JPWO2006090721A1 - 波長変換光学装置、レーザ光源、及び画像表示光学装置 - Google Patents

波長変換光学装置、レーザ光源、及び画像表示光学装置 Download PDF

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Abstract

互いに垂直なP偏光とS偏光を含む基本波(L11)を出力する基本波光源(301)と、該基本波(L11)を波長変換して高調波を発生させる分極反転形成部を含む2つの波長変換機構(303a,303b)と、を備え、一段目の波長変換機構(303a)において、前記基本波(L11)のP偏光の波長偏光を行ない、二段目の波長変換機構(303b)において、前記基本波(L11)のS偏光の波長変換を行なうようにすることで、第3高調波(紫外光)による第2高調波(緑色光)吸収の影響を低減して、波長変換光出力の安定性及び信頼性を高め、且つ表示画像の高画質化が可能な波長変換光を出力できる波長変換光学装置を提供する。

Description

本発明は、擬似位相整合波長変換素子を用いた波長変換光学装置、及びこれを利用したレーザ光源、画像表示光学装置に関するものである。
加工用途、あるいはレーザディスプレイなどに使われる光源として、高出力レーザ光源が注目されている。そして、その赤外線領域においては、YAGレーザ等の固体レーザ、Yb,Nd等の希土類が添加されたファイバを用いたファイバレーザなどが開発されている。一方、赤色、青色領域においては、ガリウム・ヒ素、窒化ガリウム等を用いた半導体レーザが開発されており、高出力化も検討されている。しかし、緑色領域については、半導体から直接緑色を発生させることが依然として困難であり、前述の固体レーザ、ファイバレーザから発せられる赤外光を非線形光学結晶により波長変換して得るのが一般的である。
特に、前記非線形光学結晶としてニオブ酸リチウム(LiNbO:LN)結晶を用いた場合、その大きな非線形光学定数により高い変換効率を得ることができることが知られており、装置の構成も簡単にできることから、このニオブ酸リチウム(LN)結晶に分極反転技術を用いて形成された擬似位相整合(QPM)波長変換素子が、百mW程度の出力の波長変換光学装置によく用いられている。
数Wクラスの出力を得る波長変換光学装置では、リチウムトリボレート(LiB:LBO)結晶、リン酸チタニルカリウム(KTiOPO:KTP)結晶などの非線形光学結晶が用いられる。前記LBO結晶は、基本波や発生した第2高調波による結晶破壊・劣化が起こりにくいという特徴を持っているが、非線形光学定数が小さいため、高い変換効率を得るには共振器を構成しその中に結晶を配置する必要があり、装置構造が複雑で緻密な調整が必要となる。前記KTP結晶は、前記LBO結晶と比べて非線形光学定数が大きく、共振器を構成しなくても高い変換効率が得られるが、基本波や発生した第2高調波による結晶破壊・劣化が起こりやすいという欠点を持っている。
ところで、前述したLN結晶を用いた擬似位相整合素子(QPM−LN素子)は、前記KTP結晶を用いた場合よりも大きな非線形光学定数を持つため、高効率、高出力の波長変換が可能である。しかしながら、前記QPM−LN素子は、狭い領域に光エネルギーを集光する必要があるため、実質的には前記KTP結晶より、基本波や発生した第2高調波による結晶破壊・劣化が起こりやすい。すなわち、前記QPM−LN素子によって数Wの高調波を得る場合、そのLN結晶の大きな非線形光学定数が原因となり、基本波となる赤外光と、波長変換された緑色光(第2高調波)との和周波である紫外光(第3高調波)が、位相整合条件からはずれた場合においても発生し、その発生した紫外光(第3高調波)が発生した緑色光(第2高調波)の吸収を引き起こし、緑色光出力の飽和・結晶破壊を引き起こすという問題があった。
この問題を解決するため、従来においては、特許文献1や特許文献2のように、波長変換用の非線形光学結晶を2段構成にし、1段目の波長変化によって変換されなかった基本波を、再び2段目の波長変換に用いるようにすることが提案されている。このようにすれば、1段目と2段目の合計で変換効率を大きくでき、また、基本波成分と第2高調波成分の相互作用を低減して紫外光である第3高調波の発生を抑制することができる。
特開平11−271823号公報 特開2005−10739号公報
以下、図14を用いて、特許文献1に示される従来の波長変換光学装置の構成について説明する。従来の波長変換光学装置100は、基本波光源101より発せられた基本波光L1を、まず1段目の波長変換部102aで波長変換して第2高調波を発生させる。前記1段目の波長変換部102aからは、該波長変換部102aで発生した前記第2高調波と、該波長変換部102aで変換されなかった基本波光(残留基本波光)とを含む光L2が出力される。前記光L2は、基本波を透過して高調波を反射する分離ミラー103aにより、第2高調波L2aと残留基本波L2bとに分離される。そして、前記分離ミラー103aを透過した残留基本波L2bは、ビーム径変換機構104によりビーム整形され、2段目の波長変換部102bで再び波長変換される。前記2段目の波長変換部102bからは、該波長変換部102bで変換された第2高調波と、該波長変換部102bにおいて変換されなかった残留基本波とを含む光L3が出力される。そして、前記光L3は、前述と同様、分離ミラー103bで、第2高調波L3aと残留基本波L3bとに分離されるというものである。
しかしながら、前述した特許文献1の構成では、1段目の波長変換部102aの波長変換効率が不安定になれば、2段目の波長変換部102bに入射される基本波の入力も変化し、その出力も不安定化される。つまり、2段目の波長変換部102bの出力安定性は、1段目の波長変換部102aの出力安定性に大きく依存してしまうという問題がある。また、1段目の波長変換部102aの出力が著しく低下した場合、2段目の波長変換部102bへの基本波入力が急激に上昇し、結晶を破壊してしまうという問題もある。そしてこれらの問題は、前記特許文献1の装置における波長変換の調整を困難にし、波長変換動作における出力安定性を低下させる原因となっていた。
また、前記特許文献1には、1段目の波長変換部102aを通過した残留基本波L2bのビーム品質が劣化(横モード歪み)してしまうという問題もある。ビーム品質の劣化(横モード歪み)は、ビーム径変換機構104を通過しても除去できないからである。前述したビーム品質の劣化(横モード歪み)は、基本波と第2高調波との位相整合方法に角度位相整合を用いた場合は発生しにくいが、本願のように、波長変換素子として、変換効率は大きいが、波長変換に有効な領域が小さい分極反転構造の素子を用いる場合には、分極反転部での屈折率ひずみなどにより横モードひずみを起こしやすくその変換効率の低下を引き起こすことがわかっている。
また、前記特許文献2の構成には、途中で第2高調波を分離する機構がないため、今回課題となっている第3高調波(紫外光)が誘起する第2高調波(緑色光)の吸収を回避することはできない。
ところで、このようなレーザ光源を画像表示装置に用いて画像表示を行なう場合に、単一波長、単一偏光のレーザ光源を用いると、不要なノイズ(スペックルノイズ)が発生し、表示される画像の画質が劣化するという問題が生じることが知られている。しかし、レーザ光源において高効率な波長変換を行うには、単一波長、単一偏光であることが必須条件である。すなわち、高輝度な画像表示装置用の波長変換光学装置の実現には、前述した両方の条件を満たす光源の開発が必要となっていた。
本発明は、第3高調波による第2高調波吸収の影響を低減し、波長変換光出力の安定性及び信頼性を高めることができ、且つ表示画像の高画質化が可能な波長変換光を出力できる波長変換光学装置、及びそれを用いたレーザ光源、並びに画像表示光学装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明の波長変換光学装置は、基本波光を出力する基本波光源と、前記基本波光源からの基本波光を波長変換して高調波を発生させる分極反転部を含む波長変換機構と、を備え、前記波長変換機構は、前記基本波光を、互いに垂直な2方向の偏光成分毎に波長変換するものである。
これにより、前記高調波出力の飽和、及び結晶の破壊を回避すると同時に、波長変換された高調波の出力安定性・信頼性を向上することができる。
さらに、本発明の波長変換光学装置は、前記基本波の発振波長が、前記2方向の偏光成分で異なるものである。
これにより、波長変換された高調波の出力安定性・信頼性をより向上させることができる。
さらに、本発明の波長変換光学装置は、前記波長変換機構から出射される2本の高調波光の偏光方向が同じであるものである。
さらに、本発明の波長変換光学装置は、前記波長変換機構から出射される2本の高調波光の偏光方向が互いに垂直であるものである。
さらに、本発明の波長変換光学装置は、前記基本波光、あるいは該基本波光と前記波長変換機構で波長変換された高調波とを含む光を、その偏光成分毎に分離する偏光分離機構を備えるものである。
これにより、前記基本波光源より出射された基本波光を各偏光成分毎に分割することができる。
さらに、本発明の波長変換光学装置は、該波長変換機構の同一基板内に、前記分極反転部と、該分極反転部の、前記基本波光の入射側に設けられた該基本波光を透過する第1の反射鏡と、該分極反転部で波長変換された高調波の出射側に設けられた該高調波を透過する第2の反射鏡と、前記分極反転部を通過した基本波の偏光を転換する波長板と、を備え、さらに、前記分極反転部の温度制御を行なう2つの温度調節機構、を備えるものである。
これにより、当該装置を更に小型化できる。
さらに、本発明の波長変換光学装置は、前記波長変換機構の前記分極反転部は、MgO、ZnOを添加した、ニオブ酸リチウム(LiNbO:LN)、あるいはタンタル酸リチウム(LiTaO:LT)の、少なくとも一部分を分極反転することにより形成されているものである。
これにより、当該装置において、より高い変換効率を得ることができる。
また、本発明の画像表示光学装置は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の波長変換光学装置と、前記波長変換光学装置で変換され出射される2本の高調波それぞれを変調する変調機構と、前記変調機構により変調された光を投影する投影光学系と、を備えるものである。
これにより、スペックルノイズを低減できる画像表示光学装置を提供することができる。更に好ましくは、当該画像表示光学装置に、請求項2または請求項4に記載の波長変換光学装置を用いれば、スペックルノイズをより低減することができる。
また、本発明のレーザ光源は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の波長変換光学装置を具備したものである。
これにより、前記高調波出力の飽和、及び結晶の破壊を回避すると同時に、それぞれ独立に波長変換された高調波の出力安定性・信頼性を向上することができるレーザ光源を提供できる。
本発明の波長変換光学装置、及びレーザ光源によれば、基本波を出力する基本波光源と、該基本波光源からの基本波光を波長変換して高調波を発生させる分極反転形成部を含む波長変換機構と、を備え、前記基本波の偏光状態を任意の光パワー比率で2方向に分割し、前記波長変換機構において、基本波光の2方向の偏光成分を独立に波長変換するようにしたので、基本波成分と第2高調波成分との相互作用を低減することができ、第3高調波(紫外光)の発生を抑制することが可能となる。これにより、前記第3高調波が原因となって引き起こされる第2高調波(緑色光)の吸収を抑制でき、波長変換機構における出力の飽和や、結晶破壊を回避できることに加え、当該装置から出力される第2高調波の安定性や信頼性を向上することが可能となる。
また、本発明の波長変換光学装置あるいはレーザ光源において、前記基本波光源から出射された基本波の偏光状態を任意の光パワー比率で2方向に分割した後、該分割した各偏光の基本波光を波長変換機構で波長変換するようにした構成では、前記波長変換機構においてビーム品質が劣化(横モード歪み)することによる変換効率の低下を抑えることが可能となり、当該装置において、高い変換効率を得ることができる。
また、本発明の波長変換光学装置あるいはレーザ光源において、前記基本波光源より、波長が異なる2方向の偏光成分を持つ基本波光を出射するようにすれば、前記波長変換機構において、基本波光の各偏光成分をより確実に独立して波長変換することができるため、当該装置より出力される第2高調波の安定性や信頼性をさらに向上することができる。また、基本波光源として偏波保持ファイバを備えたファイバレーザ光源を用いるようにすれば、波長差の小さい2方向の偏光成分をもつ基本波光を出射できるため、前記波長変換機構において各偏光成分を独立して波長変換する際の制御がしやすいという効果が得られる。
さらに、本発明の画像表示光学装置によれば、緑色光源から出射される、異なる波長の緑色光を複数箇所から出射し、該波長の異なる光ごとに空間変調するようにしたので、ヒトの目の感度が高い緑色の解像度を向上することが可能となり、当該画像表示光学装置の高画質化が可能となる。
また、前記緑色光源から出射される緑色光として、異なる波長且つ異なる偏光の光を出射し、各光ごとに空間変調するようにすれば、画像の投影面で異なるスペックルノイズを重ね合わせることになるので、画像表示装置用光源として使用する場合、不要なノイズパターン(スペックルノイズ)を大幅に低減することが可能となる。
図1は、本発明の実施の形態1の波長変換光学装置に用いられるファイバレーザ光源の構成を示す模式図である。 図2は、本発明の実施の形態1における波長変換光学装置の構成を示す図である。 図3は、本発明の実施の形態1の波長変換光学装置に用いられるファイバレーザ光源から出射される基本波の波長スペクトルを示す図である。 図4は、波長変換素子が1段構成である波長変換光学装置の出力特性と、本実施の形態1の波長変換光学装置の出力特性とを比較した図である。 図5は、波長変換素子が2段構成である従来の波長変換光学装置の出力特性(図(a))と、本実施の形態1の波長変換光学装置の出力特性(図(b))とを示すプロット図である。 図6は、本発明の実施の形態1の、波長変換素子が並列に設けられた波長変換光学装置の構成を示す図である。 図7は、波長変換素子が1段構成である波長変換光学装置の出力特性と、本実施の形態1の波長変換素子が直列に設けられた波長変換光学装置の出力特性と、本実施の形態1の波長変換素子が並列に設けられた波長変換光学装置の出力特性とを比較した図である。 図8は、本発明の実施の形態2ににおける波長変換光学装置の構成を示す図である。 図9は、本発明の実施の形態3における波長変換光学装置の構成を示す図である。 図10は、本発明の実施の形態3の波長変換光学装置の各構成部が一体に構成された構成を示す図である。 図11は、本発明の実施の形態4の波長変換光学装置の構成を示す図である。 図12は、本発明の波長変換光学装置を用いた画像表示装置の一例を示した図である。 図13は、一光源より波長の異なる2本の光が出射された際のピーク波長差と、スペックルノイズ明暗差との関係を示す図である。 図14は、従来の、波長変換素子が2段構成である波長変換光学装置の構成を示す図である。
符号の説明
100,300,400,500,600,700,800 波長変換光学装置
101,301 基本波光源
102a,102b 波長変換部分
103a,103b 分離ミラー
104 ビーム径変換機構
201,201’ ファイバレーザ光源
202 励起用半導体レーザ光源
203 ポンプコンバイナ
204a,204b ファイバグレーティング
205 Yb添加ダブルクラッド偏波保持ファイバ
207 偏光単一化機構
302a,302b 集光レンズ
303a 第1の波長変換素子
303b,503 第2の波長変換素子
304a,304b 再コリメートレンズ
305a,305b,605a,605b,705a,705b ペルチェ素子
306 偏光ビームスプリッタ
307 基本波の1/2波長板
308a,308b,308c ダイクロイックミラー
309 出射プリズム
603,706 波長変換素子
608,609 折り返し用プリズム
608a,608b,609a,609b,708a,708b,709a,709b 反射面
703 分極反転部
708,709 プリズム部
807 基本波・第2高調波の1/2波長板
900 画像表示光学装置
901 赤色光源
902,902,902’ 緑色光源
903 青色光源
904 赤色用空間変調素子
905a,905b 緑色用空間変調素子
906 青色用空間変調素子
907 ミラー
908 合波プリズム
909 投射レンズ
910 スクリーン
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
本実施の形態1では、基本波光源としてYb添加ダブルクラッド偏波保持ファイバを用いたファイバレーザ光源を使用し、波長変換素子として、光による劣化を防止するために酸化マグネシウムを添加したニオブ酸リチウム結晶(Mg:LN)に周期的分極反転を形成した擬似位相整合波長変換素子を使用し、該波長変換素子を直列に配置して、前記基本波光源より出力される基本波を波長変換する場合を示している。
まず、本実施の形態1で用いる基本波光源の構成について、図1を用いて、また、本実施の形態1における波長変換光学装置の構成について、図2を用いてそれぞれ説明する。本実施の形態1の波長変換光学装置300では、前記波長変換素子を直列に配置する。これにより、設置面積を小さくすることが可能となる。
本実施の形態1の波長変換光学装置300では、基本波光源301として、前述したようにファイバレーザ光源を使用する。ファイバレーザ光源から出射される基本波L11は、当該波長変換光学装置300内の波長変換素子に対して、水平な偏光方向(p方向)と垂直な偏光方向(s方向)を持つ。本実施の形態1の波長変換光学装置300では、このそれぞれの偏光方向(p方向、s方向)において独立して波長変換を行うことを特徴とする。
以下、本実施の形態1で用いられるファイバレーザ光源の構成について詳細に説明する。まず、励起用半導体レーザ光源(波長915nm)202から発せられる赤外光は、ポンプコンバイナ203により一本のファイバにまとめられる。このときの励起光の合計出力は30Wである。この励起光は、レーザ媒質であるYb添加ダブルクラッド偏波保持ファイバ205(以下、単に「Yb添加偏波保持ファイバ」と称す。)に集光される。前記Yb添加偏波保持ファイバ205の両端には、発振波長(ここでは1084nm)で反射するよう設計されたファイバーグレーティング204a、204bが接続されており、該Yb添加偏波保持ファイバ205とファイバグレーティング204a、204bとにより、レーザ共振器206が構成される。
通常、偏波保持ファイバを用いたレーザ光源は、前述したように互いに垂直なp方向とs方向の2つの偏光(以下、それぞれP偏光、S偏光と称す。)を持つ。よって、このようなファイバレーザ光源を従来の波長変換光学装置に用いる場合、単一偏光を得るために、図1(b)に示すように、前記レーザ共振器206の後段に、ポラライザなどの偏光単一化機構207を備え、前記2つの偏光を単一偏光化する必要があった。また、前記ファイバレーザ光源から出射される2つの偏光は、偏波保持ファイバに形成された狭帯域のファイバグレーティング204bが偏光方向に応じて2つの反射ピークを持つため、図3に示されるように、その2つの偏光の発振波長も1/10nm〜数nmほど異なる。そのため、前記偏光単一化機構207では、前記2つの偏光の発振波長をそろえる調整も行なわれる。
しかし、本実施の形態1の波長変換光学装置300においては、波長が異なり、且つ互いに垂直な2方向の偏光(P偏光,S偏光)それぞれを、独立して波長変換を行う。従って、前記ファイバレーザ光源201で、前記2つの偏光の単一偏光化や、発振波長調整を行う偏光単一化機構207を設ける必要がなく、結果、基本波光源301の構成を簡略化できる。
なお、ファイバレーザ光源を構成するファイバに、偏波保持ファイバを使用しなかった場合、該ファイバレーザ光源からの光は、ランダム偏光(偏波無依存)となり、その発振波長は単一化されてしまうため、本発明で使用するファイバレーザ光源は、複数波長を発振させるために、偏波保持ファイバで構成される必要がある。
このように、基本波光源301として、前述したような偏波保持ファイバを備えたファイバレーザ光源201を用いれば、発振波長差の小さい2方向の偏光成分をもつ基本波光を出射でき、後述する波長変換素子において、該基本波光を各偏光成分毎に独立して確実に波長変換することができる。
次に、前述したファイバレーザ光源201を基本波光源301として用いた、本実施の形態1における波長変換光学装置300の構成について説明する。
まず、前記基本波光源301から出射された光L11(1084nm:基本波)を、コリメートレンズ等(図示せず)で800μm程度のビーム径にコリメートし、集光レンズ302aで集光する(ここでは焦点距離30mm)。そして、集光した基本波光L11を1段目の波長変換素子303aに入射させ波長変換する。この第1の波長変換素子303aでは、前記基本波L11の2方向の偏光(P偏光、S偏光)のうち、偏光が結晶の誘電主軸z軸方向と平行なもの(P偏光)について波長変換がなされる。前記第1の波長変換素子303aは、厚さ1mm、長さ25mmのMg:LN(結晶主軸z軸方向が基板の面内に垂直)に、周期A=7.38μmで周期的に分極反転構造が形成されており、該波長変換素子303aの両端は、光学研磨が施され、入射側には基本波(波長:1084nm)の低反射コーティングが、出射側には第2高調波(波長:542nm近辺)の低反射コーティングが施されている。また、前記第1の波長変換素子303aは、銅板上に固定されており、ペルチェ素子305aにより温度コントロール(ここでは約22℃)されている。この波長変換素子の温度コントロールにより、位相整合波長の微調整を行う。そして、前記第1の波長変換素子303aにおいては、パワー換算で、入射した光L11の20〜30%が波長変換され、入射光の半分の波長である緑色光(542nm)になる。
よって、前記第1の波長変換素子303aからは、該波長変換素子303aにおいて波長変換された緑色光と、その残りの基本波光(P偏光の残留基本波光)と、前記第1の波長変換素子303aで波長変換されなかったもう一方の偏光、すなわち結晶の誘電主軸z軸方向と垂直な偏光(S偏光)の基本波光とを含む光L12が出力される。
前記出力光L12は、再コリメートレンズ304aで平行光に戻され、その後、偏光ビームスプリッタ306により、前記P偏光の緑色光と残留基本波光の光路を90度曲げることで、該P偏光の緑色光と残留基本波光とを含む光L13と、前記第1の波長変換素子303aで波長変換されなかったS偏光の基本波光L14とが分離される。
前記偏光ビームスプリッタ306をそのまま通過した前記S偏光の基本波光L14は、基本波のλ/2波長板(以下、単に「λ/2波長板」と称す。)307を通過する。前記λ/2波長板307は、入射された基本波光L14の偏光方向を、後段に設けられた2段目の波長変換素子303bの誘電主軸z軸方向に合わせるように配置されているので、前記S偏光の基本波光L14は、前記λ/2波長板307を通過すると、P偏光の基本波光L15になる。
前記P偏光の基本波光L15は、集光レンズ302bで集光された後、二段目の波長変換素子303bに入射される。この第2の波長変換素子303bでは、前記第1の波長変換素子303aと同様、前記基本波の2方向の偏光(P偏光、S偏光)のうち、結晶の誘電主軸z軸方向と平行な偏光(P偏光)について波長変換がなされる。前記第2の波長変換素子303bは、厚さ1mm、長さ25mmのMg:LN(結晶の誘電主軸z軸方向が基板の面内に垂直)に、周期A=7.38μmで周期的に分極反転構造が形成されており、その他、コーティングの条件、保持方法、及びペルチェ素子305bによる温度コントロール方法は、前記第1の波長変換素子303aと同様である。ただし、前述したように、前記ファイバレーザ光源より出射されるP偏光とS偏光は、若干波長が異なるため(図3では、波長差0.5nm)、前記ペルチェ素子305bでは、前記ペルチェ素子305aとは異なる温度(ここでは約28℃)で該第2の波長変換素子303bを温度コントロールする。この結果、位相整合波長の微調整が行なえ、S偏光、P偏光それぞれの位相整合波長を合わせることができる。この第2の波長変換素子303bにおいても、パワー換算で、入射した光L15の20〜30%が波長変換され、入射光の半分の波長である緑色光(542nm近辺)になる。
前記第2の波長変換素子303bからは、該波長変換素子303bにおいて波長変換された緑色光と、その残りの基本波光(P偏光の残留基本波光)とを含む光L16が出力される。そしてこの後、前記出力光L16は、再コリメートレンズ304bで平行光に戻され、ダイクロイックミラー308cにより、緑色光L16aとその残留基本波光L16bとが分離される。
一方、前記第1の波長変換素子303aにて既に波長変換され、前記偏光ビームスプリッタ306でその光路を90度曲げられた前記光L13は、ダイクロイックミラー308aにより、緑色光L13aとその残留基本波光L13bとが分離される。
そして、前記第1,第2の波長変換素子303a,303bそれぞれで波長変換したP偏光の緑色光L13a,L16aは、ダイクロイックミラー308a,308b,308c、及びプリズム309等を用いて、同一出射方向に出射される。
図4は、本実施の形態1の波長変換光学装置300における第2高調波出力特性(点線)と、従来の波長変換素子を1つ備える波長変換光学装置における第2高調波出力特性(実線)とをプロットした図である。
図4から明らかなように、従来であれば結晶破壊が発生していた、3Wを超える出力(4W以上)を得るための基本波光をうけた状態においても、紫外光による緑色光の出力飽和や、結晶破壊が生じないことがわかる。これは、本装置300では、波長変換素子を複数個設け、該各波長変換素子においては入射された基本波光のうちP偏光,S偏光のいずれか一方が波長変換されるものであるため、各波長変換素子に、P偏光,S偏光それぞれが紫外光発生の影響を受けない程度の光を入力することが可能となったことによる。これにより、本実施の形態1の構成では、波長変換素子に、従来では結晶破壊が起こるため入射できなかった高い出力の基本波光が入射可能となり、結果、結晶破壊なしで高い変換効率を実現できる。
また、図5は、図14に示す従来の波長変換光学装置における出力安定性(図(a))と、本実施の形態1の波長変換光学装置における出力安定性(図(b))とを示す図である。
図5から明らかなように、本実施の形態1の波長変換光学装置300は、従来の波長変換光学装置100よりも出力安定性が増していることがわかる。これは、本装置300では、従来のように前段の波長変換素子で波長変換されなかった残留基本波光を、後段の波長変換素子で波長変換しないため、後段の波長変換素子における波長変換が、前段の波長変換素子の波長変換効率による影響をうけないことによる。これにより、本装置300では、従来装置100の課題であった、1段目の波長変換素子の出力が著しく低下した場合に、2段目の波長変換素子への基本波入力が急激に上昇し結晶を破壊してしまうという課題も解決できる。
なお、本実施の形態1では、2つの波長変換素子303a,303bを直列に配置して波長変換する場合を一例に挙げたが、図6に示すように、2つの波長変換素子を並列に配置する構成も可能である。以下、その構成について、図6を用いて説明する。
図6は、波長変換素子を並列に配置した場合の、波長変換光学装置の構成を示す図である。ここでも、基本波光源301として、前述したファイバレーザ光源201を用いる。よって、基本波L11は、波長変換素子に対して、水平な偏光方向の光(P偏光)と垂直な偏光方向の光(S偏光)を持ち、また、該各偏光の波長は若干異なっている(図3参照)。
まず、前記基本波光源301から出射された光L11(1084nm:基本波)を、コリメートレンズ等(図示せず)で800μm程度のビーム径にコリメートした後、偏光ビームスプリッタ306で、P偏光の基本波光L22の光路を90度曲げることで、該P偏光の基本波光L22と、もう一方のS偏光の基本波光とに分離する。
ところで、波長変換結晶として、本実施の形態のように分極反転構造のものを用いた場合、1段目の波長変換素子303aを通過する際に基本波のビーム品質(横モード)が劣化し、この結果、2段目の波長変換素子303bにおける基本波光の変換効率が20%〜30%低下する場合があった。
しかし、図6の構成では、波長変換素子に入射させる前に前記基本波L11を2方向の偏光に分離する。これにより、前記基本波L11が波長変換素子を通過することによるビーム品質(横モード)の劣化を容易に抑えることができ、波長変換素子を複数個備える構成とした場合においても、ビーム品質が劣化(横モード歪み)することによる変換効率の低下を抑えることが可能となる。
前記偏光ビームスプリッタ306でその光路を90度曲げられた前記P偏光の基本波光L22は、ダイクロイックミラー308aにより集光レンズ302aに入射され集光される(ここでの焦点距離30mm)。集光した基本波光L22を、第1の波長変換素子303aに入射させ、波長変換する。前記第1の波長変換素子303aの寸法、分極反転構造、及び端面処理は、前述した第1の波長変換素子303aと同様である。また、前記第1の波長変換素子303aの保持方法や、ペルチェ素子305による温度調整方法及び位相整合波長の微調整方法も、前述と同様の方法をとっている。この第1の波長変換素子303aでは、パワー換算で、入射した光L22の20〜30%が波長変換され、入射光の半分の波長である緑色光(542nm)になる。
よって、前記第1の波長変換素子303aからは、該波長変換素子303aにおいて波長変換された緑色光と、その残りの基本波光(P偏光の残留基本波光)とを含む光L23が出力される。
一方、前記偏光ビームスプリッタ306をそのまま通過した前記S偏光の基本波光L24は、集光レンズ302bの手前に前記1/2波長板307を配置することにより、その偏光方向を90度回転させ、波長変換素子の誘電主軸z軸と平行な偏光(P偏光)の基本波光L25とされる。その後、前記P偏光の基本波光L25は、集光レンズ302bで集光された後(ここでの焦点距離30mm)、第2の波長変換素子303bに入射され、波長変換される。この第2の波長変換素子303bの寸法、分極反転構造、及び端面処理は、前述した第2の波長変換素子303bと同様である。また、該第2の波長変換素子303bの保持方法や、ペルチェ素子305bによる温度調整方法及び位相整合波長の微調整方法も、前述と同様の方法をとっている。この第2の波長変換素子303bにおいても、パワー換算で、入射した光L25の20〜30%が波長変換され、入射光の半分の波長である緑色光(542nm)になる。
よって、前記第2の波長変換素子303bからは、該波長変換素子303bにおいて波長変換された緑色光と、その残りの基本波光(P偏光の残留基本波光)とを含む光L26が出力される。
前記第1,第2の波長変換素子303a,303bから出射された各光L23,L26は、それぞれ再コリメートレンズ304a,304bで平行光に戻された後、それぞれダイクロイックミラー308b,308cにより、緑色光L23a,L26aと、残留基本波光L23b,L26bとに分離され、さらに該ダイクロイックミラー308b,308c、及びプリズム309等を用いて、同一出射方向に出射される。
図7は、図6に示す波長変換光学装置400における第2高調波出力特性(一点鎖線)と、従来の波長変換素子を1つ備える波長変換光学装置における第2高調波出力特性(実線)と、前記実施の形態1の波長変換光学装置300における第2高調波出力特性(点線)とをプロットした図である。
図7から明らかなように、図6に示す波長変換光学装置400の場合、従来であれば結晶破壊が発生していた、3Wを超える出力(4W以上)を得るための基本波光を前記波長変換素子でうけた状態においても、紫外光による緑色光の出力飽和や、結晶破壊が生じないことがわかる。さらに、波長変換光学装置400からの第2高調波の出力は、前述した図2に示す波長変換光学装置300による第2高調波の出力よりも大きい。これは、図6に示す装置400の構成では、基本波入力L11を波長変換素子に入射させる前に2方向の偏光に分離し、各波長変換素子に各偏光を入射するようにしたため、波長変換素子を通過することによりビーム品質が劣化(横モード歪み)することによる、変換効率の低下を抑えることが可能となったことによる。また、図6の構成においても、前記図2の構成同様、第2高調波の出力安定性が増し、従来装置100よりも出力安定性の面で優れることがわかった。加えて、従来装置100の課題であった、1段目の波長変換素子の出力が著しく低下した場合に、2段目への基本波入力が急激に上昇し結晶を破壊してしまうという課題も解決できる。
以上のように、本実施の形態1の波長変換光学装置によれば、基本波光源301として、互いに直行する2方向の偏光(P偏光,S偏光)を持つ基本波L11を出力するファイバレーザ光源を用い、各波長変換素子303a,303bにて、前記基本波L11のP偏光,S偏光を別々に波長変換するようにしたので、各波長変換素子303a,303bに対して、従来では結晶破壊が起こるため入射できなかった高い出力の基本波光を入射することが可能となり、結果、結晶破壊なしで高い変換効率を実現できる。また、後段の波長変換素子303bにおける波長変換が、前段の波長変換素子303aの波長変換による影響をうけないため、優れた出力安定性・信頼性を得ることもできる。
また、本実施の形態1では、基本波光源301として、偏波保持ファイバを備えたファイバレーザ光源201を用い、波長の異なるP偏光、S偏光をもつ基本波光L11を出射するようにしたので、各波長変換素子303a,303bにおいて、前記基本波光源L11のうち、前記各素子の結晶の誘電主軸z軸方向に応じた偏光成分で、且つ該各素子に備えられたペルチェ素子305a,305bによる制御温度に応じた波長を有する偏光成分のみを波長変換するため、該基本波光L11を各偏光成分毎に、確実に波長変換することが可能となる。従って、当該装置300において、前記基本波光L11として、発振波長が単一であるランダム偏光を出射させ前記各波長変換素子で偏光成分毎に波長変換する場合に比べて、前記基本波光L11として、波長の異なるP偏光、S偏光をもつ基本波光を出射させ各波長変換素子で偏光成分毎に波長変換するほうが、第2高調波の出力安定性・信頼性をさらに向上させることができる。
さらに、波長変換光学装置を、図6に示すように、基本波光L11が波長変換素子303a,303bに入射される前に、偏光ビームスプリッタ306により、P偏光の基本波L22とS偏光の基本波光L24とに分離して波長変換素子に入射するよう構成すれば、波長変換素子を複数個備える構成とした場合においても、ビーム品質が劣化(横モード歪み)することによる変換効率の低下を抑えることが可能となり、より高い変換効率を得ることができる。
なお、前述の説明では、1段目と2段目の波長変換素子303a,303bの素子長が同一であるものとして説明したが、該波長変換素子303a,303bの素子長は異なるものであってもよい。詳述すると、基本波光源から出射される基本波光がランダム偏光の場合は、発振波長が単一波長であり、そのパワー配分がP偏光、S偏光で均等となるため、前記P偏光、S偏光に対応する波長変換素子それぞれの素子長は同一であることが望ましいが、本実施の形態1の基本波光源301である、ファイバレーザ光源201から出射される基本波光のように、P偏光、S偏光でそれぞれ発振し、偏光成分毎に発振波長が異なる場合は、その偏光成分に応じてパワー配分が異なるため(具体的には、P偏光のパワー:S偏光のパワー=10:7〜10:9程度)、事情が異なる。
このように、前記基本波光のS偏光のパワーがP偏光のパワーに比べて小さい場合は、該S偏光のパワーが小さい分だけ、S偏光を変換する波長変換素子の素子長を長くすることで、波長変換後の第2高調波の出力を1:1に近い割合にすることができる。
例えば、本実施の形態1の波長変換光学装置300の構成の場合、P偏光に対応する第1の波長変換素子303aの素子長を20mmとし、S偏光に対応する第2の波長変換素子303bの素子長を25mmとすることで、ほぼ1:1の出力比とすることができた。
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、波長変換光学装置にて波長変換された2本の第2高調波が同じ偏光方向である場合について説明したが、本実施形態2では、該第2高調波の偏光方向が互いに直行する場合の構成について説明する。
以下、本実施の形態2における波長変換光学装置500の構成について、図8を用いて説明する。
本実施の形態2では、前記実施形態1と同様、基本波光源301として、図1(a)に示すYb添加偏波保持ファイバ205を用いたファイバレーザ光源201を使用し、波長変換素子として、光による劣化を防止するために酸化マグネシウムを添加したニオブ酸リチウム結晶(Mg:LN)に、周期的分極反転を形成した擬似位相整合波長変換素子を使用し、該波長変換素子を直列に配置して波長変換する場合を示す。このように、波長変換素子を直列に配置すれば、設置面積を小さくすることが可能となる。
本実施の形態2における、波長変換光学装置500の構成は、図2に示す前記実施の形態1の構成とほぼ同じであるが、偏光ビームスプリッタ306の後段に、基本波光を90度回転させるλ/2波長板307が設置されず、2段目の波長変換素子503が、S偏光の基本波光を波長変換可能なように、該波長変換素子503の結晶の誘電主軸z軸の方向が、1段目の波長変換素子303aの結晶誘電主軸z軸の方向と直交するように、90度回転させた状態で配置されている点で異なる。以下、詳細に説明する。
まず、前記基本波光源301から出射された光L11(1084nm:基本波)を、コリメートレンズ等(図示せず)で800μm程度のビーム径にコリメートし、集光レンズ302aで集光する(ここでは焦点距離30mm)。そして、集光した基本波L11を1段目の波長変換素子303aに入射させ波長変換する。この第1の波長変換素子303aでは、基本波L11の2方向の偏光(P偏光、S偏光)のうち、偏光が結晶の誘電主軸z軸方向と平行なもの(P偏光)について波長変換がなされる。前記第1の波長変換素子303aは、厚さ1mm、長さ25mmのMg:LN(結晶主軸z軸方向が基板の面内に垂直)に、周期A=7.38μmで周期的に分極反転構造が形成されており、該波長変換素子303aの両端は、光学研磨が施され、入射側には基本波(波長:1084nm)の低反射コーティングが、出射側には第2高調波(波長:542nm近辺)の低反射コーティングが施されている。また、前記第1の波長変換素子303aは、銅板上に固定されており、ペルチェ素子305aにより温度コントロール(ここでは約22℃)されている。この波長変換素子の温度コントロールにより、位相整合波長の微調整を行う。そして、前記第1の波長変換素子303aにおいては、前記基本波光L11のうち、P偏光の基本波光(パワー換算で入射した光L11の20〜30%)が波長変換され、入射光の半分の波長である緑色光(542nm)になる。
よって、前記第1の波長変換素子303aからは、該波長変換素子303aにおいて波長変換された緑色光と、その残りの基本波光(P偏光の残留基本波光)と、前記第1の波長変換素子303aで波長変換されなかったもう一方の偏光、すなわち結晶の誘電主軸z軸方向と垂直な偏光(S偏光)の基本波光とを含む光L32が出力される。
前記出力光L32は、再コリメートレンズ304aで平行光に戻され、その後、偏光ビームスプリッタ306により、前記P偏光の緑色光と残留基本波光の光路を90度曲げることで、該P偏光の緑色光と残留基本波光とを含む光L33と、前記第1の波長変換素子303aで波長変換されなかったS偏光の基本波光L34とに分離される。
前記偏光ビームスプリッタ306をそのまま通過した前記S偏光の基本波光L34は、集光レンズ302bで集光され、2段目の波長変換素子503に入射される。この第2の波長変換素子503は、前述したように、前記第1の波長変換素子303aを90度回転させた状態、すなわち、入射される光L34(S偏光)の偏光方向と結晶の誘電主軸z軸方向が平行となるように配置されているため、結晶の誘電主軸z軸方向と垂直な偏光(S偏光)について波長変換がなされる。前記第2の波長変換素子503は、厚さ1mm、長さ25mmのMg:LN(結晶の誘電主軸z軸方向が基板の面内に垂直)に、周期A=7.38μmで周期的に分極反転構造が形成されており、その他、コーティングの条件、保持方法、及びペルチェ素子305bによる温度コントロール方法は、前記第1の波長変換素子303aと同様である。ただし、前述したように、前記ファイバレーザ光源より出射されるP偏光とS偏光は、若干波長が異なる(図3では、波長差0.5nm)。よって、前記ペルチェ素子305bでは、前記ペルチェ素子305aとは異なる温度(ここでは約28℃)で該第2の波長変換素子303bを温度コントロールする。この結果、位相整合波長の微調整が行なえ、S偏光、P偏光それぞれの位相整合波長を合わせることができる。この第2の波長変換素子503では、S偏光の基本波光(パワー換算で入射した光L34の20〜30%)が波長変換され、該入射光の半分の波長である緑色光(542nm近辺)になる。
前記第2の波長変換素子503からは、該波長変換素子503において波長変換された緑色光と、その残りの基本波光(S偏光の残留基本波光)とを含む光L35が出力される。そしてこの後、前記出力光L35は、再コリメートレンズ304bで平行光に戻され、ダイクロイックミラー308cにより、緑色光L35aとその残留基本波光L35bとが分離される。
一方、前記偏光ビームスプリッタ306でその光路を90度曲げられた前記P偏光の緑色光とその残留基本波光とを含む光L33は、ダイクロイックミラー308aにより、緑色光L33aとP偏光の残留基本波光L33bとに分離される。
そして、前記第1,第2の波長変換素子303a,503それぞれで波長変換したP偏光の緑色光L33a及びS偏光の緑色光L35aは、ダイクロイックミラー308a,308b,308c、及びプリズム309等を用いて、同一出射方向に出射される。
本実施の形態2の波長変換光学装置500の出力特性は、前記実施の形態1の図2で示される波長変換光学装置300の出力特性(図4,5参照)と、ほぼ同じ結果となった。すなわち、本実施の形態2の構成では、従来では結晶破壊が起こるため入射できなかった高い出力の基本波光を、波長変換素子に入射可能となり、この結果、従来結晶破壊が発生していた3Wを超える出力(4W以上)を得るための基本波光を前記波長変換素子でうけた状態においても、紫外光による緑色光の出力飽和や、結晶破壊を回避することができ、結晶破壊なしで高い変換効率を実現できる。また、当該装置500では、後段の波長変換素子503の波長変換が、前段の波長変換素子303aによる波長変換の影響をうけないので、優れた出力安定性・信頼性も得られる。さらに、従来装置100の課題であった、1段目の波長変換素子の出力が著しく低下した場合に、2段目の波長変換素子への基本波入力が急激に上昇し結晶を破壊してしまうという課題も解決することができる。
以上のように、本実施の形態2の波長変換光学装置500によれば、基本波光源301として、互いに直行する2方向の偏光(P偏光,S偏光)を持つ基本波L11を出力するファイバレーザ光源を用い、各波長変換素子303a,503にて、前記基本波L11のP偏光,S偏光を別々に波長変換するようにしたので、各波長変換素子303a,503に対して、従来では結晶破壊が起こるため入射できなかった高い出力の基本波光を入射することが可能となり、結果、結晶破壊なしで高い変換効率を実現でき、また、後段の波長変換素子503における波長変換が、前段の波長変換素子303aの影響をうけないため、優れた出力安定性・信頼性も得ることができる。
また、本実施の形態2では、前記実施の形態1と同様、基本波光源301として、偏波保持ファイバを備えたファイバレーザ光源201を用い、波長の異なるP偏光、S偏光をもつ基本波光L11を出射するようにしたので、各波長変換素子303a,503において、前記基本波光源L11のうち、前記各素子の結晶の誘電主軸z軸方向に応じた偏光成分で、且つ該各素子に備えられたペルチェ素子305a,305bによる制御温度に応じた波長を有する偏光成分のみを波長変換するため、該基本波光L11を各偏光成分毎に確実に波長変換することができる。従って、当該装置において、前記基本波光L11として、発振波長が単一であるランダム偏光を出射させ、前記各波長変換素子で偏光成分毎に波長変換する場合に比べて、前記基本波光L11として、波長の異なるP偏光、S偏光をもつ基本波光を出射させ、各波長変換素子で偏光成分毎に波長変換するほうが、第2高調波の出力安定性・信頼性をさらに向上させることができる。
なお、本実施の形態2では、波長変換素子を直列に配置する場合を一例に挙げて説明したが、前記実施の形態1の図6に示したように、前記波長変換素子を並列に配置し、該波長変換素子の前段で、偏光ビームスプリッタ等により、基本波L11をそれぞれの偏光に分離し、各波長変換素子にP,S偏光のいずれか一方しか入射されないようにしてもよい。このように構成した場合、ビーム品質が劣化することによる変換効率の低下を抑えることが可能となり、より高い変換効率が得られる。
また、本実施の形態2では、1段目と2段目の波長変換素子303a,503の素子長が同一であるものとして説明したが、前記実施の形態1と同様、該波長変換素子303a,503の素子長は異なるものであってもよい。例えば、本実施の形態2の波長変換光学装置500の構成の場合、P偏光に対応する第1の波長変換素子303aの素子長を20mmとし、S偏光に対応する第2の波長変換素子503の素子長を25mmとすることで、ほぼ1:1の出力比とすることができる。
さらに、本実施の形態2においては、第1,第2の波長変換素子303a,503として、結晶の誘電主軸のz軸方向が面内に垂直な基板(z板)を用いた波長変換素子を使用したが、S偏光の基本波光に対応する波長変換素子(ここでは、第2の波長変換素子503)として、誘電主軸のx軸方向が面内に垂直な基板(x板)を用いた波長変換素子を使用してもよい。その場合には、第2の波長変換素子を、その結晶の方位を90°回転させて配置する必要がなくなる。この場合においても、基本波の偏光方向は、波長変換素子のz軸方向と平行方向に入射させる必要があることは、z板を用いた場合と同様である。
(実施の形態3)
前記実施の形態1においては、波長変換素子を2つ備える構成について説明したが、本実施の形態3では、プリズムやミラーなどを用いて、基本波光源からの入射光を折り返すことで、一つの波長変換素子で、前記基本波光をそれぞれの偏光方向(p方向、s方向)において独立して波長変換を行う構成について説明する。このようにすれば、当該装置をより小型化することが可能となる。
以下、本実施の形態3における波長変換光学装置600の構成について、図9を用いて説明する。
本実施の形態3では、前記実施の形態1と同様、基本波光源301として、図1(a)に示すYb添加偏波保持ファイバ205を用いたファイバレーザ光源201を使用し、波長変換素子として、光による劣化を防止するために酸化マグネシウムを添加したニオブ酸リチウム結晶(Mg:LN)に、周期的分極反転を形成した擬似位相整合波長変換素子を使用する。よって、前記基本波光源301から出射される基本波光L11は、前記実施の形態1と同様、波長変換素子に対して、水平な偏光方向の光(P偏光)と垂直な偏光方向の光(S偏光)を持ち、また、該各偏光の発振波長は若干異なっている(図3参照)。
まず、前記基本波光源301から出射された光L11(1084nm:基本波)は、折り返し用のプリズム608を通過し、集光レンズ302aで波長変換素子603内に集光される。そして、前記波長変換素子603では、前記基本波L11の2方向の偏光(P偏光、S偏光)のうち、偏光が結晶の誘電主軸z軸方向と平行なもの(P偏光)について波長変換がなされる。
ここで、前記プリズム608は、各反射面608a、608bに、基本波波長を透過し、第2高調波(緑色光)波長を反射する誘電体多層膜コーティングが施されたものであり、また、前記波長変換素子603は、厚さ1mm、長さ25mmのMg:LN(z軸方向が基板の面内に垂直)に、周期A=7.38μmで周期的に分極反転構造が形成されており、該波長変換素子603の両端は、光学研磨が施され、入射側、出射側ともに、基本波(波長:1084nm)及び第2高調波(波長:542nm近辺)の低反射コーティングが施されているものである。また、前記波長変換素子603は、銅板上に固定され、該波長変換素子603を挟むように設けられたペルチェ素子605a,605bにより温度コントロールされる。この波長変換素子の温度コントロールにより、位相整合波長の微調整が行なわれ、特に、本実施の形態3では、前述したように前記波長変換素子603を2つのペルチェ素子605a,605bで挟み、一つの波長変換素子603における温度コントロール領域を上下に2分割することで、P偏光、S偏光それぞれの位相整合波長を合わせることができる。ここでは、前記波長変換素子603の上部が前記ペルチェ素子605aにより約22℃に、また該素子603の下部が前記ペルチェ素子605bにより約28℃にコントロールされる。
従って、まず反射面608aを透過し、該波長変換素子603に入射した前記基本波L11のうち、P偏光の基本波(パワー換算で、該入射した基本波光の20〜30%)が波長変換され、入射光の半分の波長である緑色光(542nm)になる。
よってこの時、前記波長変換素子603からは、該波長変換素子603において波長変換された緑色光と、その残りの基本波光(P偏光の残留基本波光)と、波長変換素子603で波長変換されなかったもう一方の偏光(S偏光)の基本波光とを含む光L42が出力される。
前記出力光L42は、再コリメートレンズ304aでコリメート光に戻された後、λ/2波長板307を通過する。前記λ/2波長板307は、入射されるS偏光の基本波光の偏光方向を、前記波長変換素子603の誘電主軸z軸方向に合わせることが可能なように配置されているので、前記λ/2波長板307は、前記出力光L42に含まれる基本波光の偏光方向を回転させる。具体的には、P偏光の残留基本波光をS偏光の残留基本波光に、またS偏光の基本波光をP偏光の基本波光にする。
前記λ/2波長板307を通過した光L43は、折り返し用のプリズム609に入射される。前記プリズム609は、各反射面609a、609bに、基本波波長を反射し、第2高調波(緑色光)波長を透過する誘電体多層膜コーティングが施されているものである。
よって、前記プリズム609に入射された光L43は、反射面609aにおいて、変換後のP偏光の緑色光L43aのみ透過されて出力され、S偏光の残留基本波光と前記波長変換素子603で波長変換されなかったP偏光の基本波光とを含む光L43bは、前記プリズム609の反射面609a,609bにより反射され、前記波長変換素子603方向に折り返される。
その後、前記出力光L43bは、集光レンズ302bにより、前記波長変換素子603に再び集光される。前述したように、前記波長変換素子603では、P偏光の基本波光について波長変換がなされるため、前記光L43bのうちP偏光の基本波光(パワー換算で、入射した光L43bの20〜30%)について波長変換され、入射光の半分の波長である緑色光(542nm)になる。
よってこの時、前記波長変換素子603からは、該波長変換素子603において波長変換された緑色光と、その残りの基本波光(P偏光の残留基本波光)と、前記S偏光の残留基本波光とを含む光L44が出力される。
前記出力光L44は、プリズム608に入射され、該プリズム608の反射面608bにおいて、基本波光のみ、すなわち前記S偏光の残留基本波光及びP偏光の基本波光を含む光L44bが透過されて出力され、前記P偏光の緑色光L44aは、前記プリズム608の反射面608a,608bで反射され、前記波長変換素子603方向に折り返される。
前記P偏光の緑色光L44aは、前記波長変換素子603、再コリメートレンズ304a、λ/2波長板307を再度通過した後、前記プリズム609に入射され、該反射面609aから透過され出力される。
このように本実施の形態3では、波長変換光学装置600より、同じ偏光方向の緑色光が出射される。
当該波長変換光学装置600の出力特性は、前記実施の形態1の図2で示される波長変換光学装置300の出力特性(図4,5参照)とほぼ同じ結果となる。すなわち、本実施の形態3の構成においては、従来では結晶破壊が起こるため入射できなかった高い出力の基本波光を、波長変換素子に入射することが可能となるため、従来結晶破壊が発生していた3Wを超える出力(4W以上)を得るための基本波光を波長変換素子でうけた状態においても、紫外光による緑色光の出力飽和や、結晶破壊を回避することができ、結晶破壊なしで高い変換効率を実現できる。また、当該装置600によれは、前記波長変換素子603において行なわれる2回目の波長変換が、1回目の波長変換の影響をうけないので、優れた出力安定性・信頼性も得られる。
さらに、本実施の形態3では、前記実施の形態1と同様、基本波光源301として、偏波保持ファイバを備えたファイバレーザ光源201を用い、基本波光L11として、波長の異なるP偏光、S偏光を出射するようにしているので、波長変換素子603において、前記基本波光源L11のうち、前記素子の結晶の誘電主軸z軸方向に応じた偏光成分で、且つ該素子の上下に備えられたペルチェ素子605a,605bによる制御温度に応じた波長を有する偏光成分のみを波長変換するため、一つの波長変換素子603において、該基本波光L11を、確実に各偏光成分毎に独立して波長変換することが可能となる。従って、当該装置600において、前記基本波光L11として、発振波長が単一であるランダム偏光を出射させ、前記波長変換素子にて偏光成分毎に波長変換する場合に比べて、前記基本波光L11として、波長の異なるP偏光、S偏光をもつ基本波光を出射させ、波長変換素子にて偏光成分毎に波長変換するほうが、第2高調波の出力安定性・信頼性をさらに向上させることができる。また、本実施の形態3では、一つの波長変換素子603の上下にペルチェ素子605a,605bを備え、各ペルチェ素子にて異なる設定温度で温度制御を行う構成であるため、各ペルチェ素子605a,605bの設定温度が大きく異なると温度制御しにくいが、本実施の形態3では、基本波光源としてファイバレーザ光源を用いており、発振波長差が小さいP,S偏光を出射することができるので、各ペルチェ素子605a,605bによる波長変換素子603内の温度制御が行いやすい効果も得られる。
なお、前述した説明では、波長変換素子603と、折り返し用プリズム608,609とを別に配置する例を説明したが、図10に示すように、該折り返し用プリズムと波長変換素子の結晶とを一体化した構成にすることも可能である。以下、その構成について、図10を用いて説明する。
図10は、本実施の形態3の波長変換光学装置において、波長変換素子として、結晶と折り返し用プリズムとを一体にした素子を用いた波長変換光学装置の構成を示す図である。ここでも、基本波光源301として、前述したファイバレーザ光源201を用いる。
本実施の形態で用いられる前記波長変換素子706は、酸化マグネシウムを添加したニオブ酸リチウム結晶(Mg:LN)で、基板上に、分極反転部703とプリズム部708,709、及びλ/2波長板307が形成されている。そして、前記プリズム部708の各反射面708a,708bには、基本波波長を透過し、第2高調波(緑色光)波長を反射する誘電体多層膜コーティングが施されており、また、前記プリズム部709の各反射面709a,709bには、基本波波長を反射し、第2高調波(緑色光)波長を透過する誘電体多層膜コーティングが施されている。
また、前述した図9に示す構成と同様、前記波長変換素子706は、銅板上に固定されており、分極反転部703を挟むように設けられたペルチェ素子705a,705bにより、温度コントロールされる。この波長変換素子の温度コントロールにより、位相整合波長の微調整が行なわれ、前述した実施の形態3と同様、該波長変換素子706の分極反転部703を2つのペルチェ素子705a,705bで挟み、一つの波長変換素子703における温度コントロール領域を上下に2分割することで、P偏光、S偏光それぞれの位相整合波長を合わせることができる。ここでは、前記波長変換素子603の上部が前記ペルチェ素子605aで約22℃に、また該素子603の下部が前記ペルチェ素子605bで約28℃にコントロールされる。
さらに、図10のような構成にした場合、集光レンズ302は、波長変換素子706の外に置かれる。集光レンズ302の焦点距離は、該素子706内を通過する光路の長さで決定される。例えば、素子706の長さは10mmであっても、折り返し分も含めた光路が25mmであったならば、前記集光レンズ302の焦点距離は、10mm素子の最適値であるf=20mmではなく、最適値であるf=30mmのものを用いることが望ましい。
なお、本波長変換光学装置700に入射された基本波光L11が第2高調波L53a,L54aに波長変換されるまで流れ、及び本装置700から出射される第2高調波L53a,L54aの出力特性は、前述した実施の形態3と同様であるため、ここでは説明を省略する。
以上のように、本実施の形態3の波長変換光学装置によれば、基本波光源301として、互いに直行する2方向の偏光(P偏光,S偏光)を持つ基本波L11を出力するファイバレーザ光源を用い、該基本波L11を、折り返し用プリズム608,609を用いて、波長変換素子603に折り返し入射させ、前記基本波L11のP偏光,S偏光を別々に波長変換するようにしたので、波長変換素子603に対して、従来では結晶破壊が起こるため入射できなかった高い出力の基本波光を入射することが可能となり、結果、結晶破壊なしで高い変換効率を実現できると共に、優れた出力安定性・信頼性も得ることができる。また、本実施の形態3によれば、当該装置を非常に小型化できるというさらなる効果が得られる。
さらに、本実施の形態3によれば、基本波光源301として偏波保持ファイバを備えたファイバレーザ光源201を用い、発振波長の異なるP偏光、S偏光をもつ基本波光L11を出射させ、一つの波長変換素子603の上下部に設けたペルチェ素子605a,605bによる温度制御の下で波長変換させるようにしたので、該波長変換素子603において、該基本波光L11の各偏光成分を、確実に波長変換することが可能となり、第2高調波の出力安定性・信頼性をより向上することができる。
(実施の形態4)
前記実施の形態3では、一つの波長変換素子で、基本波光源からの基本波光を折り返すことで、該基本波光に対して、それぞれの偏光方向(p方向、s方向)において独立して波長変換した第2高調波が同じ偏光方向である場合について説明したが、本実施形態4では、互いに直行する偏光方向をもつ第2高調波が出力される構成について説明する。
以下、本実施の形態4における波長変換光学装置800の構成について、図11を用いて説明する。
本実施の形態4では、前記各実施の形態と同様、基本波光源301として、図1(a)に示すYb添加偏波保持ファイバ205を用いたファイバレーザ光源201を使用し、波長変換素子として、光による劣化を防止するために酸化マグネシウムを添加したニオブ酸リチウム結晶(Mg:LN)に、周期的分極反転を形成した擬似位相整合波長変換素子を使用する。よって、前記基本波光源301から出射される基本波光L11は、前記実施の形態1と同様、波長変換素子に対して、水平な偏光方向の光(P偏光)と垂直な偏光方向の光(S偏光)を持ち、また、該各偏光の発振波長は若干異なっている(図3参照)。
本実施の形態4における、波長変換光学装置800の構成は、図9に示す前記実施の形態3の波長変換光学装置600の構成とほぼ同じであるが、折り返し用プリズム609の前段に、基本波を90度回転させるλ/2波長板307の代わりに、基本波光と波長変換後の第2高調波の両方を90度回転させる、基本波・第2高調波のλ/2波長板807(以下、単に「第2のλ/2波長板」と称す)を設けると共に、該第2のλ/2波長板807に対して、前記折り返し用プリズム608の反射面608aで折り返された光(図11では光L64a)が入射されないように、該第2のλ/2波長板807が小さく設計されている点で異なる。以下、詳細に説明する。
まず、前記基本波光源301から出射された光L11(1084nm:基本波)は、折り返し用のプリズム608を通過し、集光レンズ302aで波長変換素子603内に集光される。そして、前記基本波L11の2方向の偏光(P偏光、S偏光)のうち、偏光が結晶の誘電主軸z軸方向と平行なもの(P偏光)について波長変換がなされる。
ここで、前記プリズム608は、各反射面608a、608bに、基本波波長を透過し、第2高調波(緑色光)波長を反射する誘電体多層膜コーティングが施されたものであり、また、前記波長変換素子603は、厚さ1mm、長さ25mmのMg:LN(z軸方向が基板の面内に垂直)に、周期A=7.38μmで周期的に分極反転構造が形成されており、該波長変換素子603の両端は、光学研磨が施され、入射側、出射側ともに、基本波(波長:1084nm)及び第2高調波(波長:542nm近辺)の低反射コーティングが施されているものである。また、前記波長変換素子603は、銅板上に固定され、該波長変換素子603を挟むように設けられたペルチェ素子605a,605bにより温度コントロールされる。この波長変換素子の温度コントロールにより、位相整合波長の微調整が行なわれ、前述した実施の形態3と同様、前記波長変換素子603を2つのペルチェ素子605a,605bで挟み、一つの波長変換素子603における温度コントロール領域を上下に2分割することで、P偏光、S偏光それぞれの位相整合波長を合わせることができる。ここでは、前記波長変換素子603の上部が前記ペルチェ素子605aにより約22℃に、また該素子603の下部が前記ペルチェ素子605bにより約28℃にコントロールされる。
従って、まず反射面608aを透過し、該波長変換素子603に入射した前記基本波L11のうち、P偏光の基本波(パワー換算で、該入射した基本波光L11の20〜30%)が波長変換され、入射光の半分の波長である緑色光(542nm)になる。
よってこの時、前記波長変換素子603からは、該波長変換素子603において波長変換された緑色光と、その残りの基本波光(P偏光の残留基本波光)と、波長変換素子603で波長変換されなかったもう一方の偏光(S偏光)の基本波光とを含む光L62が出力される。
前記出力光L62は、再コリメートレンズ304aでコリメート光に戻された後、第2のλ/2波長板807を通過する。この第2のλ/2波長板807は、入射されるS偏光の基本波光、及び波長変換後のS偏光の緑色光の偏光方向を回転させて、前記波長変換素子603の誘電主軸z軸方向に合わせることが可能なように配置されているので、前記第2のλ/2波長板807は、前記出力光L62に含まれる基本波光及び第2高調波の偏光方向を回転させる。具体的には、P偏光の緑色光をS偏光の緑色光に、またP偏光の残留基本波光をS偏光の残留基本波光に、さらにS偏光の基本波光をP偏光の基本波光にする。
前記第2のλ/2波長板807を通過した光L63は、折り返し用のプリズム609に入射される。前記プリズム609は、各反射面609a、609bに、基本波波長を反射し、第2高調波(緑色光)波長を透過する誘電体多層膜コーティングが施されているものである。
よって、前記プリズム609に入射された光L63は、反射面609aにおいて、変換後の緑色光L63aのみ透過されて出力され、S偏光の残留基本波光と前記波長変換素子603で波長変換されなかったP偏光の基本波光とを含む光L63bは、前記プリズム609の反射面609a,609bにより反射され、前記波長変換素子603方向に折り返される。
その後、前記出力光L63bは、集光レンズ302bにより、前記波長変換素子603に再び集光される。前述したように、前記波長変換素子603では、P偏光の基本波光について波長変換がなされるため、前記光L63bのうち、P偏光の基本波光(パワー換算で、入射した光L43bの20〜30%)について波長変換がなされ、入射光の半分の波長である緑色光(542nm)になる。
よってこの時、前記波長変換素子603からは、該波長変換素子603において波長変換された緑色光と、その残りの基本波光(P偏光の残留基本波光)と、前記S偏光の残留基本波光とを含む光L64が出力される。
前記出力光L64は、プリズム608に入射され、該プリズム608の反射面608bにおいて、基本波光、すなわち前記S偏光の残留基本波光及びP偏光の基本波光を含む光L63bのみが透過されて出力され、前記P偏光の緑色光L63aは、前記プリズム608の反射面608a,608bで反射され、前記波長変換素子603方向に折り返される。
前記P偏光の緑色光L63aは、前記波長変換素子603及び再コリメートレンズ604aを再度通過した後、前記プリズム609に入射され、該反射面609aから透過され出力される。
このように本実施の形態4では、波長変換光学装置800より、異なる偏光方向の緑色光が出射される。
当該波長変換光学装置800の出力特性は、前記実施の形態2の図8で示される波長変換光学装置500の出力特性(図4,5参照)とほぼ同じ結果となる。すなわち、本実施の形態4の構成においては、従来では結晶破壊が起こるため入射できなかった高い出力の基本波光を、波長変換素子に入射することが可能となり、この結果、従来結晶破壊が発生していた3Wを超える出力(4W以上)を前記波長変換素子で得た状態においても、紫外光による緑色光の出力飽和や、結晶破壊を回避することができ、結晶破壊なしで高い変換効率を実現できる。また、すぐれた出力安定性・信頼性も得られる。さらに、本実施の形態4では、前記実施の形態3と同様、基本波光源301として、偏波保持ファイバを備えたファイバレーザ光源201を用い、発振波長の異なるP偏光、S偏光をもつ基本波光L11を出射させ、一つの波長変換素子603の上下部に設けたペルチェ素子605a,605bによる温度制御の下で、波長変換させるようにしたので、該波長変換素子603において、該基本波光L11を各偏光成分毎に確実に波長変換することが可能となるため、当該装置800において、発振波長が単一であるランダム偏光の基本波光を出射させて該波長変換素子603にて偏光成分毎に波長変換する場合に比べて、第2高調波の出力安定性・信頼性を向上させることができる。
なお、前述した説明では、波長変換素子603と、折り返し用プリズム608,609とを別に配置する例を説明したが、前記実施の形態3において図10を用いて説明したように、該折り返し用プリズムと波長変換素子の結晶とを一体化した構成にすることも可能である。このようにすれば、当該波長変換光学装置を更に小型化できる効果が得られる。
なお、前述した各実施の形態においては、赤外光(1084nm)から緑色光(542nm)を発生させる場合を例に挙げて説明をしたが、これに限るものではなく、ファイバレーザ光源から出射させる基本波の波長を変えれば、黄緑光(560nm)〜青色光(480nm)の光を発生させることが可能である。
また、前述した各実施の形態では、基本波光源301としてファイバレーザ光源を用いる場合を一例に挙げたが、これに限るものではない。他の光源を使用した場合は、黄緑光(560nm)〜近紫外光(380nm)の光を発生させることが可能である。
また、前記各実施の形態においては、前記波長変換素子として、酸化マグネシウム(MgO)を添加したニオブ酸リチウム(Mg:LiNbO)を使用する場合を例に挙げたが、その他に、ノンドープニオブ酸リチウム(LiNbO:LN)、ノンドープタンタル酸リチウム(LiTaO:LT)、あるいは、ZnOを添加したニオブ酸リチウム(Zn:LiNbO)、MgOないしZnOを添加したタンタル酸リチウム(Mg:LiTaO、Zn:LiTaO)、リン酸チタニルカリウム(KTiOPO:KTP)、希土類カルシウムオキシボレート類(ReCaO(BO、Re:希土類元素)、水晶などを用いることも可能である。ただし、各実施の形態の波長変換光学装置に示すように、ファイバレーザ光源から出射された基本波光L11より、黄緑色光(560nm)から青色光(480nm)を発生させる場合、その変換効率や光による結晶の劣化の耐性を鑑みれば、MgOを添加したニオブ酸リチウム(Mg:LiNbO)を用いるのがもっとも望ましい。
ところで、前述した各実施の形態の波長変換光学装置では、基本波光源としてファイバレーザ光源を用いているため、各偏光で発振波長が若干異なり、それぞれの波長について波長変換することにより、複数波長の第2高調波を得ることが可能となる。よって、各実施の形態で説明した波長変換光学装置を、レーザディスプレイ(画像表示装置)や半導体プロセスの露光用光源として使用した場合、光のコヒーレンス性(単一波長・同位相の光であること)が必要以上に大きいために発生する不要なノイズパターン(スペックルノイズ)を低減することができる。
以下、図12(a)を用いて、前記実施の形態1で説明した波長変換光学装置を、レーザディスプレイ(画像表示光学装置)として使用する場合の構成の一例を説明する。
(実施の形態5)
図12(a)は、同じ偏光方向の2本の第2高調波を出射する波長変換光学装置を、緑色光用光源として使用したレーザディスプレイの構成を示す図である。
本実施の形態5では、レーザディスプレイ900の光源として、赤、緑、青の3色のレーザ光源を用いた。
具体的には、赤色光源901として、波長635nmのGaAs系半導体レーザを、青色光源903として、波長445nmのGaN系半導体レーザを用いた。前記各半導体レーザは、3個〜8個の半導体レーザの出力をバンドルファイバにより1本のファイバ出力で得られるような構造をしており、その波長スペクトル幅は、数nmと非常にブロードなものとなっている。この広いスペクトルによりスペックルノイズの発生を抑制している。
一方、緑色光源902には、本実施の形態1で説明した波長変換光学装置300を用いた。
前記緑色光源902を出射した波長の異なるP偏光の2本の緑色光(第2高調波)は、反射型変調素子905a、905bに送られ、空間変調される。そして、ミラー907を介して、合波プリズム908により、それぞれ変調素子904、906で変調された赤色光、青色光と混合され、カラー画像を形成する。形成した画像は、投射レンズ909によりスクリーン910に投影される。
このように、前記緑色光源902の波長の異なる2本の緑色光を、異なる位置から出射し、該波長の異なる緑色光ごとに変調素子905a,905bにて空間変調することで、ヒトの目の感度が高い緑色の解像度を向上することができ、この結果、画像表示光学装置の高画質化が可能となる。
図13は、1つのレーザ光源から出射される2本の光のピーク波長差と、スペックルノイズ明暗差との関係を示す図である。なお、図中において、「単色」とは、光源より単一波長、単一偏光の光が出射される場合を意味し、ここでは、その際のスペックルノイズ明暗差を1としている。また、図13は同じスクリーンで比較した結果をプロットした。
図13に示すように、従来のレーザ光源から出射される光が単色であった場合、画像表示光学装置にスペックル除去光学系(図示せず)を設けたとしても、スペックルノイズ明暗差を0.07〜0.08にするのが限界だったが、本願のように、レーザ光源より波長の異なる2本の光を出射するようにすれば、スペックル除去光学系として、より構成が単純な揺動拡散板を用いたスペックル除去機構を用いた場合であっても、単色の場合に比べて、スペックルノイズ明暗差を小さくすることができる。
また、スペックルノイズには、光の偏光により異なったパターンを持つという特徴がある。従って、図12(b)に示すように、レーザ光源として異なる偏光を出射する波長変換光学装置(例えば実施の形態2に示したもの)を用いるようにすれば、画像の投影面で異なるスペックルノイズを重ね合わせることになるので、不要なノイズパターン(スペックルノイズ)をさらに低減することが可能となる。
すなわち、図13に示すように、従来のレーザ光源から出射される光が単色であった場合、画像表示光学装置にスペックル除去光学系(図示せず)を設けたとしても、スペックルノイズ明暗差を0.07〜0.08にするのが限界だったが、レーザ光源より波長も偏光も異なる2本の光を出射するようにすれば、単色の場合に比べてスペックルノイズ明暗差をかなり小さいものにでき、さらに、スペックル除去光学系(図示せず)を設けるようにすれば、該スペックルノイズ明暗差を肉眼で分からないレベルである0.04程度(波長差が0.27nmである場合)にすることが可能となった。
なお、本実施の形態5では、スクリーンの前面から画像を投影する前面投射型の画像表示光学装置を例に挙げて説明したが、スクリーンの背後から画像を投影する背面投射型の構成をとることも可能である。
さらに、図12では、空間変調素子として、超小型ミラーが集積された反射型空間変調素子を用いたが、液晶を用いた変調素子やガルバノミラーを用いることも、もちろん可能である。
なお、以上の各実施の形態に例示した構造はあくまでも一例であり、他の態様をとることが可能であることは言うまでもない。
本発明は、高い信頼性・高い出力安定性を持つ波長変換光学装置、レーザ光源、及び高画質の画像表示光学装置を実現するものとして有用である。
【0004】
ことが必須条件である。すなわち、高輝度な画像表示装置用の波長変換光学装置の実現には、前述した両方の条件を満たす光源の開発が必要となっていた。
[0012]
本発明は、第3高調波による第2高調波吸収の影響を低減し、波長変換光出力の安定性及び信頼性を高めることができ、且つ表示画像の高画質化が可能な波長変換光を出力できる波長変換光学装置、及びそれを用いたレーザ光源、並びに画像表示光学装置を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0013]
前記課題を解決するために、本発明の波長変換光学装置は、基本波光を出力する基本波光源と、前記基本波光源からの基本波光を波長変換して高調波を発生させる分極反転部を含む波長変換機構と、を備え、前記基本波光源は、互いに垂直な2方向の偏光成分を有し、それぞれの偏光成分で波長が異なる基本波光を出力するファイバレーザ光源であり、前記波長変換機構は、前記基本波光を、互いに垂直な2方向の偏光成分毎に波長変換するものである。
[0014]
これにより、前記高調波出力の飽和、及び結晶の破壊を回避すると同時に、波長変換された高調波の出力安定性・信頼性を向上することができる。
[0015]
さらに、本発明の波長変換光学装置は、前記基本波の発振波長が、前記2方向の偏光成分で異なるものである。
これにより、波長変換された高調波の出力安定性・信頼性をより向上させることができる。
[0016]
さらに、本発明の波長変換光学装置は、前記波長変換機構から出射される2本の高調波光の偏光方向が同じであるものである。
[0017]
さらに、本発明の波長変換光学装置は、前記波長変換機構から出射される2本の高調波光の偏光方向が互いに垂直であるものである。
[0018]
さらに、本発明の波長変換光学装置は、前記基本波光、あるいは該基本波光と前記波長変換機構で波長変換された高調波とを含む光を、その偏光成分毎に分離する偏光分離機構を備えるものである。
[0019]
これにより、前記基本波光源より出射された基本波光を各偏光成分毎に分割することができる。
[0020]
さらに、本発明の波長変換光学装置は、該波長変換機構の同一基板内に、前記分極反転部と、該分極反転部の、前記基本波光の入射側に設けられた該基本波光を
【0005】
透過する第1の反射鏡と、該分極反転部で波長変換された高調波の出射側に設けられた該高調波を透過する第2の反射鏡と、前記分極反転部を通過した基本波の偏光を転換する波長板と、を備え、さらに、前記分極反転部の温度制御を行なう2つの温度調節機構、を備えるものである。
これにより、当該装置を更に小型化できる。
[0021]
さらに、本発明の波長変換光学装置は、前記波長変換機構の前記分極反転部は、MgO、ZnOを添加した、ニオブ酸リチウム(LiNbO:LN)、あるいはタンタル酸リチウム(LiTaO:LT)の、少なくとも一部分を分極反転することにより形成されているものである。
[0022]
これにより、当該装置において、より高い変換効率を得ることができる。
[0023]
また、本発明の画像表示光学装置は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の波長変換光学装置と、前記波長変換光学装置で変換され出射される2本の高調波それぞれを変調する変調機構と、前記変調機構により変調された光を投影する投影光学系と、を備えるものである。
[0024]
これにより、スペックルノイズを低減できる画像表示光学装置を提供することができる。更に好ましくは、当該画像表示光学装置に、請求項2または請求項4に記載の波長変換光学装置を用いれば、スペックルノイズをより低減することができる。
[0025]
また、本発明のレーザ光源は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の波長変換光学装置を具備したものである。
[0026]
これにより、前記高調波出力の飽和、及び結晶の破壊を回避すると同時に、それぞれ独立に波長変換された高調波の出力安定性・信頼性を向上することができるレーザ光源を提供できる。
また、本発明の波長変換光学装置は、請求項1に記載の波長変換光学装置から出射される光において、それぞれの波長成分を持つビームが同軸で出射されていないものである。
これにより、波長の異なる2本の光を異なる位置から出射して、画像の解像度を向上することができる。
また、本発明の画像表示光学装置は、請求項10に記載の波長変換光学装置を具備したものである。
これにより、スペックルノイズを低減できる画像表示光学装置を提供することができる。
発明の効果
[0027]
本発明の波長変換光学装置、及びレーザ光源によれば、基本波光を出力する基本波光源と、前記基本波光源からの基本波光を波長変換して高調波を発生させる分極反転部を含む波長変換機構と、を備え、前記基本波光源は、互いに垂直な2方向の偏光成分を有し、それぞれの偏光成分で波長が異なる基本波光を出力するファイバレーザ光源であり、前記波長変換機構は、前記基本波光を、互いに垂直な2方向の偏光成分毎に波長変換するようにしたので、基本波成分と第2高調波成分との相互作
本発明は、擬似位相整合波長変換素子を用いた波長変換光学装置、及びこれを利用したレーザ光源、画像表示光学装置に関するものである。
加工用途、あるいはレーザディスプレイなどに使われる光源として、高出力レーザ光源が注目されている。そして、その赤外線領域においては、YAGレーザ等の固体レーザ、Yb,Nd等の希土類が添加されたファイバを用いたファイバレーザなどが開発されている。一方、赤色、青色領域においては、ガリウム・ヒ素、窒化ガリウム等を用いた半導体レーザが開発されており、高出力化も検討されている。しかし、緑色領域については、半導体から直接緑色を発生させることが依然として困難であり、前述の固体レーザ、ファイバレーザから発せられる赤外光を非線形光学結晶により波長変換して得るのが一般的である。
特に、前記非線形光学結晶としてニオブ酸リチウム(LiNbO3:LN)結晶を用いた場合、その大きな非線形光学定数により高い変換効率を得ることができることが知られており、装置の構成も簡単にできることから、このニオブ酸リチウム(LN)結晶に分極反転技術を用いて形成された擬似位相整合(QPM)波長変換素子が、百mW程度の出力の波長変換光学装置によく用いられている。
数Wクラスの出力を得る波長変換光学装置では、リチウムトリボレート(LiB35:LBO)結晶、リン酸チタニルカリウム(KTiOPO4:KTP)結晶などの非線形光学結晶が用いられる。前記LBO結晶は、基本波や発生した第2高調波による結晶破壊・劣化が起こりにくいという特徴を持っているが、非線形光学定数が小さいため、高い変換効率を得るには共振器を構成しその中に結晶を配置する必要があり、装置構造が複雑で緻密な調整が必要となる。前記KTP結晶は、前記LBO結晶と比べて非線形光学定数が大きく、共振器を構成しなくても高い変換効率が得られるが、基本波や発生した第2高調波による結晶破壊・劣化が起こりやすいという欠点を持っている。
ところで、前述したLN結晶を用いた擬似位相整合素子(QPM−LN素子)は、前記KTP結晶を用いた場合よりも大きな非線形光学定数を持つため、高効率、高出力の波長変換が可能である。しかしながら、前記QPM−LN素子は、狭い領域に光エネルギーを集光する必要があるため、実質的には前記KTP結晶より、基本波や発生した第2高調波による結晶破壊・劣化が起こりやすい。すなわち、前記QPM−LN素子によって数Wの高調波を得る場合、そのLN結晶の大きな非線形光学定数が原因となり、基本波となる赤外光と、波長変換された緑色光(第2高調波)との和周波である紫外光(第3高調波)が、位相整合条件からはずれた場合においても発生し、その発生した紫外光(第3高調波)が発生した緑色光(第2高調波)の吸収を引き起こし、緑色光出力の飽和・結晶破壊を引き起こすという問題があった。
この問題を解決するため、従来においては、特許文献1や特許文献2のように、波長変換用の非線形光学結晶を2段構成にし、1段目の波長変化によって変換されなかった基本波を、再び2段目の波長変換に用いるようにすることが提案されている。このようにすれば、1段目と2段目の合計で変換効率を大きくでき、また、基本波成分と第2高調波成分の相互作用を低減して紫外光である第3高調波の発生を抑制することができる。
特開平11−271823号公報 特開2005−10739号公報
以下、図14を用いて、特許文献1に示される従来の波長変換光学装置の構成について説明する。従来の波長変換光学装置100は、基本波光源101より発せられた基本波光L1を、まず1段目の波長変換部102aで波長変換して第2高調波を発生させる。前記1段目の波長変換部102aからは、該波長変換部102aで発生した前記第2高調波と、該波長変換部102aで変換されなかった基本波光(残留基本波光)とを含む光L2が出力される。前記光L2は、基本波を透過して高調波を反射する分離ミラー103aにより、第2高調波L2aと残留基本波L2bとに分離される。そして、前記分離ミラー103aを透過した残留基本波L2bは、ビーム径変換機構104によりビーム整形され、2段目の波長変換部102bで再び波長変換される。前記2段目の波長変換部102bからは、該波長変換部102bで変換された第2高調波と、該波長変換部102bにおいて変換されなかった残留基本波とを含む光L3が出力される。そして、前記光L3は、前述と同様、分離ミラー103bで、第2高調波L3aと残留基本波L3bとに分離されるというものである。
しかしながら、前述した特許文献1の構成では、1段目の波長変換部102aの波長変換効率が不安定になれば、2段目の波長変換部102bに入射される基本波の入力も変化し、その出力も不安定化される。つまり、2段目の波長変換部102bの出力安定性は、1段目の波長変換部102aの出力安定性に大きく依存してしまうという問題がある。また、1段目の波長変換部102aの出力が著しく低下した場合、2段目の波長変換部102bへの基本波入力が急激に上昇し、結晶を破壊してしまうという問題もある。そしてこれらの問題は、前記特許文献1の装置における波長変換の調整を困難にし、波長変換動作における出力安定性を低下させる原因となっていた。
また、前記特許文献1には、1段目の波長変換部102aを通過した残留基本波L2bのビーム品質が劣化(横モード歪み)してしまうという問題もある。ビーム品質の劣化(横モード歪み)は、ビーム径変換機構104を通過しても除去できないからである。前述したビーム品質の劣化(横モード歪み)は、基本波と第2高調波との位相整合方法に角度位相整合を用いた場合は発生しにくいが、本願のように、波長変換素子として、変換効率は大きいが、波長変換に有効な領域が小さい分極反転構造の素子を用いる場合には、分極反転部での屈折率ひずみなどにより横モードひずみを起こしやすくその変換効率の低下を引き起こすことがわかっている。
また、前記特許文献2の構成には、途中で第2高調波を分離する機構がないため、今回課題となっている第3高調波(紫外光)が誘起する第2高調波(緑色光)の吸収を回避することはできない。
ところで、このようなレーザ光源を画像表示装置に用いて画像表示を行なう場合に、単一波長、単一偏光のレーザ光源を用いると、不要なノイズ(スペックルノイズ)が発生し、表示される画像の画質が劣化するという問題が生じることが知られている。しかし、レーザ光源において高効率な波長変換を行うには、単一波長、単一偏光であることが必須条件である。すなわち、高輝度な画像表示装置用の波長変換光学装置の実現には、前述した両方の条件を満たす光源の開発が必要となっていた。
本発明は、第3高調波による第2高調波吸収の影響を低減し、波長変換光出力の安定性及び信頼性を高めることができ、且つ表示画像の高画質化が可能な波長変換光を出力できる波長変換光学装置、及びそれを用いたレーザ光源、並びに画像表示光学装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明の波長変換光学装置は、基本波光を出力する基本波光源と、前記基本波光源からの基本波光を波長変換して高調波を発生させる分極反転部を含む波長変換機構と、を備え、前記基本波光源は、互いに垂直な2方向の偏光成分を有し、それぞれの偏光成分で波長が異なる基本波光を出力するファイバレーザ光源であり、前記波長変換機構は、前記基本波光を、互いに垂直な2方向の偏光成分毎に波長変換するものである。
これにより、前記高調波出力の飽和、及び結晶の破壊を回避すると同時に、波長変換された高調波の出力安定性・信頼性を向上することができる。
さらに、本発明の波長変換光学装置は、前記基本波の発振波長が、前記2方向の偏光成分で異なるものである。
これにより、波長変換された高調波の出力安定性・信頼性をより向上させることができる。
さらに、本発明の波長変換光学装置は、前記波長変換機構から出射される2本の高調波光の偏光方向が同じであるものである。
さらに、本発明の波長変換光学装置は、前記波長変換機構から出射される2本の高調波光の偏光方向が互いに垂直であるものである。
さらに、本発明の波長変換光学装置は、前記基本波光、あるいは該基本波光と前記波長変換機構で波長変換された高調波とを含む光を、その偏光成分毎に分離する偏光分離機構を備えるものである。
これにより、前記基本波光源より出射された基本波光を各偏光成分毎に分割することができる。
さらに、本発明の波長変換光学装置は、該波長変換機構の同一基板内に、前記分極反転部と、該分極反転部の、前記基本波光の入射側に設けられた該基本波光を透過する第1の反射鏡と、該分極反転部で波長変換された高調波の出射側に設けられた該高調波を透過する第2の反射鏡と、前記分極反転部を通過した基本波の偏光を転換する波長板と、を備え、さらに、前記分極反転部の温度制御を行なう2つの温度調節機構、を備えるものである。
これにより、当該装置を更に小型化できる。
さらに、本発明の波長変換光学装置は、前記波長変換機構の前記分極反転部は、MgO、ZnOを添加した、ニオブ酸リチウム(LiNbO3:LN)、あるいはタンタル酸リチウム(LiTaO3:LT)の、少なくとも一部分を分極反転することにより形成されているものである。
これにより、当該装置において、より高い変換効率を得ることができる。
また、本発明の画像表示光学装置は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の波長変換光学装置と、前記波長変換光学装置で変換され出射される2本の高調波それぞれを変調する変調機構と、前記変調機構により変調された光を投影する投影光学系と、を備えるものである。
これにより、スペックルノイズを低減できる画像表示光学装置を提供することができる。 更に好ましくは、当該画像表示光学装置に、請求項2または請求項4に記載の波長変換光学装置を用いれば、スペックルノイズをより低減することができる。
また、本発明のレーザ光源は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の波長変換光学装置を具備したものである。
これにより、前記高調波出力の飽和、及び結晶の破壊を回避すると同時に、それぞれ独立に波長変換された高調波の出力安定性・信頼性を向上することができるレーザ光源を提供できる。
また、本発明の波長変換光学装置は、請求項1に記載の波長変換光学装置から出射される光において、それぞれの波長成分を持つビームが同軸で出射されていないものである。
これにより、波長の異なる2本の光を異なる位置から出射して、画像の解像度を向上することができる。
また、本発明の画像表示光学装置は、請求項10に記載の波長変換光学装置を具備したものである。
これにより、スペックルノイズを低減できる画像表示光学装置を提供することができる。
本発明の波長変換光学装置、及びレーザ光源によれば、基本波光を出力する基本波光源と、前記基本波光源からの基本波光を波長変換して高調波を発生させる分極反転部を含む波長変換機構と、を備え、前記基本波光源は、互いに垂直な2方向の偏光成分を有し、それぞれの偏光成分で波長が異なる基本波光を出力するファイバレーザ光源であり、前記波長変換機構は、前記基本波光を、互いに垂直な2方向の偏光成分毎に波長変換するようにしたので、基本波成分と第2高調波成分との相互作用を低減することができ、第3高調波(紫外光)の発生を抑制することが可能となる。これにより、前記第3高調波が原因となって引き起こされる第2高調波(緑色光)の吸収を抑制でき、波長変換機構における出力の飽和や、結晶破壊を回避できることに加え、当該装置から出力される第2高調波の安定性や信頼性を向上することが可能となる。
また、本発明の波長変換光学装置あるいはレーザ光源において、前記基本波光源から出射された基本波の偏光状態を任意の光パワー比率で2方向に分割した後、該分割した各偏光の基本波光を波長変換機構で波長変換するようにした構成では、前記波長変換機構においてビーム品質が劣化(横モード歪み)することによる変換効率の低下を抑えることが可能となり、当該装置において、高い変換効率を得ることができる。
また、本発明の波長変換光学装置あるいはレーザ光源において、前記基本波光源より、波長が異なる2方向の偏光成分を持つ基本波光を出射するようにすれば、前記波長変換機構において、基本波光の各偏光成分をより確実に独立して波長変換することができるため、当該装置より出力される第2高調波の安定性や信頼性をさらに向上することができる。また、基本波光源として偏波保持ファイバを備えたファイバレーザ光源を用いるようにすれば、波長差の小さい2方向の偏光成分をもつ基本波光を出射できるため、前記波長変換機構において各偏光成分を独立して波長変換する際の制御がしやすいという効果が得られる。
さらに、本発明の画像表示光学装置によれば、緑色光源から出射される、異なる波長の緑色光を複数箇所から出射し、該波長の異なる光ごとに空間変調するようにしたので、ヒトの目の感度が高い緑色の解像度を向上することが可能となり、当該画像表示光学装置の高画質化が可能となる。
また、前記緑色光源から出射される緑色光として、異なる波長且つ異なる偏光方向の光を出射し、各光ごとに空間変調するようにすれば、画像の投影面で異なるスペックルノイズを重ね合わせることになるので、画像表示装置用光源として使用する場合、不要なノイズパターン(スペックルノイズ)を大幅に低減することが可能となる。
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
本実施の形態1では、基本波光源としてYb添加ダブルクラッド偏波保持ファイバを用いたファイバレーザ光源を使用し、波長変換素子として、光による劣化を防止するために酸化マグネシウムを添加したニオブ酸リチウム結晶(Mg:LN)に周期的分極反転を形成した擬似位相整合波長変換素子を使用し、該波長変換素子を直列に配置して、前記基本波光源より出力される基本波を波長変換する場合を示している。
まず、本実施の形態1で用いる基本波光源の構成について、図1を用いて、また、本実施の形態1における波長変換光学装置の構成について、図2を用いてそれぞれ説明する。本実施の形態1の波長変換光学装置300では、前記波長変換素子を直列に配置する。これにより、設置面積を小さくすることが可能となる。
本実施の形態1の波長変換光学装置300では、基本波光源301として、前述したようにファイバレーザ光源を使用する。ファイバレーザ光源から出射される基本波L11は、当該波長変換光学装置300内の波長変換素子に対して、水平な偏光方向(p方向)と垂直な偏光方向(s方向)を持つ。本実施の形態1の波長変換光学装置300では、このそれぞれの偏光方向(p方向、s方向)において独立して波長変換を行うことを特徴とする。
以下、本実施の形態1で用いられるファイバレーザ光源の構成について詳細に説明する。まず、励起用半導体レーザ光源(波長915nm)202から発せられる赤外光は、ポンプコンバイナ203により一本のファイバにまとめられる。このときの励起光の合計出力は30Wである。この励起光は、レーザ媒質であるYb添加ダブルクラッド偏波保持ファイバ205(以下、単に「Yb添加偏波保持ファイバ」と称す。)に集光される。前記Yb添加偏波保持ファイバ205の両端には、発振波長(ここでは1084nm)で反射するよう設計されたファイバーグレーティング204a、204bが接続されており、該Yb添加偏波保持ファイバ205とファイバグレーティング204a、204bとにより、レーザ共振器206が構成される。
通常、偏波保持ファイバを用いたレーザ光源は、前述したように互いに垂直なp方向とs方向の2つの偏光(以下、それぞれP偏光、S偏光と称す。)を持つ。よって、このようなファイバレーザ光源を従来の波長変換光学装置に用いる場合、単一偏光を得るために、図1(b)に示すように、前記レーザ共振器206の後段に、ポラライザなどの偏光単一化機構207を備え、前記2つの偏光を単一偏光化する必要があった。また、前記ファイバレーザ光源から出射される2つの偏光は、偏波保持ファイバに形成された狭帯域のファイバグレーティング204bが偏光方向に応じて2つの反射ピークを持つため、図3に示されるように、その2つの偏光の発振波長も1/10nm〜数nmほど異なる。そのため、前記偏光単一化機構207では、前記2つの偏光の発振波長をそろえる調整も行なわれる。
しかし、本実施の形態1の波長変換光学装置300においては、波長が異なり、且つ互いに垂直な2方向の偏光(P偏光,S偏光)それぞれを、独立して波長変換を行う。従って、前記ファイバレーザ光源201で、前記2つの偏光の単一偏光化や、発振波長調整を行う偏光単一化機構207を設ける必要がなく、結果、基本波光源301の構成を簡略化できる。
なお、ファイバレーザ光源を構成するファイバに、偏波保持ファイバを使用しなかった場合、該ファイバレーザ光源からの光は、ランダム偏光(偏波無依存)となり、その発振波長は単一化されてしまうため、本発明で使用するファイバレーザ光源は、複数波長を発振させるために、偏波保持ファイバで構成される必要がある。
このように、基本波光源301として、前述したような偏波保持ファイバを備えたファイバレーザ光源201を用いれば、発振波長差の小さい2方向の偏光成分をもつ基本波光を出射でき、後述する波長変換素子において、該基本波光を各偏光成分毎に独立して確実に波長変換することができる。
次に、前述したファイバレーザ光源201を基本波光源301として用いた、本実施の形態1における波長変換光学装置300の構成について説明する。
まず、前記基本波光源301から出射された光L11(1084nm:基本波)を、コリメートレンズ等(図示せず)で800μm程度のビーム径にコリメートし、集光レンズ302aで集光する(ここでは焦点距離30mm)。そして、集光した基本波光L11を1段目の波長変換素子303aに入射させ波長変換する。この第1の波長変換素子303aでは、前記基本波L11の2方向の偏光(P偏光、S偏光)のうち、偏光が結晶の誘電主軸z軸方向と平行なもの(P偏光)について波長変換がなされる。前記第1の波長変換素子303aは、厚さ1mm、長さ25mmのMg:LN(結晶主軸z軸方向が基板の面内に垂直)に、周期Λ=7.38μmで周期的に分極反転構造が形成されており、該波長変換素子303aの両端は、光学研磨が施され、入射側には基本波(波長:1084nm)の低反射コーティングが、出射側には第2高調波(波長:542nm近辺)の低反射コーティングが施されている。また、前記第1の波長変換素子303aは、銅板上に固定されており、ペルチェ素子305aにより温度コントロール(ここでは約22℃)されている。この波長変換素子の温度コントロールにより、位相整合波長の微調整を行う。そして、前記第1の波長変換素子303aにおいては、パワー換算で、入射した光L11の20〜30%が波長変換され、入射光の半分の波長である緑色光(542nm)になる。
よって、前記第1の波長変換素子303aからは、該波長変換素子303aにおいて波長変換された緑色光と、その残りの基本波光(P偏光の残留基本波光)と、前記第1の波長変換素子303aで波長変換されなかったもう一方の偏光、すなわち結晶の誘電主軸z軸方向と垂直な偏光(S偏光)の基本波光とを含む光L12が出力される。
前記出力光L12は、再コリメートレンズ304aで平行光に戻され、その後、偏光ビームスプリッタ306により、前記P偏光の緑色光と残留基本波光の光路を90度曲げることで、該P偏光の緑色光と残留基本波光とを含む光L13と、前記第1の波長変換素子303aで波長変換されなかったS偏光の基本波光L14とが分離される。
前記偏光ビームスプリッタ306をそのまま通過した前記S偏光の基本波光L14は、基本波のλ/2波長板(以下、単に「λ/2波長板」と称す。)307を通過する。前記λ/2波長板307は、入射された基本波光L14の偏光方向を、後段に設けられた2段目の波長変換素子303bの誘電主軸z軸方向に合わせるように配置されているので、前記S偏光の基本波光L14は、前記λ/2波長板307を通過すると、P偏光の基本波光L15になる。
前記P偏光の基本波光L15は、集光レンズ302bで集光された後、二段目の波長変換素子303bに入射される。この第2の波長変換素子303bでは、前記第1の波長変換素子303aと同様、前記基本波の2方向の偏光(P偏光、S偏光)のうち、結晶の誘電主軸z軸方向と平行な偏光(P偏光)について波長変換がなされる。前記第2の波長変換素子303bは、厚さ1mm、長さ25mmのMg:LN(結晶の誘電主軸z軸方向が基板の面内に垂直)に、周期Λ=7.38μmで周期的に分極反転構造が形成されており、その他、コーティングの条件、保持方法、及びペルチェ素子305bによる温度コントロール方法は、前記第1の波長変換素子303aと同様である。ただし、前述したように、前記ファイバレーザ光源より出射されるP偏光とS偏光は、若干波長が異なるため(図3では、波長差0.5nm)、前記ペルチェ素子305bでは、前記ペルチェ素子305aとは異なる温度(ここでは約28℃)で該第2の波長変換素子303bを温度コントロールする。この結果、位相整合波長の微調整が行なえ、S偏光、P偏光それぞれの位相整合波長を合わせることができる。この第2の波長変換素子303bにおいても、パワー換算で、入射した光L15の20〜30%が波長変換され、入射光の半分の波長である緑色光(542nm近辺)になる。
前記第2の波長変換素子303bからは、該波長変換素子303bにおいて波長変換された緑色光と、その残りの基本波光(P偏光の残留基本波光)とを含む光L16が出力される。そしてこの後、前記出力光L16は、再コリメートレンズ304bで平行光に戻され、ダイクロイックミラー308cにより、緑色光L16aとその残留基本波光L16bとが分離される。
一方、前記第1の波長変換素子303aにて既に波長変換され、前記偏光ビームスプリッタ306でその光路を90度曲げられた前記光L13は、ダイクロイックミラー308aにより、緑色光L13aとその残留基本波光L13bとが分離される。
そして、前記第1,第2の波長変換素子303a,303bそれぞれで波長変換したP偏光の緑色光L13a,L16aは、ダイクロイックミラー308a,308b,308c、及びプリズム309等を用いて、同一出射方向に出射される。
図4は、本実施の形態1の波長変換光学装置300における第2高調波出力特性(点線)と、従来の波長変換素子を1つ備える波長変換光学装置における第2高調波出力特性(実線)とをプロットした図である。
図4から明らかなように、従来であれば結晶破壊が発生していた、3Wを超える出力(4W以上)を得るための基本波光をうけた状態においても、紫外光による緑色光の出力飽和や、結晶破壊が生じないことがわかる。これは、本装置300では、波長変換素子を複数個設け、該各波長変換素子においては入射された基本波光のうちP偏光,S偏光のいずれか一方が波長変換されるものであるため、各波長変換素子に、P偏光,S偏光それぞれが紫外光発生の影響を受けない程度の基本波光を入力することが可能となったことによる。これにより、本実施の形態1の構成では、波長変換素子に、従来では結晶破壊が起こるため入射できなかった高い出力の基本波光が入射可能となり、結果、結晶破壊なしで高い変換効率を実現できる。
また、図5は、図14に示す従来の波長変換光学装置における出力安定性(図(a))と、本実施の形態1の波長変換光学装置における出力安定性(図(b))とを示す図である。
図5から明らかなように、本実施の形態1の波長変換光学装置300は、従来の波長変換光学装置100よりも出力安定性が増していることがわかる。これは、本装置300では、従来のように前段の波長変換素子で波長変換されなかった残留基本波光を、後段の波長変換素子で波長変換しないため、後段の波長変換素子における波長変換が、前段の波長変換素子の波長変換効率による影響をうけないことによる。これにより、本装置300では、従来装置100の課題であった、1段目の波長変換素子の出力が著しく低下した場合に、2段目の波長変換素子への基本波入力が急激に上昇し結晶を破壊してしまうという課題も解決できる。
なお、本実施の形態1では、2つの波長変換素子303a,303bを直列に配置して波長変換する場合を一例に挙げたが、図6に示すように、2つの波長変換素子を並列に配置する構成も可能である。以下、その構成について、図6を用いて説明する。
図6は、波長変換素子を並列に配置した場合の、波長変換光学装置の構成を示す図である。ここでも、基本波光源301として、前述したファイバレーザ光源201を用いる。よって、基本波L11は、波長変換素子に対して、水平な偏光方向の光(P偏光)と垂直な偏光方向の光(S偏光)を持ち、また、該各偏光の波長は若干異なっている(図3参照)。
まず、前記基本波光源301から出射された光L11(1084nm:基本波)を、コリメートレンズ等(図示せず)で800μm程度のビーム径にコリメートした後、偏光ビームスプリッタ306で、P偏光の基本波光L22の光路を90度曲げることで、該P偏光の基本波光L22と、もう一方のS偏光の基本波光とに分離する。
ところで、波長変換結晶として、本実施の形態のように分極反転構造のものを用いた場合、1段目の波長変換素子303aを通過する際に基本波のビーム品質(横モード)が劣化し、この結果、2段目の波長変換素子303bにおける基本波光の変換効率が20%〜30%低下する場合があった。
しかし、図6の構成では、波長変換素子に入射させる前に前記基本波L11を2方向の偏光に分離する。これにより、前記基本波L11が波長変換素子を通過することによるビーム品質(横モード)の劣化を容易に抑えることができ、波長変換素子を複数個備える構成とした場合においても、ビーム品質が劣化(横モード歪み)することによる変換効率の低下を抑えることが可能となる。
前記偏光ビームスプリッタ306でその光路を90度曲げられた前記P偏光の基本波光L22は、ダイクロイックミラー308aにより集光レンズ302aに入射され集光される(ここでの焦点距離30mm)。集光した基本波光L22を、第1の波長変換素子303aに入射させ、波長変換する。前記第1の波長変換素子303aの寸法、分極反転構造、及び端面処理は、前述した第1の波長変換素子303aと同様である。また、前記第1の波長変換素子303aの保持方法や、ペルチェ素子305による温度調整方法及び位相整合波長の微調整方法も、前述と同様の方法をとっている。この第1の波長変換素子303aでは、パワー換算で、入射した光L22の20〜30%が波長変換され、入射光の半分の波長である緑色光(542nm)になる。
よって、前記第1の波長変換素子303aからは、該波長変換素子303aにおいて波長変換された緑色光と、その残りの基本波光(P偏光の残留基本波光)とを含む光L23が出力される。
一方、前記偏光ビームスプリッタ306をそのまま通過した前記S偏光の基本波光L24は、集光レンズ302bの手前に前記1/2波長板307を配置することにより、その偏光方向を90度回転させ、波長変換素子の誘電主軸z軸と平行な偏光(P偏光)の基本波光L25とされる。その後、前記P偏光の基本波光L25は、集光レンズ302bで集光された後(ここでの焦点距離30mm)、第2の波長変換素子303bに入射され、波長変換される。この第2の波長変換素子303bの寸法、分極反転構造、及び端面処理は、前述した第2の波長変換素子303bと同様である。また、該第2の波長変換素子303bの保持方法や、ペルチェ素子305bによる温度調整方法及び位相整合波長の微調整方法も、前述と同様の方法をとっている。この第2の波長変換素子303bにおいても、パワー換算で、入射した光L25の20〜30%が波長変換され、入射光の半分の波長である緑色光(542nm)になる。
よって、前記第2の波長変換素子303bからは、該波長変換素子303bにおいて波長変換された緑色光と、その残りの基本波光(P偏光の残留基本波光)とを含む光L26が出力される。
前記第1,第2の波長変換素子303a,303bから出射された各光L23,L26は、それぞれ再コリメートレンズ304a,304bで平行光に戻された後、それぞれダイクロイックミラー308b,308cにより、緑色光L23a,L26aと、残留基本波光L23b,L26bとに分離され、さらに該ダイクロイックミラー308b,308c、及びプリズム309等を用いて、同一出射方向に出射される。
図7は、図6に示す波長変換光学装置400における第2高調波出力特性(一点鎖線)と、従来の波長変換素子を1つ備える波長変換光学装置における第2高調波出力特性(実線)と、前記実施の形態1の波長変換光学装置300における第2高調波出力特性(点線)とをプロットした図である。
図7から明らかなように、図6に示す波長変換光学装置400の場合、従来であれば結晶破壊が発生していた、3Wを超える出力(4W以上)を得るための基本波光を前記波長変換素子でうけた状態においても、紫外光による緑色光の出力飽和や、結晶破壊が生じないことがわかる。さらに、波長変換光学装置400からの第2高調波の出力は、前述した図2に示す波長変換光学装置300による第2高調波の出力よりも大きい。これは、図6に示す装置400の構成では、基本波入力L11を波長変換素子に入射させる前に2方向の偏光に分離し、各波長変換素子に各偏光を入射するようにしたため、波長変換素子を通過することによりビーム品質が劣化(横モード歪み)することによる、変換効率の低下を抑えることが可能となったことによる。また、図6の構成においても、前記図2の構成同様、第2高調波の出力安定性が増し、従来装置100よりも出力安定性の面で優れることがわかった。加えて、従来装置100の課題であった、1段目の波長変換素子の出力が著しく低下した場合に、2段目への基本波入力が急激に上昇し結晶を破壊してしまうという課題も解決できる。
以上のように、本実施の形態1の波長変換光学装置によれば、基本波光源301として、互いに直行する2方向の偏光(P偏光,S偏光)を持つ基本波L11を出力するファイバレーザ光源を用い、各波長変換素子303a,303bにて、前記基本波L11のP偏光,S偏光を別々に波長変換するようにしたので、各波長変換素子303a,303bに対して、従来では結晶破壊が起こるため入射できなかった高い出力の基本波光を入射することが可能となり、結果、結晶破壊なしで高い変換効率を実現できる。また、後段の波長変換素子303bにおける波長変換が、前段の波長変換素子303aの波長変換による影響をうけないため、優れた出力安定性・信頼性を得ることもできる。
また、本実施の形態1では、基本波光源301として、偏波保持ファイバを備えたファイバレーザ光源201を用い、波長の異なるP偏光、S偏光をもつ基本波光L11を出射するようにしたので、各波長変換素子303a,303bにおいて、前記基本波光L11のうち、前記各素子の結晶の誘電主軸z軸方向に応じた偏光成分で、且つ該各素子に備えられたペルチェ素子305a,305bによる制御温度に応じた波長を有する偏光成分のみを波長変換するため、該基本波光L11を各偏光成分毎に、確実に波長変換することが可能となる。従って、当該装置300において、前記基本波光L11として、発振波長が単一であるランダム偏光を出射させ前記各波長変換素子で偏光成分毎に波長変換する場合に比べて、前記基本波光L11として、波長の異なるP偏光、S偏光をもつ基本波光を出射させ各波長変換素子で偏光成分毎に波長変換するほうが、第2高調波の出力安定性・信頼性をさらに向上させることができる。
さらに、波長変換光学装置を、図6に示すように、基本波光L11が波長変換素子303a,303bに入射される前に、偏光ビームスプリッタ306により、P偏光の基本波L22とS偏光の基本波光L24とに分離して波長変換素子に入射するよう構成すれば、波長変換素子を複数個備える構成とした場合においても、ビーム品質が劣化(横モード歪み)することによる変換効率の低下を抑えることが可能となり、より高い変換効率を得ることができる。
なお、前述の説明では、1段目と2段目の波長変換素子303a,303bの素子長が同一であるものとして説明したが、該波長変換素子303a,303bの素子長は異なるものであってもよい。詳述すると、基本波光源から出射される基本波光がランダム偏光の場合は、発振波長が単一波長であり、そのパワー配分がP偏光、S偏光で均等となるため、前記P偏光、S偏光に対応する波長変換素子それぞれの素子長は同一であることが望ましいが、本実施の形態1の基本波光源301である、ファイバレーザ光源201から出射される基本波光のように、P偏光、S偏光でそれぞれ発振し、偏光成分毎に発振波長が異なる場合は、その偏光成分に応じてパワー配分が異なるため(具体的には、P偏光のパワー:S偏光のパワー=10:7〜10:9程度)、事情が異なる。
このように、前記基本波光のS偏光のパワーがP偏光のパワーに比べて小さい場合は、該S偏光のパワーが小さい分だけ、S偏光を変換する波長変換素子の素子長を長くすることで、波長変換後の第2高調波の出力を1:1に近い割合にすることができる。
例えば、本実施の形態1の波長変換光学装置300の構成の場合、P偏光に対応する第1の波長変換素子303aの素子長を20mmとし、S偏光に対応する第2の波長変換素子303bの素子長を25mmとすることで、ほぼ1:1の出力比とすることができた。
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、波長変換光学装置にて波長変換された2本の第2高調波が同じ偏光方向である場合について説明したが、本実施形態2では、該第2高調波の偏光方向が互いに直行する場合の構成について説明する。
以下、本実施の形態2における波長変換光学装置500の構成について、図8を用いて説明する。
本実施の形態2では、前記実施形態1と同様、基本波光源301として、図1(a)に示すYb添加偏波保持ファイバ205を用いたファイバレーザ光源201を使用し、波長変換素子として、光による劣化を防止するために酸化マグネシウムを添加したニオブ酸リチウム結晶(Mg:LN)に、周期的分極反転を形成した擬似位相整合波長変換素子を使用し、該波長変換素子を直列に配置して波長変換する場合を示す。このように、波長変換素子を直列に配置すれば、設置面積を小さくすることが可能となる。
本実施の形態2における、波長変換光学装置500の構成は、図2に示す前記実施の形態1の構成とほぼ同じであるが、偏光ビームスプリッタ306の後段に、基本波光を90度回転させるλ/2波長板307が設置されず、2段目の波長変換素子503が、S偏光の基本波光を波長変換可能なように、該波長変換素子503の結晶の誘電主軸z軸の方向が、1段目の波長変換素子303aの結晶誘電主軸z軸の方向と直交するように、90度回転させた状態で配置されている点で異なる。以下、詳細に説明する。
まず、前記基本波光源301から出射された光L11(1084nm:基本波)を、コリメートレンズ等(図示せず)で800μm程度のビーム径にコリメートし、集光レンズ302aで集光する(ここでは焦点距離30mm)。そして、集光した基本波L11を1段目の波長変換素子303aに入射させ波長変換する。この第1の波長変換素子303aでは、基本波L11の2方向の偏光(P偏光、S偏光)のうち、偏光が結晶の誘電主軸z軸方向と平行なもの(P偏光)について波長変換がなされる。前記第1の波長変換素子303aは、厚さ1mm、長さ25mmのMg:LN(結晶誘電主軸z軸方向が基板の面内に垂直)に、周期Λ=7.38μmで周期的に分極反転構造が形成されており、該波長変換素子303aの両端は、光学研磨が施され、入射側には基本波(波長:1084nm)の低反射コーティングが、出射側には第2高調波(波長:542nm近辺)の低反射コーティングが施されている。また、前記第1の波長変換素子303aは、銅板上に固定されており、ペルチェ素子305aにより温度コントロール(ここでは約22℃)されている。この波長変換素子の温度コントロールにより、位相整合波長の微調整を行う。そして、前記第1の波長変換素子303aにおいては、前記基本波光L11のうち、P偏光の基本波光(パワー換算で入射した光L11の20〜30%)が波長変換され、入射光の半分の波長である緑色光(542nm)になる。
よって、前記第1の波長変換素子303aからは、該波長変換素子303aにおいて波長変換された緑色光と、その残りの基本波光(P偏光の残留基本波光)と、前記第1の波長変換素子303aで波長変換されなかったもう一方の偏光、すなわち結晶の誘電主軸z軸方向と垂直な偏光(S偏光)の基本波光とを含む光L32が出力される。
前記出力光L32は、再コリメートレンズ304aで平行光に戻され、その後、偏光ビームスプリッタ306により、前記P偏光の緑色光と残留基本波光の光路を90度曲げることで、該P偏光の緑色光と残留基本波光とを含む光L33と、前記第1の波長変換素子303aで波長変換されなかったS偏光の基本波光L34とに分離される。
前記偏光ビームスプリッタ306をそのまま通過した前記S偏光の基本波光L34は、集光レンズ302bで集光され、2段目の波長変換素子503に入射される。この第2の波長変換素子503は、前述したように、前記第1の波長変換素子303aを90度回転させた状態、すなわち、入射される光L34(S偏光)の偏光方向と結晶の誘電主軸z軸方向が平行となるように配置されているため、結晶の誘電主軸z軸方向と垂直な偏光(S偏光)について波長変換がなされる。前記第2の波長変換素子503は、厚さ1mm、長さ25mmのMg:LN(結晶の誘電主軸z軸方向が基板の面内に垂直)に、周期Λ=7.38μmで周期的に分極反転構造が形成されており、その他、コーティングの条件、保持方法、及びペルチェ素子305bによる温度コントロール方法は、前記第1の波長変換素子303aと同様である。ただし、前述したように、前記ファイバレーザ光源より出射されるP偏光とS偏光は、若干波長が異なる(図3では、波長差0.5nm)。よって、前記ペルチェ素子305bでは、前記ペルチェ素子305aとは異なる温度(ここでは約28℃)で該第2の波長変換素子303bを温度コントロールする。この結果、位相整合波長の微調整が行なえ、S偏光、P偏光それぞれの位相整合波長を合わせることができる。この第2の波長変換素子503では、S偏光の基本波光(パワー換算で入射した光L34の20〜30%)が波長変換され、該入射光の半分の波長である緑色光(542nm近辺)になる。
前記第2の波長変換素子503からは、該波長変換素子503において波長変換された緑色光と、その残りの基本波光(S偏光の残留基本波光)とを含む光L35が出力される。そしてこの後、前記出力光L35は、再コリメートレンズ304bで平行光に戻され、ダイクロイックミラー308cにより、緑色光L35aとその残留基本波光L35bとが分離される。
一方、前記偏光ビームスプリッタ306でその光路を90度曲げられた前記P偏光の緑色光とその残留基本波光とを含む光L33は、ダイクロイックミラー308aにより、緑色光L33aとP偏光の残留基本波光L33bとに分離される。
そして、前記第1,第2の波長変換素子303a,503それぞれで波長変換したP偏光の緑色光L33a及びS偏光の緑色光L35aは、ダイクロイックミラー308a,308b,308c、及びプリズム309等を用いて、同一出射方向に出射される。
本実施の形態2の波長変換光学装置500の出力特性は、前記実施の形態1の図2で示される波長変換光学装置300の出力特性(図4,5参照)と、ほぼ同じ結果となった。すなわち、本実施の形態2の構成では、従来では結晶破壊が起こるため入射できなかった高い出力の基本波光を、波長変換素子に入射可能となり、この結果、従来結晶破壊が発生していた3Wを超える出力(4W以上)を得るための基本波光を前記波長変換素子でうけた状態においても、紫外光による緑色光の出力飽和や、結晶破壊を回避することができ、結晶破壊なしで高い変換効率を実現できる。また、当該装置500では、後段の波長変換素子503の波長変換が、前段の波長変換素子303aによる波長変換の影響をうけないので、優れた出力安定性・信頼性も得られる。さらに、従来装置100の課題であった、1段目の波長変換素子の出力が著しく低下した場合に、2段目の波長変換素子への基本波入力が急激に上昇し結晶を破壊してしまうという課題も解決することができる。
以上のように、本実施の形態2の波長変換光学装置500によれば、基本波光源301として、互いに直行する2方向の偏光(P偏光,S偏光)を持つ基本波L11を出力するファイバレーザ光源を用い、各波長変換素子303a,503にて、前記基本波L11のP偏光,S偏光を別々に波長変換するようにしたので、各波長変換素子303a,503に対して、従来では結晶破壊が起こるため入射できなかった高い出力の基本波光を入射することが可能となり、結果、結晶破壊なしで高い変換効率を実現でき、また、後段の波長変換素子503における波長変換が、前段の波長変換素子303aの影響をうけないため、優れた出力安定性・信頼性も得ることができる。
また、本実施の形態2では、前記実施の形態1と同様、基本波光源301として、偏波保持ファイバを備えたファイバレーザ光源201を用い、波長の異なるP偏光、S偏光をもつ基本波光L11を出射するようにしたので、各波長変換素子303a,503において、前記基本波光源L11のうち、前記各素子の結晶の誘電主軸z軸方向に応じた偏光成分で、且つ該各素子に備えられたペルチェ素子305a,305bによる制御温度に応じた波長を有する偏光成分のみを波長変換するため、該基本波光L11を各偏光成分毎に確実に波長変換することができる。従って、当該装置において、前記基本波光L11として、発振波長が単一であるランダム偏光を出射させ、前記各波長変換素子で偏光成分毎に波長変換する場合に比べて、前記基本波光L11として、波長の異なるP偏光、S偏光をもつ基本波光を出射させ、各波長変換素子で偏光成分毎に波長変換するほうが、第2高調波の出力安定性・信頼性をさらに向上させることができる。
なお、本実施の形態2では、波長変換素子を直列に配置する場合を一例に挙げて説明したが、前記実施の形態1の図6に示したように、前記波長変換素子を並列に配置し、該波長変換素子の前段で、偏光ビームスプリッタ等により、基本波L11をそれぞれの偏光に分離し、各波長変換素子にP,S偏光のいずれか一方しか入射されないようにしてもよい。このように構成した場合、ビーム品質が劣化することによる変換効率の低下を抑えることが可能となり、より高い変換効率が得られる。
また、本実施の形態2では、1段目と2段目の波長変換素子303a,503の素子長が同一であるものとして説明したが、前記実施の形態1と同様、該波長変換素子303a,503の素子長は異なるものであってもよい。例えば、本実施の形態2の波長変換光学装置500の構成の場合、P偏光に対応する第1の波長変換素子303aの素子長を20mmとし、S偏光に対応する第2の波長変換素子503の素子長を25mmとすることで、ほぼ1:1の出力比とすることができる。
さらに、本実施の形態2においては、第1,第2の波長変換素子303a,503として、結晶の誘電主軸のz軸方向が面内に垂直な基板(z板)を用いた波長変換素子を使用したが、S偏光の基本波光に対応する波長変換素子(ここでは、第2の波長変換素子503)として、誘電主軸のx軸方向が面内に垂直な基板(x板)を用いた波長変換素子を使用してもよい。その場合には、第2の波長変換素子を、その結晶の方位を90°回転させて配置する必要がなくなる。この場合においても、基本波の偏光方向は、波長変換素子のz軸方向と平行方向に入射させる必要があることは、z板を用いた場合と同様である。
(実施の形態3)
前記実施の形態1においては、波長変換素子を2つ備える構成について説明したが、本実施の形態3では、プリズムやミラーなどを用いて、基本波光源からの入射光を折り返すことで、一つの波長変換素子で、前記基本波光をそれぞれの偏光方向(p方向、s方向)において独立して波長変換を行う構成について説明する。このようにすれば、当該装置をより小型化することが可能となる。
以下、本実施の形態3における波長変換光学装置600の構成について、図9を用いて説明する。
本実施の形態3では、前記実施の形態1と同様、基本波光源301として、図1(a)に示すYb添加偏波保持ファイバ205を用いたファイバレーザ光源201を使用し、波長変換素子として、光による劣化を防止するために酸化マグネシウムを添加したニオブ酸リチウム結晶(Mg:LN)に、周期的分極反転を形成した擬似位相整合波長変換素子を使用する。よって、前記基本波光源301から出射される基本波光L11は、前記実施の形態1と同様、波長変換素子に対して、水平な偏光方向の光(P偏光)と垂直な偏光方向の光(S偏光)を持ち、また、該各偏光の発振波長は若干異なっている(図3参照)。
まず、前記基本波光源301から出射された光L11(1084nm:基本波)は、折り返し用のプリズム608を通過し、集光レンズ302aで波長変換素子603内に集光される。そして、前記波長変換素子603では、前記基本波L11の2方向の偏光(P偏光、S偏光)のうち、偏光が結晶の誘電主軸z軸方向と平行なもの(P偏光)について波長変換がなされる。
ここで、前記プリズム608は、各反射面608a、608bに、基本波波長を透過し、第2高調波(緑色光)波長を反射する誘電体多層膜コーティングが施されたものであり、また、前記波長変換素子603は、厚さ1mm、長さ25mmのMg:LN(z軸方向が基板の面内に垂直)に、周期Λ=7.38μmで周期的に分極反転構造が形成されており、該波長変換素子603の両端は、光学研磨が施され、入射側、出射側ともに、基本波(波長:1084nm)及び第2高調波(波長:542nm近辺)の低反射コーティングが施されているものである。また、前記波長変換素子603は、銅板上に固定され、該波長変換素子603を挟むように設けられたペルチェ素子605a,605bにより温度コントロールされる。この波長変換素子の温度コントロールにより、位相整合波長の微調整が行なわれ、特に、本実施の形態3では、前述したように前記波長変換素子603を2つのペルチェ素子605a,605bで挟み、一つの波長変換素子603における温度コントロール領域を上下に2分割することで、P偏光、S偏光それぞれの位相整合波長を合わせることができる。ここでは、前記波長変換素子603の上部が前記ペルチェ素子605aにより約22℃に、また該素子603の下部が前記ペルチェ素子605bにより約28℃にコントロールされる。
従って、まず反射面608aを透過し、該波長変換素子603に入射した前記基本波L11のうち、P偏光の基本波(パワー換算で、該入射した基本波光の20〜30%)が波長変換され、入射光の半分の波長である緑色光(542nm)になる。
よってこの時、前記波長変換素子603からは、該波長変換素子603において波長変換された緑色光と、その残りの基本波光(P偏光の残留基本波光)と、波長変換素子603で波長変換されなかったもう一方の偏光(S偏光)の基本波光とを含む光L42が出力される。
前記出力光L42は、再コリメートレンズ304aでコリメート光に戻された後、λ/2波長板307を通過する。前記λ/2波長板307は、入射されるS偏光の基本波光の偏光方向を、前記波長変換素子603の誘電主軸z軸方向に合わせることが可能なように配置されているので、前記λ/2波長板307は、前記出力光L42に含まれる基本波光の偏光方向を回転させる。具体的には、P偏光の残留基本波光をS偏光の残留基本波光に、またS偏光の基本波光をP偏光の基本波光にする。
前記λ/2波長板307を通過した光L43は、折り返し用のプリズム609に入射される。前記プリズム609は、各反射面609a、609bに、基本波波長を反射し、第2高調波(緑色光)波長を透過する誘電体多層膜コーティングが施されているものである。
よって、前記プリズム609に入射された光L43は、反射面609aにおいて、変換後のP偏光の緑色光L43aのみ透過されて出力され、S偏光の残留基本波光と前記波長変換素子603で波長変換されなかったP偏光の基本波光とを含む光L43bは、前記プリズム609の反射面609a,609bにより反射され、前記波長変換素子603方向に折り返される。
その後、前記出力光L43bは、集光レンズ302bにより、前記波長変換素子603に再び集光される。前述したように、前記波長変換素子603では、P偏光の基本波光について波長変換がなされるため、前記光L43bのうちP偏光の基本波光(パワー換算で、入射した光L43bの20〜30%)について波長変換され、入射光の半分の波長である緑色光(542nm)になる。
よってこの時、前記波長変換素子603からは、該波長変換素子603において波長変換された緑色光と、その残りの基本波光(P偏光の残留基本波光)と、前記S偏光の残留基本波光とを含む光L44が出力される。
前記出力光L44は、プリズム608に入射され、該プリズム608の反射面608bにおいて、基本波光のみ、すなわち前記S偏光の残留基本波光及びP偏光の基本波光を含む光L44bが透過されて出力され、前記P偏光の緑色光L44aは、前記プリズム608の反射面608a,608bで反射され、前記波長変換素子603方向に折り返される。
前記P偏光の緑色光L44aは、前記波長変換素子603、再コリメートレンズ304a、λ/2波長板307を再度通過した後、前記プリズム609に入射され、該反射面609aから透過され出力される。
このように本実施の形態3では、波長変換光学装置600より、同じ偏光方向の緑色光が出射される。
当該波長変換光学装置600の出力特性は、前記実施の形態1の図2で示される波長変換光学装置300の出力特性(図4,5参照)とほぼ同じ結果となる。すなわち、本実施の形態3の構成においては、従来では結晶破壊が起こるため入射できなかった高い出力の基本波光を、波長変換素子に入射することが可能となるため、従来結晶破壊が発生していた3Wを超える出力(4W以上)を得るための基本波光を波長変換素子でうけた状態においても、紫外光による緑色光の出力飽和や、結晶破壊を回避することができ、結晶破壊なしで高い変換効率を実現できる。また、当該装置600によれは、前記波長変換素子603において行なわれる2回目の波長変換が、1回目の波長変換の影響をうけないので、優れた出力安定性・信頼性も得られる。
さらに、本実施の形態3では、前記実施の形態1と同様、基本波光源301として、偏波保持ファイバを備えたファイバレーザ光源201を用い、基本波光L11として、波長の異なるP偏光、S偏光を出射するようにしているので、波長変換素子603において、前記基本波光源L11のうち、前記素子の結晶の誘電主軸z軸方向に応じた偏光成分で、且つ該素子の上下に備えられたペルチェ素子605a,605bによる制御温度に応じた波長を有する偏光成分のみを波長変換するため、一つの波長変換素子603において、該基本波光L11を、確実に各偏光成分毎に独立して波長変換することが可能となる。従って、当該装置600において、前記基本波光L11として、発振波長が単一であるランダム偏光を出射させ、前記波長変換素子にて偏光成分毎に波長変換する場合に比べて、前記基本波光L11として、波長の異なるP偏光、S偏光をもつ基本波光を出射させ、波長変換素子にて偏光成分毎に波長変換するほうが、第2高調波の出力安定性・信頼性をさらに向上させることができる。また、本実施の形態3では、一つの波長変換素子603の上下にペルチェ素子605a,605bを備え、各ペルチェ素子にて異なる設定温度で温度制御を行う構成であるため、各ペルチェ素子605a,605bの設定温度が大きく異なると温度制御しにくいが、本実施の形態3では、基本波光源としてファイバレーザ光源を用いており、発振波長差が小さいP,S偏光を出射することができるので、各ペルチェ素子605a,605bによる波長変換素子603内の温度制御が行いやすい効果も得られる。
なお、前述した説明では、波長変換素子603と、折り返し用プリズム608,609とを別に配置する例を説明したが、図10に示すように、該折り返し用プリズムと波長変換素子の結晶とを一体化した構成にすることも可能である。以下、その構成について、図10を用いて説明する。
図10は、本実施の形態3の波長変換光学装置において、波長変換素子として、結晶と折り返し用プリズムとを一体にした素子を用いた波長変換光学装置の構成を示す図である。ここでも、基本波光源301として、前述したファイバレーザ光源201を用いる。
本実施の形態で用いられる前記波長変換素子706は、酸化マグネシウムを添加したニオブ酸リチウム結晶(Mg:LN)で、基板上に、分極反転部703とプリズム部708,709、及びλ/2波長板307が形成されている。そして、前記プリズム部708の各反射面708a,708bには、基本波波長を透過し、第2高調波(緑色光)波長を反射する誘電体多層膜コーティングが施されており、また、前記プリズム部709の各反射面709a,709bには、基本波波長を反射し、第2高調波(緑色光)波長を透過する誘電体多層膜コーティングが施されている。
また、前述した図9に示す構成と同様、前記波長変換素子706は、銅板上に固定されており、分極反転部703を挟むように設けられたペルチェ素子705a,705bにより、温度コントロールされる。この波長変換素子の温度コントロールにより、位相整合波長の微調整が行なわれ、前述した実施の形態3と同様、該波長変換素子706の分極反転部703を2つのペルチェ素子705a,705bで挟み、一つの波長変換素子703における温度コントロール領域を上下に2分割することで、P偏光、S偏光それぞれの位相整合波長を合わせることができる。ここでは、前記波長変換素子603の上部が前記ペルチェ素子605aで約22℃に、また該素子603の下部が前記ペルチェ素子605bで約28℃にコントロールされる。
さらに、図10のような構成にした場合、集光レンズ302は、波長変換素子706の外に置かれる。集光レンズ302の焦点距離は、該素子706内を通過する光路の長さで決定される。例えば、素子706の長さは10mmであっても、折り返し分も含めた光路が25mmであったならば、前記集光レンズ302の焦点距離は、10mm素子の最適値であるf=20mmではなく、最適値であるf=30mmのものを用いることが望ましい。
なお、本波長変換光学装置700に入射された基本波光L11が第2高調波L53a,L54aに波長変換されるまで流れ、及び本装置700から出射される第2高調波L53a,L54aの出力特性は、前述した実施の形態3と同様であるため、ここでは説明を省略する。
以上のように、本実施の形態3の波長変換光学装置によれば、基本波光源301として、互いに直行する2方向の偏光(P偏光,S偏光)を持つ基本波L11を出力するファイバレーザ光源を用い、該基本波L11を、折り返し用プリズム608,609を用いて、波長変換素子603に折り返し入射させ、前記基本波L11のP偏光,S偏光を別々に波長変換するようにしたので、波長変換素子603に対して、従来では結晶破壊が起こるため入射できなかった高い出力の基本波光を入射することが可能となり、結果、結晶破壊なしで高い変換効率を実現できると共に、優れた出力安定性・信頼性も得ることができる。また、本実施の形態3によれば、当該装置を非常に小型化できるというさらなる効果が得られる。
さらに、本実施の形態3によれば、基本波光源301として偏波保持ファイバを備えたファイバレーザ光源201を用い、発振波長の異なるP偏光、S偏光をもつ基本波光L11を出射させ、一つの波長変換素子603の上下部に設けたペルチェ素子605a,605bによる温度制御の下で波長変換させるようにしたので、該波長変換素子603において、該基本波光L11の各偏光成分を、確実に波長変換することが可能となり、第2高調波の出力安定性・信頼性をより向上することができる。
(実施の形態4)
前記実施の形態3では、一つの波長変換素子で、基本波光源からの基本波光を折り返すことで、該基本波光に対して、それぞれの偏光方向(p方向、s方向)において独立して波長変換した第2高調波が同じ偏光方向である場合について説明したが、本実施形態4では、互いに直行する偏光方向をもつ第2高調波が出力される構成について説明する。
以下、本実施の形態4における波長変換光学装置800の構成について、図11を用いて説明する。
本実施の形態4では、前記各実施の形態と同様、基本波光源301として、図1(a)に示すYb添加偏波保持ファイバ205を用いたファイバレーザ光源201を使用し、波長変換素子として、光による劣化を防止するために酸化マグネシウムを添加したニオブ酸リチウム結晶(Mg:LN)に、周期的分極反転を形成した擬似位相整合波長変換素子を使用する。よって、前記基本波光源301から出射される基本波光L11は、前記実施の形態1と同様、波長変換素子に対して、水平な偏光方向の光(P偏光)と垂直な偏光方向の光(S偏光)を持ち、また、該各偏光の発振波長は若干異なっている(図3参照)。
本実施の形態4における、波長変換光学装置800の構成は、図9に示す前記実施の形態3の波長変換光学装置600の構成とほぼ同じであるが、折り返し用プリズム609の前段に、基本波を90度回転させるλ/2波長板307の代わりに、基本波光と波長変換後の第2高調波の両方を90度回転させる、基本波・第2高調波のλ/2波長板807(以下、単に「第2のλ/2波長板」と称す)を設けると共に、該第2のλ/2波長板807に対して、前記折り返し用プリズム608の反射面608aで折り返された光(図11では光L64a)が入射されないように、該第2のλ/2波長板807が小さく設計されている点で異なる。以下、詳細に説明する。
まず、前記基本波光源301から出射された光L11(1084nm:基本波)は、折り返し用のプリズム608を通過し、集光レンズ302aで波長変換素子603内に集光される。そして、前記基本波L11の2方向の偏光(P偏光、S偏光)のうち、偏光が結晶の誘電主軸z軸方向と平行なもの(P偏光)について波長変換がなされる。
ここで、前記プリズム608は、各反射面608a、608bに、基本波波長を透過し、第2高調波(緑色光)波長を反射する誘電体多層膜コーティングが施されたものであり、また、前記波長変換素子603は、厚さ1mm、長さ25mmのMg:LN(z軸方向が基板の面内に垂直)に、周期Λ=7.38μmで周期的に分極反転構造が形成されており、該波長変換素子603の両端は、光学研磨が施され、入射側、出射側ともに、基本波(波長:1084nm)及び第2高調波(波長:542nm近辺)の低反射コーティングが施されているものである。また、前記波長変換素子603は、銅板上に固定され、該波長変換素子603を挟むように設けられたペルチェ素子605a,605bにより温度コントロールされる。この波長変換素子の温度コントロールにより、位相整合波長の微調整が行なわれ、前述した実施の形態3と同様、前記波長変換素子603を2つのペルチェ素子605a,605bで挟み、一つの波長変換素子603における温度コントロール領域を上下に2分割することで、P偏光、S偏光それぞれの位相整合波長を合わせることができる。ここでは、前記波長変換素子603の上部が前記ペルチェ素子605aにより約22℃に、また該素子603の下部が前記ペルチェ素子605bにより約28℃にコントロールされる。
従って、まず反射面608aを透過し、該波長変換素子603に入射した前記基本波L11のうち、P偏光の基本波(パワー換算で、該入射した基本波光L11の20〜30%)が波長変換され、入射光の半分の波長である緑色光(542nm)になる。
よってこの時、前記波長変換素子603からは、該波長変換素子603において波長変換された緑色光と、その残りの基本波光(P偏光の残留基本波光)と、波長変換素子603で波長変換されなかったもう一方の偏光(S偏光)の基本波光とを含む光L62が出力される。
前記出力光L62は、再コリメートレンズ304aでコリメート光に戻された後、第2のλ/2波長板807を通過する。この第2のλ/2波長板807は、入射されるS偏光の基本波光、及び波長変換後のS偏光の緑色光の偏光方向を回転させて、前記波長変換素子603の誘電主軸z軸方向に合わせることが可能なように配置されているので、前記第2のλ/2波長板807は、前記出力光L62に含まれる基本波光及び第2高調波の偏光方向を回転させる。具体的には、P偏光の緑色光をS偏光の緑色光に、またP偏光の残留基本波光をS偏光の残留基本波光に、さらにS偏光の基本波光をP偏光の基本波光にする。
前記第2のλ/2波長板807を通過した光L63は、折り返し用のプリズム609に入射される。前記プリズム609は、各反射面609a、609bに、基本波波長を反射し、第2高調波(緑色光)波長を透過する誘電体多層膜コーティングが施されているものである。
よって、前記プリズム609に入射された光L63は、反射面609aにおいて、変換後の緑色光L63aのみ透過されて出力され、S偏光の残留基本波光と前記波長変換素子603で波長変換されなかったP偏光の基本波光とを含む光L63bは、前記プリズム609の反射面609a,609bにより反射され、前記波長変換素子603方向に折り返される。
その後、前記出力光L63bは、集光レンズ302bにより、前記波長変換素子603に再び集光される。前述したように、前記波長変換素子603では、P偏光の基本波光について波長変換がなされるため、前記光L63bのうち、P偏光の基本波光(パワー換算で、入射した光L43bの20〜30%)について波長変換がなされ、入射光の半分の波長である緑色光(542nm)になる。
よってこの時、前記波長変換素子603からは、該波長変換素子603において波長変換された緑色光と、その残りの基本波光(P偏光の残留基本波光)と、前記S偏光の残留基本波光とを含む光L64が出力される。
前記出力光L64は、プリズム608に入射され、該プリズム608の反射面608bにおいて、基本波光、すなわち前記S偏光の残留基本波光及びP偏光の基本波光を含む光L63bのみが透過されて出力され、前記P偏光の緑色光L63aは、前記プリズム608の反射面608a,608bで反射され、前記波長変換素子603方向に折り返される。
前記P偏光の緑色光L63aは、前記波長変換素子603及び再コリメートレンズ604aを再度通過した後、前記プリズム609に入射され、該反射面609aから透過され出力される。
このように本実施の形態4では、波長変換光学装置800より、異なる偏光方向の緑色光が出射される。
当該波長変換光学装置800の出力特性は、前記実施の形態2の図8で示される波長変換光学装置500の出力特性(図4,5参照)とほぼ同じ結果となる。すなわち、本実施の形態4の構成においては、従来では結晶破壊が起こるため入射できなかった高い出力の基本波光を、波長変換素子に入射することが可能となり、この結果、従来結晶破壊が発生していた3Wを超える出力(4W以上)を前記波長変換素子で得た状態においても、紫外光による緑色光の出力飽和や、結晶破壊を回避することができ、結晶破壊なしで高い変換効率を実現できる。また、すぐれた出力安定性・信頼性も得られる。さらに、本実施の形態4では、前記実施の形態3と同様、基本波光源301として、偏波保持ファイバを備えたファイバレーザ光源201を用い、発振波長の異なるP偏光、S偏光をもつ基本波光L11を出射させ、一つの波長変換素子603の上下部に設けたペルチェ素子605a,605bによる温度制御の下で、波長変換させるようにしたので、該波長変換素子603において、該基本波光L11を各偏光成分毎に確実に波長変換することが可能となるため、当該装置800において、発振波長が単一であるランダム偏光の基本波光を出射させて該波長変換素子603にて偏光成分毎に波長変換する場合に比べて、第2高調波の出力安定性・信頼性を向上させることができる。
なお、前述した説明では、波長変換素子603と、折り返し用プリズム608,609とを別に配置する例を説明したが、前記実施の形態3において図10を用いて説明したように、該折り返し用プリズムと波長変換素子の結晶とを一体化した構成にすることも可能である。このようにすれば、当該波長変換光学装置を更に小型化できる効果が得られる。
なお、前述した各実施の形態においては、赤外光(1084nm)から緑色光(542nm)を発生させる場合を例に挙げて説明をしたが、これに限るものではなく、ファイバレーザ光源から出射させる基本波の波長を変えれば、黄緑光(560nm)〜青色光(480nm)の光を発生させることが可能である。
また、前述した各実施の形態では、基本波光源301としてファイバレーザ光源を用いる場合を一例に挙げたが、これに限るものではない。他の光源を使用した場合は、黄緑光(560nm)〜近紫外光(380nm)の光を発生させることが可能である。
また、前記各実施の形態においては、前記波長変換素子として、酸化マグネシウム(MgO)を添加したニオブ酸リチウム(Mg:LiNbO3)を使用する場合を例に挙げたが、その他に、ノンドープニオブ酸リチウム(LiNbO3:LN)、ノンドープタンタル酸リチウム(LiTaO3:LT)、あるいは、ZnOを添加したニオブ酸リチウム(Zn:LiNbO3)、MgOないしZnOを添加したタンタル酸リチウム(Mg:LiTaO3、Zn:LiTaO3)、リン酸チタニルカリウム(KTiOPO4:KTP)、希土類カルシウムオキシボレート類(ReCa4O(BO33、Re:希土類元素)、水晶などを用いることも可能である。ただし、各実施の形態の波長変換光学装置に示すように、ファイバレーザ光源から出射された基本波光L11より、黄緑色光(560nm)から青色光(480nm)を発生させる場合、その変換効率や光による結晶の劣化の耐性を鑑みれば、MgOを添加したニオブ酸リチウム(Mg:LiNbO3)を用いるのがもっとも望ましい。
ところで、前述した各実施の形態の波長変換光学装置では、基本波光源としてファイバレーザ光源を用いているため、各偏光で発振波長が若干異なり、それぞれの波長について波長変換することにより、複数波長の第2高調波を得ることが可能となる。よって、各実施の形態で説明した波長変換光学装置を、レーザディスプレイ(画像表示装置)や半導体プロセスの露光用光源として使用した場合、光のコヒーレンス性(単一波長・同位相の光であること)が必要以上に大きいために発生する不要なノイズパターン(スペックルノイズ)を低減することができる。
以下、図12(a)を用いて、前記実施の形態1で説明した波長変換光学装置を、レーザディスプレイ(画像表示光学装置)として使用する場合の構成の一例を説明する。
(実施の形態5)
図12(a)は、同じ偏光方向の2本の第2高調波を出射する波長変換光学装置を、緑色光用光源として使用したレーザディスプレイの構成を示す図である。
本実施の形態5では、レーザディスプレイ900の光源として、赤、緑、青の3色のレーザ光源を用いた。
具体的には、赤色光源901として、波長635nmのGaAs系半導体レーザを、青色光源903として、波長445nmのGaN系半導体レーザを用いた。前記各半導体レーザは、3個〜8個の半導体レーザの出力をバンドルファイバにより1本のファイバ出力で得られるような構造をしており、その波長スペクトル幅は、数nmと非常にブロードなものとなっている。この広いスペクトルによりスペックルノイズの発生を抑制している。
一方、緑色光源902には、本実施の形態1で説明した波長変換光学装置300を用いた。
前記緑色光源902を出射した波長の異なるP偏光の2本の緑色光(第2高調波)は、反射型変調素子905a、905bに送られ、空間変調される。そして、ミラー907を介して、合波プリズム908により、それぞれ変調素子904、906で変調された赤色光、青色光と混合され、カラー画像を形成する。形成した画像は、投射レンズ909によりスクリーン910に投影される。
このように、前記緑色光源902の波長の異なる2本の緑色光を、異なる位置から出射し、該波長の異なる緑色光ごとに変調素子905a,905bにて空間変調することで、ヒトの目の感度が高い緑色の解像度を向上することができ、この結果、画像表示光学装置の高画質化が可能となる。
図13は、1つのレーザ光源から出射される2本の光のピーク波長差と、スペックルノイズ明暗差との関係を示す図である。なお、図中において、「単色」とは、光源より単一波長、単一偏光の光が出射される場合を意味し、ここでは、その際のスペックルノイズ明暗差を1としている。また、図13は同じスクリーンで比較した結果をプロットした。
図13に示すように、従来のレーザ光源から出射される光が単色であった場合、画像表示光学装置にスペックル除去光学系(図示せず)を設けたとしても、スペックルノイズ明暗差を0.07〜0.08にするのが限界だったが、本願のように、レーザ光源より波長の異なる2本の光を出射するようにすれば、スペックル除去光学系として、より構成が単純な揺動拡散板を用いたスペックル除去機構を用いた場合であっても、単色の場合に比べて、スペックルノイズ明暗差を小さくすることができる。
また、スペックルノイズには、光の偏光により異なったパターンを持つという特徴がある。従って、図12(b)に示すように、レーザ光源として異なる偏光を出射する波長変換光学装置(例えば実施の形態2に示したもの)を用いるようにすれば、画像の投影面で異なるスペックルノイズを重ね合わせることになるので、不要なノイズパターン(スペックルノイズ)をさらに低減することが可能となる。
すなわち、図13に示すように、従来のレーザ光源から出射される光が単色であった場合、画像表示光学装置にスペックル除去光学系(図示せず)を設けたとしても、スペックルノイズ明暗差を0.07〜0.08にするのが限界だったが、レーザ光源より波長も偏光も異なる2本の光を出射するようにすれば、単色の場合に比べてスペックルノイズ明暗差をかなり小さいものにでき、さらに、スペックル除去光学系(図示せず)を設けるようにすれば、該スペックルノイズ明暗差を肉眼で分からないレベルである0.04程度(波長差が0.27nmである場合)にすることが可能となった。
なお、本実施の形態5では、スクリーンの前面から画像を投影する前面投射型の画像表示光学装置を例に挙げて説明したが、スクリーンの背後から画像を投影する背面投射型の構成をとることも可能である。
さらに、図12では、空間変調素子として、超小型ミラーが集積された反射型空間変調素子を用いたが、液晶を用いた変調素子やガルバノミラーを用いることも、もちろん可能である。
なお、以上の各実施の形態に例示した構造はあくまでも一例であり、他の態様をとることが可能であることは言うまでもない。
本発明は、高い信頼性・高い出力安定性を持つ波長変換光学装置、レーザ光源、及び高画質の画像表示光学装置を実現するものとして有用である。
図1は、本発明の実施の形態1の波長変換光学装置に用いられるファイバレーザ光源の構成を示す模式図である。 図2は、本発明の実施の形態1における波長変換光学装置の構成を示す図である。 図3は、本発明の実施の形態1の波長変換光学装置に用いられるファイバレーザ光源から出射される基本波の波長スペクトルを示す図である。 図4は、波長変換素子が1段構成である波長変換光学装置の出力特性と、本実施の形態1の波長変換光学装置の出力特性とを比較した図である。 図5は、波長変換素子が2段構成である従来の波長変換光学装置の出力特性(図(a))と、本実施の形態1の波長変換光学装置の出力特性(図(b))とを示すプロット図である。 図6は、本発明の実施の形態1の、波長変換素子が並列に設けられた波長変換光学装置の構成を示す図である。 図7は、波長変換素子が1段構成である波長変換光学装置の出力特性と、本実施の形態1の波長変換素子が直列に設けられた波長変換光学装置の出力特性と、本実施の形態1の波長変換素子が並列に設けられた波長変換光学装置の出力特性とを比較した図である。 図8は、本発明の実施の形態2ににおける波長変換光学装置の構成を示す図である。 図9は、本発明の実施の形態3における波長変換光学装置の構成を示す図である。 図10は、本発明の実施の形態3の波長変換光学装置の各構成部が一体に構成された構成を示す図である。 図11は、本発明の実施の形態4の波長変換光学装置の構成を示す図である。 図12は、本発明の波長変換光学装置を用いた画像表示装置の一例を示した図である。 図13は、一光源より波長の異なる2本の光が出射された際のピーク波長差と、スペックルノイズ明暗差との関係を示す図である。 図14は、従来の、波長変換素子が2段構成である波長変換光学装置の構成を示す図である。
符号の説明
100,300,400,500,600,700,800 波長変換光学装置
101,301 基本波光源
102a,102b 波長変換部分
103a,103b 分離ミラー
104 ビーム径変換機構
201,201’ ファイバレーザ光源
202 励起用半導体レーザ光源
203 ポンプコンバイナ
204a,204b ファイバグレーティング
205 Yb添加ダブルクラッド偏波保持ファイバ
207 偏光単一化機構
302a,302b 集光レンズ
303a 第1の波長変換素子
303b,503 第2の波長変換素子
304a,304b 再コリメートレンズ
305a,305b,605a,605b,705a,705b ペルチェ素子
306 偏光ビームスプリッタ
307 基本波の1/2波長板
308a,308b,308c ダイクロイックミラー
309 出射プリズム
603,706 波長変換素子
608,609 折り返し用プリズム
608a,608b,609a,609b,708a,708b,709a,709b 反射面
703 分極反転部
708,709 プリズム部
807 基本波・第2高調波の1/2波長板
900 画像表示光学装置
901 赤色光源
902,902,902’ 緑色光源
903 青色光源
904 赤色用空間変調素子
905a,905b 緑色用空間変調素子
906 青色用空間変調素子
907 ミラー
908 合波プリズム
909 投射レンズ
910 スクリーン

Claims (9)

  1. 基本波光を出力する基本波光源と、
    前記基本波光源からの基本波光を波長変換して高調波を発生させる分極反転部を含む波長変換機構と、を備え、
    前記波長変換機構は、前記基本波光を、互いに垂直な2方向の偏光成分毎に波長変換する、
    ことを特徴とする波長変換光学装置。
  2. 請求項1に記載の波長変換光学装置において、
    前記基本波光の発振波長が、前記2方向の偏光成分で異なる、
    ことを特徴とする波長変換光学装置。
  3. 請求項1に記載の波長変換光学装置において、
    前記波長変換機構から出射される2本の高調波光の偏光方向が同じである、
    ことを特徴とする波長変換光学装置。
  4. 請求項1または請求項2に記載の波長変換光学装置において、
    前記波長変換機構から出射される2本の高調波光の偏光方向が互いに垂直である、
    ことを特徴とする波長変換光学装置。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の波長変換光学装置において、
    前記基本波光、あるいは該基本波光と前記波長変換機構で波長変換された高調波とを含む光を、その偏光成分毎に分離する偏光分離機構を備える、
    ことを特徴とする波長変換光学装置。
  6. 請求項1に記載の波長変換光学装置において、
    前記波長変換機構は、
    該波長変換機構の同一基板内に、前記分極反転部と、該分極反転部の、前記基本波光の入射側に設けられた該基本波光を透過する第1の反射鏡と、該分極反転部で波長変換された高調波の出射側に設けられた該高調波を透過する第2の反射鏡と、前記分極反転部を通過した基本波の偏光を転換する波長板と、を備え、さらに、
    前記分極反転部の温度制御を行なう2つの温度調節機構、を備える、
    ことを特徴とする波長変換光学装置。
  7. 請求項1または請求項6に記載の波長変換光学装置において、
    前記波長変換機構の前記分極反転部は、MgO、ZnOを添加した、ニオブ酸リチウム(LiNbO:LN)、あるいはタンタル酸リチウム(LiTaO:LT)の、少なくとも一部分を分極反転することにより形成されている、
    ことを特徴とする波長変換光学装置。
  8. 請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の波長変換光学装置と、
    前記波長変換光学装置で変換され出射される2本の高調波それぞれを変調する変調機構と、
    前記変調機構により変調された光を投影する投影光学系と、を備える、
    ことを特徴とする画像表示光学装置。
  9. 請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の波長変換光学装置を具備したことを特徴とするレーザ光源。
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