JP4823202B2 - 燃料電池セパレータ用チタン基材の製造方法および燃料電池セパレータの製造方法 - Google Patents

燃料電池セパレータ用チタン基材の製造方法および燃料電池セパレータの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、燃料電池に用いられるセパレータを製造するための燃料電池セパレータ用チタン基材の製造方法およびこれによって製造された燃料電池セパレータ用チタン基材を用いた燃料電池セパレータの製造方法に関する。
乾電池などの一次電池や鉛蓄電池などの二次電池とは異なり、水素などの燃料と酸素などの酸化剤を供給し続けることで継続的に電力を取り出すことができる燃料電池は、発電効率が高くシステム規模の大小にあまり影響されず、騒音や振動も少ないため、多様な用途・規模をカバーするエネルギー源として期待されている。そして、燃料電池は、具体的には、固体高分子型燃料電池(PEFC)、アルカリ電解質型燃料電池(AFC)、リン酸型燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)、固体酸化物型燃料電池(SOFC)、バイオ燃料電池などとして開発されている。
燃料電池の一例として固体高分子型燃料電池を挙げて説明すると、かかる固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質膜をアノード電極とカソード電極とで挟んだものを単一セルとして形成し、セパレータ(あるいはバイポーラプレート)と呼ばれる電極を介して前記単一セルを複数個重ね合わせて構成される。
固体高分子型燃料電池は、主に燃料電池自動車や、家庭用コジェネレーションシステム、携帯電話やパソコン向けに開発が進められており、出力を高めるためには燃料電池のスタック数を増やす必要がある。それとともに、固体高分子型燃料電池は、薄型化へのニーズがあることから、例えば、純チタンを用いる場合にはセパレータ1枚あたりの板厚を0.3mm以下にすることが望まれている。
固体高分子型燃料電池に用いられるセパレータは、接触抵抗(電極とセパレータ表面との間で、界面現象のために電圧降下が生じることをいう。)が低く、それがセパレータとしての使用中に長期間維持されるという特性が要求される。この点、従来から、加工性および強度の面も合わせて、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル合金、チタン合金などの金属材料の適用が検討されている。
例えば、特許文献1には、燃料電池用セパレータについて、ステンレス鋼を基材として用い、その表面に金めっきを施して製造する旨が記載されている。
また、例えば、特許文献2には、表面に貴金属または貴金属合金を付着させたステンレス鋼やチタン材を基材として用いる旨が記載されているほか、表面の酸化皮膜を除去した後に、貴金属または貴金属合金を付着させたステンレス鋼やチタン材を基材として用いる旨が記載されている。
また、例えば、特許文献3には、チタン基材を基材として用い、その表面の酸化皮膜を除去した後に、1〜100nmの島状の金めっき部を点在させる旨が記載されている。
特開平10−228914号公報 特開2001−6713号公報 特開2006−97088号公報
しかし、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル合金、チタン合金などの金属材料でなる基材は、燃料電池セパレータとして使用した際に、強酸性、高温、高圧力、といった厳しい環境下で使用されるため、その表面に形成される酸化皮膜等によって導電性が著しく劣化するという傾向がある。そのため、これらの金属基材を用いたセパレータは、使用当初の接触抵抗が低くてもこれを長期間維持することができず、接触抵抗が経時的に上昇し、電流損失を招いてしまっていた。また、腐食により、基材から溶出した金属イオンによって固体高分子電解質膜を劣化させてしまっていた。
特許文献1〜3に記載された基材は、使用当初の接触抵抗を低くすることが可能であるが、燃料電池内の厳しい酸性雰囲気中に曝された場合、金めっき層等が剥落することで接触抵抗が上昇し、燃料電池の性能が低下するおそれがあった。また、金めっき層等が剥落することで腐食が生じ、基材から溶出した金属イオンによって固体高分子電解質膜を劣化させてしまうおそれがあった。
このような状況の下、本発明者は、薄い板厚のセパレータを製造するための基材の研究中に、純チタンまたはチタン合金製の基材の表面に金などの貴金属を用いて形成した層(貴金属層)を形成し、これを例えば、300〜800℃の条件で熱処理することによって、燃料電池内で使用しても低い接触抵抗を長期間維持し得ることを見出すに至った。しかし、製造ロットによって低い接触抵抗を長期間維持するという効果の程度にばらつきが生じることが分かった。
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、燃料電池セパレータの基材として用いられた場合に、低い接触抵抗を長期間維持することができ、かつ、例えば、製造ロット等が違っても、低い接触抵抗を長期間維持することができるという効果のばらつきが生じにくい燃料電池セパレータ用チタン基材を製造するための燃料電池セパレータ用チタン基材の製造方法およびこれによって製造された燃料電池セパレータ用チタン基材を用いた燃料電池セパレータの製造方法を提供することを目的とする。
通常、純チタンまたはチタン合金製の基材の表層には、大気と接触することにより不可避的にチタンが酸化され、酸化チタンを主体とする酸化皮膜(自然酸化皮膜とも呼ばれる。)が形成されている。そして、かかる酸化皮膜によって耐酸性を発揮するほか、前記したように表面に貴金属層を形成し、これを例えば、300〜800℃で熱処理することによって、後述するように優れた導電性を発揮することができる。しかし、燃料電池セパレータ用の純チタンまたはチタン合金製の基材を製造する際に潤滑油を用いた冷間圧延が行われ、例えば、0.3mm程度の板厚とされるが、かかる潤滑油に炭素が含まれており、これがメカノケミカル的に基材の表面に結合して炭化チタンが多く形成される。炭化チタンは、酸化チタンと比較して耐酸性に劣るため、このような炭化チタンが多く形成されると自然酸化皮膜である酸化皮膜が奏する機能が失われることになる。
なお、炭化チタンが多く形成された基材を用いてその表面上に貴金属層を形成し、例えば、300〜800℃で熱処理を行っても結晶化された酸化チタン(これについては後に詳述する)が形成されにくく、耐酸性が向上しない。また、炭化チタンが多く形成された基材を用いて前記したように貴金属層を形成して熱処理を行うと、貴金属層の凝集が起こりやすくなり、貴金属層が島状に点在した状態となる。
このような基材(セパレータ)を高温・酸性雰囲気下に暴露すると、前記したように炭化チタンは酸化チタンよりも耐酸性に劣るため、暴露時間に比例して炭化チタンの腐食や酸化(以下、腐食等という。)が生じる。このようにして生じた腐食等が進行すると、やがて貴金属粒子が結合している界面も腐食等してしまい、導電性が劣化することが分かった。つまり、炭化チタンの形成割合が相対的に高い基材は低い接触抵抗を長期間維持することができないことが分かった。
本発明者は、前記した課題を解決するため、燃料電池に用いられるセパレータを製造するための基材について鋭意研究した結果、導電層を形成する前の基材表層の炭素の濃度を特定の数値以下に規制することによって、熱処理を行うことによって導電層を形成した上で燃料電池セパレータとして用いられた場合に、低い接触抵抗を長期間維持することができ、かつ、例えば、製造ロット等が違っても、低い接触抵抗を長期間維持するという効果にばらつきが生じにくくなることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)前記課題を解決した本発明に係る燃料電池セパレータ用チタン基材の製造方法は、基材の表層においてX線光電子分光分析により測定された280〜284eVの間に結合エネルギーを有する炭素の濃度が25原子%以下である燃料電池セパレータ用チタン基材の製造方法であって、前記基材として用いる純チタンまたはチタン合金を冷間圧延する工程と冷間圧延した前記純チタンまたは前記チタン合金をソルト浸漬および酸洗する工程と、ソルト浸漬および酸洗した前記純チタンまたは前記チタン合金を目的の板厚になるまでリバース冷間圧延する工程と、を含み、前記リバース冷間圧延する工程では、1パスあたりの圧下率を5〜10%にすることを特徴としている。
このように、本発明の燃料電池セパレータ用チタン基材の製造方法は、冷間圧延後、ソルト浸漬および酸洗を行い、1パスあたりの圧下率が5〜10%であるリバース冷間圧延するによって目的の板厚とするだけで、基材の表層においてX線光電子分光分析により測定された280〜284eVの間に結合エネルギーを有する炭素の濃度が25原子%以下である燃料電池セパレータ用チタン基材を製造することができる。そして、この製造方法によって製造された燃料電池セパレータ用チタン基材は、当該基材の表層における炭素の濃度を特定の数値以下に規制しているので、酸化チタンよりも耐酸性に劣る炭化チタンの形成割合を相対的に低くすることができるとともに、例えば、300〜800℃で熱処理をすることで耐酸性および導電性に優れる酸化チタンの形成割合を相対的に高くすることができる。また、そのような熱処理を行っても貴金属層が凝集しにくくすることができる。そのため、本発明の燃料電池セパレータ用チタン基材の製造方法によって製造された燃料電池セパレータ用チタン基材は、燃料電池セパレータの基材として用いられた場合に、低い接触抵抗を長期間維持することができ、かつ、例えば、製造ロット等が違っても、低い接触抵抗を長期間維持することができるという効果のばらつきを生じにくくすることができる。
(2)本発明に係る燃料電池セパレータ用チタン基材の製造方法は、前記基材が純チタンであり、かつ、前記目的の板厚が0.05〜0.3mmであるのが好ましい。
このように純チタンを用いることによって比較的容易に前記した所定の板厚を具現することができ、かつ、基材としての強度やハンドリング性を備えることができる。
(3)本発明に係る燃料電池セパレータの製造方法は、前記(1)または(2)に記載の燃料電池セパレータ用チタン基材の製造方法によって製造された燃料電池セパレータ用チタン基材を用いた燃料電池セパレータの製造方法であって、前記燃料電池セパレータ用チタン基材の表面に、Ru,Rh,Pd,Os,Ir,PtおよびAuから選択される少なくとも1種以上の貴金属を含んでなる貴金属層を形成し、当該貴金属層を形成したチタン基材を300〜800℃で熱処理を施して製造されるものであるのが好ましい。
本発明に係る燃料電池セパレータの製造方法は、貴金属層を形成し、熱処理しているので、良好な耐酸性と導電性を備えた燃料電池セパレータを具現することが可能となる。
本発明に係る燃料電池セパレータ用チタン基材の製造方法によれば、当該基材の表層における炭素の濃度を特定の数値以下に規制することにより酸化チタンの形成割合を相対的に高くした燃料電池セパレータ用チタン基材を製造することができるそのため、本発明に係る燃料電池セパレータ用チタン基材の製造方法によって製造された燃料電池セパレータ用チタン基材を用いて貴金属層を形成した後に、例えば、300〜800℃で熱処理を行い、燃料電池セパレータとして用いられた場合に、低い接触抵抗を長期間維持することができるという効果が発揮される。また、例えば、製造ロット等が違った場合であっても、低い接触抵抗を長期間維持することができるという効果のばらつきが生じにくい。
また、本発明に係る燃料電池セパレータの製造方法によれば、本発明に係る燃料電池セパレータ用チタン基材の製造方法によって製造された燃料電池セパレータ用チタン基材の表面に特定の貴金属を含んでなる貴金属層を形成し、特定の温度範囲の熱処理を施すことによってチタン基材の表面に形成されている酸化チタンや、貴金属層とチタン基材の間の酸化チタンを、一部または全部が結晶化した高温酸化チタンとすることができるので、導電性の高い燃料電池セパレータを製造することができる。また、貴金属層とチタン基材の密着性を向上させることができる。
以下、図1を参照して本発明に係る燃料電池セパレータ用チタン基材について詳細に説明する。なお、図1は、燃料電池セパレータ用チタン基材の構成を示す構成図である。
図1に示すように、本発明の燃料電池セパレータ用チタン基材(以下、単にチタン基材という。)1は、燃料電池に用いられるセパレータを製造するための基材であって、当該チタン基材1の材質が純チタンまたはチタン合金であり、チタン基材1の表層2においてX線光電子分光分析により測定された280〜284eVの間に結合エネルギーを有する炭素の濃度(以下、C濃度)を25原子%以下としている。
ここで、X線光電子分光分析による測定条件としては、例えば、X線源:単色化Al−Kα、X線出力:43.7W、X線ビーム径:200μm、光電子取り出し角:45°、Arスパッタ速度:SiO換算で約4.6nm/分という条件でX線光電子分光分析法を行って、例えば、最表面から100nm、または200nmまでの深さのTi,O,C,Nの4元素の組成を測定し、それによってC濃度(原子%)を求めることができる。なお、通常、X線光電子分光分析法は深さ数nmしか測定することができないため、100nmや200nmといった深さまで測定する場合は、本願のようにArスパッタを行って表面を削りながら測定するとよい。
また、本発明において表層2とは、チタン基材1の最表面から深さ方向に100nm程度までの範囲、より好ましくは最表面から深さ方向に200nm程度までの範囲をいう。かかる範囲までのC濃度が、酸化チタンの状態や、燃料電池セパレータを製造する際の熱処理によって生じる貴金属層(不図示)の凝集の多少に大きく影響し、ひいては燃料電池セパレータの基材として用いられた場合に、低い接触抵抗を長期間維持することができるか否か、例えば、製造ロット等が違った場合であっても、低い接触抵抗を長期間維持することができるという効果のばらつきが生じにくくなるか否かに影響する。なお、この表層2には、大気と接触することにより、不可避的にチタンが酸化され、酸化チタンを主体とする酸化皮膜(自然酸化皮膜とも呼ばれる)が形成されている。
つまり、チタン基材1の表層2のC濃度が高いと、冷間圧延時に炭素がチタン基材1の母材とメカノケミカル的に結合して炭化チタンが多く形成されてしまうため、前記したように燃料電池セパレータを製造するにあたって、例えば、300〜800℃で熱処理が行われても酸化チタンの形成割合が相対的に低くなってしまう。また、表層2のC濃度が高いチタン基材1を用いて燃料電池セパレータを製造すると、前記した熱処理によって貴金属層が凝集しやすくなる。そのため、低い接触抵抗を長期間維持することができなくなる。
よって、本発明においては、X線光電子分光分析により測定された、表層2におけるチタン基材1の280〜284eVの間に結合エネルギーを有する炭素の濃度(以下、C濃度)を25原子%以下に規制している(図2および図5、図6参照)。
ここで、図2は、本発明に係る燃料電池セパレータ用チタン基材の表層においてX線光電子分光分析により測定された測定結果を示すグラフであって、深さ方向におけるTi(Ti2p)、C(C1s)、O(O1s)、N(N1s)の組成分布を示すグラフである。なお、同図中において横軸は深さ(nm)であり、縦軸は濃度(原子%)である。図5は、従来品に係る燃料電池セパレータ用チタン基材の表層においてX線光電子分光分析により測定された測定結果を示すグラフであって、C1sのモンタージュスペクトルである。なお、同図中において横軸は結合エネルギー(eV)であり、縦軸(第一軸)は強度(任意単位)であり、縦軸(第二軸)は深さ(nm)である。図6は、従来品に係る燃料電池セパレータ用チタン基材の表層においてX線光電子分光分析により測定された測定結果を示すグラフであって、深さ方向におけるTi(Ti2p)、C(C1s)、O(O1s)、N(N1s)の組成分布を示すグラフである。なお、同図中において横軸は深さ(nm)であり、縦軸は濃度(原子%)である。図5および図6に用いた従来品を、X線源:単色化Al−Kα、X線出力:43.7W、X線ビーム径:200μm、光電子取り出し角:45°、Arスパッタ速度:SiO換算で約4.6nm/分という条件でX線光電子分光分析により測定したところ、従来品のチタン基材の表層においてX線光電子分光分析により測定された280〜284eVの間に結合エネルギーを有するC濃度は約33原子%であった。
前記したように図5は従来品に係る燃料電池セパレータ用チタン基材の表層におけるX線光電子分光分析の測定結果を示すモンタージュスペクトルであるが、図5に示されるように、炭素については、深さが最表面(0nm)から100nmの範囲で計測されている、280〜284eVの間に結合エネルギーを有するものと、深さが最表面で計測されている、284〜290eVの間に結合エネルギーを有するものと、がある。
このうち、280〜284eVの間に結合エネルギーを有するものは、チタン基材1の母材とメカノケミカル的に結合した炭素、つまり、炭化チタンに由来する炭素であり、284〜290eVの間に結合エネルギーを有するものは、潤滑油等に由来する炭素、つまり、C−C、C−H、O=C−Oなどに由来する炭素である。このうち、284〜290eVの間に結合エネルギーを有する炭素は、潤滑油等の付着量によって測定強度やC濃度が増減したり、チタン基材1の表面粗さなどによって深さ方向における測定可能範囲が変動したりするため、定量的な測定をすることが困難である。
これに対し、280〜284eVの間に結合エネルギーを有する炭素は、前記したように冷間圧延時にメカノケミカル的に母材と結合したものであるため、潤滑油等の付着量によって測定強度や濃度が増減せず、定量的な測定が可能である。また、潤滑油等の付着量が多くなると280〜284eVの間に結合エネルギーを有する炭素の濃度も高くなり、潤滑油等の付着量が少なくなると280〜284eVの間に結合エネルギーを有する炭素の濃度が低くなるという相関関係があるため、本発明では、280〜284eVの間に結合エネルギーを有する炭素の濃度をもってC濃度を規定することとした。なお、図2では100nmまでの深さのC濃度を測定しているが、それ以上の深さ、例えば、200nmまでの深さにおいても100nmと同等か、それよりも低い濃度になると思われる。また、図5では100nmまでの深さのC濃度を測定しているが、280〜284eVの間に結合エネルギーを有する炭素は、それ以上の深さ、例えば、200nmまでの深さにおいても同様の結合エネルギーを有する炭素として測定されると思われる。同様に、図6では100nmまでの深さのC濃度を測定しているが、それ以上の深さ、例えば、200nmまでの深さにおいても100nmと同等か、それよりも低い濃度になると思われる。したがって、100nm、より確実には200nmの深さとして規定される表層2においてX線光電子分光分析により測定された280〜284eVの間に結合エネルギーを有するC濃度(好ましくは、測定されるC濃度の上限値が)を25原子%以下とするのがよい。
また、図5で認められる、284〜290eVの間に結合エネルギーを有する炭素は、潤滑油等に由来する炭素である。図2および図6から、この炭素は、チタン基材1の最表面で高濃度に検出されるが、これは最表面のみに付着しているだけで、深い位置では潤滑油等に由来する炭素の影響がほとんどなくなることが分かる。
そして、本発明においては、当該チタン基材1の表層2においてX線光電子分光分析により測定された280〜284eVの間に結合エネルギーを有するC濃度を25原子%以下としたのは、酸化チタンの形成割合を相対的に高くすることができるからである。また、それとともに、当該チタン基材1を用いて燃料電池セパレータを製造する場合において、Ru,Rh,Pd,Os,Ir,PtおよびAuから選択される少なくとも1種以上の貴金属を含んでなる貴金属層を形成した後に行われる、例えば、300〜800℃の熱処理によっても貴金属層が凝集しにくくすることができる結果、燃料電池セパレータ用の基材として用いられた場合に、低い接触抵抗を長期間維持することが可能となるからである。さらに、例えば、チタン基材1の製造ロット等が違った場合であっても、低い接触抵抗を長期間維持することができるという効果のばらつきを生じにくくすることが可能となるからである。
一方、当該チタン基材1の表層2においてX線光電子分光分析により測定された280〜284eVの間に結合エネルギーを有するC濃度が25原子%を超えると、炭化チタンの形成割合が相対的に高くなり、前記した熱処理によって貴金属層が凝集してしまうため、燃料電池セパレータとして使用された場合、低い接触抵抗を長期間維持することができず、かつ、例えば、チタン基材1の製造ロット等が違った場合に、低い接触抵抗を長期間維持することができるという効果のばらつきが生じるおそれがある。
なお、当該チタン基材1の表層2においてX線光電子分光分析により測定された280〜284eVの間に結合エネルギーを有するC濃度は、22原子%以下とするのが好ましく、20原子%以下とするのがより好ましく、17原子%以下とするのがさらに好ましい。
なお、C濃度を前記した数値以下に制御する手法については後に詳述する。
基材の材質としては、純チタンまたはチタン合金を用いる。例えば、JIS H 4600に規定される1種〜4種の純チタンや、Ti−Al、Ti−Ta、Ti−6Al−4V、Ti−Pdなどのチタン合金を挙げることができる。しかし、本発明において用いることのできる純チタンまたはチタン合金としては、これらに限定されることはなく、他の金属元素等を含有してなる前記した純チタン相当またはチタン合金相当の組成を有するものであれば好適に用いることができる。
本発明のチタン基材1は、材質を純チタンとし、かつ、板厚が0.05〜0.3mmとするのが好ましい。純チタン製のチタン基材1であれば板厚を0.05〜0.3mmとすることが比較的容易であり、基材としての強度やハンドリング性を備えることができる。そのため、燃料電池のスタック数を増やすニーズや薄型化へのニーズに応えることができる。
なお、板厚を0.05mm未満とすることは技術的に困難であり、板厚を0.3mm以上にすると、前記したニーズに応えることができない。
しかしながら、本発明のチタン基材1の板厚は、前記した範囲に限定されるものではない。例えば、材質をチタン合金とし、その板厚を0.3mmを超えるようにしても構わない。このようにすれば、燃料電池自動車、携帯電話、パソコン用の燃料電池と比較して薄型化へのニーズが薄い家庭用や工場用のコジェネレーションシステムの燃料電池セパレータ用のチタン基材1として好適に使用することができる。もちろん、必要に応じて板厚を0.05mm未満としてもよいことはいうまでもない。
本発明のチタン基材1は、その表面に、Ru,Rh,Pd,Os,Ir,PtおよびAuから選択される少なくとも1種以上の貴金属を含んでなる貴金属層を形成し、当該貴金属層を形成したチタン基材を300〜800℃で熱処理を施して製造されるセパレータに用いられるとさらに好ましい。Ru,Rh,Pd,Os,Ir,PtおよびAuといった貴金属(Noble metal)は、不動態皮膜を形成しないにも拘らず耐酸性に優れていること、遷移金属であるので導電性に優れていること、および、これらの貴金属元素は互いに似通った性質を有していることなどが知られている。したがって、これらの中から適宜に選択された貴金属を含んでなる貴金属層を形成することによって、良好な耐酸性と導電性を具備したセパレータを製造することが可能となる。
なお、前記貴金属を含んでなる貴金属層を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法などのPVD法により行うのが好ましいが、中でもスパッタリング法によれば貴金属層(不図示)の層厚を制御しやすく好適である。PVD法は、常温でもチタン基材1上に貴金属層を形成できるためチタン基材1に与えるダメージ(例えば、反りや強度の低下など)を少なくすることができるだけでなく、比較的広い面積に貴金属層を形成することができるため生産性が向上する。
そして、熱処理の温度を300〜800℃とすると、貴金属層の密着性を高く、かつ接触抵抗を低くするために酸化皮膜を結晶化させたり、貴金属層の貴金属元素とチタン基材1のチタン元素とを相互に十分に拡散させたり、燃料電池セパレータの耐酸性を確保するためにピンホールに露出したチタンを酸化させたりすることができる。
熱処理の温度が300℃未満であると、酸化皮膜の結晶化等に時間がかかり実用的でない。また、熱処理によって貴金属層の貴金属元素とチタン基材1のチタン元素とは相互に拡散するが、これが十分に行われない場合もある。
また、熱処理の温度が800℃を超えると、貴金属層の貴金属元素とチタン基材1のチタン元素の相互拡散が速すぎるためにこれらが相互に拡散しすぎてしまい、貴金属層の最表面にチタン元素が拡散してきて熱処理雰囲気中の酸素と結びついて酸化皮膜を形成するおそれがある。しかし、このような酸化皮膜は酸素を含む雰囲気と接触して形成されるため、酸素の欠乏が不十分な酸化皮膜(つまり、酸素が欠乏していない酸化皮膜)となるため、耐酸性は高いものの接触抵抗が高くなり、好ましくない。
なお、熱処理の温度は、より好ましくは350〜750℃であり、最も好ましくは380〜730℃である。また、このような温度範囲であっても長時間熱処理をすると表面にチタンが拡散してきて酸化皮膜を形成することがあるため、熱処理の時間を熱処理の温度に対して適宜調整するのが好ましい。
以上に説明した本発明に係るチタン基材1は、当該チタン基材1の表層2においてX線光電子分光分析により測定された280〜284eVの間に結合エネルギーを有するC濃度を25原子%以下としているので、炭化チタンの形成割合が相対的に少なく、酸化チタンの形成割合が相対的に多い。また、貴金属層を形成した後に約300〜800℃の熱処理をしても貴金属層が凝集しにくいため、耐酸性および導電性に優れ、低い接触抵抗を長時間維持することができる。
次に、本発明のチタン基材の製造方法について説明する。
本発明のチタン基材1は、例えば、前記した純チタンまたはチタン合金のインゴットを分塊鍛造し、その後常法にて、例えば、板厚3.5mmまで熱間圧延し、その後焼鈍・酸洗処理により脱スケールを行う。次に、冷間圧延により、例えば、板厚0.4mmにまで冷間圧延し、600℃で数分間の大気焼鈍を行い、ソルト浸漬および酸洗を行った後、さらにリバース冷間圧延を行い、例えば、0.1mmなどの目的の板厚まで圧延し、脱脂洗浄することにより製造することができる。なお、前記した0.4mmから0.1mmまでのリバース圧延時の圧下率は、1パス当たり5〜10%の範囲で調整するのが好ましい。
最後の冷間圧延時の圧下率が大きい場合や、ロール表面の傷が多い場合などは、当該チタン基材1の表層2においてX線光電子分光分析で測定された280〜284eVの間に結合エネルギーを有するC濃度が25原子%を超えやすい傾向がある。
チタン基材1の表層2においてX線光電子分光分析により測定された280〜284eVの間に結合エネルギーを有するC濃度が25原子%を超える場合は、チタン基材1の表面を機械的除去または化学的除去することによって25原子%以下とすることができる。
機械的除去としては、エメリー紙やダイヤモンドペーストなどを用いた研磨や、アルミ粉やガラス粉などの研磨粒子を吹き付けるブラスト処理などの手法を挙げることができる。
また、化学的除去としては、炭化チタンやチタン自身を溶解する溶液、例えば、フッ酸と硝酸の混合溶液などにチタン基材1を浸漬する手法を挙げることができる。
なお、炭素の浸入が比較的深くまで至っていることがあるため、機械的除去や化学的除去は、除去前のチタン基材1の表面から、深さ方向に2μm以上除去するとよい。例えば、チタン基材1の表面から深さ方向における0〜200nmの範囲のC濃度が30原子%以上である場合であっても、そのような除去を行うことにより、除去後のチタン基材1の表面から深さ方向における0〜200nmの範囲のC濃度を3〜5原子%、あるいはこれ以下にすることもできる。なお、チタン基材1の表面の除去厚さの上限は特に限定されるものではないが、あまり厚く除去するとチタン基材1の歩留まりに影響するため、片面で20μm程度を上限とするのが好ましい。
以上に説明したようにすれば、本発明に係るチタン基材1を確実に製造することができる。
次に、本発明のチタン基材1の使用方法について、一例を示して説明する。
本発明のチタン基材1は、その表面に、例えばPVD法などによってRu,Rh,Pd,Os,Ir,PtおよびAuから選択される少なくとも1種以上の貴金属を含んでなる貴金属層(不図示)を形成し、貴金属層を形成したチタン基材1を約300〜800℃で熱処理を行うことにより、チタン基材1の表面に形成されている酸化チタンを高温酸化チタンとする(高温酸化チタンについては後に詳述する。)とともに、前記した貴金属層からチタン基材1中に貴金属元素を拡散させることができるので、導電性の高い燃料電池セパレータを製造するために使用することができる。
なお、前記した熱処理を行うことにより、チタン基材1の表面に形成されている酸化チタンを前記した高温酸化チタンとすることができるとともに、貴金属層とチタン基材1の間にも高温酸化チタンを形成させることができる。つまり、かかる熱処理を行うことで、チタン基材1の表面、およびチタン基材1と貴金属層の界面(不図示)に高温酸化チタンを形成することができる。
前述したように、高温酸化チタンは、チタン基材1表面の純チタンまたはチタン合金の酸化皮膜を高温で熱処理して形成された酸化チタンである。前記した熱処理前のチタン基材1の表面に形成されている酸化皮膜は、前記した熱処理が施されることによって一部または全部が結晶化する。この結晶化の際に、貴金属層直下の酸化皮膜は、酸素の供給が貴金属層によって遮断されるため、酸素がチタン基材1中に拡散して薄くなり、かつ酸素が欠乏した酸化チタン(酸素欠乏傾斜構造を有する酸化チタン)に変化する。この結晶化した酸化チタンは、化学量論比よりも酸素が欠乏すると導電性が高くなるn型半導体となる。つまり、熱処理によってチタン基材1の表面に形成されている酸化皮膜の導電性を向上させることができる。このような酸化チタンの結晶構造としては、前記したルチル型結晶若しくはブルッカイト型結晶を挙げることができる。なお、ルチル型結晶とは、ルチル結晶と同じ結晶構造を有する結晶をいい、ブルッカイト型結晶とは、ブルッカイト結晶と同じ結晶構造を有する結晶をいう。このような酸素欠乏型のルチル型結晶およびブルッカイト型結晶を有する高温酸化チタンは、酸素分圧をより低くして熱処理を行うほど得られやすく、貴金属層で被覆された箇所などの、より酸素の少ない条件で熱処理を行うとさらに得やすい。
したがって、熱処理を行うことにより、チタン基材1の表面に高い耐酸性を付与することができるだけでなく、貴金属層とチタン基材1の密着性を向上させることができ、さらに、貴金属層とチタン基材1の間に存在する酸化皮膜を結晶化する(すなわち、高温酸化チタンとする)ことによって貴金属層とチタン基材1の導電性を向上させることができる。
また、かかる熱処理は0.01Pa以下で行うのが好ましい。このような気圧で熱処理すると、前記したように高温で熱処理することによって酸化され得る貴金属(例えば、Pd)を用いて貴金属層を形成して熱処理した場合であっても、当該貴金属を酸化しにくくすることができるとともに、チタン基材1の表面の酸化チタンを、前記した高温酸化チタンとすることができるため、耐酸性および導電性に優れ、低い接触抵抗を長期間維持することが可能となる。
次に、本発明の効果を確認した実施例について説明する。
[試験例1]
JIS H 4600規格の純チタン材(板厚0.15mm)を用いて表1に示す条件で製造した8種類の試験材を用意し、20×50mmのサイズに切断加工し、アセトン中で超音波洗浄した。
そして、各試験材表層の炭素(C)濃度(原子%)を以下のようにして測定した。
Figure 0004823202
試験材表層のC濃度の測定は、全自動走行型X線光電子分光分析装置(Physical Electronics社製 Quantera SXM)によるX線光電子分光分析で行った。X線光電子分光分析の測定条件は、以下のとおりである。なお、試験材表層のC濃度は、Ti,O,C,Nの4元素について最表面から深さ100nmまでの深さの組成を分析し、そのC濃度分析値の最高値を試験材表層のC濃度(原子%)とした。
「X線光電子分光分析の測定条件」
X線源:単色化Al−Kα
X線出力:43.7W
X線ビーム径:200μm
光電子取り出し角:45°
Arスパッタ速度:SiO換算で約4.6nm/分
次いで、各試験材の表面に貴金属を用いてなる貴金属層を形成するためPVD法を行った。まず、マグネトロンスパッタリング装置のチャンバー内の基板台に試験材を個別に取り付け、また、Auターゲットをチャンバー内の電極に取り付けた。その後、当該チャンバー内を0.00133Pa(1×10−5Torr)以下の真空に排気した。そして、Arガスをチャンバー内に導入し、圧力が0.266Pa(2×10−3Torr)となるように調整した。その後、Auターゲット取り付けた電極にRF(高周波)を印加してArガスを励起させ、Arプラズマを発生させることにより、Auのスパッタリングを行い、試験材の表面にAu層を10nmの層厚で形成した。試験材を裏返して、試験材の他方の表面にもAu層を10nmの層厚で形成した。両面に貴金属層を形成した各試験材を大気下、400℃で2分間の熱処理を行い、導電層を形成した。
熱処理を行った各試験材の接触抵抗の測定を、図3に示す接触抵抗測定装置30を用いて荷重98N(10kgf)における接触抵抗を測定した。なお、図3は、接触抵抗の測定方法を説明する説明図である。
つまり、各試験材について、その両面をカーボンクロスC,Cではさみ、さらにその外側を接触面積1cm2の銅電極31,31を用いて98Nで加圧し、直流電流電源32を用いて7.4mAの電気を通電し、当該カーボンクロスC,C間に印加される電圧を電圧計33で測定し、接触抵抗を算出した。
その結果、いずれの試験材も、接触抵抗は4〜6mΩ.cmであり、良好な導電性を示した。
次いで、これらを80℃の硫酸水溶液(pH2)に500時間浸漬した後、前記と同様にして各試験材の接触抵抗を測定した。硫酸水溶液に500時間浸漬した後の接触抵抗と、各試験材表層のC濃度との相関を示す相関図を図4に示した。なお、図4における横軸は各試験材表層のC濃度(原子%)を表し、縦軸は硫酸水溶液に500時間浸漬した後の接触抵抗(mΩ.cm)を表す。
図4に示すように、試験材表層のC濃度が25原子%を超えると、硫酸水溶液に500時間浸漬した後の接触抵抗が急激に上昇することが分かった。つまり、当該基材の表層においてX線光電子分光分析により測定された280〜284eVの間に結合エネルギーを有するC濃度が25原子%を超えると、高温・酸性雰囲気中で使用を続けた場合に、低い接触抵抗を長期間維持することができず、低い接触抵抗を長期間維持することができるという効果のばらつきが生じてしまうおそれのあることが分かった。
これに対し、試験材表層のC濃度が25原子%以下であると、接触抵抗が上昇しないことが分かった。つまり、当該基材の表層においてX線光電子分光分析により測定された280〜284eVの間に結合エネルギーを有するC濃度が25原子%を以下であると、高温・酸性雰囲気中で使用を続けた場合であっても、低い接触抵抗を長期間維持することができ、低い接触抵抗を長期間維持することができるという効果のばらつきが生じにくいことが分かった。
[試験例2]
[試験例1]で用いた8枚の純チタン材の試験材のうち、表層のC濃度が17原子%であった試験材(図4の中の矢印でしめす試験材)に、[試験例1]と同様の方法でその両面にPt層またはPd層を層厚20nmで形成した。その後、Pt層を形成した試験材は大気下、400℃で5分間の熱処理を行い、Pd層を形成した試験材は真空熱処理炉の中に入れ、0.0065Pa(5×10−5Torr)の雰囲気中、400℃で5分間の熱処理を行った。
Pt層を形成して熱処理を行った試験材、およびPd層を形成して熱処理を行った試験材のそれぞれの接触抵抗を[試験例1]と同様にして測定した。
Pt層を形成して熱処理を行った試験材の接触抵抗は4.5mΩ.cmであり、Pd層を形成して熱処理を行った試験材の接触抵抗は5.2mΩ.cmであった。
次に、これらを80℃の硫酸水溶液(pH2)に500時間浸漬した後、[試験例1]と同様にして各試験材の接触抵抗を測定した。
その結果、Pt層を形成して熱処理を行った試験材の接触抵抗は4.8mΩ.cmであり、Pd層を形成して熱処理を行った試験材の接触抵抗は5.0mΩ.cmであった。
つまり、80℃の硫酸水溶液(pH2)に500時間浸漬する前の接触抵抗とほぼ同じ値を示し、低い接触抵抗を維持できることが分かった。
以上、本発明に係る燃料電池セパレータ用チタン基材について、発明を実施するための最良の形態および実施例により具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
燃料電池セパレータ用チタン基材の構成を示す構成図である。 本発明に係る燃料電池セパレータ用チタン基材の表層におけるX線光電子分光分析の測定結果を示すグラフであって、深さ方向におけるTi(Ti2p)、C(C1s)、O(O1s)、N(N1s)の組成分布を示すグラフである。なお、同図中において横軸は深さ(nm)であり、縦軸は濃度(原子%)である。 接触抵抗の測定方法を説明する説明図である。 各試験材表層のC濃度との相関を示す相関図である。 従来品に係る燃料電池セパレータ用チタン基材の表層においてX線光電子分光分析により測定された測定結果を示すグラフであって、C1sのモンタージュスペクトルである。なお、同図中において横軸は結合エネルギー(eV)であり、縦軸(第一軸)は強度(任意単位)であり、縦軸(第二軸)は深さ(nm)である。 従来品に係る燃料電池セパレータ用チタン基材の表層においてX線光電子分光分析により測定された測定結果を示すグラフであって、深さ方向におけるTi(Ti2p)、C(C1s)、O(O1s)、N(N1s)の組成分布を示すグラフである。なお、同図中において横軸は深さ(nm)であり、縦軸は濃度(原子%)である。
符号の説明
1 燃料電池セパレータ用チタン基材
2 表層

Claims (3)

  1. 基材の表層においてX線光電子分光分析により測定された280〜284eVの間に結合エネルギーを有する炭素の濃度が25原子%以下である燃料電池セパレータ用チタン基材の製造方法であって、
    前記基材として用いる純チタンまたはチタン合金を冷間圧延する工程と
    冷間圧延した前記純チタンまたは前記チタン合金をソルト浸漬および酸洗する工程と、
    ソルト浸漬および酸洗した前記純チタンまたは前記チタン合金を目的の板厚になるまでリバース冷間圧延する工程と、を含み、
    前記リバース冷間圧延する工程では、1パスあたりの圧下率を5〜10%にすることを特徴とする燃料電池セパレータ用チタン基材の製造方法
  2. 前記基材が純チタンであり、かつ、前記目的の板厚が0.05〜0.3mmであることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池セパレータ用チタン基材の製造方法
  3. 請求項1または請求項2に記載の燃料電池セパレータ用チタン基材の製造方法によって製造された燃料電池セパレータ用チタン基材を用いた燃料電池セパレータの製造方法であって、前記燃料電池セパレータ用チタン基材の表面に、Ru,Rh,Pd,Os,Ir,PtおよびAuから選択される少なくとも1種以上の貴金属を含んでなる貴金属層を形成し、当該貴金属層を形成したチタン基材を300〜800℃で熱処理することを特徴とする燃料電池セパレータの製造方法。
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