JP3889911B2 - 半導体発光装置およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、出力と信頼性がともに高い半導体発光装置に関する。本発明の半導体発光装置は、半導体レーザなどとして有用である。
【0002】
【従来の技術】
一般に、化合物半導体は基板上に成長させることにより形成される。結晶性の良い化合物半導体を成長させるためには、基板として化合物半導体と格子整合している材料を用いることが望ましい。しかしながら、窒化ガリウムのように格子整合する材料が存在しない場合は、サファイアなどの異種材料上に成長させざるを得ない。このような場合は、格子定数や熱膨張係数の違いにより基板上に成長するエピタキシャル層内に多数の欠陥が生じてしまう。このため、窒化ガリウム系のレーザ、特に高出力レーザは寿命が短いという問題を抱えている。
【0003】
このような問題に対処するためにこれまでにも様々な検討がなされてきた。例えば、ELO(Epitaxial Lateral Overgrowth)基板を用いて、選択横方向成長をさせる方法が開発されている。マスクを用いる方法については、A.Usui et.al Jpn.J.Appl.Phys.36,L899(1997)に記載されており、マスクを用いない方法については、T.S.Zheleva et.al Ext.Abst.G3.38(MRS Fall Meet.Boston,1998)に記載されている。これらの方法を用いれば、通常1x1010個/cm2程度である転位密度を、1x108個/cm2程度に低減することができるとされている。しかしながら、この方法によってもウエハ全面で転位を下げるのは困難であった。
【0004】
一方、特開平11−1399号公報には、酸化物基板上に1次ガリウム層を成長した後に酸化物基板の一部を除去し、次いで第2窒化ガリウム層を成長させた後に酸化物層を除去し、さらに所定の厚みの窒化ガリウム層を成長させて窒化ガリウム半導体バルク単結晶を成長させる方法が記載されている。この方法によれば、高品質な窒化ガリウム単結晶基板を作製し光素子の長寿命化を図るとともに、不純物の注入による導電型制御を行って基板側への電極形成が可能になる。しかしながら、この方法は成長工程と研磨工程を3回ずつ行い、外周切断も必要であるなど工程数が多く、コストがかかるという問題がある。また、有効基板サイズが1cm2程度で小さいため、量産化が困難であるという問題もある。さらに、転位は下がっても106個/cm2程度までであり十分とはいえない。このため、上記ELO基板を用いた場合と比較して大きな差異があるとは言いがたい。
【0005】
【発明が解決すべき課題】
本発明者は、化合物半導体を用いた従来の半導体発光装置の問題を種々検討した結果、通電により伝搬する転位を抑制することが極めて重要であることを見出した。従来の半導体発光装置は、転位密度を下げることを主眼としており、通電による伝搬する転位抑制については十分な検討が行されていなかった。高品質な半導体発光装置を作製するためには、転位密度を下げるだけでは限界があり、新たな視点から転位抑制を検討することが必要である。
【0006】
そこで本発明は、通電により伝搬する転位を十分に抑制することができ、出力と信頼性がともに高い半導体発光装置を提供することを課題とした。より具体的には、通電時の電流経路を見直すことにより転位抑制を達成することを課題とした。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、活性層の上下に形成される電流注入領域と電流阻止層の位置関係を制御することにより、効果的に転位を抑制することができることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明は、基板、該基板上に形成された第1導電型クラッド層、該第1導電型クラッド層上に形成された活性層、該活性層の上に形成された第2導電型第1クラッド層、該第2導電型第1クラッド層上に形成されたストライプ状の電流注入領域を有する半導体発光装置において、該基板と該第1導電型クラッド層との間に電流阻止層が形成されており、該電流阻止層は、その下の基板または層の表面に対して突出しているとともに、該電流注入領域と対向しており、該電流阻止層の上には、該第1導電型クラッド層および該第2導電型第1クラッド層よりも低い抵抗率を有する平坦化層が該電流阻止層に隣接して形成されていることを特徴とする半導体発光装置を提供する。
【0009】
本発明の半導体発光装置では、電流注入領域の対向域全体に電流阻止層が形成されていることが好ましい。また、活性層が少なくともGaおよびNを構成元素として含むことが好ましく、具体的には窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、または窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)からなることが好ましい。
【0010】
本発明の半導体発光装置の基板は導電性基板であることが好ましく、具体的には窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、炭化珪素(SiC)、酸化亜鉛(ZnO)、ガリウム酸リチウム(LiGaO2)、アルミニウム酸マグネシウム(MgAl2O4)、シリコン(Si)、燐化ガリウム(GaP)、または砒化ガリウム(GaAs)からなることが好ましい。また、基板としてサファイア(Al 2 O 3 )を用いることも好ましい。
本発明の半導体発光装置は半導体レーザなどとして有用である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下において本発明の半導体発光装置について詳細に説明する。
本発明の半導体発光装置は、基板、該基板上に形成された活性層、該活性層の上部に形成されたストライプ状の電流注入領域を少なくとも有するものである。その特徴は、基板と活性層との間に電流阻止層が形成されており、該電流注入領域と該電流阻止層が対向していることにある。なお、本明細書において「電流阻止層」とは、電流をブロックする機能を有する層をいう。
【0012】
本明細書において「A層の上に形成されたB層」という表現は、A層の上面にB層の底面が接するようにB層が形成されている場合と、A層の上面に1以上の層が形成されさらにその層の上にB層が形成されている場合の両方を含むものである。また、A層の上面とB層の底面が部分的に接していて、その他の部分ではA層とB層の間に1以上の層が存在している場合も、上記表現に含まれる。具体的な態様については、以下の各層の説明と実施例の具体例から明らかである。
【0013】
本発明の特徴について、本発明の好ましい一実施態様を示す図1を参照しながら説明する。図1に示すように、本発明の半導体発光装置は、基板21、活性層32、およびストライプ状の電流注入領域36を少なくとも有する。基板21の下には電極40が形成されており、該基板21上にはストライプ状の電流阻止層23が形成されている。基板21および電流阻止層23の上にはGaN平坦化層24、第1導電型クラッド層25、活性層を有する発光層32、第2導電型第1クラッド層33、酸化防止層34が順に形成されている。酸化防止層34の上には、図に示すようにストライプ状の開口部36を挟んで両脇に電流ブロック層35が形成されている。このSiNx膜が絶縁性を示すために、電流はストライプ状の開口部36に注入されるようになっている。ストライプ状の開口部36には、その両端のSiNx膜35にも乗りかかるように第2導電型第2クラッド層37が形成されている。さらに、第2導電型第2クラッド層37の表面全体はコンタクト層38で覆われており、その上に電極39が形成されている。
【0014】
図1の態様において、電流注入領域36と電流阻止層23は互いに対向するように形成されている。図2はこれらの位置関係を上から見た図である。電流注入領域36の直下には電流注入領域よりも大きい電流阻止層23が形成されている。本明細書において「電流注入領域と電流阻止層が対向する」とは、このように電流注入領域をエピタキシャル成長とは逆方向に平行移動したときに、電流阻止層と重なる部分が存在するような位置関係にあることを意味する。重なる部分は、電流注入領域の一部と電流阻止層の一部であってもよい。また、電流注入領域を平行移動したときにその全体が電流阻止層に覆われる関係にあってもよいし、逆に電流注入領域を平行移動したときにその全体が電流阻止層を覆う関係にあってもよい。
【0015】
好ましいのは、電流注入領域を平行移動したときにその全体が電流阻止層に覆われる関係にある態様である(請求項2)。特に、電流注入領域を平行移動したときに電流注入領域の中心線が電流阻止層の中心線に重なるか、近傍にあることが好ましい。これらの好ましい態様では、ストライプ状の電流注入領域の幅(a)は電流阻止層の幅(b)よりも小さく、その差(b−a)は、下限としては1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。上限としては、50μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。なお、幅が一定でない場合は、全長の平均幅が上記範囲内におさまればよい。
【0016】
電流阻止層は絶縁性であるか、あるいは活性層下側のクラッド層と反対の導電型であるため、電流は電流阻止層の外側を迂回して流れることになる。このため、通電による転位は電流阻止層の外側で上方に伝搬するが、電流阻止層の上方には伝搬しにくくなる。すなわち、電流阻止層の下側に存在した貫通転位を電流阻止層によって止めることが可能となる。このため、本発明にしたがって、電流阻止層の上方に対向するように電流注入領域を形成しておけば、該電流注入領域の直下にあたるストライプ状の活性層部分へは転位が伝搬しにくくなる。したがって、本発明の構成を採用することによって、出力と信頼性を高めることができる。
【0017】
以下において、本発明の半導体発光装置を構成する各層の詳細を説明する。
本発明の半導体発光装置を構成する基板は、InAlGaN系エピタキシャル層の成長が可能であれば、特に制約はない。例えば、炭化珪素(SiC)、サファイア(Al2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、ガリウム酸リチウム(LiGaO2)、アルミニウム酸マグネシウム(MgAl2O4)、シリコン(Si)、燐化ガリウム(GaP)、砒化ガリウム(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)等の基板を用いることができる。ただし、低温バッファ層、クラック防止層の挿入および選択成長を利用した貫通転位を低減させる手法(ELOG、FIELOなど)を取り入れることにより、半導体レーザ等の発光素子に適した窒化物半導体を成長させることができる。また、裏面側に電極を取れるようにするためには、炭化珪素(SiC)、シリコン(Si)、燐化ガリウム(GaP)、砒化ガリウム(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)等の基導電性基板が好ましい。さらに、その上に積層する層と格子整合し、かつ熱膨張係数が同じとなるGaNあるいはAlGaNバルク単結晶基板からなるホモ基板がより好ましい。これらのホモ基板は、転位密度を大幅に下げた場合においても、III族窒化物エピタキシャル層の成長前に基板界面に転位が形成されてしまうので、本発明の効果を有効に利用できる。
【0018】
基板上には、基板の欠陥をエピタキシャル成長層に持ち込まないために厚さ0.2〜2μm程度のバッファ層を形成しておくことが好ましい。ただし、バッファ層は必ずしも形成しなくてもよい。
【0019】
基板上には、活性層を含む化合物半導体層を形成する。化合物半導体層は、活性層の上下に活性層より屈折率の小さい層を含んでおり、そのうち基板側の層は第1導電型クラッド層、他方のエピタキシャル側の層は第2導電型クラッド層として機能する。このほか光ガイド層として機能する層を含んでいてもよい。これらの屈折率の大小関係は、各層の材料組成を当業者に公知の方法にしたがって適宜選択することにより調節することができる。例えば、AlxGa1-xAs、(AlxGa1-x)0.5In0.5P、AlxGa1-xNなどのAl組成を変化させることによって屈折率を調節することができる。
【0020】
電流阻止層は活性層の下側(例えば、基板、バッファー、クラッド層などの間)に選択的に形成される。成長回数低減や表面酸化抑制の観点から、基板表面上に電流阻止層を形成することが好ましい。このことにより、劈開、組立等の歩留まりを向上し、また、ジャンクション・ダウンで組み立てた場合に十分なLD特性が得られ、さらに、非可逆的光損傷(COD)レベルを高めたり、素子の信頼性を向上させることができる。
電流阻止層の厚みは、薄すぎると電流ブロックの機能が不十分となり、厚くなりすぎると通過抵抗が大きくなるなってしまう。具体的には、下限は0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。上限は、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましい。
【0021】
電流阻止層は端面近傍にも形成することができる。この端部での電流非注入構造により、端面での電流再結合を低減することが可能となり、非可逆的光損傷(COD)レベルを高めたり、素子の信頼性を向上させることができる。
このとき、電流阻止層が端面近傍に形成されていて、端面近傍で光導波路に段差がある場合、端面近傍では光が活性層からクラッド層などのよりバンドギャップの大きい層に漏れだして、実質的に端面が光に対して透明、すなわち端面窓構造とすることも可能となる。
【0022】
端面での電流阻止層の幅は、狭すぎると、電流非注入の効果が低減したり、劈開が困難になるなどの問題が生じてしまい、広すぎると、損失が大きくなりすぎて動作電流などのレーザ特性を劣化させてしまう。具体的には、下限は2μm以上が好ましく、5μm以上が好ましい。上限は、50μm以下が好ましく、30μm以下が好ましい。
【0023】
電流阻止層の形成方法は、特に限定されないが、プロセスの簡素化や形状制御性の観点から、電流阻止層をフォトリソグラフィーおよびエッチングにより形成することが好ましい。
【0024】
電流阻止層はその下に形成されていたエピタキシャル成長面や基板表面の一部に形成されることから、電流阻止層の形成が完了した段階では、電流阻止層だけが突出した状態になっている。したがって、さらにその上に結晶成長を続けて行くと電流阻止層形成部の上方だけが盛り上がってしまう。これを回避するために、電流阻止層の上には平坦化層を形成することが好ましい。
【0025】
電流阻止層がSiNx、SiO2などのようなアモルファス膜である場合は、その上に直接エピタキシャル成長を行うことは通常できない。このため、このような場合は電流阻止層の上に直接成長せずに、電流阻止層が形成されていない表面に成長させ、電流阻止層の上には両端部から中央部に向けて横方向に成長させることが好ましい。III族化合物の場合、平坦化層はGaNからなるものであるのが好ましい。具体的には、Ga供給量を減らすことにより、GaNの横方向成長速度を縦方向の成長速度の約3倍にすることが可能となるために、結果として平坦なGaN層を成長することができる。また、横方向に成長した電流阻止層上のGaN層の結晶性は高品質であるため、この後に電流阻止層の直上に形成される活性層内電流注入領域の結晶品質も高くすることが可能となる。
【0026】
平坦化層の抵抗率は、その上の第1導電型クラッド層および第2導電型クラッド層に比べて小さくすることができる。このため、電流阻止層の上部には充分に電流が回り込むことができ、電流阻止層を形成しても活性層への電流注入に大きな影響を与えずに済ませることができる。
【0027】
平坦化層の上に形成される第1導電型クラッド層は、活性層よりも屈折率の小さい材料で形成される。また、第1導電型クラッド層の屈折率は、第2導電型クラッド層の屈折率よりも大きいことが好ましい。例えば、第1導電型のGaInP、AlGaInP、AlInP、AlGaAs、AlGaAsP、AlGaInAs、GaInAsP、GaN、AlGaN、AlGaInN、BeMgZnSe、MgZnSSe、CdZnSeTe等の一般的なIII−V族、II−VI族半導体を用いることができる。第1導電型クラッド層のキャリア濃度は、下限は1×1018cm-3以上が好ましく、3×1018cm-3以上がより好ましく、5×1018cm-3以上が最も好ましい。上限は2×1020cm-3以下が好ましく、5×1019cm-3以下がより好ましく、3×1018cm-3以下が最も好ましい。
【0028】
第1導電型クラッド層は、単層からなるものであるときは、好ましくは0.5〜4μm、より好ましくは1〜3μm程度の厚みを有するが、第1導電型クラッド層は第1導電型第1クラッド層と第1導電型第2クラッド層の複数層からなるものであってもよい。具体的には活性層側にGaInP、AlGaInP又はAlInPからなるクラッド層と、その層よりも基板側に第1導電型のAlGaAs又はAlGaAsPからなるクラッド層が形成されている態様を例示することができる。このとき、活性層側の層の厚さは薄くすることが好ましく、厚さの下限としては0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましい。上限としては、0.5μm以下が好ましく、0.3μm以下がより好ましい。また、基板側の層のキャリア濃度は、下限2×1017cm-3〜以上が好ましく、5×1017cm-3以上がより好ましい。上限は3×1018cm-3以下が好ましく、2×1018cm-3以下がより好ましい。
【0029】
本発明の半導体発光装置を構成する発光層の構造は特に制限されない。発光層は、光ガイド層に挟まれた活性層からなるものであるのが好ましい。また、電流リーク抑制層が形成されていてもよい。
【0030】
活性層の構造は、特に制限されず、例えば三重量子井戸構造(TQW)をとることができる。この三重量子井戸構造(TQW)は、例えばバリア層(ノンドープ)に挟まれた3層の量子井戸層(ノンドープ)からなる構造を有する。この三重量子井戸構造以外にも、例えば、単一量子井戸構造(SQW)や、二重量子井戸構造(DQW)や4層以上の量子井戸層を有する多量子井戸構造(MQW)であってもよい。活性層を量子井戸構造とすることにより、単層のバルク活性層と比較して、短波長化かつ低しきい値化を達成することができる。
【0031】
活性層の材料としては、GaAs、AlGaAs、GaInP、AlGaInP、GaInAs、AlGaInAs、GaInAsP、GaN、GaInNなどを例示することができる。GaとInを構成元素として含む材料である場合は、自然超格子が形成されやすいために、オフ基板を用いることによる自然超格子抑制の効果が大きくなる。
【0032】
活性層が量子井戸構造を有している場合、混晶化の容易さの観点から、次の構造が好ましい。すなわち、(1)混晶化前後での組成の変化量を大きくできることから、活性層が単一の井戸層を有している(単一量子井戸)こと、(2)活性層が複数の井戸層を有している(多重量子井戸)場合、混晶化領域中央付近でのバンドギャップの低減を抑制するために、混晶組成井戸層に挟まれたバリア層の厚みが井戸層よりも大きいこと、(3)混晶化前後でのバンドギャップ変化を大きくするために、井戸層に圧縮歪みがかっかっていること、(4)井戸層の構成元素に比較的低温で拡散しやすいInが含まれていること、(5)井戸層を挟むバリア層あるいはガイド層の構成元素にバンドギャップを小さくするInが含まれていないこと、(6)井戸層を挟むバリア層あるいはガイド層の構成元素にバンドギャップを大きくするAlが含まれていることが好ましい。
活性層はアンドープでもよいし、またn型不純物及び/又はp型不純物をドープしてもよい。不純物は井戸層、バリヤ層両方にドープしても良く、いずれか一方にドープしてもよい。
【0033】
活性層の上下に形成することができる光ガイド層は、活性層の光ガイド層として作用する。光ガイド層としては、III族窒化物の場合、GaN、InGaNを成長させることが望ましく、通常5nm〜1μm、さらに好ましくは10nm〜0.5μmの膜厚で成長させることが望ましい。またこの光ガイド層にn型不純物をドープしても良い。
【0034】
また、発光層には、電子リーク抑制層を形成することもできる。例えば、活性層と光ガイド層の間に形成することができる。電流リーク抑制層は0.1μm以下の膜厚で形成すれば素子の出力を向上することができる傾向にある。膜厚の下限は特に限定しないが、5nm以上の膜厚で形成することが望ましい。
【0035】
活性層の上には、第2導電型クラッド層が形成される。第2導電型クラッド層は2層以上形成してもよい。以下の説明では、活性層に近い方から順に第2導電型第1クラッド層と第2導電型第2クラッド層の2層を有する好ましい態様を例にとって説明する。
【0036】
第2導電型第1クラッド層は、活性層よりも屈折率の小さい材料で形成される。例えば、第2導電型のAlGaInP、AlInP、AlGaAs、AlGaAsP、AlGaInAs、GaInAsP、AlGaInN、BeMgZnSe、MgZnSSe、CdZnSeTe等の一般的なIII−V族、II−VI族半導体を用いることができる。第2導電型クラッド層がAlを含むIII−V族化合物半導体で構成されている場合は、その成長可能な実質的全面をGaAs、GaAsP、GaInAs、GaInP、GaInN等のAlを含まないIII−V族化合物半導体で覆えば表面酸化を防止することができるため好ましい。
【0037】
第2導電型第1クラッド層のキャリア濃度は、下限は2×1017cm-3以上が好ましく、5×1017cm-3以上がより好ましく、7×1017cm-3以上が最も好ましい。上限は5×1018cm-3以下が好ましく、3×1018cm-3以下がより好ましく、2×1018cm-3以下が最も好ましい。厚さの下限としては0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.07μm以上が最も好ましい。上限としては、0.5μm以下が好ましく、0.3μm以下がより好ましく、0.2μm以下が最も好ましい。
【0038】
第2導電型第1クラッド層は活性層の上に形成する。本発明の好ましい実施様態では、第2導電型第1クラッド層の屈折率は、第1導電型クラッド層の屈折率よりも小さい。このような態様を採用することにより、活性層から光ガイド層側へ有効に光がしみ出すように光分布(近視野像)を制御することができる。また、活性領域(活性層の存在する部分)から不純物拡散領域への光導波損失を低減することもできるため、高出力動作におけるレーザ特性や信頼性の向上を達成することができる。
【0039】
本発明の半導体発光装置を構成する電流注入領域は、第2導電型第1クラッド層の上方に形成される。電流注入領域は、通常は電流ブロック層に挟まれた開口部からなる。電流ブロック層の材料は半導体であれば、特に限定されない。電流ブロック層の材料として半導体を用いた場合は、誘電体膜と比較して熱伝導率が高いために放熱性が良い、劈開性が良い、平坦化しやすいためにジャンクション・アップで組み立てやすい、コンタクト層を全面に形成しやすいのでコンタクト抵抗を下げやすいなどの利点がある。
【0040】
電流ブロック層の屈折率は、電流ブロック層に挟まれた第2導電型第2クラッド層の屈折率よりも低くする(実屈折率ガイド構造)。このような屈折率の制御を行うことによって、従来のロスガイド構造に比べて動作電流を低減することが可能になる。電流ブロック層と第2導電型第2クラッド層との屈折率差は、電流ブロック層が化合物半導体の場合、下限は0.001以上が好ましく、0.003以上がより好ましく、0.007以上が最も好ましい。上限は、1.0以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、0.1以下が最も好ましい。電流ブロック層が誘電体の場合、下限は0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.7以上が最も好ましい。上限は、3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、1.8以下が最も好ましい。
【0041】
電流ブロック層は、光分布(特に横方向の光分布)を制御したり電流阻止の機能を向上させるために、屈折率、キャリア濃度又は導電型が異なる2つ以上の層から形成してもよい。電流ブロック層の上には表面保護層を形成して、表面酸化の抑制あるいはプロセス上の表面保護を図ることができる。表面保護層の導電型は特に規定されないが、第2導電型とすることにより、電流阻止機能の向上を図ることができる。
【0042】
電流ブロック層の導電型は、第1導電型又は高抵抗(アンドープもしくは深い順位を形成する不純物(O、Cr、Feなど)をドープ)、あるいはこれら2つの組み合わせのいずれであってもよく、導電型あるいは組成の異なる複数の層から形成されていてもよい。例えば、活性層に近い側から第2導電型あるいは高抵抗の半導体層、および第1導電型の半導体層の順に形成されている電流ブロック層を好ましく用いることができる。また、あまり薄いと電流阻止に支障を生じる可能性があるため、厚さは0.1μm以上であるのが好ましく、0.5μm以上であるのがより好ましい。素子としてのサイズ等を勘案すれば、0.1〜3μm程度の範囲から選択するのが好ましい。
【0043】
電流ブロック層の上側層として、開口部内部および少なくとも開口部両脇の電流ブロック層上の一部にいたるように第2導電型第2クラッド層を形成することが好ましい。第2導電型第2クラッド層は、開口部の上側表面をすべて覆い且つ開口部両脇の電流ブロック層上の一部に延在されるように形成することが好ましい。不純物拡散により形成される窓領域を光導波路の両端部分の比較的狭い範囲に自己整合的に形成し、その電流ブロック層をそのまま用いて第2導電型第2クラッド層が開口部の両脇の電流ブロック層上の一部まで延在されるように形成すれば、素子特性を十分に安定化させることができる。
【0044】
第2導電型第2クラッド層のキャリア濃度は、下限は5×1017cm-3以上が好ましく、7×1017cm-3以上がより好ましく、1×1018cm-3以上が最も好ましい。上限は1×1019cm-3以下が好ましく、5×1018cm-3以下がより好ましく、3×1018cm-3以下が最も好ましい。
【0045】
第2導電型第2クラッド層の厚さは、薄くなりすぎると光閉じ込めが不十分となり、厚くなりすぎりと通過抵抗が増加してしまうことを考慮して、下限は0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましい。上限は3.0μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましい。
【0046】
電流ブロック層と第2導電型第2クラッド層を形成した後にさらに電極を形成するに先立ち、電極材料との接触抵抗を低減するために、低抵抗(高キャリア濃度)のコンタクト層を形成することが好ましい。特に電極を形成しようとする最上層表面の全体にコンタクト層を形成したうえで電極を形成することが好ましい。
【0047】
このとき、コンタクト層の材料は、通常はクラッド層よりバンドギャップが小さい材料の中から選択し、金属電極とのオーミック性を取るため低抵抗で適当なキャリア密度を有するのが好ましい。キャリア密度の下限は、1×1018cm-3以上が好ましく、3×1018cm-3以上がより好ましく、5×1018cm-3以上が最も好ましい。上限は、2×1020cm-3以下が好ましく、5×1019cm-3以下がより好ましく、3×1018cm-3以下が最も好ましい。コンタクト層の厚みは、0.1〜10μmが好ましく、1〜8μmがより好ましく、2〜6μmがもっとも好ましい。
【0048】
次に、電流注入領域、すなわち電流ブロック層に形成される開口部について説明する。
電流ブロック層の開口部は、上側(コンタクト層側)よりも下側(活性層側)の方が小さくなるようにする方が、通過抵抗の低減(動作電圧および発熱の低減)の観点から好ましい。
【0049】
電流ブロック層の開口部は、両端部まで伸長しているストライプ状の開口部であってもよいし、一方の端部まで伸長しているが他方の端部までは伸長していない開口部であってもよい。開口部が両端部まで伸長しているストライプ状の開口部である場合は、端部窓構造領域における光の制御がより容易になり、端面における横方向の光の拡がりを小さくすることができる。一方、開口部が端面からある程度内側に入った部分に形成されている場合は、端面付近で電流を非注入にすることができるため、端面での電流の再結合を防ぐとともに、クラッド層などからの電流の回り込みを最小限にとどめることができる。開口部の構造はこのような利点を考慮しながら、使用目的に応じて適宜決定することが好ましい。
【0050】
オフアングルの方向は、電流ブロック層に形成される開口部の伸びる方向(長手方向)に直交する方向から、±30°以内の方向が好ましく、±7°以内の方向がより好ましく、±2°以内の方向が最も好ましい。また、開口部の方向は、基板の面方位が(100)の場合、[01−1]またはそれと等価な方向が、オフアングルの方向は[011]方向またはそれと等価な方向から±30°以内の方向が好ましく、±7°以内の方向がより好ましく、±2°以内の方向が最も好ましい。なお、本明細書において「[01−1]方向」という場合は、一般的なIII−V族、II−VI族半導体において、(100)面と[01−1]面との間に存在する[11−1]面が、それぞれV族又はVI族元素が現れる面であるように[01−1]方向を定義する。
【0051】
本発明の実施態様は上記の開口部が[01−1]方向の場合に限定されない。例えば、開口部が[011]方向又はそれと結晶学的に等価な方向に伸びている場合、例えば、成長条件により、成長速度に異方性をもたせることができ、(100)面では速く、(111)B面ではほとんど成長しないようにすることができる。その場合、(111)B面を側面とする第2導電型第2クラッド層が形成される。この場合も次にコンタクト層を形成する際、より等方性の強い成長が起こる条件を選ぶことにより、(100)面の頂部とともに(111)B面からなる側面にも全面的にコンタクト層が形成される。
【0052】
同様の理由により、ウルツァイト型の基板を用いた場合には、開口部の伸びる方向は、例えば(0001)面上では[11−20]又は[1−100]が好ましい。HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)ではどちらの方向でもよいが、MOVPEでは[11−20]方向がより好ましい。
【0053】
本発明の半導体発光装置を設計するに際しては、まず、所望の垂直拡がり角を得るために活性層の厚みとクラッド層の組成を決定する。通常、垂直拡がり角を狭くすると活性層からクラッド層への光の浸みだしが促進され、端面での光密度が小さくなり、出射端面の光学的損傷(COD)レベルが向上することができるので、高出力動作を必要とする時には比較的に狭めに設定されるが、下限は活性層内の光閉じ込めの低減による発振しきい値電流の増大及びキャリアのオーバーフローによる温度特性の低下を抑制することで制限があり、下限は、15°以上が好ましく、17°以上がより好ましく、19°以上が最も好ましい。上限は、33°以下が好ましく、31°以下がより好ましく、30°以下が最も好ましい。
【0054】
次に、垂直拡がり角を決定すると、高出力特性を大きく支配する構造パラメータは活性層と電流ブロック層との間の距離dpと開口部底部における幅(以下「開口幅」という)Wとなる。なお、活性層と電流ブロック層との間に第2導電型第1クラッド層のみが存在する場合、dpは第2導電型第1クラッド層の厚みとなる。また、活性層が量子井戸構造の場合、最も電流ブロック層に近い活性層と電流ブロック層との距離がdpになる。
【0055】
dpについては、上限は0.30μm以下が好ましく、0.20μm以下がより好ましく、0.15μm以下がもっとも好ましい。下限は0.03μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.07μm以上がもっとも好ましい。ただし、使用目的(拡がり角をどこに設定するかなど)、材料系(屈折率、抵抗率等)などが異なると、上記の最適範囲も少しシフトする。また、この最適範囲は上記の各構造パラメータがお互いに影響し合うことにも注意を要する。
【0056】
開口部底部における開口幅Wは、上限が100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。下限が1μm以上であることが好ましく、1.5μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることがもっとも好ましい。また、横モードをシングルモード(単一ピークの横方向光強度分布)にするためには、高次モードのカットオフ及び空間的ホールバーニングの防止の観点からWをあまり大きくすることができず、Wの上限は7μm以下が好ましく、6μm以下がより好ましい。
【0057】
高出力動作を実現するには、開口部底部における開口幅Wを広くすることが端面での光密度低減の観点から有効であるが、動作電流を低減するためには開口幅を狭くすることが、導波路ロス低減の観点から好ましい。そこで、ゲイン領域となる中央付近の開口幅W2を比較的狭くし、端部付近の開口幅W1を比較的広くなるようにすることにより、低動作電流と高出力動作を同時に実現することができ、高い信頼性も確保することができる(図3(a))。すなわち、端部(劈開面)幅W1については、上限が1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であるがより好ましい。下限が2μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。中央部幅W2については、上限が100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。下限が1μm以上であることが好ましく、1.5μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることがもっとも好ましい。端部幅W1と中央部幅W2の差については、上限は1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましい。下限については、0.2μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。
【0058】
さらに横モードをシングルモードにするためには、端部幅W1の上限は、7μm以下が好ましく、6μm以下がより好ましい。中央部幅W2の上限は、6μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。端部幅W1と中央部幅W2の差については、上限は5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、2μm以下が最も好ましい。下限については、0.2μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。
【0059】
高い信頼性を維持しつつビームが円形に近いレーザを達成するためには、上記dpとWを適切な範囲に制御性良く納めることが必要となる。
【0060】
円形に近いビームを実現するには、開口幅を狭くすることが有効であるが、開口幅を狭くすると注入電流密度が密度がバルク劣化抑制の観点から好ましくない。そこで、ゲイン領域となる中央部幅W2を比較的広くし、端部付近を比較的狭くなるようにすることにより、ビームスポット低減と低動作電流を同時に実現することができ、高い信頼性も確保することができる(図3(b))。すなわち、端部(劈開面)幅W1については、上限が10μm以下であることが好ましく、5μm以下であるがより好ましく、3μm以下であるがもっとも好ましい。下限が0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。中央部幅W2については、上限が100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。下限が1μm以上であることが好ましく、1.5μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることがもっとも好ましい。端部幅W1と中央部幅W2の差については、上限は100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。下限については、0.2μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。
【0061】
上記の漸増部分あるいは漸減部分、端部の長さは所望の特性に応じて、設計すればよいが、漸減部分の長さは、導波路損失低減の観点から、それぞれ5〜10μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。端部の長さは、劈開精度の観点から5〜30μmが好ましく、10〜20μmがより好ましい。ただし、必要に応じて、以下のように窓を作製してもよい。
【0062】
(1)端部、漸増部分あるいは漸減部分の開口幅あるいは長さがチップ両側で非対称となるもの。
(2)端部の幅一定となる領域を設定せずに、端部まで漸増あるいは漸減としたもの。
(3)端面の片側(通常、高出力光取り出し(前端面)側)だけ開口幅が漸増あるいは漸減するようにしたもの。
(4)端部開口幅が前端面と後端面とで異なるもの。
(5)上記の(1)〜(4)のいくつかを組み合わせたもの。
また、端面付近に電極を設けないようにして、端部近傍の開口部への電流注入によるバルク劣化の抑制や端面での再結合電流を低減することは、高い信頼性での小スポット径のレーザ作製の観点から有効である。
【0063】
端部での共振器方向における窓構造領域の長さは、短くなりすぎると再現性よく劈開することが困難となり、一方、長くなりすぎると窓領域での損失が増加するためにしきい値電流の増大やスロープ効率の低減などレーザ特性の劣化を招いてしまう。そこで、窓領域の長さは、下限として、1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。上限としては、50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。
【0064】
窓領域は、両端部に形成されていることが好ましいが、片側の側面にだけ形成されていてもよい。片側にだけ形成されている場合は、より高出力のレーザ光が出射される端面側に形成されていることが好ましい。
【0065】
本発明の半導体発光装置を製造する方法は特に制限されない。いかなる方法により製造されたものであっても、上記請求項1の要件を満たすものであれば本発明の範囲に含まれる。
【0066】
本発明の半導体発光装置を製造する際には、従来から用いられている方法を適宜選択して使用することができる。結晶の成長方法は特に限定されるものではなく、ダブルヘテロ構造の結晶成長や電流ブロック層等の選択成長には、有機金属気相成長法(MOCVD法)、分子線エピタキシー法(MBE法)、ハイドライドあるいはハライド気相成長法(VPE法)、液相成長法(LPE法)等の公知の成長方法を適宜選択して用いることができる。
【0067】
本発明の半導体発光装置の製造方法としては、まず基板上に上記例示にしたがって電流阻止層と平坦化層を形成し、第1導電型クラッド層及び第2導電型第1クラッド層と活性層を有するダブルヘテロ構造を形成後、第2導電型第1クラッド層上に電流ブロック層を形成し、電流ブロック層を開口した後で不純物拡散用の化合物半導体層を選択成長させ、該化合物半導体層を除去した後、第2導電型第2クラッド層を形成する工程を例示することができる。この製造方法の詳細やその他の製造方法については、以下の実施例や関連技術文献から理解することができる。
【0068】
各層の具体的成長条件等は、層の組成、成長方法、装置の形状等に応じて異なるが、MOCVD法を用いてIII族窒化物半導体層を成長する場合、ダブルへテロ構造は、成長温度900〜1200℃程度、V/III比1,000〜10,000程度で行うのが好ましい。
【0069】
特に保護膜を用いて選択成長する部分がAlGaAs、AlGaInP、AlGaInN、AlGaNのようにAlを含む場合、成長中に微量のHClガスを導入することにより、マスク上へのポリの堆積を防止することができるため非常に好ましい。Alの組成が高いほど、あるいはマスク幅あるいはマスク面積比が大きいほど、他の成長条件を一定とした場合、ポリの堆積を防止し、かつ半導体表面露出部のみに選択成長を行う(セレクティブモード)のに必要なHCl導入量は増加する。一方、HClガスの導入量が多すぎるとAlGaAs層の成長が起こらず、逆に半導体層がエッチングされてしまうが(エッチングモード)が、Al組成が高くなるほど他の成長条件を一定とした場合、エッチングモードになるのに必要なHCl導入量は増加する。このため、最適なHCl導入量はトリメチルアルミニウム等のAlを含んだIII族原料供給モル数に大きく依存する。具体的には、HClの供給モル数とAlを含んだIII族原料供給モル数の比(HCl/III族)は、下限は0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.1以上が最も好ましい。上限は、50以下が好ましく、10以下がより好ましく、5以下が最も好ましい。ただし、Inを含む化合物半導体層を選択成長(特に、HCl導入)させる場合は、組成制御が困難になりやすい。
【0070】
グルーブ形成や選択成長に使用する保護膜は、誘電体であることが好ましく、具体的には、SiNx膜、SiO2膜、SiON膜、Al2O3膜、ZnO膜、SiC膜及びアモルファスSiからなる群から選択される。保護膜は、マスクとしてMOCVDなどを用いてグルーブを選択再成長により形成する場合に用いられる。
【0071】
本発明の半導体発光装置を利用した半導体レーザ装置として、情報処理用光源(通常AlGaAs系(波長780nm近傍)、AlGaInP系(波長600nm帯)、InGaN系(波長400nm近傍))、通信用信号光源(通常InGaAsPあるいはInGaAsを活性層とする1.3μm帯、1.5μm帯)レーザ、ファイバー励起用光源(InGaAs歪み量子井戸活性層/GaAs基板を用いる980nm近傍、InGaAsP歪み量井戸活性層/InP基板を用いる1480nm近傍など)レーザなどの通信用半導体レーザ装置などの、特に高出力動作が求められる多用な装置を挙げることができる。また、通信用レーザでも、円形に近いレーザはファイバーとの結合効率を高める点で有効である。また、遠視野像が単一ピークであるものは、情報処理や光通信などの幅広い用途に好適なレーザとして供することができる。
【0072】
また、本発明の半導体発光装置は、半導体レーザ以外に半導体光増幅器、光検出器、光変調器、光スイッチなどの光素子およびこれらの集積装置についても応用が可能である。
さらに、本発明は半導体レーザ以外に端面発光型などの発光ダイオード(LED)としても応用可能である。
【0073】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、結晶成長はMOCVD法で行い、原料ガスとしてトリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMA)、アンモニア(NH3)を用い、ドーパントにCp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)およびシラン(SiH4)を用いた。また、以下の実施例で参照している図は、構造を把握しやすくするために敢えて寸法を変えている部分があるが、実際の寸法は以下の文中に記載されるとおりである。
【0074】
(実施例1)
図1は本発明の実施例に係るレーザ素子の形状を示す模式的な断面図でありリッジストライプに垂直な方向で切断した際の図を示すものである。以下、この図を基に実施例について説明する。
まず、(0001)Si面を有する4H−SiCまたは6H−SiC基板21上に1000℃で膜厚1μmのSiドープn型(3×1018/cm3)Al0.1Ga0.9Nバッファ層22を成長させた。
【0075】
エピタキシャル基板の全面に、膜厚10〜300nmのシリコン窒化(SiNx)膜を形成した。次に、フォトリソグラフィーにより、幅6μmのストライプ状のSiNxからなる電流阻止層23を(1−100)方向に350μm間隔で多数形成した。1000℃で膜厚4μmのSiドープn型(3×1018/cm3)GaN平坦化層24を成長させた。このとき、GaN平坦化層はSiNx電流阻止層上に直接成長せずに、バッファ層上を成長してきたGaNがSiNx電流阻止層上を両端部から中央部に向けて横方向に成長するようにした。具体的には、Ga供給量を減らすことにより、GaNの横方向成長速度を縦方向の成長速度の約3倍にすることが可能であったために、平坦なGaN層を成長することができた。
続いて、1050℃で膜厚1.2μmのSiドープn型(1X1018〜1×1019/cm3)Al0.1Ga0.9Nクラッド層からなるn側クラッド層25を成長させた。
【0076】
1050℃で膜厚0.1μmのアンドープGaNよりなるn側光ガイド層26を成長させた。次に、温度を800℃に保持して、膜厚4nmのアンドープIn0.15Ga0.85N井戸層27および膜厚10nmのアンドープIn0.02Ga0.98Nバリア層28を交互に複数層有する総膜厚50nmの多重量子井戸構造(MQW)の活性層29を成長させた。次に、温度を1050℃に上げ、p側光ガイド層よりもバンドギャップエネルギーが大きい、Mgドープp型(1X1019〜1×1020/cm3)Al0.2Ga0.8Nよりなる電子リーク抑制層30を25nmの膜厚で成長させた。続いて1050℃で、バンドギャップエネルギーがp側電子リーク防止層よりも小さい、アンドープGaNよりなるp側光ガイド層31を0.1μmの膜厚で成長させた。この層は、活性層の光ガイド層として作用する。
【0077】
続いて、1050℃で膜厚0.4μmのMgドープp型(1X1018〜1×1019/cm3)Al0.1Ga0.9N層よりなるp側第1クラッド層33、膜厚0.01μmのp型(5×1018〜5×1019/cm3)GaNからなる酸化防止層34を成長させた。
次に、エピタキシャル基板の全面に、膜厚20nmのシリコン窒化(SiNx)膜35を形成した。フォトリソグラフィーにより、形成したSiNx膜に幅3μmのストライプ状の開口部36を(1−100)方向に多数形成した。このとき、電流阻止層23とSiNx膜のストライプ状開口部36の位置関係は、図2の上面図に示す関係になるようにした。
【0078】
この後、1050℃で膜厚0.8μmのMgドープp型(1X1018〜1×1019/cm3)Al0.1Ga0.9N層よりなるリッジ形状のp側第2クラッド層37を成長させた。このとき、このリッジ直下が電流注入領域となり、結晶欠陥が活性層の発光領域にまで伸びてこなくなる傾向にあるため、素子を長寿命として信頼性を向上させることができた。最後に、1050℃で、p側第2クラッド層の全面を覆うように、膜厚0.5nmのMgドープp型(5X1019〜1×1020/cm3)GaNよりなるp側コンタクト層38を成長させた。
【0079】
次に、n型SiC基板を研磨して100μmとした後、p側コンタクト層のリッジ最表面のほぼ全面にp側電極39を形成し、一方、n型SiC基板表面にn側電極40を形成した。この電極を形成したウエハを、ストライプ状の電極に垂直な方向にバー状に劈開して、劈開面(1−100面)に共振器を作製し、共振器面に誘電体多層膜を形成した。
【0080】
このレーザ素子のSiC基板の裏面側をヒートシンクに設置し、それぞれの電極をワイヤーボンディングして、室温でレーザ発振を試みたところ、室温において連続発振を示し、良好なレーザ特性が歩留まりよく得られた。素子寿命は、電流阻止層およびGaN平坦化層を形成しなかった素子と比較して、約2倍程度向上した。
【0081】
(実施例2)
本実施例では、実施例1とは異なる方法で電流阻止層を形成し、酸化防止層34を形成しなかった。本実施例で形成したレーザ素子の基本的な構成は実施例1と同じである。
【0082】
まず、(0001)Si面を有する4H−SiCまたは6H−SiC基板21上に、1000℃で膜厚0.5μmのSiドープn型(1〜5×1018/cm3)Al0.1Ga0.9Nバッファ層22、膜厚0.5μmのMgドープp型(1〜5×1018/cm3)あるいはアンドープ(高抵抗)GaN電流阻止層23を順次成長させた。
【0083】
次に、エピタキシャル基板の全面に、厚さ20nmのシリコン窒化(SiO2)膜を形成した。次に、フォトリソグラフィーにより、幅6μmのストライプ状のSiO2膜を(1−100)方向に350μm間隔で多数形成した。SiO2をマスクとして、p型あるいはアンドープGaN電流阻止層を反応性イオンエッチング(RIE)あるいはウェットエッチングによりエッチングし、n型バッファ層の表面あるいは途中まででエッチングを停止し、SiO2マスクを除去した。これによって、幅6μmの電流阻止層23が形成された。
【0084】
この後、1000℃で膜厚4μmのSiドープn型(3×1018/cm3)GaN平坦化層24を成長させた。このとき、GaN平坦化層はSiNx電流阻止層上に直接成長せずに、バッファ層上を成長してきたGaNがSiNx電流阻止層上を両端部から中央部に向けて横方向に成長するようにした。具体的には、Ga供給量を減らすことにより、GaNの横方向成長速度を縦方向の成長速度の約3倍にすることが可能であったために、平坦なGaN層を成長することができた。
【0085】
続いて、1050℃で膜厚1.2μmのSiドープn型(1X1018〜1×1019/cm3)Al0.1Ga0.9Nクラッド層からなるn側クラッド層25を成長させた。
【0086】
1050℃で膜厚0.1μmのアンドープGaNよりなるn側光ガイド層26を成長させた。次に、温度を800℃に保持して、膜厚4nmのアンドープIn0.15Ga0.85N井戸層27および膜厚10nmのアンドープIn0.02Ga0.98Nバリア層28を交互に複数層有する総膜厚46nmの多重量子井戸構造(MQW)を有する活性層29を成長させた。次に、温度を1050℃に上げ、p側光ガイド層よりもバンドギャップエネルギーが大きい、Mgドープp型(1X1019〜1×1020/cm3)Al0.2Ga0.8Nよりなる電子リーク抑制層30を25nmの膜厚で成長させた。続いて1050℃で、バンドギャップエネルギーがp側電子リーク防止層よりも小さい、アンドープGaNよりなるp側光ガイド層31を0.1μmの膜厚で成長させた。この層は、活性層の光ガイド層として作用する。
【0087】
続いて、1050℃で膜厚0.4μmのMgドープp型(1X1018〜1×1019/cm3)Al0.1Ga0.9N層よりなるp側第1クラッド層33を成長させた。
次に、エピタキシャル基板の全面に、膜厚20nmのシリコン窒化(SiNx)膜35を形成した。フォトリソグラフィーにより、形成したSiNx膜に幅3μmのストライプ状の開口部36を(1−100)方向に多数形成した。このとき、電流阻止層23とSiNx膜のストライプ状開口部36の位置関係は、図2の上面図に示す関係になるようにした。
【0088】
この後、1050℃で膜厚0.8μmのMgドープp型(1X1018〜1×1019/cm3)Al0.1Ga0.9N層よりなるリッジ形状のp側第2クラッド層37を成長させた。このとき、このリッジ直下が電流注入領域となり、結晶欠陥が活性層の発光領域にまで伸びてこなくなる傾向にあるため、素子を長寿命として信頼性を向上させることができた。最後に、1050℃で、p側第2クラッド層の全面を覆うように、膜厚0.5nmのMgドープp型(5X1019〜1×1020/cm3)GaNよりなるp側コンタクト層38を成長させた。
【0089】
次に、n型SiC基板を研磨して100μmとした後、p側コンタクト層のリッジ最表面のほぼ全面にp側電極39を形成し、一方、n型SiC基板表面にn側電極40を形成した。この電極を形成したウエハを、ストライプ状の電極に垂直な方向にバー状に劈開して、劈開面(1−100面)に共振器を作製し、共振器面に誘電体多層膜を形成した。
【0090】
このレーザ素子のSiC基板の裏面側をヒートシンクに設置し、それぞれの電極をワイヤーボンディングして、室温でレーザ発振を試みたところ、室温において連続発振を示し、良好なレーザ特性が歩留まりよく得られた。素子寿命は、電流阻止層およびGaN平坦化層を形成しなかった素子と比較して向上した。特に約30mW以上の高出力動作においては、素子寿命は大幅に向上した(約3〜10倍)。
【0091】
【発明の効果】
本発明の半導体発光装置により、従来困難であった高出力かつ高信頼のGaN系半導体レーザの作製が可能となる。また、本発明は、特に導電性基板に対して充分効力があるため、n側に電極を形成したGaN系レーザの作製が可能となり、工業的的にも非常に有力な手法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の半導体発光装置の具体的態様を示す図である。
【図2】 本発明の半導体発光装置の電流注入領域と電流阻止層の関係を示す上面図である。
【図3】 本発明の半導体発光装置のストライプ状開口部の態様を示す上面図である。
【符号の説明】
21: 基板
22: バッファ層
23: 電流阻止層
24: 平坦化層
25: 第1導電型クラッド層
26: 光ガイド層
27: 井戸層
28: バリヤ層
29: 活性層
30: 電流リーク抑制層
31: 光ガイド層
32: 発光層
33: 第2導電型第1クラッド層
34: 酸化防止層
35: 電流ブロック層
36: ストライプ状開口部(電流注入領域)
37: 第2導電型第2クラッド層
38: コンタクト層
39: 電極
40: 電極
W1: 端部幅
W2: 中央部幅
Claims (15)
- 基板、該基板上に形成された第1導電型クラッド層、該第1導電型クラッド層上に形成された活性層、該活性層の上に形成された第2導電型第1クラッド層、該第2導電型第1クラッド層上に形成されたストライプ状の電流注入領域を有する半導体発光装置において、
該基板と該第1導電型クラッド層との間に電流阻止層が形成されており、該電流阻止層は、その下の基板または層の表面に対して突出しているとともに、該電流注入領域と対向しており、
該電流阻止層の上には、該第1導電型クラッド層および該第2導電型第1クラッド層よりも低い抵抗率を有する平坦化層が該電流阻止層に隣接して形成されていることを特徴とする半導体発光装置。 - 前記電流注入領域の対向域全体に前記電流阻止層が形成されていること特徴とする請求項1に記載の半導体発光装置。
- 前記電流注入領域が電流ブロック層に挟まれた開口部からなり、前記電流ブロック層に挟まれた領域に第2導電型第2クラッド層が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体発光装置。
- 前記電流ブロック層の屈折率が前記第2導電型第2クラッド層の屈折率よりも低いことを特徴とする請求項3に記載の半導体発光装置。
- 前記電流阻止層がアモルファス層であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
- 前記平坦化層がGaN層であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
- 前記活性層が少なくともGaおよびNを構成元素として含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
- 前記活性層が、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、または窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
- 前記基板が導電性基板であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
- 前記導電性基板が窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、炭化珪素(SiC)、酸化亜鉛(ZnO)、ガリウム酸リチウム(LiGaO2)、スピネル(MgAl2O4)、シリコン(Si)、燐化ガリウム(GaP)、または砒化ガリウム(GaAs)からなることを特徴とする請求項9に記載の半導体発光装置。
- 前記基板がサファイア(Al 2 O 3 )であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
- 前記半導体発光装置が半導体レーザであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
- 請求項1に記載の半導体発光装置の製造方法であって、
前記平坦化層を両端部から中央部に向けて横方向に成長させる工程を含むことを特徴とする半導体発光装置の製造方法。 - 前記平坦化層がGaNからなることを特徴とする請求項13に記載の半導体発光装置の製造方法。
- 前記GaNの横方向の成長速度を縦方向の成長速度の約3倍にすることを特徴とする請求項14に記載の半導体発光装置の製造方法。
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