JPWO2006013663A1 - ロッカーアーム用軸受 - Google Patents

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Abstract

ロッカーアーム用軸受(50)は、エンジンのバルブ(9)とカム(6)との間に介在して吸排気を調節するロッカーアーム(1)に固定された内輪に相当する軸(2)と、内輪(2)の外方に位置してカム(6)と接触する外輪4と、外輪(4)と内輪(2)との間に位置する複数の針状ころ(3)とを備え、外輪(4)が窒素富化層を有し、その窒素富化層におけるオーステナイト結晶粒の粒度番号が10番を超える範囲にあり、かつ外輪外径の表面(4a)にランダムな微小凹形状のくぼみを有する。

Description

本発明は、自動車エンジンのインテイクバルブやエグゾーストバルブの開閉に用いられるロッカーアームに使用されるロッカーアーム用軸受に関し、より具体的にはピーリング寿命の長いロッカーアーム用軸受に関するものである。
転がり軸受をロッカーアームに組み込み、その外輪外径をエンジンのカムと転がり接触させることにより動弁機構で発生するフリクションを低減させ、燃費向上を図る技術は広く知られている。最近のロッカーアーム用転がり軸受は、上記エンジンのインテイクバルブやエグゾーストバルブの開閉に用いられる場合、総ころタイプが採用され、高速、高荷重用途で使用されることが多くなっている。これら保持器の無い総ころタイプの軸受では、とくに、ころ同士の干渉が生じたり、スムーズにころの位置が制御されず、ころのスキューが起こりやすい。また、潤滑油が軸受内部に円滑に供給されず潤滑条件が悪い事態が生じる。この結果、滑り発熱、局部的な面圧上昇、潤滑不足等が発生する。このため、計算上は大きな負荷容量を持ち、また寿命も要求寿命に対して充分あるにもかかわらず、それより短期間の使用で表面損傷(ピーリング、スミアリング、表面起点型剥離)や内部起点型剥離が発生し、軸受として機能しなくなる場合が多い。
上記エンジンのインテイクバルブやエグゾーストバルブの開閉に用いられるロッカーアーム用軸受のように、その外輪がカムと転がり接触する用途では、従来は、主に外輪の外周部に着目し、外周部の改良を目的とした開発がなされてきた。たとえばショットピーニングなどの加工による圧縮残留応力付与層、残留オーステナイト含有層、焼入れ硬化層を表面から内部に順に設けることなどが知られている(特開平2−168022号公報(特許文献1))。
特開平2−168022号公報
カム部分はエンジン部品の中でも潤滑条件が厳しく、カム形状からくる軸受外輪の回転速度の変化や作用荷重の急激な変動等が生じ、純転がり運動は不可能で、滑りを伴う接触をする。さらに高速化、小型化、高応力化の要求が出され、使用環境はさらに過酷なものとなっている。このため、上記の対策をとった後でも、ロッカーアーム用軸受の外輪外径にピーリング損傷が発生するという問題がある。本発明の目的は、使用条件の過酷化が進むなかで、より一層確実にピーリング損傷を抑制することができる外輪を含むロッカーアーム用軸受を提供することにある。
本発明のロッカーアーム用軸受は、エンジンのバルブとカムとの間に介在して吸排気を調節するロッカーアームに固定された内輪に相当する軸と、前記内輪の外方に位置して前記カムと接触する外輪と、前記外輪と内輪との間に位置する複数の転動体とを備える。そして、外輪が窒素富化層を有し、その窒素富化層におけるオーステナイト結晶粒の粒度番号が10番を超える範囲にあり、かつ外輪外径の表面にランダムな微小凹形状のくぼみを有する。
上記とは別の本発明のロッカーアーム用軸受は、エンジンのバルブとカムとの間に介在して吸排気を調節するロッカーアームに固定された内輪に相当する軸と、内輪の外方に位置してカムと接触する外輪とを備えたロッカーアーム用軸受である。このロッカーアーム用軸受では、外輪が窒素富化層を有し、その窒素富化層におけるオーステナイト結晶粒の粒度番号が10番を超える範囲にあり、かつ外輪外径の表面にランダムな微小凹形状のくぼみを有する。このロッカーアーム用軸受は、転動体を含まず、内輪と外輪とが直接すべり接触するタイプの軸受である。
また、上記の外輪外径表面のランダムな微小凹形状のくぼみは、面粗さをパラメータRqni値(ISO国際規格)で表示したとき、軸方向面粗さRqni(L)と円周方向面粗さRqni(C)との比Rqni(L)/Rqni(C)が1.0以下であり、さらに面粗さのパラメータSk値が−1.6以下であるようにできる。
上記の構成により、ピーリングの発生を抑制でき、長寿命となる。ここで、Rqniは、JIS規格の二乗平均平方根粗さR(旧RMS)に対応する粗さを表示する。x方向に基準長さlrにわたって山高さZを測定し、R=[(1/lr)∫Z2(x)dx]1/2によって求められる。ただし、積分∫は基準のゼロ位置からlrまで行なわれる。上記Rqni(L)は軸方向に上記の基準長さをとり、Rqni(C)は円周方向、すなわち外輪外径面の周方向に基準長さをとる。比Rqni(L)/Rqni(C)が1.0以下ということは、外径面の周方向に沿って大きい凹凸があることを意味し、たとえば軸方向に沿って溝が形成されていることを意味する。軸方向に沿う微小な溝は油のダムとしての働きがあり、外輪の外径面に油膜を形成しやすくする。
また、面粗さのパラメータSk値は、表面凹凸の分布曲線の歪み度(Skewness)を指し、ガウス分布のような対称形分布のSk値は0である。上記Sk値は、JIS規格の粗さ曲線のスキューネスRsk(ゆがみSk)に対応し、次の式で定義される。
Rsk=(1/R 3)×{(1/lr)∫Z3(x)dx}
ただし、積分∫は基準のゼロ位置からlrまで行なわれる。面粗さのパラメータSk値がマイナスの場合、表面の凹凸形状は、たとえば、頂部が平坦で角が丸みを帯びた凸部、すなわち逆U字状の凸部が連なり、その凸部の間に鋭い谷間が位置する場合などが該当する。(参考のために、Sk値がプラスの場合、表面の凹凸形状は、たとえば、尖った凸部が間隔をあけて位置し、この尖った凸部の間にU字状の谷間が位置する場合などが該当する。)パラメータSk値を円周方向、軸方向とも平均−1.6以下とすることにより表面凹部の形状、分布が加工条件により油膜形成に有利になる。
以上の説明から明らかなように、本発明のロッカーアーム用軸受によれば、ピーリング損傷を抑制することができる外輪を含むロッカーアーム用軸受を提供することにある。
本発明の実施の形態における転がり軸受を含むロッカーアームを示す図である。 図1のII-II線に沿う断面図である。 本発明の実施の形態における転がり軸受を含む別の形式のロッカーアームを示す図である。 本発明の実施の形態における転がり軸受を含むさらに異なる形式のロッカーアームを示す図である。 図4に示す転がり軸受の部分の拡大図である。 本発明の転がり軸受の内輪、外輪および転動体の少なくとも1つに適用される熱処理パターンを示す図である。 本発明の転がり軸受の内輪、外輪および転動体の少なくとも1つに適用される、図6の変形例の熱処理パターンを示す図である。 本発明の転がり軸受の部品のオーステナイト粒(ミクロ組織)を示す図である。 従来の転がり軸受の部品のオーステナイト粒(ミクロ組織)を示す図である。 図8Aを図解したオーステナイト結晶粒界を示す図である。 図8Bを図解したオーステナイト結晶粒界を示す図である。 本発明例および従来例の軸受の外輪表面のSk値およびRqniの分布を示す図である。 本発明例の外輪表面の周方向の凹凸パターン例である。 本発明例の外輪の油膜形成率を示す図である。 従来例の外輪の油膜形成率を示す図である。
符号の説明
1 ロッカーアーム、2 内輪(ローラ軸)、3 針状ころ(転動体)、4 外輪(ローラ)、4a 外輪の外径表面、5 ロッカーアーム軸(回転軸)、6 カム、7 アジャストねじ、8 ロックナット、9 バルブ、10 ばね、14 内輪支持部、19 軸受メタル、21 駆動ロール、22 案内ロール、23 (3/4)”ボール、31 転動疲労寿命試
験片、50 ロッカーアーム用軸受、52 転動疲労寿命試験機に組み込まれた内輪、53 針状ころ、54 転動疲労寿命試験機に組み込まれた外輪、55,56 転動疲労寿命試験機の荷重負荷部材、T1 浸炭窒化処理温度、T2 焼入れ加熱温度。
次に図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。図1および図2を参照して、揺動部材であるロッカーアーム1は、中央部において軸受メタル19などを介してロッカーアーム軸(回転軸)5に回転自在に支持されている。このロッカーアーム1の他方の端部1bには、アジャストねじ7が螺挿されている。このアジャストねじ7はロックナット8により固定され、その下端において内燃機関の給気弁もしくは排気弁のバルブ9の上端と当接している。このバルブ9はばね10の弾発力で付勢されている。
ロッカーアーム1は、一方の端部1aに転がり軸受50が設けられる。転がり軸受50の内輪に相当する軸2は二股状に形成された内輪支持部14に支持されている。この二股状の内輪支持部14に、内輪に相当する軸2の両端が圧入、両端かしめまたは止め輪により固定されている。この内輪2の外周面中央部には、針状ころ3を介して回転自在に、外輪を構成するローラ4が支持されている。内輪2と外輪4との間に介在する軸受を構成するのは針状ころ3である。すなわち、内輪2と外輪4との間に転動体(針状ころ)3が介在する。針状ころ3の軸線方向は、内輪の軸線に平行に配置されている。外輪4の外周面は、ばね10の付勢力によりカム軸に設けられたカム6のカム面に当接されている。
ここで、内輪2と、針状ころ3よりなる転動体と、外輪4とにより構成される転がり軸受がロッカーアーム用総ころ軸受として用いられている。一般に、保持器が用いられないころ軸受は総ころ軸受と呼称される。上記のロッカーアーム用総ころ軸受は、カム6と接触しながら回転するので、外輪4にはカム6の押付け力と衝撃力とが作用する。本発明の実施の形態のエンジンのロッカーアームは、上記ロッカーアーム用総ころ軸受を備える部材である。内輪2は、中空軸を採用しているが中実軸であってもよい。
また、上記のように転動体すなわち針状ころを含む構成であってもよいし、針状ころを含まないすべり軸受であってもよい。すなわち、針状ころを含まず、内輪に相当する軸と、外輪とが直接接触して内輪と外輪とがすべり接触するタイプのものであってもよい。この場合、コンパクト化でき、かつ部品数が少ないために安価に軽量化することができる。
外輪4が窒素富化層を有し、窒素富化層におけるオーステナイト結晶粒の粒度番号が10番を超えるほど微細化されている。さらに外輪4の外径の表面4aにランダムな微小凹形状のくぼみを形成し、面粗さをパラメータRqni値(ISO国際規格)で表示したとき、軸方向面粗さRqni(L)と円周方向面粗さRqni(C)との比Rqni(L)/Rqni(C)が1.0以下となり、あわせて面粗さのパラメータSk値が−1.6以下となるように表面処理を施している。
パラメータSk、Rqniの測定方法、条件は、たとえば次のように例示することができる。なお、これらのパラメータで表される表面性状を、転がり軸受の転動体や軌道輪といった構成要素について測定する場合、一箇所の測定値でも代表値として信頼できるが、たとえば直径方向に対向する二箇所を測定してもよい。
パラメータ算出規格:JIS B 0601:1994(サーフコム JIS 1994)
カットオフ種別:ガウシアン
測定長さ:5λ
カットオフ波長:0.25mm
測定倍率:×10000
測定速度:0.30mm/s
測定箇所:ころ中央部
測定数:2
測定装置:面粗さ測定器 サーフコム1400A(東京精密株式会社)
次に図3に基づき、本発明の他の実施の形態におけるエンジンのロッカーアーム用軸受を説明する。ロッカーアーム用転がり軸受50は、ロッカーアーム1の一方の端部1bと他方の端部1aとの間に開けられ2つの側壁の間にわたる内輪孔(図示せず)に内輪に相当する軸2を固定し、一方の端部1bにエンジンのバルブ9の端部が当接し、他方の端部1aに図示しないピボットが適合する。ピボット孔15を設けたロッカーアーム1は、ピボットの周りで所定の向きにばね10によって付勢され、カム6から伝達される駆動力を外輪を構成するローラ4で受けて、前記ばねの付勢力に抗してバルブ9を動かす。
図4および図5に基づき、本発明のさらに別の実施の形態におけるエンジンのロッカーアームを説明する。図4において、ロッカーアーム1の中央部に回転軸5が配置され、その周りにロッカーアーム1が回動する。ロッカーアーム1の一方の端部1bは、エンジンのバルブ9の端と当接し、他方の端部1aは、連動棒16の端と当接する。アジャストねじ7はロッカーアームの他方の端部1aと連動棒16との当接位置を調節する機能を有する。
連動棒16の下端に位置する中空の軸受取付部16aに、ロッカーアーム用転がり軸受(ロッカーアーム用総ころ軸受)50が、取付部材17によって取り付けられる。カム6はこの総ころ軸受の外輪4に当接して駆動力を連結棒に伝達する。
図3、図4および図5に示すロッカーアーム用軸受の外輪4においても、窒素富化層、オーステナイト結晶粒、および面粗さは、図1、2の実施の形態と同じように形成されている。外輪4の窒素富化層におけるオーステナイト粒径の粒度番号を10番超えとするほど微細化するために、これから説明する低温2次焼入れ法の熱処理が施される。さらに外輪4の外径の表面4aにランダムな微小凹形状のくぼみを形成し、面粗さをパラメータRqni値(ISO国際規格)で表示したとき、軸方向面粗さRqni(L)と円周方向面粗さRqni(C)との比Rqni(L)/Rqni(C)が1.0以下となり、あわせて面粗さのパラメータSk値が−1.6以下となるように表面処理が施されている。
次に、上記ロッカーアーム用軸受の外輪(ローラ)に行なう浸炭窒化処理を含む熱処理について説明する。図6は1次焼入れおよび2次焼入れを行なう方法を示す熱処理パターンであり、図7は焼入れ途中で材料をA1変態点温度未満に冷却し、その後、再加熱して最終的に焼入れる方法を示す熱処理パターンである。どちらも本発明の実施の態様例である。これらの図において、処理T1では鋼の素地に炭素や窒素を拡散させまた炭素の溶け込みを十分に行なった後、A1変態点未満に冷却する。次に、図中の処理T2において、処理T1よりも低温に再加熱し、そこから油焼入れを施す。
上記の熱処理によれば、普通焼入れ、すなわち浸炭窒化処理に引き続いてそのまま1回焼入れするよりも、ロッカーアーム用軸受の外輪の表層部分を浸炭窒化しつつ、割れ強度を向上させ、経年寸法変化率を減少することができる。上記の熱処理方法によれば、オーステナイト結晶粒の粒径を従来の2分の1以下となるミクロ組織を得ることができる。上記の熱処理を受けた外輪は、転動疲労特性が長寿命であり、割れ強度を向上させ、経年寸法変化率も小さくすることができる。
次に図8A、図8B、図9Aおよび図9Bに基づき軸受の外輪のミクロ組織、とくにオーステナイト粒について説明する。これらオーステナイト結晶粒度を示す組織より、従来のオーステナイト粒度はJIS規格の粒度番号で10番以下の番号であり、また本発明による熱処理方法によれば12番の細粒を得ることができる。また、図9Aの平均粒径は、切片法で測定した結果、5.6μmであった。
次に、上記の微小凹形状のくぼみを形成する方法を説明する。上記微小凹形状のくぼみはバレル研磨によって形成し、研磨機の回転速度、加工時間、ワーク投入量、チップの種類、大きさ等を選ぶことにより所望の表面性状を得ることができる。ショットブラスティング等を用いることもできる。
次に図10に基づいて、上記の方法により形成した、本発明例の軸受の外輪外径面の軸方向および周方向のRqniと、表面粗さのパラメータSk値とについて説明する。図10には、比較のために従来例の対応する測定データを合わせて示している。1つの特徴は、マイナスとなるSk値の絶対値が、本発明例では従来例より大きいことである。また、他の特徴としてRqniの分布がゼロより相当大きい位置にピークを有することであり、意図的に微小な凹凸をつけられたことを表している。図11に示すように、上記の方法により形成した、本発明例の軸受の外輪外径面の周方向に沿った凹凸パターンは丸みを帯びた凸部の間に、深い鋭い溝が配置されており、Sk値が−1.6以下であることに対応している。
上記外輪を含む本発明例の試験軸受を実機試験エンジンに組み込んで試験した場合の外輪外径面における油膜の形成率を、図12および図13に基づいて説明する。両者を比較して分かるように、本発明例では従来例に比較して運転開始時で20%程度油膜形成率が改善される。
(実施例1)
次に、本発明の実施例について説明する。JIS規格SUJ2を用いて、ピーリング試験片を製作した。試験片は外径φ40mm×幅L12の寸法である。各試験軸受の製造履歴は次の通りである。
試験体No.1(本発明例):浸炭窒化処理温度850℃、保持時間150分間。雰囲気は、RXガスとアンモニアガスとの混合ガスとした。浸炭窒化処理温度850℃から1次焼入れを行い、次いで浸炭窒化処理温度より低い温度800℃で20分間加熱して2次焼入を行い、次いで、180℃で90分間焼戻を行った。その後、表面加工処理として特殊なバレル研摩によって所望の仕上げ面を得た。
試験体No.2(比較例1):標準熱処理を行った(RXガス雰囲気中で、加熱温度840℃、保持時間20分で加熱後、焼入れを行い、次いで180℃で90分間焼戻を行った。)。
試験体No.3(比較例2):浸炭窒化処理を行った(RXガスとアンモニアガスとの混合ガス雰囲気中で、加熱温度850℃、保持時間150分間で加熱した後、850℃から焼入れを行い、次いで180℃で90分間焼戻を行った。)。
上記の製造方法で製作した試験体の材質調査結果およびピーリング試験結果を表1および表2に示す。
Figure 2006013663
Figure 2006013663
次にピーリング試験方法について説明する。ピーリング試験条件は表3に示すとおりである。
Figure 2006013663
面粗さの粗いJIS規格SUJ2の標準熱処理品を相手試験片として、上記各試験体と相手試験片を転動接触させた場合に、試験体上に発生するピーリング(微細な剥離の集合体)の面積率を測定して、ピーリング強度とした。ピーリング強度比は標準熱処理品の試験体No.2を1(基準値)として各試験体の結果を比率の逆数で表した。
本発明例の試験体No.1は、標準熱処理品の試験体No.2と比べ、7倍以上のピーリング強度を有しており、浸炭窒化処理品の試験体No.3と比べても5倍以上のピーリング強度を得ることができた。このような大きな寿命改善は、上述のように微細なオーステナイト粒径と、上述した表面凹凸形状の緻密なコントロールによる油膜形成能の向上によってもたらされたものである。
上記において、本発明の実施の形態および実施例について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態および実施例は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
本発明のロッカーアーム用軸受を用いることにより、カムと過酷な条件下で接触する外輪の耐ピーリング性能を大きく向上させることができる。このようなロッカーアーム用軸受の外輪は、低温2次焼入れ処理とバレル研磨処理を施すことにより得ることができるので、今後、益々使用条件が過酷になる自動車エンジンのロッカーアーム等に広範に利用されることが期待される。

Claims (11)

  1. エンジンのバルブ(9)とカム(6)との間に介在して吸排気を調節するロッカーアーム(1)に固定された内輪に相当する軸(2)と、前記内輪(2)の外方に位置して前記カム(6)と接触する外輪(4)と、前記外輪(4)と内輪(2)との間に位置する複数の転動体(3)とを備えたロッカーアーム用軸受(50)において、
    前記外輪(4)が窒素富化層を有し、その窒素富化層におけるオーステナイト結晶粒の粒度番号が10番を超える範囲にあり、かつ外輪外径の表面(4a)にランダムな微小凹形状のくぼみを有する、ロッカーアーム用軸受(50)。
  2. 前記ランダムな微小凹形状のくぼみが形成された前記外輪外径の表面(4a)は、面粗さをパラメータRqni値(ISO国際規格)で表示したとき、軸方向面粗さRqni(L)と円周方向面粗さRqni(C)との比Rqni(L)/Rqni(C)が1.0以下であり、さらに面粗さのパラメータSk値が−1.6以下である、請求項1に記載のロッカーアーム用軸受(50)。
  3. 前記ロッカーアーム(1)はその一方の端部(1a)と他方の端部(1b)との間に位置する回転軸(5)に回転自在に支持され、前記一方の端部(1a)は二股状の内輪支持部(14)を有し、その二股状の内輪支持部(14)に前記内輪(2)が固定され、前記他方の端部(1b)には、前記エンジンのバルブ(9)の端部が当接する、請求項1に記載のロッカーアーム用軸受(50)。
  4. 前記ロッカーアーム(1)の一方の端部(1b)に前記エンジンのバルブ(9)の端部が当接し、前記他方の端部(1a)にピボットが適合し、前記ロッカーアーム(1)の一方の端部(1b)と他方の端部(1a)との間の、対向する2つの側壁の内輪孔にわたって前記内輪(2)が固定される、請求項1に記載のロッカーアーム用軸受(50)。
  5. ロッカーアーム(1)がその一方の端部(1b)と他方の端部(1a)との間に位置する回転軸(5)に回転自由に支持され、その一方の端部(1b)に前記エンジンのバルブ(9)の端部が当接し、前記他方の端部(1a)に、前記カム(6)からの応力を伝達する連動棒(16)の一方の端が当接し、前記連動棒(16)の他方の端部に前記ロッカーアーム用転がり軸受(50)の内輪(2)が固定され、その外輪(4)が前記カム(6)と接触する、請求項1に記載のロッカーアーム用軸受(50)。
  6. 前記ロッカーアーム用軸受(50)が総ころ形式のニードル軸受である、請求項1に記載のロッカーアーム用軸受(50)。
  7. エンジンのバルブ(9)とカム(6)との間に介在して吸排気を調節するロッカーアーム(1)に固定された内輪に相当する軸(2)と、前記内輪(2)の外方に位置して前記カム(6)と接触する外輪(4)とを備えたロッカーアーム用軸受(50)において、
    前記外輪(4)が窒素富化層を有し、その窒素富化層におけるオーステナイト結晶粒の粒度番号が10番を超える範囲にあり、かつ外輪外径の表面(4a)にランダムな微小凹形状のくぼみを有する、ロッカーアーム用軸受(50)。
  8. 前記ランダムな微小凹形状のくぼみが形成された前記外輪外径の表面(4a)は、面粗さをパラメータRqni値(ISO国際規格)で表示したとき、軸方向面粗さRqni(L)と円周方向面粗さRqni(C)との比Rqni(L)/Rqni(C)が1.0以下であり、さらに面粗さのパラメータSk値が−1.6以下である、請求項7に記載のロッカーアーム用軸受(50)。
  9. 前記ロッカーアーム(1)はその一方の端部(1a)と他方の端部(1b)との間に位置する回転軸(5)に回転自在に支持され、前記一方の端部(1a)は二股状の内輪支持部(14)を有し、その二股状の内輪支持部(14)に前記内輪(2)が固定され、前記他方の端部(1b)には、前記エンジンのバルブ(9)の端部が当接する、請求項7に記載のロッカーアーム用軸受(50)。
  10. 前記ロッカーアーム(1)の一方の端部(1b)に前記エンジンのバルブ(9)の端部が当接し、前記他方の端部(1a)にピボットが適合し、前記ロッカーアーム(1)の一方の端部(1b)と他方の端部(1a)との間の、対向する2つの側壁の内輪孔にわたって前記内輪(2)が固定される、請求項7に記載のロッカーアーム用軸受(50)。
  11. ロッカーアーム(1)がその一方の端部(1b)と他方の端部(1a)との間に位置する回転軸(5)に回転自由に支持され、その一方の端部(1b)に前記エンジンのバルブ(9)の端部が当接し、前記他方の端部(1a)に、前記カム(6)からの応力を伝達する連動棒(16)の一方の端が当接し、前記連動棒(16)の他方の端部に前記ロッカーアーム用転がり軸受(50)の内輪(2)が固定され、その外輪(4)が前記カム(6)と接触する、請求項7に記載のロッカーアーム用軸受(50)。
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