JPWO2007058323A1 - 核酸ホモポリマー結合機能性核酸医薬品の製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 生理活性を有する核酸に対し、安定性向上効果を簡便に付与できる核酸ホモポリマー結合機能性核酸とその製造法を提供する。【解決手段】 本発明の核酸ホモポリマー結合機能性核酸の製造法は、機能性核酸と核酸ホモポリマーとで構成され、安定化された機能性核酸として用いられる核酸ホsモポリマー結合機能性核酸を製造する方法であって、機能性核酸に核酸ホモポリマーを付加させて核酸ホモポリマー結合機能性核酸を得ることを特徴としている。前記核酸ホモポリマーとしては、デオキシアデニル酸及び/又はデオキシチミジル酸のホモポリマーが好ましい。前記核酸ホモポリマーの長さは、例えば3mer〜50mer程度である。前記機能性核酸としては、例えばsiRNA、アンチセンス、miRNA 及びアプタマー等が挙げられる。【選択図】 なし

Description

本発明は、生体内又はその類似環境下での核酸の安定性を向上する技術に関し、詳述すれば、生理活性のある核酸であるオリゴデオキシリボヌクレオチド若しくはオリゴリボヌクレオチドの3’端もしくは5’端の少なくとも一方に核酸ホモポリマーを結合させる核酸安定化剤の製造法に関する。
ヒトゲノムの解読が21世紀初頭に一応の終了を迎えると言われている。また、現在は各種のタンパク質の活性メカニズムとその相互作用の解明が進んでいる。さらに、最近はタンパク質をコードしていないRNAが遺伝子の転写や翻訳を制御していることが分かってきた。この成果を応用するひとつの方法に、生理活性のある短い人工的核酸(核酸医薬)を用いて生体機能の操作する技術が提唱されている。しかし、天然型の核酸であるリン酸エステル型DNAやRNAは生体中では、分解酵素やタンパク質との非特異的吸着によって極めて短時間で失活する。このため、天然型の核酸医薬品は、ヒトの臨床研究ではなんら有意な効果をもたらしていない。
上述した天然型の核酸の問題点、すなわち、生体環境内や培養液中において短時間で失活するとの問題点を解決するために、天然型の核酸を化学的に修飾した化学修飾核酸、天然の核酸によく似た類似核酸が多く提案されている。前者の例では、例えば、今西ら(タンパク質・核酸・酵素、48、1616(2003))が提案した、リボースの2’と4’を化学的に脱水縮合したLNAと呼ばれる化学修飾核酸や、Sオリゴと呼ばれる、天然型のリン酸エステルの酸素原子をイオウ原子で置き換えた化合物が知られている。また、後者では、核酸の主鎖にアミド結合を導入したPNAと呼ばれる化合物が知られている。これらを総称して核酸アナログと呼ぶ。核酸アナログは天然型の問題であった、短い失活時間を大幅に伸ばす事に成功した。これは、核酸分解酵素が核酸アナログを認識できないためである。しかし、生体内でタンパク質と非特異的に吸着し予期せぬ生理活性を引き起こしたり、重篤な肝障害を引き起こすなど、非天然であるが故の毒性が問題になっている。
天然型の核酸を生体適合性のある化合物に内包して送り届ける技術も提案されている。高分子を用いたものを、ポリフェクション(polyfection)、カチオン脂質を用いる“リポフェクション(lipofection)”と呼ぶ。ポリ−L−リシン(PLL)(WuおよびWu, Biotherapy 3 87-95 (1991))。DEAE−デキストラン(Gopal: Mol: Cell: Biol., 5 1183-93 (1985))。デンドリマー(dendrimers)(HaenslerおよびSzoka, Bioconjugate Chem., 4, 372-379 (1993))またはカチオン性メタクリル酸誘導体(Wolfertら、Hum. Gene Ther., 7 2123-2133(1996))等の水溶性カチオンポリマーに基づくポリフェクションが提案されている。また、リポフェクションとしては、アミノ基をもちいた場合(GaoおよびHuang, Gene therapy, 2, 710-722 (1995))および両親媒性物質(Behr, Bioconjugate Chem., 5 382-389 (1994))を用いた資質などが案出された。カチオンポリマーを用いる“ポリフェクション(polyfection)”の決定的有利性は、ポリマーの物理化学的および生物学的特性に影響し得る構造的変形の可能性が無限にあることであり、さらに、核酸医薬とポリマー複合体を形成し得ることにある。
現在、最も検討されているのはポリエチレンイミン(PEI)である。多種類の付着細胞および浮遊細胞では、3次元的分岐構造のカチオンポリマーであるPEIは、ある場合には平均以上のトランスフェクション率を引き起こす結果になった(Boussifら、Gene Therapy, 3, 1074-1080 (1996))。例えば3T3繊維芽細胞の95%形質転換がin vitroで達成された。in vivoでの遺伝子のマウス脳中へのPEI仲介伝達では、ニューロンおよびグリア細胞中のリポーター遺伝子およびBcl2遺伝子の長期発現が起きる結果になり、アデノウイルスによる遺伝子伝達の場合と同じ程度のものであった(Abdallahら、Hum. Gene Ther., 7 1947-1954(1996))。しかし、ポリエチルイミンなどのカチオン性高分子の安全性は確認されていない。カチオン性を有するには、アミノ基の存在が不可欠であるが、アミノ基は生理活性が高く、体内毒性等の危険がある。事実、今まで検討されたいかなるカチオン性ポリマーも未だ実用に供されておらず、事実、「医薬品添加物辞典」(日本医薬品添加剤協会編集、薬事日報社)に記載されていない。
一方、特開2005−204612号公報には、線状にしたプラスミドDNAの5’もしくは3’端にpoly(dA)鎖を結合して得られる核酸に、糖鎖を作用させた核酸−多糖複合体が開示されている。前記複合体を構成するpoly(dA)鎖は、核酸に多糖を作用させる足場として機能している。
また、国際公開WO01/34207号パンフレット、国際公開WO02/072152号パンフレット、及び特開2004−107272号公報には、アンチセンス核酸にpoly(dA)を付加し、それを基点として多糖β1,3グルカン類とアンチセンス鎖とで形成される複合体が開示され、当該複合体が遺伝子キャリアとして利用できることが開示されている。これらの文献におけるpoly(dA)は、遺伝子キャリア用途として必須の構成成分である多糖と核酸の単なる連結部分として利用されている。
米国特許公開US2006/994172号公報は、捕獲用プローブを有する担体と、検出用アプタマーからなるナノ粒子プローブを用いて、サンプル中から一の標的分析物を得る方法において、標的分析物に担体とプローブとが結合した複合体の存在の有無を検出する方法が開示されている。ここで、検出用アプタマーとして用いられるpoly(dA)は、標的分析物が有する結合部位を介して結合を形成して複合体として検出される機能を付与している。
上記のように、従来の核酸ホモポリマーは、機能性核酸同士の連結部や、標的分析物との結合部を構成する構造体として用いられているが、核酸ホモポリマー単独で、アプタマーなどの機能性核酸の安定性を向上しうることは知られていなかった。
タンパク質・核酸・酵素、48、1616(2003) Biotherapy 3, 87-95 (1991)) Mol. Cell. Biol., 5, 1183-93 (1985) Bioconjugate Chem., 4, 372-379 (1993) Hum. Gene Ther., 7, 2123-2133 (1996) Gene therapy, 2, 710-722 (1995) Bioconjugate Chem., 5, 382-389 (1994) Gene Therapy 3, 1074-1080 (1996) Hum. Gene Ther., 7, 1947-1954 (1996) 日本医薬品添加剤協会編集、薬事日報社 特開2005−204612号公報 国際公開WO01/34207号パンフレット 国際公開WO01/34207号パンフレット 特開2004−107272号公報 米国特許公開US2006/994172号公報
本発明の目的は、生理活性を有する核酸に対し、安定性向上効果を簡便に付与できる核酸ホモポリマー結合機能性核酸とその製造法を提供する。
本発明の他の目的は、生体内又はその類似環境下で長期に亘り核酸の活性を維持することができ、しかも安全性に優れる核酸ホモポリマー結合機能性核酸、その製造法、核酸ホモポリマー結合機能性核酸医薬品、及びプローブを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、上記特性に加えて、生体内に安全に投与できる核酸ホモポリマー結合機能性核酸、その製造法、核酸ホモポリマー結合機能性核酸医薬品、及びプローブを提供することにある。
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意研究を行い、生理活性のあるオリゴデオキシリボヌクレオチドやオリゴリボヌクレオチド等に核酸ホモポリマーを付加することにより、生体内における核酸の安定性を飛躍的に増加させ、且つ、当該核酸の生理活性を飛躍的に増加させることを見出し、本発明を導き出した。
すなわち、本発明は、機能性核酸と核酸ホモポリマーとで構成され、安定化された機能性核酸として用いられる核酸ホモポリマー結合機能性核酸を製造する方法であって、機能性核酸に核酸ホモポリマーを付加させて核酸ホモポリマー結合機能性核酸を得る核酸ホモポリマー結合機能性核酸の製造法を提供する。前記ホモポリマーには、デオキシアデニル酸及び/又はデオキシチミジル酸等のホモポリマーが含まれる。前記核酸ホモポリマーの長さは例えば3mer〜50mer程度である。前記機能性核酸には、siRNA、アンチセンス、miRNA、及びアプタマー等が含まれる。
本発明の核酸ホモポリマー結合機能性核酸の製造法は、機能性核酸の3’端及び/又は5’端に核酸ホモポリマーを付加させる方法であってもよい。
また、本発明は、上記本発明の製造法で得られる核酸ホモポリマー結合機能性核酸を提供する。
さらに、本発明は、上記本発明の核酸ホモポリマー結合機能性核酸を有効成分に含む核酸ホモポリマー結合機能性核酸医薬品を提供する。前記核酸ホモポリマー結合機能性核酸医薬品は、生体内及び/又は生体内類似環境下における機能性核酸の安定性が向上されたものであってもよく、また、遺伝子治療に用いられるものであってもよい。
本発明は、また、上記本発明の核酸ホモポリマー結合機能性核酸を含むプローブを提供する。
本願明細書中、「ポリマー(重合体)」とは、2以上の単量体が結合した重合体であって、オリゴマーをも含む意味に用いる。「核酸」とは、特に限定しない限り、核酸アナログを含む意味であり、「塩基」、「ヌクレオシド」、及び「ヌクレオチド」はそれぞれこれらの修飾された構成をも含む意味に用いる。
本発明の製造法によれば、多様な生理活性を有する機能性核酸の安定性を簡便な方法で飛躍的に向上でき、機能性核酸本来の活性を長期にわたり持続的に発揮させることが可能である。しかも、本発明の核酸ホモポリマー結合機能性核酸は、免疫原性がないか極めて低い核酸ホモポリマーを用いるため安全性に優れ、生体内又はその類似環境下であっても機能性核酸の安定性を十分に維持できる。このため、生体内に投与される医薬品用途、特に遺伝子治療用途などとして極めて有用である。本発明の核酸ホモポリマー結合機能性核酸は、また、生体内類似環境下で行われるスクリーニングや核酸の機能解析等に用いられるプローブ等として広範な分野で利用できる。
図1は、実施例において、フィブリノーゲンとトロンビンアプタマー(TBA)を共存させたときの、波長と透過率との関係を経過時間別に示すグラフである。 図2は、実施例において、フィブリノーゲンとTBAA20を共存させたときの、波長と透過率との関係を経過時間別に示すグラフである。 図3は、実施例におけるフィブリノーゲンとオリゴDNAとの共存下における経過時間と相対透過率Tt/T0との関係を示すグラフである。 図4は、実施例における血漿中に添加したオリゴDNAの濃度と凝固時間の関係を示すグラフである。 図5は、実施例における血清中に一定時間保持した後のオリゴDNAの電気泳動写真である。 図6は、実施例におけるフィブリノーゲンとオリゴDNAとを共存させたときの、波長450nmの透過率の経時変化を示すグラフである。 図7(A)は、実施例における核酸ホモポリマーの長さと誘導時間との関係を示すグラフであり、(B)は、実施例における核酸ホモポリマーの長さと半減期との関係を示すグラフである。 図8は、実施例におけるウシ血漿中に一定時間保持した後のオリゴDNAの電気泳動写真であり、(A)はTBA、(B)はTBAA20、(C)はTBAT20の電気泳動写真である。 図9は、実施例15におけるヒト血清中に一定時間保持した後のオリゴDNAの電気泳動写真である。 図10は、実施例17におけるヒト血清中に一定時間保持した後のオリゴDNAの電気泳動写真である。 図11は、実施例19及び比較例3におけるヒト血清中に一定時間保持した後のオリゴDNAの電気泳動写真であって、(A)はTBA、(B)はTBAA20の電気泳動写真である。 図12は、実施例19及び比較例3における電気泳動後のゲルをデンシトメータで解析して得られた、各オリゴDNAの残存量の経時変化を示すグラフである。 図13は、実施例20及び比較例9におけるヒト血清中に一定時間保持した後のオリゴDNAの電気泳動写真である。 図14は、実施例20及び比較例9における電気泳動後のゲルをデンシトメータで解析して得られた、各オリゴDNAの残存量の経時変化を示すグラフである。 図15は、実施例21及び比較例10におけるヒト血清中に一定時間保持した後のオリゴDNAの電気泳動写真である。 図16は、実施例21及び比較例10における電気泳動後のゲルをデンシトメータで解析して得られた、各オリゴDNAの残存量の経時変化を示すグラフである。 図17は、実施例22及び比較例11におけるヒト血清中に一定時間保持した後のオリゴDNAの電気泳動写真であって、(A)はTBA、(B)はTBAA20の電気泳動写真である。 図18は、実施例22及び比較例11における電気泳動後のゲルをデンシトメータで解析して得られた、各オリゴDNAの残存量の経時変化を示すグラフである。 図19は、実施例24における、IFNγアプタマーを用いて、THP-1細胞からIL-6の発現抑制を示したグラフである。 図20は、実施例25における、オリゴDNAを投与した関節炎モデルマウスの治療効果を評価したグラフである。
本発明の核酸ホモポリマー結合機能性核酸の製造法は、機能性核酸と核酸ホモポリマーとで構成され、安定化された機能性核酸として用いられる核酸ホモポリマー結合機能性核酸を製造する方法であって、機能性核酸に核酸ホモポリマーを付加させて核酸ホモポリマー結合機能性核酸を得る方法である。
本発明における核酸ホモポリマー結合機能性核酸は、機能性核酸と核酸ホモポリマーとで構成され、安定化された機能性核酸として機能する核酸又は核酸アナログからなる。ここで、「安定化された機能性核酸」とは、機能性核酸の安定性が向上された結果、機能性核酸と同様の機能を長時間保持可能となった構成を意味している。本発明における核酸の安定化は、例えば、核酸又は核酸の有する生理活性の半減期を指標に用いることができる。安定化された機能性核酸の中には、機能性核酸が本来有する生理活性の向上効果が発揮されるものも含まれる。ここで、核酸アナログとは、ヌクレオシド(塩基部位、糖部位)及び/又はヌクレオシド間結合部位に修飾が施された核酸を意味している。本発明における機能性核酸及び核酸ホモポリマーは上記の意味の核酸アナログを含んでいる。
核酸アナログを構成する「修飾されたヌクレオシド」としては、例えば、無塩基(abasic)ヌクレオシド;アラビノヌクレオシド、2’−デオキシウリジン、α−デオキシリボヌクレオシド、β−L−デオキシリボヌクレオシド、その他の糖修飾を有するヌクレオシド;ペプチド核酸(PNA)、ホスフェート基が結合したペプチド核酸(PHONA)、ロックド核酸(LNA)、モルホリノ核酸等が挙げられる。前記糖修飾を有するヌクレオシドには、2’−O−メチルリボース、2’−デオキシ−2’−フルオロリボース、3’−O−メチルリボース等の置換五単糖;1’,2’−デオキシリボース;アラビノース;置換アラビノース糖;六単糖およびアルファ−アノマーの糖修飾を有するヌクレオシドが含まれる。これらのヌクレオシドは塩基部位が修飾された修飾塩基であってもよい。このような修飾塩基には、例えば、5−ヒドロキシシトシン、5−フルオロウラシル、4−チオウラシル等のピリミジン;6−メチルアデニン、6−チオグアノシン等のプリン;及び他の複素環塩基等が挙げられる。
核酸アナログを構成する「修飾されたヌクレオシド間結合」としては、例えば、アルキルリンカー、グリセリルリンカー、アミノリンカー、ポリ(エチレングリコール)結合、メチルホスホネートヌクレオシド間結合;メチルホスホノチオエート、ホスホトリエステル、ホスホチオトリエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、トリエステルプロドラッグ、スルホン、スルホンアミド、サルファメート、ホルムアセタール、N−メチルヒドロキシルアミン、カルボネート、カルバメート、モルホリノ、ボラノホスホネート、ホスホルアミデートなどの非天然ヌクレオシド間結合が挙げられる。
本発明の核酸ホモポリマー結合機能性核酸(核酸又は核酸アナログ)の長さは、用途に応じて適宜選択でき、例えば3〜50mer、好ましくは5〜40merである。核酸および核酸アナログが短すぎると所望の機能を発揮しにくく、長すぎると安定性向上効果が十分に得られにくくいずれも好ましくない。
本発明における核酸ホモポリマーには、一種類のヌクレオシドの重合体からなるDNA及びRNA等の核酸および核酸アナログが含まれる。すなわち、核酸ホモポリマーは、上記に例示の修飾されたヌクレオシドと修飾されたヌクレオシド間結合とで構成される核酸アナログであってもよい。前記一種類のヌクレオシドの重合体とは、核酸ホモポリマーを構成する全ての塩基部位が同一又は類似(置換体や異性体等)であればよく、例えば、アデニンと6−メチルアデニンとを共に分子内に含むポリヌクレオチドも本発明の核酸ホモポリマーに含む意味に用いる。
核酸ホモポリマーとしては、天然型及び修飾されたヌクレオチドのいずれであってもよいが、好ましくは、アデニル酸(A)、シチジル酸(C)、 グアニル酸(G)、ウラシル酸(U)、チミジル酸(T)、及びイノシン酸(I)等のポリヌクレオチド;及びデオキシアデニル酸(dA)、デオキシシチジル酸(dC)、デオキシウラシル酸(dU)、デオキシチミジル酸(dT)、及びデオキシイノシン酸(dI)等の前記ポリヌクレオチドの2’位のデオキシ体等のポリデオキシヌクレオチド等が含まれる。なかでも、デオキシアデニル酸(dA)、デオキシシチジル酸(dC)、デオキシウラシル酸(dU)、及びデオキシチミジル酸(dT)のホモポリマーが好ましく、特に、デオキシアデニル酸(dA)のホモポリマーが好ましく用いられる。これらの核酸ホモポリマー(ホモ核酸テイル)は、単独で又は2以上を組み合わせて用いることができる。
本発明における核酸ホモポリマーの長さは、使用する目的や構成される核酸の種類等によって異なるが、通常3mer〜100mer、好ましくは3mer〜50mer、より好ましくは5mer〜50merである。特に、核酸医薬用途としては5〜30mer程度の範囲で用いられる場合が多い。核酸ホモポリマーと機能性核酸の長さの比率(ヌクレオチド単位)に比べて異常に大きい場合は、核酸の生理活性効果が低下する。さらに、3mer以下の場合は、核酸ホモポリマーの効果が少ない。
核酸ホモポリマーの長さは、また、核酸の種類に応じて適宜選択することができる。具体的には、デオキシアデニル酸で構成されるホモポリマー[poly(dA)]の場合は、例えば5〜40mer、好ましくは5〜30mer程度、デオキシチミジル酸で構成されるホモポリマー[poly(dT)]の場合は、例えば5〜50mer、好ましくは6〜40mer程度である。
本発明における機能性核酸としては、特定の機能を有していれば特に限定されず、合成及び天然型のいずれであってもよく、それ単体で機能を発現するもの、他の核酸やタンパク質等との相互作用により発現するもののいずれであってもよい。このような機能性核酸としては、公知乃至慣用の核酸および核酸アナログを利用でき、例えば、阻害活性、受容体作用、拮抗作用、免疫抑制活性、発現制御活性等の生理活性を有する核酸を用いることができる。機能性核酸として、例えば、短い干渉RNA(siRNA)、アンチセンスDNA、デコイ、アプタマー、リボザイム、miRNA 及び CpG DNA 等のオリゴ核酸が好ましく、特にアプタマー、アンチセンス、siRNAが好ましく用いられる。これらの機能性核酸は、単独でまたは複数個組み合わせて用いてもよい。
機能性核酸の長さは、特に限定されず、用途に応じて適宜選択することができるが、例えば3〜100mer、好ましくは5〜50merである。機能性核酸の長さは、所望の機能を発揮することができる長さを下限とし、ポリ核酸テイルによる安定性の付与効果が得られる長さを上限として適宜設定される。
本発明の製造法は、機能性核酸に核酸ホモポリマーを付加させて核酸ホモポリマー結合機能性核酸を得る工程を含んでいる。核酸ホモポリマー結合機能性核酸が安定化された機能性核酸として用いることができる理由は、必ずしも明確ではないが、例えば、生体内に存在するヌクレーアゼによる分解作用を受けにくくしたり、機能性核酸の末端へ非特異的な結合を形成しにくくするなどの効果を奏するためと推察される。
前記工程は、例えば、予め所望の長さに調製された核酸ホモポリマーを機能性核酸の一端又は両端へ付加させる方法;機能性核酸に核酸ホモポリマーの原料となる核酸モノマー又はオリゴマーを付加させた後、核酸鎖の伸長反応により所望の長さの核酸ホモポリマーを形成させる方法等を利用できる。前記核酸モノマー及びオリゴマーとしては、例えば、上記に例示の核酸ホモポリマーを構成するヌクレオチド及びデオキシヌクレオチド等のモノマー又はオリゴマーを用いることができる。重合は、核酸のモノマーやオリゴマーを基質として、公知の方法で重合する方法が好ましく用いられる。
核酸ホモポリマーを機能性核酸に結合(付加)する様式は、通例のリン酸エステル結合が用いられ、さらに、後述する修飾されたヌクレオシド間結合を用いることも可能である。核酸ホモポリマー(テイル部分)の結合を強くするために、適時ホスホロチオエート結合を導入してもよい。
機能性核酸へ核酸ホモポリマー(又はその原料)を付加する方法は、リン酸エステル結合からなるポリヌクレオチド合成反応として公知の方法を利用することができ、反応条件は、結合様式、機能性核酸の種類と長さ、核酸ホモポリマーの種類と長さ等に応じて、機機能性核酸の生理活性を損なわない範囲で適宜選択できる。また、核酸ホモポリマーの原料を用いる方法において、核酸モノマー又はオリゴマーの伸長反応は、上記ホモポリマーの付加方法と同様の条件を用いることができる。機能性核酸への核酸ホモポリマーの付加は、当業者に周知の技術を用いて行うことができる(例えば、Molecular Cloning 3rd edition, Cold Spring Harbor Laboratory(2001)等)。
上記製造法により得られる核酸ホモポリマー結合機能性核酸(核酸又は核酸アナログ)には、機能性核酸の3’端及び/又は5’端に核酸ホモポリマーが結合されているものが含まれる。核酸ホモポリマー結合機能性核酸は、機能性核酸の3’端又は5’端に一つの核酸ホモポリマーを有する双方向直鎖状構造;同3’端及び5’端に同一又は異なる2つの核酸ホモポリマーを有する一方向直鎖状構造;同3’端及び5’端が共に同じ核酸ホモポリマーに結合している環状構造等の各種形状を取ることが可能である。
上記構成の核酸ホモポリマー結合機能性核酸は、安定性が向上されている点以外は機能性核酸と同様の生理活性を発揮することができるため、機能性核酸と同様の用途で利用することができる。すなわち、本発明における核酸ホモポリマー結合機能性核酸は、これ単独で又は他の成分と組み合わせて、短い干渉RNA(siRNA)、アンチセンスDNA、デコイ、アプタマー、 miRNA 等のオリゴ核酸として利用することができる。なかでも、アンチセンス、RNAやDNAアプタマー、siRNAとして好ましく用いられる。
本発明の核酸ホモポリマー結合機能性核酸は、機能性核酸の特性を損なわない範囲で、適宜な化学修飾が施されていても良い。化学修飾に用いられる化合物としては、公知のものから適宜選択でき、例えば、シゾフィラン、カードラン、パーキマン、グリホラン、スクレログルカン、レンチナン、及びラミナラン等のβ−1,3−グルカン構造を有する多糖類等を利用できる。なかでも、シゾフィランを用いた多糖/核酸複合体は、機能性核酸に対し、核酸ホモポリマーの付加による安定化効果に加え、シゾフィランとの複合化による安定性向上という相乗的な効果を得ることができる。核酸ホモポリマー結合機能性核酸は、また、他の成分と組み合わせて用いることができる。
核酸ホモポリマー結合機能性核酸が安定化された機能性核酸であることを評価する方法としては、核酸の安定性を評価する方法として公知の方法から適宜選択でき、例えば、半減期、生理活性等を指標として評価する方法等を用いることができる。本発明においては、核酸ホモポリマー結合機能性核酸が機能性核酸と同種の生理活性を発揮することができ、しかも機能性核酸より核酸ホモポリマー結合機能性核酸の半減期が長い場合に、当該核酸ホモポリマー結合機能性核酸を「安定化された機能性核酸」と評価することができる。前記「同種の生理活性」とは、生理活性の種類が同一であることを意味しており、例えば、核酸ホモポリマー結合機能性核酸が機能性核酸と同じ阻害活性、受容体作用、拮抗作用、免疫抑制活性、発現制御活性等の生理活性を有することを意味している。また、半減期が長い核酸ホモポリマー結合機能性核酸は、生理活性の種類によっては、高い生理活性が発揮されるホモポリマー結合機能性核酸として検出されるものであってもよい。
前記生理活性を指標として評価する方法は、機能性核酸が有する生理活性の種類に応じて適宜選択することができる。以下に、機能性核酸がトロンビンアプタマーである例を挙げて具体的に説明する。トロンビンアプタマーは、トロンビンに対して抑制性に作用する機能性核酸の一種であり、その生理活性は、血液凝固時間を測定する方法を用いて評価することができる。トロンビンは、その酵素活性によりフィブリノーゲンからフィブリンを生成し、次いでフィブリンが高分子化することにより血液凝固を引き起こすことが知られている。トロンビンアプタマーは、トロンビンに結合してその酵素活性を阻害するため、フィブリンの生成を抑制して、血液を凝固しにする作用がある。従って、トロンビンアプタマーの生理活性は、血液が凝固するまでの時間で評価することができる。すなわち、血液凝固時間が長いほど、トロンビンアプタマーの生理活性が向上されていると評価できる。
上記方法により得られる核酸ホモポリマー結合機能性核酸は、安定化された機能性核酸として、広範な分野で利用することができる。本発明の核酸ホモポリマー結合機能性核酸は、機能性核酸に結合される核酸ホモポリマーの免疫原性がないか極めて低く、安全性に優れるため、生体内又はその類似環境下であっても機能性核酸の安定性を十分に維持できる。このため、生体内に投与される医薬品用途、特に遺伝子治療用途などとして極めて有用である。本発明の核酸ホモポリマー結合機能性核酸は、また、生体内類似環境下で行われるスクリーニングや核酸の機能解析等に用いられるプローブ等として広範な分野で利用できる。
本発明の核酸ホモポリマー結合機能性核酸医薬品(以下、単に「医薬品」と称する場合がある)は、核酸ホモポリマー結合機能性核酸を有効成分として含んでいる。そのため、前記医薬品は、構成成分に含まれる機能性核酸の生理活性に応じた用途の医薬として利用することができ、治療薬、予防薬、検査薬等の広範な用途に適用できる。核酸ホモポリマー結合機能性核酸医薬品は、上記本発明の製造法で得られた核酸ホモポリマー結合機能性核酸以外に、医薬品に添加される公知のものが含まれていてもよい。また、核酸ホモポリマー結合機能性核酸医薬品の剤形、投与方法等は、医薬品として公知の形態を適用可能であり、機能性核酸の種類や用途、治療場所に応じて適宜設定することができる。このような核酸ホモポリマー結合機能性核酸医薬品としては、例えば、核酸ホモポリマー結合機能性核酸をリン酸バッファーに分散させた液体製剤等が挙げられる。このような医薬品は、例えば静脈注射等により投与することにより、生体内において、機能性核酸のみを投与したときと同様の生理活性を、より長期間発揮することができる。
なかでも、核酸ホモポリマー結合機能性核酸医薬品としては、生体内及びその類似環境下における機能性核酸の安定性が向上されていることが好ましく用いられる。このような医薬品は、長期に亘り機能性核酸本来の活性を維持することができる。生体内類似環境とは、例えば、37℃程度の温度下の血清、生理食塩水、緩衝液、細胞培養液、血漿、等膨液等が挙げられる。このような医薬品は、また、安全性に優れると共に生体内で安定であるため、従来の核酸医薬と比較してより持続的に作用して高い治療効果を発揮することができ、遺伝子治療用途として極めて有用である。
本発明の核酸ホモポリマー結合機能性核酸医薬品は、上記構成を有するため、機能性核酸が有する生理活性と同様の活性を発揮することができ、しかも生体内で安定に存在することができる。このような医薬品は、安全性に優れ、投与後の生体内において長期にわたり治療、予防効果を得ることができる。
本発明の核酸ホモポリマー結合機能性核酸は、また、生体内又は生体内類似環境下で行われるスクリーニングや核酸の機能解析等に用いられるプローブ等として広範な分野で利用できる。本発明のプローブは、少なくとも核酸ホモポリマー結合機能性核酸を構成成分に含んでいればよい。なかでも、機能性核酸の生理活性を検知可能な構成を有しているプローブが好ましく、前記プローブは、公知乃至慣用の方法で得ることができる。このようなプローブの代表的な例としては、例えば、核酸ホモポリマー結合機能性核酸に蛍光、放射性物質、酵素等の標識性物質が連結された構成を有しているものが挙げられる。本発明のプローブは、生体内と類似の環境下の安定性に優れるため、特に新規遺伝子の探索等の研究分野や、治療、検査等の医療分野におけるプローブとして効果的に利用することができる。
以下、実施例1から26にて本発明を具体的に説明する。なお、核酸ホモポリマーを示す場合、例えば、塩基Xからなるヌクレオシドがn個結合したホモポリマーを「poly(X)n」と表記する。すなわち、30merのデオキシアデニル酸(dA)ホモポリマーは、「poly(dA)30」と表記することができる。
実施例1〜14、比較例1〜3
トロンビンアプタマーの安定化
(1)核酸ホモポリマー結合機能性核酸の調製
表1に示される塩基配列からなるオリゴDNAを次の方法で製造した。核酸ホモポリマーとして、デオキシアデニル酸ホモポリマー(長さ4mer及び5mer〜40merより5mer刻み)、20mer若しくは40merのデオキシチミジル酸ホモポリマー、20merのデオキシシチジル酸ホモポリマー、20merのデオキシグアニル酸ホモポリマーをそれぞれ別途合成した。前記いずれかの核酸ホモポリマーを市販のトロンビンアプタマー(TBA)に連結させて、TBAに核酸ホモポリマーが付加された表1の実施例1〜14に示される核酸ホモポリマー結合機能性核酸を得た。
表1中、TBAはトロンビンアプタマーを示し、TBAAは、TBAの3’末端に核酸ホモポリマーpoly(dA)が結合された核酸ホモポリマー結合機能性核酸を示しており、TBAAの末尾の数字は、poly(dA)の長さを示している。例えば、「TBAA4」は、TBAの3’末端にpoly(dA)4が結合された配列を有することを意味している。また、「A20TBA」は、TBAの5’末端にpoly(dA)20が結合された配列を有することを意味している。配列番号17のオリゴDNAは、トロンビンアプタマーと長さは同じであるがランダムな塩基配列からなるネガティブコントロール用のサンプルである。
Figure 2007058323
(2)フィブリノーゲン存在下における半減期の測定
フィブリノーゲンの2.9×10-6Mの50mMTris-HCl(pH 7.4)、5mM CaCl2、100mM NaCl 溶液を調製し、10.0mmのUVセルの中に入れ、37℃に温度調整した。つぎに、同じく37℃に温度調整し、表2に示されるオリゴDNAサンプル(各サンプルの総量6.0 nM)とトロンビン(0.1 NIHユニット、1.8nM)の混合溶液54μl加えた。攪拌したのちに、0〜1000秒まで100秒毎に波長350〜500nm(/2nm)の透過率を測定した。表2中、オリゴDNAの表記方法、対応する塩基配列は表1に示すものと同様である。なお、「TBA+poly(dA)20」とは、トロンビンアプタマーとデオキシアデニル酸ホモポリマーとを結合させることなく、個別に添加したことを示している。表2中、サンプルNo.10は、オリゴDNAの配列サンプルを添加しないで(トロンビン阻害剤の非存在下で)透過率を測定した結果を示している。
各オリゴDNAサンプルについて、上記測定された透過率の変化を波長に対するグラフとして経過時間別に重ねてプロットし、波長320nmで透過率が80%を超えるグラフの中で、最も早い経過時間のグラフに対応させて、フィブリンの凝集開始時間と判断した。例えば、図1は、オリゴDNAとしてTBAを用いた場合には、200秒後にフィブリンの凝集が開始され、図2は、TBAA20を用いた場合には、700秒後にフィブリンの凝集が開始されることを示している。図1及び図2中、四角内の数字は、オリゴDNAの混合終了時からの経過時間を示す。
さらに、各オリゴDNAサンプルについて、上記測定された透過率の積分値Tを求め、時間0秒の積分値Tと時間T秒の積分値Tより相対透過率T/T[%]を経過時間[秒]に対してグラフ化し、T/Tが50%となる時間を半減期として得た。オリゴDNAごとに上記測定を4回繰り返して得られた半減期の平均値を表2に示した。オリゴDNAサンプルとしてTBAとTBAA20を添加するか、オリゴDNAを添加しないで上記測定を行い、相対透過率T/T[%]を経過時間[秒]に対してプロットしたグラフを図3に示した。
Figure 2007058323
表2の結果から明らかなように、 poly(dA)10、poly(dA)20、poly(dA)30、poly(dA)40を3’端に有するTBAA10、TBAA20、TBAA30、TBAA40は、比較対象のTBAよりはるかに半減期が大きくTBAの活性を上げている。以上より、poly(dA)nをトロンビンアプタマーに付加することによって、トロンビンアプタマー本体の活性が落ちることはないと言える。
すなわち、(2)は、機能性核酸としてトロンビンアプタマーを用いて、フィブリン高分子の生成阻害を行った例である。血液の凝固メカニズムは、フィブリノーゲンに酵素であるトロンビンが作用して生成したフィブリン蛋白が自発的に重合を開始してフィブリン高分子が生まれるためである。従って、フィブリン高分子の生成を阻害するには、フィブリノーゲンのトロンビンによる分解過程を抑える必要がある。GGT TGG TGT GGT TGGの配列はトロンビンアプタマーとして機能することが知られており(Analytical biochemistry 294, 126-131, (2001))、当該配列を有する核酸は、トロンビンに結合してフィブリノーゲンの分解を阻害する。(2)では、定量的なフィブリノーゲン凝固時間の測定方法を示し、得られた半減期の長さで、(i)トロンビンアプタマーにpoly(dA)nを付加しても活性が落ちないこと、さらに(ii)nの長さ(核酸ホモポリマーの長さ)によってはトロンビンアプタマーの活性増強(すなわち、凝固阻害による半減期の増加)が見られることを示す。
(3)ヒト血漿を用いた凝固阻害試験
ヒト血漿は終濃度0.32%クエン酸ナトリウム法で調製し、使用時まで-80℃で保存した。精製ヒトトロンビン5μMに対し、オリゴDNAをモル比1:2から1:10にて5分間室温であらかじめ反応させ(全量で5μl)37℃の水浴中に置いた。同様に保温しておいたヒト血漿20μlを加えて(計時開始)ピペッティングにより撹拌し、目視で凝固が確認されるまでの時間(3分間まで)を測定した。図4は、オリゴDNAとして、前記(1)で調製されたTBAA20、TBAA30、TBAA40、TBA(表1参照)を用いたときのオリゴDNA濃度に対する凝固時間をプロットしたグラフを示している。
オリゴDNAが10μM(トロンビン:オリゴDNA=1:2(モル比))ではいずれも凝固阻害効果はないが、20μM(同1:4)以上で凝固時間の延長が認められた。20μM, 25μM(同1:5)ではpoly(dA)テイルを持たないTBAが一番弱く、TBAA30が一番強い活性を示した。50μM(同1:10)ではどのオリゴDNAも著しい阻害効果を示し、反応開始後3分間までには凝固に至らなかった。
すなわち、(3)においては、フィブリノーゲンしか存在しない単純系(1)と異なり、様々なタンパク質等が含まれる人の血液が用いた場合であっても、トロンビンアプタマーにpoly(dA)nを付加しても活性が落ちないこと、さらに(ii)nの長さによってはトロンビンアプタマーの活性増強(すなわち、凝固阻害による半減期の増加)が見られることが示されている。
(4)ヒト血清中の安定性試験
ヒト血清に、前記(1)で調製されたTBAA20、TBAA30、TBAA40、TBA(表1参照)を、それぞれ200μg/ml、20μg/ml、2μg/mlの各濃度で加え、37℃で0, 1, 3, 6, 12および24時間保温し、その後凍結して保存した。これら反応液に内部標準マーカーDNA(65 および75base)を加え、核酸をフェノール抽出、酢酸ナトリウム存在下でエタノール沈殿させた。この沈殿を50%ホルムアミド溶液に溶かし、沸騰水中で1分加熱後氷上に置き、TBEで希釈、各オリゴDNA10ng相当(当初用いた量)をウレア-ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけた。ゲルをCYBR-Gold(Invitrogen社)溶液に浸漬したのち写真撮影した。電気泳動写真を図5に示す。
TBAA20, TBAA30およびTBAA40は200μg/mlで比較的安定に存在したが、TBAは6時間後には検出されず、poly(dA)テイルを付加したオリゴDNAに比べて血清中では早く分解することが示された。一方、20μg/mlと2μg/mlでTBAは0時間でも検出されず、低濃度ではきわめて速やかに分解されることが示唆された。同じ20μg/mlと2μg/mlでpoly(dA)を付加したTBAA20, TBAA30およびTBAA40は経時的に低分子化が観察されたが、分解速度に関してはpoly(dA)テイルの長さによる大きな違いは認められなかった。また20μg/ml、2μg/mlと低濃度になるにつれTBAA20, TBAA30およびTBAA40のいずれもがより早く消滅することからオリゴDNAはヌクレアーゼによる酵素反応によって分解されると考えられた。以上のようにオリゴDNAの3’末端にpoly(dA)テイルを付加することにより血清中でのヌクレアーゼによる消化に対する抵抗性が増大した。Poly(dA)テイルはオリゴDNAの血清中での安定性に大きく寄与することが明らかになった。
(4)では、人の血液中での安定性を、poly(dA)n結合トロンビンアプタマーとトロンビンアプタマー単体とで比較した。血液中にはヌクレアーゼが存在し、また、核酸と非特異的吸着するタンパク質が多く存在する。3’末端にpoly(dA)テイルを付加することにより血清中での抵抗性が増大することが示された。すなわち、poly(dA)テイルはオリゴDNAの血清中での安定性に大きく寄与することが明らかになった。
(5)フィブリノーゲン存在下の凝固阻害試験
表1に示すオリゴDNA54.0μl (ストック溶液1.5μM、final 40.0nM)とトロンビン2.0μl (ストック溶液100 NIH units/ml、final 0.1 NIH units/ml)の混合溶液を37℃で15分間インキュベートして、37℃のフィブリノーゲン溶液2.0ml{2.9×10-6M、50mMTris-HCl(pH7.4)、5mM CaCl2、100mM NaCl}に50.0μl加えた。UV spectrometerを用いて波長450nmの透過率を連続時間測定することで、トロンビンアプタマーのトロンビン阻害活性を測定した。代表例として、オリゴDNAがTBA、TBAA10、TBAA20、TBAA30、TBAA40(表1参照)のいずれかである場合、及びオリゴDNAを添加しなかった場合について、波長450nmの透過率の経時変化を図6のグラフに示す。図6中、初期のまったく凝固が起こらない時間を誘導時間、凝固が起こり始めて透過率が減少していくときの、減少曲線を対数で近似したときの時間(time)の係数を半減期とした。すなわち、図6は下記式を描写している。透過率誘導時間が長いほど、半減期が大きいほど、凝固が阻害されている。
透過率(transition[%])=Exp(−time/半減期)
表1に示すオリゴDNAのうち、TBAに結合されるpoly(dA)が5mer〜40merをmerきざみの長さで構成されているTBAAとTBAを用いて、上記測定結果に基づき図6と同様のグラフを作成して誘導時間及び半減期を求め、(dA)の長さと誘導時間との関係を図7(A)に示し、(dA)の長さと半減期との関係を図7(B)に示した。これより、有効な(dA)テイルの長さは、好ましくは 5〜40merであることが分かる。
(6)核酸ホモポリマーを構成する核酸の種類と凝固阻害活性の関係
表1中の実施例及び比較例に示される一部のオリゴDNAを用いて、前記(5)と同様の方法で誘導時間と半減期を測定した結果を表4に示す。
Figure 2007058323
表3により、5’端に(dA)テイルが付くとTBAより阻害活性が低下していること、3’端にGやCを付けてもまったく活性がないこと、3’端に(dT)をつけた場合は、(dA)テイルと同様の阻害活性があることが判明した。
(7)ウシ血漿中の安定性試験
300μlのウシ血漿にDNA質量が2.5μgになるように加えて40μlずつ小分けして、それぞれ0、0.25h、0.5、0.75、1、1.5、2、3、5h後にフェノール抽出を行い、DNA残量を電気泳動により調べた。15%ウレア-ポリアクリルアミドゲルを用いて、100V、400mA、1hの条件で泳動を行い、CYBR-Gold(invitrogen社)を用いて検出した。サンプルとして表1のTBA、TBAA20、TBAT20を用いたゲル電気泳動の結果を、それぞれ図8の(A)、(B)、(C)に示す。
図8(A)〜(C)のゲル電気泳動の結果より、TBAA20とTBAT20ではまず、テイル部分が徐々に切れていき、TBAA20では3-5時間後に、TBAT20では1時間後にTBAと同じ長さになることが分かる。3’端から切れていくことを考慮すると、これらの時間後にテイルが消失してTBAが現れることが分かる。理由は不明であるが、テイルの分解速度はTBAより遅く、TBAが現れた瞬間に全体が分解される。
実施例15、比較例4
テネシン−C−アプタマー(tenescin-C-aptamer:TCA)
(1)核酸ホモポリマー結合機能性核酸の調製
表4に示される塩基配列からなるオリゴDNAを次の方法で製造した。核酸ホモポリマーとして、長さ20merのデオキシアデニル酸ホモポリマー[poly(dA)20]を合成した。表4に示す塩基配列からなるテネシン−C−アプタマー(TCA)にpoly(dA)20を連結させて、表4に示される核酸ホモポリマー結合機能性核酸を得た。
Figure 2007058323
(2)ヒト血清中の安定性試験
96 well plate にヒトの血清とオリゴDNAを混合した溶液を入れ、攪拌しながら、37℃で一定時間おいた。サンプルは一度凍結保存したのち、フェノール抽出、エタノール沈殿(20μgグリコーゲン、3M酢酸ナトリウム存在下)を行った後にホルムアミド処理を行い、ウレア-ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動を行った。結果を図9に示す。図9をイメージアナライザーで解析することにより、核酸ホモポリマーが結合されていないTCAの半減期は6時間だが、(dA)が付与されることにより、半減期は12時間となることが判明した。
実施例16、比較例5
RNAトロンビンアプタマー(TBRA)
(1)核酸ホモポリマー結合機能性核酸の調製
表5に示される塩基配列からなるオリゴDNAを次の方法で製造した。核酸ホモポリマーとして、長さ20merのシチジル酸ホモポリマー[poly(C)20]、アデニル酸ホモポリマー[poly(A)20]、ウラシル酸ホモポリマー[poly(U)20]、デオキシアデニル酸ホモポリマー[poly(dA)20]、を合成した。表5に示す塩基配列からなるRNAトロンビンアプタマー(TBRA)に上記各核酸ホモポリマーを連結させて、表5に示される核酸ホモポリマー結合機能性核酸を得た。
Figure 2007058323
(2)フィブリノーゲン存在下の凝固阻害試験
表5に示すトロンビンRNAアプタマー54.0μl (ストック溶液4.0μM、final 105.2nM) とトロンビン2.0μl (ストック溶液100 NIH units/ml、final 0.1 NIH units/ml)の混合溶液を37℃で15分間インキュベートして、37℃のフィブリノーゲン溶液2.0ml[2.9×10-6M、50mMTris-HCl(pH 7.4)、5mM CaCl2、100mM NaCl]に50.0μl加えた。UV spectrometerを用いて波長450nmの透過率を連続時間測定することでRNAトロンビンアプタマー、及びこれに核酸ホモポリマーが結合された核酸のトロンビン阻害活性を測定した。得られた測定結果を用いて、実施例1〜14の(5)及び(6)と同様の方法を用いて誘導時間と半減期を求め、表6に示した。表6より、DNAアプタマーと同様に3’端に(dA)テイルを付加したものが最も凝固阻害をしていることが分かる。
Figure 2007058323
実施例17、比較例6
TNFαアンチセンスDNA
(1)核酸ホモポリマー結合機能性核酸の調製
表7に示される塩基配列からなるオリゴDNAを次の方法で製造した。核酸ホモポリマーとして、長さ30merのデオキシアデニル酸ホモポリマー[poly(dA)30]を合成した。表7に示す塩基配列からなるTNFαアンチセンスDNAにpoly(dA)30を連結させて、表7に示される核酸ホモポリマー結合機能性核酸を得た。
Figure 2007058323
(2)血清中の安定性試験
表7に示すオリゴDNAを、ヒト由来の血清中、37℃でインキュベートした後にウレア-ポリアクリルアミドゲルにてゲル電気泳動を行った。その結果を図10に示す。TNFα-A30は24時間後でも残存しているが、poly(dA)30が結合されていないTNFα-(dA)30は3時間後で消滅している。
実施例18、比較例7
核酸ホモポリマー結合トロンビンアプタマーの修飾
(1)TBAA20/シゾフィラン複合体の製造
表1に示されるTBAA20とシゾフィランとの複合体を、国際公開第WO/2002/072152号パンフレット、及び特開2004-107272に記載の方法に従って製造した。この際、TBAA20の塩基数1モルに対し、シゾフィラン(分子量15万)を主鎖のグルコースが3モルとなるように用いた量を用いた。
(2)血液凝固試験
TBA、TBAA20、前記(1)で得たTBAA20/シゾフィラン複合体、及び複合体を形成していないTBAA20とシゾフィランとを用いて表8中の(i)〜(iv)に記載の濃度の液体製剤を調製し、マウス当たり50μlの投与量で各群3匹のマウスへ尾静脈投与した。投与直後及び15分後に心臓から全血液を回収してガラス試験管に移し、37℃で保温、約15秒間隔で凝固を目視にて検定した。投与直後の結果を表8に、投与後15分の結果を表9にそれぞれ示す。
Figure 2007058323
Figure 2007058323
表8及び表9中、(i)と(iii)はDNAのモル数では同じになる。(dA)テイルがあるため重量濃度が異なる。また、(ii)と(iv)はそれぞれ、(i)と(iii)の3倍量投与となる。そこで、(i)と(iii)、(ii)と(iv)の組み合わせでTBAとTBA20、とを比べると、核酸ホモポリマーが付加されているTBAA20は、明らかに凝固時間が長くなっている。これは、TBAと比較してTBAA20の血中での安定性と活性向上の双方が上がっているためであるといえる。また、シゾフィランとの複合化をしたTBAA20/シゾフィラン複合体では、TBAA20より凝固時間が延びている。これは、多糖との複合化により安定性が相乗的に高まったためと考えられる。
実施例19、比較例8
トロンビンアプタマーの血清中での安定性試験
96 well plateに、トロンビンDNAアプタマー(TBA:配列番号15)又はTBA poly(dA)20(TBAA20:配列番号3)を500 ng溶解した溶液40μlと、ヒト血清20μlを加えた。37℃でインキュベーション後、サンプルに50mMTris-HCl(pH 7.4),5mM CaCl2、100mM NaCl]を60 μl加え、フェノール抽出によりタンパク質を除去した後、エタノール沈殿によりアプタマーDNAを回収した。回収したDNAを50%ホルムアミド に懸濁した。100℃で2分加熱後、全体の1/6量を12.5%のウレア-ポリアクリルアミドで電気泳動にて解析した(図11)。次いで、泳動後のゲルを回収し、デンシトメータを用いてオリゴDNAの残存量の経時変化を測定してグラフ化し(図12)、半減期を求めた。その結果、核酸ホモポリマーが結合されていないTBAの半減期は3時間だったのに対し、(dA)が付与されたTBAA20の半減期は15時間であった。すなわち、TBAにアプタマーを付加することにより、ヒト血清中で約5倍の安定性向上効果が得られた。
実施例20、比較例9
テネシン−C−アプタマー(tenescin-C-aptamer:TCA)
(1)核酸ホモポリマー結合機能性核酸の調製
表10に示される塩基配列からなるオリゴDNAを次の方法で製造した。核酸ホモポリマーとして、長さ20merのデオキシアデニル酸ホモポリマー[poly(dA)20]を合成した。表10上段に示す塩基配列からなるテネシン−C−アプタマー(TCA:Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 100(26), 15416?15421(2003))(配列番号28)にpoly(dA)20を連結させて、表10下段に示される核酸ホモポリマー結合機能性核酸TCAA20(配列番号29)を得た。
Figure 2007058323
(2)ヒト血清中の安定性試験
96 well plateに、上記(1)で得たテネシン−CDNAアプタマー(TCA:配列番号28)又はTCA poly(dA)20(TCAA20:配列番号29)を500 ng溶解した溶液40μlと、ヒト血清20μlを加えた。37℃でインキュベーション後、サンプルに50mMTris-HCl(pH 7.4), 5mM CaCl2、100mM NaCl]を60 μl加え、フェノール抽出によりタンパク質を除去した後、エタノール沈殿によりアプタマーDNAを回収した。回収したDNAを50%ホルムアミド に懸濁した。100℃で2分加熱後、全体の1/6量を12.5%のウレアポリアクリルアミドゲル電気泳動にて解析した(図13)。次いで、泳動後のゲルを回収し、デンシトメータを用いてオリゴDNAの残存量の経時変化を測定してグラフ化し(図14)、半減期を求めた。その結果、核酸ホモポリマーが結合されていないTCAの半減期は1.5時間だったのに対し、(dA)が付与されたTCAA20の半減期は4.5時間であった。すなわち、テネシン−C−アプタマーに核酸ホモポリマーを付加することにより、ヒト血清中で約3倍の安定性向上効果が得られた。
実施例21、比較例10
L−セレクチンアプタマー(L-selectin aptamer:LSA)
(1)核酸ホモポリマー結合機能性核酸の調製
表11に示される塩基配列からなるオリゴDNAを次の方法で製造した。核酸ホモポリマーとして、長さ20merのデオキシアデニル酸ホモポリマー[poly(dA)20]を合成した。表11上段に示す塩基配列からなるL−セレクチンアプタマー(LSA:J Clin Invest., 98(12), 2688-2692(1996))(配列番号30)にpoly(dA)20を連結させて、表11下段に示される核酸ホモポリマー結合機能性核酸LSAA20(配列番号31)を得た。
Figure 2007058323
(2)ヒト血清中の安定性試験
96 well plateに、上記(1)で得たL−セレクチンアプタマー(LSA:配列番号30)又はLSA poly(dA)20(LSAA20:配列番号31)を500 ng溶解した溶液40μlと、ヒト血清20μlを加えた。37℃でインキュベーション後、サンプルに50mMTris-HCl(pH 7.4), 5mM CaCl2、100mM NaCl]を60 μl加え、フェノール抽出によりタンパク質を除去した後、エタノール沈殿によりアプタマーDNAを回収した。回収したDNAを50%ホルムアミド に懸濁した。100℃で2分加熱後、全体の1/6量を12.5%のウレアポリアクリルアミドゲル電気泳動にて解析した(図15)。次いで、泳動後のゲルを回収し、デンシトメータを用いてオリゴDNAの残存量の経時変化を測定してグラフ化し(図16)、半減期を求めた。その結果、核酸ホモポリマーが結合されていないLSAの半減期は1.5時間だったのに対し、(dA)が付与されたLSAA20の半減期は4.5時間であった。すなわち、L−セレクチンアプタマーに核酸ホモポリマーを付加することにより、ヒト血清中で約3倍の安定性向上効果が得られた。
実施例22、比較例11
IFNγ アプタマー(IFNγ aptamer:IFA)
(1)核酸ホモポリマー結合機能性核酸の調製
表12に示される塩基配列からなるオリゴDNAを次の方法で製造した。核酸ホモポリマーとして、長さ20merのデオキシアデニル酸ホモポリマー[poly(dA)20]を合成した。表12上段に示す塩基配列からなるIFNγアプタマー(IFA:J Biol Chem. 1994 Oct 7;269(40):24564-74)(配列番号32)にpoly(dA)20を連結させて、表12下段に示される核酸ホモポリマー結合機能性核酸(IFAA20)(配列番号33)を得た。
Figure 2007058323
(2)ヒト血清中の安定性試験
96 well plateに、上記(1)で得たIFNγアプタマー(IFA:配列番号32)又はIFA poly(dA)20(IFAA20:配列番号33)を500 ng溶解した溶液40μlと、ヒト血清20μlを加えた。37℃でインキュベーション後、サンプルに50mMTris-HCl(pH 7.4) 5mM CaCl2、100mM NaCl]を60 μl加え、フェノール抽出によりタンパク質を除去した後、エタノール沈殿によりアプタマーDNAを回収した。回収したDNAを50%ホルムアミド に懸濁した。100℃で2分加熱後、全体の1/6量を12.5%のウレアポリアクリルアミドゲル電気泳動にて解析した(図17)。次いで、泳動後のゲルを回収し、デンシトメータを用いてオリゴDNAの残存量の経時変化を測定してグラフ化し(図18)、半減期を求めた。その結果、核酸ホモポリマーが結合されていないIFAの半減期は1.5時間だったのに対し、(dA)が付与されたIFAA20の半減期は5時間であった。すなわち、IFAアプタマーに核酸ホモポリマーを付加することにより、ヒト血清中で約3.3倍の安定性向上効果が得られた。
実施例23、比較例12
MIFアンチセンスDNAの核酸ホモポリマー結合機能性核酸の調製
表13に示される塩基配列からなるオリゴDNAを次の方法で製造した。核酸ホモポリマーとして、長さ20merのデオキシアデニル酸ホモポリマー[poly(dA)20]を合成した。表13上段に示す塩基配列からなるMIFアンチセンスDNA(配列番号34)にpoly(dA)20を連結させて、表13下段に示される核酸ホモポリマー結合機能性核酸(MIFA20)(配列番号35)を得た。
Figure 2007058323
実施例24
IFNγの活性抑制を介したIL-6の発現抑制活性の増強効果
IFNγが、LPS刺激を受けたTHP−1細胞によるIL−10産生抑制を介して、前炎症性サイトカインであるIL-6とIL-12の産生を増加させるメカニズムが知られている(Infect Immun., 70(4):1881-8(2002))。そこで、IFNγアプタマー(IFA:配列番号32)と、IFAA20(配列番号33)とのIFNγの活性抑制効果を、IL-6の発現抑制作用を指標として以下の方法で比較を行った。
THP−1細胞を、ビタミンD3を最終濃度が250nMとなる量を加えた培地で48時間培養した後、当該細胞を回収し、96well plateに200μl/wellの濃度で移した。そこへIFA又はIFAA20を24pmol/well加え、37℃で1時間培養し、さらにLPSを最終濃度2μg/ml、IFNγを24pmol/well加えた。24時間後、細胞培養液を回収し、400gの条件で10分間遠心処理を施した。回収した上清について、ELISA kitを用いてIL-6の発現量を測定した(詳細はInfect Immun. 70(4), 1881-8(2002) を参照)。その結果を図19に示す。
図19に示されるように、核酸ホモポリマーが結合されていないIFAと比較して、IFAアプタマーに核酸ホモポリマーを付加することにより(IFAA20)、培養後24時間経過しても、より強くIL-6の発現を抑制することができた。従って、IFAA20は、生体内における安定性が改善され、炎症抑制作用を奏する医薬品の有効成分として好適である。
実施例25
関節炎モデルマウスにおける炎症抑制活性の増強効果
関節炎モデルマウスを用いて、比較例6のTNFαアンチセンスDNA(配列番号26)と、実施例17のTNFα-(dA)30(配列番号27)によるTNFαの発現抑制効果を以下の方法で比較した。関節炎を誘導したマウスに上記オリゴDNAを投与することにより、TNFαの発現抑制を介して、関節炎周辺部におけるTNFαの産生を阻害することにより得られる関節炎の治療効果を以下の方法で調べた。
J.Pharm 128, 5-12(1999)によれば、抗II型コラーゲン抗体接種後のマウスにLPSを投与することで、短期間に関節炎が誘導される。そこで、同文献に記載の方法に従い、マウス(BALB/c, 6 週齢, ♀, 5 匹/群)腹腔内に2mgの抗II型コラーゲン抗体を投与し(day-3)、その3日後、50μgのLPS を腹腔内に投与することで関節炎を誘導した(day0)。こうして得られた関節炎モデルマウスに対し、関節炎周辺に集まったマクロファージから産出されるTNFαを抑制し、関節炎を抑える目的で、TNFαアンチセンスDNA(配列番号26)、又はTNFα-(dA)30(配列番号27)を、LPS投与と同日(day0)に、それぞれ 5μg (20μl) ずつ尾静脈内に投与した。この処置により、TNFαの発現抑制を介して、関節炎周辺部におけるTNFαの産生が阻害され、関節炎の発症を予防し、また症状の進行を抑制したり治療する効果が期待される。その後、オリゴDNAを投与して7日目(day7)、及び10日目(day10)のマウスの前足、後ろ足の腫脹・発赤を目視検査し、(0:無変化、1:紅斑・浮腫、2:関節破壊の確認、3:関節の強直・屈曲)の5段階スコアにより評価を行った(詳細は、J. Pharmacol. Exp. Thr., 304(1)411(2003)参照)。検査7日目と10日目に5匹分のマウスのスコアを合計してグラフを作成し、図20に示した。
その結果、TNFαアンチセンスDNAに比較して、核酸ホモポリマーが付与されているTNFα-(dA)30は、TNFの抑止効果がより長期に亘っているためか、関節炎の症状が緩和又は治癒される傾向にあることが示された。
実施例26
腸炎モデルマウスにおける炎症抑制活性の増強効果
DSS (Dextran Sodium Sulfate)をマウスに飲水投与することによって誘起される腸炎モデルマウス(J.Biol.Chem., 279, (20), 21406-21414(2004))を用いて、比較例12のMIFアンチセンスDNA(配列番号34)と、実施例23のMIFA20(配列番号35)とのMIFの発現抑制効果を以下の方法で比較した。
MIF(macrophage migration inhibitory factor)は炎症性因子であり、腸炎の重要なメディエーターと考えられている。そこで、腸炎による下血や炎症を抑える目的で、MIFアンチセンスDNA又はMIFA20を、5μg (20μl) ずつ尾静脈内に2種類の方法にて投与した。一の方法は、「day -2」に1回のみ投与し、そして他の方法は、「day -2, 0, 2, 4, 6 」の計5回投与する方法を用いた。また、腸炎を誘起するために、3% DSS を、「day 0, 2, 4, 6 」の4回、飲水させた。その後、7日目にマウスを解剖し、体重変化及び結腸の長さの変化を計測すると共に、表14に示す基準に従って体重減少・便の硬さ・直腸からの下血を評価し、それらのスコアの合計をDAI (Disease Activity Index)として導き出した。これらの結果を、表15に示す。
その結果、(dA)ホモポリマーを付与されたMIFA20は、炎症性因子であるMIFの発現を長期に亘って抑制する作用を介して、腸炎に伴う諸症状の発症を阻害し、また症状の進行を抑制する治療効果を発揮することが示された。
Figure 2007058323
Figure 2007058323
本発明の核酸ホモポリマー結合機能性核酸の製造法は、生理活性を有する核酸に対し、安定性向上効果を簡便に付与できる方法として有用である。この方法によれば、生体内又はその類似環境下で長期に亘り核酸の活性を維持することができ、しかも安全性に優れる核酸ホモポリマー結合機能性核酸を得ることができるため、核酸医薬品や試験用プローブ等として広く利用することができる。

Claims (10)

  1. 機能性核酸と核酸ホモポリマーとで構成され、安定化された機能性核酸として用いられる核酸ホモポリマー結合機能性核酸を製造する方法であって、機能性核酸に核酸ホモポリマーを付加させて核酸ホモポリマー結合機能性核酸を得る核酸ホモポリマー結合機能性核酸の製造法。
  2. 核酸ホモポリマーが、デオキシアデニル酸及び/又はデオキシチミジル酸のホモポリマーである請求項1記載の核酸ホモポリマー結合機能性核酸の製造法。
  3. 核酸ホモポリマーの長さが3mer〜50merである請求の範囲第1項又は第2項記載の核酸ホモポリマー結合機能性核酸の製造法。
  4. 機能性核酸の3’端及び/又は5’端に核酸ホモポリマーを付加させる請求の範囲第1項〜第3項の何れかの項に記載の核酸ホモポリマー結合機能性核酸の製造法。
  5. 機能性核酸が、siRNA、アンチセンス、miRNA 及びアプタマーからなる群から選択される少なくとも一つのオリゴ核酸である請求の範囲第1項〜第4項の何れかの項に記載の核酸ホモポリマー結合機能性核酸の製造法。
  6. 請求の範囲第1項〜第5項の何れかの項に記載の製造法で得られる核酸ホモポリマー結合機能性核酸。
  7. 請求の範囲第6項記載の核酸ホモポリマー結合機能性核酸を有効成分として含む核酸ホモポリマー結合機能性核酸医薬品。
  8. 生体内及び/又は生体内類似環境下における機能性核酸の安定性が向上された請求の範囲第7項記載の核酸ホモポリマー結合機能性核酸医薬品。
  9. 遺伝子治療に用いられる請求の範囲第7項又は第8項記載の核酸ホモポリマー結合機能性核酸医薬品。
  10. 請求の範囲第6項記載の核酸ホモポリマー結合機能性核酸を含むプローブ。
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