JP7449848B2 - 試料支持体、イオン化法及び質量分析方法 - Google Patents

試料支持体、イオン化法及び質量分析方法 Download PDF

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Description

本発明は、試料支持体、イオン化法及び質量分析方法に関する。
特許文献1には、複数の貫通孔が設けられた基板を備える試料支持体が記載されている。特許文献1に記載の試料支持体は、一用途として、試料を構成する分子の二次元分布を画像化するイメージング質量分析に用いられる。ただし、特許文献1に記載の試料支持体では、基板の厚さが数μm程度である場合があるため、そのような場合において、試料に基板を押し付けて試料の成分を基板に転写するようなときには、基板を破損させないよう、取り扱いに注意を要する。
特許文献2には、アルミニウムの層と、アルミニウムの層上に設けられたポーラスアルミナの層と、を備える試料ターゲットが記載されている。特許文献2に記載の試料ターゲットでは、例えば、アルミニウムの層を厚くすれば、ポーラスアルミナの層が破損し難くなると考えられる。
特許第6093492号公報 特許第4885142号公報
しかし、特許文献2に記載の試料ターゲットは、マススペクトル質量分析への適用が考慮されたものであり、イメージング質量分析への適用が考慮されたものとはいえない。
そこで、本発明は、取り扱いが容易であり且つイメージング質量分析に適した試料支持体、並びに、そのような試料支持体を用いたイオン化法及び質量分析方法を提供することを目的とする。
本発明の試料支持体は、試料の成分のイオン化に用いられる試料支持体であって、基板と、基板上に設けられ、基板とは反対側の表面を有する多孔質層と、を備え、多孔質層は、表面に開口する複数の孔を有する本体層を含み、複数の孔のそれぞれは、基板の厚さ方向に延在する延在部と、延在部における表面側の端から表面に向かって拡幅された開口部と、を含み、複数の孔の深さの平均値は、3μm以上100μm以下であり、深さの平均値を複数の孔の幅の平均値で除した値は、9以上2500以下である。
この試料支持体では、多孔質層が基板上に設けられている。これにより、例えば、試料の成分を多孔質層の表面に転写するために試料に多孔質層の表面を押し付けても、多孔質層が破損し難いので、試料支持体を容易に取り扱うことができる。また、複数の孔の深さの平均値が3μm以上100μm以下であり、深さの平均値を複数の孔の幅の平均値で除した値が9以上2500以下であるため、試料に含まれていた余分な液体(水分等)が複数の孔内に逃げ易くなる。更に、複数の孔のそれぞれが、多孔質層の表面に向かって拡幅された開口部を含んでいるため、試料の成分が多孔質層の表面側に留まり易くなり、また、試料の成分をイオン化するためのエネルギー線等の照射面積が増加する。これらにより、例えば、エネルギー線を多孔質層の表面に照射することで、試料の成分の位置情報(試料を構成する分子の二次元分布情報)を維持しつつ試料の成分を高効率でイオン化することができる。以上のように、この試料支持体は、取り扱いが容易であり且つイメージング質量分析に適している。
本発明の試料支持体では、幅の平均値は、40nm以上350nm以下であってもよい。これによれば、試料に含まれていた余分な液体が複数の孔内に逃げ易く、且つ試料の成分が多孔質層の表面側に留まり易い構造を確実且つ容易に得ることができる。
本発明の試料支持体では、本体層は、絶縁層であり、多孔質層は、少なくとも表面及び開口部の内面に沿って形成された導電層を更に含んでもよい。これによれば、エネルギー線を多孔質層の表面(すなわち、導電層)に照射することで、試料の成分の位置情報を維持しつつ試料の成分を高効率でイオン化することができる。
本発明の試料支持体では、導電層の厚さは、10nm以上200nm以下であってもよい。これによれば、導電層の抵抗値を調節することで、試料の成分を高効率でイオン化することができる。
本発明の試料支持体では、本体層は、絶縁層であり、本体層は、少なくとも表面及び開口部の内面において外部に露出していてもよい。これによれば、帯電した微小液滴を多孔質層の表面(すなわち、絶縁層である本体層)に照射することで、試料の成分の位置情報を維持しつつ試料の成分を高効率でイオン化することができる。
本発明の試料支持体では、基板及び本体層は、金属基板又はシリコン基板の表層が陽極酸化されることで形成されていてもよい。これによれば、試料に含まれていた余分な液体が複数の孔内に逃げ易く、且つ試料の成分が多孔質層の表面側に留まり易い構造を確実且つ容易に得ることができる。
本発明のイオン化法は、多孔質層が導電層を含む上記試料支持体を用意する工程と、試料を表面に配置する工程と、エネルギー線を表面に照射することで成分をイオン化する工程と、を備える。
このイオン化法によれば、上述したように、試料の成分の位置情報を維持しつつ試料の成分を高効率でイオン化することができる。
本発明のイオン化法は、多孔質層において絶縁層である本体層が外部に露出している上記試料支持体を用意する工程と、試料を表面に配置する工程と、帯電した微小液滴を表面に照射することで成分をイオン化する工程と、を備える。
このイオン化法によれば、上述したように、試料の成分の位置情報を維持しつつ試料の成分を高効率でイオン化することができる。
本発明の質量分析方法は、上記イオン化法が備える複数の工程と、イオン化された成分を検出する工程と、を備える。
この質量分析方法によれば、試料を構成する分子の二次元分布を高感度で画像化することができる。
本発明によれば、取り扱いが容易であり且つイメージング質量分析に適した試料支持体、並びに、そのような試料支持体を用いたイオン化法及び質量分析方法を提供することができる。
一実施形態の試料支持体の平面図である。 図1に示されるII-II線に沿っての試料支持体の断面図である。 図2に示される多孔質層の断面図である。 図2に示される試料支持体の製造工程を示す図である。 図3に示される本体層の形成工程を示す図である。 一例としての本体層の表面のSEM画像を示す図である。 一例としての多孔質層の断面のSEM画像を示す図である。 図1に示される試料支持体を用いたイオン化法及び質量分析方法を示す図である。 マウスの脳切片の光学画像、及び当該マウスの脳切片の「m/z 848.6の二次元分布を示す画像」である。 マウスの脳切片の光学画像、当該マウスの脳切片の「m/z 756.6の二次元分布を示す画像」、当該マウスの脳切片の「m/z 832.6の二次元分布を示す画像」、及び当該マウスの脳切片の「m/z 834.6の二次元分布を示す画像」である。 m/z値と強度との関係を示すグラフである。 変形例の試料支持体の製造工程を示す図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1及び図2に示されるように、試料支持体1は、基板2と、多孔質層3と、を備えている。試料支持体1は、試料の成分のイオン化に用いられるものである。以下、基板2の厚さ方向をZ軸方向といい、Z軸方向に垂直な一方向をX軸方向といい、Z軸方向及びX軸方向の両方向に垂直な方向をY軸方向という。
基板2は、Z軸方向に垂直な表面2a及び裏面2bを有している。基板2の形状は、例えば、X軸方向を長手方向とする長方形板状である。基板2の厚さは、例えば、0.5~1mm程度である。基板2の材料は、例えば、Al(アルミニウム)である。
多孔質層3は、基板2上に設けられている。具体的には、多孔質層3は、基板2の表面2aの全体に形成されている。多孔質層3は、基板2とは反対側の表面3aを有している。多孔質層3は、絶縁層である本体層31を含んでいる。本体層31の材料は、例えば、Al(アルミナ)である。
図3に示されるように、本体層31は、表面3aに開口する複数の孔33を有している。各孔33は、延在部34と、開口部35と、を含んでいる。延在部34は、Z軸方向に延在している。Z軸方向から見た場合における延在部34の形状は、例えば、円形状である。開口部35は、延在部34における表面3a側の端34aから表面3aに向かって拡幅されている。開口部35の形状は、例えば、延在部34の端34aから表面3aに向かって拡がる椀状又は円錐台状(テーパ状)である。なお、延在部34における基板2側の端は、本体層31内に位置している。
多孔質層3は、導電層32を更に含んでいる。導電層32は、少なくとも多孔質層3の表面3a及び各開口部35の内面35aに沿って形成されている。試料支持体1では、導電層32の材料は、試料との親和性(反応性)が低く且つ導電性が高い金属である。そのような金属としては、例えば、Au(金)、Pt(白金)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)が挙げられる。
図1に示されるように、X軸方向における試料支持体1の両端部1a(図1において、二点鎖線の外側の両端部)は、例えば、質量分析装置に試料支持体1が取り付けられる際に被保持部として機能する。多孔質層3の表面3aのうち両端部1aの間の領域Aは、測定領域として機能する。領域Aは、例えば、X軸方向を長手方向とする長方形状である。
試料支持体1は、仕切部4と、複数の表示部5と、を更に備えている。仕切部4は、例えば、領域Aの1つの角部に配置されている。各表示部5は、例えば、領域Aの3つの角部(仕切部4が配置されていない3つの角部)のそれぞれに配置されている。
仕切部4は、環状に延在する仕切溝41を含んでいる。仕切溝41は、第1領域A1と第2領域A2との間を通るように多孔質層3の表面3aに形成されている。第1領域A1は、領域Aのうち仕切溝41の外側の領域である。第2領域A2は、領域Aのうち仕切溝41の内側の領域である。仕切部4は、領域Aを第1領域A1及び第2領域A2に仕切っている。
図2に示されるように、仕切溝41は、基板2の表面2aに形成された溝2c内に多孔質層3が落ち込むことで、多孔質層3の表面3aに形成されている。仕切溝41の幅は、仕切溝42の深さよりも大きい。一例として、仕切溝41の深さは、50μm以上300μm以下であり、仕切溝41の幅は、仕切溝41の深さの2倍以上である。
図1に示されるように、各表示部5は、X字状に延在する表示溝51を含んでいる。表示溝51は、所定の情報を表示する態様で多孔質層3の表面3aに形成されている。表示溝51は、仕切溝41と同様に、基板2の表面2aに形成された溝内に多孔質層3が落ち込むことで、多孔質層3の表面3aに形成されている。試料支持体1では、所定の情報は、質量分析装置に試料支持体1が取り付けられる際に試料支持体1の位置及び角度に関する情報であり、例えば、質量分析装置に試料支持体1が取り付けられる際に試料支持体1の位置合せに用いられる。
多孔質層3の寸法について説明する。図3に示されるように、複数の孔33の深さDの平均値は、3μm以上100μm以下である。一例として、領域Aにおいて、平均値±10%の深さDを有する孔33の数は、全体の孔33の数の60%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上)である。複数の孔33の幅Wの平均値は、40nm以上350nm以下である。一例として、領域Aにおいて、平均値±10%の幅Wを有する孔33の数は、全体の孔33の数の60%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上)である。深さDの平均値を幅Wの平均値で除した値は、9以上2500以下である。一例として、領域Aにおいて、平均値±10%の「深さDの平均値を幅Wの平均値で除した値」を有する孔33の数は、全体の孔33の数の60%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上)である。導電層32の厚さTは、10nm以上200nm以下である。
深さDの平均値は、次のように取得される値である。まず、試料支持体1を用意し、試料支持体1をZ軸方向に平行に切断する。続いて、本体層31の切断面のいずれか一方のSEM画像を取得する。続いて、領域Aに対応する領域において、複数の孔33についての深さDの平均値を算出し、深さDの平均値を取得する。
幅Wの平均値は、次のように取得される値である。まず、試料支持体1を用意し、複数の延在部34を横切るように試料支持体1(具体的には、本体層31)をZ軸方向に垂直に切断する。続いて、本体層31の切断面のいずれか一方のSEM画像を取得する。続いて、領域Aに対応する領域において、複数の孔33(具体的には、複数の延在部34)に対応する複数の画素群を抽出する。この画素群の抽出は、例えば、SEM画像に対して二値化処理を施すことで実施される。続いて、複数の画素群に基づいて、複数の孔33(具体的には、複数の延在部34)についての面積の平均値を有する円の直径を算出し、当該直径を幅Wの平均値として取得する。
基板2及び本体層31は、金属基板の表層が陽極酸化されることで形成されている。基板2及び本体層31は、例えば、Al基板の表層が陽極酸化されることで形成されている。なお、金属基板としては、Al基板以外に、Ta(タンタル)基板、Nb(ニオブ)基板、Ti(チタン)基板、Hf(ハフニウム)基板、Zr(ジルコニウム)基板、Zn(亜鉛)基板、W(タングステン)基板、Bi(ビスマス)基板、Sb(アンチモン)基板等が挙げられる。
本体層31には、それぞれが略一定の幅Wを有する複数の孔33が一様に(均一な分布で)形成されている。隣り合う孔33のピッチ(中心線間の距離)は、例えば、275nm程度である。領域Aにおける複数の孔33の開口率(Z軸方向から見た場合に領域Aに対して複数の孔33が占める割合)は、実用上は10~80%であり、特に60~80%であることが好ましい。なお、複数の孔33においては、各孔33の幅Wが不揃いであってもよいし、部分的に孔33同士が繋がっていてもよい。
試料支持体1の製造方法について説明する。まず、図4の(a)に示されるように、基板2を用意し、基板2の表面2aに仕切部4用の溝2cを形成する。このとき、基板2の表面2aに、図1に示される複数の表示部5用の溝も形成する。仕切部4用の溝2c及び複数の表示部5用の溝の形成には、例えば、エッチング、レーザ加工、機械加工等が用いられる。
続いて、図4の(b)に示されるように、基板2の表面2aに本体層31を形成する。続いて、図4の(c)に示されるように、本体層31上に導電層32を形成する。導電層32の形成には、例えば、蒸着法、スパッタ法、メッキ法、原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)等が用いられる。
以上により、試料支持体1を得る。以上の試料支持体1の製造方法では、仕切部4用の溝2c内に多孔質層3が落ち込むことで、多孔質層3の表面3aに仕切溝41が形成される。また、複数の表示部5用の溝内に多孔質層3が落ち込むことで、多孔質層3の表面3aに、図1に示される複数の表示溝51が形成される。
本体層31の形成について説明する。まず、図5の(a)に示されるように、基板2を用意し、基板2の表層を陽極酸化して、基板2の表面2aに酸化層30を形成する。酸化層30は、基板2とは反対側に開口する複数の孔30aを有している。
続いて、図5の(b)に示されるように、酸化層30を除去して、基板2の表面2aを外部に露出させる。基板2の表面2aには、椀状又は円錐台状(テーパ状)の複数の凹部が形成されている。当該複数の凹部は、複数の孔30aに対応する位置に形成される。
続いて、図5の(c)に示されるように、再度、基板2の表層を陽極酸化して、基板2の表面2aに本体層31を形成する。本体層31において、各孔33は、延在部34の端34aから基板2とは反対側に向かって拡幅された開口部35を含んでいる。以上のように陽極酸化が二段階で実施されることで、各孔33に開口部35が形成される。また、陽極酸化が二段階で実施されることで、複数の孔33の配列及び形状の規則性及び均一性が向上する。なお、以上の本体層31の形成では、基板2は、Al基板であり、酸化層30及び本体層31は、Al層である。
図6は、一例としての本体層31の表面(開口部35側の表面)のSEM画像を示す図である。図6に示される本体層31は、Al基板の表層の陽極酸化を二段階で実施することで形成されたものである。図6に示される本体層31では、複数の孔33(黒色の部分)の幅Wの平均値が110nmであり、複数の孔33の深さDの平均値が10μmであり、深さDの平均値を幅Wの平均値で除した値が91である。
図7は、一例としての多孔質層3の断面(Z軸方向に平行な断面)のSEM画像を示す図である。図7に示される多孔質層3は、本体層31の表面(開口部35側の表面)に対するPtの蒸着を実施することで形成されたものである。ここでは、本体層31を回転させながら、本体層31の表面に垂直な方向に対して30度の傾斜した方向からPtの蒸着を実施した。図7に示される多孔質層3では、導電層32の厚さTが50nmであり、導電層32の入り込み量(本体層31の表面に垂直な方向における「導電層32が形成された範囲」の幅)が506nmである。図7に示される多孔質層3では、各孔33が開口部35を含んでいるため、導電層32の厚さTに対し、導電層32の入り込み量が十分に確保されたと考えられる。
試料支持体1を用いたイオン化法及び質量分析方法について説明する。まず、図8の(a)に示されるように、試料支持体1を用意する(用意する工程)。続いて、試料Sを試料支持体1の多孔質層3の表面3aに配置する(配置する工程)。一例として、試料Sに表面3aの第1領域A1を押し付けて試料Sの成分を表面3aの第1領域A1に転写する。
続いて、質量分析装置に試料支持体1を取り付け、図8の(b)に示されるように、試料支持体1の導電層32(図1参照)に電圧を印加しつつ、レーザ光(エネルギー線)Lを試料支持体1の多孔質層3の表面3aに照射する。これにより、表面3aに配置されていた試料Sの成分S1をイオン化する(イオン化する工程)。一例として、表面3aに配置されていた試料Sの成分S1に対して、レーザ光Lを走査する。以上の工程が、試料支持体1を用いたイオン化法に相当する。以上のイオン化法の一例は、表面支援レーザ脱離イオン化法(SALDI:Surface-Assisted Laser Desorption/Ionization)として実施される。
続いて、試料Sの成分S1のイオン化によって放出された試料イオン(イオン化された成分)S2を質量分析装置において検出し(検出する工程)、試料Sを構成する分子の二次元分布を画像化するイメージング質量分析を実施する。一例として、質量分析装置は、飛行時間型質量分析方法(TOF-MS:Time-of-Flight Mass Spectrometry)を利用する走査型質量分析装置である。以上の工程が、試料支持体1を用いた質量分析方法に相当する。なお、第2領域A2は、例えば、マスキャリブレーション用の試薬が滴下される領域として用いられる。
以上説明したように、試料支持体1では、多孔質層3が基板2上に設けられている。これにより、例えば、試料Sの成分S1を多孔質層3の表面3aに転写するために試料Sに多孔質層3の表面3aを押し付けても、多孔質層3が破損し難いので、試料支持体1を容易に取り扱うことができる。また、複数の孔33の深さDの平均値が3μm以上100μm以下であり、深さDの平均値を複数の孔33の幅Wの平均値で除した値が9以上2500以下であるため、試料Sに含まれていた余分な液体(水分等)が複数の孔33内に逃げ易くなる。更に、各孔33が、多孔質層3の表面3aに向かって拡幅された開口部35を含んでいるため、試料Sの成分S1が多孔質層3の表面3a側に留まり易くなり、また、試料Sの成分S1をイオン化するためのレーザ光Lの照射面積が増加する。これらにより、例えば、レーザ光Lを多孔質層3の表面3aに照射することで、試料Sの成分S1の位置情報(試料Sを構成する分子の二次元分布情報)を維持しつつ試料Sの成分S1を高効率でイオン化することができる。以上のように、試料支持体1は、取り扱いが容易であり且つイメージング質量分析に適している。
試料支持体1では、複数の孔33の幅Wの平均値が40nm以上350nm以下である。これにより、試料Sに含まれていた余分な液体が複数の孔33内に逃げ易く、且つ試料Sの成分S1が多孔質層3の表面3a側に留まり易い構造を確実且つ容易に得ることができる。
試料支持体1では、本体層31が絶縁層であり、多孔質層3が、少なくとも多孔質層3の表面3a及び各開口部35の内面35aに沿って形成された導電層32を含んでいる。これにより、レーザ光Lを多孔質層3の表面3a(すなわち、導電層32)に照射することで、試料Sの成分S1の位置情報を維持しつつ試料Sの成分S1を高効率でイオン化することができる。
試料支持体1では、導電層32の厚さが10nm以上200nm以下である。これにより、導電層32の抵抗値を調節することで、試料Sの成分S1を高効率でイオン化することができる。
試料支持体1では、基板2及び本体層31が、金属基板の表層が陽極酸化されることで形成されている。これにより、試料Sに含まれていた余分な液体が複数の孔33内に逃げ易く、且つ試料Sの成分S1が多孔質層3の表面3a側に留まり易い構造を確実且つ容易に得ることができる。特に、試料支持体1では、陽極酸化が二段階で実施されることで、複数の孔33の配列及び形状の規則性及び均一性が向上している。これにより、領域Aにおいて試料Sの成分S1がイオン化する効率(感度)にばらつきが生じるのを抑制することができる。
試料支持体1を用いたイオン化法によれば、上述したように、試料Sの成分S1の位置情報を維持しつつ試料Sの成分S1を高効率でイオン化することができる。試料支持体1を用いた質量分析方法によれば、試料Sを構成する分子の二次元分布を高感度で画像化することができる。
図9の(a)、(b)及び(c)は、マウスの脳切片の光学画像(左側)、及び当該マウスの脳切片の「m/z 848.6の二次元分布を示す画像」(右側)である。図9の(a)は、「複数の孔33の幅Wの平均値が110nmであり、複数の孔33の深さDの平均値が10μmであり、深さDの平均値を幅Wの平均値で除した値が91である試料支持体1」を用いた場合の結果である。図9の(b)は、「複数の孔33の幅Wの平均値が40nmであり、複数の孔33の深さDの平均値が100μmであり、深さDの平均値を幅Wの平均値で除した値が2500である試料支持体1」を用いた場合の結果である。図9の(c)は、「複数の孔33の幅Wの平均値が350nmであり、複数の孔33の深さDの平均値が3μmであり、深さDの平均値を幅Wの平均値で除した値が9である試料支持体1」を用いた場合の結果である。いずれの場合にも、m/z 848.6の二次元分布を十分に確認することができた。
図10の(a)及び(b)は、マウスの脳切片の光学画像(左側)、当該マウスの脳切片の「m/z 756.6の二次元分布を示す画像」(左から二番目)、当該マウスの脳切片の「m/z832.6の二次元分布を示す画像」(右から二番目)、及び当該マウスの脳切片の「m/z 834.6の二次元分布を示す画像」(右側)である。図10の(a)は、「複数の孔33の幅Wの平均値が100nmであり、複数の孔33の深さDの平均値が10μmであり、深さDの平均値を幅Wの平均値で除した値が100である試料支持体1であって、各孔33が開口部35を含んでいる試料支持体1(実施例)」を用いた場合の結果である。図10の(b)は、「複数の孔33の幅Wの平均値が100nmであり、複数の孔33の深さDの平均値が10μmであり、深さDの平均値を幅Wの平均値で除した値が100である試料支持体であって、各孔33が開口部35を含んでいない試料支持体(比較例)」を用いた場合の結果である。いずれのm/z値の二次元分布についても、実施例の試料支持体1において、比較例の試料支持体よりも明確に二次元分布を確認することができた。
図11の(a)は、図10の(a)の場合におけるm/z値と強度との関係を示すグラフであり、図11の(b)は、図10の(b)の場合におけるm/z値と強度との関係を示すグラフである。この結果としては、実施例の試料支持体1において、比較例の試料支持体よりも平均で1.65倍の感度を得ることができた。
本発明は、上述した実施形態に限定されない。例えば、多孔質層3は、導電層32を含んでおらず、絶縁層である本体層31は、少なくとも多孔質層3の表面3a及び各開口部35の内面35aにおいて外部に露出していてもよい。その場合には、帯電した微小液滴(charged-droplets)を多孔質層3の表面3a(すなわち、絶縁層である本体層31)に照射することで、試料Sの成分S1の位置情報を維持しつつ試料Sの成分S1を高効率でイオン化することができる。
多孔質層3が導電層32を含んでいない試料支持体1を用いたイオン化法及び質量分析方法は、次のとおりである。まず、試料支持体1を用意する(用意する工程)。続いて、試料Sを試料支持体1の多孔質層3の表面3a(すなわち、本体層31の表面)に配置する(配置する工程)。続いて、質量分析装置において、帯電した微小液滴を試料支持体1の多孔質層3の表面3aに照射することで、試料Sの成分S1をイオン化する(イオン化する工程)。一例として、表面3aに配置されていた試料Sの成分S1に対して、帯電した微小液滴を走査する。以上の工程が、試料支持体1を用いたイオン化法に相当する。以上のイオン化法の一例は、脱離エレクトロスプレーイオン化法(DESI:Desorption Electrospray Ionization)として実施される。続いて、試料Sの成分S1のイオン化によって放出された試料イオンS2を質量分析装置において検出し(検出する工程)、試料Sを構成する分子の二次元分布を画像化するイメージング質量分析を実施する。以上の工程が、試料支持体1を用いた質量分析方法に相当する。
いずれの試料支持体1においても、複数の孔33の深さDの平均値が3μm以上100μm以下であり、且つ深さDの平均値を複数の孔33の幅Wの平均値で除した値が9以上2500以下であれば、幅Wの平均値は、40nm以上350nm以下でなくてもよい。その場合において、多孔質層3が導電層32を含んでいるときには、導電層32の厚さTは、10nm以上200nm以下でなくてもよい。
多孔質層3が導電層32を含んでいる試料支持体1では、導電層32は、各孔33において、延在部34の内面に達していてもよい。
本体層31は、導電性を有する層(例えば、金属層等)であってもよい。その場合、多孔質層3において、導電層32を省略することができる。
基板2及び本体層31は、Si(シリコン)基板の表層が陽極酸化されることで形成されていてもよい。
多孔質層3が導電層32を含んでいる試料支持体1を用いたイオン化では、レーザ光L以外のエネルギー線(例えば、イオンビーム、電子線等)が試料支持体1の多孔質層3の表面3aに照射されてもよい。
仕切部4は、次のように形成されてもよい。まず、図12の(a)に示されるように、基板2を用意し、基板2の表面2aに本体層31を形成する。続いて、図12の(b)に示されるように、基板2に至る溝2cを本体層31に形成する。続いて、図12の(c)に示されるように、本体層31上に導電層32を形成する。このとき、導電層32が溝2cの内面にも形成される。以上により、試料支持体1を得る。なお、表示部5も、この仕切部4の形成と同様に形成されてもよい。
1…試料支持体、2…基板、3…多孔質層、3a…表面、31…本体層、32…導電層、33…孔、34…延在部、34a…端、35…開口部、35a…内面、L…レーザ光(エネルギー線)、S…試料、S1…成分、S2…試料イオン(イオン化された成分)。

Claims (9)

  1. 試料の成分のイオン化に用いられる試料支持体であって、
    基板と、
    前記基板上に設けられ、前記基板とは反対側の表面を有する多孔質層と、を備え、
    前記多孔質層は、前記表面に開口する複数の孔を有する本体層を含み、
    前記複数の孔のそれぞれは、
    前記基板の厚さ方向に延在する延在部と、
    前記延在部における前記表面側の端から前記表面に向かって拡幅された開口部と、を含み、
    前記複数の孔の深さの平均値は、3μm以上100μm以下であり、
    前記深さの前記平均値を前記複数の孔の幅の平均値で除した値は、9以上2500以下である、試料支持体。
  2. 前記幅の前記平均値は、40nm以上350nm以下である、請求項1に記載の試料支持体。
  3. 前記本体層は、絶縁層であり、
    前記多孔質層は、少なくとも前記表面及び前記開口部の内面に沿って形成された導電層を更に含む、請求項1又は2に記載の試料支持体。
  4. 前記導電層の厚さは、10nm以上200nm以下である、請求項3に記載の試料支持体。
  5. 前記本体層は、絶縁層であり、
    前記本体層は、少なくとも前記表面及び前記開口部の内面において外部に露出している、請求項1又は2に記載の試料支持体。
  6. 前記基板及び前記本体層は、金属基板又はシリコン基板の表層が陽極酸化されることで形成されている、請求項3~5のいずれか一項に記載の試料支持体。
  7. 請求項3に記載の試料支持体を用意する工程と、
    前記試料前記表面を押し付けて前記試料の成分を前記表面に転写する工程と、
    エネルギー線を前記表面に照射することで、前記表面に転写された前記成分をイオン化する工程と、を備える、イオン化法。
  8. 請求項5に記載の試料支持体を用意する工程と、
    前記試料前記表面を押し付けて前記試料の成分を前記表面に転写する工程と、
    帯電した微小液滴を前記表面に照射することで、前記表面に転写された前記成分をイオン化する工程と、を備える、イオン化法。
  9. 請求項7又は8に記載のイオン化法が備える複数の工程と、
    イオン化された前記成分を検出する工程と、を備える、質量分析方法。
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