜500℃の温度範囲の平均冷却速度を、0.1〜10℃/sとすることが好ましい。熱間圧延後の制御冷却によって、鋼材の強度及び靭性を更に向上させるには、800〜500℃の温度範囲の平均冷却速度を0.1℃/s以上とすることが好ましい。一方、800〜500℃の温度範囲の平均冷却速度が10℃/sを超えると、ベイナイト相やマルテンサイト相の組織分率が上昇し、靭性が低下することがあるため、上限を10℃/sとすることが好ましい。
また、表1の鋼F、K、J、Zについては、さらに、表3の条件でも熱間圧延し、鋼EE、K、Zについては、さらに、表4の条件でも熱間圧延した。
得られたH形鋼において、図6に示したように、フランジ2の板厚t2の中心部(1/2t2)でフランジ幅全長(B)の1/4(フランジという。)と1/2(フィレットという。)の部位からJIS Z 2201に準拠して引張試験片を採集した。
常温の引張試験はJIS Z 2241に準拠して行い、600℃における0.2%耐力の測定は、JIS G 0567に準拠して行った。なお、これらの箇所の特性を求めたのは各々の部位がH形鋼断面の代表的な部位であり、H形鋼の平均的な機械特性及び断面内のばらつきを示すことができると判断したためである。
シャルピー衝撃試験(表2〜4)は、フィレットから小片を採取し、代表的な試験法であるJIS Z 2242に準拠して0℃で行った。
耐火鋼として使用される場合は、再現溶接熱影響部(HAZ)の再熱絞り(表2〜4)が重要な特性であって、この評価は、供試鋼に溶接熱サイクルを履歴させた後、再度加熱し、高温で引張応力を加えて破断させたときの絞り値によって行った。
即ち、フランジから採取した丸棒の引張試験片に、1400℃で1秒保持した後、800℃から500℃までの冷却時間を20秒として100℃まで冷却する溶接熱サイクルを履歴させ、更に、そのまま1℃/秒の昇温速度で600℃に加熱して、600℃で600秒保持した後、0.5MPa/秒の応力増加速度で引張応力を加えて破断させ、絞り値を測定した。
再現溶接熱影響部(HAZ)の靭性(表2)は、再熱絞りと同様に、供試鋼に溶接熱サイクルを履歴させ、その後、シャルピー衝撃試験をJIS Z 2242に準拠して0℃で行い、吸収エネルギーで評価した。即ち、1400℃で1秒保持した後、800℃から500℃までの冷却時間を20秒として100℃まで冷却する溶接熱サイクルを履歴した熱処理を施した小片から、Vノッチ試験片を採取し、シャルピー衝撃試験に供した。
鋼に要求される強度クラスとしては2種類あって、1つは、SM400と規定される常温引張強度が400MPaクラスのものであり、もう1つは、SM490と規定される常温引張強度が490MPaクラスのものであって、これらを分けて表記した。一方、極厚H形鋼に関しては、主として米国ASTM規格に準ずる場合が多く、代表的な強度クラスであるGrade50、Grade65を分けて表記した。
なお、JIS規格のSM400、即ち、TS400MPa超級の目標は、常温における降伏強度YPが235MPa以上、好ましくは355MPa以下、引張強度TSが400〜510MPaであり、600℃での0.2%耐力PSの目標値は157MPa以上である。
SM490、即ち、TS490MPa超級の目標は、YPが325MPa以上、好ましくは445MPa以下、TSが490〜610MPa、PSが217MPa以上である。また、SM400級、SM490級ともに、0℃衝撃吸収エネルギーの目標値は100J以上であり、降伏比YP/TSの好ましい上限は0.80である。
また、ASTM規格に関しては、Grade50で、YP345MPa以上、TS450MPa以上、Grade65で、YP450MPa以上、TS550MPa以上であり、上記に加えて、靭性に関しては、何れの場合においても、シャルピー試験温度0℃で、母材フィレット部における衝撃吸収エネルギーが、54J以上あることが好ましい。
再現HAZの特性については、何れの規格においても再熱絞りの目標が30%以上であり、靭性の目標が27J以上である。特に、耐火鋼として評価する場合は、再熱絞りは50%以上であることが好ましい。
一方、比較例である製造No.16〜22、40〜42の鋼は、成分、C−Nb/7.74、Ti系酸化物の密度が本発明の範囲外であるため、目標を満足する機械特性が得られていない。
表3に示すように、フランジ厚40mm未満のH形鋼の場合で、1000℃以下での累積圧下率を30%以上とすると、累積圧下率が30%を下回る場合に比べて、機械特性が良好である。
また、フランジ厚40mm以上の極厚H形鋼の場合は、製造No.43〜48に、代表例として、フランジ厚90〜125mmの場合を示すように、1000℃以下の累積圧下率の増加に伴い、降伏強度、引張強度がともに上昇し、累積圧下率が10%以上では、Grade50、Grade65としてそれぞれ要求される強度を、さらに十分に満たすことが可能となる。
表4に示すように、フランジ40mm未満の場合、水冷により800〜500℃間の冷却速度を10℃/sまで加速して冷却した場合、放冷などにより800〜500℃間を0.1℃/sで徐冷却される場合よりも、常温強度、高温強度を高めることが可能である。
また、極厚H形鋼については、製造No.49〜51に、フランジ厚125mmのサイズの場合を代表例として示すように、800〜500℃間を、水冷で、0.13℃/sまで加速冷却することにより、降伏強度、引張強度がともに上昇し、Grade65として要求される強度を、さらに十分に満たすことが可能となる。
Claims (11)
- 質量%で、
C:0.001%以上0.030%以下、
Si:0.05%以上0.50%以下、
Mn:0.40%以上2.00%以下、
Nb:0.03%以上0.50%以下、
Ti:0.005%以上0.040%未満、
N:0.0008%以上0.0050%未満
を含有し、
P:0.030%以下、
S:0.020%以下
に制限し、残部がFe及び不可避不純物からなり、
CとNbの含有量が、
C−Nb/7.74≦0.004
を満足し、粒径が0.05〜10μmであるTi系酸化物を30〜300個/mm2の密度で有することを特徴とする高温特性と靭性に優れた鋼材。 - 質量%で、
V:0.10%以下、
Mo:0.10%未満
の一方又は双方を含有することを特徴とする請求の範囲1に記載の高温特性と靭性に優れた鋼材。 - 質量%で、
Zr:0.03%以下、
Hf:0.01%以下
の一方又は双方を含有することを特徴とする請求の範囲1又は2に記載の高温特性と靭性に優れた鋼材。 - 質量%で、
Cr:1.5%以下、
Cu:1.0%以下、
Ni:1.0%以下
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求の範囲1〜3の何れかに記載の高温特性と靭性に優れた鋼材。 - 質量%で、
Mg:0.005%以下、
Al:0.030%以下、
REM:0.01%以下、
Ca:0.005%以下
の1種又は2種以上の一方又は双方を含有することを特徴とする請求の範囲1〜4の何れかに記載の高温特性と靭性に優れた鋼材。 - NbとCの質量濃度積が0.0015以上であることを特徴とする請求の範囲1〜5の何れかに記載の高温特性と靭性に優れた鋼材。
- 鋼材が耐火鋼材であることを特徴とする請求の範囲1〜6の何れかに記載の高温特性と靭性に優れた鋼材。
- 鋼材がフランジ厚40mm以上の極厚H形鋼であることを特徴とする請求の範囲1〜6の何れかに記載の高温特性と靭性に優れた鋼材。
- 請求の範囲1〜6の何れかに記載の成分からなる鋼を、溶存酸素を0.003〜0.015質量%に調整した後、Tiを添加して溶製し、鋳造して得られた鋼片を1100〜1350℃に加熱し、熱間圧延することを特徴とする高温特性と靭性に優れた鋼材の製造方法。
- 1000℃以下での累積圧下率を10%以上として熱間圧延することを特徴とする請求の範囲9に記載の高温特性と靭性に優れた鋼材の製造方法。
- 熱間圧延後、800℃から500℃までの温度範囲を0.1〜10℃/sの平均冷却速度で冷却することを特徴とする請求の範囲9又は10に記載の高温特性と靭性に優れた鋼材の製造方法。
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