JPWO2007046162A1 - 質量分析法に用いられる試料ターゲットおよびその製造方法、並びに当該試料ターゲットを用いた質量分析装置 - Google Patents

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Abstract

マトリックスを用いずに試料のイオン化を可能とする質量分析において、分子量10000を超える高分子量の物質のイオン化が可能となる試料ターゲットおよびその製造方法と、当該試料ターゲットを用いた質量分析装置とを提供する。レーザー光の照射を受ける表面に開口する多数の細孔を有する試料保持面を備え、当該細孔の細孔径が30nm以上5μm未満、且つ、細孔深さ/(細孔周期−細孔径)が2以上50以下であり、上記試料保持面の表面が金属または半導体で被覆されている試料ターゲットを用いる。

Description

本発明は、質量分析法に用いられる試料ターゲットおよびその製造方法、並びに当該試料ターゲットを用いた質量分析装置に関するものであり、特に、マトリックスを用いない場合においても試料のイオン化を可能とする試料ターゲットおよびその製造方法、並びに当該試料ターゲットを用いた質量分析装置とに関するものである。
質量分析法は、試料をイオン化し、試料あるいは試料のフラグメントイオンの質量と電荷の比(以下、m/z値と表記する)を測定し、試料の分子量を調べる分析法である。その中でも、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI:Matrix-assisted laser desorption/ionization mass spectrometry)法は、マトリックスと呼ばれる低分子量の有機化合物と試料とを混合し、さらにレーザーを照射することにより、当該試料をイオン化する方法である。この方法では、マトリックスが吸収したレーザーのエネルギーを試料に伝えることになるので、試料を良好にイオン化することができる。
MALDI法は、熱に不安定な物質や高分子量物質をイオン化することが可能であり、他のイオン化技術と比較しても試料を「ソフトに」イオン化できる。それゆえ、この方法は、生体高分子や、内分泌攪乱物質、合成高分子、金属錯体など様々な物質の質量分析に広く用いられている。
しかしながら、上記MALDI法では、有機化合物のマトリックスを用いるために、当該マトリックスに由来する関連イオンにより、試料イオンの解析が困難となることがある。具体的には、有機化合物のマトリックスを用いると、このマトリックス分子のイオン、マトリックス分子が水素結合で結合したクラスターのイオン、マトリックス分子が分解して生成するフラグメントイオン等のマトリックス関連イオンが観測されるため、試料イオンの解析が困難になる場合が多い。
そこで、従来から、上記マトリックス関連イオンの妨害を避けるための技術が種々提案されている。具体的には、マトリックス関連イオンを生成させないように,マトリックス分子を固定する技術として、例えば、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸やシンナムアミドなどのマトリックスをセファロースのビーズに固定する技術、ターゲットである金の表面に、マトリックスであるメチル−N−(4−メルカプトフェニル−カーバメート)の自己組織化単分子膜を形成する技術、ゾルゲル法により、マトリックスである2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)をシリコンポリマーシート中に固定する技術等が知られている。しかしながら、上記のようにマトリックス分子を固定する方法は、検出感度や耐久性が実用上十分ではないという問題が生ずる。また、検出時には、フラグメントイオンによるノイズを回避できないという問題もある。
そこで、最近では、マトリックスを用いない技術が提案されている。具体的には、多穴性の表面を有する半導体基板(文献中では、porous light-absorbing semiconductor substrateと記載)を試料ターゲットとして用いる技術が開示されている(例えば、特許文献1等参照。)。この試料ターゲットは、半導体基板における試料保持面を、多穴性(porous)構造すなわち微細な凹凸構造となるように加工している。同文献では、このような試料保持面に試料を塗布し、当該試料にレーザー光を照射すると、マトリックスが無くても高分子量の物質がイオン化されると報告している。この方法は、DIOS(Desorption/Ionization on Porous Silicon)法と名付けられている。
また、マトリックスを用いない場合もイオン化を可能とする技術として、本発明者らは、リソグラフィー法により作製したナノメートルないし数十マイクロメートルオーダーの微細で規則的な凹凸構造を有する表面を試料保持面として備えている試料ターゲットや、ナノメートルないし数十マイクロメートルオーダーの微細な凹凸構造を有する表面を金属で被覆した試料保持面を備えている試料ターゲットによれば、従来のマトリックスを用いない技術と比較して、イオン化効率の向上およびより安定なイオン化が可能であることを見出している(例えば特許文献2等参照。)。
さらに、本発明者らは、サブマイクロメートルオーダーの凹凸構造を有する種々の材質からなる表面を試料保持面として備えている試料ターゲットについて検討を行っており、かかる材質の一つとして、ポーラスアルミナを金や白金で被覆した試料保持面を用いる場合にもマトリックスを用いずにイオン化が可能であることを見出している(例えば、非特許文献1等参照。)。
米国特許第6288390号明細書(2001年9月11日公開) 国際公開第2005/083418号パンフレット(2005年9月9日公開) Shoji Okuno, Ryuichi Arakawa, Kazumasa Okamoto, Yoshinori Matsui, Shu Seki, Takahiro Kozawa, Seiichi Tagawa, Yoshinao Wada, Matrix-free laser desorption/ionization of peptides on sub-micrometer structures: Grooves on silicon and metal-coated porous alumina, 53rd ASMS Conference on Mass Spectrometry and Allied Topics, (San Antonio, Texas, USA)、予稿集(2005年4月15日Web上で公開)
しかしながら、従来のマトリックスを用いないレーザー脱離イオン化質量分析では、分子量10000を超える高分子量の物質をイオン化することはできない。
すなわち、特許文献1等に開示されている従来のDIOS法によるレーザー脱離イオン化質量分析は、分子量3000以下の物質のイオン化には有効であるが、分子量が10000を超える物質をイオン化することはできない。
また、特許文献2に開示されているリソグラフィー法により作製した規則的な凹凸構造を有する表面を試料保持面や、微細な凹凸構造を有する表面を金属で被覆した試料保持面を備えている試料ターゲットを用い、マトリックスを用いずにレーザーを照射しても分子量が10000を超える大きい物質のイオン化はできない。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、マトリックスを用いずに試料のイオン化を可能とする質量分析において、分子量10000を超える高分子量の物質のイオン化が可能となる試料ターゲットおよびその製造方法と、当該試料ターゲットを用いた質量分析装置とを提供することにある。
本発明にかかる試料ターゲットは、上記課題を解決するために、レーザー光の照射により試料をイオン化して質量分析するときに、試料を保持するために用いられ、レーザー光の照射を受ける表面に開口する多数の細孔を有する試料保持面を備えている試料ターゲットであって、当該細孔の細孔径が30nm以上5μm未満、且つ、細孔深さ/(細孔周期−細孔径)が2以上50以下であり、上記試料保持面の表面が金属または半導体で被覆されていることを特徴としている。上記試料保持面はポーラスアルミナからなることが好ましい。また、上記金属は、白金(Pt)および金(Au)の少なくとも何れかであることが好ましい。上記半導体は、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム・スズ(ITO)およびカーボンの少なくとも何れかであることが好ましい。
本発明にかかる試料ターゲットは、上記課題を解決するために、レーザー光の照射により試料をイオン化して質量分析するときに、試料を保持するために用いられ、レーザー光の照射を受ける表面側に開口する多数の細孔を有する試料保持面を備えている試料ターゲットであって、上記試料保持面は、ポーラスアルミナを鋳型に用いて該ポーラスアルミナの凹凸構造を転写したネガ型の構造物を作製し、該ネガ型の構造物を鋳型に用いて上記凹凸構造を転写した、上記ポーラスアルミナの凹凸構造と同一の形状の凹凸構造を表面に有する試料保持面であることを特徴としている。
上記試料保持面は金属または半導体からなることが好ましい。また、上記試料保持面の表面は、金属または半導体で被覆されていてもよい。また、上記細孔は、細孔径が30nm以上5μm未満、細孔深さ/(細孔周期−細孔径)が2以上50以下であることが好ましい。また、上記金属は、白金(Pt)および金(Au)の少なくとも何れかであることが好ましい。上記半導体は、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム・スズ(ITO)およびカーボンの少なくとも何れかであることが好ましい。
本発明にかかる試料ターゲットは、上記課題を解決するために、レーザー光の照射により試料をイオン化して質量分析するときに、試料を保持するために用いられ、各凹部および各凸部の間隔が1nm〜10μmであって、凹部の深さが10nm〜10μmの微細な凹凸構造を有する表面を試料保持面として備えている試料ターゲットであって、上記試料保持面の表面が半導体で被覆されていることを特徴としている。上記半導体は、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム・スズ(ITO)およびカーボンの少なくとも何れかであることが好ましい。
本発明にかかる試料ターゲットの製造方法は、上記課題を解決するために、レーザー光の照射により試料をイオン化して質量分析するときに、試料を保持するために用いられ、レーザー光の照射を受ける表面側に開口する多数の細孔を有する試料保持面を備えている試料ターゲットの製造方法であって、ポーラスアルミナを試料保持面として用い、該試料保持面の表面を金属または半導体で被覆する工程を含むことを特徴としている。
本発明にかかる試料ターゲットの製造方法は、上記課題を解決するために、レーザー光の照射により試料をイオン化して質量分析するときに、試料を保持するために用いられ、レーザー光の照射を受ける表面側に開口する多数の細孔を有する試料保持面を備えている試料ターゲットの製造方法であって、ポーラスアルミナを鋳型に用いて該ポーラスアルミナの凹凸構造を転写したネガ型の構造物を作製する工程と、該工程で得られたネガ型の構造物を鋳型に用いて上記凹凸構造を転写して、上記ポーラスアルミナの凹凸構造と同一の形状の凹凸構造を表面に有する試料保持面を得る工程とを含むことを特徴としている。上記試料保持面は、金属または半導体からなることが好ましい。本試料ターゲットの製造方法は、さらに、上記試料保持面の表面を金属または半導体で被覆する工程を含んでいてもよい。上記ポーラスアルミナは、その細孔径が30nm以上5μm未満、細孔深さ/(細孔周期−細孔径)が2以上50以下であることが好ましい。
本発明にかかる質量分析装置は、上記課題を解決するために、試料ターゲットを用いることを特徴としている。本発明にかかる質量分析装置は、測定対象となる試料にレーザー光を照射することによって、当該試料をイオン化してその分子量を測定するレーザー脱離イオン化質量分析装置であることが好ましい。
本発明にかかる試料ターゲットは、以上のように、レーザー光の照射を受ける表面に開口する多数の細孔を有する試料保持面を備え、当該細孔の細孔径が30nm以上5μm未満、且つ、細孔深さ/(細孔周期−細孔径)が2以上50以下であり、上記試料保持面の表面が金属または半導体で被覆されているので、質量分析するときにマトリックスを用いずにイオン化を行う場合でも、分子量が10000を超える物質のイオン化を可能とするという効果を奏する。
上記試料保持面としてポーラスアルミナを用いる場合には、細孔径が30nm以上5μm未満、且つ、細孔深さ/(細孔周期−細孔径)が2以上50以下で、規則的な細孔構造を容易に作製することが可能となる。また、陽極酸化の条件を選択することにより、細孔径、細孔深さ、および細孔周期を制御することが可能になる。
また、本発明にかかる質量分析装置は、以上のように、上記試料ターゲットを備えているので、質量分析するときにマトリックスを用いずにイオン化を行う場合でも、分子量が10000を超える物質のイオン化を可能とするという効果を奏する。
本発明にかかる試料ターゲットは、以上のように、ポーラスアルミナを鋳型に用いて該ポーラスアルミナの凹凸構造を転写したネガ型の構造物を作製し、該ネガ型の構造物を鋳型に用いて上記凹凸構造を転写した、上記ポーラスアルミナの凹凸構造と同一の形状の凹凸構造を表面に有する試料保持面を備えているので、試料保持面に適した凹凸構造を有するポーラスアルミナと同一の構造を有する試料保持面を、所望の材質で製造することができるという効果を奏する。かかる試料保持面を金属または半導体で製造する場合には、質量分析するときにマトリックスを用いずにイオン化を行う場合でも、イオン化性能が向上するという効果を奏する。また、かかる試料保持面が導電性を有さない材質からなる場合も、その表面が、金属または半導体で被覆されている場合は、イオン化性能が向上するという効果を奏する。さらに、かかる試料保持面の細孔の、細孔径が30nm以上5μm未満、細孔深さ/(細孔周期−細孔径)が2以上50以下である場合は、分子量が大きな物質のイオン化が可能となる。
本発明にかかる試料ターゲットは、以上のように、各凹部または各凸部の間隔が1nm〜10μmであって、凹部の深さが10nm〜10μmの微細な凹凸構造を有する表面を試料保持面として備えている試料ターゲットであって、上記試料保持面の表面が半導体で被覆されているので、質量分析するときにマトリックスを用いずにイオン化を行う場合でも、イオン化効率が向上するという効果を奏する。本発明にかかる質量分析装置は、以上のように、上記試料ターゲットを備えているので、質量分析するときにマトリックスを用いずにイオン化を行う場合でも、イオン化効率が向上するという効果を奏する。
本発明にかかる試料ターゲットの製造方法は、以上のように、アルミニウムまたはその合金を陽極酸化してポーラスアルミナを試料保持面として得る工程と、得られた試料保持面の表面を金属または半導体で被覆する工程とを含むので、試料保持面に適した規則的な細孔構造を容易に作製することが可能となる。また、陽極酸化の条件を選択することにより、細孔径、細孔深さ、および細孔周期を制御することが可能になる。
本発明にかかる試料ターゲットの製造方法は、以上のように、ポーラスアルミナを鋳型に用いて該ポーラスアルミナの凹凸構造を転写したネガ型の構造物を作製する工程と、該工程で得られたネガ型の構造物を鋳型に用いて上記凹凸構造を転写して、上記ポーラスアルミナの凹凸構造と同一の形状の凹凸構造を表面に有する試料保持面を得る工程とを含むので、試料保持面に適した凹凸構造を有するポーラスアルミナと同一の構造を有する試料保持面を、所望の材質で製造することができるという効果を奏する。
本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
図1(a)は、本発明にかかる試料ターゲットを示す模式図であって、試料ターゲットの一部の斜視図である。 図1(b)は、本発明にかかる試料ターゲットを示す模式図であって、図1(a)に示す試料ターゲットを破線Bで切断した場合の断面図である。 図2は、従来技術を示すものであり、規則的なポーラスアルミナを模式的に示す断面図である。
符号の説明
101 ポーラスアルミナの層
102 アルミニウム(またはその合金)の層
103 バリアー層
本発明について以下に詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、従来の微細で規則的な凹凸構造を有する表面を試料保持面として備えている試料ターゲットでは分子量が大きい物質のイオン化ができないのに対し、ポーラスアルミナを試料保持面として用いた試料ターゲットでは分子量10000を超える大きな物質がイオン化できることを見出した。そして、従来の試料保持面では凹部が浅く形成されていたのに対し、ポーラスアルミナは、凹部が深く形成されることから、凹部の深さがイオン化可能な分子量の大きさと関係しているのではないかと考え、凹部の深さや間隔を変化させて検討を行った。その結果、実際に、マトリックスを用いずにイオン化を行う場合でも分子量が大きい物質のイオン化を可能とするためには、試料保持面の凹凸構造における、凹部の深さと隣り合う凹部の間隔との比率が関係していることを初めて見出し本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明にかかる試料ターゲット(A)は、レーザー光の照射により試料をイオン化して質量分析するときに、試料を保持するために用いられ、レーザー光の照射を受ける表面に開口する多数の細孔を有する試料保持面を備えている試料ターゲットであって、当該細孔の細孔径が30nm以上5μm未満、且つ、細孔深さ/(細孔周期−細孔径)が2以上50以下であり、上記試料保持面の表面が金属または半導体で被覆されている。
なお、上述したように、特許文献1等に開示されている、マトリックスを用いないレーザー脱離イオン化質量分析では、分子量10000を超える高分子量の物質をイオン化できない。この大きな原因は、高分子量物質をイオン化するために照射するレーザーのエネルギーを大きくすると、ポーラスシリコンの微細構造が破壊されることである。ポーラスシリコンの構造が破壊されやすいのはシリコンという素材の影響だけでなく、ポーラスシリコンの凹部凸部の構造制御が困難であるために構造的に強度が弱いことが原因であると考えられる。
また、近年、ナノテクノロジーの分野において、DNAチップ、半導体のデバイス、化学反応のための微小な容器などを作製するために、1nmから数十μmの単位で作製された微細構造体を鋳型に用いて、その構造を別の物質に転写する「インプリント」法により新たな微細構造体を作製する技術が開発されている。
そこで、本願発明者らは、この「インプリント」技術に着目し、ポーラスアルミナを鋳型にして転写することで、レーザー脱離イオン化質量分析に用いる試料ターゲットの表面加工に利用できないかと考えた。ポーラスアルミナを鋳型に用いてインプリント法により加工すれば、従来法によるポーラスシリコンやリソグラフィー法で作製した微細構造に比べて高アスペクト比の数nm〜数十μm単位の微細構造をより安定して高精度に加工することができる。それゆえ、実際にかかる微細加工技術を利用すれば、試料保持面の表面に規則的な凹凸形状を安定して作製することが可能になる。また、転写する材料に金属あるいは半導体を用いるか、もしくは転写した微細構造表面に金属あるいは半導体を被覆することで、良好な品質の試料ターゲットを安定して生産することが可能になることを見出した。
したがって本発明には、かかるポーラスアルミナを鋳型に用いてインプリント法により転写して作製した微細構造表面を持つ試料ターゲットも含まれる。すなわち、本発明には、レーザー光の照射により試料をイオン化して質量分析するときに、試料を保持するために用いられ、レーザー光の照射を受ける表面側に開口する多数の細孔を有する試料保持面を備え、上記試料保持面は、ポーラスアルミナを鋳型に用いて該ポーラスアルミナの凹凸構造を転写したネガ型の構造物を作製し、該ネガ型の構造物を鋳型に用いて上記凹凸構造を転写した、上記ポーラスアルミナの凹凸構造と同一の形状の凹凸構造を表面に有する試料ターゲット(B)も含まれる。
また、本発明には、レーザー光の照射により試料をイオン化して質量分析するときに、試料を保持するために用いられ、各凹部または各凸部の間隔が1nm〜10μmであって、凹部の深さが10nm〜10μmの微細な凹凸構造を有する表面を試料保持面として備え、上記試料保持面の表面が半導体で被覆されている試料ターゲット(C)も含まれる。
なお、従来のDIOS法等、マトリックスを用いないレーザー脱離イオン化質量分析についてはそのイオン化メカニズムは不詳であり、本発明にかかる試料ターゲットについても、そのイオン化メカニズムは明らかではないが、ともに、ナノ構造を有していることから、光照射によるナノ構造面における局所的電磁場の発生が基本にあると考えられる。そして、平面に比べて多孔構造による試料保持面の大幅な拡大も役立っていると考えられる。また、イオン化に必要なプロトンは、試料溶媒の水あるいは酸が多孔中に保持されており、そこから発生するものと考えられる。
そして、DIOS法と異なり、本発明にかかる試料ターゲットにおいて、分子量が10000を超える分子(例えばタンパク質)のイオン化が可能であるという性能についても、その理由は明らかではないが、以下のような理由が可能性として考えられる。すなわち、DIOS法によるイオン化においても、本発明にかかる試料ターゲットを用いるイオン化においても、イオン化に必要なレーザー強度は試料分子の大きさに比例する。従って、大きな分子のイオン化には強いレーザーを試料面に照射することが必要となるが、DIOS法においては、試料保持面がそのようなレーザー強度に耐えられず、ナノ構造が破壊されるために、もはやイオン化の性能は出なくなると考えられる。これに対して本発明の試料ターゲットにおいては、レーザー強度に対して十分な構造耐性を有しているので、イオン化が可能になるものと考えられる。
以下、本発明にかかる試料ターゲットおよびその製造方法、並びに当該試料ターゲットを用いた質量分析装置について、(I)試料ターゲット(A)、(II)試料ターゲット(B)、(III)試料ターゲット(C)、(IV)本発明の利用(質量分析装置)の順に説明する。
(I)試料ターゲット(A)
(I−1)試料ターゲット(A)
本発明にかかる試料ターゲットは、レーザー光の照射によって試料をイオン化して質量分析するレーザー脱離イオン化質量分析装置に用いられ、分析対象となる試料を載せる言わば試料台としての機能を果たすものである。
かかる上記試料ターゲットは、試料を保持する面である試料保持面を備えていればよく、試料保持面以外の部分の構成、形状、材質等は特に限定されるものではない。
上記試料ターゲットの材質としては、例えば、半導体、金属、合成高分子などの樹脂、セラミックス、これらの各材質を複数種含んでなる複合体等を挙げることができる。かかる複合体としては、具体的には、例えば、金属層の表面に半導体の被膜が施された多層構造体、樹脂層の表面に半導体の被膜が施された多層構造体、セラミックスの表面に半導体の被膜が施された多層構造体等を挙げることができるが複合体はこれらに限定されるものではない。
本発明にかかる試料ターゲットの、上記試料保持面は、分析対象である試料を保持する面で、試料を保持した状態で、レーザー光の照射を受ける。
本発明にかかる試料ターゲットは、レーザー光の照射を受ける表面に開口する多数の細孔を有する試料保持面を備えている。かかる細孔は試料保持面の表面に開口し、試料保持面の厚さ方向に延びている。細孔の配列、形状、および試料保持面との角度は、規則的であっても不規則であってもよいが、質量分析用の試料ターゲットとしての機能をより向上させるためには、これらが規則的であることがより好ましい。
本発明にかかる試料ターゲットの試料保持面の一例を図1(a)および図1(b)に模式的に示す。なお、図1(a)および図1(b)は、金属または半導体により被覆される前の試料保持面である。図1(a)は試料ターゲットの試料保持面の一部を示す斜視図、図1(b)は図1(a)における破線Bで切断した切断面を示す試料保持面の断面図である。図1(a)および図1(b)に示す試料保持面は、細孔の配列、形状、および試料保持面との角度が規則的な場合の試料保持面を示すものである。上記試料保持面は、試料保持面の表面でありレーザー光の照射を受ける面、すなわち図1(a)の上面に開口する多数の細孔を有している。この細孔は図1(b)に示すように、試料保持面の表面から試料保持面の厚さ方向に延び、底部を有している。
また、細孔を試料保持面と平行な面で切断したときの断面の形状は、特に限定されるものではなく、円形であってもよいし、楕円形であってもよいし、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形であってもよいし、これらが多少変形した形状であってもよい。また、かかる断面の形状は、規則的であっても不規則であってもよい。すなわち、単一の形状が試料保持面のすべての部分を占める必要はない。しかし、質量分析用の試料ターゲットとしての機能をより向上させるためには、かかる断面の形状は、規則的、すなわち同一の形状であることが好ましい。また、質量分析用の試料ターゲットとしての機能をより向上させるためには、かかる断面の形状は、細孔の開口部から底部にわたり一定であることが好ましいが、多少変形していてもよい。
また、上記細孔は、試料保持面の表面から厚さ方向に延びていればよく、細孔は試料保持面の表面に対して垂直であることが好ましいが、多少斜度を有していてもかまわない。また、細孔と試料保持面の表面との角度は、細孔ごとに異なっていてもよいが、規則的であることが好ましい。すなわち、それぞれの細孔は同じ方向に延びていることが好ましい。これにより試料ターゲットとしての機能をより向上させることができるので好ましい。また、細孔は、開口部から底部にかけて、直線状に延びていることが好ましい。細孔が直線状でない場合には細孔内部までレーザー光が入り込まないためにイオン化の効率がよくないため好ましくない。
また、上記細孔は、細孔径が30nm以上5μm未満であって、且つ、細孔深さ/(細孔周期−細孔径)が2以上50以下であることが好ましい。これにより、分子量10000以上の物質のイオン化が可能となる。ここで、細孔径とは、細孔を試料保持面に平行な面で切断した断面における最も寸法の大きい方向の寸法をいい球形の場合はその直径をいい、図1(b)中Dで示す部分の大きさのことを意味する。また、細孔深さとは、細孔の開口部から底部までの長さをいい、図1(b)中Eで示す部分の大きさのことを意味する。また、細孔周期とは、隣接する細孔の中心間の間隔をいい、図1(b)中Cで示す部分の大きさのことを意味する。なお、図1(b)中、一点鎖線は細孔の中心線である。細孔径、細孔深さおよび細孔周期が均一でない場合には、平均値を用いてこれらの値とする。なお、図1(b)に示す断面図は、Dが最も大きくなるような断面で切断する断面図である。たとえば、細孔を試料保持面に平行な面で切断した断面が円形である場合には、直径を含む面で切断した断面図である。
上記細孔周期および細孔径は、1nm〜数十μm程度であればよいが、質量分析用の試料ターゲットとしての機能をより向上させるためには、上記細孔周期は、30nm以上5μm未満であることがより好ましく、31nm以上1μmであることがさらに好ましく、33nm〜500nmであることが特に好ましく、34nm〜300nmであることが最も好ましい。また、上記細孔径は、30nm以上5μm未満であることがより好ましく、40nm以上1μmであることがさらに好ましく、45nm〜700nmであることが特に好ましく、50nm〜500nmであることが最も好ましい。これにより、質量分析における測定試料のイオン化を良好に行うことができる。
また、上記細孔周期および細孔径は、規則的であっても不規則であってもよい。しかしながら、質量分析用の試料ターゲットとしての機能をより向上させるためには、規則的であることが好ましい。すなわち、細孔周期および細孔径が均一であることが好ましい。上記細孔周期および細孔径が規則正しい場合には、試料保持面の凹凸のばらつきが少ないため、イオン化性能はより安定する。
また、細孔深さは30nm以上5μm未満程度であればよい。しかしながら、質量分析用の試料ターゲットとしての機能をより向上させるためには、30nm〜2μmであることがより好ましく、50nm〜1.5μmであることがさらに好ましく、70nm〜1μmであることが特に好ましく、100nm〜1μmであることが最も好ましい。また、上記細孔深さは規則的であっても不規則であってもよい。すなわち、細孔深さにはばらつきがあってもよいし、均一であってもよい。しかしながら、質量分析用の試料ターゲットとしての機能をより向上させるためには、上記細孔深さは均一であることが好ましい。上記細孔深さは均一である場合には、試料保持面の凹凸のばらつきが少ないため、イオン化性能はより安定する。
また、細孔深さ/(細孔周期−細孔径)は、2〜50となっていることが好ましく、2.5〜45となっていることがより好ましく、3〜35となっていることがさらに好ましく、3.5〜30となっていることが特に好ましく、4〜25となっていることが最も好ましい。これにより、質量分析において、マトリックスを用いない場合でも、分子量が10000を超える物質のイオン化を良好に行うことができる。
細孔深さ/(細孔周期−細孔径)の値が50を超えて大きすぎる場合、凸部分の構造が弱いために構造が破壊されやすく、また、細孔内部までレーザー光が入り込まないためにイオン化ができない。また、細孔深さ/(細孔周期−細孔径)の値が2未満で小さい場合にはイオン化効率が悪いために高分子量の物質をイオン化できない。
なお、細孔が不規則な構造の場合、細孔深さ/(細孔周期−細孔径)の値は、細孔が配列する部分(ポーラス部分)全体の平均の値とする。部分的な大きな欠陥については考慮せずに細孔深さ/(細孔周期−細孔径)の値を求める。
また、本発明の試料ターゲットでは、上記試料保持面の表面は金属または半導体で被覆されている。これにより、イオン化の性能を向上させ、マトリックスを用いない場合にも、高分子量の物質をイオン化することが可能となる。
上記試料保持面を被覆する金属としては、具体的には、例えば、元素周期表の1A族(Li,Na,K,Rb,Cs,Fr)、2A族(Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Ra)、3A族(Sc,Y)、4A族(Ti,Zr,Hf)、5A族(V,Nb,Ta)、6A族(Cr,Mo,W)、7A族(Mn,Tc,Re)、8族(Fe,Ru,Os,Co,Rh,Ir,Ni,Pd,Pt)、1B族(Cu,Ag,Au)、2B族(Zn,Cd,Hg)、3B族(Al)、およびランタノイド系列(La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu)、アクチノイド系列(Ac,Th,Pa,U,Np,Pu,Am,Cm,Bk,Cf,Es,Fm,Md,No,Lr)等を挙げることができる。なかでも、上記金属はAu又はPtであることがさらに好ましい。AuやPtは酸化されにくいため、イオン化の効率を向上させることができるのみならず、多数の細孔を有する上記試料保持面の酸化を防止することが可能となる。また、上記金属は、上記金属から選ばれる単一金属であってもよいし、上記金属から選ばれる少なくとも2種以上からなる合金であってもよい。ここで合金とは、2種以上の金属が混合されている金属であればよく、混合された2種以上の上記金属の存在形態は特に限定されるものではない。混合された2種以上の上記金属の存在形態としては、例えば、固溶体、金属間化合物、固溶体及び金属間化合物が混在した状態等を挙げることができる。
また、上記試料保持面の表面は、上記金属から選ばれる複数の金属からそれぞれ形成される複数の層として被覆されているものであってもよい。
また、上記試料保持面を被覆する半導体としては、特に限定されるものではなくどのようなものであってもよい。具体的には、例えば、Si、Ge、SiC、GaP、GaAs、InP、Si1−XGe(0<X<1)、SnO、ZnO、Inやその混合物、カーボン等を挙げることができる。なかでも、上記半導体は、SnO、ZnO、In、SnOとInの混合物であるITO等であることがより好ましい。これらの物質はもともと酸化物であり、これ以上酸化されないため、空気中に放置してもイオン化の性能が下がることはない。また、カーボンはその原子の結合状態によって物性は異なるが、ここでは半導体として分類する。カーボンも空気中では酸化されにくいために、空気中に放置してもイオン化の性能が下がることはない。
また、上記試料保持面の表面は、上記半導体と上記金属とから選ばれる少なくとも2種以上からなる混合物で被覆されていることが好ましい。
被覆されている上記金属および/または上記半導体の厚みは、試料保持面の多数の細孔からなる凹凸構造を損なうものでなければ特に限定されるものではない。具体的には、例えば、1nm以上200nm以下であることが好ましい。上記金属および/または半導体の厚みがこの上限を超えないことにより、試料保持面の凹凸構造が損なわれず、下限より大きいことにより、効率的なイオン化が可能となる。さらに、上記金属および/または半導体の厚みは、1nm以上150nm以下であることがより好ましく、5nm以上100nm以下であることがさらに好ましく、10nm以上80nm以下であることが特に好ましく、20nm以上、75nm以下であることが最も好ましい。これにより、より効率的なイオン化が可能となる。
試料保持面の材質は、上記形状を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、合成高分子などの樹脂、セラミックス等を挙げることができる。導電性を有しない材質であっても金属および/または半導体で被覆することによりイオン化の効率を向上させることができる。
上記合成高分子としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリシロキサン、ポリスタノキサン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリウレタン、ポリエチルエーテルケトン、ポリ4−フッ化エチレンおよびこれらの共重合体や混合物やグラフトポリマーおよびブロックポリマーが挙げられる。
また、上記セラミックスとしては、アルミナ(酸化アルミニウム)、マグネシア、ベリリア、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、酸化ウラン、酸化トリウム、シリカ(石英)、ホルステライト、ステアタイト、ワラステナイト、ジルコン、ムライト、コージライト/コージェライト、スポジュメン、チタン酸アルミニウム、スピネルアパタイト、チタン酸バリウム、フェライト、ニオプ酸リチウム、窒化ケイ素(シリコンナイトライド)、サイアロン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素(シリコンカーバイド)、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステン、ホウ化ランタン、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、硫化カドミウム、硫化モリブデン、ケイ化モリブデン、ダイヤモンド、単結晶サファイアなどが挙げられる。
また、上記試料保持面の材質は、金属または半導体であってもよい。かかる場合は、試料保持面をさらに、金属および/または半導体で被覆されていることは必須ではない。試料保持面の材質として用いられる金属および半導体としては、上述した、試料保持面を被覆する金属、半導体と同様である。
上記試料保持面の材質としては、例えば、ポーラスアルミナを好適に用いることができる。ポーラスアルミナとは、アルミニウムまたはその合金を電解液中で陽極酸化することにより、表面に形成される、微細な細孔を多数有する酸化皮膜のことをいう。陽極酸化の条件を制御することにより細孔が広範囲にわたって規則的に配列した規則的なポーラスアルミナを製造することができる。このようにして得られる規則的なポーラスアルミナは、例えば、図2に示すように、アルミニウム(またはその合金)の層102上に、バリアー層103を介して、多数の細孔が一方向に配列したポーラスアルミナの層101が形成されている。なお、図2ではバリアー層が存在するが、バリアー層は除去されていてもよい。
このようにポーラスアルミナは、規則的な凹凸構造を有し、また、細孔深さ/(細孔周期−細孔径)が大きな構造を得ることができることから、本発明の試料ターゲットに好適に用いることができる。さらにポーラスアルミナは、陽極酸化の条件を変化させることによって、細孔径、細孔深さ、および細孔周期を制御することが可能であることから、本発明に好適に用いることができる。
規則的な細孔構造を有するポーラスアルミナは、例えば、H. Masuda and M. Satoh, Jpn. J Appl. Phys., 35, pp. L126 (1996) に開示されている、2段階に分けて陽極酸化を行う方法、特開平10−121292号公報に開示されている、複数の突起を備えた基板を陽極酸化するアルミニウム板表面におしつけて、所望の細孔周期や配列の窪みを形成した後、当該アルミニウム板を陽極酸化する方法等、従来公知の方法により得ることができる。
(I−2)試料ターゲット(A)の製造方法
試料ターゲット(A)の製造方法は、上述した多数の細孔を有する試料保持面を有する試料ターゲットを製造できる方法であれば特に限定されるものではなく、陽極酸化による方法、リソグラフィー法など微細構造を加工する従来公知の方法を好適に用いることができる。中でも、例えば、ポーラスアルミナを試料保持面として用い、これを金属および/または半導体で被覆して上記試料ターゲットを得る方法(製法例1)、ポーラスアルミナを鋳型として用い、鋳型として用いたポーラスアルミナと同一の細孔構造を有する他の材質からなる試料保持面を製造し、得られた試料保持面を必要に応じて金属および/または半導体で被覆する方法(製法例2)等を好適に用いることができる。なお、試料ターゲット(A)を製造するためには、製法例1および製法例2において、ポーラスアルミナとして、その細孔径が30nm以上5μm未満、細孔深さ/(細孔周期−細孔径)が2以上50以下であるものを用いる。これにより、質量分析により、マトリックスを用いない場合にも、分子量が10000を超える物質のイオン化が可能となる。
製造方法1によれば、細孔径が30nm以上5μm未満、且つ、細孔深さ/(細孔周期−細孔径)が2以上50以下で、規則的な細孔構造を容易に作製することが可能となる。また、陽極酸化の条件を選択することにより、細孔径、細孔深さ、および細孔周期を制御することが可能になる。また、製造方法2によれば、製造方法1と同様の効果が得られるだけでなく、さらに、試料保持面に適した凹凸構造を有するポーラスアルミナと同一の構造を有する試料保持面を、所望の材質で製造することができる。したがって、これらの製造方法も本発明に含まれる。
なお、製法例2として、ポーラスアルミナを鋳型として用いる方法を挙げたが、鋳型として用いられるのは、陽極酸化により得られるポーラスアルミナに限定されるものではなく、もちろん、他の方法により作製された、微細な凹凸面を有する構造体を用いてもかまわない。かかる場合も、試料ターゲット(A)を製造するためには、鋳型として用いられる構造体は、表面に開口する多数の細孔を有し、その細孔径が30nm以上5μm未満、細孔深さ/(細孔周期−細孔径)が2以上50以下であるものを用いる。
<製法例1>
本製法例は、レーザー光の照射により試料をイオン化して質量分析するときに、試料を保持するために用いられ、レーザー光の照射を受ける表面側に開口する多数の細孔を有する試料保持面を備えている試料ターゲットの製造方法であって、ポーラスアルミナを試料保持面として用い、該試料保持面の表面を金属または半導体で被覆する工程を含んでいればよい。
ここで、ポーラスアルミナは、アルミニウムまたはその合金を陽極酸化することにより製造してもよいし、市販されているポーラスアルミナを用いてもよい。
ポーラスアルミナを製造する方法は、特に限定されるものではなくどのような方法を用いてもよい。また、従来公知の方法を好適に用いることができる。一般的には、アルミニウムまたはその合金を好ましくは研磨し、これを電解液中で陽極酸化すればよい。上記電解液は酸性であってもアルカリ性であってもよいが、例えば、硫酸、シュウ酸、リン酸等であることが好ましい。また所望の細孔径、細孔深さおよび細孔周期を有する試料保持面を得るために、陽極酸化電圧、陽極酸化時間、電解液の種類や濃度、温度条件等を適宜選択すればよい。また、陽極酸化前にアルミニウムやその合金を研磨する方法も特に限定されるものではなく、例えば、過塩素酸とエタノールとの混合液、リン酸と硫酸との混合溶液中等で電解研磨処理する方法、機械的に表面研磨処理する方法等を挙げることができる。また、陽極酸化により得られたポーラスアルミナは、リン酸水溶液、硫酸水溶液等を用いたエッチング処理等により、細孔径を拡大処理してもよい。
また、規則的なポーラスアルミナを製造するためには、上述したように、例えば、H. Masuda and M. Satoh, Jpn. J Appl. Phys., 35, pp. L126 (1996) に開示されている、2段階に分けて陽極酸化を行う方法、特開平10−121292号公報に開示されている、複数の突起を備えた基板(モールド)を陽極酸化するアルミニウム板表面におしつけて、所望の細孔周期や配列の窪みを形成した後、当該アルミニウム板を陽極酸化する方法等を好適に用いることができる。
試料保持面の表面を金属または半導体で被覆する工程は、ポーラスアルミナからなる試料保持面の表面を、上記(I−1)に記載の金属または半導体で、上述した厚みで被覆する工程であれば特に限定されるものではない。上記試料保持面の表面を金属または半導体で被覆する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を好適に用いることができる。かかる方法としては、例えば、スパッタ法、化学気相成長法(CVD)、真空蒸着法、無電解メッキ法、電解メッキ法、塗布法、貴金属ワニス法、有機金属薄膜法、ゾルゲル法等を挙げることができる。これらの方法は、金属又は半導体の種類、被覆する層の厚み、被覆する試料保持面の状態等により、適宜選択して用いればよい。金属または半導体を試料保持面により強く被覆できる方法が好ましい。
<製法例2>
本製法例は、レーザー光の照射により試料をイオン化して質量分析するときに、試料を保持するために用いられ、レーザー光の照射を受ける表面側に開口する多数の細孔を有する試料保持面を備えている試料ターゲットの製造方法であって、ポーラスアルミナを鋳型に用いて該ポーラスアルミナの凹凸構造を転写したネガ型の構造物を作製する工程と、該工程で得られたネガ型の構造物を鋳型に用いて上記凹凸構造を転写して、上記ポーラスアルミナの凹凸構造と同一の形状の凹凸構造を表面に有する試料保持面を得る工程とを含む方法であれば特に限定されるものではない。
かかる方法としては、微細構造体を鋳型に用いて、その構造を別の物質に転写する「インプリント」法であれば、特に限定されるものではなくどのような方法を用いてもよい。近年、ナノテクノロジーの分野において、DNAチップ、半導体のデバイス、化学反応のための微小な容器などを作製するために、1nmから数十μmの単位で作製された微細構造体を鋳型に用いて、その構造を別の物質に転写する「インプリント」法が種々開発されており、これらの従来公知の方法を好適に用いることができる。
かかるインプリント法としては、例えばK. Nishio, M. Nakano, and A. Yokoo, Jpn. J. Appl. Phys., 42, p.L83-L85 (2003) に記載の方法を挙げることができる。この方法では、ポーラスアルミナ表面に、薄い金属層を形成する。この薄い金属層は後に金属の電解析出において電極として用いられる。次に、単量体と重合開始剤とをポーラスアルミナの細孔に充填し、単量体を重合させて重合体を生成させる。続いて、アルミニウムとアルミナを溶解除去して、金属層と重合体とからなるポーラスアルミナの凹凸構造を転写したネガ型の構造物を得る。得られたネガ型の構造物を鋳型にして、金属層を電極に電解析出を行う。その後、重合体を溶解除去して、上記金属からなる上記ポーラスアルミナの凹凸構造と同一の形状の凹凸構造を表面に有する試料保持面を得る。
かかる方法において、ポーラスアルミナの凹凸構造を鋳型にして転写して作製する試料保持面に用いられる金属としては、例えば、元素周期表の1A族(Li,Na,K,Rb,Cs,Fr)、2A族(Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Ra)、3A族(Sc,Y)、4A族(Ti,Zr,Hf)、5A族(V,Nb,Ta)、6A族(Cr,Mo,W)、7A族(Mn,Tc,Re)、8族(Fe,Ru,Os,Co,Rh,Ir,Ni,Pd,Pt)、1B族(Cu,Ag,Au)、2B族(Zn,Cd,Hg)、3B族(Al)、およびランタノイド系列(La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu)、アクチノイド系列(Ac,Th,Pa,U,Np,Pu,Am,Cm,Bk,Cf,Es,Fm,Md,No,Lr)が挙げられる。
また、ポーラスアルミナ表面に、薄い金属層を形成する方法としては、特に限定されるものではなく、スパッタ法、化学気相成長法(CVD)、真空蒸着法、無電解メッキ法、電解メッキ法、塗布法、貴金属ワニス法、有機金属薄膜法、ゾルゲル法等を挙げることができる。上記金属層の厚みも特に限定されるものではないが、例えば、5nm〜100nmであることが好ましく、10nm〜50nmであることがより好ましい。
また、上記単量体としては、例えば、メタアクリル酸メチル、アクリル酸メチル等のアクリル系単量体等を用いることができる。重合開始剤も特に限定されるものではなく、過酸化ベンゾイル等の従来公知の重合開始剤を用いればよい。アルミニウムおよびアルミナの溶解除去に用いられる溶剤としては、アルミニウム及びアルミナを溶解し、重合体を溶解しない溶剤であれば、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等を挙げることができる。また、重合体の溶解除去に用いられる溶剤としては、重合体を溶解し、金属を溶解しない溶剤であれば、特に限定されるものではないが、例えば、アセトン、クロロホルム等を挙げることができる。
上述したインプリント法では、金属にポーラスアルミナの凹凸構造を転写する方法を示したが、インプリント法によりポーラスアルミナの凹凸構造を転写して作製する試料保持面の材質は、金属に限定されるものでなく、例えば、半導体、合成高分子などの樹脂、セラミックス等であってもよい。試料保持面の材質が半導体であるときは、金属で被覆しない場合にもイオン化効率に優れる。また、合成高分子などの樹脂、セラミックス等の導電性を有しない材質であっても金属又は半導体で被覆することによりイオン化の効率を向上させることができる。半導体、高分子、セラミックス等に凹凸構造を転写する方法としても特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いればよいが、例えば、半導体であるTiOに構造転写を行うH. Masuda, K. Nishio and N. Baba, Jpn. J. Appl. Phys., 31, L1775 (1992) に記載の方法等を好適に用いることができる。
なお、ポーラスアルミナの凹凸構造を鋳型にして転写して作製する試料保持面に用いられる半導体は、特に限定されるものではなくどのようなものであってもよい。例えば、Si、Ge、SiC、GaP、GaAs、InP、Si1−XGe(0<X<1)、SnO、TiO、In、カーボン類が挙げられる。
また、合成高分子などの樹脂、セラミックスとしては、上記(I−1)に記載のものと同様の合成高分子、セラミックスを好適に用いることができる。
インプリント法によりポーラスアルミナの凹凸構造を転写して作製する試料保持面の材質が合成高分子などの樹脂、セラミックスである場合には、本製造方法は、さらに、上記試料保持面の表面を金属または半導体で被覆する工程を含んでいることが好ましい。
試料保持面の表面を金属または半導体で被覆する工程は、インプリント法によりポーラスアルミナの凹凸構造を転写して作製した試料保持面の表面を、上記(I−1)に記載の金属または半導体で、上述した厚みで被覆する工程であれば特に限定されるものではない。上記試料保持面の表面を金属または半導体で被覆する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を好適に用いることができる。かかる方法としては、例えば、スパッタ法、化学気相成長法(CVD)、真空蒸着法、無電解メッキ法、電解メッキ法、塗布法、貴金属ワニス法、有機金属薄膜法、ゾルゲル法等を挙げることができる。これらの方法は、金属又は半導体の種類、被覆する層の厚み、被覆する試料保持面の状態等により、適宜選択して用いればよい。金属または半導体を試料保持面により強く被覆できる方法が好ましい。
(II)試料ターゲット(B)
(II−1)試料ターゲット(B)
本発明にかかる試料ターゲット(B)は、レーザー光の照射により試料をイオン化して質量分析するときに、試料を保持するために用いられ、レーザー光の照射を受ける表面側に開口する多数の細孔を有する試料保持面を備えている試料ターゲットであって、上記試料保持面は、ポーラスアルミナを鋳型に用いて該ポーラスアルミナの凹凸構造を転写したネガ型の構造物を作製し、該ネガ型の構造物を鋳型に用いて上記凹凸構造を転写した、上記ポーラスアルミナの凹凸構造と同一の形状の凹凸構造を表面に有する試料保持面であればよい。
ここで、試料ターゲット、試料保持面については上記(I―1)で説明したとおりである。
試料ターゲット(B)は、レーザー光の照射を受ける表面に開口する多数の細孔を有する試料保持面を備えている。かかる細孔は試料保持面の表面に開口し、試料保持面の厚さ方向に延びている。細孔の配列、形状、および試料保持面との角度は、規則的であっても不規則であってもよいが、質量分析用の試料ターゲットとしての機能をより向上させるためには、これらが規則的であることがより好ましい。
試料ターゲット(B)は、その上記試料保持面が、ポーラスアルミナを鋳型に用いて該ポーラスアルミナの凹凸構造を転写したネガ型の構造物を作製し、該ネガ型の構造物を鋳型に用いて上記凹凸構造を転写した、上記ポーラスアルミナの凹凸構造と同一の形状の凹凸構造を表面に有する試料保持面であればよい。ここで、ポーラスアルミナについても、上記(I−1)で説明したとおりであり、アルミニウムまたはその合金を電解液中で陽極酸化することにより、表面に形成される、微細な細孔を多数有する酸化皮膜であればよい。したがって、細孔径、細孔深さ、および細孔周期も、ポーラスアルミナが通常有する大きさであればよく、特に限定されるものではない。質量分析用の試料ターゲットとしての機能をより向上させるためには、上記細孔は、規則的であることがより好ましく、細孔径が30nm以上5μm未満、細孔深さ/(細孔周期−細孔径)が2以上50以下であることがより好ましい。これにより、質量分析したときに、マトリックスを用いない場合にも、分子量が10000を超える物質をイオン化することが可能となる。
また、ポーラスアルミナを鋳型に用いて該ポーラスアルミナの凹凸構造を転写したネガ型の構造物を作製し、該ネガ型の構造物を鋳型に用いて上記凹凸構造を転写した、上記ポーラスアルミナの凹凸構造と同一の形状の凹凸構造を表面に有する試料保持面は、上記(I−2)の製法例2に記載の方法によりネガ型の構造物を作製し、該ネガ型の構造物を鋳型に用いて上記凹凸構造を転写した上記ポーラスアルミナの凹凸構造と同一の形状の凹凸構造を表面に有する試料保持面であればよい。上記ポーラスアルミナの凹凸構造と同一の形状の凹凸構造を表面に有する試料保持面の材質も、製法例2と同様に、金属または半導体からなるものであってもよいし、合成高分子などの樹脂、セラミックス等であってもよい。試料保持面の材質が半導体であるときは、金属で被覆しない場合にもイオン化効率に優れる。また、合成高分子などの樹脂、セラミックス等の導電性を有しない材質であっても金属又は半導体で被覆することによりイオン化の効率を向上させることができる。
上記金属、半導体、合成高分子などの樹脂、セラミックスについては上記(I−2)の製法例2で説明したとおりであるのでここでは説明を省略する。
また、インプリント法によりポーラスアルミナの凹凸構造を転写して作製する試料保持面の材質が合成高分子などの樹脂、セラミックスである場合には、上記試料保持面の表面は、金属または半導体で被覆されていることが好ましい。
試料保持面の被覆に用いられる金属および半導体、被覆されている上記金属および/または上記半導体の厚みについては、上記(I−1)で説明したとおりであるのでここでは説明を省略する。
(II−2)試料ターゲット(B)の製造方法
また、試料ターゲット(B)の製造方法については、上記上記(I−2)の製法例2で説明したとおりであるのでここでは説明を省略する。
(III)試料ターゲット(C)
(III−1)試料ターゲット(C)
試料ターゲット(C)は、上述したように、レーザー光の照射により試料をイオン化して質量分析するときに、試料を保持するために用いられ、各凹部または各凸部の間隔が1nm〜10μmであって、凹部の深さが10nm〜10μmの微細な凹凸構造を有する表面を試料保持面として備えている試料ターゲットであって、上記試料保持面の表面が半導体で被覆されているものであればよい。
ここで、試料ターゲット、試料保持面については上記(I―1)で説明したとおりである。
試料ターゲット(C)は、各凹部および各凸部の間隔が1nm〜10μmであって、凹部の深さが10nm〜10μmの微細な凹凸構造を有する表面を試料保持面として備えていればよい。ここで、凹凸構造の隣接する各凹部および各凸部の間隔は、1nm〜10μm程度であればよい。しかしながら、質量分析用の試料ターゲットとしての機能をより向上させるためには、上記隣接する各凹部又は各凸部の間隔は30nm〜5μmとなっていることがより好ましく、31nm〜1μmとなっていることがさらに好ましく、33nm〜500nmとなっていることが特に好ましく、34nm〜300nmとなっていることがもっとも好ましい。これにより、質量分析における測定試料のイオン化を良好に行うことができる。
また、上記凹凸構造の隣接する各凹部又は各凸部の間隔は、規則的であっても不規則であってもよい。しかしながら、質量分析用の試料ターゲットとしての機能をより向上させるためには、規則的であることがより好ましい。上記各凹部又は各凸部の間隔が規則正しい場合には、その凹凸のばらつきが少ないため、イオン化性能はより安定する。
上記凹凸構造の凹部の深さは、10nm以上10μm未満程度であればよい。しかしながら、質量分析用の試料ターゲットとしての機能をより向上させるためには、30nm〜2μmであることがより好ましく、50nm〜1.5μmであることがさらに好ましく、70nm〜1μmであることが特に好ましく、100nm〜1μmであることが最も好ましい。また、上記凹部の深さにはばらつきがあってもよいし、均一であってもよい。しかしながら、質量分析用の試料ターゲットとしての機能をより向上させるためには、上記凹部の深さは均一であることが好ましい。上記凹部の深さは均一である場合には、その凹凸のばらつきが少ないため、イオン化性能はより安定する。
上記凹部の具体的な形状は特に限定されるものではなく、どのような形状のものであってもよい。また、上記凹凸構造は、凹部の形状が一定ではなく、種々の形状の凹部が混ざったものであってもよい。しかしながら、質量分析用の試料ターゲットとしての機能をより向上させるためには、上記凹凸構造は、一定の形状の凹部からなるものであることが好ましい。かかる形状としては、例えば、溝、溝同士が交差した格子、穴等の形状を挙げることができる。また、上記溝、穴の形状も特に限定されるものではなく、どのような形状のものであってもよいが、例えば、直線の溝;曲線の溝;弧を描く溝;円形の穴;楕円形の穴;三角形、四角形、五角形等多角形の穴等を挙げることができる。
また、上記凹部の壁面は、試料保持面に対して垂直であってもよいし、斜度を有していてもかまわない。
また、上記凹凸構造は、試料保持面の全体に形成されているものであってもよいし、試料保持面に部分的に形成されているものであってもよい。
本発明にかかる試料ターゲットは、上記試料保持面の表面が半導体で被覆されているものである。上記半導体としては、特に限定されるものではなくどのようなものであってもよい。具体的には、例えば、Si、Ge、SiC、GaP、GaAs、InP、Si1−XGe(0<X<1)、SnO、ZnO、Inやその混合物、カーボン等を挙げることができる。なかでも、上記半導体は、SnO、ZnO、In、SnOとInの混合物であるITO等であることがより好ましい。これらの物質はもともと酸化物であり、これ以上酸化されないため、空気中に放置してもイオン化の性能が下がることはない。また、カーボンはその原子の結合状態によって物性は異なるが、ここでは半導体として分類する。カーボンも空気中では酸化されにくいために、空気中に放置してもイオン化の性能が下がることはない。
被覆されている上記半導体の厚みは、試料保持面の凹凸構造を損なうものでなければ特に限定されるものではない。具体的には、例えば、1nm以上200nm以下であることが好ましい。上記金属の厚みがこの上限を超えないことにより、試料保持面の凹凸構造が損なわれず、下限より大きいことにより、効率的なイオン化が可能となる。さらに、上記金属の厚みは、5nm以上100nm以下であることがより好ましく、10nm以上90nm以下であることがさらに好ましく、15nm以上80nm以下であることが特に好ましく、20nm以上、75nm以下であることが最も好ましい。これにより、より効率的なイオン化が可能となる。
(III−2)試料ターゲット(C)の製造方法
本発明にかかる試料ターゲット(C)の製造方法は、各凹部または各凸部の間隔が1nm〜10μmであって、凹部の深さが10nm〜10μmの微細な凹凸構造を有する表面を試料保持面として備えている試料ターゲットであって、上記試料保持面の表面が半導体で被覆されているものを製造する方法であれば特に限定されるものではなく、少なくとも試料保持面の表面を半導体で被覆する工程等を含んでいればよい。
上記試料保持面の表面を半導体で被覆する方法は、特に限定されるものではなく、上記(I−2)に記載した方法を好適に用いることができる。
また、本発明にかかる試料ターゲット(C)の製造方法は、上記試料保持面の表面を半導体で被覆する工程の前に、各凹部または各凸部の間隔が1nm〜10μmであって、凹部の深さが10nm〜10μmの微細な凹凸構造を表面に有する試料保持面を製造する工程を含んでいてもよい。かかる凹凸構造を製造する方法としては、リソグラフィー技術を用いて、基板の表面に、所定の幅を有する凹部を規則的に繰り返し形成することによって、当該表面に試料保持面を形成する方法であってもよい。また、上記リソグラフィー技術としては、電子ビーム描画装置を用いて上記凹部を形成することが好ましい。また、上記(I−2)に記載した、製法例1、製法例2等を好適に用いることができる。
(IV)本発明の利用(質量分析装置)
本発明の試料ターゲットは、生体高分子や内分泌撹乱物質、合成高分子、金属錯体などの様々な物質の質量分析を行う場合に測定対象となる試料を載置するための言わば試料台として使用することができる。また、上記試料ターゲットは、特にレーザー脱離イオン化質量分析において用いられた場合に、試料のイオン化を効率的かつ安定的に行うことができるため有用である。
そこで、上述の本発明の試料ターゲットを用いてなる質量分析装置についても本発明の範疇に含まれる。上記試料ターゲットは、特にレーザー脱離イオン化質量分析装置において用いられた場合に、試料のイオン化を効率的かつ安定的に行うことができる。そのため、本発明の質量分析装置は、より具体的には、測定対象となる試料にレーザー光を照射することによってイオン化して当該試料の分子量を測定するレーザー脱離イオン化質量分析装置であることが好ましい。
上記レーザー脱離イオン化質量分析装置においては、測定対象となる試料を上述の試料ターゲット上に載置して使用することによって、当該試料に対してレーザー光を照射した場合に試料のイオン化を良好に行うことができる。
本発明について、実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
〔実施例1〕
純度99.99%のアルミニウム板を、過塩素酸、エタノール混合溶液中(体積比 1:4)で電解研磨処理を施した。鏡面化を行ったアルミニウム板を、0.5 Mリン酸水溶液中で、浴温17℃において直流80Vの条件下で15分間陽極酸化を行い、細孔深さ500nmの陽極酸化ポーラスアルミナを形成した。その後、試料を10重量%リン酸水溶液に10分間浸漬し、孔径拡大処理を施し細孔径を100nmに調節した。得られた陽極酸化ポーラスアルミナ表面に、スパッタ法でPtを50nmコートすることにより、細孔周期200nmのPtコートポーラスアルミナ基板を得た。細孔深さ/(細孔周期−細孔径)は5であった。
次に、得られた試料ターゲットを用いてレーザー脱離イオン化法による質量分析を行った。試料ターゲットに、分子量24000のトリプシノーゲンを5pmol担持させ、飛行時間型質量分析計Voyager DE−Pro(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、リニアモードでレーザー脱離イオン化法による質量分析を行ったところ、m/z 24000のイオンを検出することができた。
〔実施例2〕
実施例1と同様の方法で作製した陽極酸化ポーラスアルミナ表面に、スパッタ法によりSiを50nmコートすることにより、細孔周期200nmのSiコートポーラスアルミナ基板を得た。
次に、得られた試料ターゲットを用いてレーザー脱離イオン化法による質量分析を行った。試料ターゲットに、分子量12360のチトクロムCを5pmol担持させ、飛行時間型質量分析計Voyager DE−Pro(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、リニアモードでレーザー脱離イオン化法による質量分析を行ったところ、m/z 12360のイオンを検出することができた。
〔実施例3〕
純度99.99%アルミニウム板を、過塩素酸、エタノール混合溶液中(体積比 1:4)で電解研磨処理を施した。鏡面化を行ったアルミニウム板を、0.3 Mリン酸水溶液中で、浴温17℃において直流195Vの条件下で15時間陽極酸化を行った後、一旦、酸化物層をクロン酸、リン酸混合溶液により溶解除去し、再び同一条件下において2時間間陽極酸化を行うことで孔深さ2μmの陽極酸化ポーラスアルミナを形成した。その後、試料を10重量%リン酸水溶液に30分間浸漬し、孔径拡大処理を施し細孔径を250nmに調節した。得られた陽極酸化ポーラスアルミナ表面に、イオンビームスパッタリング装置を用いPtを50nmコートすることにより、細孔周期500nmの理想配列ポーラスアルミナ基板を得た。細孔深さ/(細孔周期−細孔径)は8であった。
次に、得られた試料ターゲットを用いてレーザー脱離イオン化法による質量分析を行った。試料ターゲットに、分子量12360のチトクロムCを5pmol担持させ、飛行時間型質量分析計Voyager DE−Pro(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、リニアモードでレーザー脱離イオン化法による質量分析を行ったところ、リニアモードでレーザー脱離イオン化法による質量分析を行ったところ、m/z 12360のイオンを検出することができた。
〔実施例4〕
純度99.99%のアルミニウム板を、過塩素酸、エタノール混合溶液中(体積比 1:4)で電解研磨処理を施した。鏡面化を行ったアルミニウム板を、0.5 Mリン酸水溶液中で、浴温17℃において直流80Vの条件下で11分間、0.3Mの濃度に調整したリン酸水溶液中で、浴温10℃において直流120Vの条件下で23分間陽極酸化を行うことで、孔深さが500nmである細孔周期200nmと300nmの陽極酸化ポーラスアルミナをそれぞれ形成した。得られた陽極酸化ポーラスアルミナ表面に、スパッタ法によりPtを50nmコートした。細孔周期300nmのポーラスアルミナの細孔径は100nm、細孔深さ/(細孔周期−細孔径)は2.5であった。また、細孔周期200nmのポーラスアルミナの細孔径は70nm、細孔深さ/(細孔周期−細孔径)は3.8であった。
次に、得られた試料ターゲットを用いてレーザー脱離イオン化法による質量分析を行った。試料ターゲットに、分子量24000のトリプシノーゲンを5pmol担持させ、飛行時間型質量分析計Voyager DE−Pro(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、リニアモードでレーザー脱離イオン化法による質量分析を行ったところ、いずれの場合においてもm/z 24000のイオンを検出することができた。
〔実施例5〕
純度99.99%アルミニウム板を、過塩素酸、エタノール混合溶液中(体積比 1:4)で電解研磨処理を施した。鏡面化を行ったアルミニウム板を、0.3 Mシュウ酸水溶液中で、浴温17℃において直流40Vの条件下で15時間陽極酸化を行った後、一旦、酸化物層をクロン酸、リン酸混合溶液により溶解除去し、再び同一条件下において10分間陽極酸化を行うことで孔深さ1μmの陽極酸化ポーラスアルミナを形成した。その後、試料を5重量%リン酸水溶液に40分間浸漬し、孔径拡大処理を施し細孔径を70nmに調節した。得られた陽極酸化ポーラスアルミナ表面に、スパッタ法によりPtを20nmコートすることにより細孔周期100nmの高規則性ポーラスアルミナ基板を得た。細孔深さ/(細孔周期−細孔径)は33であった。
次に、得られた試料ターゲットを用いてレーザー脱離イオン化法による質量分析を行った。試料ターゲットに、分子量24000のトリプシノーゲンを5pmol担持させ、飛行時間型質量分析計Voyager DE−Pro(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、リニアモードでレーザー脱離イオン化法による質量分析を行ったところ、m/z24000のイオンを検出することができた。
〔実施例6〕
純度99.99%アルミニウム板を、過塩素酸、エタノール混合溶液中(体積比 1:4)で電解研磨処理を施した。鏡面化を行ったアルミニウム板を、0.3 Mリン酸水溶液中で、浴温0℃において直流195Vの条件下で15時間陽極酸化を行った後,一旦,酸化物層をクロン酸、リン酸混合溶液により溶解除去し、再び同一条件下において15分間陽極酸化を行うことで孔深さ1μmの陽極酸化ポーラスアルミナを形成した。その後、試料を10重量%リン酸水溶液に60分間浸漬し、孔径拡大処理を施し細孔径を300nmに調節した。得られた陽極酸化ポーラスアルミナ表面に、イオンビームスパッタリング装置を用いPtを50nmコートすることにより、細孔周期500nmの高規則性ポーラスアルミナ基板を得た。細孔深さ/(細孔周期−細孔径)は5であった。
次に、得られた試料ターゲットを用いてレーザー脱離イオン化法による質量分析を行った。試料ターゲットに、分子量24000のトリプシノーゲンを5pmol担持させ、飛行時間型質量分析計Voyager DE−Pro(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、リニアモードでレーザー脱離イオン化法による質量分析を行ったところ、いずれの場合においてもm/z24000のイオンを検出することができた。
〔実施例7〕
純度99.99%のアルミニウム板を過塩素酸、エタノール混合溶液中(体積比 1:4)で電解研磨処理を施した。鏡面化を行ったアルミニウム板表面に、200 nm周期で突起が規則的に配列した構造を持つNi製モールドを押し付け、微細な凹凸パターンを形成した。インプリント処理を施したアルミニウム板を、0.5 Mリン酸水溶液中で、浴温17℃において直流80Vの条件下で11分間陽極酸化を行い、孔深さ500nmの陽極酸化ポーラスアルミナを形成した。その後、試料を10重量%リン酸水溶液に10分間浸漬し、孔径拡大処理を施し細孔径を100nmに調節した。得られた陽極酸化ポーラスアルミナ表面に、イオンビームスパッタリング装置を用いPtを50nmコートすることにより、細孔周期200nmの理想配列ポーラスアルミナ基板を得た。細孔深さ/(細孔周期−細孔径)は5であった。
次に、得られた試料ターゲットを用いてレーザー脱離イオン化法による質量分析を行った。試料ターゲットに、分子量24000のトリプシノーゲンを5pmol担持させ、飛行時間型質量分析計Voyager DE−Pro(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、リニアモードでレーザー脱離イオン化法による質量分析を行ったところ、いずれの場合においてもm/z24000のイオンを検出することができた。
〔比較例1〕
純度99.99%アルミニウム板を、過塩素酸、エタノール混合溶液中(体積比 1:4)で電解研磨処理を施した。鏡面化を行ったアルミニウム板を、0.3 Mリン酸水溶液中で、浴温17℃において直流195Vの条件下で15時間陽極酸化を行った後、一旦、酸化物層をクロン酸、リン酸混合溶液により溶解除去し、再び同一条件下において2時間間陽極酸化を行うことで孔深さ15μmの陽極酸化ポーラスアルミナを形成した。その後、試料を10重量%リン酸水溶液に60分間浸漬し、孔径拡大処理を施し細孔径を300nmに調節した。得られた陽極酸化ポーラスアルミナ表面に、スパッタ法によりPtを50nmコートすることにより、細孔周期500nmの理想配列ポーラスアルミナ基板を得た。細孔深さ/(細孔周期−細孔径)は75であった。
次に、得られた試料ターゲットを用いてレーザー脱離イオン化法による質量分析を行った。試料ターゲットに、分子量12360のチトクロムCを5pmol担持させ、飛行時間型質量分析計Voyager DE−Pro(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、リニアモードでレーザー脱離イオン化法による質量分析を行ったところ、試料イオンを検出することができなかった。さらに分子量5800のインシュリンのイオン化を試みたが同様にイオン化できなかった。
〔比較例2〕
純度99.99%アルミニウム板を、過塩素酸、エタノール混合溶液中(体積比 1:4)で電解研磨処理を施した。鏡面化を行ったアルミニウム板表面に、200nm周期で突起が規則的に配列した構造を持つNi製モールドを押し付け、微細な凹凸パターンを形成した。インプリント処理を施したアルミニウム板を、0.5 Mリン酸水溶液中で、浴温17℃において直流80Vの条件下で2時間陽極酸化を行い、細孔深さ70nmの陽極酸化ポーラスアルミナを形成した。孔径拡大処理を施し細孔径を100nmに調節した。得られた陽極酸化ポーラスアルミナ表面に、イオンビームスパッタリング装置を用い、Ptを50nmコートすることにより、細孔周期200nmの理想配列ポーラスアルミナ基板を得た。細孔深さ/(細孔周期−細孔径)は0.7であった。
次に、得られた試料ターゲットを用いてレーザー脱離イオン化法による質量分析を行った。試料ターゲットに、分子量12360のチトクロムCを5pmol担持させ、飛行時間型質量分析計Voyager DE−Pro(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、リニアモードでレーザー脱離イオン化法による質量分析を行ったところ、試料イオンを検出することができなかった。
〔比較例3〕
ウォーターズ社製MassPREPTM DIOS-target プレートを使用マニュアル通りにイソプロパノールにて前処理した後に、分子量24000のトリプシノーゲン10pmolを担持させ、飛行時間型質量分析計Voyager DE−Pro(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて、リニアモードでレーザー脱離イオン化法による質量分析を行ったところ、試料イオンを検出することができなかった。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
産業上の利用の可能性
本発明の試料ターゲットによれば、レーザー脱離イオン化質量分析法において、マトリックスを用いない場合にも、優れたイオン化の性能、高分子量の物質のイオン化を実現することが可能である。
レーザー脱離イオン化質量分析法は、生体高分子や内分泌撹乱物質、合成高分子、金属錯体などの質量分析法として、現在幅広い分野で活用されている。本発明の試料ターゲットは、このレーザー脱離イオン化質量分析をより正確かつ安定して実施するために有効な材料であるため、本発明の利用可能性は高いと言える。

Claims (16)

  1. レーザー光の照射により試料をイオン化して質量分析するときに、試料を保持するために用いられ、レーザー光の照射を受ける表面に開口する多数の細孔を有する試料保持面を備えている試料ターゲットであって、
    当該細孔の細孔径が30nm以上5μm未満、且つ、細孔深さ/(細孔周期−細孔径)が2以上50以下であり、上記試料保持面の表面が金属または半導体で被覆されていることを特徴とする試料ターゲット。
  2. 上記試料保持面はポーラスアルミナからなることを特徴とする請求項1に記載の試料ターゲット。
  3. レーザー光の照射により試料をイオン化して質量分析するときに、試料を保持するために用いられ、レーザー光の照射を受ける表面側に開口する多数の細孔を有する試料保持面を備えている試料ターゲットであって、
    上記試料保持面は、ポーラスアルミナを鋳型に用いて該ポーラスアルミナの凹凸構造を転写したネガ型の構造物を作製し、該ネガ型の構造物を鋳型に用いて上記凹凸構造を転写した、上記ポーラスアルミナの凹凸構造と同一の形状の凹凸構造を表面に有する試料保持面であることを特徴とする試料ターゲット。
  4. 上記試料保持面は金属または半導体からなることを特徴とする請求項3に記載の試料ターゲット。
  5. 上記試料保持面の表面は、金属または半導体で被覆されていることを特徴とする請求項3に記載の試料ターゲット。
  6. 上記細孔は、細孔径が30nm以上5μm未満、細孔深さ/(細孔周期−細孔径)が2以上50以下であることを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1項に記載の試料ターゲット。
  7. 上記金属が、白金(Pt)および金(Au)の少なくとも何れかであることを特徴とする請求項1、2、4、5または6のいずれか1項に記載の試料ターゲット。
  8. レーザー光の照射により試料をイオン化して質量分析するときに、試料を保持するために用いられ、各凹部および各凸部の間隔が1nm〜10μmであって、凹部の深さが10nm〜10μmの微細な凹凸構造を有する表面を試料保持面として備えている試料ターゲットであって、上記試料保持面の表面が半導体で被覆されていることを特徴とする試料ターゲット。
  9. 上記半導体が、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム・スズ(ITO)およびカーボンの少なくとも何れかであることを特徴とする請求項1、2、4、5、6または8に記載の試料ターゲット。
  10. レーザー光の照射により試料をイオン化して質量分析するときに、試料を保持するために用いられ、レーザー光の照射を受ける表面側に開口する多数の細孔を有する試料保持面を備えている試料ターゲットの製造方法であって、ポーラスアルミナを試料保持面として用い、該試料保持面の表面を金属または半導体で被覆する工程を含むことを特徴とする試料ターゲットの製造方法。
  11. レーザー光の照射により試料をイオン化して質量分析するときに、試料を保持するために用いられ、レーザー光の照射を受ける表面側に開口する多数の細孔を有する試料保持面を備えている試料ターゲットの製造方法であって、
    ポーラスアルミナを鋳型に用いて該ポーラスアルミナの凹凸構造を転写したネガ型の構造物を作製する工程と、
    該工程で得られたネガ型の構造物を鋳型に用いて上記凹凸構造を転写して、上記ポーラスアルミナの凹凸構造と同一の形状の凹凸構造を表面に有する試料保持面を得る工程とを含むことを特徴とする試料ターゲットの製造方法。
  12. 上記試料保持面は、金属または半導体からなることを特徴とする請求項11に記載の試料ターゲットの製造方法。
  13. さらに、上記試料保持面の表面を金属または半導体で被覆する工程を含むことを特徴とする請求項11に記載の試料ターゲットの製造方法。
  14. 上記ポーラスアルミナは、その細孔径が30nm以上5μm未満、細孔深さ/(細孔周期−細孔径)が2以上50以下であることを特徴とする請求項10ないし13のいずれか1項に記載の試料ターゲットの製造方法。
  15. 請求項1ないし9のいずれか1項に記載の試料ターゲットを用いることを特徴とする質量分析装置。
  16. 測定対象となる試料にレーザー光を照射することによって、当該試料をイオン化してその分子量を測定するレーザー脱離イオン化質量分析装置であることを特徴とする請求項15に記載の質量分析装置。
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