JP2816008B2 - 耐火性の優れた建築用低降伏比鋼材およびその製造方法 - Google Patents
耐火性の優れた建築用低降伏比鋼材およびその製造方法Info
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Description
各種建造物に用いる耐火性の優れた低降伏比鋼材とその
製造方法に関する。
造物用鋼材として、一般構造用圧延鋼材、溶接構造用圧
延鋼材、溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材、高耐候性圧延
鋼材および一般構造用炭素鋼管、一般構造用角形鋼管な
どが広く利用されている。
および住居などの建造物に前記鋼材を用いる場合は、火
災における安全性を確保するため、充分な耐火被覆を施
すことが義務づけられており、旧建築関係諸法令では、
火災時に鋼材温度が350℃以上にならぬように規定され
ていた。そのため、鋼材費用に比べて耐火被覆施工費が
高額になり、建築コストが大幅に上昇することを避ける
ことができなかった。
にいたって、高温においても常温規格値と遜色のない強
度を有する鋼材では、耐火被覆を大幅に削減できるとと
もに、建造物の火災条件・設計条件によっては無被覆の
鉄骨建造物を設計することが可能となった。
代表されるような耐熱鋼材は価格が非常に高いため、高
温特性は良好であるが、生産技術や施工技術面に加えて
経済的な面で建築材料としての利用は非常に困難であっ
た。
市場に供給しうる耐火性の優れた鋼材の製造方法が見直
され、最近では600℃において常温強度の2/3程度を有す
るNb−Mo複合添加鋼材(特願昭63−143740号)、Mo添加
鋼材(特願平2−72566号)等が開発されて、実際の建
造物に使用され始めている。
温強度を上げるのに有効なNb,Mo,V等の特定元素を1種
類以上添加、さらにその製造方法においても添加元素を
固溶せしめるために鋼片を1100〜1300℃の温度域で再加
熱した後に、熱間圧延を800〜1100℃で終了する工程を
経なければならない。したがって、建築用鋼材として
は、その成分系はかなり限定されており、しかも再加熱
工程を含むなどコスト的に割高になっているのが現状で
ある。
も、一定量のMo添加とC/Mn比の制限及び焼入性の確保に
より、ミクロ組織をベイナイト組織として、その定量的
コントロールを行うことで、建築用鋼材としての利用も
可能となりつつある。しかし、この場合も常温の降伏比
は低いが、応力−歪曲線には明確な降伏点は見られずラ
ウンド型となる。そのため、このタイプの鋼は見かけ上
の降伏比は低いが、耐震性に十分とは言えないことが明
らかにされ、問題点を含んでいた。
熱鋼材は建築材料としての利用は非常に困難であり、ま
た、600℃での高温耐力が常温時の70%以上となる鋼材
の製造方法が最も経済的であるにもかかわらず、現実的
には上記に示したMo−Nb鋼あるいはMo鋼等の再加熱工程
を含む製造方法しか見あたらないのが現状である。
た直接圧延法の適用を確立し、しかも高価な添加元素の
量を少なくし、且つ、耐火被覆を薄くすることが可能
で、火災荷重が小さい場合は、無被覆で使用することが
できる鋼材の容易且つ安価に実施し得る製造方法を鋭意
検討し本発明を完成するにいたった。
で、その具体的手段を下記ア〜エ項に示す。
〜1.0%、Ti 0.005〜0.05%、Al 0.1%以下、N 0.006%
以下、残部がFeおよび不可避不純物、さらにMo(0.4〜
0.8%)、W(0.8〜1.6%)の1種あるいは2種からな
り、常温において70%以下の低降伏比(降伏強度/引張
速度)と600℃での高温強度が常温強度の70%以上を有
する建築用耐火鋼材。
0.005〜0.03%、Ta 0.005〜0.05%、Ca 0.0005〜0.005
%、REM 0.001〜0.005%、の1種あるいは2種以上を含
むア項記載の建築用耐火鋼材。
〜1.0%、Ti 0.005〜0.05%、Al 0.1%以下、N 0.006%
以下、残部がFeおよび不可避不純物、さらにMo(0.4〜
0.8%)、W(0.8〜1.6%)の1種あるいは2種からな
る鋼片を連続鋳造後に、直接圧延を800〜1000℃で終了
することによって製造される耐火性の優れた建築用低降
伏比鋼材の製造方法。
0.005〜0.03%、Ta 0.005〜0.05%、Ca 0.0005〜0.005
%、REM 0.001〜0.005%の1種あるいは2種以上を含む
ウ項記載の建築用耐火鋼材の製造方法。
添加した組成の鋼片を連続鋳造後に、再加熱工程を経る
ことなく、直接圧延処理を施し、800〜1000℃の温度域
で圧延を終了することにあり、本発明によって製造した
鋼及び鋼材(以下鋼)は、適当な常温耐力と明確な降伏
現象(降伏点が明瞭に認められる)を伴った低い降伏強
度を有するとともに、高温耐力が高い特性を備えてい
る。
割合が大きい。この理由は中Cのベース成分に相当量の
Tiを添加した鋼で、フェライト組織(フェライト面積率
60%以上)としているためである。
量について説明する。
平衡状態のために一部が固溶状態にあり、鋼片の再結晶
温度を上昇せしめ、結果的にフェライト粒径を微細化す
る作用がある。
なく特願昭63−143740号と特願平2−72566号で既に提
出されているMo−Nb鋼、Mo鋼と同程度のフェライト粒径
にすることができる。
イトへの変態時にTi(C,N)となって析出することによ
り、建築用構造物に必要な常温強度を得ることを可能に
する。この強度上昇はフェライト中におけるTi(C,N)
の析出強化作用によるものである。
め靭性が劣化し、しかも常温強度が十分に得られない。
したがって、直接圧延法を用いた本発明鋼においては、
結晶粒微細化作用と析出強化作用の両方を有するTiの添
加は必須であると言える。また、十分なTi量があれば、
常温まで冷却された段階においても微量のTiが固溶して
いるため、600℃の高温時にこれが変態時と同様な炭窒
化物を形成して高温強度を上昇せしめる効果がある。
Z)靭性を向上させる作用も有する。含有Al量が少ない
場合には、Tiの酸化物を形成することによってもHAZ靭
性を向上させる。特にAlが0.01%以下ではTiが脱酸剤と
しても作用するために、母材中にもTiの酸化物が形成さ
れ、これが母材のフェライト粒径を微細化し、結果的に
常温強度の上昇にも寄与する。
く、0.05%を超えるとHAZ靭性に好ましくない影響があ
るため、0.005〜0.05%に限定する。ただし、高温強度
確保とHAZ靭性への悪影響を極力さける必要がある場合
のTiの好ましい範囲は0.01〜0.03%である。
よって高温強度を増加させる。また、本発明鋼中のTi
(C,N)をアトムプローブ電界イオン顕微鏡で観察する
と、Mo無添加鋼に比べると、そのサイズは微細であり、
600℃において数時間の保持を行っても成長していない
ことが観察される。
に有効なTi,Nb,V等の炭窒化物は成長するために強度が
低下してくるが、Mo添加材では析出物の成長が抑制さ
れ、高温強度の低下が抑制される。この理由は、添加し
たMoが変態時に析出したTi(C,N)および600℃で析出す
るTi(C,N)の周辺に偏析することにより、これら析出
物の成長を抑えそのサイズ径を維持するためと考えられ
る。
重要である。特願平2−72566号のMo単独鋼の場合にはN
bを添加していないために、その添加量が比較的多く必
要であったが、本発明ではTiが特願昭63−143740号のMo
−Nb鋼におけるNbと同様な効果があるため、Mo添加量の
下限を0.4%とした。しかしながら、Mo量が多すぎると
溶接性が悪くなり、さらに、HAZの靭性が劣化するの
で、Mo量の上限は0.8%とする必要がある。
本発明鋼はこれら元素を1種または2種を同時に含むも
のである。Wの添加量はその効果がMoに比べて小さいこ
とから0.8〜1.6%を必要とする。なお、Mo,WがTi(C,
N)に固溶されることなく、Ti(C,N)/マトリックス界
面に偏析する理由は、本来これら元素がTi(C,N)の結
晶構造と異なる炭化物、すなわちMo2C,W2Cを形成しやす
いことと、原子サイズがいずれもFe,Tiに比べて大きい
ことに起因していることは容易に推測される。
規定する性能を満足し、且つ、600℃の高温において高
い耐力を維持せしめるためには、鋼成分と共に鋼の圧延
終了温度が重要である。
終了温度を800℃以上を必要とする。この理由は、直接
圧延では圧延温度域が低いと強度が低下する傾向がみら
れ、十分な常温強度が得られないことによる。この原因
としては、圧延温度が低い場合には、圧延段階において
オーステナイト中にTi(C,N)が多量に析出するため、
常温強度を担うフェライト中でのTi(C,N)量が減少す
ることによる。
を利用していることから、十分な固溶Ti量を確保するた
めに圧延を高温で終了せねばならない。一方、本発明に
おいて、圧延終了温度の上限を1000℃としたのは、建築
用鋼としての靭性を確保するためである。
とは、従来のボイラー用鋼管等に利用されている鋼では
知られているが、この鋼は基本的な特性を得るため、圧
延/造管後調質熱処理を施しており、本発明鋼とは製造
プロセスが異なる。
3740号明細書に記述されたものがある。この鋼はMoとNb
を同時に添加し、高温加熱−高温圧延により製造するプ
ロセスである。
得るため、MoとNbの複合添加を必須としている。本発明
鋼は常温では低降伏比で、600℃では、常温の70%以上
の降伏強度を有する厚板40mm以下の鋼板の製造に適して
おり、特に再加熱工程の省略によるコストダウンは実生
産上からも大きなメリットである。
由について詳細に説明する。
効果を発揮させるために必要であり、0.04%未満では効
果が薄れるので下限は0.04%とする。また、C量が多す
ぎると常温の降伏比が上昇し、さらに、HAZの低温靭性
に悪影響を及ぼすので、0.15%が上限となる。
接性、HAZ靭性が劣化するので、その上限を0.6%とし
た。
であり、その下限は0.3%である。しかし、Mn量が多す
ぎると焼入性が増大して溶接性、HAZ靭性が劣化するた
め、Mnの上限を1.0%とした。
Tiによっても脱酸は行われるので、本発明鋼については
下限は限定しない。しかし、Al量が多くなると鋼の清浄
度が悪くなり、溶接部の靭性が劣化するので上限を0.1
%とした。
であるが、N量が多くなるとHAZ靭性の劣化や連続鋳造
スラブの表面キズの発生等を助長するので、その上限を
0.006%とした。
含有する。P,Sは高温強度に与える影響は小さいので、
その量については特に限定しないが、一般に靭性、厚板
方向強度等に関する鋼の特性は、これらP,S元素の少な
いほど向上する。望ましいP,S量はそれぞれ0.02%,0.00
5%以下である。
的を達成できるが、さらに以下に述べる元素即ち、Cr,
V,Zr,Ta,Ca,REMを選択的に添加すると、強度や靭性の向
上について、さらに好ましい結果が得られる。
る。
候性の向上にも効果はあるが、1.0%を超えると溶接性
やHAZ靭性を劣化させ、また、0.05%以下では効果が薄
い。したがって、Cr量は0.05〜1.0%とする。
0%の範囲においてHAZ靭性を向上させる。しかし、0.00
5%以下では効果が無く0.10%を超えるとHAZ靭性に好ま
しくない影響がある。
な範囲はZrが0.005〜0.03%、Taが0.005〜0.05%であ
る。
メラーテアの改善や耐水素誘起割れ性の改善に効果を発
揮するほか、シャルピー吸収エネルギーを増加さけ、低
温靭性を向上させる効果がある。しかし、Ca量は0.0005
%未満では実用上効果がなく、また、0.005%を超える
と、CaO,CaSが大量に生成して大型介在物となり、鋼の
靭性のみならず、清浄度も害し、さらに、溶接性、耐ラ
メラーテア性にも悪影響を与えるので、Ca添加量の範囲
を0.0005〜0.005%とする。
を多くするとCaと同様な問題が生じ、さらに経済性も悪
くなるので、REM量の下限を0.001%、上限を0.005%と
した。
ない直接圧延によって鋼板を製造し、常温と600℃の強
度を調査した結果に基づいて本発明を説明するが、本発
明はこれによって限定されるものではない。
比較鋼の化学成分を示す。続いて、第2表に本発明鋼と
比較鋼の加熱、圧延後の製造条件とその強度特性を示
す。
クロ組織のフェライト分率が60%を超えており、常温の
降伏比(降伏強度/引張強度)が70%以下と低く、600
℃の降伏強度が常温の70%以上を有している。
ため、常温、600℃の強度とも低く、常温の降伏強度に
対する600℃の降伏強度の割合が70%に達しないレベル
であった。また、比較鋼No.19においてもMoが低いためN
o.18と同様であった。一方、比較鋼No.20はMoが高すぎ
るため、600℃での強度は十分であるが、常温の降伏比
が高すぎ80%にも達した。No.21とNo.22はそれぞれMnと
Cが低いため、いずれも常温、600℃の強度と低く、常
温の降伏強度に対する600℃の降伏強度の割合が70%に
達しないレベルであった。さらに、No.23ではその化学
成分がNo.2と同じであるにもかかわらず、圧延終了温度
が低いために常温、600℃の強度がいずれも低いレベル
であった。
での降伏強度が高く且つ、600℃の降伏強度が常温強度
の70%以上で、常温の降伏比も70%以下と低く、耐火性
及び耐震性の優れた全く新しい鋼である。
Claims (4)
- 【請求項1】重量比で、 C 0.04〜0.15%、 Si 0.6%以下、 Mn 0.3〜1.0%、 Ti 0.005〜0.05%、 Al 0.1%以下、 N 0.006%以下 残部がFeおよび不可避不純物、さらにMo(0.4〜0.8
%)、W(0.8〜1.6%)の1種あるいは2種からなり、
常温において70%以下の低降伏比(降伏強度/引張強
度)と600℃での高温強度が常温強度の70%以上を有す
る建築用耐火鋼材。 - 【請求項2】重量比で、 Cr 0.05〜1.0%、 V 0.005〜0.10%、 Zr 0.005〜0.03%、 Ta 0.005〜0.05%、 Ca 0.0005〜0.005%、 REM 0.001〜0.005% の1種あるいは2種以上を含む請求項1記載の建築用耐
火鋼材。 - 【請求項3】重量比で、 C 0.04〜0.15%、 Si 0.6%以下、 Mn 0.3〜1.0%、 Ti 0.005〜0.05%、 Al 0.1%以下、 N 0.006%以下 残部がFeおよび不可避不純物、さらにMo(0.4〜0.8
%)、W(0.8〜1.6%)の1種あるいは2種からなる鋼
片を連続鋳造後に、直接圧延を800〜1000℃で終了する
耐火性の優れた建築用低降伏比鋼材の製造方法。 - 【請求項4】重量比で、 Cr 0.05〜1.0%、 V 0.005〜0.10%、 Zr 0.005〜0.03%、 Ta 0.005〜0.05%、 Ca 0.0005〜0.005%、 REM 0.001〜0.005% の1種あるいは2種以上を含む請求項3記載の建築用耐
火鋼材の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP26445390A JP2816008B2 (ja) | 1990-10-02 | 1990-10-02 | 耐火性の優れた建築用低降伏比鋼材およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP26445390A JP2816008B2 (ja) | 1990-10-02 | 1990-10-02 | 耐火性の優れた建築用低降伏比鋼材およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH04141552A JPH04141552A (ja) | 1992-05-15 |
JP2816008B2 true JP2816008B2 (ja) | 1998-10-27 |
Family
ID=17403415
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP26445390A Expired - Lifetime JP2816008B2 (ja) | 1990-10-02 | 1990-10-02 | 耐火性の優れた建築用低降伏比鋼材およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2816008B2 (ja) |
-
1990
- 1990-10-02 JP JP26445390A patent/JP2816008B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Publication date |
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JPH04141552A (ja) | 1992-05-15 |
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