JP3371744B2 - 低降伏比鋼材およびその製造方法 - Google Patents

低降伏比鋼材およびその製造方法

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JP3371744B2 JP07104697A JP7104697A JP3371744B2 JP 3371744 B2 JP3371744 B2 JP 3371744B2 JP 07104697 A JP07104697 A JP 07104697A JP 7104697 A JP7104697 A JP 7104697A JP 3371744 B2 JP3371744 B2 JP 3371744B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種の建造物、と
くに耐震性構造物への使用に好適な、地震時に良好な塑
性変形能を示す、靭性もあわせ持つ低降伏比鋼材および
その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、超高層ビル等、建築構造物の大型
化の進展に伴い使用される構造用鋼材は高強度化および
厚肉化が、強く要求される傾向にある。一方、建造物の
耐震性向上に関する調査の結果、降伏比(YR:降伏強
さ(YS)を引張強さ(TS)で除した値)の低い鋼材を構
造部材として使用することが有効であることが判ってき
た。
【0003】高強度鋼材としては、調質高張力鋼材、水
冷型TMCP鋼板等が知られているが、これら高強度鋼
材は高いTSを有するものの、軟鋼や焼きならし高張力
鋼に比べるとYRが80%以上と高いために塑性変形能
に劣り、したがって耐震性に劣っていた。
【0004】ところで、1994年1月の米国ノースリッジ
地震、および1995年1月の兵庫県南部地震での被災建造
物を詳細に調査すると、その鋼材には破壊に先立ち繰返
しひずみが負荷されていることが判明した。すなわち、
建造物の耐震性に必要な低YRは繰返し予ひずみ後にお
いて満たされていなければならない。つまり、鋼材が繰
返し軟化するか、または繰り返し硬化するかを評価する
必要がある。繰返し軟化する材料であれば繰返しひずみ
によってYSが低下しYRも減少する結果、塑性変形能
が低くなることはない。一方、繰返し硬化する鋼材が用
いられれば、たとえ建造直後の初期状態で鋼材が低YR
であっても繰返しひずみ履歴を受けることにより鋼材の
YSは除々に上昇する。そのため、建造物がいくつかの
地震を経験した後、または最初の地震でもその数回の繰
り返しひずみ後において、危険な大きなひずみの地震波
が入力された時には、鋼材のYRは既に上昇した状態に
なっており、設計時に期待された塑性変形能は得られな
い。
【0005】鋼材の低YR化に関する従来の技術には下
記のものが知られている。
【0006】一度、再加熱焼入れし、さらに、フェラ
イト相とオーステナイト相の二相共存温度域に再加熱し
空冷する方法の提案(特公昭59−52207号公
報)。この方法によれば、YRは確実に低くなるが、再
加熱コストが高くなるという問題点がある。
【0007】再加熱コストを省略するために、Ar3
点まで強圧下し圧延後初析フェライト相を生成させ、フ
ェライト相とオーステナイト相の二相共存状態まで空冷
し、その後水冷しオーステナイト相を硬化させる方法の
開示(特開昭59−211528号公報)。しかしなが
ら、この方法は、フェライト相、パーライト相およびベ
イナイト相の混合組織を得ることを目的としており、こ
の組織では靭性を備えたうえで繰り返し塑性変形後の低
YRを確保することができない。また、溶接性を備えた
うえで高強度化をはかるうえでも大きな制約となる。
【0008】この問題を解決するために、熱間圧延に
際し、再結晶域で50%以上の圧延後、Ar3 点以上か
ら5〜15℃/秒の速度で水冷する方法の開示がなされ
た(特開平1−176027号公報)。しかし、この方
法には、YRが75%程度しか低くならず、かつ最大板
厚50mm程度に留まる限界があった。
【0009】上記の3方法の問題点を解決すべく下記の
方法の提案がなされた。
【0010】1120〜1150℃加熱後、再結晶域
で50%以上の圧延を行い、Ar3 点以上から5〜15
℃/秒の速度で400〜650℃まで制御冷却する方法
(特開平5−214440号公報)。しかしながら、こ
の方法では低YR化が不十分である。
【0011】圧延終了後、二相域から焼入れし焼戻し
を施す方法(特開昭63−286517号公報)。この
方法は、製造コストが上昇する問題がある。
【0012】体積率1〜30%の残留オーステナイト
を含み、セメンタイトがベイナイト相のフェライトラス
間に層状に分布する組織にする方法(特開平7−109
544号公報)。この組織は靭性が著しく低くなる問題
がある。
【0013】上記の従来技術をまとめると、靭性を備
え、安価で、かつ繰り返しひずみ後にも低YRを保つ建
築用鋼材の製造方法の提供はこれまでなかったといえ
る。とくに、繰り返しひずみ後の性能(以後、「繰り返
し軟化硬化特性」という)について検討した例はみられ
ない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、繰り返し塑
性変形を受けても硬化せずに低YRを維持し、かつ良好
な靭性をあわせ持つ安価な低降伏比鋼材およびその製造
方法を提供することを目的とする。具体的にはつぎの性
能を全て満たすことを目的とする。
【0015】 1. YS≧300MPa、TS≧450MPa 2. 初期YR≦0.80、繰り返し軟化硬化特性(σ
100/σ1)≦1.02 3. シャルピー衝撃試験における破面遷移温度vTs≦
−40℃ 繰り返し軟化硬化特性の記号(σ100/σ1)の意味は、
実施例において説明する。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者は、靱性を確保
しつつ、初期のYRを低く押さえると同時に、繰返しひ
ずみに対しYSが上昇しない、すなわち繰返し軟化特性
が良好になる製造条件、とくに圧延後の冷却条件の検討
を行った結果、つぎの事項を確認することができた。
【0017】(a)熱間圧延後、フェライト相とオース
テナイト相の二相温度域から一定範囲の冷却速度で一定
温度まで冷却するとフェライト相およびベイナイト相、
またはフェライト相、ベイナイト相およびマルテンサイ
ト相からなる混合組織が得られ、低YR鋼材が得られ
る。
【0018】(b)繰り返し軟化硬化特性と靭性の両方
を確保するには、フェライト粒径を適切な範囲にする必
要がある。そのために、NbとTiの両者の一方または
両方を一定以上含ませる。
【0019】(c)繰り返し軟化硬化特性、初期YR、
および靭性の三者を同時に満足させる化学組成、圧延条
件、冷却開始温度、冷却速度、冷却停止温度等の製造条
件の範囲が存在する。
【0020】本発明は上記の事項をもとに現場試作を経
て完成されたもので、その要旨は下記の低降伏比鋼材お
よびその製造方法にある。
【0021】(1)重量パーセントで、C:0.07〜
0.18%、Si:0.6%以下、Mn:0.3〜2
%、sol.Al:0.1%以下、Cu:0〜0.6
、Nb:0〜0.1%、Ti:0〜0.1%、残部が
Feおよび不純物からなり、かつNb+Tiが0.01
〜0.1%である鋼の熱間圧延をAr点を超える温
度で終了し、フェライト相とオーステナイト相の二相温
度域780〜840℃まで放冷し、同温度域から冷却速
度5〜20℃/秒で200〜500℃の温度域まで制御
冷却し、その後放冷する、フェライト相およびベイナイ
ト相、またはフェライト相、ベイナイト相およびマルテ
ンサイト相からなり、いずれの組織の場合もフェライト
粒の平均粒径が5〜40μmである低降伏比鋼材の製造
方法(〔発明1〕とする)。
【0022】(2)重量パーセントで、C:0.07〜
0.18%、Si:0.6%以下、Mn:0.3〜2
%、sol.Al:0.1%以下、Cu:0〜0.6
、Nb:0〜0.1%、Ti:0〜0.1%、残部が
Feおよび不純物からなり、かつNb+Tiが0.01
〜0.1%である鋼であって、その組織はフェライト相
およびベイナイト相、またはフェライト相、ベイナイト
相およびマルテンサイト相からなり、そのフェライト粒
の平均粒径がいずれの組織の場合も5〜40μmであ
り、さらに繰り返し軟化硬化特性(σ 100 /σ )が
下記式で与えられる関係を満足する低降伏比鋼材(〔発
明2〕とする)。σ 100 /σ ≦1.02 ここで、σ およびσ 100 は、歪み制御下で歪み
範囲2%の完全両振り三角形波形を100波負荷したと
きの、それぞれ1波目および100波目の引張り歪み1
%での応力を表す。
【0023】上記において、「鋼材」は厚鋼板、熱延鋼
板、棒鋼、鍛鋼品等が該当する。
【0024】「フェライト相とオーステナイト相の二相
温度域780〜840℃」は、二相温度域のうちの78
0〜840℃の温度域をさす。
【0025】「ベイナイト相」は上部ベイナイト相と下
部ベイナイト相の両方を含む。フェライト相とベイナイ
ト相の2相組織の場合のベイナイト相は上部ベイナイト
相が主体であり、フェライト相、ベイナイト相およびマ
ルテンサイト相におけるベイナイト相は下部ベイナイト
相と上部ベイナイト相が混合したものか、または下部ベ
イナイト相が主体である。
【0026】温度はとくにことわらない限り、鋼材の中
心部と表面の中間点、たとえば厚鋼板の場合は、板幅方
向の温度変化は無視して、板厚1/4位置での温度をさ
す。また、冷却速度も同様に中間点、すなわち厚鋼板の
場合は板厚1/4位置での冷却速度とする。
【0027】つぎに、上記の発明を完成させる基となっ
た研究の内容について詳細に説明する。
【0028】供試鋼としては、C:0.09%、Si:
0.45%、Mn:1.0%、Nb:0.015%、T
i:0.035%、sol.Al:0.025%を含む鋼
(Ar3 点802℃)を用いた。この鋼を1100℃に
加熱後、再結晶温度域(ほぼ950℃以上)で70%の
圧下率を付与し、仕上げ温度880℃にて板厚25mm
に圧延し、740〜880℃の温度域まで空冷し、同温
度域から冷却速度3〜25℃/秒で冷却し、100〜6
00℃の温度域で冷却を停止し、放冷後、性能を調査し
た。
【0029】表1〜表3は、それぞれ繰返し軟化特性、
初期YR、および靱性の評価結果を示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】表1〜表3より、繰り返し軟化硬化特性、
初期YR、および靭性の三者を同時に満足させるために
は、冷却開始温度は780〜840℃、また冷却停止温
度下限は200℃〜500℃とすることが適切であるこ
とが分かる。
【0034】冷却開始温度下限は、表1に示した繰返し
軟化特性の確保のために780℃が適切である。冷却開
始温度上限は、表2に示す初期YR値の確保のために8
40℃が適切であるといえる。また、表3に示すよう
に、靱性確保の観点から冷却停止温度下限は200℃と
すべきである。冷却停止温度上限については初期YRの
確保のために500℃とした。
【0035】
【発明の実施の形態】つぎに本発明を上記のように限定
した理由について説明する。以後の説明において合金元
素についての「%」は「重量%」をあらわす。
【0036】1.化学組成 C:0.07〜0.18% ベイナイト相の十分な比率を確保するためにCの下限は
0.07%とする。Cがこれを下回ると、フェライト比
率が高すぎ必要なTSを得ることができない。一方、C
が0.18%を超えると溶接割れが生じやすくなり、溶
接施工が困難となり、構造用鋼としての使用範囲が著し
く限定されるので上限は0.18%とする。強度と耐溶
接割れ性の両者ともに良好な範囲とするには、0.08
〜0.16%とすることが望ましい。
【0037】Si:0.6%以下 Siは脱酸のために添加するが鋼中に留まらなくてもよ
い。しかし、脱酸を確実に行い、より脱酸力の強いAl
のロスを防止し、かつ強度を上昇させるためには0.0
5%以上含むことが望ましい。一方、Siが0.6%を
超えると破壊靭性の劣化が著しく生じるのでSiの上限
は0.6%とする。強度と靭性をともに良好にするには
0.15〜0.5%とすることが望ましい。
【0038】Mn:0.3〜2% Mnは、構造用鋼としての強度を保証する上で必要であ
る。Mnが0.3%未満では強度が不足するので0.3
%を下限とする。一方、Mnが2%を超えると厳重な溶
接割れ防止対策が必要となり、構造用鋼としての使用が
著しく限定されるので2%以下とする。強度と耐溶接割
れ性の両者のより良好な均衡を図るためには0.5〜
1.8%とすることが望ましい。
【0039】sol.Al:0.1%以下 Alは脱酸のために添加するが、鋼中に留まらなくても
よい。しかし、鋼中に留まった微量のsol.Alは組織を
微細化し靭性を向上させる作用があるので、sol.Al、
すなわち酸化物以外の形態で鋼中に留まるAlは0.0
05%以上とすることが望ましい。一方、0.1%を超
えると破壊靭性が低下し、かつ鋼の清浄度が劣化し伸び
絞り等の延性も低下するので鋼中に留まるsol.Alの上
限は0.1%とする。靭性上からは0.01〜0.05
%とすることがより望ましい。
【0040】これまで説明した合金元素は必ず含まれな
ければならない。つぎに説明するNbとTiは両方とも
に含まれる必要はないが、少なくとも一方は必ず含まな
ければならない。
【0041】Nb:0〜0.1% NbはTiが含まれている場合は無添加でもよい。Nb
はオーステナイト粒径を微細化し靭性を向上し、強度上
昇にも有効であるので、高強度鋼とする場合は含ませ
る。0.01%未満ではこれらの効果は小さいので含有
させる場合には0.005%以上とすることが望まし
い。一方、0.1%を超えると靭性劣化が著しいので上
限は0.1%とする。より良好な靭性確保のためには
0.01〜0.05%とすることが望ましい。
【0042】Ti:0〜0.1% Tiは、Nbを含む場合には無添加でもよい。Tiは後
記する熱間圧延前のスラブ加熱時のオーステナイト粒の
粗大化抑制し靭性向上に有効である。また溶接熱影響部
の靭性を確保するためにも有効である。これらの効果を
積極的に得る場合にはTiを含ませる。0.005%未
満のときには上記効果は小さいので含有させる場合には
0.005%以上とすることが望ましい。一方、0.1
%を超えると靭性が著しく低下するので、上限は0.1
%とする。さらに良好な靭性を得るためには0.01〜
0.05%とすることが望ましい。
【0043】Nb+Ti:0.01〜0.1% Nb+Tiが0.01%未満のときには、後記する圧延
仕上げ温度をAr3 点を超える温度とすると二相温度域
740〜840℃まで放冷したときフェライト平均粒径
が40μmを超え、靭性が劣化する。一方、0.1%を
超えるとフェライト粒径が微細となりすぎ繰り返し軟化
硬化特性が劣化するので0.1%以下とする。靭性およ
び繰り返し軟化硬化特性をともに良好にするには0.0
35%超、0.075%以下とすることが望ましい。
【0044】つぎに説明する合金元素のCuおよびCr
はともに無添加でもよい任意元素である。
【0045】Cu:0〜0.6% Cuは添加しなくてよい。しかし、Cuは靭性を大きく
劣化させずに強度を向上できるので、溶接性の観点から
Cを下げて強度を確保する場合には含ませる。0.6%
を超えると、連続鋳造スラブの表面性状が劣化するの
で、含ませる場合には0.6%以下とする。強度上昇と
表面性状を両立させるためには0.15〜0.4%とす
ることが望ましい。
【0046】Cr:0〜0.6% Crは添加しなくてよい。しかし、Crは焼入性を高め
るので肉厚が厚い鋼材を製造する場合には含ませる。
0.6%を超えると焼入性が過大となり溶接性が劣化す
るので、含ませる場合には0.6%以下とする。溶接性
および強度と靭性の両方をともに高める場合には0.1
5〜0.4%とすることが望ましい。
【0047】2.熱間圧延および冷却方法 熱間圧延終了温度がAr3 以下になると、フェライト粒
が加工され硬化されるので低YRとすることができず、
またフェライト粒径が微細になり良好な繰り返し軟化硬
化特性を得ることができない。フェライト粒径が微細に
なり過ぎないようにするためには、熱間圧延終了温度は
(Ar3 点+15℃)以上とすることが望ましい。
【0048】“熱間圧延終了後フェライト相およびオー
ステナイト相の2相温度域780〜840℃まで放冷
し、同温度域から冷却を開始する”のは、冷却において
オーステナイト相からベイナイト相またはベイナイト相
とマルテンサイト相を生成させてフェライト相とベイナ
イト相の二相組織、またはフェライト相、ベイナイト
相、マルテンサイト相の三相組織にするためである。熱
間圧延後に放冷するのは、上記の化学組成の範囲の鋼に
フェライト相を生成させ、かつ温度の監視が容易に行え
るからである。
【0049】冷却開始温度が780℃未満のときは、ベ
イナイト相が硬くなりすぎ繰り返しひずみを受けたとき
フェライト相にのみひずみが集中し、加工硬化が促進さ
れ繰り返し軟化硬化特性が悪くなり、後記するσ100
σ1が1.0を超えてしまう。すなわち、数回のゆれの
後の危険波の際に塑性変形能が不足する場合がある。一
方、840℃を超えると初析フェライト相の成長が十分
でなく初期YRが目標値以下にならない。そこで、冷却
開始温度は780〜840℃とする。
【0050】冷却速度が、5℃/秒未満では実質的に冷
却の効果がなく、一方、20℃/秒を超えるとベイナイ
ト相が抑制されマルテンサイト相が主体となり、繰り返
し軟化硬化特性が悪くなるので、冷却速度は5〜20℃
/秒とする。
【0051】冷却停止温度が200℃未満のときは靭性
に有害な島状マルテンサイトが生成し、一方、500℃
を超えると生成するベイナイト相の硬さが低くなりTS
が低下し、かつフェライト相との硬度差が小さくなり低
YRとならないので、冷却停止温度は200〜500℃
とする。
【0052】3.組織 本発明では上記の化学組成および製造方法を適用するこ
とにより組織をフェライト相およびベイナイト相の二相
組織、またはフェライト相、ベイナイト相、およびマル
テンサイト相の三相組織とする。これは、強度の高いベ
イナイト相またはベイナイト相とマルテンサイト相に強
度が相対的に低いフェライト相を連結するよう配置し、
低YRを実現させるためである。
【0053】上記の二相または三相組織のいずれにおい
てもフェライト粒の平均粒径が40μmを超えると靭性
が低下し、一方、5μm未満では繰り返し軟化硬化特性
が劣化するので、フェライト粒の平均粒径は5〜40μ
mとする。フェライト粒の平均粒径は光学顕微鏡観察に
より、倍率100倍程度の5〜10視野において測定し
簡単に求めることができる。
【0054】
【実施例】つぎに実施例により本発明の効果を説明す
る。
【0055】表4は、供試鋼の化学組成を示す。
【0056】
【表4】
【0057】これらの鋼を転炉で溶製し、連続鋳造によ
り240mm厚スラブとした後、1190℃に加熱し、
熱間圧延し最終板厚30mm、50mmおよび60mm
の厚鋼板に880℃に仕上げた。この仕上げ温度は、表
4の鋼番号のいずれのAr3点よりも高い。熱間圧延に
おける950℃以上の温度域における累積圧下率は、板
厚30mmの場合は67%、板厚50mmと板厚60m
mは60%とした。
【0058】表5は熱間圧延後の冷却条件および組織を
示す。
【0059】
【表5】
【0060】性能の調査は、下記により行った。
【0061】初期YRは引張試験(JIS Z2241 : 試験片
JIS Z 2201 4号試験片)により、YS、TSから求め
た。試験片採取位置は板厚の1/4位置とし、方向は圧
延長手方向に一致させた。
【0062】繰り返し軟化硬化特性は、丸棒試験片(平
行部直径6mm、ゲージ長15mm)にひずみ制御下で
ひずみ範囲△ε=2%の完全両振り三角形波形を100
波負荷し、つぎに述べる方法で評価した。1波目の引張
りひずみ1%(最大ひずみ)での応力σ1 と100波め
の引張りひずみ1%(最大ひずみ)での応力σ100 との
比、σ100/σ1により繰り返し軟化硬化特性の指標とし
た。
【0063】靭性は、シャルピー衝撃試験(JIS Z 2242
: 試験片 JIS Z 2202 4号試験片)により評価した。
【0064】これらの試験結果を表5に示す。
【0065】比較例である試験番号10は冷却開始温度
が高すぎたために初期YRが高くなり、試験番号11
は、逆に冷却開始温度が低すぎて、初期YRは低いもの
の繰り返し軟化硬化特性が高くなった。試験番号12は
冷却速度が本発明の範囲より小さいために靭性が劣化
し、逆に、試験番号13は冷却速度が本発明の範囲より
大となり初期YRが高すぎる結果となった。試験番号1
4は冷却停止温度が本発明の範囲より高いために初期Y
Rが目標範囲に入らず、また試験番号15は冷却停止温
度が低すぎて靭性が劣化した。試験番号16は鋼材番号
5を用いた試験であるが、TiもNbも含まないために
組織が粗くなり靭性が低下する結果となった。
【0066】これらに対して、本発明例である試験番号
1〜9は、鋼の組成、冷却条件のいずれも本発明の範囲
内にあるので、初期YR、繰り返し軟化硬化特性、靭性
の全てが目標性能に達した。
【0067】
【発明の効果】 本発明によれば、鋼の組成と冷却条件
を制御することにより、初期YRを低く保ち、繰り返し
負荷を受けても硬化しない、高靭性の鋼材を安価に提供
できる。本発明方法で製造された鋼材を各種の建造物に
使用すれば、地震の際にも、塑性変形能不足で破断する
ことなく優れた耐久性を示すので、今後の耐震性建造物
用鋼材として重要な役割を担うこととなる。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−301819(JP,A) 特開 昭64−47815(JP,A) 特開 平2−267222(JP,A) 特開 平3−285013(JP,A) 特開 平9−291310(JP,A) 特開 平10−96024(JP,A) 佐伯英一郎、杉沢充、山口種美、望月 晴雄、和田章,低降伏点鋼の低サイクル 疲労特性に関する研究,日本建築学会構 造系論文集,日本,1995年6月30日, 472,P.139−147 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 8/00 - 8/10 C22C 38/00 - 38/60

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量パーセントで、C:0.07〜0.1
    8%、Si:0.6%以下、Mn:0.3〜2%、so
    l.Al:0.1%以下、Cu:0〜0.6%、Nb
    0〜0.1%、Ti:0〜0.1%、残部がFeおよび
    不純物からなり、かつNb+Tiが0.01〜0.1%
    である鋼の熱間圧延をAr点を超える温度で終了
    し、フェライト相とオーステナイト相の二相温度域78
    0〜840℃まで放冷し、同温度域から冷却速度5〜2
    0℃/秒で200〜500℃の温度域まで制御冷却し、
    その後放冷することを特徴とする、フェライト相および
    ベイナイト相、またはフェライト相、ベイナイト相およ
    びマルテンサイト相からなり、そのフェライト粒の平均
    粒径がいずれの組織の場合も5〜40μmである低降伏
    比鋼材の製造方法。
  2. 【請求項2】重量パーセントで、C:0.07〜0.1
    8%、Si:0.6%以下、Mn:0.3〜2%、so
    l.Al:0.1%以下、Cu:0〜0.6%、Nb
    0〜0.1%、Ti:0〜0.1%、残部がFeおよび
    不純物からなり、かつNb+Tiが0.01〜0.1%
    である鋼であって、その組織はフェライト相およびベイ
    ナイト相、またはフェライト相、ベイナイト相およびマ
    ルテンサイト相からなり、いずれの組織の場合もフェラ
    イト粒の平均粒径が5〜40μmであり、さらに繰り返
    し軟化硬化特性(σ 100 /σ )が下記式で与えられ
    る関係を満足することを特徴とする低降伏比鋼材。σ 100 /σ ≦1.02 ここで、σ およびσ 100 は、歪み制御下で歪み
    範囲2%の完全両振り三角形波形を100波負荷したと
    きの、それぞれ1波目および100波目の引張り歪み1
    %での応力を表す。
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佐伯英一郎、杉沢充、山口種美、望月晴雄、和田章,低降伏点鋼の低サイクル疲労特性に関する研究,日本建築学会構造系論文集,日本,1995年6月30日,472,P.139−147

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