本発明は、加熱や冷凍により顕著な変色をする空心菜(Ipomoea aquatica)などの農産品の新たな用途をもたらすための保存方法や加工方法、並びに変色などの品質低下を抑制した加工食品に関する。
Ipomoea aquaticaは空心菜、またはヨウ菜と呼ばれ、豊富なミネラルや特異な成分を含み、また抗酸化能力にも優れた食習慣のある作物で、温暖な地域に於いて、その優れた成長速度や再生能力に起因して周年にわたり多量かつ安価に供給される極めて優れた食材である。
しかしながら収穫後の劣化速度が速く、また加熱や冷凍などの加工後は著しく急速に変色し商品価値が低下するため、適切な加工による輸送、保管手段が見出せず、限られた時間内に消費される生産国国内での生鮮野菜としての需要や、家畜の餌としての栽培に留まり、その多量な供給量、優れた栄養価に反して用途は限られていた。
この問題を解決するために、冷凍や加熱後の変色防止方法が検討されたが、後述する遺伝的特性を異にする細分化された多種の存在、混合種の存在、混生を認識せずに試料としたことで、加工条件、栽培条件を変えても一定の結果が得られず、解決する有効手段が見出せずに今まで放置されてきた。すなわち、空心菜は加熱や冷凍により例外なく変色するものとされ、これらの加工後も変色しない空心菜は存在しないものと認識されていた。
このため、空心菜(Ipomoea aquatica)は食品としての加工が難しいとみなされ、食品としての加工、流通、含有する成分、及びその機能に関する用途に関する研究は稀で、専ら空心菜の有する水質浄化能力や土壌中の金属の吸収に研究が集中し、食品としての利用に有効な加熱等の加工に起因する変色に関する研究は殆どなされていない、放置された状態にある。
これは空心菜が土壌栽培と水耕栽培や、Bamboo leaf(またはBamboo−leaved、Green stem)とWide leaf(またはLarge−leaved、White stem)などに大別されるものの、実際はこれらが更に細分化された複数の種類、及び細分化された同種に於いても葉の形状が一部異なる混合種が混生していることが認識できずに、これらの遺伝的差異に注意を払わずに、加熱、冷凍加工による変色テストを繰り返してきたため、一定した結果が得られずに「空心菜」は加熱や冷凍で必ず変色してしまうものとして研究が放置されていたためである。
もっとも、空心菜の分類は各国で、葉幅の広狭による2分類、または水耕栽培と土壌栽培の栽培方法による2分類とが一般的に共通した分類ではあるものの、それ以上の細分化は、各国での呼称や、その包括範囲が異なり不明瞭で、またその高い成長力に起因して混生し、葉形だけを見ても様々な混合種が多く見られ、その遺伝的差異や分類は未知の点が多く、未だ細分化した分類についても研究段階で、更に、既に分類されたものであっても、空心菜はその加熱や凍結後には変色するものとの既成概念により、その種類ごとの変色の差異に関する研究がなされていないのが現状であった。
また、冷凍野菜や水煮野菜を生産する場合、次亜塩素酸での原料洗浄、表皮剥離や切断による金属イオンや酸素との接触、ブランチング水や冷却水、凍結時のグレーズ水など、加工水に含有される金属イオンや酸化促進物質との接触など、酸化が促進されていた。
これに対し従来の技術は、ブランチングによる酵素の失活や、グレーズによる空気との遮断など酸化抑制が主要な技術で、色調が受入れられるものに仕上がれば製品として通用させていた。
これらの技術では、ポリフェノール類やビタミン類などの極めて酸化されやすい物質は容易に酸化され、本来保持している抗酸化力は低下していたが、色調など外観上での大きな変化がないためこの問題は放置されていた。
ブランチングにより酵素は失活してポリフェノールの酵素的酸化は停止するものの、熱に強いポリフェノールはブランチング後も残存し、冷凍後も金属イオンなどと反応して酸化は進んでいた。
ブランチング中に於いてもブランチング水、保存中も長期にわたりグレーズ水や注水された水などの加工水と接触し、この加工水に含まれる酸、酸素や金属との反応が進んでいた。
このため、ポリフェノールの酸化、または金属との反応により変色がおこるものもあり、これらは加工不適原料として製品化されず放置されていた。
空心菜は、加熱または凍結を行うと急速に褐色に変色したり、局部的に黒色に変色したり、更には茎内部が空洞であるため解凍後に茎部に特異的に皺が発生し見栄えの悪い物となるなどの性質があり、また、生鮮では急速に鮮度が低下して損傷部分が黒変、黄色化し劣化するなどして、短時間での流通や保管にしか耐えられず、この限られた時間内に生鮮で流通できる範囲内で、また限られた用途で消費されていたことは前述の通りである。
本発明が解決する課題は、この流通、加工に適さない空心菜の流通耐久時間延長方法の開発、変色しにくい部位や変色しにくい種類の特定とその栽培方法を含めた変色しないものの集荷、変色や劣化を抑制する加工方法、変色に商品価値が影響されない付加価値のある用途の開発の4点を開発し、空心菜の有効利用を行うことにあり、本発明で特に重要な点は加熱後の変色に関してのテストを行う際に、未だ研究段階であるIpomoea aquaticaの種類の細分化を、便宜的に葉に現れる特徴的な形状により種類を細分化し、この同形状の葉のものを用いて各テストの前提条件を一致させた上でその効果を比較して確認することにあり、栽培地の土壌、栽培温度や鮮度などの違いに影響されないように、同一地域で同時期に収穫された多種が混生したものを入手し、その都度葉の形状で選別して、これを試料として用いたことにあり、これにより従来把握することができなかった傾向が把握できるようになったことにある。
第1の課題として、生鮮野菜の流通、保管方法を開発し、特に変質し易いIpomoea aquaticaの種類に関わらず、Ipomoea aquatica全般に適した方法で品質低下を抑制し、流通、保管できる許容時間を延ばし、流通可能な範囲を拡大し、従来、生鮮でIpomoea aquaticaを利用できなかった地域、時期に於いても利用を可能とする。
第2の課題として、加熱や冷凍加工による変色がしにくい、加工に適したIpomoea aquaticaの部位、及び種類を特定し、変色しにくいIpomoea aquaticaを選択して栽培することを含めた選別を行い、選択的に変色しにくいものを集荷し、これを原料とした流通に適する冷凍加工品、水煮加工品等の加工品の提供するとともに、調理後に変色しにくいという付加価値のある生鮮品も提供する。
第3の課題として、先述の通り加熱後の変色を抑制する加工方法のテストに於いて前提条件として新たに葉の形状による便宜的な遺伝的特性の一致を加えて、分類されたものごとの傾向や効果を確認し、これにより各種のIpomoea aquaticaに共通する加熱や冷凍加工による変色や変質を抑制する方法を開発し、商品価値が低下しない冷凍加工品、水煮加工品等の加工品の提供する。
第4の課題として、優れた抗酸化力を有する、大量に供給が可能な原料であり、また食習慣のある栽培、流通管理が可能な安全性の高い原料であることに着眼し、色調に商品価値が影響されにくい食品添加物や加工助剤、及び機能性食品、特定物質抽出原料としての新たな用途を開発し、Ipomoea aquaticaの有効利用を行う。
これらにより、大量に流通され、また莫大な潜在供給能力を有しながら限られた地域、時期、用途にしか利用することができなかったIpomoea aquaticaの有する、豊富なミネラルなどの栄養、優れた抗酸化力などの機能を、常時利用することができるようにすることを目的として、本発明は考案されたものである。
さらに、従来の冷凍野菜や水煮野菜の生産は、色調などの外観や価格に重点が置かれ、野菜の重要な特徴である抗酸化力は商品価値として軽視され生産されていたため、ポリフェノール類を多く含むものの中には変色することもあり、これらはその本来の栄養価値に反して、商品価値の低いまたは無いものとして扱われていた。
加熱により破壊されないポリフェノールは、ブランチングや調理加工の後も、生産工程中、保管中に酸化が進み、含有するポリフェノールの種類や量と含有する金属の種類や量、更にはこれらの組合せによって変色を引き起こし、商品価値が低いまたは無いものとして扱われていた。
従来は、葉緑素、色素や金属イオンなどに注意がひかれpH調整に終始して、極めて酸化されやすいポリフェノールが関与して変色するものには有効な解決手段が見出せないまま、水煮野菜や冷凍野菜はほとんど生産されることはなく、結果として十分な利用がされていなかった。
これらの問題が放置される原因としては、アントシアニンやクロロゲン酸など色調変化にかかわる多種多様なポリフェノールが混在することや、ポリフェノール以外の抗酸化物質の混在により、単純なpH調整や、特定添加物の添加では解決できない複雑な問題であることが挙げられる。
また、ブランチング、加熱、特に凍結により細胞が破壊され、または含有成分の変質し、生体中では本来接触することのなかった細胞内外の含有成分が接触して反応することもこの問題を複雑にしている。
本発明は強い抗酸化力を持つ、すなわち優れた食品でありながら、変色するために製品化されなかった、または商品価値が低く利用が限られていた農産品の製品化を果たし、広く簡便に利用してもらうために発案されたもので、色調に考慮しながらも、人の健康に多大な貢献を果たす農産品が元来有する抗酸化力をいかに低下させず、冷凍または常温保存して提供するかに重点を置き、発案されたものである。
まずの第1の課題である生鮮野菜としての流通方法の開発については、葉や茎を食する温暖地域で栽培された緑色野菜の保存方法としては考えにくかった0℃近辺での低温保管を、輸送保管中に不可避な遮光、密封状態を負荷し、給水、葉までの浸水などの手法を併用して、その保存耐久時間を延長するIpomoea aquaticaの流通に最適な方法を考案した。
第2の課題である加工に適した部位、種類の特定、及び栽培方法については、栽培条件による影響を排除するために同じ栽培場所で、同じ時期に収穫されたもの集荷して、同株で異なる形状の葉を有する混合種と考えられるものは除外して、葉の形状により便宜的に種類を細分化して分別し、これを用いて各々についてブランチング、冷却、凍結、解凍、再凍結、再解凍を行い、各工程での種類ごとの色調の変化を部位ごとに確認し、栽培地、集荷ロットを変えて複数のロットで実験を行い、同一条件で栽培されながら、変色の度合いの低い部位、変色の度合いが軽度な順位を葉の形状で比較し、最も変色の度合いが軽度な種類を特定した。
更にIpomoea aquaticaは切断して収穫しても、株が残っていれば切断部分から再生され、極めて短い時間で成長することを利用して、株を識別して茎部以上を切断して採取し、その切断されたものの加熱、凍結による変色を確認し、変色しにくかったものの株を分離して、これを選択的に栽培し、これを繰り返して、変色の激しい種類の排除、混合種の排除を行い、変色の少ない種類を選択的に栽培する方法を考案した。
また、本発明により既に変色のしにくい種類は特定されているため、この種類を選定し、葉形などの外観上に違いが見られないが加熱後に異なる変色度合いを示す変色混合種を、上記の方法でその混合種の混生状況を確認し、排除する方法が考案された。
第3の課題である加工による変色や変質を抑制する方法としては、先述の通り加熱後の変色を抑制する加工方法のテストに於いて前提条件として新たに葉の形状による便宜的な遺伝的特性の一致を加えて、硬度の低い中性の加工水を定めてこれを加工水として使用し、酵素的変色を防止するため一定条件でブランチングを行い、この後に主に還元性を有する溶質、アルカリ性溶質、抗酸化物質、有機溶媒を添加し、また添加する工程を変えテストを行い、分類されたものごとの傾向や効果を確認し、これにより各種のIpomoea aquaticaに共通する加熱や冷凍加工による変色や変質を抑制する添加物及び添加工程を特定した。
第4の課題である食品添加物、加工助剤としての用途開発に関しては、その優れた抗酸化力に着眼し、同様に酸化され易く不安定なDHA、EPA、アラキドン酸など高度不飽和脂肪酸の精製工程に利用することを目的に、生鮮Ipomoea aquaticaをすり潰したもの、搾り汁、またはこれより水で抽出を行ったものなどに、酸化した魚油を混合して密封した後、激しくゆすり、この後に静止、分離を行い、これら抽出物を用いた洗浄による魚油の魚臭脱臭効果、酸化物除去効果を確認した。
また、機能性食品や特定物質抽出原料としての開発に関しては、凍結乾燥品より抽出、HPLCにより含有成分の分析、含有ポリフェノール類中の有効な成分の検出を委託して行った。
まず第1の課題である生鮮野菜の流通方法について述べると、無添加の水に茎部切断面を浸水させ、遮光して0℃から5℃の温度に維持することで10日間、0℃から2℃の温度を維持することで14日間、食品として適した保存が可能であった。
テストを行った野菜はいずれも葉部、茎部を食用とする水菜、空心菜、チンゲン菜、春菊、小松菜、ほうれん草で、何れもできるだけ根の近くを切断したものを、土壌菌が残らないようによく水で洗浄し、密閉容器に多めに注水して入れ、茎部に限らず葉部も水に浸水させた状態で脱気して密閉したものと、切断した茎部のみを浸漬したものを、双方とも遮光された0℃から5℃の環境下に維持して保管を行い、また茎部切断面を浸水して常温で遮光したものと、遮光しなかったものとの保管も並行して行った。
従来、空心菜は4℃以下では葉部が黄色化するため、これ以下での温度帯での流通は不適当とされてきたが、空心菜の茎部切断面を浸水して給水しながら凍らせることのない最低限の温度帯で遮光して生体活動を遅らせ、密閉状態での耐久保存期間の延長テストを行い、並行して常温で給水しながらの遮光、射光環境下で密閉した場合の耐久保存期間も確認した。
この結果、空心菜に関しては、その優れた再生能力により、茎部切断面を浸水して常温保管を行うと茎部切断面より吸水がなされ保存性がかなり向上しこれは有効な方法ではあるが、これを遮光した場合は3日目で黄色化して製品としての価値が低下し不適当であったのに対し、茎部切断部のみ注水、0℃から2℃温度に於いては14日間保管に於いても黄色化は認められずに耐久することが認められ、また、同温度帯であれば、葉部まで浸水しても葉部に浸潤は認められるものの黄色化は認められず、14日間の保存後でも加熱後は食用として適した食感を有していたことより保存耐久期間の有効な延長方法であることが確認できた。
対象試験として、同種類の野菜を10℃の空気中で保管したところ、ほぼ全種とも4日以降ではしなびはじめ、1週間以内にはすべて食用に適さない状態となり、特に空心菜はその保管耐性が弱いことが再確認された。
この他、小松菜を除く他の野菜についても茎切断面のみの浸水、または多量な注水で葉部までの浸水させたものの少なくとも一方で、氷結直前の低温、遮光、密閉保存に於いては空心菜と同様の傾向を示しており、流通保存耐久時間の短かった葉部、茎部を加熱調理して食用とする野菜の耐久時間が延長され、従来流通することができなかった地域、業態まで流通することが可能となった。
次に第2の課題であるIpomoea aquaticaの加工に適した部位、及び種類の特定について記述する。
Ipomoea aquaticaの分類は各国で、葉幅の広狭による2分類、または水耕栽培と土壌栽培の栽培方法による2分類とが一般的な分類ではあるものの、それ以上の細分化は、一部に花の色などの分類も見られるものの、各国での呼称や、その包括範囲が異なり不明瞭で、また、混生しているため混合種が多く見られ、その遺伝的差異や分類は未知の点が多く、更には既に特定された種類に於いてもその加熱後の変色の度合いを他種と比較してその傾向を把握することがなされていなかった。
葉幅で大別された葉幅の狭い種類とは、葉幅に対して葉長が約3倍またはそれ以上ある細長い形状の葉を有する種類の総称で、Bamboo leaf(またはBamboo−leaved)、またはGreen stemと呼称されるが、これを同一条件で栽培しても、図1から図6までに示されているように葉の形状は様々に混生し、異なった複数の特徴を有する葉や、異なった形状の葉を同じ茎に有する混合種も混生しており、これらは加熱後に異なった変色の度合いを示すことが確認された。
このうち、同じ茎にある葉の形状が全て図6の形状である場合、他と異なって加熱後、及び冷凍後に於いても変色しにくい、また冷凍後、解凍後の変色度合いも軽度である明らかな傾向が確認された。
しかしながら、同形の葉を有するものでも加熱後に変色し易いものが見られ、葉の形状には現れてはいないものの、混合種である可能性のあるものも一部に認められた。
また、逆に同じ茎にある葉の形状が一部を除き図6の形状で、一部が図5の形状や他の形状のものでも、加熱後に変色しにくいものも確認された。これらの図5及び図6に示すような葉基から葉頂までの葉の端部の曲線が葉基から葉頂方向に向かって突起部を作らずに連続する形状とされる葉だけを1つの茎に有する種類を選択して栽培することが有効である。
これとは対照的に、葉幅の広いWide leaf(またはLarge−leaved)、またはWhite stemと呼称されるものの変色度合いは激しく、また、図1から図4までの形状の葉を複数有するものは強弱の差はあるものの全般的に加熱後の変色は顕著であった。
このため、図6の形状の葉だけを有するもの、または変色度合いが軽微であった図6と図5の形状の葉だけを有するものを選択的に栽培し、この後、株を識別して採取した茎の加熱による変色の度合いを確認して、変色しにくい株だけを選別して栽培し、同形の葉を有しながらも混合種で加熱後の変色度合いに関して異なる遺伝的特徴を有するものを排除することで、加熱や冷凍による加工を施しても変色しにくい、加工に適したIpomoea aquaticaの原料を集荷することが可能となる。
更に、種類により強弱はあるものの各種共通して、茎と成長した葉柄の加熱後の変色度合いには明らかな差が認められ、また芽や芽付近にある若葉と、芽より離れた位置にある成長した葉柄を有する葉の加熱後の変色度合いにも明らかな差が認められたことで、従来冷凍ほうれん草などに見られるような単純な部位分けにより葉だけを加工し商品特性とすることと異なった意味での、テストにより確認された変色し易い部位を除去して加工による変色を防止する目的で、一定の条件を満たした葉とその葉柄だけを選別して加工することで、加工後の製品の変色度合いを抑制する新たな付加価値を与えた製品の具現化が可能であることが判明した。
市販の空心菜は種類により以下の構成比が変動するため、変色傾向が最も顕著で効果の確認しにくい幅の広い種類のものを主体とする混合種を1キログラムを分別し、構成比が茎30パーセント、芽と2枚の若葉とその葉柄の合計20パーセント、それ以外の葉柄を有する葉とその葉柄50パーセントであることを確認の後、各々を1分30秒、98℃から100℃でブランチングし、この後瞬時に水で冷却を行い、変色の度合いを比較したところ、改めて成長した葉柄とその葉は他の部位と異なった変色度合いであったことが確認できた。
特に先述の、図6、または図6と図5の形状の葉だけを有するものは全体的に変色の度合いが軽微で、成長した葉とその葉柄は、一般的に空心菜に見られるような褐変や黒変は殆ど認められず、これらを選択的に集荷することで、変色しないIpomoea aquatica加工品の生産が可能であることも判明した。
次に第3の課題である加工による変色や変質を抑制する方法としては、エタノールの添加が有効で、またグルタミン酸などのアミノ酸の添加も色調保持に若干ながら効果があることが認められた。
特にエタノールは、エタノールを添加した溶液に、加熱直後Ipomoea aquaticaを瞬時に浸漬することで、無添加のものに比べて、葉、葉柄、茎ともに緑色が明るくなり、またエタノールを添加して凍結したものは解凍後にIpomoea aquaticaの茎に特異的に発生していた皺が発生しなくなるなど、明らかな効果が確認された。
エタノールの変色防止効果に関しては、これもやはりIpomoea aquaticaの種類により強弱はあるものの、各種共通して変色防止、葉部色調の鮮緑色化の効果が見られ、皺に関してはIpomoea aquaticaの種類による差見られず共通して同様の効果を示した。
またその他の変色防止、葉部色調改善に関しては、Ipomoea aquaticaの種類に変色度合いは影響されるものの、冷却水、グレーズ水などの加工水の硬度、pH、酸化還元電位、及び溶存酸素も合わせて影響していることが確認されている。
更には、アミノ酸水溶液による浸漬や、コンニャク粉末やシュウ酸の添加は、解凍後の色調への好影響は凍結、解凍を繰り返すことで、水だけのものと比較して徐々に差が見られ、効果を有することが認められている。
第4の課題である食品添加物、加工助剤としての用途としては、魚油の精製に有効であることが以下の簡便な方法で確認された。
魚油は適度な魚臭や酸化した臭が付くように、内臓やえらを除去したかまや中骨などの非可食部を単純加熱し溶出させた、ある程度酸化の進んだものを用い、この魚油と、Ipomoea aquaticaをすり潰して同重量の水を加えてフィルタープレスして短時間で抽出した抽出液を、魚油1に対し抽出液6の容積比率で加え、密封した後に激しく振って混ぜ合わせ、これを1日間5℃で水層と油層に分離させた後、開封して臭気を確認し、またこれを密閉して激しく振り、同様の分離を行ったい後に再び臭気を確認する作業を4回繰り返した。
対象として同じ魚油に、抽出液の代わりに水を魚油1に対して水6の容積比率で加え、同様の確認作業を行った。
初回の確認に於いては差異が明確ではなかったものの、2回目以降は徐々に差が明確となり、4回目の確認に於いては殆ど魚臭がなくなっていたことより、水抽出液による脱臭効果が確認され、また脱色効果は得られなかったものの、酸化物除去効果も認められた。
また、後述の方法により、chlorogenic acidなどのポリフェノール類の抽出が検出されたため、ポリフェノール類の魚油の酸化防止効果が明らかなことと併せ、Ipomoea aquaticaより水溶液で抽出、または有機溶媒で抽出された抽出物により魚油の酸化防止効果が得られることが判明した。
また、機能性食品に関しては、上記の冷凍乾燥物より後述の実施例で示す方法で、caffeoylquinic acid誘導体が含有されていることが確認され、部位としては葉部の方が茎部に比べて含有量が多いことが確認された。
この物質はHIVの活動を抑制するtricaffeoylquinic acidで、現時点で確認されている含有量は少ないが、Ipomoea aquaticaはエイズ発症件数の多いアフリカ、東南アジアで周年に渡り、大量に供給され容易に入手が可能で、また優れた再生能力、極めて早い成長速度により急速に増産が可能、かつ食習慣があることより、これより検出されたことは、従来同物質が検出されたサツマイモの葉とは季節的、地域的原料供給事情が明らかに異なり、有効な抽出原料となることが判明した。
また、この他にポリフェノール類で注目を集めているchlorogenic acid、dicaffeoyquinic acid(3,5−dicaffeoyquinic acid)など抗変異原性で注目されているcaffeoylquinic acid類の含有が認められた。
また、抗酸化力をいかに低下させず、冷凍または常温保存して提供するかの課題については、ポリフェノール類の酸化によるオルトキノンの生成、ポリフェノール化合物と鉄が反応して第2鉄化合物ができるなどの、含有ポリフェノール類の工程中および製品保管中での酸化防止を行うことで、抗酸化力の低下や変色を防止することが必要とされる。
前述のポリフェノール類の酸化防止は、従来からの技術であるブランチングによる酵素失活やグレーズによる酸素の遮断などの酸化抑制に対して、生産工程中での酸化、金属イオンの混在などのある程度の酸化がなされることを踏まえ、能動的に還元力を高めることが必要とされる。
ポリフェノールオキシダーゼの素早い失活や、加工機器や水に起因する金属イオンや溶存酸素の低減または排除とともに、工程中で常に被加工物に接触、または吸収される水の水質が特に重要な要因となる。
被加工物中のポリフェノールの酸化は、硫酸や硝酸などの強酸イオン、塩素や酸素の存在、鉄や銅の存在やイオンの価数、pH、酸化還元電位には大きく影響することが認められるため、ブランチングの工程で使用する水、冷却水が被凍結物内に吸収される冷却工程で使用する水、凍結後に長期間接触するグレーズ水はこれらの点を考慮して加工水の水質を選択する必要がある。
特に、凍結保管中に変色するような、クロロゲン酸などの特異なポリフェノールを含むものや総ポリフェノール量の多いもので、かつ鉄を多く含むものを加工する場合は、加熱や凍結で細胞が破壊され、ポリフェノールと接触する金属を排除することができないため、酸化還元電位が低い水を工程で使用し、反応を阻害する必要がある。
また、硫酸や硝酸などの強酸イオン、鉄や銅などの特定金属、溶存酸素や塩素を排除、または低減した水を使用することも有効な手段である。
ポリフェノールの酸化を抑制するには、アルカリ性を呈する水を使用することも有効であるが、被加工物の含有成分の中にはアルカリ性で変色するものや、塩基と反応して変色するものもあり、被加工物の含有成分や加工水の含有または添加成分、および両者の相性を以下に記す手法で事前によく検討する必要がある。
検討方法としては、原料をよく洗浄した後に、水質調整のための添加物や使用する水を少量添加して、無酸素下で磨り潰し、無酸素状態で密封して色調の経時変化を確認する方法が簡便である。
特に変色の激しい空心菜やしそなどを加工する場合は、初留を除いた蒸留水に改めて重曹などの弱酸とナトリウム、カリウム、カルシウム塩を添加し、強酸イオンや鉄、銅を排除した水、更に酸化還元電位を低下させた水、溶存酸素を低減した水を使用することが好ましい。
また、消化酵素を添加して原料を消化せず、加熱や凍結で細胞を破壊の後磨り潰すことも有効で、酵素に関連するpH調整のための酸や塩基などの添加、使用を避けることもでき、酵素や酸化物に含まれる不純物の混入も防ぐことにもなる。
また、空心菜は原型を保った加工製品とした場合、芽や茎の局部的な変色が見られるが、抽出や粉砕などを行った場合は比較的安定した葉の緑色と混ざり、色調が均一化され違和感のない色調の加工品に仕上がる。
更には高濃度のエタノールで抽出したもの、浸漬した後に磨り潰したものは鮮やかな緑色を呈し、商品価値の高い抽出物が得られる。
これとは逆に、液体窒素、ドライアイスを吹きつけ、または液体窒素や低温のエタノールに浸漬して急速に凍結して、細胞破壊を極力低減してポリフェノール類と金属の接触を抑制することも有効な手段で、この場合は高い凍結率を保持して凍結保存するか、または粉砕せず真空乾燥した後に酸素を排除した環境下で保存することもポリフェノール類の抗酸化力を保持しながら保存する有効な手段である。
近年では空心菜が湖沼の水質浄化で脚光を浴び、日本に於いても徐々に生産されるようになってきたが、冷凍保存ができず供給時期が限定され、生産量も未だに少ない。
また空心菜は温暖な国で大量にかつ安価に生産されながらも、加工や保存中に変色するため製品化がなされず、この問題を商業的に解決すべく様々なテストが行われたが、未だに成果が得られていない。
今回、空心菜やさつまいもの葉などに代表される極めて顕著な変色の原因を、従来考えられていた含有金属イオンの酸化、酵素的酸化のみとせず、加熱後に残存するポリフェノールの酸化や金属イオンとの化合物の生成など、加熱後も発生するポリフェノールの反応に着眼し、この反応を防止する手法を開発し、これにより問題が解決した本発明は、従来加工に不適とされていたこれらの特異かつ高ポリフェノール含有原料の加工および保存を可能とした有益なものである。
特に空心菜は、短期間で生育し、根を残すことで再び生育する、更には水耕栽培が可能で湖沼の水質浄化にも優れ、かつ栄養価に富み中国や台湾では当該品の摂取による生理的効果までも公表されている、優れた食材であるにもかかわらず、変色に起因して製品化がなされなかったものが、製品化できるようになったことは、極めて有益である。
また、日本における空心菜の栽培についても、加工用途が広がることで、消費の拡大が期待でき、生産が拡大することで、水質浄化が一層促進されることとなるなど、本発明による効果は多岐にわたる。
更には、同時にテストを行ったしその葉、春菊などポリフェノール含有量の多いものも空心菜と同様の傾向を示した。
また本発明は、実際の生産工程を勘案して、地域性のある天然水に対して、地域を問わず入手または生産可能な、蒸留水、電解水を主体にテストを行い、実用性の高い考案とした。
従って適合水を購買、または蒸留や電解水生産設備を備えることで、今まで果たせなかった当該冷凍製品の商品化が様々な地域で可能となり、その原料の膨大供給量や低価格に起因して、安価で安定した、かつ健康に欠かせない抗酸化力の優れた製品の供給が可能となる。
今後はワインやココアなど抗酸化力が製品特性として認識されていく傾向にあり、冷凍野菜についても同様な傾向が想定され、生産者間、ロット間での抗酸化力に起因する製品格差が生まれていく可能性もあり、その意味でも一石を投じる有効な考案である。特に、本発明で変色が抑制された、ポリフェノール類含量の多い優れた抗酸化力を有する空心菜加工品および空心菜抽出物は、関心の高い食材となることが見込まれる。
また発想の転換により、空心菜の製品化を妨げていた原因物質そのものである特異かつ高含有量ポリフェノール類を、逆に強い抗酸化力や活性酸素除去能を有する優れた商品特性ととらまえ、この特性を維持する加工方法を以って健康に貢献する商品を創造することで、従来加工されずにいる空心菜の加工利用を可能とした有益な考案である。
先述の通り空心菜は、温暖な地域では短期間で生育し、根を残すことで再び生育する、水耕栽培が可能で湖沼の水質浄化にも優れ、かつ栄養価に富んだ優れた食材であるにもかかわらず、変色に起因して加工利用なされなかったものを製品化できるようになったことは、極めて有益である。
また農産副産物、例えば豆類の葉や茎などののように、多種多様のポリフェノールを多く含有しながら、食習慣がなく肥料や飼料として処理され含有するポリフェノール類を無駄にしている事例は多く、これらよりポリフェノール類を抽出した後に肥料や飼料として利用することを可能とすべく、本発明は極力不要な添加物を使用せず含有するポリフェノール類の抗酸化力を保持するように考案されており、今後は本発明を以ってこれらの農産副産物の有効な活用が期待できる。
また、多くの抽出原料は特異な品種や特異な部位を用いるため、原料集荷が困難で不安定かつコストも高く品質も不安定になりがちであるのに対して、本発明で使用する原料の空心菜は温暖地域での栽培コストの低さ、高い再生能力に起因した多量の供給、生鮮で既に構築されている物流などにより高鮮度、低価格、大量供給が可能で、農産副産物も供給時期は集中するものの安価で、抽出原料として量、価格ともに申し分ない。
また、原料の集荷の容易性、供給量、価格や、生産工程の簡素化や加工設備の軽減が可能であことに起因して、低価格での商品提供が可能となる。
さらには日本に於いても近年では空心菜の湖沼の水質浄化能力が脚光を浴び徐々に生産されるようになってきたが、冷凍保存や加工利用ができず温度の高い夏場だけの市場供給やコストのかかる温室栽培での生鮮流通にとどまり、生産量も未だに少ない。
本発明により、日本における空心菜の栽培についても、加工用途が広がることで需要の拡大が期待でき、これにより栽培が促進されることで日本での水質浄化が一層促進されることとなるなど、本発明は環境浄化の促進にも好影響を及ぼすものである。
空心菜を加工する際、シュウ酸またはシュウ酸塩を添加して加工を行うと顕著な変色抑制効果が見られ、有効である。食品添加物であるシュウ酸を添加する場合、日本に於いては最終食品の完成前に除去することが義務付けられている。一方、食品の中にはシュウ酸塩を多く含むものがあり、代表的なものにホーレン草やコンニャクなどがある。従って、これら食品と一緒に加工することや、これら食品の抽出液を用いて加工することも有効な方法である。
また、空心菜をシュウ酸やシュウ酸塩含有水でブランチング、ブランチング後の冷却を行うと顕著に変色が抑制された。更に、一度褐変した部分や局部的に黒色部分のある空心菜も、再度シュウ酸やシュウ酸塩含有水でブランチングや、ブランチング後の冷却を行うと、変色の程度が軽減され、シュウ酸やシュウ酸塩を含有する水で処理することは空心菜の変色軽減または抑制に顕著な効果を示した。これにより、空心菜の加工による変色は抑制され、製品価値のある商品化が可能となった。
温暖な地域に於いて空心菜は、短期間で生育し、根を残すことで再び生育する、更には水耕栽培が可能で湖沼の水質浄化にも優れ、大量に、かつ安価に供給されている食材で、その栽培の容易さに起因して更なる増産が可能な状態にある。
また、空心菜はポリフェノール類などを豊富に含む抗酸化力に優れたアルカリ食品で、栄養価に優れ、中国や台湾では摂取による生理的効果までも公表されている、優れた食材である。
本発明により、加工による変色が抑制された保存可能な、安価で大量に安定供給が可能な、かつ栄養価に富んだ、優れた空心菜加工品の供給が可能となることは極めて有益である。
Ipomoea aquatica Forskの葉幅の狭い種類(Bamboo leaf)のうち、葉基付近の葉部に丸みを帯びた突起が左右の一方、または双方にあるものを示した図である。
Ipomoea aquatica Forskの葉幅の狭い種類(Bamboo leaf)のうち、葉基付近の葉部に鋭角の突起または窪みが左右の一方、または双方にあるもので、全体的な葉の形状が三角形状であるものを示した図である。
Ipomoea aquatica Forskの葉幅の狭い種類(Bamboo leaf)のうち、葉基に接合する葉部が直線状であるもので、全体的な葉は鋭角の三角形状であるものを示した図である。
Ipomoea aquatica Forskの葉幅の狭い種類(Bamboo leaf)のうち、葉基付近の葉部に葉基を囲むような膨らみ、または葉頂と反対方向に突き出した膨らみが、左右の一方または双方にあるもので、全体的に矢や鏃の形状をしているもの、矢の形状をしている幅の広いIpomoea aquatica Forskの葉幅の広い種類(Wide leaf)の葉形であるArrow shapeと言われるのの葉幅が極端に狭くなった形状のものを示した図である。
葉基から葉頂までの葉の端部の曲線が葉基から葉頂方向に向かって突起部を作らずに連続する形状の葉の一例を示す図であって、Ipomoea aquatica Forskの葉幅の狭い種類(Bamboo leaf)のうち、葉基に接合する葉部が直線状で、図3のものとの違いは全体的な葉の形状が三角形状ではない笹型に近いものを示した図である。
葉基から葉頂までの葉の端部の曲線が葉基から葉頂方向に向かって突起部を作らずに連続する形状の葉の一例を示す図であって、Ipomoea aquatica Forskの葉幅の狭い種類(Bamboo leaf)のうち、葉基の付近の葉部が葉基を頂点とした丸みを帯びた、全体的な葉が笹型であるものを示した図である。
未加熱のIpomoea aquatica Foreskの葉幅の広い種類(Wide leaf)の茎、芽、若葉、葉柄、葉の一例を示した図で、加熱後の変色度合いの激しい部分を黒塗りで示した図である。
第1の課題である生鮮野菜としての流通方法については、一度でも凍ると葉部をはじめとするほぼ全ての部分に暗緑色の変色とともに細胞破壊による軟化が認められるため、必ず0℃以上を維持することを前提に、極めて0℃に近い温度で保存することが好ましい。
葉部まで浸水させると葉部内部へ水が浸潤して暗緑色化し、加熱後の食感に差異は認められなかったものの外観上で商品価値が低下することも予想されるため、茎部切断部分のみを浸水させ、葉部を浸水させずにできるだけ水平に近い状態に寝かせて保管することが好ましい。
更に、野菜は良く洗浄し、土壌細菌の混入を極力避け、また、注水する水も極力生菌数の低いものを多量に使用することや、注水する水に抗菌作用を有する物質を添加すること、凍結寸前の温度を維持すること、完全な遮光などが保管許容時間を延ばす重要な点となる。
また、常温保管で茎切断部分の浸水に関しては、その優れた再生能力によりかなりの期間の保存が可能ではあったが、これを遮光すると3日目で完全に黄色化するため、常温給水保管の場合は射光しながら、低温給水保管の場合は遮光しながら保管する。
第2の課題である変色しにくい部位に関しては、茎、芽、芽付近の若葉2枚とその葉柄を分離して、成長した葉とその葉柄のみとし、1分30秒間、98℃から100℃で葉が重なって斑が発生しないようにブランチングし、ブランチング後は数秒のうちに冷却水に浸漬して完全に空気と遮断して冷却を行い、除去した部分を同様の処理したものとの加熱後の変色度合いの差を、成長した葉と若葉や芽と、成長した葉柄と茎とで確認すると良い。
この際、ブランチング後の冷却までの秒単位での時間が最も重要で、この他にブランチングの温度、時間の不足や不均一さ、ブランチング後の冷却中での水面上での空気との接触など、些細なことで変色が進むことを留意しておく必要があり、また除去対象部位が混入すると、その混入率が高くなればそれに従って加熱後の全体的な変色度合いの両者間格差が不明確となること、更には後述のエタノール添加により葉部、茎部ともにある程度色を明るくすることができるため、濃緑色と茶色は似てはいるものの明確に区別しておく必要がある。
変色しにくい部位は、種類を問わず同様の傾向を示すが、特に変色の激しい後述の幅の広い種類は、やはり特定部位は同種の他の部位に比べての変色度合いは軽度でも、他種の同部位に比べては変色度合いが強く、できるだけ葉幅の狭いものの各種が混生したものなどの方が色調の良いものができ、更に、後述の図6や、図6と図5だけを同じ茎に有するものは、加熱後の変色度合いは茎でも軽度で、その葉柄とそれに生えている葉は加熱後でも殆ど変色することはないことを併せて確認をすると良い。
加熱後に変色しにくい種類、及び栽培に関して記述すると、葉幅の広いWide leaf(またはLarge−leaved)、またはWhite stemと呼称されるものの加熱後の変色は顕著であり、また、葉幅の狭いBamboo leaf(またはBamboo−leaved)、またはGreen stemと呼称されるもののうち、図1、図2に示す葉基の近傍に突起がある葉の形状を有するものも変色し易い。なお、図1〜図6において、1は成長した葉部、2は葉部(1)の葉柄、3は葉基、4は葉頂、5は茎、6は芽、7は若葉、8は若葉(7)の葉柄、9は葉基と葉部の接合部分から半径3.0センチメートルの範囲、10は葉部の突起、11は葉部の窪み、12は葉基と接合した葉部の直線状を特徴とする部分、 13は葉基を頂点とした葉部の丸みを特徴とする部分をそれぞれ示す。
一方、変色しにくい種類としては前述の通り、図6の形状の葉だけを同じ茎に有するものの変色度合いが軽く、これにも葉の形状に現れていない変色度合いの強い遺伝的傾向を持つもの存在も考えら、現に他と異なる変色度合いを示すものも見受けられるため、識別して採取した茎の加熱後の変色が最も軽微な複数の株を選択して栽培して増やし、またそれらを同様の手法で確認を繰り返し、混合種を徐々に、または定期的に排除していくと良い。
Ipomoea aquaticaは高温多湿の環境下では、極めて成長速度の速い植物で、また根から上数センチの茎を残すことで再生する再生能力に優れた植物でもあることより、他の植物に比較して極めて早い速度で世代交代が可能で、この点が前述の混合種の排除には有効であるものの、逆に外部より異種が混入する可能性も大きいため、隔離して栽培することが好ましい。
第3の課題である加工による変色、変質や変質を抑制する方法については、先述の通りエタノール水溶液に浸漬することが好ましい。
浸漬方法としては、1分30秒、98℃から100℃で葉が重なって斑が発生しないようにしてブランチングを施し酵素を失活させた後、できるだけ早く、できれば3秒以内でエタノール水溶液に浸漬し、水面に被浸漬物が出ないように沈めながら冷却、浸漬することに留意する。
この際のエタノール濃度は3から5vol%を用いるが、エタノール濃度が高ければ高い程、変色防止、皺の発生抑制には効果があり、極論をすれば無水エタノールが最も好ましいが、実際の製造工程やコスト、また食用で利用する際のエタノール臭や味を勘案し実工程では上記の3から5vol%としたが、効果を確認する場合は10から20vol%で確認すると効果が一層明瞭に確認できる。
また、加熱、凍結の後に解凍した場合の皺の発生防止、及び変色防止効果、葉部の鮮緑色化の確認に関しては、ブランチング後すぐに外気との接触を遮断すること、被加工物の冷却による収縮を利用してエタノールの浸透させることも兼ねて、ブランチング直後に冷却水にエタノール水溶液を用い、このまま注水された状態で注水ブロック凍結し、解凍に於いても解凍が完了した段階で開封して効果を確認すると、一層効果が明瞭に確認できる。
特にブランチング後に見られる変色は極めて早い速度で発生し、一度変色してしまったものは浸漬を行っても可逆的に戻すことはできないため、変色度合いの軽い種類のIpomoea aquaticaでも軽微ではあるもののブランチング後は変色しやすい状態にあるため、変色の激しい種類のIpomoea aquaticaはもとより、ブランチング後はできる限り早期に空気との接触を遮断し、エタノール、シュウ酸、アミノ酸水溶液などに浸漬し変色を抑制することが重要で、またリン酸塩、有機酸塩など保水効果のあるものとエタノールの混合溶液に浸漬して、皺の発生を防止することも有効である。
第4の課題である食品添加物に関しては、魚油の精製について効果が認められ、これを簡便で最良の方法で行うと以下の通りである。
魚油の脱臭や酸化物除去についての最良の方法は、まず使用する魚油の酸化が軽度であるものとするため、鰊の肉を湯で煮熟して抽出し、この魚油と、すり潰したIpomoea aquaticaに対し同重量の水を加えてフィルタープレスし、素早く抽出した抽出液を、魚油1に対し抽出液6の容積比率で加え、密封した後に激しく振って混ぜ合わせ、これを1日間5℃で水層と油層に分離させた後、開封して臭気を確認し、またこれを密閉して激しく振り、同様の分離を行ったい後に再び臭気を確認する作業を4回繰り返す。
使用する魚油の酸化度合いが軽度であれば、Ipomoea aquatica抽出液が含有するポリフェノール類の抗酸化力が一層有効性を発揮し、より臭気の少ない、酸価、過酸化物価の低い魚油の精製が可能となる。
また当然のことながら、臭気を確認する度に、新たな抽出液に入れ替えて同様の作業を行うと更に好結果が得られる。
重複するが、東南アジアの缶詰工場を有する魚油産出国では、Ipomoea aquaticaは大量かつ安価に入手が容易な作物で、また抽出は簡単に行える水抽出物であり、低コストで大量に使用が可能なため、コスト的にも魚油精製の初期段階で加熱により痛んだ魚油原料の水洗浄と同様に使用することもできる程で、実際の工程に於いては、水洗浄後にこの抽出物で再度洗浄を行う工程を組入れて魚油原料をきれいにして、この後に遠心分離、ウインターリング、蒸留などの精製工程を行うと良い。
また、このIpomoea aquatica抽出液の抗酸化力を維持しながら精製して水溶液とし、蒸留前の段階でも、再度、脱臭、酸化物除去の洗浄工程に使用して、より魚臭の低減を図ることも有効と考えられる。
また、機能食品として有効成分の含有の有無に関する確認については、以下の方法で抽出、テストを行い検出がなされたため、これと同様、または同等の方法で含有を確認すると良い。
試料はIpomoea aquatica混合種の凍結乾燥品、分析条件は、ColumnはinertsilODS3(4.5x250mm)5μm、Mobile phase Aはwater:acetonitrile:acetic acid=90:10:0.1、Bはwater:acetonitrile:acetic acid=55:45:0.1、First stage A:B=isocrtic100:0(10min hold)、Second stage A:B=linear gradient 100:0 to 0:100(40min hold)、Third stage A:B=isocrtic0:100(10min hold)、Velosity 1ml/min、UVdetection at 320nmであった。
まず、第1の課題であるIpomoea aquaticaを含む生鮮野菜の保存耐久期間の延長について述べる。
できるだけ新鮮な空心菜を傷つけないように留意しながら、土壌菌が残らないようによく水で洗浄を行い、茎部切断面を再度きれいに切断し直し、菌数の少ない水を注水してこの切断部分が必ず浸水された状態を保ち、暗所で遮光して0℃から2℃の環境下でできるだけ水平に近い状態に維持して保管を行う。
これにより、従来鮮度低下が著しく、数日間しか保存ができなかったIpomoea aquaticaの保存耐久期間が10日間を超える期間まで延長できることが確認できる。
次に、第2の課題であるIpomoea aquaticaの加工に適した部位、及び種類の特定について記述する。
部位については、Ipomoea aquaticaのBamboo leafが主体の混合種を、茎、芽と芽付近の若葉2枚とその葉柄、それ以外の成長した葉とその葉柄とに3分割し、各々を1分30秒間100℃で正確に斑の無いようにブランチングを行い、瞬時に水で冷却し、3者間での茎と葉柄、葉の変色度合いを確認し、これを複数の検体で行うと一定した傾向が確認できる。
この際、従来この問題を複雑化させ、結果を惑わせて問題解決を阻害した要因である、葉幅の違い、図1から図6に示した葉の形状の違い、栽培環境の違いで効果の有効性に差が生じることが予想されるため、比較する場合は同一栽培地で同時期に収穫したものを葉の形状により選別して用い、異なる種類のものでテストを行い、複数種を、複数回テストして、変色度合いと部位の間に一定の傾向が確かに存在することを確認することが好ましい。
またこの際、芽近くの若葉は、変色度合いの強いものと、他の成長した葉と同程度のものとが混在するが、出来上がる製品の色調を考慮して若葉は2枚分別することとし、また6枚以上の葉柄を有する葉が同じ茎にあるものについては3枚目の若い葉にも変色の強いものも見られるが、頻度が少ないため、これは除去対象とはしない。
更に、これらを踏まえて、各部位を切り離さずにそのまま上記のブランチング等の加工を行い、異なる葉の形状を有する複数の検体で部位ごとの変色度合いの違いを確認することもできる。
併せて、混合種の中から図6の葉の形状だけを有するものを複数選び出し、他の葉の形状を有するものとの上記のブランチング等の加工後の変色度合いについても違いを確認することができる。
この際も、図6の葉の形状だけを有するものを複数回テストし、混合種の例外が存在することを留意する。
次に第3の課題である加工による変色、変質を抑制する方法としては、効果を一層明瞭にするためエタノール濃度を10から20vol%とし、このエタノール水溶液と対象試験として水冷却を用いて、先述の通り、葉の形状による種類の差や産地、鮮度、ブランチングや冷却までの時間など細心の注意を払い、対象テストと同等の条件でテストを行う。
更に、この確認テストに於いては、使用した冷却水ごと密閉して、被凍結物が水面で空気と接触しないように脱気して、被テスト品の一部でも空気と接触していない状態にすることに留意してそのまま凍結を行い、48時間後に解凍して、両者の違いを葉や葉柄の色調、茎の皺について確認する。
これも、異なる葉の形状のものを準備して、テスト品、ブランク品ともに同じ条件となるように検体の選定に細心注意を払わないと、正確な傾向が得られないことか想定されるため、この点に留意する。
第4の課題である食品添加物、加工助剤としての用途に関して、魚油の洗浄、精製のための用途を記述する。
魚油の脱臭や酸化物除去についての方法は、まず国内魚油精製メーカー使用する魚油が品質の良いものを集荷していることを考慮し、酸化が軽度であるものとするために鰊の肉を煮熟して抽出し、この魚油と、すり潰したIpomoea aquaticaに対し同重量の水を加えてフィルタープレスし、素早く抽出した抽出液を、魚油1に対し抽出液6の容積比率で加え、密封した後に激しく振って混ぜ合わせ、これを1日間5℃で水層と油層に分離させた後、開封して臭気を確認し、またこれを密閉して激しく振り、同様の分離を行ったい後に再び臭気を確認する作業を4回繰り返す。
対象として同じ魚油に、抽出液の代わりに水を魚油1に対して水6の容積比率で加え、同様の確認作業を行う。
これにより洗浄された魚油の臭気に関しては官能テストで、また過酸化物価は測定値で判定する。
また、機能性食品に関しては、以下の条件で分析を行い、caffeoylquinic acid誘導体、chlorogenic acid標準品のHPLCチャートでその含有を確認する。
試料はIpomoea aquatica混合種の凍結乾燥品、分析条件は、ColumnはinertsilODS3(4.5x250mm)5μm、Mobile phase Aはwater:acetonitrile:acetic acid=90:10:0.1、Bはwater:acetonitrile:acetic acid=55:45:0.1、First stage A:B=isocrtic100:0(10min hold)、Second stage A:B=linear gradient 100:0 to 0:100(40min hold)、Third stage A:B=isocrtic0:100(10min hold)、Velosity 1ml/min、UVdetection at 320nmであった。
次に、最も変色の激しい空心菜を例にとって説明すると、原料を収穫する際はセラミックスなどの非金属で切断をした後、素早く切り口の土や付着物を洗い落として溶存酸素の低い蒸留水に切り口を浸す。
生産機器は鉄や銅の錆の混入を避けるため、不動態皮膜を有するステンレス、またはプラスチックやセラミックスで代用可能なものはこれを用いる。
ブランチングする際、水がアルカリ性のであると、被加工物つまり空心菜の葉が軟化させ不適当なため、溶存酸素の低い蒸留水で行うことが好ましい。
吸収されたり、長時間接触するブランチング後の冷却水、注水の水、ブロック凍結水、グレーズ水はコストとの見合いとなるが、できるだけ不純物、特に強酸、鉄、銅の少ない、酸化還元電位の低い、溶存酸素の低い水で、pH9.0前後を呈する水が好ましい。また、ブランチングで細胞組織が破壊された後の工程では、上記の水に少量のエタノ−ルを加えて使用することも有効である。
特に空心菜の加工食品としては、使用直前または使用中における、pHが8.0以上であり硬度100以下でかつ溶存酸素が5.0mg/L以下の水、酸化還元電位が+200mV以下であり硬度100以下でかつ溶存酸素が5.0mg/L以下の水、溶存酸素が4.0mg/L以下の水、酸化還元電位が0mV以下の水、若しくはアルコ−ル類を添加した水から選ばれる水を用いてブランチング後の冷却、浸漬、注水ブロック凍結、グレーズのいずれかを被加工物に対して行なうことで加工されることが好ましい。酸化還元電位200mV以下の水を冷却及び浸漬に使用する場合については、連続して又は一定の頻度で水を補う必要がある。
以下は、今まで保存中に顕著な変色を引き起こし製品化が果たされなかった冷凍空心菜の生産を例に説明する。
原料を収穫する際はセラミックスなどの非金属で切断をした後、素早く切り口の土や付着物を洗い落として溶存酸素の低い蒸留水に切り口を浸した状態で、温度管理に留意して素早く工場に搬入する。
工場での搬入原料洗浄は次亜塩素酸を使用せず、不純物や溶存酸素の少ない中性の水で念入りに行い、再度茎の下部2cm程度をセラミックス製の刃物で切り落とす。
ブランチングは不純物や溶存酸素の少ない、pHが中性近辺でかつ酸化還元電位の低い電解水を注水しながら行い、多めの水で行うか原料の投入量を少なくして若干高めの温度に設定し、殺菌も兼ねる。
電解水を使用する場合、絶縁体の水槽を用い、水の酸化還元電位は定期的に確認することが重要である。
この後冷却をするが、この際に使用する水槽も同様の水槽を用い、不純物や溶存酸素の少ないアルカリ性を呈する酸化還元電位の低い電解水を注水しながら行う。
冷却の際は被加工物の容積が収縮し、冷却水が被冷却物の中に吸収されるため、ここでの金属イオンや、酸化促進物質の混入を避ける必要があり、冷却水に酸化還元電位の低い天然水を使用する場合は、水の含有成分をよく調べて、水を選定する必要がある。
この後に凍結するが、ブロック凍結をする場合、注水される水は長期にわたり被凍結物と接触するため、長期に還元性を有するアルカリ性を呈する水を使用することが好ましく、初留を除いた蒸留水に重曹などの、弱酸とカリウム、カルシウム、またはナトリウムの化合物を添加したものが適当で、溶存酸素は極力低いものが好ましい。
IQF凍結をする場合のグレーズ水に関しても同様の点に注意する。
また、空心菜は、特に変色の度合いが顕著であるため、ブランチングなどの加熱処理後に高濃度エタノ−ルに浸漬したり、ブロック注水には上記の水にエタノールを添加した水を使用することも有効である。
凍結後は光が当たらないように、黒または、同様の光を遮断する色調や材質で酸素透過性の低いもので選び、内容物を入れてこの後に脱気したり、窒素置換をして密閉し、箱詰めする。
全工程に於いて、酸化した金属や特に鉄や銅のイオン混入には特に注意を払い、直接または水を介して間接的に接触する機器は、不動態皮膜 を有するステンレスなどや非金属製を使用する。
続いて、空心菜の抽出物を例にとって説明すると、原料を収穫する際はセラミックスなどの非金属で切断をした後、素早く切り口の土や付着物を洗い落とす。
収穫後は素早く工場に搬入し、次亜塩素酸での洗浄は行わず、不純物の少ない中性の水でよく洗浄する。
収穫後、品温管理がなされていれば、細胞が破壊されるまでは顕著な変色は現れないが、逆に加熱などにより細胞破壊がなされた後は急速に変色が起こるため、加工水のpH、溶存酸素、金属や強酸の混入、特に酸化還元電位および電気伝導には注意を払う必要がある。
実用的な加工手順は後述の実施例に記述することとし、以下は最良の形態を記述することとする。
洗浄された原料を絶縁体でできた水槽で酸化還元電位0mV以下、溶存酸素0mg/L、pH9.0から11.0の水で加熱し、酵素を失活させるとともに植物繊維を軟化させる。
この後、無酸素下で、絶縁体でできた器具を用いて、加熱した水とともに静かに磨り潰す。
さらに酸化還元電位0mV以下の水を加え、または加えながら絶縁体製の機器で圧搾、またはろ過し、得られた液体を絶縁体でできた容器に入れ低温の窒素などを用いて無酸素下で凍結する。
更にこれを真空凍結乾燥する。乾燥後、内面が絶縁体の層になっているラミネートなどの酸素透過性の低い袋に入れて窒素置換し密封する。
実施例の工程は前述の最良の形態と同様であるが、各工程で多量に規制に合致した天然水や調整水を使用するとコストがかかりすぎるため、通常の生産では空心菜を水蒸気で加熱し水を加えず磨り潰したり、各工程で使用する水は蒸留水や入手可能な金属や強酸などの不純物の少ない水を煮沸したものを少量用いるなど、酸素や酸化を促進する不純物の混入を低減することに留意した少量の水を用いて生産する。
この後、これを、またはこれに少量の蒸留水を加えて圧搾して得た絞り汁または抽出液を、絶縁体でできている容器に入れ、酸化還元電位が0mV以下でかつpH9.0以上を目安とした還元性の高いアルカリ還元水を添加して、真空凍結乾燥し無酸素下で粉砕する。
ポリフェノール類の酸化は可逆的でもあるため、酸化還元電位が低い環境下では素早いが短期的に、弱酸と標準単極電位の低いカリウム、カルシウム、ナトリウムの化合物で調整されたpHが高い環境下では長期に渡り、抽出されたポリフェノール類は還元性を保ち、再び活性酸素除去能を示すことが認められる。
この乾燥物を、内面が絶縁体の層になっているラミネートなどの酸素透過性の低い袋に入れて窒素置換して密封、または絶縁体でできた袋に入れ袋内の空気窒素置換した後に缶に入れ、缶と袋の間の空気も窒素置換して密封し保存する。
この後は打錠品、カプセル充填品、糖衣錠として製品化し、SODやビタミン類同様に摂取する。
空心菜の変色は鉄およびポリフェノール類の関与が認められるため、これらの酸化を抑制する環境下で加工することが好ましい。
このため、金属、溶存酸素、酸など、酸化促進物質の含有の少ない水や酸化還元電位の低い水を用いて加工する。
特に、加工工程中での鉄イオンや鉄錆の混入は極力避ける必要がある。
これに加え、ブランチング、加熱調理、ブランチング後の冷却、浸漬、調味、注水、注水ブロック凍結、グレーズのいずれかの工程、できれば複数の工程に於いて、シュウ酸またはシュウ酸塩を含む水を用いて行う。
食品添加物としてのシュウ酸を添加した場合、日本国内で生産、販売を行うためには、最終食品の完成前に除去することが義務付けられているため除去工程を加える必要がある。
一方、シュウ酸塩を含有する食品を副原料して一緒に加工した場合、シュウ酸の除去工程は不要と考えられるため、各工程に於いて適した副原料を用いると良い。
日本国外での生産、販売を行う場合、各国の法規に合致した方法でシュウ酸、シュウ酸塩、またはこれらを含有する副原料を使用する必要がある。
以下は冷凍空心菜の生産に於ける実施例を記述する。
コンニャクの乾燥粉末を水に、苦味を感じない程度の少量だけ加え、よくかき混ぜる。
この際、コンニャクの乾燥粉末が多いと、苦い、粘性の強い溶液となり、加工水としては不適当となる。
この水を用いてブランチングを行う。
ブランチング後の冷却に用いる水も、コンニャクの乾燥粉末を少量添加してよくかき混ぜながら加熱した後に、よくかき混ぜながら冷却したものを用いる。
この後、注水ブロック凍結を行うが、この際に注水する水は、冷却水に用いた水を更に希釈したもの、または不純物の少ない中性の水を用いる。
また、同じ工場でホーレン草を加工している場合は、ホーレン草のブランチングを行った水、いわゆるホーレン草温水抽出液をコンニャク乾燥粉末水溶液の代用として用いてもよい。
この後は凍結、梱包して冷凍保存する。
本発明に於ける産業上の利用の可能性で特に強調しておくべきことは、Ipomoea aquaticaは優れた再生能力や成長速度を有し、大量に生産されながら、また短期間で莫大な増産が可能である栄養価の高い有望かつ優れた食材でありながら、その保存性の悪さより流通範囲が限定され、また適切な流通保管方法や加工方法が見出せずに、生鮮や家畜の餌としての限られた用途での利用に留まり、十分な利用がなされずにいたものが、本発明により遠隔地、即ち世界的に利用することが可能となったことにある。
また、流通保管に対する耐性が弱く遠隔地への流通が困難であったため、生産地、食品業界などの一部を除き一般的に認知度が低く、糖尿病などの疾病改善効果が言及されながら、ポリフェノール類に留まらずこの食材が有する多糖類と思われる粘性物質などのこの食材が有する、優れた成分や機能の有効な利用方法が十分に研究されてこなかったが、本発明により食品に留まらず、新たな有効利用法が提案されたことも極めて有意義である。
当然のことながら、この食感の良い優れた、かつ有望な食材に着眼して過去に於いて冷凍食品メーカーなどを中心にこの加工による変色の防止に関するテストが行われて、未だに高い関心を寄せているが、中国残留農薬問題を抱えて冷凍緑葉野菜が不足して困窮する現在に於いても、未だにこの問題は解決されずに製品化に至れていなかった現状より、既に需要は存在しており、本発明によりこの問題が解決された今、早期に事業化され製品化されることが必至である。
あわせて、この問題の主要因とされてきた栽培時の土壌成分との関連性とは別の角度よりこの問題を検討し、Ipomoea aquatica Forskの現時点で認識されている分類を更に葉の形状により細分化し、また混合種、雑種の混生に惑わされず、この細分化された系統により、加熱や凍結などの細胞破壊がなされた後の変色度合いが異なる傾向があること、また部位により異なる傾向があること、更には系統により差が生じるものの共通して効果の得られる処理方法を見出したことも極めて有意義である。
今後は本発明で提議した各系統の遺伝的な違いを認識することが極めて有効で、これにより従来の研究で得られなかった一定の傾向を示すテスト結果が得られるようになり、土壌成分や環境の色調に及ぼす影響や栽培方法、有効成分の含有量の多い系統の研究、効率的な抽出原料系統の確認に好結果をもたらすことが期待できるもので、具体的に述べると、本件考案時に調査した環境などに対するIpomoea aquaticaの研究の写真や図などでは混合種や混生を分別することなく同一種の試料として取扱い、研究結果報告をしているものばかりであった。
これにより、前述の通り安価で大量に供給され、急速に増産が可能な、また食習慣があり食品として流通されている安全性を確保して集荷されるこの資源を十分に活用することができるようになることは、極めて有意義な貢献であることが明白である。
本発明で考案された個々の製品について産業上の利用の可能性について述べると、まず、生鮮については近年日本国内でも夏期に販売されるようになった空心菜は、鮮度低下が激しく流通段階で既に劣化が進み、量販店の店頭では短時間で劣化し、粗悪な状態になっても売られていることが頻繁に見受けられ、この点を改善した流通は、小売業、また国内栽培者にとっても有効で、すぐに実施が可能なものである。
次に冷凍加工品については、言及するまでも無く、食品メーカー各社ともにこの食材の開発には興味を示しており、特に中国残留農薬問題に直面している現在、冷凍緑葉野菜が不足しており、優れた栄養価を有しながら安価に供給可能で、虫が好まないポリフェノールを含むことより防虫剤などの農薬が軽減できる本食材は、まさに時流を得た、また将来性のあるもので、早期かつ多量の需要が存在しているため、産地での栽培管理生産体制が整い次第、すぐにも事業化がなされることは必至である。
次に食品添加物または加工助剤としての魚油精製に関する用途について産業上の利用の可能性について述べると、日本、欧米向けに鮪の缶詰を多量に生産するために加熱により痛んだ魚油を副産物として多く生産する東南アジア地域に於いて、日常的に容易にかつ安価で大量に、また強い抗酸化力を維持した状態で容易に入手が可能なIpomoea aquatica抽出物は、極めて有効で、魚油洗浄などの工程も実機生産工程を前提に考案されており、新たな設備を必要としないため、実用性の高いものである。
特に機能性食品、いわゆる健康食品として、魚油よりDHA、EPA、アラキドン酸などの高度不飽和脂肪酸を生産するメーカーは国際的にも多く、各メーカーともその品質の評価の一つは酸化臭の脱臭、魚臭の残存の程度であり、魚臭低減の方法としては品質の良い魚油の集荷、蒸留温度や方法、ビタミン類などの酸化防止剤の添加などが主たる手法であった。
今回、Ipomoea aquatica抽出物が、不飽和脂肪酸の脱臭や酸抑制に効果を有することが確認されたことで、容易に低コストで多量に入手可能であること、また水溶性で水溶液とすると魚油と分離が容易なことで歩留まり低下が少ないこと、魚油加工の初期段階で工程を洗浄の際の水に添加するだけで従来の洗浄より脱臭効果、酸化物除去効果が向上すること、また機能性食品の生産に於いて重要視される添加物、助剤などの食習慣の有無では食習慣があることなどを背景に、これも早期に利用されることは必至である。
また、この水溶性抽出物を精製して、更に進んだ不飽和脂肪酸精製工程での脱臭工程に使用すること、またはIpomoea aquaticaに含まれる脂溶性ポリフェノール類を精製して直接不飽和脂肪酸に添加し抗酸化剤として添加して酸化抑制、または活性酸素除去を行うことも有効な手段である。
最後に機能性食品及び特定物質抽出原料としての有用性について述べると、健康志向の傾向にある現在、抗酸化能力に優れ、活性酸素除去能を有するポリフェノール類は脚光を浴びており、安全性の高い、安定供給、低コスト生産が可能な、chlorogenic acidなどの特定のポリフェノール及び抗変異原性を有するcaffeoylquinic acid類を含有する食品は、原料コストの低さに反して、高い付加価値を有する、時流を得た、早期に需要の見込まれる商材である。
また、現時点で確認されているtricaffeoylquinic acidの含有量は少ないものの、抽出した試料は数種類のIpomoea aquaticaが混合したものであったため、今後は含有量の多いIpomoea aquaticaの細分化された品種を特定し、また適切な抽出方法を選択することで、含有量の増加、抽出の効率化必至で、これも極めて有効なものである。
加えて前述の通り、Ipomoea aquaticaはエイズ発症件数の多いアフリカ、東南アジアで周年、大量に供給され入手も容易で、また優れた再生能力、極めて早い成長速度により食品、及び抽出原料としても急速に増産が可能で、更には水質浄化など環境対策としても増産傾向にあり、その供給量は飛躍的に拡大することが可能で、有効な抽出原料となることも必至である。
特に機能性食品や特定物質抽出の原料は供給が希少であったり、不安定で季節性があったり、集荷に時間を要する、不良品の混入、特殊な入手経路であるなど安定供給や安定価格での供給面で問題を抱え、需要の急激な変化に応じきれずに製品不足、不当な価格、粗悪品など原料に由来する問題を抱える製品が多く見受けられるが、本発明で原料とするIpomoea aquaticaはこの点での問題が全く無いことが、利用者にとって最も大きな利点をもたらすものである。
以上の通り、本発明は今後の食料需給面や健康増進に於いても大きな役割を果たすことが見込まれる貢献度の高い、また大きな将来性を有する、優れた発明である。
前述の通り空心菜だけをとっても、優れた原料特性に起因し各社とも試作を繰り返してきたこと、今まで問題が解決されずにいたことなどより明らかな通り、既に需要は存在しているため、早期の利用が見込まれる。
重複するが、以下にその根拠を列記する。
空心菜は生産、供給面では、温暖な地域では生育が早く、根を残して収穫することで再び同じ株から芽が出る。
生命力が強く、水耕栽培が可能で栽培が極めて容易なため生産量も多い。
商品特性としては、独特の歯ざわりが特徴で食感も良く、癖のない味のため用途も広く、本発明で変色しないものの開発がなされたため、緑色を呈する有効な食材となる。
ポリフェノール含有量が多く、優れた抗酸化作用があること、鉄やカルシウム含有量が多いことなど、栄養価に富み、中国や台湾などでは摂取による効能なども言われている有益な食材である。
健康に対する関心が高まってきている現在、特に抗酸化作用として注目されているポリフェノール含有量が多く、このポリフェノールの抗酸化作用が損なわれずに製品化された、保存可能な高ポリフェノール含有食品が提供されることは有益なことである。
更には、最大の利点として、生産が容易なことに起因する原料の低価格が挙げられる。
現在流通されている冷凍ホーレン草、冷凍小松菜などよりも容易に、高温の南アジアでは季節を問わず生産することができるため、加工水調整に経費がかかってもなお十分な価格競争力もあり、かつ優れた商品特徴を有するもので、急速な需要の拡大が見込まれる。
また、水質浄化に有効な植物でもあり日本に於いても注目され始めていることより今後一層の生産拡大が見込まれる現在、加工により冷凍または常温保存を可能とし用途の拡大、しいては需要を拡大することは極めて重要である。
またこの他にも、本発明によりしその葉や春菊などの変色しやすい野菜 の加工原料としての利用または需要が期待できる。
更には、現時点では多量に流通している冷凍ホーレン草や小松菜の品質向上にも有効な考案で、ワインやココアなどのポリフェノールに関心が高まってきている現在、極めて有効かつ、関心の高い考案である。
加工された製品の特性は、健康に対する関心が高まってきている現在、特に抗酸化作用として注目されているポリフェノール類の含有量が多く、このポリフェノール類の抗酸化力が損なわれずに加工され、かつ保存を可能とした本発明は、関心の高い、有益なものである。
商品特性としては、独特の歯ざわりが特徴の食感、癖のない味のため用途も広く、本発明で変色しないものの開発がなされたため、緑色を呈する使い勝手の良い有効な食材となる。
更に前述の通り空心菜は、水質浄化に有効な植物でもあり日本に於いても注目され始めていることより、今後一層の生産拡大が見込まれ、この空心菜の冷凍または常温保存を可能とした加工品原料としての用途の拡大を可能とした本発明は極めて重要である。