JPWO2008026373A1 - 樹脂成形体への印刷方法及び熱可塑性樹脂成形体 - Google Patents

樹脂成形体への印刷方法及び熱可塑性樹脂成形体 Download PDF

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Abstract

レーザーを照射により樹脂成形体に鮮明な印刷をする方法、及びその方法により得られる熱可塑性樹脂成形体に関する。(1)熱可塑性樹脂成形体に、二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた後、レーザーを照射する樹脂成形体への印刷方法、(2)二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた熱可塑性樹脂粉粒体を成形してなる成形体に、レーザーを照射する樹脂成形体への印刷方法、(3)二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた熱可塑性樹脂成形体の表面に、レーザー照射により発泡させた印刷を施してなる熱可塑性樹脂成形体、及び(4)二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた熱可塑性樹脂で構成される単一層又はそれを内部層として含む積層体の該内部層を、レーザー照射により選択的に発泡させてなる熱可塑性樹脂成形体である。

Description

本発明は、レーザー照射により樹脂成形体に鮮明な印刷をする方法、及びその方法により得られる熱可塑性樹脂成形体に関する。
近年、樹脂製品への印刷において、環境への配慮から有機溶剤の使用量削減が要望されている。また、樹脂製品への印刷は、一般に印刷ラベルや金型への掘り込みによる表示によってなされているが、樹脂製品の使用環境が厳しいと印刷が消えてしまう等の問題がある。予め樹脂製品に印刷や塗装を行い、その後インキや塗料等をレーザービームで取り除く方法もあるがインキや塗料の厚みを再現性よく一定にすることの難しさや使用するインキや塗料について耐久性の高いものが求められる等課題が多い。そのため、樹脂材料にレーザー発色を助ける添加剤を混ぜた成形体を用いる方法も知られているが、樹脂材料が制限される等の問題がある。
一方、レーザー照射技術は、レーザー照射装置の進歩等により、インキ印刷に代わる技術としての応用が期待できる。レーザーマーキングは、主として基材表面の必要な部分にのみレーザー光を照射して加熱することにより基材を変質又は除去させるか、又は基材表面にコーティングされた被膜にレーザーを照射して被膜のみを除去し、基材のレーザー照射部分(マーキング部分)と非照射部分(地肌部分)との間でコントラストをつけることでマーキングする方法が大半である。また、レーザーを成形体に照射し、フルカラーの発色をさせて加飾を行うレーザー加飾も実用化を迎えている。
しかしながら、レーザー照射では樹脂表面が溶けて凹部の周囲が盛り上がり、印字が不鮮明となり、また、レーザーの出力を上げると凹部周辺の樹脂が劣化を起こして着色する等の問題がある。さらに、透明な樹脂製品や黒色やカラー色の不透明な樹脂製品等へのレーザー照射では、樹脂面に印字・印刷されたもののコントラストが低く見にくい等の問題がある。
樹脂成形体表面へのレーザーマーキング技術等については、種々の提案がなされている。
特許文献1には、カーボンブラックと、レーザー光の影響を受けにくい有機顔料・染料とを含有してなる熱可塑性樹脂組成物より成形された成形品の表面にレーザー光を照射してマーキングする方法が開示されている。
特許文献2には、微粒子状の長石類を含有する熱可塑性樹脂組成物からなる成形物にレーザ光を照射するレーザマーキング方法が開示されている。
特許文献3には、親水性表面を有する支持体表面に、スチレン−(メタ)アクリル酸系熱可塑性樹脂粒子、光を吸収して熱を発生する物質等を含有する組成物からなる感光層を有する平版印刷版原版に、レーザー光を照射した後、現像する画像形成方法が開示されている。
特許文献4には、PC樹脂、アクリル系樹脂、リン酸エステル系化合物、及びレーザー光により消滅又は変色する黒色物質を含有するレーザーマーキング用熱可塑性樹脂組成物が開示されている。
一方、特許文献5には、非晶性熱可塑性樹脂からなるシート状物に、圧力1〜40MPa、温度50℃以下の条件下で二酸化炭素を収着させた後、二酸化炭素を収着した該シート状物を成形する樹脂成形体の製造方法が開示されている。
特許文献6には、超臨界状態の不活性流体(二酸化炭素及び/又は窒素ガス)を発泡剤として樹脂に含浸させ射出成形して得られる発泡射出成形体が開示されている。
また、特許文献7には、圧力容器内で超臨界状態の不活性流体を熱可塑性樹脂の粉粒体に含浸させた後、成形機に投入し、成形、発泡させる樹脂発泡体の製法が開示されている。
しかしながら、上記の技術では、樹脂成形体表面に満足しうる鮮明な印刷をすることができなかった。
特開平6−297828号 特開平10−297095号 特開2003−167330号 特開2006−83241号 特開2006−7657号 特開2003−103556号 特開2003−261707号
本発明は、上記の現状に鑑み、レーザー照射により樹脂成形体に鮮明な印刷をする方法、及びその方法により得られる熱可塑性樹脂成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく検討した結果、熱可塑性樹脂成形体に、予め二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた後、レーザーを照射することにより、上記課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(4)を提供する。
(1)熱可塑性樹脂成形体に、二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた後、レーザーを照射することを特徴とする樹脂成形体への印刷方法。
(2)二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた熱可塑性樹脂粉粒体を成形してなる成形体に、レーザーを照射することを特徴とする樹脂成形体への印刷方法。
(3)二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた熱可塑性樹脂成形体の表面に、レーザー照射により発泡させた印刷を施してなることを特徴とする熱可塑性樹脂成形体。
(4)二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた熱可塑性樹脂で構成される単一層又はそれを内部層として含む積層体の該内部層を、レーザー照射により選択的に発泡させてなることを特徴とする熱可塑性樹脂成形体。
本発明の方法によれば、熱可塑性樹脂が透明・不透明にかかわらず、レーザー照射により、高いコンストラストで、明瞭かつ鮮明に印刷することができ、得られた印刷は消失しにくいため実用上極めて優れている。
(A)は、実施例1で得られた二酸化炭素含浸カラーアクリル板(色:ブルー)にレーザー照射して得られた印刷を示し、(B)は、比較例1の二酸化炭素未含浸カラーアクリル板(色:ブルー)にレーザー照射して得られた印刷を示す。 (A)は、実施例2で得られた二酸化炭素含浸PC板にレーザー照射して得られた印刷を示し、(B)は、比較例2の二酸化炭素未含浸PC板にレーザー照射して得られた印刷を示す。 (A)は、実施例3で得られた二酸化炭素含浸PP板にレーザー照射して得られた印刷を示し、(B)は、比較例3の二酸化炭素未含浸PP板にレーザー照射して得られた印刷を示す。 (A)は、実施例8で得られた二酸化炭素含浸ABS板にレーザー照射して得られた印刷を示し、(B)は、実施例9で得られた窒素含浸ABS板にレーザー照射して得られた印刷を示し、(C)は、比較例8のガス未含浸ABS板にレーザー照射して得られた印刷を示す。 (A)は、実施例10で得られた二酸化炭素含浸PS板にレーザー照射して得られた印刷を示し、(B)は、実施例11で得られた窒素含浸PS板にレーザー照射して得られた印刷を示し、(C)は、比較例9のガス未含浸PS板にレーザー照射して得られた印刷を示す。 (A)は、実施例12で得られた窒素含浸PC板にレーザー照射して得られた印刷を示し、(B)は、比較例10の窒素未含浸PC板にレーザー照射して得られた印刷を示す。 (A)は、実施例13で得られた窒素含浸カラーアクリル板(色:ブルー)にレーザー照射して得られた印刷を示し、(B)は、比較例11の窒素未含浸カラーアクリル板(色:ブルー)にレーザー照射して得られた印刷を示す。 (A)は、実施例14で得られた二酸化炭素含浸カラーアクリル板(色:ブラック)にレーザー照射して得られた印刷を示し、(B)は、比較例12の二酸化炭素未含浸カラーアクリル板(色:ブラック)にレーザー照射して得られた印刷を示す。 (A)は、実施例15で得られた二酸化炭素含浸PCフィルムにレーザー照射して得られた印刷を示し、(B)は、比較例13の二酸化炭素未含浸PCフィルムにレーザー照射して得られた印刷を示す。 (A)は、実施例16で得られた二酸化炭素含浸PC板にレーザー照射して得られた名刺文字印刷を示し、(B)は、実施例16で得られた印刷名刺文字の一部を実体顕微鏡で拡大観察した結果を示し、(C)は、比較例14の二酸化炭素未含浸PC板にレーザー照射して得られた印刷を示す。 (A)は、実施例17で得られた二酸化炭素含浸PC板にレーザー照射して得られたバーコードを示し、(B)は、比較例15の二酸化炭素未含浸PC板にレーザー照射して得られた印刷を示す。 (A)は、実施例18で得られた二酸化炭素含浸カラーアクリル板(色:ブルー)にレーザー照射して得られたバーコードを示し、(B)は、比較例16の二酸化炭素未含浸カラーアクリル板(色:ブルー)にレーザー照射して得られた印刷を示す。
本発明の樹脂成形体への印刷方法は、(1)熱可塑性樹脂成形体に、二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた後、レーザーを照射すること、及び(2)二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた熱可塑性樹脂粉粒体を成形してなる成形体に、レーザーを照射することを特徴とする。
本発明において「印刷」とは、熱可塑性樹脂成形体の表面及び内部に文字、画像、描画、パターン等を書き込んだり、マーキングしたりすることをいい、ベタ印刷を含む概念である。また、「レーザー照射」とは、いわゆるレーザーマーキング、レーザー加飾、フォトリソ加工を含む概念である。
本発明において「成形体」とは、立体構造を有する構造体だけでなく、シート又はフィルム等の平面的な形状をした構造体も包含する。
成形体を構成する熱可塑性樹脂としては、一般にフィルム、シート、基板等の各種成形体材料及びその積層体が用いられ、二酸化炭素及び/又は窒素を含浸することができる樹脂であれば特に制限はなく、非晶性熱可塑性樹脂、結晶性熱可塑性樹脂のいずれも使用することができる。
<非晶性熱可塑性樹脂>
非晶性熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリメタクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。
ポリスチレン系樹脂としては、汎用ポリスチレン(GPPS)、ゴム強化ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、スチレンーイソプレンースチレン共重合体(SIS)、スチレンーエチレン/ブチレンースチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、スチレンーブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。ポリスチレン系樹脂の質量平均分子量(Mw)は50、000〜400、000が好ましい。
ポリカーボネート系樹脂としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)、ビス(3、5−ジアルキル−4−ヒドロキシフェニル)、又はビス(3、5−ジハロ−4−ヒドロキシフェニル)置換を有する炭化水素誘導体を有するポリカーボネートが好ましく、2、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)を有するビスフェノールA型ポリカーボネートが特に好ましい。ポリカーボネート系樹脂の質量平均分子量(Mw)は、10,000〜100,000が好ましく、10,000〜70,000がより好ましく、場合により10,000〜50,000が好ましい。
ポリメタクリル系樹脂としては、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルメタクリレート−スチレン共重合体等が挙げられる。メタクリル系樹脂の質量平均分子量(Mw)は50,000〜600,000が好ましい。
シクロ(環状)オレフィン系樹脂としては、日本ゼオン株式会社製のシクロオレフィンポリマー、商品名「ZEONOR」、「ZEONEX」、三井化学株式会社製のエチレン・テトラシクロドデセン共重合体、商品名「アペル」、Ticona社製のシクロオレフィン・コポリマー、商品名「TOPAS」等が好ましい。
ポリ塩化ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。塩化ビニル系樹脂の質量平均分子量(Mw)は40,000〜200,000が好ましい。
その他の非晶性熱可塑性樹脂としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリアリレート(PAR)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ四フッ化エチレン、ポリビニルアセテート、ポリ塩化ビニリデン、液晶熱可塑性樹脂、及び生分解性樹脂等を挙げることができる。
生分解性樹脂としては、脂肪族ポリエステル、ポリビニールアルコール(PVA)、セルロース誘導体等が挙げられる。脂肪族ポリエステルとしては、ポリ乳酸(PLA)樹脂及びその誘導体、ポリヒドロキシブチレート(PHB)及びその誘導体、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリテトラメチレンアジペート、ポリグリコール酸(PGA)、ジオールとジカルボン酸の縮合物等が挙げられ、セルロース類としてはアセチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等が挙げられる。
これらの中では、ポリ乳酸樹脂が好ましい。ポリ乳酸樹脂は、乳酸又はラクチドの重縮合物である。ポリ乳酸樹脂にはD体、L体、DL体の光学異性体があるが、それらの単独物又は混合物を含む。ポリ乳酸樹脂の質量平均分子量(Mw)は100,000〜400,000が好ましい。
<結晶性熱可塑性樹脂>
一方、結晶性熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、特殊ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体等の重量平均分子量(Mw)が30,000〜600,000のポリプロピレン樹脂、アイオノマー、ポリブテン、及び特殊ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
特殊ポリオレフィン樹脂としては、超高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン(ポリプロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体等)、ポリ4−メチル−ペンテン−1、環状ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。
特殊ポリスチレン系樹脂としては、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、α−メチルスチレン共重合体等が挙げられる。
ポリアミド系樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ポリアミド、芳香族・脂肪族ポリアミド共重合体等が挙げられる。
飽和ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
ポリアセタール樹脂としては、ホモポリオキシメチレン、ポリオキシメチレン共重合体等が挙げられる。
その他の結晶性熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、サーモトロピック液晶性樹脂(主鎖骨格中にパラオキシ安息香酸、芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸、ナフタレン環等の分子構造を含有するもの)等が挙げられる。
上記の樹脂の中では、非晶性樹脂としては、特に、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリメタクリル系樹脂、及びシクロオレフィン系樹脂が好ましい。また、結晶性樹脂の中では、特に、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド系樹脂、及びポリフェニレンサレファイド樹脂が好ましい。
前記の熱可塑性樹脂は、一種単独で又は二種以上を混合して使用することができる。また、強度・耐熱性の付与、寸法精度の向上等を目的として、無機系又は有機系の充填剤を配合することができる。さらに添加剤として、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤等を配合することができる。
<二酸化炭素及び/又は窒素の含浸>
樹脂成形体に二酸化炭素及び/又は窒素を含浸(溶解)させる方法としては、樹脂成形体の表面近傍及び/又は内部に二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させることができる方法であれば特に制限はない。例えば、熱可塑性樹脂成形体を圧力容器に入れ、この圧力容器内に二酸化炭素及び/又は窒素を供給し、加温ないし加圧下で所定時間保持して、二酸化炭素及び/又は窒素を含浸することができる。
また、熱可塑性樹脂の粉粒体を圧力容器に入れ、この圧力容器内に二酸化炭素及び/又は窒素を供給し、加温ないし加圧下で所定時間保持して、樹脂粉粒体に二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた後、公知の方法により成形して樹脂成形体を得ることができる。ここで、樹脂粉粒体とは、前記樹脂の粉末、粒、ペレット、タブレット等の粉粒体を指称し、成形原料として供給できる形態であれば特に制限されない。公知の成形法としては、射出成形、押出成形、ブロー成形、カレンダ成形、圧縮成形、トランスファ成形、積層成形、注型成形、インフレーション成形等が挙げられる。
熱可塑性樹脂成形体は、レーザー照射する前に、二酸化炭素を好ましくは0.1〜20.0質量%、より好ましくは0.2〜15.0質量%、特に好ましくは0.5〜10.0質量%、場合によっては0.5〜4.0質量%、好ましくは0.5〜3.0質量%、より好ましくは0.5〜2.5質量%、及び/又は窒素を好ましくは0.03〜1.0質量%、より好ましくは0.05〜1.0質量%、より好ましくは0.08〜0.9、特に好ましくは0.1〜0.8質量%含浸させる。
二酸化炭素及び/又は窒素の含浸の圧力は、好ましくは1〜40MPa、より好ましくは2〜20MPa、更に好ましくは2〜15MPaであり、特に好ましくは3〜12MPaである。
二酸化炭素及び/又は窒素の含浸の温度は、非晶性熱可塑性樹脂の場合は、好ましくはそのガラス転移温度(Tg)以下であり、樹脂により異なるが、より好ましくは230℃〜−30℃、更に好ましくは100℃〜室温下である。含浸の時間は、圧力、温度、樹脂の種類等により異なるが、通常1分〜100時間、好ましくは5分〜30時間、より好ましくは15分〜30時間である。
含浸処理方式としては、バッチ式や、樹脂成形体又は粉粒体を二酸化炭素及び/又は窒素の処理帯域に導入して連続的に処理する方式等を採用することができる。
二酸化炭素の含浸において、助剤として有機溶媒を可塑剤の0.05〜1質量%程度添加することもできる。
用いることのできる有機溶媒としては特に制限はなく、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒の他、ベンゼン、トルエン、ポリオール等が挙げられる。
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、第3級ブタノール、イソブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、環状エーテル等が挙げられる。これらの中では、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒が特に好ましい。
圧力容器に供給する二酸化炭素及び/又は窒素は、供給時点で通常のボンベ圧状態であってもよいし、亜臨界状態又は超臨界状態であってもよい。また、圧力容器内に供給した後に亜臨界状態又は超臨界状態としてもよい。
二酸化炭素及び/又は窒素を樹脂成形体又は粉粒体に含浸させる条件は、樹脂自体の特性や用途等に合わせて適宜決定することができる。例えば、二酸化炭素を室温下のボンベ圧(5MPa程度)、及び/又は窒素を室温下のボンベ圧(10MPa程度)で圧力容器内に供給し、樹脂成形体又は粉粒体を必要に応じて適宜撹拌しながら0.25〜24時間保持することにより、含浸させることができる。
しかしながら、二酸化炭素及び/又は窒素の含浸性は樹脂により異なり、室温下のボンベ圧では二酸化炭素及び/又は窒素の含浸に長時間を要する樹脂材料も存在する。従って、二酸化炭素及び/又は窒素の含浸時間を短縮するためには、亜臨界状態又は超臨界状態下で、ガラス転移温度以下で含浸させることが好ましい。
ここで、二酸化炭素又は窒素の「亜臨界状態」とは、(i)圧力が二酸化炭素の臨界圧力(7.38MPa)以上、又は窒素の臨界圧力(3.4MPa)以上であり、温度が二酸化炭素の臨界温度(31.1℃)未満、又は窒素の臨界温度(−147℃)未満である液体状態、(ii)圧力が二酸化炭素又は窒素の臨界圧力未満であり、温度が臨界温度以上である液体状態、又は(iii)温度及び圧力が共に二酸化炭素又は窒素の臨界点未満ではあるがこれに近い状態をいう。
より具体的には、二酸化炭素の場合、温度が20℃〜31℃で圧力が5MPa以上の状態が好ましく、窒素の場合、温度が室温〜100℃、圧力が1〜3.4MPaの状態が好ましい。
また、「超臨界状態」とは、圧力が二酸化炭素及び/又は窒素の臨界圧力以上であり、かつ温度が臨界温度以上である状態をいう。二酸化炭素を超臨界状態とするためには、温度40〜50℃、圧力7.38〜30MPa、特に8〜20MPとすることが好ましく、窒素を超臨界状態とするためには、温度が室温〜100℃、圧力3.4〜30MPa、特に5〜20MPaとすることが好ましい。
亜臨界状態又は超臨界状態の二酸化炭素を用いる場合は、通常、1分間〜30時間、好ましくは5分間〜5時間保持すればよく、亜臨界状態又は超臨界状態の窒素を用いる場合は、通常、10分間〜30時間、好ましくは0.5〜10時間保持すればよい。
二酸化炭素及び/又は窒素を含浸した樹脂成形体は大気圧開放後、直ちにレーザー照射をすることもできる。しかし、大気圧解放後、樹脂成形体から二酸化炭素及び/又は窒素ガスが放出してそれらの含浸量が30質量%程度に低下するまでの経過時間内(例えば、0.5〜20時間内)であればレーザー照射により鮮明な印刷を行うことができる。
樹脂粉粒体に二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた後、各種成形法により樹脂成形体を得る場合は、含浸処理後、圧力容器内の圧力を開放し、内部の樹脂粉粒体を取り出す。この圧力開放により樹脂粉粒体に含浸された二酸化炭素及び/又は窒素の一部、及び必要に応じて添加した有機溶媒が気体として樹脂粉粒体から放散されてゆくが、圧力解放後、常温で5時間以内であれば、含浸されている二酸化炭素の約50質量%程度、又は窒素の約60質量%程度が樹脂粉粒体内部に残存している。亜臨界状態又は超臨界状態の二酸化炭素及び/又は窒素で含浸した場合は、樹脂粉粒体の発泡を抑制するように、ゆっくり減圧することが好ましい。得られた二酸化炭素及び/又は窒素含浸樹脂は、未含浸樹脂と混合し、樹脂に対する二酸化炭素及び/又は窒素の含浸量を調整し、成形用原料とすることができる。
次に、この樹脂粉粒体を速やかに、例えば射出成形機のシリンダーの最上流部に供給して、該樹脂粉粒体をなす熱可塑性樹脂の種類に応じた成形条件で射出成形を行い、種々の形状の成形体とすることができる。射出成形機への熱可塑性樹脂の供給は、射出成形機の通常の原料供給口に投入することにより行うことができる。射出成形の際には、含浸された二酸化炭素及び/又は窒素の一部が放散するが、二酸化炭素の含浸量が好ましくは0.1〜20.0重量%、窒素の含浸量が好ましくは0.03〜1.0重量%であれば、その後、効果的にレーザー照射を行うことができる。
本発明方法を適用する熱可塑性樹脂成形体の形態に特に制限はないが、厚さ50μm〜10mmのシート、フィルム、基板等の薄肉の成形体が特に好適である。
<レーザー照射>
レーザー照射で用いるレーザーとしては、出力が好ましくは20W以下、より好ましくは0.2〜10W、より好ましくは0.2〜6W、より好ましくは0.3〜6W、特に好ましくは0.3〜5.5Wのエネルギーを照射できる連続発振レーザー(エネルギー量:3〜55J、但しマーキングする文字及び絵柄の内容によってエネルギー量は変化する。)、又は周波数50Hz又は100Hz条件下のON−OFF出力が、好ましくは定格出力の50%のエネルギーを照射できるパルス型レーザーが望ましい。
例えば、炭酸ガスレーザー、一酸化炭素レーザー、半導体レーザー、イットリウム・バナデート(YVO4)レーザー、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)レーザー、エキシマレーザー、TEA型炭酸ガスレーザー(パルス型)等が挙げられる。これらの中では、炭酸ガスレーザー、YVO4レーザーが視認性の良好なマーキングが得られる点で、特に好ましい。一般に炭酸ガス(CO2)レーザーは波長が10.6μm及び9.3μmを有するものが用いられ、YVO4レーザーでは波長1064μmのものが使用されているが、これらはレーザーの種類、出力、レーザーの発振波長、ピーク強度(出力)、樹脂のレーザー吸収係数等を考慮して、目的とする用途によって適宜選択できる。
より具体的には、例えば、株式会社鬼塚硝子製の炭酸ガスレーザー装置、MODEL PIN−40R(レーザーパワー:定格40W〜10W、発振波長:10.6μm、スポット径:240μm)が挙げられる。このレーザー装置を用いて、レーザースキャニング用にGSILumonics社製のXYスキャニングモデュールを使用し、AutoCADのデータを変換し、スキャニングモデュールにより、レーザーで描画することができる。この装置ではパルス発振によるON−OFF型のレーザー照射も可能であるが、実施例においてはDC放電による連続発振を用いた。
樹脂成形体への印刷に際しては、例えば、レーザー発生装置で発振されたレーザービーム光はガルバノレーザスキャナに入射し、2個のX、Yガルバノによって振られ(各々の-軸に移動し)、その先のFθレンズによって焦点距離を調整され、樹脂成形体表面及び/又は内部に所望の印刷を行うことができる。
スキャニングデータはCADで作成することができる。例えば、文字の大きさはコンピュータのフォント設定でできるが、作成したデータをコンピュータのマーキング領域の拡大、縮小からも可能である。また、スキャニングされる線幅は、スキャナ速度の変更、レーザーの焦点距離の移動、冷却ガスの吹き付けによる試料設置台の温度変更や冷却等の方法により変えることができる。
また、1ショットのエネルギー出力が制限されるパルス型レーザーでは、低いエネルギーで印字が行えるので本発明の方法にも使用できる。さらに、二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた熱可塑性樹脂成形体は、ガスの含浸濃度によってレーザー出力の影響を受けるので、マーキングの用途又は含浸量によって、レーザー発振方法を連続にするか、又はパルス型にするかは表面及び/又は内部の所望する印刷によって選択すればよい。また、広い面積を有する熱可塑性樹脂成形体に種々の文字及び絵柄等を印刷しようとすれば、それらもマスキングの使用やX−Yステージにより照射面を移動させることにより、広範囲にわたる印字も可能で、一つの基材面に多くの情報、又は複雑な漢字、画像等を適度な大きさで表示することができる。
本発明においては、樹脂成形体に、予め二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させているため、表面及び/又は内部層の発泡が容易となり、レーザー出力が10W以下の低出力においても明瞭かつ鮮明な印刷をすることができる。
得られる熱可塑性樹脂成形体は、二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた熱可塑性樹脂成形体の表面及び/又は内部に、レーザー照射により発泡させた印刷が施されている。
印刷できる線幅(スキャニングの線幅)は、レーザー装置のスポット径や、使用する熱可塑性樹脂成形体の材料特性(分子量、分子量分布、粘弾性挙動)によって変化するが、レーザーの機種選定を行うことによって、好適条件では400μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは50μm以下とすることができる。
また、樹脂成形体に二酸化炭素及び/又は窒素を含浸しないでレーザー照射する従来法では、レーザー照射により樹脂成形体の表面に凹状の窪みができるが、本発明の方法によれば、レーザー照射により、樹脂成形体の表面が発泡し、レーザー照射部分が凸状に隆起する。この凸状隆起物の断面は略台形状をなしており、その略台形状の側片が水平面から通常45〜90°、好ましくは50〜90°の角度を有する。このため、樹脂成形体表面とのコントラストが向上し、明瞭かつ鮮明な印刷となる。また、発泡した凸状隆起物の中には、側面部及び中央部で平均セル径が1〜10μm、印字表面近傍部で平均セル径1〜50μmの発泡セルが存在している。
ここで、本発明の印刷方法の好適条件を具体的に説明する。
マーキングは、二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた後、大気圧下に放置すると、含浸された二酸化炭素及び/又は窒素ガスが急激に放出されるので、フィルム及びシートへの印刷(マーキング)は、二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた後、30分から1時間内に行うことが望ましい。前記の時間を経過すると印刷(マーキング)できる部分とできない部分が生じて、印刷(マーキング)が不良となる。さらに、印刷(マーキング)を連続的に行うことが困難となる。
また、ただ単に含浸成形体にマーキングすると、マーキングされた部分の形状(レーザー顕微鏡による表面形態や走査型電子顕微鏡により観察される断面構造)は不安定で、断面形状(台形状、弓形状)の安定したものや、発泡径の揃った印字断面形状を有するものが得られ難い。
そこで、本発明においては、ガス含浸した成形体(二酸化炭素含浸量:0.1〜20.0重量%及び/又は窒素含浸量:0.03〜0.1重量%)の熱可塑性樹脂の表面温度を好ましくは23℃以下、より好ましくは10〜22℃、より好ましくは10〜21.5℃とすることが望ましい。そのためには、ガス含浸した成形体を加圧系から開放した後、直ちに成形体を氷水浸漬やドライアイス下で冷却することが好ましい。成形体の表面温度を23℃以下にすることにより、ガス含浸した成形体からのガスの放出を緩和させることができ、ガス含浸後も長時間、例えば24時間〜48時に渡って、ガス含浸した成形体表面のガス残存濃度を高レベルで維持することができる。
成形体表面のガス残存濃度は、赤外吸収スペクトル(IR)法を用いる減衰全反射法(Attenuated total reflection, ATR法)(赤外分光全反射法)により、ガス含浸した成形体のガス含浸直後とレーザー照射直前の二酸化炭素の吸収スペクトル強度を対比観察することにより算出することができる。具体的には、レーザー照射直前において、成形体表面の赤外分光全反射法による、二酸化炭素由来の波長2310cm-1〜2360cm-1の範囲において、特にピークが高く出現する2335cm-1〜2338cm-1の吸収ピークが観察されることが好ましい。また、ガス含浸直後の成形体表面のガス濃度に対するガス残存濃度(ガス残存率、%)を、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上に維持することが望ましい。
窒素は等核二原子分子であり、振動が起こっても双極子モーメントが変化しないため赤外吸収は示さない。そのため、成形体に窒素を含浸させた場合は、レーザー照射直前における成形体表面をラマン分光法により観察した際に、窒素由来のラマン散乱ピークが検出されることが好ましい。
また、成形体の表面温度を23℃以下にすることにより、レーザー照射時の発熱による悪影響を緩和し、ガス含浸後の24時間〜48時間に渡って表面形状の安定したマーキングを行うことができ、マーキング形成時の発泡径をより小さくすることができる。
さらに、レーザー照射時に試料面に不活性ガス及びその冷却ガス(窒素ガスを液体窒素中内に通過させたもの等)を吹付けたり、冷却水等を使用して試料設置台を冷却すると、レーザー照射時のエネルギーにより試料表面が高温になって溶融することを防ぐことができる共に、マーキング効果が向上する。
<熱可塑性樹脂成形体>
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、(1)二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた熱可塑性樹脂成形体の表面に、レーザー照射により発泡させた印刷を施してなること、及び(2)二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた熱可塑性樹脂で構成される単一層又はそれを内部層として含む積層体の該内部層を、レーザー照射により選択的に発泡させてなることを特徴とする。
ここで、「二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた熱可塑性樹脂成形体」とは、熱可塑性樹脂成形体に二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた成形体、及び二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた熱可塑性樹脂粉粒体を成形してなる成形体を意味する。
レーザー照射による熱可塑性樹脂成形体の印刷においては、種々の方法を採用することができる。例えば、(i)二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた熱可塑性樹脂成形体の表面に、直接レーザー照射を行い、樹脂成形体表面を微細発泡させた印刷を施す方法の他、(ii)二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた熱可塑性樹脂で構成される単一層又はそれを内部層として含む積層体の該内部層を、レーザー照射により選択的に発泡させる方法等が挙げられる。
より具体的には、(iii)微細加工した低熱伝導率材料からなるマスク材料を、二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた熱可塑性樹脂成形体上に重ね、レーザー照射を行う方法、(iv)二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた熱可塑性樹脂フィルム等を含む樹脂成形体を、二酸化炭素及び/又は窒素未含浸の熱可塑性樹脂成形体上に重ねた積層体を形成し、レーザー照射して積層体表面の、二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた熱可塑性樹脂成形体を微細発泡させる方法、(v)二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた熱可塑性樹脂成形体上に、二酸化炭素及び/又は窒素未含浸の透明の熱可塑性樹脂フィルム等を含む樹脂成形体を重ねた積層体を形成し、レーザー照射して積層体内部の、二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた熱可塑性樹脂成形体を微細発泡させる方法、(vi)多層構造で構成される熱可塑性樹脂積層体の中心部が、二酸化炭素及び/又は窒素の含浸量の高い熱可塑性樹脂層で構成される積層体にレーザー照射して、二酸化炭素及び/又は窒素の含浸量の高い熱可塑性樹脂層のみを発泡させて発泡層(ベタ印刷層)を形成させる方法、又は発泡した文字、画像、描画、パターン等の印刷層を形成させる方法等が挙げられる。
本発明においては、レーザー照射前に、熱可塑性樹脂成形体が予め二酸化炭素及び/又は窒素による含浸処理(前処理)がされているため、照射するレーザー光のエネルギーを低減することができる。そのため、レーザー照射時に、熱可塑性樹脂成形体表面の破壊、蒸散等が起きにくく、印刷コストの低減、成形体の耐久性向上を図ることができる。また、得られる発泡させた印刷は明瞭かつ鮮明である。
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。
実施例1
市販のカラーアクリル板(アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、色:ブルー、厚み2mm×縦1000mm×横2000mm)を購入し、2mm×60mm×60mmに裁断した試料を80℃で5時間予備乾燥した後、前処理として裁断試料を2Lのオートクレーブ(耐圧工業株式会社製)内に設置後、室温(23℃)下、ボンベ圧5.5MPaで15分間、二酸化炭素の含浸処理を行った。その後、オートクレーブ内の二酸化炭素を5分間かけて脱圧した。以下に示す質量法から算出したカラーアクリル板の二酸化炭素(CO2)含浸量は1.18質量%であった。
CO2溶解量(質量%)=[(CO2含浸後の裁断ポリマー試料重量(g)−含浸前の裁断ポリマー試料重量(g)]/含浸前の裁断ポリマー試料重量(g)×100
株式会社パーキンエルマージャパン製の赤外分光装置「Spectrum 100 FT−IR Spectrometer」を用いて、得られた二酸化炭素含浸カラーアクリル板の表面をATR法により観察した結果、二酸化炭素由来の波長2338cm-1の吸収ピーク(吸光度:0.28)が観察された。
得られた二酸化炭素含浸カラーアクリル板をレーザースキャニング装置(株式会社鬼塚硝子製、MODEL PIN−40R(レーザーパワー:定格40W、発振波長:10.6μm)、レーザースキャニング用にGSILumonics社製のXYスキャニングモデュールを使用)内の試料固定台(アルマイト加工板:黒板)上に設置した。設置した試料の表面温度を、安立計器株式会社製のハンディタイプ温度計(HA−100E)で測定した結果、13.4℃であった。なお、焦点距離は120mmとした。
印刷は、「滋賀県産業支援プラザ」の文字(4mm角)と枠線寸法24mm×46mmを、レーザースキャニング方式により、出力1W(エネルギー量:8J)でカラー(ブルー)アクリル板表面にレーザー照射して行った。その結果、図1(A)に示す明瞭かつ鮮明な印刷(印字)ができた。また、レーザー顕微鏡(レーザーテック株式会社製、OPTELICS C130)で測定した印刷の枠線の線幅は340μm、表面(基材面)からの高さは77μmの凸型で縦断面が台形状を有していた。
また、同時にオートクレーブ内で二酸化炭素処理した同一のカラーアクリル板を室温下に4時間放置した。放置後のカラーアクリル板の二酸化炭素含浸量は0.41重量%であった。また、レーザー照射直前のカラーアクリル板の表面温度は20.3℃であった。
また、得られた二酸化炭素含浸カラーアクリル板の表面をATR法により観察した結果、二酸化炭素由来の波長2338cm-1の吸収ピーク(吸光度:0.05)が観察された。
下記式による成形体表面におけるガス残存率は、17.9%であった。
ガス残存率(濃度、%)=〔(レーザー照射直前に観測した2338cm-1の吸光度)/(オートクレーブ解放後直ちに観測した2338cm-1の吸光度)〕×100
その後、上記と同様にしてレーザー照射を行った。その結果、時間経過してガス残存濃度が約18%に減少しても、図1(A)と同様に基材に対して高いコンストラストを持ち、視認性の高い印刷ができた。
比較例1
実施例1と同じ市販のカラーアクリル板(裁断試料)を予備乾燥し、実施例1と同様のレーザースキャニング方式により、出力2W(エネルギー量:16J)でレーザー照射した。その結果、図1(B)に示す不明瞭な印刷しかできなかった。また、レーザー顕微鏡で測定した枠線の幅は380μm、表面からの深さ(凹型形状)は77μmであった。
なお、前記と同様にしてカラーアクリル板表面をATR法により観察した結果、二酸化炭素由来の波数2338cm-1の吸収ピークは観察されなかった。
実施例2
市販のポリカーボネート(PC)板(透明品、厚み3mm×縦1000mm×横2000mm)を購入し、3mm×70mm×70mmに裁断した試料を100℃で5時間予備乾燥した後、前処理として、この裁断試料を2Lのオートクレーブ(耐圧工業株式会社製)内に設置後、室温下、ボンベ圧5.5MPaで1時間、二酸化炭素の含浸処理を行った。その後、オートクレーブ内の二酸化炭素を5分間かけて脱圧した。前処理したPC板の二酸化炭素は0.98質量%であった。また、得られた二酸化炭素含浸PC板の表面をATR法により観察した結果、二酸化炭素由来の波長2338cm-1の吸収ピーク(吸光度:0.26)が観察された。
得られた二酸化炭素含浸PC板(表面温度16.5℃)に、実施例1と同様のレーザースキャニング方式により、出力1W(エネルギー量:8J)でレーザー照射した。その結果、図2(A)に示す明瞭かつ鮮明な印刷ができた。
同様に前処理したPC板(表面温度16.8℃)の表面に文字及び枠線を反転させた状態で、レーザースキャニング方式により印刷した。この印刷された透明なPC板を裏返して見ると、図2(A)で見られるような明瞭で鮮明な印刷が観察された。
比較例2
実施例2と同じ市販のPC板(裁断試料)を予備乾燥し、実施例1と同様のレーザースキャニング方式により、出力3W(エネルギー量:24J)でレーザー照射した。その結果、図2(B)に示すような不明瞭な印刷しかできず、レーザー照射時にPC板表面から煙が発生し、樹脂の分解と共に印字部分が着色した。
実施例3
市販のポリプロピレン(PP)板(乳白色品、厚み3mm×縦1000mm×横2000mm)を購入し、3mm×60mm×60mmに裁断した試料を、前処理として、2Lのオートクレーブ(耐圧工業株式会社製)内に設置後、室温下、ボンベ圧5.5MPaで3時間、二酸化炭素の含浸処理を行った。その後、オートクレーブ内の二酸化炭素を5分間かけて脱圧した。前処理したPP板の二酸化炭素は1.23質量%であった。
得られた二酸化炭素含浸PP板に、実施例1と同様のレーザースキャニング方式により、出力5W(エネルギー量:40J)でレーザー照射した。レーザー照射直前のPP板の表面温度は14.8℃であった。その結果、不透明な結晶性PP樹脂板においても、図3(A)に示す明瞭かつ鮮明な印刷ができた。
レーザー顕微鏡で測定した印刷の枠線の線幅は300μmであり、表面から突出した印字発泡部(基材面からの高さ)は83μmを有し、縦断面が台形状を有していた。
比較例3
実施例3と同じ市販のPP板(裁断試料)を実施例1と同様のレーザースキャニング方式により、出力6W(エネルギー量:48J)でレーザー照射した。その結果、図3(B)に示すような不明瞭な印刷しかできず、レーザー照射時にPP板表面から煙が発生した。
レーザー顕微鏡により測定した表面形状は枠線の幅が290μmであり、表面の形態は凸型であったが、真ん中が窪み、それの両側に山が二つ存在(凹型)の形状を示した。山の高さは170μmであり、二つの山の高さは同一であった、また、両者の山に囲まれた窪みの部分の高さは31μm、その幅は62μmであった。
実施例4
市販のシクロオレフィンポリマーフィルム(COC(ARTON):JSR株式会社製、厚み:100μm、透明フィルム)を購入し、100μm×60mm×60mmに裁断した試料を100℃で5時間予備乾燥した後、前処理として裁断試料を2Lのオートクレーブ(耐圧工業株式会社製)内に設置後、室温(23℃)下、ボンベ圧5.5MPaで30分間、二酸化炭素の含浸処理を行った。その後、オートクレーブ内の二酸化炭素を5分間かけて脱圧した。前処理したCOCフィルムの二酸化炭素含浸量は3.37質量%であった。また、得られた二酸化炭素含浸COCフィルムの表面をATR法により観察した結果、二酸化炭素由来の波長2338cm-1の吸収ピーク(吸光度:0.17)が観察された。
得られた二酸化炭素含浸COCフィルム(表面温度21.3℃)に、実施例1と同様のレーザースキャニング方式により、出力3W(エネルギー量:24J)でレーザー照射した。その結果、試料の厚みが100μmと薄くなっても、図1(A)に示したと同じような明瞭かつ鮮明な印刷ができた。
なお、試料固定台(アルマイト加工板:黒板)のアルマイト加工板は氷水で冷却して使用した。
比較例4
実施例4と同じ市販のCOCフィルムに、実施例1と同様のレーザースキャニング方式により、出力3W(エネルギー量:24J)でレーザー照射した。その結果、図1(B)に示したと同じような不明瞭な印刷しかできなかった。
実施例5
市販のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(透明フィルム、厚み:250μm)を使用し、250μm×60mm×60mmに裁断した試料を80℃で5時間予備乾燥した後、前処理として裁断試料を2Lのオートクレーブ(耐圧工業株式会社製)内に設置後、室温(23℃)下、ボンベ圧5.5MPaで30分間、二酸化炭素の含浸処理を行った。その後、オートクレーブ内の二酸化炭素を5分間かけて脱圧した。前処理したPETフィルムの二酸化炭素含浸量は1.15質量%であった。また、得られた二酸化炭素含浸PETフィルムの表面をATR法により観察した結果、二酸化炭素由来の波長2338cm-1の吸収ピーク(吸光度:0.34)が観察された。
得られた二酸化炭素含浸PETフィルム(表面温度20.8℃)に、実施例1と同様のレーザースキャニング方式により、出力2W(エネルギー量:16J)でレーザー照射した。その結果、試料の厚みが250μmと少し厚くなっても、図1(A)と同じような明瞭かつ鮮明な印刷ができた。
同様な方法で、市販のPET製のOHPシート(厚み:100μm)を100μm×60mm×60mmに裁断して試料とした。前処理として裁断試料を2Lのオートクレーブ(耐圧工業株式会社製)内に設置後、室温(23℃)下、ボンベ圧5.5MPaで1時間、二酸化炭素の含浸処理を行った。その後、オートクレーブ内の二酸化炭素を5分間かけて脱圧した。前処理したOHPフィルムの二酸化炭素含浸量は1.78質量%であった。
得られた二酸化炭素含浸OHPフィルム(表面温度21.0℃)に、実施例1と同様のレーザースキャニング方式により、出力2W(エネルギー量:16J)でレーザー照射した。その結果、試料の厚みが100μmと薄くなっても、図1(A)に示したと同じような明瞭かつ鮮明な印刷ができた。
比較例5
実施例5と同じ市販のPETフィルムに、実施例1と同様のレーザースキャニング方式により、出力3W(エネルギー量:24J)でレーザー照射した。その結果、図1(B)に示したと同じような不明瞭な印刷しかできなかった。また、OHPシートについても同様な結果であった。
実施例6
市販のポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製、商品名:HL−4000、Mw:12、000)のペレットを100℃で5時間乾燥させた後、このペレット(以下、「PCペレット」という)1000gをステンレス金網製円筒状ロッド(100mmΦ、長さ200mm)内に入れ、容量2Lのオートクレーブ(耐圧工業株式会社製)内に設置後、室温(22℃)下、ボンベ圧5.0MPaで24時間、二酸化炭素の含浸処理を行った。その後、オートクレーブ内の二酸化炭素を5分かけて脱圧し取出した。以下に示す質量法から算出したPCペレットの二酸化炭素(CO2)含浸量は5.05質量%であった。
CO2溶解量(質量%)={[CO2含浸後の円筒状ロッド+CO2含浸後のペレット質量(g)]−[CO2含浸前の円筒状ロッド質量(g)+CO2含浸前のペレット質量(g)/含浸前のペレット質量(g)]×100
得られた二酸化炭素含浸PCペレット300gと二酸化炭素未含浸のPCペレット600gの混合物900gを、射出成形機(株式会社日本製鋼所製、商品名:J35ELIII−F)の原料供給口(シリンダーの最上流部)に直接投入した。なお、ペレット混合
物の二酸化炭素含浸量は3.57質量%であった。
このペレット混合物を用いて、下記の射出成形条件下で平板金型(寸法:30×50×1mm)により試料を作製した。
シリンダーの口径:25mm、スクリュー回転数:50rpm
射出条件:射出速度150mm/秒、120MPa、1.5秒、型締め:20トン
保圧条件:25MPa、1.5秒、背圧:6MPa
成形温度:原料供給口250℃、ノズル:290℃
金型温度:80℃
得られた平板試料を室温下で4時間放置した。この間に最初のペレットに含浸する二酸化炭素の5割以上は成形中及び大気圧下の放置中に放出していると考えられる。
室温下に放置した平板(表面温度21.7℃)に、「滋賀県産業支援プラザ」の文字(2mm角)と共に枠線21mm×28mmを、実施例1と同様のレーザースキャニング方式により、出力2W(エネルギー量:16J)でレーザーを照射した。その結果、図2(A)に示したと同じような明瞭かつ鮮明な印刷ができた。なお、作製した平板試料を80℃、5日間、真空乾燥器で残存ガスを放出させて測定した二酸化炭素CO2含浸量は1.43重量%であった。
比較例6
実施例6に記載した射出条件下で得た二酸化炭素未含浸のPC平板試料に、実施例6と同様のレーザースキャニング方式により、出力2W(エネルギー量:16J)でレーザー照射した。その結果、図2(B)に示したと同じような不明瞭な印刷しかできなかった。
実施例7
実施例6で用いたと同じPCペレット1000gをステンレス金網製円筒状ロッド(100mmΦ、長さ200mm)内に入れ、容量2Lのオートクレーブ(耐圧工業株式会社製)内に設置後、室温(22℃)下、ボンベ圧(10MPa)で24時間、窒素の含浸処理を行った。その後、オートクレーブ内の窒素を5分かけて脱圧した。このPCペレット混合物の窒素含浸量を算出した結果、0.84質量%であった。
得られた窒素含浸PCペレット400gと窒素未含浸のPCペレット400gの混合物800gを、射出成形機(株式会社日本製鋼所製、商品名:J35ELIII−F)の原
料供給口に直接投入した。なお、ペレット混合物の窒素含浸量は0.42重量%であった。
このペレット混合物を用いて、実施例6と同様にして試料(寸法:30×50×1mm)を作製し、「滋賀県産業支援プラザ」の文字(2mm角)と共に枠線21mm×28mmを、実施例1と同様のレーザースキャニング方式により、出力2W(エネルギー量:16J)でレーザー照射した。レーザー照射直前のPC板の表面温度は21.0℃であった。その結果、文字及び枠線の太さは減少するものの、図2(A)に示したと同じような明瞭かつ鮮明な印刷ができた。なお、作製した平板試料を80℃、5日間、真空乾燥器で残存ガスを放出させて測定した窒素含浸量は0.21重量%であった。
比較例7
実施例7に記載した射出条件下で得た窒素未含浸のPC平板試料に、実施例7と同様のレーザースキャニング方式により、出力2W(エネルギー量:16J)でレーザー照射した。その結果、図2(B)に示したと同じような不明瞭な印刷しかできなかった。
実施例8
市販のABS板(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、色:ベージュ、厚み6mm×縦500mm×横1000mm)を購入し、6mm×60mm×60mmに裁断した試料を80℃で5時間予備乾燥した後、前処理として裁断試料を2Lのオートクレーブ(耐圧工業株式会社製)内に設置後、室温(23℃)下、ボンベ圧4.0MPaで1時間、二酸化炭素の含浸処理を行った。その後、オートクレーブ内の二酸化炭素を5分間かけて脱圧した。前処理したABS板の二酸化炭素(CO2)含浸量は0.67質量%であった。また、得られた二酸化炭素含浸ABS板の表面をATR法により観察した結果、二酸化炭素由来の波長2338cm-1の吸収ピーク(吸光度:0.31)が観察された。
得られた二酸化炭素含浸ABS板(表面温度13.4℃)は実施例1と同様のレーザースキャニング方式により、出力1.5W(エネルギー量:9J)でABS板表面にレーザー照射して「SHIGA、PLAZA」のアルファベット文字(3×4mm角)と枠線寸法32mm×44mmのマーキングを行った。
その結果、図4(A)に示す明瞭かつ鮮明な印刷(印字)ができた。また、レーザー顕微鏡(レーザーテック株式会社製、OPTELICS C130)で測定した印刷の枠線の線幅(下底)は401μm、表面(基材面)からの高さは73μmの凸型で縦断面が台形状(上底185μm)を有していた。
また、室温下、同一圧力(4.0MPa)下において前処理時間を4時間と変更し、オートクレーブ内で含浸処理を行った。得られたABS板の二酸化炭素含浸量は1.86重量%であった。その後、上記と同様にしてレーザー照射を行った。レーザー照射直前のABS板の表面温度は15.7℃であった。その結果、図4(A)と同様に基材に対して高いコンストラストを持ち、視認性の高い印刷ができた。また、レーザー顕微鏡(レーザーテック株式会社製、OPTELICS C130)で測定した印刷の枠線の線幅(下底)は475μm、表面(基材面)からの高さは84μmの凸型で縦断面が台形状(上底198)μmを有していた。
実施例9
実施例8で用いたと同じABS板を前記容量2Lのオートクレーブ内に設置後、室温(22℃)下、ボンベ圧10MPa下で24時間、窒素の含浸処理を行った。その後、オートクレーブ内の窒素を5分かけて脱圧した。このABS板の窒素含浸量を算出した結果、0.098質量%であった。
印刷は、実施例8と同様のレーザースキャニング方式により、出力1.5W(エネルギー量:9J)でABS板表面にレーザー照射して、「SHIGA、PLAZA」のアルファベット文字(3x4mm角)と枠線寸法32mm×44mmのマーキングを行った。レーザー照射直前のABS板の表面温度は17.0℃であった。その結果、窒素含浸においても図4(B)に示す明瞭かつ鮮明な印刷(印字)ができた。また、前記レーザー顕微鏡で測定した印刷の枠線の線幅は底辺(下底)292μm、表面(基材面)からの高さは47μmの凸型で縦断面が台形状(上底218μm)を有していた。
比較例8
実施例8と同じ市販のABS板(裁断試料)を予備乾燥し、実施例8と同様のレーザースキャニング方式により、出力2W(エネルギー量:12J)でレーザー照射した。その結果、図4(C)に示す不明瞭な印刷しかできなかった。また、前記レーザー顕微鏡で測定した枠線の幅は332μm、表面からの高さは4.6μmであり、熱による体積膨張によって表面から僅かに膨らんでいた。しかし、印刷状態はコントラストがつかず観察できない。
実施例10
市販のポリスチレン(PS)(PSジャパン株式会社、商品名:HH30、Mw:300、000)のペレットを使用して、射出成形機(株式会社日本製鋼所製、商品名:J35ELIII−F)により板状成形品(寸法:厚み1.0mm×縦30mm×横50m
m)を作製した。作製した試料を80℃で5時間予備乾燥した後、前処理として、この試料を容量2Lのオートクレーブ内に設置後、室温下、ボンベ圧4.0MPaで1時間、二酸化炭素の含浸処理を行った。その後、オートクレーブ内の二酸化炭素を5分間かけて脱圧した。前処理したPS板の二酸化炭素は1.36質量%であった。また、得られた二酸化炭素含浸PS板の表面をATR法により観察した結果、二酸化炭素由来の波長2338cm-1の吸収ピーク(吸光度:0.16)が観察された。
得られた二酸化炭素含浸PS板(表面温度17.5℃)に、実施例8と同様のレーザースキャニング方式により、出力1.5W(エネルギー量:9J)でレーザー照射した。その結果、図5(A)に示す明瞭かつ鮮明な印刷ができた。
また、室温下、同一圧力(4.0MPa)下において前処理時間を16時間と変更し、オートクレーブ内で含浸処理を行った。得られたPS板の二酸化炭素含浸量は6.83重量%であった。その後、上記と同様にしてレーザー照射を行った。レーザー照射直前のPS板の表面温度は19.0℃であった。その結果、図5(A)と同様に基材に対して高いコンストラストを持ち、視認性の高い印刷ができた。
実施例11
実施例10で用いたと同じPS板を容量2Lのオートクレーブ内に設置後、室温(22℃)下、ボンベ圧10MPa下で24時間、窒素の含浸処理を行った。その後、オートクレーブ内の窒素を5分かけて脱圧した。このPS板の窒素含浸量を算出した結果、0.51質量%であった。
得られた窒素含浸PS板(表面温度17.7℃)に、実施例8と同様のレーザースキャニング方式により、出力1.5W(エネルギー量:9J)でレーザー照射した。その結果、透明なPS樹脂板においても、図5(B)に示す明瞭かつ鮮明な印刷ができた。
比較例9
実施例10において、二酸化炭素含浸処理を行わずに、レーザースキャニング方式により、出力2W(エネルギー量:12J)でレーザー照射した。その結果、図5(C)に示すような基材に対して凹型の形状(基材表面からレーザー照射エネルギーにより溶融して文字部分が窪む)を示す文字が印刷できた。しかし、目視からは明瞭な文字印刷として観察されなかった。
実施例12
実施例2で用いたと同じポリカーボネート板(裁断試料)を容量2Lのオートクレーブ内に設置後、室温(22℃)下、ボンベ圧10MPa下で24時間、窒素の含浸処理を行った。その後、オートクレーブ内の窒素を5分かけて脱圧した。このPC板の窒素含浸量を算出した結果、0.23質量%であった。
得られた窒素含浸PC板(表面温度17.9℃)に、実施例8と同様のレーザースキャニング方式により、出力1.5W(エネルギー量:9J)でレーザー照射した。その結果、図6(A)に示す明瞭かつ鮮明な印刷ができた。
比較例10
実施例12において、窒素含浸処理を行わずに、レーザースキャニング方式により、出力2W(エネルギー量:12J)でレーザー照射した。その結果、図6(B)に示すような不明瞭な印刷しかできず、また、レーザー照射時にPC板表面から煙が発生し、樹脂の分解と共に印字表面が著しく汚れた(図中の白く見える部分は煙により汚れたところ)。
実施例13
実施例1で用いたと同じカラーアクリル板(色:ブルー)を容量2Lのオートクレーブ内に設置後、室温(22℃)下、ボンベ圧10MPa下で24時間、窒素の含浸処理を行った。その後、オートクレーブ内の窒素を5分かけて脱圧した。このカラーアクリル板の窒素含浸量を算出した結果、0.051質量%であった。
得られた窒素含浸カラーアクリル板(表面温度14.9℃)に、実施例8と同様のレーザースキャニング方式により、出力1.5W(エネルギー量:9J)でレーザー照射した。その結果、図7(A)に示すような明瞭かつ鮮明な印刷ができた。
また、前記レーザー顕微鏡で測定した印刷の枠線の線幅は392μm、表面(基材面)からの高さは25μmの凸型で縦断面が台形状を有していた。
比較例11
実施例13において、窒素含浸処理を行わずに、レーザースキャニング方式により、出力2W(エネルギー量:12J)でレーザー照射した。その結果、図7(B)に示すような不明瞭な印刷しかできなかった。また、レーザー顕微鏡で測定した枠線の幅は397μm、表面からの深さ(凹型形状)は18.6μmであった。
実施例14
市販のカラーアクリル板(アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、色:ブラック、厚み2mm×縦1000mm×横2000mm)を購入し、2mm×60mm×60mmに裁断した試料を80℃で5時間予備乾燥した後、前処理として裁断試料を容量2Lのオートクレーブ内に設置後、室温(22℃)下、ボンベ圧4.0MPaで1時間、二酸化炭素の含浸処理を行った。その後、オートクレーブ内の二酸化炭素を5分間かけて脱圧した。このカラーアクリル板の二酸化炭素含浸量を算出した結果、1.92質量%であった。また、得られた二酸化炭素含浸カラーアクリル板の表面をATR法により観察した結果、二酸化炭素由来の波長2338cm-1の吸収ピーク(吸光度:0.48)が観察された。
得られた二酸化炭素含浸カラーアクリル板(表面温度12.9℃)に、実施例8と同様のレーザースキャニング方式により、出力1.5W(エネルギー量:9J)でレーザー照射した。その結果、図8(A)に示す明瞭かつ鮮明な印刷ができた。前記レーザー顕微鏡で測定した印刷の枠線の線幅は415μm、表面(基材面)からの高さは39μmの凸型で縦断面が台形状を有していた。
また、走査型顕微鏡(株式会社キーエンス製、3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡、VE−9800)で印刷(印字)部の断面形状を観察すると基材表面より突出した台形状をとり、印刷枠線の線幅は430μm、表面(基材面)からの高さは28.1μmの凸型で縦断面が台形状(上底367μm)を有していた。また、突出した台形状の内部は気泡径1.5〜8.2μmの発泡構造が形成されていた。
また、同時にオートクレーブ内で二酸化炭素処理した同一のカラーアクリル板を室温下に4時間放置した。放置後のカラーアクリル板の二酸化炭素含浸量は0.53重量%(ガス残存率:28%)であった。得られた二酸化炭素含浸カラーアクリル板の表面をATR法により観察した結果、二酸化炭素由来の波長2338cm-1の吸収ピーク(吸光度:0.05)が観察された。前記式による成形体表面におけるガス残存率は10.4%であった。
その後、上記と同様にしてレーザー照射を行った。レーザー照射直前のカラーアクリル板の表面温度は20.1℃であった。その結果、時間経過してガス量が約1/3に減少しても、図8(A)と同様に基材に対して高いコンストラストを持ち、視認性の高い印刷ができた。
また、前記レーザー顕微鏡で測定した印刷の枠線の線幅は469μm、表面(基材面)からの高さは35.5μmの凸型で縦断面が台形状(上底157μm)を有していた
比較例12
実施例14において、二酸化炭素含浸処理を行わずに、レーザースキャニング方式により、出力2W(エネルギー量:12J)でレーザー照射した。その結果、図8(B)に示す不明瞭な印刷しかできなかった。また、レーザー顕微鏡で測定した枠線の幅は466μm、表面からの深さ(凹型形状)は19μmであった。
実施例15
市販のポリカーボネート(PC)フィルム(透明フィルム、厚み:100μm、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製)を使用し、100μm×70mm×70mmに裁断した試料を100℃で5時間予備乾燥した後、前処理として裁断試料を容量2Lのオートクレーブ内に設置後、室温(22℃)下、ボンベ圧4.0MPaで1時間、二酸化炭素の含浸処理を行った。その後、オートクレーブ内の二酸化炭素を5分間かけて脱圧した。前処理したPCフィルムの二酸化炭素含浸量は0.43質量%であった。また、得られた二酸化炭素含浸PCフィルムの表面をATR法により観察した結果、二酸化炭素由来の波長2338cm-1の吸収ピーク(吸光度:0.26)が観察された。
得られた二酸化炭素含浸PCフィルム(表面温度20.8℃)に、実施例8と同様のレーザースキャニング方式により、出力1.5W(エネルギー量:9J)でレーザー照射した。その結果、試料の厚みが100μmと薄くなっても、図9(A)に示すような明瞭かつ鮮明な印刷ができた。
また、走査型顕微鏡(株式会社キーエンス製、3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡、VE−9800)で印刷(印字)部の断面形状を観察すると基材表面より突出した形状(弓形型)をとり、印刷枠線の線幅は333μm、表面(基材面)からの高さは41μmの凸型を有していた。また、突出した形状の内部は気泡径1.6〜9.7μmの発泡構造が形成されていた。
比較例13
実施例15において、二酸化炭素含浸処理を行わずに、レーザースキャニング方式により、出力2W(エネルギー量:12J)でレーザー照射した。その結果、図9(B)に示すような不明瞭な印刷しかできなかった。
また、前記走査型顕微鏡で測定した印刷の枠線の線幅は469μm、表面(基材面)からの高さは35.5μmの凸型で縦断面が台形状(上底157μm)を有していた
実施例16
実施例2で用いたと同じポリカーボネート(PC)板(透明品、裁断試料:厚み3mmx縦70mmx横70mm)を容量2Lのオートクレーブ内に設置後、室温(22℃)下、ボンベ圧4.8MPaで5時間、二酸化炭素の含浸処理を行った。その後、オートクレーブ内の二酸化炭素を5分間かけて脱圧した。前処理したPC板の二酸化炭素含浸量は1.98質量%であった。また、得られた二酸化炭素含浸PC板の表面をATR法により観察した結果、二酸化炭素由来の波長2338cm-1の吸収ピーク(吸光度:0.31)が観察された。
得られた二酸化炭素含浸PC板(表面温度15.6℃)は3−Axisレーザーマーカ装置(株式会社キーエンス製、MODEL ML−Z9550(レーザーパワー:30W、発振波長:10.6μm、スポット径:35μm、パルス幅:40ns、細線タイプ))下の試料固定台上に設置した。なお、焦点距離は130mmとした。
印刷は、名刺文字(細い文字2mm角以下)を文字範囲25mm×50mm内に、出力7.5W(エネルギー量:15J)、スキャン速度:1000mm/s、周波数:25KHzでPC板表面にレーザー照射してマーキングを行った。その結果、図10(A)に示す明瞭かつ鮮明な印刷(印字)ができた。印字(マーキング)した個所の2mm角文字の一部を実体顕微鏡(株式会社ココン製:SMZ1500)で25倍に拡大したものを図10(B)に示した。発泡させているにも拘らず文字の交点も明瞭になっていることが分かる。また、前記した実施例15の薄いPCフィルムにおいても同様に明瞭な名刺文字印刷ができた。
比較例14
実施例16において、二酸化炭素含浸処理を行わずに、3−Axisレーザーマーカ装置により、出力9W(エネルギー量:18J)でレーザー照射した。その結果、図10(C)に示したような不明瞭な印刷しかできなかった。
実施例17
実施例2で用いたと同じポリカーボネート(PC)板(透明品、裁断試料:厚み3mm×縦70mm×横70mm)を容量2Lのオートクレーブ内に設置後、室温(23℃)下、ボンベ圧5.0MPaで30時間、二酸化炭素処理を行った。その後、オートクレーブ内の二酸化炭素を5分間かけて脱圧した。前処理したPC板の二酸化炭素含有量は5.76質量%であった。また、得られた二酸化炭素含浸PC板の表面をATR法により観察した結果、二酸化炭素由来の波長2338cm-1の吸収ピーク(吸光度:0.41)が観察された。
得られた二酸化炭素含浸PC板はドライアイス入りの容器内で24時間保存した。保存後、取出したPC板の二酸化炭素含浸量は2.02質量%、表面温度は16.5℃であった。また、得られた二酸化炭素含浸PC板の表面をATR法により観察した結果、二酸化炭素由来の波長2338cm-1の吸収ピーク(吸光度:0.12)が観察された。前記式による成形体表面におけるガス残存率は29.3%であった。
この二酸化炭素含浸PC板をCO2レーザーマーカー装置(株式会社堀内電機製作所製、LSS−S050VAH、レーザーパワー12W、スポット径:150μm、連続発振)の試料固定台上に設置した。なお、焦点距離は100mmとした。
このPC板表面に、出力1.8W(エネルギー量:17.5J)、スキャン速度:100mm/sでレーザー照射して、縦10mm×横40mmの範囲にバーコードマークを印刷した。その結果、図11(A)に示す明瞭かつ鮮明なバーコードが印字できた。このマーキングしたバーコードはバーコードリーダーで読取りができた。
比較例15
実施例17において、二酸化炭素含浸処理を行わずに、CO2レーザーマーカー装置により、出力3.6W(エネルギー量:35J)でレーザー照射した。その結果、図11(B)に示したような不明瞭な印刷しかできなかった。
実施例18
実施例1で用いたと同じカラーアクリル板(アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、色:ブルー、厚み2mm×縦60mm×横60mm)を容量2Lのオートクレーブ内に設置後、室温(23℃)下、ボンベ圧5.0MPaで30時間、二酸化炭素処理を行った。その後、オートクレーブ内の二酸化炭素を5分間かけて脱圧した。前処理したカラーアクリル板の二酸化炭素含有量は19.1質量%であった。また、得られた二酸化炭素含浸カラーアクリル板の表面をATR法により観察した結果、二酸化炭素由来の波長2338cm-1の吸収ピーク(吸光度:0.53)が観察された。
得られた二酸化炭素含浸カラーアクリル板はドライアイス入りの容器内で24時間保存した。保存後、取出したカラーアクリル板の二酸化炭素含浸量は9.55質量%であった。また、表面温度は14.5℃であった。また、得られた二酸化炭素含浸カラーアクリル板の表面をATR法により観察した結果、二酸化炭素由来の波長2338cm-1の吸収ピーク(吸光度:0.20)が観察された。前記式による成形体表面におけるガス残存率は37.7%であった。
この二酸化炭素含浸カラーアクリル板をCO2レーザーマーカー装置下の試料固定台上に設置した。なお、焦点距離は100mmとした。
このカラーアクリル板表面に、出力1.2W(エネルギー量:11.7J)、スキャン速度:100mm/sでレーザー照射して、縦10mm×横40mmの範囲にバーコードマークを印刷した。その結果、図12(A)に示す明瞭かつ鮮明なバーコードが印字できた。このマーキングしたバーコードはバーコードリーダーで読取りができた。
比較例16
実施例17において、二酸化炭素含浸処理を行わずに、CO2レーザーマーカー装置により、出力2.4W(エネルギー量:23.3J)でレーザー照射した。その結果、図12(B)に示したような不明瞭な印刷しかできなかった。
従来法では、透明樹脂板等にレーザーを照射しても、コントラストが明瞭にならないため、実用に供しうる印刷を行うことができなかった。これに対して、本発明の方法によれば、種々の熱可塑性樹脂からなる成形体に、レーザー照射により、高いコンストラストで、明瞭かつ鮮明に印刷することができる。また、透明樹脂板であっても、白く明瞭に印刷することができる。
このため、本発明の印刷方法は、樹脂成形体へのレーザー照射技術による印刷分野一般に好適に利用できる。例えば、純正部品・装置の特定、製品の起源表示(製造年月日、賞味期限等)、製品ごとに印字や絵柄の変更が必要な用途(ロット番号、製造情報、国毎に異なる言語や表示記号)、オンデマンド印刷、偽造防止表示、バックライトスイッチ等への応用(自動車やオーディオのパネル、スイッチ類)、温水・有機溶剤等の厳しい環境下で使用される製品への表示等の印刷に利用可能である。さらに、有機顔料・染料を使用する従来技術と比較して、顔料等による汚染の心配がないため、医療機器等への印字等にも応用可能である。
また、透明な樹脂成形体の表面に文字を反転させて、印刷しても裏側から鮮明に見えるため、表示板等の印刷にも使用することができる等、本発明の特徴を反映して、用途の拡大を図ることができる。

Claims (10)

  1. 熱可塑性樹脂成形体に、二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた後、レーザーを照射することを特徴とする樹脂成形体への印刷方法。
  2. 二酸化炭素及び/又は窒素の含浸を、1〜40MPaの圧力で行う請求項1に記載の樹脂成形体への印刷方法。
  3. 二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた熱可塑性樹脂粉粒体を成形してなる成形体に、レーザーを照射することを特徴とする樹脂成形体への印刷方法。
  4. 熱可塑性樹脂成形体における二酸化炭素の含浸量が0.1〜20.0重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂成形体への印刷方法。
  5. 熱可塑性樹脂成形体における窒素の含浸量が0.03〜1.0重量%である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂成形体への印刷方法。
  6. レーザー照射直前における樹脂成形体が、赤外分光全反射法による成形体表面観察において、二酸化炭素由来の吸収ピークが観察されるものである請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂成形体への印刷方法。
  7. 熱可塑性樹脂成形体の厚みが50μm〜10mmである請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂成形体への印刷方法。
  8. 熱可塑性樹脂が、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリメタクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド系樹脂、及びポリフェニレンサルファイド樹脂から選ばれる一種又は二種以上のものである請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂成形体表面への印刷方法。
  9. 二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた熱可塑性樹脂成形体の表面に、レーザー照射により発泡させた印刷を施してなることを特徴とする熱可塑性樹脂成形体。
  10. 二酸化炭素及び/又は窒素を含浸させた熱可塑性樹脂で構成される単一層又はそれを内部層として含む積層体の該内部層を、レーザー照射により選択的に発泡させてなることを特徴とする熱可塑性樹脂成形体。
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