JPWO2005029912A1 - 超音波振動子を用いた超音波流量計 - Google Patents

超音波振動子を用いた超音波流量計 Download PDF

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明久 足立
佐藤 真人
真人 佐藤
橋本 雅彦
雅彦 橋本
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Abstract

ケース(4)と圧電体(6)の熱膨張係数の違いを接着剤(7)が伸縮することにより緩和する構成としてあり、ケース(4)と圧電体(6)の接続剥離や圧電体(6)の破損することを妨ぐことができる。この結果屋外で使用する環境下においても長期間にわたり超音波振動子を使用することができる。

Description

本発明は、超音波により気体や液体の流量や流速の計測を行うことができる超音波振動子及びそれを用いた超音波流量計に関するものである。
従来この種の超音波流量計に用いる超音波振動子としては図7に示すように、圧電セラミック1を金属振動板2にロー材3でロー付けしていた(特開平4−309817号公報参照)。
超音波流量計は各種プラントのガス/液体の流量監視あるいは家庭用ガスメータとして用いられる場合があり、これらの場合には屋外に設置されることがある。超音波流量計が屋外に設置された場合に、特に夏期には夜明け前に20℃から25℃である機器温度が、日の出とともに短時間で上昇し、直射日光にさらされた設置条件では機器そのものが60℃から70℃に温度上昇に容易に上昇する。また、冬期に−20℃以下の寒冷地に設置される場合も直射日光があたる場合には、容易に数10℃の温度上昇が発生する。図8は屋外環境に設置された超音波流量計の1日分の温度変化の1例を表したものであり、超音波流量計には、これらの温度変化に対して極めて長期にわたる安定した計測性能が求められ、例えば家庭用のガスメータの場合には、10年間メンテフリーで動作することが望ましい。
特に、超音波流量計の主要デバイスである超音波振動子の温度変化に対する耐久性は、計測システム全体に重大な影響を持つ。超音波振動子は従来の構成のように圧電体とケースその他の構成部品を接着あるいは接合によりケースその他の部品と一体化したものが一般的であり、これらの接着部分あるいは接合部分の構成が温度変化に対するデバイスの耐久性を決定する主要な部分である。これらを評価する手法としては、熱負荷の繰り返し試験(以下熱衝撃試験という)が行われる。この試験は例えば80℃と−40℃の温度を各30分ごとに繰り返し、超音波振動子に対して熱負荷を与えるものである。
しかしながら上記従来の構成では圧電セラミック1が金属振動板2にロー付けされているため、熱負荷の繰り返し試験(以下、熱衝撃試験という)を行うと、金属振動板2と圧電セラミック1の熱膨張係数が異なるため、金属振動板2と圧電セラミック1の接着部が剥離する、あるいは圧電セラミック1が破損するという課題を有していた。
本発明の目的は、熱衝撃試験に耐えうる接着が可能で、信頼性に優れた超音波振動子及びそれを用いた超音波流量計を提供することである。
本発明によれば、圧電体と、
天部と側壁部を有する金属製の有天ケースより構成される被接着固定体と、
上記圧電体は上記被接着固定体の上記天部の内壁面に固定されかつ上記圧電体と上記被接着固定体との線膨張係数の違いを緩和させるように伸縮する線膨張緩和機能を有する接着剤とを備える超音波振動子を提供するものである。
よって、従来の課題を解決することができ、本発明の超音波振動子は、圧電体と被接着固定体の線膨張係数の違いを圧電体と被接着固定体の固定に用いる接着剤が伸縮することにより緩和させることができる。
また、本発明の超音波振動子は、熱衝撃試験による圧電体と被接着固定体の接着部の剥離や圧電体の破損を防ぐことが可能となり、屋外での環境下においても長期間にわたり超音波振動子を使用することができる。
また、本発明によれば、流れている被測定流体の流量を測定する流量測定部と、
この流量測定部に設けられて上記被測定流体に対して超音波を送受信する本発明の1対の超音波振動子と、
上記1対の超音波振動子間の伝搬時間を計測する計測部と、
上記計測部からの信号に基づいて上記被測定流体の流量を算出する流量演算部とを備えた超音波流量計を提供する。
本発明のこれらと他の目的と特徴は、添付された図面についての好ましい実施形態に関連した次の記述から明らかになる。この図面においては、
[図1]本発明の第1実施形態の超音波振動子の断面図であり、
[図2]本発明の第1実施形態の超音波振動子の接着剤を塗布した圧電体の斜視図であり、
[図3](a),(b),(c),(d),(e),(f),(g)は本発明の第1実施形態の超音波振動子の製造工程図であり、
[図4](a),(b)は本発明の第1実施形態の超音波振動子の接着剤塗布工程図であり、
[図5](a),(b),(c)は本発明の第1実施形態の超音波振動子の接着剤塗布工程図であり、
[図6]本発明の第1実施形態の超音波振動子に用いる超音波流量計の一部断面図を含む構成図であり、
[図7]従来の超音波振動子の断面図であり、
[図8]屋外環境に設置された超音波流量計の1日分の温度変化の1例を表す超音波流量計の温度と時間とのグラフであり、
[図9A]上記第1実施形態にかかる超音波振動子において、接着剤の代わりにケースと圧電体がリジットに接合されている比較例において、常温状態から高温にした場合の温度変化による超音波振動子の変形状態を表す断面図であり、
[図9B]上記第1実施形態にかかる超音波振動子において、接着剤の代わりにケースと圧電体がリジットに接合されている比較例において、常温状態から低温にした場合の変形状態を表す断面図であり、
[図10A]常温から高温にした状態での接着剤の変形による熱変形緩和の状態を表す模式図であり、
[図10B]常温から低温にした状態での接着剤の変形による熱変形緩和の状態を表す模式図であり、
[図11A]内部ひずみの評価方法において、硬化前の接着剤が耐熱性の高分子フィルムに塗布された状態を示す模式図であり、
[図11B]上記内部ひずみの評価方法、において加熱硬化後の接着剤が耐熱性の高分子フィルムに塗布された状態を示す模式図であり、
[図12]上記内部ひずみの評価方法において、残留内部ひずみとH/Lとの関係を示すグラフであり、
[図13]引っ張り試験用のサンプルを引っ張り試験器にセットした状態を表す模式図であり、
[図14]本発明の第2実施形態の超音波振動子の断面図である。
本発明の記述を続ける前に、添付図面において同じ部品については同じ参照符号を付している。
以下、図面を参照して本発明の種々の実施形態を説明する前に、本発明の種々の態様について説明する。
本発明の第1態様によれば、圧電体と、
天部と側壁部を有する金属製の有天ケースより構成される被接着固定体と、
上記圧電体は上記被接着固定体の上記天部の内壁面に固定されかつ上記圧電体と上記被接着固定体との線膨張係数の違いを緩和させるように伸縮する線膨張緩和機能を有する接着剤とを備える超音波振動子を提供するものである。また、圧電体は、有天ケース天部の内壁面に接着剤で固定することにより、有天ケースの天部の変形量が低減できるため、熱衝撃試験に対する耐久性の高い超音波振動子を得ることができる。
よって、接着剤は圧電体と被接着固定体との線膨張係数の違いを緩和させるように伸縮するものであるため、熱衝撃試験に対する耐久性の高い超音波振動子を得ることができる。
本発明の第2態様によれば、上記接着剤は、鉛筆硬度試験におけるHから5Bの鉛筆硬度の硬さを有する第1の態様に記載の超音波振動子を提供する。
本発明の第3態様によれば、上記接着剤は、上記接着剤が長方形状に塗布形成されるときの長い辺の長さに対する、長方形状に塗布形成された上記接着剤の中央部に対する端部の反りの高さ寸法の比が大略5%以下である第2の態様に記載の超音波振動子を提供する。
この発明によれば、反りの高さ寸法の比が大略5%以下である接着剤を使用することにより、圧電体や被接着固定体の熱応力の動きに追従することが可能となるため、熱衝撃試験に対する耐久性の高い超音波振動子を得ることができる。
本発明の第4態様によれば、上記接着剤は、5から30MPaの接着強度を有する第2の態様に記載の超音波振動子を提供する。
本発明の第5態様によれば、上記接着剤は、40℃から120℃のガラス転移点を有する第2の態様に記載の超音波振動子を提供する。
本発明の第6態様によれば、上記接着剤は、鉛筆硬度試験におけるHから5Bの鉛筆硬度の硬さを有し、上記接着剤が長方形状に塗布形成されるときの長い辺の長さに対する、長方形状に塗布形成された上記接着剤の中央部に対する端部の反りの高さ寸法の比が大略5%以下であり、5から30MPaの接着強度を有し、40℃から120℃のガラス転移点を有する第1の態様に記載の超音波振動子を提供する。
本発明の第7態様によれば、上記接着剤は、上記被接着固定体や上記圧電体よりも軟質である第1〜6のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子を提供する。
この発明によれば、上記接着剤は、上記被接着固定体や上記圧電体よりも軟質であるため、膨張収縮の繰り返し応力を吸収させることが可能となるため、熱衝撃試験に対する耐久性の高い超音波振動子を得ることができる。
本発明の第8態様によれば、上記接着剤は平均2〜3μmの厚さの層で構成される第1〜6のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子を提供する。
この発明によれば、接着剤が平均2〜3μmの厚さの薄い層で構成されるため、接着剤中に蓄積される内部応力を低減できるため、熱衝撃試験に対する耐久性の高い超音波振動子を得ることができる。
本発明の第9態様によれば、上記圧電体は、上記圧電体が固定される上記被接着固定体の上記天部の上記内壁面の厚み方向沿いに形成されるスリットを有している第1〜6のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子を提供する。
本発明の第10態様によれば、上記有天ケースの開放端に固定される端子板をさらに備え、上記有天ケースと上記端子板で上記圧電体を封止する第1〜6のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子を提供する。
この発明によれば、圧電体と、圧電体と上記有天ケースの天部の内壁面との間の接着剤とが、水分や光あるいは劣化を促進する化学物質等に接触することを防止できるため、耐久性の高い超音波振動子を得ることができる。
本発明の第11態様によれば、流れている被測定流体の流量を測定する流量測定部と、
この流量測定部に設けられて上記被測定流体に対して超音波を送受信する第1〜10のいずれか1つの態様に記載の1対の超音波振動子と、
上記1対の超音波振動子間の伝搬時間を計測する計測部と、
上記計測部からの信号に基づいて上記被測定流体の流量を算出する流量演算部とを備えた超音波流量計を提供する。
この発明によれば、屋外での環境下においても長期間にわたり使用可能な超音波流量計を得ることができる。
以下、図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態の超音波振動子の断面図を示すものである。図2は本発明の第1実施形態の超音波振動子の圧電体の斜視図である。
図1及び図2において、100は超音振動子、4は被接着固定体の一例であって鍔付の金属製の有天円筒状ケース、5は上記ケース4の天部の内壁面、6は対向する面に電極をそれぞれ有する直方体形状の圧電体、7はケース4の天部の内壁面5と圧電体6の一方の電極が形成された面とを接着する接着剤、8はケース4の鍔であるケース支持部、9はケース4の開口部を封止するようにケース4の開口部(開放端)に嵌合されてケース4のケース支持部8が固定される端子板、10は上記圧電体6との導通をとる外部端子であり、10aは端子板9の貫通孔9aを貫通して圧電体6の他方の電極に電気的に接続される信号用外部端子、10bは端子板9に電気的に接続される接地用外部端子、11は端子板9の貫通孔9a内に充填されるように配置されて上記のケース8と端子板9と信号用外部端子10aの短絡を防止するための絶縁部、12は上記信号用端子10aと圧電体6の他方の電極とを導通させる信号ケーブル、101は圧電体6の一方の電極が形成された電極面から該電極面と垂直に厚み方向沿いに延びて所定間隔で形成された振動モード制御のためのスリットである。この例では、スリット101は3個設けられている。
以上の超音波振動子100について、図1、図2を用いて構造の詳細を説明する。
一例として、ケース4は有天筒状のステンレス、圧電体6は圧電セラミックス、端子板9は鉄、そして接着剤7は熱硬化性エポキシ系樹脂を用いて構成されている。ケース4と圧電体6は接着剤7により接続されており、圧電体6の接着面には、例えば焼付け銀やスパッタ等によって電極が形成されている。ケース4と圧電体6の電極面は接着剤7により接着されていると同時に、ケース4及び圧電体6の電極面の表面粗さ程度の厚み寸法となるように接着剤7を形成することにより、ケース4及び圧電体6の電極面が接触する点を多数形成し、両者の間の電気的な導通状態を確保する。ケース4は、ケース支持部8及び端子板9を介して、接地用外部端子10bと導通している。一方、圧電体6の接着面とは反対の電極は、信号ケーブル12により、信号用外部端子10aと接続されており、信号用外部端子10aと接地用外部端子10bは、ともに端子板9に設けられるが、電気的な短絡を防止するために信号用外部端子10aは絶縁部11により端子板9に固定されている。
圧電体6には、振動モードを制御するためのスリット101が設けられており、図2に示されるように、スリット101は、ケース4への接着面(接地電極面)(図2のクロスハッチング部分参照)が4個の同一の長方形の領域に分割された構造になっている。スリット101は、圧電体6の深さ方向(圧電体6が固定されるケース4の上記天部の上記内壁面の厚み方向)に60%以上、理想的には80%以上に形成されて圧電体6を分割する構成となっている。これは以下の理由による。通常、圧電体6の厚み方向の寸法は、使用される周波数における超音波の波長を基準寸法としてその1/2に設定される。圧電体6の幅方向寸法が、波長以上になる場合には超音波は厚み方向に共振振動(縦振動モード)するが、ポアソン比(厚み方向に伸縮すると幅方向に伸縮を誘発する)の関係で音波が幅方向にも伝搬して圧電体6の側面で反射することにより複雑な幅方向の振動モードを作り、縦振動モードを阻害する。厚み方向に共振する場合には、厚みの中央付近が最もポアソン比の影響が大きいため、少なくとも中心以上で60%程度の分割が必要で、理想的に幅方向への伝搬をほぼ0とするためには、80%以上を分割することが必要である。
このようなスリット101により、音波の放射及び受波を行う縦振動モード励起の高効率化が達成され、不要な横方向の振動モードが抑制される。このようにスリット101を有する構成とすることにより、低電圧駆動が可能になり、例えば家庭用ガスメータに使用される場合において、電池駆動で10年間メンテフリーのガスメータが実現できる。
(超音波振動子の動作)
以上のような構成において、超音波振動子100の動作について以下に説明する。
駆動振動が信号用外部端子10aより超音波振動子100に印加される。駆動信号としては、圧電体6の共振周波数付近の周波数を含むバースト波が多く用いられており、上記駆動信号により圧電体6に共振周波数の振動が励起される。圧電体6は、スリット101の効果により不要な横方向の結合振動の励起を抑制し、音波放射方向と振動方向が直交する縦振動が高効率に励起され、発生した機械振動により接着剤7及びケース4を介して、ケース4に対向した液体あるいはガス中に超音波が送波される。受波時には、ケース4、接着剤7を介して到来する音波が圧電体6に伝達され、圧電体6に機械振動が励起する。励起された機械振動により、圧電体6の対向する電極間に電圧が発生して受波信号となり、信号ケーブル12及び信号用外部端子10aを介して、例えば、超音波流量計の計測部や流量演算部に伝達されて処理される。
(線膨張係数の違いから、硬さの選定)
一例として、ケース4をステンレスと圧電体6をPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)系の圧電セラミックとして超音波流量計を構成する場合、そのような超音波流量計が屋外で使用される温度範囲において、ケース4の線膨張係数は17.8ppm/℃程度、圧電体4の線膨張係数は7.8ppm/℃程度となり、ケース4の線膨張係数が圧電体6よりも50%以上大きくなる。したがって、本発明の上記第1実施形態にかかる超音波振動子及びこれを用いた超音波流量計を屋外環境で長期に安定して動作させるためには、ケース4と圧電体6の間に介在し両者を接合している接着剤7の選定が重要である。
本発明の上記第1実施形態にかかる圧電体6では、縦振動モード励起の高効率化を目的として振動方向にスリット101を持つ構成になっているため、通常のバルク状態(言い換えれば、スリットが無い直方体形状の状態)に比べて、ケース4との接着面付近の強度や、スリット101により分割された柱状構造をつなぐ共通部分の強度が低下することは避けられない。したがって、通常のバルク状の圧電体を使用する場合よりも接着剤の選定が重要になる。
図9A,図9Bは、上記第1実施形態にかかる超音波振動子100において、接着剤7の代わりにケース4と圧電体6がリジットに例えばロー付けなどにより接合されている比較例の場合の温度変化による超音波振動子100の変形の様子をそれぞれ表したものであり、図9Aは常温状態から高温にした場合の変形状態、図9Bは常温状態から低温にした場合の変形状態を表す。ケース4を形成するステンレスと圧電体6である圧電セラミックの線膨張係数の違いにより、高温状態ではケース4が凸状態に変形し、圧電体6はスリット101の間隔が広げられる方向のモーメントを受ける。また、低温状態ではケース4が凹状態に変形し圧電体6はスリット101の間隔が狭められる方向にモーメントを受ける。これらの変形は、圧電体6をケース4から剥離させる方向の力であり、接合力が強い場合には脆性材料である圧電セラミックからなる圧電体6を変形させる。圧電セラミックの抗折強度は60MPaから100MPaであり、その場合の歪量はおよそ300ppmから500ppm程度である。温度変化50℃の場合、ステンレスと圧電セラミックの歪量の差はおよそ500ppmであり、接合部付近やスリット101の終端付近の共通部分では抗折強度を超える応力が発生し圧電セラミックの破壊を発生させる可能性が高い。
したがって、上記現象を回避するために、リジットに固定するのではなく、上記線膨張係数の違いを緩和させる機能(線膨張緩和機能)を有する接着剤7を使用する必要がある。
図10A,図10Bは、接着剤7の変形による熱変形緩和の状態を表す模式図であり、図10Aは常温から高温にした状態、図10Bは常温から低温にした状態を示している。図10A,図10Bではケース4は天井部分102だけを代表して示している。図10A,図10Bに示すように、線膨張係数の大きなケース4の変形を接着剤7が変形することにより吸収し、線膨張係数の小さな圧電体6に対する応力の発生を抑制する。すなわち、ケース4と圧電体6の熱変形の差を吸収できるようにケース4と圧電体6よりも軟質な材料を接着剤7として使用することにより、温度変化に対して安定な超音波振動子100が実現できる。接着剤7の硬度に関してはメーカーのカタログデータを参照できるが、硬化条件や、接着条件により硬度が変化するため、実際の硬化条件及び接着条件などを考慮してサンプルを試作し実測することが望ましい。
接着剤などの薄い膜の硬度を評価する簡便な試験として、種々の硬さの鉛筆で線を引いて線が引けるか否かで硬度を試験する鉛筆硬度試験(JISK5600−5−4(1999)/ISO/DIS15184)が使用できる。本発明の上記第1実施形態で使用する接着剤7は、鉛筆硬度の硬さの範囲がHから5Bを基本とし、HBから2B以内のものが最適である。鉛筆硬度の硬さの範囲がHより硬い場合には、熱衝撃を受けた時の反りが大きくなりすぎるため好ましくない。鉛筆硬度の硬さの範囲が5Bより柔らかいと、接着強度が小さくなりすぎる可能性があり、好ましくない。そこで、特に、鉛筆硬度の硬さの範囲がHBから2B以内とすれば、接着強度が小さくなりすぎず、かつ、熱衝撃を受けた時の反りも小さいため、特に温度変化の大きい(例えば−30℃から60℃の温度変化のある)屋外環境下での長期間(例えば最低10年間)の使用時に高い信頼性を得ることができて、より好ましい。
(残留応力に対する選定)
接着剤7を選定する場合に考慮すべき他の点として、接着剤7の硬化収縮に伴う内部ひずみがある。内部ひずみが残留することにより内部応力が発生し、常温状態においても圧電体6やケース4に変形が発生し、温度変化に対する安定性が低下する。熱硬化性のエポキシ樹脂を接着剤7として使用する場合、エポキシ樹脂自体は、接着剤としては硬化収縮が少なく10%以下であるが、一般にひずみが発生しており、また硬化条件や接着条件によって変化する。したがって、実際の硬化条件及び接着条件などを考慮してサンプルを試作し実測することが望ましい。この評価方法として、耐熱性のフィルムに接着剤を塗布して加熱硬化させ、フィルムの全体の反り量を評価する方法が使用できる。図11A,図11Bはこの内部ひずみの評価方法を説明するための模式図であり、図11A,図11Bにおいて、104は耐熱性の高分子フィルム、103は内部ひずみ評価用の接着剤である。図11Aは硬化前の接着剤103が耐熱性の高分子フィルム104に塗布された状態であり、図11Bは加熱硬化後の接着剤103が耐熱性の高分子フィルム104に塗布された状態である。接着剤103が硬化収縮するために、高分子フィルム104に反りが発生し、フィルム試料全体が湾曲する。今回は、70mmx50mmの長方形をした130μmの厚みのポリイミドのシートに、評価する接着剤を厚さ80μmでほぼ全面に(60mmx40mmの長方形に)塗布し加熱硬化させた後に、ポリイミドのシートに発生した反りの高さHを評価した。
高分子フィルム104のシートの長さ(長方形状のシートの長い辺の長さ)をL、反りの高さ(シートの中央部に対する端部の反りの高さ)をHとおくと、反りの曲率半径を求めることにより、接着剤103の内部ひずみを推定できる。図12は、換算した曲率半径から、H/Lを横軸にして対応する接着剤の厚み1μmあたりの残留内部ひずみを換算したものである。曲率半径の換算は以下のようにして行う。すなわち、耐熱高分子フィルム104の接着剤塗布面が収縮せず(中性面)であり、曲率半径はRとすると、次式が成立し、曲率半径が求められる。
Cos(L/2R)=1−H/R
ここで、Hは反り高さ、Lは長方形の長手方向の長さを表す。このときの残留内部歪は接着剤の層の厚みをTとすると、T/Rで表される。
図12より、H/Lの値が20%以上では、接着剤の層が10μmの場合に残留内部ひずみが250ppm程度となり、圧電セラミックの抗折強度時のひずみである300ppmにほぼ達することから、接着剤7としては、H/Lが10%以下、望ましくは大略5%以下の材料を選定することが好ましい。このようにH/Lが大略5%以下の材料を選定すれば、特に温度変化の大きい(例えば−30℃から60℃の温度変化のある)屋外環境下での長期間(例えば最低10年間)の使用時に高い信頼性を得ることができて、より好ましい。
(接着剤厚み及び接着強度)
さらに、接着剤7を選定する場合に考慮すべき他の点として、接着強度がある。接着強度は、超音波振動子100の長期にわたる安定性を確保することに関係する。同時に本発明の第1実施形態における超音波振動子100の構造上の特徴として、圧電体6とケース4との接着状態を制御して部分的な導通を取ることにより、ケース4と端子板9を介して接地用外部端子10bとの導通を確保している。したがって、接着剤7自体は、ケース4と圧電体6の表面粗さ程度の厚みで十分な接着強度を発揮するものである必要がある。また、副次的な影響として接着剤7が厚さによって、超音波振動子100の本来の機能である超音波の送受信特性に大きく影響する。したがって、接着剤7の厚さは圧電体6とケース4の接着面の最大高さRzの和よりも薄いことが必要であり、望ましくは、平均高さRaの和程度がよい。
ここで、最大高さRzとは、JIS B 0601−2001に規定されている最大高さであって、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の山頂線と谷底線との間隔を粗さ曲線の縦倍率の方向に測定し、この値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。キズとみなされるような、並外れた高い山や低い谷のない部分から、基準長さだけ抜き取る。これに対して、平均高さRaは、算術平均高さであって、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜き取り部分の平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にy軸を取り、粗さ曲線をy=f(X)で表したときに、次の式
Figure 2005029912
によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。例えば、圧電体6の接着面を#1000のラップメッシュを使用して研磨仕上げした場合には、最大高さは5μm程度であり、平均高さは1μm程度である。ケース4の面粗さも同程度であり、接着剤7の厚さとしては、10μm以下、望ましくは2〜3μm程度がよい。
この場合に十分な接着強度が確保できるかどうかは、カタログデータ等から推定できるが、硬化条件や、接着条件により引っ張り強度が変化するため、実際の硬化条件及び接着条件などを考慮してサンプルを試作し実測することが望ましい。十分な接着強度が確保できるかどうかの評価の方法としては、引っ張り試験器を用いた引っ張り試験が適用できる。
図13は今回使用した引っ張り試験用のサンプルを表す模式図であり、105は引っ張り試験用冶具、106はアルミブロック、107は他の種類の接着剤である。アルミブロック106とケース4を、評価する接着剤7で超音波振動子100と同じ接着条件で接着し、さらに引っ張り試験器用冶具105で挟み込み両側からより強力な接着剤107で接着してサンプルを製作する。製作されたサンプルを引っ張り試験器にかけて、図13の矢印の方向に引っ張り試験器用冶具105で引っ張り、アルミブロック106とケース4との間の接着剤7に剥離が発生する時点の引っ張り応力を測定し、接着強度を評価した。接着強度は5から30MPaを基本とし、10MPa以上のものが適している。接着強度に関しては、通常の使用においては、5MPa以上であれば十分である。通常の超音波送波時における接着界面の圧力は1MPa以下である。しかしながら、ケースと圧電体が接着剤無しでリジットに接合された場合に温度変化を60℃程度(例えば20℃〜80℃)与えると、熱衝撃試験では、10MPa以上の応力が発生する。接着剤がこれらの応力発生を緩和し、実際には5MPa以下となるが、耐久性に対する安全率を考慮して、10MPa以上の接着強度が適している。また、あまり接着強度の高い接着剤は、一般に固く、線膨張係数の緩和作用が低下することがあるため、30MPa以下を基本とする。
(その他記述)
さらに、他の考慮すべき点として、ガラス転移点Tgがある。ガラス転移点Tgは厚さ約1.5mmのサンプルを硬化させ、既知の熱機械的分析法などで計測される。ガラス転移点Tgとしては40℃から120℃を基本とし、50℃から90℃以内のものが最適である。ガラス転移点Tgが40℃未満ではセンサの特性が不安定になりやすいためである。高分子材料では、ガラス転移点Tg以上では、分子構造がゴム状になる。ゴム状体での高分子材料は、超音波領域における損失が大きくなるので、センサ特性を考慮すると、通常はガラス転移点Tg以下のガラス状態で使用するのが適しているが、本発明の超音波送受波器のように、使用温度範囲が広く、特に高温まで使用するものについては、高温域でゴム状領域を使い各部の熱変形を緩和させると、耐久性が向上する。逆に、ガラス転移点Tgの高いものに関しては、高温まで硬いことからケースと圧電素子の線膨張係数を緩和する作用が小さく、また一般的に硬さも固くなる。したがって、ガラス転移点Tgには、40℃から120℃を基本として、50℃から90℃が最適である。
本発明の上記第1実施形態で使用する接着剤7を選定するために、AからFの7種類の接着剤を評価した結果及び、熱衝撃試験(−40℃と85℃を各30分ずつ行う試験)を100サイクル行った後の受信電圧の初期状態との比、ならびに電気容量の初期状態との比を表1に示す。
Figure 2005029912
鉛筆硬度B、反り試験ではほぼ0%、ガラス転移点Tg約59℃、接着強度11.1MPaであった接着剤Eを使用することにより、ケース4と圧電体6の接着剥離や圧電体6の破損をすることなく、熱衝撃試験を100サイクル経過した後でも受信電圧、及び電気容量とも劣化がみられず、耐久的に優れた超音波振動子を実現できた。
次に、本発明の上記第1実施形態の超音波振動子100の作成方法について図3(a)〜(g)を用いて説明する。圧電体6の接着剤塗布面に接着剤7を塗布する方法として、例えばスクリーン印刷方式や転写方式等が挙げられる。圧電体6は、圧電体固定治具13に装着する。圧電体固定治具13から出る圧電体6の段差は、0mmから0.2mmを基本とし、約0.1mmだけ圧電体6の方が高くなるように圧電体固定治具13を設計するか、図示していない段差調整板を設ける。圧電体固定治具13を印刷台14の上に固定し、その上にスクリーン15を被せる。このとき、圧電体6とスクリーン15の間には0mmから1.5mmの隙間tを設けることを基本とし、より好ましくは0.3mmから0.8mm以内のもので、例えば約0.5mm程度の隙間tを設けている。スクリーン15には、圧電体6の接着剤塗布部分にのみ接着剤7が塗布されるように他の部分にはマスキングを施してあり、スクリーン15の開口寸法としては、圧電体6の接着剤塗布部よりも片側で0mmから0.2mm小さいことを基本とし、例えば約0.1mm程度小さくしてある。次に、図3の(b)のように、スクリーン15の上に、図示していない脱泡機で空気を抜いた接着剤7を載せる。接着剤7の塗布はスキージ16で行われる。図3の(c)と(d)に示されるようにスキージ16は、圧電体6に対して垂直方向に、ある荷重をかけながら、圧電体6の接着剤塗布部の平面沿いに移動させることにより圧電体6に接着剤7を塗布させる。一度に接着剤7を塗布する圧電体6の数は1から25個程度で、塗布後の接着剤7の厚みが10から20μmの範囲で均一に塗布可能な数を選択する。次に、図3の(e)のように、接着剤7を塗布した圧電体6を、接着剤硬化治具17に載せ変える。なお、圧電体固定治具13を接着剤硬化治具17の一部品として使用してもかまわない。図3の(f)と(g)に示されるように、圧電体6の接着剤7の塗布面に上からケース4をかぶせてケース4の上から、加圧治具18の加圧部材18aで圧電体6に向けて一様に荷重をかける。例えば、既知のばね負荷式により荷重をかけ、この状態で接着剤7を硬化させる。このように接着剤7で接着されたケース4と圧電体6は、図1示にされるように、圧電体6の電極部と信号用外部端子10aとをリード線12によりそれぞれハンダ付けされる。端子板9は、ケース4のケース支持部8と電気溶接を行うことによりケース4に固定される。ケース4と端子板9を溶接することにより、電極のグランドになると同時に圧電体6を封止する役割を果たしている。このとき、圧電体6が収納される空間であって、かつ、ケース4と端子板9との間の封止される空間内にある空気を、乾燥した不活性ガスなどに置換させることで、圧電体6の電極部や接着剤7の劣化を防止することができる。
なお、圧電体6に接着剤7を塗布する別の手段としての転写方式としては、例えば接着剤7の厚みを10から20μmに均一にした部分から、図4(a)に示されるように転写ピン19で接着剤7を必要量だけ転写ピン19に取り、図4(b)に示されるように転写ピン19を圧電体6の塗布面に付けて、接着剤7を圧電体6の塗布面に塗布させることができる。また、代わりに、図5(a)に示されるように、ポリイミド板20などに、接着剤7を転写させる形状の分だけ凹加工を行って凹部20aを形成し、そして、図5(b)で示す如く接着剤7を凹部20aに埋め込み、図5(c)に示されるように、接着剤7が埋め込まれた凹部20aの上に、圧電体6を押し続けて、圧電体6の接着剤塗布面に凹部20aの接着剤7を転写することもできる。
以上のように作成された超音波振動子100を用いた超音波流量計について図6を用いて説明する。
流れている被測定流体の流量を演算して測定する流量測定部21には、被測定流体の通路21aを囲むように円形又は矩形筒状を構成するように側壁部22、23が設けられている。超音波振動子24、25は、送受波面が対向するように側壁部22、23に斜めに設けられた振動子取付穴26、27に固定される。被測定流体として、空気、水素、可燃性ガスのような気体や水、灯油、石油などの液体の流量を測定することを想定しているため、超音波振動子24、25と振動子取付穴26、27の間には気体あるいは液体が漏れ出さないようにシール材28、29を施してある。測定方法としては、例えば既知のシングアラウンド法を用いる。30は超音波振動子24、25で構成される送受信器間での超音波の伝搬時間を計測する計測部、31は計測部30からの計測結果を基に補正等を行い流量を演算して求める流量演算部である。
以下、シングアラウンド法を用いた場合の測定原理についてさらに詳細な説明を行う。まず、駆動用のバースト電圧信号を超音波振動子24より構成される第1の超音波送受波器に印加して、第1の超音波送受波器24から超音波バースト信号を放射すると、この超音波バースト信号は距離がLの伝搬経路を伝搬して、t時間後に、超音波振動子25より構成される第2の超音波送受波器25に到達する。第2の超音波送受波器25では、伝達して来た超音波バースト信号のみを高いS/N比で電気バースト信号に変換することができる。この電気バースト信号を電気的に増幅して、再び第1の超音波送受波器24に印加して、超音波バースト信号を放射する。この装置をシング・アラウンド装置と呼び、超音波パルスが超音波送受波器24から放射され、伝搬路を伝搬して、超音波送受波器25に到達するのに要する時間をシング・アラウンド周期といい、その逆数をシング・アラウンド周波数という。
図6おいて、管状の通路21aの中を流れる流体の流速をV、流体中の超音波の速度をC、流体の流れる方向と超音波パルスの伝搬方向の角度をθとする。第1の超音波送受波器24を超音波送波器、第2の超音波送受波器25を超音波受波器として用いたときに、超音波送受波器24から出た超音波パルスが超音波送受波器25に到達する時間であるシング・アラウンド周期をt、シング・アラウンド周波数fとすれば、次式(1)が成立する。
=1/t=(C+Vcosθ)/L ・・・(1)
逆に、第2の超音波送受波器25を超音波送波器として、第1の超音波送受波器24を超音波受波器として用いたときのシング・アラウンド周期をt、シング・アラウンド周波数fとすれば、次式(2)の関係が成立する。
=1/t=(C−Vcosθ)/L ・・・(2)
したがって、両シング・アラウンド周波数の周波数差Δfは、次式(3)となり、超音波の伝搬経路の距離Lと周波数差Δfから流体の流速Vを求めることができる。
Δf=f−f=2Vcosθ/L ・・・(3)
すなわち、超音波の伝搬経路の距離Lと周波数差Δfから流体の流速Vを求めることができ、その流速Vから流量を演算により求めて流量測定を行うことができる。
よって、屋外で使用する温度範囲において信頼性に優れた超音波振動子24、25を用いることにより、長期間屋外で使用しても超音波振動子24、25が破壊されることなく、耐久性のある超音波流量計を提供することができる。
なお、第1実施形態では、ケース4は形状を有天筒状としたが、平板や流量測定部21の外壁の平らな部分でも構わない。また、ケース4の材質をステンレスとしたが、アルミ、アルミダイキャスト等の金属でも良い。
(第2実施形態)
図14は本発明の第2実施形態の超音波振動子の断面図を示すものである。
図14において、120は被測定対象となる流体との音響的な整合をとり、超音波振動子を高効率化するための音響整合層である。他の構成は第1実施形態と同じである。
音響整合層120は、被測定対象物の流体によって材料が選択され、流体が液体の場合にはエポキシ樹脂などに各種のフィラーを混入したものや、ガラス、グラファイトなどの無機材料使用できる。流体が空気、都市ガスなどの場合には中空ガラス球を樹脂系材料でかためた複合材材料や、無機/有機の多孔質体で音響整合層120を形成することができる。音響整合層120は、超音波を発振する圧電体6と被測定流体の音響的な整合をとるもので、圧電体6の音響インピーダンスをZ、被測定流体の音響インピーダンスをZ、音響整合層102の音響インピーダンスをZとした場合に次式(4)を満足するように設計する。
>Z>Z ・・・(4)
また、圧電体6の発振する超音波の周波数に対して、1/4波長の厚みに設計することにより、超音波の送受信を効率化することができる。
音響整合層120を設ける場合には、音響整合層120の線膨張係数を考慮する必要がある。特に音響整合層120に樹脂材料あるいは各種フィラー等が混入した複合材料を用いた場合には、一般に線膨張係数がケース4のステンレス材料よりも大きいため、温度変化に伴う変形がより拡大される場合があるが、第1実施形態と同様に圧電体6とケース4の接着剤選定及び製作工法をとることにより、熱衝撃に耐えるセンサが構成できる。音響整合層120として、微小な中空ガラス球を混入したエポキシ樹脂の複合材料を用いた超音波振動子を試作した。圧電体6とケース4は第1実施形態と同様に表1の接着剤Eを選択した。また、音響整合層120とケース4は表1の接着剤Bを用いて試作を行った。試作した超音波振動子を熱衝撃試験(−40℃と85℃を各30分ずつ行う試験)にかけた結果、100サイクルを経過した後も、受信電圧の低下、及び電気容量の変化は測定されなかった。
以上のように、圧電体6とケース4を接着する接着剤7を適切に選定することにより、音響整合層102があっても温度変化に対して安定に動作する超音波振動子が実現でき、さらに音響整合層102を持つことにより送受信の高効率化が達成された。本超音波振動子を用いた超音波流量計は、S/Nが改善されことから、より高精度で温度安定性に優れたものとなる。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
以上のように、本発明にかかる超音波振動子及びそれを用いた超音波流量計は、熱衝撃試験による圧電体と被接着固定体の接着部の剥離や圧電体の破損を防ぐことができるため、屋外での環境下においても長期間にわたり超音波振動子を使用することが可能となり、都市ガスやLPガスの流量を測定するガスメータ、水道の水量を測定する水道メータ、燃料電池の水素や燃料ガスの流量測定装置、自動車に用いる距離センサ等の用途にも適用できる。
本発明は、超音波により気体や液体の流量や流速の計測を行うことができる超音波振動子及びそれを用いた超音波流量計に関するものである。
従来この種の超音波流量計に用いる超音波振動子としては図7に示すように、圧電セラミック1を金属振動板2にロー材3でロー付けしていた(特開平4−309817号公報参照)。
超音波流量計は各種プラントのガス/液体の流量監視あるいは家庭用ガスメータとして用いられる場合があり、これらの場合には屋外に設置されることがある。超音波流量計が屋外に設置された場合に、特に夏期には夜明け前に20℃から25℃である機器温度が、日の出とともに短時間で上昇し、直射日光にさらされた設置条件では機器そのものが60℃から70℃に温度上昇に容易に上昇する。また、冬期に−20℃以下の寒冷地に設置される場合も直射日光があたる場合には、容易に数10℃の温度上昇が発生する。図8は屋外環境に設置された超音波流量計の1日分の温度変化の1例を表したものであり、超音波流量計には、これらの温度変化に対して極めて長期にわたる安定した計測性能が求められ、例えば家庭用のガスメータの場合には、10年間メンテフリーで動作することが望ましい。
特に、超音波流量計の主要デバイスである超音波振動子の温度変化に対する耐久性は、計測システム全体に重大な影響を持つ。超音波振動子は従来の構成のように圧電体とケースその他の構成部品を接着あるいは接合によりケースその他の部品と一体化したものが一般的であり、これらの接着部分あるいは接合部分の構成が温度変化に対するデバイスの耐久性を決定する主要な部分である。これらを評価する手法としては、熱負荷の繰り返し試験(以下熱衝撃試験という)が行われる。この試験は例えば80℃と−40℃の温度を各30分ごとに繰り返し、超音波振動子に対して熱負荷を与えるものである。
しかしながら上記従来の構成では圧電セラミック1が金属振動板2にロー付けされているため、熱負荷の繰り返し試験(以下、熱衝撃試験という)を行うと、金属振動板2と圧電セラミック1の熱膨張係数が異なるため、金属振動板2と圧電セラミック1の接着部が剥離する、あるいは圧電セラミック1が破損するという課題を有していた。
本発明の目的は、熱衝撃試験に耐えうる接着が可能で、信頼性に優れた超音波振動子及びそれを用いた超音波流量計を提供することである。
本発明によれば、圧電体と、
天部と側壁部を有する金属製の有天ケースより構成される被接着固定体と、
上記圧電体は上記被接着固定体の上記天部の内壁面に固定されかつ上記圧電体と上記被接着固定体との線膨張係数の違いを緩和させるように伸縮する線膨張緩和機能を有する接着剤とを備える超音波振動子を提供するものである。
よって、従来の課題を解決することができ、本発明の超音波振動子は、圧電体と被接着固定体の線膨張係数の違いを圧電体と被接着固定体の固定に用いる接着剤が伸縮することにより緩和させることができる。
また、本発明の超音波振動子は、熱衝撃試験による圧電体と被接着固定体の接着部の剥離や圧電体の破損を防ぐことが可能となり、屋外での環境下においても長期間にわたり超音波振動子を使用することができる。
また、本発明によれば、流れている被測定流体の流量を測定する流量測定部と、
この流量測定部に設けられて上記被測定流体に対して超音波を送受信する本発明の1対の超音波振動子と、
上記1対の超音波振動子間の伝搬時間を計測する計測部と、
上記計測部からの信号に基づいて上記被測定流体の流量を算出する流量演算部とを備えた超音波流量計を提供する。
本発明の記述を続ける前に、添付図面において同じ部品については同じ参照符号を付している。
以下、図面を参照して本発明の種々の実施形態を説明する前に、本発明の種々の態様について説明する。
本発明の第1態様によれば、圧電体と、
天部と側壁部を有する金属製の有天ケースより構成される被接着固定体と、
上記圧電体は上記被接着固定体の上記天部の内壁面に固定されかつ上記圧電体と上記被接着固定体との線膨張係数の違いを緩和させるように伸縮する線膨張緩和機能を有する接着剤とを備える超音波振動子を提供するものである。また、圧電体は、有天ケース天部の内壁面に接着剤で固定することにより、有天ケースの天部の変形量が低減できるため、熱衝撃試験に対する耐久性の高い超音波振動子を得ることができる。
よって、接着剤は圧電体と被接着固定体との線膨張係数の違いを緩和させるように伸縮するものであるため、熱衝撃試験に対する耐久性の高い超音波振動子を得ることができる。
本発明の第2態様によれば、上記接着剤は、鉛筆硬度試験におけるHから5Bの鉛筆硬度の硬さを有する第1の態様に記載の超音波振動子を提供する。
本発明の第3態様によれば、上記接着剤は、上記接着剤が長方形状に塗布形成されるときの長い辺の長さに対する、長方形状に塗布形成された上記接着剤の中央部に対する端部の反りの高さ寸法の比が大略5%以下である第2の態様に記載の超音波振動子を提供する。
この発明によれば、反りの高さ寸法の比が大略5%以下である接着剤を使用することにより、圧電体や被接着固定体の熱応力の動きに追従することが可能となるため、熱衝撃試験に対する耐久性の高い超音波振動子を得ることができる。
本発明の第4態様によれば、上記接着剤は、5から30MPaの接着強度を有する第2の態様に記載の超音波振動子を提供する。
本発明の第5態様によれば、上記接着剤は、40℃から120℃のガラス転移点を有する第2の態様に記載の超音波振動子を提供する。
本発明の第6態様によれば、上記接着剤は、鉛筆硬度試験におけるHから5Bの鉛筆硬度の硬さを有し、上記接着剤が長方形状に塗布形成されるときの長い辺の長さに対する、長方形状に塗布形成された上記接着剤の中央部に対する端部の反りの高さ寸法の比が大略5%以下であり、5から30MPaの接着強度を有し、40℃から120℃のガラス転移点を有する第1の態様に記載の超音波振動子を提供する。
本発明の第7態様によれば、上記接着剤は、上記被接着固定体や上記圧電体よりも軟質である第1〜6のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子を提供する。
この発明によれば、上記接着剤は、上記被接着固定体や上記圧電体よりも軟質であるため、膨張収縮の繰り返し応力を吸収させることが可能となるため、熱衝撃試験に対する耐久性の高い超音波振動子を得ることができる。
本発明の第8態様によれば、上記接着剤は平均2〜3μmの厚さの層で構成される第1〜6のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子を提供する。
この発明によれば、接着剤が平均2〜3μmの厚さの薄い層で構成されるため、接着剤中に蓄積される内部応力を低減できるため、熱衝撃試験に対する耐久性の高い超音波振動子を得ることができる。
本発明の第9態様によれば、上記圧電体は、上記圧電体が固定される上記被接着固定体の上記天部の上記内壁面の厚み方向沿いに形成されるスリットを有している第1〜6のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子を提供する。
本発明の第10態様によれば、上記有天ケースの開放端に固定される端子板をさらに備え、上記有天ケースと上記端子板で上記圧電体を封止する第1〜6のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子を提供する。
この発明によれば、圧電体と、圧電体と上記有天ケースの天部の内壁面との間の接着剤とが、水分や光あるいは劣化を促進する化学物質等に接触することを防止できるため、耐久性の高い超音波振動子を得ることができる。
本発明の第11態様によれば、流れている被測定流体の流量を測定する流量測定部と、
この流量測定部に設けられて上記被測定流体に対して超音波を送受信する第1〜10のいずれか1つの態様に記載の1対の超音波振動子と、
上記1対の超音波振動子間の伝搬時間を計測する計測部と、
上記計測部からの信号に基づいて上記被測定流体の流量を算出する流量演算部とを備えた超音波流量計を提供する。
この発明によれば、屋外での環境下においても長期間にわたり使用可能な超音波流量計を得ることができる。
以下、図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態の超音波振動子の断面図を示すものである。図2は本発明の第1実施形態の超音波振動子の圧電体の斜視図である。
図1及び図2において、100は超音振動子、4は被接着固定体の一例であって鍔付の金属製の有天円筒状ケース、5は上記ケース4の天部の内壁面、6は対向する面に電極をそれぞれ有する直方体形状の圧電体、7はケース4の天部の内壁面5と圧電体6の一方の電極が形成された面とを接着する接着剤、8はケース4の鍔であるケース支持部、9はケース4の開口部を封止するようにケース4の開口部(開放端)に嵌合されてケース4のケース支持部8が固定される端子板、10は上記圧電体6との導通をとる外部端子であり、10aは端子板9の貫通孔9aを貫通して圧電体6の他方の電極に電気的に接続される信号用外部端子、10bは端子板9に電気的に接続される接地用外部端子、11は端子板9の貫通孔9a内に充填されるように配置されて上記のケース8と端子板9と信号用外部端子10aの短絡を防止するための絶縁部、12は上記信号用端子10aと圧電体6の他方の電極とを導通させる信号ケーブル、101は圧電体6の一方の電極が形成された電極面から該電極面と垂直に厚み方向沿いに延びて所定間隔で形成された振動モード制御のためのスリットである。この例では、スリット101は3個設けられている。
以上の超音波振動子100について、図1、図2を用いて構造の詳細を説明する。
一例として、ケース4は有天筒状のステンレス、圧電体6は圧電セラミックス、端子板9は鉄、そして接着剤7は熱硬化性エポキシ系樹脂を用いて構成されている。ケース4と圧電体6は接着剤7により接続されており、圧電体6の接着面には、例えば焼付け銀やスパッタ等によって電極が形成されている。ケース4と圧電体6の電極面は接着剤7により接着されていると同時に、ケース4及び圧電体6の電極面の表面粗さ程度の厚み寸法となるように接着剤7を形成することにより、ケース4及び圧電体6の電極面が接触する点を多数形成し、両者の間の電気的な導通状態を確保する。ケース4は、ケース支持部8及び端子板9を介して、接地用外部端子10bと導通している。一方、圧電体6の接着面とは反対の電極は、信号ケーブル12により、信号用外部端子10aと接続されており、信号用外部端子10aと接地用外部端子10bは、ともに端子板9に設けられるが、電気的な短絡を防止するために信号用外部端子10aは絶縁部11により端子板9に固定されている。
圧電体6には、振動モードを制御するためのスリット101が設けられており、図2に示されるように、スリット101は、ケース4への接着面(接地電極面)(図2のクロスハッチング部分参照)が4個の同一の長方形の領域に分割された構造になっている。スリット101は、圧電体6の深さ方向(圧電体6が固定されるケース4の上記天部の上記内壁面の厚み方向)に60%以上、理想的には80%以上に形成されて圧電体6を分割する構成となっている。これは以下の理由による。通常、圧電体6の厚み方向の寸法は、使用される周波数における超音波の波長を基準寸法としてその1/2に設定される。圧電体6の幅方向寸法が、波長以上になる場合には超音波は厚み方向に共振振動(縦振動モード)するが、ポアソン比(厚み方向に伸縮すると幅方向に伸縮を誘発する)の関係で音波が幅方向にも伝搬して圧電体6の側面で反射することにより複雑な幅方向の振動モードを作り、縦振動モードを阻害する。厚み方向に共振する場合には、厚みの中央付近が最もポアソン比の影響が大きいため、少なくとも中心以上で60%程度の分割が必要で、理想的に幅方向への伝搬をほぼ0とするためには、80%以上を分割することが必要である。
このようなスリット101により、音波の放射及び受波を行う縦振動モード励起の高効率化が達成され、不要な横方向の振動モードが抑制される。このようにスリット101を有する構成とすることにより、低電圧駆動が可能になり、例えば家庭用ガスメータに使用される場合において、電池駆動で10年間メンテフリーのガスメータが実現できる。
(超音波振動子の動作)
以上のような構成において、超音波振動子100の動作について以下に説明する。
駆動振動が信号用外部端子10aより超音波振動子100に印加される。駆動信号としては、圧電体6の共振周波数付近の周波数を含むバースト波が多く用いられており、上記駆動信号により圧電体6に共振周波数の振動が励起される。圧電体6は、スリット101の効果により不要な横方向の結合振動の励起を抑制し、音波放射方向と振動方向が直交する縦振動が高効率に励起され、発生した機械振動により接着剤7及びケース4を介して、ケース4に対向した液体あるいはガス中に超音波が送波される。受波時には、ケース4、接着剤7を介して到来する音波が圧電体6に伝達され、圧電体6に機械振動が励起する。励起された機械振動により、圧電体6の対向する電極間に電圧が発生して受波信号となり、信号ケーブル12及び信号用外部端子10aを介して、例えば、超音波流量計の計測部や流量演算部に伝達されて処理される。
(線膨張係数の違いから、硬さの選定)
一例として、ケース4をステンレスと圧電体6をPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)系の圧電セラミックとして超音波流量計を構成する場合、そのような超音波流量計が屋外で使用される温度範囲において、ケース4の線膨張係数は17.8ppm/℃程度、圧電体4の線膨張係数は7.8ppm/℃程度となり、ケース4の線膨張係数が圧電体6よりも50%以上大きくなる。したがって、本発明の上記第1実施形態にかかる超音波振動子及びこれを用いた超音波流量計を屋外環境で長期に安定して動作させるためには、ケース4と圧電体6の間に介在し両者を接合している接着剤7の選定が重要である。
本発明の上記第1実施形態にかかる圧電体6では、縦振動モード励起の高効率化を目的として振動方向にスリット101を持つ構成になっているため、通常のバルク状態(言い換えれば、スリットが無い直方体形状の状態)に比べて、ケース4との接着面付近の強度や、スリット101により分割された柱状構造をつなぐ共通部分の強度が低下することは避けられない。したがって、通常のバルク状の圧電体を使用する場合よりも接着剤の選定が重要になる。
図9A,図9Bは、上記第1実施形態にかかる超音波振動子100において、接着剤7の代わりにケース4と圧電体6がリジットに例えばロー付けなどにより接合されている比較例の場合の温度変化による超音波振動子100の変形の様子をそれぞれ表したものであり、図9Aは常温状態から高温にした場合の変形状態、図9Bは常温状態から低温にした場合の変形状態を表す。ケース4を形成するステンレスと圧電体6である圧電セラミックの線膨張係数の違いにより、高温状態ではケース4が凸状態に変形し、圧電体6はスリット101の間隔が広げられる方向のモーメントを受ける。また、低温状態ではケース4が凹状態に変形し圧電体6はスリット101の間隔が狭められる方向にモーメントを受ける。これらの変形は、圧電体6をケース4から剥離させる方向の力であり、接合力が強い場合には脆性材料である圧電セラミックからなる圧電体6を変形させる。圧電セラミックの抗折強度は60MPaから100MPaであり、その場合の歪量はおよそ300ppmから500ppm程度である。温度変化50℃の場合、ステンレスと圧電セラミックの歪量の差はおよそ500ppmであり、接合部付近やスリット101の終端付近の共通部分では抗折強度を超える応力が発生し圧電セラミックの破壊を発生させる可能性が高い。
したがって、上記現象を回避するために、リジットに固定するのではなく、上記線膨張係数の違いを緩和させる機能(線膨張緩和機能)を有する接着剤7を使用する必要がある。
図10A,図10Bは、接着剤7の変形による熱変形緩和の状態を表す模式図であり、図10Aは常温から高温にした状態、図10Bは常温から低温にした状態を示している。図10A,図10Bではケース4は天井部分102だけを代表して示している。図10A,図10Bに示すように、線膨張係数の大きなケース4の変形を接着剤7が変形することにより吸収し、線膨張係数の小さな圧電体6に対する応力の発生を抑制する。すなわち、ケース4と圧電体6の熱変形の差を吸収できるようにケース4と圧電体6よりも軟質な材料を接着剤7として使用することにより、温度変化に対して安定な超音波振動子100が実現できる。接着剤7の硬度に関してはメーカーのカタログデータを参照できるが、硬化条件や、接着条件により硬度が変化するため、実際の硬化条件及び接着条件などを考慮してサンプルを試作し実測することが望ましい。
接着剤などの薄い膜の硬度を評価する簡便な試験として、種々の硬さの鉛筆で線を引いて線が引けるか否かで硬度を試験する鉛筆硬度試験(JISK5600−5−4(1999)/ISO/DIS15184)が使用できる。本発明の上記第1実施形態で使用する接着剤7は、鉛筆硬度の硬さの範囲がHから5Bを基本とし、HBから2B以内のものが最適である。鉛筆硬度の硬さの範囲がHより硬い場合には、熱衝撃を受けた時の反りが大きくなりすぎるため好ましくない。鉛筆硬度の硬さの範囲が5Bより柔らかいと、接着強度が小さくなりすぎる可能性があり、好ましくない。そこで、特に、鉛筆硬度の硬さの範囲がHBから2B以内とすれば、接着強度が小さくなりすぎず、かつ、熱衝撃を受けた時の反りも小さいため、特に温度変化の大きい(例えば−30℃から60℃の温度変化のある)屋外環境下での長期間(例えば最低10年間)の使用時に高い信頼性を得ることができて、より好ましい。
(残留応力に対する選定)
接着剤7を選定する場合に考慮すべき他の点として、接着剤7の硬化収縮に伴う内部ひずみがある。内部ひずみが残留することにより内部応力が発生し、常温状態においても圧電体6やケース4に変形が発生し、温度変化に対する安定性が低下する。熱硬化性のエポキシ樹脂を接着剤7として使用する場合、エポキシ樹脂自体は、接着剤としては硬化収縮が少なく10%以下であるが、一般にひずみが発生しており、また硬化条件や接着条件によって変化する。したがって、実際の硬化条件及び接着条件などを考慮してサンプルを試作し実測することが望ましい。この評価方法として、耐熱性のフィルムに接着剤を塗布して加熱硬化させ、フィルムの全体の反り量を評価する方法が使用できる。図11A,図11Bはこの内部ひずみの評価方法を説明するための模式図であり、図11A,図11Bにおいて、104は耐熱性の高分子フィルム、103は内部ひずみ評価用の接着剤である。図11Aは硬化前の接着剤103が耐熱性の高分子フィルム104に塗布された状態であり、図11Bは加熱硬化後の接着剤103が耐熱性の高分子フィルム104に塗布された状態である。接着剤103が硬化収縮するために、高分子フィルム104に反りが発生し、フィルム試料全体が湾曲する。今回は、70mmx50mmの長方形をした130μmの厚みのポリイミドのシートに、評価する接着剤を厚さ80μmでほぼ全面に(60mmx40mmの長方形に)塗布し加熱硬化させた後に、ポリイミドのシートに発生した反りの高さHを評価した。
高分子フィルム104のシートの長さ(長方形状のシートの長い辺の長さ)をL、反りの高さ(シートの中央部に対する端部の反りの高さ)をHとおくと、反りの曲率半径を求めることにより、接着剤103の内部ひずみを推定できる。図12は、換算した曲率半径から、H/Lを横軸にして対応する接着剤の厚み1μmあたりの残留内部ひずみを換算したものである。曲率半径の換算は以下のようにして行う。すなわち、耐熱高分子フィルム104の接着剤塗布面が収縮せず(中性面)であり、曲率半径はRとすると、次式が成立し、曲率半径が求められる。
Cos(L/2R) = 1−H/R
ここで、Hは反り高さ、Lは長方形の長手方向の長さを表す。このときの残留内部歪は接着剤の層の厚みをTとすると、T/Rで表される。
図12より、H/Lの値が20%以上では、接着剤の層が10μmの場合に残留内部ひずみが250ppm程度となり、圧電セラミックの抗折強度時のひずみである300ppmにほぼ達することから、接着剤7としては、H/Lが10%以下、望ましくは大略5%以下の材料を選定することが好ましい。このようにH/Lが大略5%以下の材料を選定すれば、特に温度変化の大きい(例えば−30℃から60℃の温度変化のある)屋外環境下での長期間(例えば最低10年間)の使用時に高い信頼性を得ることができて、より好ましい。
(接着剤厚み及び接着強度)
さらに、接着剤7を選定する場合に考慮すべき他の点として、接着強度がある。接着強度は、超音波振動子100の長期にわたる安定性を確保することに関係する。同時に本発明の第1実施形態における超音波振動子100の構造上の特徴として、圧電体6とケース4との接着状態を制御して部分的な導通を取ることにより、ケース4と端子板9を介して接地用外部端子10bとの導通を確保している。したがって、接着剤7自体は、ケース4と圧電体6の表面粗さ程度の厚みで十分な接着強度を発揮するものである必要がある。また、副次的な影響として接着剤7が厚さによって、超音波振動子100の本来の機能である超音波の送受信特性に大きく影響する。したがって、接着剤7の厚さは圧電体6とケース4の接着面の最大高さRzの和よりも薄いことが必要であり、望ましくは、平均高さRaの和程度がよい。
ここで、最大高さRzとは、JIS B 0601−2001に規定されている最大高さであって、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の山頂線と谷底線との間隔を粗さ曲線の縦倍率の方向に測定し、この値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。キズとみなされるような、並外れた高い山や低い谷のない部分から、基準長さだけ抜き取る。これに対して、平均高さRaは、算術平均高さであって、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜き取り部分の平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にy軸を取り、粗さ曲線を y=f(X) で表したときに、次の式
Figure 2005029912
によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。例えば、圧電体6の接着面を#1000のラップメッシュを使用して研磨仕上げした場合には、最大高さは5μm程度であり、平均高さは1μm程度である。ケース4の面粗さも同程度であり、接着剤7の厚さとしては、10μm以下、望ましくは2〜3μm程度がよい。
この場合に十分な接着強度が確保できるかどうかは、カタログデータ等から推定できるが、硬化条件や、接着条件により引っ張り強度が変化するため、実際の硬化条件及び接着条件などを考慮してサンプルを試作し実測することが望ましい。十分な接着強度が確保できるかどうかの評価の方法としては、引っ張り試験器を用いた引っ張り試験が適用できる。
図13は今回使用した引っ張り試験用のサンプルを表す模式図であり、105は引っ張り試験用冶具、106はアルミブロック、107は他の種類の接着剤である。アルミブロック106とケース4を、評価する接着剤7で超音波振動子100と同じ接着条件で接着し、さらに引っ張り試験器用冶具105で挟み込み両側からより強力な接着剤107で接着してサンプルを製作する。製作されたサンプルを引っ張り試験器にかけて、図13の矢印の方向に引っ張り試験器用冶具105で引っ張り、アルミブロック106とケース4との間の接着剤7に剥離が発生する時点の引っ張り応力を測定し、接着強度を評価した。接着強度は5から30MPaを基本とし、10MPa以上のものが適している。接着強度に関しては、通常の使用においては、5MPa以上であれば十分である。通常の超音波送波時における接着界面の圧力は1MPa以下である。しかしながら、ケースと圧電体が接着剤無しでリジットに接合された場合に温度変化を60℃程度(例えば20℃〜80℃)与えると、熱衝撃試験では、10MPa以上の応力が発生する。接着剤がこれらの応力発生を緩和し、実際には5MPa以下となるが、耐久性に対する安全率を考慮して、10MPa以上の接着強度が適している。また、あまり接着強度の高い接着剤は、一般に固く、線膨張係数の緩和作用が低下することがあるため、30MPa以下を基本とする。
(その他記述)
さらに、他の考慮すべき点として、ガラス転移点Tgがある。ガラス転移点Tgは厚さ約1.5mmのサンプルを硬化させ、既知の熱機械的分析法などで計測される。ガラス転移点Tgとしては40℃から120℃を基本とし、50℃から90℃以内のものが最適である。ガラス転移点Tgが40℃未満ではセンサの特性が不安定になりやすいためである。高分子材料では、ガラス転移点Tg以上では、分子構造がゴム状になる。ゴム状体での高分子材料は、超音波領域における損失が大きくなるので、センサ特性を考慮すると、通常はガラス転移点Tg以下のガラス状態で使用するのが適しているが、本発明の超音波送受波器のように、使用温度範囲が広く、特に高温まで使用するものについては、高温域でゴム状領域を使い各部の熱変形を緩和させると、耐久性が向上する。逆に、ガラス転移点Tgの高いものに関しては、高温まで硬いことからケースと圧電素子の線膨張係数を緩和する作用が小さく、また一般的に硬さも固くなる。したがって、ガラス転移点Tgには、40℃から120℃を基本として、50℃から90℃が最適である。
本発明の上記第1実施形態で使用する接着剤7を選定するために、AからFの7種類の接着剤を評価した結果及び、熱衝撃試験(−40℃と85℃を各30分ずつ行う試験)を100サイクル行った後の受信電圧の初期状態との比、ならびに電気容量の初期状態との比を表1に示す。
Figure 2005029912
鉛筆硬度B、反り試験ではほぼ0%、ガラス転移点Tg約59℃、接着強度11.1MPaであった接着剤Eを使用することにより、ケース4と圧電体6の接着剥離や圧電体6の破損をすることなく、熱衝撃試験を100サイクル経過した後でも受信電圧、及び電気容量とも劣化がみられず、耐久的に優れた超音波振動子を実現できた。
次に、本発明の上記第1実施形態の超音波振動子100の作成方法について図3(a)〜(g)を用いて説明する。圧電体6の接着剤塗布面に接着剤7を塗布する方法として、例えばスクリーン印刷方式や転写方式等が挙げられる。圧電体6は、圧電体固定治具13に装着する。圧電体固定治具13から出る圧電体6の段差は、0mmから0.2mmを基本とし、約0.1mmだけ圧電体6の方が高くなるように圧電体固定治具13を設計するか、図示していない段差調整板を設ける。圧電体固定治具13を印刷台14の上に固定し、その上にスクリーン15を被せる。このとき、圧電体6とスクリーン15の間には0mmから1.5mmの隙間tを設けることを基本とし、より好ましくは0.3mmから0.8mm以内のもので、例えば約0.5mm程度の隙間tを設けている。スクリーン15には、圧電体6の接着剤塗布部分にのみ接着剤7が塗布されるように他の部分にはマスキングを施してあり、スクリーン15の開口寸法としては、圧電体6の接着剤塗布部よりも片側で0mmから0.2mm小さいことを基本とし、例えば約0.1mm程度小さくしてある。次に、図3の(b)のように、スクリーン15の上に、図示していない脱泡機で空気を抜いた接着剤7を載せる。接着剤7の塗布はスキージ16で行われる。図3の(c)と(d)に示されるようにスキージ16は、圧電体6に対して垂直方向に、ある荷重をかけながら、圧電体6の接着剤塗布部の平面沿いに移動させることにより圧電体6に接着剤7を塗布させる。一度に接着剤7を塗布する圧電体6の数は1から25個程度で、塗布後の接着剤7の厚みが10から20μmの範囲で均一に塗布可能な数を選択する。次に、図3の(e)のように、接着剤7を塗布した圧電体6を、接着剤硬化治具17に載せ変える。なお、圧電体固定治具13を接着剤硬化治具17の一部品として使用してもかまわない。図3の(f)と(g)に示されるように、圧電体6の接着剤7の塗布面に上からケース4をかぶせてケース4の上から、加圧治具18の加圧部材18aで圧電体6に向けて一様に荷重をかける。例えば、既知のばね負荷式により荷重をかけ、この状態で接着剤7を硬化させる。このように接着剤7で接着されたケース4と圧電体6は、図1示にされるように、圧電体6の電極部と信号用外部端子10aとをリード線12によりそれぞれハンダ付けされる。端子板9は、ケース4のケース支持部8と電気溶接を行うことによりケース4に固定される。ケース4と端子板9を溶接することにより、電極のグランドになると同時に圧電体6を封止する役割を果たしている。このとき、圧電体6が収納される空間であって、かつ、ケース4と端子板9との間の封止される空間内にある空気を、乾燥した不活性ガスなどに置換させることで、圧電体6の電極部や接着剤7の劣化を防止することができる。
なお、圧電体6に接着剤7を塗布する別の手段としての転写方式としては、例えば接着剤7の厚みを10から20μmに均一にした部分から、図4(a)に示されるように転写ピン19で接着剤7を必要量だけ転写ピン19に取り、図4(b)に示されるように転写ピン19を圧電体6の塗布面に付けて、接着剤7を圧電体6の塗布面に塗布させることができる。また、代わりに、図5(a)に示されるように、ポリイミド板20などに、接着剤7を転写させる形状の分だけ凹加工を行って凹部20aを形成し、そして、図5(b)で示す如く接着剤7を凹部20aに埋め込み、図5(c)に示されるように、接着剤7が埋め込まれた凹部20aの上に、圧電体6を押し続けて、圧電体6の接着剤塗布面に凹部20aの接着剤7を転写することもできる。
以上のように作成された超音波振動子100を用いた超音波流量計について図6を用いて説明する。
流れている被測定流体の流量を演算して測定する流量測定部21には、被測定流体の通路21aを囲むように円形又は矩形筒状を構成するように側壁部22、23が設けられている。超音波振動子24、25は、送受波面が対向するように側壁部22、23に斜めに設けられた振動子取付穴26、27に固定される。被測定流体として、空気、水素、可燃性ガスのような気体や水、灯油、石油などの液体の流量を測定することを想定しているため、超音波振動子24、25と振動子取付穴26、27の間には気体あるいは液体が漏れ出さないようにシール材28、29を施してある。測定方法としては、例えば既知のシングアラウンド法を用いる。30は超音波振動子24、25で構成される送受信器間での超音波の伝搬時間を計測する計測部、31は計測部30からの計測結果を基に補正等を行い流量を演算して求める流量演算部である。
以下、シングアラウンド法を用いた場合の測定原理についてさらに詳細な説明を行う。まず、駆動用のバースト電圧信号を超音波振動子24より構成される第1の超音波送受波器に印加して、第1の超音波送受波器24から超音波バースト信号を放射すると、この超音波バースト信号は距離がLの伝搬経路を伝搬して、t時間後に、超音波振動子25より構成される第2の超音波送受波器25に到達する。第2の超音波送受波器25では、伝達して来た超音波バースト信号のみを高いS/N比で電気バースト信号に変換することができる。この電気バースト信号を電気的に増幅して、再び第1の超音波送受波器24に印加して、超音波バースト信号を放射する。この装置をシング・アラウンド装置と呼び、超音波パルスが超音波送受波器24から放射され、伝搬路を伝搬して、超音波送受波器25に到達するのに要する時間をシング・アラウンド周期といい、その逆数をシング・アラウンド周波数という。
図6おいて、管状の通路21aの中を流れる流体の流速をV、流体中の超音波の速度をC、流体の流れる方向と超音波パルスの伝搬方向の角度をθとする。第1の超音波送受波器24を超音波送波器、第2の超音波送受波器25を超音波受波器として用いたときに、超音波送受波器24から出た超音波パルスが超音波送受波器25に到達する時間であるシング・アラウンド周期をt、シング・アラウンド周波数fとすれば、次式(1)が成立する。
=1/t=(C+Vcosθ)/L ・・・(1)
逆に、第2の超音波送受波器25を超音波送波器として、第1の超音波送受波器24を超音波受波器として用いたときのシング・アラウンド周期をt、シング・アラウンド周波数fとすれば、次式(2)の関係が成立する。
=1/t=(C−Vcosθ)/L ・・・(2)
したがって、両シング・アラウンド周波数の周波数差Δfは、次式(3)となり、超音波の伝搬経路の距離Lと周波数差Δfから流体の流速Vを求めることができる。
Δf=f−f=2Vcosθ/L ・・・(3)
すなわち、超音波の伝搬経路の距離Lと周波数差Δfから流体の流速Vを求めることができ、その流速Vから流量を演算により求めて流量測定を行うことができる。
よって、屋外で使用する温度範囲において信頼性に優れた超音波振動子24、25を用いることにより、長期間屋外で使用しても超音波振動子24、25が破壊されることなく、耐久性のある超音波流量計を提供することができる。
なお、第1実施形態では、ケース4は形状を有天筒状としたが、平板や流量測定部21の外壁の平らな部分でも構わない。また、ケース4の材質をステンレスとしたが、アルミ、アルミダイキャスト等の金属でも良い。
(第2実施形態)
図14は本発明の第2実施形態の超音波振動子の断面図を示すものである。
図14において、120は被測定対象となる流体との音響的な整合をとり、超音波振動子を高効率化するための音響整合層である。他の構成は第1実施形態と同じである。
音響整合層120は、被測定対象物の流体によって材料が選択され、流体が液体の場合にはエポキシ樹脂などに各種のフィラ−を混入したものや、ガラス、グラファイトなどの無機材料使用できる。流体が空気、都市ガスなどの場合には中空ガラス球を樹脂系材料でかためた複合材材料や、無機/有機の多孔質体で音響整合層120を形成することができる。音響整合層120は、超音波を発振する圧電体6と被測定流体の音響的な整合をとるもので、圧電体6の音響インピーダンスをZ、被測定流体の音響インピーダンスをZ、音響整合層102の音響インピーダンスをZとした場合に次式(4)を満足するように設計する。
>Z>Z ・・・(4)
また、圧電体6の発振する超音波の周波数に対して、1/4波長の厚みに設計することにより、超音波の送受信を効率化することができる。
音響整合層120を設ける場合には、音響整合層120の線膨張係数を考慮する必要がある。特に音響整合層120に樹脂材料あるいは各種フィラ−等が混入した複合材料を用いた場合には、一般に線膨張係数がケース4のステンレス材料よりも大きいため、温度変化に伴う変形がより拡大される場合があるが、第1実施形態と同様に圧電体6とケース4の接着剤選定及び製作工法をとることにより、熱衝撃に耐えるセンサが構成できる。音響整合層120として、微小な中空ガラス球を混入したエポキシ樹脂の複合材料を用いた超音波振動子を試作した。圧電体6とケース4は第1実施形態と同様に表1の接着剤Eを選択した。また、音響整合層120とケース4は表1の接着剤Bを用いて試作を行った。試作した超音波振動子を熱衝撃試験(−40℃と85℃を各30分ずつ行う試験)にかけた結果、100サイクルを経過した後も、受信電圧の低下、及び電気容量の変化は測定されなかった。
以上のように、圧電体6とケース4を接着する接着剤7を適切に選定することにより、音響整合層102があっても温度変化に対して安定に動作する超音波振動子が実現でき、さらに音響整合層102を持つことにより送受信の高効率化が達成された。本超音波振動子を用いた超音波流量計は、S/Nが改善されことから、より高精度で温度安定性に優れたものとなる。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
以上のように、本発明にかかる超音波振動子及びそれを用いた超音波流量計は、熱衝撃試験による圧電体と被接着固定体の接着部の剥離や圧電体の破損を防ぐことができるため、屋外での環境下においても長期間にわたり超音波振動子を使用することが可能となり、都市ガスやLPガスの流量を測定するガスメータ、水道の水量を測定する水道メータ、燃料電池の水素や燃料ガスの流量測定装置、自動車に用いる距離センサ等の用途にも適用できる。
本発明のこれらと他の目的と特徴は、添付された図面についての好ましい実施形態に関連した次の記述から明らかになる。
本発明の第1実施形態の超音波振動子の断面図である。 本発明の第1実施形態の超音波振動子の接着剤を塗布した圧電体の斜視図である。 (a),(b),(c),(d),(e),(f),(g)は本発明の第1実施形態の超音波振動子の製造工程図である。 (a),(b)は本発明の第1実施形態の超音波振動子の接着剤塗布工程図である。 (a),(b),(c)は本発明の第1実施形態の超音波振動子の接着剤塗布工程図である。 本発明の第1実施形態の超音波振動子に用いる超音波流量計の一部断面図を含む構成図である。 従来の超音波振動子の断面図である。 屋外環境に設置された超音波流量計の1日分の温度変化の1例を表す超音波流量計の温度と時間とのグラフである。 上記第1実施形態にかかる超音波振動子において、接着剤の代わりにケースと圧電体がリジットに接合されている比較例において、常温状態から高温にした場合の温度変化による超音波振動子の変形状態を表す断面図である。 上記第1実施形態にかかる超音波振動子において、接着剤の代わりにケースと圧電体がリジットに接合されている比較例において、常温状態から低温にした場合の変形状態を表す断面図である。 常温から高温にした状態での接着剤の変形による熱変形緩和の状態を表す模式図である。 常温から低温にした状態での接着剤の変形による熱変形緩和の状態を表す模式図である。 内部ひずみの評価方法において、硬化前の接着剤が耐熱性の高分子フィルムに塗布された状態を示す模式図である。 上記内部ひずみの評価方法、において加熱硬化後の接着剤が耐熱性の高分子フィルムに塗布された状態を示す模式図である。 上記内部ひずみの評価方法において、残留内部ひずみとH/Lとの関係を示すグラフである。 引っ張り試験用のサンプルを引っ張り試験器にセットした状態を表す模式図である。 本発明の第2実施形態の超音波振動子の断面図である。
本発明は、超音波により気体や液体の流量や流速の計測を行うことができる超音波振動子を用いた超音波流量計に関するものである。
本発明の目的は、熱衝撃試験に耐えうる接着が可能で、信頼性に優れた超音波振動子を用いた超音波流量計を提供することである。
本発明によれば、流れている被測定流体の流量を測定する流量測定部と、
この流量測定部に設けられて上記被測定流体に対して超音波を送受信する1対の超音波振動子と、
上記1対の超音波振動子間の伝搬時間を計測する計測部と、
上記計測部からの信号に基づいて上記被測定流体の流量を算出する流量演算部とを備えた屋外用超音波流量計であって、
上記超音波振動子は、
圧電体と、
天部と側壁部を有する金属製の有天ケースより構成される被接着固定体と、
上記圧電体は上記被接着固定体の上記天部の内壁面に固定されかつ上記圧電体と上記被接着固定体との線膨張係数の違いを緩和させるように伸縮する線膨張緩和機能を有する接着剤とを備え
上記圧電体の一方の面は上記被接着固定体の上記天部の内壁面と上記接着剤を介して面接着で固定され、
上記接着剤は、平均2μmから3μmの厚さの層を構成し、さらに40℃から120℃のガラス転移点を有することを特徴とする超音波流量計を提供するものである。
よって、従来の課題を解決することができ、本発明の超音波流量計の超音波振動子は、圧電体と被接着固定体の線膨張係数の違いを圧電体と被接着固定体の固定に用いる接着剤が伸縮することにより緩和させることができる。
また、本発明の超音波流量計の超音波振動子は、熱衝撃試験による圧電体と被接着固定体の接着部の剥離や圧電体の破損を防ぐことが可能となり、屋外での環境下においても長期間にわたり超音波振動子を使用することができる。
(線膨張係数の違いから、硬さの選定)
一例として、ケース4をステンレスと圧電体6をPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)系の圧電セラミックとして超音波流量計を構成する場合、そのような超音波流量計が屋外で使用される温度範囲において、ケース4の線膨張係数は17.8ppm/℃程度、圧電体の線膨張係数は7.8ppm/℃程度となり、ケース4の線膨張係数が圧電体6よりも50%以上大きくなる。したがって、本発明の上記第1実施形態にかかる超音波振動子及びこれを用いた超音波流量計を屋外環境で長期に安定して動作させるためには、ケース4と圧電体6の間に介在し両者を接合している接着剤7の選定が重要である。
本発明の上記第1実施形態で使用する接着剤7を選定するために、Aからの7種類の接着剤を評価した結果及び、熱衝撃試験(−40℃と85℃を各30分ずつ行う試験)を100サイクル行った後の受信電圧の初期状態との比、ならびに電気容量の初期状態との比を表1に示す。
以上のように、本発明にかかる超音波振動子を用いた超音波流量計は、熱衝撃試験による圧電体と被接着固定体の接着部の剥離や圧電体の破損を防ぐことができるため、屋外での環境下においても長期間にわたり超音波振動子を使用することが可能となり、都市ガスやLPガスの流量を測定するガスメータ、水道の水量を測定する水道メータ、燃料電池の水素や燃料ガスの流量測定装置、自動車に用いる距離センサ等の用途にも適用できる。

Claims (11)

  1. 圧電体(6)と、
    天部と側壁部を有する金属製の有天ケースより構成される被接着固定体(4)と、
    上記圧電体は上記被接着固定体の上記天部の内壁面(5)に固定されかつ上記圧電体と上記被接着固定体との線膨張係数の違いを緩和させるように伸縮する線膨張緩和機能を有する接着剤(7)とを備える超音波振動子。
  2. 上記接着剤(7)は、鉛筆硬度試験におけるHから5Bの鉛筆硬度を有する請求項1に記載の超音波振動子。
  3. 上記接着剤(7)は、上記接着剤が長方形状に塗布形成されるときの長い辺の長さに対する、長方形状に塗布形成された上記接着剤の中央部に対する端部の反りの高さ寸法の比が大略5%以下である請求項2に記載の超音波振動子。
  4. 上記接着剤(7)は、5から30MPaの接着強度を有する請求項2に記載の超音波振動子。
  5. 上記接着剤(7)は、40℃から120℃のガラス転移点を有する請求項2に記載の超音波振動子。
  6. 上記接着剤(7)は、鉛筆硬度試験におけるHから5Bの鉛筆硬度を有し、上記接着剤(7)が長方形状に塗布形成されるときの長い辺の長さに対する、長方形状に塗布形成された上記接着剤(7)の中央部に対する端部の反りの高さ寸法の比が大略5%以下であり、5から30MPaの接着強度を有し、40℃から120℃のガラス転移点を有する請求項1に記載の超音波振動子。
  7. 上記接着剤(7)は、上記被接着固定体(4)や上記圧電体(6)よりも軟質である請求項1〜6のいずれか1つに記載の超音波振動子。
  8. 上記接着剤は平均2〜3μmの厚さの層で構成される請求項1〜6のいずれか1つに記載の超音波振動子。
  9. 上記圧電体(6)は、上記圧電体が固定される上記被接着固定体の上記天部の上記内壁面の厚み方向沿いに形成されるスリット(101)を有している請求項1〜6のいずれか1つに記載の超音波振動子。
  10. 上記有天ケースの開放端に固定される端子板(9)をさらに備え、上記有天ケースと上記端子板で上記圧電体(6)を封止する請求項1〜6のいずれか1つに記載の超音波振動子。
  11. 流れている被測定流体の流量を測定する流量測定部(21)と、
    この流量測定部に設けられて上記被測定流体に対して超音波を送受信する請求項1〜10のいずれか1つに記載の1対の超音波振動子(24,25)と、
    上記1対の超音波振動子間の伝搬時間を計測する計測部(30)と、
    上記計測部からの信号に基づいて上記被測定流体の流量を算出する流量演算部(31)とを備えた超音波流量計。
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