JPWO2007145167A1 - 蓄光性蛍光体 - Google Patents

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Abstract

暖色系の残光を発し、残光輝度を向上できる蓄光性蛍光体を提供する。一般式がY2O2S:Tix,Mgy,Gdaの蓄光性蛍光体である。aを0.06≦a≦0.6とし、xを0.005≦x≦0.03とし、(y/x)を0.5≦(y/x)≦40とする。付活剤としてチタン(Ti)を用い、共付活剤としてマグネシウム(Mg)を用いた上で、ガドリニウム(Gd)を導入する。暖色系の蛍光を発する蓄光性蛍光体の残光輝度を向上できる。

Description

本発明は、光の照射にて励起されて残光を発する蓄光性蛍光体に関する。
一般に、蛍光体は、残光時間が極めて短く、紫外線、電子線または可視光線等の照射による外部刺激を停止すると発光が速やかに減衰するが、例外的にこれら紫外線等の照射による外部刺激を与えてから、この外部刺激を停止した後であっても、例えば数10分から数時間程度の長時間に渡って残光を肉眼で確認できるものがある。そして、蛍光体のうち、長時間に渡って残光を肉眼で確認できるものは、通常の蛍光体と区別して蓄光性蛍光体や燐光体等と呼ばれている。
また、この種の蓄光性蛍光体としては、CaS:Bi(紫青色発光)、CaSrS:Bi(青色発光)、ZnS:Cu(緑色発光)、またはZnCdS:Cu(黄色〜橙色発光)等の硫化物蛍光体が知られている。
近年、高輝度に発光する酸化物系の蓄光性蛍光体としては、例えばSrAl:Eu,Dy等の緑色の残光を発するアルカリ土類金属アルミン酸塩系の蓄光性蛍光体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、赤色の残光を発する蓄光性蛍光体としては、例えばユウロピウムで付活された希土類酸硫化物蛍光体に、共付活剤としてMg,Ti,Nb,Ta及びGaの1つ以上の元素を用いるLnS:Eu,M(Lnは希土類元素、Mは共付活剤)等の蓄光性蛍光体が知られている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、橙色の残光を発する蓄光性蛍光体としては、例えばチタンおよびマグネシウムで付活された酸硫化イットリウム(YS:Ti,Mg)等が知られている(例えば、特許文献3参照)。
特許第2543825号公報 特開2000−345154号公報 中華人民共和国特許出願公開第1583950号明細書
上述したように、上記の蓄光性蛍光体のうち、緑色の残光を発する蓄光性蛍光体としては、上記特許文献1に記載の高輝度の残光を有する蓄光性蛍光体が知られている。しかしながら、視感的に暖かみを感じる色の残光、すなわち暖色系の残光を発する蓄光性蛍光体としては、高い残光輝度を有するものがなく、高い残光輝度を有する暖色系の蓄光性蛍光体が、玩具または装飾品メーカ等の市場で望まれている。
ここで、例えば上記特許文献2に記載の赤色の残光を発する蓄光性蛍光体は、上記のように残光輝度が低く、玩具または装飾品用途として使用した場合に、残光輝度が十分でない。
また、上記特許文献3に記載の暖色系である橙色の残光を発する蓄光性蛍光体は、残光輝度、残光の色度値(色度x、色度y)、および発光スペクトル等が明らかではない。
よって、暖色系の残光を発する蓄光性蛍光体の残光輝度の向上が容易ではないという問題を有している。
本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、暖色系の残光を発し、残光輝度を向上できる蓄光性蛍光体を提供するものである。
請求項1記載の蓄光性蛍光体は、一般式がYS:Ti,Mg,Gdで表され、aは、0.06≦a≦0.6であり、xは、0.005≦x≦0.03であり、(y/x)は、0.5≦(y/x)≦40であるものである。
請求項2記載の蓄光性蛍光体は、一般式がYS:Ti,Mg,Luで表され、bは、0.02≦b≦0.2であり、xは、0.003≦x≦0.03であり、(y/x)は、0.5≦(y/x)≦40であるものである。
請求項3記載の蓄光性蛍光体は、一般式がYS:Ti,Mg,Gd,Luで表され、aは、0.1≦a≦0.6であり、bは、0.05≦b≦0.2であり、xは、0.005≦x≦0.03であり、(y/x)は、0.5≦(y/x)≦40であるものである。
請求項1記載の蓄光性蛍光体によれば、一般式がYS:Ti,Mg,Gdで表され、aを0.06≦a≦0.6とし、xを0.005≦x≦0.03とし、(y/x)を0.5≦(y/x)≦40とすることにより、暖色系の残光を発し、残光輝度を向上できる。
請求項2記載の蓄光性蛍光体によれば、一般式がYS:Ti,Mg,Luで表され、bを0.02≦b≦0.2とし、xを0.003≦x≦0.03とし、(y/x)を0.5≦(y/x)≦40とすることにより、暖色系の残光を発し、残光輝度を向上できる。
請求項3記載の蓄光性蛍光体によれば、一般式がYS:Ti,Mg,Gd,Luで表され、aを0.1≦a≦0.6とし、bを0.05≦b≦0.2とし、xを0.005≦x≦0.03とし、(y/x)を0.5≦(y/x)≦40とすることにより、暖色系の残光を発し、残光輝度を向上できる。
本発明の一実施の形態の蓄光性蛍光体および比較例の蓄光性蛍光体に導入する元素の量に対する残光輝度の変化を示すグラフである。 本発明の一実施の形態の蓄光性蛍光体の365nm励起時の発光スペクトルを示すグラフである。 同上蓄光性蛍光体のうちの試料1−(3)のX線回折図形を示すグラフである。
以下、本発明の一実施の形態の蓄光性蛍光体を製造する工程について説明する。
まず、イットリウム(Y)の原料として例えば酸化イットリウム(Y)と、チタン(Ti)の原料として例えば酸化チタン(TiO)と、マグネシウム(Mg)の原料として例えば酸化マグネシウム(MgO)と、ガドリニウム(Gd)の原料として例えば酸化ガドリニウム(Gd)と、ルテチウム(Lu)の原料として例えば酸化ルテチウム(Lu)とを用い、これらの原料を所望のモル比に秤量して混合する。ここで、原料として酸化物の例を挙げたが、例えばマグネシウムであれば塩基性炭酸マグネシウム(例えば4MgCO・Mg(OH)・5HO)等のように、炭酸塩等の焼成時に容易に分解して酸化物となる化合物を原料として用いてもよい。そして、これら原料を混合したものに、硫黄(S)を加えてから、例えば炭酸ナトリウム(NaCO)およびリン酸カルシウム(KPO・3HO)の少なくともいずれか一方等をフラックスとして追加して混合して原料混合粉末を得る。このとき、この原料混合粉末には、化学量論比で3倍以上5倍以下程度と過剰に硫黄を加えることが好ましい。
そして、この原料混合粉末をアルミナるつぼに充填してから、このアルミナるつぼの口にアルミナの蓋を被せる。次いで、この原料混合粉末を充填したアルミナるつぼをさらに石英るつぼに入れてから、この石英るつぼの口に石英の蓋を被せる。さらに、この石英の蓋を被せた石英るつぼを、1000℃以上1300℃以下の温度に保持した電気炉内に投入して数十分以上数時間以下程度焼成し、目的とする蓄光性蛍光体を含む焼成体を得る。この焼成体は、目的とする蓄光性蛍光体だけでなく、フラックスの残渣やフラックスと硫黄(S)との反応にて副次的に生成したアルカリ金属硫化物等の発光に寄与しない不純物を多量に含んでいる。
さらに、この焼成体を、例えば25℃程度の室温まで冷却した後に、石英るつぼおよびアルミナるつぼから取り出す。次いで、この焼成体を、純水等の洗浄水を用いて複数回洗浄してフラックスの残渣およびアルカリ金属硫化物等の不純物を溶解させて除去する。このとき、この洗浄水中に、例えば塩酸(HCl)または硝酸(HNO)等の少量の無機酸を添加すると、洗浄効率が高くなるから、この洗浄水による焼成体の洗浄回数を少なくできる。この後、この洗浄した焼成体を、脱水機等を用いて脱水してから、真空乾燥機等を用いて水分を除去した後に、ナイロンメッシュ等の篩にて分別して蓄光性蛍光体を得る。
ここで、この蓄光性蛍光体は、発光ピーク波長の範囲が610nm以上630nm以下の範囲であった。すなわち、この蓄光性蛍光体は、紫外線または可視光線の照射で励起され、橙色等の暖色系の残光を発する希土類酸硫化物系の蓄光性蛍光体である。
次に、上記一実施の形態の蓄光性蛍光体の構成および特性の実施例を説明する。
はじめに、ガドリニウム(Gd)およびルテチウム(Lu)の量と、残光輝度との関係について説明する。
まず、イットリウム(Y)の原料として酸化イットリウム(Y)を22.47g(0.0995モル)と、チタン(Ti)の原料として酸化チタン(TiO)を0.09g(Tiとして0.0011モル)と、マグネシウム(Mg)の原料として塩基性炭酸マグネシウム(酸化マグネシウム(MgO)含有率が42.5%のもの)を0.10g(Mgとして0.0011モル)と、ガドリニウム(Gd)の原料として酸化ガドリニウム(Gd)を0.18g(Gdとして0.001モル)と、硫黄(S)を16g(0.5モル)と、フラックスとして炭酸ナトリウム(NaCO)を16gとを十分に混合して原料混合粉末である原料混合物とする。
そして、この原料混合物を、アルミナるつぼに充填してから、このアルミナるつぼの口にアルミナの蓋を被せる。次いで、この原料混合物を充填したアルミナるつぼをさらに石英るつぼに入れてから、この石英るつぼの口に石英の蓋を被せ、この石英の蓋を被せた石英るつぼを電気炉に入れて1300℃で5時間焼成する。この後、この石英るつぼを室温まで冷却した後に、この石英るつぼに入れたアルミナるつぼから焼成体を取り出し、この焼成体を純水および希塩酸水溶液の洗浄水で数回洗浄する。次いで、この洗浄した焼成体を脱水して乾燥させた後に、#200ナイロンメッシュにて篩別した蓄光性蛍光体を試料1−(1)とした。この試料1−(1)の蓄光性蛍光体は、Y1.99S:Ti0.011Mg0.011Gd0.01の式で表される。
同様に、導入するガドリニウムの量を表1に示すモル比のとおりに変化させたほかは、試料1−(1)と同一の条件で蓄光性蛍光体を作成して、試料1−(2)ないし試料1−(10)とした。
また、比較用として、ガドリニウムを全く導入しないほかは、試料1−(1)と同一の条件で蓄光性蛍光体を作成して、比較例1とした。この比較例1の蓄光性蛍光体は、YS:Ti0.011Mg0.011の式で表される。なお、この比較例1は、特許文献3の実施例3に記載されている「0.9YS:0.01Ti4+,0.01Mg2+」に相当する。
Figure 2007145167
次に、これら試料1−(1)ないし試料1−(10)および比較例1の残光輝度特性を調べた。各試料の粉末をアルミニウム製の試料容器に充填してから、予め暗所にて100℃で約1時間加熱して残光を消去した後に、キセノンランプにて1000lxの明るさで5分間励起した後の残光を輝度計(色度輝度計BM−5A,トプコン株式会社製)を用いて計測した。この結果を、比較例1の残光輝度を100とした場合の相対輝度として、表2に示す。このとき、試料1−(6)の励起後1分後の残光色度は、色度xが0.532で、色度yが0.450であった。また、試料1−(3)については、粉末X線回折装置(型式:XRD−6100,ターゲット:Cu,株式会社島津製作所製)を用いてX線回折分析を行い、図3に示すX線回折図形を得た。
Figure 2007145167
この結果、表2に示すように、試料1−(3)ないし試料1−(8)、すなわちガドリニウムの量が0.06以上0.8以下の場合は、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ略10%以上向上している。さらに、これら試料のうちの試料1−(4)ないし試料1−(7)、すなわちガドリニウムの量が0.12以上0.6以下の場合は、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ略20%以上とより向上している。
しかしながら、試料1−(1)および試料1−(2)、すなわちガドリニウムの量が0.06未満の0.01および0.02の場合は、比較例1と比べて残光輝度の向上が確認できない。また、試料1−(9)および試料1−(10)、すなわちガドリニウムの量が0.8を超えて1および1.4の場合は、比較例1と比べて一部で残光輝度の向上が確認できないか、残光輝度が低下してしまう。
この結果、ガドリニウムを導入した場合は、このガドリニウムの量が0.06以上0.8以下のときに、比較例1に比べて優れた残光輝度を有する暖色系の蓄光性蛍光体になることがわかった。
次に、導入する元素を、ガドリニウムからルテチウム(Lu)に替えた場合についても、同様に試料を作成した。ルテチウム(Lu)の原料として酸化ルテチウム(Lu)を用い、表3に示すモル比のとおりにルテチウムの量を変化させたほかは、試料1−(1)と同一の条件で蓄光性蛍光体を作成して、試料2−(1)ないし試料2−(9)とした。
Figure 2007145167
そして、これら試料2−(1)ないし試料2−(9)についても、試料1−(1)ないし試料1−(9)と同一の方法で残光輝度特性を調べた。この結果を、比較例1の残光輝度を100とした場合の相対輝度として、表4に示す。
Figure 2007145167
この結果、表4に示すように、試料2−(2)ないし試料2−(5)、すなわちルテチウムの量が0.02以上0.12以下の場合は、10分後以降の残光輝度において、比較例1と比べてそれぞれ略10%以上向上している。さらに、これら試料のうちの試料2−(3)ないし試料2−(5)、すなわちルテチウムの量が0.06以上0.12以下の場合は、20分後以降の残光輝度において、比較例1と比べてそれぞれ略20%以上とより向上している。また、試料2−(6)、すなわちルテチウムの量が0.2の場合も、若干の残光輝度の向上を確認できた。
しかしながら、試料2−(1)、すなわちルテチウムの量が0.02未満の0.01の場合は、比較例1と比べて残光輝度の向上が明確に確認できない。また、試料2−(7)ないし試料2−(9)、すなわちルテチウムの量が0.2を超えて0.4以上1以下の場合は、比較例1と比べて残光輝度が向上しておらず低下してしまう。
この結果、ルテチウムを導入した場合は、ルテチウムの量が0.02以上0.2以下のときに、比較例1に比べて優れた残光輝度を有する暖色系の蓄光性蛍光体となることがわかった。
なお、ガドリニウムまたはルテチウム以外の元素としては、例えば同じ希土類元素であるスカンジウム(Sc)、ランタン(La)およびサマリウム(Sm)についても、導入する量を同様に変化させた蓄光性蛍光体を作成して残光輝度を確認した。この結果を、上記のガドリニウム(Gd)およびルテチウム(Lu)の結果とともに、比較例1の残光輝度を100とした相対輝度として表し、導入した希土類元素の量を横軸とし20分後の相対残光輝度を縦軸としたグラフとして図1に示す。
この結果、図1に示すように、同じ希土類元素であっても、スカンジウム、ランタンまたはサマリウムを導入した蓄光性蛍光体では、残光輝度が向上する効果は得られなかった。
これら以外にも、テルビウム(Tb)、プラシオジム(Pr)およびネオジム(Nd)等の希土類元素や、一般的な不純物であるビスマス(Bi)、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)およびガリウム(Ga)等の多数の元素を導入した蓄光性蛍光体を作成して残光輝度を確認したが、ガドリニウムおよびルテチウム以外の元素を導入した蓄光性蛍光体では、残光輝度が向上する効果は得られなかった。
また、これら以外に、例えばマグネシウム(Mg)の代わりにアルカリ土類金属としてカルシウム(Ca)、ストロンチウム(St)またはバリウム(Ba)を用いたり、チタン(Ti)の代わりに同族元素のジルコニウム(Zr)を用いた蓄光性蛍光体を作成して残光輝度を確認したが、いずれの蓄光性蛍光体の場合も残光輝度が向上する結果は得られなかった。
さらに、ガドリニウムおよびルテチウムのそれぞれを蓄光性蛍光体に導入した場合について確認した。
すなわち、表5に示すモル比のとおりにガドリニウムの量とルテチウムの量とを変化させたほかは、試料1−(1)と同一の条件で蓄光性蛍光体を作成して、試料2−(10)ないし試料2−(14)とした。
Figure 2007145167
そして、これら試料2−(10)ないし試料2−(14)についても、試料1−(1)ないし試料1−(9)と同一の方法で残光輝度特性を調べた。この結果を、比較例1の残光輝度を100とした場合の相対輝度として、表6に示す。
Figure 2007145167
この結果、表6に示すように、試料2−(10)ないし試料2−(13)、すなわちガドリニウムの量が0.1以上0.6以下で、ルテチウムの量が0.05以上0.2以下の場合は、20分後以降の残光輝度において、比較例1と比べてそれぞれ10%以上向上している。さらに、これら試料のうちの試料2−(11)および試料2−(12)、すなわちガドリニウムの量が0.2以上0.3以下で、ルテチウムの量が0.1以上0.2以下の場合は、20分後以降の残光輝度において、比較例1と比べてそれぞれ略20%以上とより向上している。
しかしながら、試料2−(14)、すなわちガドリニウムの量が0.6を超えて0.7でありルテチウムの量が0.2を超えて0.3の場合は、比較例1と比べて残光輝度が低下してしまう。
この結果、ガドリニウムおよびルテチウムのそれぞれを同時に導入した場合は、ガドリニウムの量が0.1以上0.6以下であって、ルテチウムの量が0.05以上0.2以下のときに、比較例1に比べて優れた残光輝度を有する橙色等の暖色系の蓄光性蛍光体となることがわかった。
次に、上記蓄光性蛍光体のチタン(Ti)およびマグネシウム(Mg)の量と、残光輝度との関係について説明する。
まず、イットリウム(Y)の原料として酸化イットリウム(Y)を20.32g(0.09モル)と、チタン(Ti)の原料として酸化チタン(TiO)を0.16g(Tiとして0.002モル)と、マグネシウム(Mg)の原料として塩基性炭酸マグネシウム(酸化マグネシウム(MgO)含有率が42.5%のもの)を0.19g(Mgとして0.002モル)と、ガドリニウム(Gd)の原料として酸化ガドリニウム(Gd)を3.63g(Gdとして0.02モル)と、硫黄(S)を16g(0.5モル)と、フラックスとして炭酸ナトリウム(NaCO)を16gとを十分によく混合して原料混合物とする。
そして、この原料混合物を、アルミナるつぼに充填してから、このアルミナるつぼの口にアルミナの蓋を被せる。次いで、この原料混合物を充填したアルミナるつぼをさらに石英るつぼに入れてから、この石英るつぼの口に石英の蓋を被せ、この石英の蓋を被せた石英るつぼを電気炉に入れて1300℃で5時間焼成する。この後、この石英るつぼを室温まで冷却した後に、この石英るつぼに入れたアルミナるつぼから焼成体を取り出し、この焼成体を純水および希塩酸水溶液の洗浄水で数回洗浄する。次いで、この洗浄した焼成体を脱水して乾燥させた後に、#200ナイロンメッシュにて篩別した蓄光性蛍光体を試料3−(3)とした。この試料3−(3)の蓄光性蛍光体は、Y1.8S:Ti0.02Mg0.02Gd0.2の式で表される。
同様に、導入するチタン(Ti)およびマグネシウム(Mg)の量を表7に示すモル比のとおりに変化させたほかは、試料3−(3)と同一の条件で蓄光性蛍光体を作成して、試料3−(1)、試料3−(2)、および試料3−(4)ないし試料3−(12)とした。
Figure 2007145167
次に、これら試料3−(1)ないし試料3−(12)の残光輝度特性を、実施例1と同一の方法で調べた。この結果を、比較例1の残光輝度を100とした場合の相対輝度として、表8に示す。なお、試料3−(11)については、分光蛍光光度計(型式:F−4500,株式会社日立製作所製)を用いて発光スペクトルを測定した。この結果を図2に示す。このとき、この試料3−(11)の発光スペクトルのピーク波長は、618nmであった。
Figure 2007145167
この結果、表8に示すように、試料3−(2)ないし試料3−(9)、すなわちチタンに対するマグネシウムのモル比が0.5以上40以下の場合は、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ30%以上向上している。さらに、これらの試料のうちの試料3−(4)ないし試料3−(7)、すなわちチタンに対するマグネシウムのモル比が5以上20以下の場合は、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ略70%以上とより向上している。
しかしながら、試料3−(1)、すなわちチタンに対するマグネシウムのモル比が0.5未満の0.1の場合は、比較例1と比べて残光輝度が低下してしまう。また、試料3−(10)、すなわちチタンに対するマグネシウムのモル比が40を超えて50の場合は、比較例1と比べて残光輝度が低下してしまう。
よって、例えば試料3−(10)のように、マグネシウムイオンが過剰に加えられた試料は、希塩酸による洗浄工程において、洗浄液の上澄みからマグネシウムイオンが多量に検出されることから、過剰となったマグネシウムが結晶内に入らずに、不純物として生成されてしまうと考えられる。
さらに、表7に示すように、試料3−(1)ないし試料3−(10)は、チタンの量が0.02の場合であるが、試料3−(11)および試料3−(12)のように、チタンの量が0.014の場合であっても、チタンに対するマグネシウムのモル比が5または15の場合に、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ70%以上向上している。
この結果、ガドリニウムを導入した場合は、チタンに対するマグネシウムのモル比が0.5以上40以下のときに、比較例1に比べて優れた残光輝度を有する暖色系の蓄光性蛍光体となることがわかり、このチタンに対するマグネシウムのモル比が5以上20以下のときに、より優れた残光輝度を有する暖色系の蓄光性蛍光体となることがわかった。
さらに、ルテチウムを導入した場合のチタンに対するマグネシウムのモル比と残光輝度との関係を確認した。
導入するルテチウムの量を0.1とし、表9に示すモル比のとおりにチタンとマグネシウムの量を変化させたほかは、試料3−(1)ないし試料3−(12)と同様に試料を作成して、試料4−(1)ないし試料4−(11)とした。
Figure 2007145167
次に、これら試料4−(1)ないし試料4−(11)の残光輝度特性を、実施例1と同一の方法で調べた。この結果を、比較例1の残光輝度を100とした場合の相対輝度として、表10に示す。
Figure 2007145167
この結果、表10に示すように、試料4−(1)ないし試料4−(6)、すなわちチタンに対するマグネシウムのモル比が1以上30以下の場合は、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ略20%以上向上している。さらに、これら試料のうちの試料4−(2)ないし試料4−(5)、すなわちチタンに対するマグネシウムのモル比が5以上20以下の場合は、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ略70%以上とより向上している。
さらに、表9に示すように、試料4−(1)ないし試料4−(6)は、チタンの量が0.02の場合であるが、試料4−(7)ないし試料4−(11)のように、チタンの量が0.003、0.014および0.04の場合であっても、チタンに対するマグネシウムのモル比が1以上15以下の範囲の場合に、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ30%以上向上している。
この結果、ルテチウムを導入した場合は、チタンに対するマグネシウムのモル比が1以上30以下のときに、比較例1に比べて優れた残光輝度を有する暖色系の蓄光性蛍光体となることがわかり、このチタンに対するマグネシウムのモル比が5以上20以下のときに、より優れた残光輝度を有する暖色系の蓄光性蛍光体となることがわかった。
次に、チタンに対するマグネシウムのモル比を一定とした場合のチタンの量と残光輝度との関係について調べた。
表11に示すモル比のとおりにチタン、マグネシウム、酸化イットリウム、ガドリニウム、およびルテチウムの量をそれぞれ変化させたほかは、試料1−(1)および試料2−(1)等と同様の方法で蓄光性蛍光体を作成して、試料5−(1)ないし試料5−(8)、および試料6−(1)ないし試料6−(3)とした。
Figure 2007145167
そして、これら試料5−(1)ないし試料5−(8)、および試料6−(1)ないし試料6−(3)についても、試料1−(1)ないし試料1−(9)と同一の方法で残光輝度特性を調べた。この結果を、上記の試料3−(4)、試料3−(6)、試料3−(11)、試料3−(12)、試料4−(2)、試料4−(4)、試料4−(7)、試料4−(9)および試料4−(10)の結果とともに、比較例1の残光輝度を100とした場合の相対輝度として、表12に示す。
Figure 2007145167
この結果、表12に示すように、試料5−(2)、試料5−(3)、試料3−(11)、試料3−(4)および試料5−(4)、すなわちガドリニウムを導入しチタンに対するマグネシウムのモル比が5で、チタンの量が0.005以上0.03以下の場合は、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ略20%以上向上している。さらに、これら試料のうちの試料5−(3)、試料3−(11)および試料3−(4)、すなわちチタンの量が0.01以上0.02以下の場合は、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ略70%以上とより向上している。
しかしながら、試料5−(1)、すなわちチタンの量が0.005未満の0.002の場合は、比較例1と比べて残光輝度が低下してしまう。また、試料5−(5)、すなわちチタンの量が0.03を超えて0.035の場合も、比較例1と比べて残光輝度が低下してしまう。
この傾向は、チタンに対するマグネシウムのモル比が15の場合も確認できる。具体的に、試料5−(6)、試料3−(12)、試料3−(6)および試料5−(7)、すなわちチタンの量が0.005以上0.03以下の場合は、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ20%以上向上している。さらに、これら試料のうちの試料3−(12)および試料3−(6)、すなわちチタンの量が0.014以上0.02以下の場合は、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ70%以上とより向上している。
しかしながら、試料5−(8)、すなわちチタンの量が0.03を超えて0.035の場合は、比較例1と比べて残光輝度が低下してしまう。
さらに、ルテチウムを導入した場合についても確認する。具体的に、試料4−(7)、試料4−(9)、試料4−(2)および試料6−(2)、すなわちチタンに対するマグネシウムのモル比が5で、チタンの量が0.003以上0.03以下の場合は、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ略20%以上向上している。さらに、これら試料のうちの試料4−(9)および試料4−(2)、すなわちチタンの量が0.014以上0.02以下の場合は、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ略70%以上とより向上している。
しかしながら、試料6−(3)、すなわちチタンの量が0.03を超えて0.035の場合は、比較例1と比べて残光輝度が低下してしまう。
さらに、試料4−(10)および試料4−(4)、すなわちチタンに対するマグネシウムのモル比が15で、チタンの量が0.014以上0.02以下の場合は、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ略70%以上とより向上している。
この結果、チタンの量が0.003以上0.03以下の場合に、比較例1に比べて優れた残光輝度を有する暖色系の蓄光性蛍光体になることがわかった。
以上の結果の通り、蓄光性蛍光体に導入する希土類元素としてユウロピウム(Eu)以外の希土類元素、マグネシウム(Mg)以外のアルカリ土類金属元素、またはチタン(Ti)同族のジルコニウム(Zr)等の異種金属のドーピングによる増感効果等を幅広く調査した結果、希土類元素のガドリニウム(Gd)とルテチウム(Lu)とを導入した場合に、暖色系の残光を発する蓄光性蛍光体の残光輝度の向上に極めて効果的であることがわかった。
すなわち、一般式がYS:Ti,Mg,Gdで表される蓄光性蛍光体に、付活剤としてチタン(Ti)を用いるとともに、共付活剤としてマグネシウム(Mg)を用いた上で、ガドリニウム(Gd)を導入することによって、暖色系の残光を発する蓄光性蛍光体の残光輝度を向上できる。
具体的に、この蓄光性蛍光体中のガドリニウムの量aが0.06未満の場合は、このガドリニウムを導入することによる効果が足りず残光輝度が向上せず、このガドリニウムの量aが0.6を超える場合は、濃度消光等によって残光輝度が低下してしまう。
また、この蓄光性蛍光体中のチタンの量xが0.005未満の場合は、付活剤としての効果が得られず残光輝度が低下してしまい、このチタンの量xが0.03を超える場合は、濃度消光等によって残光輝度が低下してしまう。
さらに、この蓄光性蛍光体中のチタンに対するマグネシウムのモル比(y/x)が0.5未満の場合は、付活剤であるチタンに対して、共付活剤であるマグネシウムの量が不足するため残光輝度が低下してしまい、このチタンに対するマグネシウムのモル比(y/x)が40を超える場合は、マグネシウムの量が多すぎるため濃度消光または不純物の生成等によって残光輝度が低下してしまう。
このため、一般式がYS:Ti,Mg,Gdで表される蓄光性蛍光体は、aを0.06≦a≦0.6の条件とし、xを0.005≦x≦0.03の条件とし、(y/x)を0.5≦(y/x)≦40の条件にすることによって、暖色系の残光を発し、残光輝度が向上した蓄光性蛍光体にできる。
さらに、一般式がYS:Ti,Mg,Luで表される蓄光性蛍光体であっても、付活剤としてチタン(Ti)を用いるとともに、共付活剤としてマグネシウム(Mg)を用いた上で、ルテチウム(Lu)を導入することによって、残光輝度を向上できる。
具体的に、この蓄光性蛍光体中のルテチウムの量bが0.02未満の場合は、このルテチウム導入することによる効果が足りず残光輝度が向上せず、このルテチウムの量bが0.2を超える場合は、濃度消光等によって残光輝度が低下してしまう。
また、この蓄光性蛍光体中のチタンの量xが0.003未満の場合は、付活剤としての効果が得られず残光輝度が低下してしまい、このチタンの量xが0.03を超える場合は、濃度消光等によって残光輝度が低下してしまう。
さらに、この蓄光性蛍光体中のチタンに対するマグネシウムのモル比(y/x)が0.5未満の場合は、付活剤であるチタンに対して、共付活剤であるマグネシウムの量が不足するため残光輝度が低下してしまい、このチタンに対するマグネシウムのモル比(y/x)が40を超える場合は、マグネシウムの量が多すぎるため濃度消光または不純物の生成等によって残光輝度が低下してしまう。
このため、一般式がYS:Ti,Mg,Luで表される蓄光性蛍光体は、bを0.02≦b≦0.2の条件とし、xを0.005≦x≦0.03の条件とし、(y/x)を0.5≦(y/x)≦40の条件とすることによって、暖色系の残光を発し、残光輝度が向上した蓄光性蛍光体にできる。
さらに、一般式がYS:Ti,Mg,Gd,Luで表される蓄光性蛍光体であっても、付活剤としてチタン(Ti)を用いるとともに、共付活剤としてマグネシウム(Mg)を用いた上で、ガドリニウム(Gd)およびルテチウム(Lu)のそれぞれを導入することによって、残光輝度を向上できる。
具体的に、この蓄光性蛍光体中のガドリニウムの量aが0.1未満で、ルテチウムの量bが0.05未満の場合は、これらガドリニウムおよびルテチウムを導入したことによる効果が足りず残光輝度が向上せず、このガドリニウムの量aが0.6を超え、ルテチウムの量bが0.2を超える場合は、濃度消光等によって残光輝度が低下してしまう。
また、この蓄光性蛍光体中のチタンの量xが0.005未満の場合は、付活剤としての効果が得られず残光輝度が低下してしまい、このチタンの量xが0.03を超える場合は、濃度消光等によって残光輝度が低下してしまう。
さらに、この蓄光性蛍光体中のチタンに対するマグネシウムのモル比(y/x)が0.5未満の場合は、付活剤であるチタンに対して、共付活剤であるマグネシウムの量が不足するため残光輝度が低下してしまい、このチタンに対するマグネシウムのモル比(y/x)が40を超える場合は、マグネシウムの量が多すぎるため濃度消光または不純物の生成等によって残光輝度が低下してしまう。
このため、一般式がYS:Ti,Mg,Gd,Luで表される蓄光性蛍光体は、aを0.1≦a≦0.6の条件とし、bを0.05≦b≦0.2の条件とし、xを0.005≦x≦0.03の条件とし、(y/x)を0.5≦(y/x)≦40の条件とすることによって、暖色系の残光を発し、残光輝度が向上した蓄光性蛍光体にできる。
なお、蓄光性蛍光体中にガドリニウム(Gd)またはルテチウム(Lu)を導入することによって残光輝度が向上する要因については、現在のところ明らかではないが、これら2つの希土類元素であるガドリニウムおよびルテチウムは、安定な4f構造を有することに関連していると推定される。すなわち、ガドリニウムイオンは4f電子が4f殻の半分を占める4f構造であり、ルテチウムイオンは4f電子が4f殻の全てを占める4f14構造であることによると推定される。
また、これらガドリニウムまたはルテチウム以外の、例えばランタン(La)、スカンジウム(Sc)、サマリウム(Sm)、テルビウム(Tb)、プラセオジム(Pr)、またはネオジム(Nd)等の希土類元素を導入した場合では、残光輝度が向上せず、残光輝度が低下してしまう場合が多い。このため、残光輝度を向上させる効果は、ガドリニウムおよびルテチウムに特異的なものと推定される。
次に、上記蓄光性蛍光体の蛍光強度の特性について説明する。
まず、蓄光性蛍光体として実施例2の試料3−(11)を用意した。また、比較用として特許文献1(日本国特許第2543825号)に記載されている蓄光性蛍光体の実施品である蓄光性蛍光体G−300M(緑色発光,根本特殊化学株式会社製)と、特許文献2(特開2000−345154号公報)に記載されている蓄光性蛍光体の実施品である蓄光性蛍光体NP2850−1(赤色発光,日亜化学工業株式会社製)とを用意した。
そして、これら試料3−(11)、G−300MおよびNP2850−1の3点をアルミニウムの試料皿に入れ、10Wのブラックライト蛍光灯(発光ピーク波長365nm)を用いて、20cmの距離から各試料に紫外線を照射し、これら試料が励起されて蛍光発光した光の蛍光強度を、輝度計(型式:LS−110,コニカミノルタホールディングス株式会社製)を用いて測定した。この結果を、G−300Mの蛍光強度を100とした相対値として、表13に示す。
Figure 2007145167
この結果、表13に示すように、試料3−(11)の蛍光強度は、比較用とした一般的な蓄光性蛍光体であるG−300MおよびNP2850−1と比較して、極めて低いことが分かった。このとき、これら試料3−(11)、G−300MおよびNP2850−1についての発光輝度を肉眼で観察したが、G−300MおよびNP2850−1の蓄光性蛍光体は、肉眼ではっきりと視認できたのに対し、試料3−(11)の蓄光性蛍光体は、肉眼でほとんど視認できなかった。
また、この試料3−(11)以外の試料1−(3)ないし試料1−(8)、試料2−(2)ないし試料2―(6)、試料2−(10)ないし試料2−(13)、試料3−(2)ないし試料3−(9)、試料3−(12)、試料4−(1)ないし試料4−(11)、試料5−(2)ないし試料5−(4)、試料5−(6)、試料5−(7)、および試料6−(2)の蛍光強度についても視認観察したが、試料3−(11)と同様に、極めて低い蛍光強度であった。
この結果、これらの蓄光性蛍光体は、紫外線照射下であっても、肉眼でほとんど蛍光発光を視認できない特性を有することが分かった。
本発明の蓄光性蛍光体は、橙色等の暖色系の残光を発するため、玩具、包装材料、または装飾品の用途として利用できるほか、案内表示または安全標識等にも幅広く利用できる。
また、本発明の蓄光性蛍光体は、蛍光強度が極めて低く、紫外線照射下であっても肉眼でほとんど蛍光発光を視認できない特性を有するため、この特性と残光特性とを組み合わせることによって、クレジットカード、有価証券、またはブランド品の偽造防止等のセキュリティ用途にも幅広く応用できる。
本発明は、光の照射にて励起されて残光を発する蓄光性蛍光体に関する。
一般に、蛍光体は、残光時間が極めて短く、紫外線、電子線または可視光線等の照射による外部刺激を停止すると発光が速やかに減衰するが、例外的にこれら紫外線等の照射による外部刺激を与えてから、この外部刺激を停止した後であっても、例えば数10分から数時間程度の長時間に渡って残光を肉眼で確認できるものがある。そして、蛍光体のうち、長時間に渡って残光を肉眼で確認できるものは、通常の蛍光体と区別して蓄光性蛍光体や燐光体等と呼ばれている。
また、この種の蓄光性蛍光体としては、CaS:Bi(紫青色発光)、CaSrS:Bi(青色発光)、ZnS:Cu(緑色発光)、またはZnCdS:Cu(黄色〜橙色発光)等の硫化物蛍光体が知られている。
近年、高輝度に発光する酸化物系の蓄光性蛍光体としては、例えばSrAl:Eu,Dy等の緑色の残光を発するアルカリ土類金属アルミン酸塩系の蓄光性蛍光体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、赤色の残光を発する蓄光性蛍光体としては、例えばユウロピウムで付活された希土類酸硫化物蛍光体に、共付活剤としてMg,Ti,Nb,Ta及びGaの1つ以上の元素を用いるLnS:Eu,M(Lnは希土類元素、Mは共付活剤)等の蓄光性蛍光体が知られている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、橙色の残光を発する蓄光性蛍光体としては、例えばチタンおよびマグネシウムで付活された酸硫化イットリウム(YS:Ti,Mg)等が知られている(例えば、特許文献3参照)。
特許第2543825号公報 特開2000−345154号公報 中華人民共和国特許出願公開第1583950号明細書
上述したように、上記の蓄光性蛍光体のうち、緑色の残光を発する蓄光性蛍光体としては、上記特許文献1に記載の高輝度の残光を有する蓄光性蛍光体が知られている。しかしながら、視感的に暖かみを感じる色の残光、すなわち暖色系の残光を発する蓄光性蛍光体としては、高い残光輝度を有するものがなく、高い残光輝度を有する暖色系の蓄光性蛍光体が、玩具または装飾品メーカ等の市場で望まれている。
ここで、例えば上記特許文献2に記載の赤色の残光を発する蓄光性蛍光体は、上記のように残光輝度が低く、玩具または装飾品用途として使用した場合に、残光輝度が十分でない。
また、上記特許文献3に記載の暖色系である橙色の残光を発する蓄光性蛍光体は、残光輝度、残光の色度値(色度x、色度y)、および発光スペクトル等が明らかではない。
よって、暖色系の残光を発する蓄光性蛍光体の残光輝度の向上が容易ではないという問題を有している。
本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、暖色系の残光を発し、残光輝度を向上できる蓄光性蛍光体を提供するものである。
請求項1記載の蓄光性蛍光体は、一般式がYS:Ti,Mg,Gdで表され、aは、0.06≦a≦0.6であり、xは、0.005≦x≦0.03であり、(y/x)は、0.5≦(y/x)≦40であるものである。
請求項2記載の蓄光性蛍光体は、一般式がYS:Ti,Mg,Luで表され、bは、0.02≦b≦0.2であり、xは、0.003≦x≦0.03であり、(y/x)は、0.5≦(y/x)≦40であるものである。
請求項3記載の蓄光性蛍光体は、一般式がYS:Ti,Mg,Gd,Luで表され、aは、0.1≦a≦0.6であり、bは、0.05≦b≦0.2であり、xは、0.005≦x≦0.03であり、(y/x)は、0.5≦(y/x)≦40であるものである。
請求項1記載の蓄光性蛍光体によれば、一般式がYS:Ti,Mg,Gdで表され、aを0.06≦a≦0.6とし、xを0.005≦x≦0.03とし、(y/x)を0.5≦(y/x)≦40とすることにより、暖色系の残光を発し、残光輝度を向上できる。
請求項2記載の蓄光性蛍光体によれば、一般式がYS:Ti,Mg,Luで表され、bを0.02≦b≦0.2とし、xを0.003≦x≦0.03とし、(y/x)を0.5≦(y/x)≦40とすることにより、暖色系の残光を発し、残光輝度を向上できる。
請求項3記載の蓄光性蛍光体によれば、一般式がYS:Ti,Mg,Gd,Luで表され、aを0.1≦a≦0.6とし、bを0.05≦b≦0.2とし、xを0.005≦x≦0.03とし、(y/x)を0.5≦(y/x)≦40とすることにより、暖色系の残光を発し、残光輝度を向上できる
以下、本発明の一実施の形態の蓄光性蛍光体を製造する工程について説明する。
まず、イットリウム(Y)の原料として例えば酸化イットリウム(Y)と、チタン(Ti)の原料として例えば酸化チタン(TiO)と、マグネシウム(Mg)の原料として例えば酸化マグネシウム(MgO)と、ガドリニウム(Gd)の原料として例えば酸化ガドリニウム(Gd)と、ルテチウム(Lu)の原料として例えば酸化ルテチウム(Lu)とを用い、これらの原料を所望のモル比に秤量して混合する。ここで、原料として酸化物の例を挙げたが、例えばマグネシウムであれば塩基性炭酸マグネシウム(例えば4MgCO・Mg(OH)・5HO)等のように、炭酸塩等の焼成時に容易に分解して酸化物となる化合物を原料として用いてもよい。そして、これら原料を混合したものに、硫黄(S)を加えてから、例えば炭酸ナトリウム(NaCO)およびリン酸カルシウム(KPO・3HO)の少なくともいずれか一方等をフラックスとして追加して混合して原料混合粉末を得る。このとき、この原料混合粉末には、化学量論比で3倍以上5倍以下程度と過剰に硫黄を加えることが好ましい。
そして、この原料混合粉末をアルミナるつぼに充填してから、このアルミナるつぼの口にアルミナの蓋を被せる。次いで、この原料混合粉末を充填したアルミナるつぼをさらに石英るつぼに入れてから、この石英るつぼの口に石英の蓋を被せる。さらに、この石英の蓋を被せた石英るつぼを、1000℃以上1300℃以下の温度に保持した電気炉内に投入して数十分以上数時間以下程度焼成し、目的とする蓄光性蛍光体を含む焼成体を得る。この焼成体は、目的とする蓄光性蛍光体だけでなく、フラックスの残渣やフラックスと硫黄(S)との反応にて副次的に生成したアルカリ金属硫化物等の発光に寄与しない不純物を多量に含んでいる。
さらに、この焼成体を、例えば25℃程度の室温まで冷却した後に、石英るつぼおよびアルミナるつぼから取り出す。次いで、この焼成体を、純水等の洗浄水を用いて複数回洗浄してフラックスの残渣およびアルカリ金属硫化物等の不純物を溶解させて除去する。このとき、この洗浄水中に、例えば塩酸(HCl)または硝酸(HNO)等の少量の無機酸を添加すると、洗浄効率が高くなるから、この洗浄水による焼成体の洗浄回数を少なくできる。この後、この洗浄した焼成体を、脱水機等を用いて脱水してから、真空乾燥機等を用いて水分を除去した後に、ナイロンメッシュ等の篩にて分別して蓄光性蛍光体を得る。
ここで、この蓄光性蛍光体は、発光ピーク波長の範囲が610nm以上630nm以下の範囲であった。すなわち、この蓄光性蛍光体は、紫外線または可視光線の照射で励起され、橙色等の暖色系の残光を発する希土類酸硫化物系の蓄光性蛍光体である。
次に、上記一実施の形態の蓄光性蛍光体の構成および特性の実施例を説明する。
はじめに、ガドリニウム(Gd)およびルテチウム(Lu)の量と、残光輝度との関係について説明する。
まず、イットリウム(Y)の原料として酸化イットリウム(Y)を22.47g(0.0995モル)と、チタン(Ti)の原料として酸化チタン(TiO)を0.09g(Tiとして0.0011モル)と、マグネシウム(Mg)の原料として塩基性炭酸マグネシウム(酸化マグネシウム(MgO)含有率が42.5%のもの)を0.10g(Mgとして0.0011モル)と、ガドリニウム(Gd)の原料として酸化ガドリニウム(Gd)を0.18g(Gdとして0.001モル)と、硫黄(S)を16g(0.5モル)と、フラックスとして炭酸ナトリウム(NaCO)を16gとを十分に混合して原料混合粉末である原料混合物とする。
そして、この原料混合物を、アルミナるつぼに充填してから、このアルミナるつぼの口にアルミナの蓋を被せる。次いで、この原料混合物を充填したアルミナるつぼをさらに石英るつぼに入れてから、この石英るつぼの口に石英の蓋を被せ、この石英の蓋を被せた石英るつぼを電気炉に入れて1300℃で5時間焼成する。この後、この石英るつぼを室温まで冷却した後に、この石英るつぼに入れたアルミナるつぼから焼成体を取り出し、この焼成体を純水および希塩酸水溶液の洗浄水で数回洗浄する。次いで、この洗浄した焼成体を脱水して乾燥させた後に、#200ナイロンメッシュにて篩別した蓄光性蛍光体を試料1−(1)とした。この試料1−(1)の蓄光性蛍光体は、Y1.99S:Ti0.011Mg0.011Gd0.01の式で表される。
同様に、導入するガドリニウムの量を表1に示すモル比のとおりに変化させたほかは、試料1−(1)と同一の条件で蓄光性蛍光体を作成して、試料1−(2)ないし試料1−(10)とした。
また、比較用として、ガドリニウムを全く導入しないほかは、試料1−(1)と同一の条件で蓄光性蛍光体を作成して、比較例1とした。この比較例1の蓄光性蛍光体は、YS:Ti0.011Mg0.011の式で表される。なお、この比較例1は、特許文献3の実施例3に記載されている「0.9YS:0.01Ti4+,0.01Mg2+」に相当する。
Figure 2007145167
次に、これら試料1−(1)ないし試料1−(10)および比較例1の残光輝度特性を調べた。各試料の粉末をアルミニウム製の試料容器に充填してから、予め暗所にて100℃で約1時間加熱して残光を消去した後に、キセノンランプにて1000lxの明るさで5分間励起した後の残光を輝度計(色度輝度計BM−5A,トプコン株式会社製)を用いて計測した。この結果を、比較例1の残光輝度を100とした場合の相対輝度として、表2に示す。このとき、試料1−(6)の励起後1分後の残光色度は、色度xが0.532で、色度yが0.450であった。また、試料1−(3)については、粉末X線回折装置(型式:XRD−6100,ターゲット:Cu,株式会社島津製作所製)を用いてX線回折分析を行い、図3に示すX線回折図形を得た。
Figure 2007145167
この結果、表2に示すように、試料1−(3)ないし試料1−(8)、すなわちガドリニウムの量が0.06以上0.8以下の場合は、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ略10%以上向上している。さらに、これら試料のうちの試料1−(4)ないし試料1−(7)、すなわちガドリニウムの量が0.12以上0.6以下の場合は、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ略20%以上とより向上している。
しかしながら、試料1−(1)および試料1−(2)、すなわちガドリニウムの量が0.06未満の0.01および0.02の場合は、比較例1と比べて残光輝度の向上が確認できない。また、試料1−(9)および試料1−(10)、すなわちガドリニウムの量が0.8を超えて1および1.4の場合は、比較例1と比べて一部で残光輝度の向上が確認できないか、残光輝度が低下してしまう。
この結果、ガドリニウムを導入した場合は、このガドリニウムの量が0.06以上0.8以下のときに、比較例1に比べて優れた残光輝度を有する暖色系の蓄光性蛍光体になることがわかった。
次に、導入する元素を、ガドリニウムからルテチウム(Lu)に替えた場合についても、同様に試料を作成した。ルテチウム(Lu)の原料として酸化ルテチウム(Lu)を用い、表3に示すモル比のとおりにルテチウムの量を変化させたほかは、試料1−(1)と同一の条件で蓄光性蛍光体を作成して、試料2−(1)ないし試料2−(9)とした。
Figure 2007145167
そして、これら試料2−(1)ないし試料2−(9)についても、試料1−(1)ないし試料1−(9)と同一の方法で残光輝度特性を調べた。この結果を、比較例1の残光輝度を100とした場合の相対輝度として、表4に示す。
Figure 2007145167
この結果、表4に示すように、試料2−(2)ないし試料2−(5)、すなわちルテチウムの量が0.02以上0.12以下の場合は、10分後以降の残光輝度において、比較例1と比べてそれぞれ略10%以上向上している。さらに、これら試料のうちの試料2−(3)ないし試料2−(5)、すなわちルテチウムの量が0.06以上0.12以下の場合は、20分後以降の残光輝度において、比較例1と比べてそれぞれ略20%以上とより向上している。また、試料2−(6)、すなわちルテチウムの量が0.2の場合も、若干の残光輝度の向上を確認できた。
しかしながら、試料2−(1)、すなわちルテチウムの量が0.02未満の0.01の場合は、比較例1と比べて残光輝度の向上が明確に確認できない。また、試料2−(7)ないし試料2−(9)、すなわちルテチウムの量が0.2を超えて0.4以上1以下の場合は、比較例1と比べて残光輝度が向上しておらず低下してしまう。
この結果、ルテチウムを導入した場合は、ルテチウムの量が0.02以上0.2以下のときに、比較例1に比べて優れた残光輝度を有する暖色系の蓄光性蛍光体となることがわかった。
なお、ガドリニウムまたはルテチウム以外の元素としては、例えば同じ希土類元素であるスカンジウム(Sc)、ランタン(La)およびサマリウム(Sm)についても、導入する量を同様に変化させた蓄光性蛍光体を作成して残光輝度を確認した。この結果を、上記のガドリニウム(Gd)およびルテチウム(Lu)の結果とともに、比較例1の残光輝度を100とした相対輝度として表し、導入した希土類元素の量を横軸とし20分後の相対残光輝度を縦軸としたグラフとして図1に示す。
この結果、図1に示すように、同じ希土類元素であっても、スカンジウム、ランタンまたはサマリウムを導入した蓄光性蛍光体では、残光輝度が向上する効果は得られなかった。
これら以外にも、テルビウム(Tb)、プラシオジム(Pr)およびネオジム(Nd)等の希土類元素や、一般的な不純物であるビスマス(Bi)、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)およびガリウム(Ga)等の多数の元素を導入した蓄光性蛍光体を作成して残光輝度を確認したが、ガドリニウムおよびルテチウム以外の元素を導入した蓄光性蛍光体では、残光輝度が向上する効果は得られなかった。
また、これら以外に、例えばマグネシウム(Mg)の代わりにアルカリ土類金属としてカルシウム(Ca)、ストロンチウム(St)またはバリウム(Ba)を用いたり、チタン(Ti)の代わりに同族元素のジルコニウム(Zr)を用いた蓄光性蛍光体を作成して残光輝度を確認したが、いずれの蓄光性蛍光体の場合も残光輝度が向上する結果は得られなかった。
さらに、ガドリニウムおよびルテチウムのそれぞれを蓄光性蛍光体に導入した場合について確認した。
すなわち、表5に示すモル比のとおりにガドリニウムの量とルテチウムの量とを変化させたほかは、試料1−(1)と同一の条件で蓄光性蛍光体を作成して、試料2−(10)ないし試料2−(14)とした。
Figure 2007145167
そして、これら試料2−(10)ないし試料2−(14)についても、試料1−(1)ないし試料1−(9)と同一の方法で残光輝度特性を調べた。この結果を、比較例1の残光輝度を100とした場合の相対輝度として、表6に示す。
Figure 2007145167
この結果、表6に示すように、試料2−(10)ないし試料2−(13)、すなわちガドリニウムの量が0.1以上0.6以下で、ルテチウムの量が0.05以上0.2以下の場合は、20分後以降の残光輝度において、比較例1と比べてそれぞれ10%以上向上している。さらに、これら試料のうちの試料2−(11)および試料2−(12)、すなわちガドリニウムの量が0.2以上0.3以下で、ルテチウムの量が0.1以上0.2以下の場合は、20分後以降の残光輝度において、比較例1と比べてそれぞれ略20%以上とより向上している。
しかしながら、試料2−(14)、すなわちガドリニウムの量が0.6を超えて0.7でありルテチウムの量が0.2を超えて0.3の場合は、比較例1と比べて残光輝度が低下してしまう。
この結果、ガドリニウムおよびルテチウムのそれぞれを同時に導入した場合は、ガドリニウムの量が0.1以上0.6以下であって、ルテチウムの量が0.05以上0.2以下のときに、比較例1に比べて優れた残光輝度を有する橙色等の暖色系の蓄光性蛍光体となることがわかった。
次に、上記蓄光性蛍光体のチタン(Ti)およびマグネシウム(Mg)の量と、残光輝度との関係について説明する。
まず、イットリウム(Y)の原料として酸化イットリウム(Y)を20.32g(0.09モル)と、チタン(Ti)の原料として酸化チタン(TiO)を0.16g(Tiとして0.002モル)と、マグネシウム(Mg)の原料として塩基性炭酸マグネシウム(酸化マグネシウム(MgO)含有率が42.5%のもの)を0.19g(Mgとして0.002モル)と、ガドリニウム(Gd)の原料として酸化ガドリニウム(Gd)を3.63g(Gdとして0.02モル)と、硫黄(S)を16g(0.5モル)と、フラックスとして炭酸ナトリウム(NaCO)を16gとを十分によく混合して原料混合物とする。
そして、この原料混合物を、アルミナるつぼに充填してから、このアルミナるつぼの口にアルミナの蓋を被せる。次いで、この原料混合物を充填したアルミナるつぼをさらに石英るつぼに入れてから、この石英るつぼの口に石英の蓋を被せ、この石英の蓋を被せた石英るつぼを電気炉に入れて1300℃で5時間焼成する。この後、この石英るつぼを室温まで冷却した後に、この石英るつぼに入れたアルミナるつぼから焼成体を取り出し、この焼成体を純水および希塩酸水溶液の洗浄水で数回洗浄する。次いで、この洗浄した焼成体を脱水して乾燥させた後に、#200ナイロンメッシュにて篩別した蓄光性蛍光体を試料3−(3)とした。この試料3−(3)の蓄光性蛍光体は、Y1.8S:Ti0.02Mg0.02Gd0.2の式で表される。
同様に、導入するチタン(Ti)およびマグネシウム(Mg)の量を表7に示すモル比のとおりに変化させたほかは、試料3−(3)と同一の条件で蓄光性蛍光体を作成して、試料3−(1)、試料3−(2)、および試料3−(4)ないし試料3−(12)とした。
Figure 2007145167
次に、これら試料3−(1)ないし試料3−(12)の残光輝度特性を、実施例1と同一の方法で調べた。この結果を、比較例1の残光輝度を100とした場合の相対輝度として、表8に示す。なお、試料3−(11)については、分光蛍光光度計(型式:F−4500,株式会社日立製作所製)を用いて発光スペクトルを測定した。この結果を図2に示す。このとき、この試料3−(11)の発光スペクトルのピーク波長は、618nmであった。
Figure 2007145167
この結果、表8に示すように、試料3−(2)ないし試料3−(9)、すなわちチタンに対するマグネシウムのモル比が0.5以上40以下の場合は、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ30%以上向上している。さらに、これらの試料のうちの試料3−(4)ないし試料3−(7)、すなわちチタンに対するマグネシウムのモル比が5以上20以下の場合は、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ略70%以上とより向上している。
しかしながら、試料3−(1)、すなわちチタンに対するマグネシウムのモル比が0.5未満の0.1の場合は、比較例1と比べて残光輝度が低下してしまう。また、試料3−(10)、すなわちチタンに対するマグネシウムのモル比が40を超えて50の場合は、比較例1と比べて残光輝度が低下してしまう。
よって、例えば試料3−(10)のように、マグネシウムイオンが過剰に加えられた試料は、希塩酸による洗浄工程において、洗浄液の上澄みからマグネシウムイオンが多量に検出されることから、過剰となったマグネシウムが結晶内に入らずに、不純物として生成されてしまうと考えられる。
さらに、表7に示すように、試料3−(1)ないし試料3−(10)は、チタンの量が0.02の場合であるが、試料3−(11)および試料3−(12)のように、チタンの量が0.014の場合であっても、チタンに対するマグネシウムのモル比が5または15の場合に、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ70%以上向上している。
この結果、ガドリニウムを導入した場合は、チタンに対するマグネシウムのモル比が0.5以上40以下のときに、比較例1に比べて優れた残光輝度を有する暖色系の蓄光性蛍光体となることがわかり、このチタンに対するマグネシウムのモル比が5以上20以下のときに、より優れた残光輝度を有する暖色系の蓄光性蛍光体となることがわかった。
さらに、ルテチウムを導入した場合のチタンに対するマグネシウムのモル比と残光輝度との関係を確認した。
導入するルテチウムの量を0.1とし、表9に示すモル比のとおりにチタンとマグネシウムの量を変化させたほかは、試料3−(1)ないし試料3−(12)と同様に試料を作成して、試料4−(1)ないし試料4−(11)とした。
Figure 2007145167
次に、これら試料4−(1)ないし試料4−(11)の残光輝度特性を、実施例1と同一の方法で調べた。この結果を、比較例1の残光輝度を100とした場合の相対輝度として、表10に示す。
Figure 2007145167
この結果、表10に示すように、試料4−(1)ないし試料4−(6)、すなわちチタンに対するマグネシウムのモル比が1以上30以下の場合は、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ略20%以上向上している。さらに、これら試料のうちの試料4−(2)ないし試料4−(5)、すなわちチタンに対するマグネシウムのモル比が5以上20以下の場合は、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ略70%以上とより向上している。
さらに、表9に示すように、試料4−(1)ないし試料4−(6)は、チタンの量が0.02の場合であるが、試料4−(7)ないし試料4−(11)のように、チタンの量が0.003、0.014および0.04の場合であっても、チタンに対するマグネシウムのモル比が1以上15以下の範囲の場合に、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ30%以上向上している。
この結果、ルテチウムを導入した場合は、チタンに対するマグネシウムのモル比が1以上30以下のときに、比較例1に比べて優れた残光輝度を有する暖色系の蓄光性蛍光体となることがわかり、このチタンに対するマグネシウムのモル比が5以上20以下のときに、より優れた残光輝度を有する暖色系の蓄光性蛍光体となることがわかった。
次に、チタンに対するマグネシウムのモル比を一定とした場合のチタンの量と残光輝度との関係について調べた。
表11に示すモル比のとおりにチタン、マグネシウム、酸化イットリウム、ガドリニウム、およびルテチウムの量をそれぞれ変化させたほかは、試料1−(1)および試料2−(1)等と同様の方法で蓄光性蛍光体を作成して、試料5−(1)ないし試料5−(8)、および試料6−(1)ないし試料6−(3)とした。
Figure 2007145167
そして、これら試料5−(1)ないし試料5−(8)、および試料6−(1)ないし試料6−(3)についても、試料1−(1)ないし試料1−(9)と同一の方法で残光輝度特性を調べた。この結果を、上記の試料3−(4)、試料3−(6)、試料3−(11)、試料3−(12)、試料4−(2)、試料4−(4)、試料4−(7)、試料4−(9)および試料4−(10)の結果とともに、比較例1の残光輝度を100とした場合の相対輝度として、表12に示す。
Figure 2007145167
この結果、表12に示すように、試料5−(2)、試料5−(3)、試料3−(11)、試料3−(4)および試料5−(4)、すなわちガドリニウムを導入しチタンに対するマグネシウムのモル比が5で、チタンの量が0.005以上0.03以下の場合は、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ略20%以上向上している。さらに、これら試料のうちの試料5−(3)、試料3−(11)および試料3−(4)、すなわちチタンの量が0.01以上0.02以下の場合は、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ略70%以上とより向上している。
しかしながら、試料5−(1)、すなわちチタンの量が0.005未満の0.002の場合は、比較例1と比べて残光輝度が低下してしまう。また、試料5−(5)、すなわちチタンの量が0.03を超えて0.035の場合も、比較例1と比べて残光輝度が低下してしまう。
この傾向は、チタンに対するマグネシウムのモル比が15の場合も確認できる。具体的に、試料5−(6)、試料3−(12)、試料3−(6)および試料5−(7)、すなわちチタンの量が0.005以上0.03以下の場合は、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ20%以上向上している。さらに、これら試料のうちの試料3−(12)および試料3−(6)、すなわちチタンの量が0.014以上0.02以下の場合は、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ70%以上とより向上している。
しかしながら、試料5−(8)、すなわちチタンの量が0.03を超えて0.035の場合は、比較例1と比べて残光輝度が低下してしまう。
さらに、ルテチウムを導入した場合についても確認する。具体的に、試料4−(7)、試料4−(9)、試料4−(2)および試料6−(2)、すなわちチタンに対するマグネシウムのモル比が5で、チタンの量が0.003以上0.03以下の場合は、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ略20%以上向上している。さらに、これら試料のうちの試料4−(9)および試料4−(2)、すなわちチタンの量が0.014以上0.02以下の場合は、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ略70%以上とより向上している。
しかしながら、試料6−(3)、すなわちチタンの量が0.03を超えて0.035の場合は、比較例1と比べて残光輝度が低下してしまう。
さらに、試料4−(10)および試料4−(4)、すなわちチタンに対するマグネシウムのモル比が15で、チタンの量が0.014以上0.02以下の場合は、残光輝度が比較例1と比べてそれぞれ略70%以上とより向上している。
この結果、チタンの量が0.003以上0.03以下の場合に、比較例1に比べて優れた残光輝度を有する暖色系の蓄光性蛍光体になることがわかった。
以上の結果の通り、蓄光性蛍光体に導入する希土類元素としてユウロピウム(Eu)以外の希土類元素、マグネシウム(Mg)以外のアルカリ土類金属元素、またはチタン(Ti)同族のジルコニウム(Zr)等の異種金属のドーピングによる増感効果等を幅広く調査した結果、希土類元素のガドリニウム(Gd)とルテチウム(Lu)とを導入した場合に、暖色系の残光を発する蓄光性蛍光体の残光輝度の向上に極めて効果的であることがわかった。
すなわち、一般式がYS:Ti,Mg,Gdで表される蓄光性蛍光体に、付活剤としてチタン(Ti)を用いるとともに、共付活剤としてマグネシウム(Mg)を用いた上で、ガドリニウム(Gd)を導入することによって、暖色系の残光を発する蓄光性蛍光体の残光輝度を向上できる。
具体的に、この蓄光性蛍光体中のガドリニウムの量aが0.06未満の場合は、このガドリニウムを導入することによる効果が足りず残光輝度が向上せず、このガドリニウムの量aが0.6を超える場合は、濃度消光等によって残光輝度が低下してしまう。
また、この蓄光性蛍光体中のチタンの量xが0.005未満の場合は、付活剤としての効果が得られず残光輝度が低下してしまい、このチタンの量xが0.03を超える場合は、濃度消光等によって残光輝度が低下してしまう。
さらに、この蓄光性蛍光体中のチタンに対するマグネシウムのモル比(y/x)が0.5未満の場合は、付活剤であるチタンに対して、共付活剤であるマグネシウムの量が不足するため残光輝度が低下してしまい、このチタンに対するマグネシウムのモル比(y/x)が40を超える場合は、マグネシウムの量が多すぎるため濃度消光または不純物の生成等によって残光輝度が低下してしまう。
このため、一般式がYS:Ti,Mg,Gdで表される蓄光性蛍光体は、aを0.06≦a≦0.6の条件とし、xを0.005≦x≦0.03の条件とし、(y/x)を0.5≦(y/x)≦40の条件にすることによって、暖色系の残光を発し、残光輝度が向上した蓄光性蛍光体にできる。
さらに、一般式がYS:Ti,Mg,Luで表される蓄光性蛍光体であっても、付活剤としてチタン(Ti)を用いるとともに、共付活剤としてマグネシウム(Mg)を用いた上で、ルテチウム(Lu)を導入することによって、残光輝度を向上できる。
具体的に、この蓄光性蛍光体中のルテチウムの量bが0.02未満の場合は、このルテチウム導入することによる効果が足りず残光輝度が向上せず、このルテチウムの量bが0.2を超える場合は、濃度消光等によって残光輝度が低下してしまう。
また、この蓄光性蛍光体中のチタンの量xが0.003未満の場合は、付活剤としての効果が得られず残光輝度が低下してしまい、このチタンの量xが0.03を超える場合は、濃度消光等によって残光輝度が低下してしまう。
さらに、この蓄光性蛍光体中のチタンに対するマグネシウムのモル比(y/x)が0.5未満の場合は、付活剤であるチタンに対して、共付活剤であるマグネシウムの量が不足するため残光輝度が低下してしまい、このチタンに対するマグネシウムのモル比(y/x)が40を超える場合は、マグネシウムの量が多すぎるため濃度消光または不純物の生成等によって残光輝度が低下してしまう。
このため、一般式がYS:Ti,Mg,Luで表される蓄光性蛍光体は、bを0.02≦b≦0.2の条件とし、xを0.005≦x≦0.03の条件とし、(y/x)を0.5≦(y/x)≦40の条件とすることによって、暖色系の残光を発し、残光輝度が向上した蓄光性蛍光体にできる。
さらに、一般式がYS:Ti,Mg,Gd,Luで表される蓄光性蛍光体であっても、付活剤としてチタン(Ti)を用いるとともに、共付活剤としてマグネシウム(Mg)を用いた上で、ガドリニウム(Gd)およびルテチウム(Lu)のそれぞれを導入することによって、残光輝度を向上できる。
具体的に、この蓄光性蛍光体中のガドリニウムの量aが0.1未満で、ルテチウムの量bが0.05未満の場合は、これらガドリニウムおよびルテチウムを導入したことによる効果が足りず残光輝度が向上せず、このガドリニウムの量aが0.6を超え、ルテチウムの量bが0.2を超える場合は、濃度消光等によって残光輝度が低下してしまう。
また、この蓄光性蛍光体中のチタンの量xが0.005未満の場合は、付活剤としての効果が得られず残光輝度が低下してしまい、このチタンの量xが0.03を超える場合は、濃度消光等によって残光輝度が低下してしまう。
さらに、この蓄光性蛍光体中のチタンに対するマグネシウムのモル比(y/x)が0.5未満の場合は、付活剤であるチタンに対して、共付活剤であるマグネシウムの量が不足するため残光輝度が低下してしまい、このチタンに対するマグネシウムのモル比(y/x)が40を超える場合は、マグネシウムの量が多すぎるため濃度消光または不純物の生成等によって残光輝度が低下してしまう。
このため、一般式がYS:Ti,Mg,Gd,Luで表される蓄光性蛍光体は、aを0.1≦a≦0.6の条件とし、bを0.05≦b≦0.2の条件とし、xを0.005≦x≦0.03の条件とし、(y/x)を0.5≦(y/x)≦40の条件とすることによって、暖色系の残光を発し、残光輝度が向上した蓄光性蛍光体にできる。
なお、蓄光性蛍光体中にガドリニウム(Gd)またはルテチウム(Lu)を導入することによって残光輝度が向上する要因については、現在のところ明らかではないが、これら2つの希土類元素であるガドリニウムおよびルテチウムは、安定な4f構造を有することに関連していると推定される。すなわち、ガドリニウムイオンは4f電子が4f殻の半分を占める4f構造であり、ルテチウムイオンは4f電子が4f殻の全てを占める4f14構造であることによると推定される。
また、これらガドリニウムまたはルテチウム以外の、例えばランタン(La)、スカンジウム(Sc)、サマリウム(Sm)、テルビウム(Tb)、プラセオジム(Pr)、またはネオジム(Nd)等の希土類元素を導入した場合では、残光輝度が向上せず、残光輝度が低下してしまう場合が多い。このため、残光輝度を向上させる効果は、ガドリニウムおよびルテチウムに特異的なものと推定される。
次に、上記蓄光性蛍光体の蛍光強度の特性について説明する。
まず、蓄光性蛍光体として実施例2の試料3−(11)を用意した。また、比較用として特許文献1(日本国特許第2543825号)に記載されている蓄光性蛍光体の実施品である蓄光性蛍光体G−300M(緑色発光,根本特殊化学株式会社製)と、特許文献2(特開2000−345154号公報)に記載されている蓄光性蛍光体の実施品である蓄光性蛍光体NP2850−1(赤色発光,日亜化学工業株式会社製)とを用意した。
そして、これら試料3−(11)、G−300MおよびNP2850−1の3点をアルミニウムの試料皿に入れ、10Wのブラックライト蛍光灯(発光ピーク波長365nm)を用いて、20cmの距離から各試料に紫外線を照射し、これら試料が励起されて蛍光発光した光の蛍光強度を、輝度計(型式:LS−110,コニカミノルタホールディングス株式会社製)を用いて測定した。この結果を、G−300Mの蛍光強度を100とした相対値として、表13に示す。
Figure 2007145167
この結果、表13に示すように、試料3−(11)の蛍光強度は、比較用とした一般的な蓄光性蛍光体であるG−300MおよびNP2850−1と比較して、極めて低いことが分かった。このとき、これら試料3−(11)、G−300MおよびNP2850−1についての発光輝度を肉眼で観察したが、G−300MおよびNP2850−1の蓄光性蛍光体は、肉眼ではっきりと視認できたのに対し、試料3−(11)の蓄光性蛍光体は、肉眼でほとんど視認できなかった。
また、この試料3−(11)以外の試料1−(3)ないし試料1−(8)、試料2−(2)ないし試料2―(6)、試料2−(10)ないし試料2−(13)、試料3−(2)ないし試料3−(9)、試料3−(12)、試料4−(1)ないし試料4−(11)、試料5−(2)ないし試料5−(4)、試料5−(6)、試料5−(7)、および試料6−(2)の蛍光強度についても視認観察したが、試料3−(11)と同様に、極めて低い蛍光強度であった。
この結果、これらの蓄光性蛍光体は、紫外線照射下であっても、肉眼でほとんど蛍光発光を視認できない特性を有することが分かった。
本発明の蓄光性蛍光体は、橙色等の暖色系の残光を発するため、玩具、包装材料、または装飾品の用途として利用できるほか、案内表示または安全標識等にも幅広く利用できる。
また、本発明の蓄光性蛍光体は、蛍光強度が極めて低く、紫外線照射下であっても肉眼でほとんど蛍光発光を視認できない特性を有するため、この特性と残光特性とを組み合わせることによって、クレジットカード、有価証券、またはブランド品の偽造防止等のセキュリティ用途にも幅広く応用できる。
本発明の一実施の形態の蓄光性蛍光体および比較例の蓄光性蛍光体に導入する元素の量に対する残光輝度の変化を示すグラフである。 本発明の一実施の形態の蓄光性蛍光体の365nm励起時の発光スペクトルを示すグラフである。 同上蓄光性蛍光体のうちの試料1−(3)のX線回折図形を示すグラフである。

Claims (3)

  1. 一般式がYS:Ti,Mg,Gdで表され、
    aは、0.06≦a≦0.6であり、
    xは、0.005≦x≦0.03であり、
    (y/x)は、0.5≦(y/x)≦40である
    ことを特徴とした蓄光性蛍光体。
  2. 一般式がYS:Ti,Mg,Luで表され、
    bは、0.02≦b≦0.2であり、
    xは、0.003≦x≦0.03であり、
    (y/x)は、0.5≦(y/x)≦40である
    ことを特徴とした蓄光性蛍光体。
  3. 一般式がYS:Ti,Mg,Gd,Luで表され、
    aは、0.1≦a≦0.6であり、
    bは、0.05≦b≦0.2であり、
    xは、0.005≦x≦0.03であり、
    (y/x)は、0.5≦(y/x)≦40である
    ことを特徴とした蓄光性蛍光体。
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