本発明は、微小ループアンテナ素子を用いたアンテナ装置及び上記アンテナ装置を用いたアンテナシステムに関する。
近年、情報セキュリティの確保のため、無線通信システムによる個人認証技術の開発が進められている。具体的には、使用者が無線通信装置を所持し、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、車両などの対象物にも無線通信装置が備えられ、当該無線通信システムにより常時認証を行う。対象物が使用者の周囲一定範囲内に入ったとき、対象物の制御を可能にする。一方、対象物が使用者の周囲一定範囲から外れたときは、対象物の制御を不能にする。使用者の周囲一定範囲に対象物があるかどうか判断するために、無線による認証通信時に対象物と使用者の距離を無線通信装置により測定する必要がある。
また、最も簡易な距離測定の方法として受信電界強度による測定がある。距離測定のための特別な回路を必要とせず、無線認証のための無線通信装置を利用して距離が測定できる。しかしながら、使用者が無線通信装置又は認証キー装置を所持するため、搭載されているアンテナの利得が人体など導体の影響を強く受ける。また、マルチパス環境で使用するとフェージングの影響を受ける。
以上の理由により、周囲の環境により受信電界強度が急激に低下する現象が起こる。これにより、距離の増大に伴い受信電界強度が低下するという距離と受信電界強度の関係が崩れ、距離測定の精度が大きく劣化する。また認証通信における所要アンテナの利得を下回り、通信品質の低下を引き起こす。従来は、導体によるアンテナへの影響を回避する方法として、導体がアンテナに接近しても利得が急激に低下することを防ぐため、導体に対してループ面が垂直である構造をした微小ループアンテナを使用する方法(例えば、特許文献1の図1、及び特許文献2の図2参照。)が提案されている。また、フェージングの影響を防ぐ方法としては、異なる偏波成分を放射する方法(例えば、特許文献1の図4参照。)が提案されている。
特開2000−244219号公報。
特開2005−109609号公報。
国際公開WO2004/070879号公報。
電子情報通信学会編,"アンテナ工学ハンドブック",pp.59−63、オーム社,第1版,1980年10月30日発行。
しかしながら、特許文献1及び2の方法ではアンテナの利得が、導体がアンテナに接近した場合と離れた場合で変化するため、アンテナから導体までの距離にかかわらず一定のアンテナの利得を得ることができないという問題点があった。特に、特許文献1の方法ではフェージングの影響は回避できても、導体との距離によるアンテナの利得の変動を回避することはできないという問題点があった。
本発明の第1の目的は以上の問題点を解決し、アンテナ装置から導体までの距離にかかわらず実質的に一定の利得を得ることができ、かつ通信品質の低下を防止できる微小ループアンテナ素子を用いたアンテナ装置を提供することにある。
本発明の第2の目的は以上の問題点を解決し、アンテナ装置と導体との間の距離が変化したときに認証キー装置のアンテナの利得変動が小さく、かつフェージングの影響を回避できる、認証キー用アンテナ装置と対象機器用アンテナ装置を備えたアンテナシステムを提供することにある。
第1の発明に係るアンテナ装置は、
所定の微小長さ及び2個の給電点を有する微小ループアンテナ素子と、
所定の振幅差及び所定の位相差を有する2つの平衡無線信号をそれぞれ上記微小ループアンテナ素子の2つの給電点に対して給電する平衡信号給電手段とを備えたアンテナ装置であって、
上記微小ループアンテナ素子は、
所定のループ面を有し、上記ループ面に平行な第1の偏波成分を放射する複数のループアンテナ部と、
上記ループ面と直交する方向に設けられ、上記複数のループアンテナ部を接続し、上記第1の偏波成分と直交する第2の偏波成分を放射する少なくとも1本の接続導体とを備え、
上記アンテナ装置を導体板に近接した場合において、上記アンテナ装置と上記導体板との距離を変化したときの、上記第1の偏波成分のアンテナ利得の最大値と上記第2の偏波成分のアンテナ利得の最大値とを実質的に同一にすることにより、上記距離にかかわらず、上記第1の偏波成分と上記第2の偏波成分との合成成分を実質的に一定とする設定手段を備えたことを特徴とする。
上記アンテナ装置において、上記設定手段は、上記距離を変化したときの、上記第1の偏波成分のアンテナ利得の最大値と上記第2の偏波成分のアンテナ利得の最大値とを実質的に同一にするように、上記振幅差と上記位相差とのうちの少なくとも一方を設定したことを特徴とする。
また、上記アンテナ装置において、上記設定手段は、上記距離を変化したときの、上記第1の偏波成分のアンテナ利得の最大値と上記第2の偏波成分のアンテナ利得の最大値とを実質的に同一にするように、上記振幅差と上記位相差とのうちの少なくとも一方を制御する制御手段を備えたことを特徴とする。
さらに、上記アンテナ装置において、上記設定手段は、上記距離を変化したときの、上記第1の偏波成分のアンテナ利得の最大値と上記第2の偏波成分のアンテナ利得の最大値とを実質的に同一にするように、上記微小ループアンテナ素子の寸法と、上記微小ループアンテナ素子の巻数と、上記各ループアンテナ部の間隔とのうちの少なくとも一方を設定したことを特徴とする。
また、上記アンテナ装置において、上記微小ループアンテナ素子は、上記ループ面に平行に設けられた第1と第2と第3のループアンテナ部を含み、
上記第1のループアンテナ部は、それぞれ半回巻である第1と第2の半分ループアンテナ部を含み、
上記第2のループアンテナ部は、それぞれ半回巻である第3と第4の半分ループアンテナ部を含み、
上記第3のループアンテナ部は1回巻であり、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第1の半分ループアンテナ部と上記第4の半分ループアンテナ部とを接続する第1の接続導体部と、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第2の半分ループアンテナ部と上記第3の半分ループアンテナ部とを接続する第2の接続導体部と、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第3のループアンテナ部と上記第4の半分ループアンテナ部とを接続する第3の接続導体部と、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第3のループアンテナ部と上記第3の半分ループアンテナ部とを接続する第4の接続導体部とを含み、
上記第1の半分ループアンテナ部の一端と、上記第2の半分ループアンテナ部の一端とを2つの給電点としたことを特徴とする。
さらに、上記アンテナ装置において、上記微小ループアンテナ素子は、上記ループ面に平行に設けられた第1と第2と第3のループアンテナ部を含み、
上記第1のループアンテナ部は、それぞれ半回巻である第1と第2の半分ループアンテナ部を含み、
上記第2のループアンテナ部は、それぞれ半回巻である第3と第4の半分ループアンテナ部を含み、
上記第3のループアンテナ部は1回巻であり、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第1の半分ループアンテナ部と上記第3の半分ループアンテナ部とを接続する第1の接続導体部と、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第3の半分ループアンテナ部と上記第3のループアンテナ部とを接続する第2の接続導体部と、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第2の半分ループアンテナ部と上記第4の半分ループアンテナ部とを接続する第3の接続導体部と、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第4の半分ループアンテナ部と上記第3のループアンテナ部とを接続する第4の接続導体部とを含み、
上記第1の半分ループアンテナ部の一端と、上記第2の半分ループアンテナ部の一端とを2つの給電点としたことを特徴とする。
またさらに、上記アンテナ装置において、上記微小ループアンテナ素子は、上記ループ面に平行に設けられた第1と第2と第3のループアンテナ部を含み、
上記第1のループアンテナ部は、それぞれ半回巻である第1と第2の半分ループアンテナ部を含み、
上記第2のループアンテナ部は、それぞれ半回巻である第3と第4の半分ループアンテナ部を含み、
上記第3のループアンテナ部は、それぞれ半回巻である第5と第6の半分ループアンテナ部を含み、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第1の半分ループアンテナ部と上記第3の半分ループアンテナ部とを接続する第1の接続導体部と、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第3の半分ループアンテナ部と上記第5の半分ループアンテナ部とを接続する第2の接続導体部と、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第2の半分ループアンテナ部と上記第4の半分ループアンテナ部とを接続する第3の接続導体部と、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第4の半分ループアンテナ部と上記第6の半分ループアンテナ部とを接続する第4の接続導体部と、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第5の半分ループアンテナ部に接続された第5の接続導体部と、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第6の半分ループアンテナ部に接続された第6の接続導体部とを含み、
上記第1、第3及び第5の半分ループアンテナ部と上記第5の接続導体部とにより第1のループアンテナを構成し、
上記第2、第4及び第6の半分ループアンテナ部と上記第6の接続導体部とにより第2のループアンテナを構成し、
上記第1の半分ループアンテナ部の一端と、上記第5の接続導体部の一端とを上記第1のループアンテナの2つの給電点とし、
上記第2の半分ループアンテナ部の一端と、上記第6の接続導体部の一端とを上記第2のループアンテナの2つの給電点とし、
上記平衡信号給電手段に代えて不平衡信号給電手段を備え、
上記不平衡信号給電手段は、所定の振幅差及び所定の位相差を有する2つの不平衡無線信号をそれぞれ上記第1と第2のループアンテナに対して給電することを特徴とする。
第2の発明に係るアンテナ装置は、
上記微小ループアンテナ素子と、
上記微小ループアンテナ素子と同様の構成を有する別の微小ループアンテナ素子とを互いにループ面が直交するように設けたことを特徴とする。
上記アンテナ装置において、上記2つの平衡無線信号を、上記微小ループアンテナ素子と、上記別の微小ループアンテナ素子とのいずれか1つの選択的に給電するスイッチ手段をさらに備えたことを特徴とする。
また、上記アンテナ装置において、上記平衡信号給電手段は、不平衡無線信号を2つの不平衡無線信号に90度の位相差で分配した後、分配後の一方の不平衡無線信号を2つの平衡無線信号に変換して上記微小ループアンテナ素子に給電する一方、分配後の他方の不平衡無線信号を上記別の微小ループアンテナ素子に給電することにより、円偏波の無線信号を放射することを特徴とする。
さらに、上記アンテナ装置において、上記平衡信号給電手段は、不平衡無線信号を、同相又は逆相の2つの不平衡無線信号に変換し、変換後の一方の不平衡無線信号を2つの平衡無線信号に変換して上記微小ループアンテナ素子に給電する一方、変換後の他方の不平衡無線信号を別の2つの平衡無線信号に変換して上記別の微小ループアンテナ素子に給電することを特徴とする。
またさらに、上記アンテナ装置において、上記平衡信号給電手段は、不平衡無線信号を、+90度の位相差又は−90度の位相差を有する2つの不平衡無線信号に変換し、変換後の一方の不平衡無線信号を2つの平衡無線信号に変換して上記微小ループアンテナ素子に給電する一方、変換後の他方の不平衡無線信号を別の2つの平衡無線信号に変換して上記別の微小ループアンテナ素子に給電することを特徴とする。
第3の発明に係るアンテナシステムは、
上記アンテナ装置を備えた認証キー用アンテナ装置と、
上記認証キー用アンテナ装置と無線通信を行う対象機器用アンテナ装置とを備えたアンテナシステムであって、
上記対象機器用アンテナ装置は、
互いに直交する偏波を有する2つのアンテナ素子と、
上記2つのアンテナ素子のうちの1つを選択して無線送受信回路に接続するスイッチ手段とを備えたことを特徴とする。
従って、本発明に係るアンテナ装置によれば、アンテナ装置と導体板との距離にかかわらず、実質的に一定の利得を得ることができ、かつ通信品質の低下を防止できるアンテナ装置を実現できる。また、例えば、認証通信時に、上記微小ループアンテナ素子から放射する偏波成分のアンテナ利得低下を抑えつつ、上記接続導体から放射する偏波成分のアンテナ利得を高くすることで、従来技術に比較して高い通信品質を得るアンテナ装置を実現できる。さらに、垂直水平両偏波のうち一方の偏波が大きく減衰するときでも、偏波ダイバーシチの効果を得ることができる。
また、本発明に係るアンテナシステムによれば、導体板との距離による認証キーのアンテナの利得の変動が小さく、かつフェージングの影響を回避できる認証キー用アンテナ装置と対象機器用アンテナ装置を備えたアンテナシステムを実現できる。
本発明の第1の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
(a)は第1の実施形態の第1の変形例の微小ループアンテナ素子105Aの構成を示す斜視図であり、(b)は第1の実施形態の第2の変形例の微小ループアンテナ素子105Bの構成を示す斜視図である。
図1の給電回路103の構成を示すブロック図である。
(a)は図3の給電回路103の第1の変形例である給電回路103Aの構成を示すブロック図であり、(b)は図3の給電回路103の第2の変形例である給電回路103Bの構成を示すブロック図であり、(c)は図3の給電回路103の第3の変形例である給電回路103Cの構成を示すブロック図である。
(a)は図1の微小ループアンテナ素子105が導体板106に近接するときの距離Dを示す正面図であり、(b)は距離Dに対する、導体板106に向かう方向と反対方向での微小ループアンテナ素子105のアンテナ利得を示すグラフである。
(a)は図1の線状アンテナ素子160が導体板106に近接するときの距離Dを示す正面図であり、(b)は距離Dに対する、導体板106に向かう方向と反対方向での線状アンテナ素子160のアンテナ利得を示すグラフである。
図1のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。
(a)は図1の微小ループアンテナ素子105の垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値よりも大きいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフであり、(b)は図1の微小ループアンテナ素子105の垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値よりも小さいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフであり、(c)は図1の微小ループアンテナ素子105の垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフである。
図1の微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の位相差に対するXY平面の平均アンテナ利得を示すグラフである。
本発明の第2の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105,205を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
図10のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。
(a)は図10の微小ループアンテナ素子105に無線信号を給電したときに、垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフであり、(b)は図10の微小ループアンテナ素子205に無線信号を給電したときに、垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフである。
本発明の第3の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105,205を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
本発明の第4の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
図14の給電回路103Dの構成を示すブロック図である。
(a)は図15の給電回路103Dの第1の変形例である給電回路103Eの構成を示すブロック図であり、(b)は図15の給電回路103Dの第2の変形例である給電回路103Fの構成を示すブロック図であり、(c)は図15の給電回路103Dの第3の変形例である給電回路103Gの構成を示すブロック図である。
図15、図16(a)、図16(b)及び図16(c)の可変移相器1033,1033A,1033Bの第1の実施例である可変移相器1033−1の詳細構成を示す回路図である。
図15、図16(a)、図16(b)及び図16(c)の可変移相器1033,1033A,1033Bの第2の実施例である可変移相器1033−2の詳細構成を示す回路図である。
本発明の第5の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105,205を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
本発明の第6の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105,205を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
本発明の第7の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105を備えたアンテナ装置(図1の給電回路103を除き、図1のアンテナ装置と同様の構成を有する。)において用いる給電回路103Hの構成を示すブロック図である。
(a)は図21の給電回路103Hの第1の変形例である給電回路103Iの構成を示すブロック図であり、(b)は図21の給電回路103Hの第2の変形例である給電回路103Jの構成を示すブロック図であり、(c)は図21の給電回路103Hの第3の変形例である給電回路103Kの構成を示すブロック図である。
第7の実施形態に係るアンテナ装置において、給電回路103Hの減衰器1071の減衰量に対する、XY平面の平均アンテナ利得を示すグラフである。
本発明の第8の実施形態に係る、図21の変形例である給電回路103Lの構成を示すブロック図である。
(a)は図24の給電回路103Lの第1の変形例である給電回路103Mの構成を示すブロック図であり、(b)は図24の給電回路103Lの第2の変形例である給電回路103Nの構成を示すブロック図であり、(c)は図24の給電回路103Lの第3の変形例である給電回路103Oの構成を示すブロック図である。
図24、図25(a)、図25(b)及び図25(c)の可変減衰器1074の第1の実施例である可変減衰器1074−1の詳細構成を示す回路図である。
図24、図25(a)、図25(b)及び図25(c)の可変減衰器1074の第2の実施例である可変減衰器1074−2の詳細構成を示す回路図である。
本発明の第9の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
図28の平衡不平衡変換回路103Pの構成を示す回路図である。
(a)は図29の平衡不平衡変換回路103Pにおける平衡端子T2を流れる無線信号と、平衡端子T3を流れる無線信号との間の振幅差Adの周波数特性を示すグラフであり、(b)は図29の平衡不平衡変換回路103Pにおける平衡端子T2を流れる無線信号と、平衡端子T3を流れる無線信号との間の位相差Pdの周波数特性を示すグラフである。
図28の微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の振幅差Adに対するXY平面の平均アンテナ利得を示すグラフである。
(a)乃至(j)は図28の微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の振幅差Adを−10dBから−1dBまで変化したときのXY平面の水平偏波成分の放射パターンを示す図である。
(a)乃至(k)は図28の微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の振幅差Adを0dBから10dBまで変化したときのXY平面の水平偏波成分の放射パターンを示す図である。
(a)乃至(j)は図28の微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の振幅差Adを−10dBから−1dBまで変化したときのXY平面の垂直偏波成分の放射パターンを示す図である。
(a)乃至(k)は図28の微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の振幅差Adを0dBから10dBまで変化したときのXY平面の垂直偏波成分の放射パターンを示す図である。
本発明の第10の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105,205を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
(a)は図36の変形例に係る偏波切換回路208Aの構成を示す回路図であり、(b)は上記偏波切換回路208Aの変形例である偏波切換回路208Aaの構成を示す回路図である。
図36のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。
(a)は図36の微小ループアンテナ素子105に無線信号を給電したときに、垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフであり、(b)は図36の微小ループアンテナ素子205に無線信号を給電したときに、垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフである。
本発明の第11の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105Aを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
図40の微小ループアンテナ素子105Aの電流方向を示す斜視図である。
図40のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。
(a)は図40の接続導体105da,105dbの長さに対する微小ループアンテナ素子105AのXY平面の水平偏波成分の平均アンテナ利得を示すグラフであり、(b)は図40の接続導体105da,105dbの長さに対する微小ループアンテナ素子105AのXY平面の垂直偏波成分の平均アンテナ利得を示すグラフである。
(a)は図40の接続導体105da,105db間の距離に対する微小ループアンテナ素子105AのXY平面の水平偏波成分の平均アンテナ利得を示すグラフであり、(b)は図40の接続導体105da,105db間の距離に対する微小ループアンテナ素子105AのXY平面の垂直偏波成分の平均アンテナ利得を示すグラフである。
本発明の第12の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105A,205Aを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
図45のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。
本発明の第13の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105A,205Aを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
本発明の第14の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105Bを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
図48の微小ループアンテナ素子105Bの電流方向を示す斜視図である。
図48のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。
本発明の第15の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105B,205Bを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
図51のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。
本発明の第16の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105B,205Bを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
本発明の17の実施形態に係る、認証キー用アンテナ装置100と対象機器用アンテナ装置300とを備えたアンテナシステムの構成を示す斜視図及びブロック図である。
(a)は図54のアンテナシステムにおいて、微小ループアンテナ素子105の垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、認証キー用アンテナ装置100と導体板106との間の距離Dに対する、認証キー用アンテナ装置100から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフであり、(b)は図54のアンテナシステムにおいて、微小ループアンテナ素子105の垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値よりも大きいときの、認証キー用アンテナ装置100と導体板106との間の距離Dに対する、認証キー用アンテナ装置100から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフである。
本発明の第18の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105Cを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
図56のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。
図56の右巻き微小ループアンテナ105Caと、左巻き微小ループアンテナ105Cbとに対して同相で無線信号を不平衡給電したときの微小ループアンテナ素子105Cの電流方向を示す斜視図である。
図56の右巻き微小ループアンテナ105Caと、左巻き微小ループアンテナ105Cbとに対して逆相で無線信号を不平衡給電したときの微小ループアンテナ素子105Cの電流方向を示す斜視図である。
図56の微小ループアンテナ素子105Cの右巻き微小ループアンテナ105Caと、左巻き微小ループアンテナ105Cbとに対して印加する2つの無線信号の位相差に対する水平偏波成分及び垂直偏波成分のXY平面の平均アンテナ利得を示すグラフである。
本発明の第19の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105C,205Cを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
(a)は図61のアンテナ装置において、微小ループアンテナ素子105Cの右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻き微小ループアンテナ105Cbに無線信号を給電したときに、微小ループアンテナ素子105Cの垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、アンテナ装置と導体板106との間の距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフであり、(b)は図61のアンテナ装置において、微小ループアンテナ素子205Cの右巻き微小ループアンテナ205Ca及び左巻き微小ループアンテナ205Cbに無線信号を給電したときに、微小ループアンテナ素子205Cの垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、アンテナ装置と導体板106との間の距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフである。
本実施形態の実施例1において、ループ間隔に対する放射変化についてのシミュレーションとその結果を得るための微小ループアンテナ素子105の構成を示す斜視図である。
(a)は実施例1の微小ループアンテナ素子において素子幅We及び偏波を変化したときのループ間隔に対する平均アンテナ利得を示すグラフであり、(b)は実施例1の微小ループアンテナ素子において偏波を変化したときのループ戻り部の長さに対する平均アンテナ利得を示すグラフであり、(c)は実施例1の微小ループアンテナ素子において偏波を変化したときのループ戻り部の長さに対する平均アンテナ利得を示すグラフである。
(a)は実施例1の微小ループアンテナ素子において偏波を変化したときのループ面積とループ間隔の比に対する平均アンテナ利得を示すグラフであり、(b)は実施例1の微小ループアンテナ素子において偏波を変化したときのループ面積とループ間隔の比に対する平均アンテナ利得を示すグラフである。
(a)は実施例1の微小ループアンテナ素子において偏波を変化したときのループ面積とループ戻り部の長さの比に対する平均アンテナ利得を示すグラフであり、(b)は実施例1の微小ループアンテナ素子において偏波を変化したときのループ面積とループ戻り部の長さの比に対する平均アンテナ利得を示すグラフである。
(a)は本実施形態の実施例2に係る微小ループアンテナ素子105(螺旋コイル形状の微小ループアンテナ素子)の巻数に対する、水平偏波に関するXY平面の平均アンテナ利得を示すグラフであり、(b)は本実施形態の実施例2に係る微小ループアンテナ素子105(螺旋コイル形状の微小ループアンテナ素子)の巻数に対する、垂直偏波に関するXY平面の平均アンテナ利得を示すグラフである。
第1乃至第3の実施形態の実施例3に係る微小ループアンテナ素子において、振幅差Adに対する平均アンテナ利得を示すグラフである。
第1乃至第3の実施形態の実施例3に係る微小ループアンテナ素子において、位相差Pdに対する平均アンテナ利得を示すグラフである。
第1乃至第3の実施形態の実施例3に係る微小ループアンテナ素子において、振幅差Ad及び偏波を変化したときの位相差Pdに対する平均アンテナ利得を示すグラフである。
(a)は本実施形態の実施例4に係る、第1のインピーダンス整合方法を用いたインピーダンス整合回路104−1の構成を示す回路図であり、(b)は(a)の第1のインピーダンス整合方法を示すスミスチャートである。
(a)は本実施形態の実施例4に係る、第2のインピーダンス整合方法を用いたインピーダンス整合回路104−2の構成を示す回路図であり、(b)は(a)の第2のインピーダンス整合方法を示すスミスチャートである。
(a)は本実施形態の実施例4に係る、第3のインピーダンス整合方法を用いたインピーダンス整合回路104−3の構成を示す回路図であり、(b)は(a)の第3のインピーダンス整合方法を示すスミスチャートである。
(a)は本実施形態の実施例4に係る、第4のインピーダンス整合方法を用いたインピーダンス整合回路104−4の構成を示す回路図であり、(b)は(a)の第4のインピーダンス整合方法を示すスミスチャートである。
本実施形態の実施例4に係る、図71乃至図74のバラン1031の構成を示す回路図である。
(a)は第17の実施形態の実施例5に係る、認証キー装置100と、微小ループアンテナ素子105を有する対象機器用アンテナ装置300を備えたアンテナシステムにおいて両装置100,300の各アンテナ高を実質的に同一に設定したときの両装置100,300間の距離Dに対する受信電力を示す電波伝搬特性図であり、(b)は第17の実施形態の実施例5に係る、認証キー装置100と、半波長ダイポールアンテナを有する対象機器用アンテナ装置300を備えたアンテナシステムにおいて両装置100,300の各アンテナ高を実質的に同一に設定したときの両装置100,300間の距離Dに対する受信電力を示す電波伝搬特性図である。
符号の説明
100…認証キー用アンテナ装置、
101…接地導体板、
102…無線送受信回路、
103,103A,103B,103C,103D,103E,103F,103G,103H,103I,103J,103K,103L,103M,103N,103O,203,203D…給電回路、
103P,203P…平衡不平衡変換回路、
103Q,203Q…分配器、
103R,203R…振幅位相変換器、
103a…+90度移相器、
103b…−90度移相器、
104,104A,104B,204,204A,204B,104−1,104−2,104−3,104−4…インピーダンス整合回路、
105,105A,105B,105C,205…微小ループアンテナ素子、
105a,105b,105c,205a,205b,205c…ループアンテナ部、
105aa,105ab,105ba,105bb,105ca,105cb,205aa,205ab,205ba,205bb,205ca,205cb…半分ループアンテナ部、
105d,105e,105f,105da,105db,105ea,105eb,161,162,163,164,165,166,205d,205e,205f,205da,205db,205ea,205eb,261,262,263,264,265,266…接続導体、
105Ba,105Ca,205Ba,205Ca…右巻き微小ループアンテナ、
105Bb,105Cb,205Bb,205Cb…左巻き微小ループアンテナ、
106…導体板、
160…線状アンテナ素子、
161a,161b,161c,162a,162b,162c,163a、163b,163c,164a,164b,164c,261a,261b,261c,262a,262b,262c,263a,263b,263c,264a,264b,264c…接続導体部、
151,152,153,154,251,252,253,254…給電導体、
208…スイッチ、
208A,208Aa…偏波切換回路、
260…バラン、
271…可変移相器、
272…90度位相差分配器、
273a…+90度移相器、
273b…−90度移相器、
300…対象機器用アンテナ装置、
301…無線送受信回路、
302…アンテナスイッチ、
303…水平偏波アンテナ素子、
304…垂直偏波アンテナ素子、
1031…バラン、
1031A…不均等分配器、
1031B…分配器可変型不均等分配器、
1032,1032A,1032B…移相器、
1033,1033A,1033B,1033−1,1033−2…可変移相器、
1071…減衰器、
1072…増幅器、
1073…180度移相器、
1074,1074−1,1074−2…可変減衰器、
1075…可変増幅器、
1076…180度移相器、
AT1乃至AT(N+1),ATa1乃至ATa(N+1)…減衰器、
PS1乃至PS(N+1),PSa1乃至PSa(N+1)…移相器、
Q1,Q2,Q3,Q4…給電点、
SW1,SW2,SW11,SW21,SW22…スイッチ、
T1,T2,T3,T21,T22,T31,T32…端子、
T4…制御信号端子、
T11…不平衡端子、
T12,T13…平衡端子。
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、同様の構成要素については同一の符号を付している。
第1の実施形態.
図1は本発明の第1の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。図1及びそれ以降の各図において、各方向をXYZの3次元座標系で表す。ここで、接地導体板101の長手方向がZ軸方向と平行となり、その幅方向がX軸方向と平行となり、接地導体板101の面に対して垂直な方向がY軸方向となる。また、図1及びそれ以降の各図において、水平偏波成分の方向又はアンテナ利得をHで示し、垂直偏波成分の方向又はアンテナ利得をVで示す。さらに、Stは送信無線信号と受信無線信号とを含む不平衡送受信信号を表す。
図1において、無線送受信回路102は、接地導体板101上に設けられ、不平衡送信無線信号を発生した後、給電回路103及びインピーダンス整合回路104を介して微小ループアンテナ素子105に給電することにより、当該送信無線信号を送信する一方、微小ループアンテナ素子105により受信された受信無線信号をインピーダンス整合回路104及び給電回路103を介して不平衡受信無線信号として入力した後、周波数変換処理や復調処理などの所定の受信処理を行う。なお、無線送受信回路102は、送信回路と受信回路との少なくとも一方の回路を有してもよい。また、接地導体板101は誘電体基板又は半導体基板の裏面に形成された接地導体であってもよい。
給電回路103は接地導体板101に設けられ、無線送受信回路102から入力される不平衡無線信号を、位相差を有する2つの平衡無線信号に変換してインピーダンス整合回路104に出力する一方、その逆の信号処理を行う。また、インピーダンス整合回路104は接地導体板101上であって、微小ループアンテナ素子105と給電回路103との間に挿入されて設けられ、無線信号を微小ループアンテナ素子105に電力効率よく給電するために、微小ループアンテナ素子105と給電回路103との間のインピーダンスの整合を行う。
微小ループアンテナ素子105は、形成するループ面が接地導体板101の面に対して概略垂直になり(すなわちX軸方向と平行となり)かつループ軸がZ軸と概略平行となるように設けられ、その両端は給電点Q1,Q2となり、これら給電点Q1,Q2はそれぞれ給電導体151,152を介してインピーダンス整合回路104に接続される。ここで、互いに平行な1対の給電導体151,152は平衡給電ケーブルを構成している。また、微小ループアンテナ素子105からの無線信号の放射が接地導体板101により遮蔽されることを防ぐため、微小ループアンテナ素子105は、接地導体板101から突出して設けられている。ここで、微小ループアンテナ素子105は、
(a)それぞれ矩形形状であって各1巻のループアンテナ部105a,105b,105cと、
(b)Z軸と概略平行となるように設けられ、ループアンテナ部105aとループアンテナ部105bとを接続する接続導体105dと、
(c)Z軸と概略平行となるように設けられ、ループアンテナ部105bとループアンテナ部105cとを接続する接続導体105eと、
(d)Z軸と概略平行となるように設けられ、ループアンテナ部105cと給電点Q2とを接続する接続導体105fとから構成される。
微小ループアンテナ素子105は、例えば巻数3であって、例えば略矩形形状を有し、その全長長さは、無線送受信回路102で使用する無線信号の周波数の波長λに対して、0.01λ以上であって、0.5λ以下、好ましくは0.2λ以下、より好ましくは0.1λ以下に設定され、これにより、いわゆる微小ループアンテナ素子を構成する。すなわち、ループアンテナ素子を小さくし、その全長を0.1波長以下にすると、ループ導線に流れる電流分布はほとんど一定値となる。この状態のループアンテナ素子を一般に微小ループアンテナ素子と呼んでいる。この微小ループアンテナ素子は、微小ダイポールアンテナよりも雑音電界に強く、またその実効高を簡単に計算できるために、磁界測定用のアンテナとして利用されている(例えば、非特許文献1参照。)。
また、微小ループアンテナ105の外径寸法(矩形の一辺の長さ又は円形の直径)は、0.01λ以上であって、0.2λ以下、好ましくは0.1λ以下、より好ましくは0.03λ以下に設定される。さらに、微小ループアンテナ素子105は矩形形状を有しているが、円形状、楕円形状又は多角形などの他の形状であってもよい。また、そのループの巻数は3に限定されず、任意の巻数であってもよいし、そのループは螺旋コイル形状であってもよいし、渦巻きコイル形状であってもよい。インピーダンス整合回路104と給電点Q1,Q2との間の給電導体151,152はより短い方が好ましく、無くてもよい。また、インピーダンス整合回路104はインピーダンス整合の必要がなければ設けなくてもよい。
図1の微小ループアンテナ素子105は図2(a)又は図2(b)の微小ループアンテナ素子105A,105Bで構成してもよい。図2(a)は第1の実施形態の第1の変形例の微小ループアンテナ素子105Aの構成を示す斜視図であり、図2(b)は第1の実施形態の第2の変形例の微小ループアンテナ素子105Bの構成を示す斜視図である。
図2(a)の微小ループアンテナ素子105Aは、
(a)それぞれ略矩形形状の3辺で構成され、X軸に概略平行な実質的に同一面に形成された、各半分巻の半分ループアンテナ部105aa,105abと、
(b)それぞれ略矩形形状の3辺で構成され、X軸に概略平行な実質的に同一面に形成された、各半分巻の半分ループアンテナ部105ba,105bbと、
(c)X軸に概略平行なループ面を有する矩形形状であって1巻のループアンテナ部105cと、
(d)Z軸と概略平行となるように設けられ、半分ループアンテナ部105aaと半分ループアンテナ部105bbとをそれぞれ概略直角で連結して接続する接続導体105daと、
(e)Z軸と概略平行となるように設けられ、半分ループアンテナ部105abと半分ループアンテナ部105baとをそれぞれ概略直角で連結して接続する接続導体105dbと、
(f)Z軸と概略平行となるように設けられ、半分ループアンテナ部105bbとループアンテナ部105cとをそれぞれ概略直角で連結して接続する接続導体105eaと、
(g)Z軸と概略平行となるように設けられ、半分ループアンテナ部105baとループアンテナ部105cとをそれぞれ概略直角で連結して接続する接続導体105ebと
から構成される。すなわち、微小ループアンテナ素子105Aは、隣接するループを、2つの給電点Q1,Q2から略等距離の位置で隣接するループに流れる電流の方向がループの中心軸に対して同一方向になるように接続して構成されてなる。
また、図2(b)の微小ループアンテナ素子105Bは、
(a)それぞれ略矩形形状の3辺で構成され、X軸に概略平行な実質的に同一面に形成された、各半分巻の半分ループアンテナ部105aa,105abと、
(b)それぞれ略矩形形状の3辺で構成され、X軸に概略平行な実質的に同一面に形成された、各半分巻の半分ループアンテナ部105ba,105bbと、
(c)X軸に概略平行なループ面を有する矩形形状であって1巻のループアンテナ部105cと、
(d)Z軸と概略平行となるように設けられた接続導体部161aと、Y軸と概略平行となるように設けられた接続導体部161bと、Z軸と概略平行となるように設けられた接続導体部161cとをそれぞれ順次概略直角で折り曲げられて連結して含み、半分ループアンテナ部105aaと半分ループアンテナ部105baとを接続する接続導体161と、
(e)Z軸と概略平行となるように設けられた接続導体部162aと、Y軸と概略平行となるように設けられた接続導体部162bと、Z軸と概略平行となるように設けられた接続導体部162cとをそれぞれ順次概略直角で折り曲げられて連結して含み、半分ループアンテナ部105baとループアンテナ部105cとを接続する接続導体162と、
(f)Z軸と概略平行となるように設けられた接続導体部163aと、Y軸と概略平行となるように設けられた接続導体部163bと、Z軸と概略平行となるように設けられた接続導体部163cとをそれぞれ順次概略直角で折り曲げられて連結して含み、半分ループアンテナ部105abと半分ループアンテナ部105bbとを接続する接続導体163と、
(g)Z軸と概略平行となるように設けられた接続導体部164aと、Y軸と概略平行となるように設けられた接続導体部164bと、Z軸と概略平行となるように設けられた接続導体部164cとをそれぞれ順次概略直角で折り曲げられて連結して含み、半分ループアンテナ部105bbとループアンテナ部105cとを接続する接続導体164とから構成される。すなわち、微小ループアンテナ素子105Bは、互いのループの中心軸が平行で、かつ互いのループの巻き方向が逆方向の関係にある右巻き微小ループアンテナ105Ba及び左巻き微小ループアンテナ105Bbの先端同士を接続して構成してなる。
なお、微小ループアンテナ素子105A,105Bの全長は、微小ループアンテナ素子105の長さを同様に微小である。
図3は図1の給電回路103の構成を示すブロック図である。図3において、給電回路103は、バラン1031と、移相器1032とを備えて構成される。端子T1に入力される不平衡無線信号は不平衡端子T11を介してバラン1031に入力され、バラン1031は、入力される不平衡無線信号を平衡無線信号に変換して平衡端子T12,T13を介して出力する。平衡端子T12から出力される無線信号は、所定の移相量だけ移相する移相器1032を介して端子T2に出力され、平衡端子T13から出力される無線信号はそのまま端子T3に出力される。従って、給電回路103は、入力される不平衡無線信号を、バラン1031により平衡無線信号に変換し、すなわち位相差が略180度である2つの無線信号に変換し、得られた2つの無線信号の位相差を、移相器1032により180度からずらし、互いに位相が異なる2つの無線信号を端子T2,T3を介して出力する。
給電回路103は図3の構成に限らず、図4(a)、図4(b)又は図4(c)の給電回路103A,103B,103Cであってもよい。図4(a)は図3の給電回路103の第1の変形例である給電回路103Aの構成を示すブロック図であり、図4(b)は図3の給電回路103の第2の変形例である給電回路103Bの構成を示すブロック図であり、図4(c)は図3の給電回路103の第3の変形例である給電回路103Cの構成を示すブロック図である。
図4(a)の給電回路103Aは、バラン1031と、上記バラン1031の2個の平衡端子T12,T13にそれぞれ互いに異なる移相量を有する2個の移相器1032A,1032Bとを備えて構成される。また、図4(b)の給電回路103Bは、端子T1を介して入力される不平衡無線信号を2つに分配して入力する、互いに異なる移相量を有する2個の移相器1032A,1032Bを備えて構成される。図4(c)の給電回路103Cは、端子T1,T2間に挿入された移相器1032Aのみを備えて構成され、ここで、端子T1,T3は直接に接続される。
以上のように構成された図1のアンテナ装置の動作について以下説明する。図1において、無線送受信回路102から出力された送信無線信号は、給電回路103(又は103A,103B,103C)により互いに位相が異なる2つの無線信号に変換された後、インピーダンス整合回路104によりインピーダンス変換され、ループアンテナ素子105に出力される。一方、微小ループアンテナ素子105により受信された電波の受信無線信号は、インピーダンス整合回路104によりインピーダンス変換された後、給電回路103により不平衡無線信号に変換され、無線送受信回路102に受信無線信号として入力される。
次に、以上のように構成されたアンテナ装置の電波の放射について以下説明する。図5(a)は図1の微小ループアンテナ素子105が導体板106に近接するときの距離Dを示す正面図であり、図5(b)は距離Dに対する、導体板106に向かう方向と反対方向での微小ループアンテナ素子105のアンテナ利得を示すグラフである。図5(b)から明らかなように、一般的に、微小ループアンテナ素子105はループ面が導体板106の導体面に対して垂直であるとき、微小ループアンテナ素子105と導体板106との距離Dが波長に対して十分短いとき、アンテナ利得が最大となる。また、微小ループアンテナ素子105と導体板106との距離Dが4分の1波長の奇数倍であるとき、アンテナ利得が大幅に低下して最小となる。さらに、微小ループアンテナ素子105と導体板106との距離Dが4分の1波長の偶数倍であるとき利得が最大となる。
図6(a)は図1の線状アンテナ素子160が導体板106に近接するときの距離Dを示す正面図であり、図6(b)は距離Dに対する、導体板106に向かう方向と反対方向での線状アンテナ素子160のアンテナ利得を示すグラフである。図6(a)及び図6(b)から明らかなように、一般的に、例えば1/4波長ホイップアンテナなどの線状アンテナ素子160は導体板106の導体面に対して平行であるとき、線状アンテナ素子160と導体板106との距離Dが波長に対して十分短いとき、波長が短くなるにつれてアンテナ利得が大幅に低下して最小となる。また、線状アンテナ素子160と導体板106との距離Dが4分の1波長の奇数倍であるとき、アンテナ利得が最大となる。さらに、線状アンテナ素子160と導体板106との距離Dが4分の1波長の偶数倍であるとき、アンテナ利得が最小となる。
図7は図1のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。アンテナ装置からの電波の放射は、
(a)X軸に平行に設けられた、微小ループアンテナ素子105のループアンテナ部105a,105b,105cからの水平偏波成分の放射と、
(b)Z軸に平行に設けられた、微小ループアンテナ素子105の接続導体105d,105e,105fからの垂直偏波成分の放射とからなる。
図7のシステムにおいて、例えば特許文献3の図32及び図33に図示されているように、アンテナ装置が導体板106に近接する場合において、距離Dが大きくなるにつれて、水平偏波成分のアンテナ利得が低下する一方、垂直偏波成分のアンテナ利得が増加する。また、距離Dが小さくなるにつれて、垂直偏波成分のアンテナ利得が低下する一方、水平偏波成分のアンテナ利得が増加する。
図8(a)は図1の微小ループアンテナ素子105の垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値よりも大きいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフであり、図8(b)は図1の微小ループアンテナ素子105の垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値よりも小さいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフであり、図8(c)は図1の微小ループアンテナ素子105の垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフである。なお、図8(a)、図8(b)及び図8(c)及びそれ以降の図面において、Comは、水平偏波成分のアンテナ利得と、垂直偏波成分のアンテナ利得との合成アンテナ利得を示す。
アンテナ装置が放射する電波の合成成分は、垂直偏波成分と水平偏波成分をベクトル合成したものである。図8(a)に示すように、垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値より高いとき、アンテナ装置と導体板106との距離Dが4分の1波長の奇数倍であるとき、合成成分のアンテナ利得は最大となる。また、図8(b)に示すように、垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値より低いとき、アンテナ装置と導体板106との距離が4分の1波長の奇数倍であるとき、合成成分のアンテナ利得は最小となる。さらに、図8(c)に示すように、垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値と実質的に同一であるとき、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、合成成分のアンテナ利得は実質的に一定となる。従って、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一となるように設定することにより、合成成分のアンテナ利得は、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず実質的に一定となる。本実施形態においては、図9を参照して後述するように、微小ループアンテナ素子105の各給電点Q1,Q2に給電する2つの無線信号の位相差を所定の値に設定することで、アンテナ装置から放射される垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定することができる。
図9は図1の微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の位相差に対するXY平面の平均アンテナ利得を示すグラフである。図9のアンテナ利得は、周波数426MHzにおける計算値である。図9から明らかなように、2つの給電無線信号の位相差を145度とすることで、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定することができることがわかる。例えば図3の移相器1032の移相量を所定の値に設定することで、給電回路103から出力される2つの無線信号の位相差を、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得が実質的に同一になるように設定することで、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず合成成分のアンテナ利得を実質的に一定とすることができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一となるように、移相器1032の移相量を変化させて微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の位相差をすることにより、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得るアンテナ装置を実現できる。また、微小ループアンテナ素子105から放射される電波は、上述のように、垂直水平両偏波成分を有し、偏波ダイバーシチの効果を得ることができる。
第2の実施形態.
図10は本発明の第2の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105,205を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第2の実施形態に係るアンテナ装置は、図1の第1の実施形態に係るアンテナ装置に比較して以下の点が異なる。
(1)微小ループアンテナ素子105と同様の構成を有し、微小ループアンテナ素子105と直交して設けられた微小ループアンテナ素子205をさらに備えたこと。
(2)スイッチ208と、給電回路203と、インピーダンス整合回路204とをさらに備えたことである。
(3)接地導体板101は好ましくは略正方形状を有する。
以下、当該相違点について詳述する。
図10において、微小ループアンテナ素子205は、形成するループ面が接地導体板101の面に対して概略垂直になり(すなわちZ軸方向と平行となり)かつループ軸がX軸と概略平行となるように設けられ、その両端は給電点Q3,Q4となり、これら給電点Q3,Q4はそれぞれ給電導体251,252を介してインピーダンス整合回路204に接続される。ここで、互いに平行な1対の給電導体251,252は平衡給電ケーブルを構成している。また、微小ループアンテナ素子205からの無線信号の放射が接地導体板101により遮蔽されることを防ぐため、微小ループアンテナ素子205は、接地導体板101から突出して設けられている。ここで、微小ループアンテナ素子205は、
(a)それぞれ矩形形状であって各1巻のループアンテナ部205a,205b,205cと、
(b)X軸と概略平行となるように設けられ、ループアンテナ部205aとループアンテナ部205bとを接続する接続導体205dと、
(c)X軸と概略平行となるように設けられ、ループアンテナ部205bとループアンテナ部205bとを接続する接続導体205eと、
(d)X軸と概略平行となるように設けられ、ループアンテナ部205cと給電点Q4とを接続する接続導体205fとから構成される。
なお、微小ループアンテナ素子205は微小ループアンテナ素子105の上述の変形例であってもよい。
図10において、給電回路203は給電回路103と同様の構成を有し、インピーダンス整合回路204はインピーダンス整合回路104と同様の構成を有する。スイッチ208は接地導体板101に設けられ、無線送受信回路102と給電回路103,203との間に接続され、無線送受信回路102から出力される切換制御信号Ssに基づいて、無線送受信回路102を、給電回路103,203のいずれか一方に接続する。
以上のように構成されたアンテナ装置の動作について以下説明する。スイッチ208が給電回路103を選択しているときは、無線送受信回路102により微小ループアンテナ素子105を用いて無線信号を送受信する一方、給電回路203を選択しているときは、無線送受信回路102により微小ループアンテナ素子205を用いて無線信号を送受信する。従って、微小ループアンテナ素子105と微小ループアンテナ素子205への給電をスイッチ208により切り換えることにより、電波の偏波を切り換えることができ、アンテナダイバーシチを行うことができる。
図11は図10のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。微小ループアンテナ素子105への給電時の電波の放射は、第1の実施形態と同様であり、微小ループアンテナ素子205への給電時の電波の放射は、偏波成分が異なることを除いて第1の実施形態と同様である。
図12(a)は図10の微小ループアンテナ素子105に無線信号を給電したときに、垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフであり、図12(b)は図10の微小ループアンテナ素子205に無線信号を給電したときに、垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフである。
第1の実施形態で説明したように、微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の位相差を給電回路103により変化させ、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定した場合、図12(a)に示すように、微小ループアンテナ素子105への給電時、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得る。同様に、微小ループアンテナ素子205に給電する2つの無線信号の位相差を給電回路203により変化させ、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定した場合、図12(b)に示すように、微小ループアンテナ素子205への給電時、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得る。また、図12(a)及び図12(b)から明らかなように、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、微小ループアンテナ素子105への給電時のアンテナ装置から放射される主偏波成分(2つの偏波成分のうちの大きな偏波成分をいい、以下同様である。)と、微小ループアンテナ素子205への給電時のアンテナ装置から放射される主偏波成分は直交関係にある。
以上説明したように、本実施形態によれば、微小ループアンテナ素子105,205を設けているので第1の実施形態と同様の作用効果を有するとともに、2個の微小ループアンテナ素子105,205を、XZ平面において、それらのループ軸が互いに直交するように設けることにより、アンテナ装置と導体板106との距離Dが波長に対して十分短いときや4分の1波長の倍数のときなど、垂直水平両偏波成分のうち一方の偏波成分が大きく減衰するときでも、微小ループアンテナ素子105への給電時と微小ループアンテナ素子205への給電時のアンテナ装置から放射される各主偏波成分が直交関係にあるため、スイッチ208により各主偏波成分を切り換えることにより、より大きな主偏波成分を用いて無線通信することでき、偏波ダイバーシチの効果を得ることができる。
第3の実施形態.
図13は本発明の第3の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105,205を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第3の実施形態に係るアンテナ装置は、図10の第2の実施形態に係るアンテナ装置に比較して以下の点が異なる。
(1)スイッチ208に代えて、90度位相差分配器272を設けたことである。
以下、当該相違点について説明する。90度位相差分配器272は、無線送受信回路102からの送信無線信号を、互いに90度の位相差を有する2つの送信無線信号に分配して給電回路103,203に出力するとともに、受信無線信号についてはその逆方向の処理を行う。
次に以上のように構成されたアンテナ装置の電波の放射について以下説明する。微小ループアンテナ素子105,205には90度位相差分配器272により90度の位相差を有する無線信号が給電される。また、微小ループアンテナ素子105への給電時に放射される主偏波成分の偏波面と、微小ループアンテナ素子205への給電時に放射される主偏波成分の偏波面とは互いに偏波面が直交関係にあり、実施の形態2と同様にアンテナ装置と導体板106との距離Dが変化しても垂直、水平両偏波が発生する。従って、アンテナ装置は導体板106との距離Dにかかわらず、実質的に一定の円偏波の電波を放射する。
以上説明したように、本実施形態によれば、90度位相差分配器301により微小ループアンテナ素子105,205に90度位相差給電を行い、アンテナ装置から円偏波の電波を放射することにより、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、偏波ダイバーシチの効果を得ることができ、さらに、無線送受信回路102からの切換制御信号Ssによるスイッチ208の切り換え動作を不要にすることができる。
第4の実施形態.
図14は本発明の第4の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図であり、図15は図14の給電回路103Dの構成を示すブロック図である。第4の実施形態に係るアンテナ装置は、図1の第1の実施形態に係るアンテナ装置に比較して、以下の点が異なる。
(1)給電回路103に代えて、給電回路103Dを設けたことである。ここで、給電回路103Dは、図15に示すように、移相器1032を可変移相器1033に置き換えたことを特徴とし、可変移相器1033の移相量は無線送受信回路102からの移相量制御信号Spに基づいて制御される。
以上のように構成されたアンテナ装置において、給電回路103Dは、入力される不平衡無線信号を、バラン1031により概略180度の位相差を有する2つの平衡無線信号に変換し、得られた2つの平衡無線信号の位相差を、可変移相器1033により180度からずらし、互いに位相が異なる2つの平衡無線信号を出力する。
図16(a)は図15の給電回路103Dの第1の変形例である給電回路103Eの構成を示すブロック図であり、図16(b)は図15の給電回路103Dの第2の変形例である給電回路103Fの構成を示すブロック図であり、図16(c)は図15の給電回路103Dの第3の変形例である給電回路103Gの構成を示すブロック図である。図16(a)の給電回路103Eは、バラン1031と、それぞれ移相量制御信号Spにより移相量が制御される2個の可変移相器1033A,1033Bとを備えて構成される。また、図16(b)の給電回路103Fは、入力される不平衡無線信号をそれぞれ移相する可変移相器1033A,1033Bを備えて構成される。さらに、図16(c)の給電回路103Gは端子T1を介して入力される不平衡無線信号を移相して端子T2を介して出力する可変移相器1033Aのみを備え、端子T1を介して入力される不平衡無線信号をそのまま端子T3を介して出力する。
図17は、図15、図16(a)、図16(b)及び図16(c)の可変移相器1033,1033A,1033Bの第1の実施例である可変移相器1033−1の詳細構成を示す回路図である。可変移相器1033−1は、例えば0度から90度の移相量を有し、端子T21,T22の間に、複数(N+1)個の移相器PS1乃至PS(N+1)のいずれか1つを選択するように挟設された2個のスイッチSW1,SW2を備えて構成される。各移相器PS1乃至PS(N+1)はそれぞれ2個のキャパシタと1個のインダクタからなるT型移相器である。なお、移相器PS1は0度の移相量を有する直接接続回路で構成される。
図18は、図15、図16(a)、図16(b)及び図16(c)の可変移相器1033,1033A,1033Bの第2の実施例である可変移相器1033−2の詳細構成を示す回路図である。可変移相器1033−2は、例えば0度から−90度の移相量を有し、端子T21,T22の間に、複数(N+1)個の移相器PSa1乃至PSa(N+1)のいずれか1つを選択するように挟設された2個のスイッチSW1,SW2を備えて構成される。各移相器PSa1乃至PSa(N+1)はそれぞれ2個のキャパシタと1個のインダクタからなるπ型移相器である。なお、移相器PSa1は0度の移相量を有する直接接続回路で構成される。
図17及び図18の可変移相器1033−1,1033−2は、内蔵する移相器をチップ部品が使用できるインダクタやキャパシタにより回路を構成できるため、一般的な遅延線路を切り換える方式の移相器を用いた場合に比べて、回路を小型化できる。
以上のように構成されたアンテナ装置の動作について以下説明する。電波の放射は第1の実施形態と同様である。図9から明らかなように、微小ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の位相差を145度とすることで、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定することができることがわかる。これにより、導体板106との距離Dにかかわらず合成利得を一定とすることができ、距離測定精度を向上させることができる。また、認証通信時には高い通信品質を得るため、導体板106がアンテナ装置に近接するときの利得低下を防止し、かつ、導体板106がアンテナ装置から離れたときは利得ができるだけ高い方がよい。すなわち、導体板近接時の利得低下を防止し、微小ループアンテナ素子105からの水平偏波成分の利得低下が小さい範囲で、上記接続導体から放射される垂直偏波成分の利得はできるだけ高くした方がよい。
図9から明らかなように、微小ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の位相差を60度付近とすることで、水平偏波成分のアンテナ利得低下を抑えつつ、垂直偏波成分のアンテナ利得を高くすることができる。また、アンテナ装置の周囲環境の変動が小さい状況で使用される場合は、ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の位相差を順次変化させてゆき、最大の利得が得られる位相差で認証通信を行うことで、従来技術に比較して高い通信品質を得ることができる。
従って、距離測定時と認証通信時で、移相量制御信号Spにより可変移相器1033の移相量を変化させることにより、微小ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の位相差を変化させ、垂直水平両偏波成分のアンテナ利得を制御することで、従来技術に比較して高い距離精度と高い通信品質を両立させることができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、距離測定時に、微小ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の位相差を移相量制御信号Spにより変化させ、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一となるように設定することにより、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得るアンテナ装置を実現できる。また、認証通信時に、微小ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の位相差を移相量制御信号Spにより変化させ、水平偏波成分のアンテナ利得低下を抑えつつ、垂直偏波成分のアンテナ利得を高くすることで、従来技術に比較して高い通信品質を得るアンテナ装置を実現できる。利用目的に応じて、微小ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の位相差を移相量制御信号Spにより変化させることで、従来技術に比較して高い距離精度と高い通信品質を両立させることができる。また、微小ループアンテナ素子105は上述のように垂直水平両偏波成分を有しているので、偏波ダイバーシチの効果を得ることができる。
第5の実施形態.
図19は本発明の第5の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105,205を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第5の実施形態に係るアンテナ装置は、図10の第2の実施形態に比較して以下の点が異なる。
(1)給電回路103,203に代えて、それぞれ図15の給電回路103D,203Dを備えたこと。
以上のように構成されたアンテナ装置の動作について以下説明する。電波の放射は第2の実施形態と同様である。距離測定時と認証通信時で、移相量制御信号Sp,Sppにより微小ループアンテナ素子105,205へ給電する2つの無線信号の位相差を変化させ、それぞれ垂直水平両偏波成分のアンテナ利得を制御することで、従来技術に比較して高い距離精度と高い通信品質を両立させることができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、2個の微小ループアンテナ素子105,205を、XZ平面において微小ループアンテナ素子105に対して直交する向きに設けることにより、アンテナ装置と導体板106との距離Dが波長に対して十分短いときや4分の1波長の倍数のときなど、垂直水平両偏波のうち一方の偏波が大きく減衰するときでも、微小ループアンテナ素子105への給電時と微小ループアンテナ素子205への給電時のアンテナ装置から放射される偏波面が直交関係にあるため、スイッチ208により偏波面を切り換えることにより、偏波ダイバーシチの効果を得ることができる。さらに、距離測定時と認証通信時で、移相量制御信号Sp,Sppにより微小ループアンテナ素子105,205へ給電する2つの無線信号の位相差を変化させ、それぞれ垂直水平両偏波成分のアンテナ利得を制御することで、従来技術に比較して高い距離精度と高い通信品質を両立させることができる。
第6の実施形態.
図20は本発明の第6の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105,205を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第6の実施形態に係るアンテナ装置は、図13の第3の実施形態に係るアンテナ装置に比較して以下の点が異なる。
(1)給電回路103,203に代えてそれぞれ、移相量制御信号Sp,Sppにより移相量が制御される給電回路103D,203Dに置き換えたことである。
以上のように構成されたアンテナ装置の動作について以下説明する。電波の放射は第3の実施形態と同様である。距離測定時と認証通信時で、移相量制御信号Sp,Sppにより微小ループアンテナ素子105,205へ給電する2つの無線信号の位相差を変化させ、それぞれ垂直水平両偏波成分のアンテナ利得を制御することで、従来技術に比較して高い距離精度と高い通信品質を両立させることができる。
また、90度位相差分配器272により微小ループアンテナ素子105,205に90度位相差給電を行い、アンテナ装置から円偏波の電波を放射することにより、偏波ダイバーシチの効果を得ることができ、無線送受信回路102からの切換制御信号Ssによるスイッチ208の切り換え動作を不要にすることができる。さらに、距離測定時と認証通信時で、移相量制御信号Sp,Sppにより微小ループアンテナ素子105,205へ給電する2つの無線信号の位相差を変化させ、それぞれ垂直水平両偏波成分のアンテナ利得を制御することで、従来技術に比較して高い距離精度と高い通信品質を両立させることができる。
第7の実施形態.
図21は本発明の第7の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105を備えたアンテナ装置(図1の給電回路103を除き、図1のアンテナ装置と同様の構成を有する。)において用いる給電回路103Hの構成を示すブロック図である。第7の実施形態に係るアンテナ装置は、図1のアンテナ装置において、給電回路103に代えて、図21の給電回路103Hを備えたことを特徴とする。給電回路103Hは、バラン1031と、図3の移相器1032に代わる減衰器1071とを備えて構成される。なお、図21の給電回路103Hは、図22(a)、図22(b)及び図22(c)の給電回路103I,103J,103Kであってもよい。
図22(a)は図21の給電回路103Hの第1の変形例である給電回路103Iの構成を示すブロック図であり、図22(b)は図21の給電回路103Hの第2の変形例である給電回路103Jの構成を示すブロック図であり、図22(c)は図21の給電回路103Hの第3の変形例である給電回路103Kの構成を示すブロック図である。図22(a)の給電回路103Iは、バラン1031と、減衰器1071と、増幅器1072とを備えて構成される。また、図22(b)の給電回路103Jは、バラン1031と、増幅器1072とを備えて構成される。さらに、図22(c)の給電回路103Kは、端子T1を介して入力される無線信号を不均等に分配して出力する不均等分配器1031Aと、180度移相器1073とを備えて構成される。
以上のように構成されたアンテナ装置の動作について以下説明する。無線送受信回路102から出力された送信無線信号は、給電回路103Hにより互いに振幅が異なる2つの無線信号に変換された後、インピーダンス整合回路104によりインピーダンス変換され、ループアンテナ素子105に出力されて放射される。また、微小ループアンテナ素子105により受信された電波は、インピーダンス整合回路104によりインピーダンス変換された後、給電回路103Hにより不平衡無線信号に変換され、無線送受信回路102に受信無線信号として入力される。
本実施形態に係るアンテナ装置においては、第1の実施形態に係るアンテナ装置と同様に、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一となるように設定することにより、合成成分は、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず実質的に一定となる。微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の振幅差を所定の値に設定することで、アンテナ装置から放射される垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定することができる。
図23は第7の実施形態に係るアンテナ装置において、給電回路103Hの減衰器1071の減衰量に対する、XY平面の平均アンテナ利得を示すグラフである。図23は、周波数426MHzにおける計算値を示すグラフである。減衰器1071の減衰量の絶対値が、微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の振幅差となる。図23から明らかなように、減衰器1071の減衰量を−8dBとすることで、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定することができることがわかる。減衰器1071の減衰量を所定の値に設定することで、給電回路103が出力する2つの無線信号の振幅差を、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得が実質的に同一になるように設定することで、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず合成成分のアンテナ利得を実質的に一定とすることができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、減衰器1071の減衰量を所定の値に設定することにより、ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の振幅差を設定し、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一となるように設定することにより、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得るアンテナ装置を実現できる。また、微小ループアンテナ素子105は上述のように垂直水平両偏波成分を有し、偏波ダイバーシチの効果を得ることができる。
さらに、給電回路103H(又は103I,103J,103K)を、図10乃至図13に示す第2及び第3の実施形態に係るアンテナ装置の構成に適用してもよい。
第8の実施形態.
図24は、本発明の第8の実施形態に係る、図21の変形例である給電回路103Lの構成を示すブロック図である。第8の実施形態に係るアンテナ装置は、図21の第7の実施形態に係るアンテナ装置に比較して以下の点が異なる。
(1)減衰器1071を有する給電回路103Hに代えて、減衰量制御信号Saに従って変化される減衰量を有する可変減衰器1074を有する給電回路103Lを備えたこと。
また、給電回路103Lの代えて、図25(a)、図25(b)及び図25(c)の給電回路103M,103N,103Oを備えてもよい。
図24の給電回路103Lは、入力される不平衡無線信号を、バラン1031により概略180度の位相差と、概略0の振幅差とを有する2つの無線信号に変換し、得られた2つの無線信号の振幅差を、可変減衰器1074により互いに振幅が異なる2つの無線信号に変換して出力する。なお、給電回路103Lの構成は、互いに位相差が略180度で振幅が異なる2つの無線信号を出力する回路であればよく、図24の構成でなくてもよい。
図25(a)は図24の給電回路103Lの第1の変形例である給電回路103Mの構成を示すブロック図であり、図25(b)は図24の給電回路103Lの第2の変形例である給電回路103Nの構成を示すブロック図であり、図25(c)は図24の給電回路103Lの第3の変形例である給電回路103Oの構成を示すブロック図である。図25(a)の給電回路103Mは、バラン1031と、制御信号Saに従って変化する減衰量を有する可変減衰器1074と、制御信号Saに従って変化する増幅度を有する可変増幅器1075とを備えて構成される。また、図25(b)の給電回路103Nは、バラン1031と、制御信号Saに従って変化する増幅度を有する可変増幅器1075とを備えて構成される。さらに、図25(c)の給電回路103Oは、端子T1を介して入力される無線信号を、制御信号Saに従って変化する分配比を有して2つの無線信号に不均等に分配する分配比可変型不均等分配器1031Bと、180度移相器1076とを備えて構成される。
図26は、図24、図25(a)、図25(b)及び図25(c)の可変減衰器1074の第1の実施例である可変減衰器1074−1の詳細構成を示す回路図である。可変減衰器1074−1は、例えば0から所定値までの減衰量を有し、端子T31,T32の間に、複数(N+1)個の減衰器AT1乃至AT(N+1)のいずれか1つを選択するように挟設された2個のスイッチSW1,SW2を備えて構成される。各減衰器AT1乃至AT(N+1)はそれぞれ3個の抵抗からなるT型減衰器である。なお、減衰器AT1は0の減衰量を有する直接接続回路で構成される。
図27は、図24、図25(a)、図25(b)及び図25(c)の可変減衰器1074の第2の実施例である可変減衰器1074−2の詳細構成を示す回路図である。可変減衰器1074−2は、例えば0から所定値までの減衰量を有し、端子T31,T32の間に、複数(N+1)個の減衰器ATa1乃至ATa(N+1)のいずれか1つを選択するように挟設された2個のスイッチSW1,SW2を備えて構成される。各減衰器ATa1乃至ATa(N+1)はそれぞれ3個の抵抗からなるπ型減衰器である。なお、減衰器ATa1は0の減衰量を有する直接接続回路で構成される。
図24の給電回路103Lを備えたアンテナ装置において、電波の放射は第1の実施形態と同様である。図23から明らかなように、微小ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の振幅差を8dBとすることで、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定することができることがわかる。これにより、導体板106との距離Dにかかわらず合成利得を一定とすることができ、距離測定精度を向上させることができる。また、認証通信時には高い通信品質を得るため、導体板106がアンテナ装置に近接するときの利得低下を防止し、かつ、導体板106がアンテナ装置から離れたときは利得ができるだけ高い方がよい。すなわち、導体板近接時の利得低下を防止し、微小ループアンテナ素子105からの水平偏波成分のアンテナ利得低下が小さい範囲で、上記接続導体から放射される垂直偏波成分のアンテナ利得はできるだけ高くした方がよい。
また、図23から明らかなように、微小ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の振幅差を10dBとすることで、水平偏波成分のアンテナ利得低下を抑えつつ、垂直偏波成分のアンテナ利得を高くすることができる。さらに、アンテナ装置の周囲環境の変動が小さい状況で使用される場合は、ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の振幅差を順次変化させてゆき、最大の利得が得られる振幅差で認証通信を行うことで、従来技術に比較して高い通信品質を得ることができる。距離測定時と認証通信時で、減衰量制御信号により可変減衰器1074の減衰量を切り換え、微小ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の振幅差を変化させ、垂直水平両偏波成分のアンテナ利得を制御することで、従来技術に比較して高い距離精度と高い通信品質を両立させることができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、距離測定時、微小ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の振幅差を減衰量制御信号により変化させ、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一となるように設定することにより、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得るアンテナ装置を実現できる。
また、認証通信時、微小ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の振幅差を減衰量制御信号により変化させ、水平偏波成分のアンテナ利得低下を抑えつつ、垂直偏波成分のアンテナ利得を高くすることで、従来技術に比較して高い通信品質を得るアンテナ装置を実現できる。利用目的に応じて、微小ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の振幅差を減衰量制御信号により変化させることで、従来技術に比較して高い距離精度と高い通信品質を両立させることができる。さらに、微小ループアンテナ素子105は垂直水平両偏波成分を有し、偏波ダイバーシチの効果を得ることができる。
なお、図19及び図20のアンテナ装置において、給電回路103D,203Dに代えて、第7の実施形態に係る給電回路103H、又は第8の実施形態に係る給電回路103Lを備えるように構成してもよい。
第9の実施形態.
図28は本発明の第9の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第9の実施形態に係るアンテナ装置は、図1の第1の実施形態に係るアンテナ装置に比較して以下の点が異なる。
(1)給電回路103に代えて、平衡不平衡変換回路103Pを備えたこと。
以下、当該相違点について説明する。
図28において、平衡不平衡変換回路103Pは、接地導体板101に設けられ、不平衡端子T1が無線送受信回路102に接続され、平衡端子T2,T3がインピーダンス整合回路104に接続され、無線送受信回路102からの不平衡無線信号を2つの平衡無線信号に変換してインピーダンス整合回路104に出力する。なお、第9の実施形態において、上述の実施形態及び変形例の構成を適用してもよい。
図29は図28の平衡不平衡変換回路103Pの構成を示す回路図である。図29において、平衡不平衡変換回路103Pは、+90度移相器103aと、−90度移相器103bとを備えて構成される。ここで、+90度移相器103aは、不平衡端子T1と平衡端子T2との間に挿入されたL型のLC回路であって、不平衡端子T1を介して入力される無線信号を+90度だけ移相して平衡端子T2に出力する。また、−90度移相器103bは、不平衡端子T1と平衡端子T3との間に挿入されたL型のLC回路であって、不平衡端子T1を介して入力される無線信号を−90度だけ移相して平衡端子T3に出力する。なお、各移相器103a,103bのインダクタL11,L12のインダクタンスLは等しく、キャパシタC11,C12のキャパシタンスCは等しい。平衡不平衡変換回路103Pの設定周波数fsは次式で表される。
すなわち、平衡不平衡変換回路103Pの設定周波数fsはインダクタンスLとキャパシタンスCからなるLC回路の共振周波数に等しい。なお、一般的には、平衡不平衡変換回路103Pの設定周波数fsと、アンテナ装置により送受信を行う電波の周波数とが等しくなるようにインダクタンスL及びキャパシタンスCを設定するが、本実施形態では、好ましくは、以下で述べるように、平衡不平衡変換回路103Pの設定周波数fs(又は共振数周波数)と送受信を行う電波の周波数とを異なるように設定する。
図30(a)は図29の平衡不平衡変換回路103Pにおける平衡端子T2を流れる無線信号と、平衡端子T3を流れる無線信号との間の振幅差Adの周波数特性を示すグラフであり、図30(b)は図29の平衡不平衡変換回路103Pにおける平衡端子T2を流れる無線信号と、平衡端子T3を流れる無線信号との間の位相差Pdの周波数特性を示すグラフである。
図30(a)から明らかなように、設定周波数fsが送受信する電波の周波数と等しいとき(図30(a)では点線で示している)振幅差は0dBとなっているが、送受信する電波の周波数から離れるほど振幅差Adが大きくなる。また、インダクタンスLやキャパシタンスCを調整することにより設定周波数fsを送受信する電波の周波数より低くすると、送受信する電波の周波数では平衡端子T2,T3間の振幅差Ad[db]は正(接続導体105d,105eの電流振幅よりもループ戻り部である接続導体105fの電流振幅が大きい)となり、設定周波数fsを送受信する電波の周波数より高くすると、送受信する電波の周波数では平衡端子T2,T3間の振幅差Ad[dB]は負(接続導体105d,105eの電流振幅よりもループ戻り部である接続導体105fの電流振幅が小さい)となることがわかる。
また、図30(b)から明らかなように、位相差Pdは設定周波数fsの高低に関わらず実質的に180度で一定である。平衡不平衡変換回路103は、チップ部品が使用できるインダクタやキャパシタにより回路を構成できるため、一般的なトランスを使用した平衡不平衡変換回路に比べて、回路を小型化できる。
以上のように構成されたアンテナ装置の動作は平衡不平衡変換回路103Pの動作を除いて第1の実施形態と同様である。また、その電波の放射についても第1の実施形態と同様である。
図31は図28の微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の振幅差Adに対するXY平面の平均アンテナ利得を示すグラフである。図31のグラフは、周波数426MHzにおける計算値である。図31において、横軸の振幅差Ad[dB]が正のときは、図30を参照して説明したように、2つの給電点Q1,Q2のうち給電点Q2に接続されたループ戻り部である接続導体105fの電流振幅が給電点Q1に接続された接続導体105d,105eの電流振幅に比較して大きいときである。また、振幅差Ad[dB]が負のときは、給電点Q2に接続されたループ戻り部である接続導体105fの電流振幅が給電点Q1に接続された接続導体105d,105eの電流振幅に比較して小さいときである。
図32(a)乃至図32(j)は図28の微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の振幅差Adを−10dBから−1dBまで変化したときのXY平面の水平偏波成分の放射パターンを示す図である。また、図33(a)乃至(k)は図28の微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の振幅差Adを0dBから10dBまで変化したときのXY平面の水平偏波成分の放射パターンを示す図である。さらに、図34(a)乃至(j)は図28の微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の振幅差Adを−10dBから−1dBまで変化したときのXY平面の垂直偏波成分の放射パターンを示す図である。またさらに、図35(a)乃至(k)は図28の微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の振幅差Adを0dBから10dBまで変化したときのXY平面の垂直偏波成分の放射パターンを示す図である。
図31の501,502から明らかなように、振幅差Adが−8dB又は2dBになると垂直偏波成分と水平偏波成分の平均利得が実質的に同一になることがわかる。また、図32(a)乃至図32(j)及び図33(a)乃至(k)から明らかなように、水平偏波成分は、振幅差Adによらず無指向性で、アンテナ利得もほとんど変わらないことがわかる。また、図34(a)乃至(j)から明らかなように、垂直偏波成分は、振幅差Adが−10dBから−1dBのとき、指向性が振幅差により大きく変化し、無指向性ではなくなる。さらに、図35(a)乃至(k)から明らかなように、振幅差Adが0dBから10dBのとき、無指向性を保ったまま利得だけ変化する。
上記の図32乃至図35を考慮すると、振幅差Adが2dBのときに、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得るアンテナ装置を実現できることがわかる。言換すれば、微小ループアンテナ素子105の2つの給電点Q1,Q2のうち、給電点Q2に接続されたループ戻り部の接続導体105fの電流振幅を大きくしていき、微小ループアンテナ素子105の2つの給電点Q1,Q2へ給電する信号の振幅差Adが所定の値になるようにインダクタンスL及びキャパシタンスCの値を調整して設定周波数fsを設定することにより、無指向性でかつ垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定することができることがわかる。
以上説明したように、平衡不平衡変換回路103Pの設定周波数を、アンテナ装置が送受信する電波の周波数から離れた値に設定することで、平衡不平衡変換回路103が出力する2つの無線信号の振幅差Adを、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得が実質的に同一になるように設定することができ、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず合成成分のアンテナ利得を実質的に一定とすることができる。特に、平衡不平衡変換回路103Pの設定周波数を所定の値に設定することにより、ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の振幅差Adを設定し、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一となるように設定することにより、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得るアンテナ装置を実現できる。
第10の実施形態.
図36は本発明の第10の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105,205を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第10の実施形態に係るアンテナ装置は、図10の第2の実施形態に係るアンテナ装置に比較して以下の点が異なる。
(1)給電回路103,203に代えてそれぞれ平衡不平衡変換回路103P,203P(平衡不平衡変換回路203Pは平衡不平衡変換回路103Pと同様の構成を有する。)を備えたこと。
なお、スイッチ208に代えて、図37(a)及び図37(b)のごとく、偏波切換回路208Aを備えてもよい。
図37(a)は図36の変形例に係る偏波切換回路208Aの構成を示す回路図である。図37(a)において、偏波切換回路208Aは、制御信号端子T44を介して入力される切換制御信号Ssに基づいて接点a側又は接点b側に選択的に切り換えるスイッチSW11と、1次側コイル261と2次側コイル262とを有するバラン260とを備えて構成される。端子T41はスイッチSW11の接点b側を介してバラン260の1次側コイル261の一端に接続され、その他端は接地されるとともに、スイッチSW11の接点a側を介してバラン260の2次側コイル262の中点に接続され、その両端は端子T42,T43にそれぞれ接続される。以上のように構成された偏波切換回路208Aにおいて、スイッチSW11を接点a側に切り換えたとき、端子T41を介して入力された無線信号を同相で端子T42,T43に出力する一方、スイッチSW11を接点b側に切り換えたとき、端子T41を介して入力された無線信号を逆相で端子T42,T43に出力する。すなわち、スイッチSW11を切り換えることにより同相給電と逆相給電とを選択的に切り換えることができる。
図37(b)は上記偏波切換回路208Aの変形例である偏波切換回路208Aaの構成を示す回路図である。図37(b)において、端子T41を介して入力される無線信号は、分配器270により2つの無線信号に2分配されたた後、一方の無線信号は端子T42に出力されるとともに、スイッチSW21に出力される。スイッチSW21,SW22は端子T44を介して入力される切換制御信号Ssに基づいて、それぞれ接点a側又は接点b側に切り換えられる。前者のとき、分配器270からの無線信号はスイッチSW21の接点a側と、+90度移相器273aと、スイッチSW22の接点a側とを介して端子T43に出力される。後者のとき、分配器270からの無線信号はスイッチSW21の接点b側と、−90度移相器273bと、スイッチSW22の接点b側とを介して端子T43に出力される。スイッチSW21,SW22を切り換えることにより+90度位相差給電と−90度位相差給電とを選択的に切り換えることができる。
図38は図36のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。本実施形態に係るアンテナ装置は、偏波切換回路208Aの動作を除いて第2の実施形態と同様に動作する。
図39(a)は図36の微小ループアンテナ素子105に無線信号を給電したときに、垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフであり、図39(b)は図36の微小ループアンテナ素子205に無線信号を給電したときに、垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフである。
第9の実施形態と同様に、平衡不平衡変換回路103Pの設定周波数を所定の値に設定することにより、微小ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の振幅差Adを設定し、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定した場合、図39(a)に示すように、ループアンテナ素子105への給電時、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得る。同様に、平衡不平衡変換回路203Pの設定周波数を所定の値に設定することにより、ループアンテナ素子205へ給電する2つの無線信号の振幅差Adを設定し、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定した場合、図39(b)に示すように、微小ループアンテナ素子205への給電時、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得る。
また、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、微小ループアンテナ素子105への給電時のアンテナ装置から放射される偏波成分と、微小ループアンテナ素子205への給電時のアンテナ装置から放射される偏波成分は直交関係にある。接地導体板101の形状が実質的に正方形であり、微小ループアンテナ素子105,205の寸法が略同じであるため、微小ループアンテナ素子105への給電時と、微小ループアンテナ素子205への給電時でアンテナの利得は変わることはなく、偏波のみが90度変化するので、給電切り換えによる利得変動は生じない。
以上説明したように、微小ループアンテナ素子105と同様の構成を有する微小ループアンテナ素子205を、XZ平面において微小ループアンテナ素子105に対して直交する向きに設けることにより、アンテナ装置と導体板106との距離Dが波長に対して十分短いときや4分の1波長の倍数のときなど、垂直水平両偏波のうち一方の偏波が大きく減衰する場合においても、微小ループアンテナ素子105,205への給電を偏波切換回路208により切り換えて偏波面を90度変化させることで、通信姿勢の変動によって生じる偏波面不一致による利得変動を抑えることができる。
第11の実施形態.
図40は本発明の第11の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105Aを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第11の実施形態に係るアンテナ装置は、図28の第9の実施形態に係るアンテナ装置に比較して以下の点が異なる。
(1)微小ループアンテナ素子105に代えて微小ループアンテナ素子105Aを備えたこと。
以下、当該相違点について説明する。
図40において、微小ループアンテナ素子105Aは、
(a)X軸方向のループ面と矩形形状を有する1巻のループアンテナ部105aの左半分である半分ループアンテナ部105aaと、
(b)上記1巻のループアンテナ部105aの右半分である半分ループアンテナ部105abと、
(c)X軸方向のループ面と矩形形状を有する1巻のループアンテナ部105bの左半分である半分ループアンテナ部105baと、
(d)上記1巻のループアンテナ部105bの右半分である半分ループアンテナ部105bbと、
(e)X軸方向のループ面と矩形形状を有する1巻のループアンテナ部105cと、
(f)Z軸と概略平行となるように設けられ、半分ループアンテナ部105aaと半分ループアンテナ部105bbとを接続する接続導体105daと、
(g)Z軸と概略平行となるように設けられ、半分ループアンテナ部105abと半分ループアンテナ部105baとを接続する接続導体105dbと、
(h)Z軸と概略平行となるように設けられ、半分ループアンテナ部105bbとループアンテナ部105cとを接続する接続導体105eaと、
(i)Z軸と概略平行となるように設けられ、半分ループアンテナ部105baとループアンテナ部105cとを接続する接続導体105ebとから構成される。
なお、半分ループアンテナ部105aaの一端は給電点Q1であり、給電点Q1は給電導体151を介してインピーダンス整合回路104に接続される。また、半分ループアンテナ部105abの一端は給電点Q2であり、給電点Q2は給電導体152を介してインピーダンス整合回路104に接続される。
次に微小ループアンテナ素子105Aの電流の流れについて以下説明する。図41は図40の微小ループアンテナ素子105Aの電流方向を示す斜視図である。図41から明らかなように、半分ループアンテナ部105aa,105ba及びループアンテナ部105cの左半分には互いに同一の電流が流れ、半分ループアンテナ部105ab,105bb及びループアンテナ部105cの右半分には互いに同一の電流が流れる。また、1対の接続導体105da,105dbには、それらにより2つの給電点Q1,Q2から略等距離の位置で交差させて各2つの半分ループアンテナ部を接続しているため、互いに逆相の電流が流れる。さらに、1対の接続導体105ea,105ebには、それらにより2つの給電点Q1,Q2から略等距離の位置で交差させて各2つの半分ループアンテナ部を接続しているため、互いに逆相の電流が流れる。
従って、本実施形態に係るアンテナ装置の放射は、
(a)X軸に平行に設けられた、半分ループアンテナ部105aa,105ab,105ba,105bb,105cからの水平偏波成分の放射と、
(b)Z軸に平行に設けられた、接続導体105da,105db,105ea,105ebからの垂直偏波成分の放射とからなる。
図42は図40のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。図42において、アンテナ装置からの電波の放射は、上述のように、微小ループアンテナ素子105AからのX軸に平行な水平偏波成分及びZ軸に平行な垂直偏波成分の放射を含む。本実施形態において、垂直偏波成分の放射では、図6(b)と同様に、アンテナ装置と導体板106との距離Dが、波長に対して十分短いとき、垂直偏波成分のアンテナ利得が大幅に低下して最小となる。アンテナ装置と導体板106との距離Dが、4分の1波長の奇数倍であるとき、垂直偏波成分のアンテナ利得が最大となる。アンテナ装置と導体板106との距離Dが、4分の1波長の偶数倍であるとき、垂直偏波成分のアンテナ利得が大幅に低下して最小となる。また、水平偏波成分の放射では、図5(b)と同様に、アンテナ装置と導体板106との距離Dが、波長に対して十分短いとき、水平偏波成分のアンテナ利得が最大となる。アンテナ装置と導体板106との距離Dが、4分の1波長の奇数倍であるとき、水平偏波成分のアンテナ利得が大幅に低下して最小となる。アンテナ装置と導体板106との距離Dが、4分の1波長の偶数倍であるとき、水平偏波成分のアンテナ利得が最大となる。従って、アンテナ装置が導体板106に近接するとき、水平偏波成分のアンテナ利得が低下するとき、垂直偏波成分のアンテナ利得が増加し、垂直偏波成分のアンテナ利得が低下するとき、水平偏波成分のアンテナ利得が増加するように動作する。
図43(a)は図40の接続導体105da,105db(又は105ea,105eb)の長さに対する微小ループアンテナ素子105AのXY平面の水平偏波成分の平均アンテナ利得を示すグラフであり、図43(b)は図40の接続導体105da,105db(又は105ea,105eb)の長さに対する微小ループアンテナ素子105AのXY平面の垂直偏波成分の平均アンテナ利得を示すグラフである。図44(a)は図40の接続導体105da,105db間(又は接続導体105ea,105eb間)の距離に対する微小ループアンテナ素子105AのXY平面の水平偏波成分の平均アンテナ利得を示すグラフであり、図44(b)は図40の接続導体105da,105db間(又は接続導体105ea,105eb間)の距離に対する微小ループアンテナ素子105AのXY平面の垂直偏波成分の平均アンテナ利得を示すグラフである。これらのグラフは周波数426MHzで計算した。
図43(a)、図43(b)、図44(a)及び図44(b)から明らかなように、各接続導体(105da,105db,105ea,105eb)の長さや、1対の接続導体(105da,105db又は105ea,105eb)間の距離が増加すると、1対の接続導体(105da,105db又は105ea,105eb)の互いに逆相の電流による各接続導体からの電波の放射の打ち消し効果が薄れ、各接続導体からの電波の放射が大きくなるため、水平偏波成分は実質的に一定であるが、垂直偏波成分は増加する。すなわち、各接続導体(105da,105db,105ea,105eb)の長さや、1対の接続導体(105da,105db又は105ea,105eb)間の距離をそれぞれ所定の値に設定することで、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定することができる。
以上説明したように、電波の放射が強く、調整が困難でかつ接地導体板101のサイズや形状により大きく左右される微小ループアンテナ素子105Aから接地導体板101に直接流れる磁流電流による放射を平衡不平衡変換回路103Pにより抑え、微小ループアンテナ素子105Aの各部位の寸法を所定の値に設定することで、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、一定の合成偏波成分のアンテナ利得を得るアンテナ装置を実現できる。また、接続導体105da,105db,105ea,105ebから放射される偏波成分と、半分ループアンテナ部105aa,105ab,105ba,105bb及びループアンテナ部105cから放射される偏波成分とは互いに直交関係にあるため、垂直水平両偏波成分を有し、偏波ダイバーシチの効果を得ることができる。
第12の実施形態.
図45は本発明の第12の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105A,205Aを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第12の実施形態に係るアンテナ装置は、図10の第2の実施形態に係るアンテナ装置に比較して以下の点が異なる。
(1)微小ループアンテナ素子105に代えて微小ループアンテナ素子105Aを備えたこと。
(2)微小ループアンテナ素子205に代えて微小ループアンテナ素子205Aを備えたこと。
(3)給電回路103に代えて平衡不平衡変換回路103Pを備えたこと。
(4)給電回路203に代えて平衡不平衡変換回路203Pを備えたこと。
図45において、微小ループアンテナ素子205Aは、
(a)Z軸方向のループ面と矩形形状を有する1巻のループアンテナ部205aの左半分である半分ループアンテナ部205aaと、
(b)上記1巻のループアンテナ部205aの右半分である半分ループアンテナ部205abと、
(c)Z軸方向のループ面と矩形形状を有する1巻のループアンテナ部205bの左半分である半分ループアンテナ部205baと、
(d)上記1巻のループアンテナ部205bの右半分である半分ループアンテナ部205bbと、
(e)Z軸方向のループ面と矩形形状を有する1巻のループアンテナ部205cと、
(f)X軸と概略平行となるように設けられ、半分ループアンテナ部205aaと半分ループアンテナ部205bbとを接続する接続導体205daと、
(g)X軸と概略平行となるように設けられ、半分ループアンテナ部205abと半分ループアンテナ部205baとを接続する接続導体205dbと、
(h)X軸と概略平行となるように設けられ、半分ループアンテナ部205bbとループアンテナ部205cとを接続する接続導体205eaと、
(i)X軸と概略平行となるように設けられ、半分ループアンテナ部205baとループアンテナ部205cとを接続する接続導体205ebとから構成される。
なお、半分ループアンテナ部205aaの一端は給電点Q3であり、給電点Q3は給電導体251を介してインピーダンス整合回路204に接続される。また、半分ループアンテナ部205abの一端は給電点Q4であり、給電点Q4は給電導体252を介してインピーダンス整合回路204に接続される。本実施形態においては、互いに直交するように設けられた微小ループアンテナ素子105Aと微小ループアンテナ素子205Aへの給電をスイッチ208により切り換えることにより、アンテナダイバーシチを行う。
図46は図45のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。図46において、微小ループアンテナ素子105Aへの給電時の電波の放射は、第11の実施形態と同様である。微小ループアンテナ素子205Aへの給電時の電波の放射は、微小ループアンテナ素子205Aが、XZ平面において微小ループアンテナ素子105Aに対して直交する向きに設けられているため、接続導体205da,205db,205ea,205ebからの電波の放射は水平偏波で行われ、半分ループアンテナ素子205aa,205ab,205ba,205bb,205cからの電波の放射は垂直偏波で行われる。
第11の実施形態と同様に、微小ループアンテナ素子105Aの各部位の寸法を所定の値に設定して、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定した場合、ループアンテナ素子105Aへの給電時、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず一定の合成偏波成分のアンテナ利得を得る。同様に、微小ループアンテナ素子205Aの各部位の寸法を所定の値に設定して、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定した場合、微小ループアンテナ素子205への給電時、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず一定の合成偏波成分のアンテナ利得を得る。また、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、微小ループアンテナ素子105Aへの給電時のアンテナ装置から放射される偏波成分と、微小ループアンテナ素子205Aへの給電時のアンテナ装置から放射される偏波成分は直交関係にある。
以上説明したように、本実施形態によれば、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、一定の合成偏波成分のアンテナ利得を得ることができ、さらに、微小ループアンテナ素子105Aと同様の構成を有する微小ループアンテナ素子205Aを、XZ平面において微小ループアンテナ素子105Aに対して直交する向きに設けることにより、アンテナ装置と導体板106との距離Dが波長に対して十分短いときや4分の1波長の倍数のときなど、垂直水平両偏波のうち一方の偏波が大きく減衰するときでも、微小ループアンテナ素子105Aと微小ループアンテナ素子205Aの偏波面が直交関係にあるため、偏波ダイバーシチの効果を得ることができる。
第13の実施形態.
図47は本発明の第13の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105A,205Aを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第13の実施形態に係るアンテナ装置は、図45の第12の実施形態に係るアンテナ装置に比較して、以下の点が異なる。
(1)スイッチ208の代わりに90度位相差分配器272を備えたこと。
以上のように構成されたアンテナ装置においては、微小ループアンテナ素子105A,205Aにはそれぞれ90度位相差分配器272により90度位相差で給電される。また、微小ループアンテナ素子105Aと微小ループアンテナ素子205Aの偏波面が直交関係にあり、微小ループアンテナ素子105A,205Aと導体板106との距離Dが変化しても垂直偏波成分及び水平偏波成分が発生する。従って、アンテナ装置は導体板106との距離Dにかかわらず、一定の円偏波の電波を放射する。
以上説明したように、本実施形態によれば、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、偏波ダイバーシチの効果を得ることができ、さらに無線送受信回路102からの制御信号によるスイッチ208の切り換え動作を不要にすることができる。
第14の実施形態.
図48は本発明の第14の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105Bを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第14の実施形態に係るアンテナ装置は、図40の第11の実施形態に係るアンテナ装置と比較して以下の点が異なる。
(1)微小ループアンテナ素子105Aに代えて、図2(b)の微小ループアンテナ素子105Bを備えたこと。
以下、当該相違点について説明する。
図48において、半分ループアンテナ部105aaの一端は給電点Q1であり、給電点Q1は給電導体151を介してインピーダンス整合回路104に接続される。また、半分ループアンテナ部105abの一端は給電点Q2であり、給電点Q2は給電導体152を介してインピーダンス整合回路104に接続される。アンテナ素子105Bは、互いのループの中心軸が平行で、かつ互いのループの巻き方向が逆方向の関係にある右巻き微小ループアンテナ105Ba及び左巻き微小ループアンテナ105Bbから構成され、微小ループアンテナ105Ba,105Bbの先端同士は接続されている。
図49は図48の微小ループアンテナ素子105Bの電流方向を示す斜視図である。図49から明らかなように、半分ループアンテナ部105aa,105ab,105ba,105bb及びループアンテナ部105cにはすべて右回り方向の電流が流れる。また、1対の接続導体161,163及び1対の接続導体162,164にはそれぞれ互いに逆相の電流が流れる。
図50は図48のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。微小ループアンテナ素子105Bを備えたアンテナ装置からの電波の放射は、
(a)X軸に平行に設けられた、微小ループアンテナ素子105Bの半分ループアンテナ部105aa,105ab,105ba,105bb及びループアンテナ部105cからの水平偏波成分の放射と、
(b)Z軸に平行に設けられた、微小ループアンテナ素子105Bの接続導体161−164からの垂直偏波成分の放射とからなる。
本実施形態の垂直偏波成分の放射においても、上述の実施形態と同様に、アンテナ装置と導体板106との距離Dが波長に対して十分短いとき、垂直偏波成分のアンテナ利得が大幅に低下して最小となる。アンテナ装置と導体板106との距離Dが4分の1波長の奇数倍であるとき、垂直偏波成分のアンテナ利得が最大となる。アンテナ装置と導体板106との距離Dが4分の1波長の偶数倍であるとき、垂直偏波成分のアンテナ利得が大幅に低下して最小となる。
また、水平偏波成分の放射においても、上述の実施形態と同様に、アンテナ装置と導体板106との距離Dが波長に対して十分短いとき、水平偏波成分のアンテナ利得が最大となる。アンテナ装置と導体板106との距離Dが4分の1波長の奇数倍であるとき、水平偏波成分のアンテナ利得が大幅に低下して最小となる。アンテナ装置と導体板106との距離Dが4分の1波長の偶数倍であるとき、水平偏波成分のアンテナ利得が最大となる。従って、アンテナ装置が導体板106に近接するとき、水平偏波成分のアンテナ利得が低下するとき、垂直偏波成分のアンテナ利得が増加し、垂直偏波成分のアンテナ利得が低下するとき、水平偏波成分のアンテナ利得が増加するように動作する。
本実施形態において、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一となるように設定することにより、合成成分は、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず実質的に一定となる。アンテナ素子105Bは平衡不平衡変換回路103Pにより平衡給電されるので、アンテナ素子105Bから接地導体板101に直接流れる電流による放射は非常に小さい。接地導体板101からの電波の放射は、アンテナ素子105からの電波の放射によって接地導体板101に誘起される電流による放射が主であるので、接地導体板101からの電波の放射はアンテナ素子105からの電波の放射に比べて小さい。アンテナ装置全体からの電波の放射はアンテナ素子105Bによる放射が主となる。
従って、アンテナ素子105Bの各部位の寸法を所定の値に設定することで、アンテナ装置から放射される垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定することができる。接続導体161,162からの電波の放射は、接続導体161,162の長さ、もしくは接続導体161,163間の距離が増加すると、互いに逆相の電流が流れることによる互いの放射の相殺効果が薄れるため、放射が大きくなる。すなわち、アンテナ装置から放射される水平偏波成分は実質的に一定に保ちつつ、垂直偏波成分は増加する。これは、接続導体163,164についても同様である。接続導体161−164の長さ、接続導体161,163間の距離、接続導体162,164間の距離の値を所定の値に設定することで、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、電波の放射が強く、調整が困難でかつ接地導体板101のサイズや形状により大きく左右されるアンテナ素子105Bから接地導体板101に直接流れる電流による放射を平衡不平衡変換回路103Pにより抑え、アンテナ素子105Bの各部位の寸法を所定の値に設定することで、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得るアンテナ装置を実現できる。また、接続導体161−164の偏波成分と、半分ループアンテナ部105aa,105ab,105ba,105bb及びループアンテナ部105cの偏波成分が直交関係にあるため、当該アンテナ装置は垂直水平両偏波成分を有し、偏波ダイバーシチの効果を得ることができる。
第15の実施形態.
図51は本発明の第15の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105B,205Bを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第15の実施形態に係るアンテナ装置は、図45の第12の実施形態に係るアンテナ装置に比較して以下の点が異なる。
(1)微小ループアンテナ素子105Aに代えて微小ループアンテナ素子105Bを備えたこと。
(2)微小ループアンテナ素子205Aに代えて微小ループアンテナ素子205Bを備えたこと。
以下、当該相違点について説明する。
図51において、微小ループアンテナ素子205Bは、図2(b)の微小ループアンテナ素子105Bと同様に、
(a)それぞれ略矩形形状の3辺で構成され、Z軸に概略平行な実質的に同一面に形成された、各半分巻の半分ループアンテナ部205aa,205abと、
(b)それぞれ略矩形形状の3辺で構成され、Z軸に概略平行な実質的に同一面に形成された、各半分巻の半分ループアンテナ部205ba,205bbと、
(c)Z軸に概略平行なループ面を有する矩形形状であって1巻のループアンテナ部205cと、
(d)X軸と概略平行となるように設けられた接続導体部261aと、Y軸と概略平行となるように設けられた接続導体部261bと、X軸と概略平行となるように設けられた接続導体部261cとをそれぞれ順次概略直角で折り曲げられて連結して含み、半分ループアンテナ部205aaと半分ループアンテナ部205baとを接続する接続導体261と、
(e)X軸と概略平行となるように設けられた接続導体部262aと、Y軸と概略平行となるように設けられた接続導体部262bと、X軸と概略平行となるように設けられた接続導体部262cとをそれぞれ順次概略直角で折り曲げられて連結して含み、半分ループアンテナ部205baとループアンテナ部205cとを接続する接続導体262と、
(f)X軸と概略平行となるように設けられた接続導体部263aと、Y軸と概略平行となるように設けられた接続導体部263bと、X軸と概略平行となるように設けられた接続導体部263cとをそれぞれ順次概略直角で折り曲げられて連結して含み、半分ループアンテナ部205abと半分ループアンテナ部205bbとを接続する接続導体263と、
(g)X軸と概略平行となるように設けられた接続導体部264aと、Y軸と概略平行となるように設けられた接続導体部264bと、X軸と概略平行となるように設けられた接続導体部264cとをそれぞれ順次概略直角で折り曲げられて連結して含み、半分ループアンテナ部205bbとループアンテナ部205cとを接続する接続導体264とから構成される。すなわち、微小ループアンテナ素子205Bは、互いのループの中心軸が平行で、かつ互いのループの巻き方向が逆方向の関係にある右巻き微小ループアンテナ205Ba及び左巻き微小ループアンテナ205Bbの先端同士を接続して構成してなる。
以上のように構成されたアンテナ装置において、微小ループアンテナ素子105Bと微小ループアンテナ素子205Bへの給電をスイッチ208により切り換えることにより、アンテナダイバーシチを行う。
図52は図51のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。図52において、微小ループアンテナ素子105Bへの給電時の電波の放射は、第14の実施形態と同様である。また、微小ループアンテナ素子205Bへの給電時の電波の放射は、微小ループアンテナ素子205Bが、XZ平面において微小ループアンテナ素子105Bに対して直交する向きに設けられているため、接続導体261−264からの電波の放射は水平偏波で行われ。また、半分ループアンテナ部205aa,205ab,205ba,205bb及びループアンテナ部205cからの電波の放射は垂直偏波で行われる。
第14の実施形態と同様に、微小ループアンテナ素子105Bの各部位の寸法を所定の値に設定して、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定した場合、微小ループアンテナ素子105Bへの給電時、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得る。同様に、微小ループアンテナ素子205Bの各部位の寸法を所定の値に設定して、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定した場合、微小ループアンテナ素子205Bへの給電時、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得る。また、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、微小ループアンテナ素子105Bへの給電時のアンテナ装置から放射される偏波成分と、微小ループアンテナ素子205Bへの給電時のアンテナ装置から放射される偏波成分は直交関係にある。
以上説明したように、本実施形態によれば、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得ることができ、さらに、微小ループアンテナ素子105Bと同様の構成を有する微小ループアンテナ素子205Bを、XZ平面において、微小ループアンテナ素子105Bに対して直交する向きに設けることにより、アンテナ装置と導体板106との距離Dが波長に対して十分短いときや4分の1波長の倍数のときなど、垂直水平両偏波のうち一方の偏波が大きく減衰するときでも、微小ループアンテナ素子105B,205Bの各偏波面が互いに直交関係にあるため、偏波ダイバーシチの効果を得ることができる。
第16の実施形態.
図53は本発明の第16の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105B,205Bを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第16の実施形態に係るアンテナ装置は、図51の第15の実施形態に係るアンテナ装置と比較して、以下の点が異なる。
(1)スイッチ208に代えて、90度位相差分配器272を備えたこと。
以上のように構成されたアンテナ装置は、微小ループアンテナ素子105B,205Bの動作を除いて、図47の第13の実施形態に係るアンテナ装置と同様の作用効果を有する。従って、本実施形態によれば、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、偏波ダイバーシチの効果を得ることができ、さらに無線送受信回路102からの制御信号によるスイッチ208の切り換え動作を不要にすることができる。
第17の実施形態.
図54は本発明の17の実施形態に係る、認証キー用アンテナ装置100と対象機器用アンテナ装置300とを備えたアンテナシステムの構成を示す斜視図及びブロック図である。図54において、アンテナシステムは、認証キー用アンテナ装置100と、対象機器用アンテナ装置300とを備えて構成される。認証キー用アンテナ装置100は、使用者が所持する無線通信機能を備えた、例えば第1の実施形態に係るアンテナ装置であって、他の実施形態に係るアンテナ装置であってもよい。対象機器用アンテナ装置300は、無線通信機能を有し、認証キー用アンテナ装置100と無線通信を行う。対象機器用アンテナ装置300は、無線送受信回路301と、水平偏波アンテナ303と、垂直偏波アンテナ304と、切換制御信号Ssに従ってアンテナ303,304を選択的に切り換えるスイッチ302とを備えて構成される。なお、導体板106が認証キー用アンテナ装置100に近接するときの動作は第1の実施形態と同様である。
図55(a)は図54のアンテナシステムにおいて、微小ループアンテナ素子105の垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、認証キー用アンテナ装置100と導体板106との間の距離Dに対する、認証キー用アンテナ装置100から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフである。図55(b)は図54のアンテナシステムにおいて、微小ループアンテナ素子105の垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値よりも大きいときの、認証キー用アンテナ装置100と導体板106との間の距離Dに対する、認証キー用アンテナ装置100から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフである。なお、認証キー用アンテナ装置100が放射する合成成分Comは、垂直偏波成分と水平偏波成分をベクトル合成したものである。
図55(a)から明らかなように、垂直偏波成分のアンテナ利得が水平偏波成分のアンテナ利得より高いとき、認証キー用アンテナ装置100と導体板106との距離が4分の1波長の奇数倍であるとき、合成成分のアンテナ利得は最大となる。また、図55(b)に示すように、垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値と実質的に同一であるとき、認証キー用アンテナ装置100と導体板106との距離にかかわらず、合成成分のアンテナ利得は実質的に一定となる。
微小ループアンテナ素子105は全長が送受信する電波の1波長以下であり微小ループアンテナとして動作するため、利得が非常に小さい。微小ループアンテナ素子105へ不平衡給電を行った場合、微小ループアンテナ素子105からの電波の放射に比べて、接地導体板101からの磁流電流による電波の放射が大きく、認証キー用アンテナ装置100と導体板106との距離Dと、導体板106と反対方向の認証キー用アンテナ装置100の利得の関係は図55(b)と同様になる。一方、微小ループアンテナ素子105へ平衡給電を行った場合、接地導体板101からの電波の放射が低下し、微小ループアンテナ素子105からの電波の放射と、接地版101からの電波の放射が実質的に同一になり、認証キー用アンテナ装置100と導体板106との距離Dと、導体板106と反対方向の認証キー用アンテナ装置100の利得の関係は図55(a)と同様になる。
認証キー用アンテナ装置100において、バラン1031を有する給電回路103を用いて微小ループアンテナ素子105へ平衡給電を行うことで、微小ループアンテナ素子105は垂直偏波成分と水平偏波成分の利得が実質的に同一になり、認証キー用アンテナ装置100と導体板106との距離Dにかかわらず合成成分のアンテナ利得を実質的に一定とすることができる。
図54の対象機器用アンテナ装置300において、無線送受信回路301は、送信無線信号を生成して出力し、入力された受信無線信号を復調する。無線送受信回路301は、送信回路のみ、又は受信回路のみであってもよい。また、無線送受信回路301はスイッチ302を制御するための切換制御信号Ssを出力する。スイッチ302は、切換制御信号Ssに基づいて、無線送受信回路301を水平偏波アンテナ303と垂直偏波アンテナ304のうちの一方に接続する。なお、スイッチ302の代わりに信号分配器又は信号合成器を用いてもよい。水平偏波アンテナ303は例えばスリーブアンテナやダイポールアンテナなどの線状アンテナであって、X軸に平行となるように設けられる。垂直偏波アンテナ303は例えばスリーブアンテナやダイポールアンテナなどの線状アンテナであって、Z軸に平行となるように設けられる。
以上のように構成された対象機器用アンテナ装置300において、例えば、水平偏波アンテナ203により受信された認証キー用アンテナ装置100からの電波の無線信号と、垂直偏波アンテナ204により受信された認証キー用アンテナ装置100からの電波の無線信号とを、それらのうちのより大きな受信電力を有する無線信号を受信するようにスイッチ302を用いて選択的に切り換えることにより、アンテナダイバーシチを行う。
認証キー用アンテナ装置100は導体板106との距離Dにより、放射する偏波成分が変化する。導体板106との距離Dが波長に対して十分短いときや4分の1波長の倍数であるときは、垂直偏波と水平偏波とのうちいずれか一方が強く放射される。すなわち、対象機器用アンテナ装置300が受信できる電波の偏波成分と認証キー用アンテナ装置100から放射される偏波成分が不一致の場合、認証キー用アンテナ装置100のアンテナの利得は劣化する。対象機器用アンテナ装置300に水平偏波アンテナ203及び垂直偏波アンテナ204を備えることで垂直水平両偏波の電波を受信することができ、認証キー用アンテナ装置100と導体板106との距離Dにかかわらず、実質的に一定の強度の電波を受信することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、バラン1031を有する給電回路103を用いて微小ループアンテナ素子105へ平衡給電を行うことで、微小ループアンテナ素子105からの水平偏波成分の放射と垂直偏波成分の放射とを実質的に同一にすることで、導体板106との距離Dによる認証キー用アンテナ装置100の利得変動を小さくできる。また、対象機器用アンテナ装置300に水平偏波アンテナ203及び垂直偏波アンテナ204を備えることで、導体板106との距離Dの変化により認証キー用アンテナ装置100の放射する偏波成分が変化しても、対象機器用アンテナ装置300は一定の強度で電波を受信することができる。対象機器用アンテナ装置300と認証キー用アンテナ装置100の偏波成分不一致による認証キー用アンテナ装置100のアンテナの利得劣化を防ぐことができる。また、対象機器用アンテナ装置300に水平偏波アンテナ203及び垂直偏波アンテナ204を備えることで偏波ダイバーシチの効果を得ることができ、フェージングの影響を回避できる。
以上説明したように、本実施形態によれば、導体板106との距離Dによる認証キーのアンテナの利得の変動が小さく、かつフェージングの影響を回避できる認証キー用アンテナ装置100と対象機器用アンテナ装置300を備えたアンテナシステムを提供することができる。従って、例えば、本発明に係るアンテナシステムを、例えば、距離によるセキュリティの確保が必要な機器により構成されるアンテナシステムに適用できる。
第18の実施形態.
図56は本発明の第18の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105Cを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第18の実施形態に係るアンテナ装置は、図48の第14の実施形態に係るアンテナ装置に比較して以下の点が異なる。
(1)微小ループアンテナ素子105Bに代えて、微小ループアンテナ素子105Cを備えたこと。
(2)平衡不平衡変換回路103P及びインピーダンス整合回路104に代えて、分配器103Q、振幅位相変換器103R及びインピーダンス整合回路104A,104Bを備えたこと。
以下、当該相違点について説明する。
図56において、微小ループアンテナ素子105Cは微小ループアンテナ素子105Bに比較して以下の点が異なる。
(a)ループアンテナ部105cは、左半分の半分ループアンテナ部105caと、右半分の半分ループアンテナ部105cbとに二分される。
(b)半分ループアンテナ部105caは1回巻きののち、Z軸に概略平行な接続導体165を介して給電点Q11に接続され、給電点Q11は給電導体153を介してインピーダンス整合回路104Aに接続される。なお、半分ループアンテナ部105aaの一端の給電点Q1は給電導体151を介してインピーダンス整合回路104Aに接続される。
(c)半分ループアンテナ部105cbは1回巻きののち、Z軸に概略平行な接続導体166を介して給電点Q12に接続され、給電点Q12は給電導体154を介してインピーダンス整合回路104Bに接続される。なお、半分ループアンテナ部105abの一端の給電点Q2は給電導体152を介してインピーダンス整合回路104Bに接続される。インピーダンス整合回路104A,104Bは図1のインピーダンス整合回路104のインピーダンス整合機能を有し、微小ループアンテナ素子105Cの給電点Q1,Q2,Q11,Q12に不平衡無線信号を印加する。
(d)半分ループアンテナ部105aa,105ba,105caにより左半分の右巻き微小ループアンテナ105Caを構成し、半分ループアンテナ部105ab,105bb,105cbにより右半分の左巻き微小ループアンテナ105Cbを構成する。すなわち、微小ループアンテナ素子105Cは右巻き微小ループアンテナ105Caと左巻き微小ループアンテナ105Cbとから構成される。
図56において、分配器103Qは無線送受信回路102からの送信無線信号を2分配して振幅位相変換器103R及びインピーダンス整合回路104Bに出力する。振幅位相変換器103Rは振幅可変機能及び移相器機能を有し、入力された無線信号の振幅と位相の少なくとも一方を所定の値に変換してインピーダンス整合回路104Aに出力する。
本実施形態において、右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻き微小ループアンテナ105Cbへそれぞれもし平衡給電するとき(変形例)、インピーダンス整合回路104A,104Bは、インピーダンス整合処理の他に不平衡/平衡変換処理を行う。右巻き微小ループアンテナ105Caは右回り方向に螺旋状に巻回してなり、そのループ面が接地導体板101の面に対して概略垂直になるように設けられ、その2つの給電点Q1,Q11がインピーダンス整合回路104Aに接続される。また、左巻き微小ループアンテナ105Cbは左回り方向に螺旋状に巻回してなり、そのループ面が接地導体板101の面に対して概略垂直になるように設けられ、その2つの給電点Q2,Q12がインピーダンス整合回路104Bに接続される。なお、右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻き微小ループアンテナ105Cbの各長さはそれぞれ、図1の微小ループアンテナ素子105と同様の微小長さを有する。
図57は、図56のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。アンテナ装置からの電波の放射は、右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻きループアンテナ105Cbから行われ、
(1)接続導体161−166においてZ軸方向に流れる電流による垂直偏波成分と、
(2)各半分ループアンテナ部105aa,105ab,105ba,105bb,105ca,105cbのX軸方向及びY軸方向でループ形状で流れる電流による水平偏波成分とからなる。
図57に示すように、アンテナ装置に導体板106がY軸方向より近接するとき、垂直偏波成分を放射するZ軸方向の部位は、導体板106に対して平行となるため、アンテナ装置と導体板106との距離Dと、導体板106と反対方向のアンテナ装置の垂直偏波成分のアンテナ利得との関係は、第1の実施形態の図6(b)と同様に、アンテナ装置と導体板106との距離Dが波長に対して十分短いとき、垂直偏波成分のアンテナ利得が大幅に低下して最小となる。アンテナ装置と導体板106との距離Dが4分の1波長の奇数倍であるとき、垂直偏波成分のアンテナ利得が最大となる。また、アンテナ装置と導体板106との距離Dが4分の1波長の偶数倍であるとき、垂直偏波成分のアンテナ利得が大幅に低下して最小となる。
また、水平偏波成分を放射するX軸方向及びY軸方向の部位は、形成するループ面が導体板106に対して垂直となるため、アンテナ装置と導体板106との距離Dと、導体板106と反対方向のアンテナ装置の水平偏波成分のアンテナ利得との関係は、第1の実施形態の図5(b)と同様に、アンテナ装置と導体板106との距離Dが波長に対して十分短いとき、水平偏波成分のアンテナ利得が最大となる。また、アンテナ装置と導体板106との距離Dが4分の1波長の奇数倍であるとき、水平偏波成分のアンテナ利得が大幅に低下して最小となる。さらに、アンテナ装置と導体板106との距離Dが4分の1波長の偶数倍であるとき、水平偏波成分のアンテナ利得が最大となる。従って、アンテナ装置が導体板106に近接するとき、水平偏波成分のアンテナ利得が低下するとき、垂直偏波成分のアンテナ利得が増加し、垂直偏波成分のアンテナ利得が低下するとき、水平偏波成分のアンテナ利得が増加するように動作する。
図58は図56の右巻き微小ループアンテナ105Caと、左巻き微小ループアンテナ105Cbとに対して同相で無線信号を不平衡給電したときの微小ループアンテナ素子105Cの電流方向を示す斜視図である。図58から明らかなように、同相給電のとき、水平偏波を放射する部位である右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻き微小ループアンテナ105Cbが形成するループに流れる電流は、回転方向が互いに逆であるため、水平偏波成分は低下する。また、垂直偏波を放射する部位である右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻きループアンテナ105CbのZ軸方向の部位に流れる電流は、互いに同じ方向であるため、垂直偏波成分は高くなる。
図59は図56の右巻き微小ループアンテナ105Caと、左巻き微小ループアンテナ105Cbとに対して逆相で無線信号を不平衡給電したときの微小ループアンテナ素子105Cの電流方向を示す斜視図である。図59から明らかなように、逆相給電のとき、接続導体165,166は接地導体板101に短絡して給電する。
図60は図56の微小ループアンテナ素子105Cの右巻き微小ループアンテナ105Caと、左巻き微小ループアンテナ105Cbとに対して印加する2つの無線信号の位相差に対する水平偏波成分及び垂直偏波成分のXY平面の平均アンテナ利得を示すグラフである。このグラフは、周波数426MHzにおける計算値である。図60から明らかなように、右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻きループアンテナ105Cbのそれぞれに給電する2つの無線信号の位相差Pdと振幅差Adのうちの少なくとも一方を変化させることにより、垂直偏波成分及び水平偏波成分のアンテナ利得を変化させることができ、また、位相差Pdを110度付近に設定することにより、互いの偏波成分を実質的に同一に調整することができることがわかる。
以上説明したように、本実施形態によれば、右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻きループアンテナ105Cbのそれぞれに給電する2つの無線信号の位相差Pd及び振幅差Adを所定の値に設定することにより、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一となるように設定することができ、これにより、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得るアンテナ装置を実現できる。
第19の実施形態.
図61は本発明の第19の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105C,205Cを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第19の実施形態に係るアンテナ装置は、図51の第15の実施形態に係るアンテナ装置に比較して以下の点が異なる。
(1)微小ループアンテナ素子105Bに代えて、微小ループアンテナ素子105Cを備えたこと。
(2)微小ループアンテナ素子205Bに代えて、微小ループアンテナ素子105Cと同様の構成を有し、微小ループアンテナ素子105Cとそのループ軸が直交するように設けられた微小ループアンテナ素子205Cを備えたこと。
(3)平衡不平衡変換回路103P及びインピーダンス整合回路104に代えて、分配器103Q、振幅位相変換器103R及びインピーダンス整合回路104A,104Bを備えたこと。
(4)平衡不平衡変換回路203P及びインピーダンス整合回路204に代えて、分配器103Q、振幅位相変換器103R及びインピーダンス整合回路104A,104Bとそれぞれお同様の構成を有する分配器203Q、振幅位相変換器203R及びインピーダンス整合回路204A,204Bを備えたこと。
(5)スイッチ208に代えて、図36の偏波切換回路208Aを備えたこと。
以下、当該相違点について説明する。
図61において、微小ループアンテナ素子205Cは、半分ループアンテナ部205aa,205ab,205ba,205bb,205ca,205cbと、接続導体261−266とを備えて構成され、給電点Q3,Q13,Q4,Q14を有する。給電点Q3,Q13はそれぞれ給電導体251,253を介してインピーダンス整合回路204Aに接続され、給電点Q4,Q14はそれぞれ給電導体252,254を介してインピーダンス整合回路204Bに接続される。さらに、分配器203Qは無線送受信回路102から偏波切換回路208Aを介して入力される送信無線信号を2分配して振幅位相変換器203R及びインピーダンス整合回路204Bに出力する。振幅位相変換器203Rは入力された無線信号の振幅と位相の少なくとも一方を所定の値に変換してインピーダンス整合回路204Aに出力する。
図62(a)は図61のアンテナ装置において、微小ループアンテナ素子105Cの右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻き微小ループアンテナ105Cbに無線信号を給電したときに、微小ループアンテナ素子105Cの垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、アンテナ装置と導体板106との間の距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフであり、図62(b)は図61のアンテナ装置において、微小ループアンテナ素子205Cの右巻き微小ループアンテナ205Ca及び左巻き微小ループアンテナ205Cbに無線信号を給電したときに、微小ループアンテナ素子205Cの垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、アンテナ装置と導体板106との間の距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフである。
第18の実施形態と同様に、右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻きループアンテナ105Cbのそれぞれに給電する2つの無線信号の位相差及び振幅差を所定の値に設定することにより、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定した場合、図62(a)に示すように、右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻きループアンテナ105Cbへの給電時、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得る。同様に、右巻き微小ループアンテナ205Ca及び左巻きループアンテナ205Cbのそれぞれに給電する2つの無線信号の位相差及び振幅差を所定の値に設定することにより、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定した場合、図62(b)に示すように、右巻き微小ループアンテナ205Ca及び左巻きループアンテナ205Cbへの給電時、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得ることができる。また、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻きループアンテナ105Cbへの給電時のアンテナ装置から放射される偏波成分と、右巻き微小ループアンテナ205Ca及び左巻きループアンテナ205Cbへの給電時のアンテナ装置から放射される偏波成分は直交関係にある。
接地導体板101の形状が実質的に正方形であり、右巻き微小ループアンテナ105Caと左巻きループアンテナ105Cb、及び右巻き微小ループアンテナ205Ca及び左巻きループアンテナ205Cbの寸法が略同じであるため、右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻きループアンテナ105Cbへの給電時と、右巻き微小ループアンテナ205Ca及び左巻きループアンテナ205Cbへの給電時でアンテナの利得は変わることはなく、偏波のみが90度変化するので、偏波切換回路208Aによる偏波切り換えによる利得変動は生じない。
以上説明したように、本実施形態によれば、右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻きループアンテナ105Cbと同様の構成を有する右巻き微小ループアンテナ205Ca及び左巻きループアンテナ205Cbを、XZ平面において、右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻きループアンテナ105Cbに対して直交する向きに設けることにより、アンテナ装置と導体板106との距離Dが波長に対して十分短いときや4分の1波長の倍数のときなど、垂直水平両偏波のうち一方の偏波が大きく減衰する場合においても、右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻きループアンテナ105Cb、並びに右巻き微小ループアンテナ205Ca及び左巻きループアンテナ205Cbへの給電を偏波切換回路208Aにより切り換えて偏波面を90度変化させることで、通信姿勢の変動によって生じる偏波面不一致による利得変動を抑えることができる。
実施例1において、ループ間隔に対する放射変化についてのシミュレーションとその結果について以下に説明する。
図63は本実施形態の実施例1において、ループ間隔に対する放射変化についてのシミュレーションとその結果を得るための微小ループアンテナ素子105の構成を示す斜視図である。図63において、105fは微小ループアンテナ素子105のいわゆるループ戻り部である接続導体であり、Weは微小ループアンテナ素子105の素子幅であり、Glはループ間隔である。
図64(a)は実施例1の微小ループアンテナ素子において素子幅We及び偏波を変化したときのループ間隔に対する平均アンテナ利得を示すグラフであり、図64(b)は実施例1の微小ループアンテナ素子において偏波を変化したときのループ戻り部の長さに対する平均アンテナ利得を示すグラフであり、図64(c)は実施例1の微小ループアンテナ素子において偏波を変化したときのループ戻り部の長さに対する平均アンテナ利得を示すグラフである。また、図65(a)は実施例1の微小ループアンテナ素子において偏波を変化したときのループ面積とループ間隔の比に対する平均アンテナ利得を示すグラフであり、図65(b)は実施例1の微小ループアンテナ素子において偏波を変化したときのループ面積とループ間隔の比に対する平均アンテナ利得を示すグラフである。さらに、図66(a)は実施例1の微小ループアンテナ素子において偏波を変化したときのループ面積とループ戻り部の長さの比に対する平均アンテナ利得を示すグラフであり、図66(b)は実施例1の微小ループアンテナ素子において偏波を変化したときのループ面積とループ戻り部の長さの比に対する平均アンテナ利得を示すグラフである。
図64(a)から明らかなように、ループ面積を固定とすると、ループ間隔の増加に伴い、水平偏波成分Hは一定で、垂直偏波成分Vのみが単調に増加します。また、図65(a)及び図65(b)から明らかなように、ループ面積とループ間隔の比が6から7程度で水平偏波成分Hと垂直偏波成分Vが実質的に同一になり最も好ましい。例えば、機構的な制約でループ間隔がとれず、垂直偏波成分Vが水平偏波成分Hに比べて小さい場合、平衡給電の位相差及び振幅差を変化させることで、垂直偏波成分Vを増加させることができる。さらに、図64(a)から明らかなように、ループ間隔が増加すると水平偏波成分Hは一定で、垂直偏波成分Vは単調に増加の様子は素子幅を変えても変わらない。また、素子幅による放射効率の増加が微小ループアンテナと線状アンテナで異なるので、水平偏波成分Hと垂直偏波成分Vの比を単純にループ面積とループ戻り部の比で表せないということがわかる。
実施例2において、螺旋巻き微小ループアンテナ素子105の巻数による水平偏波成分及び垂直偏波成分の調整方法について以下に説明する。
図67(a)は本実施形態の実施例2に係る微小ループアンテナ素子105(螺旋コイル形状の微小ループアンテナ素子)の巻数に対する、水平偏波に関するXY平面の平均アンテナ利得を示すグラフであり、図67(b)は本実施形態の実施例2に係る微小ループアンテナ素子105(螺旋コイル形状の微小ループアンテナ素子)の巻数に対する、垂直偏波に関するXY平面の平均アンテナ利得を示すグラフである。図67(a)及び図67(b)から明らかなように、微小ループアンテナ素子105の巻数を変化させることにより、水平偏波成分と垂直偏波成分のバランスを調整することができる。
実施例3において、第1乃至第3の実施形態に係る微小ループアンテナ素子105において、振幅差Ad及び位相差Pdを両方変化させた場合について以下に説明する。
図68は第1乃至第3の実施形態の実施例3に係る微小ループアンテナ素子において、振幅差Adに対する平均アンテナ利得を示すグラフである。また、図69は第1乃至第3の実施形態の実施例3に係る微小ループアンテナ素子において、位相差Pdに対する平均アンテナ利得を示すグラフである。さらに、図70は第1乃至第3の実施形態の実施例3に係る微小ループアンテナ素子において、振幅差Ad及び偏波を変化したときの位相差Pdに対する平均アンテナ利得を示すグラフである。図68乃至図70から明らかなように、振幅差Ad及び位相差Pdの少なくとも一方を変化させることにより各偏波成分の平均アンテナ利得を変化させることができる。
実施例4においては、インピーダンス整合回路104の各種インピーダンス整合方法について以下に説明する。微小ループアンテナ素子105は放射抵抗が小さいため、損失の非常に小さいインピーダンス整合回路104が必要である。インダクタはキャパシタに比べて損失が大きいため、インピーダンス整合回路104に使用すると、放射効率が劣化し、アンテナ利得が大幅に低下する。従って、以下に示すインピーダンス整合方法を用いることが好ましい。
図71(a)は本実施形態の実施例4に係る、第1のインピーダンス整合方法を用いたインピーダンス整合回路104−1の構成を示す回路図であり、図71(b)は図71(a)の第1のインピーダンス整合方法を示すスミスチャートである。図71(a)において、インピーダンス整合回路104−1は並列キャパシタCpを備えて構成される。図71(b)に示すように、微小ループアンテナ素子105の入力インピーダンスZaを、並列キャパシタCpによりインピーダンスの虚部を0にして並列共振させてインピーダンスZb1とした後(601)、バラン1031のインピーダンス変換により入力インピーダンスZcにインピーダンス整合させる(602)ことができる。
図72(a)は本実施形態の実施例4に係る、第2のインピーダンス整合方法を用いたインピーダンス整合回路104−2の構成を示す回路図であり、図72(b)は図72(a)の第2のインピーダンス整合方法を示すスミスチャートである。図72(a)において、インピーダンス整合回路104−2は2個の直列キャパシタCs1,Cs2を備えて構成される。図72(b)に示すように、微小ループアンテナ素子105の入力インピーダンスZaを、2個の直列キャパシタCs1,Cs2によりインピーダンスの虚部を0にして直列共振させてインピーダンスZb2とした後(611)、バラン1031のインピーダンス変換により入力インピーダンスZcにインピーダンス整合させる(612)ことができる。
図73(a)は本実施形態の実施例4に係る、第3のインピーダンス整合方法を用いたインピーダンス整合回路104−3の構成を示す回路図であり、図73(b)は図73(a)の第3のインピーダンス整合方法を示すスミスチャートである。図73(a)において、インピーダンス整合回路104−3は並列キャパシタCp11及び2個の直列キャパシタCs11,Cs12を備えて構成される。図73(b)に示すように、微小ループアンテナ素子105の入力インピーダンスZaを、直列キャパシタCs11,Cs12によりインピーダンスZb3にインピーダンス変換して後(631)、並列キャパシタCp11によりインピーダンスZcにインピーダンス変換させる(632)ことができる。なお、バラン1031は省略してもよい。
図74(a)は本実施形態の実施例4に係る、第4のインピーダンス整合方法を用いたインピーダンス整合回路104−4の構成を示す回路図であり、図74(b)は図74(a)の第4のインピーダンス整合方法を示すスミスチャートである。図74(a)において、インピーダンス整合回路104−4は並列キャパシタCp21及び2個の直列キャパシタCs21,Cs22を備えて構成される。図74(b)に示すように、微小ループアンテナ素子105の入力インピーダンスZaを、並列キャパシタCp21によりインピーダンスZb4にインピーダンス変換させた後(631)、直列キャパシタCs21,Cs22によりインピーダンスZcにインピーダンス変換させる(632)ことができる。なお、バラン1031は省略してもよい。
図75は本実施形態の実施例4に係る、図71乃至図74のバラン1031の構成を示す回路図である。図75において、Zoutを平衡側インピーダンスとし、Zinを不平衡側インピーダンスとする。ここで、バランの設定周波数は次式で表される。
以上の実施例4において、以下の変形例を用いることができる。すなわち、図3及び図4に記載の給電点Q1,Q2において位相差を発生させる方法として以下の方法を用いることができる。
(A)図72の直列キャパシタCs1,Cs2の容量値をCs1=Cs2ではなくCs1≠Cs2(例えばCs1>Cs2)とすることで位相差を持たせることができる。
(B)図73の直列キャパシタCs11、Cs12の容量値をCs11=Cs12ではなくCs11≠Cs12(例えばCs11>Cs12)とすることで位相差を持たせることができる。
実施例5において、第17の実施形態に係るアンテナシステムにおけるアンテナの最適な高さについて以下に説明する。
図76(a)は第17の実施形態の実施例5に係る、認証キー装置100と、微小ループアンテナ素子105を有する対象機器用アンテナ装置300を備えたアンテナシステムにおいて両装置100,300の各アンテナ高を実質的に同一に設定したときの両装置100,300間の距離Dに対する受信電力を示す電波伝搬特性図であり、図76(b)は第17の実施形態の実施例5に係る、認証キー装置100と、半波長ダイポールアンテナを有する対象機器用アンテナ装置300を備えたアンテナシステムにおいて両装置100,300の各アンテナ高を実質的に同一に設定したときの両装置100,300間の距離Dに対する受信電力を示す電波伝搬特性図である。これらの特性は、パーソナルコンピュータ持ち出し管理システム、学童見守りシステム、キーレスエントリーシステムなどで使用される400MHzのアクティブタグシステムで得られたものである。
図76(a)及び図76(b)から明らかなように、アンテナの高さは、送受ともに同じ高さが最も指向性の影響を受けにくく、好ましい。また、地面方向にヌル点がある方うが反射波の影響を受けにくい。さらに、垂直偏波の方が反射波の影響を受けにくい。また、線状アンテナを使用する場合、垂直偏波アンテナで送受のアンテナの高さが実質的に同一のときが距離検知に適している。これは互いに指向性の影響を受けず、反射波はアンテナのヌル点効果と垂直偏波の反射係数が小さいことにより反射波の影響が最も小さいためである。また、微小ループアンテナを使用する場合、送受のアンテナの高さが実質的に同一のときが距離検知に適しており、偏波面による差はあまりない。
実施形態のまとめ.
以上の実施形態は以下の3つのグループに分類できる。
<グループ1>1つの微小ループアンテナ素子:実施形態の番号は1,7−9,11,14,18;
<グループ2>互いに直交する2つの微小ループアンテナ素子:実施形態の番号は2−6,10,12−13,15−17,19;
<グループ3>アンテナシステム:実施形態の番号は17。
上記グループ1において、各実施形態において、同一のグループの他の実施形態における構成要素を組み合わせ構成してもよい。また、上記グループ2において、グループ1の各微小ループアンテナ素子を用いることができ、同一グループの他の実施形態における構成要素を組み合わせ構成してもよい。さらに、上記グループ3において、グループ1の各微小ループアンテナ素子を用いることができる。
以上詳述したように、本発明に係るアンテナ装置によれば、アンテナ装置と導体板との距離にかかわらず、実質的に一定の利得を得ることができ、かつ通信品質の低下を防止できるアンテナ装置を実現できる。また、例えば、認証通信時に、上記微小ループアンテナ素子から放射する偏波成分のアンテナ利得低下を抑えつつ、上記接続導体から放射する偏波成分のアンテナ利得を高くすることで、従来技術に比較して高い通信品質を得るアンテナ装置を実現できる。さらに、垂直水平両偏波のうち一方の偏波が大きく減衰するときでも、偏波ダイバーシチの効果を得ることができる。従って、本発明のアンテナ装置を、例えば、距離によるセキュリティの確保が必要な機器に搭載されるアンテナ装置として適用できる。
また、本発明に係るアンテナシステムによれば、導体板との距離による認証キーのアンテナの利得の変動が小さく、かつフェージングの影響を回避できる認証キー用アンテナ装置と対象機器用アンテナ装置を備えたアンテナシステムを実現できる。
本発明は、微小ループアンテナ素子を用いたアンテナ装置及び上記アンテナ装置を用いたアンテナシステムに関する。
近年、情報セキュリティの確保のため、無線通信システムによる個人認証技術の開発が進められている。具体的には、使用者が無線通信装置を所持し、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、車両などの対象物にも無線通信装置が備えられ、当該無線通信システムにより常時認証を行う。対象物が使用者の周囲一定範囲内に入ったとき、対象物の制御を可能にする。一方、対象物が使用者の周囲一定範囲から外れたときは、対象物の制御を不能にする。使用者の周囲一定範囲に対象物があるかどうか判断するために、無線による認証通信時に対象物と使用者の距離を無線通信装置により測定する必要がある。
また、最も簡易な距離測定の方法として受信電界強度による測定がある。距離測定のための特別な回路を必要とせず、無線認証のための無線通信装置を利用して距離が測定できる。しかしながら、使用者が無線通信装置又は認証キー装置を所持するため、搭載されているアンテナの利得が人体など導体の影響を強く受ける。また、マルチパス環境で使用するとフェージングの影響を受ける。
以上の理由により、周囲の環境により受信電界強度が急激に低下する現象が起こる。これにより、距離の増大に伴い受信電界強度が低下するという距離と受信電界強度の関係が崩れ、距離測定の精度が大きく劣化する。また認証通信における所要アンテナの利得を下回り、通信品質の低下を引き起こす。従来は、導体によるアンテナへの影響を回避する方法として、導体がアンテナに接近しても利得が急激に低下することを防ぐため、導体に対してループ面が垂直である構造をした微小ループアンテナを使用する方法(例えば、特許文献1の図1、及び特許文献2の図2参照。)が提案されている。また、フェージングの影響を防ぐ方法としては、異なる偏波成分を放射する方法(例えば、特許文献1の図4参照。)が提案されている。
特開2000−244219号公報。
特開2005−109609号公報。
国際公開WO2004/070879号公報。
電子情報通信学会編,"アンテナ工学ハンドブック",pp.59−63、オーム社,第1版,1980年10月30日発行。
しかしながら、特許文献1及び2の方法ではアンテナの利得が、導体がアンテナに接近した場合と離れた場合で変化するため、アンテナから導体までの距離にかかわらず一定のアンテナの利得を得ることができないという問題点があった。特に、特許文献1の方法ではフェージングの影響は回避できても、導体との距離によるアンテナの利得の変動を回避することはできないという問題点があった。
本発明の第1の目的は以上の問題点を解決し、アンテナ装置から導体までの距離にかかわらず実質的に一定の利得を得ることができ、かつ通信品質の低下を防止できる微小ループアンテナ素子を用いたアンテナ装置を提供することにある。
本発明の第2の目的は以上の問題点を解決し、アンテナ装置と導体との間の距離が変化したときに認証キー装置のアンテナの利得変動が小さく、かつフェージングの影響を回避できる、認証キー用アンテナ装置と対象機器用アンテナ装置を備えたアンテナシステムを提供することにある。
第1の発明に係るアンテナ装置は、
所定の微小長さ及び2個の給電点を有する微小ループアンテナ素子と、
所定の振幅差及び所定の位相差を有する2つの平衡無線信号をそれぞれ上記微小ループアンテナ素子の2つの給電点に対して給電する平衡信号給電手段とを備えたアンテナ装置であって、
上記微小ループアンテナ素子は、
所定のループ面を有し、上記ループ面に平行な第1の偏波成分を放射する複数のループアンテナ部と、
上記ループ面と直交する方向に設けられ、上記複数のループアンテナ部を接続し、上記第1の偏波成分と直交する第2の偏波成分を放射する少なくとも1本の接続導体とを備え、
上記アンテナ装置を導体板に近接した場合において、上記アンテナ装置と上記導体板との距離を変化したときの、上記第1の偏波成分のアンテナ利得の最大値と上記第2の偏波成分のアンテナ利得の最大値とを実質的に同一にすることにより、上記距離にかかわらず、上記第1の偏波成分と上記第2の偏波成分との合成成分を実質的に一定とする設定手段を備えたことを特徴とする。
上記アンテナ装置において、上記設定手段は、上記距離を変化したときの、上記第1の偏波成分のアンテナ利得の最大値と上記第2の偏波成分のアンテナ利得の最大値とを実質的に同一にするように、上記振幅差と上記位相差とのうちの少なくとも一方を設定したことを特徴とする。
また、上記アンテナ装置において、上記設定手段は、上記距離を変化したときの、上記第1の偏波成分のアンテナ利得の最大値と上記第2の偏波成分のアンテナ利得の最大値とを実質的に同一にするように、上記振幅差と上記位相差とのうちの少なくとも一方を制御する制御手段を備えたことを特徴とする。
さらに、上記アンテナ装置において、上記設定手段は、上記距離を変化したときの、上記第1の偏波成分のアンテナ利得の最大値と上記第2の偏波成分のアンテナ利得の最大値とを実質的に同一にするように、上記微小ループアンテナ素子の寸法と、上記微小ループアンテナ素子の巻数と、上記各ループアンテナ部の間隔とのうちの少なくとも一方を設定したことを特徴とする。
また、上記アンテナ装置において、上記微小ループアンテナ素子は、上記ループ面に平行に設けられた第1と第2と第3のループアンテナ部を含み、
上記第1のループアンテナ部は、それぞれ半回巻である第1と第2の半分ループアンテナ部を含み、
上記第2のループアンテナ部は、それぞれ半回巻である第3と第4の半分ループアンテナ部を含み、
上記第3のループアンテナ部は1回巻であり、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第1の半分ループアンテナ部と上記第4の半分ループアンテナ部とを接続する第1の接続導体部と、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第2の半分ループアンテナ部と上記第3の半分ループアンテナ部とを接続する第2の接続導体部と、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第3のループアンテナ部と上記第4の半分ループアンテナ部とを接続する第3の接続導体部と、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第3のループアンテナ部と上記第3の半分ループアンテナ部とを接続する第4の接続導体部とを含み、
上記第1の半分ループアンテナ部の一端と、上記第2の半分ループアンテナ部の一端とを2つの給電点としたことを特徴とする。
さらに、上記アンテナ装置において、上記微小ループアンテナ素子は、上記ループ面に平行に設けられた第1と第2と第3のループアンテナ部を含み、
上記第1のループアンテナ部は、それぞれ半回巻である第1と第2の半分ループアンテナ部を含み、
上記第2のループアンテナ部は、それぞれ半回巻である第3と第4の半分ループアンテナ部を含み、
上記第3のループアンテナ部は1回巻であり、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第1の半分ループアンテナ部と上記第3の半分ループアンテナ部とを接続する第1の接続導体部と、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第3の半分ループアンテナ部と上記第3のループアンテナ部とを接続する第2の接続導体部と、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第2の半分ループアンテナ部と上記第4の半分ループアンテナ部とを接続する第3の接続導体部と、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第4の半分ループアンテナ部と上記第3のループアンテナ部とを接続する第4の接続導体部とを含み、
上記第1の半分ループアンテナ部の一端と、上記第2の半分ループアンテナ部の一端とを2つの給電点としたことを特徴とする。
またさらに、上記アンテナ装置において、上記微小ループアンテナ素子は、上記ループ面に平行に設けられた第1と第2と第3のループアンテナ部を含み、
上記第1のループアンテナ部は、それぞれ半回巻である第1と第2の半分ループアンテナ部を含み、
上記第2のループアンテナ部は、それぞれ半回巻である第3と第4の半分ループアンテナ部を含み、
上記第3のループアンテナ部は、それぞれ半回巻である第5と第6の半分ループアンテナ部を含み、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第1の半分ループアンテナ部と上記第3の半分ループアンテナ部とを接続する第1の接続導体部と、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第3の半分ループアンテナ部と上記第5の半分ループアンテナ部とを接続する第2の接続導体部と、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第2の半分ループアンテナ部と上記第4の半分ループアンテナ部とを接続する第3の接続導体部と、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第4の半分ループアンテナ部と上記第6の半分ループアンテナ部とを接続する第4の接続導体部と、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第5の半分ループアンテナ部に接続された第5の接続導体部と、
上記ループ面に直交する方向に設けられ、上記第6の半分ループアンテナ部に接続された第6の接続導体部とを含み、
上記第1、第3及び第5の半分ループアンテナ部と上記第5の接続導体部とにより第1のループアンテナを構成し、
上記第2、第4及び第6の半分ループアンテナ部と上記第6の接続導体部とにより第2のループアンテナを構成し、
上記第1の半分ループアンテナ部の一端と、上記第5の接続導体部の一端とを上記第1のループアンテナの2つの給電点とし、
上記第2の半分ループアンテナ部の一端と、上記第6の接続導体部の一端とを上記第2のループアンテナの2つの給電点とし、
上記平衡信号給電手段に代えて不平衡信号給電手段を備え、
上記不平衡信号給電手段は、所定の振幅差及び所定の位相差を有する2つの不平衡無線信号をそれぞれ上記第1と第2のループアンテナに対して給電することを特徴とする。
第2の発明に係るアンテナ装置は、
上記微小ループアンテナ素子と、
上記微小ループアンテナ素子と同様の構成を有する別の微小ループアンテナ素子とを互いにループ面が直交するように設けたことを特徴とする。
上記アンテナ装置において、上記2つの平衡無線信号を、上記微小ループアンテナ素子と、上記別の微小ループアンテナ素子とのいずれか1つの選択的に給電するスイッチ手段をさらに備えたことを特徴とする。
また、上記アンテナ装置において、上記平衡信号給電手段は、不平衡無線信号を2つの不平衡無線信号に90度の位相差で分配した後、分配後の一方の不平衡無線信号を2つの平衡無線信号に変換して上記微小ループアンテナ素子に給電する一方、分配後の他方の不平衡無線信号を上記別の微小ループアンテナ素子に給電することにより、円偏波の無線信号を放射することを特徴とする。
さらに、上記アンテナ装置において、上記平衡信号給電手段は、不平衡無線信号を、同相又は逆相の2つの不平衡無線信号に変換し、変換後の一方の不平衡無線信号を2つの平衡無線信号に変換して上記微小ループアンテナ素子に給電する一方、変換後の他方の不平衡無線信号を別の2つの平衡無線信号に変換して上記別の微小ループアンテナ素子に給電することを特徴とする。
またさらに、上記アンテナ装置において、上記平衡信号給電手段は、不平衡無線信号を、+90度の位相差又は−90度の位相差を有する2つの不平衡無線信号に変換し、変換後の一方の不平衡無線信号を2つの平衡無線信号に変換して上記微小ループアンテナ素子に給電する一方、変換後の他方の不平衡無線信号を別の2つの平衡無線信号に変換して上記別の微小ループアンテナ素子に給電することを特徴とする。
第3の発明に係るアンテナシステムは、
上記アンテナ装置を備えた認証キー用アンテナ装置と、
上記認証キー用アンテナ装置と無線通信を行う対象機器用アンテナ装置とを備えたアンテナシステムであって、
上記対象機器用アンテナ装置は、
互いに直交する偏波を有する2つのアンテナ素子と、
上記2つのアンテナ素子のうちの1つを選択して無線送受信回路に接続するスイッチ手段とを備えたことを特徴とする。
従って、本発明に係るアンテナ装置によれば、アンテナ装置と導体板との距離にかかわらず、実質的に一定の利得を得ることができ、かつ通信品質の低下を防止できるアンテナ装置を実現できる。また、例えば、認証通信時に、上記微小ループアンテナ素子から放射する偏波成分のアンテナ利得低下を抑えつつ、上記接続導体から放射する偏波成分のアンテナ利得を高くすることで、従来技術に比較して高い通信品質を得るアンテナ装置を実現できる。さらに、垂直水平両偏波のうち一方の偏波が大きく減衰するときでも、偏波ダイバーシチの効果を得ることができる。
また、本発明に係るアンテナシステムによれば、導体板との距離による認証キーのアンテナの利得の変動が小さく、かつフェージングの影響を回避できる認証キー用アンテナ装置と対象機器用アンテナ装置を備えたアンテナシステムを実現できる。
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、同様の構成要素については同一の符号を付している。
第1の実施形態.
図1は本発明の第1の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。図1及びそれ以降の各図において、各方向をXYZの3次元座標系で表す。ここで、接地導体板101の長手方向がZ軸方向と平行となり、その幅方向がX軸方向と平行となり、接地導体板101の面に対して垂直な方向がY軸方向となる。また、図1及びそれ以降の各図において、水平偏波成分の方向又はアンテナ利得をHで示し、垂直偏波成分の方向又はアンテナ利得をVで示す。さらに、Stは送信無線信号と受信無線信号とを含む不平衡送受信信号を表す。
図1において、無線送受信回路102は、接地導体板101上に設けられ、不平衡送信無線信号を発生した後、給電回路103及びインピーダンス整合回路104を介して微小ループアンテナ素子105に給電することにより、当該送信無線信号を送信する一方、微小ループアンテナ素子105により受信された受信無線信号をインピーダンス整合回路104及び給電回路103を介して不平衡受信無線信号として入力した後、周波数変換処理や復調処理などの所定の受信処理を行う。なお、無線送受信回路102は、送信回路と受信回路との少なくとも一方の回路を有してもよい。また、接地導体板101は誘電体基板又は半導体基板の裏面に形成された接地導体であってもよい。
給電回路103は接地導体板101に設けられ、無線送受信回路102から入力される不平衡無線信号を、位相差を有する2つの平衡無線信号に変換してインピーダンス整合回路104に出力する一方、その逆の信号処理を行う。また、インピーダンス整合回路104は接地導体板101上であって、微小ループアンテナ素子105と給電回路103との間に挿入されて設けられ、無線信号を微小ループアンテナ素子105に電力効率よく給電するために、微小ループアンテナ素子105と給電回路103との間のインピーダンスの整合を行う。
微小ループアンテナ素子105は、形成するループ面が接地導体板101の面に対して概略垂直になり(すなわちX軸方向と平行となり)かつループ軸がZ軸と概略平行となるように設けられ、その両端は給電点Q1,Q2となり、これら給電点Q1,Q2はそれぞれ給電導体151,152を介してインピーダンス整合回路104に接続される。ここで、互いに平行な1対の給電導体151,152は平衡給電ケーブルを構成している。また、微小ループアンテナ素子105からの無線信号の放射が接地導体板101により遮蔽されることを防ぐため、微小ループアンテナ素子105は、接地導体板101から突出して設けられている。ここで、微小ループアンテナ素子105は、
(a)それぞれ矩形形状であって各1巻のループアンテナ部105a,105b,105cと、
(b)Z軸と概略平行となるように設けられ、ループアンテナ部105aとループアンテナ部105bとを接続する接続導体105dと、
(c)Z軸と概略平行となるように設けられ、ループアンテナ部105bとループアンテナ部105cとを接続する接続導体105eと、
(d)Z軸と概略平行となるように設けられ、ループアンテナ部105cと給電点Q2とを接続する接続導体105fとから構成される。
微小ループアンテナ素子105は、例えば巻数3であって、例えば略矩形形状を有し、その全長長さは、無線送受信回路102で使用する無線信号の周波数の波長λに対して、0.01λ以上であって、0.5λ以下、好ましくは0.2λ以下、より好ましくは0.1λ以下に設定され、これにより、いわゆる微小ループアンテナ素子を構成する。すなわち、ループアンテナ素子を小さくし、その全長を0.1波長以下にすると、ループ導線に流れる電流分布はほとんど一定値となる。この状態のループアンテナ素子を一般に微小ループアンテナ素子と呼んでいる。この微小ループアンテナ素子は、微小ダイポールアンテナよりも雑音電界に強く、またその実効高を簡単に計算できるために、磁界測定用のアンテナとして利用されている(例えば、非特許文献1参照。)。
また、微小ループアンテナ105の外径寸法(矩形の一辺の長さ又は円形の直径)は、0.01λ以上であって、0.2λ以下、好ましくは0.1λ以下、より好ましくは0.03λ以下に設定される。さらに、微小ループアンテナ素子105は矩形形状を有しているが、円形状、楕円形状又は多角形などの他の形状であってもよい。また、そのループの巻数は3に限定されず、任意の巻数であってもよいし、そのループは螺旋コイル形状であってもよいし、渦巻きコイル形状であってもよい。インピーダンス整合回路104と給電点Q1,Q2との間の給電導体151,152はより短い方が好ましく、無くてもよい。また、インピーダンス整合回路104はインピーダンス整合の必要がなければ設けなくてもよい。
図1の微小ループアンテナ素子105は図2(a)又は図2(b)の微小ループアンテナ素子105A,105Bで構成してもよい。図2(a)は第1の実施形態の第1の変形例の微小ループアンテナ素子105Aの構成を示す斜視図であり、図2(b)は第1の実施形態の第2の変形例の微小ループアンテナ素子105Bの構成を示す斜視図である。
図2(a)の微小ループアンテナ素子105Aは、
(a)それぞれ略矩形形状の3辺で構成され、X軸に概略平行な実質的に同一面に形成された、各半分巻の半分ループアンテナ部105aa,105abと、
(b)それぞれ略矩形形状の3辺で構成され、X軸に概略平行な実質的に同一面に形成された、各半分巻の半分ループアンテナ部105ba,105bbと、
(c)X軸に概略平行なループ面を有する矩形形状であって1巻のループアンテナ部105cと、
(d)Z軸と概略平行となるように設けられ、半分ループアンテナ部105aaと半分ループアンテナ部105bbとをそれぞれ概略直角で連結して接続する接続導体105daと、
(e)Z軸と概略平行となるように設けられ、半分ループアンテナ部105abと半分ループアンテナ部105baとをそれぞれ概略直角で連結して接続する接続導体105dbと、
(f)Z軸と概略平行となるように設けられ、半分ループアンテナ部105bbとループアンテナ部105cとをそれぞれ概略直角で連結して接続する接続導体105eaと、
(g)Z軸と概略平行となるように設けられ、半分ループアンテナ部105baとループアンテナ部105cとをそれぞれ概略直角で連結して接続する接続導体105ebと
から構成される。すなわち、微小ループアンテナ素子105Aは、隣接するループを、2つの給電点Q1,Q2から略等距離の位置で隣接するループに流れる電流の方向がループの中心軸に対して同一方向になるように接続して構成されてなる。
また、図2(b)の微小ループアンテナ素子105Bは、
(a)それぞれ略矩形形状の3辺で構成され、X軸に概略平行な実質的に同一面に形成された、各半分巻の半分ループアンテナ部105aa,105abと、
(b)それぞれ略矩形形状の3辺で構成され、X軸に概略平行な実質的に同一面に形成された、各半分巻の半分ループアンテナ部105ba,105bbと、
(c)X軸に概略平行なループ面を有する矩形形状であって1巻のループアンテナ部105cと、
(d)Z軸と概略平行となるように設けられた接続導体部161aと、Y軸と概略平行となるように設けられた接続導体部161bと、Z軸と概略平行となるように設けられた接続導体部161cとをそれぞれ順次概略直角で折り曲げられて連結して含み、半分ループアンテナ部105aaと半分ループアンテナ部105baとを接続する接続導体161と、
(e)Z軸と概略平行となるように設けられた接続導体部162aと、Y軸と概略平行となるように設けられた接続導体部162bと、Z軸と概略平行となるように設けられた接続導体部162cとをそれぞれ順次概略直角で折り曲げられて連結して含み、半分ループアンテナ部105baとループアンテナ部105cとを接続する接続導体162と、
(f)Z軸と概略平行となるように設けられた接続導体部163aと、Y軸と概略平行となるように設けられた接続導体部163bと、Z軸と概略平行となるように設けられた接続導体部163cとをそれぞれ順次概略直角で折り曲げられて連結して含み、半分ループアンテナ部105abと半分ループアンテナ部105bbとを接続する接続導体163と、
(g)Z軸と概略平行となるように設けられた接続導体部164aと、Y軸と概略平行となるように設けられた接続導体部164bと、Z軸と概略平行となるように設けられた接続導体部164cとをそれぞれ順次概略直角で折り曲げられて連結して含み、半分ループアンテナ部105bbとループアンテナ部105cとを接続する接続導体164とから構成される。すなわち、微小ループアンテナ素子105Bは、互いのループの中心軸が平行で、かつ互いのループの巻き方向が逆方向の関係にある右巻き微小ループアンテナ105Ba及び左巻き微小ループアンテナ105Bbの先端同士を接続して構成してなる。
なお、微小ループアンテナ素子105A,105Bの全長は、微小ループアンテナ素子105の長さを同様に微小である。
図3は図1の給電回路103の構成を示すブロック図である。図3において、給電回路103は、バラン1031と、移相器1032とを備えて構成される。端子T1に入力される不平衡無線信号は不平衡端子T11を介してバラン1031に入力され、バラン1031は、入力される不平衡無線信号を平衡無線信号に変換して平衡端子T12,T13を介して出力する。平衡端子T12から出力される無線信号は、所定の移相量だけ移相する移相器1032を介して端子T2に出力され、平衡端子T13から出力される無線信号はそのまま端子T3に出力される。従って、給電回路103は、入力される不平衡無線信号を、バラン1031により平衡無線信号に変換し、すなわち位相差が略180度である2つの無線信号に変換し、得られた2つの無線信号の位相差を、移相器1032により180度からずらし、互いに位相が異なる2つの無線信号を端子T2,T3を介して出力する。
給電回路103は図3の構成に限らず、図4(a)、図4(b)又は図4(c)の給電回路103A,103B,103Cであってもよい。図4(a)は図3の給電回路103の第1の変形例である給電回路103Aの構成を示すブロック図であり、図4(b)は図3の給電回路103の第2の変形例である給電回路103Bの構成を示すブロック図であり、図4(c)は図3の給電回路103の第3の変形例である給電回路103Cの構成を示すブロック図である。
図4(a)の給電回路103Aは、バラン1031と、上記バラン1031の2個の平衡端子T12,T13にそれぞれ互いに異なる移相量を有する2個の移相器1032A,1032Bとを備えて構成される。また、図4(b)の給電回路103Bは、端子T1を介して入力される不平衡無線信号を2つに分配して入力する、互いに異なる移相量を有する2個の移相器1032A,1032Bを備えて構成される。図4(c)の給電回路103Cは、端子T1,T2間に挿入された移相器1032Aのみを備えて構成され、ここで、端子T1,T3は直接に接続される。
以上のように構成された図1のアンテナ装置の動作について以下説明する。図1において、無線送受信回路102から出力された送信無線信号は、給電回路103(又は103A,103B,103C)により互いに位相が異なる2つの無線信号に変換された後、インピーダンス整合回路104によりインピーダンス変換され、ループアンテナ素子105に出力される。一方、微小ループアンテナ素子105により受信された電波の受信無線信号は、インピーダンス整合回路104によりインピーダンス変換された後、給電回路103により不平衡無線信号に変換され、無線送受信回路102に受信無線信号として入力される。
次に、以上のように構成されたアンテナ装置の電波の放射について以下説明する。図5(a)は図1の微小ループアンテナ素子105が導体板106に近接するときの距離Dを示す正面図であり、図5(b)は距離Dに対する、導体板106に向かう方向と反対方向での微小ループアンテナ素子105のアンテナ利得を示すグラフである。図5(b)から明らかなように、一般的に、微小ループアンテナ素子105はループ面が導体板106の導体面に対して垂直であるとき、微小ループアンテナ素子105と導体板106との距離Dが波長に対して十分短いとき、アンテナ利得が最大となる。また、微小ループアンテナ素子105と導体板106との距離Dが4分の1波長の奇数倍であるとき、アンテナ利得が大幅に低下して最小となる。さらに、微小ループアンテナ素子105と導体板106との距離Dが4分の1波長の偶数倍であるとき利得が最大となる。
図6(a)は図1の線状アンテナ素子160が導体板106に近接するときの距離Dを示す正面図であり、図6(b)は距離Dに対する、導体板106に向かう方向と反対方向での線状アンテナ素子160のアンテナ利得を示すグラフである。図6(a)及び図6(b)から明らかなように、一般的に、例えば1/4波長ホイップアンテナなどの線状アンテナ素子160は導体板106の導体面に対して平行であるとき、線状アンテナ素子160と導体板106との距離Dが波長に対して十分短いとき、波長が短くなるにつれてアンテナ利得が大幅に低下して最小となる。また、線状アンテナ素子160と導体板106との距離Dが4分の1波長の奇数倍であるとき、アンテナ利得が最大となる。さらに、線状アンテナ素子160と導体板106との距離Dが4分の1波長の偶数倍であるとき、アンテナ利得が最小となる。
図7は図1のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。アンテナ装置からの電波の放射は、
(a)X軸に平行に設けられた、微小ループアンテナ素子105のループアンテナ部105a,105b,105cからの水平偏波成分の放射と、
(b)Z軸に平行に設けられた、微小ループアンテナ素子105の接続導体105d,105e,105fからの垂直偏波成分の放射とからなる。
図7のシステムにおいて、例えば特許文献3の図32及び図33に図示されているように、アンテナ装置が導体板106に近接する場合において、距離Dが大きくなるにつれて、水平偏波成分のアンテナ利得が低下する一方、垂直偏波成分のアンテナ利得が増加する。また、距離Dが小さくなるにつれて、垂直偏波成分のアンテナ利得が低下する一方、水平偏波成分のアンテナ利得が増加する。
図8(a)は図1の微小ループアンテナ素子105の垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値よりも大きいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフであり、図8(b)は図1の微小ループアンテナ素子105の垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値よりも小さいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフであり、図8(c)は図1の微小ループアンテナ素子105の垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフである。なお、図8(a)、図8(b)及び図8(c)及びそれ以降の図面において、Comは、水平偏波成分のアンテナ利得と、垂直偏波成分のアンテナ利得との合成アンテナ利得を示す。
アンテナ装置が放射する電波の合成成分は、垂直偏波成分と水平偏波成分をベクトル合成したものである。図8(a)に示すように、垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値より高いとき、アンテナ装置と導体板106との距離Dが4分の1波長の奇数倍であるとき、合成成分のアンテナ利得は最大となる。また、図8(b)に示すように、垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値より低いとき、アンテナ装置と導体板106との距離が4分の1波長の奇数倍であるとき、合成成分のアンテナ利得は最小となる。さらに、図8(c)に示すように、垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値と実質的に同一であるとき、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、合成成分のアンテナ利得は実質的に一定となる。従って、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一となるように設定することにより、合成成分のアンテナ利得は、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず実質的に一定となる。本実施形態においては、図9を参照して後述するように、微小ループアンテナ素子105の各給電点Q1,Q2に給電する2つの無線信号の位相差を所定の値に設定することで、アンテナ装置から放射される垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定することができる。
図9は図1の微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の位相差に対するXY平面の平均アンテナ利得を示すグラフである。図9のアンテナ利得は、周波数426MHzにおける計算値である。図9から明らかなように、2つの給電無線信号の位相差を145度とすることで、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定することができることがわかる。例えば図3の移相器1032の移相量を所定の値に設定することで、給電回路103から出力される2つの無線信号の位相差を、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得が実質的に同一になるように設定することで、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず合成成分のアンテナ利得を実質的に一定とすることができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一となるように、移相器1032の移相量を変化させて微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の位相差をすることにより、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得るアンテナ装置を実現できる。また、微小ループアンテナ素子105から放射される電波は、上述のように、垂直水平両偏波成分を有し、偏波ダイバーシチの効果を得ることができる。
第2の実施形態.
図10は本発明の第2の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105,205を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第2の実施形態に係るアンテナ装置は、図1の第1の実施形態に係るアンテナ装置に比較して以下の点が異なる。
(1)微小ループアンテナ素子105と同様の構成を有し、微小ループアンテナ素子105と直交して設けられた微小ループアンテナ素子205をさらに備えたこと。
(2)スイッチ208と、給電回路203と、インピーダンス整合回路204とをさらに備えたことである。
(3)接地導体板101は好ましくは略正方形状を有する。
以下、当該相違点について詳述する。
図10において、微小ループアンテナ素子205は、形成するループ面が接地導体板101の面に対して概略垂直になり(すなわちZ軸方向と平行となり)かつループ軸がX軸と概略平行となるように設けられ、その両端は給電点Q3,Q4となり、これら給電点Q3,Q4はそれぞれ給電導体251,252を介してインピーダンス整合回路204に接続される。ここで、互いに平行な1対の給電導体251,252は平衡給電ケーブルを構成している。また、微小ループアンテナ素子205からの無線信号の放射が接地導体板101により遮蔽されることを防ぐため、微小ループアンテナ素子205は、接地導体板101から突出して設けられている。ここで、微小ループアンテナ素子205は、
(a)それぞれ矩形形状であって各1巻のループアンテナ部205a,205b,205cと、
(b)X軸と概略平行となるように設けられ、ループアンテナ部205aとループアンテナ部205bとを接続する接続導体205dと、
(c)X軸と概略平行となるように設けられ、ループアンテナ部205bとループアンテナ部205cとを接続する接続導体205eと、
(d)X軸と概略平行となるように設けられ、ループアンテナ部205cと給電点Q4とを接続する接続導体205fとから構成される。
なお、微小ループアンテナ素子205は微小ループアンテナ素子105の上述の変形例であってもよい。
図10において、給電回路203は給電回路103と同様の構成を有し、インピーダンス整合回路204はインピーダンス整合回路104と同様の構成を有する。スイッチ208は接地導体板101に設けられ、無線送受信回路102と給電回路103,203との間に接続され、無線送受信回路102から出力される切換制御信号Ssに基づいて、無線送受信回路102を、給電回路103,203のいずれか一方に接続する。
以上のように構成されたアンテナ装置の動作について以下説明する。スイッチ208が給電回路103を選択しているときは、無線送受信回路102により微小ループアンテナ素子105を用いて無線信号を送受信する一方、給電回路203を選択しているときは、無線送受信回路102により微小ループアンテナ素子205を用いて無線信号を送受信する。従って、微小ループアンテナ素子105と微小ループアンテナ素子205への給電をスイッチ208により切り換えることにより、電波の偏波を切り換えることができ、アンテナダイバーシチを行うことができる。
図11は図10のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。微小ループアンテナ素子105への給電時の電波の放射は、第1の実施形態と同様であり、微小ループアンテナ素子205への給電時の電波の放射は、偏波成分が異なることを除いて第1の実施形態と同様である。
図12(a)は図10の微小ループアンテナ素子105に無線信号を給電したときに、垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフであり、図12(b)は図10の微小ループアンテナ素子205に無線信号を給電したときに、垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフである。
第1の実施形態で説明したように、微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の位相差を給電回路103により変化させ、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定した場合、図12(a)に示すように、微小ループアンテナ素子105への給電時、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得る。同様に、微小ループアンテナ素子205に給電する2つの無線信号の位相差を給電回路203により変化させ、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定した場合、図12(b)に示すように、微小ループアンテナ素子205への給電時、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得る。また、図12(a)及び図12(b)から明らかなように、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、微小ループアンテナ素子105への給電時のアンテナ装置から放射される主偏波成分(2つの偏波成分のうちの大きな偏波成分をいい、以下同様である。)と、微小ループアンテナ素子205への給電時のアンテナ装置から放射される主偏波成分は直交関係にある。
以上説明したように、本実施形態によれば、微小ループアンテナ素子105,205を設けているので第1の実施形態と同様の作用効果を有するとともに、2個の微小ループアンテナ素子105,205を、XZ平面において、それらのループ軸が互いに直交するように設けることにより、アンテナ装置と導体板106との距離Dが波長に対して十分短いときや4分の1波長の倍数のときなど、垂直水平両偏波成分のうち一方の偏波成分が大きく減衰するときでも、微小ループアンテナ素子105への給電時と微小ループアンテナ素子205への給電時のアンテナ装置から放射される各主偏波成分が直交関係にあるため、スイッチ208により各主偏波成分を切り換えることにより、より大きな主偏波成分を用いて無線通信することでき、偏波ダイバーシチの効果を得ることができる。
第3の実施形態.
図13は本発明の第3の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105,205を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第3の実施形態に係るアンテナ装置は、図10の第2の実施形態に係るアンテナ装置に比較して以下の点が異なる。
(1)スイッチ208に代えて、90度位相差分配器272を設けたことである。
以下、当該相違点について説明する。90度位相差分配器272は、無線送受信回路102からの送信無線信号を、互いに90度の位相差を有する2つの送信無線信号に分配して給電回路103,203に出力するとともに、受信無線信号についてはその逆方向の処理を行う。
次に以上のように構成されたアンテナ装置の電波の放射について以下説明する。微小ループアンテナ素子105,205には90度位相差分配器272により90度の位相差を有する無線信号が給電される。また、微小ループアンテナ素子105への給電時に放射される主偏波成分の偏波面と、微小ループアンテナ素子205への給電時に放射される主偏波成分の偏波面とは互いに偏波面が直交関係にあり、実施の形態2と同様にアンテナ装置と導体板106との距離Dが変化しても垂直、水平両偏波が発生する。従って、アンテナ装置は導体板106との距離Dにかかわらず、実質的に一定の円偏波の電波を放射する。
以上説明したように、本実施形態によれば、90度位相差分配器301により微小ループアンテナ素子105,205に90度位相差給電を行い、アンテナ装置から円偏波の電波を放射することにより、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、偏波ダイバーシチの効果を得ることができ、さらに、無線送受信回路102からの切換制御信号Ssによるスイッチ208の切り換え動作を不要にすることができる。
第4の実施形態.
図14は本発明の第4の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図であり、図15は図14の給電回路103Dの構成を示すブロック図である。第4の実施形態に係るアンテナ装置は、図1の第1の実施形態に係るアンテナ装置に比較して、以下の点が異なる。
(1)給電回路103に代えて、給電回路103Dを設けたことである。ここで、給電回路103Dは、図15に示すように、移相器1032を可変移相器1033に置き換えたことを特徴とし、可変移相器1033の移相量は無線送受信回路102からの移相量制御信号Spに基づいて制御される。
以上のように構成されたアンテナ装置において、給電回路103Dは、入力される不平衡無線信号を、バラン1031により概略180度の位相差を有する2つの平衡無線信号に変換し、得られた2つの平衡無線信号の位相差を、可変移相器1033により180度からずらし、互いに位相が異なる2つの平衡無線信号を出力する。
図16(a)は図15の給電回路103Dの第1の変形例である給電回路103Eの構成を示すブロック図であり、図16(b)は図15の給電回路103Dの第2の変形例である給電回路103Fの構成を示すブロック図であり、図16(c)は図15の給電回路103Dの第3の変形例である給電回路103Gの構成を示すブロック図である。図16(a)の給電回路103Eは、バラン1031と、それぞれ移相量制御信号Spにより移相量が制御される2個の可変移相器1033A,1033Bとを備えて構成される。また、図16(b)の給電回路103Fは、入力される不平衡無線信号をそれぞれ移相する可変移相器1033A,1033Bを備えて構成される。さらに、図16(c)の給電回路103Gは端子T1を介して入力される不平衡無線信号を移相して端子T2を介して出力する可変移相器1033Aのみを備え、端子T1を介して入力される不平衡無線信号をそのまま端子T3を介して出力する。
図17は、図15、図16(a)、図16(b)及び図16(c)の可変移相器1033,1033A,1033Bの第1の実施例である可変移相器1033−1の詳細構成を示す回路図である。可変移相器1033−1は、例えば0度から90度の移相量を有し、端子T21,T22の間に、複数(N+1)個の移相器PS1乃至PS(N+1)のいずれか1つを選択するように挟設された2個のスイッチSW1,SW2を備えて構成される。各移相器PS1乃至PS(N+1)はそれぞれ2個のキャパシタと1個のインダクタからなるT型移相器である。なお、移相器PS1は0度の移相量を有する直接接続回路で構成される。
図18は、図15、図16(a)、図16(b)及び図16(c)の可変移相器1033,1033A,1033Bの第2の実施例である可変移相器1033−2の詳細構成を示す回路図である。可変移相器1033−2は、例えば0度から−90度の移相量を有し、端子T21,T22の間に、複数(N+1)個の移相器PSa1乃至PSa(N+1)のいずれか1つを選択するように挟設された2個のスイッチSW1,SW2を備えて構成される。各移相器PSa1乃至PSa(N+1)はそれぞれ2個のキャパシタと1個のインダクタからなるπ型移相器である。なお、移相器PSa1は0度の移相量を有する直接接続回路で構成される。
図17及び図18の可変移相器1033−1,1033−2は、内蔵する移相器をチップ部品が使用できるインダクタやキャパシタにより回路を構成できるため、一般的な遅延線路を切り換える方式の移相器を用いた場合に比べて、回路を小型化できる。
以上のように構成されたアンテナ装置の動作について以下説明する。電波の放射は第1の実施形態と同様である。図9から明らかなように、微小ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の位相差を145度とすることで、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定することができることがわかる。これにより、導体板106との距離Dにかかわらず合成利得を一定とすることができ、距離測定精度を向上させることができる。また、認証通信時には高い通信品質を得るため、導体板106がアンテナ装置に近接するときの利得低下を防止し、かつ、導体板106がアンテナ装置から離れたときは利得ができるだけ高い方がよい。すなわち、導体板近接時の利得低下を防止し、微小ループアンテナ素子105からの水平偏波成分の利得低下が小さい範囲で、上記接続導体から放射される垂直偏波成分の利得はできるだけ高くした方がよい。
図9から明らかなように、微小ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の位相差を60度付近とすることで、水平偏波成分のアンテナ利得低下を抑えつつ、垂直偏波成分のアンテナ利得を高くすることができる。また、アンテナ装置の周囲環境の変動が小さい状況で使用される場合は、ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の位相差を順次変化させてゆき、最大の利得が得られる位相差で認証通信を行うことで、従来技術に比較して高い通信品質を得ることができる。
従って、距離測定時と認証通信時で、移相量制御信号Spにより可変移相器1033の移相量を変化させることにより、微小ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の位相差を変化させ、垂直水平両偏波成分のアンテナ利得を制御することで、従来技術に比較して高い距離精度と高い通信品質を両立させることができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、距離測定時に、微小ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の位相差を移相量制御信号Spにより変化させ、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一となるように設定することにより、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得るアンテナ装置を実現できる。また、認証通信時に、微小ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の位相差を移相量制御信号Spにより変化させ、水平偏波成分のアンテナ利得低下を抑えつつ、垂直偏波成分のアンテナ利得を高くすることで、従来技術に比較して高い通信品質を得るアンテナ装置を実現できる。利用目的に応じて、微小ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の位相差を移相量制御信号Spにより変化させることで、従来技術に比較して高い距離精度と高い通信品質を両立させることができる。また、微小ループアンテナ素子105は上述のように垂直水平両偏波成分を有しているので、偏波ダイバーシチの効果を得ることができる。
第5の実施形態.
図19は本発明の第5の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105,205を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第5の実施形態に係るアンテナ装置は、図10の第2の実施形態に比較して以下の点が異なる。
(1)給電回路103,203に代えて、それぞれ図15の給電回路103D,203Dを備えたこと。
以上のように構成されたアンテナ装置の動作について以下説明する。電波の放射は第2の実施形態と同様である。距離測定時と認証通信時で、移相量制御信号Sp,Sppにより微小ループアンテナ素子105,205へ給電する2つの無線信号の位相差を変化させ、それぞれ垂直水平両偏波成分のアンテナ利得を制御することで、従来技術に比較して高い距離精度と高い通信品質を両立させることができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、2個の微小ループアンテナ素子105,205を、XZ平面において微小ループアンテナ素子105に対して直交する向きに設けることにより、アンテナ装置と導体板106との距離Dが波長に対して十分短いときや4分の1波長の倍数のときなど、垂直水平両偏波のうち一方の偏波が大きく減衰するときでも、微小ループアンテナ素子105への給電時と微小ループアンテナ素子205への給電時のアンテナ装置から放射される偏波面が直交関係にあるため、スイッチ208により偏波面を切り換えることにより、偏波ダイバーシチの効果を得ることができる。さらに、距離測定時と認証通信時で、移相量制御信号Sp,Sppにより微小ループアンテナ素子105,205へ給電する2つの無線信号の位相差を変化させ、それぞれ垂直水平両偏波成分のアンテナ利得を制御することで、従来技術に比較して高い距離精度と高い通信品質を両立させることができる。
第6の実施形態.
図20は本発明の第6の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105,205を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第6の実施形態に係るアンテナ装置は、図13の第3の実施形態に係るアンテナ装置に比較して以下の点が異なる。
(1)給電回路103,203に代えてそれぞれ、移相量制御信号Sp,Sppにより移相量が制御される給電回路103D,203Dに置き換えたことである。
以上のように構成されたアンテナ装置の動作について以下説明する。電波の放射は第3の実施形態と同様である。距離測定時と認証通信時で、移相量制御信号Sp,Sppにより微小ループアンテナ素子105,205へ給電する2つの無線信号の位相差を変化させ、それぞれ垂直水平両偏波成分のアンテナ利得を制御することで、従来技術に比較して高い距離精度と高い通信品質を両立させることができる。
また、90度位相差分配器272により微小ループアンテナ素子105,205に90度位相差給電を行い、アンテナ装置から円偏波の電波を放射することにより、偏波ダイバーシチの効果を得ることができ、無線送受信回路102からの切換制御信号Ssによるスイッチ208の切り換え動作を不要にすることができる。さらに、距離測定時と認証通信時で、移相量制御信号Sp,Sppにより微小ループアンテナ素子105,205へ給電する2つの無線信号の位相差を変化させ、それぞれ垂直水平両偏波成分のアンテナ利得を制御することで、従来技術に比較して高い距離精度と高い通信品質を両立させることができる。
第7の実施形態.
図21は本発明の第7の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105を備えたアンテナ装置(図1の給電回路103を除き、図1のアンテナ装置と同様の構成を有する。)において用いる給電回路103Hの構成を示すブロック図である。第7の実施形態に係るアンテナ装置は、図1のアンテナ装置において、給電回路103に代えて、図21の給電回路103Hを備えたことを特徴とする。給電回路103Hは、バラン1031と、図3の移相器1032に代わる減衰器1071とを備えて構成される。なお、図21の給電回路103Hは、図22(a)、図22(b)及び図22(c)の給電回路103I,103J,103Kであってもよい。
図22(a)は図21の給電回路103Hの第1の変形例である給電回路103Iの構成を示すブロック図であり、図22(b)は図21の給電回路103Hの第2の変形例である給電回路103Jの構成を示すブロック図であり、図22(c)は図21の給電回路103Hの第3の変形例である給電回路103Kの構成を示すブロック図である。図22(a)の給電回路103Iは、バラン1031と、減衰器1071と、増幅器1072とを備えて構成される。また、図22(b)の給電回路103Jは、バラン1031と、増幅器1072とを備えて構成される。さらに、図22(c)の給電回路103Kは、端子T1を介して入力される無線信号を不均等に分配して出力する不均等分配器1031Aと、180度移相器1073とを備えて構成される。
以上のように構成されたアンテナ装置の動作について以下説明する。無線送受信回路102から出力された送信無線信号は、給電回路103Hにより互いに振幅が異なる2つの無線信号に変換された後、インピーダンス整合回路104によりインピーダンス変換され、ループアンテナ素子105に出力されて放射される。また、微小ループアンテナ素子105により受信された電波は、インピーダンス整合回路104によりインピーダンス変換された後、給電回路103Hにより不平衡無線信号に変換され、無線送受信回路102に受信無線信号として入力される。
本実施形態に係るアンテナ装置においては、第1の実施形態に係るアンテナ装置と同様に、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一となるように設定することにより、合成成分は、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず実質的に一定となる。微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の振幅差を所定の値に設定することで、アンテナ装置から放射される垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定することができる。
図23は第7の実施形態に係るアンテナ装置において、給電回路103Hの減衰器1071の減衰量に対する、XY平面の平均アンテナ利得を示すグラフである。図23は、周波数426MHzにおける計算値を示すグラフである。減衰器1071の減衰量の絶対値が、微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の振幅差となる。図23から明らかなように、減衰器1071の減衰量を−8dBとすることで、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定することができることがわかる。減衰器1071の減衰量を所定の値に設定することで、給電回路103が出力する2つの無線信号の振幅差を、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得が実質的に同一になるように設定することで、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず合成成分のアンテナ利得を実質的に一定とすることができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、減衰器1071の減衰量を所定の値に設定することにより、ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の振幅差を設定し、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一となるように設定することにより、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得るアンテナ装置を実現できる。また、微小ループアンテナ素子105は上述のように垂直水平両偏波成分を有し、偏波ダイバーシチの効果を得ることができる。
さらに、給電回路103H(又は103I,103J,103K)を、図10乃至図13に示す第2及び第3の実施形態に係るアンテナ装置の構成に適用してもよい。
第8の実施形態.
図24は、本発明の第8の実施形態に係る、図21の変形例である給電回路103Lの構成を示すブロック図である。第8の実施形態に係るアンテナ装置は、図21の第7の実施形態に係るアンテナ装置に比較して以下の点が異なる。
(1)減衰器1071を有する給電回路103Hに代えて、減衰量制御信号Saに従って変化される減衰量を有する可変減衰器1074を有する給電回路103Lを備えたこと。
また、給電回路103Lの代えて、図25(a)、図25(b)及び図25(c)の給電回路103M,103N,103Oを備えてもよい。
図24の給電回路103Lは、入力される不平衡無線信号を、バラン1031により概略180度の位相差と、概略0の振幅差とを有する2つの無線信号に変換し、得られた2つの無線信号の振幅差を、可変減衰器1074により互いに振幅が異なる2つの無線信号に変換して出力する。なお、給電回路103Lの構成は、互いに位相差が略180度で振幅が異なる2つの無線信号を出力する回路であればよく、図24の構成でなくてもよい。
図25(a)は図24の給電回路103Lの第1の変形例である給電回路103Mの構成を示すブロック図であり、図25(b)は図24の給電回路103Lの第2の変形例である給電回路103Nの構成を示すブロック図であり、図25(c)は図24の給電回路103Lの第3の変形例である給電回路103Oの構成を示すブロック図である。図25(a)の給電回路103Mは、バラン1031と、制御信号Saに従って変化する減衰量を有する可変減衰器1074と、制御信号Saに従って変化する増幅度を有する可変増幅器1075とを備えて構成される。また、図25(b)の給電回路103Nは、バラン1031と、制御信号Saに従って変化する増幅度を有する可変増幅器1075とを備えて構成される。さらに、図25(c)の給電回路103Oは、端子T1を介して入力される無線信号を、制御信号Saに従って変化する分配比を有して2つの無線信号に不均等に分配する分配比可変型不均等分配器1031Bと、180度移相器1076とを備えて構成される。
図26は、図24、図25(a)、図25(b)及び図25(c)の可変減衰器1074の第1の実施例である可変減衰器1074−1の詳細構成を示す回路図である。可変減衰器1074−1は、例えば0から所定値までの減衰量を有し、端子T31,T32の間に、複数(N+1)個の減衰器AT1乃至AT(N+1)のいずれか1つを選択するように挟設された2個のスイッチSW1,SW2を備えて構成される。各減衰器AT1乃至AT(N+1)はそれぞれ3個の抵抗からなるT型減衰器である。なお、減衰器AT1は0の減衰量を有する直接接続回路で構成される。
図27は、図24、図25(a)、図25(b)及び図25(c)の可変減衰器1074の第2の実施例である可変減衰器1074−2の詳細構成を示す回路図である。可変減衰器1074−2は、例えば0から所定値までの減衰量を有し、端子T31,T32の間に、複数(N+1)個の減衰器ATa1乃至ATa(N+1)のいずれか1つを選択するように挟設された2個のスイッチSW1,SW2を備えて構成される。各減衰器ATa1乃至ATa(N+1)はそれぞれ3個の抵抗からなるπ型減衰器である。なお、減衰器ATa1は0の減衰量を有する直接接続回路で構成される。
図24の給電回路103Lを備えたアンテナ装置において、電波の放射は第1の実施形態と同様である。図23から明らかなように、微小ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の振幅差を8dBとすることで、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定することができることがわかる。これにより、導体板106との距離Dにかかわらず合成利得を一定とすることができ、距離測定精度を向上させることができる。また、認証通信時には高い通信品質を得るため、導体板106がアンテナ装置に近接するときの利得低下を防止し、かつ、導体板106がアンテナ装置から離れたときは利得ができるだけ高い方がよい。すなわち、導体板近接時の利得低下を防止し、微小ループアンテナ素子105からの水平偏波成分のアンテナ利得低下が小さい範囲で、上記接続導体から放射される垂直偏波成分のアンテナ利得はできるだけ高くした方がよい。
また、図23から明らかなように、微小ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の振幅差を10dBとすることで、水平偏波成分のアンテナ利得低下を抑えつつ、垂直偏波成分のアンテナ利得を高くすることができる。さらに、アンテナ装置の周囲環境の変動が小さい状況で使用される場合は、ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の振幅差を順次変化させてゆき、最大の利得が得られる振幅差で認証通信を行うことで、従来技術に比較して高い通信品質を得ることができる。距離測定時と認証通信時で、減衰量制御信号により可変減衰器1074の減衰量を切り換え、微小ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の振幅差を変化させ、垂直水平両偏波成分のアンテナ利得を制御することで、従来技術に比較して高い距離精度と高い通信品質を両立させることができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、距離測定時、微小ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の振幅差を減衰量制御信号により変化させ、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一となるように設定することにより、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得るアンテナ装置を実現できる。
また、認証通信時、微小ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の振幅差を減衰量制御信号により変化させ、水平偏波成分のアンテナ利得低下を抑えつつ、垂直偏波成分のアンテナ利得を高くすることで、従来技術に比較して高い通信品質を得るアンテナ装置を実現できる。利用目的に応じて、微小ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の振幅差を減衰量制御信号により変化させることで、従来技術に比較して高い距離精度と高い通信品質を両立させることができる。さらに、微小ループアンテナ素子105は垂直水平両偏波成分を有し、偏波ダイバーシチの効果を得ることができる。
なお、図19及び図20のアンテナ装置において、給電回路103D,203Dに代えて、第7の実施形態に係る給電回路103H、又は第8の実施形態に係る給電回路103Lを備えるように構成してもよい。
第9の実施形態.
図28は本発明の第9の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第9の実施形態に係るアンテナ装置は、図1の第1の実施形態に係るアンテナ装置に比較して以下の点が異なる。
(1)給電回路103に代えて、平衡不平衡変換回路103Pを備えたこと。
以下、当該相違点について説明する。
図28において、平衡不平衡変換回路103Pは、接地導体板101に設けられ、不平衡端子T1が無線送受信回路102に接続され、平衡端子T2,T3がインピーダンス整合回路104に接続され、無線送受信回路102からの不平衡無線信号を2つの平衡無線信号に変換してインピーダンス整合回路104に出力する。なお、第9の実施形態において、上述の実施形態及び変形例の構成を適用してもよい。
図29は図28の平衡不平衡変換回路103Pの構成を示す回路図である。図29において、平衡不平衡変換回路103Pは、+90度移相器103aと、−90度移相器103bとを備えて構成される。ここで、+90度移相器103aは、不平衡端子T1と平衡端子T2との間に挿入されたL型のLC回路であって、不平衡端子T1を介して入力される無線信号を+90度だけ移相して平衡端子T2に出力する。また、−90度移相器103bは、不平衡端子T1と平衡端子T3との間に挿入されたL型のLC回路であって、不平衡端子T1を介して入力される無線信号を−90度だけ移相して平衡端子T3に出力する。なお、各移相器103a,103bのインダクタL11,L12のインダクタンスLは等しく、キャパシタC11,C12のキャパシタンスCは等しい。平衡不平衡変換回路103Pの設定周波数fsは次式で表される。
すなわち、平衡不平衡変換回路103Pの設定周波数fsはインダクタンスLとキャパシタンスCからなるLC回路の共振周波数に等しい。なお、一般的には、平衡不平衡変換回路103Pの設定周波数fsと、アンテナ装置により送受信を行う電波の周波数とが等しくなるようにインダクタンスL及びキャパシタンスCを設定するが、本実施形態では、好ましくは、以下で述べるように、平衡不平衡変換回路103Pの設定周波数fs(又は共振数周波数)と送受信を行う電波の周波数とを異なるように設定する。
図30(a)は図29の平衡不平衡変換回路103Pにおける平衡端子T2を流れる無線信号と、平衡端子T3を流れる無線信号との間の振幅差Adの周波数特性を示すグラフであり、図30(b)は図29の平衡不平衡変換回路103Pにおける平衡端子T2を流れる無線信号と、平衡端子T3を流れる無線信号との間の位相差Pdの周波数特性を示すグラフである。
図30(a)から明らかなように、設定周波数fsが送受信する電波の周波数と等しいとき(図30(a)では点線で示している)振幅差は0dBとなっているが、送受信する電波の周波数から離れるほど振幅差Adが大きくなる。また、インダクタンスLやキャパシタンスCを調整することにより設定周波数fsを送受信する電波の周波数より低くすると、送受信する電波の周波数では平衡端子T2,T3間の振幅差Ad[db]は正(接続導体105d,105eの電流振幅よりもループ戻り部である接続導体105fの電流振幅が大きい)となり、設定周波数fsを送受信する電波の周波数より高くすると、送受信する電波の周波数では平衡端子T2,T3間の振幅差Ad[dB]は負(接続導体105d,105eの電流振幅よりもループ戻り部である接続導体105fの電流振幅が小さい)となることがわかる。
また、図30(b)から明らかなように、位相差Pdは設定周波数fsの高低に関わらず実質的に180度で一定である。平衡不平衡変換回路103は、チップ部品が使用できるインダクタやキャパシタにより回路を構成できるため、一般的なトランスを使用した平衡不平衡変換回路に比べて、回路を小型化できる。
以上のように構成されたアンテナ装置の動作は平衡不平衡変換回路103Pの動作を除いて第1の実施形態と同様である。また、その電波の放射についても第1の実施形態と同様である。
図31は図28の微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の振幅差Adに対するXY平面の平均アンテナ利得を示すグラフである。図31のグラフは、周波数426MHzにおける計算値である。図31において、横軸の振幅差Ad[dB]が正のときは、図30を参照して説明したように、2つの給電点Q1,Q2のうち給電点Q2に接続されたループ戻り部である接続導体105fの電流振幅が給電点Q1に接続された接続導体105d,105eの電流振幅に比較して大きいときである。また、振幅差Ad[dB]が負のときは、給電点Q2に接続されたループ戻り部である接続導体105fの電流振幅が給電点Q1に接続された接続導体105d,105eの電流振幅に比較して小さいときである。
図32(a)乃至図32(j)は図28の微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の振幅差Adを−10dBから−1dBまで変化したときのXY平面の水平偏波成分の放射パターンを示す図である。また、図33(a)乃至(k)は図28の微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の振幅差Adを0dBから10dBまで変化したときのXY平面の水平偏波成分の放射パターンを示す図である。さらに、図34(a)乃至(j)は図28の微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の振幅差Adを−10dBから−1dBまで変化したときのXY平面の垂直偏波成分の放射パターンを示す図である。またさらに、図35(a)乃至(k)は図28の微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の振幅差Adを0dBから10dBまで変化したときのXY平面の垂直偏波成分の放射パターンを示す図である。
図31の501,502から明らかなように、振幅差Adが−8dB又は2dBになると垂直偏波成分と水平偏波成分の平均利得が実質的に同一になることがわかる。また、図32(a)乃至図32(j)及び図33(a)乃至(k)から明らかなように、水平偏波成分は、振幅差Adによらず無指向性で、アンテナ利得もほとんど変わらないことがわかる。また、図34(a)乃至(j)から明らかなように、垂直偏波成分は、振幅差Adが−10dBから−1dBのとき、指向性が振幅差により大きく変化し、無指向性ではなくなる。さらに、図35(a)乃至(k)から明らかなように、振幅差Adが0dBから10dBのとき、無指向性を保ったまま利得だけ変化する。
上記の図32乃至図35を考慮すると、振幅差Adが2dBのときに、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得るアンテナ装置を実現できることがわかる。言換すれば、微小ループアンテナ素子105の2つの給電点Q1,Q2のうち、給電点Q2に接続されたループ戻り部の接続導体105fの電流振幅を大きくしていき、微小ループアンテナ素子105の2つの給電点Q1,Q2へ給電する信号の振幅差Adが所定の値になるようにインダクタンスL及びキャパシタンスCの値を調整して設定周波数fsを設定することにより、無指向性でかつ垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定することができることがわかる。
以上説明したように、平衡不平衡変換回路103Pの設定周波数を、アンテナ装置が送受信する電波の周波数から離れた値に設定することで、平衡不平衡変換回路103が出力する2つの無線信号の振幅差Adを、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得が実質的に同一になるように設定することができ、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず合成成分のアンテナ利得を実質的に一定とすることができる。特に、平衡不平衡変換回路103Pの設定周波数を所定の値に設定することにより、ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の振幅差Adを設定し、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一となるように設定することにより、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得るアンテナ装置を実現できる。
第10の実施形態.
図36は本発明の第10の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105,205を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第10の実施形態に係るアンテナ装置は、図10の第2の実施形態に係るアンテナ装置に比較して以下の点が異なる。
(1)給電回路103,203に代えてそれぞれ平衡不平衡変換回路103P,203P(平衡不平衡変換回路203Pは平衡不平衡変換回路103Pと同様の構成を有する。)を備えたこと。
なお、スイッチ208に代えて、図37(a)及び図37(b)のごとく、偏波切換回路208Aを備えてもよい。
図37(a)は図36の変形例に係る偏波切換回路208Aの構成を示す回路図である。図37(a)において、偏波切換回路208Aは、制御信号端子T44を介して入力される切換制御信号Ssに基づいて接点a側又は接点b側に選択的に切り換えるスイッチSW11と、1次側コイル261と2次側コイル262とを有するバラン260とを備えて構成される。端子T41はスイッチSW11の接点b側を介してバラン260の1次側コイル261の一端に接続され、その他端は接地されるとともに、スイッチSW11の接点a側を介してバラン260の2次側コイル262の中点に接続され、その両端は端子T42,T43にそれぞれ接続される。以上のように構成された偏波切換回路208Aにおいて、スイッチSW11を接点a側に切り換えたとき、端子T41を介して入力された無線信号を同相で端子T42,T43に出力する一方、スイッチSW11を接点b側に切り換えたとき、端子T41を介して入力された無線信号を逆相で端子T42,T43に出力する。すなわち、スイッチSW11を切り換えることにより同相給電と逆相給電とを選択的に切り換えることができる。
図37(b)は上記偏波切換回路208Aの変形例である偏波切換回路208Aaの構成を示す回路図である。図37(b)において、端子T41を介して入力される無線信号は、分配器270により2つの無線信号に2分配されたた後、一方の無線信号は端子T42に出力されるとともに、スイッチSW21に出力される。スイッチSW21,SW22は端子T44を介して入力される切換制御信号Ssに基づいて、それぞれ接点a側又は接点b側に切り換えられる。前者のとき、分配器270からの無線信号はスイッチSW21の接点a側と、+90度移相器273aと、スイッチSW22の接点a側とを介して端子T43に出力される。後者のとき、分配器270からの無線信号はスイッチSW21の接点b側と、−90度移相器273bと、スイッチSW22の接点b側とを介して端子T43に出力される。スイッチSW21,SW22を切り換えることにより+90度位相差給電と−90度位相差給電とを選択的に切り換えることができる。
図38は図36のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。本実施形態に係るアンテナ装置は、偏波切換回路208Aの動作を除いて第2の実施形態と同様に動作する。
図39(a)は図36の微小ループアンテナ素子105に無線信号を給電したときに、垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフであり、図39(b)は図36の微小ループアンテナ素子205に無線信号を給電したときに、垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフである。
第9の実施形態と同様に、平衡不平衡変換回路103Pの設定周波数を所定の値に設定することにより、微小ループアンテナ素子105へ給電する2つの無線信号の振幅差Adを設定し、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定した場合、図39(a)に示すように、ループアンテナ素子105への給電時、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得る。同様に、平衡不平衡変換回路203Pの設定周波数を所定の値に設定することにより、ループアンテナ素子205へ給電する2つの無線信号の振幅差Adを設定し、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定した場合、図39(b)に示すように、微小ループアンテナ素子205への給電時、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得る。
また、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、微小ループアンテナ素子105への給電時のアンテナ装置から放射される偏波成分と、微小ループアンテナ素子205への給電時のアンテナ装置から放射される偏波成分は直交関係にある。接地導体板101の形状が実質的に正方形であり、微小ループアンテナ素子105,205の寸法が略同じであるため、微小ループアンテナ素子105への給電時と、微小ループアンテナ素子205への給電時でアンテナの利得は変わることはなく、偏波のみが90度変化するので、給電切り換えによる利得変動は生じない。
以上説明したように、微小ループアンテナ素子105と同様の構成を有する微小ループアンテナ素子205を、XZ平面において微小ループアンテナ素子105に対して直交する向きに設けることにより、アンテナ装置と導体板106との距離Dが波長に対して十分短いときや4分の1波長の倍数のときなど、垂直水平両偏波のうち一方の偏波が大きく減衰する場合においても、微小ループアンテナ素子105,205への給電を偏波切換回路208により切り換えて偏波面を90度変化させることで、通信姿勢の変動によって生じる偏波面不一致による利得変動を抑えることができる。
第11の実施形態.
図40は本発明の第11の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105Aを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第11の実施形態に係るアンテナ装置は、図28の第9の実施形態に係るアンテナ装置に比較して以下の点が異なる。
(1)微小ループアンテナ素子105に代えて微小ループアンテナ素子105Aを備えたこと。
以下、当該相違点について説明する。
図40において、微小ループアンテナ素子105Aは、
(a)X軸方向のループ面と矩形形状を有する1巻のループアンテナ部105aの左半分である半分ループアンテナ部105aaと、
(b)上記1巻のループアンテナ部105aの右半分である半分ループアンテナ部105abと、
(c)X軸方向のループ面と矩形形状を有する1巻のループアンテナ部105bの左半分である半分ループアンテナ部105baと、
(d)上記1巻のループアンテナ部105bの右半分である半分ループアンテナ部105bbと、
(e)X軸方向のループ面と矩形形状を有する1巻のループアンテナ部105cと、
(f)Z軸と概略平行となるように設けられ、半分ループアンテナ部105aaと半分ループアンテナ部105bbとを接続する接続導体105daと、
(g)Z軸と概略平行となるように設けられ、半分ループアンテナ部105abと半分ループアンテナ部105baとを接続する接続導体105dbと、
(h)Z軸と概略平行となるように設けられ、半分ループアンテナ部105bbとループアンテナ部105cとを接続する接続導体105eaと、
(i)Z軸と概略平行となるように設けられ、半分ループアンテナ部105baとループアンテナ部105cとを接続する接続導体105ebとから構成される。
なお、半分ループアンテナ部105aaの一端は給電点Q1であり、給電点Q1は給電導体151を介してインピーダンス整合回路104に接続される。また、半分ループアンテナ部105abの一端は給電点Q2であり、給電点Q2は給電導体152を介してインピーダンス整合回路104に接続される。
次に微小ループアンテナ素子105Aの電流の流れについて以下説明する。図41は図40の微小ループアンテナ素子105Aの電流方向を示す斜視図である。図41から明らかなように、半分ループアンテナ部105aa,105ba及びループアンテナ部105cの左半分には互いに同一の電流が流れ、半分ループアンテナ部105ab,105bb及びループアンテナ部105cの右半分には互いに同一の電流が流れる。また、1対の接続導体105da,105dbには、それらにより2つの給電点Q1,Q2から略等距離の位置で交差させて各2つの半分ループアンテナ部を接続しているため、互いに逆相の電流が流れる。さらに、1対の接続導体105ea,105ebには、それらにより2つの給電点Q1,Q2から略等距離の位置で交差させて各2つの半分ループアンテナ部を接続しているため、互いに逆相の電流が流れる。
従って、本実施形態に係るアンテナ装置の放射は、
(a)X軸に平行に設けられた、半分ループアンテナ部105aa,105ab,105ba,105bb,105cからの水平偏波成分の放射と、
(b)Z軸に平行に設けられた、接続導体105da,105db,105ea,105ebからの垂直偏波成分の放射とからなる。
図42は図40のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。図42において、アンテナ装置からの電波の放射は、上述のように、微小ループアンテナ素子105AからのX軸に平行な水平偏波成分及びZ軸に平行な垂直偏波成分の放射を含む。本実施形態において、垂直偏波成分の放射では、図6(b)と同様に、アンテナ装置と導体板106との距離Dが、波長に対して十分短いとき、垂直偏波成分のアンテナ利得が大幅に低下して最小となる。アンテナ装置と導体板106との距離Dが、4分の1波長の奇数倍であるとき、垂直偏波成分のアンテナ利得が最大となる。アンテナ装置と導体板106との距離Dが、4分の1波長の偶数倍であるとき、垂直偏波成分のアンテナ利得が大幅に低下して最小となる。また、水平偏波成分の放射では、図5(b)と同様に、アンテナ装置と導体板106との距離Dが、波長に対して十分短いとき、水平偏波成分のアンテナ利得が最大となる。アンテナ装置と導体板106との距離Dが、4分の1波長の奇数倍であるとき、水平偏波成分のアンテナ利得が大幅に低下して最小となる。アンテナ装置と導体板106との距離Dが、4分の1波長の偶数倍であるとき、水平偏波成分のアンテナ利得が最大となる。従って、アンテナ装置が導体板106に近接するとき、水平偏波成分のアンテナ利得が低下するとき、垂直偏波成分のアンテナ利得が増加し、垂直偏波成分のアンテナ利得が低下するとき、水平偏波成分のアンテナ利得が増加するように動作する。
図43(a)は図40の接続導体105da,105db(又は105ea,105eb)の長さに対する微小ループアンテナ素子105AのXY平面の水平偏波成分の平均アンテナ利得を示すグラフであり、図43(b)は図40の接続導体105da,105db(又は105ea,105eb)の長さに対する微小ループアンテナ素子105AのXY平面の垂直偏波成分の平均アンテナ利得を示すグラフである。図44(a)は図40の接続導体105da,105db間(又は接続導体105ea,105eb間)の距離に対する微小ループアンテナ素子105AのXY平面の水平偏波成分の平均アンテナ利得を示すグラフであり、図44(b)は図40の接続導体105da,105db間(又は接続導体105ea,105eb間)の距離に対する微小ループアンテナ素子105AのXY平面の垂直偏波成分の平均アンテナ利得を示すグラフである。これらのグラフは周波数426MHzで計算した。
図43(a)、図43(b)、図44(a)及び図44(b)から明らかなように、各接続導体(105da,105db,105ea,105eb)の長さや、1対の接続導体(105da,105db又は105ea,105eb)間の距離が増加すると、1対の接続導体(105da,105db又は105ea,105eb)の互いに逆相の電流による各接続導体からの電波の放射の打ち消し効果が薄れ、各接続導体からの電波の放射が大きくなるため、水平偏波成分は実質的に一定であるが、垂直偏波成分は増加する。すなわち、各接続導体(105da,105db,105ea,105eb)の長さや、1対の接続導体(105da,105db又は105ea,105eb)間の距離をそれぞれ所定の値に設定することで、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定することができる。
以上説明したように、電波の放射が強く、調整が困難でかつ接地導体板101のサイズや形状により大きく左右される微小ループアンテナ素子105Aから接地導体板101に直接流れる磁流電流による放射を平衡不平衡変換回路103Pにより抑え、微小ループアンテナ素子105Aの各部位の寸法を所定の値に設定することで、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、一定の合成偏波成分のアンテナ利得を得るアンテナ装置を実現できる。また、接続導体105da,105db,105ea,105ebから放射される偏波成分と、半分ループアンテナ部105aa,105ab,105ba,105bb及びループアンテナ部105cから放射される偏波成分とは互いに直交関係にあるため、垂直水平両偏波成分を有し、偏波ダイバーシチの効果を得ることができる。
第12の実施形態.
図45は本発明の第12の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105A,205Aを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第12の実施形態に係るアンテナ装置は、図10の第2の実施形態に係るアンテナ装置に比較して以下の点が異なる。
(1)微小ループアンテナ素子105に代えて微小ループアンテナ素子105Aを備えたこと。
(2)微小ループアンテナ素子205に代えて微小ループアンテナ素子205Aを備えたこと。
(3)給電回路103に代えて平衡不平衡変換回路103Pを備えたこと。
(4)給電回路203に代えて平衡不平衡変換回路203Pを備えたこと。
図45において、微小ループアンテナ素子205Aは、
(a)Z軸方向のループ面と矩形形状を有する1巻のループアンテナ部205aの左半分である半分ループアンテナ部205aaと、
(b)上記1巻のループアンテナ部205aの右半分である半分ループアンテナ部205abと、
(c)Z軸方向のループ面と矩形形状を有する1巻のループアンテナ部205bの左半分である半分ループアンテナ部205baと、
(d)上記1巻のループアンテナ部205bの右半分である半分ループアンテナ部205bbと、
(e)Z軸方向のループ面と矩形形状を有する1巻のループアンテナ部205cと、
(f)X軸と概略平行となるように設けられ、半分ループアンテナ部205aaと半分ループアンテナ部205bbとを接続する接続導体205daと、
(g)X軸と概略平行となるように設けられ、半分ループアンテナ部205abと半分ループアンテナ部205baとを接続する接続導体205dbと、
(h)X軸と概略平行となるように設けられ、半分ループアンテナ部205bbとループアンテナ部205cとを接続する接続導体205eaと、
(i)X軸と概略平行となるように設けられ、半分ループアンテナ部205baとループアンテナ部205cとを接続する接続導体205ebとから構成される。
なお、半分ループアンテナ部205aaの一端は給電点Q3であり、給電点Q3は給電導体251を介してインピーダンス整合回路204に接続される。また、半分ループアンテナ部205abの一端は給電点Q4であり、給電点Q4は給電導体252を介してインピーダンス整合回路204に接続される。本実施形態においては、互いに直交するように設けられた微小ループアンテナ素子105Aと微小ループアンテナ素子205Aへの給電をスイッチ208により切り換えることにより、アンテナダイバーシチを行う。
図46は図45のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。図46において、微小ループアンテナ素子105Aへの給電時の電波の放射は、第11の実施形態と同様である。微小ループアンテナ素子205Aへの給電時の電波の放射は、微小ループアンテナ素子205Aが、XZ平面において微小ループアンテナ素子105Aに対して直交する向きに設けられているため、接続導体205da,205db,205ea,205ebからの電波の放射は水平偏波で行われ、半分ループアンテナ素子205aa,205ab,205ba,205bb,205cからの電波の放射は垂直偏波で行われる。
第11の実施形態と同様に、微小ループアンテナ素子105Aの各部位の寸法を所定の値に設定して、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定した場合、ループアンテナ素子105Aへの給電時、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず一定の合成偏波成分のアンテナ利得を得る。同様に、微小ループアンテナ素子205Aの各部位の寸法を所定の値に設定して、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定した場合、微小ループアンテナ素子205への給電時、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず一定の合成偏波成分のアンテナ利得を得る。また、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、微小ループアンテナ素子105Aへの給電時のアンテナ装置から放射される偏波成分と、微小ループアンテナ素子205Aへの給電時のアンテナ装置から放射される偏波成分は直交関係にある。
以上説明したように、本実施形態によれば、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、一定の合成偏波成分のアンテナ利得を得ることができ、さらに、微小ループアンテナ素子105Aと同様の構成を有する微小ループアンテナ素子205Aを、XZ平面において微小ループアンテナ素子105Aに対して直交する向きに設けることにより、アンテナ装置と導体板106との距離Dが波長に対して十分短いときや4分の1波長の倍数のときなど、垂直水平両偏波のうち一方の偏波が大きく減衰するときでも、微小ループアンテナ素子105Aと微小ループアンテナ素子205Aの偏波面が直交関係にあるため、偏波ダイバーシチの効果を得ることができる。
第13の実施形態.
図47は本発明の第13の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105A,205Aを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第13の実施形態に係るアンテナ装置は、図45の第12の実施形態に係るアンテナ装置に比較して、以下の点が異なる。
(1)スイッチ208の代わりに90度位相差分配器272を備えたこと。
以上のように構成されたアンテナ装置においては、微小ループアンテナ素子105A,205Aにはそれぞれ90度位相差分配器272により90度位相差で給電される。また、微小ループアンテナ素子105Aと微小ループアンテナ素子205Aの偏波面が直交関係にあり、微小ループアンテナ素子105A,205Aと導体板106との距離Dが変化しても垂直偏波成分及び水平偏波成分が発生する。従って、アンテナ装置は導体板106との距離Dにかかわらず、一定の円偏波の電波を放射する。
以上説明したように、本実施形態によれば、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、偏波ダイバーシチの効果を得ることができ、さらに無線送受信回路102からの制御信号によるスイッチ208の切り換え動作を不要にすることができる。
第14の実施形態.
図48は本発明の第14の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105Bを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第14の実施形態に係るアンテナ装置は、図40の第11の実施形態に係るアンテナ装置と比較して以下の点が異なる。
(1)微小ループアンテナ素子105Aに代えて、図2(b)の微小ループアンテナ素子105Bを備えたこと。
以下、当該相違点について説明する。
図48において、半分ループアンテナ部105aaの一端は給電点Q1であり、給電点Q1は給電導体151を介してインピーダンス整合回路104に接続される。また、半分ループアンテナ部105abの一端は給電点Q2であり、給電点Q2は給電導体152を介してインピーダンス整合回路104に接続される。アンテナ素子105Bは、互いのループの中心軸が平行で、かつ互いのループの巻き方向が逆方向の関係にある右巻き微小ループアンテナ105Ba及び左巻き微小ループアンテナ105Bbから構成され、微小ループアンテナ105Ba,105Bbの先端同士は接続されている。
図49は図48の微小ループアンテナ素子105Bの電流方向を示す斜視図である。図49から明らかなように、半分ループアンテナ部105aa,105ab,105ba,105bb及びループアンテナ部105cにはすべて右回り方向の電流が流れる。また、1対の接続導体161,163及び1対の接続導体162,164にはそれぞれ互いに逆相の電流が流れる。
図50は図48のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。微小ループアンテナ素子105Bを備えたアンテナ装置からの電波の放射は、
(a)X軸に平行に設けられた、微小ループアンテナ素子105Bの半分ループアンテナ部105aa,105ab,105ba,105bb及びループアンテナ部105cからの水平偏波成分の放射と、
(b)Z軸に平行に設けられた、微小ループアンテナ素子105Bの接続導体161−164からの垂直偏波成分の放射とからなる。
本実施形態の垂直偏波成分の放射においても、上述の実施形態と同様に、アンテナ装置と導体板106との距離Dが波長に対して十分短いとき、垂直偏波成分のアンテナ利得が大幅に低下して最小となる。アンテナ装置と導体板106との距離Dが4分の1波長の奇数倍であるとき、垂直偏波成分のアンテナ利得が最大となる。アンテナ装置と導体板106との距離Dが4分の1波長の偶数倍であるとき、垂直偏波成分のアンテナ利得が大幅に低下して最小となる。
また、水平偏波成分の放射においても、上述の実施形態と同様に、アンテナ装置と導体板106との距離Dが波長に対して十分短いとき、水平偏波成分のアンテナ利得が最大となる。アンテナ装置と導体板106との距離Dが4分の1波長の奇数倍であるとき、水平偏波成分のアンテナ利得が大幅に低下して最小となる。アンテナ装置と導体板106との距離Dが4分の1波長の偶数倍であるとき、水平偏波成分のアンテナ利得が最大となる。従って、アンテナ装置が導体板106に近接するとき、水平偏波成分のアンテナ利得が低下するとき、垂直偏波成分のアンテナ利得が増加し、垂直偏波成分のアンテナ利得が低下するとき、水平偏波成分のアンテナ利得が増加するように動作する。
本実施形態において、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一となるように設定することにより、合成成分は、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず実質的に一定となる。アンテナ素子105Bは平衡不平衡変換回路103Pにより平衡給電されるので、アンテナ素子105Bから接地導体板101に直接流れる電流による放射は非常に小さい。接地導体板101からの電波の放射は、アンテナ素子105からの電波の放射によって接地導体板101に誘起される電流による放射が主であるので、接地導体板101からの電波の放射はアンテナ素子105からの電波の放射に比べて小さい。アンテナ装置全体からの電波の放射はアンテナ素子105Bによる放射が主となる。
従って、アンテナ素子105Bの各部位の寸法を所定の値に設定することで、アンテナ装置から放射される垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定することができる。接続導体161,162からの電波の放射は、接続導体161,162の長さ、もしくは接続導体161,163間の距離が増加すると、互いに逆相の電流が流れることによる互いの放射の相殺効果が薄れるため、放射が大きくなる。すなわち、アンテナ装置から放射される水平偏波成分は実質的に一定に保ちつつ、垂直偏波成分は増加する。これは、接続導体163,164についても同様である。接続導体161−164の長さ、接続導体161,163間の距離、接続導体162,164間の距離の値を所定の値に設定することで、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、電波の放射が強く、調整が困難でかつ接地導体板101のサイズや形状により大きく左右されるアンテナ素子105Bから接地導体板101に直接流れる電流による放射を平衡不平衡変換回路103Pにより抑え、アンテナ素子105Bの各部位の寸法を所定の値に設定することで、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得るアンテナ装置を実現できる。また、接続導体161−164の偏波成分と、半分ループアンテナ部105aa,105ab,105ba,105bb及びループアンテナ部105cの偏波成分が直交関係にあるため、当該アンテナ装置は垂直水平両偏波成分を有し、偏波ダイバーシチの効果を得ることができる。
第15の実施形態.
図51は本発明の第15の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105B,205Bを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第15の実施形態に係るアンテナ装置は、図45の第12の実施形態に係るアンテナ装置に比較して以下の点が異なる。
(1)微小ループアンテナ素子105Aに代えて微小ループアンテナ素子105Bを備えたこと。
(2)微小ループアンテナ素子205Aに代えて微小ループアンテナ素子205Bを備えたこと。
以下、当該相違点について説明する。
図51において、微小ループアンテナ素子205Bは、図2(b)の微小ループアンテナ素子105Bと同様に、
(a)それぞれ略矩形形状の3辺で構成され、Z軸に概略平行な実質的に同一面に形成された、各半分巻の半分ループアンテナ部205aa,205abと、
(b)それぞれ略矩形形状の3辺で構成され、Z軸に概略平行な実質的に同一面に形成された、各半分巻の半分ループアンテナ部205ba,205bbと、
(c)Z軸に概略平行なループ面を有する矩形形状であって1巻のループアンテナ部205cと、
(d)X軸と概略平行となるように設けられた接続導体部261aと、Y軸と概略平行となるように設けられた接続導体部261bと、X軸と概略平行となるように設けられた接続導体部261cとをそれぞれ順次概略直角で折り曲げられて連結して含み、半分ループアンテナ部205aaと半分ループアンテナ部205baとを接続する接続導体261と、
(e)X軸と概略平行となるように設けられた接続導体部262aと、Y軸と概略平行となるように設けられた接続導体部262bと、X軸と概略平行となるように設けられた接続導体部262cとをそれぞれ順次概略直角で折り曲げられて連結して含み、半分ループアンテナ部205baとループアンテナ部205cとを接続する接続導体262と、
(f)X軸と概略平行となるように設けられた接続導体部263aと、Y軸と概略平行となるように設けられた接続導体部263bと、X軸と概略平行となるように設けられた接続導体部263cとをそれぞれ順次概略直角で折り曲げられて連結して含み、半分ループアンテナ部205abと半分ループアンテナ部205bbとを接続する接続導体263と、
(g)X軸と概略平行となるように設けられた接続導体部264aと、Y軸と概略平行となるように設けられた接続導体部264bと、X軸と概略平行となるように設けられた接続導体部264cとをそれぞれ順次概略直角で折り曲げられて連結して含み、半分ループアンテナ部205bbとループアンテナ部205cとを接続する接続導体264とから構成される。すなわち、微小ループアンテナ素子205Bは、互いのループの中心軸が平行で、かつ互いのループの巻き方向が逆方向の関係にある右巻き微小ループアンテナ205Ba及び左巻き微小ループアンテナ205Bbの先端同士を接続して構成してなる。
以上のように構成されたアンテナ装置において、微小ループアンテナ素子105Bと微小ループアンテナ素子205Bへの給電をスイッチ208により切り換えることにより、アンテナダイバーシチを行う。
図52は図51のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。図52において、微小ループアンテナ素子105Bへの給電時の電波の放射は、第14の実施形態と同様である。また、微小ループアンテナ素子205Bへの給電時の電波の放射は、微小ループアンテナ素子205Bが、XZ平面において微小ループアンテナ素子105Bに対して直交する向きに設けられているため、接続導体261−264からの電波の放射は水平偏波で行われ。また、半分ループアンテナ部205aa,205ab,205ba,205bb及びループアンテナ部205cからの電波の放射は垂直偏波で行われる。
第14の実施形態と同様に、微小ループアンテナ素子105Bの各部位の寸法を所定の値に設定して、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定した場合、微小ループアンテナ素子105Bへの給電時、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得る。同様に、微小ループアンテナ素子205Bの各部位の寸法を所定の値に設定して、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定した場合、微小ループアンテナ素子205Bへの給電時、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得る。また、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、微小ループアンテナ素子105Bへの給電時のアンテナ装置から放射される偏波成分と、微小ループアンテナ素子205Bへの給電時のアンテナ装置から放射される偏波成分は直交関係にある。
以上説明したように、本実施形態によれば、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得ることができ、さらに、微小ループアンテナ素子105Bと同様の構成を有する微小ループアンテナ素子205Bを、XZ平面において、微小ループアンテナ素子105Bに対して直交する向きに設けることにより、アンテナ装置と導体板106との距離Dが波長に対して十分短いときや4分の1波長の倍数のときなど、垂直水平両偏波のうち一方の偏波が大きく減衰するときでも、微小ループアンテナ素子105B,205Bの各偏波面が互いに直交関係にあるため、偏波ダイバーシチの効果を得ることができる。
第16の実施形態.
図53は本発明の第16の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105B,205Bを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第16の実施形態に係るアンテナ装置は、図51の第15の実施形態に係るアンテナ装置と比較して、以下の点が異なる。
(1)スイッチ208に代えて、90度位相差分配器272を備えたこと。
以上のように構成されたアンテナ装置は、微小ループアンテナ素子105B,205Bの動作を除いて、図47の第13の実施形態に係るアンテナ装置と同様の作用効果を有する。従って、本実施形態によれば、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、偏波ダイバーシチの効果を得ることができ、さらに無線送受信回路102からの制御信号によるスイッチ208の切り換え動作を不要にすることができる。
第17の実施形態.
図54は本発明の17の実施形態に係る、認証キー用アンテナ装置100と対象機器用アンテナ装置300とを備えたアンテナシステムの構成を示す斜視図及びブロック図である。図54において、アンテナシステムは、認証キー用アンテナ装置100と、対象機器用アンテナ装置300とを備えて構成される。認証キー用アンテナ装置100は、使用者が所持する無線通信機能を備えた、例えば第1の実施形態に係るアンテナ装置であって、他の実施形態に係るアンテナ装置であってもよい。対象機器用アンテナ装置300は、無線通信機能を有し、認証キー用アンテナ装置100と無線通信を行う。対象機器用アンテナ装置300は、無線送受信回路301と、水平偏波アンテナ303と、垂直偏波アンテナ304と、切換制御信号Ssに従ってアンテナ303,304を選択的に切り換えるスイッチ302とを備えて構成される。なお、導体板106が認証キー用アンテナ装置100に近接するときの動作は第1の実施形態と同様である。
図55(a)は図54のアンテナシステムにおいて、微小ループアンテナ素子105の垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、認証キー用アンテナ装置100と導体板106との間の距離Dに対する、認証キー用アンテナ装置100から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフである。図55(b)は図54のアンテナシステムにおいて、微小ループアンテナ素子105の垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値よりも大きいときの、認証キー用アンテナ装置100と導体板106との間の距離Dに対する、認証キー用アンテナ装置100から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフである。なお、認証キー用アンテナ装置100が放射する合成成分Comは、垂直偏波成分と水平偏波成分をベクトル合成したものである。
図55(a)から明らかなように、垂直偏波成分のアンテナ利得が水平偏波成分のアンテナ利得より高いとき、認証キー用アンテナ装置100と導体板106との距離が4分の1波長の奇数倍であるとき、合成成分のアンテナ利得は最大となる。また、図55(b)に示すように、垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値と実質的に同一であるとき、認証キー用アンテナ装置100と導体板106との距離にかかわらず、合成成分のアンテナ利得は実質的に一定となる。
微小ループアンテナ素子105は全長が送受信する電波の1波長以下であり微小ループアンテナとして動作するため、利得が非常に小さい。微小ループアンテナ素子105へ不平衡給電を行った場合、微小ループアンテナ素子105からの電波の放射に比べて、接地導体板101からの磁流電流による電波の放射が大きく、認証キー用アンテナ装置100と導体板106との距離Dと、導体板106と反対方向の認証キー用アンテナ装置100の利得の関係は図55(b)と同様になる。一方、微小ループアンテナ素子105へ平衡給電を行った場合、接地導体板101からの電波の放射が低下し、微小ループアンテナ素子105からの電波の放射と、接地版101からの電波の放射が実質的に同一になり、認証キー用アンテナ装置100と導体板106との距離Dと、導体板106と反対方向の認証キー用アンテナ装置100の利得の関係は図55(a)と同様になる。
認証キー用アンテナ装置100において、バラン1031を有する給電回路103を用いて微小ループアンテナ素子105へ平衡給電を行うことで、微小ループアンテナ素子105は垂直偏波成分と水平偏波成分の利得が実質的に同一になり、認証キー用アンテナ装置100と導体板106との距離Dにかかわらず合成成分のアンテナ利得を実質的に一定とすることができる。
図54の対象機器用アンテナ装置300において、無線送受信回路301は、送信無線信号を生成して出力し、入力された受信無線信号を復調する。無線送受信回路301は、送信回路のみ、又は受信回路のみであってもよい。また、無線送受信回路301はスイッチ302を制御するための切換制御信号Ssを出力する。スイッチ302は、切換制御信号Ssに基づいて、無線送受信回路301を水平偏波アンテナ303と垂直偏波アンテナ304のうちの一方に接続する。なお、スイッチ302の代わりに信号分配器又は信号合成器を用いてもよい。水平偏波アンテナ303は例えばスリーブアンテナやダイポールアンテナなどの線状アンテナであって、X軸に平行となるように設けられる。垂直偏波アンテナ304は例えばスリーブアンテナやダイポールアンテナなどの線状アンテナであって、Z軸に平行となるように設けられる。
以上のように構成された対象機器用アンテナ装置300において、例えば、水平偏波アンテナ203により受信された認証キー用アンテナ装置100からの電波の無線信号と、垂直偏波アンテナ204により受信された認証キー用アンテナ装置100からの電波の無線信号とを、それらのうちのより大きな受信電力を有する無線信号を受信するようにスイッチ302を用いて選択的に切り換えることにより、アンテナダイバーシチを行う。
認証キー用アンテナ装置100は導体板106との距離Dにより、放射する偏波成分が変化する。導体板106との距離Dが波長に対して十分短いときや4分の1波長の倍数であるときは、垂直偏波と水平偏波とのうちいずれか一方が強く放射される。すなわち、対象機器用アンテナ装置300が受信できる電波の偏波成分と認証キー用アンテナ装置100から放射される偏波成分が不一致の場合、認証キー用アンテナ装置100のアンテナの利得は劣化する。対象機器用アンテナ装置300に水平偏波アンテナ203及び垂直偏波アンテナ204を備えることで垂直水平両偏波の電波を受信することができ、認証キー用アンテナ装置100と導体板106との距離Dにかかわらず、実質的に一定の強度の電波を受信することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、バラン1031を有する給電回路103を用いて微小ループアンテナ素子105へ平衡給電を行うことで、微小ループアンテナ素子105からの水平偏波成分の放射と垂直偏波成分の放射とを実質的に同一にすることで、導体板106との距離Dによる認証キー用アンテナ装置100の利得変動を小さくできる。また、対象機器用アンテナ装置300に水平偏波アンテナ203及び垂直偏波アンテナ204を備えることで、導体板106との距離Dの変化により認証キー用アンテナ装置100の放射する偏波成分が変化しても、対象機器用アンテナ装置300は一定の強度で電波を受信することができる。対象機器用アンテナ装置300と認証キー用アンテナ装置100の偏波成分不一致による認証キー用アンテナ装置100のアンテナの利得劣化を防ぐことができる。また、対象機器用アンテナ装置300に水平偏波アンテナ203及び垂直偏波アンテナ204を備えることで偏波ダイバーシチの効果を得ることができ、フェージングの影響を回避できる。
以上説明したように、本実施形態によれば、導体板106との距離Dによる認証キーのアンテナの利得の変動が小さく、かつフェージングの影響を回避できる認証キー用アンテナ装置100と対象機器用アンテナ装置300を備えたアンテナシステムを提供することができる。従って、例えば、本発明に係るアンテナシステムを、例えば、距離によるセキュリティの確保が必要な機器により構成されるアンテナシステムに適用できる。
第18の実施形態.
図56は本発明の第18の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105Cを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第18の実施形態に係るアンテナ装置は、図48の第14の実施形態に係るアンテナ装置に比較して以下の点が異なる。
(1)微小ループアンテナ素子105Bに代えて、微小ループアンテナ素子105Cを備えたこと。
(2)平衡不平衡変換回路103P及びインピーダンス整合回路104に代えて、分配器103Q、振幅位相変換器103R及びインピーダンス整合回路104A,104Bを備えたこと。
以下、当該相違点について説明する。
図56において、微小ループアンテナ素子105Cは微小ループアンテナ素子105Bに比較して以下の点が異なる。
(a)ループアンテナ部105cは、左半分の半分ループアンテナ部105caと、右半分の半分ループアンテナ部105cbとに二分される。
(b)半分ループアンテナ部105caは1回巻きののち、Z軸に概略平行な接続導体165を介して給電点Q11に接続され、給電点Q11は給電導体153を介してインピーダンス整合回路104Aに接続される。なお、半分ループアンテナ部105aaの一端の給電点Q1は給電導体151を介してインピーダンス整合回路104Aに接続される。
(c)半分ループアンテナ部105cbは1回巻きののち、Z軸に概略平行な接続導体166を介して給電点Q12に接続され、給電点Q12は給電導体154を介してインピーダンス整合回路104Bに接続される。なお、半分ループアンテナ部105abの一端の給電点Q2は給電導体152を介してインピーダンス整合回路104Bに接続される。インピーダンス整合回路104A,104Bは図1のインピーダンス整合回路104のインピーダンス整合機能を有し、微小ループアンテナ素子105Cの給電点Q1,Q2,Q11,Q12に不平衡無線信号を印加する。
(d)半分ループアンテナ部105aa,105ba,105caにより左半分の右巻き微小ループアンテナ105Caを構成し、半分ループアンテナ部105ab,105bb,105cbにより右半分の左巻き微小ループアンテナ105Cbを構成する。すなわち、微小ループアンテナ素子105Cは右巻き微小ループアンテナ105Caと左巻き微小ループアンテナ105Cbとから構成される。
図56において、分配器103Qは無線送受信回路102からの送信無線信号を2分配して振幅位相変換器103R及びインピーダンス整合回路104Bに出力する。振幅位相変換器103Rは振幅可変機能及び移相器機能を有し、入力された無線信号の振幅と位相の少なくとも一方を所定の値に変換してインピーダンス整合回路104Aに出力する。
本実施形態において、右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻き微小ループアンテナ105Cbへそれぞれもし平衡給電するとき(変形例)、インピーダンス整合回路104A,104Bは、インピーダンス整合処理の他に不平衡/平衡変換処理を行う。右巻き微小ループアンテナ105Caは右回り方向に螺旋状に巻回してなり、そのループ面が接地導体板101の面に対して概略垂直になるように設けられ、その2つの給電点Q1,Q11がインピーダンス整合回路104Aに接続される。また、左巻き微小ループアンテナ105Cbは左回り方向に螺旋状に巻回してなり、そのループ面が接地導体板101の面に対して概略垂直になるように設けられ、その2つの給電点Q2,Q12がインピーダンス整合回路104Bに接続される。なお、右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻き微小ループアンテナ105Cbの各長さはそれぞれ、図1の微小ループアンテナ素子105と同様の微小長さを有する。
図57は、図56のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。アンテナ装置からの電波の放射は、右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻き微小ループアンテナ105Cbから行われ、
(1)接続導体161−166においてZ軸方向に流れる電流による垂直偏波成分と、
(2)各半分ループアンテナ部105aa,105ab,105ba,105bb,105ca,105cbのX軸方向及びY軸方向でループ形状で流れる電流による水平偏波成分とからなる。
図57に示すように、アンテナ装置に導体板106がY軸方向より近接するとき、垂直偏波成分を放射するZ軸方向の部位は、導体板106に対して平行となるため、アンテナ装置と導体板106との距離Dと、導体板106と反対方向のアンテナ装置の垂直偏波成分のアンテナ利得との関係は、第1の実施形態の図6(b)と同様に、アンテナ装置と導体板106との距離Dが波長に対して十分短いとき、垂直偏波成分のアンテナ利得が大幅に低下して最小となる。アンテナ装置と導体板106との距離Dが4分の1波長の奇数倍であるとき、垂直偏波成分のアンテナ利得が最大となる。また、アンテナ装置と導体板106との距離Dが4分の1波長の偶数倍であるとき、垂直偏波成分のアンテナ利得が大幅に低下して最小となる。
また、水平偏波成分を放射するX軸方向及びY軸方向の部位は、形成するループ面が導体板106に対して垂直となるため、アンテナ装置と導体板106との距離Dと、導体板106と反対方向のアンテナ装置の水平偏波成分のアンテナ利得との関係は、第1の実施形態の図5(b)と同様に、アンテナ装置と導体板106との距離Dが波長に対して十分短いとき、水平偏波成分のアンテナ利得が最大となる。また、アンテナ装置と導体板106との距離Dが4分の1波長の奇数倍であるとき、水平偏波成分のアンテナ利得が大幅に低下して最小となる。さらに、アンテナ装置と導体板106との距離Dが4分の1波長の偶数倍であるとき、水平偏波成分のアンテナ利得が最大となる。従って、アンテナ装置が導体板106に近接するとき、水平偏波成分のアンテナ利得が低下するとき、垂直偏波成分のアンテナ利得が増加し、垂直偏波成分のアンテナ利得が低下するとき、水平偏波成分のアンテナ利得が増加するように動作する。
図58は図56の右巻き微小ループアンテナ105Caと、左巻き微小ループアンテナ105Cbとに対して同相で無線信号を不平衡給電したときの微小ループアンテナ素子105Cの電流方向を示す斜視図である。図58から明らかなように、同相給電のとき、水平偏波を放射する部位である右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻き微小ループアンテナ105Cbが形成するループに流れる電流は、回転方向が互いに逆であるため、水平偏波成分は低下する。また、垂直偏波を放射する部位である右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻き微小ループアンテナ105CbのZ軸方向の部位に流れる電流は、互いに同じ方向であるため、垂直偏波成分は高くなる。
図59は図56の右巻き微小ループアンテナ105Caと、左巻き微小ループアンテナ105Cbとに対して逆相で無線信号を不平衡給電したときの微小ループアンテナ素子105Cの電流方向を示す斜視図である。図59から明らかなように、逆相給電のとき、接続導体165,166は接地導体板101に短絡して給電する。
図60は図56の微小ループアンテナ素子105Cの右巻き微小ループアンテナ105Caと、左巻き微小ループアンテナ105Cbとに対して印加する2つの無線信号の位相差に対する水平偏波成分及び垂直偏波成分のXY平面の平均アンテナ利得を示すグラフである。このグラフは、周波数426MHzにおける計算値である。図60から明らかなように、右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻き微小ループアンテナ105Cbのそれぞれに給電する2つの無線信号の位相差Pdと振幅差Adのうちの少なくとも一方を変化させることにより、垂直偏波成分及び水平偏波成分のアンテナ利得を変化させることができ、また、位相差Pdを110度付近に設定することにより、互いの偏波成分を実質的に同一に調整することができることがわかる。
以上説明したように、本実施形態によれば、右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻き微小ループアンテナ105Cbのそれぞれに給電する2つの無線信号の位相差Pd及び振幅差Adを所定の値に設定することにより、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一となるように設定することができ、これにより、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得るアンテナ装置を実現できる。
第19の実施形態.
図61は本発明の第19の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105C,205Cを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。第19の実施形態に係るアンテナ装置は、図51の第15の実施形態に係るアンテナ装置に比較して以下の点が異なる。
(1)微小ループアンテナ素子105Bに代えて、微小ループアンテナ素子105Cを備えたこと。
(2)微小ループアンテナ素子205Bに代えて、微小ループアンテナ素子105Cと同様の構成を有し、微小ループアンテナ素子105Cとそのループ軸が直交するように設けられた微小ループアンテナ素子205Cを備えたこと。
(3)平衡不平衡変換回路103P及びインピーダンス整合回路104に代えて、分配器103Q、振幅位相変換器103R及びインピーダンス整合回路104A,104Bを備えたこと。
(4)平衡不平衡変換回路203P及びインピーダンス整合回路204に代えて、分配器103Q、振幅位相変換器103R及びインピーダンス整合回路104A,104Bとそれぞれお同様の構成を有する分配器203Q、振幅位相変換器203R及びインピーダンス整合回路204A,204Bを備えたこと。
(5)スイッチ208に代えて、図36の偏波切換回路208Aを備えたこと。
以下、当該相違点について説明する。
図61において、微小ループアンテナ素子205Cは、半分ループアンテナ部205aa,205ab,205ba,205bb,205ca,205cbと、接続導体261−266とを備えて構成され、給電点Q3,Q13,Q4,Q14を有する。給電点Q3,Q13はそれぞれ給電導体251,253を介してインピーダンス整合回路204Aに接続され、給電点Q4,Q14はそれぞれ給電導体252,254を介してインピーダンス整合回路204Bに接続される。さらに、分配器203Qは無線送受信回路102から偏波切換回路208Aを介して入力される送信無線信号を2分配して振幅位相変換器203R及びインピーダンス整合回路204Bに出力する。振幅位相変換器203Rは入力された無線信号の振幅と位相の少なくとも一方を所定の値に変換してインピーダンス整合回路204Aに出力する。
図62(a)は図61のアンテナ装置において、微小ループアンテナ素子105Cの右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻き微小ループアンテナ105Cbに無線信号を給電したときに、微小ループアンテナ素子105Cの垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、アンテナ装置と導体板106との間の距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフであり、図62(b)は図61のアンテナ装置において、微小ループアンテナ素子205Cの右巻き微小ループアンテナ205Ca及び左巻き微小ループアンテナ205Cbに無線信号を給電したときに、微小ループアンテナ素子205Cの垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、アンテナ装置と導体板106との間の距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフである。
第18の実施形態と同様に、右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻き微小ループアンテナ105Cbのそれぞれに給電する2つの無線信号の位相差及び振幅差を所定の値に設定することにより、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定した場合、図62(a)に示すように、右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻き微小ループアンテナ105Cbへの給電時、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得る。同様に、右巻き微小ループアンテナ205Ca及び左巻き微小ループアンテナ205Cbのそれぞれに給電する2つの無線信号の位相差及び振幅差を所定の値に設定することにより、垂直偏波成分と水平偏波成分の各アンテナ利得を実質的に同一に設定した場合、図62(b)に示すように、右巻き微小ループアンテナ205Ca及び左巻き微小ループアンテナ205Cbへの給電時、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず実質的に一定の合成成分のアンテナ利得を得ることができる。また、アンテナ装置と導体板106との距離Dにかかわらず、右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻き微小ループアンテナ105Cbへの給電時のアンテナ装置から放射される偏波成分と、右巻き微小ループアンテナ205Ca及び左巻き微小ループアンテナ205Cbへの給電時のアンテナ装置から放射される偏波成分は直交関係にある。
接地導体板101の形状が実質的に正方形であり、右巻き微小ループアンテナ105Caと左巻き微小ループアンテナ105Cb、及び右巻き微小ループアンテナ205Ca及び左巻き微小ループアンテナ205Cbの寸法が略同じであるため、右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻き微小ループアンテナ105Cbへの給電時と、右巻き微小ループアンテナ205Ca及び左巻き微小ループアンテナ205Cbへの給電時でアンテナの利得は変わることはなく、偏波のみが90度変化するので、偏波切換回路208Aによる偏波切り換えによる利得変動は生じない。
以上説明したように、本実施形態によれば、右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻き微小ループアンテナ105Cbと同様の構成を有する右巻き微小ループアンテナ205Ca及び左巻き微小ループアンテナ205Cbを、XZ平面において、右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻き微小ループアンテナ105Cbに対して直交する向きに設けることにより、アンテナ装置と導体板106との距離Dが波長に対して十分短いときや4分の1波長の倍数のときなど、垂直水平両偏波のうち一方の偏波が大きく減衰する場合においても、右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻き微小ループアンテナ105Cb、並びに右巻き微小ループアンテナ205Ca及び左巻き微小ループアンテナ205Cbへの給電を偏波切換回路208Aにより切り換えて偏波面を90度変化させることで、通信姿勢の変動によって生じる偏波面不一致による利得変動を抑えることができる。
実施例1において、ループ間隔に対する放射変化についてのシミュレーションとその結果について以下に説明する。
図63は本実施形態の実施例1において、ループ間隔に対する放射変化についてのシミュレーションとその結果を得るための微小ループアンテナ素子105の構成を示す斜視図である。図63において、105fは微小ループアンテナ素子105のいわゆるループ戻り部である接続導体であり、Weは微小ループアンテナ素子105の素子幅であり、Glはループ間隔である。
図64(a)は実施例1の微小ループアンテナ素子において素子幅We及び偏波を変化したときのループ間隔に対する平均アンテナ利得を示すグラフであり、図64(b)は実施例1の微小ループアンテナ素子において偏波を変化したときのループ戻り部の長さに対する平均アンテナ利得を示すグラフであり、図64(c)は実施例1の微小ループアンテナ素子において偏波を変化したときのループ戻り部の長さに対する平均アンテナ利得を示すグラフである。また、図65(a)は実施例1の微小ループアンテナ素子において偏波を変化したときのループ面積とループ間隔の比に対する平均アンテナ利得を示すグラフであり、図65(b)は実施例1の微小ループアンテナ素子において偏波を変化したときのループ面積とループ間隔の比に対する平均アンテナ利得を示すグラフである。さらに、図66(a)は実施例1の微小ループアンテナ素子において偏波を変化したときのループ面積とループ戻り部の長さの比に対する平均アンテナ利得を示すグラフであり、図66(b)は実施例1の微小ループアンテナ素子において偏波を変化したときのループ面積とループ戻り部の長さの比に対する平均アンテナ利得を示すグラフである。
図64(a)から明らかなように、ループ面積を固定とすると、ループ間隔の増加に伴い、水平偏波成分Hは一定で、垂直偏波成分Vのみが単調に増加します。また、図65(a)及び図65(b)から明らかなように、ループ面積とループ間隔の比が6から7程度で水平偏波成分Hと垂直偏波成分Vが実質的に同一になり最も好ましい。例えば、機構的な制約でループ間隔がとれず、垂直偏波成分Vが水平偏波成分Hに比べて小さい場合、平衡給電の位相差及び振幅差を変化させることで、垂直偏波成分Vを増加させることができる。さらに、図64(a)から明らかなように、ループ間隔が増加すると水平偏波成分Hは一定で、垂直偏波成分Vは単調に増加の様子は素子幅を変えても変わらない。また、素子幅による放射効率の増加が微小ループアンテナと線状アンテナで異なるので、水平偏波成分Hと垂直偏波成分Vの比を単純にループ面積とループ戻り部の比で表せないということがわかる。
実施例2において、螺旋巻き微小ループアンテナ素子105の巻数による水平偏波成分及び垂直偏波成分の調整方法について以下に説明する。
図67(a)は本実施形態の実施例2に係る微小ループアンテナ素子105(螺旋コイル形状の微小ループアンテナ素子)の巻数に対する、水平偏波に関するXY平面の平均アンテナ利得を示すグラフであり、図67(b)は本実施形態の実施例2に係る微小ループアンテナ素子105(螺旋コイル形状の微小ループアンテナ素子)の巻数に対する、垂直偏波に関するXY平面の平均アンテナ利得を示すグラフである。図67(a)及び図67(b)から明らかなように、微小ループアンテナ素子105の巻数を変化させることにより、水平偏波成分と垂直偏波成分のバランスを調整することができる。
実施例3において、第1乃至第3の実施形態に係る微小ループアンテナ素子105において、振幅差Ad及び位相差Pdを両方変化させた場合について以下に説明する。
図68は第1乃至第3の実施形態の実施例3に係る微小ループアンテナ素子において、振幅差Adに対する平均アンテナ利得を示すグラフである。また、図69は第1乃至第3の実施形態の実施例3に係る微小ループアンテナ素子において、位相差Pdに対する平均アンテナ利得を示すグラフである。さらに、図70は第1乃至第3の実施形態の実施例3に係る微小ループアンテナ素子において、振幅差Ad及び偏波を変化したときの位相差Pdに対する平均アンテナ利得を示すグラフである。図68乃至図70から明らかなように、振幅差Ad及び位相差Pdの少なくとも一方を変化させることにより各偏波成分の平均アンテナ利得を変化させることができる。
実施例4においては、インピーダンス整合回路104の各種インピーダンス整合方法について以下に説明する。微小ループアンテナ素子105は放射抵抗が小さいため、損失の非常に小さいインピーダンス整合回路104が必要である。インダクタはキャパシタに比べて損失が大きいため、インピーダンス整合回路104に使用すると、放射効率が劣化し、アンテナ利得が大幅に低下する。従って、以下に示すインピーダンス整合方法を用いることが好ましい。
図71(a)は本実施形態の実施例4に係る、第1のインピーダンス整合方法を用いたインピーダンス整合回路104−1の構成を示す回路図であり、図71(b)は図71(a)の第1のインピーダンス整合方法を示すスミスチャートである。図71(a)において、インピーダンス整合回路104−1は並列キャパシタCpを備えて構成される。図71(b)に示すように、微小ループアンテナ素子105の入力インピーダンスZaを、並列キャパシタCpによりインピーダンスの虚部を0にして並列共振させてインピーダンスZb1とした後(601)、バラン1031のインピーダンス変換により入力インピーダンスZcにインピーダンス整合させる(602)ことができる。
図72(a)は本実施形態の実施例4に係る、第2のインピーダンス整合方法を用いたインピーダンス整合回路104−2の構成を示す回路図であり、図72(b)は図72(a)の第2のインピーダンス整合方法を示すスミスチャートである。図72(a)において、インピーダンス整合回路104−2は2個の直列キャパシタCs1,Cs2を備えて構成される。図72(b)に示すように、微小ループアンテナ素子105の入力インピーダンスZaを、2個の直列キャパシタCs1,Cs2によりインピーダンスの虚部を0にして直列共振させてインピーダンスZb2とした後(611)、バラン1031のインピーダンス変換により入力インピーダンスZcにインピーダンス整合させる(612)ことができる。
図73(a)は本実施形態の実施例4に係る、第3のインピーダンス整合方法を用いたインピーダンス整合回路104−3の構成を示す回路図であり、図73(b)は図73(a)の第3のインピーダンス整合方法を示すスミスチャートである。図73(a)において、インピーダンス整合回路104−3は並列キャパシタCp11及び2個の直列キャパシタCs11,Cs12を備えて構成される。図73(b)に示すように、微小ループアンテナ素子105の入力インピーダンスZaを、直列キャパシタCs11,Cs12によりインピーダンスZb3にインピーダンス変換して後(631)、並列キャパシタCp11によりインピーダンスZcにインピーダンス変換させる(632)ことができる。なお、バラン1031は省略してもよい。
図74(a)は本実施形態の実施例4に係る、第4のインピーダンス整合方法を用いたインピーダンス整合回路104−4の構成を示す回路図であり、図74(b)は図74(a)の第4のインピーダンス整合方法を示すスミスチャートである。図74(a)において、インピーダンス整合回路104−4は並列キャパシタCp21及び2個の直列キャパシタCs21,Cs22を備えて構成される。図74(b)に示すように、微小ループアンテナ素子105の入力インピーダンスZaを、並列キャパシタCp21によりインピーダンスZb4にインピーダンス変換させた後(631)、直列キャパシタCs21,Cs22によりインピーダンスZcにインピーダンス変換させる(632)ことができる。なお、バラン1031は省略してもよい。
図75は本実施形態の実施例4に係る、図71乃至図74のバラン1031の構成を示す回路図である。図75において、Zoutを平衡側インピーダンスとし、Zinを不平衡側インピーダンスとする。ここで、バランの設定周波数は次式で表される。
以上の実施例4において、以下の変形例を用いることができる。すなわち、図3及び図4に記載の給電点Q1,Q2において位相差を発生させる方法として以下の方法を用いることができる。
(A)図72の直列キャパシタCs1,Cs2の容量値をCs1=Cs2ではなくCs1≠Cs2(例えばCs1>Cs2)とすることで位相差を持たせることができる。
(B)図73の直列キャパシタCs11、Cs12の容量値をCs11=Cs12ではなくCs11≠Cs12(例えばCs11>Cs12)とすることで位相差を持たせることができる。
実施例5において、第17の実施形態に係るアンテナシステムにおけるアンテナの最適な高さについて以下に説明する。
図76(a)は第17の実施形態の実施例5に係る、認証キー装置100と、微小ループアンテナ素子105を有する対象機器用アンテナ装置300を備えたアンテナシステムにおいて両装置100,300の各アンテナ高を実質的に同一に設定したときの両装置100,300間の距離Dに対する受信電力を示す電波伝搬特性図であり、図76(b)は第17の実施形態の実施例5に係る、認証キー装置100と、半波長ダイポールアンテナを有する対象機器用アンテナ装置300を備えたアンテナシステムにおいて両装置100,300の各アンテナ高を実質的に同一に設定したときの両装置100,300間の距離Dに対する受信電力を示す電波伝搬特性図である。これらの特性は、パーソナルコンピュータ持ち出し管理システム、学童見守りシステム、キーレスエントリーシステムなどで使用される400MHzのアクティブタグシステムで得られたものである。
図76(a)及び図76(b)から明らかなように、アンテナの高さは、送受ともに同じ高さが最も指向性の影響を受けにくく、好ましい。また、地面方向にヌル点がある方うが反射波の影響を受けにくい。さらに、垂直偏波の方が反射波の影響を受けにくい。また、線状アンテナを使用する場合、垂直偏波アンテナで送受のアンテナの高さが実質的に同一のときが距離検知に適している。これは互いに指向性の影響を受けず、反射波はアンテナのヌル点効果と垂直偏波の反射係数が小さいことにより反射波の影響が最も小さいためである。また、微小ループアンテナを使用する場合、送受のアンテナの高さが実質的に同一のときが距離検知に適しており、偏波面による差はあまりない。
実施形態のまとめ.
以上の実施形態は以下の3つのグループに分類できる。
<グループ1>1つの微小ループアンテナ素子:実施形態の番号は1,7−9,11,14,18;
<グループ2>互いに直交する2つの微小ループアンテナ素子:実施形態の番号は2−6,10,12−13,15−17,19;
<グループ3>アンテナシステム:実施形態の番号は17。
上記グループ1において、各実施形態において、同一のグループの他の実施形態における構成要素を組み合わせ構成してもよい。また、上記グループ2において、グループ1の各微小ループアンテナ素子を用いることができ、同一グループの他の実施形態における構成要素を組み合わせ構成してもよい。さらに、上記グループ3において、グループ1の各微小ループアンテナ素子を用いることができる。
以上詳述したように、本発明に係るアンテナ装置によれば、アンテナ装置と導体板との距離にかかわらず、実質的に一定の利得を得ることができ、かつ通信品質の低下を防止できるアンテナ装置を実現できる。また、例えば、認証通信時に、上記微小ループアンテナ素子から放射する偏波成分のアンテナ利得低下を抑えつつ、上記接続導体から放射する偏波成分のアンテナ利得を高くすることで、従来技術に比較して高い通信品質を得るアンテナ装置を実現できる。さらに、垂直水平両偏波のうち一方の偏波が大きく減衰するときでも、偏波ダイバーシチの効果を得ることができる。従って、本発明のアンテナ装置を、例えば、距離によるセキュリティの確保が必要な機器に搭載されるアンテナ装置として適用できる。
また、本発明に係るアンテナシステムによれば、導体板との距離による認証キーのアンテナの利得の変動が小さく、かつフェージングの影響を回避できる認証キー用アンテナ装置と対象機器用アンテナ装置を備えたアンテナシステムを実現できる。
本発明の第1の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
(a)は第1の実施形態の第1の変形例の微小ループアンテナ素子105Aの構成を示す斜視図であり、(b)は第1の実施形態の第2の変形例の微小ループアンテナ素子105Bの構成を示す斜視図である。
図1の給電回路103の構成を示すブロック図である。
(a)は図3の給電回路103の第1の変形例である給電回路103Aの構成を示すブロック図であり、(b)は図3の給電回路103の第2の変形例である給電回路103Bの構成を示すブロック図であり、(c)は図3の給電回路103の第3の変形例である給電回路103Cの構成を示すブロック図である。
(a)は図1の微小ループアンテナ素子105が導体板106に近接するときの距離Dを示す正面図であり、(b)は距離Dに対する、導体板106に向かう方向と反対方向での微小ループアンテナ素子105のアンテナ利得を示すグラフである。
(a)は図1の線状アンテナ素子160が導体板106に近接するときの距離Dを示す正面図であり、(b)は距離Dに対する、導体板106に向かう方向と反対方向での線状アンテナ素子160のアンテナ利得を示すグラフである。
図1のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。
(a)は図1の微小ループアンテナ素子105の垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値よりも大きいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフであり、(b)は図1の微小ループアンテナ素子105の垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値よりも小さいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフであり、(c)は図1の微小ループアンテナ素子105の垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフである。
図1の微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の位相差に対するXY平面の平均アンテナ利得を示すグラフである。
本発明の第2の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105,205を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
図10のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。
(a)は図10の微小ループアンテナ素子105に無線信号を給電したときに、垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフであり、(b)は図10の微小ループアンテナ素子205に無線信号を給電したときに、垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフである。
本発明の第3の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105,205を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
本発明の第4の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
図14の給電回路103Dの構成を示すブロック図である。
(a)は図15の給電回路103Dの第1の変形例である給電回路103Eの構成を示すブロック図であり、(b)は図15の給電回路103Dの第2の変形例である給電回路103Fの構成を示すブロック図であり、(c)は図15の給電回路103Dの第3の変形例である給電回路103Gの構成を示すブロック図である。
図15、図16(a)、図16(b)及び図16(c)の可変移相器1033,1033A,1033Bの第1の実施例である可変移相器1033−1の詳細構成を示す回路図である。
図15、図16(a)、図16(b)及び図16(c)の可変移相器1033,1033A,1033Bの第2の実施例である可変移相器1033−2の詳細構成を示す回路図である。
本発明の第5の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105,205を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
本発明の第6の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105,205を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
本発明の第7の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105を備えたアンテナ装置(図1の給電回路103を除き、図1のアンテナ装置と同様の構成を有する。)において用いる給電回路103Hの構成を示すブロック図である。
(a)は図21の給電回路103Hの第1の変形例である給電回路103Iの構成を示すブロック図であり、(b)は図21の給電回路103Hの第2の変形例である給電回路103Jの構成を示すブロック図であり、(c)は図21の給電回路103Hの第3の変形例である給電回路103Kの構成を示すブロック図である。
第7の実施形態に係るアンテナ装置において、給電回路103Hの減衰器1071の減衰量に対する、XY平面の平均アンテナ利得を示すグラフである。
本発明の第8の実施形態に係る、図21の変形例である給電回路103Lの構成を示すブロック図である。
(a)は図24の給電回路103Lの第1の変形例である給電回路103Mの構成を示すブロック図であり、(b)は図24の給電回路103Lの第2の変形例である給電回路103Nの構成を示すブロック図であり、(c)は図24の給電回路103Lの第3の変形例である給電回路103Oの構成を示すブロック図である。
図24、図25(a)、図25(b)及び図25(c)の可変減衰器1074の第1の実施例である可変減衰器1074−1の詳細構成を示す回路図である。
図24、図25(a)、図25(b)及び図25(c)の可変減衰器1074の第2の実施例である可変減衰器1074−2の詳細構成を示す回路図である。
本発明の第9の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
図28の平衡不平衡変換回路103Pの構成を示す回路図である。
(a)は図29の平衡不平衡変換回路103Pにおける平衡端子T2を流れる無線信号と、平衡端子T3を流れる無線信号との間の振幅差Adの周波数特性を示すグラフであり、(b)は図29の平衡不平衡変換回路103Pにおける平衡端子T2を流れる無線信号と、平衡端子T3を流れる無線信号との間の位相差Pdの周波数特性を示すグラフである。
図28の微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の振幅差Adに対するXY平面の平均アンテナ利得を示すグラフである。
(a)乃至(j)は図28の微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の振幅差Adを−10dBから−1dBまで変化したときのXY平面の水平偏波成分の放射パターンを示す図である。
(a)乃至(k)は図28の微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の振幅差Adを0dBから10dBまで変化したときのXY平面の水平偏波成分の放射パターンを示す図である。
(a)乃至(j)は図28の微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の振幅差Adを−10dBから−1dBまで変化したときのXY平面の垂直偏波成分の放射パターンを示す図である。
(a)乃至(k)は図28の微小ループアンテナ素子105に給電する2つの無線信号の振幅差Adを0dBから10dBまで変化したときのXY平面の垂直偏波成分の放射パターンを示す図である。
本発明の第10の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105,205を備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
(a)は図36の変形例に係る偏波切換回路208Aの構成を示す回路図であり、(b)は上記偏波切換回路208Aの変形例である偏波切換回路208Aaの構成を示す回路図である。
図36のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。
(a)は図36の微小ループアンテナ素子105に無線信号を給電したときに、垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフであり、(b)は図36の微小ループアンテナ素子205に無線信号を給電したときに、垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフである。
本発明の第11の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105Aを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
図40の微小ループアンテナ素子105Aの電流方向を示す斜視図である。
図40のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。
(a)は図40の接続導体105da,105dbの長さに対する微小ループアンテナ素子105AのXY平面の水平偏波成分の平均アンテナ利得を示すグラフであり、(b)は図40の接続導体105da,105dbの長さに対する微小ループアンテナ素子105AのXY平面の垂直偏波成分の平均アンテナ利得を示すグラフである。
(a)は図40の接続導体105da,105db間の距離に対する微小ループアンテナ素子105AのXY平面の水平偏波成分の平均アンテナ利得を示すグラフであり、(b)は図40の接続導体105da,105db間の距離に対する微小ループアンテナ素子105AのXY平面の垂直偏波成分の平均アンテナ利得を示すグラフである。
本発明の第12の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105A,205Aを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
図45のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。
本発明の第13の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105A,205Aを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
本発明の第14の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105Bを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
図48の微小ループアンテナ素子105Bの電流方向を示す斜視図である。
図48のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。
本発明の第15の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105B,205Bを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
図51のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。
本発明の第16の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105B,205Bを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
本発明の17の実施形態に係る、認証キー用アンテナ装置100と対象機器用アンテナ装置300とを備えたアンテナシステムの構成を示す斜視図及びブロック図である。
(a)は図54のアンテナシステムにおいて、微小ループアンテナ素子105の垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、認証キー用アンテナ装置100と導体板106との間の距離Dに対する、認証キー用アンテナ装置100から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフであり、(b)は図54のアンテナシステムにおいて、微小ループアンテナ素子105の垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値よりも大きいときの、認証キー用アンテナ装置100と導体板106との間の距離Dに対する、認証キー用アンテナ装置100から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフである。
本発明の第18の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105Cを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
図56のアンテナ装置が導体板106に近接するときの両者の位置関係及び距離Dを示す斜視図である。
図56の右巻き微小ループアンテナ105Caと、左巻き微小ループアンテナ105Cbとに対して同相で無線信号を不平衡給電したときの微小ループアンテナ素子105Cの電流方向を示す斜視図である。
図56の右巻き微小ループアンテナ105Caと、左巻き微小ループアンテナ105Cbとに対して逆相で無線信号を不平衡給電したときの微小ループアンテナ素子105Cの電流方向を示す斜視図である。
図56の微小ループアンテナ素子105Cの右巻き微小ループアンテナ105Caと、左巻き微小ループアンテナ105Cbとに対して印加する2つの無線信号の位相差に対する水平偏波成分及び垂直偏波成分のXY平面の平均アンテナ利得を示すグラフである。
本発明の第19の実施形態に係る、微小ループアンテナ素子105C,205Cを備えたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
(a)は図61のアンテナ装置において、微小ループアンテナ素子105Cの右巻き微小ループアンテナ105Ca及び左巻き微小ループアンテナ105Cbに無線信号を給電したときに、微小ループアンテナ素子105Cの垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、アンテナ装置と導体板106との間の距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフであり、(b)は図61のアンテナ装置において、微小ループアンテナ素子205Cの右巻き微小ループアンテナ205Ca及び左巻き微小ループアンテナ205Cbに無線信号を給電したときに、微小ループアンテナ素子205Cの垂直偏波成分のアンテナ利得の最大値が水平偏波成分のアンテナ利得の最大値に実質的に等しいときの、アンテナ装置と導体板106との間の距離Dに対する、アンテナ装置から導体板106に向かう方向とは反対の方向での合成アンテナ利得を示すグラフである。
本実施形態の実施例1において、ループ間隔に対する放射変化についてのシミュレーションとその結果を得るための微小ループアンテナ素子105の構成を示す斜視図である。
(a)は実施例1の微小ループアンテナ素子において素子幅We及び偏波を変化したときのループ間隔に対する平均アンテナ利得を示すグラフであり、(b)は実施例1の微小ループアンテナ素子において偏波を変化したときのループ戻り部の長さに対する平均アンテナ利得を示すグラフであり、(c)は実施例1の微小ループアンテナ素子において偏波を変化したときのループ戻り部の長さに対する平均アンテナ利得を示すグラフである。
(a)は実施例1の微小ループアンテナ素子において偏波を変化したときのループ面積とループ間隔の比に対する平均アンテナ利得を示すグラフであり、(b)は実施例1の微小ループアンテナ素子において偏波を変化したときのループ面積とループ間隔の比に対する平均アンテナ利得を示すグラフである。
(a)は実施例1の微小ループアンテナ素子において偏波を変化したときのループ面積とループ戻り部の長さの比に対する平均アンテナ利得を示すグラフであり、(b)は実施例1の微小ループアンテナ素子において偏波を変化したときのループ面積とループ戻り部の長さの比に対する平均アンテナ利得を示すグラフである。
(a)は本実施形態の実施例2に係る微小ループアンテナ素子105(螺旋コイル形状の微小ループアンテナ素子)の巻数に対する、水平偏波に関するXY平面の平均アンテナ利得を示すグラフであり、(b)は本実施形態の実施例2に係る微小ループアンテナ素子105(螺旋コイル形状の微小ループアンテナ素子)の巻数に対する、垂直偏波に関するXY平面の平均アンテナ利得を示すグラフである。
第1乃至第3の実施形態の実施例3に係る微小ループアンテナ素子において、振幅差Adに対する平均アンテナ利得を示すグラフである。
第1乃至第3の実施形態の実施例3に係る微小ループアンテナ素子において、位相差Pdに対する平均アンテナ利得を示すグラフである。
第1乃至第3の実施形態の実施例3に係る微小ループアンテナ素子において、振幅差Ad及び偏波を変化したときの位相差Pdに対する平均アンテナ利得を示すグラフである。
(a)は本実施形態の実施例4に係る、第1のインピーダンス整合方法を用いたインピーダンス整合回路104−1の構成を示す回路図であり、(b)は(a)の第1のインピーダンス整合方法を示すスミスチャートである。
(a)は本実施形態の実施例4に係る、第2のインピーダンス整合方法を用いたインピーダンス整合回路104−2の構成を示す回路図であり、(b)は(a)の第2のインピーダンス整合方法を示すスミスチャートである。
(a)は本実施形態の実施例4に係る、第3のインピーダンス整合方法を用いたインピーダンス整合回路104−3の構成を示す回路図であり、(b)は(a)の第3のインピーダンス整合方法を示すスミスチャートである。
(a)は本実施形態の実施例4に係る、第4のインピーダンス整合方法を用いたインピーダンス整合回路104−4の構成を示す回路図であり、(b)は(a)の第4のインピーダンス整合方法を示すスミスチャートである。
本実施形態の実施例4に係る、図71乃至図74のバラン1031の構成を示す回路図である。
(a)は第17の実施形態の実施例5に係る、認証キー装置100と、微小ループアンテナ素子105を有する対象機器用アンテナ装置300を備えたアンテナシステムにおいて両装置100,300の各アンテナ高を実質的に同一に設定したときの両装置100,300間の距離Dに対する受信電力を示す電波伝搬特性図であり、(b)は第17の実施形態の実施例5に係る、認証キー装置100と、半波長ダイポールアンテナを有する対象機器用アンテナ装置300を備えたアンテナシステムにおいて両装置100,300の各アンテナ高を実質的に同一に設定したときの両装置100,300間の距離Dに対する受信電力を示す電波伝搬特性図である。
100…認証キー用アンテナ装置、
101…接地導体板、
102…無線送受信回路、
103,103A,103B,103C,103D,103E,103F,103G,103H,103I,103J,103K,103L,103M,103N,103O,203,203D…給電回路、
103P,203P…平衡不平衡変換回路、
103Q,203Q…分配器、
103R,203R…振幅位相変換器、
103a…+90度移相器、
103b…−90度移相器、
104,104A,104B,204,204A,204B,104−1,104−2,104−3,104−4…インピーダンス整合回路、
105,105A,105B,105C,205…微小ループアンテナ素子、
105a,105b,105c,205a,205b,205c…ループアンテナ部、
105aa,105ab,105ba,105bb,105ca,105cb,205aa,205ab,205ba,205bb,205ca,205cb…半分ループアンテナ部、
105d,105e,105f,105da,105db,105ea,105eb,161,162,163,164,165,166,205d,205e,205f,205da,205db,205ea,205eb,261,262,263,264,265,266…接続導体、
105Ba,105Ca,205Ba,205Ca…右巻き微小ループアンテナ、
105Bb,105Cb,205Bb,205Cb…左巻き微小ループアンテナ、
106…導体板、
160…線状アンテナ素子、
161a,161b,161c,162a,162b,162c,163a、163b,163c,164a,164b,164c,261a,261b,261c,262a,262b,262c,263a,263b,263c,264a,264b,264c…接続導体部、
151,152,153,154,251,252,253,254…給電導体、
208…スイッチ、
208A,208Aa…偏波切換回路、
260…バラン、
271…可変移相器、
272…90度位相差分配器、
273a…+90度移相器、
273b…−90度移相器、
300…対象機器用アンテナ装置、
301…無線送受信回路、
302…アンテナスイッチ、
303…水平偏波アンテナ素子、
304…垂直偏波アンテナ素子、
1031…バラン、
1031A…不均等分配器、
1031B…分配器可変型不均等分配器、
1032,1032A,1032B…移相器、
1033,1033A,1033B,1033−1,1033−2…可変移相器、
1071…減衰器、
1072…増幅器、
1073…180度移相器、
1074,1074−1,1074−2…可変減衰器、
1075…可変増幅器、
1076…180度移相器、
AT1乃至AT(N+1),ATa1乃至ATa(N+1)…減衰器、
PS1乃至PS(N+1),PSa1乃至PSa(N+1)…移相器、
Q1,Q2,Q3,Q4…給電点、
SW1,SW2,SW11,SW21,SW22…スイッチ、
T1,T2,T3,T21,T22,T31,T32…端子、
T4…制御信号端子、
T11…不平衡端子、
T12,T13…平衡端子。