JP2546954B2 - 耐火性の優れた建築用高張力鋼の製造方法 - Google Patents
耐火性の優れた建築用高張力鋼の製造方法Info
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Description
いて、各種建造物に用いる耐火性の優れた高張力鋼の製
造方法に関する。
鋼材として、JIS等で規格化された鋼材等が広く利用
されている。ところで、ビルや事務所、住居、立体駐車
場等の建築物に前記の鋼材を用いる場合は、火災におけ
る安全性を確保するため、十分な耐火被覆を施すことが
義務づけられており、建築関係諸法令では、火災時に鋼
材温度が350℃以上にならないように規定されてい
る。
が常温時の2/3程度になり、必要な強度を下回るため
である。鋼材を建造物に利用する場合、火災時において
鋼材の温度が350℃に達しないように耐火被覆を施し
て使用される。そのため、鋼材費用に対し耐火被覆工費
が高額になり、建設コストが大幅に上昇することが避け
られない。
ば、特開平2−77523号公報や特開平3−6322
号公報などに記載の発明がされている。しかしながら、
特開平2−77523号公報記載の発明では、相当量の
MoとNbを添加した鋼で、600℃の耐力が常温耐力
の70%以上を確保するものであるが、最も強度(引張
強度)が高いものでも65kgf/mm2 であり、これより高
強度の耐火性が優れた鋼の製造は困難であった。また、
特開平3−6322号公報記載の発明でも、相当量のM
oを添加した鋼で圧延後水冷することにより高強度化を
はかっているが、最も強度が高いものでも73kgf/mm2
であり、高強度の耐火性が優れた鋼の製造は困難であっ
た。
る場合、通常の鋼では高温強度が低いため、無被覆や軽
被覆で利用することができず、割高な耐火被覆を施さな
ければならなかった。また、新しく開発された鋼でも、
鋼材の強度が60キロクラスまでであり、より高い強度
が要求される大型構造物や大スパンの構造物への適用は
困難であった。本発明の目的は、高強度でかつ高温強度
が優れた鋼材の製造方法を提供することにある。
下に示す。
n:0.8〜1.6%、Ni:0.5〜1.5%、C
u:0.8〜1.2%、Mo:0.8〜1.5%、N
b:0.005〜0.05%、Ti:0.005〜0.
02%Al:0.10%以下、N:0.001〜0.0
06%、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼片
を1100℃〜1300℃に再加熱後、熱間塑性加工を
800〜1000℃で終了し、その後850〜700℃
まで空冷してベイナイト主体〜ベイナイト焼戻しマルテ
ンサイトを生成し、この温度から400℃から550℃
の範囲の温度まで3〜40℃/secの冷却速度で水冷する
か、または、空冷後、3〜40℃/secの冷却速度で85
0〜700℃から250℃以下の温度まで水冷し、その
後、500℃から700℃以下の温度に再加熱し、焼戻
し、600℃YSを常温YSの2/3以上とすることを
特徴とする耐火性の優れた建築用高張力鋼の製造方法。
n:0.8〜1.6%、Ni:0.5〜1.5%、C
u:0.8〜1.2%、Mo:0.8〜1.5%、N
b:0.005〜0.05%、Ti:0.005〜0.
02%、Al:0.10%以下、N:0.001〜0.
006%に加えて、Cr:0.05〜0.50%、V:
0.005〜0.05%および、Ca:0.0005〜
0.003%、REM:0.001〜0.005%のそ
れぞれの一群の元素から一種または二種を含有し、残部
がFeおよび不可避的不純物からなる鋼片を1100℃
〜1300℃に再加熱後、熱間塑性加工を800〜10
00℃で終了し、その後850〜700℃まで空冷して
ベイナイト主体〜ベイナイト焼戻しマルテンサイトを生
成し、この温度から400℃から550℃の範囲の温度
まで3〜40℃/secの冷却速度で水冷するか、または、
空冷後、3〜40℃/secの冷却速度で850〜700℃
から250℃以下の温度まで水冷し、その後、500℃
から700℃以下の温度に再加熱し、焼戻し、600℃
YSを常温YSの2/3以上とすることを特徴とする耐
火性の優れた建築用高張力鋼の製造方法。
用される引張強度が70kgf/mm2 を超える耐火性の優れ
た鋼材は同時に溶接性や低降伏比も兼ね備えなければな
らないことを知った。すなわち、耐火性が要求されるよ
うな大型の構造物では、耐震性も要求される場合が殆ど
であり、使用鋼材の低YR化は欠かせない特性である。
も、溶接性が悪ければ、溶接施工コストが大幅に増加す
る。このような事例では、いかに耐火性が優れた鋼材を
使用しても、建設コストが高くなり、高強度鋼を使用す
るメリットが半減する。しかもこのような高強度の鋼で
は、高温強度を向上させるために焼入性を高める合金元
素を多量に使用する方法が一般的であった。このため、
高温強度を高めるとほぼ必然的に溶接性の劣化を招く状
況であった。
uとMoおよびNbを複合添加した成分組成の鋼片を、
高温で再加熱したのち、比較的高温で圧延を終了し、γ
−αの2相域から水冷して、ミクロ組織をベイナイト主
体〜ベイナイト−焼戻マルテンサイトの混合とすること
により、55kgf/mm2 以上の常温耐力を有するととも
に、600℃の耐力が高く、低YRおよび溶接性が良好
な特性を兼ね備えている。
せるためには、MoやCrを増加させる方法が有効であ
ることが知られている。しかし、この方法では、溶接性
が劣化し、前述した理由で、メリットが十分とはいえな
い。本発明者らは、Moの添加に加えて、Cu,Nbを
複合添加することにより溶接性の劣化が少なく、耐火性
が優れた高張力鋼を実現できることを見いだした。しか
しながら、Cu,Nbの添加はYRの上昇につながり、
その添加量は制限されるべきものである。YRの低減は
上記の合金成分と、上述した製造方法を組み合わせるこ
とにより達成される。
とその添加量について説明する。Moは固溶体強化や微
細な炭化物を形成し、高温強度を増加させるが、Moの
単独添加で、高強度、かつ600℃の強度を確保するた
めには、2%を超す添加が必要となり、溶接性が劣化
し、さらには、鋼材の製造コストが高くなる等の難点が
ある。
加に加えてCu,Nbを複合添加することが極めて有効
であることを見いだした。しかしながら、Mo,Cu,
Nbの添加量が多すぎると溶接性や溶接熱影響部の靭性
が劣化し、YRも増加するので、Mo,Cu,Nb含有
量の上限はMo:1.5%、Cu:1.2%、Nb:
0.05%とする必要がある。また下限は複合効果が得
られる最小量として、Mo:0.8%、Cu:0.8
%、Nb:0.005%を含有せしめる必要がある。
温と600℃の強度を確保するためには、鋼成分ととも
に鋼の再加熱および圧延、冷却にかかる条件が重要であ
る。前述のMo,Cu,Nbの複合添加による600℃
強度の増加をはかるためには、再加熱時にこれらの元素
を十分に溶体化させる必要があり、このため、再加熱温
度の下限を1100℃とする。また、再加熱温度が高す
ぎるとオーステナイト粒が粗大化し、低温靭性が劣化す
るのでその上限は1300℃にせねばならない。
温とする理由は、圧延中にMoの炭化物やNbの炭窒化
物を析出させないためであり、γ域でMoが析出すると
析出物サイズが大きくなり高温強度が著しく低下する。
また、1000℃を超える温度域での圧延終了では、靭
性が極度に低下するため、1000℃が圧延終了温度の
上限である。
させるためには、以下に述べる方法が必須である。すな
わち、圧延終了後、850〜700℃まで空冷し、続い
てこの温度から400℃から550℃の温度まで水冷し
その後放冷する方法、および空冷後、850〜700℃
の温度から250℃以下の温度まで水冷し、その後、5
00℃から700℃以下の温度に再加熱し、焼戻す方法
が有効であることを見いだした。
得られるが、常温強度に対する600℃の強度の比率が
低下し、工業的な生産が難しくなる。また、YRが高
く、建築用の鋼材として適さない。そこで、圧延終了後
の850〜700℃の範囲のγ−αの2相共存域より水
冷する方法を見いだした。この2相共存域では、Cの固
溶限が異なるため、αからγへCの拡散が促進され、C
が低下した部分は極低Cのベイナイトが生成され、Cが
濃化した部分では、マルテンサイトかベイナイトが生成
される。
降伏強度(耐力)が低下する。一方、Cが濃化した部分
は局部的に強度が高いため、引張強さは下がらない。結
果として、YRが低下する。しかも、このような方法で
製造した鋼は常温に対する600℃の強度比率も高い。
度から水冷することによりMo,Cu,Nbの析出を抑
制する効果がある。圧延後空冷すると、冷却中にMo,
Cu,Nbが析出しやすく、高温強度を増加させる働き
が少なくなる。このため、圧延後の水冷は必須である。
理由について詳細に説明する。Cは母材および溶接部の
強度確保ならびにMoやNbの効果を発揮させるため必
要であり、0.03%以下では効果が薄れるので下限は
0.03%とする。しかし、C量が多すぎると溶接性を
害し、母材や溶接熱影響部(以下HAZ)靭性に悪影響
を及ぼすので0.10%が上限である。
が、多すぎると溶接性やHAZ靭性を劣化させるため、
その上限を0.60%とした。Mnは強度・靭性を確保
するため重要な元素であり、その下限は0.8%であ
る。しかし、Mn量が多すぎると焼入性が増加して溶接
性を劣化させるので、その上限を1.6%とした。
を生成して、常温と600℃の強度を向上させる重要な
元素である。そのため、その下限は強度に効果のある
0.8%である。Cuが多すぎると、Cu析出物が多く
なり、耐力を増加させ、YRを増加させる働きをするた
め、その上限は1.2%である。
であるが、一方でコストを増大させる。本発明鋼では、
相当量のCuを添加しており、Cuの熱間割れを防止す
るためにも重要な元素である。そのため、下限は0.5
%で、上限は1.5%である。
向上させるが、0.005%未満では効果が薄く、0.
02%超ではTiCを生成し、靭性を劣化させるため、
上限を0.02%とした。
が、SiおよびTiによっても脱酸は行われるので、下
限は限定しない。Al量が多くなると鋼の清浄度が悪く
なり、HAZ靭性を害するので、上限を0.10%とし
た。
まれるが、N量が多くなると連続鋳造スラブの表面キズ
の発生を助長、HAZ靭性をも害するので、上限を0.
006%とした。なお、本発明鋼は不可避的不純物とし
てPおよびSを含有する。P,Sは高温強度に与える影
響は少ないので、その量については限定しない。一般に
靭性、板厚方向強度等に関する鋼の特性は、P,Sが少
ないほど向上する。望ましいP,S量はそれぞれ0.0
2%,0.005%以下である。
り、十分に目的を達成できる。さらに、選択的にCr,
Vを添加することにより、強度、靭性の向上をはかるこ
とができ、Ca,REMを選択的に添加することによ
り、靭性や板厚方向強度を向上させることができる。
を高める元素であるが、0.5%を超えると溶接性やH
AZ靭性を劣化させ、0.05%未満では効果が薄いの
で、Cr量は0.05〜0.5%が限定範囲である。V
はNbと同様に、常温の強度や高温の強度を増加させる
効果が認められるが、0.005%未満では効果が薄
く、0.05%超では、溶接性やHAZ靭性を劣化させ
るので、0.005〜0.05%が限定範囲である。
制御し、低温靭性を向上させるほか、耐水素誘起割れ性
の改善にも効果を発揮する。しかしながら、Ca量0.
0005%未満では実用上効果がなく、また、0.00
3%を超えるとCaO,CaSの大型介在物が多量に発
生して、靭性を害し、溶接性にも悪影響をおよぼすの
で、0.0005〜0.003%を限定範囲とした。R
EMについてもCaと同様な効果があり、添加量が多い
とCaと同様な問題が生じるため、REMの限定範囲を
0.001〜0.005%とした。なお、本発明鋼を製
造後、脱水素等の目的でAc1 変態点以下の温度に再加
熱しても、本発明鋼の特徴は何等損なわれることはな
い。
し、常温強度、高温強度等を調査した。表1のNo.1〜
No.15に本発明鋼を、No.16〜No.20に比較鋼の
化学成分を示す。表1のつづきに、本発明鋼と比較鋼に
ついて、加熱、圧延冷却条件別に機械的特性を示す。
ロ組織中のベイナイト分率が46〜66%を示し、常温
および高温の強度特性は全て良好である。−20℃の衝
撃値も20kgfmの高い値である。また、YRは84%以
下の良好な値で、常温強度に対する600℃強度の割合
(YS比)も69%以上の良好な値であった。
低すぎてベイナイト分率も38%であるため、YS比
(常温強度に対する600℃強度の比)は高いが、常温
のYSが55kgf/mm2 を満足せず、YRも85%を超え
る値で、85%以下を満足できない。
分率も39%と低いため、YS比が62%低く常温の2
/3以上は満足できない。また、YRも85%を超える
値であった。No.18では、ベイナイト分率は58%と
良好であるが、Nbを添加していないため、YS比が6
0%と低く、常温のYRも85%を超える値であった。
分率が36%と低いため、YS比が57%と低く、常温
のYRも85%を超える値であった。No.20では、ベ
イナイト分率は57%と良好であるが、C量が高すぎる
ため、YS比は満足できるが、衝撃値が2.2kgfmと低
く、常温のYRも85%を超える値であった。
た鋼材は常温の耐力(YS)が55kgf/mm2 以上でYR
が85%以下、600℃のYSが常温のYSの2/3以
上、衝撃値も良好である等の特性を備えており、Pcmも
0.275%以下で良好な溶接性を有する等の建築用の
鋼材として必要な特性を兼ね備えており、従来にない全
く新しい鋼材である。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量比で C :0.03〜0.10% Si:0.60%以下 Mn:0.8〜1.6% Ni:0.5〜1.5% Cu:0.8〜1.2% Mo:0.8〜1.5% Nb:0.005〜0.05% Ti:0.005〜0.02% Al:0.10%以下 N :0.001〜0.006% 残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼片を110
0℃〜1300℃に再加熱後、熱間塑性加工を800〜
1000℃で終了し、その後850〜700℃まで空冷
してベイナイト主体〜ベイナイト焼戻しマルテンサイト
を生成し、この温度から400℃から550℃の範囲の
温度まで3〜40℃/secの冷却速度で水冷するか、また
は、空冷後、3〜40℃/secの冷却速度で850〜70
0℃から250℃以下の温度まで水冷し、その後、50
0℃から700℃以下の温度に再加熱し、焼戻し、60
0℃YSを常温YSの2/3以上とすることを特徴とす
る耐火性の優れた建築用高張力鋼の製造方法。 - 【請求項2】 重量比で C :0.03〜0.10% Si:0.60%以下 Mn:0.8〜1.6% Ni:0.5〜1.5% Cu:0.8〜1.2% Mo:0.8〜1.5% Nb:0.005〜0.05% Ti:0.005〜0.02% Al:0.10%以下 N :0.001〜0.006% に加えて Cr:0.05〜0.50% V :0.005〜0.05% および Ca:0.0005〜0.003% REM:0.001〜0.005% のそれぞれの一群の元素から一種または二種を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼片を110
0℃〜1300℃に再加熱後、熱間塑性加工を800〜
1000℃で終了し、その後850〜700℃まで空冷
してベイナイト主体〜ベイナイト焼戻しマルテンサイト
を生成し、この温度から400℃から550℃の範囲の
温度まで3〜40℃/secの冷却速度で水冷するか、また
は、空冷後、3〜40℃/secの冷却速度で850〜70
0℃から250℃以下の温度まで水冷し、その後、50
0℃から700℃以下の温度に再加熱し、焼戻し、60
0℃YSを常温YSの2/3以上とすることを特徴とす
る耐火性の優れた建築用高張力鋼の製造方法。
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---|---|---|---|
JP4222848A JP2546954B2 (ja) | 1992-08-21 | 1992-08-21 | 耐火性の優れた建築用高張力鋼の製造方法 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP4222848A JP2546954B2 (ja) | 1992-08-21 | 1992-08-21 | 耐火性の優れた建築用高張力鋼の製造方法 |
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0665676A JPH0665676A (ja) | 1994-03-08 |
JP2546954B2 true JP2546954B2 (ja) | 1996-10-23 |
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---|---|---|---|
JP4222848A Expired - Fee Related JP2546954B2 (ja) | 1992-08-21 | 1992-08-21 | 耐火性の優れた建築用高張力鋼の製造方法 |
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JP2662198B2 (ja) * | 1994-12-28 | 1997-10-08 | 日本鋳鍛鋼株式会社 | 耐火性および強度・靱性の優れた鋳鋼品の製造法 |
Family Cites Families (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS63179019A (ja) * | 1987-01-19 | 1988-07-23 | Sumitomo Metal Ind Ltd | 低降伏比高張力厚鋼板の製造法 |
JPH0615689B2 (ja) * | 1987-05-19 | 1994-03-02 | 新日本製鐵株式会社 | 低降状比高張力鋼の製造方法 |
-
1992
- 1992-08-21 JP JP4222848A patent/JP2546954B2/ja not_active Expired - Fee Related
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