JP3247909B2 - 延性と耐遅れ破壊特性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

延性と耐遅れ破壊特性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法

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JP3247909B2 JP29588792A JP29588792A JP3247909B2 JP 3247909 B2 JP3247909 B2 JP 3247909B2 JP 29588792 A JP29588792 A JP 29588792A JP 29588792 A JP29588792 A JP 29588792A JP 3247909 B2 JP3247909 B2 JP 3247909B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、主として自動車用部
材、中でも比較的軽度の加工で高強度材として用いられ
る高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関
し、とくに延性と耐遅れ破壊特性の向上を図ったもので
ある。
【0002】近年、自動車の安全性の向上および車体重
量軽減のため、高強度鋼板の使用に対する要求が強い。
この発明で対象とするドアインパクトビーム、バンパ
ー、その他の部品は、従来、引張強度(TS)で60 kgf/mm2
から100 kgf/mm2 の鋼板が用いられてきたが、最近では
さらに強度を向上させたTS≧120 kgf/mm2 級の高強度鋼
板で、しかも耐食性の観点から良好な耐食性をそなえる
溶融亜鉛めっき鋼板(合金化溶融亜鉛めっき鋼板を含
む。以下同じ)が必要とされている。
【0003】
【従来の技術】TSが 120 kfg/mm2を超える鋼板の製造法
としては、次のようなものが知られているが、それぞれ
問題点をかかえている。 (1) 加工強化鋼、回復焼鈍鋼 この種鋼は、強度の上昇を加工硬化に依存しているため
に材質が不安定なだけでなく、部品の組立工程で溶接を
行った場合には軟化が著しいという問題がある。またこ
の種鋼板は切欠き感受性が大きく、安全性の観点からも
問題が残る。
【0004】(2) 焼入れ (焼戻し) 鋼 (マルテンサイト
組織鋼) マルテンサイトを主として用いる場合(例えば特開昭58
-61219号公報)には、比較的容易に高強度が得られる
が、加工性を向上させるために焼戻し工程が必須とな
る。その際に温度と時間の調整を厳密に行わないと目標
とする材質が得られないだけでなく、ばらつきも大き
い。また適切な条件を選定しないといわゆる焼戻し脆性
を生じる危険性も大きい。さらに従来鋼の組成では、実
際の使用環境下で腐食の進行に伴い鋼中に進入、蓄積す
る水素に起因した水素脆性・遅れ破壊を防止することが
困難であった。また、フェライトとマルテンサイトの混
合組織からなる鋼板は、延性は良好ではあるが、硬質相
と軟質相が混在するために切り欠き感受性が強く、安全
性の面で問題であった。さらに、プロセス的に著しい急
冷を必要とし、またMf 点以下まで連続して冷却する必
要があることから、途中で冷却の停止を不可欠とするめ
っきプロセスには適用が難しかった。
【0005】(3) 析出強化鋼 鋼中に、Nb, Ti等の炭窒化物生成元素を添加して析出強
化させたものでは、TSを十分に上昇させることは難し
く、100 kgf/mm2 程度が限界であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】遅れ破壊は、鋼に残存
する残留応力がその主要因の一つであるため、プレス成
形後に充分な応力除去処理を行えば、ほとんど全ての鋼
種についてこの問題を解消することができる。しかしな
がら、かような処理は工程の冗長化につながるだけでな
く、部品強度の大幅な低下も招くので、実際の使用には
供し得ない。また、めっきを施すことで耐食性は向上す
るが、亜鉛めっきのような犠牲防食機構の場合は腐食反
応による水素の進入が促進されるため、遅れ破壊特性は
単純には向上しない。
【0007】この発明は、上述した現状に鑑み開発され
たもので、プレス加工に耐え得る充分な成形性を有し、
またその後の使用環境において遅れ破壊を生じることが
なく、さらに切欠き感受性が低く部品としての信頼性が
高い高強度溶融亜鉛めっき鋼板を、その有利な製造方法
と共に提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明は、鋼の成分組
成範囲のみならず、微細組織構成を最適化することによ
り、完成されたものである。すなわちこの発明の要旨構
成は次のとおりである。 1.C:0.05〜0.20wt%(以下単に%で示す)、Mn:1.80〜5.00%、 P:0.02〜0.08%、 Al:0.10%以下、 Cu:0.10〜1.00%、 Cr:0.05〜1.00%、 B:0.0010〜0.0050%、Nb:0.005〜0.040%、 S:0.0050%以下、 Ni:0.05〜1.00%、 Si:0.10%以下 を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、
かつ鋼組織が面積率で、ベイナイト≧50%、(ベイナイ
ト+焼戻しマルテンサイト)≧90%、残留オーステナイ
ト≦4%(0を含まず)になる、引張強度≧120kgf/mm2
降伏比≦0.80を満足する延性と耐遅れ破壊特性に優れた
高強度溶融亜鉛めっき鋼板(第1発明)。
【0009】 2.C:0.05〜0.20%、 Mn:1.80〜5.00%、 P:0.02〜0.08%、 Al:0.10%以下、 Cu:0.10〜1.00%、 Cr:0.05〜1.00%、 B:0.0010〜0.0050%、Nb:0.005〜0.040%、 S:0.0050%以下、 Ni:0.05〜1.00%、 Si:0.10%以下を含み、かつ Ti:0.005〜0.100%、 V:0.010〜0.100% のうちから選んだ1種または2種を含有し、残部はFeお
よび不可避的不純物の組成になり、かつ鋼組織が面積率
で、ベイナイト≧50%、(ベイナイト+焼戻しマルテン
サイト)≧90%、残留オーステナイト≦4%(0を含ま
ず)になる、引張強度≧120kgf/mm2、降伏比≦0.80を満
足する延性と耐遅れ破壊特性に優れた高強度溶融亜鉛め
っき鋼板(第2発明)。
【0010】 3. C:0.05〜0.20%、 Mn:1.80〜5.00%、 P:0.02〜0.08%、 Al:0.10%以下、 Cu:0.10〜1.00%、 Cr:0.05〜1.00%、 B:0.0010〜0.0050%、Nb:0.005〜0.040%、 S:0.0050%以下、 Ni:0.05〜1.00%、 Si:0.10%以下 を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼
スラブを、均熱温度:1100℃以上、仕上げ圧延温度:80
0〜950℃の条件下に熱間圧延し、500〜650℃の温度で巻
き取ったのち、酸洗し、ついで圧下率:10%以上で冷間
圧延したのち、溶融亜鉛めっきラインにおいて、800〜9
00℃、20〜120sの均熱処理後、平均冷却速度:15〜150
℃/sの速度で冷却しつつめっき浴槽に浸漬し、ついで
その後の合金化処理も含めて450℃以上の温度域での全
保持時間を40s以下とし、引き続き200℃以下までを10
℃/s以上の速度で冷却することを特徴とする延性と耐
遅れ破壊特性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造
方法(第3発明)。4. C:0.05〜0.20%、 Mn:1.80〜5.00%、 P:0.02〜0.08%、 Al:0.10%以下、 Cu:0.10〜1.00%、 Cr:0.05〜1.00%、 B:0.0010〜0.0050%、Nb:0.005〜0.040%、 S:0.0050%以下、 Ni:0.05〜1.00%、 Si:0.10%以下を含み、かつ Ti:0.005〜0.100%、 V:0.010〜0.100% のうちから選んだ1種または2種を含有し、残部はFeお
よび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、均熱温
度:1100℃以上、仕上げ圧延温度:800〜950℃の条件下
に熱間圧延し、500〜650℃の温度で巻き取ったのち、酸
洗し、ついで圧下率:10%以上で冷間圧延したのち、溶
融亜鉛めっきラインにおいて、800〜900℃、20〜120s
の均熱処理後、平均冷却速度:15〜150℃/sの速度で
冷却しつつめっき浴槽に浸漬し、ついでその後の合金化
処理も含めて450℃以上の温度域での全保持時間を40s
以下とし、引き続き200℃以下までを10℃/s以上の速
度で冷却 することを特徴とする延性と耐遅れ破壊特性に
優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法(第4発
明)。
【0011】
【作用】この発明において鋼組成を、上記の範囲に限定
した理由について説明する。 C:0.05〜0.20% Cは、低温変態相を利用して鋼を強化するためには不可
欠の元素であって、TS≧120 kgf/mm2 を得るには少なく
とも0.05%の添加が必要であるが、0.20%を超えて含有
させると高強度は得られるものの、溶接性が著しく劣化
するので、C量は0.05〜0.20%の範囲に限定した。
【0012】Mn:1.80〜5.00% Mnは、フェライト変態、パーライト変態を抑制し、ベイ
ナイト主体の好ましい組織を得るのに不可欠の元素であ
るが、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造工程においては
含有量が1.80%未満では安定してベイナイト主体の組織
とすることができず、一方、5.00%を超える添加は効果
が飽和するだけでなく、合金コストの上昇を招き、また
熱延後の冷延工程で冷間加工性を悪化させる不利もあ
る。それ故、Mn含有量は1.80〜5.00%の範囲とした。
【0013】P:0.02〜0.08% Pは、詳細な機構は不明ではあるが、CuやCr等と複合含
有させることにより、耐遅れ破壊特性の改善に有効に寄
与する。しかしながら、P添加量が0.02%に満たないと
耐遅れ破壊特性の改善効果が十分でなく、一方、0.08%
を超えて添加しても上記効果は飽和に達し、むしろP自
身の偏析に起因した組織の層状化が起こり易くなって、
局部延性の劣化を招く。従って、P含有量は0.02〜0.08
%の範囲に限定した。
【0014】Al:0.10%以下 鋼中の酸化物等の非金属介在物は局部延性の劣化を招く
ので、充分に低減する必要があり、そのためには製造工
程でのAlの添加が有利である。しかしながら、添加量が
過剰になって0.10%を超えると、表面性状の劣化を招
き、これがさらに曲げ加工性や局部延性の低下につなが
る。従って、Alは0.10%以下で含有させるものとした。
なお、下限は特に規制しないけれども、 0.020%以上と
することが望ましい。
【0015】Cu:0.10〜1.00% Cuは、PやCrと共に耐遅れ破壊特性の改善に寄与する有
用元素である。しかしCu量が0.10%未満では上記の効果
が充分に発揮されず、一方、1.00%を超えて添加しても
その効果は飽和に達し、むしろ合金元素のコスト上昇を
招くので、Cuは0.10〜1.00%の範囲で含有させるものと
した。
【0016】Cr:0.05〜1.00% Crは、上述したとおり、PやCuとの複合作用によって耐
遅れ破壊特性の改善に有効に寄与する。しかしながら、
Cr量が0.05%未満では上記の効果が充分には発揮され
ず、一方、1.00%を超えるとその効果は飽和に達し、む
しろ鋼が硬化して冷間加工性の低下を招く。従って、Cr
含有量は0.05〜1.00%の範囲とした。
【0017】B:0.0010〜0.0050% Bは、強度の向上に有効で、とくに連続焼鈍時の急冷に
際して、フェライトの生成を抑制することでベイナイト
主体の組織を得易くする効果がある。さらに、P添加に
よる局部延性の劣化傾向を抑制する効果もある。しか
し、かような効果が発揮するためには少なくとも0.0010
%以上の添加を必要とし、一方、0.0050%を超えるとこ
れらの効果は飽和に達し、むしろ熱延母板が硬質化して
冷延工程で支障をきたす。従って、B含有量は0.0010〜
0.0050%とした。
【0018】Nb:0.005 〜0.040 % Nbは、組織の細粒化だけでなく、連続焼鈍時におけるベ
イナイト主体の組織の形成にも有効に寄与する有用元素
である。これらの効果は 0.005%以上の添加で顕著とな
るが、 0.040%を超えると、熱延母板が硬質化し冷延工
程に支障をきたし、また耐遅れ破壊特性はやや劣化する
傾向を示す。従ってNbは 0.005〜0.040%の範囲で含有
させるものとした。
【0019】S:0.0050%以下 S量の制限は、局部延性向上の観点からも、また耐遅れ
破壊特性向上の観点からも重要である。すなわち、Sは
鋼中で非金属介在物として存在し、応力集中源となるの
で、その低減は種々の機械的特性に対して有利である。
許容される上限値は鋼板の微細組織、強度レベルに依存
するが、この発明の組織、目標強度であれば、Sを0.00
50%以下に抑制すれば良好な特性を得ることができる。
【0020】Ni:0.05〜1.00% Niは、詳細な機構は不明ではあるが、鋼の耐遅れ破壊特
性の改善に有効に寄与する。この効果が発揮されるのは
含有量が0.05%以上の場合であるが、1.00%を超えると
その添加効果は飽和に達し、むしろ合金コストの上昇を
招く。従って、Ni含有量は0.05〜1.00%とした。
【0021】Si:0.10%以下 Siは、鋼中の介在物を効果的に低減することによって、
局部延性の向上をもたらす有用元素であるが、あまりに
多量の添加は、特にめっき鋼板の場合、めっき前の焼鈍
工程でSiが鋼板表面に濃化し、めっき性が損なわれるの
で、Si量は0.10%以下(好ましくは0.05%以上)の範囲
で含有させるものとした。
【0022】以上、基本成分について説明したが、この
発明ではさらに、機械的性質を改善するため以下の元素
を含有させることもできる。 Ti:0.005 〜0.100 % Tiは、スラブ鋳造時の割れ発生を防止するのに有効なだ
けでなく、材質的にも詳細な機構は不明であるが、局部
延性の改善に有効である。かような効果を得るためには
少なくとも 0.005%の添加を必要とするが、 0.100%を
超えて添加すると、表面性状の劣化するだけでなく、炭
化物が極端に多くなって耐遅れ破壊特性の低下を招く。
従ってTiは 0.005〜0.100 %の範囲で含有させるものと
した。
【0023】V:0.010 〜0.100 % Vは、Tiと同様、局部延性の改善に有用であり、また降
伏比の低減にも有効に寄与する。しかしながら、含有量
が 0.010%に満たないとその添加効果に乏しく、一方
0.100%を超えて添加すると、逆に降伏比が上昇し、材
質改善効果が低下する。従ってVは、 0.010〜0.100 %
の範囲で含有させるものとした。なお上記したTiおよび
Vは、単独の添加でも有効であるが、これらを複合添加
しても、その効果が相殺されることはない。
【0024】以上、適正な成分組成範囲について説明し
たが、この発明で所期した効果を得るためには、成分組
成を上記の適正範囲に制限するだけでは不十分で、鋼組
織を面積率で以下の範囲に規制することが肝要である。 ベイナイト分率≧50% ベイナイトの分率は50%以上とする必要がある。という
のは、50%未満では局部延性の向上が望めないからであ
る。なおベイナイト単独は勿論、以下に述べるマルテン
サイトとの合計の分率も重要である。
【0025】 ベイナイト+焼戻しマルテンサイトの分率≧90% これら硬質な低温変態相の分率が90%に満たないと、残
部の軟質相が空間的に部分的に連結する結果、ボイドの
連結が容易となり、曲げ加工性、局部延性および耐遅れ
破壊特性すべてが劣化する。なお、低温変態相の分率
は、ベイナイトと焼戻しマルテンサイトの和が90%以上
であればよく、焼戻しマルテンサイトの量は0%でも構
わない。
【0026】 残留オーステナイト分率≦4%(0を含まず) 残留オーステナイト分率が4%を超えると、延性は改善
されるものの、耐遅れ破壊特性は大幅に劣化し、実用に
耐えないレベルとなる。
【0027】以上述べた成分組成範囲および鋼組織とす
ることにより、引張強度≧120kgf/mm2、降伏比≦0.80
満足する局部延性と耐遅れ破壊特性に優れた高強度溶融
亜鉛めっき鋼板を得ることができる。なお機械的特性で
はとくに降伏比が重要であり、降伏比を0.80以下とする
ことによって、プレス成形時の歪みの伝播が容易になる
結果、有害な引張り残留応力を低減することができる。
またプレス成形時のスプリングバック量を低減すること
もできるので、プレス成形時の精度向上にも有効であ
る。
【0028】次に、この発明に従う製造好適について具
体的に説明する。スラブ製造法 連続鋳造法の方が成分の偏析が少なく均一な材質が得ら
れるので、連続鋳造によってスラブを製造することが望
ましいが、偏析の少ない造塊法であれば当然適用可能で
ある。
【0029】スラブ均熱温度:1100℃以上 スラブ均熱温度が1100℃に満たないと、添加Nbの溶け込
みが充分でなく、強度が低下し、また詳細な理由は不明
ではあるが耐遅れ破壊特性も劣化する。
【0030】仕上げ圧延温度:800 〜950 ℃ 仕上げ圧延温度が 800℃未満では、冷延焼鈍後の組織が
粗大化することに加え、熱延も板形状の乱れ発生などの
ため困難となる。一方 950℃を超えた場合は鋼板の板厚
方向の不均一性が増加し、局部延性の点で好ましくな
い。従って、仕上げ圧延温度は 800〜950 ℃とした。
【0031】熱延巻取り温度:500 〜650 ℃ 500℃未満の温度で巻き取った場合は、鋼板が顕著に硬
化し、冷間圧延が困難になることに加えて、鋼板の形状
も著しく劣化する。一方 650℃を超える温度で巻き取っ
た場合は、熱延母板の組織が不均一になるに伴って最終
の鋼板組織も不均一となり、局部延性が劣化する。
【0032】冷間圧下率:10%以上 冷間圧下率を10%以上とすることで鋼板表面の形状的な
不均一性を解消することができ、これが耐遅れ破壊特性
の向上に有効である。冷間圧下率の上限は特に限定され
ることはなく、必要な最終製品厚みにあわせることが可
能である。
【0033】連続めっきラインにおける焼鈍工程の均熱
温度:800 〜900 ℃ 均熱温度は、均熱時のオーステナイト相の分率を調整す
る意味で重要である。800℃未満では充分な量のオース
テナイト相が得られないのに加えて、鋼板中に層状組織
が残存し、十分な局部延性が得られない。一方、 900℃
を超える場合は組織が粗大化し、加工性および耐二次加
工脆性も劣化する。
【0034】焼鈍工程の均熱時間:20〜120 s 20s未満では最終的に安定した材質が得られない。一
方、 120sを超えると鋼板表面の元素の濃化が顕著とな
り、化成処理性の劣化を招くだけでなく、焼鈍中の雰囲
気からの水素吸収も増加し、耐遅れ破壊特性が劣化す
る。また、詳細な理由は不明であるが、めっき性も低下
し、不めっきの発生率が増加する。
【0035】平均冷却速度:15〜150 ℃/s 均熱温度からめっき浴に浸漬するまでの平均冷却速度が
15℃/sに満たないと、軟質相が析出し、強度の低下を招
くだけでなく、局部延性が劣化する。一方、冷却速度が
150℃/sを超えると、ベイナイトの分率が著しく低下し
マルテンサイトを主体とする組織になる結果、強度はや
や増加するものの耐遅れ破壊特性は顕著に劣化する。
【0036】急冷後のめっき処理および合金化処理 急冷後、めっき浴に浸漬してめっきを施し、そのまま合
金化する場合、または再度、合金化温度まで加熱して合
金化する場合いずれであっても、 450℃以上の温度域に
保持される時間は 40 s以下とする必要がある。という
のは、 450℃以上の温度域に40s以上保持されると、組
織が焼戻されて降伏応力が上昇し引張強度が低下するこ
とに加え、延性および耐遅れ破壊特性が劣化するからで
ある。また、合金化終了後、または合金化を行わない場
合でも、 450℃から少なくとも 200℃までは、10℃/s
以上の速度で冷却する必要がある。というのは、この温
度域でもある一定限度を越えて滞留すると、やはり組織
の焼戻しを生じ、材質劣化を生じるからである。
【0037】
【実施例】
実施例1 表1に示す種々の成分組成になる鋼を転炉にて溶製し、
連続鋳造でスラブとしたのち、表2に示す条件で溶融亜
鉛めっき処理を施した。なおめっき付着量は、片面当た
り 45 g/m2とした。得られた各めっき鋼板の機械的特性
および耐遅れ破壊特性について調べた結果を表3に示
す。なお機械的特性のうち、引張特性は通常の JIS5号
試験片を用いて通常の測定法で評価した。また曲げ試験
については、幅:40mm、長さ:100 mmの試験片を用いて
ポンチ・ダイによる 180°Uベンド試験を行い、クラッ
クの発生なく曲げられる臨界曲げ半径で評価した。さら
に局部延性については、通常の JIS5号試験片の平行部
中央に2mmVノッチを加工した試験片を作成し、通常の
JIS5号引張り特性とくにTSの変化を比較した。切り欠
き感受性が高い場合はノッチの存在により、いわゆる低
応力破壊を起こす。遅れ破壊試験は、鋼板を33mmφのポ
ンチで絞り比1.75の円筒に深絞り加工し、それを3%Na
Cl水溶液中に浸漬して約1週間経過後の割れ発生の有無
で評価した。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】表3から明らかなように、この発明に従っ
て得られた鋼板はTSが120kgf/mm2以上の高強度であ
り、しかも低降伏比で、臨界曲げ半径も小さく良好な曲
げ成形性を有している。また遅れ破壊を起こすこともな
く、良好な耐遅れ破壊特性を有していることが判る。ま
た諸特性の良好な発明鋼においては、その微細組織がベ
イナイト≧50%、(ベイナイト+焼戻しマルテンサイ
ト)≧90%、残留オーステナイト≦4%(0を含まず)
いう条件を満足していることが判る。なお切り欠きが存
在する場合には、平滑材に比して引張り強度が少し増加
することが望ましいとされているが、この発明鋼では5
〜7kgf/mm2程度増加しており、この条件も満足してい
る。
【0042】これに対し、この発明の要件を満足しない
比較例は、大きく強度が低下し、また切り欠き感受性も
大きく、部品として何らかの欠陥が存在した場合に低応
力破壊を起こす危険が大きいことを示している。
【0043】実施例2 表4に示す成分組成になる鋼を用い、表5に示す製造条
件で合金化溶融亜鉛めっき鋼板とした。得られた各めっ
き鋼板の最終的な微細組織と、引張り特性、曲げ特性お
よび耐遅れ破壊特性についての調査結果を表6に示す。
なお各試験方法は実施例1の場合と同様である。
【0044】
【表4】
【0045】
【表5】
【0046】
【表6】
【0047】表6から明らかなように、この発明に従い
得られためっき鋼板はいずれも、TSが 120kgf/mm2 以上
の高強度であり、しかも良好な曲げ加工性および耐遅れ
破壊特性を有している。なお、上記の実施例は、合金化
処理を含む場合について示したが、非合金化材について
も、 450℃以上の温度域における保持時間等の条件がこ
の発明の適正範囲を満足していれば、同等の結果が得ら
れることが確認された。
【0048】実施例3 表4とほぼ同様な成分の鋼の3鋼種を用いて、連続焼鈍
条件を中心に製造条件を種々に変化させて溶融亜鉛めっ
き鋼板を製造し、鋼板の組織分率と耐遅れ破壊特性との
関係について調べた結果を表7に示す。なお、引張り強
度は 138〜151kgf/mm2の範囲であることを確認してい
る。
【0049】
【表7】
【0050】表7から明らかなように、ベイナイト≧50
%、(ベイナイト+焼戻しマルテンサイト)≧90%と
し、さらに残留オーステナイト≦4%(0を含まず)とし
た場合に、とりわけ良好な耐遅れ破壊特性が得られてい
る。
【0051】
【発明の効果】かくしてこの発明によれば、延性と耐遅
れ破壊特性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板を安定し
て得ることができ、その工業的価値は極めて大きい。こ
の発明鋼は、自動車の主として強度部材用に適してお
り、強度が極めて高くしかも充分な成形性を有すると同
時に、局部延性が高く、従って部品としての信頼性が高
い。さらに耐遅れ破壊特性にも優れているので、この鋼
板を用いることによって、鋼板の薄肉化ひいては自動車
車体の軽量化が達成できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−93822(JP,A) 特開 昭49−9423(JP,A) 特開 平4−297527(JP,A) 特開 平6−145891(JP,A) 特開 平6−145894(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60 C21D 8/02 - 8/04 C21D 9/46 - 9/48

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.05〜0.20wt%、 Mn:1.80〜5.00wt%、 P:0.02〜0.08wt%、 Al:0.10wt%以下、 Cu:0.10〜1.00wt%、 Cr:0.05〜1.00wt%、 B:0.0010〜0.0050wt%、Nb:0.005〜0.040wt%、 S:0.0050wt%以下、 Ni:0.05〜1.00wt%、 Si:0.10wt%以下 を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、
    かつ鋼組織が面積率で、ベイナイト≧50%、(ベイナイ
    ト+焼戻しマルテンサイト)≧90%、残留オーステナイ
    ト≦4%(0を含まず)になる、引張強度≧120kgf/mm2
    降伏比≦0.80を満足する延性と耐遅れ破壊特性に優れた
    高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  2. 【請求項2】 C:0.05〜0.20wt%、 Mn:1.80〜5.00wt%、 P:0.02〜0.08wt%、 Al:0.10wt%以下、 Cu:0.10〜1.00wt%、 Cr:0.05〜1.00wt%、 B:0.0010〜0.0050wt%、Nb:0.005〜0.040wt%、 S:0.0050wt%以下、 Ni:0.05〜1.00wt%、 Si:0.10wt%以下 を含み、かつ Ti:0.005〜0.100wt%、 V:0.010〜0.100wt% のうちから選んだ1種または2種を含有し、残部はFeお
    よび不可避的不純物の組成になり、かつ鋼組織が面積率
    で、ベイナイト≧50%、(ベイナイト+焼戻しマルテン
    サイト)≧90%、残留オーステナイト≦4%(0を含ま
    ず)になる、引張強度≧120kgf/mm2、降伏比≦0.80を満
    足する延性と耐遅れ破壊特性に優れた高強度溶融亜鉛め
    っき鋼板。
  3. 【請求項3】 C:0.05〜0.20wt%、 Mn:1.80〜5.00wt%、 P:0.02〜0.08wt%、 Al:0.10wt%以下、 Cu:0.10〜1.00wt%、 Cr:0.05〜1.00wt%、 B:0.0010〜0.0050wt%、Nb:0.005〜0.040wt%、 S:0.0050wt%以下、 Ni:0.05〜1.00wt%、 Si:0.10wt%以下 を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼
    スラブを、均熱温度:1100℃以上、仕上げ圧延温度:80
    0〜950℃の条件下に熱間圧延し、500〜650℃の温度で巻
    き取ったのち、酸洗し、ついで圧下率:10%以上で冷間
    圧延したのち、溶融亜鉛めっきラインにおいて、800〜9
    00℃、20〜120sの均熱処理後、平均冷却速度:15〜150
    ℃/sの速度で冷却しつつめっき浴槽に浸漬し、ついで
    その後の合金化処理も含めて450℃以上の温度域での全
    保持時間を40s以下とし、引き続き200℃以下までを10
    ℃/s以上の速度で冷却することを特徴とする延性と耐
    遅れ破壊特性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造
    方法。
  4. 【請求項4】 C:0.05〜0.20wt%、 Mn:1.80〜5.00wt%、 P:0.02〜0.08wt%、 Al:0.10wt%以下、 Cu:0.10〜1.00wt%、 Cr:0.05〜1.00wt%、 B:0.0010〜0.0050wt%、Nb:0.005〜0.040wt%、 S:0.0050wt%以下、 Ni:0.05〜1.00wt%、 Si:0.10wt%以下 を含み、かつ Ti:0.005〜0.100wt%、 V:0.010〜0.100wt% のうちから選んだ1種または2種を含有し、残部はFeお
    よび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、均熱温
    度:1100℃以上、仕上げ圧延温度:800〜950℃の条件下
    に熱間圧延し、500〜650℃の温度で巻き取ったのち、酸
    洗し、ついで圧下率:10%以上で冷間圧延したのち、溶
    融亜鉛めっきラインにおいて、800〜900℃、20〜120s
    の均熱処理後、平均冷却速度:15〜150℃/sの速度で
    冷却しつつめっき浴槽に浸漬し、ついでその後の合金化
    処理も含めて450℃以上の温度域での全保持時間を40s
    以下とし、引き続き200℃以下までを10℃/s以上の速
    度で冷却することを特徴とする延性と耐遅れ破壊特性に
    優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板 の製造方法。
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