JP3572452B2 - 渦流探傷用プローブ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、励磁コイルと検出コイルとを有し、導電性の対象物の表面傷の検出に用いられる渦流探傷用プローブに関する。
【0002】
金属等の導電性の材料及び製品等の表面傷を検出するために、渦流探傷用プローブが用いられている。図5は、従来の一般的な渦流探傷用プローブの構成の概略を示す模式図である。従来の一般的な渦流探傷用プローブは、円環状の励磁コイル1と、該励磁コイル1と同径の円環状の検出コイル2とを備え、該励磁コイル1及び検出コイル2を平行に配してあり、検出コイル2の励磁コイル1と逆側の面を探傷面としてある。このような渦流探傷用プローブを使用するときには、導電性の材料及び製品等の対象物Tの表面と前記探傷面とを適宜距離離隔させて対向させ、対象物Tの表面に対して前記励磁コイル1の中心軸が略直交するように励磁コイル1及び検出コイル2を配し、励磁コイル1に交流電流を通流する。この結果、励磁コイル1の周囲には交流磁界が発生し、該交流磁界によって対象物Tの表面に渦電流が誘起される。
【0003】
対象物Tの表面に傷が存在する場合、渦電流が傷に沿って流れるため、傷が存在しない部分から傷が存在する部分へ渦流探傷用プローブを移動させたとき、渦電流の流路が変化する。このことによって、渦電流によって生じる磁界の強さ及び方向が変化し、この磁界によって誘起される検出コイル2の端子間電圧(出力)が変化することとなる。この電圧変化は、通常交流電圧の振幅と位相の変化として検出できるため、検出コイル2の端子間電圧の振幅及び位相を測定し、測定結果から対象物Tの表面の傷の有無及び傷の性状を検出するようになっている。
【0004】
このような渦流探傷用プローブは、ソレノイドコイル内に対象物を挿入して渦流探傷を行う貫通コイル等の他の渦流探傷装置に比して、種々の形状の対象物に適用することが可能であり、構造が簡単であることから、数多くの分野で用いられている。しかし、このような従来の渦流探傷用プローブでは、検出コイル2の出力に、励磁コイル1と対象物Tの表面との距離、所謂リフトオフによる位相成分が含まれており、リフトオフの変化がノイズ成分として検出されるため、傷のみを検出することが困難であり、傷の種類及び深さ等の傷の性状の解析に利用される位相解析の適用が困難であるという欠点を有していた。
【0005】
以下に、従来の渦流探傷用プローブの動作原理を説明する。検出コイル2の端子間電圧Vc は、励磁コイル1に通流される励磁電流Iexによって発生する磁界で誘起される電圧Vexと、渦電流Iinによって発生する磁界で誘起される電圧Vinとの和で表される。
Vc =Vex+Vin …(1)
【0006】
ここで、電圧Vex,Vinは、式(2)〜(5)で表すことができる。
Vex=A・(dφex/dt) …(2)
φex=B・Iex+Φ1 (d) …(3)
Vin=C・(dφin/dt) …(4)
φin=D・Iin+Φ2 (d) …(5)
但し、A,B,C,D:定数
φex:励磁電流Iexによって発生する磁界の強さ
Φ1 (d):リフトオフdの変化に伴うφexの変動成分
φin:渦電流Iinによって発生する磁界の強さ
Φ2 (d):リフトオフdの変化に伴うφinの変動成分
【0007】
従って、リフトオフdが変化した場合、これに伴って磁界φex,φinが変化するため、検出コイル2の端子間電圧Vc の振幅及び位相の両者が変化する。
【0008】
このような理由によって、リフトオフが変化したり、励磁コイル1の対象物Tの表面に対する傾きが変化した場合に、前述したような検出コイル2の出力に含まれるノイズ成分、及びリフトオフによる位相成分の変化が発生する。そこで、従来では、リフトオフを一定に保ちながら、対象物Tの表面の走査を行うことができるような構造としたり、リフトオフの量を測定し、リフトオフによる成分を検出コイル2の出力から取り除くべく前記出力を補正する構造とした渦流探傷用プローブを用いていた。このような渦流探傷用プローブは、構造が複雑であり、高価であるという問題があった。
【0009】
このような問題を解決すべく、以下のような渦流探傷用プローブが提案され、日本非破壊検査協会の平成12年度秋期学術講演大会講演概要集p131に掲載されている。図6は、日本非破壊検査協会の平成12年度秋期学術講演大会講演概要集p131に掲載された渦流探傷用プローブの構成の概略を示す模式図であり、図7は、該渦流探傷用プローブの動作原理を説明する説明図である。図6に示す如く、この渦流探傷用プローブは、円環状の励磁コイル1と、四角環状の検出コイル2とを備え、検出コイル2の一辺を励磁コイル1の内側で励磁コイル1の直径方向に渡した状態で、検出コイル2の中心軸が励磁コイル1の中心軸と直交するように励磁コイル1及び検出コイル2を配置する。
【0010】
図8は、対象物Tの表面に発生する渦電流の流路を説明する説明図である。図8(a)に示す如く、対象物Tの表面に傷がない場合には、対象物Tの表面の渦電流は、励磁コイル1の巻き線方向と同一の円周方向に流れる。この場合、この渦電流によっては検出コイル2に鎖交する方向に磁界が殆ど発生せず、このため検出コイル2には起電力が殆ど発生しない。また、この場合には、検出コイル2の出力は略0であるので、リフトオフが変化したときであっても、これによるノイズ成分が検出コイル2の出力に殆ど含まれることがない。
【0011】
また、図8(b)に示す如く、対象物Tの表面に傷が存在する場合には、渦電流は傷に沿って流れる。検出コイル2を傷の長手方向と平行にしたとき、図7に示す如く、前記渦電流によって、検出コイル2と鎖交する方向に磁界が発生し、検出コイル2に起電力が発生する。
【0012】
このような理由により、日本非破壊検査協会の平成12年度秋期学術講演大会講演概要集p131に掲載された渦流探傷用プローブでは、検出コイル2の出力にノイズ成分が殆ど含まれないため、傷の検出精度を大幅に向上させることができる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述の如き日本非破壊検査協会の平成12年度秋期学術講演大会講演概要集p131に掲載された渦流探傷用プローブにおいては、以下に説明するような理由によって、検出コイル2の出力に依然ノイズ成分を含んでいるという問題があった。
【0014】
図9は、日本非破壊検査協会の平成12年度秋期学術講演大会講演概要集p131に掲載された渦流探傷用プローブの周囲に発生する磁界の状態を説明する模式図である。図9に示す如く、渦流探傷用プローブでは、励磁コイル1をコイル径に比して長さが短いソレノイドコイルとすることが多いため、励磁コイル1によって発生する磁界は、対象物Tの表面に垂直な磁束だけを含んでいるのではなく、励磁コイル1からこれの中心軸方向へ離れるにしたがって、磁束が励磁コイル1の外側へ湾曲する。
【0015】
従って、検出コイル2の内側には、励磁コイル1から離れるにしたがい、検出コイル2に鎖交する方向の磁界が多く存在することとなり、これによってリフトオフの変化に応じたノイズ成分が検出コイル2の出力に含まれることとなる。
【0016】
また、傷の長手方向と検出コイル2とが平行である場合に比して、傷の長手方向と検出コイル2とが平行でない場合には、検出コイル2の出力が低下し、更に傷の長手方向と検出コイル2とが垂直である場合には、傷を検出することができず、傷の検出精度が低いという問題があった。
【0017】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、導体を三角形状に巻回してなる検出コイルを、三角形の一辺を励磁コイル側に配し、該一辺の対向頂点を励磁コイルから離隔させるようにして配することにより、励磁コイルによって発生する磁界の内、検出コイルに鎖交する成分を検出コイルの内側に殆ど含まず、検出コイルの出力に含まれるリフトオフの変化に応じたノイズ成分を低減した渦流探傷用プローブを提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る渦流探傷用プローブは、励磁コイルと、該励磁コイルの中心軸方向と交差する方向を中心軸方向とする検出コイルとを備える渦流探傷用プローブにおいて、前記検出コイルは導体を三角形状に巻回してなり、該三角形の一辺を前記励磁コイル側に配し、該一辺の対向頂点を前記励磁コイルから離隔させるように配してあることを特徴とする。
【0023】
本発明による場合は、検出コイルの励磁コイルから離隔された一頂点と反対側の励磁コイルの側面を対象物に対向させた状態で、励磁コイル内に交流電流を通流させることにより、対象物の表面の探傷を行う。
【0024】
図10は検出コイル付近の磁界の方向を説明する説明図である。図10(a)に示す如く、四角形の環状をなす検出コイル2では、励磁コイル1からの距離に関わらず、励磁コイル1に対して交差する方向に設けられた2辺間の距離は一定であるが、図10(b)に示す如く、三角形の環状をなす検出コイル2では、励磁コイル1から離れるにしたがって、励磁コイル1に対して交差する方向に設けられた2辺間の距離が小さくなる。従って、四角形の環状をなす検出コイル2の内側の空間のうち、励磁コイル1から離れた部分の外側の空間には、検出コイル2に鎖交する方向の磁界が多く含まれているが、三角形の環状をなす検出コイル2は、励磁コイル1から離れるにしたがって内側の空間が小さくなるため、検出コイル2の内側の空間には、検出コイル2に鎖交する方向の磁界が殆ど含まれない。検出コイル2に鎖交する方向の磁界は、検出コイル2の端子間に電圧を誘起し、このような磁界はリフトオフの変化に応じてその強さが変化するため、リフトオフの変化に応じて前記電圧も変化し、これがノイズ成分となる。従って、第1発明に係る渦流探傷用プローブでは、検出コイル2の出力に含まれるリフトオフの変化に応じたノイズ成分を低減することが可能となる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1、図2、及び図3は、本発明に係る渦流探傷用プローブの実施の形態の要部の構成を示す斜視図、平面図、及び正面図である。図中、1は励磁コイル、2は検出コイルである。励磁コイル1は、外径12mm、内径6mm、厚さ5mmのポリカーボネイト製の円環部材11の外周に、幅1mm、深さ1.5mmの溝12を周設し、該溝12内に銅線をポリイミド樹脂で被覆してなる外径300μmの巻き線13を120回巻回して構成してある。
【0034】
また、検出コイル2は、その正面視が、一辺が6mmより少し小さい寸法の正三角形状をなし、厚さが3mmのポリカーボネイト製の三角部材21の外周に、幅1mm、深さ1mmの溝22を周設し、該溝22内に銅線をポリイミド樹脂で被覆してなる外径70μmの巻き線23を100回巻回して構成してある。
【0035】
なお、励磁コイル1の形状を円環状としたが、これに限定されるものではなく、四角環状又は三角環状等、他の形状としてもよいことはいうまでもない。
【0036】
また、三角部材21を正面視正三角形状としたが、これに限定されるものではなく、例えば正面視二等辺三角形状としてもよいことはいうまでもない。
【0037】
このような検出コイル2は、励磁コイル1に対して垂直とされ、その1辺側を励磁コイル1の円環部材11の内側に、検出コイル2の下面と励磁コイル1の下面とが整合する状態まで挿入されている。
【0038】
なお、励磁コイル1及び検出コイル2は、前述したような寸法及び材質に限定されるものではなく、他の寸法及び材質としてもよいことはいうまでもない。
【0039】
以上の如く構成された渦流探傷用プローブは、例えば平板状の対象物Tの表面に探傷面たる下面が対向する状態で、対象物Tから適宜距離離隔され、この状態で対象物Tの表面を走査することによって使用される。
【0040】
図4は、本発明に係る渦流探傷用プローブを用いた渦流探傷装置の実施の形態1の構成を示すブロック図である。励磁コイル1は、発振器3に接続されており、該発振器3によって作られた交流電流が励磁コイル1に供給されるようになっている。また、検出コイル2は増幅器4に接続されており、検出コイル2からの出力が増幅されるようになっている。増幅器4は、CPU及びメモリ等からなる解析部5に接続されている。増幅器4からの出力は、解析部5に内蔵されるA/D変換器(図示せず)によってデジタル信号に変換され、CPUによって演算処理される。
【0041】
また、発振器3からの出力は、移相器6によって所定量移相され、前記解析部5に与えられるようになっている。移相器6からの出力も、増幅器4からの出力と同様、解析部5に内蔵されるA/D変換器によってデジタル信号に変換された後、CPUに与えられる。
【0042】
解析部5は、増幅器4から出力された信号と、移相器6から出力された信号とに基づいて公知の技術により位相解析を行う。解析結果は、解析部5に接続されたCRT等の表示装置7にて表示される。
【0043】
以上の如き構成により、発振器3から励磁コイル1に交流電流が与えられ、励磁コイル1の周囲に磁界が発生する。対象物Tの表面に傷が存在しない場合、この磁界によって対象物Tの表面には、励磁コイル1の巻き線方向と同方向の渦電流が流れ、この渦電流によって磁界が発生する。
【0044】
検出コイル2は対象物Tに対して垂直に配されており、しかも検出コイル2の内部の空間は対象物Tから離れるにしたがって小さくなるため、励磁コイル1の巻き線方向と同方向の渦電流によっては、検出コイル2とは鎖交する磁界が殆ど発生しない。従って、検出コイル2には起電力が殆ど発生せず、増幅器4からの出力も略0となる。
【0045】
また、リフトオフが変化したときには、励磁コイル1によって発生する対象物Tの表面付近の磁界の強さが変化し、このため対象物Tに発生する渦電流の強さが変化して、渦電流による磁界の強さも変化することとなるが、渦電流による磁界は検出コイル2と殆ど鎖交していないので、検出コイル2には起電力が殆ど発生せず、増幅器4からの出力も依然略0となる。従って、検出コイル2の出力にはリフトオフによるノイズ成分が殆ど含まれない。
【0046】
一方、対象物Tの表面に傷が存在する場合には、渦電流が傷に沿って流れ、渦電流による磁界の強さ及び方向が、対象物Tの表面に傷が存在しない場合での渦電流による磁界の強さ及び方向に対して変化する。従って、該磁界が検出コイル2と鎖交し、検出コイル2に起電力が発生して、増幅器4からの出力が変化する。
【0065】
【発明の効果】
以上詳述した如く、本発明による場合は、三角形の環状をなす検出コイルの三角形の一辺を励磁コイル側に配し、該一辺の対向頂点を励磁コイルから離隔させて配することにより、励磁コイルから離れるにしたがって検出コイル内側の空間が小さくなるため、検出コイルの内側の空間に、検出コイルに鎖交する方向の磁界が殆ど含まず、検出コイルの出力に含まれるリフトオフの変化に応じたノイズ成分を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る渦流探傷用プローブの実施の形態の要部の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る渦流探傷用プローブの実施の形態の要部の構成を示す平面図である。
【図3】本発明に係る渦流探傷用プローブの実施の形態の要部の構成を示す正面図である。
【図4】本発明に係る渦流探傷用プローブを用いた渦流探傷装置の構成を示すブロック図である。
【図5】従来の一般的な渦流探傷用プローブの構成の概略を示す模式図である。
【図6】日本非破壊検査協会の平成12年度秋期学術講演大会講演概要集p131に掲載された渦流探傷用プローブの構成の概略を示す模式図である。
【図7】日本非破壊検査協会の平成12年度秋期学術講演大会講演概要集p131に掲載された渦流探傷用プローブの動作原理を説明する説明図である。
【図8】対象物の表面に発生する渦電流の流路を説明する説明図である。
【図9】日本非破壊検査協会の平成12年度秋期学術講演大会講演概要集p131に掲載された渦流探傷用プローブの周囲に発生する磁界の状態を説明する模式図である。
【図10】検出コイル付近の磁界の方向を説明する説明図である。
【符号の説明】
1 励磁コイル
11 円環部材
12 溝
13 巻き線
2,2a,2b,2c 検出コイル
21 三角部材
22 溝
23 巻き線
Claims (1)
- 励磁コイルと、該励磁コイルの中心軸方向と交差する方向を中心軸方向とする検出コイルとを備える渦流探傷用プローブにおいて、
前記検出コイルは導体を三角形状に巻回してなり、該三角形の一辺を前記励磁コイル側に配し、該一辺の対向頂点を前記励磁コイルから離隔させるように配してあることを特徴とする渦流探傷用プローブ。
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