JPWO2008044575A1 - ジアルキルスズジアルコキシドの製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明の目的は、ジアルキルスズ触媒の失活体組成物からジアルキルスズ化合物を製造する方法を提供することであり、さらには該ジアルキルスズ化合物からジアルキルスズ触媒を製造して炭酸エステルの製造に使用する方法を提供することである。本発明によれば、エステル化合物を製造する過程で生成するジアルキルスズ触媒の失活体組成物を、アルキル基再分配反応および/または脱アルキル基反応に付し、ジアルキルスズ化合物を製造する方法が提供される。

Description

本発明は、エステルおよび炭酸エステル製造に用いられる触媒としてのジアルキルスズアルコキシド化合物の製造、ならびに該ジアルキルスズアルコキシド化合物を使用したエステルおよび炭酸エステル製造に関するものである。
ジアルキルスズジアルコキシドは、エステル合成触媒、炭酸エステル合成触媒、エステル交換反応触媒、シリコーンポリマーやウレタン硬化触媒等の触媒として極めて有用である。中でも、炭酸エステルは、オクタン価向上のためのガソリン添加剤、排ガス中のパーティクルを減少させるためのディーゼル燃料添加剤等の添加剤として使用されるほか、ポリカーボネートやウレタン、医薬・農薬等の有機化合物を合成する際のアルキル化剤、カルボニル化剤、溶剤等、あるいはリチウム電池の電解質、潤滑油原料、ボイラー配管の防錆用の脱酸素剤の原料として使用されるなど有用な化合物であり、ジアルキルスズジアルコキシドはその合成触媒として特に注目されている。例えば、特許文献1には、ジアルキルスズジアルコキシドを含む有機金属化合物を二酸化炭素と反応させて形成される付加物を熱分解させる炭酸エステルの製造方法が開示されている。
従来、ジアルキルスズジアルコキシドの製造方法としてジアルキルスズオキシドとアルコールとを脱水反応させ、発生する水を含む低沸成分を反応液から除去する方法が知られている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4、非特許文献1、非特許文献2参照)。ジアルキルスズオキシドとアルコールとの脱水反応によるジアルキルスズジアルコキシドの製造方法は、下記式(1)に示す脱水を伴う平衡反応であると推測している。
Figure 2008044575
(式中、RおよびR’はアルキル基を表す。)
上記の平衡は圧倒的に原系に偏っていて、さらに下記式(2)および(3)に示すテトラアルキルジスタンオキサンを経由する逐次脱水反応を含有していると推定される。
Figure 2008044575
(式中、RおよびR’はアルキル基を表す。)
Figure 2008044575
(式中、RおよびR’はアルキル基を表す。)
ジアルキルスズジアルコキシドを高収率で得るためには、各脱水反応により生成する水を系外に抜き出しながら製造されるが、エネルギー的に不利な反応であるために、高温(例えば、180℃)で長時間反応することが必要である。
一方、ジアルキルスズアルコキシド化合物(例えば、ジアルキルスズジアルコキシド)を、例えば180℃程度まで加熱すると、1つのスズ原子上に3つのアルキル基を有するトリアルキルスズアルコキシドなどの変性体が生成することが知られている(例えば、非特許文献2参照)。どのような反応によってトリアルキルスズアルコキシドが生成しているのかは明確ではないが、例えば、分子内でアルキル基が転移し、例えば、該ジアルキルスズアルコキシドがテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンの場合、下記式(4)のような不均化反応により変性体が生成し、該ジアルキルスズアルコキシドがジアルキルスズジアルコキシドの場合、下記式(5)のような不均化反応によって変性体が生成していると推定している。
Figure 2008044575
(式中、RおよびR’はアルキル基を表す。)
上記式(4)によると、テトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンの変性体としてトリアルキルスズアルコキシドと1つのスズ原子上に1つのアルキル基を有するモノアルキル化合物が生成していると推定される。実際に、本発明者らは、テトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンの変性体には、トリアルキルスズアルコキシドと高沸点のスズ成分が含まれていることを確認したことから、高沸点のスズ成分がモノアルキル化合物に相当しているものと推測している。
しかしながら、モノアルキル化合物に相当すると推測される高沸点のスズ成分については、その構造を特定するには至っていない。同様に、ジアルキルスズジアルコキシドから、トリアルキルスズアルコキシドとモノアルキルスズアルコキシドと推定される変性物が生成するが、該モノアルキルスズアルコキシドと推定される変性物の構造は特定されていない。
このような変性体の生成は、上述のようなジアルキルスズジアルコキシドの製造過程やジアルキルスズジアルコキシドを含む有機金属化合物を二酸化炭素と反応させて形成される付加物を熱分解させて炭酸エステルを製造する過程などにおいても確認される。
トリアルキルスズアルコキシドは、二酸化炭素とスズ化合物との反応による炭酸エステルの製造において炭酸エステル生成能力が極めて低いことが知られている(例えば、非特許文献3参照)。また、該変性体に含まれる、構造を特定できない高沸点のスズ成分も、二酸化炭素とスズ化合物との反応による炭酸エステルの製造において炭酸エステルの生産能力が極めて低い(例えば、特許文献4参照)。
このように、変性体は二酸化炭素とスズ化合物との反応による炭酸エステルの製造において反応活性を示さないことから、該炭酸エステルの製造工程において変性体が生成すれば、繰り返してアルキルスズアルコキシド化合物を使用した際に、活性の低いジアルキルスズアルコキシド化合物の変性体が蓄積し活性体であるジアルキルスズアルコキシド化合物が減少するために、反応速度が低下したり、炭酸エステルの収率が低下する場合がある。このような場合、反応速度や収率を一定にするために新しいジアルキルスズアルコキシド化合物を少量添加する方法が一般的な反応で行われているが、新しいジアルキルスズアルコキシド化合物を添加しつづけるだけで変性体を放置すれば、活性の低い劣化物が多量に反応系中に蓄積してしまう問題がある。また、反応系よりジアルキルスズアルコキシド化合物の変性体を含むアルキルスズアルコキシド化合物の混合物を一部抜き出しながら新しいジアルキルスズアルコキシド化合物を添加し反応系中のジアルキルスズアルコキシド化合物の濃度を一定に保持した場合でも、抜き出されたジアルキルスズアルコキシド化合物の変性体が廃棄物となるばかりか、同時に活性体であるジアルキルスズアルコキシド化合物も抜き出されて廃棄されるため、コストや廃棄物の問題に大きな課題がある。
この課題に対して、これまでいくつかの解決法が提示されている(例えば、特許文献5、特許文献6参照)。具体的には、特許文献5には、ジアルキルスズアルコキシド化合物の熱変性体を含むジアルキルスズアルコキシド化合物を使用する炭酸エステルの製造において、該熱変性物を含むジアルキルスズアルコキシド化合物からトリアルキルスズ化合物成分を蒸留によって分離し、反応系への蓄積を防止する方法が提示されている。しかしながら、ジアルキルスズアルコキシド化合物の変性体に含まれる構造を特定できない高沸点のスズを反応系より除去することができず、当該方法によってもジアルキルスズアルコキシド化合物の変性体の蓄積を完全に防止することができない。
また、本発明者らは、先に、反応系より抜き出されたジアルキルスズアルコキシド化合物とジアルキルスズアルコキシド化合物の変性体の混合物をアルコールおよび/または炭酸エステルと反応させ、ジアルキルスズアルコキシド化合物に由来する生成物をジアルキルスズジアルコキシドとして分離回収する方法を開示した(特許文献6参照)。当該方法により、活性体であるジアルキルスズアルコキシド化合物を変性体と共に廃棄される課題を解決し、ジアルキルスズアルコキシド化合物の変性体のみを選択的に廃棄することを可能とした。しかしながら、ジアルキルスズアルコキシド化合物の変性体を再利用することはできないため、コストや廃棄物の課題は依然として残されている。
かかる背景のもと、ジアルキルスズアルコキシド化合物の変性体を、活性体であるジアルキルスズアルコキシド化合物に再生し、炭酸エステルの製造に再び使用することが可能となる技術の開発が要望されている。
スズ原子上のアルキル基の数が異なる2種の化合物からジアルキルスズ化合物を得る方法としては、上述の不均化反応の逆反応である均化反応がある。例えば、ハロゲン化スズ化合物の場合、下記式(6)で示されるようにトリアルキルクロロスズとアルキルトリクロロスズの均化反応によりジアルキルジクロロスズが生成する(例えば、特許文献7参照)。
Figure 2008044575
上述のように、スズアルコキシド化合物の場合は、不均化反応によりジアルキルスズアルコキシド化合物がトリアルキルスズアルコキシドとモノアルキルスズ化合物に変性する不均化反応が有利であり、逆反応である均化反応は起こりにくい。一方、ハロゲン化スズ化合物においては均化反応の方が有利であり、トリアルキルクロロスズとアルキルトリクロロスズからジアルキルジクロロスズが得られる。
アルキルトリクロロスズを製造する方法としては、これまでいくつかの方法が開示されている(例えば、特許文献7、特許文献8参照)。具体的には、特許文献7には、テトラアルキルスズとテトラクロロスズをある特定の割合で混合し、上述の均化反応によりアルキルトリクロロスズを製造する方法を開示するものである。特許文献8には、アルカンスタノン酸と塩化水素との反応によりアルキルトリクロロスズを製造する方法が開示されている。しかしながら、ジアルキルスズアルコキシド化合物の変性体を原料としてアルキルトリクロロスズ化合物を製造する技術に関してはこれまで知られていない。
一方、ジアルキルスズアルコキシド化合物の変性体の反応としては、ジアルキルスズアルコキシド化合物の変性体を酢酸と反応させることによりトリアルキルスズアセトキシドとアルキルスズアセトキシドオキシドを生成する反応が開示されている(例えば、非特許文献3参照)。しかしながら、トリアルキルスズアセトキシドとアルキルスズアセトキシドオキシド化合物の均化反応によりジアルキルスズアルコキシド化合物を製造する方法はこれまで知られていない。
以上のことから、ジアルキルスズアルコキシド化合物の変性体を、活性体であるジアルキルスズアルコキシド化合物に再生する技術の開発は依然として課題として残されていることから、炭酸エステルの製造工程におけるコストや廃棄物の問題は依然解決されていないのが現状である。
WO 2003/055840号公報 米国特許第5545600号公報 WO 2005/111049号公報 特開2005−298433号公報 WO 2004/014840号公報 WO 2007/097388号公報 特開平4−81999号公報 特開昭44−8489号公報 Journal of Chemical Society,23(1971),3972 工業化学雑誌 72巻 7号 1543−1549(1969) Journal of Ameriacan Chemical Society,121(1999),3793
本発明の目的は、ジアルキルスズアルコキシド化合物の変性体からジアルキルスズアルコキシド化合物に再生可能なジアルキルスズ化合物を製造する方法を提供することであり、さらには該ジアルキルスズ化合物を炭酸エステルの製造に使用する方法を提供することである。
本発明者らは上記課題に対して鋭意検討を重ねた結果、ジアルキルスズアルコキシド化合物の変性体を含む組成物に酸および/または酸無水物と反応させて製造される化合物を熱処理することによりジアルキルスズ化合物を製造し、さらに該ジアルキルスズ化合物をジアルキルスズアルコキシド化合物に再生し炭酸エステルの製造に使用することで解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下のとおりである。
本発明は、
[1] ジアルキルスズ化合物の製造方法であって、
ジアルキルスズ触媒を用いてエステル化合物を製造する際に生成する、ジアルキルスズ触媒の失活体組成物を、アルキル基再分配反応および/または脱アルキル基反応に付す工程を含む、ジアルキルスズ化合物の製造方法、
[2] 該ジアルキルスズ触媒が、
Figure 2008044575
(式中、RおよびRは、各々独立に、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜12のアルキル基を表し、
およびXは、各々独立に、アルコキシ基、アシルオキシル基およびハロゲン原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を表し、
aおよびbは、各々0〜2の整数であり、a+b=2であり、
cおよびdは、各々0〜2の整数であり、c+d=2である。)
Figure 2008044575
(式中、R、R、RおよびRは、各々独立に、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜12のアルキル基を表し、
およびXは、各々独立に、アルコキシ基、アシルオキシル基およびハロゲン原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を表し、
e、f、g、hは、各々0〜2の整数であり、e+f=2、g+h=2である。)
式(7)で表されるジアルキルスズ化合物、および式(8)で表されるテトラアルキルジスタンオキサン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である前項[1]に記載の製造方法、
[3] 該式(7)および(8)において、X、X、XおよびXを構成する炭素原子の数が0〜12の整数より選ばれる数である前項[2]に記載の製造方法、
[4] 該エステル化合物が、カルボン酸エステル、カルバミン酸エステル、およびイソシアン酸エステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である前項[1]〜[3]のうち何れか一項に記載の製造方法、
[5] 該カルボン酸エステルが、炭酸エステルである前項[4]に記載の製造方法、
[6] 該ジアルキルスズ触媒の失活体組成物が、二酸化炭素とジアルキルスズ触媒とから炭酸エステルを製造する過程において生成するジアルキルスズ触媒の失活体を含む組成物である前項[5]に記載の製造方法、
[7] 該ジアルキルスズ触媒の失活体が、ジアルキルスズ触媒の熱失活体である前項[1]〜[6]のうち何れか一項に記載の製造方法、
[8] 該ジアルキルスズ触媒の失活体が、該ジアルキルスズ触媒に由来し、1つのスズ原子に結合するアルキル基の数が、ジアルキルスズ触媒の1つのスズ原子に結合しているアルキル基の数と異なる、ジアルキルスズ触媒の失活体である前項[1]〜[7]のうち何れか一項に記載の製造方法、
[9] 該ジアルキルスズ触媒の失活体の少なくとも1種が、トリアルキルスズ化合物(ここでいうトリアルキルスズ化合物とは、1つのスズ原子に3つのアルキル基が結合した有機スズ化合物であって、該アルキル基は、ジアルキルスズ触媒に由来するアルキル基である、有機スズ化合物をいう。)である前項[1]〜[8]のうち何れか一項に記載の製造方法、
[10] 該ジアルキルスズ触媒の失活体が、トリアルキルスズ化合物、および重クロロホルム溶液中で119Sn−NMRにより分析した際にテトラメチルスズ基準で、−220〜−610ppmに化学シフトを示すスズ原子を含有する有機スズ化合物である前項[1]〜[9]のうち何れか一項に記載の製造方法、
[11] 該ジアルキルスズ触媒の失活体組成物から、トリアルキルスズ化合物を含む組成物と、重クロロホルム溶液中で119Sn−NMRにより分析した際にテトラメチルスズ基準で、−220〜−610ppmに化学シフトを示すスズ原子を含有する化合物を含む組成物とに分離する工程をさらに含む前項[10]に記載の製造方法、
[12] 該分離工程が、蒸留分離、抽出分離、膜分離よりなる群から選ばれる少なくとも1つの方法によりおこなわれる前項[11]に記載の製造方法、
[13] 該ジアルキルスズ触媒の失活体のスズ原子に結合している、ジアルキルスズ触媒に由来するアルキル基以外の基のうち、少なくとも1つの置換基に対する共役酸のpKaが、0〜6.8の場合、
該アルキル基再分配反応が、Sn−Y結合を有する有機スズ化合物(ここで、Yは、Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8のYである。)を加熱処理するアルキル基再分配反応である前項[1]〜[12]のうち何れか一項に記載の製造方法、
[14] 該ジアルキルスズ触媒の失活体のスズ原子に結合している、ジアルキルスズ触媒に由来するアルキル基以外の基のうち、少なくとも1つの置換基に対する共役酸のpKaが、6.8〜25の場合、
該アルキル基再分配反応が、
工程(A):該失活体の配位子(該ジアルキルスズ触媒に由来し、スズに結合しているアルキル基を除く)の一部または全部を置換基Yに置換して、Sn−Y結合を有する有機スズ化合物を得る工程;
工程(B):工程Aで得られたSn−Y結合を有する有機スズ化合物(ここでYは、Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8のYである。
)を加熱処理する工程;
を含む前項[1]〜[12]のうち何れか一項に記載の製造方法、
[15] 該工程(A)が、
該ジアルキルスズ触媒の失活体組成物と下記式(9)で表される酸および/または下記式(10)で表される酸無水物を反応させて、1個のスズ原子に3個のアルキル基と1個の酸および/または酸無水物に由来する基Yが結合したSn−Y結合を有する有機スズ化合物と、1個のスズ原子に1個のアルキル基と1〜3の整数から選ばれる数の酸および/または酸無水物に由来する基Yが結合したSn−Y結合を有する有機スズ化合物を製造する工程;
Figure 2008044575
(式中、Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8であるYである。)
Figure 2008044575
(式中、Yは、Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8であるYであり;
Oは、酸素原子を表す。)
を含む前項[14]に記載の製造方法、
[16] 該工程(A)で酸を用いた際に生成する水を、脱水剤による除去、蒸留分離、膜分離よりなる群から選ばれる少なくとも1つの方法によって除去しながらおこなう前項[15]に記載の製造方法、
[17] 該脱アルキル基反応が、ジアルキルスズ触媒の失活体からアルキル基を脱離させてSn−Y結合(ここで、YはYに水素原子が付加した、Yの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8であるYである。)を形成する工程を含む請求項1〜12のうち何れか一項に記載の製造方法、
[18] 該脱アルキル基反応が、ジアルキルスズ触媒の失活体組成物に含有されるトリアルキルスズ化合物から1個のアルキル基を脱離させて1個のSn−Y結合を形成し、Sn−Y結合を有するジアルキルスズ化合物(ここで、Yは、Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8であるYである。)を得る前項[9]〜[12]のうち何れか一項に記載の製造方法、
[19] 該Sn−Y結合を形成する工程が、該ジアルキルスズ触媒の失活体組成物に含有されるトリアルキルスズ化合物と、
Figure 2008044575
(式中、Yは、Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8であるYであり、
Oは、酸素原子を表す。)
Figure 2008044575
(式中、Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8であるYである。)
式(11)で表される酸および/または式(12)で表される酸無水物を反応させる前項[18]に記載の製造方法、
[20] 該酸および/または酸無水物が、60℃において液体もしくは気体である前項[15]または[19]に記載の製造方法、
[21] 該酸が、ハロゲン化水素酸である前項[20]に記載の製造方法、
[22] 該酸が、ハロゲン化水素である前項[20]に記載の製造方法、
[23] 該酸が、有機酸である前項[20]に記載の製造方法、
[24] 該有機酸が、カルボン酸である前項[23]に記載の製造方法、
[25] 該酸無水物の標準沸点が、300℃以下である前項[20]に記載の製造方法、
[26] 該酸無水物が、無水酢酸または無水マレイン酸である前項[25]に記載の製造方法、
[27] 該ジアルキルスズ化合物が、1つのスズ原子に2個のジアルキルスズ触媒に由来するアルキル基が結合し、同時に、少なくとも1個のSn−Y結合(ここで、Yは、Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8であるYである。)を有する前項[1]〜[26]のうち何れか一項に記載の製造方法、
[28] 該ジアルキルスズ化合物が、
Figure 2008044575
(式中、RおよびRは、ジアルキルスズ触媒に由来する基であり、各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基を表し、
Yは、ジアルキルスズ触媒に由来する基、または、酸(HY)および/または酸無水物(YOY)に由来する基であって、Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8のYであり、
iおよびjは、各々0〜2の整数であり、i+j=2である。)
Figure 2008044575
(式中、R、R10、R11およびR12は、ジアルキルスズ触媒に由来する基であり、各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基を表し、
Yは、ジアルキルスズ触媒に由来する基、または、酸(HY)および/または酸無水物(YOY)に由来する基であって、Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8のYであり、
k、l、m、nは、各々0〜2の整数であり、k+l=2、m+n=2である。)
式(13)で表されるジアルキルスズ化合物、および式(14)で表されるテトラアルキルジスタンオキサン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である前項[27]に記載の製造方法、
[29] 該工程(B)の後に、
工程(I):Sn−Y結合を有するジアルキルスズ化合物の置換基Yを、アルコキシ基、アシルオキシル基およびハロゲン原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基に置換する工程;
を含む前項[14]〜[26]のうち何れか一項に記載の製造方法、
[30] 該工程(I)が、
工程(I−1):Sn−Y結合を有するジアルキルスズ化合物にアルカリ水溶液を加えて加水分解してジアルキル酸化スズを含有する組成物を得る工程;
工程(I−2):該工程(I−1)で得られたジアルキル酸化スズを含有する組成物と、アルコール、カルボン酸およびハロゲン化水素よりからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を反応させ、発生する水を含む成分を反応液より除去する工程;
を含む前項[29]に記載の製造方法、
[31] 該アルカリ水溶液が、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液および炭酸ナトリウム水溶液よりなる群から選ばれる少なくとも1つのアルカリ水溶液である前項[30]に記載の製造方法、
[32] 該工程(I−2)において、ジアルキル酸化スズを含有する組成物と反応させる化合物がアルコールであり、ジアルキルスズアルコキシド化合物(ここでいうジアルキルスズアルコキシド化合物とは、スズ原子に2個のアルキル基が結合していて、少なくとも1個のアルコキシ基が結合している有機スズ化合物をいう)を得る工程である前項[30]または[31]に記載の製造方法、
[33] 該炭酸エステルを製造する過程が、
工程(1):二酸化炭素とジアルキルスズ触媒とを反応させて、炭酸エステルを含む反応液を得る工程;
工程(2):該反応液から炭酸エステルを分離し、残留液を得る工程;
工程(3):該残留液とアルコールを反応させて生成する水を系外に除去してジアルキルスズ触媒を再生する工程;
工程(4):工程(3)で得られたジアルキルスズ触媒を工程(1)へリサイクルする工程;
を含む前項[6]に記載の製造方法、
[34] 該炭酸エステルを製造する過程で生成するジアルキルスズ触媒の失活体組成物から、アルキル基再分配反応および/または脱アルキル基反応してジアルキルスズ触媒を再生する工程を、
該工程(2)および/または工程(3)の後に実施し、再生されたジアルキルスズ触媒を、該工程(4)および/または工程(1)のジアルキルスズ触媒としてリサイクル使用することをさらに含む前項[33]に記載の製造方法、
[35] 該ジアルキルスズ触媒を再生する工程が、前項[29]〜[32]に記載の方法であって、置換基Yがアシルオキシル基である工程である前項[34]に記載の製造方法、
[36] 該ジアルキルスズ触媒が、ジアルキルスズアルコキシド化合物(ここでいうジアルキルスズアルコキシド化合物とは、スズ原子に2個のアルキル基が結合していて、少なくとも1個のアルコキシ基が結合している有機スズ化合物をいう)である前項[1]、[33]〜[35]のいずれか一項に記載の製造方法、
[37] 該ジアルキルスズ触媒が、ジアルキルスズアルコキシド化合物(ここでいうジアルキルスズアルコキシド化合物とは、スズ原子に2個のアルキル基が結合していて、少なくとも1個のアルコキシ基が結合している有機スズ化合物をいう)であって、
Figure 2008044575
(式中、RおよびRは、各々独立に、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜12のアルキル基を表し、
およびXは、各々独立に、アルコキシ基、アシルオキシル基およびハロゲン原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を表し、
aおよびbは、各々0〜2の整数であり、a+b=2であり、
cおよびdは、各々0〜2の整数であり、c+d=2である。)
Figure 2008044575
(式中、R、R、RおよびRは、各々独立に、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜12のアルキル基を表し、
およびXは、各々独立に、アルコキシ基、アシルオキシル基およびハロゲン原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を表し、
e、f、g、hは、各々0〜2の整数であり、e+f=2、g+h=2である。)
式(15)および/または(16)で表される化合物のうち、X、X、XおよびXがアルコキシ基である前項[33]〜[36]のいずれか一項に記載の製造方法、
[38] 該ジアルキルスズ触媒が、ジアルキルスズアルコキシドであって、前記式(14)および/または(15)で表される化合物のうち、R、R、R、R、RおよびRが、同時にn−ブチル基またはn−オクチル基である前項[37]に記載の製造方法、
[39] 該アルコールが、下記式(17)で表されるアルコールである前項[33]〜[38]のうち何れか一項に記載の製造方法:
Figure 2008044575
(式中、R13は直鎖状もしくは分岐鎖状の炭素数4〜8のアルキル基を表す)、
を提供する。
本発明によれば、ジアルキルスズアルコキシド化合物の変性体を含む組成物から、有用な成分であるジアルキルスズ化合物を得ることができ、さらに該ジアルキルスズ化合物をジアルキルスズアルコキシド化合物に変換した後、炭酸エステルの製造に再使用することができるため、工業分野において大変有用である。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
まず、本実施の形態で使用する化合物について説明する。
<ジアルキルスズ触媒>
本実施の形態において、用語「ジアルキルスズ化合物」および「ジアルキルスズ触媒」と、本実施の形態でいう用語「ジアルキルスズ」とは、一つのスズ原子に2個のアルキル基が結合している有機スズ化合物を指している。
本実施の形態におけるジアルキルスズ触媒は、エステル化合物の製造において触媒作用を示し、1つのスズ原子に2個のアルキル基が結合している有機スズ化合物をいう。
該ジアルキルスズ触媒の例としては、下記式(18)で表されるジアルキルスズ化合物および下記式(19)で表されるテトラアルキルジスタンオキサン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物から選ばれる化合物が挙げられる。
Figure 2008044575
(式中、RおよびRは、各々独立に、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜12のアルキル基を表し、
およびXは、各々独立に、アルコキシ基、アシルオキシル基およびハロゲン原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を表し、
aおよびbは、各々0〜2の整数であり、a+b=2であり、
cおよびdは、各々0〜2の整数であり、c+d=2である。)
Figure 2008044575
(式中、R、R、RおよびRは、各々独立に、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜12のアルキル基を表し、
およびXは、アルコキシ基、アシルオキシル基およびハロゲン原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を表し、
e、f、g、hは、各々0〜2の整数であり、e+f=2、g+h=2である。)
本実施の形態における式(18)で表されるジアルキルスズ触媒のRおよびR、および式(19)で表されるテトラアルキルジスタンオキサン化合物のR、R、RおよびRの例としては、メチル、エチル、プロピル(各異性体)、ブチル(各異性体)、ペンチル(各異性体)、ヘキシル(各異性体)、ヘプチル(各異性体)、オクチル(各異性体)、ノニル(各異性体)、デシル(各異性体)、ドデシル(各異性体)等の、該基を構成する炭素原子の数が1〜12の整数より選ばれる数である脂肪族炭化水素基であるアルキル基が挙げられる。好ましくは、該基を構成する炭素原子の数が1〜8の整数より選ばれる数である直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、該基を構成する炭素原子の数が以上に示した範囲以外のアルキル基であるジアルキルスズ触媒も使用できるが、流動性が悪くなったり、生産性を損なったりする場合がある。工業的生産時の入手の容易さを考慮すれば、n−ブチル基、n−オクチル基がさらに好ましい。
本実施の形態における式(18)で表されるジアルキルスズ触媒のXおよびX、および式(19)で表されるテトラアルキルジスタンオキサン化合物のXおよびXとしては、アルコキシ基、アシルオキシル基およびハロゲン原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を表し、該基が、アルコキシ基および/またはアシルオキシ基である場合は、該基を構成する炭素原子の数が、0〜12の整数より選ばれる数である基であることが好ましい。このような例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基(各異性体)、ブトキシ基(各異性体)、ペンチルオキシ基(各異性体)、ヘキシルオキシ基(各異性体)、ヘプチルオキシ基(各異性体)、オクチルオキシ基(各異性体)、ノニルオキシ基(各異性体)、デシルオキシ基(各異性体)等の、直鎖状もしくは分岐鎖状の飽和アルキル基と酸素原子から構成されるアルコキシ基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、ラウロイルオキシ基等の、直鎖状もしくは分岐鎖状の飽和アルキル基とカルボニル基と酸素原子から構成されるアシルオキシル基;クロロ基、ブロモ基等のハロゲン原子が例示される。流動性や、溶解性を考慮し、また、炭酸エステル製造触媒として用いることを考慮すれば、好ましい例としては、炭素数4〜6のアルコキシ基である。
式(18)で示されるジアルキルスズ触媒の例としては、ジメチル−ジメトキシスズ、ジメチル−ジエトキシスズ、ジメチル−ジプロポキシスズ(各異性体)、ジメチル−ジブトキシスズ(各異性体)、ジメチル−ジペンチルオキシスズ(各異性体)、ジメチル−ジヘキシルオキシスズ(各異性体)、ジメチル−ジヘプチルオキシスズ(各異性体)、ジメチル−ジオクチルオキシスズ(各異性体)、ジメチル−ジノニルオキシスズ(各異性体)、ジメチル−ジデシルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジメトキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジエトキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジプロポキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジブチルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジペンチルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジヘキシルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジヘプチルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジオクチルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジノニルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジデシルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジメトキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジエトキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジプロポキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジブチルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジペンチルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジヘキシルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジヘプチルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジオクチルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジノニルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジデシルオキシスズ(各異性体)等のジアルキル−ジアルコキシスズ;ジメチル−ジアセトキシスズ、ジメチル−ジプロピオニルオキシスズ(各異性体)、ジメチル−ジブチリルオキシスズ(各異性体)、ジメチル−バレリルオキシスズ(各異性体)、ジメチル−ジラウロリルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジアセトキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジプロピオニルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジブチリルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジバレリルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジラウロリルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジアセトキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジプロピオニルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジブチリルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−バレリルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジラウロリルオキシスズ(各異性体)等のジアルキル−ジアシルオキシスズ;ジメチル−ジクロロスズ、ジメチル−ジブロモスズ、ジブチル−ジクロロスズ(各異性体)、ジブチル−ジブロモスズ(各異性体)、ジオクチル−ジクロロスズ(各異性体)、ジオクチル−ジブロモスズ(各異性体)等のジアルキル−ジハロゲン化スズ等を挙げることができる。
これらの中でも、ジメチル−ジメトキシスズ、ジメチル−ジエトキシスズ、ジメチル−ジプロポキシスズ(各異性体)、ジメチル−ジブトキシスズ(各異性体)、ジメチル−ジペンチルオキシスズ(各異性体)、ジメチル−ジヘキシルオキシスズ(各異性体)、ジメチル−ジヘプチルオキシスズ(各異性体)、ジメチル−ジオクチルオキシスズ(各異性体)、ジメチル−ジノニルオキシスズ(各異性体)、ジメチル−ジデシルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジメトキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジエトキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジプロポキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジブチルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジペンチルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジヘキシルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジヘプチルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジオクチルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジノニルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジデシルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジメトキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジエトキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジプロポキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジブチルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジペンチルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジヘキシルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジヘプチルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジオクチルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジノニルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジデシルオキシスズ(各異性体)などのジアルキルスズジアルコキシドが好ましく、中でもジブチル−ジプロポキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジブチルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジペンチルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジヘキシルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジヘプチルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジプロポキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジブトキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジペンチルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジヘキシルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジヘプチルオキシスズ(各異性体)等のジアルキル−ジアルコキシスズがより好ましく、ジブチル−ジブチルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジペンチルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジヘキシルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジヘプチルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−ジオクチルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジブチルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジペンチルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジヘキシルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジヘプチルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ジオクチルオキシスズ(各異性体)がさらに好ましい。
上記式(18)で表されるジアルキルスズ触媒は単量体構造を示しているが、多量体構造であっても会合体であってもよい。
上記式(19)で示されるテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンの例としては、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジメトキシジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジエトキシジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジプロポキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジブトキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジペンチルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジヘキシルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジヘプチルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジオクチルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジノニルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジデシルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジメトキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジエトキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジプロポキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジブトキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジペンチルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジヘキシルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジヘプチルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジオクチルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジノニルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジデシルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジメトキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジエトキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジプロポキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジブトキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジペンチルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジヘキシルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジヘプチルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジオクチルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジノニルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジデシルオキシジスタンオキサン(各異性体)などの1,1,3,3−テトラアルキル−1,3−ジアルコキシ−ジスタンオキサン;1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジアセトキシジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジプロピオニルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジブチリルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジバレリルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジラウロリルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジアセトキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジプロピオニルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジブチリルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジバレリルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウロリルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジアセトキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジプロピオニルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジブチリルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジバレリルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジラウロリルオキシジスタンオキサン(各異性体)、等の1,1,3,3−テトラアルキル−1,3−ジアシルオキシジスタンオキサン、
1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジクロロジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジブロモジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジクロロジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジブロモジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジクロロジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジブロモジスタンオキサン(各異性体)等の1,1,3,3−テトラアルキル−1,3−ジハロゲン化ジスタンオキサンを挙げることができる。
これらの中でも、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジメトキシジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジエトキシジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジプロポキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジブトキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジペンチルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジヘキシルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジヘプチルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジオクチルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジノニルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジデシルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジメトキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジエトキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジプロポキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジブトキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジペンチルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジヘキシルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジヘプチルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジオクチルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジノニルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジデシルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジメトキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジエトキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジプロポキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジブトキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジペンチルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジヘキシルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジヘプチルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジオクチルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジノニルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジデシルオキシジスタンオキサン(各異性体)などの1,1,3,3−テトラアルキル−1,3−ジアルコキシ−ジスタンオキサンがより好ましく、中でも1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジブトキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジペンチルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジヘキシルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジヘプチルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジオクチルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジブトキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジペンチルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジヘキシルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジヘプチルオキシジスタンオキサン(各異性体)、1,1,3,3−テトラオクチル−1,3−ジオクチルオキシジスタンオキサン(各異性体)がさらに好ましい。
上記式(19)で表されるテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンは単量体構造を示しているが、多量体構造であっても会合体であってもよい。
一般に、有機スズ化合物は会合構造をとりやすく、例えばジアルキルスズジアルコキシスズはダイマー構造を形成したり、テトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンは、2分子または3分子が会合したラダー構造を形成して存在する場合もあることが知られているが、このような会合状態が変化する場合であっても、単量体構造で化合物を表すことは、当業者にとっては一般的であり、容易に理解できる。
また、上記で示したジアルキルスズアルコキシド化合物は単独であっても2種以上の混合物であってもよい。
このようなジアルキルスズ触媒は、市販されているものを使用してもよく、また、公知の方法(例えば、米国特許第5545600号に記載の方法)によって、有機スズオキサイドとアルコール、カルボン酸、酸無水物およびハロゲン化水素よりなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を反応させ、水が発生する場合は、発生する水を含む成分を反応液から除去することにより製造することができる。
該ジアルキルスズ触媒の製造方法において、有機スズオキサイドとしては、下記式(20)に示されるジアルキルスズオキサイドが好ましく用いられる。
Figure 2008044575
(式中、R14およびR15は、各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
14およびR15の例としては、メチル、エチル、プロピル(各異性体)、ブチル(各異性体)、ペンチル(各異性体)、ヘキシル(各異性体)、ヘプチル(各異性体)、オクチル(各異性体)、ノニル(各異性体)、デシル(各異性体)、ウンデシル(各異性体)、ドデシル(各異性体)等の炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基であるアルキル基が挙げられる。より好ましくは炭素数1〜8の直鎖状または分岐鎖状の飽和アルキル基であり、さらに好ましくは、n−ブチル基、n−オクチル基である。
該有機スズオキサイドと反応させる化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール(各異性体)、ブタノール(各異性体)、ペンタノール(各異性体)、ヘキサノール(各異性体)、ヘプタノール(各異性体)、オクタノール(各異性体)、ノナノール(各異性体)、デカノール(各異性体)等のアルコールであって、該アルコールを構成する炭素原子の数が1〜12の整数から選ばれる数であるアルコール;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、2−メチルブタン酸、ピバリン酸、ヘキサン酸、イソカプロン酸、2−エチルブタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、ヘプタン酸(各異性体)、オクタン酸(各異性体)、ノナン酸(各異性体)、デカン酸(各異性体)、ウンデカン酸(各異性体)、ドデカン酸(各異性体)等のカルボン酸であって、該カルボン酸を構成する炭素原子の数が1〜12の整数から選ばれる数であるカルボン酸;無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水イソ吉草酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水プロピオン酸等の酸無水物であって、該酸無水物を構成する炭素原子の数が3〜25の整数から選ばれる数である酸無水物;炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル(各異性体)、炭酸ジブチル(各異性体)、炭酸ジペンチル(各異性体)、炭酸ジヘキシル(各異性体)、炭酸ジヘプチル(各異性体)、炭酸ジオクチル(各異性体)等の炭酸エステル;塩化水素、臭化水素等のハロゲン化水素を挙げることができる。
反応条件は、反応させる化合物によって異なるが、反応させる化合物がアルコールおよび/またはカルボン酸の場合は、該有機スズオキサイドに対してアルコールおよび/またはカルボン酸を化学量論比で表して、2倍〜1000倍の範囲、反応は平衡反応と推定されるため、アルコール量が該有機スズオキサイドに対して過剰量が好ましいが、反応器の大きさを考慮すれば、好ましくは2倍〜100倍の範囲、さらに好ましくは5倍〜50倍の範囲である。上記したように、反応は平衡反応であり、生成する水を除去しながらおこなうことが好ましい。水を除去する方法は公知の方法が使用できる。そのような水を除去する方法の例としては、膜分離、脱水剤、蒸留による方法が挙げられる。膜分離は、例えば、中空糸によるパーベーパレーションによる方法が挙げられ、脱水剤としては有機脱水剤、無機脱水剤のいずれも使用することができる。有機脱水剤の例としては、アセタール化合物、ケタール化合物、オルトエステル化合物などが挙げられ、無機脱水剤の例としては、モレキュラーシーブなどが好ましく使用できる。蒸留による方法では、上記した反応させるアルコールのうち、常圧で水よりも沸点の高いアルコールおよび/またはカルボン酸を用いて、反応で生成する水を気相成分として系外へ抜き出しながら反応させることが好ましい。反応温度は、通常、常温(20℃)〜350℃(反応させる化合物がアルコールの場合は、例えば80〜180℃)、反応速度を高めるためには反応温度は高温が好ましいが、一方で、高温では分解等の好ましくない反応も起こる場合もあり、収率が低下することもあるので、好ましくは100 ℃〜160℃の範囲で行われる。反応温度を一定にする目的で、上記反応器に公知の冷却装置、加熱装置を設置してよい。また、反応圧力は、用いる化合物の種類や反応温度などにより異なるが、減圧、常圧、加圧のいずれであってもよく、通常20〜1×10Paの範囲で行われる。反応時間(連続法の場合は滞留時間)に、特に制限はなく通常0.001〜50時間、好ましくは0.01〜10時間、より好ましくは0.1〜2時間である。本実施の形態においては、必ずしも反応溶媒を使用する必要はないが、反応操作を容易にする等の目的で適当な不活性溶媒、例えば、エーテル類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類等を反応溶媒として用いることができる。反応器も公知の槽型反応器、塔型反応器、蒸留塔が使用でき、反応器およびラインの材質は、出発物質や反応物質に悪影響を及ぼさなければ、公知のどのようなものであってもよいが、SUS304やSUS316,SUS316Lなどが安価でもあり、好ましく使用できる。
反応させる化合物が酸無水物、炭酸エステルの場合は、水が生成する反応ではないので、上記したような脱水剤を必要としないが、他の条件は上記したアルコールおよび/またはカルボン酸を用いた場合と同様な条件でおこなうことができる。
反応させる化合物がハロゲン化水素の場合も水が生成する反応であり、生成する水を除去しながら実施することが好ましい。ハロゲン化水素としては、ガス状で使用してもよいし、水溶液としたハロゲン化水素水溶液を用いても構わない。反応条件、反応温度は上記したアルコールおよび/またはカルボン酸と同様な条件でおこなうことができる。
<エステル化合物>
本実施の形態におけるジアルキルスズ触媒とは、エステル化合物の製造において触媒作用を示す有機スズ化合物であるが、本実施の形態でいう用語「エステル化合物」とは、カルボン酸エステル、カルバミン酸エステル、イソシアン酸エステル、炭酸エステルである。
カルボン酸エステルとしては、酢酸エチル、酢酸プロピル(各異性体)、酢酸ブチル(各異性体)、酢酸ペンチル(各異性体)、酢酸ヘキシル(各異性体)、酢酸セチル、酢酸ビニル、2−エチルブチル−アセタート、2−エチルヘキシル−アセタート、2−ヒドロキシエチル−アセタート、2−メトキシエチル−アセタート、二酢酸メチレン、二酢酸エチレン、ジアセチン、トリアセチン、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソアミル、酪酸ビニル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸ビニル、ヘプタン酸エチル、オクタン酸エチル、ノナン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル;安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ジエチル、安息香酸ベンジル、二安息香酸エチレン、フタル酸ジエチル等の芳香族カルボン酸エステルを例示することができる。
カルバミン酸エステルとしては、N−メチルカルバミド酸エチル、N,N’−エチリデンジカルバミド酸ジエチル、N−アセチルカルバミド酸エチル、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジメチルエステル、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジエチルエステル、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジブチルエステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジペンチルエステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジヘキシルエステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジオクチルエステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジデシルエステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジフェニルエステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジ(メチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸ジ(エチルフェニル)エステル、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸−ビス−(ジメチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸−ビス−(ジブチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸−ビス−(ジペンチルフェニル)エステル(各異性体)、N,N’−ヘキサンジイル−ビス−カルバミン酸−ビス−(ジオクチルフェニル)エステル(各異性体)等のカルバミン酸エステルを例示することができる。
イソシアン酸エステルとしては、イソシアン酸エチル、イソシアン酸プロピル(各異性体)、イソシアン酸ブチル(各異性体)、イソシアン酸ペンチル(各異性体)、イソシアン酸ヘキシル(各異性体)、イソシアン酸へプチル(各異性体)、イソシアン酸オクチル(各異性体)、イソシアン酸ノニル(各異性体)、イソシアン酸デシル(各異性体)、イソシアン酸フェニル、イソシアン酸メチルフェニル(各異性体)、イソシアン酸エチルフェニル(各異性体)、イソシアン酸ブチルフェニル(各異性体)、イソシアン酸ペンチルフェニル(各異性体)、イソシアン酸ヘキシルフェニル(各異性体)、イソシアン酸ジメチルフェニル(各異性体)、イソシアン酸ジエチルフェニル(各異性体)、イソシアン酸ジブチルフェニル(各異性体)、イソシアン酸ナフチル(各異性体)、ジイソシアン酸ヘキサメチレン等のイソシアン酸エステルを例示することができる。
炭酸エステルとしては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸プロピル(各異性体)、炭酸ブチル(各異性体)、炭酸ジペンチル(各異性体)、炭酸ジヘキシル(各異性体)、炭酸ジペンチル(各異性体)、炭酸ジオクチル(各異性体)、炭酸ジノニル(各異性体)等の脂肪族炭酸エステル;炭酸ジフェニル、炭酸ジ(メチルフェニル)(各異性体)、炭酸ジ(エチルフェニル)、炭酸ジ(ブチルフェニル)(各異性体)等の芳香族炭酸エステルを挙げることができる。
これらのエステル化合物の中でも、炭酸エステルが好ましい。
また、本実施の形態におけるジアルキルスズ触媒の失活体組成物としては、二酸化炭素とジアルキルスズ触媒とから炭酸エステルを製造する過程において生成するジアルキルスズ触媒の失活体組成物が好ましく用いられる。
<失活体>
本明細書中では、上記のジアルキルスズ触媒に関連して、「ジアルキルスズ触媒の失活体」という語を使用するが、これについて説明する。
本実施の形態におけるジアルキルスズ触媒の失活体とは、上述のジアルキルスズ触媒より生成する、該ジアルキルスズ触媒とは異なる構造を有する有機スズ化合物であり、ジアルキルスズ触媒に比べて、該エステル化合物の製造における触媒作用が低下したものである。
該ジアルキルスズ触媒の失活体は、好ましくはジアルキルスズ触媒の熱失活体である。このようなジアルキルスズ触媒の失活体は、多くの場合、スズ原子に結合しているアルキル基の数が、0個、1個、3個、4個のいずれかの数に変化している。すなわち、ジアルキルスズ触媒は、前記に定義したように、1つのスズ原子に結合したアルキル基が2個であるが、失活体とは、1つのスズ原子に結合したアルキル基の数が、ジアルキルスズ触媒とは異なってしまった、ジアルキルスズ触媒に由来する有機スズ化合物である。ジアルキルスズ触媒の失活体は、例えば、該触媒がテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンの場合は、下記式(21)に示される不均化反応により、該触媒がジアルキルスズジアルコキシドの場合は、下記式(22)によって失活体が生成すると推測している。
Figure 2008044575
(式中、RおよびR’は、各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
全てのジアルキルスズ触媒の失活体について、その構造を同定することは難しいが、該失活体の少なくとも1種は、下記に示すトリアルキルスズ化合物である。例えば、下記式(23)で示されるトリアルキルスズ化合物が、失活したジアルキルスズ触媒に含まれ、該失活体に対して化学量論比でおよそ半分程度生成している場合が多い。本実施の形態でいうトリアルキルスズ化合物とは、スズ原子に3個のアルキル基が結合した有機スズ化合物であって、該アルキル基は、ジアルキルスズ触媒に由来するアルキル基である。
Figure 2008044575
(式中、R16、R17、R18、Xは、ジアルキルスズ触媒に由来する基であり、R16、R17、R18は、R、R、R、R、R、Rから選ばれ、Xは、X、X、X、Xから選ばれる基である。)
このようなトリアルキルスズ化合物の例としては、トリメチル−メトキシスズ、トリメチル−エトキシスズ、トリメチル−プロポキシスズ(各異性体)、トリメチル−ブトキシスズ(各異性体)、トリメチル−ペンチルオキシスズ(各異性体)、トリメチル−ヘキシルオキシスズ(各異性体)、トリメチル−ヘプチルオキシスズ(各異性体)、トリメチル−オクチルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジメチル−メトキシスズ(各異性体)、ブチル−ジメチル−エトキシスズ(各異性体)、ブチル−ジメチル−プロポキシスズ(各異性体)、ブチル−ジメチル−ブトキシスズ(各異性体)、ブチル−ジメチル−ペンチルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジメチル−ヘキシルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジメチル−ヘプチルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジメチル−オクチルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジメチル−ノニルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジメチル−デシルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−メチル−メトキシスズ、ジブチル−メチル−エトキシスズ(各異性体)、ジブチル−メチル−プロポキシスズ(各異性体)、ジブチル−メチル−ブトキシスズ(各異性体)、ジブチル−メチル−ペンチルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−メチル−ヘキシルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−メチル−ヘプチルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−メチル−オクチルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジエチル−メトキシスズ(各異性体)、ブチル−ジエチル−エトキシスズ(各異性体)、ブチル−ジエチル−プロポキシスズ(各異性体)、ブチル−ジエチル−ブトキシスズ(各異性体)、ブチル−ジエチル−ペンチルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジエチル−ヘキシルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジエチル−ヘプチルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジエチル−オクチルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−エチル−メトキシスズ(各異性体)、ジブチル−エチル−エトキシスズ(各異性体)、ジブチル−エチル−プロポキシスズ(各異性体)、ジブチル−エチル−ブトキシスズ(各異性体)、ジブチル−エチル−ペンチルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−エチル−ヘキシルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−エチル−ヘプチルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−エチル−オクチルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジプロピル−メトキシスズ(各異性体)、ブチル−ジプロピル−エトキシスズ(各異性体)、ブチル−ジプロピル−プロポキシスズ(各異性体)、ブチル−ジプロピル−ブトキシスズ(各異性体)、ブチル−ジプロピル−ペンチルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジプロピル−ヘキシルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジプロピル−ヘプチルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジプロピル−オクチルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−プロピル−メトキシスズ(各異性体)、ジブチル−プロピル−エトキシスズ(各異性体)、ジブチル−プロピル−プロポキシスズ(各異性体)、ジブチル−プロピル−ブトキシスズ(各異性体)、ジブチル−プロピル−ペンチルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−プロピル−ヘキシルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−プロピル−ヘプチルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−プロピル−オクチルオキシスズ(各異性体)、トリブチル−メトキシスズ、トリブチル−エトキシスズ、トリブチル−プロポキシスズ(各異性体)、トリブチル−ブトキシスズ(各異性体)、トリブチル−ペンチルオキシスズ(各異性体)、トリブチル−ヘキシルオキシスズ(各異性体)、トリブチル−ヘプチルオキシスズ(各異性体)、トリブチル−オクチルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジメチル−メトキシスズ(各異性体)、オクチル−ジメチル−エトキシスズ(各異性体)、オクチル−ジメチル−プロポキシスズ(各異性体)、オクチル−ジメチル−ブトキシスズ(各異性体)、オクチル−ジメチル−ペンチルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジメチル−ヘキシルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジメチル−ヘプチルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジメチル−オクチルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジメチル−ノニルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジメチル−デシルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−メチル−メトキシスズ(各異性体)、ジオクチル−メチル−エトキシスズ(各異性体)、ジオクチル−メチル−プロポキシスズ(各異性体)、ジオクチル−メチル−ブトキシスズ(各異性体)、ジオクチル−メチル−ペンチルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−メチル−ヘキシルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−メチル−ヘプチルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−メチル−オクチルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジエチル−メトキシスズ(各異性体)、オクチル−ジエチル−エトキシスズ(各異性体)、オクチル−ジエチル−プロポキシスズ(各異性体)、オクチル−ジエチル−ブトキシスズ(各異性体)、オクチル−ジエチル−ペンチルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジエチル−ヘキシルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジエチル−ヘプチルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジエチル−オクチルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−エチル−メトキシスズ(各異性体)、ジオクチル−エチル−エトキシスズ(各異性体)、ジオクチル−エチル−プロポキシスズ(各異性体)、ジオクチル−エチル−ブトキシスズ(各異性体)、ジオクチル−エチル−ペンチルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−エチル−ヘキシルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−エチル−ヘプチルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−エチル−オクチルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジプロピル−メトキシスズ(各異性体)、オクチル−ジプロピル−エトキシスズ(各異性体)、オクチル−ジプロピル−プロポキシスズ(各異性体)、オクチル−ジプロピル−ブトキシスズ(各異性体)、オクチル−ジプロピル−ペンチルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジプロピル−ヘキシルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジプロピル−ヘプチルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジプロピル−オクチルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−プロピル−メトキシスズ(各異性体)、ジオクチル−プロピル−エトキシスズ(各異性体)、ジオクチル−プロピル−プロポキシスズ(各異性体)、ジオクチル−プロピル−ブトキシスズ(各異性体)、ジオクチル−プロピル−ペンチルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−プロピル−ヘキシルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−プロピル−ヘプチルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−プロピル−オクチルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジブチル−メトキシスズ(各異性体)、オクチル−ジブチル−エトキシスズ(各異性体)、オクチル−ジブチル−プロポキシスズ(各異性体)、オクチル−ジブチル−ブトキシスズ(各異性体)、オクチル−ジブチル−ペンチルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジブチル−ヘキシルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジブチル−ヘプチルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジブチル−オクチルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ブチル−メトキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ブチル−エトキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ブチル−プロポキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ブチル−ブトキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ブチル−ペンチルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ブチル−ヘキシルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ブチル−ヘプチルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−ブチル−オクチルオキシスズ(各異性体)、トリオクチル−メトキシスズ(各異性体)、トリオクチル−エトキシスズ、トリオクチル−プロポキシスズ(各異性体)、トリオクチル−ブトキシスズ(各異性体)、トリオクチル−ペンチルオキシスズ(各異性体)、トリオクチル−ヘキシルオキシスズ(各異性体)、トリオクチル−ヘプチルオキシスズ(各異性体)、トリオクチル−オクチルオキシスズ(各異性体)等のトリアルキル−アルコキシスズ;トリメチル−アセトキシスズ、トリメチル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、トリメチル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、トリメチル−バレリルオキシスズ(各異性体)、トリメチル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジメチル−アセトキシスズ(各異性体)、ブチル−ジメチル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジメチル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジメチル−バレリルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジメチル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−メチル−アセトキシスズ(各異性体)、ジブチル−メチル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−メチル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−メチル−バレリルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−メチル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジエチル−アセトキシスズ(各異性体)、ブチル−ジエチル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジエチル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジエチル−バレリルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジエチル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−エチル−アセトキシスズ(各異性体)、ジブチル−エチル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−エチル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−エチル−バレリルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−エチル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジプロピル−アセトキシスズ(各異性体)、ブチル−ジプロピル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジプロピル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジプロピル−バレリルオキシスズ(各異性体)、ブチル−ジプロピル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−プロピル−アセトキシスズ(各異性体)、ジブチル−プロピル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−プロピル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−プロピル−バレリルオキシスズ(各異性体)、ジブチル−プロピル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)トリブチル−アセトキシスズ(各異性体)、トリブチル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、トリブチル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、トリブチル−バレリルオキシスズ(各異性体)、トリブチル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジメチル−アセトキシスズ(各異性体)、オクチル−ジメチル−プロピオニルオキシスズ、オクチル−ジメチル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジメチル−バレリルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジメチル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−メチル−アセトキシスズ(各異性体)、ジオクチル−メチル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−メチル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−メチル−バレリルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−メチル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジエチル−アセトキシスズ、オクチル−ジエチル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジエチル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジエチル−バレリルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジエチル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−エチル−アセトキシスズ(各異性体)、ジオクチル−エチル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−エチル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−エチル−バレリルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−エチル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジプロピル−アセトキシスズ(各異性体)、オクチル−ジプロピル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジプロピル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジプロピル−バレリルオキシスズ(各異性体)、オクチル−ジプロピル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−プロピル−アセトキシスズ(各異性体)、ジオクチル−プロピル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−プロピル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−プロピル−バレリルオキシスズ(各異性体)、ジオクチル−プロピル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)、トリオクチル−アセ
トキシスズ(各異性体)、トリオクチル−プロピオニルオキシスズ(各異性体)、トリオクチル−ブチリルオキシスズ(各異性体)、トリオクチル−バレリルオキシスズ(各異性体)、トリオクチル−ラウロリルオキシスズ(各異性体)等のトリアルキル−アシルオキシスズ;トリメチルクロロスズ、トリメチルブロモスズ、ブチル−ジメチルブロモスズ、ブチル−ジメチルブロモスズ(各異性体)、ジブチル−メチルクロロスズ(各異性体)、ジブチル−メチルブロモスズ(各異性体)、ブチルジエチルクロロスズ(各異性体)、ブチルジエチルブロモスズ(各異性体)、ジブチル−エチルクロロスズ(各異性体)、ジブチル−エチルブロモスズ(各異性体)、ブチル−ジプロピルクロロスズ(各異性体)、ブチル−ジプロピルブロモスズ(各異性体)、ジブチル−プロピルクロロスズ(各異性体)、ジブチル−プロピルブロモスズ(各異性体)、トリブチルクロロスズ(各異性体)、トリブチルブロモスズ(各異性体)、オクチル−ジメチルクロロスズ(各異性体)、オクチル−ジメチルブロモスズ(各異性体)、ジオクチル−メチルクロロスズ(各異性体)、ジオクチル−メチルブロモスズ(各異性体)、オクチル−ジエチルクロロスズ(各異性体)、オクチル−ジエチルブロモスズ(各異性体)、ジオクチル−エチルクロロスズ(各異性体)、ジオクチル−エチルブロモスズ(各異性体)、オクチル−ジプロピルクロロスズ(各異性体)、オクチル−ジプロピルブロモスズ(各異性体)、ジオクチル−プロピルクロロスズ(各異性体)、ジオクチル−プロピルブロモスズ(各異性体)、トリオクチルクロロスズ(各異性体)、トリオクチルブロモスズ(各異性体)等のハロゲン化トリアルキルスズなどが挙げられる。
ジアルキルスズ触媒の失活体には、上記式(23)で表されるトリアルキルスズ化合物の他に、構造を特定できない高沸点(例えば、50Paで250℃以上)のスズ成分が含有されている。このような構造を特定できない高沸点のスズ成分は、119Sn−NMRにおける化学シフトで特徴づけることができる。すなわち、ジアルキルスズ触媒の失活体の少なくとも1種は、重クロロホルム溶液中で119Sn−NMRにより分析した際に、テトラメチルスズ基準で、−220〜−610ppmに化学シフトを示すスズ原子を含有する有機スズ化合物である。すなわち、ジアルキルスズ触媒の失活体は、トリアルキルスズ化合物(ここでいうトリアルキルスズ化合物とは、スズ原子に3個のアルキル基が結合した有機スズ化合物であって、該アルキル基は、ジアルキルスズ触媒に由来するアルキル基である、有機スズ化合物をいう)、および重クロロホルム溶液中で119Sn−NMRにより分析した際にテトラメチルスズ基準で、−220〜−610ppmに化学シフトを示すスズ原子を含有する有機スズ化合物である。
式(7)および/または式(8)で表されるジアルキルスズ触媒は、重クロロホルム溶液中で119Sn−NMRにより分析した際に、テトラメチルスズ基準で、200〜−200ppmに化学シフトを示すスズ原子をもち、ジアルキルスズ触媒が変性して失活した結果、上記した範囲に化学シフトを示すスズ原子を有するスズ成分が検出される。殆どの場合、失活体組成物は、該−220〜−610ppmの範囲に複数のシグナルをもつことから、失活体組成物中には、式(21)および/または式(22)に例示した、モノアルキルアルコキシスズオキシド、モノアルキルスズトリアルコキシスズのみではなく、多くの場合、他の構造も含有していると推察される。しかし、このように失活体組成物は、構造が不明な化合物からなっているが、驚くべきことに本実施の形態の方法を用いれば、ジアルキルスズ化合物を製造することができることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
上記したように、119Sn−NMRにおける化学シフトで特徴付けられるスズ原子を含有する、ジアルキルスズ触媒の失活体についての詳細な構造は不明である。一方で、上記したように失活体にはトリアルキルスズ化合物が含まれていることから、アルキル基バランスを考慮すれば、式(21)および/または式(22)で示したように、例えば、モノアルキルスズ化合物が含有されていると推定できる。ここで、モノアルキルスズ化合物とは、1つのスズ原子に、ジアルキルスズ触媒に由来するアルキル基が1つ結合した有機スズ化合物である。モノアルキルスズ化合物としては、メチル−メトキシスズオキシド、メチル−エトキシスズオキシド、メチル−プロポキシスズオキシド(各異性体)、メチル−ブトキシスズオキシド(各異性体)、メチル−ペンチルオキシスズオキシド(各異性体)、メチル−ヘキシルオキシスズオキシド(各異性体)、メチル−ヘプチルオキシスズオキシド(各異性体)、メチル−オクチルオキシスズオキシド(各異性体)、ブチル−メトキシスズオキシド(各異性体)、ブチル−エトキシスズオキシド(各異性体)、ブチル−プロポキシスズオキシド(各異性体)、ブチル−ブトキシスズオキシド(各異性体)、ブチル−ペンチルオキシスズオキシド(各異性体)、ブチル−ヘキシルオキシスズオキシド(各異性体)、ブチル−ヘプチルオキシスズオキシド(各異性体)、ブチル−オクチルオキシスズオキシド(各異性体)、オクチル−メトキシスズオキシド(各異性体)、オクチル−エトキシスズオキシド(各異性体)、オクチル−プロポキシスズオキシド(各異性体)、オクチル−ブトキシスズオキシド(各異性体)、オクチル−ペンチルオキシスズオキシド(各異性体)、オクチル−ヘキシルオキシスズオキシド(各異性体)、オクチル−ヘプチルオキシスズオキシド(各異性体)、オクチル−オクチルオキシスズオキシド(各異性体)のモノアルキルアルコキシスズオキシド;メチル−トリメトキシスズ、メチル−トリエトキシスズ、メチル−トリプロポキシスズ(各異性体)、メチル−トリブトキシスズ(各異性体)、メチル−トリペンチルオキシスズ(各異性体)、メチル−トリヘキシルオキシスズ(各異性体)、メチル−トリヘプチルオキシスズ(各異性体)、メチル−トリオクチルオキシスズ(各異性体)、ブチル−トリメトキシスズ(各異性体)、ブチル−トリエトキシスズ(各異性体)、ブチル−トリプロポキシスズ(各異性体)、ブチル−トリブトキシスズ(各異性体)、ブチル−トリペンチルオキシスズ(各異性体)、ブチル−トリヘキシルオキシスズ(各異性体)、ブチル−トリヘプチルオキシスズ(各異性体)、ブチル−トリオクチルオキシスズ(各異性体)、オクチル−トリメトキシスズ(各異性体)、オクチル−トリエトキシスズ(各異性体)、オクチル−トリプロポキシスズ(各異性体)、オクチル−トリブトキシスズ(各異性体)、オクチル−トリペンチルオキシスズ(各異性体)、オクチル−トリヘキシルオキシスズ(各異性体)、オクチル−トリヘプチルオキシスズ(各異性体)、オクチル−トリオクチルオキシスズ(各異性体)のモノアルキル−トリアルコキシスズ;メチル−アセトキシスズオキシド、メチル−プロピオニルオキシスズオキシド(各異性体)、メチル−ブチリルオキシスズオキシド(各異性体)、メチル−バレリルオキシスズオキシド(各異性体)、メチル−ラウロリルオキシスズオキシド(各異性体)、ブチル−アセトキシスズオキシド、ブチル−プロピオニルオキシスズオキシド(各異性体)、ブチル−ブチリルオキシスズオキシド(各異性体)、ブチル−バレリルオキシスズオキシド(各異性体)、ブチル−ラウロリルオキシスズオキシド(各異性体)、オクチル−アセトキシスズオキシド(各異性体)、オクチル−プロピオニルオキシスズオキシド(各異性体)、オクチル−ブチリルオキシスズオキシド(各異性体)、オクチル−バレリルオキシスズオキシド(各異性体)、オクチル−ラウロリルオキシスズオキシド(各異性体)等のモノアルキル−アシルオキシスズオキシド;メチル−トリアセトキシスズ、メチル−トリプロピオニルオキシスズ(各異性体)、メチル−トリブチリルオキシスズ(各異性体)、メチル−トリバレリルオキシスズ(各異性体)、メチル−トリラウロリルオキシスズ(各異性体)、ブチル−トリアセトキシスズ(各異性体)、ブチル−トリプロピオニルオキシスズ(各異性体)、ブチル−トリブチリルオキシスズ(各異性体)、ブチル−トリバレリルオキシスズ(各異性体)、ブチル−トリラウロリルオキシスズ(各異性体)、オクチル−トリアセトキシスズ(各異性体)、オクチル−トリプロピオニルオキシスズ(各異性体)、オクチル−トリブチリルオキシスズ(各異性体)、オクチル−トリバレリルオキシスズ(各異性体)、オクチル−トリラウロリルオキシスズ(各異性体)等のモノアルキル−トリアシルオキシスズ;メチルクロロスズオキシド、メチルブロモスズオキシド、ブチルクロロスズオキシド、ブチルブロモスズオキシド、オクチルクロロスズオキシド、オクチルブロモスズオキシド等のハロゲン化モノアルキルスズオキシド等のモノアルキルスズ化合物などが例示される。
ジアルキルスズ触媒の失活体構造は、上記した例以外の構造をとることも容易に推定される。さらに、スタノキサン骨核を形成することで、スズに2つのアルキル基が結合したユニットと、スズに2以外の整数でアルキル基が結合したユニット(失活体成分ユニット)からなる化合物が生成していてもよい。上記した例と併せて、下記に推定される失活体および/または失活体成分ユニットを含む失活体化合物構造を示す。
Figure 2008044575
(式中、RおよびXは、ジアルキルスズ触媒に由来する基であり、Rは、R、R、R、R、R、Rから選ばれ、Xは、X、X、X、Xから選ばれる基である。)
本実施の形態でいうジアルキルスズ触媒の失活体組成物とは、上記した失活体を含有する組成物である。すなわち、ジアルキルスズ触媒と、該ジアルキルスズ触媒の失活体混合物でも構わないし、失活体のみからなる組成物であっても構わない。また、上記したように、失活体(すなわち、1つのスズ原子に結合したアルキル基の数が、ジアルキルスズ触媒とは異なってしまった、ジアルキルスズ触媒に由来する有機スズ化合物である)と、1つのスズ原子に結合したアルキル基が2個である成分とが共有結合した成分であっても構わない。本実施の形態で好ましく使用できる失活体組成物とは、ジアルキルスズ触媒の失活体組成物中に含有されるアルキルスズ化合物の全スズ原子のモル数に対して、アルキルスズ化合物のスズ原子に結合するアルキル基の個数が2以外である失活体の含有量をモル%で表して、10mol%以上、好ましくは30mol%以上、さらに好ましくは50mol%以上を含有する失活体組成物であって、該失活体が蓄積および/または濃縮された失活体組成物である。
ジアルキルスズ触媒の失活体組成物には、場合によっては、ジアルキルスズ触媒、テトラアルキルスズ、酸化スズ(SnO)等が含まれることがあるが、本発明の趣旨に反しない程度にこれらの化合物が含有されていることは差し支えない。
また、ジアルキルスズ触媒の失活体組成物から、トリアルキルスズ化合物を含む組成物と、重クロロホルム溶液中で119Sn−NMRにより分析した際にテトラメチルスズ基準で、−220〜−610ppmに化学シフトを示すスズ原子を含有する化合物を含む組成物とを分離した組成物を用いて、後述するアルキル基再分配反応および/または脱アルキル基反応をおこなうこともできる。
ジアルキルスズ触媒の失活体組成物から、トリアルキルスズ化合物を含む組成物と、重クロロホルム溶液中で119Sn−NMRにより分析した際にテトラメチルスズ基準で、−220〜−610ppmに化学シフトを示すスズ原子を含有する化合物を含む組成物とを分離する方法としては、蒸留分離、抽出分離、膜分離から選ばれる少なくとも1つの方法を用いることができ、中でも蒸留分離の方法が好ましく使用される。
<ジアルキルスズ触媒の失活体組成物>
本実施の形態に使用されるジアルキルスズ触媒の失活体組成物として、ジアルキルスズ触媒を用いて炭酸エステルを製造する過程において得られるジアルキルスズ触媒の失活体組成物、とりわけ、ジアルキルスズアルコキシド触媒と二酸化炭素との反応により炭酸エステルを製造する過程において得られる、ジアルキルスズアルコキシド触媒の失活体を含む組成物を使用することができる。ここで、ジアルキルスズアルコキシド触媒とは、上述したジアルキルジアルコキシスズおよび/またはテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンをいい、好ましくは、上記式(7)で表されるジアルキルスズ化合物および上記式(8)で表されるテトラアルキルジスタンオキサン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物から選ばれる化合物であって、式(7)のXおよびX、および式(8)のXおよびXがアルコキシ基である化合物が使用される。このような炭酸エステルを製造する過程について、以下に例を示す。
まず、ジアルキルスズジアルコキシド触媒をジアルキルスズジアルコキシド触媒に対して化学量論比で1〜50の二酸化炭素を常圧〜200MPaの圧力範囲にて接触させ、ジアルキルスズジアルコキシド触媒の二酸化炭素付加体を形成させる。続いて20℃〜300℃の温度範囲、10分〜500時間の範囲にてジアルキルスズジアルコキシド触媒の二酸化炭素付加体の熱分解を行い、炭酸エステルとジアルキルスズアルコキシド触媒とジアルキルスズアルコキシド触媒の失活体を含有する混合物を得る。本実施の形態では、このような炭酸エステルとジアルキルスズアルコキシド触媒とジアルキルスズアルコキシド触媒の失活体を含有する混合物をジアルキルスズ触媒の失活体組成物として使用してもよい。また、該混合物から濾過や溶媒抽出法や蒸留、膜分離などの方法によって一部または全部の炭酸エステルを除去して得られる炭酸エステルとジアルキルスズアルコキシド触媒とジアルキルスズアルコキシド触媒の失活体を含有する混合物をジアルキルスズ触媒の失活体組成物として使用することもできる。
さらに、本発明者らが先に開示した、ジアルキルスズアルコキシド触媒と二酸化炭素との反応により炭酸エステルを製造する過程において得られる、ジアルキルスズ触媒の失活体組成物に炭酸エステルを反応させて製造された、ジアルキルスズジアルコキシドを含有する混合物(WO 2007/097388号公報参照)からジアルキルスズジアルコキシドを回収した残りの部分を、本実施の形態におけるジアルキルスズ触媒の失活体組成物として使用することもできる。
<アルキル基再分配反応>
本実施の形態におけるアルキル基再分配反応について説明する。
本実施の形態におけるアルキル基再分配反応とは、1つのスズ原子に結合しているアルキル基の数が2以上異なる2種以上の有機スズ化合物を反応させて、1つのスズ原子に結合しているアルキル基の数を平均化させる反応であり、該アルキル基再分配反応は平衡反応である。詳細な反応機構は不明であるが、下記式(24)のように、1つのスズ原子に結合しているアルキル基が3個である有機スズ化合物と、1つのスズ原子に結合しているアルキル基が1個である有機スズ化合物との反応により、1つのスズ原子に結合しているアルキル基が2個である有機スズ化合物を生成するものと推測している。
Figure 2008044575
(式中、Rは直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基を表し、Yはアルキル基以外の基を表す。)
該アルキル基再分配反応は、1つのスズ原子に結合しているアルキル基の数が2以上異なる2種以上の有機スズ化合物の混合物を加熱処理することにより進行する。
該加熱処理は、好ましくは20℃〜300℃の温度範囲で行われ、反応を早く進めたい場合や、ジアルキル体の濃度を多く得たい場合には、平衡を右にずらすためには反応温度が高いことが有利であり、より好ましくは50℃〜280℃、反応速度を高めるためには加熱処理温度は高温が好ましいが、一方で、高温では分解等の好ましくない反応も起こる場合もあり、収率が低下することもあるので、さらに好ましくは80℃〜260℃の温度範囲で行われる。20℃より低い温度では反応時間が長期になる場合があり、300℃より高い場合は分解等の有機スズ化合物の変性により、ジアルキルスズ化合物の収率が低下する場合がある。反応時間は、使用する化合物や、加熱処理温度によって異なるが、0.001〜50時間、好ましくは0.01〜10時間、工業的な生産性を考慮すれば0.1〜2時間となるように反応温度等を設定しておこなう。反応の終了は119Sn−NMR等を用いて所望のジアルキルスズ化合物が得られていれば終了してよい。後記するように、本実施の形態のアルキル基再分配反応は平衡反応と推定しており、1つのスズ原子に結合したアルキル基が2個であるスズ化合物を原系よりも高められた濃度で得るために、使用する化合物の平衡濃度を温度に対して測定し、原系よりも生成系の濃度が高くなるような温度領域で、あるいは後記する方法によって、置換基を変換して、生成系でのジアルキルスズ化合物濃度が高くなるように実施する。また、高温で(例えば、150℃以上)で加熱処理した場合、反応後、冷却に時間を要するとジアルキルスズ化合物の収率が低下する場合がある。これは、反応系が、冷却過程で低温での平衡濃度に近づこうとするためであり、高温で加熱処理した後は速やかに冷却することが好ましい。反応液の冷却方法は、公知の方法が好ましく使用でき、例えばブラインによる方法や、加熱処理槽よりも低圧の反応器へフラッシュする方法などが好ましく使用できる。
該アルキル基再分配反応は、金属ハロゲン化物触媒存在下においても不在下においても行うことができる。金属ハロゲン化物触媒の例としては、塩化スズ(II)、塩化水銀(II)、塩化鉛(II)、フッ化水銀(II)、フッ化鉛(II)、フッ化スズ(II)、ヨウ化スズ(II)、ヨウ化鉛(II)ヨウ化水銀(II)、臭化スズ(II)、臭化水銀(II)、臭化鉛(II)などが挙げられ、これらの金属ハロゲン化物を単独でも2種類以上の混合物でも使用することができる。これらの金属ハロゲン化物は熱処理に使用される溶液に対して0.1重量%〜10重量%の範囲で好適に使用できる。
該アルキル基再分配反応において、溶媒を用いる必要はないが、流動性を向上させる、あるいは反応操作を容易にする目的で溶媒を用いることができる。このような溶媒として、例えば、炭素数5〜16の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素、炭素数4〜16の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素からなるエーテル類、炭素数1〜16の直鎖状、分岐状、環状のハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。具体的には、ペンタン(各異性体)、ヘキサン(各異性体)、ヘプタン(各異性体)、オクタン(各異性体)、ノナン(各異性体)、デカン(各異性体)、ヘキサデカン(各異性体)、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン(各異性体)、エチルベンゼンなどから選ばれる鎖状、環状の炭化水素;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル(各異性体)、ジブチルエーテル(各異性体)、ジヘキシルエーテル(各異性体)、ジオクチルエーテル(各異性体)、ジフェニルエーテルなどから選ばれるエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、テトラクロロエタン、ジクロロベンゼン(異性体)などから選ばれるハロゲン化炭化水素類を用いることができる。これらの溶媒は単独でも2種類以上の混合物として使用することができる。流動性を向上させる、あるいは反応操作を容易にする、あるいは反応において生成する場合に該水を効率よく系外に除去する目的で溶媒を用いることができる。このような溶媒として、例えば、炭素数5〜16の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素;炭素数4〜16の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素からなるエーテル類;炭素数1〜16の直鎖状、分岐状、環状のハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。具体的には、ペンタン(各異性体)、ヘキサン(各異性体)、ヘプタン(各異性体)、オクタン(各異性体)、ノナン(各異性体)、デカン(各異性体)、ヘキサデカン(各異性体)、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン(各異性体)、エチルベンゼンなどから選ばれる鎖状、環状の炭化水素;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル(各異性体)、ジブチルエーテル(各異性体)、ジヘキシルエーテル(各異性体)、ジオクチルエーテル(各異性体)、ジフェニルエーテルなどから選ばれるエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、テトラクロロエタン、ジクロロベンゼン(異性体)などから選ばれるハロゲン化炭化水素類を用いることができる。これらの溶媒は単独でも2種類以上の混合物として使用することもできる。
また、該アルキル基再分配反応において、後述する脱アルキル基反応を同時におこなってジアルキルスズ化合物を得ても差し支えない。
上述のように、該アルキル基再分配反応は平衡反応であると推定している。本発明者らが鋭意検討した結果、驚くべきことに、上記平衡が、原系と生成系のどちらに偏っているかは、スズ原子に結合している置換基および/または該アルキル基再分配反応を実施する温度に依存していることを見いだした。スズ原子に結合している置換基について述べると、例えば、スズ原子に結合している、ジアルキルスズ触媒に由来するアルキル基以外の基について、該基の共役酸のpKaが0〜6.8の場合、多くの場合、平衡は生成系に偏っており、反対に、該基の共役酸のpKaが6.8〜25の場合、多くの場合、平衡は原系に偏っていることをつきとめた。また、共役酸のpKaが0〜6.8の場合では、高温ほど生成系側に平衡が偏っていることを見いだした。
すなわち、発明者らは、上記発見から、ジアルキルスズ触媒の失活体から、ジアルキルスズ化合物を再生(アルキル基再分配させる)する方法を発想し、本発明をするに至った。ジアルキルスズ触媒の失活体がSn−Y結合を有する場合は、ジアルキルスズ触媒の失活体を加熱処理することにより、ジアルキルスズ化合物を製造することができる。ここでYは、Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8のYである。
一方、ジアルキルスズ触媒の失活体が、Sn−Y結合を有しない場合、すなわち、ジアルキルスズ触媒の失活体のスズ原子に結合している、ジアルキルスズ触媒に由来するアルキル基以外の基について、該基の共役酸のpKaが6.9以上25以下の場合、加熱処理をおこなう前に、下記工程(A)をおこなうことにより、ジアルキルスズ化合物を製造することが可能となる。
工程(A):(置換基変換工程)該失活体の置換基のうち、ジアルキルスズ触媒に由来するアルキル基を除く基について、該基の一部または全部を置換基Yに置換して、Sn−Y結合を有する有機スズ化合物を得る。
ここでYは、上述したように、Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8のYである。
ここで、工程(A)について説明する。
工程(A)は、ジアルキルスズ触媒の失活体組成物と下記式(25)で表される酸および/または下記式(26)で表される酸無水物を反応させて、1つのスズ原子に3個のアルキル基と、1個の、酸および/または酸無水物に由来する基Yが結合した、Sn−Y結合を有する有機スズ化合物と、1つのスズ原子に1個のアルキル基と1〜3の整数から選ばれる数の、酸および/または酸無水物に由来する基Yが結合した、Sn−Y結合を有する有機スズ化合物を製造する工程である。
上述のように、酸は下記式(25)で表されるものが好ましく使用される。
Figure 2008044575
(式中、Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8のYである。)
このような酸としては、有機酸、無機酸のいずれが用いられてもよい。無機酸としては、ハロゲン化水素、ハロゲン化水素酸、硫酸、硝酸、燐酸、炭酸を例示することができ、好ましくはハロゲン化水素、さらに好ましくは塩化水素が使用される。有機酸としては、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、フェノール、エノール、チオフェノール、イミド、オキシム、芳香族スルホンアミド等を例示することができるが、好ましくはカルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、フェノールが使用され、より好ましくはカルボン酸が使用される。カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、2−メチルブタン酸、ピバリン酸、ヘキサン酸、イソカプロン酸、2−エチルブタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、ヘプタン酸(各異性体)、オクタン酸(各異性体)、ノナン酸(各異性体)、デカン酸(各異性体)、ウンデカン酸(各異性体)、ドデカン酸(各異性体)、テトラデカン酸(各異性体)、ヘキサデカン酸(各異性体)、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ビニル酢酸、メタクリル酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、アリル酢酸、ウンデセン酸(各異性体)等の飽和もしくは不飽和脂肪族モノカルボン酸化合物;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヘプタン二酸(各異性体)、オクタン二酸(各異性体)、ノナン二酸(各異性体)、デカン二酸(各異性体)、マレイン酸、フマル酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、ペンテン二酸(各異性体)、イタコン酸、アリルマロン酸等の飽和もしくは不飽和脂肪族ジカルボン酸;1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,2,3−プロペントリカルボン酸、2,3−ジメチルブタン−1,2,3−トリカルボン酸等の飽和もしくは不飽和脂肪族トリカルボン酸化合物;安息香酸、メチル安息香酸(各異性体)、エチル安息香酸(各異性体)、プロピル安息香酸(各異性体)、ジメチル安息香酸(各異性体)、トリメチル安息香酸(各異性体)等の芳香族者カルボン酸化合物;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、メチルイソフタル酸(各異性体)等の芳香族ジカルボン酸化合物;ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸等の芳香族トリカルボン酸化合物等を挙げることができる。これらのカルボン酸の中でも、飽和モノカルボン酸が好ましく使用される。より好ましくは、標準沸点が300℃以下の飽和モノカルボン酸、さらに好ましくは標準沸点が250℃以下の飽和ものカルボン酸が使用される。標準沸点とは、化学大辞典(共立出版株式会社、2003年10月1日発行)に記載されているように、1気圧における沸点を指す。具体的には、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、2−メチルブタン酸、ピバリン酸、ヘキサン酸が好ましく使用される。
工程(A)において、上述のように、下記式(26)で表される酸無水物も好ましく使用される。
Figure 2008044575
(式中、Yは、Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8のYであり、
Oは、酸素原子を表す。)
このような酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水イソ吉草酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水プロピオン酸、無水グルタル酸等の脂肪族無水物;無水安息香酸、無水フタル酸、無水ピロメリト酸等の芳香族酸無水物を挙げることができる。これらの中でも、好ましくは標準沸点が300℃以下の酸無水物が使用され、反応後、過剰の酸無水物の除去を容易にするため、さらに好ましくは標準沸点が200℃以下の酸無水物が使用される。さらに、副生するカルボン酸エステルや、アシルハライド等を系外へ除去することが容易であり、工業的に容易に入手できるという点から、無水マレイン酸、無水酢酸が好ましい。
これらの酸および酸無水物は単独でも複数種を混合しても用いることができるが、酸を使用する場合、ジアルキルスズ触媒の失活体と酸を反応させた場合、水が生成する場合が多い。該水を除去するために、蒸留分離や膜分離をおこなったり、脱水剤を使用してもよい。また、脱水剤として酸無水物を組み合わせて使用するのも好ましい。さらに、酸無水物のみを使用する場合は、ジアルキルスズ触媒の失活体組成物と無水酢酸との反応において水が生成しない場合が多いことから、酸無水物のみを使用する方法も好ましい。
酸および/または酸無水物の使用量は、工程(A)における反応速度や最終的なジアルキルスズ化合物の収率を勘案して、ジアルキルスズ触媒の失活体組成物に含有されるスズ原子に対して化学量論比で0.1〜50倍の範囲を使用することが好ましく、反応器の大きさや、反応速度を考慮すれば0.5〜20倍の範囲を使用することがさらに好ましい。化学量論比で0.1より少ない場合反応が進行しにくい場合があり、逆に化学量論比で50倍より多く使用しても当該工程における反応速度や最終的なジアルキルスズ化合物の収率に影響を与えない場合が多い。
工程(A)の反応は、好ましくは−20℃以上300℃以下の反応温度で実施し、より好ましくは−10℃以上250℃以下の反応温度で実施し、反応速度を高めるためには反応温度は高温が好ましいが、一方で、高温では分解等の好ましくない反応も起こる場合もあり、収率が低下することもあるので、さらに好ましくは0℃以上230℃以下の反応温度で実施する。また、工程(A)の反応は、アルゴン、ネオン、窒素などの不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
工程(A)では溶媒を用いる必要はないが、流動性を向上させる、あるいは反応操作を容易にする、あるいは反応において生成する場合に該水を効率よく系外に除去する目的で溶媒を用いることができる。このような溶媒として、例えば、炭素数5〜16の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素;炭素数4〜16の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素からなるエーテル類;炭素数1〜16の直鎖状、分岐状、環状のハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。具体的には、ペンタン(各異性体)、ヘキサン(各異性体)、ヘプタン(各異性体)、オクタン(各異性体)、ノナン(各異性体)、デカン(各異性体)、ヘキサデカン(各異性体)、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン(各異性体)、エチルベンゼンなどから選ばれる鎖状、環状の炭化水素;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル(各異性体)、ジブチルエーテル(各異性体)、ジヘキシルエーテル(各異性体)、ジオクチルエーテル(各異性体)、ジフェニルエーテルなどから選ばれるエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、テトラクロロエタン、ジクロロベンゼン(異性体)などから選ばれるハロゲン化炭化水素類を用いることができる。これらの溶媒は単独でも2種類以上の混合物として使用することもできる。
上記した本実施の形態のアルキル基再分配反応によるジアルキルスズ化合物を製造する最適な方法は、上記したジアルキルスズ触媒の置換基の共役酸のpKaが6.8〜25であるジアルキルスズ触媒の失活体組成物を、該置換基を上記Yに変換し、更に高温で熱処理することが好ましい。本実施の形態のアルキル基再分配反応は、平衡反応であり、平衡反応の一般的な性質から、高濃度(例えば、ジアルキルスズ触媒の失活体組成物中に含有されるアルキルスズ化合物の全スズ原子のモル数に対して、アルキルスズ化合物のスズ原子に結合するアルキル基の個数が2以外である失活体の含有量をモル%で表して、10mol%以上、好ましくは30mol%以上、更に好ましくは50mol%以上を含有する失活体組成物)で該失活体が蓄積および/または濃縮された失活体組成物を使用して、上記操作による実施の形態のアルキル基再分配反応をおこなうことが好ましい。
<ジアルキルスズ触媒の失活体組成物よりトリアルキルスズ化合物を分離する場合>
工程(A)を実施する前に、ジアルキルスズ触媒の失活体組成物から、トリアルキルスズ化合物を含む組成物と、重クロロホルム溶液中で119Sn−NMRにより分析した際にテトラメチルスズ基準で、−220〜−610ppmに化学シフトを示すスズ原子を含有する化合物を含む組成物とを分離する場合について説明する。
ジアルキルスズ触媒の失活体組成物を分離した場合、それぞれの組成物を、異なる温度条件下において、酸および/または酸無水物を反応させることができる。
ジアルキルスズ触媒の失活体組成物から分離された、トリアルキルスズ化合物を含む組成物と、酸および/または酸無水物とを反応させる際の温度は、−20℃以上100℃以下が好ましく、−10℃以上85℃以下がより好ましく、反応速度を高めるためには反応温度は高温が好ましいが、一方で、高温では分解等の好ましくない反応も起こる場合もあり、収率が低下することもあるので、0℃以上70℃以下がさらに好ましい。一方、ジアルキルスズ触媒の失活体組成物から分離された、重クロロホルム溶液中で119Sn−NMRにより分析した際にテトラメチルスズ基準で、−220〜−610ppmに化学シフトを示すスズ原子を含有する有機スズ化合物を含む組成物と、酸および/または酸無水物とを反応させる際の温度は、−20℃以上300℃以下が好ましく、−10℃以上250℃以下がより好ましく、反応速度を高めるためには反応温度は高温が好ましいが、一方で、高温では分解等の好ましくない反応も起こる場合もあり、収率が低下することもあるので、0℃以上230℃以下がさらに好ましい。それぞれの反応生成物は1つに混合された後、加熱処理がおこなわれ、ジアルキルスズ化合物が製造される。
<未反応物・副生物の除去>
工程(A)において、ジアルキルスズ触媒の失活体組成物と、酸および/または酸無水物とを反応させて得られる反応生成物は、そのまま加熱処理がおこなわれてもよいし、未反応の酸および/または酸無水物、および/または、反応により生成したスズ原子を含有しない有機化合物を除去したのち、加熱処理がおこなわれてもよい。未反応の酸および/または酸無水物、および/または、反応により生成したスズ原子を含有しない有機化合物の除去方法としては、濾過、蒸留分離、膜分離、溶媒抽出等の公知の方法を用いることができる。
<脱アルキル基反応>
本実施の形態における脱アルキル基反応について説明する。
本発明者らが鋭意検討した結果、驚くべきことに、ジアルキルスズ触媒の失活体組成物と特定の酸とを反応させると、該失活体に含まれているトリアルキルスズ成分(スズ原子に3つのアルキル基が結合した有機スズ化合物)からジアルキルスズ化合物を容易に得られるということを見いだした。以下に該脱アルキル基反応について詳細に説明する。
本実施の形態における脱アルキル基反応とは、ジアルキルスズ触媒の失活体組成物と、酸および/または酸無水物とを反応させて、スズ原子に結合しているアルキル基を脱離させて、スズ原子に、酸および/または酸無水物に由来する基Yが結合した、Sn−Y結合を有する有機スズ化合物を生成する反応である。該アルキル基反応の詳細な反応機構は不明であるが、例えば、下記式(27)のように、トリアルキルスズ化合物と酸HYとの反応により、Sn−Y結合を有するジアルキルスズ化合物が生成すると推測している。
Figure 2008044575
(式中、Rは直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基を、Yはアルキル基以外の基を表す。)
該脱アルキル基反応において使用される酸としては、下記式(25)で表される酸が好適である。
Figure 2008044575
(式中、Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8のYである。)
このような酸としては、有機酸、無機酸のいずれが用いられてもよい。無機酸としては、ハロゲン化水素、ハロゲン化水素酸、硫酸、硝酸、燐酸、炭酸を例示することができ、好ましくはハロゲン化水素、さらに好ましくは塩化水素が使用される。有機酸としては、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、フェノール、エノール、チオフェノール、イミド、オキシム、芳香族スルホンアミド等を例示することができるが、好ましくはカルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、フェノールが使用され、より好ましくはカルボン酸が使用される。カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、2−メチルブタン酸、ピバリン酸、ヘキサン酸、イソカプロン酸、2−エチルブタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、ヘプタン酸(各異性体)、オクタン酸(各異性体)、ノナン酸(各異性体)、デカン酸(各異性体)、ウンデカン酸(各異性体)、ドデカン酸(各異性体)、テトラデカン酸(各異性体)、ヘキサデカン酸(各異性体)、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ビニル酢酸、メタクリル酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、アリル酢酸、ウンデセン酸(各異性体)等の飽和もしくは不飽和脂肪族モノカルボン酸化合物;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヘプタン二酸(各異性体)、オクタン二酸(各異性体)、ノナン二酸(各異性体)、デカン二酸(各異性体)、マレイン酸、フマル酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、ペンテン二酸(各異性体)、イタコン酸、アリルマロン酸等の飽和もしくは不飽和脂肪族ジカルボン酸;1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,2,3−プロペントリカルボン酸、2,3−ジメチルブタン−1,2,3−トリカルボン酸等の飽和もしくは不飽和脂肪族トリカルボン酸化合物;安息香酸、メチル安息香酸(各異性体)、エチル安息香酸(各異性体)、プロピル安息香酸(各異性体)、ジメチル安息香酸(各異性体)、トリメチル安息香酸(各異性体)等の芳香族者カルボン酸化合物;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、メチルイソフタル酸(各異性体)等の芳香族ジカルボン酸化合物;ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸等の芳香族トリカルボン酸化合物等を挙げることができる。これらのカルボン酸の中でも、飽和モノカルボン酸が好ましく使用される。より好ましくは、標準沸点が300℃以下の飽和モノカルボン酸、さらに好ましくは標準沸点が250℃以下の飽和ものカルボン酸が使用される。具体的には、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、2−メチルブタン酸、ピバリン酸、ヘキサン酸が好ましく使用される。
また、該脱アルキル基反応において、下記式(26)で表される酸無水物も好適に使用される。
Figure 2008044575
(式中、Yは、Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8のYであり、
Oは、酸素原子を表す。)
このような酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水イソ吉草酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水プロピオン酸、無水グルタル酸等の脂肪族無水物;無水安息香酸、無水フタル酸、無水ピロメリト酸等の芳香族酸無水物を挙げることができる。これらの中でも、好ましくは標準沸点が300℃以下の酸無水物が使用され、反応後、過剰の酸無水物の除去を容易にするため、さらに好ましくは標準沸点が200℃以下の酸無水物が使用される。さらに、副生するカルボン酸エステルや、アシルハライド等を系外へ除去することが容易であり、工業的に容易に入手できるという点から、無水マレイン酸、無水酢酸が好ましい。
これらの酸および酸無水物は単独でも複数種を混合しても用いることができる。
酸および/または酸無水物の使用量は、脱アルキル基反応における反応速度や最終的なジアルキルスズ化合物の収率を勘案して、ジアルキルスズ触媒の失活体組成物に含有されるスズ原子に対して化学量論比で0.1〜50倍の範囲を使用することが好ましく、反応器の大きさや、反応速度を考慮すれば0.5〜20倍の範囲を使用することが更に好ましい。化学量論比で0.1より少ない場合反応が進行しにくい場合があり、逆に化学量論比で50倍より多く使用しても該脱アルキル基反応における反応速度や最終的なジアルキルスズ化合物の収率に影響を与えない場合が多い。
該脱アルキル基反応は、好ましくは−20℃以上300℃以下の反応温度で実施し、より好ましくは−10℃以上250℃以下の反応温度で実施し、反応速度を高めるためには反応温度は高温が好ましいが、一方で、高温では分解等の好ましくない反応も起こる場合もあり、収率が低下することもあるので、更に好ましくは0℃以上230℃以下の反応温度で実施される。また、脱アルキル基反応は、アルゴン、ネオン、窒素などの不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
該脱アルキル基反応では、溶媒を用いる必要はないが、流動性を向上させる、あるいは反応操作を容易にする、あるいは反応において生成する場合に該水を効率よく系外に除去する目的で溶媒を用いることができる。このような溶媒として、例えば、炭素数5〜16の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素;炭素数4〜16の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素からなるエーテル類;炭素数1〜16の直鎖状、分岐状、環状のハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。具体的には、ペンタン(各異性体)、ヘキサン(各異性体)、ヘプタン(各異性体)、オクタン(各異性体)、ノナン(各異性体)、デカン(各異性体)、ヘキサデカン(各異性体)、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン(各異性体)、エチルベンゼンなどから選ばれる鎖状、環状の炭化水素;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル(各異性体)、ジブチルエーテル(各異性体)、ジヘキシルエーテル(各異性体)、ジオクチルエーテル(各異性体)、ジフェニルエーテルなどから選ばれるエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、テトラクロロエタン、ジクロロベンゼン(異性体)などから選ばれるハロゲン化炭化水素類を用いることができる。これらの溶媒は単独でも2種類以上の混合物として使用することもできる。
該脱アルキル基反応において、上述したアルキル基再分配反応を同時におこなっても差し支えない。該脱アルキル基反応は平衡反応ではなく、アルキル基再分配反応は平衡反応であるので、場合に応じて両反応を組み合わせて実施する。
<ジアルキルスズ化合物>
以上で説明した、アルキル基再分配反応および/または脱アルキル基反応により製造されるジアルキルスズ化合物は、その構造が、下記式(13)で表されるジアルキルスズ化合物および下記式(14)で表されるテトラアルキルジスタンオキサン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を包含する化合物である。
Figure 2008044575
(式中、RおよびRは、ジアルキルスズ触媒に由来する基であり、各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基を表し、
Yは、ジアルキルスズ触媒に由来する基、または、酸(HY)および/または酸無水物(YOY)に由来する基であって、Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8のYであり、
iおよびjは、各々0〜2の整数であり、i+j=2である。)
Figure 2008044575
(式中、R、R10、R11およびR12は、ジアルキルスズ触媒に由来する基であり、各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基を表し、
Yは、ジアルキルスズ触媒に由来する基、または、酸(HY)および/または酸無水物(YOY)に由来する基であって、Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8のYであり、
k、l、m、nは、各々0〜2の整数であり、k+l=2、m+n=2である。)
<ジアルキルスズ化合物を原料とするジアルキルスズ触媒の製造>
以上の方法により製造されたジアルキルスズ化合物を原料として、工程(I)の方法によりジアルキルスズ触媒を製造することができる。
工程(I):Sn−Y結合を有するジアルキルスズ化合物の置換基Yを、アルコキシ基、アシルオキシル基およびハロゲン原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基に置換する工程。
該工程(I)は、好ましくは、下記工程(I−1)〜(I−2)を含む工程である。
工程(I−1):(加水分解工程)Sn−Y結合を有するジアルキルスズ化合物にアルカリ水溶液を加えて加水分解して、ジアルキル酸化スズを含有する組成物を得る工程;
工程(I−2):工程(I−1)で得られたジアルキル酸化スズを含有する組成物と、アルコール、カルボン酸およびハロゲン化水素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を反応させ、発生する水を含む成分を反応液より除去する工程。
以下、該工程(I−1)〜(I−2)について説明する。
工程(I−1)は、アルキル基再分配反応および/または脱アルキル基反応により得られたジアルキルスズ化合物に、アルカリ水溶液を加えて、ジアルキル酸化スズを含有する組成物を得る工程である。ここでは、アルカリ水溶液とは、アルカリが水に溶解した水溶液を指す。アルカリとは、化学大辞典1(共立出版株式会社、縮刷版第38刷)に記載のように水酸化物MOHの形式をとり水に溶解する物質の総称である。Mはアルキル金属やアンモニウム基を指すが、広義ではカルシウムやバリウムの水酸化物を指すほか、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、リン酸ナトリウムなども含めて用いられる。
該工程(I−1)で用いられるアルカリ水溶液はその溶液のpHが7より大きいものであれば特に限定されないが、例えば、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化セシウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸アンモニウム水溶液、リン酸ナトリウム水溶液が挙げられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液が好ましく使用される。これらのアルカリ水溶液は単独で使用しても2種類以上を混合して使用してもよい。アルカリ水溶液の使用量は沈殿物の生成に充分な量であれば特に限定されないが、アルキル基再分配反応および/または脱アルキル基反応により得られるジアルキルスズ化合物を含有する混合物と重量比で1〜10倍量を使用するのが好適である。
該工程(I−1)が実施される温度は、特に限定されないが、好ましくは−10℃〜100℃、より好ましくは−5℃〜50℃、反応速度を高めるためには反応温度は高温が好ましいが、一方で、高温では分解等の好ましくない反応も起こる場合もあり、収率が低下することもあるので、さらに好ましくは0℃〜30℃である。
該工程(I−1)により、ジアルキル酸化スズを含有する組成物が得られる。ジアルキル酸化スズを含有する組成物は、沈殿物として分離することができる。分離方法は公知の方法を使用することができ、例えば、濾過によって分離することができる。
工程(I−2)は、工程(I−1)で分離されたジアルキル酸化スズを含有する組成物と、アルコール、カルボン酸およびハロゲン化水素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を反応させ、発生する水を含む成分を反応液より除去する工程である。該工程(I−2)において用いられるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール(各異性体)、ブタノール(各異性体)、ペンタノール(各異性体)、ヘキサノール(各異性体)、ヘプタノール(各異性体)、オクタノール(各異性体)、ノナノール(各異性体)、デカノール(各異性体)等のアルコールであって、該アルコールを構成する炭素原子の数が1〜12の整数から選ばれる数であるアルコールを挙げることができる。また、該工程(I−2)において用いられるカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、2−メチルブタン酸、ピバリン酸、ヘキサン酸、イソカプロン酸、2−エチルブタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、ヘプタン酸(各異性体)、オクタン酸(各異性体)、ノナン酸(各異性体)、デカン酸(各異性体)、ウンデカン酸(各異性体)、ドデカン酸(各異性体)等のカルボン酸であって、該カルボン酸を構成する炭素原子の数が1〜12の整数から選ばれる数であるカルボン酸を挙げることができる。また、該工程(I−2)において用いられるハロゲン化水素としては、塩化水素、臭化水素等のハロゲン化水素を挙げることができる。
該工程(I−2)において使用される反応剤(以下、「反応剤」という語を、アルコール、カルボン酸、ハロゲン化水素をさす語として使用する)は、ジアルキル酸化スズを含有する組成物中のスズ原子に対して、化学量論比で、1〜1000倍、より好ましくは2〜100倍、反応速度を高めるためには過剰量が好ましいが、反応後の除去しやすさを考慮すれば、さらに好ましくは3〜50倍である。あまりに大過剰の反応剤を使用した場合は、反応後の反応剤の除去に多大なエネルギーが必要となるため、上記範囲が好ましい。
該工程(I−2)において、溶媒は必ずしも使用する必要はないが、流動性を向上させて反応操作を容易にしたり、あるいは生成する水を速やかに系外へ出す目的で、水と共沸する溶媒を添加することができる。使用できる溶媒は、ジアルキル酸化スズや、該工程で生成するジアルキルスズ触媒と反応しないものであれば、どのような溶媒であってもよい。このような溶媒の例としては、例えば、ヘキサン(各異性体)、ヘプタン(各異性体)、オクタン(各異性体)などの、直鎖状もしくは分岐鎖状もしくは環状の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン(各異性体)等の芳香族炭化水素類;エーテル類が挙げられる。
該工程(I−2)が実施される温度は、使用される反応剤や溶媒の種類、およびこれらの組成比によって異なるが、好ましくは80℃〜200℃の範囲であり、反応速度を高めるためには反応温度は高温が好ましいが、一方で、高温では分解等の好ましくない反応も起こる場合もあり、収率が低下することもあるので、より好ましくは100℃〜180℃の範囲である。
該工程(I−2)が実施される圧力は特に限定されず、減圧から加圧条件下でおこなわれるが、効率よく反応系より水を除去するために、好ましくは10Pa〜1MPaの範囲で実施され、より好ましくは10kPa〜0.5MPaの範囲で実施される。
上記したように、該工程(I−2)は、反応により生成する水を反応系より除去する必要があるが、脱水方法は公知の脱水方法が使用できる。例えば、蒸留分離、膜分離による方法、脱水剤を使用する方法が挙げられる。蒸留は、減圧蒸留、加圧蒸留、薄膜蒸留、共沸蒸留などの方法が使用でき、膜分離は、パーベーパレーションなどの方法が使用でき、脱水剤は、モレキュラーシーブなどの公知の脱水剤が使用できる。
本実施の形態の各反応で使用する反応器に特に制限はなく、公知の反応器が使用できる。例えば攪拌槽、加圧式攪拌槽、減圧式攪拌槽、塔型反応器、蒸留塔、充填塔、薄膜蒸留器など、従来公知の反応器を適宜組み合わせて使用できる。反応器の材質にも特に制限はなく、公知の材質が使用できる。例えばガラス製、ステンレス製、炭素鋼製、ハステロイ製や、基材にグラスライニングを施したものや、テフロン(登録商標)コーティングをおこなったものも使用できる。工程や条件によっては、酸による腐食が顕著となる場合もあるので、そのような場合にはガラス製やグラスライニング、テフロン(登録商標)コーティングを施したり、ハステロイ製反応器を適宜選択してよい。
以上の工程において製造されるジアルキルスズ触媒はエステル化合物の製造に使用することができる。前記したように、本実施の形態のアルキル基再分配反応によるジアルキルスズ化合物を製造する最適な方法は、上記したジアルキルスズ触媒の置換基の共役酸のpKaが6.8〜25であるジアルキルスズ触媒の失活体組成物を、該置換基を上記Yに変換し、さらに高温で熱処理する場合、極めて効率よくジアルキルスズ化合物を得ることができる。このような例として、下記したジアルキルスズ触媒としてジアルキルスズアルコキシドを用いた炭酸エステルの製造方法から生成するジアルキルスズアルコキシドの失活体組成物を、酸および/または酸無水物、好ましくは酸無水物、さらに好ましくは無水酢酸で前記した工程(A)に従って処理した後、加熱処理によるアルキル基再分配反応を実施し、生成するジアルキルスズ化合物(好ましくはジアルキル−ジアセトキシスズ)をジアルキルスズアルコキシドに変換して、該炭酸エステル製造の触媒としてリサイクル使用することである。この場合も、前記したように、本実施の形態のアルキル基再分配反応は平衡反応であり、平衡反応の一般的な性質から、高濃度(例えば、ジアルキルスズ触媒の失活体組成物中に含有されるアルキルスズ化合物の全スズ原子のモル数に対して、アルキルスズ化合物のスズ原子に結合するアルキル基の個数が2以外である失活体の含有量をモル%で表して、10mol%以上、好ましくは30mol%以上、更に好ましくは50mol%以上を含有する失活体組成物)で該失活体が蓄積および/または濃縮された失活体組成物を使用して、上記操作による本実施の形態のアルキル基再分配反応をおこなうことが好ましい。
すなわち、本発明の目的の一つは、エステル化合物の製造過程において生成する、ジアルキルスズ触媒の失活体組成物から、ジアルキルスズ化合物を製造し、該ジアルキルスズ化合物をジアルキルスズ触媒として再生して、エステル化合物、特に炭酸エステルの製造における触媒として再利用することである。
該炭酸エステルを製造する過程は、好ましくは下記工程(1)〜(4)を含む。
工程(1):(炭酸エステル生成工程)二酸化炭素とジアルキルスズ触媒とを反応させて、炭酸エステルを含む反応液を得る工程;
工程(2):(炭酸エステル分離工程)該反応液から炭酸エステルを分離し、残留液を得る工程;
工程(3):(ジアルキルスズ触媒再生工程)該残留液とアルコールを反応させて生成する水を系外に除去してジアルキルスズ触媒を再生する工程;
工程(4):(リサイクル工程)工程(3)で得られたジアルキルスズ触媒を工程(1)へリサイクルする工程。
以下、ジアルキルスズ触媒としてジアルキルスズアルコキシドを使用する炭酸エステルの製造工程を例に、各工程について詳細に説明する。
(i)アルキルスズアルコキシド合成工程(連続運転のスタートアップ時の工程)
本工程は、既に開示されているアルキルスズアルコキシドの製造方法(WO2005/111049など)が好ましく利用できる。本工程はジアルキル酸化スズとアルコールとから、アルキルスズアルコキシドを製造する工程である。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール(各異性体)、ブタノール(各異性体)、ペンタノール(各異性体)、ヘキサノール(各異性体)、ヘプタノール(各異性体)、オクタノール(各異性体)、ノナノール(各異性体)、デカノール(各異性体)等のアルコールであって、該アルコールを構成する炭素原子の数が1〜12の整数から選ばれる数であるアルコールが好ましく使用される。
アルキルスズアルコキシド合成工程で使用するジアルキル酸化スズは、下記式(28)で示したジアルキル酸化スズを用いる。
Figure 2008044575
(式中、R14およびR15は、各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
14およびR15の例としては、メチル、エチル、プロピル(各異性体)、ブチル(各異性体)、ペンチル(各異性体)、ヘキシル(各異性体)、ヘプチル(各異性体)、オクチル(各異性体)、ノニル(各異性体)、デシル(各異性体)、ウンデシル(各異性体)、ドデシル(各異性体)等の炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基であるアルキル基が挙げられる。より好ましくは炭素数1〜8の直鎖状または分岐鎖状の飽和アルキル基であり、さらに好ましくは、n−ブチル基、n−オクチル基である。
該アルコールと該ジアルキル酸化スズとを脱水反応させ、生成する水を系外に除去しながらテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンおよび/またはジアルキルスズジアルコキシドを得る。該反応が実施される温度は、例えば、80〜180℃の範囲で、生成する水を系外に蒸留除去するために、反応圧力にもよるが、100℃〜180℃が好ましく、反応速度を高めるためには反応温度は高温が好ましいが、一方で、高温では分解等の好ましくない反応も起こる場合もあり、収率が低下することもあるので、更に好ましくは100℃〜160℃の範囲である。反応の圧力は、生成する水が系外に除去できる圧力であり、反応温度にもよるが、20〜1×10Paで行われる。脱水反応の反応時間に、特に制限はなく通常0.001〜50時間、好ましくは0.01〜10時間、より好ましくは0.1〜2時間である。所望のアルキルスズアルコキシド組成物が得られれば反応を終了してよい。反応の進行は、系外へ抜き出される水の量を測定することによっても求められるし、反応液をサンプリングして、119Sn−NMRによる方法でも求めることができる。
本実施の形態の混合物を工程(1)で製造するためには、上記反応で得られるアルキルスズアルコキシド組成物中に含有されるテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンとジアルキルスズジアルコキシドのモル比率が、両者を併せたモル%で表して、0:100〜80:20の範囲である組成物、より好ましくは、10:90〜70:30の範囲となった組成物を得たことを確認して反応を終了する。使用したアルコールはそのまま共存した状態で使用してもよいし、場合によってはアルコールを蒸留除去して使用してもよい。他の工程の反応器を小さくできる利点があるので、できるだけアルコールを除去しておくことが好ましい。除去する方法は、公知の蒸留による除去が好ましく、また蒸留に使用する蒸留器は公知の蒸留設備が使用できる。好ましい蒸留装置としては、短時間で除去できることから薄膜蒸留装置が好ましく使用できる。脱水反応の反応器の形式に特に制限はなく、公知の槽状、塔状の反応器が使用できる。水を含む低沸点反応混合物はガス状で蒸留によって反応器から抜き出し、製造されるアルキルスズアルコキシドまたはアルキルスズアルコキシド混合物を含む高沸点反応混合物を反応器下部から液状で抜き出せればよい。このような反応器として、たとえば攪拌槽、多段攪拌槽、蒸留塔、多段蒸留塔、多管式反応器、連続多段蒸留塔、充填塔、薄膜蒸発器、内部に支持体を備えた反応器、強制循環反応器、落膜蒸発器、落滴蒸発器、細流相反応器、気泡塔のいずれかを含む反応器を用いる方式、およびこれらを組み合わせた方式等、公知の種々の方法が用いられる。平衡を生成系側に効率的にずらすという点では、塔状の反応器を用いる方法が好ましく、また形成される水を気相にすみやかに移動させられる気−液接触面積の大きな構造が好ましい。多管式反応器、多段蒸留塔、充填剤を充填した充填塔を用いた連続法も使用できるが、本工程で使用するジアルキル酸化スズが通常固体状であるため、まず、槽状反応器で実施し、次いで塔型反応器でジアルキルスズジアルコキシドの含有量をあげる方法が最も好ましい。反応器およびラインの材質は、悪影響を及ぼさなければ、公知のどのようなものであってもよいが、SUS304やSUS316,SUS316Lなどが安価でもあり、好ましく使用できる。必要に応じて、流量計、温度計などの計装機器、リボイラー、ポンプ、コンデンサーなどの公知のプロセス装置を付加してよく、加熱はスチーム、ヒーターなどの公知の方法でよく、冷却も自然冷却、冷却水、ブライン等公知の方法が使用できる。
(ii)ジアルキルスズ触媒再生工程(工程3)
本工程は、工程(2)で残留液を得た後に実施する工程であるが、上記のジアルキルスズアルコキシド合成工程と近似しているため、先に説明する。本工程は、工程(2)で得られた残留液とアルコールとを脱水反応させて、ジアルキルスズアルコキシドを再生する工程である。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール(各異性体)、ブタノール(各異性体)、ペンタノール(各異性体)、ヘキサノール(各異性体)、ヘプタノール(各異性体)、オクタノール(各異性体)、ノナノール(各異性体)、デカノール(各異性体)等のアルコールであって、該アルコールを構成する炭素原子の数が1〜12の整数から選ばれる数であるアルコールが好ましく使用されるが、より好ましくは、上記したアルキルスズアルコキシド合成工程で使用したアルコールと同じアルコールを使用する。
脱水反応の条件も上記したアルキルスズアルコキシド合成工程と同様の条件で実施することが好ましい。所望のアルキルスズアルコキシド組成物が得られれば反応を終了してよい。反応の進行は、系外へ抜き出される水の量を測定することによっても求められるし、反応液をサンプリングして、119Sn−NMRによる方法でも求めることができる。本実施の形態の混合物を工程1で製造するためには、上記反応で得られるアルキルスズアルコキシド組成物中に含有されるテトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンとジアルキルスズジアルコキシドのモル比率が、両者を併せたモル%で表して、0:100〜80:20の範囲である組成物、より好ましくは、10:90〜70:30の範囲となった組成物を得たことを確認して反応を終了する。使用したアルコールはそのまま共存した状態で使用してもよいし、場合によってはアルコールを蒸留除去して使用してもよい。他の工程の反応器を小さくできる利点があるので、できるだけアルコールを除去しておくことが好ましい。除去する方法は、公知の蒸留による除去が好ましく、また蒸留に使用する蒸留器は公知の蒸留設備が使用できる。好ましい蒸留装置としては、短時間で除去できることから薄膜蒸留装置が好ましく使用できる。本工程では、アルキルスズアルコキシドの合成工程とは異なって、通常固体であるジアルキル酸化スズを使用しないので、反応器の制約は少ない。すなわち、脱水反応の反応器の形式に特に制限はなく、公知の槽状、塔状の反応器が使用できる。水を含む低沸点反応混合物はガス状で蒸留によって反応器から抜き出し、製造されるアルキルスズアルコキシドまたはアルキルスズアルコキシド混合物を含む高沸点反応混合物を反応器下部から液状で抜き出せればよい。このような反応器として、たとえば攪拌槽、多段攪拌槽、蒸留塔、多段蒸留塔、多管式反応器、連続多段蒸留塔、充填塔、薄膜蒸発器、内部に支持体を備えた反応器、強制循環反応器、落膜蒸発器、落滴蒸発器、細流相反応器、気泡塔のいずれかを含む反応器を用いる方式、およびこれらを組み合わせた方式等、公知の種々の方法が用いられる。平衡を生成系側に効率的にずらすという点で、塔状の反応器を用いる方法が好ましく、また形成される水を気相にすみやかに移動させられる気−液接触面積の大きな構造が好ましい。多管式反応器、多段蒸留塔、充填剤を充填した充填塔を用いた連続法が特に好ましい。反応器およびラインの材質は悪影響を及ぼさなければ、公知のどのようなものであってもよいが、SUS304やSUS316,SUS316Lなどが安価でもあり、好ましく使用できる。必要に応じて、流量計、温度計などの計装機器、リボイラー、ポンプ、コンデンサーなどの公知のプロセス装置を付加してよく、加熱はスチーム、ヒーターなどの公知の方法でよく、冷却も自然冷却、冷却水、ブライン等公知の方法が使用できる。
(iii)炭酸エステル生成工程(工程1)
本工程では、ジアルキルスズアルコキシドと、ガス状の二酸化炭素とを反応させて、炭酸エステルを製造する工程であるが、該工程は、既に開示されている炭酸エステルの製造方法(WO03/055840、WO04/014840など)が好ましく使用される。
本工程に供給されるアルキルスズアルコキシド組成物は、スタートアップ時にアルキルスズアルコキシド合成工程から供給される場合と、連続製造時に工程(3)のアルキルスズアルコキシド製造工程から供給される場合がある。また、後述するジアルキルスズ触媒を再生する工程から供給される場合もある。
該工程においては、まず、上記したジアルキルスズアルコキシドとガス状の二酸化炭素を吸収させ、化学反応させてジアルキルスズアルコキシドの二酸化炭素結合体を含む混合物を得る。
該化学反応させる際には、該ジアルキルスズアルコキシドを液状、もしくは溶媒等によって液状として反応させる。液状とするには、加熱によって液状とする方法が好ましく使用でき、また、溶媒等によって液状としてもよい。反応させる圧力は、反応させる温度にもよるが、常圧〜1MPaの範囲が好ましく、常圧〜0.6MPaの範囲が更に好ましい。該反応させる温度は、反応させる圧力にもよるが、−40℃〜80℃の範囲が好ましく、移送の際の流動性を考慮すると、0℃〜80℃が更に好ましく、最も好ましい範囲は常温(例えば、20℃)〜80℃である。反応時間は数秒〜100時間の範囲で実施してよく、生産性等を考慮すれば、数分〜10時間が好ましい。反応器は公知の槽型反応器、塔型反応器が使用できる。また複数の反応器を組み合わせて使用してもよい。反応は二酸化炭素ガス(気体)とアルキルスズアルコキシド組成物(液体)の反応であるため、効率よく反応させるためには、気液界面を大きくしてガスと液の接触面積を大きくすることが好ましい。このような気液界面を大きくして反応させる方法は公知の知見が利用でき、例えば、槽型反応器では、攪拌速度を上げたり、液中に気泡を発生させるような方法が好ましく、塔型反応器では、充填塔を利用したり、棚段塔を利用する方法が好ましい。このような塔型反応器の例としては、例えば泡鍾トレイ、多孔板トレイ、バルブトレイ、向流トレイ等のトレイを使用した棚段塔方式のものや、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、ベルルサドル、インタロックスサドル、ディクソンパッキング、マクマホンパッキング、ヘリパック、スルザーパッキング、メラパック等の各種充填物を充填した充填塔方式のものなどが利用できる。反応器およびラインの材質は悪影響を及ぼさなければ、公知のどのようなものであってもよいが、SUS304やSUS316,SUS316Lなどが安価でもあり、好ましく使用できる。必要に応じて、流量計、温度計などの計装機器、リボイラー、ポンプ、コンデンサーなどの公知のプロセス装置を付加してよく、加熱はスチーム、ヒーターなどの公知の方法でよく、冷却も自然冷却、冷却水、ブライン等公知の方法が使用できる。反応は通常発熱反応であるから、冷却してもよいし、または反応器の放熱によって冷却してもよい。あるいは炭酸エステル化反応を併発させる目的であれば加熱してもよい。反応器の冷却、加熱はジャケットによる方法、内部コイルによる方法など公知の方法が使用できる。反応器に供給する二酸化炭素ガスとアルキルスズアルコキシド組成物はそれぞれ別々に反応器に供給してもよいし、反応器に供給する前に混合しておいてもよい。反応器の複数箇所から供給してもかまわない。反応終了は、例えば、119Sn−NMR分析によって決定することができる。
次に、上記で得られたジアルキルスズアルコキシドの二酸化炭素結合体から、以下の方法により、炭酸エステルを含む反応液を得る。
反応条件は、110℃〜200℃の範囲、反応速度を高めるためには反応温度は高温が好ましいが、一方で、高温では分解等の好ましくない反応も起こる場合もあり、収率が低下することもあるので、好ましくは120℃〜180℃の範囲であり、0.1時間〜10時間の範囲、反応圧力は、1.5MPa〜20MPa、好ましくは2.0MPa〜10MPaの範囲である。反応は所望の炭酸エステルが反応器中に生成してから終了すればよい。反応の進行は、反応器内の反応液をサンプリングし、H−NMRやガスクロマトグラフィーなどの方法で生成した炭酸エステルを分析する方法などで確認できる。例えば、ジアルキルスズアルコキシドおよび/またはジアルキルスズアルコキシドの二酸化炭素結合体中に含まれていたジアルキルスズアルコキシドおよび/またはジアルキルスズアルコキシドの二酸化炭素結合体のモル数に対して10%以上生成したら反応を終了してもよく、炭酸エステルの収量を多くしたい場合、該値を90%以上になるまで反応を続けてから終了する。反応器は公知の反応器が使用でき、塔型反応器、槽型反応器共に好ましく使用できる。反応器およびラインの材質は悪影響を及ぼさなければ、公知のどのようなものであってもよいが、SUS304やSUS316,SUS316Lなどが安価でもあり、好ましく使用できる。必要に応じて、流量計、温度計などの計装機器、リボイラー、ポンプ、コンデンサーなどの公知のプロセス装置を付加してよく、加熱はスチーム、ヒーターなどの公知の方法でよく、冷却も自然冷却、冷却水、ブライン等公知の方法が使用できる。
(iv)炭酸エステル分離工程(工程2)
本工程は、工程(1)で得られた、炭酸エステルを含む反応液から、炭酸エステルを分離し、残留液を得る工程である。分離方法は公知の方法や装置が好適に利用できる。好ましい方法は蒸留による方法である。
工程(1)から移送された反応液をバッチあるいはセミバッチ、あるいは連続的に蒸留して炭酸エステルと残留液を得る。好ましい蒸留方法は、該反応液を蒸留器に供給し、炭酸エステルを気相成分として蒸留器上部から系外へ分離し、残留液を液状成分として蒸留器の底部から抜き出す方法である。本工程の温度は該炭酸エステルの沸点や圧力にもよるが、常温(例えば、20℃)〜200℃の範囲でよく、高温では残留液中のスズ化合物の変性がおこる場合や、炭酸エステルが逆反応によって減少してしまう場合もあるので常温(例えば、20℃)〜150℃の範囲が好ましい。圧力は、炭酸エステルの種類や、実施する温度にもよるが、通常、常圧〜減圧条件でおこない、生産性を考慮すれば、100Pa〜80KPaの範囲がさらに好ましく、100Pa〜50KPaが最も好ましい範囲である。時間は、0.01時間〜10時間の範囲で実施でき、高温で長時間実施すると、該反応液に含まれるスズ化合物が変性する場合や、炭酸エステルが逆反応によって減少する場合もあるため、0.01時間〜0.5時間の範囲が好ましく、0.01時間〜0.3時間の範囲が最も好ましい。蒸留器は公知の蒸留器が使用でき、塔型蒸留器、槽型蒸留器も好ましく使用することができるし、複数組み合わせて使用しても構わない。更に好ましい蒸留器は薄膜蒸発器、薄膜蒸留器であり、蒸留塔を備えた薄膜蒸発器、薄膜蒸留器が最も好ましい。蒸留器およびラインの材質は悪影響を及ぼさなければ、公知のどのようなものであってもよいが、SUS304やSUS316,SUS316Lなどが安価でもあり、好ましく使用できる。必要に応じて、流量計、温度計などの計装機器、リボイラー、ポンプ、コンデンサーなどの公知のプロセス装置を付加してよく、加熱はスチーム、ヒーターなどの公知の方法でよく、冷却も自然冷却、冷却水、ブライン等公知の方法が使用できる。
以上、ジアルキルスズアルコキシド触媒を使用した炭酸エステルの製造例を示したが、該炭酸エステルの製造過程において、ジアルキルスズアルコキシド触媒の失活体が生成する。該ジアルキルスズアルコキシド触媒の失活体は、上記の炭酸エステルの製造を繰り返しおこなっているうちに、反応系内に徐々に蓄積し、反応速度が低下したり、炭酸エステルの収率が低下する場合がある。したがって、反応系よりジアルキルスズ触媒の失活体組成物を一部抜き出し、該失活体組成物よりジアルキルスズ触媒を再生することが好ましい。該失活体組成物は、好ましくは、上述の工程(2)および/または工程(3)の後に実施される。反応系より抜き出される該失活体組成物の量は特に限定されない。また、該失活体組成物に含有されるジアルキルスズ触媒の失活体の量も特に限定されない。
反応系より抜き出されたジアルキルスズ触媒の失活体は、上記した本実施の形態の方法によってジアルキルスズ触媒として再生され、再び、該炭酸エステルを製造する触媒として使用される。再生されたジアルキルスズ触媒は、好ましくは、上述の工程(4)および/または工程(1)のジアルキルスズ触媒としてリサイクル使用される。
図1は、炭酸エステルの製造方法と本実施の形態によるジアルキルスズ化合物の製造方法を組み合わせた、改良された炭酸エステルの製造方法のフロー図を示す。前記したように、炭酸エステルの製造方法の工程(2)および/または工程(3)から抜き出される反応液の一部または全部を本反応の原料(すなわち、ジアルキルスズ触媒の失活体組成物)として使用する。工程(2)では、残留液を得ると前記したが、該残留液を本実施の形態の失活体組成物として使用する。この際、炭酸エステル製造工程で使用するジアルキルスズアルコキシドは、本実施の形態でいうスズに結合したアルキル基以外の基がアルコキシ基であって、該アルコキシ基の共役酸(すなわちアルコール)のpKaは約17であるため、前記した工程(A)を実施する。工程(A)実施の際に水や、カルボン酸エステルが副生するが、該副生物は上記工程の適当な工程で除去することが好ましい。さらに好ましくは、工程(A)を実施しながら系外へ排出する、またはアルキル基再分配反応工程の後、反応液を冷却する目的でフラッシュさせながら気相成分として系外へ除去する。前記したように、ジアルキルスズアルコキシドを触媒とした炭酸エステル製造工程で工程(A)を実施する際には、酸を用いた場合には、水が副生する場合があり、反応時に原料および/または生成物が加水分解されて固形分が発生する場合もあるので、反応させる化合物(酸および/または酸無水物)として、カルボン酸無水物が好ましい。また、酸無水物を反応させた場合には、該酸無水物とアルコキシ基に由来するカルボン酸エステルが副生する。該カルボン酸エステルを系外に容易に除去する目的で、最適なカルボン酸無水物は無水酢酸である。工程(A)終了後、本実施の形態の加熱処理によるアルキル基再分配反応を実施する。次いで、得られたジアルキルスズ化合物を、炭酸エステル製造工程触媒であるジアルキルスズアルコキシドとしてリサイクルするため、ジアルキルスズ化合物の置換基をアルコキシ基に変換する。置換基変換工程は公知の方法や、合成方法を使用してアルコキシ基に変換してよい。例えば、前記した工程(I−1)を実施してジアルキル酸化スズを得たのち、該ジアルキル酸化スズを以下に説明するアルコキシ化工程を実施してアルキルスズアルコキシドを得てよい。得られたアルキルスズアルコキシドは、例えば工程(1)や工程(4)へリサイクルする。上記した以外にも、精製工程などを付加しても構わない。
アルコキシ化工程(前記した工程(I−2)の一態様)
本工程は、上記した工程から得られたジアルキル酸化スズを含有する組成物とアルコールを反応させて、副生する水を系外へ除去してジアルキルスズアルコキシドを得る工程であり、前記したジアルキル酸化スズとアルコールとからアルキルスズアルコキシドを得る、アルキルスズアルコキシド合成工程と同じ方法で実施する。すなわち、使用する原料をジアルキル酸化スズのかわりに、上記したジアルキル酸化スズを含有する組成物を用いて実施する。
前記したように、本実施の形態のアルキル基再分配反応は平衡反応であり、平衡反応の一般的な性質から、高濃度(例えば、ジアルキルスズ触媒の失活体組成物中に含有されるアルキルスズ化合物の全スズ原子のモル数に対して、アルキルスズ化合物のスズ原子に結合するアルキル基の個数が2以外である失活体の含有量をモル%で表して、10mol%以上、好ましくは30mol%以上、さらに好ましくは50mol%以上を含有する失活体組成物)で該失活体が蓄積および/または濃縮された失活体組成物を使用して、上記操作による本実施の形態のアルキル基再分配反応をおこなうことが好ましい。すなわち、炭酸エステル製造工程で、該失活体が上記範囲となるような条件で炭酸エステルを製造するか、本発明者らが先に開示した(WO 2007/097388号公報参照)方法などによって、失活体組成物から活性な触媒を回収したのち、高濃度化された失活体組成物成分を本実施の形態の失活体組成物として使用して、本実施の形態の工程を付加することで極めて効率よくジアルキルスズ触媒を使用することができる。
上記工程で得られる炭酸エステルは、ポリカーボネート原料やイソシアネート原料、その他の化成品原料、リチウムイオン電池などの電池電解質として好適に使用することができる。上記方法によって、これまで廃棄物となっていたジアルキルスズ触媒の失活体からジアルキルスズ触媒を再生することができるため、炭酸エステルの製造工程におけるコストや廃棄物の問題を解決することができる。したがって、本発明は、産業上極めて重要である。
実施例
以下、本実施の形態を実施例によりさらに具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、本実施の形態に用いる分析方法は、以下のとおりである。
<分析方法>
NMR分析方法
装置:日本電子(株)社製JNM−A400 FT−NMRシステム
(1)H、13Cおよび119Sn−NMR分析サンプルの調製
サンプル溶液を約0.3g秤量し、重クロロホルム(アルドリッチ社製、99.8%)を約0.7gと内部標準物質としてテトラメチルスズ(和光純薬工業社製、和光一級)を0.05g加えて均一に混合した溶液をNMR分析サンプルとする。
(2)定量分析法
各標準物質について分析を実施し作成した検量線を基に、分析サンプル溶液の定量分析を実施した。
工程(1−1):ジアルキルスズ触媒の製造
容積5000mLのナス型フラスコに、ジブチルスズオキシド(日本国、三共有機合成社製)627g(2.7mol)および3−メチル−1−ブタノール(日本国、クラレ社製)2000g(22.7mol)を入れた。該フラスコを、温度調節器のついたオイルバス(日本国、増田理化工業社製、OBH−24)と真空ポンプ(日本国、ULVAC社製、G−50A)と真空コントローラー(日本国、岡野製作所社製、VC−10S)を接続したエバポレーター(日本国、柴田社製、R−144)に取り付けた。エバポレーターのパージバルブ出口は常圧で流れている窒素ガスのラインと接続した。エバポレーターのパージバルブを閉め、系内の減圧を行った後、パージバルブを徐々に開き、系内に窒素を流し、常圧に戻した。オイルバス温度を約145℃に設定し、該フラスコを該オイルバスに浸漬してエバポレーターの回転を開始した。エバポレーターのパージバルブを開放したまま大気圧窒素下で約40分間加熱したところで、水を含む3−メチル−1−ブタノールの蒸留が始まった。この状態を7時間保った後、パージバルブを閉め、系内を徐々に減圧し、系内の圧力が74〜35kPaの状態で過剰の3−メチル−1−ブタノールを蒸留した。留分が出なくなった後、該フラスコをオイルバスからあげた。該フラスコが室温(25℃)付近まで冷却されたのち、該フラスコをオイルバスからあげてパージバルブを徐々に開き系内の圧力を大気圧に戻した。該フラスコには反応液1173gが得られた。119Sn、H、13C−NMRの分析結果から、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンがジブチルスズオキシドに対して収率99%で得られたことを確認した。同様の操作を12回繰り返し、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンを合計10345g得た。
工程(1−2):炭酸エステルの製造およびジアルキルスズ触媒の失活体組成物の回収
図2に示すような連続製造装置において、炭酸エステルを製造した。充填物Metal Gauze CY(スイス国、Sulzer Chemtech Ltd.製)を充填した、内径151mm,有効長さ5040mmの塔型反応器102に、移送ライン4から上記で製造した1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを4388g/hrで供給し、移送ライン2から蒸留塔101で精製された3−メチル−1−ブタノールを14953g/hrで供給した。該反応器内102は液温度が160℃になるようにヒーターおよびリボイラー112によって調整し、圧力が約120kPa−Gになるように圧力調節バルブによって調整した。該反応器内の滞留時間は約17分であった。反応器上部から移送ライン6を経て水を含む3−メチル−1−ブタノール15037g/hrを、および、供給ライン1を経て3−メチル−1−ブタノール825g/hrを、充填物Metal Gauze CYを充填し、リボイラー111およびコンデンサー121を備えた蒸留塔101に輸送し、蒸留精製を行った。蒸留塔101の上部では高濃度の水を含む留分がコンデンサー121によって凝縮され回収ライン3から回収された。精製された3−メチル−1−ブタノールは、蒸留塔101の下部にある移送ライン2を経て塔型反応器102に輸送した。塔型反応器102の下部からジ−n−ブチル−ビス(3−メチルブチルオキシ)スズと1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを含むアルキルスズアルコキシド触媒組成物を得、移送ライン5を経て薄膜蒸発装置103(日本国、神鋼環境ソリューション社製)に供給した。薄膜蒸発装置103において3−メチル−1−ブタノールを留去し、コンデンサー123、移送ライン8および移送ライン4を経て塔型反応器102に戻した。薄膜蒸発装置103の下部から移送ライン7を経てアルキルスズアルコキシド触媒組成物を輸送し、ジ−n−ブチル−ビス(3−メチルブチルオキシ)スズと1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンの流量が約5130g/hrになるように調節しオートクレーブ104に供給した。オートクレーブに移送ライン9より、二酸化炭素を973g/hrで供給し、オートクレーブ内圧を4MPa−Gに維持した。オートクレーブにおける温度を120℃に設定し、滞留時間を約4時間に調整し、二酸化炭素とアルキルスズアルコキシド触媒組成物との反応を行い、炭酸ビス(3−メチルブチル)を含む反応液を得た。該反応液を移送ライン10と調節バルブを介して除炭槽105に移送し残存二酸化炭素を除去し、移送ライン11から二酸化炭素を回収した。その後、該反応液を、移送ライン12を経て約142℃、約0.5kPaとした薄膜蒸発装置106(日本国、神鋼環境ソリューション社製)に移送し、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンの流量が約4388g/hrになるように調節し供給して、炭酸ビス(3−メチルブチル)を含む留分を得、一方で蒸発残渣を移送ライン13と移送ライン4を介して、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンの流量が約4388g/hrになるように調節し塔型反応器102に循環した。炭酸ビス(3−メチルブチル)を含む留分はコンデンサー126および移送ライン14を経て、充填物Metal Gauze CYを充填しリボイラー117およびコンデンサー127を備えた蒸留塔107に959g/hrで供給して、蒸留精製を行った後、回収ライン16から99wt%の炭酸ビス(3−メチルブチル)を944g/hr得た。移送ライン13のアルキルスズアルコキシド触媒組成物を119Sn,H,13C−NMRによって分析したところ、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンが含まれており、ジ−n−ブチル−ビス(3−メチルブチルオキシ)スズは含まれていなかった。上記連続運転を約240時間行った後、抜き出しライン16からアルキルスズアルコキシド触媒組成物を18g/hrで、一方で供給ライン17から上記方法で製造した1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを18g/hrで供給し、抜き出しライン16から、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンの触媒組成物を約120g抜き出した。119Sn−NMRによって分析したところ、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンが約60wt%含まれている以外に、トリ−n−ブチル(3−メチルブチルオキシ)スズおよび−240〜−605ppmに、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンの失活成分の複数のNMRシフトが見られた。該触媒組成物を失活体組成物として使用した。
工程(1−3):トリ−n−ブチル(3−メチルブチルオキシ)スズの分離
工程(1−2)で得られた失活体組成物120gを、500mLナス型フラスコに移した。該フラスコに、三方コック、ヘリパックNo.3を充填した長さ45cmの蒸留カラムおよび留出液受器と連結した還流冷却器付き分留頭、および温度計を取り付け、容器内を真空−窒素置換した。容器内を大気圧窒素下とし、該フラスコを約190℃に加熱したオイルバスに浸漬した。約20分後、該失活体組成物の温度が約180℃となったところで、容器内を徐々に減圧し、留出する成分を回収した。最終的に、容器内の圧力が約0.01kPaとしたところで蒸留を終了した。留出液およびフラスコ内の残存物について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなった。留出液はトリ−n−ブチル(3−メチルブチルオキシ)スズであった。フラスコ内の残存物は、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンを76.5wt%含有し、119Sn−NMRにおいて−240〜−605ppmに複数の化学シフトを示すスズ原子を含有する有機スズ化合物の混合物であった。得られた留出液は25.5g、フラスコ内の残存物は94.0gであった。
工程(1−4):ジアルキルスズ触媒の失活体の置換基交換反応
窒素雰囲気下において、工程(1−3)で得られた24.7gのトリ−n−ブチル(3−メチルブチルオキシ)スズを300mLナス型フラスコに入れ、ついで、無水酢酸(米国、Aldrich社製)34.5gを加え、25℃で1時間撹拌した。溶液を採取し、ガスクロマトグラフィーで分析をおこなったところ、酢酸イソアミルが生成していることが確認された。該フラスコに、留出液受器と連結した還流冷却器付き分留頭、および温度計を取り付け、該フラスコ内を真空−窒素置換したのち、該フラスコを、50℃に加熱したオイルバスに浸漬した。容器内を徐々に減圧し、酢酸イソアミルと余剰の無水酢酸を留去し、該フラスコ内に残留物を22.8g得た。残留物についてHおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該残留物はトリ−n−ブチルアセトキシスズであった。
一方、工程(1−1)で得られた、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンを76.5wt%含有する残存物93.2gを、500mL金属製圧力容器(日本国、耐圧硝子工業社製、TSV−N2型)に入れ、ついで、無水酢酸を150.0g加え、撹拌した。該金属製圧力容器を200℃に加熱したオイルバスに浸漬し、3時間加熱した。該金属製圧力容器を室温(約25℃)付近まで冷却したのち、内容物を、500mLナス型フラスコに移した。該フラスコに留出液受器と連結した還流冷却器付き分留頭、および温度計を取り付け、該フラスコ内を真空−窒素置換したのち、該フラスコを、50℃に加熱したオイルバスに浸漬した。容器内を徐々に減圧し、余剰の無水酢酸等を留去し、該フラスコ内に残留物を103.3g得た。残留物についてHおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該残留物は、ジ−n−ブチルジアセトキシスズとn−ブチルトリアセトキシスズを含有する混合物であり、該混合物中のジ−n−ブチルジアセトキシスズは75.4wt%、n−ブチルトリアセトキシスズは24.5wt%であった。該混合物を、先に得られたトリ−n−ブチルアセトキシスズと混合し、次の工程(1−5)の原料とした。
工程(1−5):アルキル基再分配反応
窒素雰囲気下において、工程(1−4)で得られた混合物125.3gを、200mL金属製圧力容器(日本国、耐圧硝子工業社製、TSV−N2型)に入れた。該金属製圧力容器を250℃に加熱したオイルバスに浸漬し、30分間加熱した。該金属製圧力容器を室温付近まで冷却したのち、反応液を124.5g回収した。反応液について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該反応液は、ジ−n−ブチルジアセトキシスズとn−ブチルトリアセトキシスズを含有する混合物であり、該混合物中のジ−n−ブチルジアセトキシスズは96.3wt%であった。
工程(1−6):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(1−5)で得られた反応液122.1gを容積500mLのナス型フラスコに入れ、50℃に加熱したオイルバスに浸漬した。内容物を攪拌しながら0.1mol/L水酸化カリウム水溶液(和光純薬工業社製)300mLを加えたところ白色沈殿が生じた。混合液を濾紙で濾過し、82.1gの白色沈殿を回収した。
該白色沈殿81.1gと3−メチル−1−ブタノール238.0g(2.70mol)を容積500mLのナス型フラスコに入れた。該フラスコを、温度調節器のついたオイルバスと真空ポンプと真空コントローラーを接続したロータリーエバポレーターに取り付けた。ロータリーエバポレーターのパージバルブ出口は大気圧で流れている窒素ガスのラインに接続した。系内を窒素置換した後、オイルバス温度を146℃に設定し、該フラスコを該オイルバスに浸漬してロータリーエバポレーターの回転を開始した。ロータリーエバポレーターのパージバルブを開放したまま大気圧窒素下で約7時間低沸成分の留去を行い、続いて系内を徐々に減圧にし、系内圧力が76kPa〜30kPaの状態で残存低沸成分を留去した。低沸成分の留出がみられなくなった後、該フラスコをオイルバスから上げ冷却した。該フラスコには残留液107.0gが得られた。H、13C、119Sn−NMRの分析結果から、該フラスコ中の残留液に含有される1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンは96.4wt%であった。
工程(1−7):再生されたジアルキルスズ触媒の炭酸エステル製造工程への使用
工程(1−2)で説明した、炭酸エステル製造工程において、抜き出しライン16よりジアルキルスズ触媒組成物を18g/hrで抜き出しながら、一方で、供給ライン17より、工程(1−6)で得られた1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを96.5wt%含有する溶液を18g/hrで供給した。回収ライン15からは99wt%の炭酸ビス(3−メチルブチル)が944g/hrで回収され、工程(1−6)で製造されたジアルキルスズ触媒の使用による炭酸エステル製造工程への影響は確認されなかった。
工程(2−1):ジアルキルスズ触媒の失活体の置換基交換反応
実施例1の工程(1−2)と同じ方法で得られた失活体組成物125gを、窒素雰囲気下において、500mLナス型フラスコに入れ、ついで、無水酢酸145.0gを加え、25℃で1時間撹拌した。該フラスコに、留出液受器と連結した還流冷却器付き分留頭、および温度計を取り付け、該フラスコ内を真空−窒素置換したのち、該フラスコを、50℃に加熱したオイルバスに浸漬した。容器内を徐々に減圧し、余剰の無水酢酸等を留去し、該フラスコ内に残留物を125.9g得た。残留物についてHおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該残留物はトリ−n−ブチルアセトキシスズおよびジ−n−ブチルジアセトキシスズ、および、119Sn−NMRにおいて−240〜−605ppmに複数の化学シフトを示すスズ原子を含有する有機スズ化合物の混合物であった。該混合物において、トリ−n−ブチルアセトキシスズは21.1wt%、ジ−n−ブチルジアセトキシスズは63.7wt%であった。
工程(2−2):アルキル基再分配反応
窒素雰囲気下において、工程(2−1)で得られた混合物123.7gを、200mL金属製圧力容器(日本国、耐圧硝子工業社製、TSV−N2型)に入れた。該金属製圧力容器を250℃に加熱したオイルバスに浸漬し、30分間加熱した。該耐圧反応容器を室温付近まで冷却したのち、反応液を122.9g回収した。反応液について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該反応液は、ジ−n−ブチルジアセトキシスズ、トリ−n−ブチルアセトキシスズ、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ジアセトキシジスタンオキサンを含有する有機スズ化合物の混合物であり、ジ−n−ブチル−ジアセトキシスズが63.7wt%、トリ−n−ブチルアセトキシスズが約1wt%、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ジアセトキシジスタンオキサンが31.4wt%であった。
工程(2−3):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(2−2)で得られた混合物を121.3g、および0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を290mL、3−メチル−1−ブタノールを220.3g使用した以外は実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを91.0wt%含有する溶液118.6gを得た。
工程(3−1):ジアルキルスズ触媒の失活体の置換基交換反応
実施例1の工程(1−2)と同じ方法で得られた失活体組成物130g、および、トルエン(日本国、和光純薬工業社製、特級)100gを、500mLナス型フラスコに入れた。該ナス型フラスコにディーンスターク管、ジムロート冷却器および三方コックを取り付けた。三方コックを、常圧で流れている窒素ガスのラインに接続した。
該フラスコを、あらかじめ140℃に加熱しておいたオイルバスに浸漬し、トルエンを還流させ、該フラスコ内に塩化水素ガスを約150mL/分で流入させた。トルエンの還流とともに、ディーンスターク管に水が回収され、16時間反応をおこなったところで反応を終了した。該フラスコを室温付近まで冷却した後、該フラスコに窒素を3時間パージした。得られた溶液からトルエンを留去して、120.4gの溶液が得られた。該溶液について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該溶液はトリ−n−ブチルクロロスズとジ−n−ブチルジクロロスズの混合物であり、トリ−n−ブチルクロロスズは17.1wt%、ジ−n−ブチルジクロロスズは64.2wt%であった。
工程(3−2):アルキル基再分配反応
窒素雰囲気下において、工程(3−1)で得られた混合物118.2gを、300mLテフロン(登録商標)内筒容器(日本国、耐圧硝子工業社製、TAF−SR型)に入れた。該容器を250℃に加熱したオイルバスに浸漬し、15時間加熱した。該容器を室温付近まで冷却したのち、反応液を116.9g回収した。反応液について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該反応液は、ジ−n−ブチルジクロロスズを93.1wt%含有する溶液であった。
工程(3−3):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(3−2)で得られた溶液115.9gを工程(1−5)で得られた溶液の代わりに使用し、0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を330mL、3−メチル−1−ブタノールを292.2g使用した以外は実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを98.0wt%含有する溶液119.1gを得た。
工程(4−1):脱アルキル基反応
実施例1の工程(1−2)と同じ方法で得られた失活体組成物150.0g、および、1−デカノール(日本国、和光純薬工業社製、特級)120.3gを、500mLナス型フラスコに入れた。該ナス型フラスコにディーンスターク管、ジムロート冷却器および三方コックを取り付けた。三方コックを、常圧で流れている窒素ガスのラインに接続した。
該フラスコを、あらかじめ250℃に加熱しておいたオイルバスに浸漬し、1−デカノールを還流させ、該フラスコ内に塩化水素ガスを約150mL/分で流入させた。1−デカノールの還流とともに、ディーンスターク管に水が回収され、15時間反応をおこなったところで反応を終了した。該フラスコを室温付近まで冷却した後、該フラスコに窒素を3時間パージした。得られた溶液から1−デカノールを留去して、135.8gの溶液が得られた。該溶液について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該溶液はジ−n−ブチルジクロロスズを81.1wt%含有する混合物であった。
工程(4−2)::ジアルキルスズ化合物の分離
工程(4−1)で得られた混合物133.2gを200mLナス型フラスコに入れ、該フラスコに留出液受器と連結した還流冷却器付き分留頭、および温度計を取り付けた。該フラスコ内を真空−窒素置換したのち、該フラスコを100℃に加熱したオイルバスに浸漬した。容器内を徐々に減圧し、最終的に1.3kPaとし、留出物を26.3g、残留物を106.3g回収した。残留物について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該留出物は、ジ−n−ブチルジクロロスズであった。
工程(4−3):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(4−2)で得られたジ−n−ブチルジクロロスズ105.5gを工程(1−3)で得られた溶液の代わりに使用し、0.1mol/L水酸化カリウム水溶液320mL、および3−メチル−1−ブタノール287.8gを使用した以外は、実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを106.1g得た。
工程(5−1):ジアルキルスズ触媒の失活体の置換基交換反応
実施例1の工程(1−2)と同じ方法で得られた失活体組成物200gを使用し、無水酢酸145.0gの代わりに、酢酸182.9gと無水酢酸124.4gの混合液305.2gを使用した以外は、実施例2の工程(2−1)と同様の方法をおこない、トリ−n−ブチルアセトキシスズおよびジ−n−ブチルジアセトキシスズ、および、119Sn−NMRにおいて−240〜−605ppmに複数の化学シフトを示すスズ原子を含有する有機スズ化合物の混合物を201.5g得た。該混合物において、トリ−n−ブチルアセトキシスズは20.1wt%、ジ−n−ブチルジアセトキシスズは64.1wt%であった。
工程(5−2):アルキル基再分配反応
工程(5−1)で得られた混合物200.1gを、工程(2−1)で得られた混合物の代わりに使用した以外は、実施例2の工程(2−2)と同様の方法をおこない、ジ−n−ブチルジアセトキシスズ、トリ−n−ブチルアセトキシスズ、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ジアセトキシジスタンオキサンを含有する混合物を199.3g得た。該混合物おいて、ジ−n−ブチル−ジアセトキシスズは63.7wt%、トリ−n−ブチルアセトキシスズが約1wt%、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ジアセトキシジスタンオキサンが32.3wt%であった
工程(5−3):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(5−2)で得られた混合物198.3gおよび0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を360mL、3−メチル−1−ブタノールを544.3g使用した以外は実施例1の工程(1−4)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを95.6wt%含有する溶液184.7gを得た。
工程(6−1):脱アルキル基反応
実施例1の工程(1−2)と同様の方法で得られた失活体組成物180gを、窒素雰囲気下において、500mLナス型フラスコに入れ、ついで、酢酸164.6gおよび無水酢酸280.0gを加えた。該フラスコを、155℃に加熱したオイルバスに浸漬し、溶液を還流させながら5時間撹拌した。該フラスコを室温まで冷却後、該フラスコに、留出液受器と連結した還流冷却器付き分留頭、および温度計を取り付け、該フラスコ内を真空−窒素置換した。該フラスコを、50℃に加熱したオイルバスに浸漬し、容器内を徐々に減圧し、余剰の酢酸および無水酢酸等を留去し、該フラスコ内に残留物を181.5g得た。残留物についてHおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該残留物はジ−n−ブチルジアセトキシスズを84.8wt%含有していた。
工程(6−2):ジアルキルスズ化合物の分離
工程(6−1)で得られた、ジ−n−ブチルジアセトキシスズを84.8wt%含有する溶液180.0gを300mLナス型フラスコに入れ、該フラスコに留出液受器と連結した還流冷却器付き分留頭、および温度計を取り付けた。該フラスコ内を真空−窒素置換したのち、該フラスコを180℃に加熱したオイルバスに浸漬した。容器内を徐々に減圧し、最終的に0.01kPaとし、留出物を150.3g回収した。留出物について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該留出物は、ジ−n−ブチルジアセトキシスズであった
工程(6−3):ジアルキルスズ化合物からのジアルキルスズ触媒の再生
工程(6−2)で得られたジ−n−ブチルジアセトキシスズ149.1gを、工程(1−5)で得られた反応液の代わりに使用し、0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を350mL、3−メチル−1−ブタノールを350.9g使用した以外は実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを130.8g得た。
工程(7−1):ジアルキルスズ触媒の製造
容積5000mLのナス型フラスコに、ジ−n−オクチルスズオキシド(日本国、三共有機合成社製)972g(2.7mol)および3−メチル−1−ブタノール2100g(23.9mol)を入れた。該フラスコを、温度調節器のついたオイルバスと真空ポンプと真空コントローラーを接続したエバポレーターに取り付けた。エバポレーターのパージバルブ出口は常圧で流れている窒素ガスのラインと接続した。エバポレーターのパージバルブを閉め、系内の減圧を行った後、パージバルブを徐々に開き、系内に窒素を流し、常圧に戻した。オイルバス温度を約145℃に設定し、該フラスコを該オイルバスに浸漬してエバポレーターの回転を開始した。エバポレーターのパージバルブを開放したまま大気圧窒素下で約40分間加熱したところで、水を含む3−メチル−1−ブタノールの蒸留が始まった。この状態を7時間保った後、パージバルブを閉め、系内を徐々に減圧し、系内の圧力が74〜35kPaの状態で過剰の3−メチル−1−ブタノールを蒸留した。留分が出なくなった後、該フラスコをオイルバスからあげた。該フラスコが室温(25℃)付近まで冷却されたのち、該フラスコをオイルバスからあげてパージバルブを徐々に開き系内の圧力を大気圧に戻した。該フラスコには反応液1176gが得られた。119Sn、H、13C−NMRの分析結果から、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンがジ−n−オクチルスズオキシドに対して収率99%で得られたことを確認した。同様の操作を12回繰り返し、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンを合計14120g得た。
工程(7−2):炭酸エステルの製造およびジアルキルスズ触媒の失活体組成物の回収
図2に示すような連続製造装置において、炭酸エステルを製造した。充填物Metal Gauze CYを充填した、内径151mm,有効長さ5040mmの塔型反応器102に、移送ライン4から上記で製造した1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを5887g/hrで供給し、移送ライン2から蒸留塔101で精製された3−メチル−1−ブタノールを14953g/hrで供給した。該反応器内102は、液温度が160℃になるようにヒーターおよびリボイラー112によって調整し、圧力が約120kPa−Gになるように圧力調節バルブによって調整した。該反応器内の滞留時間は約17分であった。反応器上部から移送ライン6を経て水を含む3−メチル−1−ブタノール15037g/hrを、および、供給ライン1を経て3−メチル−1−ブタノール824g/hrを、充填物Metal Gauze CYを充填しリボイラー111およびコンデンサー121を備えた蒸留塔101に輸送し、蒸留精製を行った。蒸留塔101の上部では高濃度の水を含む留分がコンデンサー121によって凝縮され回収ライン3から回収された。精製された3−メチル−1−ブタノールは、蒸留塔101の下部にある移送ライン2を経て塔型反応器102に輸送した。塔型反応器102の下部からジ−n−オクチル−ビス(3−メチルブチルオキシ)スズと1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを含むアルキルスズアルコキシド触媒組成物を得、移送ライン5を経て薄膜蒸発装置103に供給した。薄膜蒸発装置103において3−メチル−1−ブタノールを留去し、コンデンサー123、移送ライン8および移送ライン4を経て塔型反応器102に戻した。薄膜蒸発装置103の下部から移送ライン7を経てアルキルスズアルコキシド触媒組成物を輸送し、ジ−n−オクチル−ビス(3−メチルブチルオキシ)スズと1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンの流量が約6627g/hrになるように調節しオートクレーブ104に供給した。オートクレーブに移送ライン9より、二酸化炭素を973g/hrで供給し、オートクレーブ内圧を4MPa−Gに維持した。オートクレーブにおける温度を120℃に設定し、滞留時間を約4時間に調整し、二酸化炭素とアルキルスズアルコキシド触媒組成物との反応を行い、炭酸ビス(3−メチルブチル)を含む反応液を得た。該反応液を移送ライン10と調節バルブを介して除炭槽105に移送し残存二酸化炭素を除去し、移送ライン11から二酸化炭素を回収した。その後、該反応液を、移送ライン12を経て約142℃、約0.5kPaとした薄膜蒸発装置106に移送し、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンの流量が約5887g/hrになるように調節し供給して、炭酸ビス(3−メチルブチル)を含む留分を得、一方で蒸発残渣を移送ライン13と移送ライン4を介して、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンの流量が約5887g/hrになるように調節し塔型反応器102に循環した。炭酸ビス(3−メチルブチル)を含む留分はコンデンサー126および移送ライン14を経て、充填物Metal Gauze CYを充填しリボイラー117およびコンデンサー127を備えた蒸留塔107に959g/hrで供給して、蒸留精製を行った後、回収ライン15から99wt%の炭酸ビス(3−メチルブチル)を944g/hr得た。移送ライン13のアルキルスズアルコキシド触媒組成物を119Sn,H,13C−NMRによる分析を行ったところ、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンが含まれており、ジ−n−オクチル−ビス(3−メチルブチルオキシ)スズは含まれていなかった。上記連続運転を約240時間行った後、抜き出しライン16からアルキルスズアルコキシド触媒組成物を18g/hrで抜き出し、一方で供給ライン17から上記方法で製造した1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを18g/hrで供給し、抜き出しライン16から、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンの失活体組成物を200g抜き出した。119Sn−NMRによる分析を行ったところ、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンが約60wt%含まれている以外に、トリ−n−オクチル(3−メチルブチルオキシ)スズおよび−240〜−605ppmに、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンの失活成分の複数のNMRシフトが見られた。該触媒組成物を失活体組成物として使用した。
工程(7−3):ジアルキルスズ触媒の失活体の置換基交換反応
工程(7−2)で得られた失活体組成物200gを工程(1−2)で得られた失活体組成物の代わりに使用し、無水酢酸231.0gを使用した以外は、実施例2の工程(2−1)と同様の方法をおこない、トリ−n−オクチルアセトキシスズおよびジ−n−オクチルジアセトキシスズ、および、119Sn−NMRにおいて−240〜−605ppmに複数の化学シフトを示すスズ原子を含有する有機スズ化合物の混合物を201.2g得た。該混合物において、トリ−n−オクチルアセトキシスズは23.4wt%、ジ−n−オクチルジアセトキシスズは62.8wt%であった。
工程(7−4):アルキル基再分配反応
工程(7−3)で得られた混合物199.3gを工程(2−1)で得られた混合物の代わりに使用した以外は、実施例2の工程(2−1)と同様の方法をおこない、反応液を197.3g回収した。反応液について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該反応液は、ジ−n−オクチルジアセトキシスズ、トリ−n−オクチルアセトキシスズ、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ジアセトキシジスタンオキサンを含有する混合物であり、ジ−n−オクチル−ジアセトキシスズが62.5wt%、トリ−n−オクチルアセトキシスズが約3wt%、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ジアセトキシジスタンオキサンが32.0wt%であった。
工程(7−5):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(7−4)で得られた混合物194.4gを工程(1−5)で得られた混合物の代わりに使用し、0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を290mL、3−メチル−1−ブタノールを297.6g使用した以外は、実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを95.2wt%含有する溶液181.0gを得た。
工程(8−1):脱アルキル基反応
実施例7の工程(7−2)と同じ方法で得られた失活体組成物230gを、実施例1の工程(1−2)で得られた失活体組成物の代わりに使用し、酢酸を158.0g、および無水酢酸を283.5g使用した以外は、実施例6の工程(6−1)と同様の方法をおこない、ジ−n−オクチルジアセトキシスズを85.8wt%含有する混合物を225.7g得た。
工程(8−2):ジアルキル体の分離
工程(8−1)で得られたジ−n−オクチルジアセトキシスズを85.8wt%含有する混合物を224.1g使用した以外は、実施例6の工程(6−2)と同様の方法をおこない、191.9gの留出物を得た。留出物について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該留出物は、ジ−n−オクチルジアセトキシスズであった。
工程(8−3):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(8−2)で得られたジ−n−オクチルジアセトキシスズ190.0gを、実施例1の工程(1−5)で得られた混合物の代わりに使用し、0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を334mL、3−メチル−1−ブタノールを280.6g使用した以外は実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを175.4g得た。
工程(9−1):脱アルキル基反応
実施例7の工程(7−2)と同じ方法で得られた失活体組成物195gを、実施例1の工程(1−2)で得られた失活体組成物の代わりに使用し、無水酢酸を271.1g使用した(酢酸は使用しなかった)以外は、実施例6の工程(6−1)と同様の方法をおこない、ジ−n−オクチルジアセトキシスズを86.2wt%含有する混合物を191.4g得た。
工程(9−2):ジアルキル体の分離
工程(9−1)で得られたジ−n−オクチルジアセトキシスズを86.2wt%含有する混合物を190.2g使用し、温度を200℃とした以外は、実施例6の工程(6−2)と同様の方法をおこない、184.6gの留出物を得た。留出物について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該留出物は、ジ−n−オクチルジアセトキシスズであった。
工程(9−3):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(9−2)で得られたジ−n−オクチルジアセトキシスズを181.2g使用し、0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を292mL、3−メチル−1−ブタノールを266.7g使用した以外は実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを166.7g得た。
工程(10−1):ジアルキルスズ触媒の失活体の置換基交換反応
実施例7の工程(7−2)と同じ方法で得られた失活体組成物220gを使用し、無水酢酸の代わりに、酢酸150.1gおよび無水酢酸255.4gの混合液403.2gを使用した以外は、実施例7の工程(7−3)と同様の方法をおこない、トリ−n−オクチルアセトキシスズおよびジ−n−オクチルジアセトキシスズ、および、119Sn−NMRにおいて−240〜−605ppmに複数の化学シフトを示すスズ原子を含有する有機スズ化合物の混合物を221.3g得た。該混合物において、トリ−n−オクチルアセトキシスズは22.8wt%、ジ−n−オクチルジアセトキシスズは62.2wt%であった。
工程(10−2):アルキル基再分配反応
工程(10−1)で得られた混合物220.1gを、実施例7の工程(7−3)で得られた混合物の代わりに使用した以外は、実施例7の工程(7−4)と同様の方法をおこない、反応液を218.8g回収した。反応液について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該反応液は、ジ−n−オクチルジアセトキシスズ、トリ−n−オクチルアセトキシスズ、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ジアセトキシジスタンオキサンを含有する混合物であり、ジ−n−オクチル−ジアセトキシスズが62.7wt%、トリ−n−オクチルアセトキシスズが約3wt%、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ジアセトキシジスタンオキサンが31.8wt%であった。
工程(10−3):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(10−2)で得られた混合物215.8gを、実施例1の工程(1−5)で得られた混合物の代わりに使用し、0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を277mL、3−メチル−1−ブタノールを328.5g使用した以外は実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを95.2wt%含有する溶液200.4gを得た。
工程(11−1):トリ−n−オクチル(3−メチルブチルオキシ)スズの分離
実施例7の工程(7−2)と同様の方法で得られた失活体組成物130gを500mLナス型フラスコに入れ、該フラスコに、三方コック、ヘリパックNo.3を充填した長さ45cmの蒸留カラムおよび留出液受器と連結した還流冷却器付き分留頭、および温度計を取り付け、容器内を真空−窒素置換した。容器内を大気圧窒素下とし、該フラスコを約230℃に加熱したオイルバスに浸漬した。約20分後、該失活体組成物の温度が約210℃となったところで、容器内を徐々に減圧し、留出する成分を回収した。最終的に、容器内の圧力が約0.01kPaとしたところで蒸留を終了した。留出液およびフラスコ内の残存物について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなった。留出液はトリ−n−オクチル(3−メチルブチルオキシ)スズであった。フラスコ内の残存物は、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンを77.2wt%含有し、119Sn−NMRにおいて−240〜−605ppmに複数の化学シフトを示すスズ原子を含有する有機スズ化合物の混合物であった。得られた留出液は28.9g、フラスコ内の残存物は100.1gであった。
工程(11−2):ジアルキルスズ触媒の失活体の置換基交換反応
工程(11−1)で得られたトリ−n−オクチル(3−メチルブチルオキシ)スズ27.4gを300mLナス型フラスコに入れ、ついで、無水酢酸27.2gを加え、25℃で1時間撹拌した。該フラスコに、留出液受器と連結した還流冷却器付き分留頭、および温度計を取り付け、該フラスコ内を真空−窒素置換したのち、該フラスコを、50℃に加熱したオイルバスに浸漬した。容器内を徐々に減圧し、余剰の無水酢酸等を留去し、該フラスコ内に残留物を25.9g得た。残留物についてHおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該残留物はトリ−n−オクチルアセトキシスズであった。
一方、工程(11−1)で得られた、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンを77.2wt%含有する残存物99.4gを、500mL金属製圧力容器に入れ、ついで、無水酢酸を121.6g加え、撹拌した。該金属製圧力容器を200℃に加熱したオイルバスに浸漬し、3時間加熱した。該金属製圧力容器を室温(約25℃)付近まで冷却したのち、内容物を、500mLナス型フラスコに移した。該フラスコに留出液受器と連結した還流冷却器付き分留頭、および温度計を取り付け、該フラスコ内を真空−窒素置換したのち、該フラスコを、50℃に加熱したオイルバスに浸漬した。容器内を徐々に減圧し、酢酸イソアミルと余剰の無水酢酸を留去し、該フラスコ内に残留物を107.2g得た。残留物についてHおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該残留物は、ジ−n−オクチルジアセトキシスズとn−オクチルトリアセトキシスズを含有する混合物であり、該混合物中のジ−n−オクチルジアセトキシスズは77.8wt%、n−オクチルトリアセトキシスズは22.1wt%であった。該混合物を、先に得られたトリ−n−オクチルアセトキシスズと混合し、次の工程(11−3)の原料とした。
工程(11−3):アルキル基再分配反応
窒素雰囲気下において、工程(11−2)で得られた混合物132.1gを、工程(1−4)で得られた混合物の代わりに使用した以外は、実施例1の工程(1−5)と同様の方法をおこない、反応液を131.0g回収した。反応液について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該反応液は、ジ−n−オクチルジアセトキシスズとn−オクチルトリアセトキシスズを含有する混合物であり、該混合物中のジ−n−オクチルジアセトキシスズは95.1wt%であった。
工程(11−4):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(11−3)で得られた反応液130.1gを、実施例1の工程(1−5)で得られた反応液の代わりに使用し、0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を312mL、3−メチル−1−ブタノール194.3gを使用した以外は、実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを94.4wt%含有する溶液を120.0g得た。
工程(12−1):トリ−n−オクチル(3−メチルブチルオキシ)スズの分離
実施例7の工程(7−2)と同様の方法で得られた失活体組成物143gを使用した以外は、実施例11の工程(11−1)と同様の方法をおこない、留出液33.2gとフラスコ内の残存物109.0gを得た。Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、留出液はトリ−n−オクチル(3−メチルブチルオキシ)スズであり、フラスコ内の残存物は、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンを78.1wt%含有し、119Sn−NMRにおいて−240〜−605ppmに複数の化学シフトを示すスズ原子を含有する有機スズ化合物の混合物であった。
工程(12−2):ジアルキルスズ触媒の失活体の置換基交換反応
工程(12−1)で得られたトリ−n−オクチル(3−メチルブチルオキシ)スズ32.1gを300mLナス型フラスコに入れ、ついで、無水酢酸23.2gと酢酸17.7gを加え、25℃で1時間撹拌した。溶液を採取し、ガスクロマトグラフィーで分析をおこなったところ、酢酸イソアミルが生成していることが確認された。該フラスコに、留出液受器と連結した還流冷却器付き分留頭、および温度計を取り付け、該フラスコ内を真空−窒素置換したのち、該フラスコを、50℃に加熱したオイルバスに浸漬した。容器内を徐々に減圧し、酢酸イソアミルと余剰の無水酢酸を留去し、該フラスコ内に残留物を30.5g得た。残留物についてHおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該残留物はトリ−n−オクチルアセトキシスズであった。
一方、工程(12−1)で得られた、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンを78.1wt%含有する残存物108.8gを、500mL金属製圧力容器に入れ、ついで、無水酢酸121.6gと酢酸78.5gを加え、撹拌した。該金属製圧力容器を200℃に加熱したオイルバスに浸漬し、3時間加熱した。該金属製圧力容器を室温(約25℃)付近まで冷却したのち、内容物を、500mLナス型フラスコに移した。該フラスコに留出液受器と連結した還流冷却器付き分留頭、および温度計を取り付け、該フラスコ内を真空−窒素置換したのち、該フラスコを、50℃に加熱したオイルバスに浸漬した。容器内を徐々に減圧し、酢酸イソアミルと余剰の無水酢酸を留去し、該フラスコ内に残留物を117.2g得た。残留物についてHおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該残留物は、ジ−n−オクチルジアセトキシスズとn−オクチルトリアセトキシスズを含有する混合物であり、該混合物中のジ−n−オクチルジアセトキシスズは77.6wt%、n−オクチルトリアセトキシスズは22.3wt%であった。該混合物を、先に得られたトリ−n−オクチルアセトキシスズと混合し、次の工程(11−3)の原料とした。
工程(12−3):アルキル基再分配反応
窒素雰囲気下において、工程(12−2)で得られた混合物146.5gを、実施例1の工程(1−4)で得られた混合物の代わりに使用した以外は、実施例1の工程(1−5)と同様の方法をおこない、反応液を145.3g回収した。反応液について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該反応液は、ジ−n−オクチルジアセトキシスズとn−オクチルトリアセトキシスズを含有する混合物であり、該混合物中のジ−n−オクチルジアセトキシスズは95.5wt%であった。
工程(12−4):ジアルキルスズ化合物からのジアルキルスズ触媒の再生
工程(12−3)で得られた反応液144.3gを、実施例1の工程(1−5)で得られた反応液の代わりに使用し、0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を322mL、3−メチル−1−ブタノール212.8gを使用した以外は、実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを94.7wt%含有する溶液を129.1g得た。
工程(13−1):ジアルキルスズ触媒の失活体の置換基交換反応
実施例7の工程(7−2)と同じ方法で得られた失活体組成物215gを、実施例1の工程(1−2)で得られた失活体組成物の代わりに使用し、無水酢酸の代わりに無水プロピオン酸317.9gを使用した以外は、実施例2の工程(2−1)と同様の方法をおこない、トリ−n−オクチルプロピオニルオキシスズおよびジ−n−オクチルジプロピオニルオキシスズ、および、119Sn−NMRにおいて−240〜−605ppmに複数の化学シフトを示すスズ原子を含有する有機スズ化合物の混合物を227.2g得た。該混合物において、トリ−n−オクチルプロピオニルオキシシスズは22.8wt%、ジ−n−オクチルジプロピオニルオキシスズは63.4wt%であった。
工程(13−2):アルキル基再分配反応
工程(13−1)で得られた混合物223.2gを、工程(2−1)で得られた混合物の代わりに使用した以外は、実施例2の工程(2−1)と同様の方法をおこない、反応液を222.5g回収した。反応液について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該反応液は、ジ−n−オクチルジプロピオニルオキシスズ、トリ−n−オクチルプロピオニルオキシスズ、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ジプロピオニルオキシジスタンオキサンを含有する混合物であり、ジ−n−オクチルジプロピオニルオキシスズが63.0wt%、トリ−n−オクチルプロピオニルオキシスズが約5wt%、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ジプロピオニルオキシジスタンオキサンが30.0wt%であった。
工程(13−3):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(13−2)で得られた混合物221.8gを、実施例1の工程(1−5)で得られた混合物の代わりに使用し、0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を322mL、3−メチル−1−ブタノールを298.8g使用した以外は実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを92.8wt%含有する溶液192.3gを得た。
工程(14−1):脱アルキル基反応
実施例7の工程(7−2)と同様の方法で得られた失活体組成物230gを、実施例1の工程(1−2)で得られた失活体組成物の代わりに使用し、酢酸の代わりにプロピオン酸195.2gおよび無水酢酸の代わりに無水プロピオン酸340.2g使用した以外は、実施例6の工程(6−1)と同様の方法をおこない、ジ−n−オクチルジプロピオニルオキシスズを86.0wt%含有する混合物を238.7g得た。
工程(14−2):ジアルキル体の分離
工程(14−1)で得られたジ−n−オクチルジプロピオニルオキシスズを86.0wt%含有する混合物を237.1g使用し、温度を200℃とした以外は、実施例6の工程(6−2)と同様の方法をおこない、191.9gの留出物を得た。留出物について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該留出物は、ジ−n−オクチルジアセトキシスズであった。
工程(14−2):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(14−1)で得られたジ−n−オクチルジプロピオニルオキシスズを86.0wt%含有する混合物237.1gを、実施例1の工程(1−5)で得られた反応液の代わりに使用し、0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を396mL、3−メチル−1−ブタノールを354.5g使用した以外は、実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを84.5wt%含有する混合物を211.3g得た。
工程(15−1):トリ−n−オクチル(3−メチルブチルオキシ)スズの分離
実施例7の工程(7−2)と同様の方法で得られた失活体組成物190gを使用した以外は、実施例11の工程(11−1)と同様の方法をおこない、留出液43.1gと、フラスコ内の残存物146.1gを得た。該流留出液と該フラスコ内の残存物についてHおよび119Sn−NMR測定をおこなった。留出液はトリ−n−オクチル(3−メチルブチルオキシ)スズであった。フラスコ内の残存物は、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンを77.6wt%含有し、119Sn−NMRにおいて−240〜−605ppmに複数の化学シフトを示すスズ原子を含有する有機スズ化合物の混合物であった。
工程(15−2):ジアルキルスズ触媒の失活体の置換基交換反応
工程(15−1)で得られたトリ−n−オクチル(3−メチルブチルオキシ)スズ42.2gを300mLナス型フラスコに入れ、ついで、プロピオン酸28.7gおよび無水プロピオン酸51.5gを加え、25℃で1時間撹拌した。溶液を採取し、ガスクロマトグラフィーで分析をおこなったところ、プロピオン酸イソアミルが生成していることが確認された。該フラスコに、留出液受器と連結した還流冷却器付き分留頭、および温度計を取り付け、該フラスコ内を真空−窒素置換したのち、該フラスコを、80℃に加熱したオイルバスに浸漬した。容器内を徐々に減圧し、プロピオン酸イソアミルと余剰のプロピオン酸および無水プロピオン酸を留去し、該フラスコ内に残留物を41.1g得た。残留物についてHおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該残留物はトリ−n−オクチルプロピオニルオキシスズであった。
一方、工程(15−1)で得られた、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンを77.6wt%含有する残存物145.1gを、500mL金属製圧力容器に入れ、ついで、プロピオン酸128.9gおよび無水プロピオン酸226.7g加え、撹拌した。該金属製圧力容器を200℃に加熱したオイルバスに浸漬し、4時間加熱した。該金属製圧力容器を室温(約25℃)付近まで冷却したのち、内容物を、500mLナス型フラスコに移した。該フラスコに留出液受器と連結した還流冷却器付き分留頭、および温度計を取り付け、該フラスコ内を真空−窒素置換したのち、該フラスコを、80℃に加熱したオイルバスに浸漬した。容器内を徐々に減圧し、余剰のプロピオン酸および無水プロピオン酸等を留去し、該フラスコ内に残留物を167.7g得た。残留物についてHおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該残留物は、ジ−n−オクチルプロピオニルオキシスズとn−オクチルトリプロピオニルオキシスズを含有する混合物であり、該混合物中のジ−n−オクチルジプロピオニルオキシスズは77.0wt%、n−オクチルトリプロピオニルオキシスズは22.4wt%であった。該混合物を、先に得られたトリ−n−オクチルプロピオニルオキシスズと混合し、次の工程(15−3)の原料とした。
工程(15−3):アルキル基再分配反応
窒素雰囲気下において、工程(15−2)で得られた混合物207.2gを、実施例1の工程(1−4)で得られた混合物の代わりに使用した以外は、実施例1の工程(1−5)と同様の方法をおこない、反応液を205.9g回収した。反応液について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該反応液は、ジ−n−オクチルプロピオニルオキシスズとn−オクチルトリプロピオニルオキシスズを含有する混合物であり、該混合物中のジ−n−オクチルジプロピオニルオキシスズは91.0wt%であった。
工程(15−4):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(15−3)で得られた反応液204.6gを、実施例1の工程(1−5)で得られた反応液の代わりに使用し、0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を332mL、3−メチル−1−ブタノール284.1gを使用した以外は、実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを90.8wt%含有する溶液を171.5g得た。
工程(16−1):ジアルキルスズ触媒の製造
容積5000mLのナス型フラスコに、ジ−n−オクチルスズオキシド(日本国、三共有機合成社製)893g(2.48mol)および2−エチル−1−ブタノール2403g(23.6mol)を入れた。該フラスコを、温度調節器のついたオイルバスと真空ポンプと真空コントローラーを接続したエバポレーターに取り付けた。エバポレーターのパージバルブ出口は常圧で流れている窒素ガスのラインと接続した。エバポレーターのパージバルブを閉め、系内の減圧を行った後、パージバルブを徐々に開き、系内に窒素を流し、常圧に戻した。オイルバス温度を約165℃に設定し、該フラスコを該オイルバスに浸漬してエバポレーターの回転を開始した。エバポレーターのパージバルブを開放したまま大気圧窒素下で約40分間加熱したところで、水を含む2−エチル−1−ブタノールの蒸留が始まった。この状態を7時間保った後、パージバルブを閉め、系内を徐々に減圧し、系内の圧力が74〜25kPaの状態で過剰の2−エチル−1−ブタノールを蒸留した。留分が出なくなった後、該フラスコをオイルバスからあげた。該フラスコが室温(25℃)付近まで冷却されたのち、該フラスコをオイルバスからあげてパージバルブを徐々に開き系内の圧力を大気圧に戻した。該フラスコには反応液1114gが得られた。119Sn、H、13C−NMRの分析結果から、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンがジ−n−オクチルスズオキシドに対して収率99%で得られたことを確認した。同様の操作を12回繰り返し、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンを合計13380g得た。
工程(16−2):炭酸エステルの製造およびジアルキルスズ触媒の失活体組成物の回収
図2に示すような連続製造装置において、炭酸エステルを製造した。充填物Metal Gauze CYを充填した、内径151mm,有効長さ5040mmの塔型反応器102に、移送ライン4から上記で製造した1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを6074g/hrで供給し、移送ライン2から蒸留塔101で精製された2−エチル−1−ブタノールを12260g/hrで供給した。該反応器内102は液温度が160℃になるようにヒーターおよびリボイラー112によって調整し、圧力が約120kPa−Gになるように圧力調節バルブによって調整した。該反応器内の滞留時間は約17分であった。反応器上部から移送ライン6を経て水を含む2−エチル−1−ブタノール12344g/hrを、および、供給ライン1を経て2−エチル−1−ブタノール958g/hrを、充填物Metal Gauze CYを充填しリボイラー111およびコンデンサー121を備えた蒸留塔101に輸送し、蒸留精製を行った。蒸留塔101の上部では高濃度の水を含む留分がコンデンサー121によって凝縮され回収ライン3から回収された。精製された2−エチル−1−ブタノールは、蒸留塔101の下部にある移送ライン2を経て塔型反応器102に輸送した。塔型反応器102の下部からジ−n−オクチル−ビス(2−エチルブチルオキシ)スズと1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを含むアルキルスズアルコキシド触媒組成物を得、移送ライン5を経て薄膜蒸発装置103に供給した。薄膜蒸発装置103において2−エチル−1−ブタノールを留去し、コンデンサー123、移送ライン8および移送ライン4を経て塔型反応器102に戻した。薄膜蒸発装置103の下部から移送ライン7を経てアルキルスズアルコキシド触媒組成物を輸送し、ジ−n−オクチル−ビス(2−エチルブチルオキシ)スズと1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)ジスタンオキサンの流量が約6945g/hrになるように調節しオートクレーブ104に供給した。オートクレーブに移送ライン9より、二酸化炭素を973g/hrで供給し、オートクレーブ内圧を4MPa−Gに維持した。オートクレーブにおける温度を120℃に設定し、滞留時間を約4時間に調整し、二酸化炭素とアルキルスズアルコキシド触媒組成物との反応を行い、炭酸ビス(2−エチルブチル)を含む反応液を得た。該反応液を移送ライン10と調節バルブを介して除炭槽105に移送し残存二酸化炭素を除去し、移送ライン11から二酸化炭素を回収した。その後、該反応液を、移送ライン12を経て約142℃、約0.5kPaとした薄膜蒸発装置106に移送し、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)ジスタンオキサンの流量が約6074g/hrになるように調節し供給して、炭酸ビス(2−エチルブチル)を含む留分を得、一方で蒸発残渣を移送ライン13と移送ライン4を介して、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)ジスタンオキサンの流量が約6074g/hrになるように調節し塔型反応器102に循環した。炭酸ビス(2−エチルブチル)を含む留分はコンデンサー126および移送ライン14を経て、充填物Metal Gauze CYを充填しリボイラー117およびコンデンサー127を備えた蒸留塔107に959g/hrで供給して、蒸留精製を行った後、回収ライン16から99wt%の炭酸ビス(2−エチルブチル)を1075g/hr得た。移送ライン13のアルキルスズアルコキシド触媒組成物を119Sn,H,13C−NMRによる分析を行ったところ、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)ジスタンオキサンが含まれており、ジ−n−オクチル−ビス(2−エチルブチルオキシ)スズは含まれていなかった。上記連続運転を約220時間行った後、抜き出しライン16からアルキルスズアルコキシド触媒組成物を18g/hrで抜き出し、一方で供給ライン17から上記方法で製造した1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを18g/hrで供給し、抜き出しライン16から、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)ジスタンオキサンの失活体組成物を180g抜き出した。119Sn−NMRによる分析を行ったところ、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)ジスタンオキサンが約55wt%含まれている以外に、トリ−n−オクチル(2−エチルブチルオキシ)スズおよび−240〜−605ppmに、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)ジスタンオキサンの失活成分の複数のNMRシフトが見られた。該触媒組成物を失活体組成物として使用した。
工程(16−3):ジアルキルスズ触媒の失活体の置換基交換反応
工程(16−2)で得られた失活体組成物180gを、実施例1の工程(1−2)で得られた失活体組成物の代わりに使用し、無水酢酸202.1gを使用した以外は、実施例2の工程(2−1)と同様の方法をおこない、トリ−n−オクチルアセトキシスズおよびジ−n−オクチルジアセトキシスズ、および、119Sn−NMRにおいて−240〜−605ppmに複数の化学シフトを示すスズ原子を含有する有機スズ化合物の混合物を174.5g得た。該混合物において、トリ−n−オクチルアセトキシスズは26.4wt%、ジ−n−オクチルジアセトキシスズは57.9wt%であった。
工程(16−2):アルキル基再分配反応
工程(16−1)で得られた混合物173.1gを、実施例2の工程(2−1)で得られた混合物の代わりに使用した以外は、実施例2の工程(2−1)と同様の方法をおこない、反応液を172.0g回収した。反応液について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該反応液は、ジ−n−オクチルジアセトキシスズ、トリ−n−オクチルアセトキシスズ、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ジアセトキシジスタンオキサンを含有する混合物であり、ジ−n−オクチルジアセトキシスズが57.8wt%、トリ−n−オクチルアセトキシスズが約3wt%、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ジアセトキシジスタンオキサンが37.8wt%であった。
工程(16−3):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(16−2)で得られた混合物171.1gを、実施例1の工程(1−5)で得られた反応液の代わりに使用し、0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を255mL、2−エチル−1−ブタノールを303.7g使用した以外は、実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを95.6wt%含有する溶液165.2gを得た。
工程(17−1):脱アルキル基反応
実施例16の工程(16−2)と同様の方法で得られた失活体組成物215gを、実施例1の工程(1−2)で得られた失活体組成物の代わりに使用し、酢酸141.9gおよび無水酢酸を241.2g使用した以外は、実施例6の工程(6−1)と同様の方法をおこない、ジ−n−オクチルジアセトキシスズを83.8wt%含有する混合物を202.6g得た。
工程(17−2):ジアルキル体の分離
工程(17−1)で得られたジ−n−オクチルジアセトキシスズを83.8wt%含有する混合物を200.5g使用し、温度を200℃とした以外は、実施例6の工程(6−2)と同様の方法をおこない、195.1gの留出物を得た。留出物について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該留出物は、ジ−n−オクチルジアセトキシスズであった。
工程(17−3):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(17−2)で得られたジ−n−オクチルジアセトキシスズ193.6gを、実施例1の工程(1−5)で得られた反応液の代わりに使用し、0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を311mL、2−エチル−1−ブタノールを365.9g使用した以外は、実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを181.0g得た。
工程(18−1):トリ−n−オクチル(2−エチルブチルオキシ)スズの分離
実施例16の工程(16−2)と同様の方法で得られた失活体組成物148gを使用し、オイルバスの温度を250℃とした以外は、実施例11の工程(11−1)と同様の方法をおこない、留出液36.2gとフラスコ内の残存物110.6gを得た。留出液はトリ−n−オクチル(2−エチルブチルオキシ)スズであり、フラスコ内の残存物は、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンを72.8wt%含有し、119Sn−NMRにおいて−240〜−605ppmに複数の化学シフトを示すスズ原子を含有する有機スズ化合物の混合物であった。
工程(18−2):ジアルキルスズ触媒の失活体の置換基交換反応
工程(18−1)で得られたトリ−n−オクチル(2−エチルブチルオキシ)スズ35.1gを300mLナス型フラスコに入れ、ついで、プロピオン酸23.3gおよび無水プロピオン酸40.9gを加え、25℃で1時間撹拌した。溶液を採取し、ガスクロマトグラフィーで分析をおこなったところ、プロピオン酸イソアミルが生成していることが確認された。該フラスコに、留出液受器と連結した還流冷却器付き分留頭、および温度計を取り付け、該フラスコ内を真空−窒素置換したのち、該フラスコを、80℃に加熱したオイルバスに浸漬した。容器内を徐々に減圧し、プロピオン酸イソアミルと余剰のプロピオン酸および無水プロピオン酸等を留去し、該フラスコ内に残留物を33.3g得た。残留物についてHおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該残留物はトリ−n−オクチルプロピオニルオキシシスズであった。
一方、工程(18−1)で得られた、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンを72。8wt%含有する残存物110.1gを、500mL金属製圧力容器に入れ、ついで、プロピオン酸95.2gおよび無水プロピオン酸167.2g加え、撹拌した。該金属製圧力容器を200℃に加熱したオイルバスに浸漬し、3.5時間加熱した。該金属製圧力容器を室温(約25℃)付近まで冷却したのち、内容物を、500mLナス型フラスコに移した。該フラスコに留出液受器と連結した還流冷却器付き分留頭、および温度計を取り付け、該フラスコ内を真空−窒素置換したのち、該フラスコを、80℃に加熱したオイルバスに浸漬した。容器内を徐々に減圧し、余剰の無水プロピオン酸およびプロピオン酸等を留去し、該フラスコ内に残留物を123.4g得た。残留物についてHおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該残留物は、ジ−n−オクチルジプロピオニルオキシスズとn−オクチルトリプロピオニルオキシスズを含有する混合物であり、該混合物中のジ−n−オクチルジプロピオニルオキシスズは73.6wt%、n−オクチルトリプロピオニルオキシスズは26.1wt%であった。該混合物を、先に得られたトリ−n−オクチルプロピオニルオキシスズと混合し、次の工程(18−3)の原料とした。
工程(18−3):アルキル基再分配反応
窒素雰囲気下において、工程(18−2)で得られた混合物154.5gを、実施例1の工程(1−4)で得られた混合物の代わりに使用した以外は、実施例1の工程(1−5)と同様の方法をおこない、反応液を153.8g回収した。反応液について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該反応液は、ジ−n−オクチルジプロピオニルオキシスズとn−オクチルトリプロピルオキシスズを含有する混合物であり、該混合物中のジ−n−オクチルジプロピオニルオキシスズは90.5wt%であった。
工程(18−4):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(18−3)で得られた反応液152.2gを、実施例1の工程(1−5)で得られた反応液の代わりに使用し、0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を286mL、2−エチル−1−ブタノール244.9gを使用した以外は、実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを90.5wt%含有する溶液を131.5g得た。
工程(19−1):脱アルキル基反応
実施例16の工程(16−2)と同様の方法で得られた失活体組成物220gを、実施例1の工程(1−2)で得られた失活体組成物の代わりに使用し、酢酸の代わりにプロピオン酸179.3gおよび無水酢酸の代わりに無水プロピオン酸315.0g使用した以外は、実施例6の工程(6−1)と同様の方法をおこない、ジ−n−オクチルジプロピオニルオキシスズを84.0wt%含有する混合物を219.4g得た。
工程(19−2):ジアルキル体の分離
工程(19−1)で得られたジ−n−オクチルジプロピオニルオキシスズを84.0wt%含有する混合物を217.4g使用し、温度を220℃とした以外は、実施例6の工程(6−2)と同様の方法をおこない、212.4gの留出物を得た。留出物について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該留出物は、ジ−n−オクチルジプロピオニルオキシスズであった。
工程(19−2):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(19−1)で得られたジ−n−オクチルジプロピオニルオキシスズを86.0wt%含有する混合物211.3gを、実施例1の工程(1−5)で得られた反応液の代わりに使用し、0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を411mL、2−エチル−1−ブタノールを318.0g使用した以外は、実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを81.7wt%含有する混合物を194.4g得た。
工程(20−1):トリ−n−オクチル(2−エチルブチルオキシ)スズの分離
実施例16の工程(16−2)と同様の方法で得られた失活体組成物188gを使用し、オイルバスの温度を250℃とした以外は、実施例11の工程(11−1)と同様の方法をおこない、留出液48.3gとフラスコ内の残存物138.8gを得た。留出液はトリ−n−オクチル(2−エチルブチルオキシ)スズであり、フラスコ内の残存物は、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンを74.0wt%含有し、119Sn−NMRにおいて−240〜−605ppmに複数の化学シフトを示すスズ原子を含有する有機スズ化合物の混合物であった。
工程(20−2):ジアルキルスズ触媒の失活体の置換基交換反応
工程(20−1)で得られたトリ−n−オクチル(2−エチルブチルオキシ)スズ47.2gを300mLナス型フラスコに入れ、ついで、ヘキサン酸80.3gおよび無水ヘキサン酸92.6gを加え、25℃で1時間撹拌した。溶液を採取し、ガスクロマトグラフィーで分析をおこなったところ、プロピオン酸イソアミルが生成していることが確認された。該フラスコに、留出液受器と連結した還流冷却器付き分留頭、および温度計を取り付け、該フラスコ内を真空−窒素置換したのち、該フラスコを、80℃に加熱したオイルバスに浸漬した。容器内を徐々に減圧し、ヘキサン酸(2−エチルブチルオキシ)と余剰のヘキサン酸および無水ヘキサン酸等を留去し、該フラスコ内に残留物を48.3g得た。残留物についてHおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該残留物はトリ−n−オクチルヘキサノニルオキシシスズであった。
一方、工程(20−1)で得られた、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンを74.0wt%含有する残存物137.2gを、500mL金属製圧力容器に入れ、ついで、ヘキサン酸130.8gおよび無水プロピオン酸331.0g加え、撹拌した。該金属製圧力容器を200℃に加熱したオイルバスに浸漬し、6.2時間加熱した。該金属製圧力容器を室温(約25℃)付近まで冷却したのち、内容物を、500mLナス型フラスコに移した。該フラスコに留出液受器と連結した還流冷却器付き分留頭、および温度計を取り付け、該フラスコ内を真空−窒素置換したのち、該フラスコを、80℃に加熱したオイルバスに浸漬した。容器内を徐々に減圧し、余剰の無水ヘキサン酸およびヘキサン酸等を留去し、該フラスコ内に残留物を185.3g得た。残留物についてHおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該残留物は、ジ−n−オクチルジヘキサノニルオキシスズとn−オクチルトリヘキサノニルオキシスズを含有する混合物であり、該混合物中のジ−n−オクチルジヘキサノニルオキシスズは71.5wt%、n−オクチルトリヘキサノニルオキシスズは28.5wt%であった。該混合物を、先に得られたトリ−n−オクチルヘキサノニルオキシスズと混合し、次の工程(20−3)の原料とした。
工程(20−3):アルキル基再分配反応
窒素雰囲気下において、工程(20−2)で得られた混合物230.5gを、実施例1の工程(1−4)で得られた混合物の代わりに使用した以外は、実施例1の工程(1−5)と同様の方法をおこない、反応液を229.6g回収した。反応液について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該反応液は、ジ−n−オクチルジヘキサノニルオキシスズとn−オクチルトリヘキサノニルオキシスズを含有する混合物であり、該混合物中のジ−n−オクチルジヘキサノニルオキシスズは88.3wt%であった。
工程(20−4):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(20−3)で得られた反応液225.1gを、実施例1の工程(1−5)で得られた反応液の代わりに使用し、0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を280mL、2−エチル−1−ブタノール327.7gを使用した以外は、実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを88.1wt%含有する溶液を193.4g得た。
工程(21−1):脱アルキル基反応
実施例16の工程(16−2)と同様の方法で得られた失活体組成物217gを、実施例1の工程(1−2)で得られた失活体組成物の代わりに使用し、酢酸の代わりにヘキサン酸266.2gを、無水酢酸の代わりに無水ヘキサン酸204.6gを使用した以外は、実施例6の工程(6−1)と同様の方法をおこない、ジ−n−オクチルジヘキサノニルオキシスズを77.4wt%含有する混合物を274.7g得た。
工程(21−2):ジアルキル体の分離
工程(21−1)で得られたジ−n−オクチルヘキサノニルオキシスズを77.4wt%含有する混合物を273.9g使用し、温度を220℃とした以外は、実施例6の工程(6−2)と同様の方法をおこない、202.1gの留出物を得た。留出物について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該留出物は、ジ−n−オクチルヘキサノニルオキシスズであった。
工程(21−3):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(21−2)で得られたジ−n−オクチルジヘキサノニルオキシスズの混合物211.3gを、実施例1の工程(1−5)で得られた反応液の代わりに使用し、0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を411mL、2−エチル−1−ブタノールを318.0g使用した以外は、実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを81.7wt%含有する混合物を194.4g得た。
工程(22−1):ジアルキルスズ触媒の失活体の置換基交換反応
実施例16の工程(16−2)と同様の方法で得られた失活体組成物210gを、実施例1の工程(1−2)で得られた失活体組成物の代わりに使用し、無水酢酸の代わりに無水マレイン酸362.2gを使用した以外は、実施例2の工程(2−1)と同様の方法をおこない、余剰の無水マレイン酸を留去し、119Sn−NMRにおいて−240〜−605ppm、および−150ppm付近、および100ppm付近に複数の化学シフトを示すスズ原子を含有する有機スズ化合物の混合物を232.1g得た。
工程(22−2):アルキル基再分配反応
工程(22−1)で得られた混合物230.8gを、実施例2の工程(2−1)で得られた混合物の代わりに使用した以外は、実施例2の工程(2−1)と同様の方法をおこない、反応液を228.3g回収した。反応液について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該反応液は、119Sn−NMRにおいて−240〜−605ppm、および−140ppm〜−200ppm付近、および100ppm付近に複数の化学シフトを示すスズ原子を含有する有機スズ化合物の混合物であった。特に、全ピークの積分値に対する、100ppm付近の複数のピークの積分値の比、および−240〜−605ppmの積分値の比は、工程(22−1)で得られた混合物における積分値の比よりも大きく減少していた。
工程(23−3):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(23−2)で得られた混合物220.1gを、実施例1の工程(1−5)で得られた反応液の代わりに使用し、0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を255mL、2−エチル−1−ブタノールを303.6g使用した以外は、実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを87.4wt%含有する溶液168.1gを得た。
工程(23−1):脱アルキル基反応
実施例16の工程(16−2)と同様の方法で得られた失活体組成物197gを、実施例1の工程(1−2)で得られた失活体組成物の代わりに使用し、酢酸および無水酢酸の代わりに、マレイン酸152.7gおよび無水マレイン酸を129.5g使用した以外は、実施例6の工程(6−1)と同様の方法をおこなった。余剰のマレイン酸および無水マレイン酸等を留去して得られた混合物は214.8gであった。該混合物は、119Sn−NMRにおいて−240〜−605ppm、および−140ppm〜−200ppm付近に複数の化学シフトを示すスズ原子を含有する有機スズ化合物の混合物であった。
工程(23−2):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(24−1)で得られたジ−n−オクチルジアセトキシスズ213.1gを、実施例1の工程(1−5)で得られた反応液の代わりに使用し、0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を443mL、2−エチル−1−ブタノールを296.8g使用した以外は、実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを81.2wt%含有する溶液を164.3g得た。
工程(24−1):テトラアルキルジアルコキシジスタンオキサンの製造
容積3000mLのナス型フラスコに、ジ−n−ブチルスズオキシド692g(2.78mol)および1−ブタノール(日本国、和光純薬工業社製)2000g(27mol)を入れた。白色スラリー状の該混合物を入れたフラスコを、温度調節器のついたオイルバスと真空ポンプと真空コントローラーを接続したエバポレーターに取り付けた。エバポレーターのパージバルブ出口は常圧で流れている窒素ガスのラインと接続した。エバポレーターのパージバルブを閉め、系内の減圧を行った後、パージバルブを徐々に開き、系内に窒素を流し、常圧に戻した。オイルバス温度を126℃に設定し、該フラスコを該オイルバスに浸漬してエバポレーターの回転を開始した。エバポレーターのパージバルブを開放したまま常圧で約30分間回転攪拌と加熱した後、混合液が沸騰し、低沸成分の蒸留が始まった。この状態を8時間保った後、パージバルブを閉め、系内を徐々に減圧し、系内の圧力が76〜54kPaの状態で残存低沸成分を蒸留した。低沸成分が出なくなった後、該フラスコをオイルバスからあげた。反応液は透明な液になっていた。その後、該フラスコをオイルバスからあげてパージバルブを徐々に開き系内の圧力を常圧に戻した。該フラスコには反応液952gを得た。119Sn、H、13C−NMRにより分析をおこなったところ、反応液は1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ジ(ブチルオキシ)−ジスタンオキサンであり、ジ−n−ブチルスズオキシド基準で収率99%であった。同様な操作を12回繰り返し、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ジ(ブチルオキシ)−ジスタンオキサンを合計11488g得た。
工程(24−2):炭酸エステルの製造および失活体を含むアルキルスズアルコキシド触媒の失活体組成物の取得
図2に示すような連続製造装置において、炭酸エステルを製造した。充填物Mellapak 750Yを充填した、内径151mm,有効長さ5040mmの塔型反応器に供給ライン4から工程1で製造した1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジ(ブチルオキシ)−ジスタンオキサンを4201g/hrで、供給ライン2から蒸留塔101で精製した1−ブタノールを24717g/hrで、塔型反応器102に供給した。該反応器内は液温度が160℃になるようにヒーターおよびリボイラー112によって調整し、圧力が約250kPa−Gになるように圧力調節バルブによって調整した。該反応器内の滞留時間は約10分であった。反応器上部から移送ライン6を経て水を含む1−ブタノール24715g/hrおよび供給ライン1を経て1−ブタノール824g/hrを、充填物Metal Gauze CYを充填しリボイラー111およびコンデンサー121を備えた蒸留塔101に輸送し、蒸留精製を行った。蒸留塔101の上部では高濃度の水を含む留分がコンデンサー121によって凝縮され移送ライン3から回収された。蒸留塔101の下部にある移送ライン2を経て精製された1−ブタノールを輸送した。塔型反応器102の下部からジブチルスズジブトキシドと1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ジ(ブチルオキシ)−ジスタンオキサンを含むアルキルスズアルコキシド触媒組成物を得、移送ライン5を経て薄膜蒸発装置103に供給した。薄膜蒸発装置103において1−ブタノールを留去し、コンデンサー123、移送ライン8および移送ライン4を経て塔型反応器102に戻した。薄膜蒸発装置103の下部から移送ライン7を経てアルキルスズアルコキシド触媒組成物を輸送し、ジブチルスズジブトキシドと1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ジ(ブチルオキシ)−ジスタンオキサンの活性成分の流量が約4812g/hrになるように調節しオートクレーブ104に供給した。オートクレーブに供給ライン9を介し二酸化炭素を973g/hrで供給し、オートクレーブ内圧を4MPa−Gに維持した。オートクレーブにおける温度を120℃に設定し、滞留時間を約4時間に調製し、二酸化炭素とアルキルスズアルコキシド触媒組成物との反応を行い、炭酸ジブチルを含む反応液を得た。該反応液を移送ライン10と調節バルブを介して除炭槽105に移送し残存二酸化炭素を除去し、移送ライン11から二酸化炭素を回収した。その後、該反応液を移送ライン12を経て140℃、約1.4kPaとした薄膜蒸発装置106に輸送し、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ジ(ブチルオキシ)−ジスタンオキサンの流量が約4201g/hrになるように調節し供給して炭酸ジブチルを含む留分を得、一方で、蒸発残渣を移送ライン13と移送ライン4を介して、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ジ(ブチルオキシ)−ジスタンオキサン流量が約4201g/hrになるように調節し塔型反応器102に循環する。炭酸ジブチルを含む留分はコンデンサー126および移送ライン14を経て、充填物Metal Gauze CYを充填しリボイラー117およびコンデンサー127を備えた蒸留塔107に830g/hrで供給して、蒸留精製を行った後、移送ライン16から99wt%の炭酸ビス(3−メチルブチル)を814g/hr得た。移送ライン13のアルキルスズアルコキシド触媒組成物を119Sn、H、13C−NMRによる分析を行ったところ、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ジ(ブチルオキシ)−ジスタンオキサンが含まれており、ジブチルスズジブトキシドは含まれていなかった。上記連続運転を約600時間行った後、抜き出しライン16からアルキルスズアルコキシド触媒組成物を16g/hrで抜き出し、一方でフィードライン17から工程1で製造した1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ジ(ブチルオキシ)−ジスタンオキサンを16g/hrで供給した。抜き出しライン16から約120gの液を抜き出し、119Sn−NMRによる分析を行ったところ、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ジ(ブチルオキシ)−ジスタンオキサンが約60wt%含まれている以外にトリブチルスズブトキシドおよび−240〜−605ppmに高沸失活成分に由来した複数のNMRシフトが見られた。
工程(24−3):失活体を含むアルキルスズアルコキシド触媒の失活体組成物からジアルキルスズジアルコキシドを得る
窒素で置換されたグローブボックスにおいて容積500mLのなす型フラスコに出発物質として工程2で得た熱変性体を含んだアルキルスズアルコキシド触媒組成物120gおよび工程2で製造した炭酸ジブチル332.5g(1.91mol)を混合させ、栓をした。該混合物を入れたフラスコを、温度調節器のついたオイルバスと真空ポンプと真空コントローラーを接続したエバポレーターに取り付けた。エバポレーターのパージバルブ出口は常圧で流れている窒素ガスのラインと接続した。エバポレーターのパージバルブを閉め、系内の減圧を行った後、パージバルブを徐々に開き、系内に窒素を流し、常圧に戻し、反応装置内を窒素による置換を行った。オイルバス温度を約150℃に設定し、該フラスコを該オイルバスに浸漬してエバポレーターの回転を開始した。エバポレーターのパージバルブを開放したまま常圧で約3時間回転攪拌した後、パージバルブを閉め、系内を徐々に減圧し、系内の圧力が20〜3kPaの状態で残存反応物質を蒸留した。留出物が出なくなった後、該フラスコをオイルバスからあげた。反応液を140.5g得た。
(反応液の蒸留分離)
次いで、三方コック、ヘリパックNo.3を充填した長さ45cmの蒸留カラムおよび留出液受器と連結した還流冷却器付き分留頭、および温度計を備えた容積200mLの三口フラスコに三方コックを通して窒素ガス0.3L/分を流しながら、該反応液をガスタイト型シリンジ(Hamilton社製)によって135.3g入れた。該フラスコを約175℃に加熱したオイルバスに浸漬した。攪拌および加熱を約20分間行った後、該反応液の温度が約167℃となった。装置内を徐々に減圧し、約0.2kPaにおいて蒸留を行った。留出液1を約0.5mL/分で回収した。留出液1が出なくなった後、さらに装置を約0.03kPaに徐々に減圧し蒸留を続け、留出液2を約0.5mL/分で回収した。約2時間後に留出液が出なくなり、装置内の減圧を開放し、加熱を止め、蒸留を終了した。得られた留出液1、留出液2およびフラスコ内残存物はそれぞれ、31.8g、72.9g、30.6gであった。留出液1、留出液2およびフラスコ内の残存物についてNMR分析を行った。留出液1にトリ−n−ブチルブトキシスズ81.2wt%および炭酸ジブチル18.2wt%、留出液2にはジ−n−ブチルジブトキシスズ99.0wt%が得られた。フラスコ内残存物には1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ジ(ブチルオキシ)−ジスタンオキサン約1wt%および−240〜−605ppmに高沸失活成分に由来した複数のNMRシフトが見られた。
工程(24−4):ジアルキルスズ触媒の失活体の置換基交換反応
工程(24−3)で得られた留出液1のうち30.2gを300mLナス型フラスコに入れ、ついで、無水酢酸34.7gを加え、25℃で1時間撹拌した。溶液を採取し、ガスクロマトグラフィーで分析をおこなったところ、酢酸ブチルが生成していることが確認された。該フラスコに、留出液受器と連結した還流冷却器付き分留頭、および温度計を取り付け、該フラスコ内を真空−窒素置換したのち、該フラスコを、80℃に加熱したオイルバスに浸漬した。容器内を徐々に減圧し、余剰の無水酢酸等を留去し、該フラスコ内に残留物を29.2g得た。残留物についてHおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該残留物はトリ−n−ブチル(ブチルオキシ)スズと炭酸ジブチルの混合物であった。
一方、工程(24−3)で得られた、フラスコ内残存物のうち、29.5gを、500mL金属製圧力容器に入れ、ついで、無水酢酸57.3g加え、撹拌した。該金属製圧力容器を200℃に加熱したオイルバスに浸漬し、5.3時間加熱した。該金属製圧力容器を室温(約25℃)付近まで冷却したのち、内容物を、500mLナス型フラスコに移した。該フラスコに留出液受器と連結した還流冷却器付き分留頭、および温度計を取り付け、該フラスコ内を真空−窒素置換したのち、該フラスコを、80℃に加熱したオイルバスに浸漬した。容器内を徐々に減圧し、余剰の無水酢酸等を留去し、該フラスコ内に残留物を39.0g得た。残留物についてHおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該残留物は、ジ−n−ブチルジアセトキシスズとn−ブチルトリアセトキシスズを含有する混合物であり、該混合物中のジ−n−ブチルジアセトキシスズは28.0wt%、n−ブチルトリアセトキシスズは72.0wt%であった。該混合物を、先に得られたトリ−n−ブチルアセトキシスズと混合し、次の工程(24−5)の原料とした。
工程(24−5):アルキル基再分配反応
窒素雰囲気下において、工程(24−4)で得られた混合物のうち66.5gを、実施例1の工程(1−4)で得られた混合物の代わりに使用した以外は、実施例1の工程(1−5)と同様の方法をおこない、反応液を65.5g回収した。反応液について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該反応液は、ジ−n−ブチルジアセトキシスズとn−ブチルトリアセトキシスズを含有する混合物であり、該混合物中のジ−n−ブチルジアセトキシスズは87.2wt%であった。
工程(24−6):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(24−5)で得られた反応液65.1gを、実施例1の工程(1−5)で得られた反応液の代わりに使用し、0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を72mL、1−ブタノールを107.1g使用した以外は、実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ジ(ブチルオキシ)ジスタンオキサンを95.1wt%含有する溶液を46.7g得た。
工程(25−1):失活体を含むジアルキルスズ化合物からジアルキルスズジアルコキシドを得る
実施例7の工程(7−1)と同様の方法をおこなって得た失活体組成物380gを300g/hrで分子蒸留装置(日本国、柴田科学社製、MS−300型)に供給し温度約230℃、圧力約0.02kPaにおいて揮発成分を除去した。低沸成分が83.5g回収された。該低沸成分のHおよび119Sn−NMR測定をおこなったところトリ−n−オクチル(3−メチルブチルオキシ)スズが99wt%含まれていた(図3参照)。高沸成分は295.5g得られ、Hおよび119Sn−NMR測定による分析をおこなったところ、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサン以外に−240〜−605ppmに熱変性体に由来した複数のNMRシフトが見られた。該高沸成分に含有される1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンは、76.9wt%であった。窒素雰囲気下において、フラスコに、該高沸成分264.3gと実施例7の工程(7−2)で製造した炭酸ビス(3−メチルブチル)717.5g(3.55mol)を混合し、140℃、大気圧窒素下で2時間反応させた。その後、該反応液を分子蒸留装置に300g/hrで供給し、温度約150℃、圧力約0.5kPaにおいて残存炭酸エステルを分離し、高沸成分として約656gの液を得た。該高沸成分を分子蒸留装置に300g/hrで供給し、温度約240℃、圧力約0.02kPaにおいて蒸留分離を行ったところ、低沸成分を251.5g得た。該低沸成分にジ−n−オクチル−ビス(3−メチルブチルオキシ)スズが99.3wt%含まれていた。一方、高沸成分には−240〜−605ppmに高沸失活成分に由来した複数のNMRシフトが見られた(図4参照)。
工程(25−2):ジアルキルスズ触媒の失活体の置換基交換反応
工程(25−1)で得られたトリ−n−オクチル(3−メチルブチルオキシ)スズを99wt%含む留出液1のうち82.2gを300mLナス型フラスコに入れ、ついで、無水酢酸92.3gを加え、25℃で1時間撹拌した。溶液を採取し、ガスクロマトグラフィーで分析をおこなったところ、酢酸イソアミルが生成していることが確認された。該フラスコに、留出液受器と連結した還流冷却器付き分留頭、および温度計を取り付け、該フラスコ内を真空−窒素置換したのち、該フラスコを、80℃に加熱したオイルバスに浸漬した。容器内を徐々に減圧し、余剰の無水酢酸等を留去し、該フラスコ内に残留物を78.0g得た。残留物についてHおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該残留物はトリ−n−オクチルアセトキシスズであった(図5参照)。
一方、工程(25−1)で得られた高沸成分のうち、97.4gを、500mL金属製圧力容器に入れ、ついで、酢酸30.1gおよび無水酢酸163.7g加え、撹拌した。該金属製圧力容器を200℃に加熱したオイルバスに浸漬し、4時間加熱した。該金属製圧力容器を室温(約25℃)付近まで冷却したのち、内容物を、500mLナス型フラスコに移した。該フラスコに留出液受器と連結した還流冷却器付き分留頭、および温度計を取り付け、該フラスコ内を真空−窒素置換したのち、該フラスコを、80℃に加熱したオイルバスに浸漬した。容器内を徐々に減圧し、余剰の無水酢酸等を留去し、該フラスコ内に残留物を90.1g得た。残留物についてHおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該残留物は、主にn−オクチルトリアセトキシスズを含有する混合物であり、該混合物中のn−オクチルトリアセトキシスズは87.1wt%であった(図6参照)。該混合物を、先に得られたトリ−n−オクチルアセトキシスズと混合し、次の工程(25−3)の原料とした。
工程(25−3):アルキル基再分配反応
窒素雰囲気下において、工程(25−2)で得られた混合物のうち167.2gを、実施例1の工程(1−4)で得られた混合物の代わりに使用した以外は、実施例1の工程(1−5)と同様の方法をおこない、反応液を165.8g回収した。反応液について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該反応液は、ジ−n−オクチルジアセトキシスズとn−オクチルトリアセトキシスズを含有する混合物であり、該混合物中のジ−n−オクチルジアセトキシスズは91.2wt%であった。
工程(25−4):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(25−3)で得られた反応液166.4gを、実施例1の工程(1−5)で得られた反応液の代わりに使用し、0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を430mL、3−メチル−1−ブタノールを215.5g使用した以外は、実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを89.9wt%含有する溶液を120.2g得た(図7参照)。
工程(26−1):ジアルキルスズ触媒の製造に伴い生成する失活体組成物の回収
真空コントローラーおよび真空ポンプに接続した冷却管とディーンスターク管を備えた容積5Lの4つ口フラスコにジブチル酸化スズ520g(2.1モル)および2−エチルブタノール3213g(31.5モル)、攪拌のための攪拌子を入れた。系内を窒素置換したのち、このフラスコを146℃に加熱したオイルバスに浸漬し、攪拌を開始した。留出物を除去しながら約20時間加熱を続け、その後、徐々に減圧し、系内圧力が76kPa〜30kPaの状態でさらに約20時間残存低沸成分を留去した。新たな留出がみられなくなった後、該フラスコを冷却した。該フラスコには反応液722.1gが得られ、Hおよび119Sn−NMR分析の結果、該反応液は、1,1,3,3−ジ−n−ブチル−テトラ(2−エチルブチルオキシ)スズを76.1wt%、トリ−n−ブチル(2−エチルブトキシ)スズを13.3wt%含有していた。
工程(26−2):トリ−n−ブチル(2−エチルブチルオキシ)スズの分離
反応液の入った該フラスコに、三方コック、ヘリパックNo.3を充填した蒸留カラムおよび留出液受器と連結した還流冷却器付分留頭および温度計を取り付け、系内を窒素置換した。フラスコを190℃に加熱したオイルバスに浸漬し、系内を真空ポンプにて1.3kPaまで徐々に減圧しながら蒸留を行い、留出液1を得た。液の留出がみられなくなった時点で加熱を止め、蒸留を終了した。留出液1は93.1g回収され、H、13Cおよび119Sn−NMR分析の結果、該留出物はトリ−n−ブチル(2−エチルブチルオキシ)スズを98wt%含有していた。また、該フラスコ内の残留物として、624.7gが得られ、該残留物のH、13Cおよび119Sn−NMR分析の結果、該残留物は1,1,3,3−ジ−n−ブチル−テトラ(2−エチルブチルオキシ)スズを87.3wt%含有していた。
工程(26−3):ジアルキルスズ触媒の失活体の置換基交換反応
工程(26−2)で得られた留出液92.0gに酢酸71.4gと無水酢酸145.7gを、500mLナス型フラスコに入れ、該フラスコを30℃に温調した水浴に浸漬し2時間攪拌した。該フラスコを、温度調節器のついたオイルバスと真空ポンプと真空コントローラーを接続したロータリーエバポレーターに取り付けた。ロータリーエバポレーターのパージバルブ出口は常圧で流れている窒素ガスのラインに接続した。系内を窒素置換した後、オイルバス温度を40℃に設定し、該フラスコを該オイルバスに浸漬してロータリーエバポレーターの回転を開始し、0.1kPaで余剰の酢酸および無水酢酸等を減圧留去し、該フラスコ内に82.3gの残留物を得た。H、13Cおよび119Sn−NMR分析の結果、該残留物はトリ−n−ブチルアセトキシスズを99wt%含有していた。
一方、工程(26−2)で得られた、フラスコ内の残留物のうち、153.2gを、500mL金属製圧力容器に入れ、ついで、酢酸82.1gおよび無水酢酸232.7gを入れた。該金属製圧力容器を、250℃に加熱したオイルバスに浸漬し、5時間加熱をおこなった。該金属製圧力容器を冷却後、内容物を、500mLナス型フラスコに移した。該フラスコに留出液受器と連結した還流冷却器付き分留頭、および温度計を取り付け、該フラスコ内を真空−窒素置換したのち、該フラスコを、50℃に加熱したオイルバスに浸漬した。容器内を徐々に減圧し、余剰の無水酢酸等を留去し、該フラスコ内に残留物を159.9g得た。残りのフラスコ内残留物470.3gについても同様の方法をおこない、残留物を合計650.8gの残留物を得た。該残留物についてHおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該残留物は、n−ブチルトリアセトキシスズとジ−n−ブチル−ビス(2−エチルブチルオキシ)スズを含有する混合物であり、該混合物中のn−ブチルトリアセトキシスズは13.6wt%、ジ−n−ブチル−ビス(2−エチルブチルオキシ)スズは86.2wt%であった。
先に得られたトリ−n−ブチルアセトキシスズと混合し、次の工程(26−4)の原料とした。
工程(26−4)
窒素雰囲気下において、工程(26−3)で得られた混合物のうち728.2gを、実施例1の工程(1−4)で得られた混合物の代わりに使用した以外は、実施例1の工程(1−5)と同様の方法をおこない、反応液を726.5g回収した。反応液について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該反応液は、ジ−n−ブチルジアセトキシスズとn−ブチルトリアセトキシスズを含有する混合物であり、該混合物中のジ−n−ブチルジアセトキシスズは95.2wt%であった。
工程(26−5):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(26−4)で得られた反応液724.6gを、実施例1の工程(1−5)で得られた反応液の代わりに使用し、0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を830mL、2−エチル−1−ブタノールを1951g使用した以外は、実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−ブチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを97.1wt%含有する溶液を742.6g得た。
工程(27−1):ジアルキルスズ触媒の製造に伴い生成する失活体組成物の回収
真空コントローラーおよび真空ポンプに接続した冷却管とディーンスターク管を備えた容積5Lの4つ口フラスコにジオクチル酸化スズ562g(1.56モル)および2−エチル−1−ヘキサノール3015g(23.2モル)、攪拌のための攪拌子を入れた。系内を窒素置換したのち、このフラスコを180℃に加熱したオイルバスに浸漬し、攪拌を開始した。留出物を除去しながら約5時間加熱を続け、その後、徐々に減圧し、系内圧力が76kPa〜30kPaの状態でさらに約5時間残存低沸成分を留去した。新たな留出がみられなくなった後、該フラスコを冷却した。該フラスコには反応液778.3gが得られ、Hおよび119Sn−NMR分析の結果、該反応液は、1,1,3,3−ジ−n−オクチル−テトラ(2−エチルヘキシルオキシ)スズを40.1wt%、ジ−n−オクチル−ビス(2−エチルヘキシルオキシ)スズを16.9wt%、トリ−n−オクチル(2−エチルヘキシルオキシ)スズを25.8wt%含有していた。
工程(27−2):ジアルキルスズ触媒の失活体の置換基交換反応
工程(27−1)で得られた反応液775.8gに酢酸298.1gと無水酢酸544.3gを、2Lナス型フラスコに入れ、該フラスコを50℃に温調した水浴に浸漬し2時間攪拌した。該フラスコを、温度調節器のついたオイルバスと真空ポンプと真空コントローラーを接続したロータリーエバポレーターに取り付けた。ロータリーエバポレーターのパージバルブ出口は常圧で流れている窒素ガスのラインに接続した。系内を窒素置換した後、オイルバス温度を50℃に設定し、該フラスコを該オイルバスに浸漬してロータリーエバポレーターの回転を開始し、0.1kPaで余剰の酢酸および無水酢酸等を減圧留去し、該フラスコ内に685.9gの残留物を得た。H、13Cおよび119Sn−NMR分析の結果、該残留物はトリ−n−オクチルアセトキシスズおよびジ−n−オクチルジアセトキシスズを含有する混合物であり、該混合物中のトリ−n−オクチルアセトキシスズは25.8wt%、ジ−n−オクチルジアセトキシスズは58.9wt%であった。
工程(27−3)
窒素雰囲気下において、工程(27−2)で得られた混合物のうち682.2gを、実施例1の工程(1−4)で得られた混合物の代わりに使用した以外は、実施例1の工程(1−5)と同様の方法をおこない、反応液を680.8g回収した。反応液について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該反応液は、ジ−n−オクチルジアセトキシスズとトリ−n−オクチルアセトキシスズを含有する混合物であり、該混合物中のジ−n−オクチルジアセトキシスズは58.9wt%、トリ−n−オクチルアセトキシスズは2.1wt%、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−ジアセトキシジスタンオキサン37.8wt%であった。
工程(27−4):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(27−3)で得られた反応液678.3gを、実施例1の工程(1−5)で得られた反応液の代わりに使用し、0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を833mL、2−エチル−1−ヘキサノールを1917g使用した以外は、実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルヘキシルオキシ)ジスタンオキサンを96.3wt%含有する溶液を710.8g得た。
工程(28−1):ジアルキルスズ触媒の製造に伴い生成する失活体組成物の回収
真空コントローラーおよび真空ポンプに接続した冷却管とディーンスターク管を備えた容積5Lの4つ口フラスコにジオクチル酸化スズ522g(1.45モル)および1−ドデカノール944g(5.08モル)、攪拌のための攪拌子を入れた。系内を窒素置換したのち、このフラスコを190℃に加熱したオイルバスに浸漬し、攪拌を開始した。留出物を除去しながら約10時間加熱を続け、その後、徐々に減圧し、系内圧力が76kPa〜20kPaの状態でさらに約3時間残存低沸成分を留去した。新たな留出がみられなくなった後、該フラスコを冷却した。該フラスコには反応液823.6gが得られ、Hおよび119Sn−NMR分析の結果、該反応液は、1,1,3,3−ジ−n−オクチル−テトラドデシルオキシスズを19.0wt%、ジ−n−オクチル−ジドデシルオキシスズを20.2wt%、トリ−n−オクチルドデシルオキシスズを36.3wt%含有していた。
工程(28−2):ジアルキルスズ触媒の失活体の置換基交換反応
工程(28−1)で得られた反応液819.3gに無水酢酸887.3gを、2Lナス型フラスコに入れ、該フラスコを50℃に温調した水浴に浸漬し2時間攪拌した。該フラスコを、温度調節器のついたオイルバスと真空ポンプと真空コントローラーを接続したロータリーエバポレーターに取り付けた。ロータリーエバポレーターのパージバルブ出口は常圧で流れている窒素ガスのラインに接続した。系内を窒素置換した後、オイルバス温度を50℃に設定し、該フラスコを該オイルバスに浸漬してロータリーエバポレーターの回転を開始し、0.1kPaで余剰の無水酢酸等を減圧留去し、該フラスコ内に701.2gの残留物を得た。H、13Cおよび119Sn−NMR分析の結果、該残留物はトリ−n−オクチルアセトキシスズおよびジ−n−オクチルジアセトキシスズを含有する混合物であり、該混合物中のトリ−n−オクチルアセトキシスズは37.3wt%、ジ−n−オクチルジアセトキシスズは39.4wt%であった。
工程(28−3)
窒素雰囲気下において、工程(27−2)で得られた混合物のうち700.5gを、実施例1の工程(1−4)で得られた混合物の代わりに使用した以外は、実施例1の工程(1−5)と同様の方法をおこない、反応液を698.4g回収した。反応液について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該反応液は、ジ−n−オクチルジアセトキシスズとトリ−n−オクチルアセトキシスズを含有する混合物であり、該混合物中のジ−n−オクチルジアセトキシスズは39.4wt%、トリ−n−オクチルアセトキシスズは3.7wt%、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−ジアセトキシジスタンオキサン53.6wt%であった。
工程(28−4):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(28−3)で得られた反応液695.9gを、実施例1の工程(1−5)で得られた反応液の代わりに使用し、0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を821mL、1−ドデカノールを1925g使用した以外は、実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ジドデシルオキシジスタンオキサンを92.2wt%含有する溶液を711.8g得た。
工程(29−1):ジアルキルスズ触媒の製造に伴い生成する失活体組成物の回収
ジオクチル酸化スズ479g(1.33モル)と2−エチル−1−ヘキサノール2594g(20.0モル)を使用した以外は、実施例27の工程(27−1)と同様の方法をおこない、反応液662.0gを得た。Hおよび119Sn−NMR分析の結果、該反応液は、1,1,3,3−ジ−n−オクチル−テトラ(2−エチルヘキシルオキシ)スズを41.6wt%、ジ−n−オクチル−ビス(2−エチルヘキシルオキシ)スズを15.7wt%、トリ−n−オクチル(2−エチルヘキシルオキシ)スズを25.9wt%含有していた。
工程(29−2):脱アルキル基反応
工程(29−1)で得られた反応液660.1gを使用し、酢酸402.0gおよび無水酢酸434.1gを、2Lナス型フラスコに入れ、該フラスコを150℃に温調した水浴に浸漬し10時間、加熱攪拌した。該フラスコを、温度調節器のついたオイルバスと真空ポンプと真空コントローラーを接続したロータリーエバポレーターに取り付けた。ロータリーエバポレーターのパージバルブ出口は常圧で流れている窒素ガスのラインに接続した。系内を窒素置換した後、オイルバス温度を50℃に設定し、該フラスコを該オイルバスに浸漬してロータリーエバポレーターの回転を開始し、0.1kPaで余剰の酢酸および無水酢酸等を減圧留去し、該フラスコ内に568.2gの残留物を得た。H、13Cおよび119Sn−NMR分析の結果、該残留物はジ−n−オクチルジアセトキシスズを含有する混合物であり、該混合物中のジ−n−オクチルジアセトキシスズは84.2wt%であった。
工程(29−3):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(29−2)で得られた反応液565.9gを、実施例1の工程(1−5)で得られた反応液の代わりに使用し、0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を833mL、2−エチル−1−ヘキサノールを1558g使用した以外は、実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルヘキシルオキシ)ジスタンオキサンを81.1wt%含有する溶液を577.8g得た。
工程(30−1):ジアルキルスズ触媒の製造に伴い生成する失活体組成物の回収
ジオクチル酸化スズ539g(1.50モル)および1−ドデカノール1670g(8.98モル)を使用した以外は、実施例28の工程(28−1)と同様の方法をおこない、反応液851.5gを得た。該反応液は、1,1,3,3−ジ−n−オクチル−テトラドデシルオキシスズを6.6wt%、ジ−n−オクチル−ジドデシルオキシスズを21.4wt%、トリ−n−オクチルドデシルオキシスズを43.0wt%含有していた。
工程(30−2):脱アルキル基反応
工程(30−1)で得られた反応液848.3gを使用し、酢酸449.1gおよび無水酢酸488.6gを使用した以外は、実施例29の工程(29−2)と同様の方法をおこない、フラスコ内に603.6gの残留物を得た。H、13Cおよび119Sn−NMR分析の結果、該残留物はジ−n−オクチルジアセトキシスズを含有する混合物であり、該混合物中のジ−n−オクチルジアセトキシスズは71.1wt%であった。
工程(28−4):ジアルキルスズ化合物のアルコキシ化
工程(30−2)で得られた反応液600.3gを、実施例1の工程(1−5)で得られた反応液の代わりに使用し、0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を880mL、1−ドデカノールを2635g使用した以外は、実施例1の工程(1−6)と同様の方法をおこない、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ジドデシルオキシジスタンオキサンを65.8wt%含有する溶液を704.0g得た。
比較例1
ジアルキルスズ触媒の失活体組成物の加熱
実施例16の工程(16−2)で得られた失活体組成物175gを、大気圧窒素雰囲気下で500mLナス型フラスコに入れた。該フラスコにジムロート冷却器と三方コックを取り付け、三方コックを、常圧で窒素ガスが流通しているラインに接続した。
該フラスコを、あらかじめ220℃に加熱したオイルバスに浸漬し90時間加熱した。該フラスコを冷却し、内容液を174.2g回収した。該溶液について、H、および119Sn−NMR測定をおこなったところ、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(2−エチルブチルオキシ)ジスタンオキサンに相当するピークが消失し、トリ−n−オクチル(2−エチルブチルオキシ)スズに相当するピーク、および、−220〜−600ppmの範囲に複数のピークが観測された。
比較例2
実施例16の工程(16−2)と同様の方法で得られた失活体組成物175gを、窒素雰囲気下において、500mLナス型フラスコに入れ、ついで、フェノール(日本国、和光純薬工業社製、核酸抽出用)191.0gを加え、40℃で1時間撹拌した。該フラスコに、留出液受器と連結した還流冷却器付き分留頭、および温度計を取り付け、該フラスコ内を真空−窒素置換したのち、該フラスコを、50℃に加熱したオイルバスに浸漬した。容器内を徐々に減圧し、余剰のフェノール等を留去し、該フラスコ内に残留物を189.9g得た。残留物についてHおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該残留物はトリ−n−オクチルフェノキシスズおよびジ−n−オクチルジフェノキシスズ、および、119Sn−NMRにおいて−240〜−605ppmに複数の化学シフトを示すスズ原子を含有する有機スズ化合物の混合物であった。該混合物において、トリ−n−オクチルフェノキシスズは25.2wt%、ジ−n−オクチルジフェノキシスズは59.3wt%であった。
混合物188.6gを、窒素雰囲気下において、200mL金属製圧力容器に入れた。該金属製圧力容器を250℃に加熱したオイルバスに浸漬し、6時間加熱した。該耐圧反応容器を室温付近まで冷却したのち、反応液を187.5g回収した。反応液について、Hおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該反応液中のトリ−n−オクチルフェノキシスズは36.4wt%、ジ−n−オクチルジフェノキシスズは41.1wt%であった。
比較例3
工程(III−1):トリ−n−オクチル(3−メチルブチルオキシ)スズの分離
実施例7の工程(7−2)と同様の方法で得られた失活体組成物300gを使用して、実施例11の工程(11−1)と同様の方法をおこない、留出液としてトリ−n−オクチル(3−メチルブチルオキシ)スズ66.5gを得、フラスコ内の残存物として、1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)−ジスタンオキサンを77.1wt%含有し、119Sn−NMRにおいて−240〜−605ppmに複数の化学シフトを示すスズ原子を含有する有機スズ化合物の混合物を232.5g得た。
工程(III−2):トリ−n−オクチル(3−メチルブチルオキシ)スズの置換基交換反応
工程(III−1)で得られたトリ−n−オクチル(3−メチルブチルオキシ)スズ65.3gを、300mLナス型フラスコに入れ、ついで、無水酢酸61.1gを加え、25℃で1時間撹拌した。該フラスコに、留出液受器と連結した還流冷却器付き分留頭、および温度計を取り付け、該フラスコ内を真空−窒素置換したのち、該フラスコを、50℃に加熱したオイルバスに浸漬した。容器内を徐々に減圧し、酢酸イソアミルと余剰の無水酢酸を留去し、該フラスコ内に残留物を65.3g得た。残留物についてHおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該残留物はトリ−n−オクチルアセトキシスズであり、トリ−n−オクチルアセトキシスズは99wt%であった。
工程(III−3):トリ−n−オクチルアセトキシスズの加熱処理
工程(III−2)で得られたトリ−n−オクチルアセトキシスズ63.3gを、実施例1の工程(1−4)で得られた混合物の代わりに使用した以外は、実施例1の工程(1−5)と同様の方法をおこない、反応物を62.4g回収した。反応液についてHおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該反応物はトリ−n−オクチルアセトキシスズを98wt%含有していた。
比較例4
工程(IV−1):ジアルキルスズ触媒失活体の置換基交換反応
比較例3の工程(III−1)で得られたフラスコ内の残存物232.1を、500mL金属製圧力容器に入れ、ついで、無水酢酸を187.6g加え、撹拌した。該金属製圧力容器を200℃に加熱したオイルバスに浸漬し、3時間加熱した。該金属製圧力容器を室温(約25℃)付近まで冷却したのち、内容物を、500mLナス型フラスコに移した。該フラスコに留出液受器と連結した還流冷却器付き分留頭、および温度計を取り付け、該フラスコ内を真空−窒素置換したのち、該フラスコを、50℃に加熱したオイルバスに浸漬した。容器内を徐々に減圧し、余剰の無水酢酸等を留去し、該フラスコ内に残留物を248.2g得た。残留物についてHおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該残留物は、ジ−n−オクチルジアセトキシスズとn−オクチルトリアセトキシスズを含有する混合物であり、該混合物中のジ−n−オクチルジアセトキシスズは77.8wt%、n−オクチルトリアセトキシスズは22.1wt%であった。
工程(IV−2):置換基交換されたジアルキルスズ触媒失活体の加熱処理
工程(IV−1)で得られた混合物245.4gを、実施例1の工程(1−4)で得られた混合物の代わりに使用した以外は、実施例1の工程(1−5)と同様の方法をおこない、反応物を244.8g回収した。反応液についてHおよび119Sn−NMR測定をおこなったところ、該反応液はジ−n−オクチルジアセトキシスズとn−オクチルトリアセトキシスズを含有する混合物であり、該混合物中のジ−n−オクチルジアセトキシスズは77.7wt%、n−オクチルトリアセトキシスズは22.1wt%であった。
本発明のジアルキルスズ化合物の製造方法は、炭酸エステルの製造、エステル交換反応等の分野において使用でき、これまで廃棄するしかなかったジアルキルスズ触媒の失活体組成物から触媒として有用なジアルキルスズ化合物、ジアルキルスズ触媒を製造して、再使用することができるため、本発明に係る製造方法は産業上大いに有用であり商業的価値が高い。
本実施の形態に係る製造方法を組み合わせた改良された炭酸エステルの製造方法を示す概念図を示す。 本実施の形態におけるアルキルスズ触媒組成物を用いた炭酸エステルの連続製造装置を示す概念図を示す。 本発明の実施例23の工程(23−1)において分離されたトリ−n−オクチル(3−メチルブチルオキシ)スズの119Sn−NMRスペクトルを示す。 本発明の実施例23の工程(23−1)において分離された、−240〜−605ppmに高沸成分の119Sn−NMRスペクトルを示す。 本発明の実施例23の工程(23−2)において製造されたトリ−n−オクチルアセトキシスズの119Sn−NMRスペクトルを示す。 本発明の実施例23の工程(23−2)において製造されたn−オクチルトリアセトキシスズを含有する混合物の119Sn−NMRスペクトルを示す。 本発明の実施例23の工程(23−4)において製造された1,1,3,3−テトラ−n−オクチル−1,3−ビス(3−メチルブチルオキシ)ジスタンオキサンを含有する溶液の119Sn−NMRスペクトルを示す。 なお、図2における符号の説明は、以下のとおりである:101,107…蒸留塔; 102…塔型反応器; 103,106…薄膜蒸発装置; 104…オートクレーブ; 105…除炭槽; 111,112,117…リボイラー; 121,123,126,127…コンデンサー; 1,9…供給ライン; 2,4,5,6,7,8,10,11,12,13,14…移送ライン; 3,15…回収ライン; 16…抜き出しライン; 17…フィードライン。

Claims (39)

  1. ジアルキルスズ化合物の製造方法であって、
    ジアルキルスズ触媒を用いてエステル化合物を製造する際に生成する、ジアルキルスズ触媒の失活体組成物を、アルキル基再分配反応および/または脱アルキル基反応に付す工程を含む、ジアルキルスズ化合物の製造方法。
  2. 該ジアルキルスズ触媒が、
    Figure 2008044575
    (式中、RおよびRは、各々独立に、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜12のアルキル基を表し、
    およびXは、各々独立に、アルコキシ基、アシルオキシル基およびハロゲン原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を表し、
    aおよびbは、各々0〜2の整数であり、a+b=2であり、
    cおよびdは、各々0〜2の整数であり、c+d=2である。)
    Figure 2008044575
    (式中、R、R、RおよびRは、各々独立に、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜12のアルキル基を表し、
    およびXは、各々独立に、アルコキシ基、アシルオキシル基およびハロゲン原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を表し、
    e、f、g、hは、各々0〜2の整数であり、e+f=2、g+h=2である。)
    式(1)で表されるジアルキルスズ化合物、および式(2)で表されるテトラアルキルジスタンオキサン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1に記載の製造方法。
  3. 該式(1)および(2)において、X、X、XおよびXを構成する炭素原子の数が0〜12の整数より選ばれる数である請求項2に記載の製造方法。
  4. 該エステル化合物が、カルボン酸エステル、カルバミン酸エステル、およびイソシアン酸エステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1〜3のうち何れか一項に記載の製造方法。
  5. 該カルボン酸エステルが、炭酸エステルである請求項4に記載の製造方法。
  6. 該ジアルキルスズ触媒の失活体組成物が、二酸化炭素とジアルキルスズ触媒とから炭酸エステルを製造する過程において生成するジアルキルスズ触媒の失活体を含む組成物である請求項5に記載の製造方法。
  7. 該ジアルキルスズ触媒の失活体が、ジアルキルスズ触媒の熱失活体である請求項1〜6のうち何れか一項に記載の製造方法。
  8. 該ジアルキルスズ触媒の失活体が、該ジアルキルスズ触媒に由来し、1つのスズ原子に結合するアルキル基の数が、ジアルキルスズ触媒の1つのスズ原子に結合しているアルキル基の数と異なる、ジアルキルスズ触媒の失活体である請求項1〜7のうち何れか一項に記載の製造方法。
  9. 該ジアルキルスズ触媒の失活体の少なくとも1種が、トリアルキルスズ化合物である請求項1〜8のうち何れか一項に記載の製造方法。
  10. 該ジアルキルスズ触媒の失活体が、トリアルキルスズ化合物、および重クロロホルム溶液中で119Sn−NMRにより分析した際にテトラメチルスズ基準で、−220〜−610ppmに化学シフトを示すスズ原子を含有する有機スズ化合物である請求項1〜9のうち何れか一項に記載の製造方法。
  11. 該ジアルキルスズ触媒の失活体組成物から、トリアルキルスズ化合物を含む組成物と、重クロロホルム溶液中で119Sn−NMRにより分析した際にテトラメチルスズ基準で、−220〜−610ppmに化学シフトを示すスズ原子を含有する化合物を含む組成物とに分離する工程をさらに含む請求項10に記載の製造方法。
  12. 該分離工程が、蒸留分離、抽出分離、膜分離よりなる群から選ばれる少なくとも1つの方法によりおこなわれる請求項11に記載の製造方法。
  13. 該ジアルキルスズ触媒の失活体のスズ原子に結合している、ジアルキルスズ触媒に由来するアルキル基以外の基のうち、少なくとも1つの置換基に対する共役酸のpKaが、0〜6.8の場合、
    該アルキル基再分配反応が、Sn−Y結合を有する有機スズ化合物(ここで、Yは、Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8のYである。)を加熱処理するアルキル基再分配反応である請求項1〜12のうち何れか一項に記載の製造方法。
  14. 該ジアルキルスズ触媒の失活体のスズ原子に結合している、ジアルキルスズ触媒に由来するアルキル基以外の基のうち、少なくとも1つの置換基に対する共役酸のpKaが、6.8〜25の場合、
    該アルキル基再分配反応が、
    工程(A):該失活体の配位子(該ジアルキルスズ触媒に由来し、スズに結合しているアルキル基を除く)の一部または全部を置換基Yに置換して、Sn−Y結合を有する有機スズ化合物を得る工程;
    工程(B):工程Aで得られたSn−Y結合を有する有機スズ化合物(ここでYは、Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8のYである。
    )を加熱処理する工程;
    を含む請求項1〜12のうち何れか一項に記載の製造方法。
  15. 該工程(A)が、
    該ジアルキルスズ触媒の失活体組成物と下記式(3)で表される酸および/または下記式(4)で表される酸無水物を反応させて、1個のスズ原子に3個のアルキル基と1個の酸および/または酸無水物に由来する基Yが結合したSn−Y結合を有する有機スズ化合物と、1個のスズ原子に1個のアルキル基と1〜3の整数から選ばれる数の酸および/または酸無水物に由来する基Yが結合したSn−Y結合を有する有機スズ化合物を製造する工程;
    Figure 2008044575
    (式中:Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8であるYである。)
    Figure 2008044575
    (式中:Yは、Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8であるYであり;
    Oは、酸素原子を表す。)
    を含む請求項14に記載の製造方法。
  16. 該工程(A)で酸を用いた際に生成する水を、脱水剤による除去、蒸留分離、膜分離よりなる群から選ばれる少なくとも1つの方法によって除去しながらおこなう請求項15に記載の製造方法。
  17. 該脱アルキル基反応が、ジアルキルスズ触媒の失活体からアルキル基を脱離させてSn−Y結合(ここで、YはYに水素原子が付加した、Yの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8であるYである。)を形成する工程を含む請求項1〜12のうち何れか一項に記載の製造方法。
  18. 該脱アルキル基反応が、ジアルキルスズ触媒の失活体組成物に含有されるトリアルキルスズ化合物から1個のアルキル基を脱離させて1個のSn−Y結合を形成し、Sn−Y結合を有するジアルキルスズ化合物(ここで、Yは、Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8であるYである。)を得る請求項9〜12のうち何れか一項に記載の製造方法。
  19. 該Sn−Y結合を形成する工程が、該ジアルキルスズ触媒の失活体組成物に含有されるトリアルキルスズ化合物と、
    Figure 2008044575
    (式中:Yは、Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8であるYであり;
    Oは、酸素原子を表す。)
    Figure 2008044575
    (式中:Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8であるYである。)
    式(5)で表される酸および/または式(6)で表される酸無水物を反応させる請求項18に記載の製造方法。
  20. 該酸および/または酸無水物が、60℃において液体もしくは気体である請求項15または19に記載の製造方法。
  21. 該酸が、ハロゲン化水素酸である請求項20に記載の製造方法。
  22. 該酸が、ハロゲン化水素である請求項20に記載の製造方法。
  23. 該酸が、有機酸である請求項20に記載の製造方法。
  24. 該有機酸が、カルボン酸である請求項23に記載の製造方法。
  25. 該酸無水物の標準沸点が、300℃以下である請求項20に記載の製造方法。
  26. 該酸無水物が、無水酢酸または無水マレイン酸である請求項25に記載の製造方法。
  27. 該ジアルキルスズ化合物が、1つのスズ原子に2個のジアルキルスズ触媒に由来するアルキル基が結合し、同時に、少なくとも1個のSn−Y結合(ここで、Yは、Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8であるYである。)を有する請求項1〜26のうち何れか一項に記載の製造方法。
  28. 該ジアルキルスズ化合物が、
    Figure 2008044575
    (式中、RおよびRは、ジアルキルスズ触媒に由来する基であり、各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基を表し、
    Yは、ジアルキルスズ触媒に由来する基、または、酸(HY)および/または酸無水物(YOY)に由来する基であって、Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8のYであり、
    iおよびjは、各々0〜2の整数であり、i+j=2である。)
    Figure 2008044575
    (式中、R、R10、R11およびR12は、ジアルキルスズ触媒に由来する基であり、各々独立に、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のアルキル基を表し、
    Yは、ジアルキルスズ触媒に由来する基、または、酸(HY)および/または酸無水物(YOY)に由来する基であって、Yに水素原子が付加したYの共役酸であるHYのpKaが0〜6.8のYであり;
    k、l、m、nは、各々0〜2の整数であり、k+l=2、m+n=2である。)
    式(7)で表されるジアルキルスズ化合物、および式(8)で表されるテトラアルキルジスタンオキサン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項27に記載の製造方法。
  29. 該工程(B)の後に、
    工程(I):Sn−Y結合を有するジアルキルスズ化合物の置換基Yを、アルコキシ基、アシルオキシル基およびハロゲン原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基に置換する工程;
    を含む請求項14〜26のうち何れか一項に記載の製造方法。
  30. 該工程(I)が、
    工程(I−1):Sn−Y結合を有するジアルキルスズ化合物にアルカリ水溶液を加えて加水分解してジアルキル酸化スズを含有する組成物を得る工程;
    工程(I−2):該工程(I−1)で得られたジアルキル酸化スズを含有する組成物と、アルコール、カルボン酸およびハロゲン化水素よりからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を反応させ、発生する水を含む成分を反応液より除去する工程;
    を含む請求項29に記載の製造方法。
  31. 該アルカリ水溶液が、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液および炭酸ナトリウム水溶液よりなる群から選ばれる少なくとも1つのアルカリ水溶液である請求項30に記載の製造方法。
  32. 該工程(I−2)において、ジアルキル酸化スズを含有する組成物と反応させる化合物がアルコールであり、ジアルキルスズアルコキシド化合物を得る工程である請求項30または31に記載の製造方法。
  33. 該炭酸エステルを製造する過程が、
    工程(1):二酸化炭素とジアルキルスズ触媒とを反応させて、炭酸エステルを含む反応液を得る工程;
    工程(2):該反応液から炭酸エステルを分離し、残留液を得る工程;
    工程(3):該残留液とアルコールを反応させて生成する水を系外に除去してジアルキルスズ触媒を再生する工程;
    工程(4):工程(3)で得られたジアルキルスズ触媒を工程(1)へリサイクルする工程;
    を含む請求項6に記載の製造方法。
  34. 該炭酸エステルを製造する過程で生成するジアルキルスズ触媒の失活体組成物から、アルキル基再分配反応および/または脱アルキル基反応してジアルキルスズ触媒を再生する工程を、
    該工程(2)および/または工程(3)の後に実施し、再生されたジアルキルスズ触媒を、該工程(4)および/または工程(1)のジアルキルスズ触媒としてリサイクル使用することをさらに含む請求項33に記載の製造方法。
  35. 該ジアルキルスズ触媒を再生する工程が、請求項29〜32に記載の方法であって、置換基Yがアシルオキシル基である工程である請求項34に記載の製造方法。
  36. 該ジアルキルスズ触媒が、ジアルキルスズアルコキシド化合物である請求項1、33〜35のいずれか一項に記載の製造方法。
  37. 該ジアルキルスズ触媒が、ジアルキルスズアルコキシド化合物であって、
    Figure 2008044575
    (式中、RおよびRは、各々独立に、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜12のアルキル基を表し、
    およびXは、各々独立に、アルコキシ基、アシルオキシル基およびハロゲン原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を表し、
    aおよびbは、各々0〜2の整数であり、a+b=2であり、
    cおよびdは、各々0〜2の整数であり、c+d=2である。)
    Figure 2008044575
    (式中、R、R、RおよびRは、各々独立に、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜12のアルキル基を表し、
    およびXは、各々独立に、アルコキシ基、アシルオキシル基およびハロゲン原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を表し、
    e、f、g、hは、各々0〜2の整数であり、e+f=2、g+h=2である。)
    式(1)および/または(2)で表される化合物のうち、X、X、XおよびXがアルコキシ基である請求項33〜36のいずれか一項に記載の製造方法。
  38. 該ジアルキルスズ触媒が、ジアルキルスズアルコキシドであって、前記式(1)および/または(2)で表される化合物のうち、R、R、R、R、RおよびRが、同時にn−ブチル基またはn−オクチル基である請求項37に記載の製造方法。
  39. 該アルコールが、下記式(9)で表されるアルコールである請求項33〜38のうち何れか一項に記載の製造方法:
    Figure 2008044575
    (式中、R13は直鎖状もしくは分岐鎖状の炭素数4〜8のアルキル基を表す)。


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