JPWO2007069733A1 - アルカリ水溶液を用いたセラミド関連物質の製造方法とその装置 - Google Patents

アルカリ水溶液を用いたセラミド関連物質の製造方法とその装置 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、従来抽出工程において必須であったエタノール等の有機溶媒を使用することなく、生体組織からセラミド関連物質を製造する方法及びその装置の提供である。また、本発明は、従来の方法と同等の抽出精度を維持しながら製造工程数を減縮する方法及びその装置の提供である。【解決手段】有機溶媒を用いた抽出工程を経ること無しに準備した生体組織をアルカリ水溶液中に浸漬する。アルカリで当該生体組織を構成する細胞そのものを溶解することによってセラミド関連物質を抽出すると共に、同時に得られる不要なグリセロ糖脂質をけん化する。得られる抽出液と不溶物とを分離し、当該抽出液を濃縮することで目的のセラミド関連物質を得る製造方法を提供する。【選択図】図6

Description

本発明は、アルカリ水溶液によって生体組織からセラミド関連物質を製造する方法およびその装置に関する。
近年、皮膚保湿剤として、また抗腫瘍剤や免疫賦活剤等の医薬品の有効成分としてセラミド(N−アシルスフィンゴシン)やその関連物質が注目されている。「セラミド」は脂質の一種で、スフィンゴシンと脂肪酸とが酸アミド結合をした構造を有する物質である。また、「セラミド関連物質」とは当該セラミドを基本骨格とするスフィンゴ脂質をいう。セラミド関連物質は、セラミドに糖が結合したスフィンゴ糖脂質と、リン酸と塩基が結合したスフィンゴリン脂質に二分され、さらにこれら二つのスフィンゴ脂質には多数の分子種が知られている。このようなセラミドやセラミド関連物質は種々の生物の細胞膜上に存在し、皮膚においては角質層からの水分蒸発を防ぐ保湿成分として機能する他、細胞分化や増殖、アポトーシス誘導、情報伝達、神経機能等において様々な生理機能を果たすことが明らかになっている。
セラミド関連物質は動植物の組織に広く存在するが、特に動物の脳や神経組織に比較的多く見られる。そのため従来のセラミド関連物質は牛等の家畜の脳から抽出されたものが主に使用されてきた。しかし、BSE(牛海綿状脳症)のヒトへの感染が国際問題化したことに伴い、家畜の脳から得たセラミド関連物質に対する安全性が問題となってきた。さらに、動物愛護の観点からも家畜の脳等に代わる人体に安全なセラミド関連物質の新たな原料、若しくは代替品が求められていた。
上記問題の解決策として、まず一つにはセラミド関連物質の化学合成がある。セラミド関連物質の多くはその分子構造が解明されており、それに基づいた合成方法も開発されている。したがって、近年では人工的に化学合成されたセラミド関連物質が天然物の代替品として使用され始めている。化学合成されたセラミド関連物質はBSEや動物愛護の問題は解決できる。しかし、化学合成の際に使用された人体に有害な薬剤の残存、あるいは製造過程で発生する有害な副産物の混入等の問題が発生し、人体への安全面では十分とは言い難かった。
このような背景から現在では人体に対して安全性の高いセラミド関連物質の天然原料として植物が注目されている。植物由来のセラミド関連物質を利用した発明としては保湿剤や医薬用組成物等の有効成分として利用したものが既に知られている。例えば、特許文献1は、こんにゃくトビ粉等から有機溶剤によって抽出されたスフィンゴ糖脂質を有効成分とするアトピー性皮膚炎治療剤の発明である。しかし、植物細胞はグリセロ糖脂質を主に含有しており、スフィンゴ糖脂質等のセラミド関連物質は動物細胞に比べると僅かしか存在しない。十分量のセラミド関連物質を得るためには大量の原料が必要となるため、製造コストが割高になるという問題がある。
植物を原料としながら製造コストを抑える一つの方法として、特許文献2の発明がある。この発明はビール粕からセラミド関連物質を含有する大麦麦芽油を製造する方法である。ビール粕は、セラミド関連物質を比較的豊富に含有し、かつビールの製造過程で発生する副産物であるため従来の植物原料に比べてコスト削減の点で優れている。しかし、ビール粕は、大量の水分を含有することから抽出用の極性溶媒を直ちに希釈してしまう。したがって、ビール粕から十分なセラミド関連物質の抽出を行うには、当該希釈を上回る大量の極性溶媒を使用しなければならならない。それが、製造コストのさらなる削減を阻んでいる。
上記特許文献2の問題をさらに解決する方法として特許文献3がある。特許文献3はセラミド関連物質を効率よく、かつ低コストで抽出するためにビール粕を十分に乾燥させる方法、及び得られた抽出液を再度抽出用の極性溶媒として用いるサイクルを繰り返す方法を提供している。これにより抽出に必要な極性溶媒量を従来方法の約1/10にまで抑えることができる。しかし、一方で乾燥工程やサイクル工程等の工程数の増加に伴うコスト増加という問題を生じてしまう。
以上のように人体に安全で、かつ安価なセラミド関連物質を提供するために様々な製造方法が発明されているが、いずれの方法も一つの問題を解決できても新たな問題を生じてしまう。したがって、人体に安全なセラミド関連物質の製造コストの削減は、これ以上はもはや困難であろうとも考えられた。
ところで、従来の生体組織からの脂質成分の抽出は、動物組織由来、植物組織由来を問わず、例外なくエタノール等の有機溶媒中に原料を浸漬する方法によって行われている。つまり、生体組織からセラミド関連物質を製造する工程において、有機溶媒の使用はこれまで不可欠と考えられてきた。しかし、一般に有機溶媒は引火性の高い物質が多い。したがって、その使用には工場の防爆、防火の設備費や、有機溶媒管理者や危険物取扱者等の配備の義務づけによる人件費等が必要となってくる。実際のセラミド関連物質の抽出においては人体への影響が最も少ないエタノールが抽出用有機溶媒として使用されている。しかし、エタノールは例え非課税価格であっても高額という問題もある。このようにセラミド関連物質の抽出では有機溶媒の使用自体が製造コストの削減上、大きな障害となっている。
特開2003−231640 特開平11−193238 特願2005−272639
本発明の課題は、製造コストを削減するために抽出工程でエタノール等の有機溶媒を使用することなく生体組織からセラミド関連物質を製造する方法およびその装置を提供することである。
また、本発明の他の課題は、従来の方法と同等の抽出精度を維持しながら製造工程数を減縮する方法およびその装置を提供することである。
上記課題を解決するために本発明者らは、生体組織をアルカリ水溶液に直接浸漬して、当該生体組織を構成する細胞そのものを溶解することで、有機溶媒を使用する抽出工程を経ることなしにセラミド関連物質を抽出するという画期的な方法を開発した。本発明は、係る方法に基づいて完成されたものであり、以下(1)から(7)に示すセラミド関連物質を製造する方法と(8)に示すその製造装置を提供するものである。
(1)本発明は有機溶媒抽出工程を経ずに準備した生体組織をアルカリ水溶液中に浸漬してセラミド関連物質を抽出する抽出工程と、前記抽出工程で得られる抽出液と不溶物とを分離する分離工程と、前記分離工程で分離された抽出液を濃縮する濃縮工程とからなるセラミド関連物質製造方法を提供する。
(2)本発明は、前記抽出工程がアルカリ水溶液中に浸漬した生体組織を加熱、又は/及び加圧することで行うことを特徴とするセラミド関連物質製造方法を提供する。
(3)本発明は、前記抽出工程のアルカリ水溶液がpH11以上pH14以内の範囲であることを特徴とするセラミド関連物質製造方法を提供する。
(4)本発明は、前記抽出工程の加熱が105℃以上130℃以内の範囲であることを特徴とするセラミド関連物質製造方法を提供する。
(5)本発明は、前記抽出工程の加圧が1.2気圧以上2.2気圧以内の範囲であることを特徴とするセラミド関連物質製造方法を提供する。
(6)本発明は、前記生体組織が植物由来の組織であることを特徴とするセラミド関連物質製造方法を提供する。
(7)本発明は、前記植物由来の組織がビール等の製造過程で得られるビール粕であることを特徴とするセラミド関連物質製造方法を提供する。
(8)本発明は、有機溶媒抽出部を経ずに準備した生体組織をアルカリ水溶液中に浸漬してセラミド関連物質を抽出する抽出部と、前記抽出部で得られる抽出液と不溶物とを分離する分離部と、前記分離部で分離された抽出液を濃縮する濃縮部とからなるセラミド関連物質製造装置を提供する。
本発明のセラミド関連物質製造方法によれば、エタノール等の有機溶媒を抽出工程で一切使用することなく目的のセラミド関連物質を抽出できる。これにより製造上不可避的な問題であった有機溶媒の使用に伴う防爆、及び防火の設備費や、有機溶媒管理者等の有資格者の人件費を削減することが可能となる。また、使用するアルカリ塩も、例えば炭酸カリウムを使用した場合、エタノールと比較すると遥かに安価である。したがって、大幅な製造コスト減が期待できる。
本発明のセラミド関連物質製造方法によれば、従来の方法と同等の抽出精度を維持しながら製造工程を減縮することが可能となる。例えば、原料に粉砕工程や乾燥工程等の加工をすることなく、そのまま抽出工程に使用できる。また、セラミド関連物質の純度を高めるために従来抽出工程後に行っていたグリセロ糖脂質のけん化のためのアルカリ加水分解工程を、本発明では抽出工程の一工程で同時に行うことができる。
本発明のセラミド関連物質製造方法によれば、製造されるセラミド関連物質の人体への使用上の安全面においても従来の製造方法によるセラミド関連物質と同等以上の物を製造できる。例えば、アルカリ水溶液を作製する上でアルカリ塩として炭酸カリウムを使用した場合、炭酸カリウムは食品添加物としての使用が認められている「かんすい」の主成分であり、通常の使用であれば人体への影響は極めて小さいとされている。
本発明のセラミド関連物質製造方法によれば、抽出に用いる溶媒がアルカリ水溶液であることから、有機溶媒の場合のように製造装置の容器や配管等に耐溶解性、耐腐食性を考慮する必要がない。したがって、既存の設備の転用が可能となる。例えば、原料がビール粕である場合には、ビール製造工場においてビール製造に使用される煮沸工程の釜や濾過工程の濾過装置等の設備を、本発明の抽出工程の釜や分離工程の濾過装置にそれぞれ転用することができる。
以下に、図を用いて各発明を実施するための最良の形態について説明をする。なお、本発明はこれらの実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる様態で実施しうる。
実施形態1は、請求項1から7等について説明する。実施形態2は、請求項8等について説明する。
<<実施形態1>>
<実施形態1:概要>
実施形態1は、セラミド関連物質製造方法に関する。本実施形態の製造方法は有機溶媒抽出工程を経ること無しにビール粕等の植物由来の組織をはじめとする生体組織を直接アルカリ水溶液中に浸漬してセラミド関連物質を抽出すると共に、同様にアルカリ水溶液中に抽出されたグリセロ糖脂質をけん化することを特徴とする。
本実施形態によって、従来、生体組織からセラミド関連物質を抽出する際に不可避と考えられてきた有機溶媒の使用が不必要となる。それに伴い、工場設備の軽減、人件費の削減、製造工程の大幅減縮等が可能となる。
<実施形態1:各工程の説明>
図1に実施形態1の各工程とその流れを示す。この図で示すように本実施形態は、抽出工程(S0101)、分離工程(S0102)、濃縮工程(S0103)の工程から構成される。以下、各工程について具体的に説明する。
((抽出工程))
「抽出工程」(S0101)は、有機溶媒抽出工程を経ずに準備した生体組織をアルカリ水溶液中に浸漬してセラミド関連物質を抽出する工程である。本抽出工程は、分離工程(S0102)、濃縮工程(S0103)に先立ち行われる。
「生体組織」とは、本発明における原料であって、生物を構成する体の全部、又は一部である。生物は酵母のような単細胞生物、動物、植物のような多細胞生物のいずれであってもよい。多細胞生物の場合、使用する器官や組織の部位は特に制限しない。動物であれば製造効率上は目的のセラミド関連物質を多量に含有する脳、神経器官等の使用が好ましい。ただし、BSEの問題を考慮した場合、人体への安全性の面から当該問題が解決するまでは植物由来の組織を使用することが好ましい。植物組織の中ではビール等の製造過程で得られるビール粕が特に好ましい。これは実施例2で述べるように、本発明によればビール粕から目的のセラミド関連物質を最も効率よく製造できるからである。
「ビール等」とは、ビール、若しくはビール類似酒を意味する。ここで「ビール類似酒」とは、ビールに類似した外見や風味を有するアルコール飲料を言う。例えば、発泡酒が該当する。
図3を用いて「ビール等の製造工程」について例を挙げて説明する。この図で示すように、一般的なビール製造工程における最初の工程は、麦芽製造工程(0301)である。当該工程で大麦を発芽させた後に熱風等で乾燥させて成長を止めることにより乾燥麦芽を得る。次は仕込み工程(0302)である。当該工程では前記乾燥麦芽を粉砕し、温水と副原料を加えて麦芽酵素の働きによってデンプンの糖化処理を行う。当該糖化処理後、麦汁を濾過する。この植物搾汁液を濾過した絞り粕である残渣(0307)がモルトフィードとも呼ばれるビール粕である。続いて煮沸工程(0303)を行う。当該工程では前記麦汁を煮沸して苦味成分であるホップを加える。煮沸によって生じるタンパク質やホップ粕(0308)を澱(オリ)として沈殿させて除去する。次は発酵工程(0304)である。当該工程では、前記煮沸後の麦汁を冷却し、酵母を加えて1週間から2週間程度(発酵温度により異なる)発酵させる。続いて熟成工程(0305)に入る。当該工程では発酵工程後の麦汁を0℃近くまで冷却して発酵を抑える。ここで、炭酸ガスが蓄積されるとともに味がまろやかになる。最後が濾過工程(0306)である。当該工程では、前記熟成工程後の液から酵母(0309)を濾過して生ビールを得る。濾過後、加熱殺菌したビールが通常のビールである。
「ビール粕」とは、前記ビール等の製造工程において仕込み工程後に得られる残渣(0307)を言う。したがって、通常は麦芽の他、副原料として用いられる米、コーンスターチ、ジャガイモ等のでんぷん、若しくは糖を含有する穀物、又は芋類等の搾り粕から構成されている。もちろん、麦芽の搾り粕100%から成る残渣であってもよい。また、煮沸工程(0303)後に得られるタンパク質やホップ粕(0308)や濾過工程(0306)後に得られる酵母(0309)を当該ビール粕の一部として加えてもよい。ホップ粕や酵母等には搾汁液や発酵工程へ移行した抽出すべきセラミド関連物質が混在している可能性があるからである。
「有機溶媒抽出工程」とは、生体組織から脂質成分を抽出する場合にエタノール等の有機溶媒を使用する抽出工程であり、従来のセラミド関連物質製造方法上は、当然に必須の工程と考えられていた。本発明は当該工程を必要としない。すなわち、本発明では有機溶媒抽出工程を経ること無しに準備した生体組織をそのまま本発明の抽出工程に使用できることを特徴としている。
「アルカリ水溶液」は、アルカリの性質を有する水溶液であって、抽出工程で用いる抽出溶媒である。当該水溶液にはエタノール等の有機溶媒は含まれていない。通常当該水溶液は、アルカリ塩を水に溶解することによって調製される。使用するアルカリ塩は特に限定しない。例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)等のいずれを使用してもよく、又それらの組み合わせであってもよい。中でも炭酸カリウム、又は炭酸ナトリウム等の炭酸塩は、食品添加物として認可されている「かんすい」の主成分であり、人体に対する影響も極めて小さいことから本実施形態に使用するアルカリ塩として好ましい。
本実施形態においてアルカリ水溶液は細胞の溶解、及び当該溶解によって水溶液中に溶出したグリセロ糖脂質のけん化(アルカリ加水分解)に機能する。したがって、本実施形態で使用するアルカリ水溶液のpHは細胞を溶解する上で十分な濃度が必要である。具体的には、使用直前の当該アルカリ水溶液のpHがpH11以上pH14以下の範囲にあることが好ましい。
「生体組織をアルカリ水溶液中に浸漬」する場合、原料である生体組織を予め乾燥する工程や、粉砕する工程は必ずしも必要ではない。これは、例え原料が大量の水分を含有していた場合であっても後述する容量のアルカリ水溶液に浸漬した場合には当該アルカリ水溶液のpHはほとんど影響を受けないからである。事実、実施例4で示すように含水率約60%のビール粕を原料に使用しても本実施形態によれば目的のセラミド関連物質を製造することができる。もちろん、抽出工程に先立ち、生体組織の乾燥工程や粉砕工程を追加しても構わない。工程数の増加に伴う製造コストの増加と当該追加工程によるセラミド関連物質の単位重量あたりの収率を勘案して適宜追加すればよい。なお、乾燥工程における乾燥方法や粉砕工程における粉砕方法は公知技術に従って行えばよい。
「生体組織をアルカリ水溶液中に浸漬」する場合、アルカリ水溶液の分量はアルカリ水溶液の容量対生体組織の重量、すなわち容量/重量(V/W)を5倍以上15倍以下の範囲内にすることが好ましい。より好ましくは8倍以上12倍以下の範囲内である。これらの範囲内であれば、前述のように原料が多量の水分を含有していても原料自体が強い酸性を有していない限り当該水溶液のpHにはほとんど影響しないからである。さらに、当該水溶液中に溶解したグリセロ糖脂質をけん化するにも十分だからである。具体的な例を挙げて説明すると、生体組織5gに対してはアルカリ水溶液を25ml以上75ml以下の範囲内で使用すればよい。
本実施形態において「抽出する」とは、生体組織に含まれるセラミド関連物質をアルカリ水溶液中に遊離させることを言う。有機溶媒による従来の抽出工程は生体組織の構造は基本的に維持しながら脂肪成分のみを有機溶媒中に溶出するものであった。これに対して、本実施形態の抽出工程では、アルカリによって生体組織を構成するタンパク質を変性させる。それにより生体組織、さらには細胞壁や細胞膜そのものを溶解し、それまで細胞内に含まれていた若しくは細胞膜に固定されていたセラミド関連物質をアルカリ水溶液中に遊離させることで抽出を達成する。
本実施形態の抽出工程は、アルカリによって細胞を溶解して前述のセラミド関連物質をアルカリ水溶液中に遊離させると共に、当該水溶液中に遊離したグリセロ糖脂質をけん化する工程でもある。これは一見従来の有機溶媒抽出工程に伴うアルカリ加水分解工程に類似する。しかし、従来方法のアルカリ加水分解工程が有機溶媒中に抽出された脂質成分中のグリセロ糖脂質をけん化することを目的として構成されているのに対し、本実施形態の方法では生体組織から脂質成分を遊離させることと、グリセロ糖脂質等をけん化することの二つを目的として構成されている。また両者の構成要件も異なる。すなわち、従来方法のアルカリ加水分解工程は50℃〜60℃程度に加熱すれば十分であったが、本実施形態の抽出工程で十分な抽出効果を得るためには後述する95℃以上に加熱することが好ましい。このように従来方法の有機溶媒抽出工程に伴うアルカリ加水分解工程と、本実施形態の抽出工程とは、その構成を異にする工程である。
前記けん化によってグリセロ糖脂質は、脂肪酸とグリセリンに分解される。従来技術では、セラミド関連物質の純度を高めるために生体組織から脂質成分をエタノール等の有機溶媒によって抽出した後、得られた脂質成分に含まれるグリセロ糖脂質をけん化するという二工程を経る必要があった。特に植物組織は糖脂質としてグリセロ糖脂質を多量に含有しておりセラミド関連物質であるスフィンゴ糖脂質は微量にしか存在しない。そのため不要なグリセロ糖脂質を除去する上でアルカリ加水分解工程は重要な工程であった。しかし、本実施形態の方法によれば抽出工程が抽出と同時にけん化を行えるため、一工程のみで従来技術と同様の効果を得ることができる。この点においても、本実施形態の方法は非常に有用である。なお、抽出工程によるけん化については実施例4にその実験結果を示す。
抽出工程においてセラミド関連物質を抽出する場合、アルカリ水溶液中に浸漬した生体組織を加熱、又は/及び加圧することが望ましい。加熱によりアルカリ水溶液を高温にすることで、アルカリによるタンパク質変性やけん化等の反応が促進され、抽出時間の短縮、抽出効率の向上が可能となるからである。また、加圧によりアルカリ水溶液に浸漬された生体組織を100℃以上に加熱することが可能となるからである。
加熱する温度は、95℃以上140℃以下であればよい。95℃よりも低い場合にはセラミド関連物質の抽出には不十分であり、また140℃を超える場合には、目的のセラミド関連物質が変性してしまう恐れがある。抽出効率上、望ましい温度は105℃以上130℃以内の範囲である。なお、生体組織を加熱する場合、抽出溶媒であるアルカリ水溶液の温度、及び濃度を均一化するために加熱と共に当該溶媒を撹拌してもよい。撹拌方法は、例えば、撹拌棒、撹拌装置を用いた撹拌等が該当する。
加熱の方法は、生体組織の温度を前述の温度範囲まで上昇できる方法であれば特に限定しない。例えば、温度調節装置が設置された槽内でヒーター等の熱源、あるいはマイクロウェーブによって加熱してもよいし、容器に入れて直火によって火力を調節しながら加熱してもよい。
加圧する圧力は、1気圧以上2.5気圧以内であればよい。これは、上記加熱する温度95℃以上140℃以下の条件を達成するためである。抽出効率上で望ましい温度は105℃以上130℃以内の範囲であるが、この温度を達成するために望ましい圧力は1.2気圧以上2.2気圧以内の範囲である。
加圧の方法は、前述の圧力を達成できる方法であれば特に限定はしない。例えば、オートクレーブ装置や家庭用圧力鍋等であってもよい。
((分離工程))
「分離工程」(S0102)は、前記抽出工程に続いて行われる工程であり、前記抽出工程で得られる抽出液と不溶物とを分離する工程である。抽出工程後に得られるアルカリ水溶液中は、後述する抽出液と不溶物とが混在した混合状態にあり、本分離工程はこの混合状態の溶液から抽出液を得るための工程である。
「抽出液」とは、アルカリ水溶液とアルカリの作用によって当該水溶液中に溶解した生体組織の液体成分である。ただし、後述する不溶物を分離した後に残存する微小な固体成分で、視認の容易でない粒子レベルのものであれば液体成分でなくとも当該抽出液中に混在していてもよい。当該抽出液は、生体組織より溶出したセラミド関連物質等の脂質成分をはじめ、変性タンパク質やグリセロ糖脂質のけん化で生じた脂肪酸やグリセリン等の様々な成分を含有している。
「不溶物」とは、前記抽出工程でアルカリ水溶液に溶解せずに残存する固体成分である。当該不溶物は必ずしもアルカリ水溶液に溶解不能なわけではなく、後述の不溶物の再浸漬でも説明するように再度抽出工程を経ることでアルカリ水溶液中に溶解する成分も含まれている。
分離方法は、抽出液と不溶物とを分離できる方法であれば特に限定しない。例えば、濾過、遠心分離、静置沈殿、あるいはそれらの組み合わせ等、いずれであってもよい。
濾過の場合、例えば、自然落下式、減圧濾過等の圧力制御式等のいずれの方式も利用できる。濾過に用いるフィルターの素材は、例えば、ペーパーフィルター、メンブレンフィルター、布フィルター、チャコールフィルター、中空枝糸膜フィルター、ミクロフィルター、セライト、珪藻土フィルター、それらの組み合わせ等が該当する。濾過に用いるフィルターの構造は、単一層、多層を問わない。また、多層フィルターの場合には同一種類の層、若しくは異なる複数の種類の層から構成されていてもよい。さらに、多層フィルターの場合には各層を経由可能なように構成されていれば、直接重層されている必要は必ずしもなく、各層が分離していても構わない。例えば、それぞれのフィルターを充填したカラムを配管を介して複数連結して濾過可能なようにしてもよい。
遠心分離の場合、抽出液と不溶物の分離方式は問わない。例えば、抽出工程後のアルカリ水溶液を多孔管内に導入し、遠心機内で遠心させることによって孔から放出する抽出液のみを回収する方式であってもよいし、無孔管内に導入して遠心機内で遠心後、上清である抽出液のみを回収する方式であってもよい。また、遠心の重力加速度(G)は、本発明の抽出液に混入する不溶物の許容レベルを勘案し、適宜定めればよい。
((濃縮工程))
「濃縮工程」(S0103)は、前記分離工程に続いて行われる工程で、前記分離工程で分離された抽出液を濃縮する工程である。本実施形態で「濃縮」とは、以下の二つに大別できる。
(1)抽出液からの水分除去
第一の「濃縮」は、前記抽出液からアルカリ水溶液の水分を全部、又は一部除去することであり、最終産物が液体であればその液体中のセラミド関連物質の濃度を高めることを言う。
当該濃縮の方法は、セラミド関連物質を変性することなく抽出液から水分を除去できる方法であれば公知技術のいずれの方法を用いてもよい。例えば、エバポレーターを用いた蒸発濃縮法や、送風により水分を蒸発させる風乾蒸発濃縮法等が利用できる。
この場合得られる最終産物は、目的のセラミド関連物質の他、変性タンパク質、グリセリン、脂肪酸、また析出したアルカリ塩等が混在する言わば不純物を含む状態である。このように濃縮工程後に得られる産物は不純物が混在した状態であっても構わない。なぜなら、以降の工程はその後のセラミド関連物質の使用目的や必要性に応じて適当な処理を適宜追加すればよいのであって、セラミド関連物質を製造する上で必ずしも必要ではないからである。例えば、皮膚保湿剤として使用するのであれば変性タンパク質、グリセリン、脂肪酸の混在は特に問題とならないことが多い。そのような場合には皮膚に影響を及ぼすアルカリ塩を除去する処理のみを追加工程として行えばよい。アルカリ塩の除去は、例えば使用したアルカリ塩が炭酸カリウムであればエタノールに不溶であることから、最終産物を適当量のエタノールと混合し、固形成分(析出した炭酸カリウム)を除去することで達成できる。また、セラミド関連物質の純度をさらに高める必要がある場合には、後述する「(2)抽出液からのセラミド関連物質の粗精製」の方法によって濃縮すればよい。以上のように、濃縮工程後に得られる産物に不純物が混在する状態であったとしても本実施形態の効果を何ら減じるものではない。
(2)抽出液からのセラミド関連物質の粗精製
第二の「濃縮」は、前記抽出液に含まれるセラミド関連物質以外の不純物を分離、除去することであり、セラミド関連物質を粗精製することを言う。
粗精製の方法は、合目的的な精製方法であれば特に制限はしない。例えば、公知技術の冷却精製法等が利用できる。
「冷却精製法」とは、セラミド関連物質をはじめとする脂質成分が低温下で析出する性質を利用した方法である。例えば、抽出液を4℃に冷却することで抽出液中に溶解したセラミド関連物質等の脂質成分が析出する。これを静置若しくは冷却遠心して沈殿物として回収する、若しくは濾過して残渣として回収することで達成できる
本実施形態によるセラミド関連物質製造方法によれば、抽出工程のみならず全工程を通して有機溶媒を使用せずとも目的のセラミド関連物質を得ることが可能である。しかし、より高い純度のセラミド関連物質を必要とする場合には精製のために有機溶媒の使用が不可避となる。そのような場合には以下の有機溶媒分離法を利用すればよい。ただし、当該方法は濃縮工程に必須の構成要件ではなく、セラミド関連物質の使用目的や必要性に応じて適宜行えばよい方法である。
「有機溶媒分離法」とは、抽出液にクロロホルム等の疎水性溶媒と、水若しくはメタノール等の親水性溶媒からなる混合液を加えて混合することで、抽出液中の親水性物質と疎水性物質とを分離する方法である。例えば、容量比で「8:3:4=クロロホルム:水:抽出液」となるように調製したクロロホルムと水の混合液を、抽出液に加えて混合した後、静置若しくは遠心する等して水層、中間層、クロロホルム層の3層に分離する。疎水性物質であるセラミド関連物質は下層のクロロホルム層に移行することから、これを回収する。この処理により水層に移行したグリセロ糖脂質の分解産物である脂肪酸とグリセリンや、中間層に移行した変性タンパク質は除去される。回収されたクロロホルム層からクロロホルムを風乾等により除去することで精製度の高いセラミド関連物質を得ることができる。
前記粗精製したセラミド関連物質は必要に応じてさらに精製してもよい。例えば、セラミド関連物質を医薬用組成物として使用する場合には、その純度をより高くする必要がある。このような場合には得られたセラミド関連物質をさらに分画する等して精製することで達成できる。分画方法は公知技術に準ずればよい。例えば、薄層クロマトグラフィー(TLC)、吸着クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の方法で分画し、溶出する方法が該当する。クロマトグラフィーの具体例としては、カラムクロマトグラフィー等がある。当該カラムクロマトグラフィーは、セラミド関連物質の粗精製物をシリカゲル等の固定相に流載後、クロロホルム等の疎水性溶媒とメタノール等の親水性溶媒、及びそれらの複数種の溶媒を適当な容量比で混合した溶出液によって溶出する。溶出の際には、溶出液の組成、溶出時間等を適宜調整する。セラミド関連物質の溶媒に対する溶解度差やイオン結合力の差異によって、さらには必要に応じて同様の操作を数回繰り返すことによって目的とするセラミド関連物質をほぼ純粋に分離精製することができる。
本実施形態において濃縮とは上記いずれであってもよい。また上記濃縮を組み合わせても構わない。具体的には、当該抽出液からのセラミド関連物質の冷却精製法に先立ち、抽出液からの水分除去をある程度行い高濃度状態にしておく等が該当する。
((不溶物の再浸漬))
前記分離工程で分離された不溶物には先のアルカリ水溶液では完全に抽出しきれなかったセラミド関連物質が含まれていることが多い。そこで、生体組織あたりからのセラミド関連物質の回収効率を向上するために、不溶物を新たなアルカリ水溶液に再浸漬して、残存するセラミド関連物質を抽出してもよい。この場合、本実施形態のセラミド関連物質製造方法は、前記分離工程で分離された不溶物をアルカリ水溶液中に再度浸漬してセラミド関連物質を抽出する第二抽出工程と、前記第二抽出工程で得られる第二抽出液と第二不溶物とを分離する第二分離工程をさらに有する。
図2に不溶物を再浸漬する場合の工程とその流れを示す。この図で示すように本実施形態は、抽出工程(S0201)、分離工程(S0202)、第二抽出工程(S0203)、第二分離工程(S0204)、濃縮工程(S0205)の工程から構成される。このうち抽出工程、分離工程、濃縮工程については既に説明済みであるため、第二抽出工程(S0203)、第二分離工程(S0204)について以下で説明する。
「第二抽出工程」(S0203)は、前記分離工程で分離された不溶物をアルカリ水溶液中に再度浸漬してセラミド関連物質を抽出する工程である。第二抽出工程の基本的な構成は、不溶物を原料として新しいアルカリ水溶液に浸漬する以外は、前記抽出工程と同様である。不溶物は前記分離工程後に得られるものをそのまま使用すればよく、本第二抽出工程前に特段の肯定を必要としない。もちろん、乾燥工程等を経ても構わない。
「第二分離工程」(S0204)は、前記第二抽出工程に続いて行われるもので、第二抽出液と第二不溶物とを分離する工程である。第二抽出液は、第二抽出工程で得られる抽出液であって、先の抽出液中に抽出しきれなかったセラミド関連物質が含まれていると考えられる。第二不溶物は、前記第二抽出工程においても、なおアルカリ水溶液中に溶解せずに残存した固体成分である。第二分離工程の基本的な構成は、前記抽出工程と同様である。
第二分離工程後に得られる第二抽出液は、図2に示すように先に得られた抽出液と混合して濃縮工程を行ってもよいし、図示はしないが先に得られた抽出液とは独立して濃縮工程を行ってもよい。濃縮工程の構成は前述したものと同様である。
なお、第二不溶物をさらに新たなアルカリ水溶液に浸漬するか否かについては、回収されたセラミド関連物質の量に応じて適宜決めればよい。
((セラミド関連物質の使用法))
本実施形態で得られるセラミド関連物質は、医薬用組成物、皮膚保湿剤、健康食品等に使用することができる。
(医薬用組成物としての使用法)
ここで言う「医薬用組成物」とは、抗腫瘍剤、免疫賦活剤、アポトーシス誘導剤、神経細胞活性化剤等、広く医薬品、若しくはその原料として使用されるものを言う。
本実施形態で得られるセラミド関連物質を有効成分とする医薬用組成物は、当該セラミド関連物質をそのまま、又は適当な担体と共に製剤化した医薬製剤とすることでヒト、又は動物に投与することができる。
医薬製剤としての投与方法は、合目的的な投与経路であれば特に制限はしない。例えば、ヒトの場合であれば注射等による局所投与、静脈または動脈への血管内投与、腹腔内投与、胸腔内投与、筋肉内投与、直腸投与、皮下投与、経皮吸収、経口投与、又は舌下投与等の方法によって投与することができる。また、動物の場合であれば注射等による局所投与、静脈または動脈への血管内投与、腹腔内投与、皮下投下等の方法によって投与することができる。
医薬製剤の剤型は、投与方法や投与目的等に応じて適宜選択すればよい。例えば、経口剤であれば錠剤、カプセル剤、細粒剤、散剤、口中剤、ドライシロップ等が、また非経口剤であれば注射剤、懸濁剤、乳化剤、軟膏剤、座剤、塗布剤等が挙げられる。医薬製剤への製剤化に用いる担体は、製薬上許容される添加剤を投与方法や投与目的等に応じて適宜選択すればよい。添加剤としては、例えば、溶剤や可溶化剤等の希釈剤、pH調整剤、粘稠化剤、等張化剤、賦形剤、結合剤、滑沢剤、安定剤、保存剤、抗酸化剤、界面活性剤等が該当する。
セラミド関連物質の投与量は、動物実験の結果及び個々の状況を勘案し、連続的又は間欠的に投与した際に一定量を超えないように定めればよい。具体的な投与量は投与方法、患者等の状況等によって異なる。ここで「状況」とは、例えば、年令、性別、体重、食餌、投与時間、併用する薬剤、薬剤感受性、疾患の程度等が該当する。適量と投与量と投与回数は、前記指針に基づいて専門家の適量決定試験によって決定されなければならない。
(皮膚保湿剤としての使用法)
「皮膚保湿剤」とは、皮膚角質層に含まれる水分の蒸発を防ぎ、皮膚の潤いを維持させる作用を有する他、製品に配合することで当該製品の保水効果を与える作用を有する物質を言う。例えば、グリセリン等の多価アルコール類、椿油やオリーブ油等の油脂、そしてセラミド及びセラミド関連物質等が該当する。
皮膚保湿剤としての使用の方法は、経皮吸収法であれば特に制限しない。
皮膚保湿剤の剤型は、投与方法や投与目的等に応じて適宜選択すればよい。例えば、懸濁剤、乳化剤、軟膏剤、塗布剤等が挙げられる。具体的にはハンドクリーム、口紅等の化粧品、整髪剤やリンス、若しくは軟膏等のように角質層からの水分蒸発を目的として皮膚、又は毛髪等に直接塗布するものに配合して利用してもよいし、下着や靴下のように皮膚に直接接触する衣類の繊維に添加、若しくは織り込む等して利用することもできる。
(健康食品としての使用法)
「健康食品」とは、通常健康の保持増進に資する食品として販売・利用されるもの全般を言う。例えば、栄養補助食品や、栄養強化食品や、機能性食品や、特定保健用食品等が該当する。本実施形態における健康食品は前記の意味に留まらず、本実施形態で得られるセラミド関連物質が混入された食品全般を意味する。
健康食品としての摂取方法は、経口可能な方法であれば特に制限しない。目的等に応じて適宜選択すればよい。セラミド関連物質をそのまま、又は適当な担体と共に加工した状態でヒト、又は動物に摂取可能なように提供することができる。例えば、そのままカプセルに充填されたもの、担体を加え錠剤、カプセル剤、細粒剤、散剤、口中剤、ドライシロップ等に加工されたもの等が該当する。担体は、食品として許容される添加剤を投与方法や投与目的等に応じて適宜選択すればよい。添加剤としては、例えば、溶剤や可溶化剤等の希釈剤、pH調整剤、粘稠化剤、等張化剤、賦形剤、結合剤、滑沢剤、安定剤、保存剤、抗酸化剤等が該当する。このうち、賦形剤はデキストリン、又はデンプン、又は乳糖等が該当するが、同様の効果が得られるものであれば、これらに限定されない。賦形剤の含有率は40%〜90%の範囲が好ましい。あるいは、セラミド関連物質を加工食品の素材、又は添加物として原料に加えて使用してもよい。
<実施形態1:効果>
本実施形態のセラミド関連物質製造方法によれば、エタノール等の有機溶媒を抽出工程に一切使用することなく目的のセラミド関連物質を抽出できる。
本実施形態のセラミド関連物質製造方法によれば、従来の方法と同等の抽出精度を維持しながら製造工程を大幅に減縮することが可能となる。
本実施形態のセラミド関連物質製造方法によれば、製造されるセラミド関連物質の人体への使用上の安全面においても従来の製造方法によるセラミド関連物質と同等以上の物を製造できる。
<<実施形態2>>
<実施形態2:概要>
実施形態2は、前記実施形態1のセラミド関連物質製造方法に基づいたセラミド関連物質製造装置に関する。本実施形態によって、前記実施形態1の方法によるセラミド関連物質の工業化が可能となる。
<実施形態2:構成>
図4に実施形態2の構成を示す。この図で示すように本実施形態のセラミド関連物質製造装置(0400)は、抽出部(0401)、分離部(0402)、濃縮部(0403)から構成される。以下、各構成要素について説明する。
「抽出部」(0401)は、有機溶媒抽出部を経ずに準備した生体組織をアルカリ水溶液中に浸漬してセラミド関連物質を抽出するように構成されている。本抽出部における具体的な構成や手順については、前記実施形態1の抽出工程(S0101)に従う。
「分離部」(0402)は、前記抽出部で得られる抽出液と不溶物とを分離するように構成されている。本分離部における具体的な構成や手順については、前記実施形態1の分離工程(S0102)に従う。
「濃縮部」(0403)は、前記分離部で分離された抽出液を濃縮するように構成されている。本濃縮部における具体的な構成や手順については、前記実施形態1の濃縮工程(S0103)に従う。
図5に実施形態2の他の構成を示す。この図で示すセラミド関連物質製造装置(0500)は、抽出部(0501)、分離部(0502)、第二抽出部(0503)、第二分離部(0504)、濃縮部(0505)から構成されていてもよい。以下、第二抽出部(0503)、第二分離部(0504)について説明する。
「第二抽出部」(0503)は、前記分離部で分離された不溶物をアルカリ水溶液中に再度浸漬してセラミド関連物質を抽出するように構成されている。本第二抽出部における具体的な構成や手順については、前記実施形態1の第二抽出工程(S0203)に従う。
「第二分離部」(0504)は、前記第二抽出部で得られる第二抽出液と不溶物とを分離するように構成されている。本第二分離部における具体的な構成や手順については、前記実施形態1の第二分離工程(S0204)に従う。
なお、図5の濃縮部は抽出液と第二抽出液とを共に濃縮可能なように構成されているが、一のセラミド関連物質製造装置に濃縮部が複数存在し、抽出液と第二抽出液とをそれぞれ独立して濃縮できるように構成されていても構わない。
本実施形態のセラミド関連物質製造装置は、抽出溶媒としてアルカリ水溶液が使用されることからエタノール等の有機溶媒を原則必要としない。したがって、各部や各部を連絡する配管等に有機溶媒に対する耐溶解性、耐腐食性の処理、若しくは素材の使用の必要がない。故に、本実施形態のセラミド関連物質製造装置は、当該装置のための多額の設備投資等を必要とせずに既存の設備の転用が可能となる。例えば、原料にビール粕を使用する場合、本実施形態のセラミド関連物質製造装置は既存のビール製造施設を使用すればよい。具体的には、図3で示したビール製造工程における煮沸工程(0303)で使用される煮沸釜は本実施形態の抽出部(0401、0501)として利用できる。また、ビール製造工程における濾過工程(0306)で使用される濾過槽は本実施形態の分離部(0402、0502)として利用できる。このように、本実施形態のセラミド関連物質製造装置によれば設備投資面での大幅なコストダウンも期待できる。
<実施形態2:処理の流れ>
本実施形態の処理の流れは、図1及び図2で示した前記実施形態1の工程の流れに準ずる。
実施形態1の各工程を本実施形態の装置で実現させる場合、各部の制御に関してはコンピュータで制御可能なように構成すればよい。ここで言うコンピュータは、CPUやメモリ、バス、ハードディスクドライブ、CD−ROMやDVD−ROM等のメディア読取ドライブ、各種通信用の送受信ポート、インターフェース、その他の周辺装置等のハードウェア構成部や、それらハードウェアを制御するためのドライバプログラムやその他アプリケーションプログラム等から構成される。
コンピュータに各部の制御を実行させるためのプログラムとしては、例えば、以下のようなものがある。まず抽出工程では、抽出部内に取り入れる原料の分量、及びそれ対する適切なアルカリ水溶液の容量やpHの管理を、また加温、加圧処理に際しては抽出部内の温度や圧力の管理を、さらに抽出に要する時間の管理をコンピュータに実行させるプログラムである。分離工程では、例えば減圧濾過法であれば濾過時間の管理や圧力の管理をコンピュータに実行させるプログラムである。濃縮工程では、濃縮方法の選択、濃縮のための温度及び時間の管理をコンピュータに実行させるプログラムである。このような本実施形態の製造装置をコンピュータに実行させるプログラムはソフトウェアとして本発明の一部を構成することもできる。さらに、そのようなソフトウェアをコンピュータに実行させるために用いる他のソフトウェア製品、及び同製品を記録媒体に固定した記録媒体も、当然にこの発明の技術的な範囲に含まれる。
本装置はメモリ上に展開された前記のようなプログラムを順次実行することで、メモリ上のデータや、インターフェースを介して入力されるデータの加工、蓄積、出力等により各部の機能が実現される。
<実施形態2:効果>
前記実施形態1の方法によるセラミド関連物質の工業化が可能となる。また、本実施形態のセラミド関連物質製造方法によれば、既存の設備の転用が可能となる。
以下の実施例1から4をもって本発明をより具体的に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
<アルカリ水溶液を用いたセラミド関連物質の製造>
((目的))
前記実施形態1のアルカリ水溶液を用いたセラミド関連物質製造方法により目的のセラミド関連物質が得られるかについて検証した。
((方法))
(乾燥工程)
ビール製造工程で得られたビール粕2kgを遠心脱水機で5分、1000Gで脱水処理した後、減圧乾燥機を用いて残存する水分を蒸発させ、ビール粕を乾燥させた。
(抽出工程)
抽出溶媒としてのアルカリ水溶液は炭酸カリウム水溶液を用いた。当該水溶液は水に食品添加物用炭酸カリウム(旭硝子社)を0.5%(w/v)になるように溶かして調製した。この時点での当該水溶液の水素イオン濃度は約pH12であった。次に、前記乾燥ビール粕5gを当該0.5%炭酸カリウム水溶液50mlに加えて混合した。続いて、オートクレーブ(SX−500:TOMY社)を用いて2気圧下で121℃10分間加熱及び加圧処理を行った。なお、コントロールは水を抽出溶媒として他は上記および下記と同条件下で行った。
(分離工程)
前記抽出工程後の溶液を吸引ビンに繋いだ漏斗上の濾紙に移し、アスピレーターにより吸引することで不溶物と抽出液とを分離した。吸引ビン内の液体を抽出液として回収し、次の濃縮工程に用いた。
(濃縮工程)
前記分離工程で得られた抽出液をロータリーエバポレーター(EYELA社:以下同じ)を用いて、55℃で容量が元の約1/5になるまで濃縮した。濃縮後、抽出液を4℃に冷却して脂質成分を沈殿させた。沈殿は冷却遠心機(Avanti HP−25 BECKMAN COULTER社)を用いて4℃下3000rpmで10分間遠心を行い回収した。回収した沈殿を凍結乾燥装置(EYELA社)を用いて−50℃で12時間処理して凍結乾燥した。得られた乾燥物は乳鉢にて粉末になるまですり潰して以降の試料とした。
(セラミド関連物質の検出)
上記試料中に目的とするセラミド関連物質が含まれているかについては、得られた試料を薄層クロマトグラフィー(Thin−Layer Chromatography:以下TLCとする。)上で展開した後、アンスロン硫酸(Wako社)で処理する呈色実験により確認することができる。アンスロン硫酸はスフィンゴ糖脂質の糖鎖を構成するヘキソースを紫色に発色させることができる。TLCで展開した物質が紫色に呈色すれば試料中にスフィンゴ糖脂質、すなわちセラミド関連物質が含まれることを意味する。
前記濃縮工程後に得られた炭酸カリウム水溶液抽出由来、水抽出由来のそれぞれの試料(粉末)全てをエタノール(99.5%)1mlに溶解して試料溶液を調製した。試料溶液を5μlずつ取り、それぞれをTLCに添付して展開を行った。続いて、TLCの下端が浸る程度の展開液(クロロホルム:メタノール:水=85:28.5:4.4)が入った容器内にTLCを入れて密封し、展開を行った。溶媒がTLCの上端付近に達した時、展開液からTLCを取り出して展開を停止した。展開後のTLCを十分に乾燥させた後、アンスロン硫酸を当該TLCに噴霧した。噴霧後は、TLC上で展開した糖脂質が呈色するまで120℃のホットプレートにて数分間加温した。最後にTLCをデンシトメーター(Bio−Rad社)にて分析を行った。なお、位置マーカーとしては大豆由来のステロール配糖体(Larodan社:以下同じ)と大豆由来のグリコシルセラミド(Matreya社:以下同じ)とをそれぞれ1μg分混合したエタノール溶液を使用した。ステロール配糖体は従来のセラミド関連物質抽出方法でも最終産物に混入する不純物である。ヘキソースを有するためアンスロン硫酸によって呈色するがスフィンゴ糖脂質ではない。またグリコシルセラミドはセラミド関連物質の1種である。
((結果))
図6にTLCの展開結果を示す。レーンMのバンド1はステロール配糖体、またバンド2はグリコシルセラミドである。レーンA、Bはそれぞれ炭酸カリウム水溶液抽出由来、水抽出由来を示す。レーンAではバンド2に相当する位置に多数のバンド群3が検出された。このバンド群が目的のセラミド関連物質(群)である。一方、水抽出由来のレーンBではステロール配糖体、セラミド関連物質共に検出されなかった。以上の結果から本発明の実施形態1によれば、有機溶媒を使用せずともアルカリ水溶液のみでセラミド関連物質を抽出できることが立証された。なお、抽出されたセラミド関連物質が群として検出される理由は、植物由来のセラミド関連物質は構成脂肪酸の長さの違い等により多数の種類が存在する事に起因する。
<ビール粕と各種植物原料におけるセラミド関連物質の抽出量の比較>
((目的))
ビール粕と各種植物原料におけるセラミド関連物質の抽出量を比較検証した。
((方法))
植物原料として、ビール粕、ビートファイバー(テンサイの絞り粕)、シモン芋(白サツマ芋)、小麦粉を選択した。基本的な実験方法は前記実施例1と同様である。すなわち、それぞれの原料5gを0.5%炭酸カリウム水溶液50mlに加えて抽出後、不溶物を分離し、ロータリーエバポレーターにより得られた抽出液の水分を完全に除去したものを試料とした。それぞれの原料について得られた試料全てをエタノール(99.5%)1mlに溶解して試料溶液を調製した後、試料溶液10μlをTLCで展開した。
((結果))
図7にTLCの展開結果を示す。レーンMのバンド1は大豆由来のグリコシルセラミド1μgであり、グリコシルセラミドの位置マーカーとして展開した。レーンAはビートファイバー由来、レーンBはシモン芋由来、レーンCはビール粕由来、そしてレーンDは小麦粉由来の試料である。バンド1とほぼ同位置にあるバンド群2がセラミド関連物質である。この図で示すように、実施形態1の方法ではビール粕から最も多くセラミド関連物質が抽出されている。このようにビール粕は、目的とするセラミド関連物質を多く含み、原料として好ましいことが示された。
<不溶物の再浸漬によるセラミド関連物質の抽出>
((目的))
実施形態1の分離工程後に得られる不溶物を新たなアルカリ水溶液に再浸漬することでセラミド関連物質の回収率を向上できるかについて検証した。
((方法))
分離工程までは実施例1と同じである。ここでは分離工程後に濾紙上に残った不溶物を回収し、再度50mlの新たな0.5%炭酸カリウム水溶液と混合した。コントロールとして実施例1と同じ方法(リサイクルなしの1回抽出)を行った。
(第二抽出工程)
基本操作は実施例1の抽出工程と変わらない。違いは、原料が不溶物である点だけである。
(第二分離工程)
基本操作は実施例1の分離工程と変わらない。吸引ビン内の液体を第二抽出液として回収した。
(濃縮工程)
抽出液と第二抽出液とを混合し、ロータリーエバポレーターを用いて、55℃で完全に乾燥させ、残った乾燥物を試料とした。
(セラミド関連物質の検出)
前記濃縮工程後に得られた試料全てをエタノール0.5mlに溶解して試料溶液を調製した。コントロールである1回抽出の試料溶液と本実施例の2回抽出の試料溶液のそれぞれをエタノールでさらに5倍、及び10倍希釈したものを5μlずつ、TLCに添付して展開を行った。以降の操作は実施例1と同じである。また、位置マーカーとして大豆由来のステロール配糖体と大豆由来のグリコシルセラミド1μgをそれぞれ別個に展開した。
((結果))
図8にTLCの展開結果を示す。レーンM1はステロール配糖体、レーンM2はグリコシルセラミド、レーンA、Bは1回抽出の試料溶液で、それぞれ5倍希釈と10倍希釈、そしてレーンC、Dは2回抽出の試料溶液で、それぞれ5倍希釈と10倍希釈を示す。バンド1はステロール配糖体、バンド2は大豆由来のグリコシルセラミド、バンド群3は目的のセラミド関連物質をそれぞれ示している。この図で示すように、2回抽出した試料溶液の方が1回抽出よりもより多くのセラミド関連物質が回収されている。すなわち、アルカリ水溶液による1度の抽出工程では抽出しきれなかったセラミド関連物質は、不溶物を再度アルカリ水溶液に浸漬することで回収できることが示された。レーンAとレーンDで検出されたセラミド関連物質のバンドの濃さがほぼ同じであることから、不溶物の再浸漬を行う事で回収率が約2倍に向上することが明らかとなった。単位あたりの原料からより効率よく含有セラミド関連物質を回収するために不溶物の再浸漬は有効な方法と考えられる。
<工程の減縮>
((目的))
実施形態1の方法が乾燥工程を必要とせずともセラミド関連物質を抽出可能かについて、またグリセロ糖脂質を同時にけん化可能かについて検証した。
((方法))
基本操作は実施例3と同様で、2回抽出を行った。異なる点は原料に乾燥工程を経ない含水率約60%のビール粕(通常のビール製造工程で得られる無加工のビール粕)50gと0.5%炭酸カリウム水溶液500mlを使用したこと、加温、加圧をオートクレーブに代わって家庭用圧力鍋で15分加熱、加圧処理したことである。その他については実施例3と同一であるので、その説明は省略する。セラミド関連物質の検出は、濃縮工程後に得られた試料全てをエタノール10mlに溶解して試料溶液として調製し、うち10μlをTLCで展開した。位置マーカーとしては大豆由来のグリコシルセラミド1μgを用いた。
((結果))
図9にTLCの展開結果を示す。レーンMのバンド1は大豆由来のグリコシルセラミドを、レーンAは本実施例で調製した試料溶液を示す。バンド2はステロール配糖体、バンド群3はセラミド関連物質、またバンド4はグリセロ糖脂質の一つをそれぞれ示している。この図で示すように、実施形態1の方法によれば、多量の髄分を含んだ原料をそのまま抽出工程に用いても、目的のセラミド関連物質は問題なく抽出できることが明らかとなった。すなわち、実施形態1によれば原料から水分を除去する乾燥工程は必ずしも必要がないことが立証された。また、植物には本来複数種類のグリセロ糖脂質が多量に存在するため、図中5で示すエリアには無数のグリセロ糖脂質のバンド群が検出されるはずである。ところが、レーンAではバンド4においてグリセロ糖脂質が検出されているものの、他のグリセロ糖脂質はほとんど検出されなかった。これは抽出工程(第二抽出工程を含む)においてアルカリ水溶液によって大部分のグリセロ糖脂質が加水分解されたことを示している。すなわち、実施形態1によれば抽出工程においてけん化が同時に行われることから、抽出工程後のアルカリ加水分解工程を必要としないことが立証された。このように、本発明の製造方法は製造工程を複数減縮できることが示された。また、実施形態1によれば、オートクレーブ機等の専門装置を使用しなくとも家庭用圧力鍋で可能な程度の加熱、加圧の機能があれば、目的のセラミド関連物質は抽出可能であることが明らかとなった。
実施形態1の各工程とその流れを説明するための図 不溶物を再浸漬する場合の工程とその流れ説明するための図 ビール等の製造工程を説明するための図 実施形態2の構成例 実施形態2の他の構成例 実施例1のTLCの展開結果 実施例2のTLCの展開結果 実施例3のTLCの展開結果 実施例4のTLCの展開結果
符号の説明
図6 M:マーカー
図6 A:炭酸カリウム水溶液抽出
図6 B:水抽出
図6 1:大豆ステロール配糖体
図6 2:大豆グリコシルセラミド
図6 3:セラミド関連物質群

Claims (8)

  1. 有機溶媒抽出工程を経ずに準備した生体組織をアルカリ水溶液中に浸漬してセラミド関連物質を抽出する抽出工程と、
    前記抽出工程で得られる抽出液と不溶物とを分離する分離工程と、
    前記分離工程で分離された抽出液を濃縮する濃縮工程と、
    からなるセラミド関連物質製造方法。
  2. 前記抽出工程は、アルカリ水溶液中に浸漬した生体組織を加熱、又は/及び加圧することで行う請求項1に記載のセラミド関連物質製造方法。
  3. 前記抽出工程のアルカリ水溶液はpH11以上pH14以内の範囲である請求項1又は2のいずれか一に記載のセラミド関連物質製造方法。
  4. 前記抽出工程の加熱は105℃以上130℃以内の範囲である請求項1から3のいずれか一に記載のセラミド関連物質製造方法。
  5. 前記抽出工程の加圧は1.2気圧以上2.2気圧以内の範囲である請求項1から4のいずれか一に記載のセラミド関連物質製造方法。
  6. 前記生体組織は植物由来の組織である請求項1から5のいずれか一に記載のセラミド関連物質製造方法。
  7. 前記植物由来の組織は、ビール等の製造過程で得られるビール粕である請求項1から6のいずれか一に記載のセラミド関連物質製造方法。
  8. 有機溶媒抽出部を経ずに準備した生体組織をアルカリ水溶液中に浸漬してセラミド関連物質を抽出する抽出部と、
    前記抽出部で得られる抽出液と不溶物とを分離する分離部と、
    前記分離部で分離された抽出液を濃縮する濃縮部と、
    からなるセラミド関連物質製造装置。
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