JP2002115024A - 靭性および耐遅れ破壊性に優れた耐摩耗鋼材ならびにその製造方法 - Google Patents

靭性および耐遅れ破壊性に優れた耐摩耗鋼材ならびにその製造方法

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JP2002115024A
JP2002115024A JP2000307921A JP2000307921A JP2002115024A JP 2002115024 A JP2002115024 A JP 2002115024A JP 2000307921 A JP2000307921 A JP 2000307921A JP 2000307921 A JP2000307921 A JP 2000307921A JP 2002115024 A JP2002115024 A JP 2002115024A
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delayed fracture
steel
toughness
mass
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Teruki Sadasue
照輝 貞末
Shinichi Suzuki
伸一 鈴木
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NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 靭性および耐遅れ破壊性に優れた耐摩耗鋼材
を提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.05〜0.40%、
Si:0.1〜0.8%、Mn:0.5〜2.0%、C
r:0.05〜2.0%、Ti:0.005〜0.5
%、B:0.0005〜0.005%、Al:0.00
5〜0.10%、N:0.005%以下を含み、残部が
鉄および不可避的不純物から実質的になり、表層部が焼
戻しマルテンサイト組織であり、内質部が焼戻しマルテ
ンサイト組織および焼戻し下部ベイナイト組織から選ば
れる1種の単相組織または2種の混合組織であり、肉厚
方向の旧オーステナイト粒径(dZ)に対する圧延方向
の旧オーステナイト粒径(dL)の比(dL/dZ)で
表される旧オーステナイト粒展伸度が2以上であること
を特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建設、土木および
鉱山等の掘削等の分野で用いられる産業機械、運搬機器
等に用いられる靭性および耐遅れ破壊性に優れた耐摩耗
鋼材ならびにその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】建設、土木および鉱山等の掘削等の分野
で用いられる産業機械、運搬機器(例えば、パワーショ
ベル、ブルドーザ、大型ダンプトラック等)における土
砂摩耗部は、その摩耗量によって寿命が支配されるた
め、優れた耐摩耗性を有する鋼材であることが要求され
ている。そのため、耐摩耗性を向上させるために、鋼材
の組織をマルテンサイト組織とすることにより鋼材の硬
度を高めること等がなされている。
【0003】ところで、マルテンサイト組織とされた鋼
材の硬度はC含有量により一義的に決定される。したが
って、C含有量を高めることにより鋼材の硬度を向上で
きるが、その反面、鋼材の靭性が著しく劣化し、さらに
鋼材中の水素に起因する遅れ破壊が生じ易くなるという
問題があった。
【0004】そこで、これまでは焼入れ性向上による鋼
材硬度の向上、すなわち耐摩耗性を向上させるととも
に、靭性および耐遅れ破壊性を確保できるように鋼成分
の選定を行なうことが前提とされてきた。
【0005】また、靭性および耐遅れ破壊性をともに向
上させることを意図して、鋼を熱間圧延して空冷した後
に、再加熱焼入れし、さらに必要に応じて焼戻し処理を
施すことにより耐摩耗鋼材の製造はなされてきた。
【0006】具体的には、特開平10−102185号
公報には、オーステナイト再結晶温度域で圧延して旧オ
ーステナイト粒を微細化し、再加熱操作によりCr、M
o、Vの各元素を基地中に固溶させた後に焼入れおよび
焼戻しを行なう製造方法が開示されている。この製造方
法により得られた鋼材は、その使用中にCr、Mo、V
の複合析出物が生成され、この生成された複合析出物に
より耐摩耗性が向上される。したがって、上記の製造方
法によれば、耐摩耗性の向上には寄与するが靭性には有
害なC、Mn等の含有量を低減できる。
【0007】また、特開平11−71631号公報に
は、C含有量を低減し、このC量低減に伴う焼入れ性の
低下をSi含有量の増加により補償し、さらにNbのピ
ンニング効果を利用して再加熱操作時にオーステナイト
粒が粗大化するのを抑制し、これにより靭性を向上させ
る製造方法が開示されている。
【0008】さらに、特開昭60−59019号公報に
は、Mn含有量を低減することにより耐遅れ破壊性を向
上させ、このMn含有量の低減に伴う焼入れ性の低下を
Cr、Moの添加により補償する製造方法が開示されて
いる。
【0009】しかしながら、これら従来の製造方法は、
いずれも再加熱焼入れ工程を含むため、製造工程が複雑
化して製品コストの上昇が避けられないという欠点があ
った。さらに、Cr、Mo、V、Nb等の添加元素の増
加は製造コストをより一層上昇させる。
【0010】一方、製造コストの削減を意図して、上述
の熱間圧延後の空冷操作および再加熱焼入れ操作を省略
し、その代わりに直接焼入れ操作を行なう製造方法を確
立することが望まれている。
【0011】具体的には、特開平8−41535号公報
には、鋼成分としてSiとNbとを組み合わせて添加
し、直接焼入れした後に焼戻しする製造方法が開示され
ている。この製造方法によれば、Si,Nbの両元素が
焼戻し脆化および焼戻し軟化をともに抑制すること、N
bが旧オーステナイト粒の微細化に作用して耐摩耗性と
靭性とが両立すること、さらにMoを添加することによ
り焼入れ性および靭性をより向上させることができる。
【0012】また、特開平1−255622号公報に
は、直接焼入れした後に、鋼板内の引張残留応力を低減
して耐遅れ破壊性を向上させることを意図して高温焼戻
しを行なう一方、この高温焼戻しによって生じる硬度低
下をNb添加により補償する製造方法が開示されてい
る。
【0013】さらに、特開昭63−317623号公報
には、遅れ破壊感受性を高めるMnの含有量を低減し、
Mn含有量の低減に伴う鋼材の硬度低下をNb添加によ
り補償し、かつTiを添加して直接焼入れ後に低温焼戻
しを行ない、Ti窒化物、Ti炭窒化物を析出させるこ
とにより、これら析出物とマトリックスとの界面が水素
のトラップサイトとして作用して耐遅れ破壊性が向上さ
れることが開示されている。
【0014】上記の従来技術は、いずれも靭性および耐
遅れ破壊性を向上させるために鋼組成の選定を行なうこ
と、焼戻し操作により生ずる硬度低下に対して特定の成
分元素を含有させて硬度補償して耐摩耗性を確保するこ
とがなされる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
従来技術に共通した問題点は、特定の成分元素の添加が
必要であるのでコストの上昇を招き、これにより省プロ
セス化によるコスト低減を相殺してしまう可能性があ
る。
【0016】本発明はこのような事情を考慮してなされ
たものであって、その目的とするところは、特殊な鋼選
定を行なうことなく、靭性および耐遅れ破壊性に優れた
耐摩耗鋼材ならびにその製造方法を提供することにあ
る。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目
的を達成すべく鋭意研究を積み重ねた結果、オーステナ
イト未再結晶温度域で強圧下を施すことによりオーステ
ナイト粒を形態制御した後に、直ちに直接焼入れし、か
つこの焼入れを特定の温度域で途中停止することにより
表層部をマルテンサイト組織とし、内質部をマルテンサ
イトと下部ベイナイトとの混合組織または下部ベイナイ
ト単相組織とすることによって、本発明を完成させるに
至った。
【0018】本発明に係る靭性および耐遅れ破壊性に優
れた耐摩耗鋼材は、質量%で、C:0.05〜0.40
%、Si:0.1〜0.8%、Mn:0.5〜2.0
%、Cr:0.05〜2.0%、Ti:0.005〜
0.5%、B:0.0005〜0.005%、Al:
0.005〜0.10%、N:0.005%以下を含
み、残部が鉄および不可避的不純物から実質的になり、
表層部が焼戻しマルテンサイト組織であり、内質部が焼
戻しマルテンサイト組織および焼戻し下部ベイナイト組
織から選ばれる1種の単相組織または2種の混合組織で
あり、肉厚方向の旧オーステナイト粒径(dZ)に対す
る圧延方向の旧オーステナイト粒径(dL)の比(dL
/dZ)で表される旧オーステナイト粒展伸度が2以上
であることを特徴としている。
【0019】この場合において、質量%で、Cu:0.
1〜1.0%、Ni:0.1〜1.0%、Mo:0.1
〜1.0%およびV:0.01〜0.2%からなる群か
ら選ばれる1種または2種以上をさらに含有することが
好ましい。
【0020】また、質量%で、Nb:0.005〜0.
1%をさらに含有させるようにしてもよい。
【0021】以下、本発明に係る靭性および耐遅れ破壊
性に優れた耐摩耗鋼材について説明する。
【0022】まず、上記の各成分の働きおよび成分範囲
の限定理由を述べる。なお、以下の各成分範囲における
「%」は「質量%」を意味する。
【0023】(1)C:0.05〜0.40% Cは鋼材の硬度を高めるとともに、後述するマルテンサ
イト組織のラス内に微細炭化物を生じさせ、靭性と耐遅
れ破壊性とを向上させる働きを有する。C含有量は0.
05%以上必要であるが、0.4%を超えると、溶接性
が劣化し、焼き割れが生じやすくなるとともに、耐摩耗
性を確保しつつ靭性および耐遅れ破壊性を向上させ難く
なる。C含有量は、好ましくは0.05〜0.3%であ
る。
【0024】(2)Si:0.1〜0.8% Siは製鋼時の脱酸剤としての働きを有する。脱酸剤と
して有効な働きをなすために、その添加量は0.1%以
上必要であるが、0.8%を超える添加量にすると、溶
接部靭性を損なうおそれがある。Si含有量は、好まし
くは0.25〜0.55%である。
【0025】(3)Mn:0.5〜2.0% Mnは低コストで焼入れ性を高める働きおよび靭性を向
上させる働きを有し、その含有量は0.5%以上必要で
あるが、2.0%を超えると溶接性を損なうおそれがあ
り、また遅れ破壊が生じやすくなる。Mn含有量は、好
ましくは1.0〜1.6%である。
【0026】(4)Cr:0.05〜2.0% Crは低コストで焼入れ性を向上させる働きを有する。
0.05%未満のCr含有量ではその効果が小さく、
2.0%を超えると溶接性および靭性を損なうおそれが
ある。Cr含有量は、好ましくは0.05〜1.5%で
ある。
【0027】(5)Ti:0.005〜0.5% Tiは鋼中のNと化合し、このNを固定して後述するB
による焼入れ性を確保する働きを有するとともに、Ti
Cとして分散析出して耐摩耗性の向上に寄与する。0.
005%未満のTi含有量ではこのような効果を得がた
く、一方、0.5%を超えるとコスト上昇を招く傾向に
ある。
【0028】(6)B:0.0005〜0.005% Bはその微量添加によって焼入れ性を高める働きを有す
る。B含有量は、0.0005%未満ではその効果を発
揮し難く、一方、0.005%を超えると、溶接性に有
害であるとともに、焼入れ性の低下を招くおそれがあ
る。
【0029】(7)Al:0.005〜0.10% Alは製鋼時の脱酸剤としての働きを有し、その含有量
は0.005%以上必要であるが、0.10%を超える
と靭性の低下を招くおそれがある。Al含有量は、好ま
しくは0.015〜0.035%である。
【0030】(8)N:0.005%以下 Nは、上記のBと化合しやすく焼入れ性を阻害する。
0.005%を超えるN含有量にすると、上述の特定し
た含有量範囲のTiによるNの固定が不十分になるおそ
れがある。したがって、N含有量の上限を0.005%
とした。
【0031】本発明に係る鋼材の基本成分は以上であ
り、特別な鋼組成の選定を必要としない。
【0032】なお、鋼材特性をより向上させようとする
場合には、Cu、Ni、Mo、VおよびNbから選ばれ
る1種または2種以上を、以下に示す範囲内で適宜含有
させるようにしてもよい。
【0033】(9)Cu:0.1〜1.0% Cuは焼入れ性をより向上させる働きを有する。Cu含
有量が0.1%未満ではこの効果が小さく、1.0%を
超えると熱間脆性を引き起こすおそれがある。Cu含有
量は、好ましくは0.1〜0.3%である。
【0034】(10)Ni:0.1〜1.0% Niは靭性と焼入れ性とをより向上させる働きを有す
る。Ni含有量は0.1%以上必要であるが、1.0%
を超えるとコスト上昇を招く傾向にある。Ni含有量
は、好ましくは0.1〜0.3%である。
【0035】(11)Mo:0.1〜1.0% Moは焼入れ性をより向上させる働きを有し、その含有
量は0.1%以上必要であるが、1.0%を超えると溶
接性および靭性を損なうおそれがある。Mo含有量は、
好ましくは0.1〜0.5%である。
【0036】(12)V:0.01〜0.2% Vは析出硬化により鋼材硬度をより上昇させる働きを有
し、その含有量は0.01%以上必要であるが、0.2
%を超えると溶接性を損なうおそれがある。V含有量
は、好ましくは0.01〜0.1%である。
【0037】(13)Nb:0.005〜0.1% Nbは上記の(1)〜(12)の各成分とは異なる作用
を有し、圧延時の再結晶化を抑制して圧延によるオース
テナイト粒の展伸を容易にし、靭性を向上させる働きを
有する。Nb含有量は0.005%未満ではこのような
働きを有効になすことができないおそれがあり、一方、
0.1%を超えると溶接性を損なうおそれがある。Nb
含有量は、好ましくは0.005〜0.03%である。
【0038】本発明に係る鋼材は、上記の特定範囲の各
成分を含有するものであって、表層部が焼戻しマルテン
サイト組織であり、内質部が焼戻しマルテンサイト組織
および焼戻し下部ベイナイト組織から選ばれる1種の単
相組織または2種の混合組織である。ここで表層部と
は、鋼材表面から深さ1mmまでの部位のことをいう。
本発明の鋼材は、表層部を焼戻しマルテンサイト組織と
することにより表面硬度、すなわち耐摩耗性を確保する
とともに、内質部を焼戻しマルテンサイト、焼戻し下部
ベイナイト、或いはこれらの混合組織とすることにより
靭性および耐遅れ破壊性を向上させ、鋼材全体として耐
摩耗性、靭性および耐遅れ破壊性に優れたものとする。
なお、本発明の鋼材において、内質部は、焼戻しマルテ
ンサイト組織および焼戻し下部ベイナイト組織から選ば
れる1種の単相組織または2種の混合組織が80%以上
あればよく、一部上部ベイナイト組織やフェライト組織
が混合されることを許容する。
【0039】さらに、本発明の鋼材は、肉厚方向の旧オ
ーステナイト粒径(dz)に対する圧延方向の旧オース
テナイト粒径(dL)の比で表される旧オーステナイト
粒展伸度(dL/dz)が2以上である。本発明におい
て旧オーステナイト粒展伸度を2以上とするのは、高い
耐摩耗性を確保しつつ靭性および耐遅れ破壊性の向上効
果が発揮されるからである。これは、鋼板の旧オーステ
ナイト粒展伸度と、吸収エネルギー(J)、遅れ破壊発
生応力拡大係数(N/mm3/2)およびブリネル硬さ
(HB10/3000)との関係を示す図1の特性線図
から理解できる。
【0040】上記の旧オーステナイト粒展伸度は、例え
ば、日本工業規格JIS G 0551に規定された焼
入焼戻し法による熱処理粒度試験法に基づき、鋼板の肉
厚方向に沿う断面および鋼板の圧延方向に沿う断面にそ
れぞれ現出させた旧オーステナイト粒の粒径を測定する
ことにより求められる。なお、図1の横軸にとった旧オ
ーステナイト粒展伸度dL/dzの値は、板厚t/2部
において5視野で観察したときに得られた測定値の平均
値とした。
【0041】ここで用いた鋼材試料としては、質量%
で、C:0.23%、Si:0.45%、Mn:1.5
5%、P:0.011%、S:0.005%、Cr:
0.31%、Ti:0.018%、B:0.0019
%、Al:0.035%、N:0.0029%、残部が
鉄である組成の鋼を種々の条件で圧延した後、表層部を
焼戻しマルテンサイト組織とし、内質部を焼戻しマルテ
ンサイト単相組織、焼戻し下部ベイナイト単相組織また
は焼戻しマルテンサイト組織と焼戻し下部ベイナイト組
織との混合組織とした鋼板(板厚50mm)である。
【0042】図1の縦軸にとったブリネル硬さの測定
は、JIS Z 2243に基づいて、鋼鈑表面に直径
10mmの圧子を押し込んだときに形成されるくぼみの
直径を測定するブリネル硬さHB(10/3000)試
験により行なった。
【0043】また、図1の縦軸にとった吸収エネルギー
の測定は、板厚中央部から採取したJIS Z 220
2の規定に基づく10×10mmの2mmVノッチ試験
片を用い、試料の圧延方向に対して垂直に衝撃力を与え
るようにしたシャルピー衝撃試験を−40℃で行なっ
た。なお、吸収エネルギーの値は、上記の衝撃試験を3
回行ない、得られた測定値の平均値を求めたものであ
る。
【0044】さらに、図1の縦軸にとった遅れ破壊発生
応力拡大係数は、試験片を3.5質量%NaCl水溶液
中に浸漬させるとともに試験片の圧延方向に対して垂直
方向に所定荷重を負荷する片持ち梁型の定荷重遅れ破壊
試験において、破断に至る最大の応力拡大係数である。
なお、このときの破断の測定は1000時間を最長とし
た。
【0045】図1において、旧オーステナイト粒展伸度
dL/dzが2未満である領域では、ブリネル硬さはほ
ぼ一定の値であるのに対して、dL/dzが2以上であ
る領域では緩やかに上昇している。また、dL/dzが
2となるところを境にしてdL/dzが2未満である領
域では吸収エネルギーおよび遅れ破壊発生応力拡大係数
は著しく低く、一方、dL/dzが2以上である領域で
は吸収エネルギーおよび遅れ破壊応力拡大係数が急激に
上昇しており、優れた靭性および耐遅れ破壊性を示すこ
とが判明した。すなわち、上述した特定の成分組成およ
び特定の組織とし、かつ旧オーステナイト粒展伸度dL
/dzを2以上とすることにより、耐摩耗性を向上させ
つつ優れた靭性および耐遅れ破壊性を有することが判明
した。
【0046】このように高い耐摩耗性を維持しつつ靭性
および耐遅れ破壊性が著しく向上するのは、焼戻しマル
テンサイト組織、焼戻し下部ベイナイト組織、或いはこ
れらの混合組織においてラス長さが短くなること、およ
びラス組織内で微細な炭化物が優先析出することによる
ものと考えられる。すなわち、耐摩耗性に関してはラス
組織内に優先析出した微細炭化物が硬度向上に有効に寄
与し、靭性に関しては、(a)ラス長さが短くなること
により亀裂の屈曲や分岐が生じやすくなること、(b)
ラス組織内に優先析出した微細な炭化物が亀裂の進展を
抑制する障壁となること、以上(a)、(b)の両作用
により靭性が向上するものと考えられる。一方、耐遅れ
破壊性に関しては、ラス組織内の微細炭化物とマトリッ
クスとの界面が水素のトラップサイトとなり、遅れ破壊
の発生が抑制されるからであると考えられる。
【0047】次に、本発明に係る靭性および耐遅れ破壊
性に優れた耐摩耗鋼材の製造方法について説明する。
【0048】本発明に係る靭性および耐遅れ破壊性に優
れた耐摩耗鋼材の製造方法は、質量%で、C:0.05
〜0.4%、Si:0.1〜0.8%、Mn:0.5〜
2.0%、Cr:0.05〜2.0%、Ti:0.00
5〜0.5%、B:0.0005〜0.005%、A
l:0.005〜0.10%、N:0.005%以下を
含み、残部が実質的に鉄および不可避的不純物からなる
鋼材を調製する調製工程と、前記鋼材を加熱した後に、
900℃以下の温度域で累積圧下率50%以上に熱間圧
延する圧延工程と、圧延された鋼材を直ちにAr3点以
上の温度域からMs点以下の温度域に焼入れする焼入れ
工程と、焼入れされた鋼材を200℃以上600℃以下
の温度域で焼戻す焼戻し工程と、を備えたことを特徴と
する。
【0049】本発明の製造方法においては、上記の特定
した成分組成であるため、特別な鋼組成の選定を行なわ
ずに鋼材を調製できる。
【0050】なお、鋼材特性をより向上させようとする
場合には、調製工程の鋼材は、質量%で、Cu:0.1
〜1.0%、Ni:0.1〜1.0%、Mo:0.1〜
1.0%およびV:0.01〜0.2%からなる群から
選択される1種または2種以上をさらに含有させるよう
にしてもよい。
【0051】また、この場合において、調製工程の鋼材
は、質量%で、Nb:0.005〜0.1%をさらに含
有させるようにしてもよい。
【0052】本発明の製造方法においては、上述した特
定の成分組成に調製された鋼材を加熱した後、900℃
以下の温度域で累積圧下率50%以上の圧延を行なう。
ここで、900℃なる上限温度は、鋼板表面から鋼板中
央部にかけての平均温度を意味し、以下の説明における
温度についても同様である。なお、実際の製造では実質
的に鋼板表面温度により温度管理されるが、リアルタイ
ムで平均温度を計算して、この平均温度に基づき温度制
御できるようにする必要がある。
【0053】圧延前の鋼材の加熱温度としては、950
〜1250℃であることが好ましい。この加熱温度を9
50℃未満にすると、鋼の変形抵抗が高くなるので圧延
を行なうことが困難になる。また、1250℃を超える
加熱温度にすると、鋼の結晶粒が粗大化するので、所望
の強度および靭性を得ることが困難になる。
【0054】圧延時の温度条件として900℃以下の温
度域とした理由は、この900℃以下の温度域はオース
テナイト再結晶温度未満の温度域に対応し、圧延により
展伸させたオーステナイト粒を消失させることなくその
形態を維持させるためである。
【0055】本発明の製造方法において、上記の圧延条
件として累積圧下率を50%未満にすると、旧オーステ
ナイト粒展伸度dL/dzが2未満となる。一方、累積
圧下率を50%以上にすることによって、dL/dzを
2以上にすることができる。事実、本発明者らは、90
0℃以下の温度域での累積圧下率(%)と、旧オーステ
ナイト粒展伸度dL/dzとの相関を示す図2の特性線
図からこのことを明らかにしている。ここで用いた鋼材
試料は、図1で用いたのと同様の組成の鋼を900℃以
下の温度域で種々の累積圧下率に圧延し、表層部を焼戻
しマルテンサイト組織とし、内質部を焼戻しマルテンサ
イト組織、焼戻し下部ベイナイト組織、或いはこれらの
混合組織としたものである。
【0056】図2から明らかなように、累積圧下率の増
加に伴って旧オーステナイト粒展伸度dL/dzはほぼ
比例的に増加している。これによれば、累積圧下率50
%未満の領域ではdL/dzは2未満であり、累積圧下
率50%以上の領域ではdL/dzは2以上である。し
たがって、900℃以下の温度域で累積圧下率50%以
上の圧延を行なうことによって、dL/dzを2以上に
形態制御できることがわかる。
【0057】本発明の製造方法は、上述した900℃以
下の温度域で累積圧下率50%以上に圧延した鋼材を、
直ちにAr3点以上の温度域からMs点以下の温度域ま
で直接焼入れする。
【0058】ここで、上記のAr3点は、例えば、Ar3
(℃)=910−310C%−80Mn%−20Cu%
−15Cr%−55Ni%−80Mo%(ここで示され
る「%」は、いずれも各成分元素の鋼材中に占める「質
量%」であり、下記のMs点についても同様である。)
で表される関係式により鋼材の成分組成に基づいて導く
ことができる。また、上記のMs点も同様に、例えば、
Ms(℃)=517−300C%−33Mn%−22C
r%−17Ni%−11Mo%−11Si%で表される
関係式により鋼材の成分組成に基づいて導くことができ
る。
【0059】上述のように圧延後、直接焼入れとするの
は、再加熱焼入れとした場合には上記の圧延効果が薄
れ、焼入れ焼戻し後に得られる鋼材の靭性および耐遅れ
破壊性の向上効果が得られなくなるおそれがあり、ま
た、工程が複雑化するので製造コストの上昇につながる
からである。
【0060】上記の焼入れ開始温度をAr3点以上の温
度域としたのは、オーステナイト単相組織から焼入れな
いと所望の表面硬度が得られないためである。また、焼
入れ停止温度をMs点以下の温度域と規定したのは、こ
れにより鋼材の表層部をマルテンサイト組織とし、内質
部をマルテンサイト、下部ベイナイト或いはこれらの混
合組織とするためである。直接焼入れ時の冷却速度は、
10〜50℃/秒とすることが好ましく、このような冷
却速度は例えば水焼入れにより容易に達成できる。
【0061】本発明の製造方法においては、直接焼入れ
後の鋼材を200〜600℃の温度域で焼戻し処理す
る。このような特定の温度域で焼戻し処理することによ
り、高い耐摩耗性を確保しつつ、優れた靭性および耐遅
れ破壊性を有する鋼材を得ることができる。事実、本発
明者らは、ブリネル硬さ、吸収エネルギーおよび遅れ破
壊発生応力拡大係数の3つの特性と焼戻し温度との関係
をそれぞれ調べた結果を示す図3の特性線図からこのこ
とを明らかにしている。
【0062】図3は、縦軸にブリネル硬さHB(10/
3000)、吸収エネルギー(J)および遅れ破壊発生
応力拡大係数(N/mm3/2)をとり、横軸に焼戻し
温度(℃)をとって、ブリネル硬さ、吸収エネルギーお
よび遅れ破壊発生応力拡大係数の3つの特性と焼戻し温
度との関係をそれぞれ調べた結果を示す特性線図であ
る。ここで用いた試料(板厚50mm)は、前述した図
1で説明したのと同様な組成の鋼を900℃以下の温度
域で圧延した後に直接焼入れ・焼戻しするにあたり、圧
延時の累積圧下率を65%および35%と変化させると
ともに、焼戻し温度を種々変化させて得られたものであ
る。なお、図3の縦軸にとったブリネル硬さ、吸収エネ
ルギーおよび遅れ破壊発生応力拡大係数の測定は、前述
した図1で説明したのと同様な方法により行なった。
【0063】図3において、白丸を結んだ曲線A1,A
2,A3は900℃以下の温度域で65%の累積圧下率
に圧延した場合の結果を示す特性線であり、黒丸を結ん
だ曲線B1,B2,B3は900℃以下の温度域で35
%の累積圧下率に圧延した場合の結果を示す特性線であ
る。
【0064】図3において、特性線A1,A2,A3に
着目すると、焼戻し温度が200℃未満である領域で
は、ブリネル硬さが400以上と極めて高い硬度である
ものの、遅れ破壊発生応力拡大係数および吸収エネルギ
ーが著しく低くなり、900℃以下の温度域での圧下率
にかかわらず靭性および耐遅れ破壊性はいずれも著しく
劣ることが判明した。
【0065】これに対して、焼戻し温度が200℃以上
の領域において特性線A1,A2に着目すると、焼戻し
温度の増加に伴って吸収エネルギー値および遅れ破壊発
生応力拡大係数値がともに急激に上昇し、低下すること
なく高い値を示し、優れた靭性および耐遅れ破壊性を有
することが判明した。一方、この領域において特性線B
1,B2に着目すると、焼戻し温度の増加に伴って吸収
エネルギーおよび耐遅れ破壊応力拡大係数は増加傾向に
はあるものの、特性線A1,A2の場合と比べていずれ
の温度でも大幅に低くなっている。すなわち、この領域
において、特性線A1は特性線B1に比べて高くシフト
しており、いずれの温度でも遅れ破壊発生応力拡大係数
値が大幅に高くなり、また特性線A2についても特性線
B2に比べて高くシフトしており、いずれの温度でも吸
収エネルギー値が大幅に高くなり、靭性および耐遅れ破
壊性がともに大幅に向上することが判明した。
【0066】また、200℃以上の領域において特性線
A3,B3に着目すると焼戻し温度の増加に伴ってブリ
ネル硬さはともに低下傾向にあるが、特性線A3は特性
線B3に比べて優位にあり、600℃以下の領域でブリ
ネル硬さ値が300以上となり高い耐摩耗性を維持でき
ることが判明した。
【0067】ここで、900℃以下の温度域で50%以
上である75%の累積圧下率で圧延しても、焼戻し温度
を200℃未満にすると耐摩耗性が十分に確保されるも
のの、靭性および耐遅れ破壊性に著しく劣るのは、ラス
組織内における微細炭化物の析出が十分でなく靭性およ
び耐遅れ破壊性に寄与していないためである。また、こ
の場合に、焼戻し温度を600℃超にすると優れた靭性
および耐遅れ破壊性を有するものの、耐遅れ破壊性に著
しく劣るのは、マトリックスが著しく軟化するからであ
る。
【0068】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て説明する。
【0069】(実施例)表1に示す鋼種A〜Hの成分組
成に調整した鋼を各々溶製した。なお、表1には各鋼種
の組成に基づいて求めたAr3点(℃)およびMs点
(℃)をそれぞれ併記した。
【0070】次に、これらの鋼種A〜Hを用い、表2に
示す製造条件にしたがって、板厚15〜100mmの鋼
板を製造した。
【0071】
【表1】
【0072】得られた各鋼板について、光学顕微鏡およ
び透過型電子顕微鏡により表層下1mmの位置の組織観
察および板厚中央部の組織観察を行なった。なお、これ
らの組織観察において、例えばマルテンサイトと下部ベ
イナイトとは、大まかには光学顕微鏡により、詳細には
透過型電子顕微鏡により薄膜サンプルを観察すれば炭化
物の析出形態の差異により判別可能である。
【0073】また、JIS G 0551の焼入焼戻し
法による熱処理粒度試験方法に基づいてオーステナイト
粒を現出させて板厚中央部における旧オーステナイト粒
展伸度(dL/dZ)を求めた。さらに、図1で説明し
たのと同様にして、硬度測定、シャルピー衝撃試験およ
び遅れ破壊試験を行なった。なお、本実施例において
は、上記の硬度測定により得られたブリネル硬さ値が3
00以上、シャルピー衝撃試験による吸収エネルギー値
が17J以上、遅れ破壊試験による遅れ破壊発生応力拡
大係数値が980N/mm3/2以上を全て満たすこと
を条件とした。
【0074】以上調べた評価結果を表2に示す。
【0075】
【表2】
【0076】表2に示すように、特定の成分組成と特定
の製造条件とを満たした実施例1〜7の各鋼板は、いず
れも旧オーステナイト粒展伸度dL/dzが2以上であ
り、表層部が焼戻しマルテンサイト組織であり、板厚中
央部が焼戻しマルテンサイト組織、焼戻し下部ベイナイ
ト組織、またはこれらの混合組織であった。実施例1〜
7の各鋼材は、ブリネル硬さがいずれも300以上であ
り、かつ吸収エネルギーがいずれも17Jを大幅に上回
り、かつ遅れ破壊発生応力拡大係数がいずれも980N
/mm3/2を大幅に上回ることから、優れた耐摩耗性
を有するのみならず、優れた靭性および耐遅れ破壊性を
も有する鋼材であることが判明した。
【0077】これに対して、900℃以下の温度域での
累積圧下率を50%未満とした比較例1〜4の各鋼板
は、表層部が焼戻しマルテンサイト組織であり、内質部
が焼戻しマルテンサイト組織、焼戻し下部ベイナイト組
織またはこれらの混合組織ではあるものの、旧オーステ
ナイト粒展伸度dL/dzがいずれも2未満であった。
比較例1〜4の各鋼板は、ブリネル硬さが300以上で
はあるものの、吸収エネルギーおよび遅れ破壊発生応力
拡大係数がそれぞれ17J未満、980N/mm 3/2
未満となり、靭性および耐遅れ破壊性に劣ることが判明
した。
【0078】また、焼戻し温度を特定した温度域の上限
値を超える700℃とした比較例5の鋼板は、dL/d
zが2以上、表層部が焼戻しマルテンサイト組織、板厚
中央部が焼戻しマルテンサイトと焼戻し下部ベイナイト
の混合組織であった。この比較例5の鋼板は、ブリネル
硬さが300を下回り、耐摩耗性に劣ることが判明し
た。
【0079】比較例6の鋼板は、焼戻し操作を行なわ
ず、焼入れままとしたため、全板厚にわたりマルテンサ
イト単相組織であった。この比較例6の鋼板は、吸収エ
ネルギーおよび遅れ破壊発生応力拡大係数が著しく低く
なり、靭性および耐遅れ破壊性に極めて劣ることが判明
した。
【0080】鋼種Bの鋼組成に基づくMs点を上回る焼
入れ停止温度とした比較例7の鋼板は、dL/dzが2
以上であるものの、表層部が焼戻し下部ベイナイト組
織、板厚中央部が焼戻し下部ベイナイトと焼戻し上部ベ
イナイトとの混合組織であった。この比較例7の鋼板
は、ブリネル硬さが300を大幅に下回り、耐摩耗性に
著しく劣ることが判明した。
【0081】焼入れ開始温度を鋼種Fの鋼組成に基づく
Ar3点未満である650℃とした比較例8の鋼板は、
dL/dzが2以上、板厚中央部が焼戻し下部ベイナイ
ト組織ではあるものの、表層部がフェライトと焼戻しマ
ルテンサイトとの混合組織であった。この比較例8の鋼
板は、ブリネル硬さが300を大幅に下回り、耐摩耗性
に著しく劣ることが判明した。
【0082】鋼組成として特定範囲の下限値に満たない
C含有量とした鋼種Hを用いた比較例9の鋼板は、表層
部が焼戻しマルテンサイト組織、板厚中央部が焼戻しマ
ルテンサイトと焼戻し下部ベイナイト組織であり、dL
/dzが2以上であった。この比較例9の鋼板は、ブリ
ネル硬さが300を大幅に下回り、耐摩耗性に著しく劣
ることが判明した。
【0083】比較例10の鋼板は、900℃以下の温度
域での累積圧下率を65%としたため、圧延後のdL/
dzは2以上に十分展伸していたと考えられるが、圧延
後にオーステナイト域まで再加熱操作を行なったため、
焼入れ・焼戻し後に得られた鋼材におけるdL/dzは
1.2と2に満たなかった。この比較例10の鋼板は、
ブリネル硬さおよび遅れ破壊発生応力拡大係数が高い値
を示すものの、吸収エネルギーが11Jと低くなり、靭
性に劣ることが判明した。
【0084】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明によれば、優
れた靭性および耐遅れ破壊性を有する耐摩耗鋼材ならび
にその製造方法が提供される。本発明の鋼材は、特別な
鋼組成の選定を行なうことなく、高い耐摩耗性を確保し
つつ靭性および耐遅れ破壊性を大幅に向上できる。この
ため、製造コストを大幅に低減できるとともに、土木機
械等の産業機械の信頼性向上や施工性向上等、産業に寄
与する効果が極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】旧オーステナイト粒展伸度dL/dzと、ブリ
ネル硬さ、吸収エネルギーおよび遅れ破壊発生応力拡大
係数の3つの特性との関係につきそれぞれ調べた結果を
示す特性線図。
【図2】900℃以下の温度域で圧延したときの累積圧
下率と、旧オーステナイト粒展伸度dL/dzとの関係
につき調べた結果を示す特性線図。
【図3】焼戻し温度と、ブリネル硬さ、吸収エネルギー
および遅れ破壊発生応力拡大係数の3つの特性との関係
につきそれぞれ調べた結果を示す特性線図。
フロントページの続き Fターム(参考) 4K032 AA01 AA02 AA04 AA05 AA11 AA12 AA14 AA16 AA19 AA21 AA22 AA23 AA27 AA29 AA31 AA35 AA36 BA01 CA02 CB02 CC03 CD06 CF01

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、C:0.05〜0.40%、
    Si:0.1〜0.8%、Mn:0.5〜2.0%、C
    r:0.05〜2.0%、Ti:0.005〜0.5
    %、B:0.0005〜0.005%、Al:0.00
    5〜0.10%、N:0.005%以下を含み、残部が
    鉄および不可避的不純物から実質的になり、 表層部が焼戻しマルテンサイト組織であり、内質部が焼
    戻しマルテンサイト組織および焼戻し下部ベイナイト組
    織から選ばれる1種の単相組織または2種の混合組織で
    あり、 肉厚方向の旧オーステナイト粒径(dZ)に対する圧延
    方向の旧オーステナイト粒径(dL)の比(dL/d
    Z)で表される旧オーステナイト粒展伸度が2以上であ
    ることを特徴とする靭性および耐遅れ破壊性に優れた耐
    摩耗鋼材。
  2. 【請求項2】 質量%で、Cu:0.1〜1.0%、N
    i:0.1〜1.0%、Mo:0.1〜1.0%および
    V:0.01〜0.2%からなる群から選ばれる1種ま
    たは2種以上をさらに含有することを特徴とする請求項
    1に記載の耐摩耗鋼材。
  3. 【請求項3】 質量%で、Nb:0.005〜0.1%
    をさらに含有することを特徴とする請求項1または2の
    いずれかに記載の耐摩耗鋼材。
  4. 【請求項4】 質量%で、C:0.05〜0.4%、S
    i:0.1〜0.8%、Mn:0.5〜2.0%、C
    r:0.05〜2.0%、Ti:0.005〜0.5
    %、B:0.0005〜0.005%、Al:0.00
    5〜0.10%、N:0.005%以下を含み、残部が
    実質的に鉄および不可避的不純物からなる鋼材を調製す
    る調製工程と、 前記鋼材を加熱した後に、900℃以下の温度域で累積
    圧下率50%以上に熱間圧延する圧延工程と、 圧延された鋼材を直ちにAr3点以上の温度域からMs
    点以下の温度域に焼入れする焼入れ工程と、 焼入れされた鋼材を200℃以上600℃以下の温度域
    で焼戻す焼戻し工程と、を備えたことを特徴とする靭性
    および耐遅れ破壊性に優れた耐摩耗鋼材の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記調製工程の鋼材は、質量%で、C
    u:0.1〜1.0%、Ni:0.1〜1.0%、M
    o:0.1〜1.0%およびV:0.01〜0.2%か
    らなる群から選択される1種または2種以上をさらに含
    有することを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記調製工程の鋼材は、質量%で、N
    b:0.005〜0.1%をさらに含有することを特徴
    とする請求項4または5のいずれかに記載の製造方法。
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