JP4116108B2 - イネ科植物細胞壁由来の乳化力の優れた多糖類、これを用いる乳化剤および乳化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品、化粧品、医薬品、化学工業などに用いられる、優れた乳化力を有する植物細胞壁由来の蛋白質含有水溶性多糖類、該多糖類を有効成分とする乳化剤、および乳化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境保護や安全性に対する社会的関心から、食品産業や化学産業で用いられる原料は、従来の有機化学合成品に代わり、天然抽出物およびそれらの生化学的反応の生成物の利用が見直されている。多くの産業で利用される乳化剤にも同様の社会的要請があるが、一般に使用されることが多いのは依然としてグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの合成界面活性剤である。
【0003】
その理由として、天然の界面活性剤の質的、量的課題をあげることができる。従来から使用されているレシチン、サポニンなどは、乳化力や耐塩性、耐酸性が弱いことから、使用用途が限定される。また、アカシアの樹木から抽出される天然多糖類であるアラビアガムは耐塩性、耐酸性が良く、優れた乳化力を有するので、多くの用途への利用が見込まれる。アラビアガムは、粘度が比較的低いのも特徴である。すなわち、アラビアガムは、例えばキサンタンガムのように増粘作用によって分散系を安定化させるものとは異なり、比較的低粘性ではあるが、微少な乳化粒子の形成に役立ち、また乳化粒子の表面に強固に接着するため乳化系の安定化に寄与するところが大きい。この特性を活かしてアラビアガムは様々な用途に利用される可能性があるが、原産国が限られており原料の供給が不安定で、価格の変動も大きい。それ故、優れた乳化力を有するアラビアガムも実質的な用途は限定されてきており、市場全体が縮小しているのが現状である。
【0004】
近年、植物から抽出したヘミセルロースをこの乳化剤代替物として使用する技術が提案されている。特開平7−99930号公報では、水溶性ヘミセルロースと無機塩類とを組み合わせることによりヘミセルロースの乳化力を増強させることが開示され、また、WO−93/25,302号公報では、大豆子葉由来の水溶性ヘミセルロースを有効成分とする乳化剤が開示されている。しかし、これらの技術では新たな添加物が必要であったり、特定の原料を使用する必要があり、また、効果の点においても現在まで長年アラビアガムを使用してきた利用者にすべての点で満足されるような物性(高溶解性、低粘度など)と高乳化力(乳化粒子径、乳化安定性など)を持つものではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、化学合成品に代わり、環境保護や安全性に対する社会的関心に適合し、産業上の汎用性のある乳化力に優れた水溶性多糖類、これを有効成分としてなる乳化剤および乳化方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため多くの植物由来のヘミセルロースを鋭意検討した結果、特定植物の植物細胞壁から抽出した多糖を特定の酵素を用いて加水分解することにより得られる水溶性多糖類を主成分とする画分が、従来知られていたヘミセルロースの有する乳化力をはるかに凌駕し、アラビアガムと同等の物性(低粘度など)と優れた乳化力(乳化粒径と乳化安定性)を持つことを見い出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明によれば、大麦の種子を発芽させ、糖化処理後、麦芽汁を濾別して得られる残渣である細胞壁またはライ麦の細胞壁からアルカリ水溶液で抽出した画分にキシラン分解酵素活性を有する酵素製剤を作用させて得られる蛋白質含有水溶性多糖類であって、キシロース/アラビノース重量比=2.1/1〜1.9/1で重量平均分子量が1万〜100万であるアラビノキシランを主な構成多糖とし、蛋白質含量が乾燥物基準で0.5〜20重量%である蛋白質含有水溶性多糖類、該多糖類を有効成分としてなる乳化剤、乳化組成物、および乳化方法が提供される。
【0008】
原料とする植物細胞壁の植物の種類としては大麦またはライ麦を用い、部位としては穀皮、果皮、種皮、藁、葉などが用いられる。これらの原料をアルカリ水溶液で抽出した画分を、キシラン分解酵素を含む酵素製剤により加水分解して得られる蛋白質含有水溶性多糖類、また、この多糖類を有効成分とする乳化剤が本発明品である。
【0009】
さらに、本発明の乳化方法は、前記多糖類と油性成分とを混合することを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる植物細胞壁は、大麦またはライ麦の植物細胞壁である。使用可能な部位はとくに限定されないが、とりわけアラビノキシランを豊富に含む箇所、例えば穀皮、果皮、種皮などが、乳化効果が大きく、ヘミセルロースの回収率が高いという点で望ましい。また、原料コストなどの経済的利点や本発明の所望の効果の点から、ビール製造工程で生じるビール粕、すなわち、大麦種子を発芽させて麦芽(緑麦芽)とし、この乾燥麦芽を粉砕して添水後、糖化処理して麦芽汁を濾過した残渣を使用するのが好適である。さらに、ビール粕を原料にする場合には、穀皮画分を前記残渣から分画して用いることが望ましい。分画方法の具体的な例としては、特公平4−31666号公報に示されている方法が挙げられる。すなわち、ビール粕を圧ぺん粉砕処理した後に水の存在下でふるい分けする方法である。穀皮画分は最も粒度が大きい画分である。この他、収穫後の麦藁なども容易に大量入手が可能であるので望ましい。
【0011】
本発明の水溶性多糖類を得るためには、まず原料をアルカリ水溶液で抽出する。抽出処理の最適条件は、植物種や用いる部位などの原料の状態により異なるが、以下のなかから最適条件を見い出すことができる。抽出に用いるアルカリ水溶液は特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの水溶液は好適に使用することができる。これらを0.05〜2Nの濃度で、原料1重量部に対して1〜10,000重量部加えて、温度20〜120℃、3分間から48時間かけて抽出することが可能である。さらに好ましくは0.2〜2N濃度のアルカリ水溶液を原料1重量部に対して10〜50重量部加えて、温度40〜120℃、3分間から24時間かけて抽出することができる。
【0012】
この抽出溶液に例えば塩酸を加え、pHを4程度に下げることにより蛋白質を除去することもできるが、本発明の所望の効果を得るためには目的物中の蛋白質を望ましくは特定量残存させておくことが重要であり、完全に除蛋白処理するのはよくない。
【0013】
その後、適切な酵素製剤により30分〜48時間加水分解反応をおこなう。この処理によって、粘度が低く、乳化能の高い画分が得られる。加水分解の最適反応条件は各酵素製剤により異なるが、30〜60℃、pH3.0〜7.0が一般的である。本発明では、目的物を高収量で得るためにpHは酸性域で前記加水分解反応を行わせることが望ましく、アルカリ側に至適pHをもつ酵素は本発明には不適当である。
【0014】
加水分解反応後、適宜pH調整し、加熱による酵素の失活処理、遠心分離などで不要分を除去することにより、本発明の蛋白質含有水溶性多糖類が得られる。また、得られた多糖類に対して、必要に応じて、イオン交換樹脂や限外濾過などにより脱塩処理を、イオン交換樹脂、活性炭、白土などにより脱色処理をすることも可能である。
【0015】
こうした処理の後、多糖類を噴霧乾燥、凍結乾燥などして粉末化したり、これを濃縮液としたり、またはそのままの液状で使用することができる。
【0016】
用いられる酵素製剤は、アラビノキシランに作用する加水分解酵素活性を持つことが必要で、とくにβ−1,4−D−キシロシド結合に作用する酵素活性を持つことが望ましい。これらの起源にはとくに限定はないが、例えば、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger )、トリコデルマ ビリデ(Trichoderma viride)、ヒューミコラ インソレンス(Humicola insolens )などがある。酵素の加水分解特性としてはエンド(endo)型が望ましい。例えば酵素製剤としてセルロシンT2(阪急バイオインダストリー(株)製、トリコデルマ ビリデ起源)、セルロシンHC(阪急バイオインダストリー(株)製、アスペルギルスニガー起源)、ソフターゲンC−1((株)タイショーテクノス製、アスペルギルス ニガー起源)、明治セルラーゼTPS−60(明治製菓(株)製、トリコデルマ ビリデ)、セルレースナガセ(ナガセ生化学工業(株)製、アスペルギルス ニガー起源)、ウルトラフロL(Ultraflo L)(ノボ・ノルディスク・バイオインダストリー(株)製、ヒューミコラ インソレンス起源)の一種または二種以上を用いることができる。とりわけ、トリコデルマ ビリデを起源とする酵素製剤を用いると乳化力に優れたものが得られ、セルロシンT2や明治セルラーゼTPS−60などが好ましい。
【0017】
このようにして得られる乳化能に優れた多糖類は植物の種類、部位、酵素製剤および処理条件により、平均分子量や粘度などの物性や乳化能が若干異なる。例えばビール粕由来の穀皮画分を原料とした場合、酵素処理する前のアルカリ抽出物は、分子量(HPLCによる測定)が数百万程度のものが多く、構成糖(抽出物を酸分解後PHLCで測定)はキシロースとアラビノースが主で、その重量比は約2:1であることから、主成分はアラビノキシランであることが推定された。この抽出物は、キシラナーゼ活性を含む各種酵素製剤により、低分子化、低粘度化、水溶性の増大化がおこるが、得られた多糖類のキシロースとアラビノースの重量比は、約2:1に維持されている。この中で、乳化力が高いのは、酵素処理後の重量平均分子量が1万〜100万で、キシロース/アラビノース=2.1/1〜1.9/1(重量比)のアラビノキシランを主要な構成多糖とする画分である。
【0018】
本発明の水溶性多糖類は、大麦またはライ麦の細胞壁を用いて、キシラン分解活性を有する酵素製剤により加水分解して得られるものを必須とする。従って、前記以外の植物、例えばトウモロコシを原料に使用して、酵素製剤により加水分解して得られる水溶性多糖類や、また、イネ科ウシノケグサ亜科に属する植物の細胞壁を用いた場合であっても、塩酸等の酸で加水分解を行った場合には、たとえ平均分子量を1万〜100万に調節したとしても、同様の乳化力が得られない。
【0019】
本発明の水溶性多糖類は、また、蛋白質を残存させ前記多糖類との組成物であることが重要である。蛋白質の含量は目的物全体(乾燥物として)の0.5〜20重量%が望ましい。0.5重量%未満であると乳化能が低下することがあり、20重量%を超えると高い乳化力は得られるが、泡立ちが激しくなり作業性を阻害する場合がある。本発明の水溶性多糖類に含まれる蛋白質については詳細は明確でないが、細胞壁中でアラビノキシランを主体とする多糖類と複合体を作って存在しているものと推測される。
【0020】
本発明の多糖類の特徴は、従来のヘミセルロース系乳化剤に比して、著しく乳化力が高い点にある。すなわち、アラビアガムと同様またはそれ以上に細かい乳化粒子となり、乳化安定性がよい水中油型乳化物を与える。ここで、乳化力とは、水:油性成分:水溶性多糖類=13:6:1(重量比率)で調製され、20℃および40℃にてそれぞれ1ヶ月間保存後、少なくとも乳化粒子径が1μm以下であり、相分離しない水中油型乳化物を与えるものをいう。本発明の多糖類の特徴として、さらにアラビアガムと同様の良好な物性を有している点が挙げられる。すなわち、水溶解性がよく、低粘度であるため作業性がよい。さらに、乳化する油性成分として動植物の油脂類、製油類、香料、合成エステル、鉱物油など種々のものを適用できるため、これらを使用する様々な用途に対応でき、あらゆる産業分野において利用できる汎用性の高い多糖類である。
【0021】
本発明では、また、大麦またはライ麦の細胞壁からアルカリ水溶液で抽出した画分にキシラン分解活性を有する酵素製剤を作用させて得られる蛋白質含有水溶性多糖類を有効成分としてなる乳化剤が提供される。
【0022】
この乳化剤は、前述の蛋白質含有水溶性多糖類、すなわち大麦またはライ麦の細胞壁、より望ましくは大麦の種子を発芽させ、糖化処理した後、濾別して得られる残渣であるビール粕、さらに好ましくはそれから得られる穀皮画分等を原料とし、これをアルカリ水溶液で抽出した画分にキシラン分解活性を有する酵素製剤、より望ましくはトリコデルマ ビリデ起源であるものを作用させ、加水分解して得られる多糖類であり、とりわけキシロース/アラビノース=2.1/1〜1.9/1(重量比)であり、重量平均分子量が1万ないし100万であるアラビノキシランを主な構成多糖とするものと、上記植物細胞壁由来の蛋白質とからなり、該蛋白質の含量は前記蛋白質含有水溶性多糖類(乾燥物として)の0.5〜20重量%であるものを有効成分とする。
【0023】
本発明の乳化剤には、前記水溶性多糖類のほかに、必要に応じて食品、化粧品、医薬品、化学工業などの分野で利用される公知の界面活性剤、例えばグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等を適宜併用してもよい。
【0024】
本発明の乳化剤を前記油性成分と水とともに混合することによって、細かい乳化粒子径を持ち、安定性に優れた乳化組成物が得られる。すなわち、水:油性成分:水溶性多糖類=13:6:1(重量比)で調製され、20℃および40℃でそれぞれ1ヶ月保存後、少なくとも乳化粒子径が1μm以下であり、相分離しない水中油型乳化物を製造できる。また、水と油性成分との混合比率を適宜変化させ同様にして油中水型乳化物を製造できる。これらの乳化物は食品、化粧品、医薬品、化学工業等の種々の分野で利用され得る。
【0025】
【実施例】
以下、本発明の実施例について述べる。
【0026】
実施例1〜5、比較例1〜7
ビール醸造工程で得られたビール粕1トン(水分77.6重量%)を二段ロールミルで圧ぺん粉砕した後、水のシャワーを掛けながら10メッシュのふるいを用いてふるい分けし、ふるい上に残った画分を脱水、乾燥することにより45.3kgの大麦穀皮画分を得た。この大麦穀皮画分1kgを15L(リットル)の0.3M苛性ソーダ水溶液中で100℃、30分間抽出後、抽出液を硫酸にてpH7.0に調整し、沈殿物を遠心分離により除去した。これを限外濾過により分子量1万未満の成分を除去した。その後、pHをクエン酸で5.0に調整し、45℃で18時間、表1に示す酵素製剤(ヘミセルロースに対して0.1重量%)による加水分解反応をおこなった。その後、活性炭により脱色し、噴霧乾燥により本発明品を得た。
【0027】
得られた本発明品の分析値を表2に示す。表3には、本発明品の組成分析値の代表例として実施例1で得たものを示した。また、同様に比較例1〜2として、上記大麦殻皮画分を原料に本発明の方法によらない処理で得たヘミセルロース (表4参照)、比較例3〜7として他の市販乳化剤(表5参照)を用意した。なお、比較例1〜7で得られたものまたは用いたもの(比較品)の分析値を表6に示した。これらの実施例の本発明品と比較品について乳化力の評価をおこなった。
【0028】
この結果を表7〜表10に示す。
【0029】
[乳化力の評価]
温度80℃の下、精製水650gに実施例1〜5の本発明品と比較例1〜7の比較品50gを各々溶解し、ホモミキサーで5000rpmで攪拌しながら各油性成分300gを加えた。30分間攪拌後、さらに高圧ホモジナイザー処理(100kg/cm2 )で乳化させて、20℃まで冷却し、試料乳化液(水中油型乳化物)を得た。この試料乳化液を20mlの蓋付き試験管に20ml移しとり、40℃および20℃にて各1ヶ月間保存して安定性を調べた。これらの乳化作用について以下の評価項目で評価した。
【0030】
<評価項目>
乳化粒子径 μmで表示
乳化安定性
分離なし・・・・・・・・・◎
やや水相分離あり・・・・・○(分離相体積比10%未満)
水相分離あり・・・・・・・△(分離相体積比10%以上)
油相、水相分離あり・・・・×
比較例4は大豆由来のヘミセルロースであるが、溶解時に起泡が著しく、時間を経過しても泡が消えにくく、作業性が著しく悪い。これに対して、実施例1〜5(本発明品)および比較例3(アラビアガム)では、溶解時に発生する泡はすぐに消え、溶解後すぐに乳化をおこなうことができた。また、溶解した溶液の粘度は実施例1では比較例3(アラビアガム)とほぼ同じであるなど溶液の性状はアラビアガムと同等であった。
【0031】
実施例1〜5はいずれも、試験に用いた油性成分のすべてにおいて比較品3のアラビアガムと同等以上の優れた乳化力を示した。
【0032】
これらの結果から、本発明品の乳化力が優れ、さらに種々の油性成分に使用できる汎用性の高い乳化剤であることが確認された。
【0033】
実施例6〜7、参考例1
表11に示す各原料1kgに実施例1〜5と同じ条件で抽出処理を行い、抽出液を硫酸により、pH7.0に調整し、沈殿物を遠心分離により除去した。その後、加水分解反応が進行しやすいようにpHをクエン酸にて5.0に調整し、45℃で18時間、明治セルラーゼTPS−60(明治製菓(株)製)(ヘミセルロースに対して0.1重量%)を用いて加水分解反応を行わせた。その後イオン交換樹脂により脱塩、活性炭により脱色を行い、噴霧乾燥して本発明品を得た。所定の抽出条件、酵素処理条件を表11に、得られた生成物の分析値を表12に示す。また、これらにつき実施例1〜5と同様に乳化力の評価を行った。この結果を表13および表14に示す。
【0034】
実施例8、比較例8
実施例1で得た本発明品をクエン酸でpH4(実施例8)、pH3(比較例8)に調製し、5%水溶液とした。それぞれにタンニン酸(和光純薬(株)製)を0.3重量%添加し、1時間攪拌後、不溶物を除去して蛋白質含量が0.6重量%のもの(実施例8)と0.2重量%のもの(比較例8)とを調製した。これらについて実施例1と同様に乳化力の評価を行った。この結果を表15および表16に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
【表5】
【0040】
【表6】
【0041】
【表7】
【0042】
【表8】
【0043】
【表9】
【0044】
【表10】
【0045】
【表11】
【0046】
【表12】
【0047】
【表13】
【0048】
【表14】
【0049】
【表15】
【0050】
【表16】
【0051】
これらの結果から、大麦またはライ麦の植物細胞壁、とりわけアラビノキシランを豊富に含む部位から得られるアルカリ抽出画分を、キシラン分解酵素を含む酵素製剤により加水分解して、アラビアガムと同様の特性を持ち、乳化力の高い蛋白質含有水溶性多糖類が得られることが確認された。また、この多糖類を有効成分として、種々の油性成分について微細な乳化粒子径を保持し、安定性に優れた乳化物が形成されるため、乳化剤として有用であることが明らかになった。本発明品は従来の技術の単なる組み合わせにより得ることはできず、アラビノキシランの一定分子構造のものから構成されるもののみが本発明品である。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、環境や安全性に対して懸念のある化学合成の界面活性剤を使用しなくても、産業上利用される様々な油性成分を乳化することができる蛋白質含有水溶性多糖類を大麦またはライ麦の穀皮や藁から製造でき、これを有効成分とする汎用性の高い乳化剤を大麦またはライ麦の穀皮や藁の抽出成分の水溶性多糖類から提供することができる。特に、本発明は、食品、化粧品、医薬品、化学工業などの産業分野における製剤化に幅広く応用できる。
Claims (5)
- 大麦の種子を発芽させ、糖化処理後、麦芽汁を濾別して得られる残渣である細胞壁またはライ麦の細胞壁からアルカリ水溶液で抽出した画分にキシラン分解酵素活性を有する酵素製剤を作用させて得られる蛋白質含有水溶性多糖類であって、キシロース/アラビノース重量比=2.1/1〜1.9/1で重量平均分子量が1万〜100万であるアラビノキシランを主な構成多糖とし、蛋白質含量が乾燥物基準で0.5〜20重量%である蛋白質含有水溶性多糖類。
- キシラン分解活性を有する酵素製剤が、トリコデルマ ビリデ(Trichoderma viride)起源のものである請求項1に記載の水溶性多糖類。
- 請求項1または2に記載の蛋白質含有水溶性多糖類を有効成分としてなる乳化剤。
- 請求項3に記載の乳化剤、水および油性成分を含有する乳化組成物。
- 請求項1または2に記載の蛋白質含有水溶性多糖類と、油性成分とを混合することを特徴とする乳化方法。
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1997
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