JPWO2005031829A1 - 半導体素子および半導体集積素子 - Google Patents

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Abstract

結晶成長装置内で、半導体ウエハ表面に、エッチング作用のある原料と結晶成長原料を同時に供給し、エッチング速度と結晶成長速度をバランスさせることで、効率良く残留不純物を除去する。

Description

本発明は、半導体層表面を清浄化する技術に関するものである。
半導体素子の製造工程においては、半導体基板上への同種または異種の半導体層の結晶成長工程、誘電体等をマスクとしたフォトリソグラフィーと化学エッチングまたはドライエッチングによるパターンニング工程、電流ブロック構造や光閉じ込め構造のための同種または異種の半導体層の再成長工程を繰り返すことが多い。この場合、結晶成長前の基板表面や再成長前の半導体成長層表面は、大気暴露やエッチング、洗浄等のプロセスにより不純物汚染や物理的ダメージを受け易く、それらの表面にそのまま結晶成長を行うと素子特性や寿命が大幅に劣化してしまう。このため、不純物汚染や物理的ダメージ層を除去するために、結晶成長室内でエッチングを行い、その後、続けて結晶成長を行う手法が用いられてきた。
このような技術として、特許第3158651号では、成長原料としてトリメチルガリウム(TMG)及びアルシン(AsH)、エッチングガスとして塩化水素(HCl)を用いてGaAsの再成長直前に、成長室内でエッチングを施すことにより、炭素(C)、酸素(O)、シリコン(Si)などの不純物を除去でき、またエッチング中にHClと共にTMGを同時に供給すると、エッチングにより結晶表面に生じるストイキオメトリーからのずれが補償され、再成長界面でのキャリアの蓄積が抑制されるとされている。
また、特開昭59−65434号公報には、GaAs半導体の気相成長において、塩化水素とともにIII族元素のアルキル化合物およびV族元素の水酸化物もしくはアルキル化合物の蒸気を同時に導入して半導体層をエッチングする技術が開示されている。エッチングの速さは、毎分0.1μmのエッチング速度の例が示されている。こうすることにより、成長開始前の下地表面を鏡面にすることができるとされている。
また、特開昭51−74580号公報には、III−V族元素から成る半導体物質の気相エッチングをV族元素のハロゲン化物および同水酸化物を含む不活性ガス雰囲気下で実施し、V族元素の水酸化物を同時に導入する技術が記載されている。同公報によれば、平坦で、かつ鏡面性に優れた基板表面を得ることができると記載されている。
また一方で、特許第3339486号に開示されている様に、埋め込み型半導体レーザにおいて、再成長界面での残留Siの影響を補償するために、Znをドーピングして、残留Siによるn転層を再びp反転させて、レーザの発振特性を向上させる技術も開発されている(図16)。
特許第3158651号 特開昭59−65434号公報 特開昭51−74580号公報 特許第3339486号 アイトリプルイー ジャーナル オブ セレクティド トピックス イン カンタム エレクトロニクス 第3巻 第3号 845ページ目から853ページ目(IEEE Journal of Selected Topics in Quantum Electronics,Vol.3,NO.3,p845〜p853)
しかしながら上記従来技術では、半導体結晶の構成元素に比べてエッチング速度が遅い汚染物質が表面に残留しやすく、例えばアイトリプルイー ジャーナル オブ セレクティド トピックス イン カンタム エレクトロニクス 第3巻 第3号 845ページ目から853ページ目(IEEE Journal of Selected Topics in Quantum Electronics,Vol.3,NO.3,p845〜p853)に報告されているように、エッチングガスとしてPClを用い、InP表面を成長室内でエッチングしてもSiはほとんどエッチングされず、表面に残留してしまう。また本発明者らの実験結果では、通常の結晶成長温度付近では、特許第3158651号で示されているような結晶成長室内でのエッチングを施しても再成長界面の残留Siを除去することは容易でなかった。また、残留Siを除去しようとして基板温度を上げ過ぎたり、エッチングを深くし過ぎると、もとの半導体層の内部で不純物拡散や結晶欠陥を生じたり、エッチングにより形状変化が起き、設計通りのデバイス構造が作製できないという問題があった。
また、特許第3339486号に開示されている技術を用いた場合は、残留Siによるn型層形成の影響は補償できるものの、過剰のZnをドーピングすることによって、クラッド層での価電子帯間吸収損失(Inter Valence Band Absorption:IVBA)を増大させ、また活性層に拡散した場合は、内部微分量子効率(ηi)を低下させるなどのデメリットがある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、もとの半導体層中の不純物拡散や結晶欠陥の発生を誘起することなく、また形状変化を最小限にして、結晶成長前の半導体基板表面や再成長前の半導体表面の不純物汚染や物理的ダメージを再現性良く安定的に除去する半導体表面清浄化手法を提供すること、及び過剰のZnドーピングなどによるIVBAの増加やηiの低下や、結晶欠陥のない良好な発振特性を有する埋め込み半導体レーザ構造を提供することにある。
半導体表面に付着した特定の汚染物質の除去が困難な理由について、本発明者らは以下のように推察した。半導体層表面に付着した汚染物質に対してエッチング性物質を作用させた場合、エッチング性物質と上記特定の汚染物質が化学反応を起こす。しかし、この化学反応によって生じた結合の結合力は比較的弱く、汚染物質がエッチング性物質と結合し化合物を形成して半導体表面から脱離しても、またすぐに結合が切れて半導体表面に再付着してしまうものと予想される。このように、半導体表面に付着した特定の汚染物質は、半導体層へ再付着するため、除去が困難であると推察される。
こうした推察のもと、本発明者は、エッチング作用のある原料と結晶成長原料の両方を、清浄処理対象となる半導体層表面に接触せしめることにより、再付着を抑制しつつ汚染物質を効率的にエッチング除去できることを見いだし、本発明を完成した。
本発明の半導体表面清浄化手法は、半導体層の表面に付着した汚染物質を除去する清浄処理方法であって、前記半導体層に対してエッチング作用を有するエッチング性物質と、結晶成長原料とを、同時に、または交互に、前記半導体層に接触せしめる清浄処理工程を含むことを特徴とする。
また、本発明の半導体表面清浄化手法は、半導体層の表面に付着した汚染物質を除去する清浄処理方法であって、前記半導体層に対してエッチング作用を有するエッチング性物質と結晶成長原料とを含む雰囲気に前記半導体層の表面を暴露する清浄処理工程を含むことを特徴とする。
さらに、本発明の半導体表面清浄化手法は、半導体層の表面に付着した汚染物質を除去する清浄処理方法であって、前記半導体層に対してエッチング作用を有するエッチング性物質を含む第一のガスと結晶成長原料を含む第二のガスとを同時に前記半導体層の表面に供給する清浄処理工程を含むことを特徴とする。
半導体層表面にエッチング性物質が作用すると、半導体層表面に付着した汚染物質が表面から脱離する。しかしながら、その脱離した汚染物質の一部が再度半導体層表面に付着することがある。半導体層の清浄度を高めるためにはこうした汚染物質の再付着を充分に抑制することが必要となる。そこで本発明では、エッチング性物質と、結晶成長原料とを半導体層表面に接触させ、再付着を抑制しつつ汚染物質を効率的にエッチング除去する。このような手法により汚染物質の再付着を防止できる理由は必ずしも明らかではないが、汚染物質が半導体層表面から脱離した後、それまで汚染物質が占有していたサイトが結晶成長原料によって速やかに占有されることによるものと推察される。
本発明の清浄処理方法において、前記第一のガスおよび前記第二のガスが、間欠的に供給される構成とすることができる。こうすることによって、半導体層の表面の汚染を一層効率的に除去することができる。
本発明の清浄処理方法において、前記清浄処理工程を実施する前後における前記半導体層の層厚の差が、100nm以下である構成とすることができる。こうすることにより、充分に高い清浄度を実現することができる。
本発明の清浄処理方法において、前記清浄処理工程を実施する際に、前記半導体層の層厚が実質的に減少しないようにした構成とすることができる。ここで、「実質的に減少しない」とは、前記半導体層の層厚がまったく減少しないか、若干の層厚の減少があってもその層厚変化速度が0.1nm/sec以下であることをいう。前記半導体層の層厚が実質的に減少しないように構成することで、半導体層表面に関し、充分に高い清浄度を実現することができる。
上記のように、清浄処理の対象となる半導体層の層厚変化を制御することによって充分に高い清浄度を実現できる。この理由は必ずしも明らかではないが、汚染物質が半導体層表面から脱離した後、それまで汚染物質が占有していたサイトが結晶成長原料によって確実に占有されることによるものと推察される。こうした前記半導体層の層厚変化の制御は、たとえば、エッチング性物質および前記結晶成長原料の量比を調整することができる。たとえばエッチング性ガスと原料ガスの量比を適切に調整して半導体層表面に供給することにより、清浄処理対象となる半導体層が実質的にエッチングされず、また、当該半導体層の上部に新たな半導体層が実質的に成長しないようにすることができる。
エッチング性物質と、結晶成長原料とのバランスが崩れ、エッチング側に傾くと、エッチングされた物質の再付着が生じ、充分な清浄度が得られない場合がある。一方、成膜の方に傾いた場合、汚染物質が充分に除去されないまま新たな半導体層が積層し、充分な清浄度が得られない。
本発明の清浄処理方法において、前記半導体層の層厚変化速度の符号を、層厚が増加する場合を正、層厚が減少する場合を負と定義し、前記清浄処理工程を実施した際の前記半導体層の層厚変化速度をR、前記半導体層表面に対して前記第一のガスのみを供給した場合の前記半導体層の層厚変化速度をr、前記半導体層表面に対して前記第二のガスのみを供給した場合の前記半導体層の層厚変化速度をrとしたときに、これらの層厚変化速度の絶対値が、|R|<|r|<|r|となるように、前記第一のガスと前記第二のガスの供給量を調整する構成とすることができる。
こうすることにより、エッチング性物質および結晶成長原料の供給バランスが適切となり、半導体層表面に付着した汚染物質が効率よく除去されるとともに、脱離した汚染物質の半導体層への再付着を抑制することができる。
本発明の清浄処理方法において、R<0である構成とすることができる。こうすることによって、半導体層表面に関し、充分に高い清浄度を実現することができる。
本発明の清浄処理方法において、|R|が0.1nm/sec以下である構成とすることができる。こうすることにより、エッチング性物質および結晶成長原料の供給バランスがさらに適切となり、半導体層表面に付着した汚染物質が効率よく除去されるとともに、脱離した汚染物質の半導体層への再付着を抑制することができる。また、素子構造の設計も容易となる。
本発明の清浄処理方法において、前記結晶成長原料が、有機金属を含む構成とすることができる。
本発明の清浄処理方法において、前記エッチング性物質がハロゲン元素またはその化合物である構成とすることができる。
本発明の清浄処理方法において、前記半導体層が化合物半導体からなる構成とすることができる。
本発明の清浄処理方法において、前記半導体層がIII−V族化合物半導体からなるものとすることができる。
結晶成長原料を、前記半導体層を構成するIII族元素を含む化合物とした場合、エッチング性物質によって形成された半導体層中の空格子位置を当該半導体層の構成元素で占有させることができ、表面に変成層等が形成することを防止できる。
前記半導体層を構成するIII族元素が一種類からなるものとすることができる。こうすることにより、半導体層表面の清浄処理中に変成層の形成や組成変化が起こることを抑えることができる。
本発明の清浄処理方法において、前記半導体層を構成するIII族元素がインジウム(In)である構成とすることができる。InPの気相成長においては、通常、600℃から650℃の成長温度が採用される。これは、V族元素であるリンが脱離することを防止するとともに結晶に伝導性を与えるために故意に添加された、たとえば亜鉛等の不純物の拡散を防ぎ、設計通りの不純物プロファイルを得るためのものである。しかしながら、このような比較的低温の成長温度を採用した場合、成長界面の清浄処理がよりいっそう困難となる。一般に、エッチング性ガスによる成長界面の清浄処理は、雰囲気温度を高温にするほど除去効率が高くなる。ところが、InP半導体系においては、清浄処理温度に上限が存在するため、成長界面の汚染が除去されにくく、特にシリコンの汚染が深刻な問題となる。本発明によれば、かかる成長界面の汚染の問題を有効に解決することができる。
さらに本発明によれば、以下に示す半導体装置の製造方法が提供される。ここで、半導体装置とは、発光素子、受光素子、光変調器等の光素子や、電界効果トランジスタ、バイポーラトランジスタ等の電子素子を含む。
本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板の上部に第一の半導体層を形成する工程と、前記第一の半導体層の表面を清浄処理する工程と、前記第一の半導体層上に第二の半導体層を形成する工程とを含み、前記第一の半導体層の表面を清浄処理する前記工程は、前記半導体層に対してエッチング作用を有するエッチング性物質と、結晶成長原料とを、前記半導体層の表面に接触せしめる工程を含むことを特徴とする。
また 本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板の上部に第一の半導体層を形成する工程と、前記第一の半導体層の表面を清浄処理する工程と、前記第一の半導体層上に第二の半導体層を形成する工程とを含み、前記第一の半導体層の表面を清浄処理する前記工程は、前記半導体層に対してエッチング作用を有するエッチング性物質と結晶成長原料とを含む雰囲気に前記半導体層の表面を暴露する工程を含むことを特徴とする。
また、本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板の上部に第一の半導体層を形成する工程と、前記第一の半導体層の表面を清浄処理する工程と、前記第一の半導体層上に第二の半導体層を形成する工程とを含み、前記第一の半導体層の表面を清浄処理する前記工程は、前記半導体層に対してエッチング作用を有するエッチング性物質を含む第一のガスと結晶成長原料を含む第二のガスとを同時に前記半導体層の表面に供給する工程を含むことを特徴とする。
半導体層表面にエッチング性物質が作用すると、半導体層表面に付着した汚染物質が表面から脱離する。しかしながら、その脱離した汚染物質の一部が再度半導体層表面に付着することがある。半導体層の清浄度を高めるためにはこうした汚染物質の再付着を充分に抑制することが必要となる。そこで本発明では、エッチング性物質と、結晶成長原料とを半導体層表面に接触させ、再付着を抑制しつつ汚染物質を効率的にエッチング除去する。このような手法により汚染物質の再付着を防止できる理由は必ずしも明らかではないが、汚染物質が半導体層表面から脱離した後、それまで汚染物質が占有していたサイトが結晶成長原料によって速やかに占有されることによるものと推察される。
本発明の半導体装置の製造方法において、前記第一のガスおよび前記第二のガスが、間欠的に供給される構成とすることができる。こうすることによって、半導体層の表面の汚染を一層効率的に除去することができる。
本発明の半導体装置の製造方法において、前記第一の半導体層の表面を清浄処理する前記工程を実施する前後における前記第一の半導体層の層厚の差が、100nm以下である構成とすることができる。こうすることにより、充分に高い清浄度を実現することができる。
本発明の半導体装置の製造方法において、前記第一の半導体層の表面を清浄処理する前記工程を実施する際に、前記第一の半導体層の層厚が実質的に減少しないようにした構成とすることができる。ここで、「実質的に減少しない」とは、第一の半導体層の層厚がまったく減少しないか、若干の層厚の減少があってもその層厚変化速度が0.1nm/sec以下であることをいう。第一の半導体層の層厚が実質的に減少しないように構成することで、半導体層表面に関し、充分に高い清浄度を実現することができる。
上記のように、清浄処理の対象となる第一の半導体層の層厚変化を制御することによって充分に高い清浄度を実現できる。この理由は必ずしも明らかではないが、汚染物質が半導体層表面から脱離した後、それまで汚染物質が占有していたサイトが結晶成長原料によって確実に占有されることによるものと推察される。
こうした第一の半導体層の層厚変化の制御は、たとえば、エッチング性物質および前記結晶成長原料の量比を調整することができる。たとえばエッチング性ガスと原料ガスの量比を適切に調整して半導体層表面に供給することにより、清浄処理対象となる半導体層が実質的にエッチングされず、また、当該半導体層の上部に新たな半導体層が実質的に成長しないようにすることができる。
エッチング性物質と、結晶成長原料とのバランスが崩れ、エッチング側に傾くと、エッチングされた物質の再付着が生じ、充分な清浄度が得られない場合がある。一方、成膜の方に傾いた場合、汚染物質が充分に除去されないまま新たな半導体層が積層し、充分な清浄度が得られない。
本発明の半導体装置の製造方法において、前記第一の半導体層の層厚変化速度の符号を、層厚が増加する場合を正、層厚が減少する場合を負と定義し、前記第一の半導体層の表面を清浄処理する前記工程を実施した際の前記第一の半導体層の層厚変化速度をR、前記第一の半導体層表面に対して前記第一のガスのみを供給した場合の前記第一の半導体層の層厚変化速度をr1、前記第一の半導体層表面に対して前記第二のガスのみを供給した場合の前記第一の半導体層の層厚変化速度をrとしたときに、これらの層厚変化速度の絶対値が、|R|<|r|<|r|となるように、前記第一のガスと前記第二のガスの供給量を調整する構成とすることができる。こうすることにより、エッチング性物質および結晶成長原料の供給バランスがさらに適切となり、半導体層表面に付着した汚染物質が効率よく除去されるとともに、脱離した汚染物質の半導体層への再付着を抑制することができる。
本発明の半導体装置の製造方法において、R<0である構成とすることができる。こうすることによって、半導体層表面に関し、充分に高い清浄度を実現することができる。
本発明の半導体装置の製造方法において、|R|が0.1nm/sec以下である構成とすることができる。こうすることにより、エッチング性物質および結晶成長原料の供給バランスがさらに適切となり、半導体層表面に付着した汚染物質が効率よく除去されるとともに、脱離した汚染物質の半導体層への再付着を抑制することができる。
本発明の半導体装置の製造方法において、前記結晶成長原料が、有機金属を含む構成とすることができる。
本発明の半導体装置の製造方法において、前記エッチング性物質がハロゲン元素またはその化合物である構成とすることができる。
本発明の半導体装置の製造方法において、前記第一の半導体層が化合物半導体からなる構成とすることができる。
本発明の半導体装置の製造方法において、第一の半導体層がIII−V族化合物半導体からなるものとすることができる。このとき、記結晶成長原料が、第一の半導体層を構成するIII族元素を含む化合物である構成とすることができる。また、第一の半導体層を構成するIII族元素が一種類からなるものとすることができる。こうすることにより、半導体層表面の清浄処理中に変成層の形成や組成変化が起こることを抑えることができる。
本発明の半導体装置の製造方法において、第一の半導体層を構成するIII族元素がインジウム(In)である構成とすることができる。InPの気相成長においては、通常、600℃から650℃の成長温度が採用される。これは、V族元素であるリンが脱離することを防止するとともに不純物の亜鉛の拡散を防ぎ、設計通りの不純物プロファイルを得るためのものである。しかしながら、このような比較的低温の成長温度を採用した場合、成長界面の清浄処理がよりいっそう困難となる。一般に、エッチング性ガスによる成長界面の清浄処理は、雰囲気温度を高温にするほど除去効率が高くなる。ところが、InP半導体系においては、清浄処理温度に上限が存在するため、成長界面の汚染が除去されにくく、特にシリコンの汚染が深刻な問題となる。本発明によれば、係る成長界面の汚染の問題を有効に解決することができる。
本発明の半導体装置の製造方法において、前記第一の半導体層および前記第二の半導体層を気相成長により形成する構成とすることができる。
本発明の半導体装置の製造方法において、前記第一の半導体層を形成する工程の後、前記第一の半導体層上にマスクを形成し、つづいて前記マスクを除去した後、前記第一の半導体層の表面を清浄処理する前記工程を実施する構成とすることができる。こうした工程を経た場合、第一の半導体層表面は再成長表面となり、大気による汚染、マスク材料の残存等により、表面に多くの不純物が付着しやすい。本発明によれば、こうした不純物を効率的に除去することができる。
本発明の半導体素子は、p型半導体層中の再成長界面の残留Si濃度が面密度で5×1011atoms/cm以下であることを特徴とする。
また本発明の半導体集積素子は、p型半導体層中の再成長界面の残留Si濃度が面密度で5×1011atoms/cm以下であることを特徴とする。
こうすることにより、結晶欠陥やドーパントの拡散が少ない構造となり、IVBAを増加させたりηiを低下させることなく、ブロック層の耐圧を低下させていた漏れ電流を抑制することができ、この結果、良好な発振特性が得られる。また、素子の構造によっては素子間の漏れ電流を抑制できるという効果が得られる。
上記再成長界面は、たとえば、
(i)p型電流ブロック層と、その下部に接する層との界面
(ii)p型クラッド層と、その下部に接する層との界面
(iii)p型クラッド層中の再成長界面
とすることができる。
(i)の例としては、p型電流ブロック層とp型基板との界面が挙げられる。(ii)の例としては、p型クラッド層とその下部の活性層や光ガイド層等が挙げられる。
再成長界面の残留Si濃度は、面密度で、5×1011atoms/cm以下とするが、好ましくは、1×1011atoms/cm以下とする。こうすることにより、耐圧特性の向上、漏れ電流の低減を図ることができる。
本発明に係る半導体素子、半導体集積素子は、アクティブMMI構造を有するものとすることができる。
以上のように本発明は、以下の効果を有する。
第1の効果は、本発明の清浄処理法によれば、もとの半導体層中の不純物拡散や結晶欠陥の発生を誘発することなく、また形状変化を最小限にして、結晶成長前の半導体基板表面や再成長前の半導体表面の不純物汚染や物理的ダメージを再現性良く安定的に除去することが可能であり、成長界面を有する半導体素子の性能改善に大きな効果があることである。
第2の効果は、埋め込み型光半導体素子の電流ブロック層となる第1の埋め込み層とクラッド層となる第2の埋め込み層の間の再成長界面の残留Si濃度を5E11atoms/cm以下としたことで、ブロック層の耐圧を低下させていた漏れ電流を抑制でき、良好な発振特性を有する埋め込み型半導体レーザを提供することができることである。
第3の効果は、埋め込み型光半導体素子の電流ブロック層となる第1の埋め込み層とクラッド層となる第2の埋め込み層の間の再成長界面の残留Si濃度を5E11cm−2以下としたことで、残留Siによるn転層を再びp反転させるためにZnを高濃度にドーピングする必要がなくなり、IVBAの増加やηiの低下を回避でき、良好な発振特性を有する埋め込み型半導体レーザを提供することができることである。
第4の効果は、光半導体集積素子においては、クラッド層内の再成長界面の残留Si濃度を5E11atoms/cm以下にしたことで、素子間の漏れ電流が抑制され、良好な動作特性を有する埋め込み半導体レーザを有する集積素子を提供できることである。
図1は、実施例で作製した半導体層の構造を示す図である。
図2は、実施例における残留不純物濃度のSIMS測定結果を示す図である。
図3は、実施例における残留不純物濃度のSIMS測定結果を示す図である。
図4は、実施例における残留不純物濃度のSIMS測定結果を示す図である。
図5は、実施例における残留不純物濃度のSIMS測定結果を示す図である。
図6は、実施例における残留不純物濃度のSIMS測定結果を示す図である。
図7は、実施例における残留不純物濃度のSIMS測定結果を示す図である。
図8は、実施例における残留Si濃度のTMIn供給量依存性を示す図である。
図9は、実施例における残留Si濃度のTMIn供給量依存性を示す図である。
図10は、第二の実施例における埋め込み型半導体レーザ構造を示す図である。
図11は、第5の実施例における本発明の光半導体素子の構造を示す図である。
図12は、第6の実施例における本発明の光半導体素子の構造を示す図である。
図13は、第5の実施例における閾値電流の第2の再成長界面の残留Si濃度依存性を示す図である。
図14は、第5の実施例におけるスロープ効率の第2の再成長界面の残留Si濃度依存性を示す図である。
図15は、第5の実施例における150mA通電時の光出力の第2の再成長界面の残留Si濃度依存性を示す図である。
図16は、従来の埋め込み型半導体レーザの断面図である。
本発明における清浄処理の対象となる半導体層は、InGaAs、InGaAsP、AlGaInAs、InAsPなどのInP系、AlGaAs、InGaP、AlGaInP、GaAsSb、InGaAsNなどのGaAs系、GaN,AlGaN,GaInN,AlGaInN、BAlGaInNなどのGaN系等のIII−V族化合物半導体;ZnSe、ZnTe、MgZnSSe、MgZnCdSe、MgZnSeTe、ZnSeTe、ZnO,MgZnO,MgCdZnO等のII−VI族化合物半導体;等の化合物半導体のほか、シリコンおよびその化合物、ゲルマニウムおよびその化合物等の半導体により構成される。
なお、本発明における清浄処理の対象となる半導体層は、3元系でも4元系以上の組成でもよい。
このうち、III−V族化合物半導体層の表面に、素子の作製プロセスもしくは大気暴露によって付着した汚染物質の除去に本発明を適用した場合、顕著な効果が得られる。特に、従来技術によっては充分に除去することが困難であったシリコンの除去に適用すると、特に効果的である。
本発明におけるエッチング性物質としては、大多数の元素と結合して揮発性の化合物を形成する、ハロゲン元素またはその化合物を例示することができる。このうち、取り扱いが容易である点で、塩素(Cl)を含む原料であることが好ましく用いられる。
本発明におけるエッチング性物質としては、t−塩化ブチル((CHCCl:TBCl)、ビスジメチルアミノホスフィンクロライド([(CH]NPCl:BDMAPCl)、塩化水素(HCl)や、塩化メチル(CHCl)、四塩化炭素(CCl)、ビスジメチルアミノアルシンクロライド([(CH]NAsCl)、三塩化燐(PCl)、三塩化砒素AsCl、塩素(Cl)や、同様のBr系原料、I系原料、F系原料を例示することができる。このうち、t−塩化ブチルを用いると、清浄処理の対象となる半導体層のストイキメトリを比較的良好に維持しつつ効果的にエッチングを行うことができる。たとえば、上記半導体層がIII−V族半導体で、エッチングガスが特定のV族元素を含んでいる場合、清浄処理の対象となる半導体層がエッチングガス中に含まれるものと異なる種類のV族元素を含んでいると、清浄処理中に表面に変性層が形成されてしまう問題がしばしば起こるが、t−塩化ブチルはV族元素を含まないため、清浄処理中に変性層が形成されることがなく、好ましい。また、ビスジメチルアミノホスフィンクロライドを用いた場合、エッチング能力の温度依存性が比較的抑制されるため、安定した清浄処理を行うことができる。
また、清浄処理の対象となる半導体層を構成するIII族元素が一種類からなる場合、本発明の表面処理中に変成層の形成や組成変化を起こしにくいため望ましく、さらには第一の半導体を構成するIII族元素がインジウム(In)で、たとえばInP、InAs、InN、InSbなど、であるか、またはガリウム(Ga)、たとえばGaAs、GaP、GaN、GaSbなど、である場合、より顕著な効果が現れる。
本発明は、半導体層の成長を気相成長装置を用いて実施する場合、顕著な効果が得られ、成長原料に有機金属を用いた有機金属気相成長(MOCVD:Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)法の場合に、より顕著な効果が現れる。またこの場合、結晶成長原料である水素化合物及び有機金属ガスについては特に限定はされず、所望の化合物半導体を得るのに必要な水素化合物及び有機金属化合物ガスを用いればよい。
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図11を参照すると、本発明の第1の実施の形態として光半導体素子の構造図が示されている。本光半導体素子は、ダブルチャンネル型の埋め込み構造(Double Channel Planar Buried Hetero Structure:DC−PBH)を有する半導体レーザであり、3回の結晶成長プロセスを経て完成している。即ち、まずn型InP基板500上に活性層502を含むダブルヘテロ構造からなる導波路層を成長し、誘電体マスク等を用いたフォトリソグラフィープロセスを経て所望のパターニングを施した導波路層に、ドライエッチングまたはウエットエッチング等により、溝を隔てて両側に再結合層504を有する導波路を形成する。次に導波路上にだけ誘電体膜を残して、2回目の結晶成長プロセスを実施し、p−InPブロック層510、n−InPブロック層512で導波路を埋め込む。このときの再成長界面を第1の再成長界面508と呼ぶ。次に活性層502を含むメサ上の誘電体膜を除去し、3回目の結晶成長プロセスを実施するが、ここでp−InPクラッド層510の成長を開始する直前に、結晶成長装置内において、エッチング作用を有するガスと、成長原料ガスを、エッチング速度と成長速度が丁度同じになる程度供給して、この半導体表面を清浄化する。このとき、光学式の膜厚モニタ等によって、表面の清浄化処理の中の膜厚の変化速度を測定すると、膜厚は僅かに減少するがその大きさは、0.1nm/sec以下である。該清浄化処理の後、p−InPクラッド層514、p型コンタクト層518を成長する。この2回目の再成長プロセスを行った界面を第2の再成長界面と呼ぶ。その後通常の電極形成プロセスを経て、本発明の光半導体素子が完成する。
本光半導体素子においては、第2の再成長界面の残留Si濃度が面密度にして5E10atoms/cm以下と低いため、活性層直上から電流ブロック層への漏れ電流が極めて少ない。また、残留Siの影響を打ち消すために、Znなどの過剰のp型ドーパントを該第2の再成長界面近傍にドーピングする必要もないため、内部損失の増大や内部微分量子効率の低下もない。したがって、たとえば本光半導体素子が、半導体レーザの場合は、低閾値、高効率、高出力な半導体レーザが得られる。また本光半導体素子が、光半導体増幅器である場合は、高利得、高飽和出力な半導体増幅器が得られる。
図12は、第2の実施形態に係る光半導体集積素子の構造図である。本光半導体集積素子は、変調集積型DFB−LDであり、4回の結晶成長プロセスを経て完成している。即ち、まず半導体レーザとなる部分にのみ回折格子が形成されたn型InP基板600上にレーザの活性層を含むダブルヘテロ(Double Hetero:DH)構造を成長し、誘電体マスク等を用いたフォトリソグラフィープロセスにより半導体レーザ部分にマスクを形成し、ドライエッチングまたはウエットエッチングにより、変調器部分をエッチングする。
次に、2回目の結晶成長で、変調器用の活性層601を含むDH構造を成長する。次に、再び誘電体マスク等を用いたフォトリソグラフィープロセスにより半導体レーザの導波路部と変調器の導波路部分にマスクを形成し、ドライエッチングまたはウエットエッチング等により、導波路以外の部分をエッチングする。次に半導体レーザ用および変調器用の導波路上にだけ誘電体膜を残して、3回目の結晶成長プロセスを実施し、p−InPブロック層602、半絶縁(Semi−Insulating:SI)−InPブロック層604、n−InPブロック層606を成長する。このときの再成長界面を第2の再成長界面644と呼ぶ。
次に半導体レーザ用および変調器用の導波路上の誘電体膜を除去し、4回目の結晶成長プロセスを実施するが、ここでp−InPクラッド層608の成長を開始する直前に、結晶成長装置内において、エッチング作用を有するガスと、成長原料ガスを、エッチング速度と成長速度が丁度同じになる程度供給して、この半導体表面を清浄化する。このとき、光学式の膜厚モニタ等によって、表面の清浄化処理の中の膜厚の変化速度を測定すると、膜厚は僅かに減少するがその大きさは、0.1nm/sec以下である。該清浄化処理の後、p−InPクラッド層608、p型コンタクト層612を成長する。この4回目の結晶成長プロセスを行った界面を第3の再成長界面646と呼ぶ。その後通常の電極形成プロセスを経て、本発明の光半導体素子が完成する。
本光半導体素子においては、第3の再成長界面の残留Si濃度が面密度にして5E10atoms/cm以下と低いため、半導体レーザおよび変調器直上から電流ブロック層への漏れ電流が極めて少ないことに加えて、半導体レーザと変調器間の漏れ電流も極めて少ない。また、残留Siの影響を打ち消すために、Znなどの過剰のp型ドーパントを該第2の再成長界面近傍にドーピングする必要もないため、半導体レーザ部分においては、p型ドーパントの拡散に伴う内部損失の増大や内部微分量子効率の低下がなく、また変調器部分においては、p型ドーパントの拡散に伴う電界強度の不均分布化もない。したがって、低閾値、高効率、高出力、高速な、変調器集積型DFB−LD半導体レーザが得られる。
本実施形態における光半導体素子において、第1の再成長界面に本発明の清浄化処理法を適用して、残留Si濃度を低減した場合も、リーク電流が低減され、素子特性が改善される。
また、この光半導体集積素子において、第1の再成長界面および第2の再成長界面に本発明の清浄化処理法を適用して、残留Si濃度を低減した場合も、素子間および単体素子のリーク電流が低減され、素子特性が改善される。
本発明の上記および他の目的、特徴および利点を明確にすべく、添付した図面を参照しながら、本発明の実施例を以下に詳述するが、本発明は、その要旨を超えない限り実施例に限定されるものではない。
第一の実施例
本実施例では、MOVPE法を用いて、InP上にInPを再成長させる場合の成長界面の残留不純物除去について説明する。エッチング作用を有する原料として、t−塩化ブチル(TBCl:(CHCCl)を用い、結晶成長原料としては、トリメチルインジウム(TMIn)及びホスフィン(PH)を用いた。図1のようにSnドープ{001}InP基板101上に減圧(60Torr)MOVPE法で1回目の成長層としてアンドープInP層103を1.0μm成長させた後、一旦ウエハをMOVPE炉から取り出し、12時間大気曝露する。ウエット処理等は実施しない。その後、このウエハを再びMOVPE炉内に投入し、2回目の成長層として0.5μmのアンドープInP層105を成長再成長させた。
2回目の成長開始直前の第二の成長界面104で、MOVPE炉内でTBClとTMIn及びPHをウエハの表面に10分間供給して、表面清浄処理を行った(サンプルA)。この表面清浄処理の際のTBClの供給量は19.4μmol/minで、これはInPのエッチング速度にして20.5nm/minに相当し、TMInの供給量は15.08μmol/min、PHの供給量は2.68mmol/minであり、これらはInPの成長速度にして20.5nm/minに相当する。従って、TBClによるInPのエッチング速度と、TMIn及びPHによるInPの成長速度は等しく、この表面清浄処理中に1回目に成長したアンドープInP層103の層厚変化はない。また表面清浄処理時の基板温度は、625℃とした。
比較の為に2回目のInP層成長開始直前の第二の成長界面104でのTBCl、TMIn、及びPHによる表面清浄処理を行わずに2回目のアンドープInP層105の成長を開始したサンプル(サンプルB)も作製した。
サンプルA及びサンプルBの二つのサンプルの再成長界面での残留不純物濃度について2次イオン質量分析法(SIMS)を用い、アンドープInP層105をスパッタリングしながら深さ方向の分析を行った。
第二の成長界面104でTBCl、TMIn、及びPHによる表面清浄処理を行わなかったサンプルBでは、第二の成長界面104に残留不純物としてC,O、Siが検出され、その濃度はそれぞれ、面密度にしてC:6.4×1010atoms/cm、O:6.9×1011atoms/cm、Si:1.2×1012atoms/cm相当であった。一方、第二の成長界面104でTBCl(19.4μmol/min)、TMIn(15.08μmol/min)、及びPH(2.68mmol/min)による表面清浄処理を行ったサンプルAでは、第二の成長界面104でのC,O,Si等の残留不純物はいずれも検出限界以下であった。ここで本測定での検出下限はそれぞれ、C:6×10atoms/cm、O:6×10atoms/cm、Si:6×10atoms/cm相当であった。またエッチングガスとして導入したClも全く検出されなかった。ここでClの検出下限は、3×10atoms/cm程度であった。
なお、本実施例では第二の成長界面104の清浄処理を例にあげて説明したが、第一の成長界面102の清浄処理に本発明を適用することもできる。
第二の実施例
本実施例では、本発明をInP系半導体レーザ素子に適用した。本実施例では、活性層を最上層とする半導体多層膜を形成した後、活性層表面の一部を覆うマスクを形成し、このマスクの両脇の部分をエッチングにより除去し、メサストライプを設ける。この段階で本発明に係る清浄処理を実施した後、メサの両脇に半導体層を埋込む。その後、メサ表面に対して本発明に係る清浄処理を実施し、つづいて上層の半導体層を成長させる。以下、図10を参照して説明する。
まず通常の結晶成長プロセスにより、n型InP基板301上にInGaAsP/InGaAsP量子井戸307を活性層とするダブルヘテロ構造を作製し、SiOをマスクとして、ドライエッチングにより深さ2μm程度の幅2μmのメサストライプ310を形成した。その後、このウエハをMOVPE炉内に導入し、第一の再成長界面308に第一の実施例と同じ条件で上記本発明の表面清浄処理を施した後に、p型InP層302、n型InP層303、p型InP層304を順次積層して電流ブロック構造を形成した。
次にこのウエハをMOVPE炉外に取り出し、SiOマスクを通常のウエットエッチングプロセスにより除去した後、再びMOVPE炉内に投入し、第二の再成長界面309に、再度、第一の実施例と同様の条件で表面清浄処理を実施した後、p型InPクラッド層305、p−InGaAsコンタクト層306を形成した。その後、通常の電極形成プロセス、素子分離プロセスを行い、埋め込み型レーザ素子を完成させた。
この素子の電圧−電流特性、電流−光出力特性を測定したところ、本発明の表面清浄処理を用いない従来の素子に比べて、スロープ効率が大幅に改善されると共に、高光出力時の電力−光出力変換特性が大幅に改善され、同じ光出力を得るのに必要な駆動電圧が大幅に低減されていることが確認された。これは、本発明の表面清浄処理により電流ブロック層形成前の第一の再成長界面308のSi等のn型残留不純物が減少したことにより、リーク電流が減少し、またクラッド、コンタクト層形成前の第二の再成長界面309のSi等のn型残留不純物が減少したことにより、電流障壁が取り除かれ、駆動電圧の低下した効果によるものであると考えられる。
なお、本実施例では、第一の再成長界面308および第二の再成長界面309の両方に表面清浄処理を施したが、いずれか一方、たとえば第二の再成長界面309に対してのみ清浄処理を施してもよい。
第三の実施例
本実施例では、清浄処理の条件を変更したこと以外は第一の実施例と同様にして半導体多層構造を作製し、第二の成長界面104でのC,O,Si等の残留不純物密度を測定した。清浄処理の条件は表1に示した。表1の「処理条件」における各項目について、以下、説明する。
(i)ガスの種類
t−塩化ブチル(TBCl:(CHCCl)、ビスジメチルアミノホスフィンクロライド(BDMAPCl:「(CH]NPCl)を用いた。
(ii)ガスの流量
MOVPE炉内へのガスの供給量を示す。
(iii)エッチング速度
表中に示された流量でエッチングガスのみを供給した場合のエッチング速度を示す。この値は予備実験により求められたものである。
(iv)成長速度
表中に示された流量で成長ガスのみを供給した場合の成長速度を示す。この値は予備実験により求められたものである。
(v)膜厚変化指数
層厚が増加する場合を正、層厚が減少する場合を負と定義し、成長速度とエッチング速度の和を「膜厚変化指数」と定義した。清浄処理工程の前後における層厚変化の指標となる。
(vi)ガス供給方式
連続方式とは、エッチングガスおよび成長ガスを一定時間連続的に供給する方式である。間欠方式とは、エッチングガスおよび成長ガスを一定時間、間欠的に供給する方式であり、ガスを供給する時間とガスの供給を停止する時間を交互に繰り返す。
(vii)ウエットエッチング
アンドープInP層103の清浄処理の前に、エッチング液を用いたエッチング処理を行った場合、ウエットエッチング「有り」と表記した。
(試料1〜4)
エッチング作用を有する原料として、t−塩化ブチル(TBCl:(CHCCl)またはビスジメチルアミノホスフィンクロライド(BDMAPCl:[(CH]NPCl)を用い、結晶成長原料としては、トリメチルインジウム(TMIn)及びホスフィン(PH)を用いた。図1のようにSnドープ{001}InP基板101上に減圧(60Torr)MOVPE法で1回目の成長層としてアンドープInP層103を1.0μm成長させた後、一旦ウエハをMOVPE炉から取り出し、12時間大気曝露する。その後、アンドープInP層103の表面を硫酸含有液によりウエットエッチングし、つづいて純水によりリンスを行った。
その後、このウエハを再びMOVPE炉内に投入し、表1に示す条件で清浄処理を行った後、2回目の成長層として0.5μmのアンドープInP層105を再成長させた。
各試料における清浄処理は以下のとおりである。
試料1では清浄処理を行わなかった。
試料2では、2回目の成長開始直前の第二の成長界面104で、MOVPE炉内でTBClとTMIn及びPHをウエハの表面に10分間供給して、表面清浄処理を行った。各ガスの供給量等は表1に示したとおりである。ガスの供給は連続方式とした。清浄処理時の基板温度は、625℃とした。処理前後におけるアンドープInP層103の層厚変化は認められなかった。
試料3では、2回目の成長開始直前の第二の成長界面104で、MOVPE炉内で以下のような処理を行った。すなわち、(i)TBClとTMIn及びPHをウエハの表面に1分間供給した後、(ii)15秒間、PHを大量に供給してパージを行う、というステップを、20回繰り返して実施した。各ガスの供給量等は表1に示したとおりである。清浄処理時の基板温度は、625℃とした。処理前後におけるアンドープInP層103の層厚変化は100nm以下であった。
試料4では、2回目の成長開始直前の第二の成長界面104で、MOVPE炉内でビスジメチルアミノホスフィンクロライド(BDMAPCl)とTMIn及びPHをウエハの表面に10分間供給して、表面清浄処理を行った。各ガスの供給量等は表1に示したとおりである。ガスの供給は連続方式とした。清浄処理時の基板温度は、625℃とした。処理前後におけるアンドープInP層103の層厚変化の程度は表中に示したとおりであった。
(試料5〜6)
エッチング作用を有する原料として、t−塩化ブチル(TBCl:(CHCCl)またはビスジメチルアミノホスフィンクロライド(BDMAPCl:[(CH]NPCl)を用い、結晶成長原料としては、トリメチルインジウム(TMIn)及びホスフィン(PH)を用いた。図1のようにSnドープ{001}InP基板101上に減圧(60Torr)MOVPE法で1回目の成長層としてアンドープInP層103を1.0μm成長させた後、一旦ウエハをMOVPE炉から取り出し、12時間大気曝露する。その後、ウエットエッチングを行うことなく、このウエハを再びMOVPE炉内に投入し、表1に示す条件で清浄処理を行った。その後、2回目の成長層として0.5μmのアンドープInP層105を再成長させた。
各試料における清浄処理は以下のとおりである。
試料5では清浄処理を行わなかった。
試料6では、2回目の成長開始直前の第二の成長界面104で、MOVPE炉内でTBClとTMIn及びPHをウエハの表面に10分間供給して、表面清浄処理を行った。各ガスの供給量等は表1に示したとおりである。ガスの供給は連続方式とした。清浄処理時の基板温度は、625℃とした。処理前後におけるアンドープInP層103の層厚変化は認められなかった。
上記各試料の清浄処理中の層厚変化は、いずれも100nm以下であった。上記各試料について、第一の実施例と同様にしてSIMSにより残留不純物綿密度を測定した。結果を表1および図2〜7に示す。図2〜7は、それぞれ、試料1〜6の測定結果に対応する。表1中、「n.d.」とは、検出不可であったことを意味する。試料NO.5においては、該当するピークに対応する濃度は算出されたものの、ノイズとの判別が困難であったため、参考値として数値を示した。なお、図2〜7では、不純物濃度(単位:atoms/cm)として算定された数値(縦軸)を、面密度として換算し、この値を該当ピークに対応させて図中に記載した(単位:atoms/cm)。
得られた結果より、以下のことが明らかになった。すなわち、膜厚変化指数が6nm以下(0.1nm/sec以下)となるようにエッチングガスと成長ガスの供給比を調整することにより、残留不純物面密度が顕著に低減される。特にSiが効果的に除去される。また、ガス供給方式は、間欠式が効果的である。間欠供給とすることによって残留不純物密度が顕著に低減される。清浄処理前のウエットエッチングは、実施しない方が残留不純物密度が小さい。
Figure 2005031829
第四の実施例
本実施例では、第三の実施例と同様の実験を、ガス流量比を変化させて行ったものである。
図1と同様のサンプル構造において第二の成長界面104での表面清浄処理条件としては、エッチングガスであるTBClの供給量を19.4μmol/min(InPのエッチング速度にして20.5nm/min相当)、PH供給量を2.68mmol/minと一定にし、TMInの供給量を0〜30μmol/minの間で変化させて、10分間表面清浄処理を行い、続けてアンドープInP層105を成長した。続けてSIMS分析により第2界面の残留Si濃度について調べた。
図8は、第三の実施例における試料2のTMIn流量を変化させたもの(図中、「残留Si(連続型)」と表示)と、第三の実施例における試料3のTMIn流量を変化させたもの(図中、「残留Si(間欠型)」と表示)とが示されている。
図9は、第三の実施例における試料4のTMIn流量を変化させたものが示されている。
図8および図9には、残留Siの面密度と共に、TBCl及びTMInによるInPの成長速度(即ちアンドープInP層103(第一の半導体層)の膜厚変化速度)を正、エッチングを負として示した。
いずれの系においてもTMInの供給量と共に残留Si濃度が減少し、成長速度が0nm/secになる付近で、残留Si濃度は最小値を示し、さらにTMIn流量を増やすと、再び残留Si濃度は上昇した。これは、エッチングガスのTBClのみを第二の成長界面104に供給した場合、表面の残留Siは揮発性の塩化物SiClxとして一旦は表面から脱離するものの、Si−Clの結合が、Si−Pの結合に比べて弱く、Si−Clの結合がすぐに切れてまた表面に再付着してしまうが、TMInをTBClと同時に供給すると、SiがSiClxとして表面から脱離すると同時に、それまでSiが占有していた安定なIII族サイトがInで埋まり、一旦表面から脱離したSiが再びInP表面に付着出来ずに表面から脱離していくためと考えられる。従ってSiの脱離効率はTBClによるInPのエッチング速度とTMInによるInPの成長速度が丁度釣り合うあたりで最大となる。TMInによるInPの成長速度がTBClによるInPのエッチング速度を上回ると、今度はSiが脱離する前に、InP層が成長してしまい、表面の清浄処理が行われなくなるため第二の成長界面104での残留Si濃度が上昇するものと考えられる。
図8および図9の結果から、0.1nm/sec以内の層厚変化速度とした場合、特に層厚変化が実質的にない場合に、残留Si密度が顕著に低減されることが判明した。
第五の実施例
図11に示すように、本実施例に係る光半導体素子は、ダブルチャンネル型の埋め込み構造(double Channel planar buried Hetero structure:DC−PBH)を有しており、3回の結晶成長プロセスを経て完成した。即ち、まずn型InP基板500上にInGaAsP多重量子井戸(multiple quantum well:MQW)活性層502を含むダブルヘテロ構造からなる導波路層を成長し、SiOマスクを用いたフォトリソグラフィープロセスを経て所望のパターニングを施した幅2umの導波路層に、ドライエッチングまたはウエットエッチング等により、幅5umの溝を隔てて両側に再結合層を有する導波路を形成した。次に導波路上にだけSiO膜を残して、2回目の結晶成長プロセスを実施し、p−InPブロック層510、n−InPブロック層512で導波路を埋め込んだ。このときの再成長界面を第1の再成長界面508と呼ぶ。次にMQW活性層を含むメサ上の誘電体膜を除去し、3回目の結晶成長プロセスを実施した。ここで、この再成長界面を第2の再成長界面506と呼ぶ。3回目の結晶成長プロセスでは、p−InPクラッド層514の成長を開始する直前に、有機金属気相成長(metal organic vapor phase epitaxy:MOVPE)炉内において、エッチングガスであるTBClと、成長原料であるTMInとPH3を、エッチング速度と成長速度が丁度同じになる程度供給して、この第2の再成長界面を清浄化した。この表面清浄処理の際のTBClの供給量は19.4μmol/minで、これはInPのエッチング速度にして20.5nm/minに相当し、TMInの供給量は15.08μmol/min、PHの供給量は2.68mmol/minであり、これらはInPの成長速度にして20.5nm/minに相当する。従って、TBClによるInPのエッチング速度と、TMIn及びPHによるInPの成長速度は等しく、この表面清浄処理中に2回目の結晶成長プロセスまでに成長したInP層に層厚変化はない。また清浄化処理の時間は0秒から10分の間で変化させた。該清浄化処理の後、p−InPクラッド層514、p型InGaAsコンタクト層518を成長した。その後通常の電極形成プロセスを経て、本発明の光半導体素子を完成した。
素子長を300umにへき開し、端面コーティングはせずに、発振特性を評価した。評価結果を表2に示す。ここで残留Si面密度は、SIMSで分析した第2の再成長界面における残留Si面密度であり、本測定におけるSiの検出下限は、6x10atoms/cm相当であった。残留Si面密度は、処理時間と共に減少し、600秒では、検出下限以下にまで低下した。残留Si面密度の低下に伴い、閾値電流、スロープ効率、光出力とも顕著に改善された。図13は閾値電流の残留Si面密度依存性を示す図である。また、図14は、スロープ効率の第2の再成長界面の残留Si濃度依存性を示す図である。また、図15は、150mA通電時の光出力の第2の再成長界面の残留Si濃度依存性を示す図である。残留Si面密度を、約1x1011cm−2以下にすることで、清浄化処理をしない場合に比べて、閾値電流は約20%低減し、5.5mAとなった。また、スロープ効率は約20%改善し、0.34W/A、150mA通電時の光出力は1.4倍の45mWとなった。また比較のために、本発明の清浄化処理を用いずに、特許文献4に開示されている技術を用いて、約2X1O18cm−3の高濃度のZnを第2の成長界面近傍の0.2umにドーピングしたサンプルも作製した。この場合、閾値、スロープ効率、150mA通電時の光出力は6.3mA、スロープ効率は0.31W/A、150mA通電時の光出力は38mWとなり、改善効果はあるものの十分でなく、本発明の清浄化処理により残留Si濃度を約5x1011cm−2以下に下げたほうが、改善効果は大きいことが確認された。これは、特許文献4の技術では、残留Siによるn型層形成の影響は高濃度のZnのドーピングにより補償できるものの、過剰のZnをドーピングすることによって、クラッド層での価電子帯間吸収損失(Inter Valence Band Absorption:IVBA)が増大し、また活性層にZnが拡散して、内部微分量子効率(ηi)が低下したせいと考えられる。これに対し、本発明の光半導体素子においては、高濃度のZnを第2の再成長界面の近傍にドーピングすることなく、残留Si濃度が面密度を減少させて、n転層の形成を回避しているため、IVBAの増加や、ηiの低下を招くことなく、活性層直上から電流ブロック層への漏れ電流を抑制できるため、閾値、スロープ効率、光出力ともに大幅に改善できたものと考えられる。
Figure 2005031829
第六の実施例
図12は本実施例に係る光半導体集積素子の構造図である。本光半導体集積素子は、変調集積型DFB−LDであり、4回の結晶成長プロセスを経て完成した。即ち、まず半導体レーザとなる部分にのみ回折格子が形成されたn型InP基板600上にInGaAsP MQW活性層601を含むダブルヘテロ(Double Hetero:DH)構造を成長した。次いで、誘電体マスク等を用いたフォトリソグラフィープロセスにより半導体レーザ部分にマスクを形成し、ドライエッチングまたはウエットエッチングにより、変調器部分をエッチングした。次に、2回目の結晶成長で、変調器用のInGaAsP MQW層603を含むDH構造を成長した。このときの再成長界面を第1の再成長界面620と呼ぶ。
次に、再び誘電体マスク等を用いたフォトリソグラフィープロセスにより半導体レーザの導波路部と変調器の導波路部分にマスクを形成し、ドライエッチングまたはウエットエッチング等により、導波路以外の部分をエッチングした。
次に半導体レーザ用および変調器用の導波路上にだけ誘電体膜を残して、3回目の結晶成長プロセスを実施し、厚さ0.1umでp型キャリア濃度5x1017cm−2のp−InPブロック層602、厚さ1.5umで抵抗率1x10Ωcmの半絶縁(Semi−Insulating:SI)−InPブロック層604、厚さ0.1umでn型キャリア濃度3x1018cm−3のn−InPブロック層606を成長した。このときの再成長界面を第2の再成長界面644と呼ぶ。
次に半導体レーザ用および変調器用の導波路上の誘電体膜を除去し、4回目の結晶成長プロセスを実施した。この再成長界面を第3の再成長界面と呼ぶ。4回目の結晶成長プロセスでは、p−InPクラッド層608の成長を開始する直前に、MOVPE炉内において、エッチングガスであるTBClと、成長原料であるTMInとPHを、エッチング速度と成長速度が丁度同じになる程度供給して、この第2の再成長界面を清浄化した。この表面清浄処理の際のTBClの供給量は19.4μmol/minで、これはInPのエッチング速度にして20.5nm/minに相当し、TMInの供給量は15.08μmol/min、PHの供給量は2.68mmol/minであり、これらはInPの成長速度にして20.5nm/minに相当する。従って、TBClによるInPのエッチング速度と、TMIn及びPHによるInPの成長速度は等しく、この表面清浄処理中に2回目の結晶成長プロセスまでに成長したInP層に層厚変化はない。表面処理時間は、10分間とした。
該清浄化処理の後、p−InPクラッド層608、p型コンタクト層622を成長する。その後、通常の電極形成プロセスを経て、本発明の光半導体素子が完成する。
比較のために該第3の再成長界面に該表面処理を行わずに作製した変調器集積型DFB−LDと比べると、本発明の表面処理を施した上記変調器集積型DFB−LDにおいては、第3の再成長界面の残留Si濃度がSIMSの検出下限の6x10atoms/cm以下と低いため、半導体レーザおよび変調器直上から電流ブロック層への漏れ電流が極めて少ないことに加えて、半導体レーザと変調器間の漏れ電流も極めて少ない。また、残留Siの影響を打ち消すために、Znなどの過剰のp型ドーパントをこの再成長界面近傍にドーピングする必要もないため、半導体レーザ部分においては、p型ドーパントの拡散に伴う内部損失の増大や内部微分量子効率の低下がなく、また変調器部分においては、p型ドーパントの拡散に伴う電界強度の不均分布化もない。この結果、閾値にして約10%、スロープ効率が5%、出力10%に加え、周波数応答特性が3dBダウンの周波数で、約20%の改善効果が得られた。
以上、実施例に基づいて本発明を説明したが、本発明は上記各実施例に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、種々の態様をとることができる。
たとえば上記実施例では、エッチング作用を有する原料として、TBCl、ビスジメチルアミノホスフィンクロライド([(CH]NPCl)を用いたが、他のCl系原料、例えば塩化水素(HCl)や、塩化メチル(CHCl)、四塩化炭素(CCl)、ビスジメチルアミノアルシンクロライド([(CH]NAsCl)、三塩化燐(PCl)、三塩化砒素AsCl、塩素(Cl)や、同様のBr系原料、I系原料、F系原料を用いてもよい。他の原料を用いる場合、原料の分解効率やエッチング効率は原料によって異なるが、基本的には上記実施例に示したようにエッチング原料による半導体層のエッチング速度と結晶成長原料による半導体層の成長速度をバランスさせることで最大のエッチング効率が得られ、同様の効果が得られる。
また上記実施例では、結晶成長法としてMOVPE法を使った場合を例として説明したが、他の成長手法、たとえば分子線エピタキシー(MBE)法やガスソースMBE(GSMBE)法、有機金属MBE(MOMBE)法、化学ビーム成長(CBE)法などを使っても良い。また上記実施例では、InP系材料について説明したが、本発明はこれに制限されるものではなく、GaAs、InAs、GaP、GaNなどの他のIII−V族化合物半導体やII−VI族化合物半導体などの半導体材料に適用可能である。
また基板温度については、上記実施例では、625℃としたが、通常の結晶成長が可能な温度範囲例えばInPであれば400℃〜700℃程度の間、GaAsであれば400℃から800℃の間であればよく、エッチング原料による半導体層のエッチング速度や結晶成長原料による半導体層の成長速度の基板温度による変化を補正して、両者がバランスさせることで最大のエッチング効率が得られ、同様の効果がある。
また、上記実施例では半導体層に対してエッチング作用を有するエッチング性物質を含む第一のガスと結晶成長原料を含む第二のガスとを同時に半導体層表面に供給したが、これらを交互に供給する方式とすることもできる。この場合、半導体層の成長が過度に進行してしまうと充分な清浄度を実現することが困難となるため、1〜3原子層程度の厚みの成長が進行した後、エッチングが行われるというように、成長ガスとエッチングガスの切り替えを迅速に行うことが望ましい。
また上記実施例では、DFB−LDと変調器を組み合わせた変調器集積型DFB−LDを例として本発明の光半導体集積素子について説明したが、DFB−LDの代わりに、ファブリペローレーザやFP−LD、DBR−LD、半導体増幅器などを集積した素子にも有効であるし、集積する素子の数も2つに限らず、さらに多数の素子を集積した場合にも有効である。
また上記実施例では、DC−PBH構造のファブリペローレーザを本発明の光半導体素子の一例として説明したが、他の構造の半導体レーザや、SOAや変調器などの他の単体アクティブデバイスに用いても有効である。特に、活性層面積の大きなアクティブMMI−LDに用いた場合は、高電流注入時の出力飽和が抑制され、最大光出力が大幅に改善されるなど、顕著な効果がある。特に本発明は、アクティブMMI構造を有する素子に好適に適用される。
以上説明したように、本発明によれば、もとの半導体層中の不純物拡散や結晶欠陥の発生を誘発することなく、また形状変化を最小限にして、結晶成長前の半導体基板表面や再成長前の半導体表面の不純物汚染や物理的ダメージを再現性良く安定的に除去することが可能であり、成長界面を有する半導体素子の性能改善に大きな効果がある。
【書類名】 明細書
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体層表面を清浄化する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造工程においては、半導体基板上への同種または異種の半導体層の結晶成長工程、誘電体等をマスクとしたフォトリソグラフィーと化学エッチングまたはドライエッチングによるパターンニング工程、電流ブロック構造や光閉じ込め構造のための同種または異種の半導体層の再成長工程を繰り返すことが多い。この場合、結晶成長前の基板表面や再成長前の半導体成長層表面は、大気暴露やエッチング、洗浄等のプロセスにより不純物汚染や物理的ダメージを受け易く、それらの表面にそのまま結晶成長を行うと素子特性や寿命が大幅に劣化してしまう。このため、不純物汚染や物理的ダメージ層を除去するために、結晶成長室内でエッチングを行い、その後、続けて結晶成長を行う手法が用いられてきた。
【0003】
このような技術として、特許第3158651号では、成長原料としてトリメチルガリウム(TMG)及びアルシン(AsH)、エッチングガスとして塩化水素(HCl)を用いてGaAsの再成長直前に、成長室内でエッチングを施すことにより、炭素(C)、酸素(O)、シリコン(Si)などの不純物を除去でき、またエッチング中にHClと共にTMGを同時に供給すると、エッチングにより結晶表面に生じるストイキオメトリーからのずれが補償され、再成長界面でのキャリアの蓄積が抑制されるとされている。
【0004】
また、特開昭59−65434号公報には、GaAs半導体の気相成長において、塩化水素とともにIII族元素のアルキル化合物およびV族元素の水酸化物もしくはアルキル化合物の蒸気を同時に導入して半導体層をエッチングする技術が開示されている。エッチングの速さは、毎分0.1μmのエッチング速度の例が示されている。こうすることにより、成長開始前の下地表面を鏡面にすることができるとされている。
【0005】
また、特開昭51−74580号公報には、III−V族元素から成る半導体物質の気相エッチングをV族元素のハロゲン化物および同水酸化物を含む不活性ガス雰囲気下で実施し、V族元素の水酸化物を同時に導入する技術が記載されている。同公報によれば、平坦で、かつ鏡面性に優れた基板表面を得ることができると記載されている。
【0006】
また一方で、特許第3339486号に開示されている様に、埋め込み型半導体レーザにおいて、再成長界面での残留Siの影響を補償するために、Znをドーピングして、残留Siによるn転層を再びp反転させて、レーザの発振特性を向上させる技術も開発されている(図16)。
【特許文献1】 特許第3158651号
【特許文献2】 特開昭59−65434号公報
【特許文献3】 特開昭51−74580号公報
【特許文献4】 特許第3339486号
【非特許文献1】 アイトリプルイー ジャーナル オブ セレクティド トピックス イン カンタム エレクトロニクス 第3巻 第3号 845ページ目から853ページ目(IEEE Journal of Selected Topics in Quantum Electronics,Vol.3,N0.3,p845〜p853)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記従来技術では、半導体結晶の構成元素に比べてエッチング速度が遅い汚染物質が表面に残留しやすく、例えばアイトリプルイー ジャーナル オブ セレクティド トピックス イン カンタム エレクトロニクス 第3巻 第3号 845ページ目から853ページ目(IEEE Journal of Selected Topics in Quantum Electronics,Vol.3,N0.3,p845〜p853)に報告されているように、エッチングガスとしてPClを用い、InP表面を成長室内でエッチングしてもSiはほとんどエッチングされず、表面に残留してしまう。また本発明者らの実験結果では、通常の結晶成長温度付近では、特許第3158651号で示されているような結晶成長室内でのエッチングを施しても再成長界面の残留Siを除去することは容易でなかった。また、残留Siを除去しようとして基板温度を上げ過ぎたり、エッチングを深くし過ぎると、もとの半導体層の内部で不純物拡散や結晶欠陥を生じたり、エッチングにより形状変化が起き、設計通りのデバイス構造が作製できないという問題があった。
【0008】
また、特許第3339486号に開示されている技術を用いた場合は、残留Siによるn型層形成の影響は補償できるものの、過剰のZnをドーピングすることによって、クラッド層での価電子帯間吸収損失(Inter Valence Band Absorption: IVBA)を増大させ、また活性層に拡散した場合は、内部微分量子効率(ηi)を低下させるなどのデメリットがある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、もとの半導体層中の不純物拡散や結晶欠陥の発生を誘起することなく、また形状変化を最小限にして、結晶成長前の半導体基板表面や再成長前の半導体表面の不純物汚染や物理的ダメージを再現性良く安定的に除去する半導体表面清浄化手法を提供すること、及び過剰のZnドーピングなどによるIVBAの増加やηiの低下や、結晶欠陥のない良好な発振特性を有する埋め込み半導体レーザ構造を提供することにある。
【0010】
半導体表面に付着した特定の汚染物質の除去が困難な理由について、本発明者らは以下のように推察した。半導体層表面に付着した汚染物質に対してエッチング性物質を作用させた場合、エッチング性物質と上記特定の汚染物質が化学反応を起こす。しかし、この化学反応によって生じた結合の結合力は比較的弱く、汚染物質がエッチング性物質と結合し化合物を形成して半導体表面から脱離しても、またすぐに結合が切れて半導体表面に再付着してしまうものと予想される。このように、半導体表面に付着した特定の汚染物質は、半導体層へ再付着するため、除去が困難であると推察される。
【0011】
こうした推察のもと、本発明者は、エッチング作用のある原料と結晶成長原料の両方を、清浄処理対象となる半導体層表面に接触せしめることにより、再付着を抑制しつつ汚染物質を効率的にエッチング除去できることを見いだし、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の半導体素子は、p型半導体層中の再成長界面の残留Si濃度が面密度で5×1011atoms/cm以下であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の半導体素子は、前記再成長界面が、p型電流ブロック層と、その下部に接する層との界面であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の半導体素子は、前記再成長界面が、p型クラッド層と、その下部に接する層との界面であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の半導体素子は、前記再成長界面が、p型クラッド層中の再成長界面であることを特徴とする。
【0016】
また本発明の半導体素子は、アクティブMMI構造を有することを特徴とする。
【0017】
また本発明の半導体集積素子は、p型半導体層中の再成長界面の残留Si濃度が面密度で5×1011atoms/cm以下であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の半導体集積素子は、前記再成長界面が、p型電流ブロック層と、その下部に接する層との界面であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の半導体集積素子は、前記再成長界面が、p型クラッド層と、その下部に接する層との界面であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の半導体集積素子は、前記再成長界面が、p型クラッド層中の再成長界面であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の半導体集積素子は、アクティブMMI構造を有することを特徴とする。
【0022】
こうすることにより、結晶欠陥やドーパントの拡散が少ない構造となり、IVBAを増加させたりηiを低下させることなく、ブロック層の耐圧を低下させていた漏れ電流を抑制することができ、この結果、良好な発振特性が得られる。また、素子の構造によっては素子間の漏れ電流を抑制できるという効果が得られる。
【0023】
上記再成長界面は、たとえば、
(i)p型電流ブロック層と、その下部に接する層との界面
(ii)p型クラッド層と、その下部に接する層との界面
(iii) p型クラッド層中の再成長界面とすることができる。
(i)の例としては、p型電流ブロック層とp型基板との界面が挙げられる。(ii)の例としては、p型クラッド層とその下部の活性層や光ガイド層等が挙げられる。
【0024】
再成長界面の残留Si濃度は、面密度で、5×1011atoms/cm以下とするが、好ましくは、1×1011atoms/cm以下とする。こうすることにより、耐圧特性の向上、漏れ電流の低減を図ることができる。
【0025】
本発明に係る半導体素子、半導体集積素子は、アクティブMMI構造を有するものとすることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように本発明は、以下の効果を有する。
【0027】
の効果は、埋め込み型光半導体素子の電流ブロック層となる第1の埋め込み層とクラッド層となる第2の埋め込み層の間の再成長界面の残留Si濃度を5E11atoms/cm以下としたことで、ブロック層の耐圧を低下させていた漏れ電流を抑制でき、良好な発振特性を有する埋め込み型半導体レーザを提供することができることである。
【0028】
の効果は、埋め込み型光半導体素子の電流ブロック層となる第1の埋め込み層とクラッド層となる第2の埋め込み層の間の再成長界面の残留Si濃度を5E11cm−2以下としたことで、残留Siによるn転層を再びp反転させるためにZnを高濃度にドーピングする必要がなくなり、IVBAの増加やηiの低下を回避でき、良好な発振特性を有する埋め込み型半導体レーザを提供することができることである。
【0029】
の効果は、光半導体集積素子においては、クラッド層内の再成長界面の残留Si濃度を5E11atoms/cm以下にしたことで、素子間の漏れ電流が抑制され、良好な動作特性を有する埋め込み半導体レーザを有する集積素子を提供できることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明における清浄処理の対象となる半導体層は、InGaAs、InGaAsP、AlGaInAs、InAsPなどのInP系、AlGaAs、InGaP、AlGaInP、GaAsSb、InGaAsNなどのGaAs系、GaN,AlGaN,GaInN,AlGaInN、BAlGaInNなどのGaN系等のIII−V族化合物半導体;ZnSe、ZnTe、MgZnSSe、MgZnCdSe、MgZnSeTe、ZnSeTe、ZnO,MgZnO,MgCdZnO等のII−VI族化合物半導体;等の化合物半導体のほか、シリコンおよびその化合物、ゲルマニウムおよびその化合物等の半導体により構成される。
【0031】
なお、本発明における清浄処理の対象となる半導体層は、3元系でも4元系以上の組成でもよい。
【0032】
このうち、III−V族化合物半導体層の表面に、素子の作製プロセスもしくは大気暴露によって付着した汚染物質の除去に本発明を適用した場合、顕著な効果が得られる。特に、従来技術によっては充分に除去することが困難であったシリコンの除去に適用すると、特に効果的である。
【0033】
本発明におけるエッチング性物質としては、大多数の元素と結合して揮発性の化合物を形成する、ハロゲン元素またはその化合物を例示することができる。このうち、取り扱いが容易である点で、塩素(Cl)を含む原料であることが好ましく用いられる。
【0034】
本発明におけるエッチング性物質としては、t−塩化ブチル((CHCCl:TBCl)、ビスジメチルアミノホスフィンクロライド([(CH]NPCl:BDMAPCl)、塩化水素(HCl)や、塩化メチル(CHCl)、四塩化炭素(CCl)、ビスジメチルアミノアルシンクロライド([(CH]NAsCl)、三塩化燐(PCl)、三塩化砒素AsCl、塩素(Cl)や、同様のBr系原料、I系原料、F系原料を例示することができる。このうち、t−塩化ブチルを用いると、清浄処理の対象となる半導体層のストイキメトリを比較的良好に維持しつつ効果的にエッチングを行うことができる。たとえば、上記半導体層がIII−V族半導体で、エッチングガスが特定のV族元素を含んでいる場合、清浄処理の対象となる半導体層がエッチングガス中に含まれるものと異なる種類のV族元素を含んでいると、清浄処理中に表面に変性層が形成されてしまう問題がしばしば起こるが、t−塩化ブチルはV族元素を含まないため、清浄処理中に変性層が形成されることがなく、好ましい。また、ビスジメチルアミノホスフィンクロライドを用いた場合、エッチング能力の温度依存性が比較的抑制されるため、安定した清浄処理を行うことができる。
【0035】
また、清浄処理の対象となる半導体層を構成するIII族元素が一種類からなる場合、本発明の表面処理中に変成層の形成や組成変化を起こしにくいため望ましく、さらには第一の半導体を構成するIII族元素がインジウム(In)で、たとえばInP、InAs、InN、InSbなど、であるか、またはガリウム(Ga)、たとえばGaAs、GaP、GaN、GaSbなど、である場合、より顕著な効果が現れる。
【0036】
本発明は、半導体層の成長を気相成長装置を用いて実施する場合、顕著な効果が得られ、成長原料に有機金属を用いた有機金属気相成長(MOCVD:Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)法の場合に、より顕著な効果が現れる。またこの場合、結晶成長原料である水素化合物及び有機金属ガスについては特に限定はされず、所望の化合物半導体を得るのに必要な水素化合物及び有機金属化合物ガスを用いればよい。
【0037】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0038】
図11を参照すると、本発明の第1の実施の形態として光半導体素子の構造図が示されている。本光半導体素子は、ダブルチャンネル型の埋め込み構造(Double Channel Planar Buried Hetero Structure: DC−PBH)を有する半導体レーザであり、3回の結晶成長プロセスを経て完成している。即ち、まずn型InP基板500上に活性層502を含むダブルへテロ構造からなる導波路層を成長し、誘電体マスク等を用いたフォトリソグラフィープロセスを経て所望のパターニングを施した導波路層に、ドライエッチングまたはウエットエッチング等により、溝を隔てて両側に再結合層504を有する導波路を形成する。次に導波路上にだけ誘電体膜を残して、2回目の結晶成長プロセスを実施し、p−InPブロック層510、n−InPブロック層512で導波路を埋め込む。このときの再成長界面を第1の再成長界面508と呼ぶ。次に活性層502を含むメサ上の誘電体膜を除去し、3回目の結晶成長プロセスを実施するが、ここでp−InPクラッド層510の成長を開始する直前に、結晶成長装置内において、エッチング作用を有するガスと、成長原料ガスを、エッチング速度と成長速度が丁度同じになる程度供給して、この半導体表面を清浄化する。このとき、光学式の膜厚モニタ等によって、表面の清浄化処理の中の膜厚の変化速度を測定すると、膜厚は僅かに減少するがその大きさは、0.1nm/sec以下である。該清浄化処理の後、p−InPクラッド層514、p型コンタクト層518を成長する。この2回目の再成長プロセスを行った界面を第2の再成長界面と呼ぶ。その後通常の電極形成プロセスを経て、本発明の光半導体素子が完成する。
【0039】
本光半導体素子においては、第2の再成長界面の残留Si濃度が面密度にして5E10atoms/cm以下と低いため、活性層直上から電流ブロック層への漏れ電流が極めて少ない。また、残留Siの影響を打ち消すために、Znなどの過剰のp型ドーパントを該第2の再成長界面近傍にドーピングする必要もないため、内部損失の増大や内部微分量子効率の低下もない。したがって、たとえば本光半導体素子が、半導体レーザの場合は、低閾値、高効率、高出力な半導体レーザが得られる。また本光半導体素子が、光半導体増幅器である場合は、高利得、高飽和出力な半導体増幅器が得られる。
【0040】
図12は、第2の実施形態に係る光半導体集積素子の構造図である。本光半導体集積素子は、変調集積型DFB−LDであり、4回の結晶成長プロセスを経て完成している。即ち、まず半導体レーザとなる部分にのみ回折格子が形成されたn型InP基板600上にレーザの活性層を含むダブルへテロ(Double Hetero: DH)構造を成長し、誘電体マスク等を用いたフォトリソグラフィープロセスにより半導体レーザ部分にマスクを形成し、ドライエッチングまたはウエットエッチングにより、変調器部分をエッチングする。
【0041】
次に、2回目の結晶成長で、変調器用の活性層601を含むDH構造を成長する。次に、再び誘電体マスク等を用いたフォトリソグラフィープロセスにより半導体レーザの導波路部と変調器の導波路部分にマスクを形成し、ドライエッチングまたはウエットエッチング等により、導波路以外の部分をエッチングする。次に半導体レーザ用および変調器用の導波路上にだけ誘電体膜を残して、3回目の結晶成長プロセスを実施し、p−InPブロック層602、半絶縁(Semi−Insulating:SI)−InPブロック層604、n−InPブロック層606を成長する。このときの再成長界面を第2の再成長界面644と呼ぶ。
【0042】
次に半導体レーザ用および変調器用の導波路上の誘電体膜を除去し、4回目の結晶成長プロセスを実施するが、ここでp−InPクラッド層608の成長を開始する直前に、結晶成長装置内において、エッチング作用を有するガスと、成長原料ガスを、エッチング速度と成長速度が丁度同じになる程度供給して、この半導体表面を清浄化する。このとき、光学式の膜厚モニタ等によって、表面の清浄化処理の中の膜厚の変化速度を測定すると、膜厚は僅かに減少するがその大きさは、0.1nm/sec以下である。該清浄化処理の後、p−InPクラッド層608、p型コンタクト層612を成長する。この4回目の結晶成長プロセスを行った界面を第3の再成長界面646と呼ぶ。その後通常の電極形成プロセスを経て、本発明の光半導体素子が完成する。
【0043】
本光半導体素子においては、第3の再成長界面の残留Si濃度が面密度にして5E10atoms/cm以下と低いため、半導体レーザおよび変調器直上から電流ブロック層への漏れ電流が極めて少ないことに加えて、半導体レーザと変調器間の漏れ電流も極めて少ない。また、残留Siの影響を打ち消すために、Znなどの過剰のp型ドーパントを該第2の再成長界面近傍にドーピングする必要もないため、半導体レーザ部分においては、p型ドーパントの拡散に伴う内部損失の増大や内部微分量子効率の低下がなく、また変調器部分においては、p型ドーパントの拡散に伴う電界強度の不均分布化もない。したがって、低閾値、高効率、高出力、高速な、変調器集積型DFB−LD半導体レーザが得られる。
【0044】
本実施形態における光半導体素子において、第1の再成長界面に本発明の清浄化処理法を適用して、残留Si濃度を低減した場合も、リーク電流が低減され、素子特性が改善される。
【0045】
また、この光半導体集積素子において、第1の再成長界面および第2の再成長界面に本発明の清浄化処理法を適用して、残留Si濃度を低減した場合も、素子間および単体素子のリーク電流が低減され、素子特性が改善される。
【0046】
本発明の上記および他の目的、特徴および利点を明確にすべく、添付した図面を参照しながら、本発明の実施例を以下に詳述するが、本発明は、その要旨を超えない限り実施例に限定されるものではない。
【0047】
第一の実施例
本実施例では、MOVPE法を用いて、InP上にInPを再成長させる場合の成長界面の残留不純物除去について説明する。エッチング作用を有する原料として、t−塩化ブチル(TBCl:(CHCCl)を用い、結晶成長原料としては、トリメチルインジウム(TMIn)及びホスフィン(PH)を用いた。図1のようにSnドープ{001}InP基板101上に減圧(60Torr)MOVPE法で1回目の成長層としてアンドープInP層103を1.0μm成長させた後、一旦ウエハをMOVPE炉から取り出し、12時間大気曝露する。ウエット処理等は実施しない。その後、このウエハを再びMOVPE炉内に投入し、2回目の成長層として0.5μmのアンドープInP層105を成長再成長させた。
【0048】
2回目の成長開始直前の第二の成長界面104で、MOVPE炉内でTBClとTMIn及びPHをウエハの表面に10分間供給して、表面清浄処理を行った(サンプルA)。この表面清浄処理の際のTBClの供給量は19.4μmol/minで、これはInPのエッチング速度にして20.5nm/minに相当し、TMInの供給量は15.08μmol/min、PHの供給量は2.68mmol/minであり、これらはInPの成長速度にして20.5nm/minに相当する。従って、TBClによるInPのエッチング速度と、TMIn及びPHによるInPの成長速度は等しく、この表面清浄処理中に1回目に成長したアンドープInP層103の層厚変化はない。また表面清浄処理時の基板温度は、625℃とした。
【0049】
比較の為に2回目のInP層成長開始直前の第二の成長界面104でのTBCl、TMIn、及びPHによる表面清浄処理を行わずに2回目のアンドープInP層105の成長を開始したサンプル(サンプルB)も作製した。
サンプルA及びサンプルBの二つのサンプルの再成長界面での残留不純物濃度について2次イオン質量分析法(SIMS)を用い、アンドープInP層105をスパッタリングしながら深さ方向の分析を行った。
第二の成長界面104でTBCl、TMIn、及びPHによる表面清浄処理を行わなかったサンプルBでは、第二の成長界面104に残留不純物としてC,O、Siが検出され、その濃度はそれぞれ、面密度にしてC:6.4×1010atoms/cm、O:6.9×1011atoms/cm、Si:1.2×1012atoms/cm相当であった。一方、第二の成長界面104でTBCl(19.4μmol/min)、TMIn(15.08μmol/min)、及びPH(2.68mmol/min)による表面清浄処理を行ったサンプルAでは、第二の成長界面104でのC,O,Si等の残留不純物はいずれも検出限界以下であった。ここで本測定での検出下限はそれぞれ、C:6×10atoms/cm、O:6×10atoms/cm、Si:6×10atoms/cm 相当であった。またエッチングガスとして導入したClも全く検出されなかった。ここでClの検出下限は、3×10atoms/cm程度であった。
【0050】
なお、本実施例では第二の成長界面104の清浄処理を例にあげて説明したが、第一の成長界面102の清浄処理に本発明を適用することもできる。
【0051】
第二の実施例
本実施例では、本発明をInP系半導体レーザ素子に適用した。本実施例では、活性層を最上層とする半導体多層膜を形成した後、活性層表面の一部を覆うマスクを形成し、このマスクの両脇の部分をエッチングにより除去し、メサストライプを設ける。この段階で本発明に係る清浄処理を実施した後、メサの両脇に半導体層を埋込む。その後、メサ表面に対して本発明に係る清浄処理を実施し、つづいて上層の半導体層を成長させる。以下、図10を参照して説明する。
【0052】
まず通常の結晶成長プロセスにより、n型InP基板301上にInGaAsP/InGaAsP量子井戸307を活性層とするダブルヘテロ構造を作製し、SiOをマスクとして、ドライエッチングにより深さ2μm程度の幅2μmのメサストライプ310を形成した。その後、このウエハをMOVPE炉内に導入し、第一の再成長界面308に第一の実施例と同じ条件で上記本発明の表面清浄処理を施した後に、p型InP層302、n型InP層303、p型InP層304を順次積層して電流ブロック構造を形成した。
【0053】
次にこのウエハをMOVPE炉外に取り出し、SiOマスクを通常のウエットエッチングプロセスにより除去した後、再びMOVPE炉内に投入し、第二の再成長界面309に、再度、第一の実施例と同様の条件で表面清浄処理を実施した後、p型InPクラッド層305、p−InGaAsコンタクト層306を形成した。その後、通常の電極形成プロセス、素子分離プロセスを行い、埋め込み型レーザ素子を完成させた。
【0054】
この素子の電圧−電流特性、電流−光出力特性を測定したところ、本発明の表面清浄処理を用いない従来の素子に比べて、スロープ効率が大幅に改善されると共に、高光出力時の電力−光出力変換特性が大幅に改善され、同じ光出力を得るのに必要な駆動電圧が大幅に低減されていることが確認された。これは、本発明の表面清浄処理により電流ブロック層形成前の第一の再成長界面308のSi等のn型残留不純物が減少したことにより、リーク電流が減少し、またクラッド、コンタクト層形成前の第二の再成長界面309のSi等のn型残留不純物が減少したことにより、電流障壁が取り除かれ、駆動電圧の低下した効果によるものであると考えられる。
【0055】
なお、本実施例では、第一の再成長界面308および第二の再成長界面309の両方に表面清浄処理を施したが、いずれか一方、たとえば第二の再成長界面309に対してのみ清浄処理を施してもよい。
【0056】
第三の実施例
本実施例では、清浄処理の条件を変更したこと以外は第一の実施例と同様にして半導体多層構造を作製し、第二の成長界面104でのC,O,Si等の残留不純物密度を測定した。清浄処理の条件は表1に示した。表1の「処理条件」における各項目について、以下、説明する。
(i)ガスの種類
t−塩化ブチル(TBCl:(CHCCl)、ビスジメチルアミノホスフィンクロライド(BDMAPCl:[(CH]NPCl)を用いた。
(ii)ガスの流量
MOVPE炉内へのガスの供給量を示す。
(iii)エッチング速度
表中に示された流量でエッチングガスのみを供給した場合のエッチング速度を示す。この値は予備実験により求められたものである。
(iv)成長速度
表中に示された流量で成長ガスのみを供給した場合の成長速度を示す。この値は予備実験により求められたものである。
(v)膜厚変化指数
層厚が増加する場合を正、層厚が減少する場合を負と定義し、成長速度とエッチング速度の和を「膜厚変化指数」と定義した。清浄処理工程の前後における層厚変化の指標となる。
(vi)ガス供給方式
連続方式とは、エッチングガスおよび成長ガスを一定時間連続的に供給する方式である。間欠方式とは、エッチングガスおよび成長ガスを一定時間、間欠的に供給する方式であり、ガスを供給する時間とガスの供給を停止する時間を交互に繰り返す。
(vii)ウエットエッチング
アンドープInP層103の清浄処理の前に、エッチング液を用いたエッチング処理を行った場合、ウエットエッチング「有り」と表記した。
【0057】
(試料1〜4)
エッチング作用を有する原料として、t−塩化ブチル(TBCl:(CHCCl)またはビスジメチルアミノホスフィンクロライド(BDMAPCl:[(CH]NPCl)を用い、結晶成長原料としては、トリメチルインジウム(TMIn)及びホスフィン(PH)を用いた。図1のようにSnドープ{001}InP基板101上に減圧(60Torr)MOVPE法で1回目の成長層としてアンドープInP層103を1.0μm成長させた後、一旦ウエハをMOVPE炉から取り出し、12時間大気曝露する。その後、アンドープInP層103の表面を硫酸含有液によりウエットエッチングし、つづいて純水によりリンスを行った。
【0058】
その後、このウエハを再びMOVPE炉内に投入し、表1に示す条件で清浄処理を行った後、2回目の成長層として0.5μmのアンドープInP層105を再成長させた。
【0059】
各試料における清浄処理は以下のとおりである。
【0060】
試料1では清浄処理を行わなかった。
【0061】
試料2では、2回目の成長開始直前の第二の成長界面104で、MOVPE炉内でTBClとTMIn及びPHをウエハの表面に10分間供給して、表面清浄処理を行った。各ガスの供給量等は表1に示したとおりである。ガスの供給は連続方式とした。清浄処理時の基板温度は、625℃とした。処理前後におけるアンドープInP層103の層厚変化は認められなかった。
【0062】
試料3では、2回目の成長開始直前の第二の成長界面104で、MOVPE炉内で以下のような処理を行った。すなわち、(i)TBClとTMIn及びPHをウエハの表面に1分間供給した後、(ii)15秒間、PHを大量に供給してパージを行う、というステップを、20回繰り返して実施した。各ガスの供給量等は表1に示したとおりである。清浄処理時の基板温度は、625℃とした。処理前後におけるアンドープInP層103の層厚変化は100nm以下であった。
【0063】
試料4では、2回目の成長開始直前の第二の成長界面104で、MOVPE炉内でビスジメチルアミノホスフィンクロライド(BDMAPCl)とTMIn及びPHをウエハの表面に10分間供給して、表面清浄処理を行った。各ガスの供給量等は表1に示したとおりである。ガスの供給は連続方式とした。清浄処理時の基板温度は、625℃とした。処理前後におけるアンドープInP層103の層厚変化の程度は表中に示したとおりであった。
【0064】
(試料5〜6)
エッチング作用を有する原料として、t−塩化ブチル(TBCl:(CHCCl)またはビスジメチルアミノホスフィンクロライド(BDMAPCl:[(CH]NPCl)を用い、結晶成長原料としては、トリメチルインジウム(TMIn)及びホスフィン(PH)を用いた。図1のようにSnドープ{001}InP基板101上に減圧(60Torr)MOVPE法で1回目の成長層としてアンドープInP層103を1.0μm成長させた後、一旦ウエハをMOVPE炉から取り出し、12時間大気曝露する。その後、ウエットエッチングを行うことなく、このウエハを再びMOVPE炉内に投入し、表1に示す条件で清浄処理を行った。その後、2回目の成長層として0.5μmのアンドープInP層105を再成長させた。
【0065】
各試料における清浄処理は以下のとおりである。
【0066】
試料5では清浄処理を行わなかった。
【0067】
試料6では、2回目の成長開始直前の第二の成長界面104で、MOVPE炉内でTBClとTMIn及びPHをウエハの表面に10分間供給して、表面清浄処理を行った。各ガスの供給量等は表1に示したとおりである。ガスの供給は連続方式とした。清浄処理時の基板温度は、625℃とした。処理前後におけるアンドープInP層103の層厚変化は認められなかった。
【0068】
上記各試料の清浄処理中の層厚変化は、いずれも100nm以下であった。
上記各試料について、第一の実施例と同様にしてSIMSにより残留不純物綿密度を測定した。結果を表1および図2〜7に示す。図2〜7は、それぞれ、試料1〜6の測定結果に対応する。表1中、「n.d.」とは、検出不可であったことを意味する。試料NO.5においては、該当するピークに対応する濃度は算出されたものの、ノイズとの判別が困難であったため、参考値として数値を示した。なお、図2〜7では、不純物濃度(単位:atoms/cm)として算定された数値(縦軸)を、面密度として換算し、この値を該当ピークに対応させて図中に記載した(単位:atoms/cm)。
得られた結果より、以下のことが明らかになった。すなわち、膜厚変化指数が6nm以下(0.1nm/sec以下)となるようにエッチングガスと成長ガスの供給比を調整することにより、残留不純物面密度が顕著に低減される。特にSiが効果的に除去される。また、ガス供給方式は、間欠式が効果的である。間欠供給とすることによって残留不純物密度が顕著に低減される。清浄処理前のウエットエッチングは、実施しない方が残留不純物密度が小さい。
【0069】
【表1】
Figure 2005031829
【0070】
第四の実施例
本実施例では、第三の実施例と同様の実験を、ガス流量比を変化させて行ったものである。
【0071】
図1と同様のサンプル構造において第二の成長界面104での表面清浄処理条件としては、エッチングガスであるTBClの供給量を19.4μmol/min(InPのエッチング速度にして20.5nm/min相当)、PH供給量を2.68mmol/minと一定にし、TMInの供給量を0〜30μmol/minの間で変化させて、10分間表面清浄処理を行い、続けてアンドープInP層105を成長した。続けてSIMS分析により第2界面の残留Si濃度について調べた。
【0072】
図8は、第三の実施例における試料2のTMIn流量を変化させたもの(図中、「残留Si(連続型)」と表示)と、第三の実施例における試料3のTMIn流量を変化させたもの(図中、「残留Si(間欠型)」と表示)とが示されている。
【0073】
図9は、第三の実施例における試料4のTMIn流量を変化させたものが示されている。
【0074】
図8および図9には、残留Siの面密度と共に、TBCl及びTMInによるInPの成長速度(即ちアンドープInP層103(第一の半導体層)の膜厚変化速度)を正、エッチングを負として示した。
【0075】
いずれの系においてもTMInの供給量と共に残留Si濃度が減少し、成長速度が0nm/secになる付近で、残留Si濃度は最小値を示し、さらにTMIn流量を増やすと、再び残留Si濃度は上昇した。これは、エッチングガスのTBClのみを第二の成長界面104に供給した場合、表面の残留Siは揮発性の塩化物SiClxとして一旦は表面から脱離するものの、Si−Clの結合が、Si−Pの結合に比べて弱く、Si−Clの結合がすぐに切れてまた表面に再付着してしまうが、TMInをTBClと同時に供給すると、SiがSiClxとして表面から脱離すると同時に、それまでSiが占有していた安定なIII族サイトがInで埋まり、一旦表面から脱離したSiが再びInP表面に付着出来ずに表面から脱離していくためと考えられる。従ってSiの脱離効率はTBClによるInPのエッチング速度とTMInによるInPの成長速度が丁度釣り合うあたりで最大となる。TMInによるInPの成長速度がTBClによるInPのエッチング速度を上回ると、今度はSiが脱離する前に、InP層が成長してしまい、表面の清浄処理が行われなくなるため第二の成長界面104での残留Si濃度が上昇するものと考えられる。
【0076】
図8および図9の結果から、0.1nm/sec以内の層厚変化速度とした場合、特に層厚変化が実質的にない場合に、残留Si密度が顕著に低減されることが判明した。
【0077】
第五の実施例
図11に示すように、本実施例に係る光半導体素子は、ダブルチャンネル型の埋め込み構造(double Channel planar buried Hetero structure: DC−PBH)を有しており、3回の結晶成長プロセスを経て完成した。即ち、まずn型InP基板500上にInGaAsP多重量子井戸(multiple quantum well: MQW)活性層502を含むダブルへテロ構造からなる導波路層を成長し、SiOマスクを用いたフォトリソグラフィープロセスを経て所望のパターニングを施した幅2umの導波路層に、ドライエッチングまたはウエットエッチング等により、幅5umの溝を隔てて両側に再結合層を有する導波路を形成した。次に導波路上にだけSiO膜を残して、2回目の結晶成長プロセスを実施し、p−InPブロック層510、n−InPブロック層512で導波路を埋め込んだ。このときの再成長界面を第1の再成長界面508と呼ぶ。次にMQW活性層を含むメサ上の誘電体膜を除去し、3回目の結晶成長プロセスを実施した。ここで、この再成長界面を第2の再成長界面506と呼ぶ。3回目の結晶成長プロセスでは、p−InPクラッド層514の成長を開始する直前に、有機金属気相成長(metal organic vapor phase epitaxy: MOVPE)炉内において、エッチングガスであるTBClと、成長原料であるTMInとPH3を、エッチング速度と成長速度が丁度同じになる程度供給して、この第2の再成長界面を清浄化した。この表面清浄処理の際のTBClの供給量は19.4μmol/minで、これはInPのエッチング速度にして20.5nm/minに相当し、TMInの供給量は15.08μmol/min、PHの供給量は2.68mmol/minであり、これらはInPの成長速度にして20.5nm/minに相当する。従って、TBClによるInPのエッチング速度と、TMIn及びPHによるInPの成長速度は等しく、この表面清浄処理中に2回目の結晶成長プロセスまでに成長したInP層に層厚変化はない。また清浄化処理の時間は0秒から10分の間で変化させた。該清浄化処理の後、p−InPクラッド層514、p型InGaAsコンタクト層518を成長した。その後通常の電極形成プロセスを経て、本発明の光半導体素子を完成した。
【0078】
素子長を300umにへき開し、端面コーティングはせずに、発振特性を評価した。評価結果を表2に示す。ここで残留Si面密度は、SIMSで分析した第2の再成長界面における残留Si面密度であり、本測定におけるSiの検出下限は、6x10atoms/cm相当であった。残留Si面密度は、処理時間と共に減少し、600秒では、検出下限以下にまで低下した。残留Si面密度の低下に伴い、閾値電流、スロープ効率、光出力とも顕著に改善された。図13は閾値電流の残留Si面密度依存性を示す図である。また、図14は、スロープ効率の第2の再成長界面の残留Si濃度依存性を示す図である。また、図15は、150mA通電時の光出力の第2の再成長界面の残留Si濃度依存性を示す図である。残留Si面密度を、約1x1011cm−2以下にすることで、清浄化処理をしない場合に比べて、閾値電流は約20%低減し、5.5mAとなった。また、スロープ効率は約20%改善し、0.34W/A、150mA通電時の光出力は1.4倍の45mWとなった。また比較のために、本発明の清浄化処理を用いずに、特許文献4に開示されている技術を用いて、約2X1018cm−3の高濃度のZnを第2の成長界面近傍の0.2umにドーピングしたサンプルも作製した。この場合、閾値、スロープ効率、150mA通電時の光出力は6.3mA、スロープ効率は0.31W/A、150mA通電時の光出力は38mWとなり、改善効果はあるものの十分でなく、本発明の清浄化処理により残留Si濃度を約5x1011cm−2以下に下げたほうが、改善効果は大きいことが確認された。これは、特許文献4の技術では、残留Siによるn型層形成の影響は高濃度のZnのドーピングにより補償できるものの、過剰のZnをドーピングすることによって、クラッド層での価電子帯間吸収損失(Inter Valence Band Absorption: IVBA)が増大し、また活性層にZnが拡散して、内部微分量子効率(ηi)が低下したせいと考えられる。これに対し、本発明の光半導体素子においては、高濃度のZnを第2の再成長界面の近傍にドーピングすることなく、残留Si濃度が面密度を減少させて、n転層の形成を回避しているため、IVBAの増加や、ηiの低下を招くことなく、活性層直上から電流ブロック層への漏れ電流を抑制できるため、閾値、スロープ効率、光出力ともに大幅に改善できたものと考えられる。
【0079】
【表2】
表2
Figure 2005031829
【0080】
第六の実施例
図12は本実施例に係る光半導体集積素子の構造図である。本光半導体集積素子は、変調集積型DFB−LDであり、4回の結晶成長プロセスを経て完成した。即ち、まず半導体レーザとなる部分にのみ回折格子が形成されたn型InP基板600上にInGaAsP MQW活性層601を含むダブルへテロ(Double Hetero:DH)構造を成長した。次いで、誘電体マスク等を用いたフォトリソグラフィープロセスにより半導体レーザ部分にマスクを形成し、ドライエッチングまたはウエットエッチングにより、変調器部分をエッチングした。次に、2回目の結晶成長で、変調器用のInGaAsP MQW層603を含むDH構造を成長した。このときの再成長界面を第1の再成長界面620と呼ぶ。
【0081】
次に、再び誘電体マスク等を用いたフォトリソグラフィープロセスにより半導体レーザの導波路部と変調器の導波路部分にマスクを形成し、ドライエッチングまたはウエットエッチング等により、導波路以外の部分をエッチングした。
【0082】
次に半導体レーザ用および変調器用の導波路上にだけ誘電体膜を残して、3回目の結晶成長プロセスを実施し、厚さ0.1umでp型キャリア濃度5x1017cm−2のp−InPブロック層602、厚さ1.5umで抵抗率1x10Ωcmの半絶縁(Semi−Insulating:SI)−InPブロック層604、厚さ0.1umでn型キャリア濃度3x1018cm−3のn−InPブロック層606を成長した。このときの再成長界面を第2の再成長界面644と呼ぶ。
【0083】
次に半導体レーザ用および変調器用の導波路上の誘電体膜を除去し、4回目の結晶成長プロセスを実施した。この再成長界面を第3の再成長界面と呼ぶ。4回目の結晶成長プロセスでは、p−InPクラッド層608の成長を開始する直前に、MOVPE炉内において、エッチングガスであるTBClと、成長原料であるTMInとPHを、エッチング速度と成長速度が丁度同じになる程度供給して、この第2の再成長界面を清浄化した。この表面清浄処理の際のTBClの供給量は19.4μmol/minで、これはInPのエッチング速度にして20.5nm/minに相当し、TMInの供給量は15.08μmol/min、PHの供給量は2.68mmol/minであり、これらはInPの成長速度にして20.5nm/minに相当する。従って、TBClによるInPのエッチング速度と、TMIn及びPHによるInPの成長速度は等しく、この表面清浄処理中に2回目の結晶成長プロセスまでに成長したInP層に層厚変化はない。表面処理時間は、10分間とした。
【0084】
該清浄化処理の後、p−InPクラッド層608、p型コンタクト層622を成長する。その後、通常の電極形成プロセスを経て、本発明の光半導体素子が完成する。
【0085】
比較のために該第3の再成長界面に該表面処理を行わずに作製した変調器集積型DFB−LDと比べると、本発明の表面処理を施した上記変調器集積型DFB−LDにおいては、第3の再成長界面の残留Si濃度がSIMSの検出下限の6x10atoms/cm以下と低いため、半導体レーザおよび変調器直上から電流ブロック層への漏れ電流が極めて少ないことに加えて、半導体レーザと変調器間の漏れ電流も極めて少ない。また、残留Siの影響を打ち消すために、Znなどの過剰のp型ドーパントをこの再成長界面近傍にドーピングする必要もないため、半導体レーザ部分においては、p型ドーパントの拡散に伴う内部損失の増大や内部微分量子効率の低下がなく、また変調器部分においては、p型ドーパントの拡散に伴う電界強度の不均分布化もない。この結果、閾値にして約10%、スロープ効率が5%、出力10%に加え、周波数応答特性が3dBダウンの周波数で、約20%の改善効果が得られた。
【0086】
以上、実施例に基づいて本発明を説明したが、本発明は上記各実施例に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、種々の態様をとることができる。
【0087】
たとえば上記実施例では、エッチング作用を有する原料として、TBCl、ビスジメチルアミノホスフィンクロライド([(CH]NPCl)を用いたが、他のCl系原料、例えば塩化水素(HCl)や、塩化メチル(CHCl)、四塩化炭素(CCl)、ビスジメチルアミノアルシンクロライド([(CH]NAsCl)、三塩化燐(PCl)、三塩化砒素AsCl、塩素(Cl)や、同様のBr系原料、I系原料、F系原料を用いてもよい。他の原料を用いる場合、原料の分解効率やエッチング効率は原料によって異なるが、基本的には上記実施例に示したようにエッチング原料による半導体層のエッチング速度と結晶成長原料による半導体層の成長速度をバランスさせることで最大のエッチング効率が得られ、同様の効果が得られる。
【0088】
また上記実施例では、結晶成長法としてMOVPE法を使った場合を例として説明したが、他の成長手法、たとえば分子線エピタキシー(MBE)法やガスソースMBE(GSMBE)法、有機金属MBE(MOMBE)法、化学ビーム成長(CBE)法などを使っても良い。また上記実施例では、InP系材料について説明したが、本発明はこれに制限されるものではなく、GaAs、InAs、GaP、GaNなどの他のIII−V族化合物半導体やII‐VI族化合物半導体などの半導体材料に適用可能である。
【0089】
また基板温度については、上記実施例では、625℃としたが、通常の結晶成長が可能な温度範囲例えばInPであれば400℃〜700℃程度の間、GaAsであれば400℃から800℃の間であればよく、エッチング原料による半導体層のエッチング速度や結晶成長原料による半導体層の成長速度の基板温度による変化を補正して、両者がバランスさせることで最大のエッチング効率が得られ、同様の効果がある。
【0090】
また、上記実施例では半導体層に対してエッチング作用を有するエッチング性物質を含む第一のガスと結晶成長原料を含む第二のガスとを同時に半導体層表面に供給したが、これらを交互に供給する方式とすることもできる。この場合、半導体層の成長が過度に進行してしまうと充分な清浄度を実現することが困難となるため、1〜3原子層程度の厚みの成長が進行した後、エッチングが行われるというように、成長ガスとエッチングガスの切り替えを迅速に行うことが望ましい。
【0091】
また上記実施例では、DFB−LDと変調器を組み合わせた変調器集積型DFB−LDを例として本発明の光半導体集積素子について説明したが、DFB−LDの代わりに、ファブリペローレーザやFP−LD、DBR−LD、半導体増幅器などを集積した素子にも有効であるし、集積する素子の数も2つに限らず、さらに多数の素子を集積した場合にも有効である。
【0092】
また上記実施例では、DC−PBH構造のファブリペローレーザを本発明の光半導体素子の一例として説明したが、他の構造の半導体レーザや、SOAや変調器などの他の単体アクティブデバイスに用いても有効である。特に、活性層面積の大きなアクティブMMI−LDに用いた場合は、高電流注入時の出力飽和が抑制され、最大光出力が大幅に改善されるなど、顕著な効果がある。特に本発明は、 アクティブMMI構造を有する素子に好適に適用される。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上説明したように、本発明によれば、もとの半導体層中の不純物拡散や結晶欠陥の発生を誘発することなく、また形状変化を最小限にして、結晶成長前の半導体基板表面や再成長前の半導体表面の不純物汚染や物理的ダメージを再現性良く安定的に除去することが可能であり、成長界面を有する半導体素子の性能改善に大きな効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1は、実施例で作製した半導体層の構造を示す図である。
【図2】図2は、実施例における残留不純物濃度のSIMS測定結果を示す図である。
【図3】図3は、実施例における残留不純物濃度のSIMS測定結果を示す図である。
【図4】図4は、実施例における残留不純物濃度のSIMS測定結果を示す図である。
【図5】図5は、実施例における残留不純物濃度のSIMS測定結果を示す図である。
【図6】図6は、実施例における残留不純物濃度のSIMS測定結果を示す図である。
【図7】図7は、実施例における残留不純物濃度のSIMS測定結果を示す図である。
【図8】図8は、実施例における残留Si濃度のTMIn供給量依存性を示す図である。
【図9】図9は、実施例における残留Si濃度のTMIn供給量依存性を示す図である。
【図10】図10は、第二の実施例における埋め込み型半導体レーザ構造を示す図である。
【図11】図11は、第5の実施例における本発明の光半導体素子の構造を示す図である。
【図12】図12は、第6の実施例における本発明の光半導体素子の構造を示す図である。
【図13】図13は、第5の実施例における閾値電流の第2の再成長界面の残留Si濃度依存性を示す図である。
【図14】図14は、第5の実施例におけるスロープ効率の第2の再成長界面の残留Si濃度依存性を示す図である。
【図15】図15は、第5の実施例における150mA通電時の光出力の第2の再成長界面の残留Si濃度依存性を示す図である。
【図16】図16は、従来の埋め込み型半導体レーザの断面図である。
【符号の説明】
【0095】
101 InP基板
102 第一の成長界面
103 アンドープInP層
104 第二の成長界面
105 アンドープInP層
301 n型InP基板
302 p型InP層
303 n型InP層
304 p型InP層
305 p型InPクラッド層
306 p−InGaAsコンタクト層
307 InGaAsP/InGaAsP量子井戸
308 第一の再成長界面
309 第二の再成長界面
310 メサストライプ
500 n型InP基板
502 活性層
504 再結合層
506 第二の再成長界面
508 第一の再成長界面
510 p−InPブロック層
512 n−InPブロック層
514 p−InPクラッド層
518 p型InGaAsコンタクト層コンタクト層
600 n型InP基板
601 活性層
602 p−InPブロック層
603 MQW層
604 半絶縁InPブロック層
606 n−InPブロック層
608 p−InPクラッド層
612 p型コンタクト層
620 第1の再成長界面
644 第2の再成長界面
646 第3の再成長界面

Claims (48)

  1. 半導体層の表面に付着した汚染物質を除去する清浄処理方法であって、前記半導体層に対してエッチング作用を有するエッチング性物質と、結晶成長原料とを、同時に、または交互に、前記半導体層に接触せしめる清浄処理工程を含むことを特徴とする清浄処理方法。
  2. 半導体層の表面に付着した汚染物質を除去する清浄処理方法であって、前記半導体層に対してエッチング作用を有するエッチング性物質と結晶成長原料とを含む雰囲気に前記半導体層の表面を暴露する清浄処理工程を含むことを特徴とする清浄処理方法。
  3. 半導体層の表面に付着した汚染物質を除去する清浄処理方法であって、前記半導体層に対してエッチング作用を有するエッチング性物質を含む第一のガスと結晶成長原料を含む第二のガスとを同時に前記半導体層の表面に供給する清浄処理工程を含むことを特徴とする清浄処理方法。
  4. 請求の範囲3に記載の清浄処理方法において、前記第一のガスおよび前記第二のガスが、間欠的に供給されることを特徴とすることを特徴とする清浄処理方法。
  5. 請求の範囲1乃至4いずれかに記載の清浄処理方法において、前記清浄処理工程を実施する前後における前記半導体層の層厚の差が、100nm以下であることを特徴とする清浄処理方法。
  6. 請求の範囲1乃至5いずれかに記載の清浄処理方法において、前記清浄処理工程を実施する際に、前記半導体層の層厚が実質的に減少しないようにしたことを特徴とする清浄処理方法。
  7. 請求の範囲5または6に記載の清浄処理方法において、前記エッチング性物質および前記結晶成長原料の量比を調整することにより前記半導体層の層厚変化を制御することを特徴とする清浄処理方法。
  8. 請求の範囲3または4に記載の清浄処理方法において、
    前記半導体層の層厚変化速度の符号を、層厚が増加する場合を正、層厚が減少する場合を負と定義し、
    前記清浄処理工程を実施した際の前記半導体層の層厚変化速度をR、
    前記半導体層表面に対して前記第一のガスのみを供給した場合の前記半導体層の層厚変化速度をr
    前記半導体層表面に対して前記第二のガスのみを供給した場合の前記半導体層の層厚変化速度をr
    としたときに、
    これらの層厚変化速度の絶対値が、
    |R|<|r|<|r
    となるように、前記第一のガスと前記第二のガスの供給量を調整することを特徴とする清浄処理方法。
  9. 請求の範囲8に記載の清浄処理方法において、R<0であることを特徴とする清浄処理方法。
  10. 請求の範囲8または9に記載の清浄処理方法において、|R|が0.1nm/sec以下であることを特徴とする清浄処理方法。
  11. 請求の範囲1乃至10いずれかに記載の清浄処理方法において、前記結晶成長原料が、前記半導体層を構成する元素を含むことを特徴とする清浄処理方法。
  12. 請求の範囲1乃至11いずれかに記載の清浄処理方法において、前記結晶成長原料が、有機金属を含むことを特徴とする清浄処理方法。
  13. 請求の範囲1乃至12いずれかに記載の清浄処理方法において、前記エッチング性物質がハロゲン元素またはその化合物であることを特徴とする清浄処理方法。
  14. 請求の範囲1乃至13いずれかに記載の清浄処理方法において、前記半導体層が化合物半導体からなることを特徴とする清浄処理方法。
  15. 請求の範囲14に記載の清浄処理方法において、前記半導体層がIII−V族化合物半導体からなることを特徴とする清浄処理方法。
  16. 請求の範囲15に記載の清浄処理方法において、前記結晶成長原料が、前記半導体層を構成するIII族元素を含む化合物であることを特徴とする清浄処理方法。
  17. 請求の範囲15または16に記載の清浄処理方法において、前記半導体層を構成するIII族元素が一種類からなることを特徴とする清浄処理方法。
  18. 請求の範囲15乃至17いずれかに記載の清浄処理方法において、前記半導体層を構成するIII族元素がインジウム(In)であることを特徴とする清浄処理方法。
  19. 半導体基板の上部に第一の半導体層を形成する工程と、前記第一の半導体層の表面を清浄処理する工程と、
    前記第一の半導体層上に第二の半導体層を形成する工程とを含み、
    前記第一の半導体層の表面を清浄処理する前記工程は、前記半導体層に対してエッチング作用を有するエッチング性物質と、結晶成長原料とを、前記半導体層の表面に接触せしめる工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
  20. 半導体基板の上部に第一の半導体層を形成する工程と、前記第一の半導体層の表面を清浄処理する工程と、
    前記第一の半導体層上に第二の半導体層を形成する工程とを含み、
    前記第一の半導体層の表面を清浄処理する前記工程は、前記半導体層に対してエッチング作用を有するエッチング性物質と結晶成長原料とを含む雰囲気に前記半導体層の表面を暴露する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
  21. 半導体基板の上部に第一の半導体層を形成する工程と、前記第一の半導体層の表面を清浄処理する工程と、
    前記第一の半導体層上に第二の半導体層を形成する工程とを含み、
    前記第一の半導体層の表面を清浄処理する前記工程は、前記半導体層に対してエッチング作用を有するエッチング性物質を含む第一のガスと結晶成長原料を含む第二のガスとを同時に前記半導体層の表面に供給する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
  22. 請求の範囲21に記載の半導体装置の製造方法において、前記第一のガスおよび前記第二のガスが、間欠的に供給されることを特徴とすることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  23. 請求の範囲19乃至22いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、前記第一の半導体層の表面を清浄処理する前記工程を実施する前後における前記第一の半導体層の層厚の差が、100nm以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  24. 請求の範囲19乃至23いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、前記第一の半導体層の表面を清浄処理する前記工程を実施する際に、前記第一の半導体層の層厚が実質的に減少しないようにしたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
  25. 請求の範囲23または24に記載の半導体装置の製造方法において、前記エッチング性物質および前記結晶成長原料の量比を調整することにより前記第一の半導体層の層厚変化を制御することを特徴とする半導体装置の製造方法。
  26. 請求の範囲21または22に記載の半導体装置の製造方法において、前記第一の半導体層の層厚変化速度の符号を、層厚が増加する場合を正、層厚が減少する場合を負と定義し、
    前記第一の半導体層の表面を清浄処理する前記工程を実施した際の前記第一の半導体層の層厚変化速度をR、
    前記第一の半導体層表面に対して前記第一のガスのみを供給した場合の前記第一の半導体層の層厚変化速度をr
    前記第一の半導体層表面に対して前記第二のガスのみを供給した場合の前記第一の半導体層の層厚変化速度をr
    としたときに、
    これらの層厚変化速度の絶対値が、
    |R|<|r|<|r
    となるように、前記第一のガスと前記第二のガスの供給量を調整することを特徴とする半導体装置の製造方法。
  27. 請求の範囲26に記載の半導体装置の製造方法において、R<0であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  28. 請求の範囲26または27に記載の半導体装置の製造方法において、|R|が0.1nm/sec以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  29. 請求の範囲19乃至28いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、前記結晶成長原料が、前記第一の半導体層を構成する元素を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
  30. 請求の範囲19乃至29いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、前記結晶成長原料が、有機金属を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
  31. 請求の範囲19乃至30いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、前記エッチング性物質がハロゲン元素またはその化合物であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  32. 請求の範囲19乃至31いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、前記第一の半導体層が化合物半導体からなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  33. 請求の範囲32に記載の半導体装置の製造方法において、前記第一の半導体層がIII−V族化合物半導体からなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  34. 請求の範囲33に記載の半導体装置の製造方法において、前記結晶成長原料が、前記半導体層を構成するIII族元素を含む化合物であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  35. 請求の範囲34に記載の半導体装置の製造方法において、前記半導体層を構成するIII族元素が一種類からなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  36. 請求の範囲35に記載の半導体装置の製造方法において、前記半導体層を構成するIII族元素がインジウム(In)であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  37. 請求の範囲19乃至36いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、前記第一の半導体層および前記第二の半導体層を気相成長により形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
  38. 請求の範囲19乃至37いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、前記第一の半導体層を形成する工程の後、前記第一の半導体層上にマスクを形成し、つづいて前記マスクを除去した後、前記第一の半導体層の表面を清浄処理する前記工程を実施することを特徴とする半導体装置の製造方法。
  39. p型半導体層中の再成長界面の残留Si濃度が面密度で5×1011atoms/cm以下であることを特徴とする光半導体素子。
  40. 前記再成長界面は、p型電流ブロック層と、その下部に接する層との界面であることを特徴とする請求の範囲39記載の光半導体素子。
  41. 前記再成長界面は、p型クラッド層と、その下部に接する層との界面であることを特徴とする請求の範囲39記載の光半導体素子。
  42. 前記再成長界面は、p型クラッド層中の再成長界面であることを特徴とする請求の範囲39記載の光半導体素子。
  43. アクティブMMI構造を有することを特徴とする請求の範囲39乃至42いずれかに記載の光半導体素子。
  44. p型半導体層中の再成長界面の残留Si濃度が面密度で5×1011atoms/cm以下であることを特徴とする光半導体集積素子。
  45. 前記再成長界面は、p型電流ブロック層と、その下部に接する層との界面であることを特徴とする請求の範囲44記載の光半導体集積素子。
  46. 前記再成長界面は、p型クラッド層と、その下部に接する層との界面であることを特徴とする請求の範囲44記載の光半導体集積素子。
  47. 前記再成長界面は、p型クラッド層中の再成長界面であることを特徴とする請求の範囲44記載の光半導体集積素子。
  48. アクティブMMI構造を有することを特徴とする請求の範囲44乃至47いずれかに記載の光半導体集積素子。
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