JP2002026451A - 半導体光デバイス装置 - Google Patents

半導体光デバイス装置

Info

Publication number
JP2002026451A
JP2002026451A JP2000208730A JP2000208730A JP2002026451A JP 2002026451 A JP2002026451 A JP 2002026451A JP 2000208730 A JP2000208730 A JP 2000208730A JP 2000208730 A JP2000208730 A JP 2000208730A JP 2002026451 A JP2002026451 A JP 2002026451A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
zinc
opening
optical device
active layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2000208730A
Other languages
English (en)
Inventor
Kazumasa Kiyomi
和正 清見
Kenji Shimoyama
謙司 下山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Chemical Corp filed Critical Mitsubishi Chemical Corp
Priority to JP2000208730A priority Critical patent/JP2002026451A/ja
Publication of JP2002026451A publication Critical patent/JP2002026451A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Semiconductor Lasers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 セルフアライン型インナーストライプレーザ
構造の半導体光デバイス装置において、低しきい値電流
及び高効率を維持しつつ、高出力においてもCODを受
けることのない半導体光デバイス装置及びその製造方法
を提供する。 【解決手段】 基板21、第1導電型クラッド層22、
活性層23、第2導電型第1クラッド層24、開口部4
2を有する電流ブロック層26、該開口部42内部及び
少なくとも開口部42両脇の電流ブロック層26上の一
部に形成された第2導電型第2クラッド層28を有し、
亜鉛含有不純物拡散層により亜鉛拡散を行った後に熱処
理することで光導波路の両端部分における活性層23の
バンドギャップが、光導波路中央の電流注入領域におけ
る活性層23のバンドキャップよりも大きくなっている
ことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体レーザや増
幅器などとして有用な半導体光デバイス装置に関し、特
に高出力動作において信頼性が高い半導体光デバイス装
置に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体光デバイス装置の代表的なものと
して半導体レーザ素子がある。半導体レーザ素子は、そ
の半堅牢、高効率、広い波長選択範囲、耐久性等の特性
から、広く利用されているが、光出力が大きくなると、
光出力端面で光損傷(以下、「COD」(Catastrophic
Optical Damage)という)を生じてレーザ発振を失う。
【0003】高出力時の上記CODを防ぐため、これま
で主として2つの半導体レーザ素子が開発されている。
1つはブロードエリアレーザであり、発光領域を大きく
することで、光密度を低くした状態のままで全光出力を
大きくする半導体レーザ素子である。しかし、このブロ
ードエリアレーザは発光領域が大きいため、単一モード
の安定した光出力で動作させるのは困難である。
【0004】もう1つは、光を実質的に吸収しない非吸
収領域を端面に設けたレーザ素子であり、端面の反射鏡
の部分が非吸収領域(NAM領域)となっているため、
通常NAMレーザ(Non-Absorbing Mirror)と呼ばれて
いる。NAMレーザは端面における光吸収を防止でき、
CODを完全に抑制することが可能である。また、誘導
放出が行われる活性層付近の構造はブロードエリアレー
ザの場合のように制限されることなく、端面の非吸収領
域とは独立に自由に設計できるために、単一モードの高
い光出力で動作させることができる利点を有する。
【0005】このような利点から、これまでNAMレー
ザとして、(1)端部領域での量子井戸構造無秩序化プ
ロセス(H.Nakashima et al., Japanese Journal of Ap
plied Physics, vol.24, No.8, L647 (1985)、(2)端
部領域での活性層埋込プロセス(H.Naito et al., IEEE
Journal Quantum Electronics, vol.QE-25, 1495 (198
9)などの作製例が知られている。同様に、ウィンドウ構
造レーザという名称で、米国特許第4,639,275
号明細書;米国特許第4,845,725号明細書;米
国特許第4,875,216号明細書において、端部を
非吸収にしたレーザが開発されているが、これらも活性
層への不純物拡散により量子井戸構造を混晶化する方法
を用いている。
【0006】上記(1)の作製例では、不純物拡散又は
構成元素の空格子拡散を用いるため、作製プロセスが容
易になるという利点がある。しかし、不純物拡散の場
合、活性層内部の高濃度の不純物により内部損失が増大
し、また構成元素の空格子拡散の場合には、比較的高温
プロセスが要求されるため活性層へのプロセスダメージ
が懸念される。また 上記(2)の作製例では、優れた
レーザ特性を実現できるが、半導体レーザ素子の構造及
び作製プロセスが複雑になるという欠点がある。
【0007】このような中で、上記(1)の作製例とし
て、端部領域での量子井戸構造無秩序化プロセスを用い
て作製したリッジ構造を有する窓構造レーザ素子が開発
され、CODレベルの高い高出力レーザが実現されてい
る。例えば、特開平10−290043号公報にはリッ
ジ構造を有する窓構造レーザ素子が開示されている。こ
のよう従来のリッジ構造を有する窓構造レーザ素子は、
基板上に第1導電型クラッド層、活性層、第2導電型ク
ラッド層を形成して、レーザ光出射面を含む端部領域に
不純物を拡散し、活性層を混晶化させることにより形成
されている。このため、端部でのリーク電流を抑制する
ため、かなり複雑な構造となっている。
【0008】上記リッジ型の半導体レーザ素子に対し、
電流狭窄領域が順メサ状の構造を有するセルフアライン
型インナーストライプレーザ素子も開発されている。こ
のセルフアライン型インナーストライプレーザ素子は、
基本的には2回の結晶成長と1回のウェットエッチング
で作製することが可能であることから、容易に素子を作
製できるという利点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これま
で簡素で再現性が高い方法により十分に高性能なセルフ
アライン型インナーストライプレーザを作製することは
できなかった。セルフアライン型インナーストライプレ
ーザの製造工程においては、順メサ状の電流狭窄領域を
形成する場合に、通常エッチングで電流ブロック層を除
去した後、クラッド層を形成している。しかし、これま
でのエッチングでは、エッチング処理後の層の表面を完
全に均一とすることは困難であった。したがって、より
均一に近い表面処理ができるエッチングであれば、エッ
チング処理後のエピタキシャル成長が良好となるため有
意義である。
【0010】かくして本発明は上記従来技術の問題点に
鑑みてなされたものであり、低しきい値電流及び高効率
を維持しつつ、高出力においてもCODを受けることが
ない高性能な半導体光デバイス装置を提供すること目的
とする。また本発明は、簡素で再現性が高いプロセスに
より製造することが可能な半導体光デバイス装置を提供
することをも目的とする。さらに、本発明は、電流狭窄
領域周辺のクラッド層のエピタキシャル成長が良好な半
導体光デバイス装置の製造方法を提供することを目的と
する。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決すべく鋭意検討を進めた結果、光導波路の端部での
活性層のバンドギャップを大きくした窓構造レーザの作
製において、セルフアライン型インナーストライプレー
ザ構造をベースとして、活性層の上部に亜鉛含有不純物
拡散層を形成し熱処理した後、亜鉛含有不純物拡散層を
所定のエッチング液で除去することによって、亜鉛拡散
フロント位置の制御性の向上、エッチング除去後の表面
状態改善や端部でのリーク電流低減を図ることができ、
所期の効果を示す優れた半導体光デバイス装置が得られ
ることを見出した。
【0012】すなわち本発明の半導体光デバイス装置
は、基板、該基板上に形成された第1導電型クラッド
層、該第1導電型クラッド層上に形成された量子井戸構
造を有する活性層、該活性層上に形成された第2導電型
第1クラッド層、該第2導電型第1クラッド層上に形成
された開口部を有する電流ブロック層、該開口部内部及
び少なくとも開口部両脇の電流ブロック層上の一部に形
成された第2導電型第2クラッド層を有し、亜鉛拡散及
び熱処理により光導波路の両端部分における前記活性層
のバンドギャップが、光導波路中央の電流注入領域にお
ける前記活性層のバンドキャップよりも大きくなってい
ることを特徴とする。
【0013】また本発明の半導体光デバイス装置の製造
方法は、基板、第1導電型クラッド層、活性層、第2導
電型第1クラッド層及び開口部を有する電流ブロック層
をこの順に形成する工程aと、前記開口部の少なくとも
両端部に亜鉛含有不純物拡散層を形成した後、熱処理に
より亜鉛拡散領域を形成し、次いで該亜鉛含有不純物拡
散層を除去する工程bと、前記開口部内部及び少なくと
も前記開口部両脇の電流ブロック層上の一部に第2導電
型第2クラッド層を形成する工程cを有することを特徴
とする。
【0014】本発明における半導体光デバイス装置の好
ましい態様としては、前記亜鉛拡散が、活性層の上方に
形成された亜鉛含有不純物拡散層から亜鉛を拡散させる
ことにより行われ、該亜鉛含有不純物拡散層がクエン酸
系エッチング液で除去される態様;光導波路の両端部分
における活性層が、光導波路中央の電流注入領域におけ
る活性層内において発生した光に対して透明となるバン
ドギャップを有する態様;電流ブロック層の屈折率が、
第2導電型第2クラッド層の屈折率より小さい態様;電
流ブロック層が、少なくとも第1導電型又は高抵抗の半
導体層で構成されている態様;開口部から活性層に電流
が注入される態様;開口部が両端部まで伸長しているス
トライプ状の開口部である態様;開口部が一方の端部ま
で伸長しているが他方の端部までは伸長していない開口
部である態様;光ファイバー増幅器励起用光源として用
いられる態様;光ファイバー増幅器として用いられる態
様が挙げられる。
【0015】また、本発明における半導体光デバイス装
置の製造方法の好ましい態様としては、前記工程bにお
いて、亜鉛含有不純物拡散層を形成する前に亜鉛含有不
純物拡散層で覆われていない表面に表面保護膜を形成
し、かつ、前記亜鉛含有不純物拡散層を除去した後に該
表面保護膜を除去する態様;該表面保護膜がSiNxか
らなる態様;該亜鉛含有不純物拡散層をクエン酸系のエ
ッチング液でエッチングすることにより除去する態様;
該クエン酸系エッチング液が50%クエン酸水溶液と3
0%過酸化水素水との体積比3〜7:1の混合物である
態様が挙げられる。
【0016】
【発明の実施の態様】以下に本発明の半導体光デバイス
装置及びその製造方法について詳細に説明する。本発明
の半導体光デバイス装置は、基板、該基板上に形成され
た第1導電型クラッド層、該第1導電型クラッド層上に
形成された量子井戸構造を有する活性層、該活性層上に
形成された第2導電型第1クラッド層、該第2導電型第
1クラッド層上に形成された開口部を有する電流ブロッ
ク層、該開口部内部及び少なくとも開口部両脇の電流ブ
ロック層上の一部に形成された第2導電型第2クラッド
層を有し、亜鉛拡散及び熱処理により、光導波路の両端
部分における前記活性層のバンドギャップが光導波路中
央の電流注入領域における前記活性層のバンドキャップ
よりも大きくなっていることを特徴とする。本発明の半
導体光デバイス装置は、これらの層の他に半導体光デバ
イス装置に通常形成される層を適宜有していてもよい。
【0017】本明細書において「A層の上に形成された
B層」という表現は、A層の上面にB層の底面が接する
ようにB層が形成されている場合と、A層の上面に1以
上の層が形成されさらにその層の上にB層が形成されて
いる場合の両方を含むものである。また、A層の上面と
B層の底面が部分的に接していて、その他の部分ではA
層とB層の間に1以上の層が存在している場合も、上記
表現に含まれる。具体的な態様については、以下の各層
の説明と実施例の具体例から明らかである。
【0018】図1は本発明における半導体光デバイス装
置の一例の斜視図であり、図2は前記一例の断面であっ
て図1のI−I線断面であり、図3は前記一例の断面であ
って図1のII−II線断面である。半導体光デバイス装置
の一例の構造は概略的に、化合物半導体からなる基板2
1上に、第1導電型クラッド層22、活性層23、およ
び第2導電型第1クラッド層24を積層し、その上にエ
ッチング阻止層25を介してストライプ状に開口された
電流ブロック層26及びキャップ層27を有している。
さらに電流ブロック層26の開口した部分とその両脇の
電流ブロック層上に積層するように第2導電型第2クラ
ッド層28が形成され、その第2導電型第2クラッド層
28上にコンタクト層29が形成される。
【0019】本発明の半導体光デバイス装置において
は、光導波路の両端部分において前記活性層23のバン
ドギャップが光導波路中央の電流注入領域における活性
層23のバンドギャップよりも大きくされた窓領域40
が形成されている。この窓領域40は亜鉛拡散によって
無秩序化された領域であり、活性層23の光導波路の端
面は混晶領域41で構成される。図1から図3におい
て、斜線で示される領域は亜鉛拡散がなされた領域であ
る。通常、活性層23は、二重量子井戸(DQW)構造
を有するため、図5(b)のようなバンドギャップを示
すが、その窓領域40は亜鉛拡散によって無秩序化され
ているために、図5(a)に示すように、通常の活性層
23のバンドギャップより大きくなっている。このた
め、本実施例の半導体光デバイス装置では光出力端面に
おいて光波の吸収を抑制して、CODを未然に防止でき
る。
【0020】また、本発明の半導体光デバイス装置は、
第2導電型第2クラッド層28が、開口部内部42及び
少なくとも開口部42両脇の電流ブロック層26上の一
部に形成されている(セルフアライン型インナーストラ
イプレーザ構造)。このため、本発明の構造には、特開
平10−290043号公報に記載されたリッジ型構造
に比べて、成長回数が少なくて済むこと、選択成長とい
った特殊な技術が不要(特にAlを多く含んだ化合物の
選択成長は困難)であることなどの利点がある。
【0021】図1において、基板21は、その上にダブ
ルへテロ構造の結晶を成長することが可能なものであれ
ば、その導電性や材料については特に限定されない。好
ましいものは、導電性がある基板である。具体的には、
基板上への結晶薄膜成長に適したGaAs、InP、G
aP、ZnSe、ZnO、Si、Al23等の結晶基
板、特に閃亜鉛鉱型構造を有する結晶基板を用いるのが
好ましい。その場合、基板結晶成長面は低次な面又はそ
れと結晶学的に等価な面が好ましく、(100)面が最
も好ましい。なお、本明細書において(100)面とい
う場合、必ずしも厳密に(100)ジャストの面である
必要はなく、最大30°程度のオフアングルを有する場
合まで包含する。オフアングルの大きさの上限は30°
以下が好ましく、16°以下がより好ましい。
【0022】また、基板21は六方晶型の基板でもよ
く、例えばAl23、6H−SiC等からなる基板を用
いることもできる。
【0023】基板21上には、通常基板の欠陥をエピタ
キシャル成長層に持ち込まないために厚さ0.2〜2μ
m程度のバッファ層を形成しておくことが好ましい。
【0024】基板21の上には、活性層23を含む化合
物半導体層を形成する。化合物半導体層は、活性層の上
下に活性層より屈折率の小さい層を含んでおり、そのう
ち基板側の層は第1導電型クラッド層、他方のエピタキ
シャル側の層は第2導電型クラッド層として機能する。
これらの屈折率の大小関係は、各層の材料組成を当業者
に公知の方法にしたがって適宜選択することにより調節
することができる。例えば、AlxGa1-xAs、(Al
xGa1-x0.5In0.5P、AlxGa1-xNなどのAl組
成を変化させることによって屈折率を調節することがで
きる。
【0025】第1導電型クラッド層22は、活性層23
よりも屈折率の小さい材料で形成される。また、第1導
電型クラッド層22の屈折率は、第2導電型クラッド層
の屈折率よりも大きいことが好ましい。例えば、第1導
電型のInP、GaInP、AlGaInP、AlIn
P、AlGaAs、AlGaAsP、AlGaInA
s、GaInAsP、GaN、AlGaN、AlGaI
nN、BeMgZnSe、MgZnSSe、CdZnS
eTe、ZnO、MgZnO、MgO等の一般的なIII
−V族、II−VI族半導体を用いることができる。第1
導電型クラッド層22のキャリア濃度は、下限は1×1
17cm-3以上が好ましく、3×1017cm -3以上がよ
り好ましく、5×1017cm-3以上が最も好ましい。上
限は2×10 19cm-3以下が好ましく、2×1019cm
-3以下がより好ましく、5×1018cm-3以下が最も好
ましい。
【0026】第1導電型クラッド層22は、単層からな
るものであっても、2層以上の層からなるものであって
もよい。単層からなるときは、厚みの下限は0.4μm
以上であることが好ましく、0.6μm以上であること
がより好ましく、0.7μm以上であることが特に好ま
しい。厚みの上限は5.0μm以下であることが好まし
く、3.0μm以下であることがより好ましく、2.0
μm以下であることが特に好ましい。
【0027】第1導電型クラッド層22は複数層からな
るものであってもよく、具体的には活性層側にはGaI
nP、AlGaInP又はAlInPからなるクラッド
層と、その層よりも基板21側に第1導電型のAlGa
As又はAlGaAsPからなるクラッド層が形成され
ている態様を例示することができる。このとき、活性層
23側の層の厚さは薄くすることが好ましく、厚さの下
限としては0.01μm以上が好ましく、0.05μm
以上がより好ましい。上限としては、0.5μm以下が
好ましく、0.3μm以下がより好ましい。また、基板
21側の層のキャリア濃度は、下限は2×1017cm-3
以上が好ましく、5×1017cm-3以上がより好まし
い。上限は2×1020cm-3以下が好ましく、5×10
19cm-3以下がより好ましい。
【0028】本実施例の半導体光デバイス装置を構成す
る活性層23の構造は、特に制限されず、図1の一例に
おいては、二重量子井戸(DQW)構造を有している。
この二重量子井戸(DQW)構造は具体的には光閉じ込
め層(ノンドープ)51、量子井戸層(ノンドープ)5
2、バリア層(ノンドープ)53、量子井戸層(ノンド
ープ)54及び閉じ込め層(ノンドープ)55を順次積
層した構造を有する。この二重量子井戸(DQW)構造
以外にも、例えば、量子井戸層及び前記量子井戸層を上
下から挟む光閉じ込め層からなる単一量子井戸構造(S
QW)や、3層以上の量子井戸層及びそれらに挟まれた
バリア層並びに最上の量子井戸層の上及び最下の量子井
戸層の下に積層された光閉じ込め層を有する多量子井戸
構造であってもよい。活性層23を量子井戸構造とする
ことにより、単層のバルク活性層と比較して、短波長化
かつ低しきい値化を達成することができる。
【0029】活性層23の材料としては、GaAs、G
aInAs、GaInP、GaInAsP、GaN、G
aInN、GaNAs、GaNP、ZnSe、ZnSS
e、CdZnSeTe、ZnO、CdZnO等の一般的
なIII−V族、II−VI族半導体を用いることができる。
特にGaとInを構成元素として含む材料である場合
は、自然超格子が形成されやすいために、オフ基板を用
いることによる自然超格子抑制の効果が大きくなる。な
お、光導波路の両端部分における活性層は、光導波路中
央の電流注入領域における活性層内において発生した光
に対して透明となるバンドギャップを有することが好ま
しい。
【0030】活性層23上には、第2導電型クラッド層
が形成される。本発明の第2導電型クラッド層は2層以
上形成する。以下の説明では、活性層23に近い方から
順に第2導電型第1クラッド層24と第2導電型第2ク
ラッド層28の2層を有する好ましい態様を例にとって
説明する。活性層23が量子井戸構造を有している場
合、混晶化の容易さの観点から、以下の態様を採用する
ことが好ましい。 (1)混晶化前後での組成の変化量を大きくできること
から、活性層が単一の井戸層を有している(単一量子井
戸)こと (2)活性層が複数の井戸層を有している(多重量子井
戸)場合、混晶化領域中央付近でのバンドギャップの低
減を抑制するために、混晶組成井戸層に挟まれたバリア
層の厚みが井戸層よりも大きいこと (3)混晶化前後でのバンドギャップ変化を大きくする
ために、井戸層に圧縮歪みがかかっていること (4)井戸層の構成元素に比較的低温で拡散しやすいI
nが含まれていること (5)井戸層を挟むバリア層あるいはガイド層の構成元
素にバンドギャップを小さくするInが含まれていない
こと (6)井戸層を挟むバリア層あるいはガイド層の構成元
素にバンドギャップを大きくするAlが含まれているこ
【0031】第2導電型第1クラッド層24は、活性層
23よりも屈折率の小さい材料で形成される。例えば、
第2導電型のAlGaInP、AlInP、AlGaA
s、AlGaAsP、AlGaInAs、GaInAs
P、AlGaInN、BeMgZnSe、MgZnSS
e、CdZnSeTe、ZnO、MgZnO、MgO等
の一般的なIII−V族、II−VI族半導体を用いることが
できる。第2導電型クラッド層がAlを含むIII−V族
化合物半導体で構成されている場合は、その成長可能な
実質的全面をGaAs、GaAsP、GaInAs、G
aInP、GaInN等のAlを含まないIII−V族化
合物半導体で覆えば表面酸化を防止することができるた
め好ましい。
【0032】第2導電型第1クラッド層24のキャリア
濃度は、下限は1×1017cm-3以上が好ましく、3×
1017cm-3以上がより好ましく、5×1017cm-3
上が最も好ましい。上限は2×1019cm-3以下が好ま
しく、5×1018cm-3以下がより好ましく、3×10
18cm-3以下が最も好ましい。また第2導電型第1クラ
ッド層24の厚さは、下限としては0.01μm以上が
好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.07
μm以上が最も好ましい。上限としては、0.5μm以
下が好ましく、0.4μm以下がより好ましく、0.3
μm以下が最も好ましい。
【0033】第2導電型第1クラッド層24は活性層2
3の上に形成する。第2導電型第1クラッド層24の屈
折率は、第1導電型クラッド層22の屈折率よりも小さ
くすることもできる。このようにすれば、活性層から光
ガイド層側へ有効に光がしみ出すように光分布(近視野
像)を制御することが可能となる。また、活性領域(活
性層の存在する部分)から亜鉛拡散領域への光導波損失
を低減することもできるため、高出力動作におけるレー
ザ特性や信頼性の向上を達成することができる。
【0034】第2導電型第1クラッド層24の上にエッ
チング阻止層25を形成することにより、エッチング処
理時における第2導電型第1クラッド層24のエッチン
グ試薬による浸食を防止することができる。また、エッ
チング阻止層25を有すれば、少なくとも開口部42内
に第2導電型第2クラッド層28を再成長させる際に、
再成長界面で通過抵抗を増大させるような高抵抗層の発
生を容易に防ぐことができるようになる。
【0035】エッチング阻止層25の材料は、エッチン
グ処理時にエッチング試薬に対し抵抗性のあるもの、す
なわち浸食されないものであれば、特に限定はない。ま
たエッチング阻止層25の材料は、浸食防止機能のほ
か、酸化防止機能を併有していても構わない。具体的に
は、AlXGa1-XAs(0≦X≦1)、lnYGal-Y
(0≦Y≦1)などが挙げられる。
【0036】エッチング阻止層25の厚みは、一般に活
性層23の材料よりもバンドギャップが大きくなるよう
に選択され、その上限として50nm以下が好ましく、
30nm以下がより好ましい。下限として、2nm以上
が好ましく、5nm以上がより好ましい。
【0037】エッチング阻止層25の導電型は、エッチ
ングにより溝内部から除去される場合は特に制限はな
く、溝内部に層が形成される場合は第2導電型が好まし
い。また、エッチング阻止層25は基板になるべく格子
整合させることが好ましい。さらに、材料と厚みを適宜
選択することによって活性層23からの光を吸収しない
ようにすることが好ましい。
【0038】本発明の半導体光デバイス装置を構成する
電流ブロック層26は、第2導電型第1クラッド層24
上に形成され、開口部42を有する。基本的には、該開
口部42から活性層に電流が注入される。
【0039】電流ブロック層26の材料は、半導体であ
れば特に限定されない。電流ブロック層26の材料とし
て半導体を用いた場合は、誘電体膜と比較して熱伝導率
が高いために放熱性が良い、劈開性が良い、平坦化しや
すいためにジャンクション・ダウンで組立てやすい、コ
ンタクト層を全面に形成しやすいのでコンタクト抵抗を
下げやすいなどの利点がある。
【0040】電流ブロック層26の屈折率は、電流ブロ
ック層26に挟まれたAlGaAs又はAlGaAsP
からなる第2導電型第2クラッド層28の屈折率よりも
低くする(実屈折率ガイド構造)。このような屈折率の
制御を行うことによって、従来のロスガイド構造に比べ
て動作電流を低減することが可能になる。電流ブロック
層26と第2導電型第2クラッド層28との屈折率差
は、電流ブロック層26が化合物半導体の場合、下限は
0.001以上が好ましく、0.003以上がより好ま
しく、0.007以上が最も好ましい。上限は、1.0
以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、0.1以
下が最も好ましい。電流ブロック層26が誘電体の場
合、下限は0.1以上が好ましく、0.3以上がより好
ましく、0.7以上が最も好ましい。上限は、3.0以
下が好ましく、2.5以下がより好ましく、1.8以下
が最も好ましい。
【0041】電流ブロック層26の屈折率を第2導電型
第2クラッド層28よりも低屈折率にすることや、Ga
As基板との格子整合を考慮すると、電流ブロック層2
6の材料は、AlGaAs又はAlGaAsP、若しく
はAlGaInP又はAlInPの半導体を用いること
が好ましい。AlGaInP又はAlInPは、AlG
aAs又はAlGaAsPと比べて、熱伝導が悪い、自
然超格子の形成による屈折率の変化、選択成長(順メサ
状の開口部側壁と底面)におけるIn組成の不安定性な
どがあるので、選択成長時の保護膜へのポリの堆積防止
(HCl添加選択成長)ができるのであれば、AlGa
As又はAlGaAsPを選択する方が好ましい。但
し、AlGaAs又はAlGaAsPの場合は、Al組
成がAlAsに近くなりすぎると潮解性を示すので、A
l組成の上限は0.95以下が好ましく、0.90以下
がより好ましく、0.80以下が最も好ましい。第2導
電型クラッド層よりも低屈折率にする必要があることか
ら、Al組成の下限は0.2以上が好ましく、0.30
以上がより好ましく、0.40以上が最も好ましい。
【0042】電流ブロック層26は、光分布(特に横方
向の光分布)を制御したり電流阻止の機能を向上させる
ために、屈折率、キャリア濃度又は導電型が異なる2つ
以上の層から形成してもよい。電流ブロック層26の上
にキャップ層27を形成して、表面酸化の抑制或いはプ
ロセス上の表面保護を図ることができる。キャップ層2
7の導電型は特に規定されないが、第2導電型とするこ
とにより、電流阻止機能の向上を図ることができる。
【0043】電流ブロック層26の導電型は、第1導電
型又は高抵抗(アンドープ若しくは深い順位を形成する
不純物(O、Cr、Feなど)をドープ)、あるいはこ
れら2つの組み合わせのいずれであってもよく、導電型
あるいは組成の異なる複数の層から形成されていてもよ
い。例えば、活性層23に近い側から第2導電型あるい
は高抵抗の半導体層、および第1導電型の半導体層の順
に形成されている電流ブロック層を好ましく用いること
ができる。また、あまり薄いと電流阻止に支障を生じる
可能性があるため、厚さは0.1μm以上であるのが好
ましく、0.3μm以上であるのがより好ましい。一
方、厚すぎると通過抵抗の増大を招くため、上限は2μ
m以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。半導体
レーザ素子としてのサイズ等を勘案すれば、0.3〜1
μm程度の範囲から選択するのが好ましい。
【0044】電流ブロック層26の上側層として、開口
部42内部及び少なくとも開口部42両脇の電流ブロッ
ク層26上の一部に至るように第2導電型第2クラッド
層28が形成される。第2導電型第2クラッド層28
は、開口部42の上側表面をすべて覆い且つ開口部42
の両脇の電流ブロック層26上の少なくとも一部に延在
されるように形成される。後述する亜鉛拡散により形成
される窓領域40を光導波路の両端部分の比較的狭い範
囲に自己整合的に形成し、その電流ブロック層26をそ
のまま用いて第2導電型第2クラッド層28が開口部4
2の両脇の電流ブロック層26上の一部まで延在される
ように形成したことから、素子特性を十分に安定化させ
ることができる。
【0045】本発明の半導体光デバイス装置における窓
領域40は、活性層23の上部に亜鉛含有不純物拡散層
を形成した後、熱処理をして亜鉛拡散領域を形成するこ
とにより作製することができる。窓領域40の作製にお
いて拡散させる不純物は、本発明の場合、拡散プロセス
温度の低減及び拡散定数の大きさの観点から亜鉛(Z
n)が使用される。
【0046】本発明の構成を有する半導体光デバイス装
置は、活性層23の上部であって活性層からの距離が比
較的短い箇所から亜鉛拡散を行うことが可能である。例
えば、図1に示す一例では、光導波路の両端部分ではエ
ッチング阻止層25の表面、また光導波路を除く両端部
分ではキャップ層27の表面からそれぞれ亜鉛拡散を行
うことができる。光導波路の両端部分では、亜鉛は比較
的厚さが薄いエッチング阻止層25と第2導電型第1ク
ラッド層24を通って活性層23まで達することができ
る。このため、亜鉛拡散フロントの位置制御性の向上や
端部でのリーク電流低減を容易に図ることができる。ま
た光導波路を除く両端部分では、キャップ層27を通っ
てその下の電流ブロック層26内まで達することができ
る。
【0047】光導波路における活性層から亜鉛含有不純
物拡散層までの距離は、短かすぎると活性層内の不純物
濃度が高くなり過ぎたり、再成長界面による品質の劣化
の影響を受けやすくなる。一方、距離が長すぎると拡散
フロント位置の制御性の低下や端部でのリーク電流の増
加を招いてしまうという問題がある。特に第1導電型ク
ラッド層22よりも下側の比較的バンドギャップの小さ
い層まで亜鉛が拡散してしまうと、リーク電流増加が大
きくなって発光素子としての性能を大きく損ねてしま
う。さらに、活性層にIn(さらにAs)を含む場合
は、拡散距離が長いと高温あるいは長時間の拡散が必要
となるために、熱拡散中に窓構造以外の導波路中央にお
いて活性層の界面が乱れたり、熱的なダメージで活性層
の品質が劣化する可能性がある。
【0048】これらを考慮すると、光導波路における活
性層23から亜鉛含有不純物拡散層までの距離の下限は
0μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好まし
く、0.1μm以上が最も好ましい。拡散距離の上限は
0.5μm以下が好ましく、0.45μm以下がより好
ましく、0.4μm以下が最も好ましい。
【0049】開口部端部における亜鉛拡散フロントは、
混晶化を行う場合には活性層23内の量子井戸層よりも
下側にする必要があり、活性層23よりもバンドギャッ
プの大きい第1導電型クラッド層22内に形成すること
が電流リーク抑制の観点から好ましい。
【0050】亜鉛拡散の後、亜鉛を所定の層内に押し込
み、表面の平坦化及び亜鉛の電気的活性化のために熱処
理(アニーリング)を行う。本発明における熱処理の方
法は、亜鉛を所定の層まで拡散できるものであれば、特
に限定されるものではない。したがって、通常のアニー
リングに用いられる方法を用いることができ、例えば、
水素アニール、急速熱アニール(Rapid Thermal Annea
l)、急熱プロセス(Rapid Thermal Process)などが挙
げられる。
【0051】熱処理において、熱処理の温度と時間によ
り亜鉛拡散距離を調整することができ、亜鉛の拡散距離
が比較的短かければ、比較的低温で亜鉛拡散を行うこと
ができる。本発明の亜鉛拡散の温度は、上限が1000
℃以下であることが好ましく、900℃以下であること
がより好ましく、850℃以下であることがさらにより
好ましい。下限は、600℃以上であることが好まし
く、700℃以上であることがより好ましく、750℃
以上であることがさらに好ましい。また、亜鉛拡散の時
間は、上限が5時間以内であることが好ましく、4時間
以内であることがより好ましく、2時間以内であること
がさらにより好ましい。また亜鉛拡散の時間の下限は、
5分以上であることが好ましく、10分以上であること
がより好ましく、30分以上であることがさらに好まし
い。
【0052】製造上の容易性や制御性を考慮して、亜鉛
拡散プロセスは、薄膜成長装置内で拡散源を有する層の
成長とアニールプロセスとを一貫して行うこともでき
る。さらに、端部でのリーク電流を低減するために、亜
鉛含有不純物拡散層は少なくともレーザチップ作製プロ
セス終了までに除去しておくことが好ましい。
【0053】亜鉛拡散のために形成する亜鉛含有不純物
拡散層の上には、表面からの不純物の蒸発防止、表面酸
化の抑制、プロセスによる汚染防止、ダメージの保護等
を目的として、適宜キャップ層などを形成してもよい。
【0054】亜鉛含有不純物拡散層は、亜鉛拡散領域を
形成した後、除去される。亜鉛含有不純物拡散層を除去
する方法は、該不純物拡散層を完全に除去できれば、特
に限定されるものではない。したがって、通常用いられ
るエッチング方法を用いることができ、例えばドライエ
ッチング、ウェットエッチング、反応性イオンエッチン
グ、プラズマエッチングなどを挙げることができる。
【0055】本発明でウェットエッチング法を用いる場
合、エッチング液としては、エッチング処理後の表面の
平坦化、選択的除去の利点を有するクエン酸系エッチン
グ液を用いることが好ましい。クエン酸系エッチング液
としては、クエン酸/過酸化水素、酒石酸/過酸化水素
などが挙げられ、特にクエン酸/過酸化水素を用いるこ
とが好ましい。クエン酸/過酸化水素を用いる場合、例
えば50%クエン酸水溶液と30%過酸化水素水の体積
比は1〜30:1であることが好ましく、2〜10:1
であることがより好ましく、2〜8:1であることがさ
らにより好ましく、3〜7:1であることが特に好まし
い。
【0056】第2導電型第2クラッド層28のキャリア
濃度は、下限は3×1017cm-3以上が好ましく、5×
1017cm-3以上がより好ましく、7×1017cm-3
上が最も好ましい。また上限は1×1019cm-3以下が
好ましく、5×1018cm-3以下がより好ましく、3×
1018cm-3以下が最も好ましい。
【0057】第2導電型第2クラッド層28の厚さは、
薄くなりすぎると光閉じ込めが不十分となり、厚くなり
すぎると通過抵抗が増加してしまう。このため、第2導
電型第2クラッド層28の厚さの下限は、0.5μm以
上が好ましく、1.0μm以上がより好ましい。上限は
3.0μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ま
しい。
【0058】電流ブロック層26と第2導電型第2クラ
ッド層28を形成した後にさらに電極を形成する場合に
は、電極材料との接触抵抗を低減するために、低抵抗
(高キャリア濃度)のコンタクト層29を形成すること
が好ましい。特に電極を形成しようとする最上層表面の
全体にコンタクト層29を形成したうえで電極を形成す
ることが好ましい。
【0059】このとき、コンタクト層29の材料は、通
常はクラッド層よりバンドギャップが小さい材料の中か
ら選択し、金属電極とのオーミック性を取るため低抵抗
で適当なキャリア密度を有するのが好ましい。例えば、
GaAs、GaInAs、GaInP、GaInAs
P、GaN、GaInN、GaNAs、GaNP、Zn
Se、ZnSSe、CdZnSeTe、ZnO、CdZ
nO等の一般的なIII−V族、II−VI族半導体を用いる
ことができる。キャリア密度の下限は、1×10 18cm
-3以上が好ましく、3×1018cm-3以上がより好まし
く、5×1018cm-3以上が最も好ましい。上限は、2
×1020cm-3以下が好ましく、5×10 19cm-3以下
がより好ましく、3×1019cm-3以下が最も好まし
い。コンタクト層29の厚みは、下限は0.1μm以上
であることが好ましく、0.3μm以上であることがよ
り好ましく、0.5μm以上であることが特に好まし
い。厚みの上限は、10μm以下であることが好まし
く、6μm以下であることがより好ましく、4μm以下
であることが特に好ましい。
【0060】次に、電流ブロック層26に形成される開
口部42について説明する。
【0061】電流ブロック層26の開口部42は、上側
(コンタクト層29側)よりも下側(活性層23側)の
方が小さくなるようにする方が、通過抵抗の低減(動作
電圧および発熱の低減)の観点から好ましい。電流ブロ
ック層26を端部窓構造領域(例えば、不純物拡散領
域)上に形成することにより、端部窓構造領域でのリー
ク電流をなくすことができる。また、電流ブロック層2
6を端部窓構造領域よりもさらに内側に形成することに
より、活性層23の端部への電流注入も抑制することが
できる。これにより、端部領域での劣化(特に端面劣
化)を低減することができる。
【0062】電流ブロック層26の開口部42は、両端
部まで伸長しているストライプ状の開口部であってもよ
いし、一方の端部まで伸長しているが他方の端部までは
伸長していない開口部であってもよい。開口部が両端部
まで伸長しているストライプ状の開口部である場合は、
端部窓構造領域における光の制御がより容易になり、端
面における横方向の光の拡がりを小さくすることができ
る。一方、開口部が端面からある程度内側に入った部分
に形成されている場合は、端面付近で電流を非注入にす
ることができるため、端面での電流の再結合を防ぐとと
もに、クラッド層などからの電流の回り込みを最小限に
とどめることができる。開口部の構造はこのような利点
を考慮しながら、使用目的に応じて適宜決定することが
好ましい。
【0063】オフアングルの方向は、電流ブロック層2
6に形成される開口部42の伸びる方向(長手方向)に
直交する方向から、±30°以内の方向が好ましく、±
7°以内の方向がより好ましく、±2°以内の方向が最
も好ましい。また、開口部42の方向は、基板21の面
方位が(100)の場合、[0−11]またはそれと等
価な方向が、オフアングルの方向は[011]方向また
はそれと等価な方向から±30°以内の方向が好まし
く、±7°以内の方向がより好ましく、±2°以内の方
向が最も好ましい。なお、本明細書において「[01
1]方向」という場合は、一般的なIII−V族、II
−VI族半導体において、(100)面と(011)面
との間に存在する面が、それぞれIII族又はII族元
素が現れる面であるように[011]方向を定義する。
【0064】本発明の実施態様は上記の開口部が[01
−1]方向の場合に限定されない。例えば、開口部が
[011]方向又はそれと結晶学的に等価な方向に伸び
ている場合、例えば、成長条件により、成長速度に異方
性をもたせることができ、(100)面では速く、(1
11)B面ではほとんど成長しないようにすることがで
きる。[011]方向にストライプ状の保護膜を形成す
ることにより、(111)B面を側面とする電流ブロッ
ク層を形成することができる。
【0065】同様の理由により、ウルツァイト型の基板
を用いた場合には、開口部の伸びる方向は、例えば(0
001)面上では[11−20]又は[1−100]が
好ましい。HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)
ではどちらの方向でもよいが、MOVPEでは[11−
20]方向がより好ましい。
【0066】本発明の半導体光デバイス装置を設計する
に際しては、まず、所望の垂直拡がり角を得るために活
性層の厚みとクラッド層の組成を決定する。通常、垂直
拡がり角を狭くすると活性層からクラッド層への光の浸
みだしが促進され、端面での光密度が小さくなり、出射
端面の光学的損傷(COD)レベルが向上することがで
きるので、高出力動作を必要とする時には比較的に狭め
に設定されるが、下限は活性層内の光閉じ込めの低減に
よる発振しきい値電流の増大及びキャリアのオーバーフ
ローによる温度特性の低下を抑制することで制限があ
り、下限は、15°以上が好ましく、17°以上がより
好ましく、19°以上が最も好ましい。上限は、33°
以下が好ましく、31°以下がより好ましく、30°以
下が最も好ましい。
【0067】次に、垂直拡がり角を決定すると、高出力
特性を大きく支配する構造パラメータは活性層と電流ブ
ロック層との間の距離dpと開口部底部における幅(以
下「開口幅」という)Wとなる。なお、活性層と電流ブ
ロック層との間に第2導電型第1クラッド層のみが存在
する場合、dpは第2導電型第1クラッド層の厚みとな
る。また、活性層が量子井戸構造の場合、最も電流ブロ
ック層に近い活性層と電流ブロック層との距離がdpに
なる。
【0068】dpについては、上限は0.5μm以下が
好ましく、0.4μm以下がより好ましく、0.3μm
以下がもっとも好ましい。下限は0.03μm以上が好
ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.07μ
m以上がもっとも好ましい。ただし、使用目的(拡がり
角をどこに設定するかなど)、材料系(屈折率、抵抗率
等)などが異なると、上記の最適範囲も少しシフトす
る。また、この最適範囲は上記の各構造パラメータがお
互いに影響し合うことにも注意を要する。
【0069】開口部底部における開口幅Wは、上限が1
000μm以下であることが好ましく、500μm以下
であることがより好ましい。下限が0.5μm以上であ
ることが好ましく、1μm以上であることがより好まし
く、1.5μm以上であることが特に好ましく、2μm
以上であることが最も好ましい。また、横モードをシン
グルモード(単一ピークの横方向光強度分布)にするた
めには、高次モードのカットオフ及び空間的ホールバー
ニングの防止の観点からWをあまり大きくすることがで
きず、Wの上限は7μm以下が好ましく、5μm以下が
より好ましく、3μm以下が特に好ましい。
【0070】光出力30mW以上の高出力動作を実現す
るには、開口部底部における開口幅Wを広くすることが
端面での光密度低減の観点から有効であるが、動作電流
を低減するためには開口幅を狭くすることが、導波路ロ
ス低減の観点から好ましい。そこで、ゲイン領域となる
中央付近の開口幅W2を比較的狭くし、端部付近の開口
幅W1を比較的広くなるようにすることにより、低動作
電流と高出力動作を同時に実現することができ、高い信
頼性も確保することができる(図6(a))。すなわ
ち、端部(劈開面)幅W1については、上限が1000
μm以下であることが好ましく、500μm以下である
がより好ましい。下限は2μm以上であることが好まし
く、3μm以上であることがより好ましい。中央部幅W
2については、上限が100μm以下であることが好ま
しく、50μm以下であることがより好ましい。下限は
1μm以上であることが好ましく、1.5μm以上であ
ることがより好ましく、2μm以上であることがもっと
も好ましい。端部幅W1と中央部幅W2の差について
は、上限は1000μm以下が好ましく、500μm以
下がより好ましい。下限については、0.2μm以上が
好ましく、0.5μm以上がより好ましい。
【0071】さらに横モードをシングルモードにするた
めには、端部幅W1の上限は、10μm以下が好まし
く、7μm以下がより好ましい。中央部幅W2の上限
は、7μm以下が好ましく、5μm以下がより好まし
い。端部幅W1と中央部幅W2の差については、上限は
5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、2
μm以下が最も好ましい。下限については、0.2μm
以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。
【0072】高い信頼性を維持しつつビームが円形に近
い(アスベクト比2以下)レーザを達成するためには、
上記dpとWを適切な範囲に制御性良く納めることが必
要となる。
【0073】円形に近いビームを実現するには、開口幅
を狭くすることが有効であるが、開口幅を狭くすると注
入電流密度の密度がバルク劣化抑制の観点から好ましく
ない。そこで、ゲイン領域となる中央部幅W2を比較的
広くし、端部付近を比較的狭くなるようにすることによ
り、ビームスポット低減と低動作電流を同時に実現する
ことができ、高い信頼性も確保することができる(図6
(b))。
【0074】すなわち、端部(劈開面)幅W1について
は、上限が10μm以下であることが好ましく、5μm
以下であるがより好ましく、3μm以下であることがも
っとも好ましい。下限が0.5μm以上であることが好
ましく、1μm以上であることがより好ましい。中央部
幅W2については、上限が100μm以下であることが
好ましく、50μm以下であることがより好ましい。下
限が1μm以上であることが好ましく、1.5μm以上
であることがより好ましく、2μm以上であることがも
っとも好ましい。端部幅W1と中央部幅W2の差につい
ては、上限は100μm以下が好ましく、50μm以下
がより好ましい。下限については、0.2μm以上が好
ましく、0.5μm以上がより好ましい。
【0075】上記の漸増部分あるいは漸減部分、端部の
長さは所望の特性に応じて、設計すればよいが、漸減部
分の長さは、導波路損失低減の観点から、それぞれ5〜
10μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。
端部の長さは、劈開精度の観点から5〜30μmが好ま
しく、10〜20μmがより好ましい。ただし、必要に
応じて、以下のように窓を作製してもよい。 (1)端部、漸増部分あるいは漸減部分の開口幅あるい
は長さがチップ両側で非対称となるもの。 (2)端部の幅一定となる領域を設定せずに、端部まで
漸増あるいは漸減としたもの。 (3)端面の片側(通常、高出力光取り出し(前端面)
側)だけ開口幅が漸増あるいは漸減するようにしたも
の。 (4)端部開口幅が前端面と後端面とで異なるもの。 (5)上記の(1)〜(4)のいくつかを組み合わせた
もの。
【0076】また、端面付近に電極を設けないようにし
て、端部近傍の開口部への電流注入によるバルク劣化の
抑制や端面での再結合電流を低減することは、高い信頼
性での小スポット径のレーザ作製の観点から有効であ
る。
【0077】端部での共振器方向における窓構造領域の
長さは、短すぎると再現性よく劈開することが困難とな
り、一方、長すぎると窓領域40での損失が増加するた
めにしきい値電流の増大やスロープ効率の低減などレー
ザ特性の劣化を招いてしまう。そこで、窓領域40の長
さは、下限として、1μm以上が好ましく、5μm以上
がより好ましい。上限としては、50μm以下が好まし
く、30μm以下がより好ましい。
【0078】窓領域40は、両端部に形成されているこ
とが好ましいが、片側の側面にだけ形成されていてもよ
い。片側にだけ形成されている場合は、より高出力のレ
ーザ光が出射される端面側に形成されていることが好ま
しい。
【0079】本発明の半導体光デバイス装置の製造方法
は、まず基板21上に第1導電型クラッド層22、活性
層23及び第2導電型第1クラッド層24とを有するダ
ブルヘテロ構造を形成後、第2導電型第1クラッド層2
4上に電流ブロック層26を形成し、電流ブロック層2
6に開口部42を形成する。次いで亜鉛含有不純物拡散
層としての化合物半導体層を選択成長した後、熱処理を
して亜鉛拡散層を形成し、次いで該亜鉛含有不純物拡散
層をエッチングにより除去してから、該電流ブロック層
26の開口部42及び少なくとも開口部42両脇の電流
ブロック層26上に第2導電型第2クラッド層28を形
成する。
【0080】本発明の製造方法において、亜鉛含有不純
物拡散層を形成する前に、亜鉛をドーピングしない部分
(亜鉛拡散領域を除く領域)には表面保護膜を形成する
ことが好ましい。表面保護膜の材料は、不純物拡散層形
成時に表面保護膜上に化合物半導体をエピタキシャル成
長させないこと、アニーリング時に表面保護膜より下層
に熱伝搬をしないこと、という条件を満たせば、特に限
定されない。具体的には表面保護膜として誘電体を用い
ることができ、例えばSiNx膜、SiO2膜、SiO
N膜、Al23膜、ZnO膜、SiC膜及びアモルファ
スSiからなる群を挙げることができる。
【0081】表面保護膜を形成した場合には、第2導電
型第2クラッド層28を形成する前に該表面保護膜は除
去される。該表面保護膜を除去する方法は、該表面保護
膜を完全に除去できれば特に限定はない。したがって、
通常用いられるエッチング方法を用いることができ、例
えばドライエッチング、ウェットエッチング、反応性イ
オンエッチング、プラズマエッチングなどを挙げること
ができる。
【0082】本発明の半導体光デバイス装置の製造方法
における各層の結晶の成長方法は、特に限定されるもの
ではない。したがって、従来からの方法を用いることが
でき、例えばダブルヘテロ構造の結晶成長や電流ブロッ
ク層等の選択成長には、有機金属気相成長法(MOCV
D法)、分子線エピタキシー法(MBE法)、ハイドラ
イド又はハライド気相成長法(VPE法)、液相成長法
(LPE法)等の公知の成長方法を適宜選択して用いる
ことができる。
【0083】各層の具体的成長条件等は、層の組成、成
長方法、装置の形状等に応じて異なるが、MOCVD法
を用いてIII−V族化合物半導体層を成長する場合、ダ
ブルへテロ構造は、成長温度600〜750℃程度、V
/III比50〜150程度(GaAs、InGaAsの
場合)、20〜60程度(AlGaAsの場合)あるい
は300〜600程度(InGaAsP、AlGaIn
Pの場合)、ブロック層は成長温度600〜700℃、
V/III比40〜60程度(AlGaAsの場合)ある
いは350〜550程度(InGaAsP、AlGaI
nPの場合)で行うのが好ましい。
【0084】表面保護膜を用いて選択成長する部分がA
lGaAs、AlGaInPのようにAlを含む場合、
その成長中に微量のHClガスを導入することにより、
マスク上へのポリの堆積を防止することができる。Al
の組成が高いほど、あるいはマスク幅あるいはマスク面
積比が大きいほど、他の成長条件を一定とした場合、ポ
リの堆積を防止し、かつ半導体表面露出部のみに選択成
長を行う(セレクティブモード)のに必要なHCl導入
量は増加する。
【0085】一方、HClガスの導入量が多すぎるとA
lGaAs層の成長が起こらず、逆に半導体層がエッチ
ングされてしまうが(エッチングモード)が、Al組成
が高くなるほど他の成長条件を一定とした場合、エッチ
ングモードになるのに必要なHCl導入量は増加する。
このため、最適なHCl導入量はトリメチルアルミニウ
ム等のAlを含んだIII族原料供給モル数に大きく依存
する。具体的には、HClの供給モル数とAlを含んだ
III族原料供給モル数の比(HCl/III族)は、下限は
0.01以上が好ましく、0.05以上がより好まし
く、0.1以上が最も好ましい。上限は、50以下が好
ましく、10以下がより好ましく、5以下が最も好まし
い。但し、Inを含む化合物半導体層を選択成長(特
に、HCl導入)させる場合は、組成制御が困難になり
やすい。
【0086】本発明の半導体光デバイス装置を利用した
半導体レーザ装置として、情報処理用光源(通常AlG
aAs系(波長780nm近傍)、AlGaInP系
(波長600nm帯)、InGaN系(波長400nm
近傍))、通信用信号光源(通常InGaAsPあるい
はInGaAsを活性層とする1.3μm帯、1.5μ
m帯)レーザ、ファイバー励起用光源(InGaAs歪
み量子井戸活性層/GaAs基板を用いる980nm近
傍、InGaAsP歪み量子井戸活性層/InP基板を
用いる1480nm近傍など)レーザなどの通信用半導
体レーザ装置など、特に高出力動作が求められる多用な
装置を挙げることができる。また、通信用レーザでも、
円形に近いレーザはファイバーとの結合効率を高める点
で有効である。また、遠視野像が単一ピークであるもの
は、情報処理や光通信などの幅広い用途に好適なレーザ
として供することができる。
【0087】さらに、本発明は半導体レーザ以外に端面
発光型などの発光ダイオード(LED)としても応用可
能である。また、本発明は半導体レーザ以外に端面発光
型などの発光ダイオード(LED)としても応用可能で
ある。
【0088】
【実施例】以下に具体例を挙げて、本発明をさらに詳細
に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操
作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更する
ことができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す
具体例に制限されるものではない。
【0089】(実施例1)本実施例において、図4に示
す順に各層を形成することにより半導体光デバイス装置
の一つである半導体レーザ素子を製造した。なお図4に
は、構造を把握しやすくするために敢えて寸法を変えて
いる部分があるが、実際の寸法は以下の文中に記載され
るとおりである。
【0090】厚さ350μmで表面が(100)面であ
るn型GaAs(n=1×1018cm-3)基板101上
に、分子線エピタキシー法(MBE法)により、厚さ
2.0μmのn型Al0.35Ga0.65As(Siドープ:
n=1×1018cm-3)からなるn型クラッド層10
2、厚さ30nmのGaAs光閉じ込め層(ノンドー
プ)、厚さ6nmのIn0.2Ga0.8As井戸層(ノンド
ープ)、厚さ8nmのGaAsバリア層(ノンドー
プ)、厚さ6nmのIn0.2Ga0.8As井戸層(ノンド
ープ)及び厚さ30nmのGaAs光閉じ込め層(ノン
ドープ)を順次積層してなる二重量子井戸(DQW)活
性層103、厚さ0.1μmのp型Al0.4Ga0.6As
(Beドープ:p=1×1018cm-3)からなるp型ク
ラッド層104、厚さ10nmのp型GaAs層と厚さ
20nmのp型InGaP(Beドープ:p=1×10
18cm-3)層からなるエッチング阻止層105、厚さ
2.0μmのn型Al0.4Ga0.6As(Siドープ:n
=1×1018cm-3)からなるn型電流ブロック層10
6、厚さ10nmのn型GaAs(Siドープ:n=1
×1018cm-3)からなるn型キャップ層107を順次
積層した。
【0091】電流注入領域を形成するために、まず、こ
のダブルヘテロ基板の表面に厚さ100nmのSiNx
保護膜108をプラズマCVDにより堆積させ、フォト
リソグラフィーにより[0−11]B方向にストライプ
状の開口部を多数形成した(図4(a))。なお、[0
1−1]B方向は、一般的なIII−V族化合物半導体に
おいて、(100)面と(01−1)面の間に存在する
(11−1)面が、V族元素が現れる面である様に定義
する。
【0092】このストライプ状開口部の幅は2.2μm
で一定にし、横方向のスペース間隔は400μmとし
た。このストライプ状の開口部において、エッチング阻
止層105でエッチングが停止するようにして、n型電
流ブロック層106及びn型キャップ層107をエッチ
ングにより除去した。このとき用いたエッチング液は、
酒石酸/過酸化水素系、硫酸/過酸化水素系、燐酸/過
酸化水素系などから選択した。この後、ストライプ状の
SiNx保護膜108を緩衝フッ酸液などのウェットエ
ッチング若しくはSF6、CF4などのガスを用いたドラ
イエッチングを用いて除去した(図4(b))。
【0093】次に、このダブルヘテロ基板の表面に厚さ
100nmのSiNx表面保護膜109をプラズマCV
Dにより堆積させ、フォトリソグラフィーにより[0−
11]B方向を長手方向とする矩形状の保護膜を形成し
た(図4(c))。矩形状のSiNx保護膜109の長
さは980μm、開口部幅は40μmとした。
【0094】このSiNx表面保護膜109の周囲に有
機金属気層エピタキシー法(MOCVD法)を用いた選
択成長により、厚さ0.5μmの高濃度p型GaAs
(Znドープ:p=1×1020cm-3)Zn拡散層11
0を580℃で形成した。この直後に同じMOCVD装
置内でアニール(715℃、1時間)を施すことによ
り、p型GaAs表面保護層の表面から0.4μmの深
さまで、Zn拡散を行った(図4(d))。このアニー
ル工程はZn拡散層110とキャップ層111の選択成
長工程と同じMOCVD装置内で連続して行った。この
ため、製造プロセスは簡略化されており、Znの分布も
再現性が高かった。
【0095】アニール工程によって、Znは図4中で斜
線を付した領域に拡散し、開口部直下では素子端面の拡
散フロント位置はn型クラッド層102の内部に達し
た。このとき、深さ方向の組成プロファイルをArスパ
ッタしながらオージェ電子分光法にて分析したところ、
二重量子井戸(DQW)活性層103において混晶化が
起こっていることが判明した。これは、高濃度(1×1
20cm-3)のZnの拡散により、In0.2Ga0.8As
井戸層とGaAsバリア層及びガイド層において、相互
拡散(インターミキシング)が生じたからである。ま
た、フォトルミネッセンス(PL)法において活性層か
らの発光波長を測定したところ、Zn拡散(すなわち混
晶化)した領域においてPLピーク波長が40nm短波
長化(970nmから930nmに変化)していること
が確認された。すなわちバンドギャップが拡大(55m
eV)していることが判明したことから、レーザ光出射
端面部において窓構造113が形成されていることが確
認できた。
【0096】次に、高濃度p型GaAsのZn含有不純
物拡散層110とキャップ層111をエッチングにより
除去した。このとき、50%クエン酸水溶液と30%過
酸化水素水とを体積比5:1で混合したエッチング液で
選択的に高濃度p型GaAsのZn含有不純物拡散層1
10及びキャップ層111を除去した。使用したエッチ
ング液のp型GaAsのZn含有不純物拡散層110に
対するエッチングレートを図7に示す。この液を使用す
ることによりp型GaAsのZn含有不純物拡散層11
0及びキャップ層111のみがエッチングされ、SiN
x表面保護膜109とエッチング阻止層105はエッチ
ングされず、エッチング後の表面は非常に良好な鏡面に
なった。このあと、SiNx表面保護膜109を緩衝フ
ッ酸液などのウェットエッチング若しくはSF6、CF4
などのガスを用いたドライエッチングを用いて除去し
た。
【0097】この後、MOCVD法により厚さ2.0μ
mのp型Al0.4Ga0.6As(Znドープ:p=1×1
18cm-3)からなるp型第2クラッド層112及び厚
さ3.0μmのp型GaAs(Znドープ:p=2×1
19cm-3)からなるコンタクト層113を成長させ
た。
【0098】この後、p側の電極114を蒸着し、基板
を100μmまで薄くした後に、n側電極115を蒸着
し、アロイした(図4(e))。こうして作製したウエ
ハーにおいて、40μm幅の不純物を拡散した領域のほ
ぼ中央で劈開して、レーザ光出射端面を形成(1次劈
開)するようにチップバーに切り出し、端面窓構造レー
ザを作製した。このときの共振器長は1000μmとし
た。前端面5%−後端面95%の非対称コーティングを
施した後、2次劈開によりチップに分離した。チップを
ジャンクションダウンで組立した後、25℃で連続通電
(CW)にて電流−光出力、電流−電圧特性を測定し
た。
【0099】本実施例によって作製した窓構造レーザで
は動作電流の増加とともに光出力が増加し、約450m
Wまでキンクフリーでかつ約600mWまでCODせず
に光出力が得られた。しかし、それ以上に動作電流を増
加させても光出力は増加せず、素子自体の発熱による熱
飽和によって光出力が制限された。発振波長は平均97
6nm、しきい値電流は平均20mA、スロープ効率は
平均0.85mW/mAであり、特性は非常に良好であ
った。また、250mW出力時における垂直広がり角は
平均28°、水平拡がり角は平均8.5°であった。こ
のとき、非点隔差は2μm以下と非常に小さくすること
ができ、光ファイバーとの光結合特性に優れた光源とな
ることが判明した。さらに、高い信頼性(70℃、25
0mWの高温、高出力における3000時間以上の安定
動作)が得られることが判明した。また、電流注入のた
めの開口部をエッチング阻止層までのエッチングにより
形成しているため、素子構造の均一性を高めることがで
き、上記の半導体レーザ素子を高歩留まりで作製するこ
とができた。
【0100】なお、上記のMOCVD法において、III
族原料にはトリメチルガリウム(TMG)、トリメチル
インジウム(TMI)及びトリメチルアルミニウム(T
MA)を、V族原料にはアルシン及びホスフィンを、キ
ャリアガスには水素を用いた。また、p型ドーパントに
はジメチル亜鉛(DEZ)、n型ドーパントにはジシラ
ンを用いた。また、n型Al0.5Ga0.5As層111の
成長時には、SiNx表面保護膜上へのポリの堆積を抑
制するために、HClガスをHCl/III族のモル比が
0.12、特にHCl/TMAのモル比が0.22とな
る様に導入した。
【0101】(実施例2)p型GaAs(Znドープ:
p=1×1020cm-3)Zn拡散層110のかわりに、
p型AlGaAs(Znドープ:p=1×1020
-3)Zn拡散層を形成した点を除き、実施例1と同じ
方法で半導体レーザ素子を作製した。エッチング液は、
クエン酸/過酸化水素系、酒石酸/過酸化水素系、硫酸
/過酸化水素系、リン酸/過酸化水素系エッチング液か
ら選択した。実施例1と同様に特性が非常に良好な半導
体レーザ素子を高歩留まりで作製することができた。
【0102】(比較例)端部領域を窓構造としていない
こと又は亜鉛含有拡散層をクエン酸系エッチング液でエ
ッチングしていない点を除き、実施例1と同じ工程によ
ってレーザ素子を作製した。本比較例のレーザ素子は、
実施例1とは亜鉛拡散領域を有していない点で異なって
いる。この素子構造のレーザでは、動作電流を増加させ
たところ、約350mWの光出力が得られた時にCOD
が発生し、レーザ素子が壊れてしまった。
【0103】
【発明の効果】本発明の半導体光デバイス装置は、光導
波路の端部を窓構造とすることにより端面劣化を抑制で
きることから、高出力動作における素子の信頼性を高め
ることができる。このため、本発明は、半導体レーザな
どをはじめとして広範な分野に応用され得るものであ
り、特に光通信システムに用いる光ファイバー増幅器励
起用光源及び増幅器に適している。
【0104】本発明の半導体光デバイス装置を製造する
際には、セルフアライン型インナーストライプレーザ構
造をベースとして、活性層に近傍の上部に亜鉛拡散層を
形成することにより、亜鉛拡散フロントの位置制御性の
向上や端部でのリーク電流低減を図ることができる。さ
らに、開口幅の均一性を高めることができ、上記の半導
体レーザ素子を高歩留まりで作製することができること
から、特に、構造設計マージンの小さいレーザ作製の際
に本発明は有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の半導体光デバイス装置の一実施例の
斜視図である。
【図2】 図1に示した本発明の半導体光デバイス装置
の一実施例の断面図であって、図1のI−I線に沿った矢
視方向の断面図である。
【図3】 図1に示した本発明の半導体光デバイス装置
の一実施例の断面図であって、図1のII−II線に沿った
矢視方向の断面図である。
【図4】 本発明の半導体光デバイス装置の製造工程の
一例を説明する工程図である。
【図5】 本発明の半導体光デバイス装置の一実施例の
活性層のバンドギャップを示す図であり、(a)は窓領域
のバンドギャップを示す図であり、(b)は電流注入領
域のバンドギャップを示す図である。
【図6】 本発明の半導体発光装置の一実施例の上面図
である。
【図7】 本発明の半導体光デバイス装置のエッチング
レートを示す説明図である。
【符号の説明】
21 基板 22 第1導電型クラッド層 23 活性層 24 第2導電型第1クラッド層 25 エッチング阻止層 26 電流ブロック層 27 キャップ層 28 第2導電型第2クラッド層 29 コンタクト層 40 窓領域 41 混晶領域 42 開口部 51、55 光閉じ込め層 52、54 井戸層 53 バリア層 101 基板 102 n型クラッド層 103 活性層 104 p型第1クラッド層 105 エッチング阻止層 106 電流ブロック層 107 キャップ層 108 SiNx保護膜 109 SiNx表面保護膜 110 亜鉛含有不純物拡散層 111 キャップ層 112 p型第2クラッド層 113 コンタクト層 114 p側電極 115 n側電極 W1 端部幅 W2 中央部幅
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 5F073 AA13 AA53 AA74 AA87 BA01 CA04 CA12 CB02 CB12 DA05 DA22 DA24 DA33 EA20 EA24 EA28

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板、該基板上に形成された第1導電型
    クラッド層、該第1導電型クラッド層上に形成された量
    子井戸構造を有する活性層、該活性層上に形成された第
    2導電型第1クラッド層、該第2導電型第1クラッド層
    上に形成された開口部を有する電流ブロック層、該開口
    部内部及び少なくとも開口部両脇の電流ブロック層上の
    一部に形成された第2導電型第2クラッド層を有し、亜
    鉛拡散及び熱処理により光導波路の両端部分における前
    記活性層のバンドギャップが、光導波路中央の電流注入
    領域における前記活性層のバンドキャップよりも大きく
    なっていることを特徴とする半導体光デバイス装置。
  2. 【請求項2】 前記亜鉛拡散が、活性層の上方に形成さ
    れた亜鉛含有不純物拡散層から亜鉛を拡散させることに
    より行われ、該亜鉛含有不純物拡散層がクエン酸系エッ
    チング液で除去されることを特徴とする請求項1の半導
    体光デバイス装置。
  3. 【請求項3】 前記光導波路の両端部分における活性層
    が、前記光導波路中央の電流注入領域における活性層内
    において発生した光に対して透明となるバンドギャップ
    を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体光デ
    バイス装置。
  4. 【請求項4】 前記電流ブロック層の屈折率が、前記第
    2導電型第2クラッド層の屈折率より小さいことを特徴
    とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導体光デバイ
    ス装置。
  5. 【請求項5】 前記電流ブロック層が、少なくとも第1
    導電型又は高抵抗の半導体層で構成されていることを特
    徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の半導体光デバ
    イス装置。
  6. 【請求項6】 前記開口部から活性層に電流が注入され
    ることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の半
    導体光デバイス装置。
  7. 【請求項7】 前記開口部が両端部まで伸長しているス
    トライプ状の開口部であることを特徴とする請求項1〜
    6のいずれかに記載の半導体光デバイス装置。
  8. 【請求項8】 前記開口部が一方の端部まで伸長してい
    るが他方の端部までは伸長していない開口部であること
    を特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の半導体光
    デバイス装置。
  9. 【請求項9】 光ファイバー増幅器励起用光源として用
    いられることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記
    載の半導体光デバイス装置。
  10. 【請求項10】 光ファイバー増幅器として用いられる
    ことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の半導
    体光デバイス装置。
  11. 【請求項11】 基板、第1導電型クラッド層、活性
    層、第2導電型第1クラッド層及び開口部を有する電流
    ブロック層をこの順に形成する工程aと、前記開口部の
    少なくとも両端部に亜鉛含有不純物拡散層を形成した
    後、熱処理により亜鉛拡散領域を形成し、次いで該亜鉛
    含有不純物拡散層を除去する工程bと、前記開口部内部
    及び少なくとも前記開口部両脇の電流ブロック層上の一
    部に第2導電型第2クラッド層を形成する工程cとを含
    むことを特徴とする半導体光デバイス装置の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記工程bにおいて、前記亜鉛含有不
    純物拡散層を形成する前に前記亜鉛含有不純物拡散層で
    覆われていない表面に表面保護膜を形成し、かつ、前記
    亜鉛含有不純物拡散層を除去した後に該表面保護膜を除
    去することを特徴とする請求項11に記載の半導体光デ
    バイス装置の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記表面保護膜がSiNxからなるこ
    とを特徴とする請求項12に記載の半導体光デバイス装
    置の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記亜鉛含有不純物拡散層をクエン酸
    系のエッチング液でエッチングすることにより除去する
    ことを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の
    半導体光デバイス装置の製造方法。
  15. 【請求項15】 前記クエン酸系エッチング液が、50
    %クエン酸水溶液と30%過酸化水素水との体積比3〜
    7:1の混合物であることを特徴とする請求項14に記
    載の半導体光デバイス装置の製造方法。
JP2000208730A 2000-07-10 2000-07-10 半導体光デバイス装置 Pending JP2002026451A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000208730A JP2002026451A (ja) 2000-07-10 2000-07-10 半導体光デバイス装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000208730A JP2002026451A (ja) 2000-07-10 2000-07-10 半導体光デバイス装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2002026451A true JP2002026451A (ja) 2002-01-25

Family

ID=18705263

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000208730A Pending JP2002026451A (ja) 2000-07-10 2000-07-10 半導体光デバイス装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2002026451A (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002237456A (ja) * 2000-12-04 2002-08-23 Oki Electric Ind Co Ltd 半導体素子及びその製造方法
JP2005101440A (ja) * 2003-09-26 2005-04-14 Sharp Corp 半導体レーザおよびその製造方法
JP2005522885A (ja) * 2002-04-10 2005-07-28 インテンス フォトニクス リミテッド 集積化された能動的光デバイス及び光検出器
JP2013247210A (ja) * 2012-05-25 2013-12-09 Sharp Corp 半導体レーザ装置
JP2014029941A (ja) * 2012-07-31 2014-02-13 Fujitsu Ltd 光半導体装置及び光半導体装置の製造方法

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002237456A (ja) * 2000-12-04 2002-08-23 Oki Electric Ind Co Ltd 半導体素子及びその製造方法
JP4704614B2 (ja) * 2000-12-04 2011-06-15 Okiセミコンダクタ株式会社 半導体素子及びその製造方法
JP2005522885A (ja) * 2002-04-10 2005-07-28 インテンス フォトニクス リミテッド 集積化された能動的光デバイス及び光検出器
JP2005101440A (ja) * 2003-09-26 2005-04-14 Sharp Corp 半導体レーザおよびその製造方法
US7362788B2 (en) 2003-09-26 2008-04-22 Sharp Kabushiki Kaisha Semiconductor laser and fabricating method thereof
JP2013247210A (ja) * 2012-05-25 2013-12-09 Sharp Corp 半導体レーザ装置
JP2014029941A (ja) * 2012-07-31 2014-02-13 Fujitsu Ltd 光半導体装置及び光半導体装置の製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5556804A (en) Method of manufacturing semiconductor laser
JP4028158B2 (ja) 半導体光デバイス装置
JP3864634B2 (ja) 半導体発光装置及びその製造方法
US6639926B1 (en) Semiconductor light-emitting device
JP2001203423A (ja) 半導体発光装置
JP2002124738A (ja) 半導体光デバイス装置及びその製造方法
JP3892637B2 (ja) 半導体光デバイス装置
JP2000277867A (ja) 半導体レーザ装置
JP2001185809A (ja) 半導体光デバイス装置及びその製造方法
JP3889910B2 (ja) 半導体発光装置およびその製造方法
JP2002026451A (ja) 半導体光デバイス装置
JP2001135895A (ja) 半導体発光装置
JP3889896B2 (ja) 半導体発光装置
JP2001057459A (ja) 半導体レーザ
JP2001358409A (ja) 半導体光デバイス装置及びその製造方法
JP2001057458A (ja) 半導体発光装置
JP2007049209A (ja) 半導体光デバイス装置およびその製造方法
JP2001185810A (ja) 半導体光デバイス装置及びその製造方法
JP2000277856A (ja) 自励発振型半導体レーザ装置
JP4163321B2 (ja) 半導体発光装置
JP3963632B2 (ja) 半導体光デバイス装置
JP3889911B2 (ja) 半導体発光装置およびその製造方法
JP2865160B2 (ja) 半導体レーザの製造方法
JP2000332359A (ja) 半導体発光装置
JP2002026450A (ja) 半導体光デバイス装置

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20060628

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060816

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20070110