JPWO2005114165A1 - 渦電流探傷プローブ及び渦電流探傷装置 - Google Patents
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Abstract
本発明は、検査体のキズを探傷する渦電流探傷プローブMPであり、1個の矩形状の励磁コイル(C1)と4個のパンケーキ状の励磁コイル(C21)〜(C24)からなり、励磁コイル(C1)と励磁コイル(C21)〜(C24)は直交するように配置してある。励磁コイル(C21)〜(C24)は、検出コイル(C1)内に配置してある。渦電流探傷装置MPは、励磁コイル(C1)が検査体Tと垂直になり、励磁コイル(C21)〜(C24)が検査体Tと平行になるように、検査体Tに上に配置される。励磁コイル(C21)〜(C24)は、干渉を避けるため、順次切替えて励磁信号を印加する。
Description
本発明は、四角形、三角形等の多角形の検出コイルと励磁コイルを直交させて配置した渦電流探傷プローブ及びこの渦電流探傷プローブを備えた渦電流探傷装置に関する。
ここで四角形、三角形等の多角形の検出コイルと励磁コイルを直交させて配置した渦電流探傷プローブは、一般にΘプローブとも称される。
本出願は、日本国において2004年5月21日に出願された日本特許出願番号2004−151469を基礎として優先権を主張するものであり、この出願は参照することにより、本出願に援用される。
ここで四角形、三角形等の多角形の検出コイルと励磁コイルを直交させて配置した渦電流探傷プローブは、一般にΘプローブとも称される。
本出願は、日本国において2004年5月21日に出願された日本特許出願番号2004−151469を基礎として優先権を主張するものであり、この出願は参照することにより、本出願に援用される。
従来、この種の渦電流探傷プローブとして、特開2003−344361号公報、「平成13年度秋季大会講演概要集」第153〜154頁、平成13年10月2日、社団法人日本非破壊検査協会発行、に記載されたものがある。
この渦電流探傷プローブPは、図1A〜図1Cに示すように、パンケーキ状の励磁コイルCeと矩形状の検出コイルCdからなり、検出コイルCdは、励磁コイルCe内に配置し、励磁コイルCeと検出コイルCdは、両コイルのコイル面が直交するように配置してある。渦電流探傷プローブPは、図1Aに示すように、金属板等の検査体T上に、励磁コイルCeのコイル面が検査体Tの検査面と平行になり、図1Cに示すように、検出コイルCdのコイル面がその検査面と垂直になるように設置してある。渦電流探傷プローブPは、図1Bに示すように、検出コイルCdが検査体TのキズFと平行になるように検査体T上に載置し、キズFの長手方向に垂直なY1方向へ走査して探傷する。
ここで、励磁コイルと検出コイルのコイル面とは、両コイルを構成する巻き線で囲まれた面をいう。
図1A〜図1Cに示す従来の渦電流探傷プローブPは、後述するように原理的にリフトオフ雑音、すなわち、渦電流探傷プローブと検査体の距離の変化に起因する雑音の発生がなく、検出コイルCdには、検査体TにキズFがあるときのみ検出信号である探傷信号を発生し、キズFがないときは探傷信号を発生しない。このように、従来の渦電流探傷プローブPは、優れた探傷特性を有しているが、検出コイルCdは、励磁コイルCe内に配置されているから、検出コイルCdの長さ、すなわち、励磁コイルCeのコイル面と平行な方向の検出コイルCdのコイル面の長さ又は幅は、励磁コイルCeの内径よりも短くなる。そのため、従来の渦電流探傷プローブPは、本発明等の実験の結果、検査体TのキズFの深さが浅い場合には、検出コイルCdにより検出される探傷信号の出力レベルが小さくなり、高精度の探傷、評価が困難であることが分かった。
そして、上述した渦電流探傷プローブPは、図1Bに示すように、検出コイルCdと並行なキズFは探傷できるが、検出コイルCdに垂直なキズは、探傷が困難であった。
また、従来提案されている渦電流探傷プローブは、励磁コイルと検出コイルがそれぞれ1個であるから、1度に探傷できる範囲が狭く、検査体が圧延金属板、ガスタンク等のプラント、航空機等のように探傷範囲の広い検査体の場合には、探傷に長時間を要する。その点を改善する方法として、複数個の渦電流探傷プローブPを一列に並置して同時に走査する方法が考えられるが、その場合に、渦電流探傷プローブP間の干渉を避けるため、渦電流探傷プローブPを順次切り換えて駆動する必要があり、切換機構が複雑になる。また、多数の渦電流探傷プローブPの位置関係を正確に調整する必要があり、組立てが困難となってしまっている。
この渦電流探傷プローブPは、図1A〜図1Cに示すように、パンケーキ状の励磁コイルCeと矩形状の検出コイルCdからなり、検出コイルCdは、励磁コイルCe内に配置し、励磁コイルCeと検出コイルCdは、両コイルのコイル面が直交するように配置してある。渦電流探傷プローブPは、図1Aに示すように、金属板等の検査体T上に、励磁コイルCeのコイル面が検査体Tの検査面と平行になり、図1Cに示すように、検出コイルCdのコイル面がその検査面と垂直になるように設置してある。渦電流探傷プローブPは、図1Bに示すように、検出コイルCdが検査体TのキズFと平行になるように検査体T上に載置し、キズFの長手方向に垂直なY1方向へ走査して探傷する。
ここで、励磁コイルと検出コイルのコイル面とは、両コイルを構成する巻き線で囲まれた面をいう。
図1A〜図1Cに示す従来の渦電流探傷プローブPは、後述するように原理的にリフトオフ雑音、すなわち、渦電流探傷プローブと検査体の距離の変化に起因する雑音の発生がなく、検出コイルCdには、検査体TにキズFがあるときのみ検出信号である探傷信号を発生し、キズFがないときは探傷信号を発生しない。このように、従来の渦電流探傷プローブPは、優れた探傷特性を有しているが、検出コイルCdは、励磁コイルCe内に配置されているから、検出コイルCdの長さ、すなわち、励磁コイルCeのコイル面と平行な方向の検出コイルCdのコイル面の長さ又は幅は、励磁コイルCeの内径よりも短くなる。そのため、従来の渦電流探傷プローブPは、本発明等の実験の結果、検査体TのキズFの深さが浅い場合には、検出コイルCdにより検出される探傷信号の出力レベルが小さくなり、高精度の探傷、評価が困難であることが分かった。
そして、上述した渦電流探傷プローブPは、図1Bに示すように、検出コイルCdと並行なキズFは探傷できるが、検出コイルCdに垂直なキズは、探傷が困難であった。
また、従来提案されている渦電流探傷プローブは、励磁コイルと検出コイルがそれぞれ1個であるから、1度に探傷できる範囲が狭く、検査体が圧延金属板、ガスタンク等のプラント、航空機等のように探傷範囲の広い検査体の場合には、探傷に長時間を要する。その点を改善する方法として、複数個の渦電流探傷プローブPを一列に並置して同時に走査する方法が考えられるが、その場合に、渦電流探傷プローブP間の干渉を避けるため、渦電流探傷プローブPを順次切り換えて駆動する必要があり、切換機構が複雑になる。また、多数の渦電流探傷プローブPの位置関係を正確に調整する必要があり、組立てが困難となってしまっている。
本発明は、上述した従来の渦電流探傷プローブが有する問題点に鑑み、従来の渦電流探傷プローブの優れた探傷特性を損なうことなく、浅いキズや検出コイルに垂直なキズも高感度で探傷でき、しかも、1度の走査で広い範囲の探傷が可能な渦電流探傷プローブを提供することを目的とする。
本発明に係る渦電流探傷プローブは、個の多角形の検出コイルと、この検出コイル内に配置された励磁コイルとを有し、検出コイルと励磁コイルとを、互いのコイル面を交差させて配置したものである。
本発明に係る渦電流探傷プローブにおいて、検出コイルは、励磁コイルよりも長いことが望ましい。
また、励磁コイルは、パンケーキ状であり、さらに、検出コイルは、矩形状であることが望ましい。
本発明に係る渦電流探傷プローブにおいて、励磁コイルは、検出コイルの巻き線に沿って2個以上並列して配置されることが望ましい。
本発明に係る渦電流探傷装置は、1個の多角形の検出コイル内に2個以上の励磁コイルを検出コイルの巻き線に沿って並置するように配置するとともに、検出コイルと励磁コイルとが互いのコイル面を交差するように配置されている渦電流探傷プローブと、2個以上の励磁コイルに順次切り換えて励磁信号を印加する励磁信号発生部と、検出コイルから探傷信号を検出して検査体のキズを探傷し評価する探傷評価部とを備えている。
本発明に係る渦電流探傷プローブは、四角形、三角形等の多角形の検出コイル内に励磁コイルを配置し、検出コイルを励磁コイルよりも長くすることにより、浅いキズや検出コイルに垂直なキズについても、キズの有無、位置、深さを高感度、高精度で探傷し評価できる。
また、本発明に係る渦電流探傷プローブは、1個の多角形の検出コイル内に複数の励磁コイルを並列して配置してあるから、一回の走査で探傷できる範囲が広くなる。
さらに、本発明に係る渦電流探傷プローブは、複数の励磁コイルを順次切り換えて駆動するから、探傷信号が発生した励磁コイルを特定することができ、検査体のキズの位置も特定することができる。
さらにまた、本発明に係る渦電流探傷プローブは、複数個の励磁コイルに対して1個の検出コイルを設ければよいから、励磁コイルの切換えに対応して検出コイルを切り換える必要がないので、検出コイルの切換手段を設ける必要がなくなる。
さらにまた、本発明に係る渦電流探傷プローブは、複数個の励磁コイルに対して1個の検出コイルを配置するだけでよいから、構造が簡単になり、組立てが容易になる。
さらにまた、本発明に係る渦電流探傷プローブは、リフトオフ雑音が発生しないから、探傷信号の位相がリフトオフ雑音の影響を受けずに、検査体のキズの深さに対応して変化するので、探傷信号の位相に基づいてキズの深さを評価することができる。
本発明のさらに他の目的、本発明によって得られる利点は、以下において図面を参照して説明される実施に形態から一層明らかにされるであろう。
本発明に係る渦電流探傷プローブは、個の多角形の検出コイルと、この検出コイル内に配置された励磁コイルとを有し、検出コイルと励磁コイルとを、互いのコイル面を交差させて配置したものである。
本発明に係る渦電流探傷プローブにおいて、検出コイルは、励磁コイルよりも長いことが望ましい。
また、励磁コイルは、パンケーキ状であり、さらに、検出コイルは、矩形状であることが望ましい。
本発明に係る渦電流探傷プローブにおいて、励磁コイルは、検出コイルの巻き線に沿って2個以上並列して配置されることが望ましい。
本発明に係る渦電流探傷装置は、1個の多角形の検出コイル内に2個以上の励磁コイルを検出コイルの巻き線に沿って並置するように配置するとともに、検出コイルと励磁コイルとが互いのコイル面を交差するように配置されている渦電流探傷プローブと、2個以上の励磁コイルに順次切り換えて励磁信号を印加する励磁信号発生部と、検出コイルから探傷信号を検出して検査体のキズを探傷し評価する探傷評価部とを備えている。
本発明に係る渦電流探傷プローブは、四角形、三角形等の多角形の検出コイル内に励磁コイルを配置し、検出コイルを励磁コイルよりも長くすることにより、浅いキズや検出コイルに垂直なキズについても、キズの有無、位置、深さを高感度、高精度で探傷し評価できる。
また、本発明に係る渦電流探傷プローブは、1個の多角形の検出コイル内に複数の励磁コイルを並列して配置してあるから、一回の走査で探傷できる範囲が広くなる。
さらに、本発明に係る渦電流探傷プローブは、複数の励磁コイルを順次切り換えて駆動するから、探傷信号が発生した励磁コイルを特定することができ、検査体のキズの位置も特定することができる。
さらにまた、本発明に係る渦電流探傷プローブは、複数個の励磁コイルに対して1個の検出コイルを設ければよいから、励磁コイルの切換えに対応して検出コイルを切り換える必要がないので、検出コイルの切換手段を設ける必要がなくなる。
さらにまた、本発明に係る渦電流探傷プローブは、複数個の励磁コイルに対して1個の検出コイルを配置するだけでよいから、構造が簡単になり、組立てが容易になる。
さらにまた、本発明に係る渦電流探傷プローブは、リフトオフ雑音が発生しないから、探傷信号の位相がリフトオフ雑音の影響を受けずに、検査体のキズの深さに対応して変化するので、探傷信号の位相に基づいてキズの深さを評価することができる。
本発明のさらに他の目的、本発明によって得られる利点は、以下において図面を参照して説明される実施に形態から一層明らかにされるであろう。
本発明が適用された渦電流探傷プローブは、1個の多角形の検出コイルと1個以上の励磁コイルからなり、励磁コイルは、検出コイル内に検出コイルの巻き線に沿って並列して並置するように配置し、両コイルは、コイル面が交差又は直交するように配置してある。したがって、検出コイルの長さ、すなわち、励磁コイルのコイル面と平行な方向の検出コイルのコイル面の長さ又は幅は、少なくとも1個の励磁コイルの長さである検出コイルの長さ方向に亘る励磁コイルのコイル面の長さ又は幅よりも長くなる。なお、励磁コイルがパンケーキ状の場合には、励磁コイルのコイル面の幅は、励磁コイルの外径である。
ここで、1個の多角形の検出コイル内に1個以上の励磁コイルを配置し、両コイルがコイル面を交差又は直交するように配置してある渦電流探傷プローブを以下マルチΘプローブという。
以下、本発明を適用した渦電流探傷プローブ及びマルチΘプローブの実施の形態を図面を参照して説明する。
以下の説明するいくつかの実施の形態において、共通の符号を付して説明する。
本発明の一実施の形態であるマルチΘプローブMPは、図2,図3,図4に示すように、矩形状の検出コイルC1と、パンケーキ状の励磁コイルC21〜C24を備える。
本発明が適用されたマルチΘプローブMPは、具体的に、図2及び図3に示すように、4個の励磁C21〜C24と1個の検出コイルC1からなり、励磁コイルC21〜C24は、検出コイルC1内に位置し、検出コイルC1の巻き線に沿って並列して配置されている。そして、4個の励磁コイルC21〜C24と検出コイルC1とは、図2〜図4に示すように、コイル面を交差又は直交するようにして配置してある。ここで、検出コイルC1は、図5に示すように、長尺な矩形状に形成され、励磁コイルC21〜C24は、図6に示すように、リング状に形成されている。
検出コイルC1は、並列配置された4個の励磁コイルC21〜C24を一方の側から他方の側に亘る長さC1Lを有する矩形状に形成され、前述した従来の渦電流探傷プローブの配置とは逆に、図2及び図3に示すように、並列配置された4つの励磁C21〜C24を内側に配置するに足る大きさに形成されている。
したがって、検出コイルC1の長さC1Lは、少なくとも1個の励磁コイルの外径よりも長く形成され、前述した従来の渦電流探傷プローブのように励磁コイルの内径に制限されることなく、任意の長さに設定できる。
なお、ここで、検出コイルC1の長さC1Lは、励磁コイルC21〜C24のコイル面と平行な方向のコイル面の長さ又は幅であり、励磁コイルC21〜C24の長さ又は幅は、検出コイルC1の長さ方向のコイル面の長さであり、又は励磁コイルC21〜C24の外径である。
マルチΘプローブMPは、図4に示すように、検出コイルC1のコイル面が検査体Tの検査面に対して垂直となるいわゆる縦置きに設置され、励磁コイルC21〜C24のコイル面が、図2に示すように、検査体Tの検査面と平行になるように、検査体T上に配置される。
図2〜図4に示すマルチΘプローブMPは、4個の励磁コイルを配置した例を上げて説明したが、1個以上任意でよい。なお、励磁コイルが1個の場合には、マルチΘプローブMPの1回の走査で探傷できる範囲は狭いが、浅いキズや検出コイルC1に垂直なキズに対する探傷感度は、励磁コイルが1個であっても、複数個であっても変わりない。
次に、本発明に係るマルチΘプローブを用いた渦電流探傷装置を説明する。
この渦電流探傷装置は、図7に示すように、励磁信号発生部11と、探傷評価部12とを備える。
渦電流探傷装置を構成する励磁信号発生部11は、マルチΘプローブMPの4個の励磁コイルC21〜C24に、順次例えば、C21,C22,C23,C24の順に励磁信号を印加する。励磁コイルC21〜C24は、互いに接近して配置されているので、隣接する励磁コイルC21〜C24に同時に励磁信号を印加すると干渉する。その干渉を避けるため、各励磁コイルC21〜C24には、時間的にずらせて励磁信号を順次印加している。励磁コイルC21〜C24に励磁信号が印加されると、検査体Tには、後述するように各励磁コイルに対応して渦電流が発生する。検査体Tにキズがあるときは、そのキズに起因する渦電流が発生し、検出コイルC1に探傷信号が発生する。探傷評価部12は、検出コイルC1に発生した探傷信号を検出して、検査体Tのキズの有無、位置、深さ等を探傷、評価する。
励磁コイルC21〜C24は、C21,C22,C23,C24の順に1個ずつ励磁信号を印加する代わりに、例えば励磁コイルC21〜C24を1つおきに2つのグループに分けてグループ毎に励磁信号の供給線を設け、その供給線を切り換えて、グループ単位で励磁信号を印加するように構成してもよい。励磁コイルのグループは、2つに限らず、さらに多くすることもできる。励磁コイルをグループに分けると、励磁信号発生部11は、励磁コイルの切換スイッチの個数が少なくなり、構成が簡単になる。
なおマルチΘプローブMPは、1個の検出コイルC1を設けるのみであるから、探傷評価部12に検出コイルの切換スイッチを設ける必要がない。したがって、探傷評価部12は、従来の渦電流探傷プローブを複数個並列して配置する構成に比べて構成が簡単になる。
本発明が適用されたマルチΘプローブMPは、図8に示すように、検査体Tの検査面に沿ってキズFに垂直な矢印X1方向へ走査する。マルチΘプローブMPが検査体TのキズFの上に移動すると、このキズFの上に位置する励磁コイルC22に励磁信号が印加されると、後述するようにキズFの周囲にキズFに起因する渦電流が発生し、その渦電流によって検出コイルC1に探傷信号が誘起する。
4個の励磁コイルC21〜C24に励磁信号を印加すると、検査体Tの検査面には、励磁コイルC21〜C24に対応する位置に渦電流が発生する。したがって、マルチΘプローブMPは、1回の走査で励磁コイル4個分の範囲を探傷できる。
励磁コイルC21〜C24に順次切り換えて励磁信号を印加すると、キズFに最も近い、例えば励磁コイルC22に励磁信号が印加されると、検出コイルC1に探傷信号が発生する。したがって、探傷信号が発生したときの励磁コイルC21〜C24のいずれかを特定することにより、キズの位置を特定することができる。
ここで、マルチΘプローブMPによって、検査体Tに発生する渦電流の様子を図9A〜図9Cに示す。
図9Aは、マルチΘプローブMPを検査体Tに上に配置した状態を示し、図9Bは、検査体Tにキズがない場合の渦電流を示し、図9Cは、検査体Tにキズがある場合の渦電流を示す。なお、励磁コイルは1個のみ図示してある。
図9Aに示すように、検査体T上にマルチΘプローブMPを配置したとき、励磁コイルC21に励磁信号(励磁電流)を供給すると、検査体Tにキズがない場合には、図9Bに示すように渦電流Iが発生し、励磁コイルC21の巻き線に沿って流れる。一方、検査体Tにキズがある場合には、図9Cに示すようにキズFに起因する渦電流i1,i2,i3,i4が発生する。なお、キズFに起因して発生する渦電流は、キズFの両側(図9C中の上下)及びキズFの両端の延長側にも広く分布するが、探傷信号の発生に最も寄与する渦電流は、キズFの周囲に発生する渦電流i1,i2,i3,i4である。
検査体Tにキズがない場合、図9Bに示すように、検出コイルC1の巻き線に沿って流れる渦電流はないから、検出コイルC1には、信号は誘起しない。すなわち、検査体Tにキズがない場合には、探傷信号は発生しない。一方、検査体TにキズFがある場合には、図9Cに示すように、渦電流i1,i2によって検出コイルC1に探傷信号が誘起する。すなわち、検査体TにキズFがある場合には、探傷信号が発生する。
なお、検査体Tにキズがない場合、検出コイルC1には、信号を誘起しないから、マルチΘプローブMPの走査の過程において、マルチΘプローブMPと検査体Tの距離(間隔)が変動しても、その変動によってリフトオフ雑音が発生することはない。
以上は、他の励磁コイルC22〜C24についても同様である。
図10A〜図10Cは、検出コイルと平行なキズを探傷する例を示す。なお、検査体Tは図示を省略してある。 図10A〜図10C中に示す渦電流i1,i2,i3,i4は、図9Cに示すの渦電流i1,i2,i3,i4と同じである。
図10Aは、マルチΘプローブMPを図示しない検査体Tに対し矢印X1方向へ走査し、検出コイルC1がキズFの手前にある状態を示す。
励磁コイルに励磁信号を印加すると、キズFの周囲に渦電流i1,i2,i3,i4が発生するから、検出コイルC1には、渦電流i1,i2によって信号が誘起する。その場合、渦電流i1,i2は、互いに逆向きに流れているから、検出コイルC1には、両電流によって誘起する信号の差信号(差動信号)が発生する。すなわち、探傷信号が発生する。探傷信号は、検出コイルC1がキズFに近付くほど大きくなり、図10Aに示すように、検出コイルC1が検査体TのキズFに最も近付いた位置で最大になる。探傷信号は、渦電流i1によって誘起する信号よりも渦電流i2によって誘起する信号の方が大きいから、探傷信号の極性は、渦電流i2によって決まる。
図10Bは、検出コイルC1が検査体TのキズFの真上に位置するときの状態を示す。
検出コイルC1が検査体TのキズFの真上にあるときは、電流i1,i2によって検出コイルC1に誘起する信号は、大きさが同じで方向が反対であるから相殺され、検出コイルC1には探傷信号は発生しない。
図10Cは、検出コイルC1が検査体TのキズFを通過した直後の状態を示す。
図10Cの場合、検出コイルC1には渦電流i1,i2によって差動信号(探傷信号)が誘起する。図10Aに示す場合と同様に、検出コイルC1は、検査体TのキズFに最も近い位置にあるから、探傷信号は最大になる。その場合、渦電流i1によって誘起する信号は、渦電流i2によって誘起する信号よりも大きいから、探傷信号の極性は、渦流i1によって決まり、図10Aに示す状態の探傷信号と逆になる。
図11Aは、マルチΘプローブMPを、前述した図10A〜図10Cに示すように検査体T上を走査したときに発生する探傷信号の信号パターンを示す。
図11Bは、本発明のマルチΘプローブと比較するため、前述した従来の渦電流探傷プローブPにより検査体T上を走査したときに発生する探傷信号の信号パターンを示す。
図11A、図11Bにおいて、横軸は、励磁信号と同相の探傷信号成分(単位V)を示し、縦軸は、励磁信号と位相が90度異なる探傷信号成分(単位V)を示す。キズの深さは、検査体の板厚の20%、60%、80%の3種類である。
ここで、キズの深さが、検査体Tの板厚の20%の信号パターンをS1で示し、60%の信号パターンをS2で示し、80%の信号パターンをS3で示す。
図11Aに示すの信号パターンS1,S2,S3と、図11Bに示す信号パターンS1,S2,S3を比較すると、図11Aに示す信号パターンS1,S2,S3は、図11Bに示す信号パターンS1,S2,S3と同様に、キズの深さ毎に安定した8字型の信号パターンを描き、キズの深さに対応して位相が変化している。すなわちマルチΘプローブMPは、従来の渦電流探傷プローブPと同様にリフトオフ雑音が発生しないから、探傷信号の位相は、リフトオフ雑音の影響を受けることなく、キズの深さに対応して変化している。
加えて、11Aに示す信号パターンS1,S2,S3は、キズが浅いときも振幅が大きく、安定している。すなわちキズの深さが検査体Tの板厚の20%の場合、図11Bに示す信号パターンS1の振幅は、急激に小さくなるが、図11Aに示す信号パターンS1の振幅の変化は図11Bに示す信号パターンS1に比し小さい。したがって、本発明を適用したマルチΘプローブMPは、キズが浅いときも、従来の渦電流探傷プローブPよりも高感度、高精度で探傷できる。
ここで、探傷信号パターンの測定に用いた本発明に係るマルチΘプローブMPの大きさは、検出コイルが、長さ50mm、高さ9mm、巻き線断面積1×1mm2、励磁コイルが、外径9mm、巻き線断面積1.5×1.5mm2である。また、検査体は、厚さが1.5mmの黄銅板を用い、その黄銅板に長さ15mm、幅0.5mm、深さが板厚の20%,40%、60%、80%のスリットを形成してキズとした。励磁信号は、20kHz、リフトオフは、0.2mmに設定した。
図12は、本発明が適用されたマルチΘプローブMP及び従来の渦電流探傷プローブPにおけるキズの深さと探傷信号の振幅の関係を示す。図12は、図11A及び図11Bに示すのキズの各深さの信号パターンS1,S2,S3のピーク−ピークの大きさをプロットしたものである。なお、図11A、図11Bには、キズの深さが板厚の40%の場合の信号パターンは図示してない。
図12において、横軸は、板厚に対するキズの深さ(%)を示し、縦軸は、探傷信号の振幅を示し、振幅は板厚に対すキズの深さが80%で正規化してある。
図12中に実線で示すマルチΘプローブMPの特性と、図12中破線で示す従来の渦電流探傷プローブPの特性を比較すると、キズの深さが同じ場合、探傷信号の振幅は、本発明に係るマルチΘプローブMPの方が、従来の渦電流探傷プローブPのよりも大きくなり、キズが浅い場合も大きくなる。したがって、本発明に係るマルチΘプローブMPは、従来の渦電流探傷プローブPよりも探傷感度が高くなり、浅いキズであってもキズの有無、位置、深さを高精度で探傷し評価できる。
図13A〜図13Cは、検出コイルに垂直なキズを探傷する例を示す。なお、検査体Tは、図示を省略してある。
図13Aは、マルチΘプローブMPを図示しない検査体Tに対し矢印X2方向へ走査し、検出コイルC1がキズFの手前にある状態を示す。
励磁コイルに励磁信号を印加すると、キズFの周囲には、前述した図10Aの場合と同様に渦電流i1,i2,i3,i4が発生するから、検出コイルC1には、渦電流i3によって探傷信号が誘起する。探傷信号は、検出コイルC1がキズFに近付くほど大きくなり、図13Aに示すように、検出コイルC1がキズFに最も近付いた位置で最大になる。
図13Bは、検出コイルC1が検査体TのキズFの中間にあるときの状態を示す。
検出コイルC1がキズFの中間にあるときは、検出コイルC1の巻き線に沿って流れる渦電流はないから、探傷信号は発生しない。すなわち渦電流i1,i2は、検出コイルC1の巻き線と直交する方向に流れるから、探傷信号の発生に寄与しない。
図13Cは、検出コイルC1が検査体TのキズFを通過した直後の状態を示す。
図13Cの場合、検出コイルC1には、渦電流i4によって探傷信号が誘起する。検出コイルC1は、図13Aに示す場合と同様に、検査体TのキズFに最も近い位置にあるから、探傷信号は最大になる。渦電流i4は、流れる方向が渦電流i3と反対になるから、探傷信号の極性は、図13Aに示す探傷信号と逆になる。
図14Aは、本発明に係るマルチΘプローブMPを、前述した図13A〜図13Cに示すように検査体T上を走査したときに発生する探傷信号の信号パターンを示す。
図14Bは、本発明のマルチΘプローブと比較するため、前述した従来の渦電流探傷プローブPにより検査体T上を走査したときに発生する探傷信号の信号パターンを示す。
図14A、図14Bにおいて、横軸は、励磁信号と同相の探傷信号成分(単位V)を示し、縦軸は、励磁信号と位相が90度異なる探傷信号成分(単位V)を示す。キズの深さは、検査体の板厚の20%、60%、80%の3種類である。
ここで、キズの深さが、検査体Tの板厚の20%の信号パターンをS1で示し、60%の信号パターンをS2で示し、80%の信号パターンをS3で示す。
ここで、図14Aに示す信号パターンS1,S2,S3と、図14Bに示す信号パターンS1,S2,S3を比較すると、図14Bに示す信号パターンS1,S2,S3は振幅が小さく、不明瞭であるが、図14Aに示す信号パターンS1,S2,S3は振幅が大きく、検査体Tのキズの深さ毎に安定した8字型の信号パターンを描き、キズの深さに対応して位相が変化している。すなわち、従来の渦電流探傷プローブPは、検出コイルに垂直なキズの探傷は困難であるが、本発明に係るマルチΘプローブMPは、検出コイルに垂直なキズも高感度にしかも高精度で探傷できる。
上述したマルチΘプローブMP及びこのマルチΘプローブMPを用いた渦電流探傷装置に用いられる励磁コイルは、パンケーキ状のコイルについて説明したが、矩形状等四角形のコイルであってもよい。また、検出コイルは、矩形状に限らず矩形以外の四角形、三角形等の多角形であってもよい。
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施例に限定されるものではなく、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な変更、置換又はその同等のものを行うことができることは当業者にとって明らかである。
ここで、1個の多角形の検出コイル内に1個以上の励磁コイルを配置し、両コイルがコイル面を交差又は直交するように配置してある渦電流探傷プローブを以下マルチΘプローブという。
以下、本発明を適用した渦電流探傷プローブ及びマルチΘプローブの実施の形態を図面を参照して説明する。
以下の説明するいくつかの実施の形態において、共通の符号を付して説明する。
本発明の一実施の形態であるマルチΘプローブMPは、図2,図3,図4に示すように、矩形状の検出コイルC1と、パンケーキ状の励磁コイルC21〜C24を備える。
本発明が適用されたマルチΘプローブMPは、具体的に、図2及び図3に示すように、4個の励磁C21〜C24と1個の検出コイルC1からなり、励磁コイルC21〜C24は、検出コイルC1内に位置し、検出コイルC1の巻き線に沿って並列して配置されている。そして、4個の励磁コイルC21〜C24と検出コイルC1とは、図2〜図4に示すように、コイル面を交差又は直交するようにして配置してある。ここで、検出コイルC1は、図5に示すように、長尺な矩形状に形成され、励磁コイルC21〜C24は、図6に示すように、リング状に形成されている。
検出コイルC1は、並列配置された4個の励磁コイルC21〜C24を一方の側から他方の側に亘る長さC1Lを有する矩形状に形成され、前述した従来の渦電流探傷プローブの配置とは逆に、図2及び図3に示すように、並列配置された4つの励磁C21〜C24を内側に配置するに足る大きさに形成されている。
したがって、検出コイルC1の長さC1Lは、少なくとも1個の励磁コイルの外径よりも長く形成され、前述した従来の渦電流探傷プローブのように励磁コイルの内径に制限されることなく、任意の長さに設定できる。
なお、ここで、検出コイルC1の長さC1Lは、励磁コイルC21〜C24のコイル面と平行な方向のコイル面の長さ又は幅であり、励磁コイルC21〜C24の長さ又は幅は、検出コイルC1の長さ方向のコイル面の長さであり、又は励磁コイルC21〜C24の外径である。
マルチΘプローブMPは、図4に示すように、検出コイルC1のコイル面が検査体Tの検査面に対して垂直となるいわゆる縦置きに設置され、励磁コイルC21〜C24のコイル面が、図2に示すように、検査体Tの検査面と平行になるように、検査体T上に配置される。
図2〜図4に示すマルチΘプローブMPは、4個の励磁コイルを配置した例を上げて説明したが、1個以上任意でよい。なお、励磁コイルが1個の場合には、マルチΘプローブMPの1回の走査で探傷できる範囲は狭いが、浅いキズや検出コイルC1に垂直なキズに対する探傷感度は、励磁コイルが1個であっても、複数個であっても変わりない。
次に、本発明に係るマルチΘプローブを用いた渦電流探傷装置を説明する。
この渦電流探傷装置は、図7に示すように、励磁信号発生部11と、探傷評価部12とを備える。
渦電流探傷装置を構成する励磁信号発生部11は、マルチΘプローブMPの4個の励磁コイルC21〜C24に、順次例えば、C21,C22,C23,C24の順に励磁信号を印加する。励磁コイルC21〜C24は、互いに接近して配置されているので、隣接する励磁コイルC21〜C24に同時に励磁信号を印加すると干渉する。その干渉を避けるため、各励磁コイルC21〜C24には、時間的にずらせて励磁信号を順次印加している。励磁コイルC21〜C24に励磁信号が印加されると、検査体Tには、後述するように各励磁コイルに対応して渦電流が発生する。検査体Tにキズがあるときは、そのキズに起因する渦電流が発生し、検出コイルC1に探傷信号が発生する。探傷評価部12は、検出コイルC1に発生した探傷信号を検出して、検査体Tのキズの有無、位置、深さ等を探傷、評価する。
励磁コイルC21〜C24は、C21,C22,C23,C24の順に1個ずつ励磁信号を印加する代わりに、例えば励磁コイルC21〜C24を1つおきに2つのグループに分けてグループ毎に励磁信号の供給線を設け、その供給線を切り換えて、グループ単位で励磁信号を印加するように構成してもよい。励磁コイルのグループは、2つに限らず、さらに多くすることもできる。励磁コイルをグループに分けると、励磁信号発生部11は、励磁コイルの切換スイッチの個数が少なくなり、構成が簡単になる。
なおマルチΘプローブMPは、1個の検出コイルC1を設けるのみであるから、探傷評価部12に検出コイルの切換スイッチを設ける必要がない。したがって、探傷評価部12は、従来の渦電流探傷プローブを複数個並列して配置する構成に比べて構成が簡単になる。
本発明が適用されたマルチΘプローブMPは、図8に示すように、検査体Tの検査面に沿ってキズFに垂直な矢印X1方向へ走査する。マルチΘプローブMPが検査体TのキズFの上に移動すると、このキズFの上に位置する励磁コイルC22に励磁信号が印加されると、後述するようにキズFの周囲にキズFに起因する渦電流が発生し、その渦電流によって検出コイルC1に探傷信号が誘起する。
4個の励磁コイルC21〜C24に励磁信号を印加すると、検査体Tの検査面には、励磁コイルC21〜C24に対応する位置に渦電流が発生する。したがって、マルチΘプローブMPは、1回の走査で励磁コイル4個分の範囲を探傷できる。
励磁コイルC21〜C24に順次切り換えて励磁信号を印加すると、キズFに最も近い、例えば励磁コイルC22に励磁信号が印加されると、検出コイルC1に探傷信号が発生する。したがって、探傷信号が発生したときの励磁コイルC21〜C24のいずれかを特定することにより、キズの位置を特定することができる。
ここで、マルチΘプローブMPによって、検査体Tに発生する渦電流の様子を図9A〜図9Cに示す。
図9Aは、マルチΘプローブMPを検査体Tに上に配置した状態を示し、図9Bは、検査体Tにキズがない場合の渦電流を示し、図9Cは、検査体Tにキズがある場合の渦電流を示す。なお、励磁コイルは1個のみ図示してある。
図9Aに示すように、検査体T上にマルチΘプローブMPを配置したとき、励磁コイルC21に励磁信号(励磁電流)を供給すると、検査体Tにキズがない場合には、図9Bに示すように渦電流Iが発生し、励磁コイルC21の巻き線に沿って流れる。一方、検査体Tにキズがある場合には、図9Cに示すようにキズFに起因する渦電流i1,i2,i3,i4が発生する。なお、キズFに起因して発生する渦電流は、キズFの両側(図9C中の上下)及びキズFの両端の延長側にも広く分布するが、探傷信号の発生に最も寄与する渦電流は、キズFの周囲に発生する渦電流i1,i2,i3,i4である。
検査体Tにキズがない場合、図9Bに示すように、検出コイルC1の巻き線に沿って流れる渦電流はないから、検出コイルC1には、信号は誘起しない。すなわち、検査体Tにキズがない場合には、探傷信号は発生しない。一方、検査体TにキズFがある場合には、図9Cに示すように、渦電流i1,i2によって検出コイルC1に探傷信号が誘起する。すなわち、検査体TにキズFがある場合には、探傷信号が発生する。
なお、検査体Tにキズがない場合、検出コイルC1には、信号を誘起しないから、マルチΘプローブMPの走査の過程において、マルチΘプローブMPと検査体Tの距離(間隔)が変動しても、その変動によってリフトオフ雑音が発生することはない。
以上は、他の励磁コイルC22〜C24についても同様である。
図10A〜図10Cは、検出コイルと平行なキズを探傷する例を示す。なお、検査体Tは図示を省略してある。 図10A〜図10C中に示す渦電流i1,i2,i3,i4は、図9Cに示すの渦電流i1,i2,i3,i4と同じである。
図10Aは、マルチΘプローブMPを図示しない検査体Tに対し矢印X1方向へ走査し、検出コイルC1がキズFの手前にある状態を示す。
励磁コイルに励磁信号を印加すると、キズFの周囲に渦電流i1,i2,i3,i4が発生するから、検出コイルC1には、渦電流i1,i2によって信号が誘起する。その場合、渦電流i1,i2は、互いに逆向きに流れているから、検出コイルC1には、両電流によって誘起する信号の差信号(差動信号)が発生する。すなわち、探傷信号が発生する。探傷信号は、検出コイルC1がキズFに近付くほど大きくなり、図10Aに示すように、検出コイルC1が検査体TのキズFに最も近付いた位置で最大になる。探傷信号は、渦電流i1によって誘起する信号よりも渦電流i2によって誘起する信号の方が大きいから、探傷信号の極性は、渦電流i2によって決まる。
図10Bは、検出コイルC1が検査体TのキズFの真上に位置するときの状態を示す。
検出コイルC1が検査体TのキズFの真上にあるときは、電流i1,i2によって検出コイルC1に誘起する信号は、大きさが同じで方向が反対であるから相殺され、検出コイルC1には探傷信号は発生しない。
図10Cは、検出コイルC1が検査体TのキズFを通過した直後の状態を示す。
図10Cの場合、検出コイルC1には渦電流i1,i2によって差動信号(探傷信号)が誘起する。図10Aに示す場合と同様に、検出コイルC1は、検査体TのキズFに最も近い位置にあるから、探傷信号は最大になる。その場合、渦電流i1によって誘起する信号は、渦電流i2によって誘起する信号よりも大きいから、探傷信号の極性は、渦流i1によって決まり、図10Aに示す状態の探傷信号と逆になる。
図11Aは、マルチΘプローブMPを、前述した図10A〜図10Cに示すように検査体T上を走査したときに発生する探傷信号の信号パターンを示す。
図11Bは、本発明のマルチΘプローブと比較するため、前述した従来の渦電流探傷プローブPにより検査体T上を走査したときに発生する探傷信号の信号パターンを示す。
図11A、図11Bにおいて、横軸は、励磁信号と同相の探傷信号成分(単位V)を示し、縦軸は、励磁信号と位相が90度異なる探傷信号成分(単位V)を示す。キズの深さは、検査体の板厚の20%、60%、80%の3種類である。
ここで、キズの深さが、検査体Tの板厚の20%の信号パターンをS1で示し、60%の信号パターンをS2で示し、80%の信号パターンをS3で示す。
図11Aに示すの信号パターンS1,S2,S3と、図11Bに示す信号パターンS1,S2,S3を比較すると、図11Aに示す信号パターンS1,S2,S3は、図11Bに示す信号パターンS1,S2,S3と同様に、キズの深さ毎に安定した8字型の信号パターンを描き、キズの深さに対応して位相が変化している。すなわちマルチΘプローブMPは、従来の渦電流探傷プローブPと同様にリフトオフ雑音が発生しないから、探傷信号の位相は、リフトオフ雑音の影響を受けることなく、キズの深さに対応して変化している。
加えて、11Aに示す信号パターンS1,S2,S3は、キズが浅いときも振幅が大きく、安定している。すなわちキズの深さが検査体Tの板厚の20%の場合、図11Bに示す信号パターンS1の振幅は、急激に小さくなるが、図11Aに示す信号パターンS1の振幅の変化は図11Bに示す信号パターンS1に比し小さい。したがって、本発明を適用したマルチΘプローブMPは、キズが浅いときも、従来の渦電流探傷プローブPよりも高感度、高精度で探傷できる。
ここで、探傷信号パターンの測定に用いた本発明に係るマルチΘプローブMPの大きさは、検出コイルが、長さ50mm、高さ9mm、巻き線断面積1×1mm2、励磁コイルが、外径9mm、巻き線断面積1.5×1.5mm2である。また、検査体は、厚さが1.5mmの黄銅板を用い、その黄銅板に長さ15mm、幅0.5mm、深さが板厚の20%,40%、60%、80%のスリットを形成してキズとした。励磁信号は、20kHz、リフトオフは、0.2mmに設定した。
図12は、本発明が適用されたマルチΘプローブMP及び従来の渦電流探傷プローブPにおけるキズの深さと探傷信号の振幅の関係を示す。図12は、図11A及び図11Bに示すのキズの各深さの信号パターンS1,S2,S3のピーク−ピークの大きさをプロットしたものである。なお、図11A、図11Bには、キズの深さが板厚の40%の場合の信号パターンは図示してない。
図12において、横軸は、板厚に対するキズの深さ(%)を示し、縦軸は、探傷信号の振幅を示し、振幅は板厚に対すキズの深さが80%で正規化してある。
図12中に実線で示すマルチΘプローブMPの特性と、図12中破線で示す従来の渦電流探傷プローブPの特性を比較すると、キズの深さが同じ場合、探傷信号の振幅は、本発明に係るマルチΘプローブMPの方が、従来の渦電流探傷プローブPのよりも大きくなり、キズが浅い場合も大きくなる。したがって、本発明に係るマルチΘプローブMPは、従来の渦電流探傷プローブPよりも探傷感度が高くなり、浅いキズであってもキズの有無、位置、深さを高精度で探傷し評価できる。
図13A〜図13Cは、検出コイルに垂直なキズを探傷する例を示す。なお、検査体Tは、図示を省略してある。
図13Aは、マルチΘプローブMPを図示しない検査体Tに対し矢印X2方向へ走査し、検出コイルC1がキズFの手前にある状態を示す。
励磁コイルに励磁信号を印加すると、キズFの周囲には、前述した図10Aの場合と同様に渦電流i1,i2,i3,i4が発生するから、検出コイルC1には、渦電流i3によって探傷信号が誘起する。探傷信号は、検出コイルC1がキズFに近付くほど大きくなり、図13Aに示すように、検出コイルC1がキズFに最も近付いた位置で最大になる。
図13Bは、検出コイルC1が検査体TのキズFの中間にあるときの状態を示す。
検出コイルC1がキズFの中間にあるときは、検出コイルC1の巻き線に沿って流れる渦電流はないから、探傷信号は発生しない。すなわち渦電流i1,i2は、検出コイルC1の巻き線と直交する方向に流れるから、探傷信号の発生に寄与しない。
図13Cは、検出コイルC1が検査体TのキズFを通過した直後の状態を示す。
図13Cの場合、検出コイルC1には、渦電流i4によって探傷信号が誘起する。検出コイルC1は、図13Aに示す場合と同様に、検査体TのキズFに最も近い位置にあるから、探傷信号は最大になる。渦電流i4は、流れる方向が渦電流i3と反対になるから、探傷信号の極性は、図13Aに示す探傷信号と逆になる。
図14Aは、本発明に係るマルチΘプローブMPを、前述した図13A〜図13Cに示すように検査体T上を走査したときに発生する探傷信号の信号パターンを示す。
図14Bは、本発明のマルチΘプローブと比較するため、前述した従来の渦電流探傷プローブPにより検査体T上を走査したときに発生する探傷信号の信号パターンを示す。
図14A、図14Bにおいて、横軸は、励磁信号と同相の探傷信号成分(単位V)を示し、縦軸は、励磁信号と位相が90度異なる探傷信号成分(単位V)を示す。キズの深さは、検査体の板厚の20%、60%、80%の3種類である。
ここで、キズの深さが、検査体Tの板厚の20%の信号パターンをS1で示し、60%の信号パターンをS2で示し、80%の信号パターンをS3で示す。
ここで、図14Aに示す信号パターンS1,S2,S3と、図14Bに示す信号パターンS1,S2,S3を比較すると、図14Bに示す信号パターンS1,S2,S3は振幅が小さく、不明瞭であるが、図14Aに示す信号パターンS1,S2,S3は振幅が大きく、検査体Tのキズの深さ毎に安定した8字型の信号パターンを描き、キズの深さに対応して位相が変化している。すなわち、従来の渦電流探傷プローブPは、検出コイルに垂直なキズの探傷は困難であるが、本発明に係るマルチΘプローブMPは、検出コイルに垂直なキズも高感度にしかも高精度で探傷できる。
上述したマルチΘプローブMP及びこのマルチΘプローブMPを用いた渦電流探傷装置に用いられる励磁コイルは、パンケーキ状のコイルについて説明したが、矩形状等四角形のコイルであってもよい。また、検出コイルは、矩形状に限らず矩形以外の四角形、三角形等の多角形であってもよい。
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施例に限定されるものではなく、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な変更、置換又はその同等のものを行うことができることは当業者にとって明らかである。
本発明に係る渦電流探傷プローブを備えた渦電流探傷装置は、検査体に対し非接触の状態で、検査体のキズの有無を検査することができる。
Claims (6)
- 1.1個の多角形の検出コイルと、
前記検出コイル内に配置された励磁コイルとを有し、
前記検出コイルと上記励磁コイルとは、互いのコイル面を交差させて配置されていることを特徴とする渦電流探傷プローブ。 - 2.前記検出コイルは、前記励磁コイルよりも長いことを特徴とする請求の範囲第1項記載の渦電流探傷プローブ。
- 3.前記励磁コイルは、パンケーキ状であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の渦電流探傷プローブ。
- 4.前記検出コイルは、矩形状であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の渦電流探傷プローブ。
- 5.前記励磁コイルは、前記検出コイルの巻き線に沿って2個以上並列して配置されていることを特徴とする請求の範囲第1項記載の渦電流探傷プローブ。
- 6.1個の多角形の検出コイル内に2個以上の励磁コイルを検出コイルの巻き線に沿って並置するように配置するとともに、前記検出コイルと前記励磁コイルとが互いのコイル面を交差するように配置されている渦電流探傷プローブと、
前記2個以上の励磁コイルに順次切り換えて励磁信号を印加する励磁信号発生部と、
前記検出コイルから探傷信号を検出して検査体のキズを探傷し評価する探傷評価部と
を備えていることを特徴とする渦電流探傷装置。
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