JP5851783B2 - 渦電流探傷用プローブ - Google Patents

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Description

本発明は、渦電流探傷法に用いられるプローブに関するものである。
金属の非破壊検査方法として、渦電流探傷法(ECT; Eddy Current Testing)が知られている。これは、励磁電流を供給したECTコイルが発生する磁束により,被測定部材に渦電流を発生させ、さらにこの渦電流により発生する磁束を表す検出信号をECTコイルの出力信号として得て、この時の検出信号が被検体の欠陥(傷)の位置、形状、深さ等を反映したものとなることから、検出信号に基づき被検体の探傷を行うものである。
しかしながら、被検体が磁性体である場合、または探傷範囲に磁性体が含まれている場合には、主に材質のばらつきに起因する透磁率の局部的な変動が生じているために、検出信号に含まれるノイズが大きくなり、欠陥の検出精度を低下させる。
透磁率の変化に起因するノイズによる検出精度の低下に対しては、検出信号を被検体の傷に起因するものか、又は、ノイズに起因するものかを判別するという方策(例えば特許文献1)と、磁気飽和用の永久磁石をECTコイルに付設して透磁率の変動の影響を解消しようという方策(例えば特許文献2)が提案されている。
特開2008−309573号公報 特開2005−55325号公報
これまでの提案により欠陥の検出精度は向上されてきているが、微小な傷には対応できない場合がある。特に、傷の探傷に一次的に係る渦電流探傷用プローブでノイズを拾わないことが、検出精度のさらなる向上に望まれる。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、透磁率に起因するとされるノイズをさらに低減できる渦電流探傷用プローブを提供することを目的とする。
本発明者は、ECTコイルとして、走査方向に対して直交及び平行な欠陥に対する検出性が優れるとされるクロスコイルを用いるとともに、透磁率の変動の影響を解消するための永久磁石を備えた渦電流探傷用プローブによるノイズ低減を検討した。その結果、クロスコイルを励磁することによってコイルを流れる電流の向きと、永久磁石から生じる磁場の向きと、が交差した渦電流探傷用プローブを用いることにより、ノイズを著しく低減できることを知見した。
この知見に基づく本発明の渦電流探傷用プローブは、所定の間隔を空けて配置される第1永久磁石と第2永久磁石を有し、第1永久磁石から第2永久磁石に向けた磁束M1と、第2永久磁石から第1永久磁石に向けた磁束M2と、を生じさせる永久磁石群と、第1永久磁石と第2永久磁石の間に配置される、第1コイルと第2コイルを有し、第1コイルと第2コイルが互いに直交するように巻き回されているクロスコイルと、を備える。
本発明のプローブは、第1永久磁石と第2永久磁石は、それぞれが直方体状の永久磁石部材からなるとともに、第1永久磁石と第2永久磁石は、互いに平行に、かつ、被検体に対して垂直に配置される。
本発明における第1コイルは、走査時に被検体と平行に対向する一対の対向部と、走査時に被検体に対して垂直に立ち上る一対の立設部と、を備える矩形状のコイル部材からなる。また、第2コイルは、走査時に被検体と平行に対向する一対の対向部と、走査時に被検体に対して直交する一対の立設部と、を備える矩形状のコイル部材からなる。
そして、本発明のプローブは、第1永久磁石と第2永久磁石が延設される向きMDに対して、第1コイルの一対の対向部が延設される向きCD1が30〜60°の角度の範囲で交差し、かつ、第2コイルの一対の対向部が延設される向きCD2が30〜60°の角度の範囲で交差することを特徴とする。
本発明によれば、透磁率に起因するとされるノイズをさらに低減できる渦電流探傷用プローブを提供できる。
本実施形態における渦電流探傷用プローブを示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。 本実施形態における渦電流探傷用プローブの、電流の流れる向きと磁束の向きとを示す図である。 (a)は本実施形態における渦電流探傷用プローブを用いて行う渦流探傷の概略を示し、(b),(c)は比較のために作製した渦電流探傷用プローブを用いて行う渦流探傷の概略を示し、 本実施形態における渦電流探傷用プローブの効果を説明するための図である。 マルチコイル型のプローブに本発明を適用する例を示している。 セグメント磁石から永久磁石を構成する例を示している。 本実施形態における渦電流探傷用プローブの保持具を示す断面図である。
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
本実施形態の渦電流探傷用プローブ(以下、単にプローブ)1は、図1に示すように、間隔を隔てて配置される一対の永久磁石3,5と、永久磁石3,5の間に設けられるクロスコイル7と、を備えている。渦流探傷は、プローブ1を、被検体20に対して永久磁石3,5が垂直になるように配置させ、かつ矢印αで示す方向に走査して行なわれる場合を説明する。プローブ1が被検体20に対してこのように配置されることを、プローブ1が正立する、ということにする。
平板状の永久磁石3,5は、各々、一端部側をN極に、他端部側をS極に着磁してある。そして、永久磁石3のN極と永久磁石5のS極、永久磁石3のS極と永久磁石5のN極、が対向して配置される。したがって、磁束MFは、図1に示されるように永久磁石3から永久磁石5に向けてと、永久磁石5から永久磁石3に向けて形成される。探傷部分に生じている透磁率の変動の影響を解消することを目的として、被検体20にこの磁束MFを作用させる。図1の場合、永久磁石3,5の下側、つまり被検体20に対向する側に生じる磁束MFが被検体20に作用する。なお、永久磁石3,5としては、磁気特性の高いNd−Fe−B系永久磁石を用いることが好ましい。
クロスコイル7は、自己誘導形自己比較方式のクロスコイルであり、各々縦置きの矩形コイルである、第1コイル9と、第2コイル11と、を備える。ただし、このコイル形態は一例であり、楕円形(円形を含む)であってもかまわない。第1コイル9と第2コイル11は、互いに直交するように巻き回されている。なお、第1コイル9と第2コイル11は、第1コイル9の全体が第2コイル11の内側(又はその逆)に配置している例を示しているが、第1コイル9と第2コイル11を一層ずつ交互に積層してもよい。
第1コイル9は、走査時に被検体20と平行に対向する対向部9a、9cと、走査時に被検体20に対して垂直に立ち上る立設部9b、9dと、を備える。同様に、第2コイル11は、対向部11a、11cと、走査時に被検体20に対して直交する立設部11b、11dと、を備える。
自己誘導形のクロスコイル7は、第1コイル9と第2コイル11が励磁と検出を同じコイルで兼ねるものであり、各検出コイルでの検出信号の差(各検出コイル間の差動信号)を出力するように構成されている。被検体20に含まれる磁性体部分で磁気ノイズを持つ場合に、磁気ノイズの影響を第1コイル9と第2コイル11の信号の差を見ることでキャンセルしやすい特徴を有する。また、クロスコイル7は、原理的にリフトオフによるノイズが発生することなく欠陥を検出できるので、欠陥を信頼性高く検出することが可能とされている。
さて、プローブ1は、永久磁石3,5に対してクロスコイル7が以下のように交差して配置されているところに特徴を有する。つまり、プローブ1が正立しているとき、永久磁石3,5が延設される向きMDに対して、第1コイル9の対向部9a(9c)が延設される向きCDが交差するように、クロスコイル7が永久磁石3,5の間に配置されている。同様に、プローブ1が正立しているとき、永久磁石3,5が延設される向きMDに対して、第2コイル11の対向部11a(11c)が延設される向きCDが交差するように、クロスコイル7が永久磁石3,5の間に配置されている。
永久磁石3,5に対して以上のように配置されたクロスコイル7に電流を流したとする。図2に示すように、クロスコイル7(第1コイル9の対向部9a、第2コイル11の対向部11a)に流れる電流の向き9i、11iと永久磁石から生じる磁束MFの向きが交差する。
本実施形態によるプローブ1の効果確認のために行った試験例を以下説明する。
被検体20に対して図3(a)に示す向きで本実施形態のプローブ1を走査することで渦流探傷を行った(実施例)。比較として、図3(b)、(c)に示す形態のプローブ100,101を作製し、同じ被検体20を用い同図に示す向きに走査して渦流探傷を行った。プローブ1とプローブ100,101は、永久磁石3,5に対するクロスコイル7の向きが異なる以外は仕様が同じである。また、永久磁石3,5を用いないでクロスコイル7のみでも渦流探傷を行った。
渦流探傷は、サイズを表1に複数のサイズの永久磁石3,5を用いたプローブ1、プローブ100,101について行い、また、クロスコイル7に印可する電流を100kHzと400kHzの2種類とした。以上の条件で検知したノイズ信号の電圧を表1に示す。
クロスコイル7のみに比べて、永久磁石3,5を設けることでノイズ信号電圧を相当低減できるが、さらに、永久磁石3,5に対してクロスコイル7を傾斜させて配置する本実施形態のプローブ1は、プローブ100、101よりノイズ信号電圧を半分以下に低減できる。
Figure 0005851783
本実施形態によるプローブ1によりノイズが著しく低減される理由は明らかではないが、本発明者が推察している理由を、図4を参照して、以下に説明する。
図4(a)、(c)に示すようにプローブ1の端部に透磁率の変動する領域が対応する場合を考える。図4(a)に示すように、本実施形態によるプローブ1の場合、透磁率の変動する領域に、渦電流が生ずる領域(白抜き矢印先端、以下同じ)と永久磁石3,5による磁場が重複するので、磁気飽和の効果が大きく、透磁率の変動によるノイズを低減できる。これに対して、図4(c)に示すように、プローブ1が永久磁石3,5に対して交差することなく対向していると、透磁率の変動する領域に、渦電流が生ずる領域と永久磁石3,5による磁場が重複しないので、磁気飽和の効果が小さく、透磁率の変動によるノイズ低減効果は小さい。
次に、図4(b)、(d)に示すようにプローブ1の中心に磁率の変動する領域が対応する場合を考える。図4(b)に示すように本実施形態によるプローブ1の場合、永久磁石3,5による磁場がクロスコイル7により渦電流が生ずる領域に均等に作用するのでノイズを低減できる。これに対して、図4(d)に示すように、プローブ1が永久磁石3,5に対して交差することなく対向していると、図中水平方向の渦電流が生ずる領域に磁場が作用しないため磁気飽和の効果が向きにより異なることになり、ノイズ低減効果は小さい。
交差の角度(図2のθ)を本発明は問わないが、以上より、30〜60°の角度で交差することが好ましく、40〜50°の角度で交差することがさらに好ましく、45°の角度で交差することが最も好ましい。
なお、上記実施形態ではクロスコイル7として自己誘導型自己比較方式について示したが、相互誘導型自己比較方式、相互誘導型標準比較方式のクロスコイルについても本発明を適用できる。
また、上記実施形態では単一のクロスコイル7を永久磁石3,5の間に配置した例について示したが、図5に示すように永久磁石3,5の間に複数のクロスコイル7を設けるマルチコイル型のプローブを本発明に適用できる。なお、図5には3つのクロスコイル7の例を示しているが、クロスコイル7の数は任意である。
上記実施形態では、永久磁石3,5が一体で構成された例を示したが、本発明は図6に示すように複数のセグメント磁石13から永久磁石3,5を構成することができる。しかもこの場合、各セグメント磁石13の接合面に電気絶縁層15を介在させることが好ましい。そうすることの利点は以下の通りである。クロスコイル7に電流を印可すると永久磁石3,5に渦電流が生じ、この渦電流がクロスコイル7による欠陥の検知結果に影響を与える。ところが、永久磁石3,5を複数のセグメント磁石13で構成し、しかも接合面に電気絶縁層15を介在させることで、渦電流の発生を抑制する。したがって、永久磁石3,5を設けても、設けない場合と同様の検知結果を得ることができる。なお、電気絶縁層15を介してセグメント磁石13を接合するには、樹脂製の接着剤によりセグメント磁石13を接着すればよい。
次に、プローブ1により実際に渦流探傷を行う際に、例えば図7に示す保持具30を用いるのが好ましい。
保持具30は、図7に示すように、プローブ1、つまり永久磁石3,5とクロスコイル7が相互の位置関係を変えることなく一体的に昇降可能な本体31と、本体31を収容するハウジング32と、本体31に接続されるバネ33と、を備えている。
作業者は、保持具30を持って被検体に対して移動させながら渦流探傷を行う。その際、被検体に凹凸があっても、バネ33によりプローブ1がその凹凸に倣いながら移動する。しかも、プローブ1は、永久磁石3,5とクロスコイル7の相対的な位置関係が変わらないので、クロスコイル7内に電流が誘起される恐れがない。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
1 渦電流探傷用プローブ
3,5 永久磁石
7 クロスコイル
9 第1コイル
11 第2コイル
13 セグメント磁石
15 電気絶縁層
20 被検体
30 保持具
31 本体
32 ハウジング
33 バネ

Claims (1)

  1. 所定の間隔を空けて配置される第1永久磁石と第2永久磁石を有し、前記第1永久磁石から前記第2永久磁石に向けた磁束M1と、前記第2永久磁石から前記第1永久磁石に向けた磁束M2と、を生じさせる永久磁石群と、
    前記第1永久磁石と前記第2永久磁石の間に配置される、第1コイルと第2コイルを有し、前記第1コイルと前記第2コイルが互いに直交するように巻き回されているクロスコイルと、を備え
    記第1永久磁石と前記第2永久磁石は、それぞれが直方体状の永久磁石部材からなるとともに、前記第1永久磁石と前記第2永久磁石は、互いに平行に、かつ、被検体に対して垂直に配置され、
    前記第1コイルは、走査時に前記被検体と平行に対向する一対の対向部と、走査時に被検体に対して垂直に立ち上る一対の立設部と、を備える矩形状のコイル部材からなり、
    前記第2コイルは、走査時に前記被検体と平行に対向する一対の対向部と、走査時に前記被検体に対して直交する一対の立設部と、を備える矩形状のコイル部材からなり、
    前記第1永久磁石と前記第2永久磁石が延設される向きMDに対して、
    前記第1コイルの一対の前記対向部が延設される向きCD1が30〜60°の角度の範囲で交差し、かつ、前記第2コイルの一対の前記対向部が延設される向きCD2が30〜60°の角度の範囲で交差する、
    ことを特徴とする渦電流探傷用プローブ。
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