JP3550721B2 - 耐火性および靱性に優れた建築用熱延鋼帯の製造方法 - Google Patents

耐火性および靱性に優れた建築用熱延鋼帯の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、鋼管・角コラムに成形されて建築、土木および海洋構造物等の用途に用いて好適な耐火性および靱性に優れた建築用熱延鋼帯(鋼板を含む。以下同じ)およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
建築物の鉄骨構造には、火災時の安全確保のうえから、従来より耐火被覆が義務づけられていた。しかし、近年「新防火設計法」が制定されたことにより、使用鋼材の高温耐力が十分高い場合には、耐火被覆は必ずしも必要とされなくなりそのための工事を大幅に軽減できることになった。こうした事情を背景として最近、高温耐力が高い、いわゆる耐火性建築用鋼材の需要が高まってきている。
耐火鋼については、すでに、厚鋼板についての多くの提案があり、熱延鋼板についても、例えば特開平2−282419号公報等に耐火性鋼板の提案が行われている。これらの既知技術は、MoC を鋼中に析出させることにより高温強度の確保を狙ったものであり、その多くはMoを0.3 wt%以上添加するか、Cを0.05wt%超添加することを提案するものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、Moの添加は、特に多量に添加した場合、コスト高を招くだけでなく、コイル巻き取りの際に生成するMo炭化物により熱延鋼板に特有の靱性劣化を引き起こす問題があった。一方、Cの添加は、その量が多くなるとともに高温強度を増加するものの、室温強度の過度の上昇をも招きその結果として、溶接部への負荷集中を招いて建材として好ましくないものになるという問題があった。また、Cの増加は溶接性を劣化させる原因ともなるものであった。
【0004】
本発明の主たる目的は、既知技術が抱えている上記の問題を克服し、高い高温強度、とくに高温強度/常温強度比が高くかつ優れた靱性を有する建築用熱延鋼帯の製造方法を提案するところにある。
また、本発明の具体的な目的は、600 ℃における降伏応力(以下、「YS600 」と略記する)と常温の引張強さ(以下、「TS」と略記する)との比がYS600 /TS≧0.45であり、シャルピー衝撃試験における破面遷移温度(以下、「rS」と略記する)がrS≦0℃である熱延鋼帯の製造方法を提案するところにある。さらにまた、本発明の他の具体的な目的は、鋼管・角コラムに成形した後のYS600 /TS≧0.50であり、rS≦0℃である熱延鋼帯の製造方法を提案するところにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
さて発明者らは、上記の目的を達成すべく、数多くの実験と検討を重ねた結果、ある種の鋼組成のものでは、それの熱間圧延終了温度および巻き取り温度を制御すれば、C、Moの含有量を少量にでき、上記の課題を一気に解決できることを見いだし、この発明を完成させた。
すなわち、この発明の要旨構成は次のとおりである。
(1) C:0.01〜0.05wt%、 Si:1.0 wt%以下、
Mn:2.0 wt%以下、 P:0.03wt%以下、
S:0.004wt %以下、 Al:0.01〜0.15wt%、
Mo:0.05〜0.30wt%未満、 Nb:0.005 〜0.04wt%、
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材に、圧延終了温度750 〜840 ℃の熱間圧延を施した後、500 〜600 ℃の温度範囲で巻き取りを行うことを特徴とする耐火性および靱性に優れた建築用熱延鋼帯の製造方法。
【0006】
(2) C:0.01〜0.05wt%、 Si:1.0 wt%以下、
Mn:2.0 wt%以下、 P:0.03wt%以下、
S:0.004wt %以下、 Al:0.01〜0.15wt%、
Mo:0.05〜0.30wt%未満、 Nb:0.005 〜0.04wt%、
を含み、かつ
Cr:0.01〜2.0 wt%、 Ni:0.01〜2.0 wt%、
Cu:0.01〜2.0 wt%、 Ti:0.003 〜2.0 wt%、
V:0.01〜2.0 wt%および B:0.0005〜0.0050wt%、
のうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材に、圧延終了温度750 〜840 ℃の熱間圧延を施した後、500 〜600 ℃の温度範囲で巻き取りを行うことを特徴とする耐火性および靱性に優れた建築用熱延鋼帯の製造方法。
(3) ただし、(2) において、Cr、Ni、Cu、Ti、VおよびBの各成分は、次の組み合わせで添加することが推奨される。
▲1▼0.01〜2.0 wt%Cr−( Ni 、Cu、Ti、VおよびBの1種以上)
▲2▼0.01〜2.0 wt%Ni−(Cu、Ti、VおよびBの1種以上)
▲3▼0.01〜2.0 wt%Cu−(Ti、VおよびBの1種以上)
▲4▼0.003 〜2.0 wt%Ti−(VおよびBの1種または2種)
▲5▼0.01〜2.0 wt%V−(B)
▲6▼0.0005〜0.0050wt%B
【0007】
【作用】
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、上記要旨構成にすることにより、熱延鋼板および成形後の高温強度が増加する理由について述べる。この理由は必ずしも明らかではないが、以下のように考えている。
本発明材のように低C、低Moの成分では、高温強度に寄与する炭化物は成長しにくく、微細に析出し易くなる。その傾向は、Nbを添加することによって一層強まり、さらに微細な(Mo,Nb) 炭化物が析出する傾向にあると思われる。
ここで、同量の析出物であれば析出物のサイズが小さいほど強度は増加するはずであるが、通常、析出物の微細化は同時に析出量の減少を招くため、微細化による強度上昇効果は相殺される傾向にある。
しかしながら、本発明の熱間圧延条件を適用して加工歪みを加えることにより、十分な量の析出サイトを与えておけば、析出物のサイズを小さくしても析出物の量は減少せず、顕著な析出強化の効果が得られる。
そして、成形後の高温強度が高い理由も、上記したごとき析出物と加工歪みとの関係に基づくものであると思われる。なお、このような現象が、なぜ圧延終了温度840 ℃以下で顕著になるかについては明らかではないが、低圧延終了温度により、結晶粒の微細化あるいはこの時の変形が後の成形歪みの加わり方に何らかの影響を及ぼしているものと推測される。
【0008】
次に、この発明の化学成分組成を前記の範囲に限定した理由について述べる。
C:0.01〜0.05wt%;
Cは、常温および高温での強度を確保するために添加するが、添加量が0.01wt%未満ではその効果が乏しい。一方、0.05wt%を超えると耐火性に影響を及ぼす高温強度/常温強度の比が高いものとはならず、一方で、溶接部の硬さおよび割れ感受性を増大させる。したがって、Cの含有量は0.01〜0.05wt%とし、好ましくは0.03〜0.04wt%とする。
【0009】
Si:1.0 wt%以下;
Siは、脱酸剤および強化元素として有効な元素であるが、1.0 wt%を超えて添加すると溶接部の割れ感受性を増大させるので、その含有量は1.0 wt%以下とする。なお、建材用の角コラムなどでは低YR(YS/TS) が求めれる傾向にあり、このような場合には0.05wt%以下にすることが好ましい。
【0010】
Mn:2.0 wt%以下;
Mnは、強化に有効な元素であるが、2.0 wt%を超えて添加すると溶接部の割れ感受性を増大させるので、その含有量は2.0 wt%以下とする。なお、強化元素としては0.10wt%以上の添加が好ましく、また建材用の角コラムなどで低YR(YS/TS) が求めれる場合には0.30wt%以下にすることが好ましい。
【0011】
P:0.03wt%以下;
Pは、靱性を劣化させる元素であるので、その含有量は0.03wt%以下、好ましくは 0.020wt%以下の範囲とする。
【0012】
S:0.004wt %以下;
Sは、加工性を劣化させる元素であるので、極力低減することが好ましく、0.004wt %以下、好ましくは 0.0030wt %以下の範囲とする。ただし、コスト上は0.0015wt%以上とするのが有利である。
【0013】
Al:0.01〜0.15wt%;
Alは、鋼の脱酸およびNの固定のために有用な元素である。その効果を得るには0.01wt%以上の添加が必要であるが、0.15wt%を超えると鋼中の非金属介在物を増加させ又コストアップを招くので、0.01〜0.15wt%の範囲とする。なお、好ましい添加範囲は、0.02〜0.05wt%である。
【0014】
Mo:0.05〜0.30wt%未満;
Moは、高温における強度を高めるのに非常に有用な元素である。その効果を得るには0.05wt%以上の添加が必要であるが、0.30wt%以上添加すると高温強度/常温強度の比を低下させるだけでなく、コストアップをも招くので、その添加量は0.05〜0.30wt%未満、好ましくは0.10〜0.30wt%未満の範囲とする必要がある。
【0015】
Nb:0.005 〜0.04wt%;
Nbは、Moとの複合添加により、高温での降伏強度を著しく向上させる元素である。その効果を得るには0.005wt %以上の添加が必要であるが、0.04wt%を超えると高温強度/常温強度の比を低下させるだけでなく、コストアップをも招くので、その添加量は0.005 〜0.04wt%、好ましくは0.010 〜0.04wt%の範囲とする必要がある。
【0016】
以上、基本成分について説明したが、本発明では、さらに高温強度改善成分としてCr、Ni、Cu、Ti、VおよびBのうちから選んだいずれか1種または2種を適宜添加することができる。
Cr:0.01〜2.0 wt%、Ni:0.01〜2.0 wt%、Cu:0.01〜2.0 wt%、Ti:0.003 〜2.0 wt%、V:0.01〜2.0 wt%、B:0.0005〜0.0050wt%;
Cr、Ni、Cu、Ti、VおよびBはいずれも、強化元素として有効に寄与する。TiおよびBは、このほかさらにNを固定し、延性改善、YR低減にも有効な元素である。
含有量がそれぞれ下限に満たないとその添加効果に乏しく、一方、上限を超えると溶接部の硬さおよび割れ感受性を増大させる。したがって、単独添加または複合添加いずれの場合においても、添加量はそれぞれCr:0.01〜2.0 wt%、好ましくはCr:0.10〜0.50wt%、Ni:0.01〜2.0 wt%、好ましくはNi:0.10〜0.50wt%、Cu:0.01〜2.0 wt%、好ましくCu:は0.10〜0.50wt%、Ti:0.003 〜2.0 wt%、好ましくはTi:0.005 〜0.05wt%、V:0.01〜2.0 wt%、好ましくはV:0.015 〜0.050wt %、B:0.0005〜0.0050wt%、好ましくはB:0.0005〜0.0020wt%の範囲とする。
【0017】
次に、本発明鋼の熱間圧延条件について述べる。
熱間圧延は、スラブを連続鋳造後直ちに(いわゆるCC−DR)行うか、または再加熱したのちに行う。CC−DRを行う場合に、保熱もしくは端部の多少の加熱を行うことは差し支えない。加熱する場合は、加熱温度が1150℃を超えると、オーステナイト粒が粗大化し、最終的に得られる組織の細粒化が不十分となり、所望の靱性や高温強度を得るのが困難となる。したがって、再加熱、CC−DRいずれの場合とも、均熱・保持温度は 950〜1150℃の範囲とするのが好ましい。
【0018】
・熱間圧延終了温度:750 〜840 ℃;
圧延終了温度が 840℃を超えると、高温強度/常温強度の比が小さくなり、目的が達成できなくなる。一方、 750℃に満たないと、常温強度が過度に上昇するため高温強度/常温強度の比が低下するので、同じく目的が達成できなくなるほか、熱延設備への大きくなる。したがって、熱間圧延終了温度は750 〜840 ℃、好ましくは750 〜800 ℃の温度範囲にする必要がある。
【0019】
・巻き取り温度:500 〜600 ℃;
熱間圧延後の巻き取り温度は、600 ℃を超えると(Mo,Nb) 炭化物析出による靱性の劣化が激しくなるので、600 ℃以下、好ましくは550 ℃以下とする必要がある。しかし、その温度が 500℃未満になると、常温強度が過剰に高くなるため、高温強度/常温強度の比が低下するうえ、鋼帯の温度や形状を安定してコイルに巻き取ることが困難になるので、 500℃以上の温度が必要である。
【0020】
上記のように、本発明においては、室温強度−高温強度バランスを確保するために巻き取り温度500 〜600 ℃を前提にしているので、鋼帯の板厚はこの巻き取り工程に適した範囲にすることが望ましい。すなわち、鋼管成形、コラム成形などの使用において、板厚5mm未満ではコイルから連続ラインにより精度良く成形・溶接することが困難になり、一方、30mmを超えると設備能力からコイル巻き取りが困難となるので、板厚は5〜30mmの範囲にすることが望ましい。
なお、通常、管・コラム成形による靱性劣化防止の観点から、板厚20mmが上限とされているが、本発明方法によれば板厚30mmまでは成形を行っても靱性は確保される。
【0021】
【実施例】
表1に示す種々の成分組成になる鋼を、転炉精錬後、連続鋳造にてスラブとしたのち、表2に示す条件で熱間圧延し、板厚19mmの熱延鋼帯とした。また、熱延材の一部は、さらに350mm 角の角コラムに成形した。ここで、コラム成形時の伸び率はNo.6で1.2 %、それ以外のもので2.5 %とした。
このようにして得られた熱延材および角コラムのコラム辺部中央から試験片を採取し、常温および 600℃における引張特性および0℃における靱性について調査した。なお、室温での引張試験は、JIS 14号A試験片を用い、JIS Z 2241に準拠しておこなった。また 600℃での引張試験は、10℃/sで昇温し、600 ℃に15分保持後、JIS G 0567に準拠して行った。これら鋼板の靱性については、JIS Z 2202シャルピーVノッチ試験片を用い、JIS Z 2242に準拠して行った。
得られた結果を表2に併せて示す。
【0022】
【表1】
Figure 0003550721
【0023】
【表2】
Figure 0003550721
【0024】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、高い高温強度、とくに高温強度/常温強度の比が高くかつ優れた靱性を有する建築用熱延鋼帯の製造が可能となる。
また、本発明によれば、熱延状態でYS600 /TS≧0.45、rS≦0℃であり、鋼管・角コラムに成形した後でYS600 /TS≧0.50、rS≦0℃である熱延鋼帯の製造が可能となる。
これにより、耐火性と共に靱性が要求される、建築、土木および海洋構造物等の用途に用いて著効を奏する。

Claims (2)

  1. C:0.01〜0.05wt%、 Si:1.0 wt%以下、
    Mn:2.0 wt%以下、 P:0.03wt%以下、
    S:0.004wt %以下、 Al:0.01〜0.15wt%、
    Mo:0.05〜0.30wt%未満、 Nb:0.005 〜0.04wt%、
    を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材に、圧延終了温度750 〜840 ℃の熱間圧延を施した後、500 〜600 ℃の温度範囲で巻き取りを行うことを特徴とする耐火性および靱性に優れた建築用熱延鋼帯の製造方法。
  2. C:0.01〜0.05wt%、 Si:1.0 wt%以下、
    Mn:2.0 wt%以下、 P:0.03wt%以下、
    S:0.004wt %以下、 Al:0.01〜0.15wt%、
    Mo:0.05〜0.30wt%未満、 Nb:0.005 〜0.04wt%、
    を含み、かつ
    Cr:0.01〜2.0 wt%、 Ni:0.01〜2.0 wt%、
    Cu:0.01〜2.0 wt%、 Ti:0.003 〜2.0 wt%、
    V:0.01〜2.0 wt%および B:0.0005〜0.0050wt%、
    のうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材に、圧延終了温度750 〜840 ℃の熱間圧延を施した後、500 〜600 ℃の温度範囲で巻き取りを行うことを特徴とする耐火性および靱性に優れた建築用熱延鋼帯の製造方法。
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