JPWO2007043448A1 - 溶融押し出しフィルムおよび延伸フィルム - Google Patents
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Abstract
(A)エチレン/ノルボルネン共重合体に代表される特定の非晶性ポリオレフィン、および(B)特定の亜リン酸エステルまたは脂肪酸エステルを含有する樹脂組成物を溶融押し出しして形成され、フィルム中に存在する大きさ20μm以上のゲル数が100個/g以下であることを特徴とする溶融押し出しフィルム。
Description
本発明は、特定の非晶性ポリオレフィン樹脂組成物を溶融押し出しして形成されたフィルムに関するものである。本発明の溶融押し出しフィルムはフィルム中のゲルが少なく、表面性、均質性が良好である。上記溶融押し出しフィルムを延伸配向して得られる延伸フィルムは、光学用フィルムとして好適に用いられる。
昨今液晶表示装置の進歩は著しく、携帯電話、パソコンモニターといった小型、中型のものだけでなく、テレビ向けの大型サイズまで進出著しい。液晶表示装置には、表示品位の改善のため各種の光学用フィルムが用いられている。その素材として近年注目されているのが、非晶性ポリオレフィン、いわゆるAPOと呼ばれている樹脂である。非晶性ポリオレフィンとは、脂環族構造を入れて耐熱性を高め非晶性にしたポリオレフィンであるが、透明性が高くまた吸水率が低いため寸法安定性に優れるという特徴がある。さらに芳香族成分を含まないため光弾性定数が極めて低いという特徴があり、かかる特徴が特に大型の液晶表示装置用途に好ましい。
かかる光学用フィルムの製造には、従来から溶媒を用いた溶液流延法が主として用いられてきたが、近年コスト、生産性等の観点から溶融押し出し法が盛んに検討されている。
非晶性ポリオレフィンは、構造上大きく2つに分類することができる。一つはノルボルネン誘導体等の環状オレフィンをモノマーとして開環重合した後、生成する主鎖の二重結合を水素添加することにより得られる開環重合型の非晶性ポリオレフィンであり、例えば日本ゼオン(株)製の商品名ZEONEX、ZEONOR、JSR(株)製の商品名ARTON等の樹脂がすでに上市されている。もう一つは環状オレフィンをエチレンとビニル型共重合させて得られるビニル重合型の非晶性ポリオレフィンであり、商業化されているものとして例えば三井化学(株)製の商品名APEL、TICONA社製の商品名TOPAS等がある。
このうち開環重合型の非晶性ポリオレフィンについてはこれまで溶融押し出し法による製膜や得られたフィルムを延伸した光学用フィルムの検討が数多くなされているが(特許第3407714号公報、特許第3470567号公報および特開2003−131036号公報参照。)、ビニル重合型の非晶性ポリオレフィンについてはほとんど検討がなされていない。
しかし、開環重合型の非晶性ポリオレフィンは、その製造において環状オレフィンの開環重合工程とこれに引き続いて二重結合を水素添加する工程との二段階の工程を要し、製造コスト面の問題がある。一方、ビニル重合型の非晶性ポリオレフィンは、環状オレフィンとエチレンとのビニル型重合工程の一段階で製造することができ、コスト面で有利であることから光学用途をはじめとした各種用途にビニル重合型の非晶性ポリオレフィンまたはその延伸フィルムを使用したいとの要求が強い。
ビニル重合型の非晶性ポリオレフィンが光学用フィルムとしてこれまであまり検討されなかった一因として、該樹脂は開環重合型の非晶性ポリオレフィンと比べ、溶融押し出しによる製膜の際にゲル化を起こしやすく、均質で表面性の良好なフィルムを得るのが難しいことが挙げられる。溶融押し出し法では、通常、ペレット化した樹脂をルーダー内で溶融混練しながら押し出すが、ビニル重合型の非晶性ポリオレフィンではかかる際ペレットにせん断応力がかかると樹脂の架橋によるゲル化を起こしやすい。特に工業的に一般に用いられている単軸のルーダーではその傾向が強く、その結果フィルム表面のゆず肌、フィッシュアイ、ムラ、異物、欠点を生じやすく、包装等の一般用途のフィルムまたはシートには適用可能であっても、精密な光学用途に用いるのは困難である場合が多かった。
一般に溶融押し出し法では、高温による樹脂の熱劣化、焼け、ゲル化等によるフィルム表面の荒れ、ダイ筋、均質性の低下、着色等の問題が生じやすいが、非晶性ポリオレフィンはその構造上、ポリカーボネート等に比べて熱安定性に劣るためその克服が大きな課題であり、これまでいろいろと検討されてきた。例えば特開2002−113767号公報ではフィルター通過後から金型出口までの平均滞留時間を規定してゲル状物質の生成および成長を抑制する方法が、また特開2003−311813号公報では溶融混練におけるスクリューのせん断速度や形状を工夫する方法が提案されている。しかしこれらの方法でもビニル重合型の非晶性ポリオレフィンについてはいずれも効果が不十分である。
一般にフィルム特性を改善するために、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、界面活性化剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等の各種添加剤を加えることが行われている。近年、一分子内に亜りん酸エステル構造とフェノール系構造を有する安定剤が提案されており(特開平10−273494号公報)、それを開環重合型の非晶性ポリオレフィンに用いること(特開2001−261943号公報)およびスチレン系重合体の水素化物に用いること(特開2004−83813号公報)が提案されており、成形加工時における発煙が少なく、成形品の着色の抑制に優れた安定剤であることが報告されているが、溶融押し出し成形の際のゲルの発生の抑制については検討されていない。
ビニル重合型の非晶性ポリオレフィンを溶融押し出し法によりフィルム化するに際していかなる対策を採ればゲルが十分に抑制され表面性が良好な溶融押し出しフィルムが得られるかについては、いまだ何ら知られていない。
ところで、液晶表示装置には、各種の光学用フィルムのひとつとして、液晶の色補償、視野角の拡大、コントラストの向上等を目的として位相差フィルムが用いられている。
しかし、ビニル重合型の非晶性ポリオレフィンを位相差フィルムに適用する検討は、ほとんどなされていない。過去に、厚めのシートを作り2軸延伸により強度が向上したフィルムを得た例が数例報告されているが(特許第2615957号公報、特許第3082768号公報および特開平7−2953号公報参照。)、位相差フィルムとしてその光学特性をうかがい知る知見はほとんどない。わずかに特許第3082768号公報に同時2軸延伸後のフィルム面内の複屈折値が報告されているにすぎない。ビニル重合型の非晶性ポリオレフィンを位相差フィルムに適用した例としては、エチレンとテトラシクロドデセンとの共重合体からなるシートを延伸して複屈折を与えて位相差フィルムとした例が一例報告されている程度であるが(特許第3497894号公報)、このフィルムは位相差フィルムとしての光学特性は十分ではなく、さらに詳しくどのような構造のものが位相差フィルムとして好適なのかは従来全く検討されていない。
非晶性ポリオレフィンを位相差フィルムとして用いる場合、位相差の発現性、すなわち複屈折をいかに発現させるかが重要なポイントとなる。何故なら非晶性ポリオレフィンは総じて光弾性定数が極めて低く、ポリカーボネート等の芳香族縮合系ポリマーと比べて複屈折が発現しにくい特性があるためである。延伸しても複屈折が発現しにくい樹脂の場合、目的の位相差値を有する位相差フィルムを得るには厚みをかなり厚くしなければならなくなり、薄さ、軽さが求められている近年の液晶表示装置の部材としては相応しくなくなってしまう。延伸によって位相差フィルムとして使用可能なレベルの複屈折が発現し得る、位相差フィルムとして相応しいビニル重合型の非晶性ポリオレフィンフィルムの実現が望まれているが、どのような構造のものが相応しいのか知られていない。
ましてやビニル重合型の非晶性ポリオレフィンを材料とし、溶融押し出し法で成形することができ、且つ十分な光学特性を示す位相差フィルムはいまだ知られていない。
かかる光学用フィルムの製造には、従来から溶媒を用いた溶液流延法が主として用いられてきたが、近年コスト、生産性等の観点から溶融押し出し法が盛んに検討されている。
非晶性ポリオレフィンは、構造上大きく2つに分類することができる。一つはノルボルネン誘導体等の環状オレフィンをモノマーとして開環重合した後、生成する主鎖の二重結合を水素添加することにより得られる開環重合型の非晶性ポリオレフィンであり、例えば日本ゼオン(株)製の商品名ZEONEX、ZEONOR、JSR(株)製の商品名ARTON等の樹脂がすでに上市されている。もう一つは環状オレフィンをエチレンとビニル型共重合させて得られるビニル重合型の非晶性ポリオレフィンであり、商業化されているものとして例えば三井化学(株)製の商品名APEL、TICONA社製の商品名TOPAS等がある。
このうち開環重合型の非晶性ポリオレフィンについてはこれまで溶融押し出し法による製膜や得られたフィルムを延伸した光学用フィルムの検討が数多くなされているが(特許第3407714号公報、特許第3470567号公報および特開2003−131036号公報参照。)、ビニル重合型の非晶性ポリオレフィンについてはほとんど検討がなされていない。
しかし、開環重合型の非晶性ポリオレフィンは、その製造において環状オレフィンの開環重合工程とこれに引き続いて二重結合を水素添加する工程との二段階の工程を要し、製造コスト面の問題がある。一方、ビニル重合型の非晶性ポリオレフィンは、環状オレフィンとエチレンとのビニル型重合工程の一段階で製造することができ、コスト面で有利であることから光学用途をはじめとした各種用途にビニル重合型の非晶性ポリオレフィンまたはその延伸フィルムを使用したいとの要求が強い。
ビニル重合型の非晶性ポリオレフィンが光学用フィルムとしてこれまであまり検討されなかった一因として、該樹脂は開環重合型の非晶性ポリオレフィンと比べ、溶融押し出しによる製膜の際にゲル化を起こしやすく、均質で表面性の良好なフィルムを得るのが難しいことが挙げられる。溶融押し出し法では、通常、ペレット化した樹脂をルーダー内で溶融混練しながら押し出すが、ビニル重合型の非晶性ポリオレフィンではかかる際ペレットにせん断応力がかかると樹脂の架橋によるゲル化を起こしやすい。特に工業的に一般に用いられている単軸のルーダーではその傾向が強く、その結果フィルム表面のゆず肌、フィッシュアイ、ムラ、異物、欠点を生じやすく、包装等の一般用途のフィルムまたはシートには適用可能であっても、精密な光学用途に用いるのは困難である場合が多かった。
一般に溶融押し出し法では、高温による樹脂の熱劣化、焼け、ゲル化等によるフィルム表面の荒れ、ダイ筋、均質性の低下、着色等の問題が生じやすいが、非晶性ポリオレフィンはその構造上、ポリカーボネート等に比べて熱安定性に劣るためその克服が大きな課題であり、これまでいろいろと検討されてきた。例えば特開2002−113767号公報ではフィルター通過後から金型出口までの平均滞留時間を規定してゲル状物質の生成および成長を抑制する方法が、また特開2003−311813号公報では溶融混練におけるスクリューのせん断速度や形状を工夫する方法が提案されている。しかしこれらの方法でもビニル重合型の非晶性ポリオレフィンについてはいずれも効果が不十分である。
一般にフィルム特性を改善するために、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、界面活性化剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等の各種添加剤を加えることが行われている。近年、一分子内に亜りん酸エステル構造とフェノール系構造を有する安定剤が提案されており(特開平10−273494号公報)、それを開環重合型の非晶性ポリオレフィンに用いること(特開2001−261943号公報)およびスチレン系重合体の水素化物に用いること(特開2004−83813号公報)が提案されており、成形加工時における発煙が少なく、成形品の着色の抑制に優れた安定剤であることが報告されているが、溶融押し出し成形の際のゲルの発生の抑制については検討されていない。
ビニル重合型の非晶性ポリオレフィンを溶融押し出し法によりフィルム化するに際していかなる対策を採ればゲルが十分に抑制され表面性が良好な溶融押し出しフィルムが得られるかについては、いまだ何ら知られていない。
ところで、液晶表示装置には、各種の光学用フィルムのひとつとして、液晶の色補償、視野角の拡大、コントラストの向上等を目的として位相差フィルムが用いられている。
しかし、ビニル重合型の非晶性ポリオレフィンを位相差フィルムに適用する検討は、ほとんどなされていない。過去に、厚めのシートを作り2軸延伸により強度が向上したフィルムを得た例が数例報告されているが(特許第2615957号公報、特許第3082768号公報および特開平7−2953号公報参照。)、位相差フィルムとしてその光学特性をうかがい知る知見はほとんどない。わずかに特許第3082768号公報に同時2軸延伸後のフィルム面内の複屈折値が報告されているにすぎない。ビニル重合型の非晶性ポリオレフィンを位相差フィルムに適用した例としては、エチレンとテトラシクロドデセンとの共重合体からなるシートを延伸して複屈折を与えて位相差フィルムとした例が一例報告されている程度であるが(特許第3497894号公報)、このフィルムは位相差フィルムとしての光学特性は十分ではなく、さらに詳しくどのような構造のものが位相差フィルムとして好適なのかは従来全く検討されていない。
非晶性ポリオレフィンを位相差フィルムとして用いる場合、位相差の発現性、すなわち複屈折をいかに発現させるかが重要なポイントとなる。何故なら非晶性ポリオレフィンは総じて光弾性定数が極めて低く、ポリカーボネート等の芳香族縮合系ポリマーと比べて複屈折が発現しにくい特性があるためである。延伸しても複屈折が発現しにくい樹脂の場合、目的の位相差値を有する位相差フィルムを得るには厚みをかなり厚くしなければならなくなり、薄さ、軽さが求められている近年の液晶表示装置の部材としては相応しくなくなってしまう。延伸によって位相差フィルムとして使用可能なレベルの複屈折が発現し得る、位相差フィルムとして相応しいビニル重合型の非晶性ポリオレフィンフィルムの実現が望まれているが、どのような構造のものが相応しいのか知られていない。
ましてやビニル重合型の非晶性ポリオレフィンを材料とし、溶融押し出し法で成形することができ、且つ十分な光学特性を示す位相差フィルムはいまだ知られていない。
本発明は上記のような状況に鑑みてなされたものであり、コスト面で有利なビニル重合型の非晶性ポリオレフィンを材料とした溶融押し出し法により得られ、ゲルが少なく表面性の良好な溶融押し出しフィルムおよびその延伸フィルムを提供することを目的とする。
本発明によれば、本発明の上記目的は第一に、(A)下記式(a1)で表されるエチレン単位および下記式(a2)で表される環状オレフィン単位を有し且つガラス転移温度が100〜180℃の範囲にある非晶性ポリオレフィン100重量部、ならびに
(B)下記成分(B1)〜(B6)のうちの少なくとも1つを(B1)〜(B6)の合計量が0.005〜2重量部の範囲で含有する樹脂組成物を溶融押し出しして形成され、
フィルム中に存在する大きさ20μm以上のゲル数が100個/g以下であることを特徴とする溶融押し出しフィルムにより達成される。
(式(a2)中、qは0〜4の整数であり、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜10の芳香族炭化水素基であり、R1とR2またはR3とR4とが結合してアルキリデン基を形成していてもよく、R1とR3またはR2とR4とはそれらが結合している炭素原子と一緒になって環を形成していてもよく、前記環は二重結合を有していてもよい。)
(B1)下記式(I)で表される化合物。
(式(I)中、複数あるR5およびR6はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基であり、R7は炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基または下記式(1)
(式(1)中、R8および複数あるR9はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。)
で表される基である。)
(B2)下記式(II)で表される化合物。
(式(II)中、複数あるR10およびR11はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基であり、複数あるR12はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、Xは単結合、硫黄原子または基−CHR14−(式中、R14は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基である。)であり、Aは単結合、炭素数2〜8のアルキレン基または基*−COR15−(式中、R15は単結合、メチレン基または炭素数2〜8のアルキレン基であり、*は酸素側に結合していることを示す。)であり、R13は炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基または下記式(2)
(式(2)中、R16およびR17はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基であり、YおよびZは、その一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基であり、もう一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基である。)
で表される基である。)
(B3)炭素数1〜20の一価もしくは多価のアルコールと炭素数10〜30の脂肪酸との部分エステル化物または全エステル化物。
(B4)炭素数10〜30の脂肪酸。
(B5)炭素数10〜30の一価または多価の脂肪族アルコール。
(B6)下記式(III)で表される化合物。
(式(III)中、複数あるR18およびR19はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。)
本発明によれば、本発明の上記目的は第二に、(A)上記式(a1)で表されるエチレン単位および上記式(a2)で表される環状オレフィン単位を有し且つガラス転移温度が100〜180℃の範囲にある非晶性ポリオレフィン100重量部、ならびに
(B’)下記成分(B1’)〜(B6’)のうちの少なくとも1つを(B1’)〜(B6’)の合計量が0.005〜2重量部の範囲で含有し、
フィルム中に存在する大きさ20μm以上のゲル数が100個/g以下であることを特徴とする溶融押し出しフィルムによって達成される。
(B1’)上記式(I)で表される化合物およびその酸化生成物から選ばれる少なくとも1種。
(B2’)上記式(II)で表される化合物およびその酸化生成物から選ばれる少なくとも1種。
(B3’)炭素数1〜20の一価もしくは多価のアルコールと炭素数10〜30の脂肪酸との部分エステル化物または全エステル化物ならびにこれらの加水分解生成物から選ばれる少なくとも1種。
(B4’)炭素数10〜30の脂肪酸。
(B5’)炭素数10〜30の一価または多価の脂肪族アルコール。
(B6’)上記式(III)で表される化合物およびその酸化生成物から選ばれる少なくとも1種。
本発明によれば、本発明の上記目的は第三に、上記の溶融押し出しフィルムを延伸配向して得られる延伸フィルムによって達成される。該延伸フィルムは、(A)非晶性ポリオレフィンの(a2)環状オレフィン単位がノルボルネン単位であり、(A)非晶性ポリオレフィン中の(a2)単位の2連鎖部位(ダイアド)におけるメソ型とラセモ型の存在比率が[メソ型]/[ラセモ型]>4である場合に、位相差フィルムとして好適に用いられる。
本発明によれば、本発明の上記目的は第一に、(A)下記式(a1)で表されるエチレン単位および下記式(a2)で表される環状オレフィン単位を有し且つガラス転移温度が100〜180℃の範囲にある非晶性ポリオレフィン100重量部、ならびに
(B)下記成分(B1)〜(B6)のうちの少なくとも1つを(B1)〜(B6)の合計量が0.005〜2重量部の範囲で含有する樹脂組成物を溶融押し出しして形成され、
フィルム中に存在する大きさ20μm以上のゲル数が100個/g以下であることを特徴とする溶融押し出しフィルムにより達成される。
(式(a2)中、qは0〜4の整数であり、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜10の芳香族炭化水素基であり、R1とR2またはR3とR4とが結合してアルキリデン基を形成していてもよく、R1とR3またはR2とR4とはそれらが結合している炭素原子と一緒になって環を形成していてもよく、前記環は二重結合を有していてもよい。)
(B1)下記式(I)で表される化合物。
(式(I)中、複数あるR5およびR6はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基であり、R7は炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基または下記式(1)
(式(1)中、R8および複数あるR9はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。)
で表される基である。)
(B2)下記式(II)で表される化合物。
(式(II)中、複数あるR10およびR11はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基であり、複数あるR12はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、Xは単結合、硫黄原子または基−CHR14−(式中、R14は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基である。)であり、Aは単結合、炭素数2〜8のアルキレン基または基*−COR15−(式中、R15は単結合、メチレン基または炭素数2〜8のアルキレン基であり、*は酸素側に結合していることを示す。)であり、R13は炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基または下記式(2)
(式(2)中、R16およびR17はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基であり、YおよびZは、その一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基であり、もう一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基である。)
で表される基である。)
(B3)炭素数1〜20の一価もしくは多価のアルコールと炭素数10〜30の脂肪酸との部分エステル化物または全エステル化物。
(B4)炭素数10〜30の脂肪酸。
(B5)炭素数10〜30の一価または多価の脂肪族アルコール。
(B6)下記式(III)で表される化合物。
(式(III)中、複数あるR18およびR19はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。)
本発明によれば、本発明の上記目的は第二に、(A)上記式(a1)で表されるエチレン単位および上記式(a2)で表される環状オレフィン単位を有し且つガラス転移温度が100〜180℃の範囲にある非晶性ポリオレフィン100重量部、ならびに
(B’)下記成分(B1’)〜(B6’)のうちの少なくとも1つを(B1’)〜(B6’)の合計量が0.005〜2重量部の範囲で含有し、
フィルム中に存在する大きさ20μm以上のゲル数が100個/g以下であることを特徴とする溶融押し出しフィルムによって達成される。
(B1’)上記式(I)で表される化合物およびその酸化生成物から選ばれる少なくとも1種。
(B2’)上記式(II)で表される化合物およびその酸化生成物から選ばれる少なくとも1種。
(B3’)炭素数1〜20の一価もしくは多価のアルコールと炭素数10〜30の脂肪酸との部分エステル化物または全エステル化物ならびにこれらの加水分解生成物から選ばれる少なくとも1種。
(B4’)炭素数10〜30の脂肪酸。
(B5’)炭素数10〜30の一価または多価の脂肪族アルコール。
(B6’)上記式(III)で表される化合物およびその酸化生成物から選ばれる少なくとも1種。
本発明によれば、本発明の上記目的は第三に、上記の溶融押し出しフィルムを延伸配向して得られる延伸フィルムによって達成される。該延伸フィルムは、(A)非晶性ポリオレフィンの(a2)環状オレフィン単位がノルボルネン単位であり、(A)非晶性ポリオレフィン中の(a2)単位の2連鎖部位(ダイアド)におけるメソ型とラセモ型の存在比率が[メソ型]/[ラセモ型]>4である場合に、位相差フィルムとして好適に用いられる。
1:T−ダイ
2:第一冷却ロール
3:第二冷却ロール
4:第三冷却ロール
5:テイクオフロール
2:第一冷却ロール
3:第二冷却ロール
4:第三冷却ロール
5:テイクオフロール
(A)非晶性ポリオレフィン
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物は、(A)下記式(a1)で表されるエチレン単位および下記式(a2)で表される環状オレフィン単位を有し且つガラス転移温度が100〜180℃の範囲にある非晶性ポリオレフィンを含有する。
(式(a2)中、qは0〜4の整数であり、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜10の芳香族炭化水素基であり、R1とR2またはR3とR4とが結合してアルキリデン基を形成していてもよく、R1とR3またはR2とR4とはそれらが結合している炭素原子と一緒になって環を形成していてもよく、前記環は二重結合を有していてもよい。)
式(a2)において、qは0または1が好ましく、R1〜R4は水素原子であるか、あるいはR1とR3、またはR2とR4とはそれらが結合している炭素原子と一緒になって脂肪族環を形成していることが好ましい。このような非晶性ポリオレフィンは、エチレンと下記式(a2’)
(式(a2’)中、q、R1、R2、R3およびR4は、上記式(a2)におけると同様である。)
で表される環状オレフィンとのビニル型共重合によって製造することができる。(a2)環状オレフィン単位を形成するための(a2’)環状オレフィンとして、具体的には、例えば2−ノルボルネン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン、トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン、ペンタシクロ[6.5.13,6.02,7.09,12]−4−ペンタデセン等を挙げることができる。これらのうち、2−ノルボルネンまたはテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンを使用することがより好ましく、さらに好ましくは2−ノルボルネンである。これらの環状オレフィンは単独で用いても、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
さらに本発明では、かかる(A)非晶性ポリオレフィンのガラス転移温度(Tg)が100℃から180℃の範囲である。Tgが100℃より低いと得られる溶融押し出しフィルムが耐熱安定性に乏しくなるため好ましくない。一方で、Tgが180℃より高いと得られる溶融押し出しフィルムの靭性が低下する傾向にあり、また樹脂の溶融粘度が高くなりすぎて溶融押し出し製膜が困難になるため好ましくない。より好ましいガラス転移温度の範囲は120℃から160℃の範囲である。ビニル重合型共重合体のガラス転移温度は、環状オレフィンの構造と組成比の両方に相関しており、従って繰り返し単位(a1)、(a2)の好ましい組成は用いる環状オレフィンにより異なるが、本発明ではおよそ、モル比で(a1)/(a2)=75/25〜35/65の範囲内であることが好ましい。例えば式(a2)がノルボルネン単位である場合には、モル比は(a1)/(a2)=61/39〜40/60の範囲にあることが好ましく、(a1)/(a2)=57/43〜46/54の範囲であることがより好ましい。繰り返し単位の組成比は例えば13C−NMR測定により求めることができる。
本発明で用いられる(A)非晶性ポリオレフィンは、上記のエチレン単位、環状オレフィン単位以外にも本発明の目的を損なわない範囲で他の共重合可能なビニルモノマーに由来する繰り返し単位を少量含有していてもよい。かかる他のビニルモノマーとして具体的には、例えば下記構造式(a3)で表される環状オレフィン;
(式(a3)中、nは0または1であり、mは0〜4の整数であり、RおよびR20〜R23は同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の飽和脂肪族炭化水素基または炭素数1〜12の不飽和脂肪族炭化水素基であり、R20とR21またはR22とR23とは結合してアルキリデン基を形成していてもよく、R20とR21またはR22とR23とはそれらが結合している炭素原子と一緒になって環を形成していてもよく、かつ該環が二重結合を有していてもよい。)
プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン等の炭素数3〜18のα−オレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3−メチルシクロヘキセン、シクロオクテン等のシクロオレフィン等を挙げることができる。この中で炭素数3〜18のα−オレフィンは共重合の際の分子量調節剤として用いることができ、中でも1−ヘキセンが好適に用いられる。
(A)非晶性ポリオレフィンは、かかるその他のビニルモノマーに由来する繰り返し単位を、1種類のみ有していてもよく、2種類以上を有していてもよい。(A)非晶性ポリオレフィンにおいて、その他のビニルモノマーに由来する繰り返し単位の含有量は、エチレン単位、環状オレフィン単位およびその他のビニルモノマーに由来する繰り返し単位の合計に対して10モル%以下であることが好ましく、より好ましくは5モル%以下である。
本発明では、(A)非晶性ポリオレフィンは1種類のみを用いてもよいし、その組成や分子量が異なる2種類以上の(A)非晶性ポリオレフィンをブレンドして用いてもよい。(A)非晶性ポリオレフィンをブレンドして用いる場合には、上記の好ましい組成比や分子量は、ブレンド物全体についての値である。かかるブレンド物を用いる場合には、相溶性の観点から共重合組成が近いものを用いることが好ましい。組成があまり離れている場合はブレンドにより相分離を起こす場合があり、製膜時またはその後の延伸配向時にフィルムが白化する惧れがある点で好ましくない。
一般に、高分子フィルムを位相差フィルムとして用いるには、延伸配向による複屈折の発現性が大きいことが必要となる。本発明の溶融押し出しフィルムにおいては、環状オレフィン単位の嵩高さが増すほど複屈折が出にくくなる傾向にあり、その観点からは例えば上記式(a2)においてqが1であり、R1〜R4がいずれも水素原子であるテトラシクロドデセン単位よりも、qが0であり、R1〜R4がいずれも水素原子であるノルボルネン単位である方が好ましい。従って本発明に用いられる(A)非晶性ポリオレフィンとしては、その有する環状オレフィン単位のすべてがノルボルネン単位であるエチレン−ノルボルネン共重合体が好ましい。
一般に、エチレン−ノルボルネン共重合体は、共重合組成、重合方法または用いる触媒等によらず、ノルボルネン単位が連鎖した部位がある程度は存在している。ビニル重合タイプのノルボルネン単位の2連鎖部位(以下、「NNダイアド」という。)における立体規則性については、下記式で表されるメソ型およびラセモ型の2通りのタイプがあることが知られている。
本発明の溶融押し出しフィルムを延伸し、位相差フィルムとして使用する場合には、上記の立体規則性におけるメソ型とラセモ型の存在比率が[メソ型]/[ラセモ型]>4であることが好ましい。より好ましくは[メソ型]/[ラセモ型]>6である。この比率が高いほど延伸配向による複屈折の発現性が高くなるため好ましく、上限については特に制限はない。なおここでいうNNダイアド立体異性の存在比率は、エチレン−ノルボルネン共重合体の立体規則性を解析した報告(Macromol.Rapid Commun.20,279(1999))に準じて13C−NMRで求めることが可能である。本明細書におけるメソ型とラセモ型の存在比率とは、重オルトジクロロベンゼン溶媒を用いて13C−NMRを測定したときに下記式で表される値をいう。
[メソ型]/[ラセモ型]=[13C−NMRスペクトルの28.3ppmのピーク面積]/[13C−NMRスペクトルの29.7ppmのピーク面積]
この比率が小さくなるほど、すなわちラセモ型の割合が多くなるほど複屈折の発現性に劣る樹脂となる。このような樹脂フィルムを延伸して位相差フィルムとして使用しようとしても、そもそも所望の複屈折が発現されなかったり、所望の複屈折が得られるとしても膜厚を厚くする、延伸倍率を高くする、延伸温度を低くして延伸する等の手段が必要となり、薄膜化の要請、生産性の観点からは不利となる。
また13C−NMRの解析により、全ノルボルネン単位量に対するNNダイアドの存在比率(モル分率)、すなわちノルボルネン単位がどのくらい連鎖構造を形成しているかを求めることもできる。本発明の溶融押し出しフィルムを延伸し、位相差フィルムとして使用する場合、NNダイアドの存在比率(モル分率)は、およそ0.1〜0.6の範囲にあることが好ましい。ここでいうモル分率とは、重オルトジクロロベンゼン溶媒を用いて13C−NMRを測定したときに下記式で表される値をいう。
NNダイアドの存在比率(モル分率)=[13C−NMRスペクトルの28.3ppmのピーク面積+13C−NMRスペクトルの29.7ppmのピーク面積]/[全ノルボルネン単位の炭素原子1個分のピーク面積]
本発明で用いる(A)非晶性ポリオレフィンの分子量は、温度30℃、濃度1.2g/dLのシクロヘキサン溶液にて測定した還元粘度ηsp/cとして、0.1〜10dL/gの範囲内であることが好ましく、0.3〜3dL/gであることがより好ましい。還元粘度ηsp/cが0.1より小さいとフィルムが脆くなる場合がある点で好ましくなく、一方この値が10より大きいと溶融粘度が高くなりすぎてフィルムの溶融押し出しが困難となる場合があり、好ましくない。
本発明の溶融押し出しフィルムに好ましく用いられるエチレン−ノルボルネン共重合体の合成方法としては、ガラス転移温度が上記の範囲にあり、好ましくは還元粘度で表される分子量ならびにNNダイアドの存在比率および立体規則性が上記の好ましい範囲を満足するものであれば特に制限されない。
しかしながら、エチレン−ノルボルネン共重合体の立体構造は、共重合に使用する触媒により大きく異なることが知られており、例えばバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物との組み合わせに代表されるチーグラー・ナッタ触媒を使って共重合した場合には、その重合機構上組成や立体構造の制御は困難であり、従ってランダム共重合かつ立体規則性に乏しいポリマーを与え、一方、チタン、ジルコニウム等の金属錯体であるメタロセンとMAO(メチルアルミノキサン)等の助触媒からなるメタロセン触媒を用いると、活性点が均一なメタロセン触媒の特徴を生かして様々な制御が可能となることが知られている。実際、エチレン−ノルボルネン共重合体に用いるメタロセンの配位子の違いによって、得られる共重合体の立体規則性が違ってくることが確かめられている(Macromol.Rapid Commun.20,279(1999)参照)。
上記の観点からは、本発明の溶融押し出しフィルムに好ましく用いられるエチレン−ノルボルネン共重合体の合成方法としては、メタロセン触媒を用いる方法によることが好ましい。
メタロセンは、下記式(C)で表される。
(式(C)中、Mはチタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、R27およびR28は同一もしくは異なり、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の飽和炭化水素基、炭素数1〜12の不飽和炭化水素基、炭素数1〜12のアルコキシ基または炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、R25およびR26は同一もしくは異なり、中心金属Mと共にサンドイッチ構造を形成することのできる単環状炭化水素基または多環状炭化水素基であり、R24は基R25と基R26とを連結するブリッジであって、下記式群から選択される。)
(上記式群中、R29〜R32は同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の飽和炭化水素基、炭素数1〜12の不飽和炭化水素基、炭素数1〜12のアルコキシ基または炭素数6〜12のアリールオキシ基であるか、あるいはR29とR30またはR31とR32とが相互に結合して環を形成していてもよい。)
上記R25およびR26としては、シクロペンタジエニル基もしくはインデニル基またはこれらのアルキル置換体もしくはアリール置換体が好ましく、中心金属Mはジルコニウムであることが触媒活性の面で最も好ましい。R27およびR28は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜6のアルキル基またはハロゲン原子であることが好ましく、特に塩素原子であることが好ましい。R29〜R32としては、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基が好ましく、R24としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などの低級アルキレン基;イソプロピリデンなどのアルキリデン基;ジフェニルメチレンなどの置換アルキレン基;シリレン基;ジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基などの置換シリレン基を好ましいものとして例示することができる。R25とR26とが、同一である場合には、メタロセンは中心金属Mに対してC2対称性を有するrac型であるものが好ましい。
好ましいメタロセンとして具体的には、例えばイソプロピリデン−(シクロペンタジエニル)(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン−[(3−メチル)シクロペンタジエニル](1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン−(シクロペンタジエニル)(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレン−ビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジフェニルシリレン−ビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−エチレン−ビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−イソプロピリデン−ビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド等を挙げることができる。これらは単独で用いても、また2種類以上組み合わせて用いても良い。
メタロセンの助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物であるメチルアルミノキサン、あるいはイオン性ホウ素化合物とアルキルアルミニウム化合物の組み合わせ等、公知のものを用いることができる。
上記の如きメタロセン触媒を使用して、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素溶媒を用いた公知の重合方法により目的のエチレン−ノルボルネン共重合体を好ましく重合することができる。得られた共重合体は、アルコール等の貧溶媒に再沈して洗浄する方法または触媒を共重合溶液から分離した後に溶媒を留去することにより、単離することができる。触媒を共重合溶液から分離するには、例えば触媒を吸着剤に吸着させる方法、何らかの添加剤を加えて触媒を凝集させ析出させる方法等を採用することができる。
(B)成分
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物は、さらに(B)下記成分(B1)〜(B6)のうちの少なくとも1つを含有する。
(B1)下記式(I)で表される化合物。
(式(I)中、複数あるR5およびR6はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基であり、R7は炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基または下記式(1)
(式(1)中、R8および複数あるR9はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。)
で表される基である。)
(B2)下記式(II)で表される化合物。
(式(II)中、複数あるR10およびR11はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基であり、複数あるR12はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、Xは単結合、硫黄原子または基−CHR14−(式中、R14は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基である。)であり、Aは単結合、炭素数2〜8のアルキレン基または基*−COR15−(式中、R15は単結合、メチレン基または炭素数2〜8のアルキレン基であり、*は酸素側に結合していることを示す。)であり、R13は炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基または下記式(2)
(式(2)中、R16およびR17はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基であり、YおよびZは、その一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基であり、もう一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基である。)
で表される基である。)
(B3)炭素数1〜20の一価もしくは多価のアルコールと炭素数10〜30の脂肪酸との部分エステル化物または全エステル化物。
(B4)炭素数10〜30の脂肪酸。
(B5)炭素数10〜30の一価または多価の脂肪族アルコール。
(B6)下記式(III)で表される化合物。
(式(III)中、複数あるR18およびR19はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。)
成分(B1)
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物が含有することのできる成分(B1)は、上記式(I)で表される化合物である。
上記式(I)におけるR5およびR6の具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、tert−ノニル基、2−フェニルプロピル基、フェニル基、ベンジル基等を挙げることができる。これらのうち、水素原子、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、tert−ノニル基が好ましく挙げられ、さらには水素原子、メチル基またはtert−ブチル基がより好ましい。特にR5が水素原子であり、R6がtert−ブチル基であることが好ましい。R5およびR6は、それぞれこれらが結合しているフェニル基のオルト位またはパラ位に位置することが好ましい。
上記式(I)におけるR7としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、2−エチル1−ヘキシル基、イソデシル基;上記式(1)で表される基においてR8およびR9が水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、tert−ノニル基、2−フェニルプロピル基、フェニル基、ベンジル基等である基を挙げることができる。これらのうち、R7としては、メチル基もしくはエチル基;上記式(1)で表される基においてR8およびR9が水素原子、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基またはtert−ノニル基である基が好ましく、さらに好ましくはエチル基または上記式(1)で表される基においてR8が水素原子であり且つR9がtert−ブチル基である基が好ましい。上記式(1)で表される基において、R8およびR9は、それぞれこれらが結合しているフェニル基のオルト位またはパラ位に位置することが好ましい。
上記式(I)で表される化合物の具体例としては、例えばビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)−エチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト等を挙げることができ、これらのうち、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトまたはトリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましく、中でもトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましい。
上記式(I)で表される化合物は、耐加水分解性、湿熱安定性に優れ、また耐熱性にも優れるため好ましく使用される。上記式(I)で表される化合物は単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物が上記式(I)で表される化合物を含有する場合、その含有量は、(A)非晶性ポリオレフィン100重量部に対して、好ましくは0.01〜2重量部である。この値が0.01重量部より少ない場合は溶融押し出し時の樹脂の熱劣化抑制効果やフィルムのゲル抑制効果に乏しく表面性が悪いフィルムとなる惧れがあり、また2重量部より多いとフィルム表面へのブリード、フィルムのヘイズ上昇、溶融押し出し時のロール汚れ等の問題が生じる惧れがある。上記式(I)で表される化合物の含有量は、より好ましくは0.01〜1重量部であり、さらに好ましくは0.02〜0.5重量部である。
成分(B2)
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物が含有することのできる成分(B2)は、上記式(II)で表される化合物である。
上記式(II)におけるR10としてはtert−アルキル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基等が好ましい。tert−アルキル基として具体的にはtert−ブチル、tert−ペンチル、tert−オクチル等を挙げることができ、特にtert−ブチル基が好ましい。
R11は、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、具体的には例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基等を挙げることができ、中でもメチル基、tert−ブチル基またはtert−ペンチル基が好ましく、特にtert−ブチル基が好ましい。
R12としては水素原子または炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましく、特に水素原子が好ましい。
R13としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、2−エチル1−ヘキシル基、イソデシル基等の炭素数1〜10のアルキル基または上記式(2)で表される基であることが好ましく、より好ましくはエチル基、2−エチル1−ヘキシル基、イソデシル基等の炭素数2〜8のアルキル基または上記式(2)で表される基であることが好ましく、特に2−エチル1−ヘキシル基または上記式(2)で表される基であることがさらに好ましい。R13が上記式(2)で表される基である場合のR16としては、tert−アルキル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基等が好ましく、前記tert−アルキル基として具体的にはtert−ブチル、tert−ペンチル、tert−オクチル等を挙げることができ、特にtert−ブチル基が好ましい。R13が上記式(2)で表される基である場合のR17としては、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、前記炭素数1〜5のアルキル基として具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基等を挙げることができる。R17としては、これらのうちメチル基、tert−ブチル基またはtert−ペンチル基が好ましく、特にtert−ブチル基が好ましい。R13が上記式(2)で表される基である場合のYおよびZは、その一方がヒドロキシル基でありもう一方が水素原子または炭素数1〜5のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基等)であることが好ましく、特にYがヒドロキシル基でありZが水素原子である基であることが好ましい。
Xとしては、単結合または基−CHR14−においてR14が水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基もしくはtert−ブチル基である基が好ましく、とりわけ単結合であることが好ましい。
Aは、単結合、炭素数2〜8のアルキレン基、基*−COR15−であることが好ましい。炭素数2〜8のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基等が挙げられ、特にプロピレン基が好ましい。基*−COR15−のR15としては、単結合またはエチレン基が好ましい。なお、基*−COR15−の「*」は、酸素側に結合していることを示す。上記のR13が上記式(2)で表される基であるとき、Aは炭素数2〜8のアルキレン基または基*−COR15−であることが好ましく、R13が上記式(2)で表される基以外の基であるときにはAは単結合であることが好ましい。
上記式(II)で表される化合物の具体例としては、例えば6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラキス−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1.3.2]ジオキサフォスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラキス−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1.3.2]ジオキサフォスフェピン、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト等を挙げることができる。
上記式(II)で表される化合物は、耐加水分解性、湿熱安定性および耐熱性に優れるため好ましく使用される。上記式(II)で表される化合物は単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物が上記式(II)で表される化合物を含有する場合、その含有量は、(A)非晶性ポリオレフィン100重量部に対して、好ましくは0.01〜2重量部である。この値が0.01重量部より少ない場合は溶融押し出し時の樹脂の熱劣化抑制効果やフィルムのゲル抑制効果に乏しく表面性が悪いフィルムとなる惧れがあり、また2重量部より多いとフィルム表面へのブリード、フィルムのヘイズ上昇、溶融押し出し時のロール汚れ等の問題が生じる惧れがある。上記式(II)で表される化合物の含有量は、より好ましくは0.01〜1重量部であり、さらに好ましくは0.02〜0.5重量部である。
成分(B3)、(B4)および(B5)
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物が含有することのできる成分(B3)は、炭素数1〜20の一価もしくは多価のアルコールと炭素数10〜30の脂肪酸との部分エステル化物または全エステル化物である。
成分(B3)に該当する化合物の具体例としては、例えばステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘン酸モノグリセリド、パルミチン酸モノグリセリド、グリセリンジアセトモノラウレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、ジオクチルセバケート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、オクチルパルミテート、2−エチルヘキシルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、オレイン酸メチル等を挙げることができる。
成分(B4)は炭素数10〜30の脂肪酸であり、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、セバシン酸等の脂肪酸が挙げられる。
成分(B5)は炭素数10〜30の一価または多価の脂肪族アルコールであり、例えばステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、1,10−デカンジオール等を挙げることができる。
成分(B3)、(B4)または(B5)は、通常、樹脂の離型剤、可塑剤あるいは食品用乳化剤として用いられるものであるが、本発明者らはこれらの化合物が溶融押し出し時に樹脂にかかるせん断応力を抑制する働きがあり、ゲル抑制に効果があることを見出したものである。
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物が上記成分(B3)、(B4)または(B5)を含有する場合、その含有量は(A)非晶性ポリオレフィン100重量部に対する(B3)、(B4)および(B5)の合計量として、0.005〜1重量部であることが好ましい。この含有量は0.01〜0.5重量部であることがより好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.3重量部である。0.005重量部より少ない場合は溶融押し出し時のフィルムのゲル抑制効果に乏しく表面性が悪いフィルムとなる惧れがあり、また1重量部より多いとフィルム表面へのブリード、フィルムのヘイズ上昇、溶融押し出し時の吐出量低下、ロール汚れ等の問題が生じる惧れがある。なお、本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物が、成分(B3)、(B4)および(B5)の2種以上を含有するものである場合には、これらの含有量の合計が上記の範囲内にあることが好ましい。
成分(B6)
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物が含有することのできる成分(B6)は、上記式(III)で表される化合物である。
上記式(III)におけるR18およびR19としては、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基または2−フェニル−2−プロピル基が好ましい。炭素数1〜5のアルキル基としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基等を挙げることができる。R18およびR19としては、これらのうち水素原子、メチル基、tert−ブチル基または2−フェニル−2−プロピル基がより好ましい。上記式(III)で表される化合物として特に好ましくは、R18が水素原子またはメチル基であり、R19がtert−ブチル基または2−フェニル−2−プロピル基である化合物である。R18およびR19は、それぞれこれらが結合しているフェニル基のオルト位またはパラ位に位置することが好ましい。
上記式(III)で表される化合物の具体例としては、例えばサイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)ホスファイトサイクリックネオペンタンテトライルビス[2,4−ジ−(2−フェニル−2−プロピル)フェニル]ホスファイト等が挙げられる。
上記式(III)で表される化合物は、耐加水分解性、湿熱安定性および耐熱性に優れるため好ましく使用される。上記式(III)で表される化合物は単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物が上記式(III)で表される化合物を含有する場合、その含有量は(A)非晶性ポリオレフィン100重量部に対して、好ましくは0.01〜2重量部である。この値が0.01重量部より少ない場合は溶融押し出し時の樹脂の熱劣化抑制効果やフィルムのゲル抑制効果に乏しく表面性が悪いフィルムとなる惧れがあり、また2重量部より多いとフィルム表面へのブリード、フィルムのヘイズ上昇、溶融押し出し時のロール汚れ等の問題が生じる惧れがある。上記式(III)で表される化合物の含有量は、より好ましくは0.01〜1重量部であり、さらに好ましくは0.02〜0.5重量部である。
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物が上記成分(B1)、(B2)、(B3)〜(B5)および(B6)のうちの2つ以上を含有するものである場合、その合計の含有量は(A)非晶性ポリオレフィン100重量部に対して0.005〜2重量部である。この値は好ましくは0.01〜1重量部であり、より好ましくは0.02〜0.5重量部である。この範囲の使用量において、(B)成分のフィルム表面へのブリード、フィルムのヘイズ上昇、溶融押し出し時のロール汚れ等の問題を生じることなく、得られる溶融押し出しフィルムのゲルを効果的に抑制することができることとなる。
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物は、上記の如き成分(B1)〜(B6)のうち、成分(B1)、(B2)および(B3)から選ばれる一種以上を含有していることが好ましく、成分(B1)および(B3)の双方を含有しているか、あるいは成分(B2)および(B3)の双方を含有していることがより好ましい。
その他の成分
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物は、上述の(A)非晶性ポリオレフィンおよび(B)成分を必須成分として含有するが、その他に本発明の目的を損なわない範囲で用途に応じて任意的にその他の成分を含有していてもよい。かかるその他の成分としては、例えばフェノール系酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等を挙げることができる。
上記フェノール系酸化防止剤として具体的には2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェル)プロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)等を挙げることができる。本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物に含有されるこれらのフェノール系酸化防止剤の量としては、(A)非晶性ポリオレフィン100重量部に対して、1重量部以下であることが好ましく、0.001〜1重量部であることがより好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部である。
樹脂組成物の製造方法
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物は、例えば下記の方法(1)〜(4)等の適宜の方法により得ることができる。
(1)ルーダーを用いて(A)非晶性ポリオレフィンおよび(B)成分ならびに任意的に使用されるその他の成分を溶融混練する直接混練法、
(2)(A)非晶性ポリオレフィンの共重合後の溶液から触媒成分を充分に除いた樹脂溶液または(A)非晶性ポリオレフィンのペレットもしくは粉末をシクロヘキサン等の適当な溶剤に溶かして得た溶液に、(B)成分および任意的に使用されるその他の成分を加えた後、ベント口(くち)から溶剤を留去させるフラッシングルーダー、あるいは乾燥機等の手段にて溶媒を除去する溶液混合法、
(3)ルーダーを用いた溶融混練または(2)の溶液混合法により、(B)成分および任意的に使用されるその他の成分を高濃度に(A)非晶性ポリオレフィンに混ぜたマスターバッチを作り、これと(A)非晶性ポリオレフィンとをブレンドするマスターバッチ法、
(4)(A)非晶性ポリオレフィンならびに(B)成分および任意的に使用されるその他の成分を直接ドライブレンドするドライブレンド法、等が挙げられる。
上記の方法のうち、(4)のドライブレンド法がゲル化抑制に効果的であり好ましい。(B)成分として成分(B1)、(B2)または(B6)と成分(B3)とを併用する場合には、成分(B1)、(B2)または(B6)を上記方法(1)〜(3)のうちのいずれかの方法により(A)非晶性ポリオレフィン中に混ぜた後、成分(B3)をドライブレンドする方法や、成分(B1)、(B2)または(B6)と成分(B3)とを合わせて同時に(A)非晶性ポリオレフィンとドライブレンドする方法等が好ましく用いられ、特に成分(B1)、(B2)または(B6)と成分(B3)とを合わせて同時に(A)非晶性ポリオレフィンとドライブレンドする方法が好ましく用いられる。
溶融押し出しフィルムの製造方法
本発明の溶融押し出しフィルムを製造する方法としては、上記のようにして準備された樹脂組成物を、ルーダーにて溶融混練して、Tダイを用いて樹脂を押し出し、冷却ドラムに密着させる方法を好ましく挙げることができる。ここで、ゲルのさらなる抑制のためフィルターを通すことが好ましい。ルーダーは単軸、2軸いずれも用いることができるが、吐出量の正確な制御や工業的規模での生産性の観点から単軸の押し出し機が好ましく用いられる。
単軸押し出し機を用いる場合、スクリュー径が小さいほどゲル化が少ない傾向にあることが知られている。これは、スクリュー径が大きいほど、樹脂が押し出し機内で可塑化に至るのに要する時間が長くなり、そのため樹脂に過度のせん断応力がかかり易くなるためであると考えられている。一方でスクリュー径が小さすぎると吐出量が少なく生産性に劣るため好ましくない。かかる観点から、本発明の溶融押し出しフィルムを製造するに当たっては、スクリュー径が25〜200mmの範囲の押し出し機を用いることが好ましく、より好ましくは60〜150mmである。また、樹脂がせん断応力を受ける時間を可及的に短くするため、スクリューの回転数はできるだけ高くすることが好ましい。
溶融押し出しの際の樹脂温度としては、用いる樹脂組成物の流動性、熱安定性等を勘案して適宜に決定することができるが、本発明では220〜320℃の範囲で行うことが好ましい。樹脂温度が220℃未満では樹脂の溶融粘度が高くなりすぎ、一方で320℃を超えると樹脂の分解劣化、ゲル化によりフィルムの透明性、均質性が損なわれる懸念が生じる。より好ましい樹脂温度は230℃〜290℃の範囲である。
本発明の溶融押し出しフィルムの厚みは、10〜400μmの範囲とすることが好ましく、20〜300μmとすることがより好ましく、さらに好ましくは30〜250μmの範囲である。本発明の溶融押し出しフィルムを延伸配向して位相差フィルムとして使用する場合には、目的とする位相差値や厚み等を勘案して押し出しフィルムの厚みが決められる。
本発明の溶融押し出しフィルムのフィルム幅も、その目的に応じて決められる。生産性の点では幅が広いほうが好ましいが、設備上の制約および製膜安定性の点から、フィルム幅は300mm〜2,500mmの範囲とすることが好ましく、より好ましくは300mm〜2,000mmである。
溶融押し出しにより本発明の溶融押し出しフィルムを製造するに際しては、フィルムの幅方向、長さ方向(進行方向)ともできるだけ厚みむらを小さくすることが好ましい。この時点で厚みむらが大きいと、本発明の溶融押し出しフィルムを延伸配向して位相差フィルムとして使用する場合、得られる位相差フィルムの位相差むらも大きくなってしまうためである。厚みむらは厚みに対して±5%以下であることが好ましく、より好ましくは±2%以下である。
本発明の溶融押し出しフィルムは、長さ100〜1,000m程度の長尺のフィルムをロール状に巻回した巻回体(巻物フィルム)として製造してもよい。
本発明の溶融押し出しフィルムを製造するための溶融押し出しにおいては、静電密着によりフィルムを冷却ロールに密着させる方法を採用することも製膜安定性の向上の面から好ましい。冷却ロールを複数使用する場合には、静電密着は第一冷却ロール(Tダイから押し出された樹脂組成物が最初に接触する冷却ロールをいう。)に対して行われることが好ましい。静電密着はワイヤーを使用して行われ、その方法としては、フィルム全面を密着させる全幅ピンニング、フィルム両端部のみ密着させるエッジピンニングがあるが、いずれの方法も用いることができる。静電密着用のワイヤーとしては、従来から公知のSUS製の金属ワイヤーを好ましく用いることができる。静電密着のための金属ワイヤーは、フィルム面上約4〜7mm離れた空間に適度な張力で張ればよい。両端部のみを静電密着させる場合は、両端部を除くフィルム面上に位置する金属ワイヤーを樹脂性の細管等の絶縁性物質で覆ったものを用いる方法や端部に電圧を印加するための針状のピンを設置する方法などがある。金属ワイヤー等の設置の位置や印加電圧は、製膜状況を観察しながら決定することができるが、電圧としてはおよそ数kV〜10kVの範囲であることが好ましい。
溶融押し出しフィルム
上記のようにして製造される本発明の溶融押し出しフィルムは、フィルム中に存在する大きさ20μm以上のゲル数が100個/g以下である。ここでフィルム中に存在するゲルとは、フィルムをシクロヘキサン溶媒に溶解させた時の未溶解分のことを指す。また大きさ20μm以上のゲル数とは、フィルム重量の8倍のシクロヘキサンにフィルムを温度25℃で充分な時間をかけて溶解させたシクロヘキサン溶液を、目開き20μmのメッシュ状の布であるシルクスクリーンをフィルターとしてろ過し、充分にシクロヘキサンで洗った後にフィルター上に残った未溶解分を顕微鏡で観察して数えた値のことを示す。かかるゲル数が100個/gより多いと、フィルムが外観上も表面性、均一性に劣る場合が多く光学用フィルムとして好ましくない。かかるゲルはブラックライトを照射することにより蛍光発光するため、例えばゲル数計測操作の途中で外部から混入したゴミ類とは容易に判別でき数をカウントすることが可能である。大きさ20μm以上のゲル数は、好ましくは80個/g以下であり、より好ましくは60個/g以下である。
また上記操作の際、フィルターとして目開きの小さいシルクスクリーンを使用すると、フィルター上に残るゲル数は多くなる。本発明の溶融押し出しフィルムにおいては、目開き5μmのシルクスクリーンを用いた場合に測定される大きさ5μm以上のゲル数が1,000個/g以下であることが好ましく、より好ましくは500個/g以下であり、さらに好ましくは200個/g以下である。
本発明の溶融押し出しフィルムは、(A)非晶性ポリオレフィンのほか、原料として使用される樹脂組成物に添加した(B)成分およびこれに由来する誘導体のうちの少なくとも1つを含有する。すなわち、本発明の溶融押し出しフィルムは、(A)上記式(a1)で表されるエチレン単位および上記式(a2)で表される環状オレフィン単位を有し且つガラス転移温度が100〜180℃の範囲にある非晶性ポリオレフィン、ならびに
(B’)下記成分(B1’)〜(B6’)のうちの少なくとも1つを含有する。
(B1’)上記式(I)で表される化合物およびその酸化生成物から選ばれる少なくとも1種。
(B2’)上記式(II)で表される化合物およびその酸化生成物から選ばれる少なくとも1種。
(B3’)炭素数1〜20の一価もしくは多価のアルコールと炭素数10〜30の脂肪酸との部分エステル化物または全エステル化物ならびにこれらの加水分解生成物から選ばれる少なくとも1種。
(B4’)炭素数10〜30の脂肪酸。
(B5’)炭素数10〜30の一価または多価の脂肪族アルコール。
(B6’)上記式(III)で表される化合物およびその酸化生成物から選ばれる少なくとも1種。
上記成分(B1’)のうち、上記式(I)で表される化合物の酸化生成物は、下記式(I’)で表される化合物である。
(上記式(I’)において、R5、R6およびR7は、上記式(I)におけると同様である。)
上記成分(B2’)のうち、上記式(II)で表される化合物の酸化生成物は、下記式(II’)で表される化合物である。
(上記式(II’)において、R10、R11、R12、R13、AおよびXは、上記式(II)におけると同様である。)
上記成分(B6’)のうち、上記式(III)で表される化合物の酸化生成物は、下記式(III’)で表される化合物である。
(上記式(III’)中、R18およびR19は、上記式(III)におけると同様である。)
上記式(I’)、(II’)または(III’)で表される化合物(これらをまとめて「リン酸エステル」という。)は、それぞれ本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物に加えられた成分(B)である上記式(I)、(II)または(III)で表される化合物(これらをまとめて「亜リン酸エステル」という。)がゲル化抑制剤として作用した結果生じる酸化物である。したがって、本発明の溶融押し出しフィルム中におけるリン酸エステルと亜リン酸エステルとの存在比は、溶融押し出し条件に依存するが、好ましくは[亜リン酸エステルの存在割合]/[リン酸エステルの存在割合]=95/5〜5/95である。
上記成分(B3’)のうち、炭素数1〜20の一価もしくは多価のアルコールと炭素数10〜30の脂肪酸との部分エステル化物または全エステル化物の加水分解生成物は、炭素数1〜20の一価もしくは多価のアルコールならびに炭素数10〜30の脂肪酸である。
溶融押し出しフィルム中のかかる加水分解物の含有量(アルコールおよび脂肪酸の合計のモル数)は、残存するエステル化物に対して50モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることが好ましい。
上記成分(B4’)または(B5’)は、それぞれ本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物に添加した成分(B4)または(B5)が溶融押し出しフィルム中にそのまま残存したものである。
したがって、個々の化合物を厳密に比較すると、酸化生成物の分子量または加水分解生成物の合計の分子量はフィルム原料たる樹脂組成物に含有されていた亜リン酸エステルまたは脂肪酸の部分エステル化物もしくは全エステル化物の分子量よりも計算上はわずかに大きくなるが、本発明の溶融押し出しフィルムに含有される成分(B1’)〜(B6’)の量は、フィルム原料として使用した樹脂組成物中の(B1)〜(B6)成分の量と実質的に等しいとみなすことができる。すなわち、本発明の溶融押し出しフィルムにおける成分(B1’)〜(B6’)の含有量は、(A)非晶性ポリオレフィン100重量部に対してそれぞれ以下のとおりである。
(B1’):好ましくは0.01〜2重量部、より好ましくは0.01〜1重量部であり、さらに好ましくは0.02〜0.5重量部。
(B2’):好ましくは0.01〜2重量部、より好ましくは0.01〜1重量部であり、さらに好ましくは0.02〜0.5重量部。
(B3’)〜(B5’):(B3’)、(B4’)および(B5’)の合計量として、好ましくは0.005〜1重量部、より好ましくは0.01〜0.5重量部、さらに好ましくは0.02〜0.3重量部。
(B6’):好ましくは0.01〜2重量部、より好ましくは0.01〜1重量部であり、さらに好ましくは0.02〜0.5重量部。
また、本発明の溶融押し出しフィルムが(B1’)および(B2’)、(B3’)〜(B5’)ならびに(B6’)のうちの2つ以上を含有するものである場合、その合計の含有量は(A)非晶性ポリオレフィン100重量部に対して、0.005〜2重量部である。この値は好ましくは0.01〜1重量部であり、より好ましくは0.02〜0.5重量部である。
本発明の溶融押し出しフィルムは、上記(B’)成分、すなわち(B)成分およびこれに由来する誘導体のうちの少なくとも1つを含有することになるが、これらの成分の含有量は、溶融押し出しフィルムのNMR分析あるいはICP発光分析、蛍光X線分析等の各種元素分析により定量することができるほか、溶融押し出しフィルムをシクロヘキサンに溶解した後、メタノール、イソプロパノール等のアルコール系の貧溶媒を用いて樹脂を再沈した後の上澄み液を濃縮することによりこれら成分を抽出して分析してもよい。例えば成分(B1’)、(B2’)または(B6’)といったリン系化合物は、かかる抽出物の31P−NMR測定により、同定し、定量することが可能である。
本発明の溶融押し出しフィルムは、使用する(A)非晶性ポリオレフィンの光弾性定数が低いことから、光学等方性の高いフィルムとなり、各種光学用フィルムとして好適に使用することができる。
また、(A)非晶性ポリオレフィンの(a2)環状オレフィン単位がノルボルネン単位であり、(A)非晶性ポリオレフィン中の(a2)単位の2連鎖部位(ダイアド)におけるメソ型とラセモ型の存在比率が[メソ型]/[ラセモ型]>4である場合には、本発明の溶融押し出しフィルムは位相差フィルムの原反として好ましく用いられる。
延伸フィルム
本発明の溶融押し出しフィルムは、延伸配向することにより、延伸フィルムとすることができる。
本発明の延伸フィルムを製造するための延伸方法としては、ロール間で延伸する縦一軸延伸、テンターを用いる横一軸延伸、あるいはそれらを組み合わせた同時二軸延伸、逐次二軸延伸など公知の方法を用いることができ、目的に応じて最適の延伸方法を選択することができる。また連続で行うことが生産性の点で好ましいが、バッチ式で行ってもよく、特に制限はない。延伸温度は(A)非晶性ポリオレフィンのガラス転移温度(Tg)に対して、(Tg−20℃)〜(Tg+30℃)の範囲内であることが好ましく、より好ましくは(Tg−10℃)〜(Tg+20℃)の範囲内である。延伸倍率は目的とするフィルム厚み、および延伸フィルムを位相差フィルムとして使用する場合には目的の位相差値等により決められるが、好ましくは縦、横それぞれ1.05〜4倍であり、より好ましくは縦、横それぞれ1.1〜3倍である。
位相差フィルム
本発明の溶融押し出しフィルムに使用された(A)非晶性ポリオレフィンの(a2)環状オレフィン単位がノルボルネン単位であり、(A)非晶性ポリオレフィン中の(a2)単位の2連鎖部位(ダイアド)におけるメソ型とラセモ型の存在比率が[メソ型]/[ラセモ型]>4である場合には、上記延伸フィルムは液晶表示装置の位相差フィルムとして好ましく使用することができる。メソ型とラセモ型の存在比率はさらに好ましくは[メソ型]/[ラセモ型]>6である。
上記位相差フィルムの好ましい態様のひとつとして、波長550nmにおけるフィルム面内の位相差R(550)が下記式(1)
100nm<R(550)<800nm (1)
の範囲内にあり、厚みが10〜150μmである位相差フィルムが挙げられる。ここで位相差Rとは、下記式(2)で定義されるものであり、フィルムに垂直方向に透過する光の位相の遅れを表す特性である。
R=(nx−ny)×d (2)
(上記式(2)中、nxはフィルム面内の遅相軸(最も屈折率が高い軸)の屈折率であり、nyはフィルム面内でnxと垂直方向における屈折率であり、dはフィルムの厚さである。)
R(550)は、100を超え600nm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは120〜600nmである。また厚みは、20〜120μmであることがより好ましく、さらに好ましくは20〜80μmである。かかる位相差フィルムは一軸延伸または二軸延伸により製造することができ、1/4λ板、1/2λ板、λ板等に好適に用いることができる。
また別の好ましい位相差フィルムとして、波長550nmにおけるフィルム面内の位相差R(550)および膜厚方向の位相差K(550)が、それぞれ下記式(3)および(4)
0nm<R(550)<100nm (3)
50nm<K(550)<400nm (4)
の範囲にあり、かつ膜厚が10〜150μmである位相差フィルムを挙げられる。
上記式中、K(550)は波長550nmにおける膜厚方向の位相差値であり、下記式(5)によって定義されるものである。
K={(nx+ny)/2−nz}×d (5)
(上記式(5)中、nxおよびnyはそれぞれフィルム面内のx軸またはy軸方向の屈折率であり、nzはx軸およびy軸に垂直な厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さである。)
位相差Rの定義は前述のものと同様である。R(550)は10〜80nmであることがより好ましく、さらに好ましくは30〜80nmである。またK(550)は80〜250nmであることがより好ましい。厚みは30〜100μmであることがより好ましく、さらに好ましくは30〜85μmである。かかる位相差フィルムは二軸延伸により作成することができ、フィルムの膜厚方向に複屈折を有しており、特に垂直配向(VA)モードの光学補償に好適に用いられる。
上記の如き位相差フィルムを組み込むことのできる液晶表示装置としては、例えばTN型、STN型、TFT型、透過型、反射型、半透過型等の様々な種類を挙げることができ、またTNモード、垂直配向(VA)モード、OCBモード、IPSモード等の様々なモードを挙げることができる。液晶表示装置に使用される位相差フィルムは、採用している液晶やモードの種類により要求される特性は様々に異なり、液晶表示装置ごとに最適の位相差フィルムを選択する必要がある。しかし、本発明の溶融押し出しフィルムは、上記の要件を充たすことにより良好な複屈折の発現性が得られるため、厚みの薄いフィルムで様々な特性の位相差フィルムを提供することが可能である利点を有する。
一般にテレビ等の大型液晶表示装置用の垂直配向モードにおける光学補償の構成としては、光学補償フィルムを液晶セルの両側に挟む2枚構成と液晶セルのどちらか片側のみに用いる1枚構成とがある。2枚構成で用いられる位相差フィルムとしては、30nm<R(550)<80nm、80nm<K(550)<150nmを満足し、フィルム厚みが30〜85μmの範囲にあるものが好ましい。また1枚構成で用いられる場合には、30nm<R(550)<80nm、150nm<K(550)<250nmを満足し、フィルムの厚みが30〜85μmの範囲にあるものが好ましい。本発明の延伸フィルムを使用した位相差フィルムは複屈折の発現性に優れるため、高いK値が必要な1枚構成の位相差フィルムとしても好適に用いることができる。これらの位相差フィルムを組み込んだ垂直配向モードの液晶表示素子では、正面からだけでなく斜めから見たコントラストや色調が良好であり、広い視野角が得られる。
[発明の効果]
本発明によれば、ゲルが抑制された極めて表面性が良好なビニル重合型である非晶性ポリオレフィンの溶融押し出しフィルムを得ることができる。さらに複屈折の発現性の良好な特定の非晶性ポリオレフィンを用いた溶融押し出しフィルムを延伸配向した延伸フィルムは、厚みの薄い位相差フィルムとして好適に使用することができる。かかる位相差フィルムは耐湿性が高く寸法安定性も良好であり、公知の方法にて液晶表示装置に組み込まれ、視野角改善、コントラストの改善、色補償など液晶の表示品位の改善に効果的に優れた効果を奏する。
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物は、(A)下記式(a1)で表されるエチレン単位および下記式(a2)で表される環状オレフィン単位を有し且つガラス転移温度が100〜180℃の範囲にある非晶性ポリオレフィンを含有する。
(式(a2)中、qは0〜4の整数であり、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜10の芳香族炭化水素基であり、R1とR2またはR3とR4とが結合してアルキリデン基を形成していてもよく、R1とR3またはR2とR4とはそれらが結合している炭素原子と一緒になって環を形成していてもよく、前記環は二重結合を有していてもよい。)
式(a2)において、qは0または1が好ましく、R1〜R4は水素原子であるか、あるいはR1とR3、またはR2とR4とはそれらが結合している炭素原子と一緒になって脂肪族環を形成していることが好ましい。このような非晶性ポリオレフィンは、エチレンと下記式(a2’)
(式(a2’)中、q、R1、R2、R3およびR4は、上記式(a2)におけると同様である。)
で表される環状オレフィンとのビニル型共重合によって製造することができる。(a2)環状オレフィン単位を形成するための(a2’)環状オレフィンとして、具体的には、例えば2−ノルボルネン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン、トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン、ペンタシクロ[6.5.13,6.02,7.09,12]−4−ペンタデセン等を挙げることができる。これらのうち、2−ノルボルネンまたはテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンを使用することがより好ましく、さらに好ましくは2−ノルボルネンである。これらの環状オレフィンは単独で用いても、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
さらに本発明では、かかる(A)非晶性ポリオレフィンのガラス転移温度(Tg)が100℃から180℃の範囲である。Tgが100℃より低いと得られる溶融押し出しフィルムが耐熱安定性に乏しくなるため好ましくない。一方で、Tgが180℃より高いと得られる溶融押し出しフィルムの靭性が低下する傾向にあり、また樹脂の溶融粘度が高くなりすぎて溶融押し出し製膜が困難になるため好ましくない。より好ましいガラス転移温度の範囲は120℃から160℃の範囲である。ビニル重合型共重合体のガラス転移温度は、環状オレフィンの構造と組成比の両方に相関しており、従って繰り返し単位(a1)、(a2)の好ましい組成は用いる環状オレフィンにより異なるが、本発明ではおよそ、モル比で(a1)/(a2)=75/25〜35/65の範囲内であることが好ましい。例えば式(a2)がノルボルネン単位である場合には、モル比は(a1)/(a2)=61/39〜40/60の範囲にあることが好ましく、(a1)/(a2)=57/43〜46/54の範囲であることがより好ましい。繰り返し単位の組成比は例えば13C−NMR測定により求めることができる。
本発明で用いられる(A)非晶性ポリオレフィンは、上記のエチレン単位、環状オレフィン単位以外にも本発明の目的を損なわない範囲で他の共重合可能なビニルモノマーに由来する繰り返し単位を少量含有していてもよい。かかる他のビニルモノマーとして具体的には、例えば下記構造式(a3)で表される環状オレフィン;
(式(a3)中、nは0または1であり、mは0〜4の整数であり、RおよびR20〜R23は同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の飽和脂肪族炭化水素基または炭素数1〜12の不飽和脂肪族炭化水素基であり、R20とR21またはR22とR23とは結合してアルキリデン基を形成していてもよく、R20とR21またはR22とR23とはそれらが結合している炭素原子と一緒になって環を形成していてもよく、かつ該環が二重結合を有していてもよい。)
プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン等の炭素数3〜18のα−オレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3−メチルシクロヘキセン、シクロオクテン等のシクロオレフィン等を挙げることができる。この中で炭素数3〜18のα−オレフィンは共重合の際の分子量調節剤として用いることができ、中でも1−ヘキセンが好適に用いられる。
(A)非晶性ポリオレフィンは、かかるその他のビニルモノマーに由来する繰り返し単位を、1種類のみ有していてもよく、2種類以上を有していてもよい。(A)非晶性ポリオレフィンにおいて、その他のビニルモノマーに由来する繰り返し単位の含有量は、エチレン単位、環状オレフィン単位およびその他のビニルモノマーに由来する繰り返し単位の合計に対して10モル%以下であることが好ましく、より好ましくは5モル%以下である。
本発明では、(A)非晶性ポリオレフィンは1種類のみを用いてもよいし、その組成や分子量が異なる2種類以上の(A)非晶性ポリオレフィンをブレンドして用いてもよい。(A)非晶性ポリオレフィンをブレンドして用いる場合には、上記の好ましい組成比や分子量は、ブレンド物全体についての値である。かかるブレンド物を用いる場合には、相溶性の観点から共重合組成が近いものを用いることが好ましい。組成があまり離れている場合はブレンドにより相分離を起こす場合があり、製膜時またはその後の延伸配向時にフィルムが白化する惧れがある点で好ましくない。
一般に、高分子フィルムを位相差フィルムとして用いるには、延伸配向による複屈折の発現性が大きいことが必要となる。本発明の溶融押し出しフィルムにおいては、環状オレフィン単位の嵩高さが増すほど複屈折が出にくくなる傾向にあり、その観点からは例えば上記式(a2)においてqが1であり、R1〜R4がいずれも水素原子であるテトラシクロドデセン単位よりも、qが0であり、R1〜R4がいずれも水素原子であるノルボルネン単位である方が好ましい。従って本発明に用いられる(A)非晶性ポリオレフィンとしては、その有する環状オレフィン単位のすべてがノルボルネン単位であるエチレン−ノルボルネン共重合体が好ましい。
一般に、エチレン−ノルボルネン共重合体は、共重合組成、重合方法または用いる触媒等によらず、ノルボルネン単位が連鎖した部位がある程度は存在している。ビニル重合タイプのノルボルネン単位の2連鎖部位(以下、「NNダイアド」という。)における立体規則性については、下記式で表されるメソ型およびラセモ型の2通りのタイプがあることが知られている。
本発明の溶融押し出しフィルムを延伸し、位相差フィルムとして使用する場合には、上記の立体規則性におけるメソ型とラセモ型の存在比率が[メソ型]/[ラセモ型]>4であることが好ましい。より好ましくは[メソ型]/[ラセモ型]>6である。この比率が高いほど延伸配向による複屈折の発現性が高くなるため好ましく、上限については特に制限はない。なおここでいうNNダイアド立体異性の存在比率は、エチレン−ノルボルネン共重合体の立体規則性を解析した報告(Macromol.Rapid Commun.20,279(1999))に準じて13C−NMRで求めることが可能である。本明細書におけるメソ型とラセモ型の存在比率とは、重オルトジクロロベンゼン溶媒を用いて13C−NMRを測定したときに下記式で表される値をいう。
[メソ型]/[ラセモ型]=[13C−NMRスペクトルの28.3ppmのピーク面積]/[13C−NMRスペクトルの29.7ppmのピーク面積]
この比率が小さくなるほど、すなわちラセモ型の割合が多くなるほど複屈折の発現性に劣る樹脂となる。このような樹脂フィルムを延伸して位相差フィルムとして使用しようとしても、そもそも所望の複屈折が発現されなかったり、所望の複屈折が得られるとしても膜厚を厚くする、延伸倍率を高くする、延伸温度を低くして延伸する等の手段が必要となり、薄膜化の要請、生産性の観点からは不利となる。
また13C−NMRの解析により、全ノルボルネン単位量に対するNNダイアドの存在比率(モル分率)、すなわちノルボルネン単位がどのくらい連鎖構造を形成しているかを求めることもできる。本発明の溶融押し出しフィルムを延伸し、位相差フィルムとして使用する場合、NNダイアドの存在比率(モル分率)は、およそ0.1〜0.6の範囲にあることが好ましい。ここでいうモル分率とは、重オルトジクロロベンゼン溶媒を用いて13C−NMRを測定したときに下記式で表される値をいう。
NNダイアドの存在比率(モル分率)=[13C−NMRスペクトルの28.3ppmのピーク面積+13C−NMRスペクトルの29.7ppmのピーク面積]/[全ノルボルネン単位の炭素原子1個分のピーク面積]
本発明で用いる(A)非晶性ポリオレフィンの分子量は、温度30℃、濃度1.2g/dLのシクロヘキサン溶液にて測定した還元粘度ηsp/cとして、0.1〜10dL/gの範囲内であることが好ましく、0.3〜3dL/gであることがより好ましい。還元粘度ηsp/cが0.1より小さいとフィルムが脆くなる場合がある点で好ましくなく、一方この値が10より大きいと溶融粘度が高くなりすぎてフィルムの溶融押し出しが困難となる場合があり、好ましくない。
本発明の溶融押し出しフィルムに好ましく用いられるエチレン−ノルボルネン共重合体の合成方法としては、ガラス転移温度が上記の範囲にあり、好ましくは還元粘度で表される分子量ならびにNNダイアドの存在比率および立体規則性が上記の好ましい範囲を満足するものであれば特に制限されない。
しかしながら、エチレン−ノルボルネン共重合体の立体構造は、共重合に使用する触媒により大きく異なることが知られており、例えばバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物との組み合わせに代表されるチーグラー・ナッタ触媒を使って共重合した場合には、その重合機構上組成や立体構造の制御は困難であり、従ってランダム共重合かつ立体規則性に乏しいポリマーを与え、一方、チタン、ジルコニウム等の金属錯体であるメタロセンとMAO(メチルアルミノキサン)等の助触媒からなるメタロセン触媒を用いると、活性点が均一なメタロセン触媒の特徴を生かして様々な制御が可能となることが知られている。実際、エチレン−ノルボルネン共重合体に用いるメタロセンの配位子の違いによって、得られる共重合体の立体規則性が違ってくることが確かめられている(Macromol.Rapid Commun.20,279(1999)参照)。
上記の観点からは、本発明の溶融押し出しフィルムに好ましく用いられるエチレン−ノルボルネン共重合体の合成方法としては、メタロセン触媒を用いる方法によることが好ましい。
メタロセンは、下記式(C)で表される。
(式(C)中、Mはチタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、R27およびR28は同一もしくは異なり、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の飽和炭化水素基、炭素数1〜12の不飽和炭化水素基、炭素数1〜12のアルコキシ基または炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、R25およびR26は同一もしくは異なり、中心金属Mと共にサンドイッチ構造を形成することのできる単環状炭化水素基または多環状炭化水素基であり、R24は基R25と基R26とを連結するブリッジであって、下記式群から選択される。)
(上記式群中、R29〜R32は同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の飽和炭化水素基、炭素数1〜12の不飽和炭化水素基、炭素数1〜12のアルコキシ基または炭素数6〜12のアリールオキシ基であるか、あるいはR29とR30またはR31とR32とが相互に結合して環を形成していてもよい。)
上記R25およびR26としては、シクロペンタジエニル基もしくはインデニル基またはこれらのアルキル置換体もしくはアリール置換体が好ましく、中心金属Mはジルコニウムであることが触媒活性の面で最も好ましい。R27およびR28は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜6のアルキル基またはハロゲン原子であることが好ましく、特に塩素原子であることが好ましい。R29〜R32としては、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基が好ましく、R24としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などの低級アルキレン基;イソプロピリデンなどのアルキリデン基;ジフェニルメチレンなどの置換アルキレン基;シリレン基;ジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基などの置換シリレン基を好ましいものとして例示することができる。R25とR26とが、同一である場合には、メタロセンは中心金属Mに対してC2対称性を有するrac型であるものが好ましい。
好ましいメタロセンとして具体的には、例えばイソプロピリデン−(シクロペンタジエニル)(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン−[(3−メチル)シクロペンタジエニル](1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン−(シクロペンタジエニル)(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレン−ビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジフェニルシリレン−ビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−エチレン−ビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−イソプロピリデン−ビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド等を挙げることができる。これらは単独で用いても、また2種類以上組み合わせて用いても良い。
メタロセンの助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物であるメチルアルミノキサン、あるいはイオン性ホウ素化合物とアルキルアルミニウム化合物の組み合わせ等、公知のものを用いることができる。
上記の如きメタロセン触媒を使用して、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素溶媒を用いた公知の重合方法により目的のエチレン−ノルボルネン共重合体を好ましく重合することができる。得られた共重合体は、アルコール等の貧溶媒に再沈して洗浄する方法または触媒を共重合溶液から分離した後に溶媒を留去することにより、単離することができる。触媒を共重合溶液から分離するには、例えば触媒を吸着剤に吸着させる方法、何らかの添加剤を加えて触媒を凝集させ析出させる方法等を採用することができる。
(B)成分
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物は、さらに(B)下記成分(B1)〜(B6)のうちの少なくとも1つを含有する。
(B1)下記式(I)で表される化合物。
(式(I)中、複数あるR5およびR6はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基であり、R7は炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基または下記式(1)
(式(1)中、R8および複数あるR9はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。)
で表される基である。)
(B2)下記式(II)で表される化合物。
(式(II)中、複数あるR10およびR11はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基であり、複数あるR12はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、Xは単結合、硫黄原子または基−CHR14−(式中、R14は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基である。)であり、Aは単結合、炭素数2〜8のアルキレン基または基*−COR15−(式中、R15は単結合、メチレン基または炭素数2〜8のアルキレン基であり、*は酸素側に結合していることを示す。)であり、R13は炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基または下記式(2)
(式(2)中、R16およびR17はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基であり、YおよびZは、その一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基であり、もう一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基である。)
で表される基である。)
(B3)炭素数1〜20の一価もしくは多価のアルコールと炭素数10〜30の脂肪酸との部分エステル化物または全エステル化物。
(B4)炭素数10〜30の脂肪酸。
(B5)炭素数10〜30の一価または多価の脂肪族アルコール。
(B6)下記式(III)で表される化合物。
(式(III)中、複数あるR18およびR19はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。)
成分(B1)
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物が含有することのできる成分(B1)は、上記式(I)で表される化合物である。
上記式(I)におけるR5およびR6の具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、tert−ノニル基、2−フェニルプロピル基、フェニル基、ベンジル基等を挙げることができる。これらのうち、水素原子、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、tert−ノニル基が好ましく挙げられ、さらには水素原子、メチル基またはtert−ブチル基がより好ましい。特にR5が水素原子であり、R6がtert−ブチル基であることが好ましい。R5およびR6は、それぞれこれらが結合しているフェニル基のオルト位またはパラ位に位置することが好ましい。
上記式(I)におけるR7としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、2−エチル1−ヘキシル基、イソデシル基;上記式(1)で表される基においてR8およびR9が水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、tert−ノニル基、2−フェニルプロピル基、フェニル基、ベンジル基等である基を挙げることができる。これらのうち、R7としては、メチル基もしくはエチル基;上記式(1)で表される基においてR8およびR9が水素原子、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基またはtert−ノニル基である基が好ましく、さらに好ましくはエチル基または上記式(1)で表される基においてR8が水素原子であり且つR9がtert−ブチル基である基が好ましい。上記式(1)で表される基において、R8およびR9は、それぞれこれらが結合しているフェニル基のオルト位またはパラ位に位置することが好ましい。
上記式(I)で表される化合物の具体例としては、例えばビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)−エチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト等を挙げることができ、これらのうち、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトまたはトリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましく、中でもトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましい。
上記式(I)で表される化合物は、耐加水分解性、湿熱安定性に優れ、また耐熱性にも優れるため好ましく使用される。上記式(I)で表される化合物は単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物が上記式(I)で表される化合物を含有する場合、その含有量は、(A)非晶性ポリオレフィン100重量部に対して、好ましくは0.01〜2重量部である。この値が0.01重量部より少ない場合は溶融押し出し時の樹脂の熱劣化抑制効果やフィルムのゲル抑制効果に乏しく表面性が悪いフィルムとなる惧れがあり、また2重量部より多いとフィルム表面へのブリード、フィルムのヘイズ上昇、溶融押し出し時のロール汚れ等の問題が生じる惧れがある。上記式(I)で表される化合物の含有量は、より好ましくは0.01〜1重量部であり、さらに好ましくは0.02〜0.5重量部である。
成分(B2)
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物が含有することのできる成分(B2)は、上記式(II)で表される化合物である。
上記式(II)におけるR10としてはtert−アルキル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基等が好ましい。tert−アルキル基として具体的にはtert−ブチル、tert−ペンチル、tert−オクチル等を挙げることができ、特にtert−ブチル基が好ましい。
R11は、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、具体的には例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基等を挙げることができ、中でもメチル基、tert−ブチル基またはtert−ペンチル基が好ましく、特にtert−ブチル基が好ましい。
R12としては水素原子または炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましく、特に水素原子が好ましい。
R13としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、2−エチル1−ヘキシル基、イソデシル基等の炭素数1〜10のアルキル基または上記式(2)で表される基であることが好ましく、より好ましくはエチル基、2−エチル1−ヘキシル基、イソデシル基等の炭素数2〜8のアルキル基または上記式(2)で表される基であることが好ましく、特に2−エチル1−ヘキシル基または上記式(2)で表される基であることがさらに好ましい。R13が上記式(2)で表される基である場合のR16としては、tert−アルキル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基等が好ましく、前記tert−アルキル基として具体的にはtert−ブチル、tert−ペンチル、tert−オクチル等を挙げることができ、特にtert−ブチル基が好ましい。R13が上記式(2)で表される基である場合のR17としては、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、前記炭素数1〜5のアルキル基として具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基等を挙げることができる。R17としては、これらのうちメチル基、tert−ブチル基またはtert−ペンチル基が好ましく、特にtert−ブチル基が好ましい。R13が上記式(2)で表される基である場合のYおよびZは、その一方がヒドロキシル基でありもう一方が水素原子または炭素数1〜5のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基等)であることが好ましく、特にYがヒドロキシル基でありZが水素原子である基であることが好ましい。
Xとしては、単結合または基−CHR14−においてR14が水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基もしくはtert−ブチル基である基が好ましく、とりわけ単結合であることが好ましい。
Aは、単結合、炭素数2〜8のアルキレン基、基*−COR15−であることが好ましい。炭素数2〜8のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基等が挙げられ、特にプロピレン基が好ましい。基*−COR15−のR15としては、単結合またはエチレン基が好ましい。なお、基*−COR15−の「*」は、酸素側に結合していることを示す。上記のR13が上記式(2)で表される基であるとき、Aは炭素数2〜8のアルキレン基または基*−COR15−であることが好ましく、R13が上記式(2)で表される基以外の基であるときにはAは単結合であることが好ましい。
上記式(II)で表される化合物の具体例としては、例えば6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラキス−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1.3.2]ジオキサフォスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラキス−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1.3.2]ジオキサフォスフェピン、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト等を挙げることができる。
上記式(II)で表される化合物は、耐加水分解性、湿熱安定性および耐熱性に優れるため好ましく使用される。上記式(II)で表される化合物は単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物が上記式(II)で表される化合物を含有する場合、その含有量は、(A)非晶性ポリオレフィン100重量部に対して、好ましくは0.01〜2重量部である。この値が0.01重量部より少ない場合は溶融押し出し時の樹脂の熱劣化抑制効果やフィルムのゲル抑制効果に乏しく表面性が悪いフィルムとなる惧れがあり、また2重量部より多いとフィルム表面へのブリード、フィルムのヘイズ上昇、溶融押し出し時のロール汚れ等の問題が生じる惧れがある。上記式(II)で表される化合物の含有量は、より好ましくは0.01〜1重量部であり、さらに好ましくは0.02〜0.5重量部である。
成分(B3)、(B4)および(B5)
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物が含有することのできる成分(B3)は、炭素数1〜20の一価もしくは多価のアルコールと炭素数10〜30の脂肪酸との部分エステル化物または全エステル化物である。
成分(B3)に該当する化合物の具体例としては、例えばステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘン酸モノグリセリド、パルミチン酸モノグリセリド、グリセリンジアセトモノラウレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、ジオクチルセバケート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、オクチルパルミテート、2−エチルヘキシルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、オレイン酸メチル等を挙げることができる。
成分(B4)は炭素数10〜30の脂肪酸であり、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、セバシン酸等の脂肪酸が挙げられる。
成分(B5)は炭素数10〜30の一価または多価の脂肪族アルコールであり、例えばステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、1,10−デカンジオール等を挙げることができる。
成分(B3)、(B4)または(B5)は、通常、樹脂の離型剤、可塑剤あるいは食品用乳化剤として用いられるものであるが、本発明者らはこれらの化合物が溶融押し出し時に樹脂にかかるせん断応力を抑制する働きがあり、ゲル抑制に効果があることを見出したものである。
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物が上記成分(B3)、(B4)または(B5)を含有する場合、その含有量は(A)非晶性ポリオレフィン100重量部に対する(B3)、(B4)および(B5)の合計量として、0.005〜1重量部であることが好ましい。この含有量は0.01〜0.5重量部であることがより好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.3重量部である。0.005重量部より少ない場合は溶融押し出し時のフィルムのゲル抑制効果に乏しく表面性が悪いフィルムとなる惧れがあり、また1重量部より多いとフィルム表面へのブリード、フィルムのヘイズ上昇、溶融押し出し時の吐出量低下、ロール汚れ等の問題が生じる惧れがある。なお、本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物が、成分(B3)、(B4)および(B5)の2種以上を含有するものである場合には、これらの含有量の合計が上記の範囲内にあることが好ましい。
成分(B6)
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物が含有することのできる成分(B6)は、上記式(III)で表される化合物である。
上記式(III)におけるR18およびR19としては、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基または2−フェニル−2−プロピル基が好ましい。炭素数1〜5のアルキル基としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基等を挙げることができる。R18およびR19としては、これらのうち水素原子、メチル基、tert−ブチル基または2−フェニル−2−プロピル基がより好ましい。上記式(III)で表される化合物として特に好ましくは、R18が水素原子またはメチル基であり、R19がtert−ブチル基または2−フェニル−2−プロピル基である化合物である。R18およびR19は、それぞれこれらが結合しているフェニル基のオルト位またはパラ位に位置することが好ましい。
上記式(III)で表される化合物の具体例としては、例えばサイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)ホスファイトサイクリックネオペンタンテトライルビス[2,4−ジ−(2−フェニル−2−プロピル)フェニル]ホスファイト等が挙げられる。
上記式(III)で表される化合物は、耐加水分解性、湿熱安定性および耐熱性に優れるため好ましく使用される。上記式(III)で表される化合物は単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物が上記式(III)で表される化合物を含有する場合、その含有量は(A)非晶性ポリオレフィン100重量部に対して、好ましくは0.01〜2重量部である。この値が0.01重量部より少ない場合は溶融押し出し時の樹脂の熱劣化抑制効果やフィルムのゲル抑制効果に乏しく表面性が悪いフィルムとなる惧れがあり、また2重量部より多いとフィルム表面へのブリード、フィルムのヘイズ上昇、溶融押し出し時のロール汚れ等の問題が生じる惧れがある。上記式(III)で表される化合物の含有量は、より好ましくは0.01〜1重量部であり、さらに好ましくは0.02〜0.5重量部である。
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物が上記成分(B1)、(B2)、(B3)〜(B5)および(B6)のうちの2つ以上を含有するものである場合、その合計の含有量は(A)非晶性ポリオレフィン100重量部に対して0.005〜2重量部である。この値は好ましくは0.01〜1重量部であり、より好ましくは0.02〜0.5重量部である。この範囲の使用量において、(B)成分のフィルム表面へのブリード、フィルムのヘイズ上昇、溶融押し出し時のロール汚れ等の問題を生じることなく、得られる溶融押し出しフィルムのゲルを効果的に抑制することができることとなる。
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物は、上記の如き成分(B1)〜(B6)のうち、成分(B1)、(B2)および(B3)から選ばれる一種以上を含有していることが好ましく、成分(B1)および(B3)の双方を含有しているか、あるいは成分(B2)および(B3)の双方を含有していることがより好ましい。
その他の成分
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物は、上述の(A)非晶性ポリオレフィンおよび(B)成分を必須成分として含有するが、その他に本発明の目的を損なわない範囲で用途に応じて任意的にその他の成分を含有していてもよい。かかるその他の成分としては、例えばフェノール系酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等を挙げることができる。
上記フェノール系酸化防止剤として具体的には2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェル)プロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)等を挙げることができる。本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物に含有されるこれらのフェノール系酸化防止剤の量としては、(A)非晶性ポリオレフィン100重量部に対して、1重量部以下であることが好ましく、0.001〜1重量部であることがより好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部である。
樹脂組成物の製造方法
本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物は、例えば下記の方法(1)〜(4)等の適宜の方法により得ることができる。
(1)ルーダーを用いて(A)非晶性ポリオレフィンおよび(B)成分ならびに任意的に使用されるその他の成分を溶融混練する直接混練法、
(2)(A)非晶性ポリオレフィンの共重合後の溶液から触媒成分を充分に除いた樹脂溶液または(A)非晶性ポリオレフィンのペレットもしくは粉末をシクロヘキサン等の適当な溶剤に溶かして得た溶液に、(B)成分および任意的に使用されるその他の成分を加えた後、ベント口(くち)から溶剤を留去させるフラッシングルーダー、あるいは乾燥機等の手段にて溶媒を除去する溶液混合法、
(3)ルーダーを用いた溶融混練または(2)の溶液混合法により、(B)成分および任意的に使用されるその他の成分を高濃度に(A)非晶性ポリオレフィンに混ぜたマスターバッチを作り、これと(A)非晶性ポリオレフィンとをブレンドするマスターバッチ法、
(4)(A)非晶性ポリオレフィンならびに(B)成分および任意的に使用されるその他の成分を直接ドライブレンドするドライブレンド法、等が挙げられる。
上記の方法のうち、(4)のドライブレンド法がゲル化抑制に効果的であり好ましい。(B)成分として成分(B1)、(B2)または(B6)と成分(B3)とを併用する場合には、成分(B1)、(B2)または(B6)を上記方法(1)〜(3)のうちのいずれかの方法により(A)非晶性ポリオレフィン中に混ぜた後、成分(B3)をドライブレンドする方法や、成分(B1)、(B2)または(B6)と成分(B3)とを合わせて同時に(A)非晶性ポリオレフィンとドライブレンドする方法等が好ましく用いられ、特に成分(B1)、(B2)または(B6)と成分(B3)とを合わせて同時に(A)非晶性ポリオレフィンとドライブレンドする方法が好ましく用いられる。
溶融押し出しフィルムの製造方法
本発明の溶融押し出しフィルムを製造する方法としては、上記のようにして準備された樹脂組成物を、ルーダーにて溶融混練して、Tダイを用いて樹脂を押し出し、冷却ドラムに密着させる方法を好ましく挙げることができる。ここで、ゲルのさらなる抑制のためフィルターを通すことが好ましい。ルーダーは単軸、2軸いずれも用いることができるが、吐出量の正確な制御や工業的規模での生産性の観点から単軸の押し出し機が好ましく用いられる。
単軸押し出し機を用いる場合、スクリュー径が小さいほどゲル化が少ない傾向にあることが知られている。これは、スクリュー径が大きいほど、樹脂が押し出し機内で可塑化に至るのに要する時間が長くなり、そのため樹脂に過度のせん断応力がかかり易くなるためであると考えられている。一方でスクリュー径が小さすぎると吐出量が少なく生産性に劣るため好ましくない。かかる観点から、本発明の溶融押し出しフィルムを製造するに当たっては、スクリュー径が25〜200mmの範囲の押し出し機を用いることが好ましく、より好ましくは60〜150mmである。また、樹脂がせん断応力を受ける時間を可及的に短くするため、スクリューの回転数はできるだけ高くすることが好ましい。
溶融押し出しの際の樹脂温度としては、用いる樹脂組成物の流動性、熱安定性等を勘案して適宜に決定することができるが、本発明では220〜320℃の範囲で行うことが好ましい。樹脂温度が220℃未満では樹脂の溶融粘度が高くなりすぎ、一方で320℃を超えると樹脂の分解劣化、ゲル化によりフィルムの透明性、均質性が損なわれる懸念が生じる。より好ましい樹脂温度は230℃〜290℃の範囲である。
本発明の溶融押し出しフィルムの厚みは、10〜400μmの範囲とすることが好ましく、20〜300μmとすることがより好ましく、さらに好ましくは30〜250μmの範囲である。本発明の溶融押し出しフィルムを延伸配向して位相差フィルムとして使用する場合には、目的とする位相差値や厚み等を勘案して押し出しフィルムの厚みが決められる。
本発明の溶融押し出しフィルムのフィルム幅も、その目的に応じて決められる。生産性の点では幅が広いほうが好ましいが、設備上の制約および製膜安定性の点から、フィルム幅は300mm〜2,500mmの範囲とすることが好ましく、より好ましくは300mm〜2,000mmである。
溶融押し出しにより本発明の溶融押し出しフィルムを製造するに際しては、フィルムの幅方向、長さ方向(進行方向)ともできるだけ厚みむらを小さくすることが好ましい。この時点で厚みむらが大きいと、本発明の溶融押し出しフィルムを延伸配向して位相差フィルムとして使用する場合、得られる位相差フィルムの位相差むらも大きくなってしまうためである。厚みむらは厚みに対して±5%以下であることが好ましく、より好ましくは±2%以下である。
本発明の溶融押し出しフィルムは、長さ100〜1,000m程度の長尺のフィルムをロール状に巻回した巻回体(巻物フィルム)として製造してもよい。
本発明の溶融押し出しフィルムを製造するための溶融押し出しにおいては、静電密着によりフィルムを冷却ロールに密着させる方法を採用することも製膜安定性の向上の面から好ましい。冷却ロールを複数使用する場合には、静電密着は第一冷却ロール(Tダイから押し出された樹脂組成物が最初に接触する冷却ロールをいう。)に対して行われることが好ましい。静電密着はワイヤーを使用して行われ、その方法としては、フィルム全面を密着させる全幅ピンニング、フィルム両端部のみ密着させるエッジピンニングがあるが、いずれの方法も用いることができる。静電密着用のワイヤーとしては、従来から公知のSUS製の金属ワイヤーを好ましく用いることができる。静電密着のための金属ワイヤーは、フィルム面上約4〜7mm離れた空間に適度な張力で張ればよい。両端部のみを静電密着させる場合は、両端部を除くフィルム面上に位置する金属ワイヤーを樹脂性の細管等の絶縁性物質で覆ったものを用いる方法や端部に電圧を印加するための針状のピンを設置する方法などがある。金属ワイヤー等の設置の位置や印加電圧は、製膜状況を観察しながら決定することができるが、電圧としてはおよそ数kV〜10kVの範囲であることが好ましい。
溶融押し出しフィルム
上記のようにして製造される本発明の溶融押し出しフィルムは、フィルム中に存在する大きさ20μm以上のゲル数が100個/g以下である。ここでフィルム中に存在するゲルとは、フィルムをシクロヘキサン溶媒に溶解させた時の未溶解分のことを指す。また大きさ20μm以上のゲル数とは、フィルム重量の8倍のシクロヘキサンにフィルムを温度25℃で充分な時間をかけて溶解させたシクロヘキサン溶液を、目開き20μmのメッシュ状の布であるシルクスクリーンをフィルターとしてろ過し、充分にシクロヘキサンで洗った後にフィルター上に残った未溶解分を顕微鏡で観察して数えた値のことを示す。かかるゲル数が100個/gより多いと、フィルムが外観上も表面性、均一性に劣る場合が多く光学用フィルムとして好ましくない。かかるゲルはブラックライトを照射することにより蛍光発光するため、例えばゲル数計測操作の途中で外部から混入したゴミ類とは容易に判別でき数をカウントすることが可能である。大きさ20μm以上のゲル数は、好ましくは80個/g以下であり、より好ましくは60個/g以下である。
また上記操作の際、フィルターとして目開きの小さいシルクスクリーンを使用すると、フィルター上に残るゲル数は多くなる。本発明の溶融押し出しフィルムにおいては、目開き5μmのシルクスクリーンを用いた場合に測定される大きさ5μm以上のゲル数が1,000個/g以下であることが好ましく、より好ましくは500個/g以下であり、さらに好ましくは200個/g以下である。
本発明の溶融押し出しフィルムは、(A)非晶性ポリオレフィンのほか、原料として使用される樹脂組成物に添加した(B)成分およびこれに由来する誘導体のうちの少なくとも1つを含有する。すなわち、本発明の溶融押し出しフィルムは、(A)上記式(a1)で表されるエチレン単位および上記式(a2)で表される環状オレフィン単位を有し且つガラス転移温度が100〜180℃の範囲にある非晶性ポリオレフィン、ならびに
(B’)下記成分(B1’)〜(B6’)のうちの少なくとも1つを含有する。
(B1’)上記式(I)で表される化合物およびその酸化生成物から選ばれる少なくとも1種。
(B2’)上記式(II)で表される化合物およびその酸化生成物から選ばれる少なくとも1種。
(B3’)炭素数1〜20の一価もしくは多価のアルコールと炭素数10〜30の脂肪酸との部分エステル化物または全エステル化物ならびにこれらの加水分解生成物から選ばれる少なくとも1種。
(B4’)炭素数10〜30の脂肪酸。
(B5’)炭素数10〜30の一価または多価の脂肪族アルコール。
(B6’)上記式(III)で表される化合物およびその酸化生成物から選ばれる少なくとも1種。
上記成分(B1’)のうち、上記式(I)で表される化合物の酸化生成物は、下記式(I’)で表される化合物である。
(上記式(I’)において、R5、R6およびR7は、上記式(I)におけると同様である。)
上記成分(B2’)のうち、上記式(II)で表される化合物の酸化生成物は、下記式(II’)で表される化合物である。
(上記式(II’)において、R10、R11、R12、R13、AおよびXは、上記式(II)におけると同様である。)
上記成分(B6’)のうち、上記式(III)で表される化合物の酸化生成物は、下記式(III’)で表される化合物である。
(上記式(III’)中、R18およびR19は、上記式(III)におけると同様である。)
上記式(I’)、(II’)または(III’)で表される化合物(これらをまとめて「リン酸エステル」という。)は、それぞれ本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物に加えられた成分(B)である上記式(I)、(II)または(III)で表される化合物(これらをまとめて「亜リン酸エステル」という。)がゲル化抑制剤として作用した結果生じる酸化物である。したがって、本発明の溶融押し出しフィルム中におけるリン酸エステルと亜リン酸エステルとの存在比は、溶融押し出し条件に依存するが、好ましくは[亜リン酸エステルの存在割合]/[リン酸エステルの存在割合]=95/5〜5/95である。
上記成分(B3’)のうち、炭素数1〜20の一価もしくは多価のアルコールと炭素数10〜30の脂肪酸との部分エステル化物または全エステル化物の加水分解生成物は、炭素数1〜20の一価もしくは多価のアルコールならびに炭素数10〜30の脂肪酸である。
溶融押し出しフィルム中のかかる加水分解物の含有量(アルコールおよび脂肪酸の合計のモル数)は、残存するエステル化物に対して50モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることが好ましい。
上記成分(B4’)または(B5’)は、それぞれ本発明の溶融押し出しフィルムの原料となる樹脂組成物に添加した成分(B4)または(B5)が溶融押し出しフィルム中にそのまま残存したものである。
したがって、個々の化合物を厳密に比較すると、酸化生成物の分子量または加水分解生成物の合計の分子量はフィルム原料たる樹脂組成物に含有されていた亜リン酸エステルまたは脂肪酸の部分エステル化物もしくは全エステル化物の分子量よりも計算上はわずかに大きくなるが、本発明の溶融押し出しフィルムに含有される成分(B1’)〜(B6’)の量は、フィルム原料として使用した樹脂組成物中の(B1)〜(B6)成分の量と実質的に等しいとみなすことができる。すなわち、本発明の溶融押し出しフィルムにおける成分(B1’)〜(B6’)の含有量は、(A)非晶性ポリオレフィン100重量部に対してそれぞれ以下のとおりである。
(B1’):好ましくは0.01〜2重量部、より好ましくは0.01〜1重量部であり、さらに好ましくは0.02〜0.5重量部。
(B2’):好ましくは0.01〜2重量部、より好ましくは0.01〜1重量部であり、さらに好ましくは0.02〜0.5重量部。
(B3’)〜(B5’):(B3’)、(B4’)および(B5’)の合計量として、好ましくは0.005〜1重量部、より好ましくは0.01〜0.5重量部、さらに好ましくは0.02〜0.3重量部。
(B6’):好ましくは0.01〜2重量部、より好ましくは0.01〜1重量部であり、さらに好ましくは0.02〜0.5重量部。
また、本発明の溶融押し出しフィルムが(B1’)および(B2’)、(B3’)〜(B5’)ならびに(B6’)のうちの2つ以上を含有するものである場合、その合計の含有量は(A)非晶性ポリオレフィン100重量部に対して、0.005〜2重量部である。この値は好ましくは0.01〜1重量部であり、より好ましくは0.02〜0.5重量部である。
本発明の溶融押し出しフィルムは、上記(B’)成分、すなわち(B)成分およびこれに由来する誘導体のうちの少なくとも1つを含有することになるが、これらの成分の含有量は、溶融押し出しフィルムのNMR分析あるいはICP発光分析、蛍光X線分析等の各種元素分析により定量することができるほか、溶融押し出しフィルムをシクロヘキサンに溶解した後、メタノール、イソプロパノール等のアルコール系の貧溶媒を用いて樹脂を再沈した後の上澄み液を濃縮することによりこれら成分を抽出して分析してもよい。例えば成分(B1’)、(B2’)または(B6’)といったリン系化合物は、かかる抽出物の31P−NMR測定により、同定し、定量することが可能である。
本発明の溶融押し出しフィルムは、使用する(A)非晶性ポリオレフィンの光弾性定数が低いことから、光学等方性の高いフィルムとなり、各種光学用フィルムとして好適に使用することができる。
また、(A)非晶性ポリオレフィンの(a2)環状オレフィン単位がノルボルネン単位であり、(A)非晶性ポリオレフィン中の(a2)単位の2連鎖部位(ダイアド)におけるメソ型とラセモ型の存在比率が[メソ型]/[ラセモ型]>4である場合には、本発明の溶融押し出しフィルムは位相差フィルムの原反として好ましく用いられる。
延伸フィルム
本発明の溶融押し出しフィルムは、延伸配向することにより、延伸フィルムとすることができる。
本発明の延伸フィルムを製造するための延伸方法としては、ロール間で延伸する縦一軸延伸、テンターを用いる横一軸延伸、あるいはそれらを組み合わせた同時二軸延伸、逐次二軸延伸など公知の方法を用いることができ、目的に応じて最適の延伸方法を選択することができる。また連続で行うことが生産性の点で好ましいが、バッチ式で行ってもよく、特に制限はない。延伸温度は(A)非晶性ポリオレフィンのガラス転移温度(Tg)に対して、(Tg−20℃)〜(Tg+30℃)の範囲内であることが好ましく、より好ましくは(Tg−10℃)〜(Tg+20℃)の範囲内である。延伸倍率は目的とするフィルム厚み、および延伸フィルムを位相差フィルムとして使用する場合には目的の位相差値等により決められるが、好ましくは縦、横それぞれ1.05〜4倍であり、より好ましくは縦、横それぞれ1.1〜3倍である。
位相差フィルム
本発明の溶融押し出しフィルムに使用された(A)非晶性ポリオレフィンの(a2)環状オレフィン単位がノルボルネン単位であり、(A)非晶性ポリオレフィン中の(a2)単位の2連鎖部位(ダイアド)におけるメソ型とラセモ型の存在比率が[メソ型]/[ラセモ型]>4である場合には、上記延伸フィルムは液晶表示装置の位相差フィルムとして好ましく使用することができる。メソ型とラセモ型の存在比率はさらに好ましくは[メソ型]/[ラセモ型]>6である。
上記位相差フィルムの好ましい態様のひとつとして、波長550nmにおけるフィルム面内の位相差R(550)が下記式(1)
100nm<R(550)<800nm (1)
の範囲内にあり、厚みが10〜150μmである位相差フィルムが挙げられる。ここで位相差Rとは、下記式(2)で定義されるものであり、フィルムに垂直方向に透過する光の位相の遅れを表す特性である。
R=(nx−ny)×d (2)
(上記式(2)中、nxはフィルム面内の遅相軸(最も屈折率が高い軸)の屈折率であり、nyはフィルム面内でnxと垂直方向における屈折率であり、dはフィルムの厚さである。)
R(550)は、100を超え600nm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは120〜600nmである。また厚みは、20〜120μmであることがより好ましく、さらに好ましくは20〜80μmである。かかる位相差フィルムは一軸延伸または二軸延伸により製造することができ、1/4λ板、1/2λ板、λ板等に好適に用いることができる。
また別の好ましい位相差フィルムとして、波長550nmにおけるフィルム面内の位相差R(550)および膜厚方向の位相差K(550)が、それぞれ下記式(3)および(4)
0nm<R(550)<100nm (3)
50nm<K(550)<400nm (4)
の範囲にあり、かつ膜厚が10〜150μmである位相差フィルムを挙げられる。
上記式中、K(550)は波長550nmにおける膜厚方向の位相差値であり、下記式(5)によって定義されるものである。
K={(nx+ny)/2−nz}×d (5)
(上記式(5)中、nxおよびnyはそれぞれフィルム面内のx軸またはy軸方向の屈折率であり、nzはx軸およびy軸に垂直な厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さである。)
位相差Rの定義は前述のものと同様である。R(550)は10〜80nmであることがより好ましく、さらに好ましくは30〜80nmである。またK(550)は80〜250nmであることがより好ましい。厚みは30〜100μmであることがより好ましく、さらに好ましくは30〜85μmである。かかる位相差フィルムは二軸延伸により作成することができ、フィルムの膜厚方向に複屈折を有しており、特に垂直配向(VA)モードの光学補償に好適に用いられる。
上記の如き位相差フィルムを組み込むことのできる液晶表示装置としては、例えばTN型、STN型、TFT型、透過型、反射型、半透過型等の様々な種類を挙げることができ、またTNモード、垂直配向(VA)モード、OCBモード、IPSモード等の様々なモードを挙げることができる。液晶表示装置に使用される位相差フィルムは、採用している液晶やモードの種類により要求される特性は様々に異なり、液晶表示装置ごとに最適の位相差フィルムを選択する必要がある。しかし、本発明の溶融押し出しフィルムは、上記の要件を充たすことにより良好な複屈折の発現性が得られるため、厚みの薄いフィルムで様々な特性の位相差フィルムを提供することが可能である利点を有する。
一般にテレビ等の大型液晶表示装置用の垂直配向モードにおける光学補償の構成としては、光学補償フィルムを液晶セルの両側に挟む2枚構成と液晶セルのどちらか片側のみに用いる1枚構成とがある。2枚構成で用いられる位相差フィルムとしては、30nm<R(550)<80nm、80nm<K(550)<150nmを満足し、フィルム厚みが30〜85μmの範囲にあるものが好ましい。また1枚構成で用いられる場合には、30nm<R(550)<80nm、150nm<K(550)<250nmを満足し、フィルムの厚みが30〜85μmの範囲にあるものが好ましい。本発明の延伸フィルムを使用した位相差フィルムは複屈折の発現性に優れるため、高いK値が必要な1枚構成の位相差フィルムとしても好適に用いることができる。これらの位相差フィルムを組み込んだ垂直配向モードの液晶表示素子では、正面からだけでなく斜めから見たコントラストや色調が良好であり、広い視野角が得られる。
[発明の効果]
本発明によれば、ゲルが抑制された極めて表面性が良好なビニル重合型である非晶性ポリオレフィンの溶融押し出しフィルムを得ることができる。さらに複屈折の発現性の良好な特定の非晶性ポリオレフィンを用いた溶融押し出しフィルムを延伸配向した延伸フィルムは、厚みの薄い位相差フィルムとして好適に使用することができる。かかる位相差フィルムは耐湿性が高く寸法安定性も良好であり、公知の方法にて液晶表示装置に組み込まれ、視野角改善、コントラストの改善、色補償など液晶の表示品位の改善に効果的に優れた効果を奏する。
以下に実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。実施例および比較例で行った物性測定は以下の方法で行った。
(1)ガラス転移温度(Tg):TA Instruments社製2920型DSC装置を使用し、昇温速度20℃/分で測定し、変曲点を求めた。
(2)共重合体の分子量:濃度1.2g/dLのシクロヘキサン溶液での、30℃における還元粘度ηsp/c(dL/g)を測定した。
(3)共重合体の13C−NMR測定:日本電子(株)製JNM−α400型のNMR装置を使用した。重オルトジクロロベンゼン溶媒に溶解し、温度100℃で測定した。化学シフトの基準としてテトラメチルシランを用いた。定量のため、150MHz 13C−NMRスペクトルを逆ゲーテッドデカップリングモードで測定した。
(4)フィルムの全光線透過率およびヘイズ値:日本電色工業(株)製濁度計NDH−2000型を用いて測定した。
(5)フィルムの面内位相差値Rおよび膜厚方向の位相差値K:日本分光(株)製分光エリプソメーターM220を使用し、光線波長550nmで測定した。面内位相差値Rは、入射光線がフィルム面に垂直な状態で測定したものである。膜厚方向位相差値Kは、入射光線とフィルム面との角度を少しずつ変えそれぞれの角度での位相差値を測定し、公知の屈折率楕円体の式でカーブフィッティングすることにより三次元屈折率であるnx、nyおよびnzを求め、下記式
K={(nx+ny)/2−nz}×d
に代入することにより求めた。なおその際、フィルムの平均屈折率が必要となる。フィルムの平均屈折率は、別途にアッベ屈折計((株)アタゴ製、商品名「アッベ屈折計2−TERT」)を用いて測定した。
(6)フィルムの厚み:アンリツ(株)製の電子マイクロ膜厚計で測定した。
(7)フィルムの光弾性定数:日本分光(株)製分光エリプソメーターM220にて測定した。測定波長550nmにてフィルムに応力を与えたときの位相差値の変化から算出した。
(8)フィルム中のゲル数:フィルム10gをシクロヘキサン80gに温度25℃で24時間かけて溶解したシクロヘキサン溶液を、目開き20μmまたは5μmのポリエステル繊維からなるシルクスクリーンをフィルターとしてろ過し、充分にシクロヘキサンで洗った後にスライドガラスで挟んだフィルター上の未溶解分をブラックライトを照射しながら顕微鏡で観察し、蛍光発光している粒子数をカウントすることにより求めた。
実施例および比較例で使用した(A)非晶性ポリオレフィンは、以下のとおりである。
TOPAS6013(TICONA社製):メタロセン触媒により合成されたエチレン/ノルボルネン共重合体(Tg=140℃)である。13C−NMR測定により、全ノルボルネン単位量に対するNNダイアドの存在比率(モル分率)は0.40であり、ダイアド中のメソ型とラセモ型の存在比率は、[メソ型]/[ラセモ型]=0.36/0.04=9と求められた。また、(a1)エチレン単位と(a2)環状オレフィン(ノルボルネン)単位の比率は、モル比で50/50であった。分子量は、還元粘度ηsp/cとして0.80dL/gであった。
TOPAS5013(TICONA社製):メタロセン触媒により合成されたエチレン/ノルボルネン共重合体(Tg=140℃)である。13C−NMR測定により、全ノルボルネン単位量に対するNNダイアドの存在比率(モル分率)は0.46であり、ダイアド中のメソ型とラセモ型の存在比率は、[メソ型]/[ラセモ型]=0.05/0.41=0.12と求められた。(a1)エチレン単位と(a2)環状オレフィン(ノルボルネン)単位の比率は、モル比で50/50であった。分子量は、還元粘度ηsp/cとして0.66dL/gであった。
APEL(三井化学(株)製):エチレン/テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン共重合体である。13C−NMR測定により、(a1)エチレン単位と(a2)環状オレフィン単位の比率は、モル比で[(a1)]/[(a2)]=67/33と求められた。分子量は、還元粘度ηsp/cとして0.84dL/gであった。
[実施例1]
TOPAS6013のペレットを100℃で4時間乾燥後、該ペレット100重量部に対して、粉末のトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを0.1重量部添加してドライブレンドした。このブレンド物を直径30mmの単軸押し出し機、公称径20μmのパウダー焼結フィルターを用い、樹脂温度270℃でTダイから溶融押し出しして、製膜速度2.5m/分で冷却ドラムを経て連続的に巻き取ることにより幅320mmの溶融押し出しフィルムを得た。このフィルムは透明性に優れ、また外観ではゆず肌、異物等も観察されず表面性、均質性も良好であった。厚みは平均160μmであった。Tgは138℃、全光線透過率は91.3%、ヘイズは0.2%であった。このフィルムの光弾性定数を求めたところ−6.1×10−12Pa−1であった。このフィルムをシクロヘキサンに溶解してフィルム中に存在するゲル数を調べたところ、目開き20μmのシルクスクリーンを用いた場合で65個/g、目開き5μmのシルクスクリーンを用いた場合で374個/gであった。またフィルムをシクロヘキサンに溶解した後、メタノールにより再沈し、ろ液を濃縮することにより添加剤を抽出して31P−NMR分析を行ったところ、亜りん酸エステル(トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト)の含有量が0.055重量%、りん酸エステル(トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート)が0.041重量%と求められた。なお、亜りん酸エステルの加水分解物およびりん酸エステルの加水分解物は観察されなかった。評価結果を表1に示した。
[実施例2]
実施例1において、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトの添加量を0.1重量部から0.2重暈部に変更した他は実施例1と同様にして溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れた溶融押し出しフィルムを得た。同様にして添加剤の分析も実施した。その特性を表1に示した。
[実施例3]
実施例1において、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトの代わりに、粉末のトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト0.05重量部および粉末のステアリン酸モノグリセリド0.05重量部添加してドライブレンドし、また製膜速度を3.5m/分に変更した他は、実施例1と同様に溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れた溶融押し出しフィルムを得た。その特性を表1に示した。なお、フィルム中のステアリン酸モノグリセリドの含量は、脂肪酸エステルの欄に示した。
[実施例4]
TOPAS5013のペレット99重量部とトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト1重量部を30mmφの2軸押し出し機を用いて溶融混練し、添加剤含有量が1重量%のマスターペレットを作製し、さらに100℃にて4時間乾燥した。
これとは別にTOPAS5013ペレットを100℃で4時間乾燥した。
乾燥後のマスターペレット10重量部、乾燥後のTOPAS5013のペレット90重量部およびステアリン酸モノグリセリド0.1重量部をドライブレンドして得た樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れた押し出しフィルムを得た。フィルムの光弾性定数は−9.3×10−12Pa−1であった。その特性を表1に示した。
[実施例5]
実施例1において、TOPAS6013の代わりにAPELを用いた他は実施例1と同様にして溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れたフィルムを得た。フィルムの光弾性定数は−7.5×10−12Pa−1であった。その特性を表1に示した。
[実施例6]
TOPAS6013のペレット100重量部に対して、粉末の6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラキス−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1.3.2]ジオキサフォスフェピン(住友化学(株)製スミライザーGP)を0.1重量部を添加してドライブレンドした。
このブレンド物を直径30mmの単軸押し出し機、公称径20μmのパウダー焼結フィルターを用い、樹脂温度280℃でTダイから溶融押し出しして、製膜速度2.5m/分で冷却ドラムを経て連続的に巻き取ることにより幅315mmの溶融押し出しフィルムを得た。該フィルムは透明性に優れ、また外観ではゆず肌、異物等も観察されず表面性、均質性も良好であった。厚みは平均165μmであった。Tgは137℃、全光線透過率は91.7%、ヘイズは0.3%であった。このフィルムの光弾性定数を求めたところ−6.1×10−12Pa−1であった。またフィルムをシクロヘキサンに溶解してフィルム中に存在するゲル数を調べたところ、目開き20μmのシルクスクリーンを用いた場合で70個/g、目開き5μmのシルクスクリーンを用いた場合で258個/gであった。
またフィルムをシクロヘキサンに溶解した後、メタノールにより再沈し、ろ液を濃縮することにより添加剤を抽出して31P−NMR分析を行ったところ、亜りん酸エステル(6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラキス−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1.3.2]ジオキサフォスフェピン)の含有量が0.026重量%、該亜りん酸エステルの酸化物であるりん酸エステルが0.074重量%と求められた。なお亜りん酸エステルの加水分解物およびりん酸エステルの加水分解物は観察されなかった。結果を表1に示した。
[実施例7]
実施例6において、6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラキス−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1.3.2]ジオキサフォスフェピンの添加量を0.1重量部から0.2重量部に変更した他は実施例6と同様にして溶融製膜を行い、表面性、均質性に優れた溶融押し出しフィルムを得た。同様にして添加剤の分析も実施した。その特性を表1に示した。
[実施例8]
実施例6において、6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラキス−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1.3.2]ジオキサフォスフェピン0.1重量部の代わりに、6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラキス−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1.3.2]ジオキサフォスフェピン0.05重量部および粉末のステアリン酸モノグリセリド0.05重量部を添加してドライブレンドし、また製膜速度を3.5m/分に変更した他は、実施例6と同様に溶融製膜を行い、表面性、均質性に優れた溶融押し出しフィルムを得た。その特性を表1に示した。
[実施例9]
TOPAS5013のペレット99重量部と6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラキス−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1.3.2]ジオキサフォスフェピン1重量部を30mmφの2軸押し出し機を用いて溶融混練して添加剤の含有量が1重量%のマスターペレットを作製し、さらに100℃にて4時間乾燥した。
これとは別にTOPAS5013のペレットを100℃で4時間乾燥した。
乾燥後のマスターペレット10重量部、乾燥後のTOPAS5013のペレット90重量部およびステアリン酸モノグリセリド0.1重量部をドライブレンドして得た樹脂組成物を用いて実施例6と同様にして溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れた押し出しフィルムを得た。フィルムの光弾性定数は−9.3×10−12Pa−1であった。その特性を表1に示した。
[実施例10]
実施例6において、TOPAS6013の代わりにAPELを用いた他は実施例6と同様にして、表面性、均質性に優れたフィルムを得た。フィルムの光弾性定数は−7.5×10−12Pa−1であった。その特性を表1に示した。
[実施例11]
TOPAS6013のペレットを100℃で4時間乾燥後、該ペレット100重量部に対して、粉末のビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)−エチルホスファイトを0.1重量部添加してドライブレンドした。
このブレンド物を直径30mmの単軸押し出し機、公称径20μmのパウダー焼結フィルターを用い、樹脂温度280℃でTダイから溶融押し出しして、製膜速度2.5m/分で冷却ドラムを経て連続的に巻き取ることにより幅315mmの溶融押し出しフィルムを得た。該フィルムは透明性に優れ、また外観ではゆず肌、異物等も観察されず表面性、均質性も良好であった。厚みは平均175μmであった。Tgは137℃、全光線透過率は91.5%、ヘイズは0.2%であった。このフィルムの光弾性定数を求めたところ−6.1×10−12Pa−1であった。またフィルムをシクロヘキサンに溶解してフィルム中に存在するゲル数を調べたところ、目開き20μmのシルクスクリーンを用いた場合で80個/g、目開き5μmのシルクスクリーンを用いた場合で332個/gであった。
またフィルムをシクロヘキサンに溶解した後、メタノールにより再沈し、ろ液を濃縮することにより添加剤を抽出して31P−NMR分析を行ったところ、亜りん酸エステル(ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)−エチルホスファイト)の含有量が0.040重量%、該亜りん酸エステルの酸化物であるりん酸エステルが0.058重量%と求められた。なお亜りん酸エステルの加水分解物およびりん酸エステルの加水分解物は観察されなかった。結果を表1に示した。
[実施例12]
実施例11において、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)−エチルホスファイト0.1重量部の代わりに、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト(旭電化工業(株)製アデカスタブHP−10)0.1重量部を用いた他は実施例11と同様にして溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れた溶融押し出しフィルムを得た。同様にして添加剤の分析も実施した。その特性を表1に示した。
[実施例13]
実施例11において、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)−エチルホスファイト0.1重量部の代わりに、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト0.05重量部および粉末のステアリン酸モノグリセリド0.05重量部を添加してドライブレンドし、また製膜速度を3.5m/分に変更した他は、実施例11と同様に溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れた溶融押し出しフィルムを得た。その特性を表1に示した。
[実施例14]
TOPAS5013のペレット99重量部と2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト1重量部を30mmφの2軸押し出し機を用いて溶融混練して添加剤の含有量が1重量%のマスターペレットを作製し、さらに100℃で4時間乾燥した。
これとは別に、TOPAS5013のペレットを100℃にて4時間乾燥した。
乾燥後のマスターペレット10重量部、乾燥後のTOPAS5013のペレット90重量部およびステアリン酸モノグリセリド0.1重量部をドライブレンドして得た樹脂組成物を使用したほかは実施例11と同様にして溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れた押し出しフィルムを得た。フィルムの光弾性定数は−9.3×10−12Pa−1であった。その特性を表1に示した。
[実施例15]
実施例12において、TOPAS6013の代わりにAPELを用いた他は実施例12と同様にして、表面性、均質性に優れたフィルムを得た。フィルムの光弾性定数は−7.5×10−12Pa−1であった。その特性を表1に示した。
[実施例16]
TOPAS6013のペレットを100℃で4時間乾燥後、該ペレット100重量部に対して、理研ビタミン(株)製の商品名「リケマールS−100A」(主成分:ステアリン酸モノグリセリド)の粉末0.1重量部を添加してドライブレンドした。このブレンド物を直径30mmの単軸押し出し機、公称径20μmのパウダー焼結フィルターを用い、樹脂温度270℃でTダイから溶融押し出しして、製膜速度2.5m/分で冷却ドラムを経て連続的に巻き取ることにより幅320mmの溶融押し出しフィルムを得た。該フィルムは透明性に優れ、また外観ではゆず肌、異物等も観察されず表面性、均質性も良好であった。厚みは平均152μmであった。Tgは137℃、全光線透過率は90.8%、ヘイズは0.4%であった。このフィルムの光弾性定数を求めたところ−6.1×10−12Pa−1であった。またフィルムをシクロヘキサンに溶解してフィルム中に存在するゲル数を調べたところ、目開き20μmのシルクスクリーンを用いた場合で68個/g、目開き5μmのシルクスクリーンを用いた場合で713個/gであった。またフィルムの1H−NMR分析から、ステアリン酸モノグリセリドの含有量が0.087重量%と求められた。結果を表1に示した。
[実施例17]
実施例16において、リケマールS−100Aの添加量を0.1重量部から0.2重量部に変更した他は実施例16と同様にして溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れた溶融押し出しフィルムを得た。その特性を表1に示した。
[実施例18]
実施例16において、リケマールS−100Aの代わりに、理研ビタミン(株)製の商品名「リケマールSL−900」(主成分:ステアリルステアレートおよびステアリン酸トリグリセリド)を0.2重量部、添加してドライブレンドし、また製膜速度を3.2m/分に変更した他は、実施例16と同様に溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れた溶融押し出しフィルムを得た。その特性を表1に示した。なお、フィルム中のステアリルステアレートおよびステアリン酸トリグリセリドの含有量の分析結果は、その合計量を脂肪酸エステルの欄に示した。
[実施例19]
TOPAS5013のペレットを100℃で4時間乾燥後、該ペレット100重量部に対して、理研ビタミン(株)製の商品名「リケスターEW−400」(主成分:ペンタエリスリトールと高級脂肪族カルボン酸(ステアリン酸およびパルミチン酸)との全エステル)の粉末0.2重量部を添加してドライブレンドして得た樹脂組成物を用い、製膜速度を2.2m/分にした他は実施例16と同様にして溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れた押し出しフィルムを得た。フィルムの光弾性定数は−9.3×10−12Pa−1であった。その特性を表1に示した。
[実施例20]
実施例16において、TOPAS6013の代わりにAPELを用いた他は実施例16と同様にして、表面性、均質性に優れたフィルムを得た。フィルムの光弾性定数は−7.5×10−12Pa−1であった。その特性を表1に示した。
[実施例21]
TOPAS6013のペレットを100℃で4時間乾燥後、該ペレット100重量部に対して、粉末のサイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト(旭電化工業(株)製、商品名「PEP−36」)を0.1重量部添加してドライブレンドした。
このブレンド物を直径30mmの単軸押し出し機、公称径20μmのパウダー焼結フィルターを用い、樹脂温度280℃でTダイから溶融押し出しして、製膜速度2.5m/分で冷却ドラムを経て連続的に巻き取ることにより幅315mmの溶融押し出しフィルムを得た。該フィルムは透明性に優れ、また外観ではゆず肌、異物等も観察されず表面性、均質性も良好であった。厚みは平均176μmであった。Tgは137℃、全光線透過率は91.8%、ヘイズは0.2%であった。このフィルムの光弾性定数を求めたところ−6.1×10−12Pa−1であった。またフィルムをシクロヘキサンに溶解してフィルム中に存在するゲル数を調べたところ、目開き20μmのシルクスクリーンを用いた場合で72個/g、目開き5μmのシルクスクリーンを用いた場合で314個/gであった。
またフィルムをシクロヘキサンに溶解した後、メタノールに再沈し、ろ液を濃縮することにより添加剤を抽出して31P−NMR分析を行ったところ、亜りん酸エステルであるサイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトの含有量が0.036重量%、該亜りん酸エステルの酸化物であるりん酸エステルが0.063重量%と求められた。なお亜りん酸エステルの加水分解物およびりん酸エステルの加水分解物は観察されなかった。結果を表1に示した。
[実施例22]
実施例21において、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトの添加量を0.1重量部から0.2重量部に変更した他は実施例21と同様にして溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れた溶融押し出しフィルムを得た。同様にして添加剤の分析も実施した。その特性を表1に示した。
[実施例23]
実施例21において、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト0.1重量部の代わりに、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(旭電化工業(株)製、商品名「PEP−24G」)0.05重量部および粉末のステアリン酸モノグリセリド0.05重量部を添加してドライブレンドし、また製膜速度を3.5m/分に変更した他は、実施例21と同様に溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れた溶融押し出しフィルムを得た。その特性を表1に示した。
[実施例24]
TOPAS5013のペレット99重量部とサイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト1重量部を30mmφの2軸押し出し機を用いて溶融混練して添加剤の含有量が1重量%のマスターペレットを作成し、さらに100℃で4時間乾燥した。
これとは別に、TOPAS5013のペレットを100℃にて4時間乾燥した。
乾燥後のマスターペレット10重量部、乾燥後のTOPAS5013ペレット90重量部およびステアリン酸モノグリセリド0.1重量部をドライブレンドして得た樹脂組成物を使用した他は、実施例21と同様にして溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れた押し出しフィルムを得た。フィルムの光弾性定数は−9.3×10−12Pa−1であった。その特性を表1に示した。
[実施例25]
実施例21において、TOPAS6013の代わりにAPELを用いた他は実施例21と同様にして、表面性、均質性に優れたフィルムを得た。フィルムの光弾性定数は−7.5×10−12Pa−1であった。その特性を表1に示した。
比較例1
実施例1において、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを添加しない他は、実施例1と同様にして溶融押し出し製膜を実施した。得られたフィルムは、ゆず肌、フィッシュアイが顕著であり、ゲルが極めて多かった。特性を表1に示した。
比較例2
実施例1において、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト0.1重量部の代わりに、フェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.2重量部を使用した他は実施例1と同様にして溶融押し出し製膜を実施した。得られたフィルムは、ゆず肌、フィッシュアイが顕著であり、ゲルが極めて多かった。特性を表1に示した。
比較例3
実施例1において、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト0.1重量部の代わりに、フェノール系酸化防止剤であるn−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネート0.1重量部を用いた他は実施例1と同様にして溶融押し出し製膜を実施した。得られたフィルムは、ゆず肌、フィッシュアイが顕著であり、ゲルが極めて多かった。特性を表1に示した。
比較例4
実施例1において、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト0.1重量部の代わりに、りん系酸化防止剤であるテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト0.1重量部を用いた他は実施例1と同様にして溶融押し出し製膜を実施した。得られたフィルムは、ゆず肌、フィッシュアイが顕著であり、ゲルが極めて多かった。特性を表1に示した。
比較例5
実施例5において、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを添加しない他は、実施例5と同様にして溶融製膜を実施した。得られたフィルムは、ゆず肌、フィッシュアイが顕著であり、ゲルが極めて多かった。特性を表1に示した。
なお、表1において、(B)成分の略称は、それぞれ以下を表す。比較例に用いた添加剤は本発明に使用する(B)成分ではないが、便宜上(B)成分の欄に記載した。
B1−1:トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト
B1−2:ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)−エチルホスファイト
B2−1:6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラキス−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1.3.2]ジオキサフォスフェピン(住友化学(株)製、商品名「スミライザーGP」)
B2−2:2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト(旭電化工業(株)製、商品名「アデカスタブHP−10」)
B3−1:ステアリン酸モノグリセリド
B3−2:リケマールSL−900(商品名、理研ビタミン(株)製、主成分:ステアリルステアレートおよびステアリン酸トリグリセリド)
B3−3:リケスターEW−400(商品名、理研ビタミン(株)製、主成分:ペンタエリスリトールと高級脂肪族カルボン酸(ステアリン酸およびパルミチン酸)との全エステル)
B6−1:サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト(旭電化工業(株)製、商品名「PEP−36」)
B6−2:サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(旭電化工業(株)製、商品名「PEP−24G」)
(フェノール系−1):ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
(フェノール系−2):n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネート
(リン系−1):テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト
[実施例26]
実施例3で得られた溶融押し出しフィルム(未延伸フィルム)を、予熱ゾーン、延伸ゾーンおよび固定・冷却ゾーンの3ゾーンからなり、合計15mの長さのテンター横延伸機を用いて横延伸を行った。速度5m/分、温度145℃で2.7倍延伸し、横一軸配向フィルムを巻き取った。フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有するλ/4近傍の位相差フィルムに好適な延伸フィルムが得られた。
[実施例27]
実施例1で得られた溶融押し出しフィルム(未延伸の巻物フィルム)を、ゾーン長7m、乾燥炉内のニップロール間で延伸する縦延伸機に通し、入り側速度3.4m/分、温度140℃で1.5倍縦延伸を行い、続けて実施例26で用いた横延伸機に通し温度145℃で横2.0倍延伸して2軸配向フィルムを得た。フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有する、2枚構成の大型VAモード用位相差フィルムに好適なフィルムが得られた。なおこの延伸配向フィルムのゲル数を実施例1と同様にして求めたところ、20μm以上のゲル数は60個/gであり、5μm以上のゲル数は387個/gであった。
[実施例28]
実施例1で実施した溶融押し出しの製膜速度を2.0m/分に変えた他は同様の条件で行い、幅320mm、厚み平均200μmの巻物フィルムを得た。該フィルムは透明性に優れ、表面性、均質性も良好であった。このフィルムを縦延伸機入り側速度2.5m/分で連続して実施例27で用いた縦、横延伸機を通して2軸配向フィルムを得た。延伸条件、フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有する、1枚構成の大型VAモード用位相差フィルムに好適なフィルムが得られた。
[実施例29]
実施例4で得たフィルムを用いて、実施例27と同様に縦、横2軸延伸を行った。結果を表2に示した。
[実施例30]
実施例5で得たフィルムを、実施例27と同様に縦、横2軸延伸を行った。結果を表2に示した。
[実施例31]
実施例8で得られた溶融押し出しフィルム(未延伸の巻物フィルム)を、予熱ゾーン、延伸ゾーン、固定・冷却ゾーンの3ゾーンからなり、合計15mの長さのテンター横延伸機を用いて横延伸を行った。速度5m/分、温度145℃で2.7倍延伸し、横一軸配向フィルムを巻き取った。フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有するλ/4近傍の位相差フィルムに好適に用いられる延伸フィルムが得られた。
[実施例32]
実施例6で得られた溶融押し出しフィルム(未延伸の巻物フィルム)を、ゾーン長7m、乾燥炉内のニップロール間で延伸する縦延伸機に通し、入り側速度3.4m/分、温度140℃で1.5倍縦延伸を行い、続けて実施例31で用いた横延伸機に通し温度145℃で横2.0倍延伸して2軸配向フィルムを得た。フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有する、2枚構成の大型VAモード用位相差フィルムに好適なフィルムが得られた。
[実施例33]
実施例6で実施した溶融押し出しの製膜速度を2.0m/分に変えた他は同様の条件で行い、幅315mm、厚み平均205μmの溶融押し出しフィルム(未延伸の巻物フィルム)を得た。該フィルムは透明性に優れ、表面性、均質性も良好であった。このフィルムを縦延伸機入り側速度2.5m/分で連続して実施例32で用いた縦、横延伸機を通して2軸配向フィルムを得た。延伸条件、フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有する、1枚構成の大型VAモード用位相差フィルムに好適なフィルムが得られた。
[実施例34]
実施例9で得たフィルムにつき、実施例32と同様にして縦、横2軸延伸を行った。結果を表2に示した。
[実施例35]
実施例10で得たフィルムにつき、実施例32と同様にして縦、横2軸延伸を行った。結果を表2に示した。
[実施例36]
実施例13で得られた溶融押し出しフィルム(未延伸の巻物フィルム)を、予熱ゾーン、延伸ゾーン、固定・冷却ゾーンの3ゾーンからなり、合計15mの長さのテンター横延伸機を用いて横延伸を行った。速度5m/分、温度145℃で2.5倍延伸し、横一軸配向フィルムを巻き取った。フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有するλ/4近傍の位相差フィルムとして好適な延伸フィルムが得られた。
[実施例37]
実施例12で得られた溶融押し出しフィルム(未延伸の巻物フィルム)を、ゾーン長7m、乾燥炉内のニップロール間で延伸する縦延伸機に通し、入り側速度3.4m/分、温度140℃で1.5倍縦延伸を行い、続けて実施例36で用いた横延伸機に通し温度146℃で横2.0倍延伸して2軸配向フィルムを得た。フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有する、2枚構成の大型VAモード用位相差フィルムに好適なフィルムが得られた。
[実施例38]
実施例12で実施した溶融押し出しの製膜速度を2.0m/分に変えた他は同様の条件で行い、幅315mm、厚み平均230μmの巻物フィルムを得た。該フィルムは透明性に優れ、表面性、均質性も良好であった。このフィルムを縦延伸機入り側速度2.5m/分で連続して実施例37で用いた縦、横延伸機を通して2軸配向フィルムを得た。延伸条件、フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有する、1枚構成の大型VAモード用位相差フィルムに好適なフィルムが得られた。
[実施例39]
実施例14で得たフィルムにつき、実施例37と同様にして縦、横2軸延伸を行った。結果を表2に示した。
[実施例40]
実施例15で得たフィルムを用いて、実施例37と同様にして縦、横2軸延伸を行った。結果を表2に示した。
[実施例41]
実施例18で得られた未延伸フィルムを、予熱ゾーン、延伸ゾーン、固定・冷却ゾーンの3ゾーンからなり、合計15mの長さのテンター横延伸機を用いて横延伸を行った。速度5m/分、温度143℃で2.7倍延伸し、横一軸配向フィルムを巻き取った。フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有するλ/4近傍の位相差フィルムとして好適に用いることのできる延伸フィルムが得られた。
[実施例42]
実施例16で得られた溶融押し出しフィルム(未延伸の巻物フィルム)を、ゾーン長7m、乾燥炉内のニップロール間で延伸する縦延伸機に通し、入り側速度3.4m/分、温度140℃で1.5倍縦延伸を行い、続けて実施例41で用いた横延伸機に通し温度145℃で横2.0倍延伸して2軸配向フィルムを得た。フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有する、2枚構成の大型VAモード用位相差フィルムに好適なフィルムが得られた。
[実施例43]
実施例16で実施した溶融押し出しの製膜速度を1.8m/分に変えた他は同様の条件で行い、幅320mm、厚み平均210μmの巻物フィルムを得た。該フィルムは透明性に優れ、表面性、均質性も良好であった。このフィルムを縦延伸機入り側速度2.5m/分で連続して実施例42で用いた縦、横延伸機を通して2軸配向フィルムを得た。延伸条件、フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有する、1枚構成の大型VAモード用位相差フィルムに好適なフィルムが得られた。
[実施例44]
実施例19で得たフィルムにつき、実施例42と同様にして縦、横2軸延伸を行った。結果を表2に示した。
[実施例45]
実施例20で得たフィルムにつき、実施例42と同様にして縦、横2軸延伸を行った。結果を表2に示した。
[実施例46]
実施例23で得られた溶融押し出しフィルム(未延伸の巻物フィルム)を、予熱ゾーン、延伸ゾーン、固定・冷却ゾーンの3ゾーンからなり、合計15mの長さのテンター横延伸機を用いて横延伸を行った。速度5m/分、温度145℃で2.5倍延伸し、横一軸配向フィルムを巻き取った。フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有するλ/4近傍の位相差フィルムに好適な延伸フィルムが得られた。
[実施例47]
実施例21で得られた溶融押し出しフィルム(未延伸の巻物フィルム)を、ゾーン長7m、乾燥炉内のニップロール間で延伸する縦延伸機に通し、入り側速度3.4m/分、温度140℃で1.5倍縦延伸を行い、続けて実施例46で用いた横延伸機に通し温度146℃で横2.0倍延伸して2軸配向フィルムを得た。フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有する、2枚構成の大型VAモード用位相差フィルムに好適なフィルムが得られた。
[実施例48]
実施例21で実施した溶融押し出しの製膜速度を2.0m/分に変えた他は同様の条件で行い、幅315mm、厚み平均227μmの巻物フィルムを得た。該フィルムは透明性に優れ、表面性、均質性も良好であった。このフィルムを縦延伸機入り側速度2.5m/分で連続して実施例47で用いた縦、横延伸機を通して2軸配向フィルムを得た。延伸条件、フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有する、1枚構成の大型VAモード用位相差フィルムに好適なフィルムが得られた。
[実施例49]
実施例24で得たフィルムを用いて、実施例47と同様にして縦、横2軸延伸を行った。結果を表2に示した。
[実施例50]
実施例25で得たフィルムにつき、実施例47と同様にして縦、横2軸延伸を行った。結果を表2に示した。
なお、表2において、遅相軸角度はフィルムの進行方向(長さ方向)を0°とした値である。
[実施例51]
TOPAS6013を105℃で7時間乾燥後、粉末のトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを0.1重量%添加してドライブレンドした。このブレンド物をスクリュー直径90mmφの単軸押し出し機、平均目開きが10μmのSUS不織布製のリーフディスク状フィルター、リップ幅1,400mmのT−ダイを用いて溶融押出し製膜を行った。なお冷却ロールは図1に示すような3本構成からなり、各ロールはその直径が360mmφ、ロール面長が1,800mm、ロールの表面温度が均一になるように熱媒を循環させて制御する構造のものを用いた。T−ダイから吐出された樹脂は、最初に第一冷却ロールに接し、次いで第二冷却ロール、さらに第三冷却ロールに接し、その後テイクオフロールを介して巻回されることになる。なお、第1冷却ロールにてフィルムの着地点で両端に4.5kVの電圧をかけてエッジピンニングを行った。
押出し機およびダイの温度を270℃、第1冷却ロール温度を130℃、第2冷却ロール温度を125℃、第3冷却ロール温度を120℃とし、第1冷却ロールの周速度をR1、第2冷却ロールの周速度をR2、第3冷却ロールの周速度をR3としたときに、R1=3.8m/分とし、またロール周速度の比率R2/R1を1.002、比率R3/R2を1.000とした。スクリューの回転数を20rpmとして樹脂を押し出し、第1冷却ロール、第2冷却ロール、第3冷却ロールと順次フィルムを外接させ、テイクオフロールを介してフィルムを引き取り、両エッジ部分を100mmずつ切り除いて1,100mm幅、厚み約200μmのフィルムとして、厚さ30μmのポリエチレン系マスキングフィルムとともに500mを共巻して巻層体を得た。
得られたフィルムにはダイ筋、異物等がほとんど見られず、外観上極めて均一性の高いものであった。フィルム厚みは平均200μm、接触式の連続厚み計(アンリツ(株)製フィルム厚み計KG601)での測定から幅方向およびフィルム送り方向とも厚み斑は±1.5μm以内であり厚み斑の極めて小さいフィルムであった。Tgは137℃、全光線透過率は91.8%、ヘイズは0.3%であった。またフィルムをシクロヘキサンに溶解してフィルム中に存在するゲル数を調べたところ、目開き20μmのシルクスクリーンを用いた場合で24個/g、目開き5μmのシルクスクリーンを用いた場合で41個/gであった。フィルムをシクロヘキサンに溶解した後、メタノールによる再沈を行い、ろ液を濃縮することにより添加剤を抽出して31P−NMR分析を行ったところ、亜りん酸エステル(=トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト)の含有量が0.035重量%、りん酸エステル(=トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート)が0.059重量%と求められた。なお亜りん酸およびりん酸の加水分解物は観察されなかった。
(1)ガラス転移温度(Tg):TA Instruments社製2920型DSC装置を使用し、昇温速度20℃/分で測定し、変曲点を求めた。
(2)共重合体の分子量:濃度1.2g/dLのシクロヘキサン溶液での、30℃における還元粘度ηsp/c(dL/g)を測定した。
(3)共重合体の13C−NMR測定:日本電子(株)製JNM−α400型のNMR装置を使用した。重オルトジクロロベンゼン溶媒に溶解し、温度100℃で測定した。化学シフトの基準としてテトラメチルシランを用いた。定量のため、150MHz 13C−NMRスペクトルを逆ゲーテッドデカップリングモードで測定した。
(4)フィルムの全光線透過率およびヘイズ値:日本電色工業(株)製濁度計NDH−2000型を用いて測定した。
(5)フィルムの面内位相差値Rおよび膜厚方向の位相差値K:日本分光(株)製分光エリプソメーターM220を使用し、光線波長550nmで測定した。面内位相差値Rは、入射光線がフィルム面に垂直な状態で測定したものである。膜厚方向位相差値Kは、入射光線とフィルム面との角度を少しずつ変えそれぞれの角度での位相差値を測定し、公知の屈折率楕円体の式でカーブフィッティングすることにより三次元屈折率であるnx、nyおよびnzを求め、下記式
K={(nx+ny)/2−nz}×d
に代入することにより求めた。なおその際、フィルムの平均屈折率が必要となる。フィルムの平均屈折率は、別途にアッベ屈折計((株)アタゴ製、商品名「アッベ屈折計2−TERT」)を用いて測定した。
(6)フィルムの厚み:アンリツ(株)製の電子マイクロ膜厚計で測定した。
(7)フィルムの光弾性定数:日本分光(株)製分光エリプソメーターM220にて測定した。測定波長550nmにてフィルムに応力を与えたときの位相差値の変化から算出した。
(8)フィルム中のゲル数:フィルム10gをシクロヘキサン80gに温度25℃で24時間かけて溶解したシクロヘキサン溶液を、目開き20μmまたは5μmのポリエステル繊維からなるシルクスクリーンをフィルターとしてろ過し、充分にシクロヘキサンで洗った後にスライドガラスで挟んだフィルター上の未溶解分をブラックライトを照射しながら顕微鏡で観察し、蛍光発光している粒子数をカウントすることにより求めた。
実施例および比較例で使用した(A)非晶性ポリオレフィンは、以下のとおりである。
TOPAS6013(TICONA社製):メタロセン触媒により合成されたエチレン/ノルボルネン共重合体(Tg=140℃)である。13C−NMR測定により、全ノルボルネン単位量に対するNNダイアドの存在比率(モル分率)は0.40であり、ダイアド中のメソ型とラセモ型の存在比率は、[メソ型]/[ラセモ型]=0.36/0.04=9と求められた。また、(a1)エチレン単位と(a2)環状オレフィン(ノルボルネン)単位の比率は、モル比で50/50であった。分子量は、還元粘度ηsp/cとして0.80dL/gであった。
TOPAS5013(TICONA社製):メタロセン触媒により合成されたエチレン/ノルボルネン共重合体(Tg=140℃)である。13C−NMR測定により、全ノルボルネン単位量に対するNNダイアドの存在比率(モル分率)は0.46であり、ダイアド中のメソ型とラセモ型の存在比率は、[メソ型]/[ラセモ型]=0.05/0.41=0.12と求められた。(a1)エチレン単位と(a2)環状オレフィン(ノルボルネン)単位の比率は、モル比で50/50であった。分子量は、還元粘度ηsp/cとして0.66dL/gであった。
APEL(三井化学(株)製):エチレン/テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン共重合体である。13C−NMR測定により、(a1)エチレン単位と(a2)環状オレフィン単位の比率は、モル比で[(a1)]/[(a2)]=67/33と求められた。分子量は、還元粘度ηsp/cとして0.84dL/gであった。
[実施例1]
TOPAS6013のペレットを100℃で4時間乾燥後、該ペレット100重量部に対して、粉末のトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを0.1重量部添加してドライブレンドした。このブレンド物を直径30mmの単軸押し出し機、公称径20μmのパウダー焼結フィルターを用い、樹脂温度270℃でTダイから溶融押し出しして、製膜速度2.5m/分で冷却ドラムを経て連続的に巻き取ることにより幅320mmの溶融押し出しフィルムを得た。このフィルムは透明性に優れ、また外観ではゆず肌、異物等も観察されず表面性、均質性も良好であった。厚みは平均160μmであった。Tgは138℃、全光線透過率は91.3%、ヘイズは0.2%であった。このフィルムの光弾性定数を求めたところ−6.1×10−12Pa−1であった。このフィルムをシクロヘキサンに溶解してフィルム中に存在するゲル数を調べたところ、目開き20μmのシルクスクリーンを用いた場合で65個/g、目開き5μmのシルクスクリーンを用いた場合で374個/gであった。またフィルムをシクロヘキサンに溶解した後、メタノールにより再沈し、ろ液を濃縮することにより添加剤を抽出して31P−NMR分析を行ったところ、亜りん酸エステル(トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト)の含有量が0.055重量%、りん酸エステル(トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート)が0.041重量%と求められた。なお、亜りん酸エステルの加水分解物およびりん酸エステルの加水分解物は観察されなかった。評価結果を表1に示した。
[実施例2]
実施例1において、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトの添加量を0.1重量部から0.2重暈部に変更した他は実施例1と同様にして溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れた溶融押し出しフィルムを得た。同様にして添加剤の分析も実施した。その特性を表1に示した。
[実施例3]
実施例1において、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトの代わりに、粉末のトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト0.05重量部および粉末のステアリン酸モノグリセリド0.05重量部添加してドライブレンドし、また製膜速度を3.5m/分に変更した他は、実施例1と同様に溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れた溶融押し出しフィルムを得た。その特性を表1に示した。なお、フィルム中のステアリン酸モノグリセリドの含量は、脂肪酸エステルの欄に示した。
[実施例4]
TOPAS5013のペレット99重量部とトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト1重量部を30mmφの2軸押し出し機を用いて溶融混練し、添加剤含有量が1重量%のマスターペレットを作製し、さらに100℃にて4時間乾燥した。
これとは別にTOPAS5013ペレットを100℃で4時間乾燥した。
乾燥後のマスターペレット10重量部、乾燥後のTOPAS5013のペレット90重量部およびステアリン酸モノグリセリド0.1重量部をドライブレンドして得た樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れた押し出しフィルムを得た。フィルムの光弾性定数は−9.3×10−12Pa−1であった。その特性を表1に示した。
[実施例5]
実施例1において、TOPAS6013の代わりにAPELを用いた他は実施例1と同様にして溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れたフィルムを得た。フィルムの光弾性定数は−7.5×10−12Pa−1であった。その特性を表1に示した。
[実施例6]
TOPAS6013のペレット100重量部に対して、粉末の6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラキス−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1.3.2]ジオキサフォスフェピン(住友化学(株)製スミライザーGP)を0.1重量部を添加してドライブレンドした。
このブレンド物を直径30mmの単軸押し出し機、公称径20μmのパウダー焼結フィルターを用い、樹脂温度280℃でTダイから溶融押し出しして、製膜速度2.5m/分で冷却ドラムを経て連続的に巻き取ることにより幅315mmの溶融押し出しフィルムを得た。該フィルムは透明性に優れ、また外観ではゆず肌、異物等も観察されず表面性、均質性も良好であった。厚みは平均165μmであった。Tgは137℃、全光線透過率は91.7%、ヘイズは0.3%であった。このフィルムの光弾性定数を求めたところ−6.1×10−12Pa−1であった。またフィルムをシクロヘキサンに溶解してフィルム中に存在するゲル数を調べたところ、目開き20μmのシルクスクリーンを用いた場合で70個/g、目開き5μmのシルクスクリーンを用いた場合で258個/gであった。
またフィルムをシクロヘキサンに溶解した後、メタノールにより再沈し、ろ液を濃縮することにより添加剤を抽出して31P−NMR分析を行ったところ、亜りん酸エステル(6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラキス−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1.3.2]ジオキサフォスフェピン)の含有量が0.026重量%、該亜りん酸エステルの酸化物であるりん酸エステルが0.074重量%と求められた。なお亜りん酸エステルの加水分解物およびりん酸エステルの加水分解物は観察されなかった。結果を表1に示した。
[実施例7]
実施例6において、6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラキス−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1.3.2]ジオキサフォスフェピンの添加量を0.1重量部から0.2重量部に変更した他は実施例6と同様にして溶融製膜を行い、表面性、均質性に優れた溶融押し出しフィルムを得た。同様にして添加剤の分析も実施した。その特性を表1に示した。
[実施例8]
実施例6において、6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラキス−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1.3.2]ジオキサフォスフェピン0.1重量部の代わりに、6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラキス−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1.3.2]ジオキサフォスフェピン0.05重量部および粉末のステアリン酸モノグリセリド0.05重量部を添加してドライブレンドし、また製膜速度を3.5m/分に変更した他は、実施例6と同様に溶融製膜を行い、表面性、均質性に優れた溶融押し出しフィルムを得た。その特性を表1に示した。
[実施例9]
TOPAS5013のペレット99重量部と6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラキス−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1.3.2]ジオキサフォスフェピン1重量部を30mmφの2軸押し出し機を用いて溶融混練して添加剤の含有量が1重量%のマスターペレットを作製し、さらに100℃にて4時間乾燥した。
これとは別にTOPAS5013のペレットを100℃で4時間乾燥した。
乾燥後のマスターペレット10重量部、乾燥後のTOPAS5013のペレット90重量部およびステアリン酸モノグリセリド0.1重量部をドライブレンドして得た樹脂組成物を用いて実施例6と同様にして溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れた押し出しフィルムを得た。フィルムの光弾性定数は−9.3×10−12Pa−1であった。その特性を表1に示した。
[実施例10]
実施例6において、TOPAS6013の代わりにAPELを用いた他は実施例6と同様にして、表面性、均質性に優れたフィルムを得た。フィルムの光弾性定数は−7.5×10−12Pa−1であった。その特性を表1に示した。
[実施例11]
TOPAS6013のペレットを100℃で4時間乾燥後、該ペレット100重量部に対して、粉末のビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)−エチルホスファイトを0.1重量部添加してドライブレンドした。
このブレンド物を直径30mmの単軸押し出し機、公称径20μmのパウダー焼結フィルターを用い、樹脂温度280℃でTダイから溶融押し出しして、製膜速度2.5m/分で冷却ドラムを経て連続的に巻き取ることにより幅315mmの溶融押し出しフィルムを得た。該フィルムは透明性に優れ、また外観ではゆず肌、異物等も観察されず表面性、均質性も良好であった。厚みは平均175μmであった。Tgは137℃、全光線透過率は91.5%、ヘイズは0.2%であった。このフィルムの光弾性定数を求めたところ−6.1×10−12Pa−1であった。またフィルムをシクロヘキサンに溶解してフィルム中に存在するゲル数を調べたところ、目開き20μmのシルクスクリーンを用いた場合で80個/g、目開き5μmのシルクスクリーンを用いた場合で332個/gであった。
またフィルムをシクロヘキサンに溶解した後、メタノールにより再沈し、ろ液を濃縮することにより添加剤を抽出して31P−NMR分析を行ったところ、亜りん酸エステル(ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)−エチルホスファイト)の含有量が0.040重量%、該亜りん酸エステルの酸化物であるりん酸エステルが0.058重量%と求められた。なお亜りん酸エステルの加水分解物およびりん酸エステルの加水分解物は観察されなかった。結果を表1に示した。
[実施例12]
実施例11において、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)−エチルホスファイト0.1重量部の代わりに、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト(旭電化工業(株)製アデカスタブHP−10)0.1重量部を用いた他は実施例11と同様にして溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れた溶融押し出しフィルムを得た。同様にして添加剤の分析も実施した。その特性を表1に示した。
[実施例13]
実施例11において、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)−エチルホスファイト0.1重量部の代わりに、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト0.05重量部および粉末のステアリン酸モノグリセリド0.05重量部を添加してドライブレンドし、また製膜速度を3.5m/分に変更した他は、実施例11と同様に溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れた溶融押し出しフィルムを得た。その特性を表1に示した。
[実施例14]
TOPAS5013のペレット99重量部と2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト1重量部を30mmφの2軸押し出し機を用いて溶融混練して添加剤の含有量が1重量%のマスターペレットを作製し、さらに100℃で4時間乾燥した。
これとは別に、TOPAS5013のペレットを100℃にて4時間乾燥した。
乾燥後のマスターペレット10重量部、乾燥後のTOPAS5013のペレット90重量部およびステアリン酸モノグリセリド0.1重量部をドライブレンドして得た樹脂組成物を使用したほかは実施例11と同様にして溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れた押し出しフィルムを得た。フィルムの光弾性定数は−9.3×10−12Pa−1であった。その特性を表1に示した。
[実施例15]
実施例12において、TOPAS6013の代わりにAPELを用いた他は実施例12と同様にして、表面性、均質性に優れたフィルムを得た。フィルムの光弾性定数は−7.5×10−12Pa−1であった。その特性を表1に示した。
[実施例16]
TOPAS6013のペレットを100℃で4時間乾燥後、該ペレット100重量部に対して、理研ビタミン(株)製の商品名「リケマールS−100A」(主成分:ステアリン酸モノグリセリド)の粉末0.1重量部を添加してドライブレンドした。このブレンド物を直径30mmの単軸押し出し機、公称径20μmのパウダー焼結フィルターを用い、樹脂温度270℃でTダイから溶融押し出しして、製膜速度2.5m/分で冷却ドラムを経て連続的に巻き取ることにより幅320mmの溶融押し出しフィルムを得た。該フィルムは透明性に優れ、また外観ではゆず肌、異物等も観察されず表面性、均質性も良好であった。厚みは平均152μmであった。Tgは137℃、全光線透過率は90.8%、ヘイズは0.4%であった。このフィルムの光弾性定数を求めたところ−6.1×10−12Pa−1であった。またフィルムをシクロヘキサンに溶解してフィルム中に存在するゲル数を調べたところ、目開き20μmのシルクスクリーンを用いた場合で68個/g、目開き5μmのシルクスクリーンを用いた場合で713個/gであった。またフィルムの1H−NMR分析から、ステアリン酸モノグリセリドの含有量が0.087重量%と求められた。結果を表1に示した。
[実施例17]
実施例16において、リケマールS−100Aの添加量を0.1重量部から0.2重量部に変更した他は実施例16と同様にして溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れた溶融押し出しフィルムを得た。その特性を表1に示した。
[実施例18]
実施例16において、リケマールS−100Aの代わりに、理研ビタミン(株)製の商品名「リケマールSL−900」(主成分:ステアリルステアレートおよびステアリン酸トリグリセリド)を0.2重量部、添加してドライブレンドし、また製膜速度を3.2m/分に変更した他は、実施例16と同様に溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れた溶融押し出しフィルムを得た。その特性を表1に示した。なお、フィルム中のステアリルステアレートおよびステアリン酸トリグリセリドの含有量の分析結果は、その合計量を脂肪酸エステルの欄に示した。
[実施例19]
TOPAS5013のペレットを100℃で4時間乾燥後、該ペレット100重量部に対して、理研ビタミン(株)製の商品名「リケスターEW−400」(主成分:ペンタエリスリトールと高級脂肪族カルボン酸(ステアリン酸およびパルミチン酸)との全エステル)の粉末0.2重量部を添加してドライブレンドして得た樹脂組成物を用い、製膜速度を2.2m/分にした他は実施例16と同様にして溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れた押し出しフィルムを得た。フィルムの光弾性定数は−9.3×10−12Pa−1であった。その特性を表1に示した。
[実施例20]
実施例16において、TOPAS6013の代わりにAPELを用いた他は実施例16と同様にして、表面性、均質性に優れたフィルムを得た。フィルムの光弾性定数は−7.5×10−12Pa−1であった。その特性を表1に示した。
[実施例21]
TOPAS6013のペレットを100℃で4時間乾燥後、該ペレット100重量部に対して、粉末のサイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト(旭電化工業(株)製、商品名「PEP−36」)を0.1重量部添加してドライブレンドした。
このブレンド物を直径30mmの単軸押し出し機、公称径20μmのパウダー焼結フィルターを用い、樹脂温度280℃でTダイから溶融押し出しして、製膜速度2.5m/分で冷却ドラムを経て連続的に巻き取ることにより幅315mmの溶融押し出しフィルムを得た。該フィルムは透明性に優れ、また外観ではゆず肌、異物等も観察されず表面性、均質性も良好であった。厚みは平均176μmであった。Tgは137℃、全光線透過率は91.8%、ヘイズは0.2%であった。このフィルムの光弾性定数を求めたところ−6.1×10−12Pa−1であった。またフィルムをシクロヘキサンに溶解してフィルム中に存在するゲル数を調べたところ、目開き20μmのシルクスクリーンを用いた場合で72個/g、目開き5μmのシルクスクリーンを用いた場合で314個/gであった。
またフィルムをシクロヘキサンに溶解した後、メタノールに再沈し、ろ液を濃縮することにより添加剤を抽出して31P−NMR分析を行ったところ、亜りん酸エステルであるサイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトの含有量が0.036重量%、該亜りん酸エステルの酸化物であるりん酸エステルが0.063重量%と求められた。なお亜りん酸エステルの加水分解物およびりん酸エステルの加水分解物は観察されなかった。結果を表1に示した。
[実施例22]
実施例21において、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトの添加量を0.1重量部から0.2重量部に変更した他は実施例21と同様にして溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れた溶融押し出しフィルムを得た。同様にして添加剤の分析も実施した。その特性を表1に示した。
[実施例23]
実施例21において、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト0.1重量部の代わりに、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(旭電化工業(株)製、商品名「PEP−24G」)0.05重量部および粉末のステアリン酸モノグリセリド0.05重量部を添加してドライブレンドし、また製膜速度を3.5m/分に変更した他は、実施例21と同様に溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れた溶融押し出しフィルムを得た。その特性を表1に示した。
[実施例24]
TOPAS5013のペレット99重量部とサイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト1重量部を30mmφの2軸押し出し機を用いて溶融混練して添加剤の含有量が1重量%のマスターペレットを作成し、さらに100℃で4時間乾燥した。
これとは別に、TOPAS5013のペレットを100℃にて4時間乾燥した。
乾燥後のマスターペレット10重量部、乾燥後のTOPAS5013ペレット90重量部およびステアリン酸モノグリセリド0.1重量部をドライブレンドして得た樹脂組成物を使用した他は、実施例21と同様にして溶融押し出し製膜を行い、表面性、均質性に優れた押し出しフィルムを得た。フィルムの光弾性定数は−9.3×10−12Pa−1であった。その特性を表1に示した。
[実施例25]
実施例21において、TOPAS6013の代わりにAPELを用いた他は実施例21と同様にして、表面性、均質性に優れたフィルムを得た。フィルムの光弾性定数は−7.5×10−12Pa−1であった。その特性を表1に示した。
比較例1
実施例1において、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを添加しない他は、実施例1と同様にして溶融押し出し製膜を実施した。得られたフィルムは、ゆず肌、フィッシュアイが顕著であり、ゲルが極めて多かった。特性を表1に示した。
比較例2
実施例1において、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト0.1重量部の代わりに、フェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.2重量部を使用した他は実施例1と同様にして溶融押し出し製膜を実施した。得られたフィルムは、ゆず肌、フィッシュアイが顕著であり、ゲルが極めて多かった。特性を表1に示した。
比較例3
実施例1において、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト0.1重量部の代わりに、フェノール系酸化防止剤であるn−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネート0.1重量部を用いた他は実施例1と同様にして溶融押し出し製膜を実施した。得られたフィルムは、ゆず肌、フィッシュアイが顕著であり、ゲルが極めて多かった。特性を表1に示した。
比較例4
実施例1において、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト0.1重量部の代わりに、りん系酸化防止剤であるテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト0.1重量部を用いた他は実施例1と同様にして溶融押し出し製膜を実施した。得られたフィルムは、ゆず肌、フィッシュアイが顕著であり、ゲルが極めて多かった。特性を表1に示した。
比較例5
実施例5において、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを添加しない他は、実施例5と同様にして溶融製膜を実施した。得られたフィルムは、ゆず肌、フィッシュアイが顕著であり、ゲルが極めて多かった。特性を表1に示した。
なお、表1において、(B)成分の略称は、それぞれ以下を表す。比較例に用いた添加剤は本発明に使用する(B)成分ではないが、便宜上(B)成分の欄に記載した。
B1−1:トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト
B1−2:ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)−エチルホスファイト
B2−1:6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラキス−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1.3.2]ジオキサフォスフェピン(住友化学(株)製、商品名「スミライザーGP」)
B2−2:2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト(旭電化工業(株)製、商品名「アデカスタブHP−10」)
B3−1:ステアリン酸モノグリセリド
B3−2:リケマールSL−900(商品名、理研ビタミン(株)製、主成分:ステアリルステアレートおよびステアリン酸トリグリセリド)
B3−3:リケスターEW−400(商品名、理研ビタミン(株)製、主成分:ペンタエリスリトールと高級脂肪族カルボン酸(ステアリン酸およびパルミチン酸)との全エステル)
B6−1:サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト(旭電化工業(株)製、商品名「PEP−36」)
B6−2:サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(旭電化工業(株)製、商品名「PEP−24G」)
(フェノール系−1):ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
(フェノール系−2):n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネート
(リン系−1):テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト
実施例3で得られた溶融押し出しフィルム(未延伸フィルム)を、予熱ゾーン、延伸ゾーンおよび固定・冷却ゾーンの3ゾーンからなり、合計15mの長さのテンター横延伸機を用いて横延伸を行った。速度5m/分、温度145℃で2.7倍延伸し、横一軸配向フィルムを巻き取った。フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有するλ/4近傍の位相差フィルムに好適な延伸フィルムが得られた。
[実施例27]
実施例1で得られた溶融押し出しフィルム(未延伸の巻物フィルム)を、ゾーン長7m、乾燥炉内のニップロール間で延伸する縦延伸機に通し、入り側速度3.4m/分、温度140℃で1.5倍縦延伸を行い、続けて実施例26で用いた横延伸機に通し温度145℃で横2.0倍延伸して2軸配向フィルムを得た。フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有する、2枚構成の大型VAモード用位相差フィルムに好適なフィルムが得られた。なおこの延伸配向フィルムのゲル数を実施例1と同様にして求めたところ、20μm以上のゲル数は60個/gであり、5μm以上のゲル数は387個/gであった。
[実施例28]
実施例1で実施した溶融押し出しの製膜速度を2.0m/分に変えた他は同様の条件で行い、幅320mm、厚み平均200μmの巻物フィルムを得た。該フィルムは透明性に優れ、表面性、均質性も良好であった。このフィルムを縦延伸機入り側速度2.5m/分で連続して実施例27で用いた縦、横延伸機を通して2軸配向フィルムを得た。延伸条件、フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有する、1枚構成の大型VAモード用位相差フィルムに好適なフィルムが得られた。
[実施例29]
実施例4で得たフィルムを用いて、実施例27と同様に縦、横2軸延伸を行った。結果を表2に示した。
[実施例30]
実施例5で得たフィルムを、実施例27と同様に縦、横2軸延伸を行った。結果を表2に示した。
[実施例31]
実施例8で得られた溶融押し出しフィルム(未延伸の巻物フィルム)を、予熱ゾーン、延伸ゾーン、固定・冷却ゾーンの3ゾーンからなり、合計15mの長さのテンター横延伸機を用いて横延伸を行った。速度5m/分、温度145℃で2.7倍延伸し、横一軸配向フィルムを巻き取った。フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有するλ/4近傍の位相差フィルムに好適に用いられる延伸フィルムが得られた。
[実施例32]
実施例6で得られた溶融押し出しフィルム(未延伸の巻物フィルム)を、ゾーン長7m、乾燥炉内のニップロール間で延伸する縦延伸機に通し、入り側速度3.4m/分、温度140℃で1.5倍縦延伸を行い、続けて実施例31で用いた横延伸機に通し温度145℃で横2.0倍延伸して2軸配向フィルムを得た。フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有する、2枚構成の大型VAモード用位相差フィルムに好適なフィルムが得られた。
[実施例33]
実施例6で実施した溶融押し出しの製膜速度を2.0m/分に変えた他は同様の条件で行い、幅315mm、厚み平均205μmの溶融押し出しフィルム(未延伸の巻物フィルム)を得た。該フィルムは透明性に優れ、表面性、均質性も良好であった。このフィルムを縦延伸機入り側速度2.5m/分で連続して実施例32で用いた縦、横延伸機を通して2軸配向フィルムを得た。延伸条件、フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有する、1枚構成の大型VAモード用位相差フィルムに好適なフィルムが得られた。
[実施例34]
実施例9で得たフィルムにつき、実施例32と同様にして縦、横2軸延伸を行った。結果を表2に示した。
[実施例35]
実施例10で得たフィルムにつき、実施例32と同様にして縦、横2軸延伸を行った。結果を表2に示した。
[実施例36]
実施例13で得られた溶融押し出しフィルム(未延伸の巻物フィルム)を、予熱ゾーン、延伸ゾーン、固定・冷却ゾーンの3ゾーンからなり、合計15mの長さのテンター横延伸機を用いて横延伸を行った。速度5m/分、温度145℃で2.5倍延伸し、横一軸配向フィルムを巻き取った。フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有するλ/4近傍の位相差フィルムとして好適な延伸フィルムが得られた。
[実施例37]
実施例12で得られた溶融押し出しフィルム(未延伸の巻物フィルム)を、ゾーン長7m、乾燥炉内のニップロール間で延伸する縦延伸機に通し、入り側速度3.4m/分、温度140℃で1.5倍縦延伸を行い、続けて実施例36で用いた横延伸機に通し温度146℃で横2.0倍延伸して2軸配向フィルムを得た。フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有する、2枚構成の大型VAモード用位相差フィルムに好適なフィルムが得られた。
[実施例38]
実施例12で実施した溶融押し出しの製膜速度を2.0m/分に変えた他は同様の条件で行い、幅315mm、厚み平均230μmの巻物フィルムを得た。該フィルムは透明性に優れ、表面性、均質性も良好であった。このフィルムを縦延伸機入り側速度2.5m/分で連続して実施例37で用いた縦、横延伸機を通して2軸配向フィルムを得た。延伸条件、フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有する、1枚構成の大型VAモード用位相差フィルムに好適なフィルムが得られた。
[実施例39]
実施例14で得たフィルムにつき、実施例37と同様にして縦、横2軸延伸を行った。結果を表2に示した。
[実施例40]
実施例15で得たフィルムを用いて、実施例37と同様にして縦、横2軸延伸を行った。結果を表2に示した。
[実施例41]
実施例18で得られた未延伸フィルムを、予熱ゾーン、延伸ゾーン、固定・冷却ゾーンの3ゾーンからなり、合計15mの長さのテンター横延伸機を用いて横延伸を行った。速度5m/分、温度143℃で2.7倍延伸し、横一軸配向フィルムを巻き取った。フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有するλ/4近傍の位相差フィルムとして好適に用いることのできる延伸フィルムが得られた。
[実施例42]
実施例16で得られた溶融押し出しフィルム(未延伸の巻物フィルム)を、ゾーン長7m、乾燥炉内のニップロール間で延伸する縦延伸機に通し、入り側速度3.4m/分、温度140℃で1.5倍縦延伸を行い、続けて実施例41で用いた横延伸機に通し温度145℃で横2.0倍延伸して2軸配向フィルムを得た。フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有する、2枚構成の大型VAモード用位相差フィルムに好適なフィルムが得られた。
[実施例43]
実施例16で実施した溶融押し出しの製膜速度を1.8m/分に変えた他は同様の条件で行い、幅320mm、厚み平均210μmの巻物フィルムを得た。該フィルムは透明性に優れ、表面性、均質性も良好であった。このフィルムを縦延伸機入り側速度2.5m/分で連続して実施例42で用いた縦、横延伸機を通して2軸配向フィルムを得た。延伸条件、フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有する、1枚構成の大型VAモード用位相差フィルムに好適なフィルムが得られた。
[実施例44]
実施例19で得たフィルムにつき、実施例42と同様にして縦、横2軸延伸を行った。結果を表2に示した。
[実施例45]
実施例20で得たフィルムにつき、実施例42と同様にして縦、横2軸延伸を行った。結果を表2に示した。
[実施例46]
実施例23で得られた溶融押し出しフィルム(未延伸の巻物フィルム)を、予熱ゾーン、延伸ゾーン、固定・冷却ゾーンの3ゾーンからなり、合計15mの長さのテンター横延伸機を用いて横延伸を行った。速度5m/分、温度145℃で2.5倍延伸し、横一軸配向フィルムを巻き取った。フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有するλ/4近傍の位相差フィルムに好適な延伸フィルムが得られた。
[実施例47]
実施例21で得られた溶融押し出しフィルム(未延伸の巻物フィルム)を、ゾーン長7m、乾燥炉内のニップロール間で延伸する縦延伸機に通し、入り側速度3.4m/分、温度140℃で1.5倍縦延伸を行い、続けて実施例46で用いた横延伸機に通し温度146℃で横2.0倍延伸して2軸配向フィルムを得た。フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有する、2枚構成の大型VAモード用位相差フィルムに好適なフィルムが得られた。
[実施例48]
実施例21で実施した溶融押し出しの製膜速度を2.0m/分に変えた他は同様の条件で行い、幅315mm、厚み平均227μmの巻物フィルムを得た。該フィルムは透明性に優れ、表面性、均質性も良好であった。このフィルムを縦延伸機入り側速度2.5m/分で連続して実施例47で用いた縦、横延伸機を通して2軸配向フィルムを得た。延伸条件、フィルム特性を表2に示した。フィルムの幅方向に遅相軸を有する、1枚構成の大型VAモード用位相差フィルムに好適なフィルムが得られた。
[実施例49]
実施例24で得たフィルムを用いて、実施例47と同様にして縦、横2軸延伸を行った。結果を表2に示した。
[実施例50]
実施例25で得たフィルムにつき、実施例47と同様にして縦、横2軸延伸を行った。結果を表2に示した。
なお、表2において、遅相軸角度はフィルムの進行方向(長さ方向)を0°とした値である。
TOPAS6013を105℃で7時間乾燥後、粉末のトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを0.1重量%添加してドライブレンドした。このブレンド物をスクリュー直径90mmφの単軸押し出し機、平均目開きが10μmのSUS不織布製のリーフディスク状フィルター、リップ幅1,400mmのT−ダイを用いて溶融押出し製膜を行った。なお冷却ロールは図1に示すような3本構成からなり、各ロールはその直径が360mmφ、ロール面長が1,800mm、ロールの表面温度が均一になるように熱媒を循環させて制御する構造のものを用いた。T−ダイから吐出された樹脂は、最初に第一冷却ロールに接し、次いで第二冷却ロール、さらに第三冷却ロールに接し、その後テイクオフロールを介して巻回されることになる。なお、第1冷却ロールにてフィルムの着地点で両端に4.5kVの電圧をかけてエッジピンニングを行った。
押出し機およびダイの温度を270℃、第1冷却ロール温度を130℃、第2冷却ロール温度を125℃、第3冷却ロール温度を120℃とし、第1冷却ロールの周速度をR1、第2冷却ロールの周速度をR2、第3冷却ロールの周速度をR3としたときに、R1=3.8m/分とし、またロール周速度の比率R2/R1を1.002、比率R3/R2を1.000とした。スクリューの回転数を20rpmとして樹脂を押し出し、第1冷却ロール、第2冷却ロール、第3冷却ロールと順次フィルムを外接させ、テイクオフロールを介してフィルムを引き取り、両エッジ部分を100mmずつ切り除いて1,100mm幅、厚み約200μmのフィルムとして、厚さ30μmのポリエチレン系マスキングフィルムとともに500mを共巻して巻層体を得た。
得られたフィルムにはダイ筋、異物等がほとんど見られず、外観上極めて均一性の高いものであった。フィルム厚みは平均200μm、接触式の連続厚み計(アンリツ(株)製フィルム厚み計KG601)での測定から幅方向およびフィルム送り方向とも厚み斑は±1.5μm以内であり厚み斑の極めて小さいフィルムであった。Tgは137℃、全光線透過率は91.8%、ヘイズは0.3%であった。またフィルムをシクロヘキサンに溶解してフィルム中に存在するゲル数を調べたところ、目開き20μmのシルクスクリーンを用いた場合で24個/g、目開き5μmのシルクスクリーンを用いた場合で41個/gであった。フィルムをシクロヘキサンに溶解した後、メタノールによる再沈を行い、ろ液を濃縮することにより添加剤を抽出して31P−NMR分析を行ったところ、亜りん酸エステル(=トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト)の含有量が0.035重量%、りん酸エステル(=トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート)が0.059重量%と求められた。なお亜りん酸およびりん酸の加水分解物は観察されなかった。
Claims (10)
- (A)下記式(a1)で表されるエチレン単位および下記式(a2)で表される環状オレフィン単位を有し且つガラス転移温度が100〜180℃の範囲にある非晶性ポリオレフィン100重量部、ならびに
(B)下記成分(B1)〜(B6)のうちの少なくとも1つを(B1)〜(B6)の合計量が0.005〜2重量部の範囲で含有する樹脂組成物を溶融押し出しして形成され、
フィルム中に存在する大きさ20μm以上のゲル数が100個/g以下であることを特徴とする、溶融押し出しフィルム。
(式(a2)中、qは0〜4の整数であり、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜10の芳香族炭化水素基であり、R1とR2またはR3とR4とが結合してアルキリデン基を形成していてもよく、R1とR3またはR2とR4とはそれらが結合している炭素原子と一緒になって環を形成していてもよく、前記環は二重結合を有していてもよい。)
(B1)下記式(I)で表される化合物。
(式(I)中、複数あるR5およびR6はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基であり、R7は炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基または下記式(1)
(式(1)中、R8および複数あるR9はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。)
で表される基である。)
(B2)下記式(II)で表される化合物。
(式(II)中、複数あるR10およびR11はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基であり、複数あるR12はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、Xは単結合、硫黄原子または基−CHR14−(式中、R14は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基である。)であり、Aは単結合、炭素数2〜8のアルキレン基または基*−COR15−(式中、R15は単結合、メチレン基または炭素数2〜8のアルキレン基であり、*は酸素側に結合していることを示す。)であり、R13は炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基または下記式(2)
(式(2)中、R16およびR17はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基であり、YおよびZは、その一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基であり、もう一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基である。)
で表される基である。)
(B3)炭素数1〜20の一価もしくは多価のアルコールと炭素数10〜30の脂肪酸との部分エステル化物または全エステル化物。
(B4)炭素数10〜30の脂肪酸。
(B5)炭素数10〜30の一価または多価の脂肪族アルコール。
(B6)下記式(III)で表される化合物。
(式(III)中、複数あるR18およびR19はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。) - (B)成分が成分(B1)を含み、式(I)におけるR7が上記式(1)で表される基であり、R5およびR8が水素原子であり、R6およびR9がtert−ブチル基である、請求項1に記載の溶融押し出しフィルム。
- (B)成分が、更に成分(B3)を含むものである、請求項2に記載の溶融押し出しフィルム。
- (B)成分が成分(B2)を含み、式(II)におけるR13が上記式(2)で表される基であり、R10およびR16がtert−ブチル基、tert−ペンチル基、tert−オクチル基、シクロヘキシル基または1−メチルシクロヘキシル基であり、R11がメチル基、tert−ブチル基またはtert−ペンチル基であり、R12が水素原子またはメチル基であり、R17が炭素数1〜5のアルキル基であり、Xが単結合であり、Aが炭素数2〜8のアルキレン基であり、且つYおよびZは、そのいずれか一方がヒドロキシル基であり、もう一方が水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である、請求項1記載の溶融押し出しフィルム。
- (B)成分が、更に成分(B3)を含むものである、請求項4に記載の溶融押し出しフィルム。
- (B)成分が、成分(B3)〜(B5)のうちの少なくとも1つを含むものである、請求項1に記載の溶融押し出しフィルム。
- フィルムの厚みが10〜400μmである、請求項1に記載の溶融押し出しフィルム。
- (A)上記式(a1)で表されるエチレン単位および上記式(a2)で表される環状オレフィン単位を有し且つガラス転移温度が100〜180℃の範囲にある非晶性ポリオレフィン100重量部、ならびに
(B’)下記成分(B1’)〜(B6’)のうちの少なくとも1つを(B1’)〜(B6’)の合計量が0.005〜2重量部の範囲で含有し、
フィルム中に存在する大きさ20μm以上のゲル数が100個/g以下であることを特徴とする、溶融押し出しフィルム。
(B1’)上記式(I)で表される化合物およびその酸化生成物から選ばれる少なくとも1種。
(B2’)上記式(II)で表される化合物およびその酸化生成物から選ばれる少なくとも1種。
(B3’)炭素数1〜20の一価もしくは多価のアルコールと炭素数10〜30の脂肪酸との部分エステル化物または全エステル化物ならびにこれらの加水分解生成物から選ばれる少なくとも1種。
(B4’)炭素数10〜30の脂肪酸。
(B5’)炭素数10〜30の一価または多価の脂肪族アルコール。
(B6’)上記式(III)で表される化合物およびその酸化生成物から選ばれる少なくとも1種。 - 請求項1または8に記載の溶融押し出しフィルムを延伸配向して得られる延伸フィルム。
- (A)非晶性ポリオレフィンの(a2)環状オレフィン単位がノルボルネン単位であり、(A)非晶性ポリオレフィン中の(a2)単位の2連鎖部位(ダイアド)におけるメソ型とラセモ型の存在比率が[メソ型]/[ラセモ型]>4であり、位相差フィルムとして用いられることを特徴とする、請求項9に記載の延伸フィルム。
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