JPWO2006095507A1 - 電気化学エネルギー蓄積デバイス用非水電解液及びそれを用いた電気化学エネルギー蓄積デバイス - Google Patents

電気化学エネルギー蓄積デバイス用非水電解液及びそれを用いた電気化学エネルギー蓄積デバイス Download PDF

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Abstract

(a)リチウム塩、(b)3つ以上のメチル基をもつ4級アンモニウムカチオンを有する4級アンモニウム塩、及び、(c)非水溶媒を含有する非水電解液が用いられることにより、非水電解液中に4級アンモニウム塩が溶解されていても、黒鉛構造を有する負極材料へのリチウムイオンの吸蔵・放出が安定して生じ、高い充電電圧の設定が可能で、充放電サイクルが繰り返されても容量劣化の小さい電気化学エネルギー蓄積デバイスが得られる。

Description

本発明は、電気二重層キャパシタや非水電解液二次電池などの電気化学エネルギー蓄積デバイスに関し、特に、非水電解液による電極反応の特性改良に関する。
正極および負極に分極性電極が用いられる電気二重層キャパシタは、充放電過程においてカチオンおよびアニオンが電極表面で吸脱着されるため、高負荷での充放電が可能である。分極性電極には高い比表面積を有する活性炭の粉末または繊維が使用されており、この電極は、活性炭と、必要に応じて、導電剤であるカーボンブラックや結着剤とを混練、成形して作製される。この種の電気二重層キャパシタにおいて、カチオンがアンモニウムカチオンである場合には、このカチオンは溶媒和されにくく動きやすいイオンであるため、さらに高負荷での充放電が可能になる。そして、支持塩が溶解された電解液用溶媒に非水溶媒が用いられることで、電気二重層キャパシタの高い充電電圧の設定が可能となり、その結果キャパシタのエネルギー密度が高くなる。
電解液に使用される代表的な非水溶媒は、環状カーボネートであるエチレンカーボネート(以下、ECと略記)、プロピレンカーボネート(以下、PCと略記)、ブチレンカーボネート(以下、BCと略記)、環状エステルであるγ−ブチロラクトン(以下、γ−BLと略記)である。非水電解液は、これらの非水溶媒に、N,N,N,N−テトラエチルアンモニウム・テトラフルオロボレート(以下、TEA・BFと略記)やN,N,N−トリエチル−N−メチルアンモニウム・テトラフルオロボレート(以下、TEMA・BFと略記)などの4級アンモニウム塩が溶解されて調製される。
電気二重層キャパシタのエネルギー密度をさらに向上させる手法のひとつは、充電電圧の設定を更に高くできるようにすることである。このことは、正極の充電電位をより貴に(高く)するか、負極の充電電位をより卑に(低く)することを意味する。
負極の充電電位を卑にするために、活性炭のような分極性電極ではなく、黒鉛のようにリチウムイオンを吸蔵、放出する炭素材料を用いた負極が提案されている。具体的には、リチウム塩が溶解された有機電解液中で黒鉛構造を有すると推定される炭素繊維にリチウムイオンを電気化学的にあらかじめ吸蔵させておき、このリチウム含有炭素繊維を負極に使用する二次電源が提案されている(特許文献1)。また、負極として石油コークスを熱処理して得られる黒鉛系材料と活性炭との混合物が、電解液としてリチウム塩と4級アンモニウム塩とが溶解された有機電解液が用いられ、充電時に黒鉛系材料にリチウムイオンを吸蔵させる二次電源が提案されている(特許文献2)。これらの提案では、4級アンモニウム塩にTEMA・BFを使用することが例示されている。
しかし、本発明者らが上記従来の二次電源について詳しく調べたところ、電解液中にTEMA・BFが溶解されている場合、たとえ電解液中にリチウム塩が溶解されていても、充電初期ではリチウムイオンよりも、N,N,N−トリエチル−N−メチルアンモニウムイオン(以下、TEMAイオンと略記)が黒鉛に吸蔵されやすいことが判明した。このことは、特許文献2の実施例において、電気化学キャパシタの充電電圧が3.2Vにとどまっていることから推定できる。ここで、充電初期とは、黒鉛層間にリチウムが存在しない状態でリチウムイオンを電気化学的に挿入していく始まりの過程を意味する。そして、充電が続けられるとTEMAイオンの挿入によって黒鉛の層状構造が破壊されるため、リチウムイオンが吸蔵されにくくなり、負極の電位が卑にならないという課題が明らかとなった。
充電初期におけるTEMAイオンの黒鉛層間への挿入を回避するため、特許文献1では、あらかじめ4級アンモニウム塩を含まない電解液中で黒鉛系材料にリチウムイオンを吸蔵させている。TEMA・BFを含む電解液中で、TEMAイオンの挿入が回避できる理由は、あらかじめリチウムイオンを吸蔵させた際、黒鉛系材料表面にTEMAイオンは通さないがリチウムイオンは通過できる皮膜が形成されるためと考えられる。しかし、充放電サイクルが繰り返されると、黒鉛系材料の膨張・収縮によって皮膜が崩壊し、TEMAイオンが黒鉛の層間に侵入したり、TEMAイオンが卑に分極した負極によって還元されるため、容量劣化が大きくなるという課題が生じた。
特開平11−144759号公報 特開2000−228222号公報
本発明は上述された課題を鑑みてなされたものであり、非水電解液中に4級アンモニウム塩が溶解されていても、黒鉛構造を有する負極材料へのリチウムイオンの吸蔵・放出が安定して起きる電解液を提供し、それによって高い充電電圧の設定が可能で、充放電サイクルが繰り返されても容量劣化の小さい電気化学エネルギー蓄積デバイスを提供することを目的とする。
上記課題を解決した本発明の電気化学エネルギー蓄積デバイス用非水電解液は、(a)リチウム塩、(b)3つ以上のメチル基をもつ4級アンモニウムカチオンを有する4級アンモニウム塩、及び、(c)非水溶媒を含有することを特徴とする。
本発明の目的、特徴、局面、及び利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
図1は、本発明の一実施例の電解液における黒鉛負極の充電曲線図である。 図2は、本発明の一比較例の電解液における黒鉛負極の充電曲線図である。
本発明の電気化学エネルギー蓄積デバイス用電解液として使用できるリチウム塩、アンモニウム塩としては以下の具体例が挙げられる。
リチウム塩としては、例えば、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF)、リチウムパークロレート(LiClO)、リチウムビス[トリフルオロメタンスルホニル]イミド(以下、LiTFSIと略記)、リチウムビス[ペンタフルオロエタンスルホニル]イミド(以下、LiBETIと略記)、リチウム[トリフルオロメタンスルホニル][ノナフルオロブタンスルホニル]イミド(以下、LiMBSIと略記)、リチウムシクロヘキサフルオロプロパン−1,3−ビス[スルホニル]イミド(以下、LiCHSIと略記)、リチウムビス[オキサレート(2−)]ボレート(以下、LiBOBと略記)、リチウムトリフルオロメチルトリフルオロボレート(LiCFBF)、リチウムペンタフルオロエチルトリフルオロボレート(LiCBF)、リチウムヘプタフルオロプロピルトリフルオロボレート(LiCBF)、リチウムトリス[ペンタフルオロエチル]トリフルオロホスフェート(Li(CPF)などが挙げられ、これらは単独または2種以上混合して使用されてもよい。
リチウム塩としては、特に、LiTFSI、LiBETI、LiMBSI、LiCHSI、LiBOB、LiCFBF、LiCBFが好ましい。これらのリチウム塩は還元分解電位が高く、アンモニウムカチオンが黒鉛層間に挿入する前に分解し、アンモニウムカチオンが透過しにくい皮膜を形成するためと推定される。
また、リチウム塩としてLiTFSIが使用される場合、LiTFSIとリチウムヘキサフルオロホスフェートの併用が好ましい。リチウムヘキサフルオロホスフェートの添加によってLiTFSIによるアルミニウム等の正極集電体の腐食が抑制され、サイクル特性がさらに改善される。リチウムヘキサフルオロホスフェートの添加量は、特に限定されないが、LiTFSIとリチウムヘキサフルオロホスフェートの合計量に対して、5〜20mol%が好ましい。
本発明において、全リチウム塩の添加量は、特に限定されないが、EC,PC,BC,γ−BL等のような高誘電率溶媒が用いられる場合、リチウム塩/非水溶媒のモル比率で、1/7より高いことが好ましく、1/4以上がより好ましい。
本発明の(b)4級アンモニウム塩を構成する4級アンモニウムカチオンとしては、3つ以上のメチル基を有するアンモニウムカチオンが用いられる。本発明の4級アンモニウム塩を構成する4級アンモニウムカチオンは少なくとも3つのメチル基を有しておりイオン体積が比較的小さい。このため、このイオンが黒鉛の層間に侵入したとしても、そのクーロン力によって黒鉛層が互いに引きつけられるため、過度の黒鉛構造の破壊が抑えられる。また、本発明の4級アンモニウム塩が溶解された非水電解液中では、リチウムイオンの黒鉛への吸蔵・放出が安定して起き、負極の電位が卑に保たれるため、電気化学エネルギー蓄積デバイスの充電電圧を高く設定できる。そして、黒鉛構造の破壊が抑えられるため、高電圧で充放電サイクルが繰り返されても容量劣化の小さい電気化学エネルギー蓄積デバイスが得られる。
上記特定構造の4級アンモニウムカチオンとしては、少なくとも3つのメチル基を有していればよく、メチル基以外の置換基は特に限定されないが、アルキル基が好ましい。例えば、テトラメチルアンモニウムイオン(以下、TMAイオンと略記)、トリメチルエチルアンモニウムイオン(以下、TMEAイオンと略記)、トリメチルプロピルアンモニウムイオン(以下、TMPAイオンと略記)、トリメチルブチルアンモニウムイオン(以下、TMBAイオンと略記)、トリメチルペンチルアンモニウムイオン(以下、TMPeAイオンと略記)、トリメチルヘキシルアンモニウムイオン(以下、TMHAイオンと略記)などの3つ以上のメチル基とアルキル基を有する4級アンモニウムカチオンが挙げられる。これらの4級アンモニウムカチオンを有する4級アンモニウム塩は単独または2種以上混合して使用されてもよい。
上記のような4級アンモニウムカチオンを有する4級アンモニウム塩の中でも、特に、テトラメチルアンモニウム塩(以下、TMA塩と略記)、トリメチルエチルアンモニウム塩(以下、TMEA塩と略記)、トリメチルプロピルアンモニウム塩(以下、TMPA塩と略記)、トリメチルブチルアンモニウム塩(以下、TMBA塩と略記)が好ましい。過度に長いアルキル基を有するアンモニウムカチオンは黒鉛層間に侵入しやすくなり、リチウムイオンの挿入を妨げるようになるためと推定される。
一方、アンモニウムカチオンのイオンサイズが小さくなりすぎると、アンモニウムカチオンが還元により分解されやすくなるため、エチル基またはプロピル基を有する4級アンモニウムカチオンから構成されるTMEA塩またはTMPA塩が特に好ましい。
4級アンモニウム塩のアニオンとしては、例えば、ヘキサフルオロホスフェートイオン[PF(−)]、テトラフルオロボレートイオン[BF(−)]、パークロレートイオン[ClO(−)]、ビス[トリフルオロメタンスルホニル]イミドイオン(以下、TFSIイオンと略記)、ビス[ペンタフルオロエタンスルホニル]イミドイオン(以下、BETIイオンと略記)、[トリフルオロメタンスルホニル][ノナフルオロブタンスルホニル]イミドイオン(以下、MBSIイオンと略記)、シクロヘキサフルオロプロパン−1,3−ビス[スルホニル]イミドイオン(以下、CHSIイオンと略記)、ビス[オキサレート(2−)]ボレートイオン(以下、BOBイオンと略記)、トリフルオロメチルトリフルオロボレートイオン[CFBF(−)]、ペンタフルオロエチルトリフルオロボレートイオン[CBF(−)]、ヘプタフルオロプロピルトリフルオロボレートイオン[CBF(−)]、トリス[ペンタフルオロエチル]トリフルオロホスフェートイオン[(CPF(−)]などが挙げられる。これらのアニオンを有する4級アンモニウム塩は単独または2種以上混合して使用されてもよい。
4級アンモニウム塩のアニオンとしては、リチウム塩と同様に、TFSIイオン、BETIイオン、MBSIイオン、CHSIイオン、BOBイオン、CFBF(−)イオン、CBF(−)イオンから選択されるアニオンが好ましい。なお、4級アンモニウム塩のアニオンは、リチウム塩のアニオンと同一であってもよいし、異なっていてもよい。
本発明において、全4級アンモニウム塩の添加量としては、特に限定されないが、EC,PC,BC,γ−BL等のような高誘電率溶媒が用いられる場合、アンモニウム塩/非水溶媒のモル比率で、1/10以上が好ましく、1/7以上がより好ましい。また、リチウム塩/アンモニウム塩のモル比率は、特に限定されないが、10以下が好ましく、1に近づくほど好ましい。
非水電解液に使用される(c)非水溶媒は、例えば、EC、PC、BCのような環状カーボネート、γ−BLのような環状エステルなどが挙げられ、これらは単独または2種以上混合して使用されてもよい。しかし、ジメチルカーボネート(以下、DMCと略記)、エチルメチルカーボネート(以下、EMCと略記)、ジエチルカーボネート(以下、DECと略記)などの鎖状カーボネートは、可能な限り含まない方がよい。電解液の粘度を下げる目的で鎖状カーボネートが混合されるときは、鎖状カーボネートは環状カーボネートや環状エステルの全量に対し1/2以下のモル比で混合することが好ましい。
さらに、非水電解液に、C=C不飽和結合を有する環状または鎖状カーボネートが混合されると、アンモニウムカチオンの黒鉛層間への侵入が一層抑制される。このようなC=C不飽和結合を有する環状カーボネートとしては、例えば、ビニレンカーボネート(以下、VCと略記)、ビニルエチレンカーボネート(以下、Vecと略記)、ジビニルエチレンカーボネート(以下、DVecと略記)、フェニルエチレンカーボネート(以下、Pecと略記)、ジフェニルエチレンカーボネート(以下、DPecと略記)が挙げられ、特にVec、Pecが好ましい。また、C=C不飽和結合を有する鎖状カーボネートとしては、例えば、メチルビニルカーボネート(以下、MVCと略記)、エチルビニルカーボネート(以下、EVCと略記)、ジビニルカーボネート(以下、DVCと略記)、アリルメチルカーボネート(以下、AMCと略記)、アリルエチルカーボネート(以下、AECと略記)、ジアリルカーボネート(以下、DACと略記)、アリルフェニルカーボネート(以下、APCと略記)、ジフェニルカーボネート(以下、DPCと略記)などが挙げられ、特にDAC、APC、DPCが好ましい。
本発明の非水電解液は、非水溶媒にリチウム塩及び4級アンモニウム塩、さらに所望により添加剤が所定量混合され、溶解させることにより調製される。そして、溶解により、リチウム塩及び4級アンモニウム塩はカチオン及びアニオンの状態で非水電解液中に含有される。
本発明において、黒鉛構造を有する炭素材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛に近い高結晶性の炭素材料、例えば、メソフェーズピッチ系黒鉛繊維、黒鉛化メソカーボンマイクロビーズ、気相成長炭素繊維や黒鉛ウィスカーなど、が使用できる。ここで、黒鉛構造とは、層間距離が概ね3.5Å以下に成長した結晶構造を指す。
以下に、本発明に関する実施例が示される。
〈TMA塩とTEMA塩との比較〉
(実施例1)
充放電でリチウムイオンを吸蔵・放出する負極材料として、人造黒鉛粉末が用いられた。負極板は以下のようにして作製された。まず、人造黒鉛粉末75質量部と、導電剤としてアセチレンブラック20質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン樹脂5質量部と、分散溶剤として脱水N−メチル−2−ピロリドンとが混合された。次に、この混合物が厚み20μmの銅箔集電体の片面に、塗布、乾燥されて厚みが80μmの活物質層が形成された。そして、活物質層が形成された銅箔集電体が35mm×35mmサイズに切り出され、得られた銅箔集電体にリードのついた厚み0.5mmの銅製集電板が超音波溶接されて負極板が作製された。
上記とは別に、LiBFとECとTMA・BFが、モル比で、1/4/0.1となるように混合され、電解液が調製された。なお、この溶液はTMA・BFが過飽和状態で溶解していたため室温で約1週間放置後、TMA・BFが析出した。
また、他の電解液として、LiTFSIとECとTMA・TFSIが、モル比で、1/4/0.1となるように混合され、調製された。この溶液は、室温で安定であった。
以上のようにして作製された負極板が試験極とされ、対極および参照極にリチウム金属箔が用いられ、調製された各電解液中で人造黒鉛粉末へのリチウムイオンの電気化学的挿入が試みられた。挿入条件は、20℃、0.03mA/cmとされた。
図1は、人造黒鉛粉末に対し60mAh/gのカソード電気量が流された場合の電位曲線を示す図である。図1で通電後の電位は約0.2Vまで低下しており、この低電位はリチウムイオンが黒鉛層間に侵入し、第3ステージ構造を形成していることを示している。すなわち、電解液中にTMAイオンが含まれていても、リチウムイオンの安定な挿入が可能である。ただし、アニオンがBF(−)の場合には、通電終了直前に、TMAイオンの還元と推察される電位上昇が見られた。
(比較例1)
実施例1と同様にして、人造黒鉛粉末を用いて、負極板が作製された。
LiBFとECとTEMA・BFが、モル比で、1/4/0.1となるように混合され、電解液が調製された。また、他の電解液として、LiBFとECとTEMA・BFが、モル比で、0.6/4/0.6となるように混合され、調製された。
以上のようにして作製された負極板が試験極とされ、対極および参照極にリチウム金属箔が用いられ、各電解液中で人造黒鉛粉末へのリチウムイオンの電気化学的挿入が試みられた。挿入条件は、20℃、0.03mA/cmとされた。
図2は、人造黒鉛粉末に対し60mAh/gのカソード電気量を流した場合の電位曲線を示す図である。図2で通電後の電位は第3ステージ構造の形成を示す電位まで下がっておらず、リチウムイオンの挿入が起きなかったことを示している。TEMA・BFの比率が少なくてもTEMAイオンの挿入に続いてECの還元分解が続いており、電解液中にTEMAイオンが含まれる場合には、リチウムイオンの挿入が困難である。
〈4級アンモニウムカチオンのアルキル鎖の長さの検討〉
(実施例2)
TMAイオンのメチル基の1つの代わりに、アルキル鎖の長さが順次長い、エチル基(TMEAイオン)、プロピル基(TMPAイオン)、ブチル基(TMBAイオン)、ペンチル基(TMPeAイオン)、ヘキシル基(TMHAイオン)を有する4級アンモニウム塩が用いられ、アルキル鎖の長さの影響が調べられた。アニオンは、TFSIイオンに固定された。
LiTFSIとECと各4級アンモニウム塩が、モル比で、0.6/4/0.6となるように混合され、各電解液が調製された。
実施例1と同様にして、人造黒鉛粉末からなる負極板が試験極として用いられ、調製された各電解液中で人造黒鉛粉末へのリチウムイオンの電気化学的挿入が試みられた。挿入条件は、20℃、0.03mA/cm、60mAh/gとされた。人造黒鉛粉末へのリチウムイオンの挿入後、0.03mA/cmの電流で、アノード電流が流され、人造黒鉛粉末からリチウムイオンの放出が試みられた。放出の最終電位は0.8Vとされた。
表1は、各電解液中で人造黒鉛粉末より放出できたリチウム量を示す。この実験から3つ以上のメチル基をもつ4級アンモニウムカチオンを有する4級アンモニウム塩が用いられることで、リチウムイオンの安定な吸蔵・放出が可能であることがわかる。また、表1に示されるように、4級アンモニウム塩の中でもTMA塩、TMEA塩、TMPA塩、TMBA塩が好ましく、特にTMEA塩及びTMPA塩が溶解された非水電解液中でリチウムイオンの吸蔵・放出が良好となる。
Figure 2006095507
(比較例2)
TMAイオンのメチル基の2つがエチル基に換えられた4級アンモニウムカチオン(DMDEAイオン)を有する4級アンモニウム塩、および、メチル基の3つがエチル基に換えられた4級アンモニウムカチオン(TEMAイオン)を有する4級アンモニウム塩が用いられ、メチル基の数の影響が調べられた。アニオンは、TFSIイオンに固定された。
LiTFSIとECと各4級アンモニウム塩が、モル比で、0.6/4/0.6となるように混合され、各電解液が調製された。
実施例1と同様にして、人造黒鉛粉末からなる負極板が試験極として用いられ、各電解液中で人造黒鉛粉末へのリチウムイオンの電気化学的挿入が試みられた。挿入条件は、20℃、0.03mA/cm、60mAh/gとされた。人造黒鉛粉末へのリチウムイオンの挿入後、0.03mA/cmの電流で、アノード電流が流され、人造黒鉛粉末からリチウムイオンの放出が試みられた。
表1に示されるように、DMDEA塩およびTEMA塩ではリチウムイオンは人造黒鉛粉末より放出されなかった。これは、比較例1で確認されたように、人造黒鉛粉末中にリチウムイオンが吸蔵されなかったためである。
〈4級アンモニウム塩のアニオンの検討〉
(実施例3)
4級アンモニウムカチオンがTMEAイオンに固定され、アニオンとして、PF(−)、BF(−)、ClO(−)、TFSIイオン、BETIイオン、MBSIイオン、CHSIイオン、BOBイオン、CFBF(−)、CBF(−)、CBF(−)、(CPF(−)をそれぞれ有する4級アンモニウム塩が評価された。また、リチウム塩には、LiTFSIが用いられた。
リチウム塩とECと各4級アンモニウム塩が、モル比で、1/4/0.1となるように混合され、各電解液が調製された。
実施例1と同様にして、人造黒鉛粉末からなる負極板が試験極として用いられ、各電解液中で人造黒鉛粉末へのリチウムイオンの電気化学的挿入が試みられた。挿入条件は、20℃、0.03mA/cm、60mAh/gとされた。人造黒鉛粉末へのリチウムイオンの挿入後、0.03mA/cm
の電流で、アノード電流が流され、人造黒鉛粉末からリチウムイオンの放出が試みられた。放出の最終電位は0.8Vとされた。
表2は、各電解液中で人造黒鉛粉末より放出できたリチウム量を示す。この実験からアンモニウム塩として3つのメチル基を有するTMEAイオンから構成される4級アンモニウム塩が用いられる場合、いずれのアニオンでもリチウムイオンの吸蔵・放出が可能であることがわかる。特に、TFSIイオン、BETIイオン、MBSIイオン、CHSIイオン、BOBイオン、CFBF(−)イオン、CBF(−)イオンを有する4級アンモニウム塩を含有する非水電解液中でリチウムイオンの吸蔵・放出が良好となる。
Figure 2006095507
〈電気化学エネルギー蓄積デバイスの作製〉
(実施例4)
分極性電極は以下に示す手順で作製された。
比表面積1700m/gのフェノール樹脂製活性炭粉末と、導電剤としてアセチレンブラックと、結着剤としてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩と、分散溶剤として水およびメタノールとが質量比10:2:1:100:40の配合比になるように混合された。この混合物が厚み20μmのアルミニウム箔製集電体の片面に塗布、乾燥されて、厚みが80μmの活物質層が形成された。そして、活物質層が形成されたアルミニウム箔製集電体が35mm×35mmサイズに切断された。得られたアルミニウム箔製集電体にリードのついた厚み0.5mmのアルミニウム集電板が超音波溶接されて分極性電極が作製された。
正極として上記のようにして作製された分極性電極が、負極として実施例1と同様にして作製された人造黒鉛粉末からなる電極が用いられた。両極の間にポリプロピレン製不織布セパレータが配置された後、巻回され、全体がアルミニウムラミネートチューブ内に納められて電気化学エネルギー蓄積デバイスが作製された。
なお、LiTFSI、LiPF、EC,TMEA・TFSIが、モル比で、0.95/0.05/4/0.1となるように混合され、電解液が調製された。
組み立てられた電気化学エネルギー蓄積デバイスは、20℃、3mA/cmの定電流で、3.0〜4.2Vの電圧範囲において充放電が繰り返され、容量の変化が調べられた。1000サイクル後の容量を10サイクル目の容量で除した容量維持率は、0.97であった。
(比較例3)
LiBF、LiPF、EC,TEMA・BFが、モル比で、0.95/0.05/4/0.1となるように混合された電解液が用いられたほかは、実施例4と同様にして、電気化学エネルギー蓄積デバイスが組み立てられた。
組み立てられた電気化学エネルギー蓄積デバイスは、20℃、3mA/cmの定電流で、1.0〜3.2Vの電圧範囲において充放電が繰り返されたところ、容量の変化は小さかった。しかし、同デバイスは3.0〜4.2Vの電圧範囲で充放電された場合、70サイクル後には、デバイスの容量は、ほぼ、0となり、アルミニウムラミネートチューブが大きく膨れた。膨れた原因は、デバイス内でエチレンガスが溜まったためであった。
以上のように、本発明の電気化学エネルギー蓄積デバイス用非水電解液は、(a)リチウム塩、(b)3つ以上のメチル基をもつ4級アンモニウムカチオンを有する4級アンモニウム塩、及び、(c)非水溶媒を含有することを特徴とする。
本発明の4級アンモニウム塩を構成する特定構造の4級アンモニウムカチオンは少なくとも3つのメチル基を有しておりイオン体積が比較的小さい。このため、これらのイオンが黒鉛の層間に侵入したとしても、そのクーロン力によって黒鉛層が互いに引きつけられるため、過度の黒鉛構造の破壊が抑えられる。また、本発明の4級アンモニウム塩が溶解された非水電解液中では、リチウムイオンの吸蔵・放出が安定して起き、負極の電位が卑に保たれるため、電気化学エネルギー蓄積デバイスの充電電圧を高く設定できる。そして、黒鉛構造の破壊が抑えられるため、高電圧で充放電サイクルが繰り返されても容量劣化の小さい電気化学エネルギー蓄積デバイスが得られる。
また、本発明において、4級アンモニウムカチオンは、テトラメチルアンモニウムイオン、トリメチルエチルアンモニウムイオン、トリメチルプロピルアンモニウムイオンおよびトリメチルブチルアンモニウムイオンからなる群より選択されるカチオンが好ましい。
これらの4級アンモニウムカチオンはメチル基以外の置換基が短鎖のアルキル基であるため、アンモニウムカチオンの黒鉛層間への侵入が抑えられ、安定なリチウムイオンの黒鉛層間への挿入が達成される。
また、本発明において、4級アンモニウムカチオンは、トリメチルエチルアンモニウムイオンまたはトリメチルプロピルアンモニウムイオンが好ましい。
これらの4級アンモニウムカチオンは上記の効果とともに、充電末期でのアンモニウムカチオンの還元による分解も抑制される。
本発明の(a)リチウム塩のアニオン及び前記(b)4級アンモニウム塩のアニオンは同一または異なっていてもよく、ビス[トリフルオロメタンスルホニル]イミドイオン、ビス[ペンタフルオロエタンスルホニル]イミドイオン、[トリフルオロメタンスルホニル][ノナフルオロブタンスルホニル]イミドイオン、シクロヘキサフルオロプロパン−1,3−ビス[スルホニル]イミドイオン、ビス[オキサレート(2−)]ボレートイオン、トリフルオロメチルトリフルオロボレートイオンおよびペンタフルオロエチルトリフルオロボレートイオンからなる群より選択されるアニオンが好ましい。
上記リチウム塩及び4級アンモニウム塩を含有する非水電解液では、高い充電電圧が設定できる。
また、本発明において、(a)リチウム塩は、リチウムビス[トリフルオロメタンスルホニル]イミドとリチウムヘキサフルオロホスフェートを併用することが好ましい。
上記構成によれば、リチウムヘキサフルオロホスフェートの添加によってLiTFSIによるアルミニウム等の正極集電体の腐食が抑制され、優れたサイクル特性が得られる。
そして、本発明は、上記に記載の非水電解液を用いた電気化学エネルギー蓄積デバイスである。
上記構成によれば、充電電圧を高く設定でき、充放電サイクルが繰り返されても容量劣化の小さい電気化学エネルギー蓄積デバイスが得られる。
以上のように、3つ以上のメチル基をもつ4級アンモニウムカチオンを有する4級アンモニウム塩を含有する電解液が用いられることにより、黒鉛構造を有する炭素材料へのリチウムイオンの吸蔵・放出が可能になる。そして、前記非水電解液を用いることにより、充電電圧を高く設定でき、サイクル特性に優れた電気化学エネルギー蓄積デバイスが得られる。
【0011】
モニウム塩が用いられる場合、いずれのアニオンでもリチウムイオンの吸蔵・放出が可能であることがわかる。特に、TFSIイオン、BETIイオン、MBSIイオン、CHSIイオン、BOBイオン、CFBF(−)イオン、CBF(−)イオンを有する4級アンモニウム塩を含有する非水電解液中でリチウムイオンの吸蔵・放出が良好となる。
[0051]
[表2]
Figure 2006095507
[0052]
〈電気化学エネルギー蓄積デバイスの作製〉
(実施例4)
分極性電極は以下に示す手順で作製された。
[0053]
比表面積1700m/gのフェノール樹脂製活性炭粉末と、導電剤としてアセチレンブラックと、結着剤としてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩と、分散溶剤として水およびメタノールとが質量比10:2:1:100:40の配合比になるように混合された。この混合物が厚み20μmのアルミニウム箔製集電体の片面に塗布、乾燥されて、厚みが80μmの活物質層が形成された。そして、活物質層が形成されたアルミニウム箔製集電体が35mm×35mmサイズに切断された。得られたアルミニウム箔製集電体にリードのついた厚み0.5mmのアルミニウム集電板が超音波溶接されて分極
本発明は、電気二重層キャパシタや非水電解液二次電池などの電気化学エネルギー蓄積デバイスに関し、特に、非水電解液による電極反応の特性改良に関する。
正極および負極に分極性電極が用いられる電気二重層キャパシタは、充放電過程においてカチオンおよびアニオンが電極表面で吸脱着されるため、高負荷での充放電が可能である。分極性電極には高い比表面積を有する活性炭の粉末または繊維が使用されており、この電極は、活性炭と、必要に応じて、導電剤であるカーボンブラックや結着剤とを混練、成形して作製される。この種の電気二重層キャパシタにおいて、カチオンがアンモニウムカチオンである場合には、このカチオンは溶媒和されにくく動きやすいイオンであるため、さらに高負荷での充放電が可能になる。そして、支持塩が溶解された電解液用溶媒に非水溶媒が用いられることで、電気二重層キャパシタの高い充電電圧の設定が可能となり、その結果キャパシタのエネルギー密度が高くなる。
電解液に使用される代表的な非水溶媒は、環状カーボネートであるエチレンカーボネート(以下、ECと略記)、プロピレンカーボネート(以下、PCと略記)、ブチレンカーボネート(以下、BCと略記)、環状エステルであるγ−ブチロラクトン(以下、γ−BLと略記)である。非水電解液は、これらの非水溶媒に、N,N,N,N−テトラエチルアンモニウム・テトラフルオロボレート(以下、TEA・BF4と略記)やN,N,N−トリエチル−N−メチルアンモニウム・テトラフルオロボレート(以下、TEMA・BF4と略記)などの4級アンモニウム塩が溶解されて調製される。
電気二重層キャパシタのエネルギー密度をさらに向上させる手法のひとつは、充電電圧の設定を更に高くできるようにすることである。このことは、正極の充電電位をより貴に(高く)するか、負極の充電電位をより卑に(低く)することを意味する。
負極の充電電位を卑にするために、活性炭のような分極性電極ではなく、黒鉛のようにリチウムイオンを吸蔵、放出する炭素材料を用いた負極が提案されている。具体的には、リチウム塩が溶解された有機電解液中で黒鉛構造を有すると推定される炭素繊維にリチウムイオンを電気化学的にあらかじめ吸蔵させておき、このリチウム含有炭素繊維を負極に使用する二次電源が提案されている(特許文献1)。また、負極として石油コークスを熱処理して得られる黒鉛系材料と活性炭との混合物が、電解液としてリチウム塩と4級アンモニウム塩とが溶解された有機電解液が用いられ、充電時に黒鉛系材料にリチウムイオンを吸蔵させる二次電源が提案されている(特許文献2)。これらの提案では、4級アンモニウム塩にTEMA・BF4を使用することが例示されている。
しかし、本発明者らが上記従来の二次電源について詳しく調べたところ、電解液中にTEMA・BF4が溶解されている場合、たとえ電解液中にリチウム塩が溶解されていても、充電初期ではリチウムイオンよりも、N,N,N−トリエチル−N−メチルアンモニウムイオン(以下、TEMAイオンと略記)が黒鉛に吸蔵されやすいことが判明した。このことは、特許文献2の実施例において、電気化学キャパシタの充電電圧が3.2Vにとどまっていることから推定できる。ここで、充電初期とは、黒鉛層間にリチウムが存在しない状態でリチウムイオンを電気化学的に挿入していく始まりの過程を意味する。そして、充電が続けられるとTEMAイオンの挿入によって黒鉛の層状構造が破壊されるため、リチウムイオンが吸蔵されにくくなり、負極の電位が卑にならないという課題が明らかとなった。
充電初期におけるTEMAイオンの黒鉛層間への挿入を回避するため、特許文献1では、あらかじめ4級アンモニウム塩を含まない電解液中で黒鉛系材料にリチウムイオンを吸蔵させている。TEMA・BF4を含む電解液中で、TEMAイオンの挿入が回避できる理由は、あらかじめリチウムイオンを吸蔵させた際、黒鉛系材料表面にTEMAイオンは通さないがリチウムイオンは通過できる皮膜が形成されるためと考えられる。しかし、充放電サイクルが繰り返されると、黒鉛系材料の膨張・収縮によって皮膜が崩壊し、TEMAイオンが黒鉛の層間に侵入したり、TEMAイオンが卑に分極した負極によって還元されるため、容量劣化が大きくなるという課題が生じた。
特開平11−144759号公報 特開2000−228222号公報
本発明は上述された課題を鑑みてなされたものであり、非水電解液中に4級アンモニウム塩が溶解されていても、黒鉛構造を有する負極材料へのリチウムイオンの吸蔵・放出が安定して起きる電解液を提供し、それによって高い充電電圧の設定が可能で、充放電サイクルが繰り返されても容量劣化の小さい電気化学エネルギー蓄積デバイスを提供することを目的とする。
上記課題を解決した本発明の電気化学エネルギー蓄積デバイス用非水電解液は、(a)リチウム塩、(b)3つ以上のメチル基をもつ4級アンモニウムカチオンを有する4級アンモニウム塩、及び、(c)非水溶媒を含有することを特徴とする。
本発明の目的、特徴、局面、及び利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
本発明の電気化学エネルギー蓄積デバイス用電解液として使用できるリチウム塩、アンモニウム塩としては以下の具体例が挙げられる。
リチウム塩としては、例えば、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF4)、リチウムパークロレート(LiClO4)、リチウムビス[トリフルオロメタンスルホニル]イミド(以下、LiTFSIと略記)、リチウムビス[ペンタフルオロエタンスルホニル]イミド(以下、LiBETIと略記)、リチウム[トリフルオロメタンスルホニル][ノナフルオロブタンスルホニル]イミド(以下、LiMBSIと略記)、リチウムシクロヘキサフルオロプロパン−1,3−ビス[スルホニル]イミド(以下、LiCHSIと略記)、リチウムビス[オキサレート(2−)]ボレート(以下、LiBOBと略記)、リチウムトリフルオロメチルトリフルオロボレート(LiCF3BF3)、リチウムペンタフルオロエチルトリフルオロボレート(LiC25BF3)、リチウムヘプタフルオロプロピルトリフルオロボレート(LiC37BF3)、リチウムトリス[ペンタフルオロエチル]トリフルオロホスフェート(Li(C253PF3)などが挙げられ、これらは単独または2種以上混合して使用されてもよい。
リチウム塩としては、特に、LiTFSI、LiBETI、LiMBSI、LiCHSI、LiBOB、LiCF3BF3、LiC25BF3が好ましい。これらのリチウム塩は還元分解電位が高く、アンモニウムカチオンが黒鉛層間に挿入する前に分解し、アンモニウムカチオンが透過しにくい皮膜を形成するためと推定される。
また、リチウム塩としてLiTFSIが使用される場合、LiTFSIとリチウムヘキサフルオロホスフェートの併用が好ましい。リチウムヘキサフルオロホスフェートの添加によってLiTFSIによるアルミニウム等の正極集電体の腐食が抑制され、サイクル特性がさらに改善される。リチウムヘキサフルオロホスフェートの添加量は、特に限定されないが、LiTFSIとリチウムヘキサフルオロホスフェートの合計量に対して、5〜20mol%が好ましい。
本発明において、全リチウム塩の添加量は、特に限定されないが、EC,PC,BC,γ-BL等のような高誘電率溶媒が用いられる場合、リチウム塩/非水溶媒のモル比率で、1/7より高いことが好ましく、1/4以上がより好ましい。
本発明の(b)4級アンモニウム塩を構成する4級アンモニウムカチオンとしては、3つ以上のメチル基を有するアンモニウムカチオンが用いられる。本発明の4級アンモニウム塩を構成する4級アンモニウムカチオンは少なくとも3つのメチル基を有しておりイオン体積が比較的小さい。このため、このイオンが黒鉛の層間に侵入したとしても、そのクーロン力によって黒鉛層が互いに引きつけられるため、過度の黒鉛構造の破壊が抑えられる。また、本発明の4級アンモニウム塩が溶解された非水電解液中では、リチウムイオンの黒鉛への吸蔵・放出が安定して起き、負極の電位が卑に保たれるため、電気化学エネルギー蓄積デバイスの充電電圧を高く設定できる。そして、黒鉛構造の破壊が抑えられるため、高電圧で充放電サイクルが繰り返されても容量劣化の小さい電気化学エネルギー蓄積デバイスが得られる。
上記特定構造の4級アンモニウムカチオンとしては、少なくとも3つのメチル基を有していればよく、メチル基以外の置換基は特に限定されないが、アルキル基が好ましい。例えば、テトラメチルアンモニウムイオン(以下、TMAイオンと略記)、トリメチルエチルアンモニウムイオン(以下、TMEAイオンと略記)、トリメチルプロピルアンモニウムイオン(以下、TMPAイオンと略記)、トリメチルブチルアンモニウムイオン(以下、TMBAイオンと略記)、トリメチルペンチルアンモニウムイオン(以下、TMPeAイオンと略記)、トリメチルヘキシルアンモニウムイオン(以下、TMHAイオンと略記)などの3つ以上のメチル基とアルキル基を有する4級アンモニウムカチオンが挙げられる。これらの4級アンモニウムカチオンを有する4級アンモニウム塩は単独または2種以上混合して使用されてもよい。
上記のような4級アンモニウムカチオンを有する4級アンモニウム塩の中でも、特に、テトラメチルアンモニウム塩(以下、TMA塩と略記)、トリメチルエチルアンモニウム塩(以下、TMEA塩と略記)、トリメチルプロピルアンモニウム塩(以下、TMPA塩と略記)、トリメチルブチルアンモニウム塩(以下、TMBA塩と略記)が好ましい。過度に長いアルキル基を有するアンモニウムカチオンは黒鉛層間に侵入しやすくなり、リチウムイオンの挿入を妨げるようになるためと推定される。
一方、アンモニウムカチオンのイオンサイズが小さくなりすぎると、アンモニウムカチオンが還元により分解されやすくなるため、エチル基またはプロピル基を有する4級アンモニウムカチオンから構成されるTMEA塩またはTMPA塩が特に好ましい。
4級アンモニウム塩のアニオンとしては、例えば、ヘキサフルオロホスフェートイオン[PF6(−)]、テトラフルオロボレートイオン[BF4(−)]、パークロレートイオン[ClO4(−)]、ビス[トリフルオロメタンスルホニル]イミドイオン(以下、TFSIイオンと略記)、ビス[ペンタフルオロエタンスルホニル]イミドイオン(以下、BETIイオンと略記)、[トリフルオロメタンスルホニル][ノナフルオロブタンスルホニル]イミドイオン(以下、MBSIイオンと略記)、シクロヘキサフルオロプロパン−1,3−ビス[スルホニル]イミドイオン(以下、CHSIイオンと略記)、ビス[オキサレート(2−)]ボレートイオン(以下、BOBイオンと略記)、トリフルオロメチルトリフルオロボレートイオン[CF3BF3(−)]、ペンタフルオロエチルトリフルオロボレートイオン[C25BF3(−)]、ヘプタフルオロプロピルトリフルオロボレートイオン[C37BF3(−)]、トリス[ペンタフルオロエチル]トリフルオロホスフェートイオン[(C253PF3(−)]などが挙げられる。これらのアニオンを有する4級アンモニウム塩は単独または2種以上混合して使用されてもよい。
4級アンモニウム塩のアニオンとしては、リチウム塩と同様に、TFSIイオン、BETIイオン、MBSIイオン、CHSIイオン、BOBイオン、CF3BF3(−)イオン、C25BF3(−)イオンから選択されるアニオンが好ましい。なお、4級アンモニウム塩のアニオンは、リチウム塩のアニオンと同一であってもよいし、異なっていてもよい。
本発明において、全4級アンモニウム塩の添加量としては、特に限定されないが、EC,PC,BC,γ-BL等のような高誘電率溶媒が用いられる場合、アンモニウム塩/非水溶媒のモル比率で、1/10以上が好ましく、1/7以上がより好ましい。また、リチウム塩/アンモニウム塩のモル比率は、特に限定されないが、10以下が好ましく、1に近づくほど好ましい。
非水電解液に使用される(c)非水溶媒は、例えば、EC、PC、BCのような環状カーボネート、γ−BLのような環状エステルなどが挙げられ、これらは単独または2種以上混合して使用されてもよい。しかし、ジメチルカーボネート(以下、DMCと略記)、エチルメチルカーボネート(以下、EMCと略記)、ジエチルカーボネート(以下、DECと略記)などの鎖状カーボネートは、可能な限り含まない方がよい。電解液の粘度を下げる目的で鎖状カーボネートが混合されるときは、鎖状カーボネートは環状カーボネートや環状エステルの全量に対し1/2以下のモル比で混合することが好ましい。
さらに、非水電解液に、C=C不飽和結合を有する環状または鎖状カーボネートが混合されると、アンモニウムカチオンの黒鉛層間への侵入が一層抑制される。このようなC=C不飽和結合を有する環状カーボネートとしては、例えば、ビニレンカーボネート(以下、VCと略記)、ビニルエチレンカーボネート(以下、Vecと略記)、ジビニルエチレンカーボネート(以下、DVecと略記)、フェニルエチレンカーボネート(以下、Pecと略記)、ジフェニルエチレンカーボネート(以下、DPecと略記)が挙げられ、特にVec、Pecが好ましい。また、C=C不飽和結合を有する鎖状カーボネートとしては、例えば、メチルビニルカーボネート(以下、MVCと略記)、エチルビニルカーボネート(以下、EVCと略記)、ジビニルカーボネート(以下、DVCと略記)、アリルメチルカーボネート(以下、AMCと略記)、アリルエチルカーボネート(以下、AECと略記)、ジアリルカーボネート(以下、DACと略記)、アリルフェニルカーボネート(以下、APCと略記)、ジフェニルカーボネート(以下、DPCと略記)などが挙げられ、特にDAC、APC、DPCが好ましい。
本発明の非水電解液は、非水溶媒にリチウム塩及び4級アンモニウム塩、さらに所望により添加剤が所定量混合され、溶解させることにより調製される。そして、溶解により、リチウム塩及び4級アンモニウム塩はカチオン及びアニオンの状態で非水電解液中に含有される。
本発明において、黒鉛構造を有する炭素材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛に近い高結晶性の炭素材料、例えば、メソフェーズピッチ系黒鉛繊維、黒鉛化メソカーボンマイクロビーズ、気相成長炭素繊維や黒鉛ウィスカーなど、が使用できる。ここで、黒鉛構造とは、層間距離が概ね3.5Å以下に成長した結晶構造を指す。
以下に、本発明に関する実施例が示される。
〈TMA塩とTEMA塩との比較〉
(実施例1)
充放電でリチウムイオンを吸蔵・放出する負極材料として、人造黒鉛粉末が用いられた。負極板は以下のようにして作製された。まず、人造黒鉛粉末75質量部と、導電剤としてアセチレンブラック20質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン樹脂5質量部と、分散溶剤として脱水N−メチル−2−ピロリドンとが混合された。次に、この混合物が厚み20μmの銅箔集電体の片面に、塗布、乾燥されて厚みが80μmの活物質層が形成された。そして、活物質層が形成された銅箔集電体が35mm×35mmサイズに切り出され、得られた銅箔集電体にリードのついた厚み0.5mmの銅製集電板が超音波溶接されて負極板が作製された。
上記とは別に、LiBF4とECとTMA・BF4が、モル比で、1/4/0.1となるように混合され、電解液が調製された。なお、この溶液はTMA・BF4が過飽和状態で溶解していたため室温で約1週間放置後、TMA・BF4が析出した。
また、他の電解液として、LiTFSIとECとTMA・TFSIが、モル比で、1/4/0.1となるように混合され、調製された。この溶液は、室温で安定であった。
以上のようにして作製された負極板が試験極とされ、対極および参照極にリチウム金属箔が用いられ、調製された各電解液中で人造黒鉛粉末へのリチウムイオンの電気化学的挿入が試みられた。挿入条件は、20℃、0.03mA/cm2 とされた。
図1は、人造黒鉛粉末に対し60mAh/gのカソード電気量が流された場合の電位曲線を示す図である。図1で通電後の電位は約0.2Vまで低下しており、この低電位はリチウムイオンが黒鉛層間に侵入し、第3ステージ構造を形成していることを示している。すなわち、電解液中にTMAイオンが含まれていても、リチウムイオンの安定な挿入が可能である。ただし、アニオンがBF4(−)の場合には、通電終了直前に、TMAイオンの還元と推察される電位上昇が見られた。
(比較例1)
実施例1と同様にして、人造黒鉛粉末を用いて、負極板が作製された。
LiBF4とECとTEMA・BF4が、モル比で、1/4/0.1となるように混合され、電解液が調製された。また、他の電解液として、LiBF4とECとTEMA・BF4が、モル比で、0.6/4/0.6となるように混合され、調製された。
以上のようにして作製された負極板が試験極とされ、対極および参照極にリチウム金属箔が用いられ、各電解液中で人造黒鉛粉末へのリチウムイオンの電気化学的挿入が試みられた。挿入条件は、20℃、0.03mA/cm2 とされた。
図2は、人造黒鉛粉末に対し60mAh/gのカソード電気量を流した場合の電位曲線を示す図である。図2で通電後の電位は第3ステージ構造の形成を示す電位まで下がっておらず、リチウムイオンの挿入が起きなかったことを示している。TEMA・BF4の比率が少なくてもTEMAイオンの挿入に続いてECの還元分解が続いており、電解液中にTEMAイオンが含まれる場合には、リチウムイオンの挿入が困難である。
〈4級アンモニウムカチオンのアルキル鎖の長さの検討〉
(実施例2)
TMAイオンのメチル基の1つの代わりに、アルキル鎖の長さが順次長い、エチル基(TMEAイオン)、プロピル基(TMPAイオン)、ブチル基(TMBAイオン)、ペンチル基(TMPeAイオン)、ヘキシル基(TMHAイオン)を有する4級アンモニウム塩が用いられ、アルキル鎖の長さの影響が調べられた。アニオンは、TFSIイオンに固定された。
LiTFSIとECと各4級アンモニウム塩が、モル比で、0.6/4/0.6となるように混合され、各電解液が調製された。
実施例1と同様にして、人造黒鉛粉末からなる負極板が試験極として用いられ、調製された各電解液中で人造黒鉛粉末へのリチウムイオンの電気化学的挿入が試みられた。挿入条件は、20℃、0.03mA/cm2、60mAh/gとされた。人造黒鉛粉末へのリチウムイオンの挿入後、0.03mA/cm2の電流で、アノード電流が流され、人造黒鉛粉末からリチウムイオンの放出が試みられた。放出の最終電位は0.8Vとされた。
表1は、各電解液中で人造黒鉛粉末より放出できたリチウム量を示す。この実験から3つ以上のメチル基をもつ4級アンモニウムカチオンを有する4級アンモニウム塩が用いられることで、リチウムイオンの安定な吸蔵・放出が可能であることがわかる。また、表1に示されるように、4級アンモニウム塩の中でもTMA塩、TMEA塩、TMPA塩、TMBA塩が好ましく、特にTMEA塩及びTMPA塩が溶解された非水電解液中でリチウムイオンの吸蔵・放出が良好となる。
Figure 2006095507
(比較例2)
TMAイオンのメチル基の2つがエチル基に換えられた4級アンモニウムカチオン(DMDEAイオン)を有する4級アンモニウム塩、および、メチル基の3つがエチル基に換えられた4級アンモニウムカチオン(TEMAイオン)を有する4級アンモニウム塩が用いられ、メチル基の数の影響が調べられた。アニオンは、TFSIイオンに固定された。
LiTFSIとECと各4級アンモニウム塩が、モル比で、0.6/4/0.6となるように混合され、各電解液が調製された。
実施例1と同様にして、人造黒鉛粉末からなる負極板が試験極として用いられ、各電解液中で人造黒鉛粉末へのリチウムイオンの電気化学的挿入が試みられた。挿入条件は、20℃、0.03mA/cm2、60mAh/gとされた。人造黒鉛粉末へのリチウムイオンの挿入後、0.03mA/cm2の電流で、アノード電流が流され、人造黒鉛粉末からリチウムイオンの放出が試みられた。
表1に示されるように、DMDEA塩およびTEMA塩ではリチウムイオンは人造黒鉛粉末より放出されなかった。これは、比較例1で確認されたように、人造黒鉛粉末中にリチウムイオンが吸蔵されなかったためである。
〈4級アンモニウム塩のアニオンの検討〉
(実施例3)
4級アンモニウムカチオンがTMEAイオンに固定され、アニオンとして、PF6(−)、BF4(−)、ClO4(−)、TFSIイオン、BETIイオン、MBSIイオン、CHSIイオン、BOBイオン、CF3BF3(−)、C25BF3(−)、C37BF3(−)、(C253PF3(−)をそれぞれ有する4級アンモニウム塩が評価された。また、リチウム塩には、LiTFSIが用いられた。
リチウム塩とECと各4級アンモニウム塩が、モル比で、1/4/0.1となるように混合され、各電解液が調製された。
実施例1と同様にして、人造黒鉛粉末からなる負極板が試験極として用いられ、各電解液中で人造黒鉛粉末へのリチウムイオンの電気化学的挿入が試みられた。挿入条件は、20℃、0.03mA/cm2、60mAh/gとされた。人造黒鉛粉末へのリチウムイオンの挿入後、0.03mA/cm2の電流で、アノード電流が流され、人造黒鉛粉末からリチウムイオンの放出が試みられた。放出の最終電位は0.8Vとされた。
表2は、各電解液中で人造黒鉛粉末より放出できたリチウム量を示す。この実験からアンモニウム塩として3つのメチル基を有するTMEAイオンから構成される4級アンモニウム塩が用いられる場合、いずれのアニオンでもリチウムイオンの吸蔵・放出が可能であることがわかる。特に、TFSIイオン、BETIイオン、MBSIイオン、CHSIイオン、BOBイオン、CF3BF3(−)イオン、C25BF3(−)イオンを有する4級アンモニウム塩を含有する非水電解液中でリチウムイオンの吸蔵・放出が良好となる。
Figure 2006095507
〈電気化学エネルギー蓄積デバイスの作製〉
(実施例4)
分極性電極は以下に示す手順で作製された。
比表面積1700m2/gのフェノール樹脂製活性炭粉末と、導電剤としてアセチレンブラックと、結着剤としてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩と、分散溶剤として水およびメタノールとが質量比10:2:1:100:40の配合比になるように混合された。この混合物が厚み20μmのアルミニウム箔製集電体の片面に塗布、乾燥されて、厚みが80μmの活物質層が形成された。そして、活物質層が形成されたアルミニウム箔製集電体が35mm×35mmサイズに切断された。得られたアルミニウム箔製集電体にリードのついた厚み0.5mmのアルミニウム集電板が超音波溶接されて分極性電極が作製された。
正極として上記のようにして作製された分極性電極が、負極として実施例1と同様にして作製された人造黒鉛粉末からなる電極が用いられた。両極の間にポリプロピレン製不織布セパレータが配置された後、巻回され、全体がアルミニウムラミネートチューブ内に納められて電気化学エネルギー蓄積デバイスが作製された。
なお、LiTFSI、LiPF6、EC,TMEA・TFSIが、モル比で、0.95/0.05/4/0.1となるように混合され、電解液が調製された。
組み立てられた電気化学エネルギー蓄積デバイスは、20℃、3mA/cm2の定電流で、3.0〜4.2Vの電圧範囲において充放電が繰り返され、容量の変化が調べられた。1000サイクル後の容量を10サイクル目の容量で除した容量維持率は、0.97であった。
(比較例3)
LiBF4、LiPF6、EC,TEMA・BF4が、モル比で、0.95/0.05/4/0.1となるように混合された電解液が用いられたほかは、実施例4と同様にして、電気化学エネルギー蓄積デバイスが組み立てられた。
組み立てられた電気化学エネルギー蓄積デバイスは、20℃、3mA/cm2の定電流で、1.0〜3.2Vの電圧範囲において充放電が繰り返されたところ、容量の変化は小さかった。しかし、同デバイスは3.0〜4.2Vの電圧範囲で充放電された場合、70サイクル後には、デバイスの容量は、ほぼ、0となり、アルミニウムラミネートチューブが大きく膨れた。膨れた原因は、デバイス内でエチレンガスが溜まったためであった。
以上のように、本発明の電気化学エネルギー蓄積デバイス用非水電解液は、(a)リチウム塩、(b)3つ以上のメチル基をもつ4級アンモニウムカチオンを有する4級アンモニウム塩、及び、(c)非水溶媒を含有することを特徴とする。
本発明の4級アンモニウム塩を構成する特定構造の4級アンモニウムカチオンは少なくとも3つのメチル基を有しておりイオン体積が比較的小さい。このため、これらのイオンが黒鉛の層間に侵入したとしても、そのクーロン力によって黒鉛層が互いに引きつけられるため、過度の黒鉛構造の破壊が抑えられる。また、本発明の4級アンモニウム塩が溶解された非水電解液中では、リチウムイオンの吸蔵・放出が安定して起き、負極の電位が卑に保たれるため、電気化学エネルギー蓄積デバイスの充電電圧を高く設定できる。そして、黒鉛構造の破壊が抑えられるため、高電圧で充放電サイクルが繰り返されても容量劣化の小さい電気化学エネルギー蓄積デバイスが得られる。
また、本発明において、4級アンモニウムカチオンは、テトラメチルアンモニウムイオン、トリメチルエチルアンモニウムイオン、トリメチルプロピルアンモニウムイオンおよびトリメチルブチルアンモニウムイオンからなる群より選択されるカチオンが好ましい。
これらの4級アンモニウムカチオンはメチル基以外の置換基が短鎖のアルキル基であるため、アンモニウムカチオンの黒鉛層間への侵入が抑えられ、安定なリチウムイオンの黒鉛層間への挿入が達成される。
また、本発明において、4級アンモニウムカチオンは、トリメチルエチルアンモニウムイオンまたはトリメチルプロピルアンモニウムイオンが好ましい。
これらの4級アンモニウムカチオンは上記の効果とともに、充電末期でのアンモニウムカチオンの還元による分解も抑制される。
本発明の(a)リチウム塩のアニオン及び前記(b)4級アンモニウム塩のアニオンは同一または異なっていてもよく、ビス[トリフルオロメタンスルホニル]イミドイオン、ビス[ペンタフルオロエタンスルホニル]イミドイオン、[トリフルオロメタンスルホニル][ノナフルオロブタンスルホニル]イミドイオン、シクロヘキサフルオロプロパン−1,3−ビス[スルホニル]イミドイオン、ビス[オキサレート(2−)]ボレートイオン、トリフルオロメチルトリフルオロボレートイオンおよびペンタフルオロエチルトリフルオロボレートイオンからなる群より選択されるアニオンが好ましい。
上記リチウム塩及び4級アンモニウム塩を含有する非水電解液では、高い充電電圧が設定できる。
また、本発明において、(a)リチウム塩は、リチウムビス[トリフルオロメタンスルホニル]イミドとリチウムヘキサフルオロホスフェートを併用することが好ましい。
上記構成によれば、リチウムヘキサフルオロホスフェートの添加によってLiTFSIによるアルミニウム等の正極集電体の腐食が抑制され、優れたサイクル特性が得られる。
そして、本発明は、上記に記載の非水電解液を用いた電気化学エネルギー蓄積デバイスである。
上記構成によれば、充電電圧を高く設定でき、充放電サイクルが繰り返されても容量劣化の小さい電気化学エネルギー蓄積デバイスが得られる。
以上のように、3つ以上のメチル基をもつ4級アンモニウムカチオンを有する4級アンモニウム塩を含有する電解液が用いられることにより、黒鉛構造を有する炭素材料へのリチウムイオンの吸蔵・放出が可能になる。そして、前記非水電解液を用いることにより、充電電圧を高く設定でき、サイクル特性に優れた電気化学エネルギー蓄積デバイスが得られる。
図1は、本発明の一実施例の電解液における黒鉛負極の充電曲線図である。 図2は、本発明の一比較例の電解液における黒鉛負極の充電曲線図である。

Claims (6)

  1. (a)リチウム塩、(b)3つ以上のメチル基をもつ4級アンモニウムカチオンを有する4級アンモニウム塩、及び、(c)非水溶媒を含有することを特徴とする電気化学エネルギー蓄積デバイス用非水電解液。
  2. 前記4級アンモニウムカチオンが、テトラメチルアンモニウムイオン、トリメチルエチルアンモニウムイオン、トリメチルプロピルアンモニウムイオンおよびトリメチルブチルアンモニウムイオンからなる群より選択されるカチオンであることを特徴とする請求項1に記載の電気化学エネルギー蓄積デバイス用非水電解液。
  3. 前記4級アンモニウムカチオンが、トリメチルエチルアンモニウムイオンまたはトリメチルプロピルアンモニウムイオンであることを特徴とする請求項1に記載の電気化学エネルギー蓄積デバイス用非水電解液。
  4. 前記(a)リチウム塩のアニオン及び前記(b)4級アンモニウム塩のアニオンは同一または異なり、ビス[トリフルオロメタンスルホニル]イミドイオン、ビス[ペンタフルオロエタンスルホニル]イミドイオン、[トリフルオロメタンスルホニル][ノナフルオロブタンスルホニル]イミドイオン、シクロヘキサフルオロプロパン−1,3−ビス[スルホニル]イミドイオン、ビス[オキサレート(2−)]ボレートイオン、トリフルオロメチルトリフルオロボレートイオンおよびペンタフルオロエチルトリフルオロボレートイオンからなる群より選択されるアニオンであることを特徴とする請求項1に記載の電気化学エネルギー蓄積デバイス用非水電解液。
  5. 前記(a)リチウム塩が、リチウムビス[トリフルオロメタンスルホニル]イミド及びリチウムヘキサフルオロホスフェートであることを特徴とする請求項1に記載の電気化学エネルギー蓄積デバイス用非水電解液。
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載の非水電解液を用いることを特徴とする電気化学エネルギー蓄積デバイス。
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