JPWO2006126613A1 - 燃料電池用セパレータ及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

MEAとの導電性を維持しながら、素材コストの高い貴金属の使用量を低減し、かつ、フッ素イオンまたはフッ酸などの強い腐食性を有する物質に対する耐食性および耐久性を得ることができる燃料電池用セパレータ及びその製造方法を提供する。フッ素系固体高分子電解質膜を用いた固体高分子型燃料電池に用いられる本発明の金属セパレータ15,17は、複数の燃料ガス流路14を有するように加工されたステンレスによる基材20を有し、この基材20の表面には純Ti層21が形成され、この純Ti層21のフッ素系固体高分子電解質膜側の表面にはPd層23が形成され、熱処理により少なくとも純Ti層21の表面との接合部が合金化されて純Ti層21とPd層23により複合金属層22が形成されている。

Description

本発明は、固体高分子電解質型燃料電池に用いられる燃料電池用セパレータ及びその製造方法に関し、特に、膜・電極接合体(MEA)との導電性を維持しながら、貴金属の使用量を低減できるとともに、フッ素イオンまたはフッ化水素酸(フッ酸)などの強い腐食性を有する物質に対する耐食性および耐久性に優れた燃料電池用セパレータ及びその製造方法に関する。
燃料電池は、化学変化を直接に電気エネルギーに変えることができることから高効率であり、また、窒素や硫黄などを含む燃料を燃焼しないので、大気汚染物質(NO、SO等)の排出量が少なく地球環境に優しいという特長を有する。この燃料電池には、固体高分子電解質型(PEFC)、リン酸型(PAFC)、溶融炭酸塩型(MCFC)、固体酸化物型(SOFC)等がある。特に、固体高分子電解質型燃料電池は、自動車や一般家庭等の電力用、モバイル機器電源や無停電電源として、将来普及することが期待されている。
図8は、従来技術として、黒鉛からなるセパレータ(以下、黒鉛セパレータという)を備えた固体高分子電解質型燃料電池の単位セル構成の断面模式図を示す。この固体高分子電解質型燃料電池セル(以下、燃料電池セルという)100は、固体高分子電解質膜101、燃料極102、および酸化剤極103より構成されるMEA(Membrane Electrode Assembly、膜・電極接合体)104と、MEA104の片面(燃料極)に面して燃料ガス流路105が形成されている黒鉛セパレータ106と、MEA104の他方の面(酸化剤極)に面して酸化剤ガス流路107が形成されている黒鉛セパレータ108と、MEA104の周囲をシールするように黒鉛セパレータ106,108の間に挟まれて設けられたガスケット109A,109Bとを備える。
なお、燃料極102は、固体高分子電解質膜101の片面に、アノードの触媒層およびその外側に配置されたガス拡散(分散)層を備える構成で形成される。酸化剤極103は、固体高分子電解質膜101の他方の面に、カソードの触媒層およびその外側に配置されたガス拡散(分散)層を備える構成で形成される。また、黒鉛セパレータ106,108は、燃料極102と酸化剤極103との間を電気的に接続するとともに、燃料と酸化剤が混ざらないようにするための部材である。
このような燃料電池セル100は、約80℃の環境で、燃料ガス中の水素と酸化剤ガス中の酸素を利用して電気化学反応により発電する。
燃料ガス流路105を流れる燃料ガス中の水素が、燃料極102の触媒層に接触することにより下記の反応が生ずる。
2H→4H+4e
水素イオンHは、固体高分子電解質膜101中を対極側へ移動し、酸化剤極103の触媒層に達し、酸化剤ガス流路107の酸化剤ガス中の酸素と反応して水となる。
4H+4e+O→2H
上記の電極反応により起電力が生じ、この起電力は黒鉛セパレータ106,108を介して外部に取り出される。
燃料電池においては、所望の出力電圧が得られるように、図8に示したような燃料電池セル100の所定数を直列接続して使用される。このため、セパレータの枚数は、数十枚から百枚以上になる場合もある。
従来、燃料電池セルのセパレータ材料には、耐食性と導電性の観点から、主に黒鉛系の材料が用いられてきた。しかし、切削加工による黒鉛セパレータは、製作コストが高く、上述したように使用枚数が多くなると、燃料電池システムのコストが非常に高くなるという問題がある。また、樹脂モールド成形法による黒鉛セパレータにおいても、機械的強度の観点から黒鉛セパレータの薄肉化が困難であり、燃料電池システムの小型化が困難になるという問題がある。
そこで、セパレータ材料には、ステンレス鋼(SUS)のような耐食性のある金属を用いることが提案されている。しかし、固体高分子電解質型燃料電池のセパレータ材料にステンレス鋼を用いた場合、表面処理を施さないでそのまま使用すると、ステンレス鋼の成分元素が溶出し、セパレータが破損する、ならびに燃料電池特性を劣化させてしまうことが知られている。
この対策として、例えば、ステンレス鋼をベース材にし、その表面にAu(金)を0.01〜0.06μmの厚みにメッキ層を形成し、接触抵抗を小さくしたセパレータが知られている(例えば、特許文献1参照)。同様に、ステンレス鋼をベース材にし、その表面にTa(タンタル)、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、Ti(チタン)等による耐酸性被膜を形成し、この耐酸性被膜上にAu,Pt(白金),Pd(パラジウム)等の導電性被膜を0.1μm以下、実施例として0.03μmの厚みにメッキを施し、耐食性および導電性を改善した金属セパレータが知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかし、上記したような薄い貴金属被膜はポーラスであり、ステンレス鋼の表面を完全に被覆するものではない。このため、導電性に不満はないが、耐食性(耐蝕性)の点では不満足であり、長時間の使用に対してステンレス鋼の成分元素が溶出してしまい、燃料電池特性を劣化させることになる。一方、耐蝕性の点で問題とならない程度に貴金属被膜を厚くすると、耐蝕性の課題が解決されてもコストが高くなり、実用的ではない。
この問題を解決するものとして、例えば、特許文献3に示されるものがある。この金属セパレータは、SUS、Al(アルミニウム)、Ti等の金属板の表面に、Au、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Pd、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)およびPtからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の貴金属もしくは前記貴金属の酸化物部分を3〜50nm配置して、高い導電性と耐食性を備えるようにしている。
また、例えば特許文献4には、次のような金属セパレータが開示されている。この金属セパレータは、ステンレス等の耐食金属材料の表面にTi系耐食金属をクラッドしたTiクラッド材に、Au、Pt、Ru、Pd等の貴金属を導電性接点層としてガス拡散層と接触する部分に0.0005〜0.01μm未満の膜厚で被覆したものであり、優れた導電性および耐食性を得ることができる。
特開平10−228914号公報([0006]、[0010]、図4) 特開2001−93538号公報([0015]〜[0018]) 特開2001−297777号公報([0012]〜[0017]) 特開2004−158437号公報([0037]〜[0041]、[0047]、図1〜図4)
従来の燃料電池用の金属セパレータにおいても、例えば、約80℃でpH2〜3程度の硫酸酸性に対する耐食性は、ある程度確保される。しかしながら、フッ素系固体高分子電解質膜を用いた燃料電池において、特に、電源のオン/オフを繰り返すなどの厳しい運転条件(長期間の使用を考慮すれば、必然的に電源のオン/オフは多数繰り返されると考えられる)のもとでは、電解質膜の劣化や分解に基づくフッ素イオンまたはフッ酸などの強い腐食性を有する物質が発生し、これが金属セパレータをはじめ、配管材など金属材料を腐食させるという従来考慮されていなかった新たな課題が大きな問題になってきている。そして、その新たな課題(フッ素イオンまたはフッ酸などの強い腐食性を有する物質の発生)に対しては、特許文献3乃至特許文献4の金属セパレータにおいても、長期信頼性の低下となって現れることが懸念される。
従って、本発明の目的は、MEAとの導電性を維持しながら、素材コストの高い貴金属の使用量を低減し、かつ、フッ素イオンまたはフッ酸などの強い腐食性を有する物質に対する耐食性および耐久性を得ることができる燃料電池用の金属セパレータ及びその製造方法を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するため、フッ素系固体高分子電解質膜を用いて構成された固体高分子型燃料電池に用いられる燃料電池用セパレータにおいて、少なくとも前記フッ素系固体高分子電解質膜側の表層がTiまたはTi合金による第1の金属からなる金属板と、前記第1の金属の前記フッ素系固体高分子電解質膜側の表面上に形成された第2の金属の層とを備え、前記第2の金属の層は少なくとも前記第1の金属の表面との接合部が合金化されていることを特徴とする燃料電池用セパレータを提供する。
また、本発明は、上記目的を達成するため、少なくとも前記フッ素系固体高分子電解質膜側の表層がTiまたはTi合金による第1の金属からなる金属板を所定の厚みに形成する第1の工程と、前記第1の金属の前記フッ素系固体高分子電解質膜側の表面上に第2の金属の層を形成する第2の工程と、少なくとも前記第1の金属と前記第2の金属の層の接合部を合金化する第3の工程と、を備えることを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法を提供する。
本発明の燃料電池用セパレータ及びその製造方法によれば、MEAとの導電性を維持しながら、貴金属の使用量を低減できるとともに、フッ素イオンまたはフッ酸などの強い腐食性を有する物質に対する耐食性および耐久性に優れた燃料電池用セパレータを得ることができる。
本発明の実施の形態に係る固体高分子型燃料電池の単位セルの例を示す断面模式図である。 図1の金属セパレータの詳細を示す断面模式図である。 本発明によるPd層を純Ti層にコートしたTiクラッド材を走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析装置(SEM−EDX)により面分析した結果の1例を示す図である。 本発明の実施の形態における金属セパレータ材の耐フッ素環境試験の結果を示す写真である。 金属セパレータ材の構成の相違に基づく接触抵抗特性の評価結果を示す図である。 金属セパレータ材の製造工程における熱処理条件の相違に基づく接触抵抗特性の評価結果を示す図である。 作製した金属セパレータの外観写真である。 黒鉛セパレータを用いた固体高分子電解質型燃料電池の単位セル構成を示す断面模式図である。
符号の説明
1 燃料電池セル
10 フッ素系固体高分子電解質膜
11 燃料極
12 酸化剤極
13 MEA
14 燃料ガス流路
15,17 金属セパレータ
16 酸化剤ガス流路
18,19 ガスケット
20 基材
21 純Ti層
22 複合金属層
23 Pd層
100 燃料電池セル(固体高分子電解質型燃料電池セル)
101 固体高分子電解質膜
102 燃料極
103 酸化剤極
104 MEA
105 燃料ガス流路
106,108 黒鉛セパレータ
107 酸化剤ガス流路
109A,109B ガスケット
(固体高分子型燃料電池用セルの構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る固体高分子型燃料電池の単位セルの例の断面模式図を示す。MEA13は、電解質であるフッ素系固体高分子電解質膜10と、フッ素系固体高分子電解質膜10の一方の面に設けられた燃料極11と、フッ素系固体高分子電解質膜10の他方の面に設けられた酸化剤極12から形成される。なお、燃料極11および酸化剤極12は、それぞれ、触媒層およびその外側にガス拡散(分散)層を備える構成で形成される。燃料電池セル1は、MEA13と、MEA13の一方の面(燃料極11)に対して凹溝の断面形状となる複数の燃料ガス流路14を有する燃料電池用セパレータとしての金属セパレータ15と、MEA13の他方の面(酸化剤極12)に対して凹溝の断面形状となる複数の酸化剤ガス流路16を有する燃料電池用セパレータとしての金属セパレータ17と、金属セパレータ15,17間に介在し、MEA13の周囲を封止する部材(シール部材)としてのガスケット18,19とを備える。
この燃料電池セル1は、ガスケット18,19でシールした状態で、一対の金属セパレータ15,17を適度な圧力で加圧して固定することにより組み立てられている。
フッ素系固体高分子電解質膜10は、パーフルオロスルフォン酸系イオン交換材料やパーフルオロカルボン酸系イオン交換材料等を用いることができ、例えば、デュポン株式会社のナフィオン(登録商標)や旭硝子株式会社のフレミオン(登録商標)を用いることができる。
なお、本実施の形態の燃料電池用セルによる燃料電池の動作原理は、図8に示した燃料電池と同様であるので、ここでは説明を省略する。
また、燃料電池セルの内部損失低減の観点から、MEAと金属セパレータの間の接触抵抗は低い方が望ましく、少なくとも150mΩ・cm程度以下であることが要求される。より望ましくは100mΩ・cm以下であり、さらに望ましくは70mΩ・cm以下である。
(金属セパレータの構成)
図2は、金属セパレータ15の詳細構成の模式図を示す。ここでは、金属セパレータ15のみを示しているが、金属セパレータ17も同じ構造である。この金属セパレータ15は、耐食性の金属、例えばステンレス鋼による基材20と、この基材20の両面に形成された第1の金属の層としての純Ti層21、および基材20の少なくとも片面の純Ti層21上に形成した第2の金属層としてのPd層23を含む複合金属層22とを有する。この複合金属層22は、純Ti層21とPd層23の接合部にTi−Pd合金が形成されている。なお、「耐食性の金属」とは大気中で酸化物が不動態皮膜を形成するような金属(例えば、ステンレス鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金、Tiなど)を意味し、「純Ti」とはJISの1種〜3種を意味するものとする。
ここで、Pd層23の厚みは、純Ti層21との合金化前の状態で平均厚さが2〜10nmとなるように形成することが好ましい。より好ましくは、3〜9nmに形成する。さらに好ましくは、4〜8nmに形成する。上限を10nmと設定した理由は、素材コストの高い貴金属の使用量を抑制するためである。また、下限を2nmと設定した理由は、Pd層23の厚みが2nmを下回ると、後述する熱処理によりPd層23がTi酸化物で覆われる確率が高くなり、導電性の確保が困難になる(MEAに対する接触抵抗が増大する)ためである。なお、Ti酸化物皮膜の厚みは約2nm程度と、一般的に言われている。
また、複合金属層22でPd層23を形成した表層部分(例えば、1μm程度の厚み)の平均組成比は、Tiに対する原子比でPdが0.005以上0.03以下、Tiに対する原子比でO(酸素)が0.1以上1以下、かつ、Oに対する原子比でPdが0.02以上0.08以下となるようにすることが好ましい。より好ましくは、それぞれ原子比で0.01≦Pd/Ti≦0.03、0.2≦O/Ti≦0.9、0.02≦Pd/O≦0.06となるようにする。さらに好ましくは、それぞれ原子比で0.015≦Pd/Ti≦0.03、0.2≦O/Ti≦0.85、0.02≦Pd/O≦0.05となるようにする。なお、上述の表層部分(例えば、1μm程度の厚み)の平均組成比は、例えば、エネルギー分散型X線分析装置を用いた面分析(例えば、加速電圧:15kV、面積:約60×約80μm)によって定量分析することができる。
(金属セパレータの製造方法)
<第1の工程>
次に、金属セパレータ15の製造方法について例を挙げて説明する。
まず、厚さ0.16mmの板状のステンレス鋼材(例えば、SUS316L)の両面に第1の金属の層としての純Ti層21を20μmの厚さにクラッド接合する。
<第2の工程>
次に、スパッタ法やEB蒸着(電子ビーム蒸着)法等により、MEA13側の面の純Ti層21上に、例えば平均厚さ5nmの厚みに第2の金属の層としてのPd層23を形成する。このとき、逆スパッタリングやイオンボンバード等の手法により、Pd層23を形成する直前に、純Ti層21の表面の清浄化(例えば、表面の残留油分や自然酸化皮膜の除去)を行うことは好ましい。
<第3の工程>
ついで、所定の条件のもとで熱処理を施し、純Ti層21とPd層23の界面で拡散現象を発生させることで、純Ti層21とPd層23との間にTi−Pd合金を生成し、複合金属層22を形成する。同時に、Pd層に覆われていない純Ti層部分と雰囲気中の酸素が化合することにより、Ti酸化物皮膜が形成される。
この状態では、基材20側にTi層が形成され、フッ素系固体高分子電解質膜10側(MEA13側)にPd層23が形成され、中間にTi−Pd合金が形成されている。純Ti層21上の両面にPd層23を形成してもよいが、コスト等の観点からフッ素系固体高分子電解質膜10側(MEA13側)の面のみに形成することが望ましい。なお、Pd層23の平均厚さは、Pdの平均成膜速度を予め測量し(例えば、膜状に形成させた(島状でない)膜厚を計測し、該膜の成膜時間で除すことにより平均成膜速度を求めることができる)、成膜時間を調整することにより制御できる(平均厚さ=平均成膜速度×成膜時間)。
上記熱処理は、大気中或いは有酸素雰囲気中にて、250℃より高く400℃以下の範囲内の温度にて行う。熱処理温度は、280℃以上390℃以下の範囲内であることが好ましく、350℃付近(300℃〜370℃程度)であることがより好ましい。上記熱処理温度が好適であることのメカニズムは完全には解明できていないが、250℃より高い温度の熱処理が適当である理由は、Ti−白金族合金化(実効的な拡散)に必要な熱エネルギーを付与するためであり、400℃以下の熱処理が適当である理由は、MEAに対する接触抵抗の増大につながるTi酸化物皮膜の過剰な形成を抑制するためであると考えられる。熱処理時間は、複合金属層22でPd層23を形成した表層部分(例えば、1μm程度の厚み)の平均組成比が、前述の範囲内に収まるように調整することが好ましい。
また、合金化の方法は、簡便性やコスト等の観点から通常の電気炉等を用いた熱処理により行うことが好ましいが、その他の方法を適用することもできる。
上記の工程(第1の工程〜第3の工程)を経て、金属セパレータ材が形成される。金属セパレータは、該金属セパレータ材に成形加工(切断加工やプレス加工等)を施すことにより製造される。上記工程のうち、第2の工程や第3の工程は、金属セパレータの成形前に行っても成形後に行っても良い。
上記のように、純Ti層21にナノレベルでPd層23をコートしたのちに合金化処理することにより、高価なPdの使用量を減らせる等の点で大きなメリットが得られる。本実施の形態においては、スパッタ法等によるナノレベルの膜形成技術を利用し、高精度にTiとPd等の白金族元素の接合を形成し、さらに拡散熱処理を施したことにより、セパレータの最表面で酸素との化学結合の無いTi原子の近傍に白金族元素の原子があることで、電子が供給され、電気化学的に貴になると考えられる。
なお、Ti−Pd合金は、純Ti層21とPd層23との間の接合部に形成された構造に限定されるものではなく、拡散条件によっては、複合金属層22の全体がTi−Pd合金であってもよい。また、合金状態としては、特に限定されるものではなく、場所によってPdの濃度差があってもよいが、燃料極11及び酸化剤極12のガス拡散(分散)層と接触する部分のPd濃度が低くならないようにすることが望ましい。
また、第1の金属の層は、純Tiのほか、Ti合金(例えば、JISの11種)であってもよい。Ti合金は純Tiと同程度あるいはそれ以上の耐食性を有するものを用いる。また、第2の金属の層は、Pdに代えて、Pt(白金)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Ir(イリジウム)のいずれか、あるいは2種類以上を用いることができ、更に、これらに酸素を化合させてもよい。中でも、Pd、Pt、Ruのうちの1種又は2種類以上、あるいはこれらに酸素を化合させたものを用いることが好ましい。これらの場合も、Pt、Ru、Rh等は、Tiとの複合金属層で第2の金属の層を形成した表層部分(例えば、1μm程度の厚み)の平均組成比は、Tiに対する原子比で第2の金属が0.005以上0.03以下、Tiに対する原子比でO(酸素)が0.1以上1以下、かつ、Oに対する原子比で第2の金属が0.02以上0.08以下となるようにすることが好ましい。より好ましくは、それぞれ原子比で0.01≦第2の金属/Ti≦0.03、0.2≦O/Ti≦0.9、0.02≦第2の金属/O≦0.06となるようにする。さらに好ましくは、それぞれ原子比で0.015≦第2の金属/Ti≦0.03、0.2≦O/Ti≦0.85、0.02≦第2の金属/O≦0.05となるようにする。
(実施の形態の効果)
この実施の形態によれば、下記の効果を奏する。
(1)フッ酸雰囲気環境にあっても接触抵抗の変化が見られず、十分な耐食性を得ることができる。
(2)MEAのガス拡散(分散)層との電気的な接触条件を良くすることができ、集電材としての機能も大幅に高めることができる。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、その要旨を変更しない範囲内で種々な変形が可能である。
(セパレータ用金属板1〜3の作製)
まず、基材として厚み1mmの板状のステンレス鋼材(SUS316L)を用意し、基材の両面に厚み比率が各10%となるように、第1の金属(Ti:JIS 1種)の層をクラッド圧延して接合して、全体厚み0.2mmの板材に加工した(金属板1)。
また、基材として厚み1mmの板状のアルミニウム合金材(Al−Mg合金:JIS 5083)を用意し、構成材の厚み比率が第1の金属の層20%、接合金属の層5%、基材75%となるように、接合金属(Al:JIS 1050)の層と第1の金属(Ti:JIS 1種)の層をクラッド圧延して接合した。このとき、接合金属の層は、基材と第1の金属の層の間に介在するように形成した。その後、接合熱処理(例えば、500℃×10min)、仕上圧延を施して、全体厚み0.3mmの板材に加工した(金属板2)。
また、全体厚み0.2mmのTi板材(Ti:JIS 1種)を用意した(金属板3)。
(第2の金属の層の形成)
第2の金属の層の形成は、RFスパッタ装置(株式会社アルバック、型式:SH−350)を用いて行った。形成時の雰囲気はArで、圧力は1Paとし、RF出力は金属の種類により適宜調整した。第2の金属の層の厚み制御は、金属種ごとに、予め平均成膜速度を測量した上で、成膜時間を調整して行った。
(分析結果)
図3は、本発明に係る複合金属層22の表面を走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析装置(SEM−EDX:Scanning Electron Microscopy − Energy Dispersive X-ray spectrometer、加速電圧:15kV、面積:約60×約80μm)により面分析した結果の1例を示す。SEMは株式会社日立製作所S−4300で、EDXは株式会社堀場製作所EMAX−300である。なお、図に示した試料は、前記金属板1上に、Pd層を5nm(平均膜厚)形成した直後の試料である。この分析結果より、Pd層23によるナノ薄膜は非常に薄いか、もしくは表面でクラスター状に凝集(島状に分散)しているために、下地の純Ti層21の信号が、はっきり観察されていることがわかる。
(金属セパレータ材における耐フッ酸環境試験)
図4は、本実施の形態における金属セパレータの耐フッ酸環境試験Aの結果を示す。この耐フッ酸環境試験Aは、温度80℃、0.5質量%フッ酸水溶液蒸気雰囲気において、24時間保持した。その後、試験後の表面状態を観察した。
該試験に用いた試料は、次のように用意した。実施例として、前記金属板1上に、Pd層23を5nm(平均膜厚)形成し、大気中で250℃×1h(250℃は装置の設定温度、試料近傍の実態温度は約260℃)の熱処理を施した。熱処理は、市販のオーブン(ヤマト科学株式会社、型式:DV600)を用いて行った。一方、比較例としては、Pd層23を形成しない前記金属板1とした。
図中、左側は最外層が純Ti層21のみの場合(比較例)であり、右側は、Pd層23を施し、所定の熱処理を施して複合金属層22を形成した場合(実施例)である。Pd層無しの金属セパレータは、表面が明らかに変質しているのに対し、Pd層23を施し、所定の熱処理を施して複合金属層22を形成した金属セパレータは殆ど変質が認められず、良好な耐食性・耐久性を示していることが判る。
(金属セパレータ材の構成と接触抵抗特性)
次に、金属セパレータ材の構成(材料)を種々変化させて、耐フッ酸環境試験Aの実施前後におけるMEAのガス拡散(分散)層との接触抵抗を測定し、その特性の評価を行った。接触抵抗測定は、次のように行った。なお、MEAのガス拡散(分散)層としてカーボンペーパ(東レ株式会社、品番:TGP−H−060)を用いた。Auめっきを施したCu(銅)ブロックの間に、用意した金属セパレータ材(2×2cm)を、カーボンペーパを介して挟み、油圧プレス機で加重(20kg/cm)をかけながら、金属セパレータ材とカーボンペーパの間の接触抵抗を4端子測定方式(アデックス株式会社、型番:AX−125A)で測定した。
この評価試験に供する試料は、次のように用意した。基材20(SUS316L)の両面に純Ti層21を施してなるTiクラッド材(前記金属板1)の表面に、第2の金属の層として、平均厚さ5nmのPd(実施例1)、Pt(実施例2)、Ru(実施例3)、Au(比較例1)の薄膜をそれぞれスパッタ法で形成し、大気中で250℃×1h(250℃は装置の設定温度、試料近傍の実態温度は約260℃)の熱処理を施した。また、前記金属板2の表面に、第2の金属の層として平均厚さ5nmのPd薄膜をスパッタ法で形成し、実施例1と同じ熱処理を施した試料(実施例1’)、および前記金属板3の表面に、同じく平均厚さ5nmのPd薄膜をスパッタ法で形成し、実施例1と同じ熱処理を施した試料(実施例1”)を用意した。なお、第2の金属の層の形成は、RFスパッタ装置(株式会社アルバック、型式:SH−350、雰囲気:Ar、圧力:1Pa)を用いて行った。熱処理は市販のオーブン(ヤマト科学株式会社、型式:DV600)を用いて行った。
上記に加え、比較例2(Ti-SUS-Tiのみ、金属板1)と比較例3(金属板1のTi上に、例えば特開2000−138067号公報に開示された方法により、導電性炭素を塗布(約20μm厚み)したもの)も用意した。
図5は、金属セパレータ材の構成の相違に基づく接触抵抗特性の評価結果を示す。図中、左側は耐フッ酸環境試験A実施前の特性を示し、右側は耐フッ酸環境試験A実施後の特性を示している。
図5から明らかなように、Pd等のコートを施さなかったTiクラッド材(比較例2、比較例3)は、4桁以上の接触抵抗の増加が見られるのに対し、Tiの表面にPd層23を形成し、所定の熱処理を施した試料(実施例1,1’,1”)は、接触抵抗の変化が殆ど見られなかった(耐フッ酸環境試験A前後での接触抵抗の増大が少なかった)。また、Pdと同じ白金族であるPt(実施例2)、Ru(実施例3)も接触抵抗が10倍程度に増大するものの、燃料電池用表面処理としては十分な耐食性が得られている。一方、Auコート(比較例1)の場合、Auはそれ自身が貴金属であることにより、比較例2や比較例3と比較すると防食効果が現れているが、本発明に係る実施の形態と比較すると、耐フッ酸環境試験A前後での接触抵抗の増大が非常に大きい(約40倍)。言い換えると、本発明に係る実施の形態は、明らかに良好であることが判る。
(熱処理条件と接触抵抗特性)
次に、金属セパレータの製造工程における熱処理条件を種々変化させて、耐フッ酸環境試験Bの実施前後における接触抵抗を測定し、熱処理条件と接触抵抗特性の関係を調査した。
この評価試験に供する試料は、次のように用意した。基材20(SUS316L)の両面に純Ti層21を施してなるTiクラッド材(前記金属板1)の表面に、スパッタ法で平均厚さ10nmのPd薄膜を形成し、大気中又はアルゴン(Ar)中で1時間、表1に示す温度にて熱処理を施した。また、比較として、Pd薄膜を形成しない前記金属板1を用い、大気中で1時間、表2に示す温度にて熱処理を施した試料も用意した。なお、大気中の熱処理は通常の電気炉(株式会社デンケン、型式:KDF−S80)を用いて行い、Ar中の熱処理は通常の電気炉(アルバック理工株式会社、型式:VF−616Y)を用いて、高純度アルゴンガスを炉内に流しながら行った。これら2台の電気炉は、装置の設定温度と試料近傍の実態温度がほぼ同じであった。
耐フッ酸環境試験Bは、各試料に対し、1cm×1cmの露出部を除き、耐熱テープで保護して試験片を作製し、これを80℃、pH=3程度の弱酸性フッ素イオン水溶液中で24時間保持することにより行った(フッ素濃度200ppm)。耐フッ酸環境試験Bの前後にて、前述と同様の方法により、カーボンペーパとの接触抵抗を測定した。純Ti層表面にPd薄膜を形成した試料における接触抵抗の測定結果および接触抵抗の耐フッ酸環境試験B前後比(B試験後接触抵抗/B試験前接触抵抗)を表1に併記した。また、純Ti層表面にPd薄膜を形成しなかった試料における耐フッ酸環境試験B前の接触抵抗の測定結果、および耐フッ酸環境試験B後の観察結果を表2に併記した。
図6は、表1および表2に示す接触抵抗の測定結果をグラフ化して示したものであり、金属セパレータ材の製造工程における熱処理条件の相違に基づく接触抵抗特性の評価結果を示す。図中、□、△および○は耐フッ酸環境試験B実施前の特性を示し、■および▲は耐フッ素環境試験B実施後の特性を示している。
表1、表2および図6から明らかなように、純Ti層表面にPd薄膜を形成した試料において、熱処理しないもの及び大気中200℃で熱処理した試料(比較例4)は、接触抵抗の大幅な(2桁程度の)増加が見られた。一方、大気中350℃付近(280〜390℃)で熱処理した試料(実施例4〜6)はほとんど増加しなかった。また、大気中500℃で熱処理した試料(比較例5)は、耐フッ酸環境試験Bの前後比(接触抵抗増加率)が小さかったものの、熱処理を施した時点での接触抵抗が大きかった。言い換えると、大気中500℃で処理したものは、実用上の接触抵抗が高く、実際の使用には適さないと考えられる。
一方、比較例6に示したように、アルゴン(Ar)中で熱処理した試料は、いずれも接触抵抗の明らかな増加が見られ(B試験前後比が大きく)、かつ耐フッ酸環境試験B後の接触抵抗が非常に高かった(1×10mΩ・cm以上)。すなわち、本発明の対象とする燃料電池用の金属セパレータには適さないと考えられる。言い換えると、本発明において、大気中或いは有酸素雰囲気中で熱処理することの意義を強く示唆している。
また、純Ti層表面にPd薄膜を形成せずに、大気中200〜400℃で熱処理した試料(比較例7)は、熱処理を施した時点での接触抵抗が実施例4〜6と比して高く、耐フッ酸環境試験Bにより表面が溶解している様子が観察された。これは、フッ酸環境に対する耐食性が不十分であることを示している。言い換えると、本発明に係る複合金属層22を形成することの意義を強く示唆している。
さらに、大気中500〜600℃で熱処理した試料(比較例8)は、熱処理を施した時点で、非常に高かった(1×10mΩ・cm以上)。よって、実際の使用には適さないと考えられる。
(平均組成比の分析結果)
上記の大気中で熱処理を施した試料について、本発明に係る複合金属層22の表面を走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析装置(SEM−EDX:Scanning Electron Microscopy − Energy Dispersive X-ray spectrometer、加速電圧:15kV、面積:約60×約80μm)により面分析を行った。結果を表3に示す。SEMは株式会社日立製作所S−4300で、EDXは株式会社堀場製作所EMAX−300である。
以上の種々の実験(大気中熱処理とアルゴン中熱処理、ならびに純Ti層表面のPd薄膜の有無)の比較から、本発明のメカニズムとして次のようなモデルが考えられる。本発明において、Pd(白金族元素)薄膜層が非常に薄い(または島状に分散している)ことから、熱処理により合金化する領域は、下地のTi層表面を完全に被覆していないと考えられる。ここで、熱処理雰囲気中に酸素が存在する場合、Pdと合金化しない表面領域は酸化されてTi酸化物皮膜を形成すると考えられる。そして、このTi酸化物皮膜がフッ酸耐性の向上に大きく寄与すると考えられる。一方、Ti−Pd合金(Ti−白金族合金)は、導電経路を確保する(接触抵抗の低減に寄与する)とともに、フッ酸により腐食(溶解)した前記Ti酸化物皮膜を再生させる効果があると考えられる(前記図5の結果参照)。
一方、表1(図6)および表3の結果から判るように、熱処理温度が低い比較例4の場合、接触抵抗の耐フッ酸環境試験B前後比が大きく、該試験後に複合金属層22の表層部分からPdが検出されなかった。これは、複合金属層での合金化が不十分であり、該フッ酸環境試験でPd薄膜層が消失したためと考えられる。言い換えると、第1の金属(例えば、純Ti)と第2の金属(白金族元素、例えばPd)の層は、その接合部で合金化されることが重要であることを強く示唆している。図5の結果と合わせると、有効な合金化のためには、250℃よりも高い温度で熱処理することが必要と考えられる。
また、大気中で熱処理温度が高過ぎる場合においては(例えば、比較例5)、耐フッ酸環境試験Bの前後比(接触抵抗増加率)が小さかったものの、熱処理を施した時点での接触抵抗が大きかった。この理由は、大気中熱処理により強固な(あるいは厚い)Ti酸化物皮膜が形成されたこと、およびPdとの合金化により該Ti酸化物皮膜が安定化したこと等の、複合的な影響と考えられる。
(連続通電試験および起動停止試験)
前記実施例5と同じ手順(金属板1+Pdコート(10nm)+大気中熱処理(350℃×1h))で金属セパレータ用部材を用意した後、プレス加工を施して金属セパレータを作製した。図7に、作製した金属セパレータの外観写真を示す。
燃料ガス(または酸化剤ガス)の流路(図7の左右方向の溝、凹部)の長さを48mm、流路のピッチを3mm(図7の上下方向で、凹部と凸部を交互に形成)、流路の深さ(図7の奥行方向、凹部と凸部の高低差)を0.5mmとした。フッ素系固体高分子電解質膜としてデュポン株式会社製のナフィオン112(登録商標)を用い、発電電極部の大きさは50×50mmとした。電極触媒は0.6mg/cmとなるようにPt担持触媒(田中貴金属工業株式会社、品番:TEC10V50E)を用い、ガス拡散(分散)層にはカーボンペーパ(東レ株式会社、品番:TGP−H−060)を用いた。燃料ガス(または酸化剤ガス)の流路形成とシール部材を兼ね備えたガスケットを挟み込んで、図1(図2)に示したような構造の燃料電池を試作した。
また、比較として、上記の金属セパレータを高純度緻密黒鉛材による黒鉛セパレータに置き換えた燃料電池も試作した。
発電条件は、負荷電流密度を0.5A/cmとし、燃料ガスおよび空気中の酸素(酸化剤ガス)の利用率が、それぞれ70%および40%となるようにガスを供給した。連続通電試験(1500h)を行ったところ、2種類の燃料電池(本発明に係る金属セパレータを使用した燃料電池と従来の黒鉛セパレータを使用した燃料電池)とも、運転時間当たりの起電力の低下が5mV/kh以下に抑えられ、同等の発電特性が得られることを確認した。
次に、外部負荷のON/OFFが3分ごとに切り替わる(6分/サイクル)起動停止試験を1000h(10000サイクル)行った。このとき、燃料ガスおよび酸化剤ガスは、上記連続通電試験と同じ条件で一定に流し続けた。また、外部負荷がONの時の電流密度は、0.5A/cmとした。試験の結果、2種類の燃料電池は同等の発電特性を示した。これより、本発明によれば、黒鉛素材と同等の耐久性および耐食性を有した金属セパレータを得ることができることが分かる。
以上のことより、Pdコートしたものを所定条件にて熱処理することで、耐えられるフッ素イオン濃度が向上し、フッ酸耐性が更に向上することが分かる。

Claims (11)

  1. フッ素系固体高分子電解質膜を用いて構成された固体高分子型燃料電池に用いられる燃料電池用セパレータにおいて、
    少なくとも前記フッ素系固体高分子電解質膜側の表層がTiまたはTi合金による第1の金属からなる金属板と、前記第1の金属の前記フッ素系固体高分子電解質膜側の表面上に形成された第2の金属の層とを備え、前記第2の金属の層は少なくとも前記第1の金属の表面との接合部が合金化されていることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
  2. 前記金属板は、耐食性の金属による基材と、前記基材の外側に形成される前記第1の金属の層からなることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用セパレータ。
  3. 前記第2の金属の層は、Pd、Pt、Ru、Rh、Irの1種又は2種以上の金属、あるいはこれらに酸素が化合した金属からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料電池用セパレータ。
  4. 燃料電池用セパレータの表層部分の平均組成比は、エネルギー分散型X線分析装置を用いた面分析において、
    Tiに対する原子比で、前記第2の金属が0.005以上0.03以下、
    Tiに対する原子比で、前記酸素が0.1以上1以下、
    且つ前記酸素に対する原子比で、前記第2の金属が0.02以上0.08以下であることを特徴とする請求項3記載の燃料電池用セパレータ。
  5. 前記基材は、ステンレス鋼またはアルミニウム合金であることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の燃料電池用セパレータ。
  6. 少なくとも前記フッ素系固体高分子電解質膜側の表層がTiまたはTi合金による第1の金属からなる金属板を所定の厚みに形成する第1の工程と、
    前記第1の金属の前記フッ素系固体高分子電解質膜側の表面上に第2の金属の層を形成する第2の工程と、
    少なくとも前記第1の金属と前記第2の金属の層の接合部を合金化する第3の工程と、を備えることを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
  7. 前記第1の工程は、耐食性の金属からなる基材の外側に前記第1の金属を所定の厚みに設ける工程であることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
  8. 前記第2の金属の層は、Pd、Pt、Ru、Rh、Irの1種又は2種以上の金属、あるいはこれらに酸素が化合した金属からなることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
  9. 前記第2の工程は、前記第2の金属の層をスパッタ法またはEB蒸着法により形成することを特徴とする請求項8に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
  10. 前記第2の工程は、前記第2の金属の層の平均厚さを2〜10nmとなるように形成することを特徴とする請求項8記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
  11. 前記第3の工程は、大気中或いは有酸素雰囲気中にて、250℃〜400℃の範囲内の温度にて熱処理を行うものであることを特徴とする請求項8に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
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