JPWO2005124980A1 - リニアモータの製造方法 - Google Patents
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Abstract
リニアモータの製造方法は、磁石12をパイプ状部材11に配置する際にパイプ状部材11の周囲に軟磁性体70を配置し、パイプ状部材11内に複数の磁石12を、互いに隣り合う磁石12の同じ磁極が対向する方向で直列状に配置し、パイプ状部材11の端部から磁石12を固定した後、軟磁性体70を排除して固定子10を作成し、固定子10の外周面に可動子20を移動可能に配置する。これにより、部品点数を削減した安価な構造であり、しかも特別な工具を用いることなくパイプ状部材内に複数の磁石を容易に組み付けることが可能である。
Description
この発明は、リニアモータに関し、特に、複数の磁石を直列配置した固定子と、この固定子の外周面に対向配置され移動可能な可動子とからなるリニアモータの製造方法に関するものである。
例えば、OA機器における印字ヘッドや露光走査ヘッド、医療機器における露光走査手段等における直線移動精度が要求される部位には、リニアモータを利用することが提案されている。
中でも、特開平10−313566号に代表されるシャフト型リニアモータは従来の平板状磁石を用いたリニアモータに比べ、速度性能及び省スペースといった面でOA機器等における精密搬送に適しているが、図28に示すように、中心に貫通孔のある円筒磁石100を使い、センタ軸101を用いてパイプ102に収納されて隣り合う円筒磁石100を密着させている。このようにして作成した固定子110に可動子120を移動可能に配置している。このような構造では、一般的に、円筒磁石100は貫通孔を設けるために高価であり、かつセンタ軸101を用いるため部品点数が増え、コスト面で不利となっている。
特開平10−313566号公報(第1頁〜第5頁、図1〜図5)
従来のリニアモータは、円筒磁石を用いているので高価である。即ち、磁石は円筒にするため貫通孔を開けねばならず、磁石の製造コストが高価になる。また、複数の磁石を反発し合う方向に配列するために、センタ軸を用いており、センタ軸を用いる分部品点数が増えて、高価となる。
このため、例えばセンタ軸を用いないで複数の磁石を配置すると、部品点数を削減した安価な構造になるが、複数の磁石を組み付ける際に磁石の反発力が強く、特別な工具を用いる必要がある等の問題がある。
この発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、部品点数を削減した安価な構造であり、しかも特別な工具を用いることなくパイプ状部材内に複数の磁石を容易に組み付けることが可能なリニアモータの製造方法を提供することを目的としている。
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
(1)磁石をパイプ状部材に配置する際に前記パイプ状部材の周囲に軟磁性体を配置し、
前記パイプ状部材内に複数の磁石を、互いに隣り合う前記磁石の同じ磁極が対向する方向で直列状に配置し、
前記パイプ状部材の端部から前記磁石を固定した後、前記軟磁性体を排除して固定子を作成し、
前記固定子の外周面に可動子を移動可能に配置することを特徴とするリニアモータの製造方法である。
前記パイプ状部材内に複数の磁石を、互いに隣り合う前記磁石の同じ磁極が対向する方向で直列状に配置し、
前記パイプ状部材の端部から前記磁石を固定した後、前記軟磁性体を排除して固定子を作成し、
前記固定子の外周面に可動子を移動可能に配置することを特徴とするリニアモータの製造方法である。
(2)前記パイプ状部材は、一端部に前記パイプ状部材内から前記磁石が抜けることを規制する抜け止構造を有することを特徴とする(1)に記載のリニアモータの製造方法である。
(3)前記可動子は、電磁コイルと、この電磁コイルの外周面の少なくとも一部を保持するコイル保持部材を有することを特徴とする(1)に記載のリニアモータの製造方法である。
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
(1)に記載の発明によれば、磁石をパイプ状部材に配置する際にパイプ状部材の周囲に軟磁性体を配置することで、磁石の反発力を弱めることができる。このため、特別な工具を用いることなく、パイプ状部材内に複数の磁石を、互いに隣り合う磁石の同じ磁極が対向する方向で直列状に容易に配置することができ、センタ軸を用いない分部品点数を削減した安価な構造である。
(2)に記載の発明によれば、パイプ状部材が一端部に抜け止構造を有することから、他端部側から磁石を組み付けて保持することができる。
(3)に記載の発明によれば、可動子が電磁コイルの外周面の少なくとも一部を保持するコイル保持部材を有することで、電磁コイルと磁石との間の距離を近くでき、簡単な構造かつ低コストで推力を向上することができる。
以下、この発明のリニアモータ及びリニアモータの製造方法の実施の形態について説明するが、この発明は、この実施の形態に限定されない。また、この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
図1はリニアモータを示す図、図2はリニアモータの一端部の断面図、図3はリニアモータの他端部の断面図である。
この実施の形態のリニアモータ1は、図示しない保持部材に固定された固定子10と、固定子10の外周面に沿って直線移動する可動子20とから構成されている。
固定子10は、パイプ状部材11と、パイプ状部材11内に収納される複数の磁石12とからなる。パイプ状部材11内に直列状に配置された複数の磁石12は、隣り合う磁石が密着するように隙間なく配列されている。
可動子20は、電磁コイル21と、電磁コイル21の外周面の少なくとも一部を保持するコイル保持部材22を有する。電磁コイル21は、複数の相からなるコイル群であるが、これに限定されない。また、この実施の形態では、3相からなるコイル群が用いられている。
電磁コイル21の内周面と、パイプ状部材11の外周面とは微小な間隙に保持されている。パイプ状部材11と電磁コイル21は摺動しても、摺動しなくてもどちらでもよい。また、電磁コイル21の巻き数の決め方は、得たい推力以上となるように、かつリニアモータの電圧降下と駆動回路での電圧降下が電源電圧以下となるように、適当な巻き数、巻き線径を決めることが好ましい。
パイプ状部材11は、一端部11aにパイプ状部材11内から磁石12が抜けることを規制する抜け止構造30を有し、他端部11bに取付ブロック部材31を有する。この実施の形態の抜け止構造30は、パイプ状部材11の一端部11aに蓋80を一体に形成して密閉する構造であるが、あるいは別部材により蓋を形成して溶接や接着等で接合固定して密閉してもよい。また、抜け止構造30は、磁石12がパイプ状部材11から抜け出ないようにする構造であれば特に限定されない。
取付ブロック部材31は、雌ネジ部31aを有している。複数の磁石12を雌ネジ部31aから挿入し、パイプ状部材11の他端部11bから複数の磁石12を互いに隣り合う磁石12の同じ磁極が対向する方向で直列状に配置して固定子10を収納する。この取付ブロック部材31の雌ネジ部31aに保持部材32の雄ネジ32aを螺着して組み付ける。保持部材32は、頭部に工具係合溝32bを有する。この工具係合溝32bに図示しない工具を係合し、保持部材32を取付ブロック部材31の雌ネジ部31aに螺着することで、磁石12を押し込み保持する。パイプ状部材11の一端部11a側から外周面に可動子20を移動可能に配置する。
このように、一端部11aに抜け止構造を有するパイプ状部材11内に、他端部11b側から複数の磁石12を互いに隣り合う磁石12の同じ磁極が対向する方向で直列状に配置して固定子10を収納し、他端部11bに保持部材32を設けて磁石12を保持する。この磁石12の組み付けによりセンタ軸をなくすことができ、部品点数を削減した安価な構造で、パイプ状部材11内に複数の磁石12が抜けることがなく、しかもガタ付かないように簡単且つ確実に磁石12を取り付けることができる。
また、磁石12は、円柱形状であり、従来のような中心に貫通孔を設けることがない分、磁石12の製造コストが安価になる。磁石12の材料としては、磁束密度の大きい希土類磁石が好ましい。特に、希土類磁石はネオジム系磁石、例えば、ネオジム−鉄−ボロン磁石(Nd−Fe−B磁石)が好ましく、他の磁石に比べて高い推力が得られる。
パイプ状部材11の材料としては、アルミニウム合金、銅合金、非磁性ステンレス鋼等の非磁性材料で形成される。また、パイプ状部材11は、その外側に配置される可動子20に作用する磁界を減少させないように、できるだけ薄いほうが好ましい。一例として、パイプ状部材11は、厚さ約1mmのステンレス鋼で形成される。
次に、リニアモータの製造の実施の形態を、図4乃至図9に基づいて詳細に説明する。図4は電磁コイルの1相分を巻く工程を説明する図、図5は電磁コイルの3相分を接続する工程を説明する図、図6は電磁コイルの配線工程を説明する図、図7はコイル保持部材に電磁コイルを組み付ける状態を示す図、図8はコイル保持部材に電磁コイルを組み付けた状態を示す図、図9は電磁コイルを組み付けたコイル保持部材をパイプ状部材に組み付ける状態を示す図である。
図4に示すコイル生産工程において、電磁コイル21のコイル1相分を巻く。コイル1相分を巻くのは、一般的に知られている自動巻き線機を用いる。コイル1相分の幅は、磁石1個の幅の略1/3が好ましい。必要相数分のコイルを巻く。この実施の形態では、コイル3相U,V,W分を巻く。
図5に示すコイル生産工程において、コイル3相U,V,W分を接続する。このコイル3相U,V,W分の接続は、コイル内径に略等しいシャフト状部材(治具)25にコイル3相U,V,W分を通し、互いに接着固定する。このシャフト状部材(治具)25によってコイル3相U,V,W分の内径位置を合わせることができる。この実施の形態では、3相×1セットしか例示していないが、必要な推力に応じて3相×2セット、また3相×3セット・・・等もあり得る。
図6に示すコイル生産工程において、コイル3相U,V,W分の配線を行なう。U相、W相の巻き終わり端とV相の巻き始め端を半田付けなどにより接続し、残り端をコネクタ1ピン、コネクタ2ピン、コネクタ3ピンによりコネクタ26に接続する。その後、中心部のシャフト状部材(治具)25を取り除く。
図7及び図8に示すコイル生産工程において、配線した電磁コイル21の外周面の一部をコイル保持部材22に保持する。このコイル保持部材22は、電磁コイルの巻き形状に沿う半円筒状の保持凹部22aを有する。この保持凹部22aに電磁コイル21の外周面の一部を接着し、可動子20の組み付けが終了する。このコイル保持部材22は、非磁性体で形成されている。電磁コイル21は複数の相からなるコイル群であるが、複数の相からなるコイル群の内径を合わせて、各コイルを接着した後に、コイル保持部材22の保持凹部22aに接着することで、組み付け精度が向上する。
図9に示すリニアモータ組付最終工程において、パイプ状部材11内に複数の磁石12を互いに隣り合う磁石12の同じ磁極が対向する方向で直列状に配置して予め作成した固定子10のパイプ状部材11に、図4乃至図8に示すようにして電磁コイル21の外周面の一部をコイル保持部材22に保持して作成した可動子20を、パイプ状部材11の外周面に電磁コイル21を移動可能に配置し、リニアモータ1として完成する。
この実施の形態の可動子20は、ボビンを設けずに電磁コイル21の外周面の少なくとも一部をコイル保持部材22に保持することで、電磁コイル21と磁石12との間の距離を近くでき、簡単な構造かつ低コストで推力を向上することができる。また、コイル保持部材22は、保持凹部22aに電磁コイル21の外周面の一部を接着し、簡単な構造で電磁コイル21を組み付けることができる。
次に、磁石12をパイプ状部材11に組み付ける実施の形態を、図10に基づいて説明する。
この実施の形態では、磁石12をパイプ状部材11に配置する際にパイプ状部材11の周囲に軟磁性体70を配置する第1の工程と、パイプ状部材11内に複数の磁石12を、互いに隣り合う磁石12の同じ磁極が対向する方向で直列状に配置する第2の工程と、パイプ状部材11の端部から磁石を固定した後、軟磁性体70を排除して固定子10を作成する第3の工程を有する。
軟磁性体70の材料としては、鉄、純鉄、ケイ素鉄などを用いることができる。この軟磁性体70の形状は、円筒状に形成しているが、棒、板状などでもよく、パイプ状部材11の周囲に沿って配置できるものであればよい。
このように、第1の工程において、磁石12をパイプ状部材11に配置する際にパイプ状部材11の周囲に軟磁性体70を抜け止構造30側から挿入して配置することで、磁石12の反発力を弱めることができる。
このため、第1〜2の工程において、特別な工具を用いることなく、磁石12をパイプ状部材11に取付ブロック部材31側から挿入することができる。このようにして、互いに隣り合う磁石12の同じ磁極が対向する方向で直列状にパイプ状部材11に容易に挿入し、取付ブロック部材31に保持部材32を螺着して組み付けることができる。
そして、第3の工程において、パイプ状部材11の端部から磁石を固定した後、軟磁性体70を抜け止構造30側から引き抜いて排除し、固定子10を作成する。
図11に示す実施の形態は、パイプ状部材11の一端部11aを内側に屈曲し、密閉しない開口部11a1を形成し、この開口部11a1の径D1を磁石12の外径D2より小径に形成した密閉しない構造である。この実施の形態も図1乃至図3に示す実施に形態と同様に、パイプ状部材11の加工により抜け止構造30を簡単に設けることができる。
図12に示す実施の形態は、パイプ状部材11の一端部11aにブロック部材40を設けた構成である。ブロック部材40は、柱状であるが、パイプ状でもよい。この実施の形態では、パイプ状部材11の加工を行なうことなく、別部材のブロック部材40により抜け止構造を簡単に設けることができる。
ブロック部材40はパイプ状部材11の一端部11aの外径D3と略同外径D4に形成され、一端部11aに接合固定される。この接合固定は、溶接、あるいは接着による。ブロック部材40がパイプ状部材11の一端部11aの外径D3と略同外径D4であり、パイプ状部材11の外周面に可動子20を移動可能に配置する際にブロック部材40が邪魔になることがない。
図13に示す実施の形態も図5に示す実施の形態と同様に、パイプ状部材11の一端部11aにブロック部材40を設けた構成であるが、ブロック部材40は、パイプ状部材11の一端部11aの内径D5より外径D6が小さく、一端部11aに挿着して固定される。この固定は、溶接、接着、あるいは圧着による。ブロック部材40がパイプ状部材11の一端部11aの内径D5より小さい外径であり、パイプ状部材11の外周面に可動子20を移動可能に配置する際にブロック部材40が邪魔になることがない。
図14に示す実施の形態は、図13の実施の形態と同様に、ブロック部材40は、パイプ状部材11の一端部11aの内径D5より外径D6が小さく、一端部11aに挿着されるが、ボルト等の締付手段41を一端部11aからブロック部材40に螺着し、簡単かつ確実に締付固定される。このボルト等の締付手段41は、頭部がパイプ状部材11の一端部11aの外周から突出する長さを抑えて、パイプ状部材11の外周面に可動子20を移動可能に配置する際に締付手段41の頭部が邪魔になることがないようにする。
図15に示す実施の形態は、図12の実施の形態と同様に、ブロック部材40は、パイプ状部材11の一端部11aに接合固定されるが、ブロック部材40が突き当て部40aを有し、この突き当て部40aが一端部11aに挿着されて磁石12に当接して保持する。突き当て部40aは、パイプ状部材11の一端部11aの内径D5と略同径になっているが、これに限定されず内径D5より小径でもよい。
図16に示す実施の形態も図13に示す実施の形態と同様に、ブロック部材40は、パイプ状部材11の一端部11aの内径D5より外径D6が小さく、一端部11aに挿着して固定されるが、ブロック部材40はパイプ状である。このブロック部材40の内径D10は、磁石12の外径D2より小径であり、磁石12が抜けることがないように保持している。ブロック部材40の固定は、溶接、接着、あるいは圧着による。
図17に示す実施の形態は、図16のブロック部材40の実施の形態の変形例を示す。図17(a)のブロック部材40は、パイプ状を半分にしたものであり、図17(b)のブロック部材40は、パイプ状を2分割したものであるが、これに限定されず、3分割状でもよく、抜け落ちることがない構造であればよい。 このように、ブロック部材40が柱状またはパイプ状であり、安価なブロック部材40を用いてパイプ状部材11に簡単に設けることができる。
次に、リニアモータの他端部の他の実施の形態を、図18に基づいて説明する。図18はリニアモータの他端部の要部断面図である。この実施の形態のパイプ状部材11の他端部11bには、図1乃至図3に示す実施の形態と同様に、取付ブロック部材31が設けられ、この取付ブロック部材31に保持部材32を螺着して組み付けられるが、保持部材32は磁石12を押圧する突起部32cを有する。
このように、パイプ状部材11の反対側の他端部11bに取付ブロック部材31を設け、この取付ブロック部材31に保持部材32を螺着し、突起部32cにより磁石12を押圧することで、磁石12がガタ付かないように簡単且つ確実に取り付けることができる。
取付ブロック部材31の外形は、四角でも、円筒でもよい。また、取付ブロック部材31とパイプ状部材11の他端部11bとの固定は、ねじ止め、溶接、接着などが実施される。
また、パイプ状部材11の内径≦取付ブロック部材31の内径にすることで、パイプ状部材11と取付ブロック部材31を先に固定し、その後磁石12を通すことができるので、そのほうが好ましい。その際、保持部材32は突起部32cを有する形状とし、その突起部32cが磁石12を押し込む長さ以上になっていることで、磁石12を密着させて押し込むことができる。
次に、コイル保持部材22の他の実施の形態を、図19乃至図21に基づいて説明する。この実施の形態のコイル保持部材22の形状は、例えば、図19に示すように、一対の半円筒状の保持凹部22aを重ねたものでもよい。また、コイル保持部材22は、図20に示すように、円筒状でもよく、あるいは図21に示すように、円筒状の一部でもよい。コイル保持部材22の構成は、電磁コイル21の外周面の一部を固定し、電磁コイル21を保持できるものであればよい。
また、コイル保持部材22は、非磁性体ならば特に限定されないが、例えば熱伝導性のよいものであれば電磁コイル21での発熱を放熱することができる。例えば、非磁性体としてアルミニウムなど熱伝導性のよい部材を用いるのが好ましい。
また、この実施の形態では、図22に示すように、互いに隣り合う磁石12の間に、軟磁性体50を配置する。軟磁性体50は、例えば鉄などが用いられる。互いに隣り合う磁石12の間に、軟磁性体50を配置することで、磁石反発力を抑制することができ、かつ周囲への漏れ磁束を大きくする(推力を向上する)ことができるのでより好ましい。挿入する軟磁性体50は、磁極ピッチの1/10以下にするのが好ましい。磁極ピッチの1/10以上にすると、漏れ磁束が小さくなるので効果がない。軟磁性体50の両端は磁石の長さがピッチ長にならなくても良い。また、パイプ状部材11の長さが決まった際には、全長の調整のために、両端の磁石の長さを他とは変更することもあり得る。
この実施の形態では、図23乃至図26に示すように、それぞれのパラメータを振って、磁石の使用量を極力減らし、所望の推力が得られるリニアモータを設計することができる。図23は磁束密度の計算例を示し、図24は磁石長さ変更時の推力のシミュレーション、図25は磁石内径変更時の推力のシミュレーション、図26は磁石外径変更時の推力のシミュレーションである。
この方法は、リニアモータの設計に一般的に用いられる方法である。この際、磁石には、不可逆減磁がある。反発する方向に磁石を配置するため、パーミアンスが小さくなる。
即ち、磁石に外部から磁界が加えられると着磁され、その外部磁界を取り除いた後でも、磁石からは磁束を外部に放出する。その磁束量が残留磁束密度(Br)であるが、実際には着磁の場合とは逆方向の磁界(反磁界)が加わった状態で使用されるので、残留磁束密度より小さい磁束密度しか外部には放出されない。 反磁界はN極とS極が近づく程、すなわち磁石の寸法比(長さ/直径)が小さいほど大きくなり、この反磁界を考慮し、磁石に有効に働く磁界は図27の−Hdである時、磁石はB−H曲線(減磁曲線)上のH=−Hdに対応する磁束密度Bdを放出していることになる。
ここで、p=Bd/Hdをパーミアンス係数といい、図27の原点から勾配Bd/Hdの直線とB−H曲線との交点Pを作動点と呼ぶ。パーミアンスとは「浸透しやすさ=磁束の通り易さ」という意味で、磁束を電流に置換えた時の電気伝導度(電流/電圧)に相当している。動作点Pは磁石の形状や周囲の状況によって変化し、例えば着磁後の磁石の動作点が図27のP点であったとすると、その磁石に鉄片が吸着されると、磁石に働く有効磁界は原点方向にずれる。
また、例えば、保磁力の小さい磁石を用いると、常温でも減磁石が生じてしまうので、ある程度の保磁力が必要となる。不可逆減磁が生じる温度も、先の電磁場計算ソフトウェアによりパーミアンスを計算し、磁石のB−H特性曲線から減磁温度を計算することができる。
磁石は希土類磁石が好ましく用いられ、この希土類磁石ではネオジム系磁石を用いるのが好ましいが、保磁力が十分であり不可逆減磁が使用温度範囲で発生せず、かつ必要な推力が得られるだけの磁石エネルギーがあれば特に限定されない。ネオジム系磁石などを用いる場合には、錆の問題が生じ、パイプ状部材11内に挿入されてはいるが、パイプ状部材11の一端部11aの固定に円筒状の部材を用いれば、そこから錆が外へ飛散し、使用する装置に影響を与える可能性がある。また、磁石製造段階から、リニアモータ1の組み立て段階までに錆が生じれば、磁石の破損にも結びつく。そこで、磁石にはメッキを施すのが望ましく、例えばニッケルメッキやアルミメッキなどが一般的である。特にメッキの種類には制限はない。
このリニアモータは、磁石をパイプ状部材に配置する際にパイプ状部材の周囲に軟磁性体を配置し、パイプ状部材内に複数の磁石を、互いに隣り合う磁石の同じ磁極が対向する方向で直列状に配置し、パイプ状部材の端部から磁石を固定した後、軟磁性体を排除して固定子を作成し、固定子の外周面に可動子を移動可能に配置する。このように、特別な工具を用いることなく、パイプ状部材内に複数の磁石を、互いに隣り合う磁石の同じ磁極が対向する方向で直列状に容易に配置することができ、センタ軸を用いない分部品点数を削減した安価な構造である。
Claims (3)
- 磁石をパイプ状部材に配置する際に前記パイプ状部材の周囲に軟磁性体を配置し、
前記パイプ状部材内に複数の磁石を、互いに隣り合う前記磁石の同じ磁極が対向する方向で直列状に配置し、
前記パイプ状部材の端部から前記磁石を固定した後、前記軟磁性体を排除して固定子を作成し、
前記固定子の外周面に可動子を移動可能に配置することを特徴とするリニアモータの製造方法。 - 前記パイプ状部材は、一端部に前記パイプ状部材内から前記磁石が抜けることを規制する抜け止構造を有することを特徴とする請求の範囲第1項に記載のリニアモータの製造方法。
- 前記可動子は、電磁コイルと、この電磁コイルの外周面の少なくとも一部を保持するコイル保持部材を有することを特徴とする請求の範囲第1項に記載のリニアモータの製造方法。
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