JPWO2004104696A1 - 情報記録媒体およびその記録再生方法、並びに情報記録再生装置 - Google Patents

情報記録媒体およびその記録再生方法、並びに情報記録再生装置 Download PDF

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Abstract

記録層を含み、前記記録層に記録光が集光されると2光子吸収が起こって前記記録層に情報が記録される情報記録媒体であって、記録層(211,212)は、アクリレートまたはメタクリレートを含む主鎖と、前記主鎖から分岐した第1の側鎖および第2の側鎖とを含む感光性ポリマーを含み、前記第1の側鎖は、前記記録光を吸収すると、シス−トランス異性化反応をし、前記第2の側鎖は、前記第1の側鎖が異性化反応をすると、前記第1の側鎖とほぼ同じ方法へと配向する性質を有している。

Description

本発明は、情報記録媒体およびその記録再生方法、並びに情報記録再生装置に関する。
近年、情報量の大量化に伴って情報記録媒体の高容量化が強く求められている。情報記録媒体の高容量化を実現する有効な手段として、記録層の多層化がある。図6に、複数の記録層を含む情報記録媒体を示している。図6に示すように、保護膜50と保持基板56との間には、分離層53と、記録光および再生光に対して半透明な記録層51とが交互に配置されている。この情報記録媒体では、記録光の吸収に伴う発熱作用によって生じる相転移、または変形を利用して、記録層51に情報を記録(一次光吸収記録)できる。
しかし、この情報記録媒体では、記録層の層数が例えば4層以上になると、記録層51を透過する光の減衰が大きくなる。そのため、この情報記録媒体では、記録層51の層数を4層以上にすることができず、さらなる高容量化は困難である。
近年では、多光子吸収を利用した情報の記録が可能な情報記録媒体が注目されている(例えば、特開平08−220688号公報参照)。その一例を図7に示している。この情報記録媒体では、図6に示した情報記録媒体の記録層51に代えて、記録光および再生光に対して実質的に透明な記録層52を用いている。多光子吸収を利用した情報の記録では、光電界が極めて強いところ、すなわち焦点12近傍の電子が励起されて光吸収反応が起こる。焦点12近傍以外では光吸収が起こらない。多光子吸収可能な記録材料は、通過する光(記録光および再生光)の減衰が極めて少なく、記録光および再生光に対して実質的に透明である。そのため、非常に多くの記録層を備えた情報記録媒体を実現できる。尚、図6および図7において、10は対物レンズであり、11は収束光である。
ところで、2光子吸収を利用して情報を記録する場合、記録材料に必要な条件としては、記録光および再生光に対して実質的に透明であることに加えて、下記の(1)(2)が挙げられる。(1)熱により記録材料の集光部分がビット状に変形する。(2)熱により屈折率変化が生じる。また、情報を消去可能な情報記録媒体では、記録材料は、2光子吸収に伴う発熱により、(3)上記ビット状の変形が熱により取り除かれ、または(4)変化した屈折率が熱により元に戻る性質を有している必要がある。今のところ、結晶相−アモルファス相間の相変化に伴う屈折率変化を利用した情報記録媒体が知られており、記録材料には、酸化テルル等の酸化物が用いられている(例えば、国際公開WO 03/102941号パンフレット参照)。
しかし、酸化テルル等の酸化物では、結晶相からアモルファス相への相変化は実用レベルの速度で行われるが、アモルファス相から結晶相への相変化は、長時間の熱作用が必要であり、変化速度が極めて遅い。例えば、結晶相からアモルファス相への相変化に必要な時間を、数n秒程度とすることは可能であるが、アモルファス相から結晶相へ相変化させるためには、数m秒の加熱時間が必要である。
本発明の情報記録媒体は、記録層を含み、前記記録層に記録光が集光されると2光子吸収が起こって前記記録層に情報が記録される情報記録媒体であって、前記記録層は、アクリレートまたはメタクリレートを含む主鎖と、前記主鎖から分岐した第1の側鎖および第2の側鎖とを含む感光性ポリマーを含み、前記第1の側鎖は、前記記録光を吸収すると、シス−トランス異性化反応をし、前記第2の側鎖は、前記第1の側鎖が前記異性化反応すると、前記第1の側鎖とほぼ同じ方法へと配向する性質を有していることを特徴とする。
本発明の記録再生方法は、本発明の情報記録媒体に対して情報を記録または再生する記録再生方法であって、前記記録層に前記記録光を集光して記録ビットを形成する工程と、前記記録ビットに再生光を照射して情報を再生する工程とを含むことを特徴とする。
本発明の別の記録再生方法は、本発明の情報記録媒体に対して情報を記録または再生する記録再生方法であって、前記記録層に前記記録光を集光して記録ビットを形成する工程と、前記記録ビットに再生光を照射して情報を再生する工程とを含み、前記記録光は、第1の光と第2の光とを含み、前記第2の光の偏光面方向は、前記第1の光の偏向面方向に対して実質的に45度傾いており、前記第1の光の偏向面方向および前記第2の光の偏向面方向のうちのいずれか一方は、前記感光性ポリマーの前記光学軸の配向方向と一致しており、前記再生光の偏向面方向は、前記第1の光の偏向面方向および前記第2の光の偏向面方向のうちのいずれか一方に対して実質的に90度傾いていることを特徴とする。
本発明の情報記録再生装置は、本発明の情報記録媒体に対して情報の記録または再生を行う情報記録再生装置であって、記録光を出射する光源と、再生光を出射する光源と、前記記録光および前記再生光が通過する1/2波長板と、前記記録光および前記再生光を前記情報記録媒体に集光する対物レンズと、を備え、前記1/2波長板は、前記1/2波長板を通過した記録光の偏光面方向を所定方向とすると、前記光源から出射された記録光の偏向面方向を、前記所定方向の偏光面方向に対して実質的に45度傾斜させることができ、前記所定方向の偏光面方向をWp1方向とし、前記所定方向に対して実質的に45度傾斜した偏光面方向をWp2方向とすると、前記光源から出射された再生光の偏光面方向を、前記Wp1方向および前記Wp2方向のうちのいずれか一方の偏光面方向に対して実質的に90度傾斜させることができるように、回転可能であることを特徴する。
本発明の別の情報記録再生装置は、本発明の情報記録媒体に対して情報の記録または再生を行う情報記録再生装置であって、記録光を出射する光源と、再生光を出射する光源と、前記記録光および前記再生光が通過する1/2波長板と、前記記録光および前記再生光を前記情報記録媒体に集光する対物レンズと、を備え、前記1/2波長板は、前記1/2波長板を通過した記録光の偏光面方向を所定方向とすると、前記光源から出射された記録光の偏向面方向を、前記所定方向の偏光面方向に対して実質的に45度傾斜させることができ、前記所定方向の偏光面方向をWp1方向とし、前記所定方向に対して実質的に45度傾斜した偏光面方向をWp2方向とすると、前記Wp1方向および前記Wp2方向のうちのいずれか一方と、前記感光性ポリマーの前記光学軸とを一致させることができ、前記光源から出射された再生光の偏光面方向を、前記Wp1方向および前記Wp2方向のうちのいずれか一方の偏光面方向に対して実質的に90度傾斜させることができるように、回転可能であることを特徴とする。
図1は、本発明の情報記録媒体の一例を示す断面構成、および情報記録再生装置の光学ヘッドを示す略構成図ある。
図2は、光学軸がランダムに配向した情報記録媒体に対して照射される記録光および再生光の偏光面方向を示す図である。
図3は、単一方向の光学軸を有するように初期化された情報記録媒体に対して照射される記録光および再生光の偏光面方向を示す図である。
図4は、図1に示した情報記録媒体を構成する感光性ポリマーの分光特性を示した図である。
図5は、図1に示した情報記録媒体を構成する感光性ポリマーに照射される照射光量と、感光性ポリマーの照射光に対する吸収率との関係を示した図である。
図6は、従来の情報記録媒体の一例の断面構成を示す図である。
図7は、従来の情報記録媒体の一例の断面構成を示す図である。
本明細書において、偏光面方向は、光の電界の振動方向を意味しており、偏光面方向は、光の進行方向に対して垂直な面内にある。
本発明の情報記録媒体の一例では、主鎖に共有結合した第1の側鎖は下記式(1)で、第2の側鎖は下記式(2)、
Figure 2004104696
Figure 2004104696
で表された構造をしている。[式中、SおよびSは、互いに独立して、OもしくはS原子またはNR基であり、Rは、水素、C−C−アルキルまたはフェニルであり、TおよびTは、互いに独立して、任意に−O−、−S−、−NR−または−OSiR O−が割り込んでいてもよい(CR,R12基であり、nは、2から12の整数である。QおよびQは、互いに独立して、−O−、−COO−、−OCO−、−CONR−、−NRCO−、−NR−、−O−C−COO−または−O−C−CONR−であり、それによって追加的に、SおよびSは、互いに独立して、
Figure 2004104696
であってもよく、RからRは、互いに独立して、水素、ハロゲン、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、CF、ニトロ、SOCH、SONHまたはシアノであり、ここで、置換基RからRの少なくとも1つは水素以外である必要があり、RからRは、互いに独立して、水素、C−C−アルキル、ヒドロキシル、C−C−アルコキシ、フェノキシ、C−C−アルキルチオ、フェニルチオ、ハロゲン、CF、CCl、CBr、ニトロ、シアン、C−C−アルキルスルホニル、フェニルスルホニル、COOR、アミノスルホニル、C−C−アルキルアミノスルホニル、フェニルアミノスルホニル、アミノカルボニル、C−C−アルキルアミノカルボニル、フェニルアミノカルボニルであり、R10は、水素、ハロゲン、C−C−アルキル、ヒドロキシル、C−C−アルコキシ、フェノキシ、C−C−アシルアミノ、C−C−アルキルスルホニルアミノである。
11は、水素、ハロゲン、C−C−アルキル、ヒドロキシル、C−C−アルコキシ、フェノキシであり、Yは、直接結合、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−O−、−NH−、−N(CH)または−N=N−であり、そしてXおよびXは、互いに独立して、水素、ヒドロキシル、メルカプト、CF、CCl、CBr、ハロゲン、シアン、ニトロ、COOR、C−C−アルキル、C−C12−シクロアルキル、C−C12−アルコキシ、C−C12−アルキルチオ、C−C12−アリール、C−C12−アリールオキシ、C−C12−アリールチオ、C−C−アルキルスルホニル、C−C12−アリールスルホニル、アミノスルホニル、C−C−アルキルアミノスルホニル、フェニルアミノスルホニル、アミノカルボニル、C−C−アルキルアミノカルボニル、フェニルアミノカルボニル、N(R12,R13)、NH−CO−R12、NH−SO−R12、NH−CO−N(R,R)、NH−CO−O−R12またはSO−CFであり、ここで、R12およびR13は、互いに独立して、水素、C−C−アルキルまたはフェニルであるが、但し、RからR11が水素を表しそして環BがC−C−アルキル、C−C−アルコキシ、ニトロまたはシアノで置換されている場合少なくとも1つの2番目の置換基もまた環A−Y−環B系内に存在していることを条件とする。]に従う少なくとも1つの構造で表される側鎖を有する。
または、感光性ポリマーは、QおよびQのうちの少なくとも1つが−O−C−COO−または−O−C−CONR−であってもよい。
尚、これらの感光性ポリマーは、特開平8−109226号公報に記載された方法にて作製できる。
図4には、本実施形態の情報記録媒体の一例に用いられる感光性ポリマーの分光特性を示している。図4に示した分光特性の測定には、ポリマーボネートからなる基板上に感光性ポリマーを含む記録層(厚さ1μm)が積層された積層体を用いた。分光特性の測定には、分光器を用いた。記録層は、厚さが約1μmとなるように感光性ポリマーをスピンコート法にて基板に塗布し、乾燥して得た。尚、感光性ポリマーには、第1の側鎖が、3−ブロモ−4−[6−(2−メチルプロペノイル)ヘキソキシ]安息香酸(構造式は下記式(4)に記載)を含む感光性ポリマーを用いた。以下、この感光性ポリマーを感光性ポリマーAと略す。
Figure 2004104696
図4に示すように、感光性ポリマーAは、波長が約410nmの光に対して最大の吸収を示している。この吸収は、第1の側鎖によるものである。感光性ポリマーAは、波長が約655nm、約800nmの光についてはほとんど吸収しない。また、感光性ポリマーAは結晶構造を有していないことから、散乱による光透過損失はほとんどない。感光性ポリマーAからなる記録層に対する波長800nmのレーザ光の透過率は、記録層表面からの反射光を除くと、約100%である。
次に、感光性ポリマーAへ照射される照射光量と、感光性ポリマーAの照射光に対する吸収率との関係を調べた。この結果を図5に示している。尚、レーザ光の波長は800nmとした。
図5において、横軸は、対物レンズによって絞り込まれた焦点における照射光量(nJ/μm)を、縦軸は感光性ポリマーAからなる記録層の表面からの反射損失を除いた、記録層(厚さ1μm)の光の吸収率(%)を示している。レーザ光のパルス幅は、発熱による影響を抑制するために、100フェムト秒(10−13秒)とした。
図5に示すように、照射光量が100nJ/μm以下では、記録層では光の吸収はみられない。しかし、照射光量が100nJ/μmを越えると、光の吸収率が急激に増加している。
また、図5に示すように、照射光量が250nJ/μmであると、光の吸収率は約0.5%であり、照射光量が500nJ/μmであると、光の吸収率は約2%であった。すなわち、この領域では、照射光量が2倍になると光の吸収率は4倍となってことが分かった。この結果から、感光性ポリマーAを含む記録層では、照射光量が100nJ/μmを越えると2光子吸収が起こることがわかった。
2光子吸収により励起された電子は、(1)格子と衝突することにより熱へと変わって通常の非励起状態に戻るか、または、(2)励起光の半分の波長の光を放出して非励起状態に戻る。もし、(1)の現象が起こる場合は、感光性ポリマーAを含む記録層における光の吸収率は、レーザ光の波長が変化してもそれほど変化しないはずである。しかし、図4に示したように、感光性ポリマーAは、波長が約400nmの光に対して強い吸収を示している。したがって、記録層に例えば波長800nmの記録光を照射すると、波長800nmの収束光(記録層の集光部では照射光量が例えば100nJ/μmを越えている。)により電子が励起され、励起電子は波長400nmの光を放出することにより非励起状態に戻り、あたかも波長400nmの光が第1の側鎖に吸収されたような現象が生じているものと理解される。このような現象が第1の側鎖に生じると、第1の側鎖はシス−トランス異性化反応(形態変化)する。
尚、第1の側鎖がトランス化する際、第1の側鎖の配向方向には、光電界に反応しない安定な方向と、光電界方向に反応し易い不安定な方向とがある。光電界に対して反応する方向に配向したトランス体は、時間がたつとシス体に戻り、シス体に戻った第1の側鎖は再度光によりトランス化されるというサイクルを繰り返す。そして、最終的には、第1の側鎖の配向方向は光電界に反応しない方向へ揃う(Weigert効果)。
一方、第2の側鎖については、第1の側鎖が形態変化することが原因で、その長軸が、一方向に揃った第1の側鎖の長軸とほぼ同じ方法へ配向する。
これらの結果として、記録層に大きな屈折率変化(複屈折)が生じ、情報が記録される。
本発明の情報記録媒体に用いられる感光性ポリマーでは、第1の側鎖について、シス形からトランス形への変化速度と、この逆反応の速度はほぼ等しい。また、これらの速度は、相変化の速度よりも速く、特に、アモルファス相から結晶相への変化速度よりも遥かに速い。すなわち、上記感光性ポリマーを記録材料として用いた本実施形態の情報記録媒体は、相変化型の情報記録媒体よりも、情報の記録速度および消去速度が速い。
また、照射光量が所定値未満、例えば100nJ/μm以下である場合は、波長800nmの光に対して感光性ポリマーは実質的に透明である(図3参照)。そのため、複数の記録層のいずれかの記録層に例えば波長800nmの記録光を集光させたとき、その記録層以外の記録層に対して記録光は実質的に透明である。
以上のことから、本実施形態の情報記録媒体では、3次元記録が可能であり、相変化型の情報記録媒体よりも情報の記録および消去が高速で行える。
尚、感光性ポリマーは、情報の記録前後において、光の吸収域(吸収波長)がほとんど変化しない。そのため、記録光を出射する光源および再生光を出射する光源の波長は同一でもよい。記録光および再生光の波長が同一であると、情報記録再生装置の光学系は、光源が1つでよく、光学系の構造を簡素化できる。
本実施形態の情報記録媒体では、第1の側鎖および第2の側鎖のうちの少なくとも一方に、スチルベン系化合物が結合されていると好ましい。スチルベン系化合物は、例えば、上述したX1、X2、R1〜R8のうちのいずれか1つに結合されていると好ましい。
スチルベン系化合物には、例えば、下記式(5)〜(9)
Figure 2004104696
で表されるものが挙げられる。これらのスチルベン系化合物は2光子吸収係数(2光子吸収断面積)が大きいので、これらのスチルベン系化合物が第1の側鎖および第2の側鎖のうちの少なくとも一方に結合されていると、シス−トランス異性化が起こり易くなって、記録感度が向上する。感光性ポリマーが上記スチルベン系化合物を含まないと、2光子吸収により情報を記録するためには、数mJ/μm程度の照射光量が必要であるが、感光性ポリマーが上記スチルベン系化合物を含んでいると、数百nJ/μm程度の照射光量で記録できる。
尚、これらのスチルベン系化合物は、文献に記載された方法にて作製できる(例えば、「Photoaddressable Polymers For Rewritable Optical Disc System」Y.Sabi,M.Yamamoto,H.Watanabe etaproceedings of ISOM 2000参照)。
本発明の情報記録媒体の一例において、好ましくは、複数の記録層を含み、複数の記録層は記録光および再生光に対して実質的に透明な分離層を介して積層されている。尚、本明細書において、記録光および再生光に対して実質的に透明であるとは、記録光および再生光のうち散乱成分を除いて記録光および再生光をほとんど吸収なしに透過させることをいう。具体的には、1層あたりについて、光の透過率が95%以上であることが好ましく、光の透過率が99%以上であることがより好ましい。
ところで、本発明の情報記録媒体は、その製造過程において、例えば、基板上に感光性ポリマーを含む塗料を塗布する工程を含む。このようにして作製された情報記録媒体において、感光性ポリマー(記録層)の光学軸はランダムに配向しており、感光性ポリマーを含む記録層は、光学的にほぼ等方性を有している。本発明の情報記録媒体は、このままでも使用できるが、感光性ポリマーが、一軸異方性を有するように初期化されていてもよい。感光性ポリマーが、単一方向の光学軸を有するように初期化されていると、感光性ポリマーが光学的にほぼ等方性を示す情報記録媒体よりも、大きな記録信号を得ることができる。
本発明の記録再生方法および情報記録再生装置において、「実質的に45度」とは、誤差範囲も含める趣旨であり、具体的には、45度±10度を意味する。±10度程度の誤差であれば、情報記録再生装置の回路系によってこの誤差を吸収または補正できる。また、「実質的に90度」とは、誤差範囲も含める趣旨であり、具体的には、90度±15度を意味する。±15度程度の誤差であれば、情報記録再生装置の回路系によってこの誤差を吸収または補正できる。
本発明の記録再生方法の一例において、好ましくは、記録光は、第1の光と第2の光とを含み、前記第2の光の偏光面方向は、前記第1の光の偏向面方向に対して実質的に45度傾いていており、前記再生光の偏向面方向は、前記第1の光の偏向面方向および前記第2の光の偏向面方向のうちのいずれか一方に対して実質的に90度傾いている。
本発明の記録再生方法の一例において、好ましくは、記録光の波長と再生光の波長が同じである。
本発明の情報記録再生装置の一例では、好ましくは、記録光を出射する光源の波長と再生光を出射する光源の波長とが同じである。
本発明の情報記録再生装置の一例では、好ましくは、消去光を出射する光源を備えている。
(実施形態1)
本実施形態1の情報記録媒体およびその記録再生方法、並びに情報記録再生装置について、図1および図2を用いて説明する。
図1は、本発明の情報記録媒体の一例を示す断面構成および情報記録再生装置の光学ヘッドの略構成を示している。図2は、後述する情報記録媒体Aに対して照射される記録光および再生光の偏光面方向を示す図であり、図3は、後述する情報記録媒体Bに対して照射される記録光および再生光の偏光面方向を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の情報記録媒体では、保持基板256上に記録部213および保護層250が形成されている。記録部213は、記録層211,212とこれらの間に配置された分離層253とを含み、記録層と分離相とが交互に積層されている。本実施形態の情報記録媒体は、記録部213に複数の記録層211,212を含むことで、平面的な情報の記録に加えて、厚さ方向への情報の記録が可能である。
図1に示すように、本実施形態の情報記録媒体は、情報の記録時および再生時には、保護層250が光の入射側となる。記録時には、レーザ光を対物レンズ10により記録層211,212のいずれかに集光して収束光11)、記録ビット214を形成する。再生時には、レーザ光を対物レンズ10により所望の記録層に集光し(収束光7)、記録ビット214によって反射された光を利用して情報を再生する。
本実施形態の情報記録媒体では、情報が記録される前(使用前)において、感光性ポリマーの光学軸または第2の側鎖がランダム配向した状態にあり、記録層が光学的にほぼ等方性を示してもよいが(以下、この形態の情報記録媒体を、情報記録媒体Aとも言う。)、感光性ポリマーが単一方向の光学軸を有するように初期化されていてもよい(以下、この形態の情報記録媒体を、情報記録媒体Bとも言う。)。初期化は、例えば、所定の偏光面方向の光を記録層に照射すれば行える。例えば、基板上に感光性ポリマーを含む塗料を塗布して記録層を形成した後、偏光面方向が、情報記録媒体の半径方向に対して90度傾いた(直交する)光を記録層に照射しながら、情報記録媒体を回転すれば、光学軸を情報記録媒体の半径方向に揃えることができる。
(A)次に、情報記録媒体Aに対して情報を記録または再生する本実施形態の記録再生方法、情報の消去方法、および本実施形態の情報記録再生装置について説明する。
図1に示した記録光を出射する光源1は、例えば、波長800nmの半導体レーザであり、再生光を出射する光源2は、例えば、波長655nmの半導体レーザである。まず、光源1から出射された波長800nmの記録光(レーザ光)は、コリメータレンズ3により平行光にされる。次いで、平行光はハーフミラー5、1/2波長板(水晶)4を通過する。
記録時には、例えば、偏光面方向が所定の方向に向いたレーザ光のその偏光面方向(例えば、図2ではWp1方向)と、1/2波長板4の光学軸とを一致させて、1/2波長板4がレーザ光に何ら作用しないようにする。
1/2波長板4を回転させて、1/2波長板4の光学軸とレーザ光の偏光面方向とをずらせば、レーザ光が1/2波長板を通過するときに、レーザ光の偏光面方向は1/2波長板の光学軸に向く(一致する)ようになる。偏光面方向がWp1方向(図2参照)の記録光を光源から出射し、1/2波長板4の回転角を、レーザ光の偏光面方向がWp2方向(図3参照)となるように調整し、偏光面方向がWp2方向に制御された記録光を用いて情報を記録してもよい。ただし、この場合、Wp2方向の偏光面方向は、Wp1方向の偏光面方向(所定の方向)に対して、実質的に45度の角度で傾斜させる。
このように、同一の記録層に、偏光面方向がWp1方向の記録光(第1の光)と、偏光面方向がWp2方向の記録光(第2の光)の両方を用いて記録ビットを形成すれば、多重記録でき、記録密度を、第1の光および第2の光のうちのいずれか一方により情報を記録する場合の2倍に高めることが可能となる。
1/2波長板を回転させることにより、記録光の偏光面方向の切替えを行う場合は、Wp1方向およびWp2方向のいずれか一方の偏光面方向の光を照射した後、他方の偏光面方向の光を照射することとなる。ただし、これに限定されず、第1の光の照射および第2の光の照射を同時に行ってもよい。この場合は、記録光を出射する光源を2つ用い、一方の光源から出射される記録光の偏光面方向をWp1方向とし、他方の光源から出射される記録光の偏光面方向をWp2方向とする。
尚、図2では、記録光の偏光面方向(Wp1方向)が、情報記録媒体の半径方向Aと一致しているが、これに制限されない。また、必ずしも、光源1から出射された記録光の偏光面方向と、1/2波長板の光学軸とが一致していなくてもよく、1/2波長板4を回転させて、1/2波長板を通過した記録光の偏光面方向を所定方向、例えば、Wp1方向としてもよい。
図1に示すように、偏光ビームスプッリッター6では、入射光は、偏光面方向が異なる2種の光に分離される。第1の光および第2の光のうちのいずれか一方の偏光面方向に、偏光ビームスプッリッター6の一つの出力方向を合わせるように、偏光ビームスプッリッター6を配置しておくと、情報記録媒体で反射した光(再生光)は、偏光面方向が互いに90度の角度をなす2方向の光に分離される。ただし、情報記録媒体で反射した光(再生光)を、偏光面方向が互いに90度の角度をなす2方向の光に分離するためには、再生光の偏向面方向が、第1の光の偏向面方向および第2の光の偏向面方向のうちのいずれか一方の偏向面方向に対して実質的に90度傾いている必要がある。このようにすれば、後述するように、多重記録された記録ビットから、第1の光および第2の光のうちのいずれか一方により記録された記録ビットから得られる信号容量の2倍の信号容量を得ることができる。
情報を記録する際に記録層212に集光された光の直径は、対物レンズ10の開口数(NA)が例えば0.85の場合、約0.45μmである。記録層211と記録層212との層間距離が、例えば5μmである場合、記録層211を通過するときの光の最少直径は、約16μmである。従って、記録層211に照射される単位面積あたり照射光量は記録層212のそれの約(0.45/16)以下(約1/1000以下)となる。図5に示したように、記録層212に照射される光量が、例えば、500(nJ/μm)であれば、記録層211に照射される光量は、その約1/1000以下の、0.5(nJ/μm)であり、記録層211における光の吸収率はほぼ、0%である。したがって、記録層を10層以上、さらには100層以上を備え、三次元記録が可能な情報記録媒体の実現が可能となる。
偏光面方向がWp1方向の記録光で記録ビット214(図1参照)を形成した場合、図2に示すように、記録ビット214では、記録ビット形成前にWp1方向と同方向に配向していた感光性ポリマー(第2の側鎖)の一部が、Wp1方向に対して直角な方向、すなわちEp方向に配向する。そのため、Ep方向からの屈折率は、例えば、Δn1ほど増加する。一方、Wp1方向と同方向に配向していた感光性ポリマー(第2の側鎖)は減少することから、Wp1方向からの屈折率は、Δn1ほど減少する(図2では、−Δn1と示している)。記録ビットが形成された領域(記録ビット214)の屈折率と、記録ビットが形成されていない領域の屈折率との差は、例えば、0.05〜0.25程度となる。
一方、偏光面方向がWp2方向の記録光で記録ビットと形成した場合、記録ビットでは、記録ビット形成前にWp2方向と同方向に配向していた感光性ポリマー(第2の側鎖)の一部が、Wp2方向に対して直角な方向、すなわちRp方向に配向する。そのため、Rp方向からの屈折率は、例えば、Δn2ほど増加する。一方、Wp2方向と同方向に配向していた感光性ポリマー(第2の側鎖)は減少することから、Wp2方向からの屈折率は、Δn2ほど減少する(図2では、−Δn2と示している)。
次に、記録マークの再生方法について説明する。
再生光を出射する光源2(発振波長655nm、図1参照)から出射されたレーザ光は、コリメータレンズ3により平行光となる。この時の再生光(レーザ光)の偏光面方向が、Wp1方向(図2参照)の記録光の偏光面方向に対しては45度、Wp2方向(図2参照)の記録光の偏光面方向に対しては90度ほど傾向くように、1/2波長板4を回転させる。
本実施の形態では、再生光の偏光面方向を、1/2波長板4を、所定の角度だけ回転することにより制御しているが、これに制限されない。例えば、再生光を出射する光源を所定の位置に配置することによっても、再生光の偏光面方向を、Wp1方向(図2参照)およびWp2方向(図2参照)のうちのいずれか一方の偏光面方向に対して90度傾むけることができる。
次いで、再生光は対物レンズ10により記録層212に集光される。次に、記録ビット214からの反射光は、対物レンズ10によって平行光に戻され、平行光の一部はハーフミラー5で直角方向に曲げられ、偏光ビームスプリッター6に導かれる。反射光は、偏光ビームスプリッター6によって、偏光面方向がWp1方向、Ep方向の光に分光され、これらの光はそれぞれホトエディター7,8に導かれる。ホトエディター7,8は、それぞれ、偏光面方向がWp1方向、Ep方向の光を受光できる位置に配置されている。
次に、ホトエディター7,8からの出力について説明する。
上述のとおり、偏光面方向がWp1方向の記録光により記録ビットが形成されている場合、偏光面方向がWp1方向の光を受光したホトエディター7から出力される信号では、記録ビットが形成されていない領域で反射した光よりも、屈折率がΔn1だけ小さくなる。一方、偏光面方向がEp方向の光を受光したホトエディター8から出力される信号では、記録ビットが形成されていない領域で反射した光よりも、屈折率がΔn1だけ大きくなる。すなわち、ホトエディター7から出力される信号と、ホトエディター8から出力される信号は、屈折率に関しては逆位相となって検出される。
これらの屈折率に関する信号をAmp1、Amp2を通して出力すると、Amp1は差動アンプなので、ホトエディター7から出力される信号とホトエディター8から出力される信号とが加算され、DfOutから信号を得ることができる。尚、Amp2は加算アンプであるので、ホトエディター7から出力される信号とホトエディター8から出力される信号とが互いに打ち消され、AddOutからは信号を得ることはできない。
偏光面方向がWp2方向の記録光により記録ビットが形成されている場合、記録層の記録ビットが形成された領域では、記録ビット形成前にWp2方向と同方向に配向していた感光性ポリマー(第2の側鎖)の一部が、Wp2方向に直角な方向、すなわち、Rp方向に配向する。そのため、Rp方向からの屈折率は、例えば、Δn2ほど増加する。一方、Wp2方向と同方向に配向していた感光性ポリマー(第2の側鎖)は減少することから、Wp2方向からの屈折率は、Δn2ほど減少する。偏光ビームスプリッター6により反射光が偏光面方向がWp1方向とEp方向の光に分離されると、これにともない、上記の屈折率の増減も分離されて検出されることとなる。偏光面方向がWp1方向の光については、Δn2×cos45の屈折率増加と等分の屈折率低下が起こっているから、結局、偏光面方向がWp1方向の光からは、屈折率変化は検出されない。偏光面方向がEp方向の光からのみから屈折率変化が検出されることなる。
したがって、偏光面方向がWp1方向の光に含まれる信号を検出するホトディテクター7からは信号は出力されず、偏光面方向がEp方向の光に含まれる信号を検出するホトディテクター8のみから信号が出力される。この場合、差動アンプAmp1および加算アンプAmp2の両方からから信号を得ることができ、したがって、DfOutおよびaddOutの両方からから信号を得ることができる。しかし、アンプAmp3(図示せず)によって、差動アンプAmp1と加算アンプAmp2とから適当な量だけ差動をとり、DfOutから信号が得られないようにすることができる。この場合は、AddOutから信号が得られ、Dfoutからは信号は得られない。
以上のようにして、偏向面方向がWp1方向の第1の光と、偏光面方向(Wp2方向)がWp1方向に対して45度傾斜した第2の光の両方を用いて多重記録された記録ビットから、第1の光および第2の光のうちのいずれか一方により記録された記録ビットから得られる信号の2倍の信号を得ることができる。
次に、記録ビットの消去について説明する。
記録ビットを消去は、感光性ポリマーの光学軸をランダムに配向させることで行える。したがって、消去光には、円偏光を用いればよい。円偏光を用いれば、感光性ポリマーの光学軸の方向が回転されるので、全体として異方性が無い状態となる。配向性のない無定形のポリマーは複屈折を示さず、記録ビットは消去されることとなる。また、消去光としてランダム偏光を用い、または、加熱により、一度に記録層に形成された複数の記録ビットを削除するようにしてもよい。
(B)次に、情報記録媒体Bに対して情報を記録または再生する本実施形態の記録再生方法、情報の消去方法、および本実施形態の情報記録再生装置について説明する。
情報記録媒体Bは、例えば、図3に示すように、感光性ポリマーが単一方向の光学軸を有しており、その光学軸は、例えば、Pa方向に配向している。そのため、偏向面方向がWp1方向の第1の光および偏向面方向がWp2方向の第2の光のうちのいずれか一方の光の偏向面方向をPa方向に配向した光学軸に一致させると、記録にともなう記録層の屈折率変化を大きくすることができる。図3に示した例では、第1の光の偏向面方向(Wp1方向)をPa方向に一致させている。尚、情報記録媒体Bに対して情報を記録するに際しても、情報記録媒体Aに対して情報を記録する場合と同様に、第2の光の偏向面方向は、Wp1方向に対して実質的に45度傾いている。
記録ビットが形成された領域(記録ビット214)の屈折率と、記録ビットが形成されていない領域の屈折率との差は、例えば、0.5程度となる。この屈折率差は、初期状態に光学軸が一方向に配向していることから、情報記録媒体Aのそれよりも大きい。
以上のようにして、偏向面方向がWp1方向の第1の光と、偏光面方向(Wp2方向)がWp1方向に対して45度傾斜した第2の光の両方を用いて多重記録された記録ビットから、情報を再生する方法については、情報記録媒体Aに記録された情報の再生方法と同様であるので省略する。
次に、記録ビットの消去について説明する。
記録ビットの消去は、感光性ポリマーの光学軸をPa方向に配向させることで行える。消去光には、偏向面方向がPa方向に直行するレーザ光、すなわち偏向面方向がEp方向のレーザ光を用いればよい。このように、偏向面方向がPa方向に直行するレーザ光を照射すれば、感光性ポリマーの光学軸はPa方向に揃い、初期化状態にもどる。
(実施形態2)
実施形態2の情報記録媒体では、感光性ポリマーとして、3−ブロモ−4−[6−(2−メチルプロペノイル)ヘキソキシ]安息香酸4’−シアノ−2’、6’−ジブロモフェニル(構造式は下記式(10)に記載)含む感光性ポリマーBに(化4)のスチルベン系化合物(5)〜(9)が結合された感光性ポリマーCを用いる。このこと以外は実施形態1の情報記録媒体と同様である。尚、下記式(11)には、3−ブロモ−4−[6−(2−メチルプロペノイル)ヘキソキシ]安息香酸4’−シアノ−2’,6’−ジブロモフェニルに、スチルベン系化合物(6)が結合された様子を示している。
Figure 2004104696
スチルベン系化合物(6)を含む感光性ポリマーCの最大吸収波長λmaxは430nmである。一方、感光性ポリマーBの最大吸収波長λmaxは380nmである。尚、スチルベン系化合物(5)を含む感光性ポリマーの最大吸収波長λmaxは400nmであり、スチルベン系化合物の長さ(長軸の長さ)が長いほど最大吸収波長が長い方にシフトすることが分かった。
スチルベン系化合物(6)を含む感光性ポリマーCの2光子吸収断面積は100GMR(GMR=10−5cm−1s・photon−1)程度であった。一方、感光性ポリマーBの2光子吸収断面積は、1GMRであった。また、スチルベン系化合物(5)を含む感光性ポリマーCの2光子吸収断面積は25GMR、スチルベン系化合物(7)を含む感光性ポリマーCの2光子吸収断面積は150GMR、スチルベン系化合物(8)を含む感光性ポリマーCの2光子吸収断面積は250GMRであった。この結果から、スチルベン系化合物の長さ(長軸の長さ)が長くなるにつれて、2光子吸収断面積が大きくなることが分かった。尚、2光子吸収断面積が大きほど、記録感度は向上する。
しかし、スチルベン系化合物の長軸の長さが長すぎると、感光性ポリマーの最大吸収波長が大きくなりすぎ、例えば、スチルベン系化合物(8)を含む感光性ポリマーでは、最大吸収波長が800nmとなってしまう。感光性ポリマーの吸収波長が長すぎると記録密度が低下してしまう。高密度記録の観点から、λmaxは最大でも400nm前後であることが好ましい。
したがって、記録感度および記録密度の双方を考慮すれば、特に、(化3)のスチルベン系化合物(6)が第1の側鎖または第2の側鎖のいずれか一方に結合されていると好ましい。
スチルベン系化合物(6)を含む感光性ポリマーCの最大吸収波長は430nmであるので、記録光の波長は860nmが最適であるが、例えば、波長800nmの記録光を用いて2光子吸収により情報を記録すると、感光性ポリマーCを用いた情報記録媒体の記録感度は、感光性ポリマーBを用いた情報記録媒体のそれの80倍に高まることが、分子軌道解析によるシミュレーションの結果分かった。そのため、記録光の光源(半導体レーザ)の出力が約1.25Wと比較的小さくても情報の記録が可能となる。
産業上の利用の可能性
本発明の情報記録媒体およびその記録再生方法、並びに情報記録再生装置によれば、高速記録および高速消去が可能な情報記録媒体およびその記録再生方法、並びに情報記録再生装置を提供できる。
本発明は、情報記録媒体およびその記録再生方法、並びに情報記録再生装置に関する。
近年、情報量の大量化に伴って情報記録媒体の高容量化が強く求められている。情報記録媒体の高容量化を実現する有効な手段として、記録層の多層化がある。図6に、複数の記録層を含む情報記録媒体を示している。図6に示すように、保護膜50と保持基板56との間には、分離層53と、記録光および再生光に対して半透明な記録層51とが交互に配置されている。この情報記録媒体では、記録光の吸収に伴う発熱作用によって生じる相転移、または変形を利用して、記録層51に情報を記録(一次光吸収記録)できる。
しかし、この情報記録媒体では、記録層の層数が例えば4層以上になると、記録層51を透過する光の減衰が大きくなる。そのため、この情報記録媒体では、記録層51の層数を4層以上にすることができず、さらなる高容量化は困難である。
近年では、多光子吸収を利用した情報の記録が可能な情報記録媒体が注目されている(例えば、特開平08−220688号公報参照)。その一例を図7に示している。この情報記録媒体では、図6に示した情報記録媒体の記録層51に代えて、記録光および再生光に対して実質的に透明な記録層52を用いている。多光子吸収を利用した情報の記録では、光電界が極めて強いところ、すなわち焦点12近傍の電子が励起されて光吸収反応が起こる。焦点12近傍以外では光吸収が起こらない。多光子吸収可能な記録材料は、通過する光(記録光および再生光)の減衰が極めて少なく、記録光および再生光に対して実質的に透明である。そのため、非常に多くの記録層を備えた情報記録媒体を実現できる。尚、図6および図7において、10は対物レンズであり、11は収束光である。
ところで、2光子吸収を利用して情報を記録する場合、記録材料に必要な条件としては、記録光および再生光に対して実質的に透明であることに加えて、下記の(1)(2)が挙げられる。(1)熱により記録材料の集光部分がビット状に変形する。(2)熱により屈折率変化が生じる。また、情報を消去可能な情報記録媒体では、記録材料は、2光子吸収に伴う発熱により、(3)上記ビット状の変形が熱により取り除かれ、または(4)変化した屈折率が熱により元に戻る性質を有している必要がある。今のところ、結晶相−アモルファス相間の相変化に伴う屈折率変化を利用した情報記録媒体が知られており、記録材料には、酸化テルル等の酸化物が用いられている(例えば、国際公開WO 03/102941号パンフレット参照)。
しかし、酸化テルル等の酸化物では、結晶相からアモルファス相への相変化は実用レベルの速度で行われるが、アモルファス相から結晶相への相変化は、長時間の熱作用が必要であり、変化速度が極めて遅い。例えば、結晶相からアモルファス相への相変化に必要な時間を、数n秒程度とすることは可能であるが、アモルファス相から結晶相へ相変化させるためには、数m秒の加熱時間が必要である。
本発明の情報記録媒体は、記録層を含み、前記記録層に記録光が集光されると2光子吸収が起こって前記記録層に情報が記録される情報記録媒体であって、前記記録層は、アクリレートまたはメタクリレートを含む主鎖と、前記主鎖から分岐した第1の側鎖および第2の側鎖とを含む感光性ポリマーを含み、前記第1の側鎖は、前記記録光を吸収すると、シス−トランス異性化反応をし、前記第2の側鎖は、前記第1の側鎖が前記異性化反応すると、前記第1の側鎖とほぼ同じ方法へと配向する性質を有していることを特徴とする。
本発明の記録再生方法は、本発明の情報記録媒体に対して情報を記録または再生する記録再生方法であって、前記記録層に前記記録光を集光して記録ビットを形成する工程と、前記記録ビットに再生光を照射して情報を再生する工程とを含むことを特徴とする。
本発明の別の記録再生方法は、本発明の情報記録媒体に対して情報を記録または再生する記録再生方法であって、前記記録層に前記記録光を集光して記録ビットを形成する工程と、前記記録ビットに再生光を照射して情報を再生する工程とを含み、前記記録光は、第1の光と第2の光とを含み、前記第2の光の偏光面方向は、前記第1の光の偏向面方向に対して実質的に45度傾いており、前記第1の光の偏向面方向および前記第2の光の偏向面方向のうちのいずれか一方は、前記感光性ポリマーの前記光学軸の配向方向と一致しており、前記再生光の偏向面方向は、前記第1の光の偏向面方向および前記第2の光の偏向面方向のうちのいずれか一方に対して実質的に90度傾いていることを特徴とする。
本発明の情報記録再生装置は、本発明の情報記録媒体に対して情報の記録または再生を行う情報記録再生装置であって、記録光を出射する光源と、再生光を出射する光源と、前記記録光および前記再生光が通過する1/2波長板と、前記記録光および前記再生光を前記情報記録媒体に集光する対物レンズと、を備え、前記1/2波長板は、前記1/2波長板を通過した記録光の偏光面方向を所定方向とすると、前記光源から出射された記録光の偏向面方向を、前記所定方向の偏光面方向に対して実質的に45度傾斜させることができ、前記所定方向の偏光面方向をWp1方向とし、前記所定方向に対して実質的に45度傾斜した偏光面方向をWp2方向とすると、前記光源から出射された再生光の偏光面方向を、前記Wp1方向および前記Wp2方向のうちのいずれか一方の偏光面方向に対して実質的に90度傾斜させることができるように、回転可能であることを特徴する。
本発明の別の情報記録再生装置は、本発明の情報記録媒体に対して情報の記録または再生を行う情報記録再生装置であって、記録光を出射する光源と、再生光を出射する光源と、前記記録光および前記再生光が通過する1/2波長板と、前記記録光および前記再生光を前記情報記録媒体に集光する対物レンズと、を備え、前記1/2波長板は、前記1/2波長板を通過した記録光の偏光面方向を所定方向とすると、前記光源から出射された記録光の偏向面方向を、前記所定方向の偏光面方向に対して実質的に45度傾斜させることができ、前記所定方向の偏光面方向をWp1方向とし、前記所定方向に対して実質的に45度傾斜した偏光面方向をWp2方向とすると、前記Wp1方向および前記Wp2方向のうちのいずれか一方と、前記感光性ポリマーの前記光学軸とを一致させることができ、前記光源から出射された再生光の偏光面方向を、前記Wp1方向および前記Wp2方向のうちのいずれか一方の偏光面方向に対して実質的に90度傾斜させることができるように、回転可能であることを特徴とする。
本明細書において、偏光面方向は、光の電界の振動方向を意味しており、偏光面方向は、光の進行方向に対して垂直な面内にある。
本発明の情報記録媒体の一例では、主鎖に共有結合した第1の側鎖は下記式(1)で、第2の側鎖は下記式(2)、
Figure 2004104696
で表された構造をしている。[式中、S1およびS2は、互いに独立して、OもしくはS原子またはNR1基であり、Rlは、水素、C1─C6─アルキルまたはフェニルであり、T1およびT2は、互いに独立して、任意に─O─、─S─、─NR1─または─OSiR1 2O─が割り込んでいてもよい(CR1,R12n基であり、nは、2から12の整数である。Q1およびQ2は、互いに独立して、─O─、─COO─、─OCO─、─CONR1─、─NR1CO─、─NR1─、─O─C64─COO─または─O─C64─CONR1─であり、それによって追加的に、S111およびS222は、互いに独立して、
Figure 2004104696
であってもよく、R2からR6は、互いに独立して、水素、ハロゲン、C1─C4─アルキル、C1─C4─アルコキシ、CF3、ニトロ、SO2CH3、SO2NH2またはシアノであり、ここで、置換基R2からR6の少なくとも1つは水素以外である必要があり、R7からR9は、互いに独立して、水素、C1─C6─アルキル、ヒドロキシル、C1─C6─アルコキシ、フェノキシ、C1─C6─アルキルチオ、フェニルチオ、ハロゲン、CF3、CCl3、CBr3、ニトロ、シアン、C1─C6─アルキルスルホニル、フェニルスルホニル、COOR1、アミノスルホニル、C1─C6─アルキルアミノスルホニル、フェニルアミノスルホニル、アミノカルボニル、C1─C6─アルキルアミノカルボニル、フェニルアミノカルボニルであり、R10は、水素、ハロゲン、C1─C6─アルキル、ヒドロキシル、C1─C6─アルコキシ、フェノキシ、C1─C4─アシルアミノ、C1─C4─アルキルスルホニルアミノである。
11は、水素、ハロゲン、C1─C6─アルキル、ヒドロキシル、C1─C6─アルコキシ、フェノキシであり、Yは、直接結合、─COO─、─OCO─、─CONH─、─NHCO─、─O─、─NH─、─N(CH3)または─N=N─であり、そしてX1およびX2は、互いに独立して、水素、ヒドロキシル、メルカプト、CF3、CCl3、CBr3、ハロゲン、シアン、ニトロ、COOR1、C1─C6─アルキル、C5─C12─シクロアルキル、C1─C12─アルコキシ、C1─C12─アルキルチオ、C6─C12─アリール、C6─C12─アリールオキシ、C6─C12─アリールチオ、C1─C6─アルキルスルホニル、C6─C12─アリールスルホニル、アミノスルホニル、C1─C6─アルキルアミノスルホニル、フェニルアミノスルホニル、アミノカルボニル、C1─C6─アルキルアミノカルボニル、フェニルアミノカルボニル、N(R12,R13)、NH─CO─R12、NH─SO2─R12、NH─CO─N(R1,R2)、NH─CO─O─R12またはSO2─CF3であり、ここで、R12およびR13は、互いに独立して、水素、C1─C4一アルキルまたはフェニルであるが、但し、R7からR11が水素を表しそして環BがC1─C4─アルキル、C1─C4─アルコキシ、ニトロまたはシアノで置換されている場合少なくとも1つの2番目の置換基もまた環A−Y一環B系内に存在していることを条件とする。]に従う少なくとも1つの構造で表される側鎖を有する。
または、感光性ポリマーは、Q1およびQ2のうちの少なくとも1つが─O─C64─COO─または─O─C64─CONR─であってもよい。
尚、これらの感光性ポリマーは、特開平8−109226号公報に記載された方法にて作製できる。
図4には、本実施形態の情報記録媒体の一例に用いられる感光性ポリマーの分光特性を示している。図4に示した分光特性の測定には、ポリマーボネートからなる基板上に感光性ポリマーを含む記録層(厚さ1μm)が積層された積層体を用いた。分光特性の測定には、分光器を用いた。記録層は、厚さが約1μmとなるように感光性ポリマーをスピンコート法にて基板に塗布し、乾燥して得た。尚、感光性ポリマーには、第1の側鎖が、3−ブロモ−4−[6−(2−メチルプロペノイル)ヘキソキシ]安息香酸(構造式は下記式(4)に記載)を含む感光性ポリマーを用いた。以下、この感光性ポリマーを感光性ポリマーAと略す。
Figure 2004104696
図4に示すように、感光性ポリマーAは、波長が約410nmの光に対して最大の吸収を示している。この吸収は、第1の側鎖によるものである。感光性ポリマーAは、波長が約655nm、約800nmの光についてはほとんど吸収しない。また、感光性ポリマーAは結晶構造を有していないことから、散乱による光透過損失はほとんどない。感光性ポリマーAからなる記録層に対する波長800nmのレーザ光の透過率は、記録層表面からの反射光を除くと、約100%である。
次に、感光性ポリマーAへ照射される照射光量と、感光性ポリマーAの照射光に対する吸収率との関係を調べた。この結果を図5に示している。尚、レーザ光の波長は800nmとした。
図5において、横軸は、対物レンズによって絞り込まれた焦点における照射光量(nJ/μm2)を、縦軸は感光性ポリマーAからなる記録層の表面からの反射損失を除いた、記録層(厚さ1μm)の光の吸収率(%)を示している。レーザ光のパルス幅は、発熱による影響を抑制するために、100フェムト秒(10-13秒)とした。
図5に示すように、照射光量が100nJ/μm2以下では、記録層では光の吸収はみられない。しかし、照射光量が100nJ/μm2を越えると、光の吸収率が急激に増加している。
また、図5に示すように、照射光量が250nJ/μm2であると、光の吸収率は約0.5%であり、照射光量が500nJ/μm2であると、光の吸収率は約2%であった。すなわち、この領域では、照射光量が2倍になると光の吸収率は4倍となってことが分かった。この結果から、感光性ポリマーAを含む記録層では、照射光量が100nJ/μm2を越えると2光子吸収が起こることがわかった。
2光子吸収により励起された電子は、(1)格子と衝突することにより熱へと変わって通常の非励起状態に戻るか、または、(2)励起光の半分の波長の光を放出して非励起状態に戻る。もし、(1)の現象が起こる場合は、感光性ポリマーAを含む記録層における光の吸収率は、レーザ光の波長が変化してもそれほど変化しないはずである。しかし、図4に示したように、感光性ポリマーAは、波長が約400nmの光に対して強い吸収を示している。したがって、記録層に例えば波長800nmの記録光を照射すると、波長800nmの収束光(記録層の集光部では照射光量が例えば100nJ/μm2を越えている。)により電子が励起され、励起電子は波長400nmの光を放出することにより非励起状態に戻り、あたかも波長400nmの光が第1の側鎖に吸収されたような現象が生じているものと理解される。このような現象が第1の側鎖に生じると、第1の側鎖はシス−トランス異性化反応(形態変化)する。
尚、第1の側鎖がトランス化する際、第1の側鎖の配向方向には、光電界に反応しない安定な方向と、光電界方向に反応し易い不安定な方向とがある。光電界に対して反応する方向に配向したトランス体は、時間がたつとシス体に戻り、シス体に戻った第1の側鎖は再度光によりトランス化されるというサイクルを繰り返す。そして、最終的には、第1の側鎖の配向方向は光電界に反応しない方向へ揃う(Weigert効果)。
一方、第2の側鎖については、第1の側鎖が形態変化することが原因で、その長軸が、一方向に揃った第1の側鎖の長軸とほぼ同じ方法へ配向する。
これらの結果として、記録層に大きな屈折率変化(複屈折)が生じ、情報が記録される。
本発明の情報記録媒体に用いられる感光性ポリマーでは、第1の側鎖について、シス形からトランス形への変化速度と、この逆反応の速度はほぼ等しい。また、これらの速度は、相変化の速度よりも速く、特に、アモルファス相から結晶相への変化速度よりも遥かに速い。すなわち、上記感光性ポリマーを記録材料として用いた本実施形態の情報記録媒体は、相変化型の情報記録媒体よりも、情報の記録速度および消去速度が速い。
また、照射光量が所定値未満、例えば100nJ/μm2以下である場合は、波長800nmの光に対して感光性ポリマーは実質的に透明である(図3参照)。そのため、複数の記録層のいずれかの記録層に例えば波長800nmの記録光を集光させたとき、その記録層以外の記録層に対して記録光は実質的に透明である。
以上のことから、本実施形態の情報記録媒体では、3次元記録が可能であり、相変化型の情報記録媒体よりも情報の記録および消去が高速で行える。
尚、感光性ポリマーは、情報の記録前後において、光の吸収域(吸収波長)がほとんど変化しない。そのため、記録光を出射する光源および再生光を出射する光源の波長は同一でもよい。記録光および再生光の波長が同一であると、情報記録再生装置の光学系は、光源が1つでよく、光学系の構造を簡素化できる。
本実施形態の情報記録媒体では、第1の側鎖および第2の側鎖のうちの少なくとも一方に、スチルベン系化合物が結合されていると好ましい。スチルベン系化合物は、例えば、上述したX1、X2、R1〜R8のうちのいずれか1つに結合されていると好ましい。スチルベン系化合物には、例えば、下記式(5)〜(9)
Figure 2004104696
で表されるものが挙げられる。これらのスチルベン系化合物は2光子吸収係数(2光子吸収断面積)が大きいので、これらのスチルベン系化合物が第1の側鎖および第2の側鎖のうちの少なくとも一方に結合されていると、シス−トランス異性化が起こり易くなって、記録感度が向上する。感光性ポリマーが上記スチルベン系化合物を含まないと、2光子吸収により情報を記録するためには、数mJ/μm2程度の照射光量が必要であるが、感光性ポリマーが上記スチルベン系化合物を含んでいると、数百nJ/μm2程度の照射光量で記録できる。
尚、これらのスチルベン系化合物は、文献に記載された方法にて作製できる(例えば、「Photoaddressable Polymers For Rewritable Optical Disc System」Y.Sabi,M.Yamamoto,H.Watanabe eta proceedings of ISOM 2000参照)。
本発明の情報記録媒体の一例において、好ましくは、複数の記録層を含み、複数の記録層は記録光および再生光に対して実質的に透明な分離層を介して積層されている。尚、本明細書において、記録光および再生光に対して実質的に透明であるとは、記録光および再生光のうち散乱成分を除いて記録光および再生光をほとんど吸収なしに透過させることをいう。具体的には、1層あたりについて、光の透過率が95%以上であることが好ましく、光の透過率が99%以上であることがより好ましい。
ところで、本発明の情報記録媒体は、その製造過程において、例えば、基板上に感光性ポリマーを含む塗料を塗布する工程を含む。このようにして作製された情報記録媒体において、感光性ポリマー(記録層)の光学軸はランダムに配向しており、感光性ポリマーを含む記録層は、光学的にほぼ等方性を有している。本発明の情報記録媒体は、このままでも使用できるが、感光性ポリマーが、一軸異方性を有するように初期化されていてもよい。感光性ポリマーが、単一方向の光学軸を有するように初期化されていると、感光性ポリマーが光学的にほぼ等方性を示す情報記録媒体よりも、大きな記録信号を得ることができる。
本発明の記録再生方法および情報記録再生装置において、「実質的に45度」とは、誤差範囲も含める趣旨であり、具体的には、45度±10度を意味する。±10度程度の誤差であれば、情報記録再生装置の回路系によってこの誤差を吸収または補正できる。また、「実質的に90度」とは、誤差範囲も含める趣旨であり、具体的には、90度±15度を意味する。±15度程度の誤差であれば、情報記録再生装置の回路系によってこの誤差を吸収または補正できる。
本発明の記録再生方法の一例において、好ましくは、記録光は、第1の光と第2の光とを含み、前記第2の光の偏光面方向は、前記第1の光の偏向面方向に対して実質的に45度傾いていており、前記再生光の偏向面方向は、前記第1の光の偏向面方向および前記第2の光の偏向面方向のうちのいずれか一方に対して実質的に90度傾いている。
本発明の記録再生方法の一例において、好ましくは、記録光の波長と再生光の波長が同じである。
本発明の情報記録再生装置の一例では、好ましくは、記録光を出射する光源の波長と再生光を出射する光源の波長とが同じである。
本発明の情報記録再生装置の一例では、好ましくは、消去光を出射する光源を備えている。
(実施形態1)
本実施形態1の情報記録媒体およびその記録再生方法、並びに情報記録再生装置について、図1および図2を用いて説明する。
図1は、本発明の情報記録媒体の一例を示す断面構成および情報記録再生装置の光学ヘッドの略構成を示している。図2は、後述する情報記録媒体Aに対して照射される記録光および再生光の偏光面方向を示す図であり、図3は、後述する情報記録媒体Bに対して照射される記録光および再生光の偏光面方向を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の情報記録媒体では、保持基板256上に記録部213および保護層250が形成されている。記録部213は、記録層211,212とこれらの間に配置された分離層253とを含み、記録層と分離相とが交互に積層されている。本実施形態の情報記録媒体は、記録部213に複数の記録層211,212を含むことで、平面的な情報の記録に加えて、厚さ方向への情報の記録が可能である。
図1に示すように、本実施形態の情報記録媒体は、情報の記録時および再生時には、保護層250が光の入射側となる。記録時には、レーザ光を対物レンズ10により記録層211,212のいずれかに集光して収束光11)、記録ビット214を形成する。再生時には、レーザ光を対物レンズ10により所望の記録層に集光し(収束光7)、記録ビット214によって反射された光を利用して情報を再生する。
本実施形態の情報記録媒体では、情報が記録される前(使用前)において、感光性ポリマーの光学軸または第2の側鎖がランダム配向した状態にあり、記録層が光学的にほぼ等方性を示してもよいが(以下、この形態の情報記録媒体を、情報記録媒体Aとも言う。)、感光性ポリマーが単一方向の光学軸を有するように初期化されていてもよい(以下、この形態の情報記録媒体を、情報記録媒体Bとも言う。)。初期化は、例えば、所定の偏光面方向の光を記録層に照射すれば行える。例えば、基板上に感光性ポリマーを含む塗料を塗布して記録層を形成した後、偏光面方向が、情報記録媒体の半径方向に対して90度傾いた(直交する)光を記録層に照射しながら、情報記録媒体を回転すれば、光学軸を情報記録媒体の半径方向に揃えることができる。
(A)次に、情報記録媒体Aに対して情報を記録または再生する本実施形態の記録再生方法、情報の消去方法、および本実施形態の情報記録再生装置について説明する。
図1に示した記録光を出射する光源1は、例えば、波長800nmの半導体レーザであり、再生光を出射する光源2は、例えば、波長655nmの半導体レーザである。まず、光源1から出射された波長800nmの記録光(レーザ光)は、コリメータレンズ3により平行光にされる。次いで、平行光はハーフミラー5、1/2波長板(水晶)4を通過する。
記録時には、例えば、偏光面方向が所定の方向に向いたレーザ光のその偏光面方向(例えば、図2ではWp1方向)と、1/2波長板4の光学軸とを一致させて、1/2波長板4がレーザ光に何ら作用しないようにする。
1/2波長板4を回転させて、1/2波長板4の光学軸とレーザ光の偏光面方向とをずらせば、レーザ光が1/2波長板を通過するときに、レーザ光の偏光面方向は1/2波長板の光学軸に向く(一致する)ようになる。偏光面方向がWp1方向(図2参照)の記録光を光源から出射し、1/2波長板4の回転角を、レーザ光の偏光面方向がWp2方向(図3参照)となるように調整し、偏光面方向がWp2方向に制御された記録光を用いて情報を記録してもよい。ただし、この場合、Wp2方向の偏光面方向は、Wp1方向の偏光面方向(所定の方向)に対して、実質的に45度の角度で傾斜させる。
このように、同一の記録層に、偏光面方向がWp1方向の記録光(第1の光)と、偏光面方向がWp2方向の記録光(第2の光)の両方を用いて記録ビットを形成すれば、多重記録でき、記録密度を、第1の光および第2の光のうちのいずれか一方により情報を記録する場合の2倍に高めることが可能となる。
1/2波長板を回転させることにより、記録光の偏光面方向の切替えを行う場合は、Wp1方向およびWp2方向のいずれか一方の偏光面方向の光を照射した後、他方の偏光面方向の光を照射することとなる。ただし、これに限定されず、第1の光の照射および第2の光の照射を同時に行ってもよい。この場合は、記録光を出射する光源を2つ用い、一方の光源から出射される記録光の偏光面方向をWp1方向とし、他方の光源から出射される記録光の偏光面方向をWp2方向とする。
尚、図2では、記録光の偏光面方向(Wp1方向)が、情報記録媒体の半径方向Aと一致しているが、これに制限されない。また、必ずしも、光源1から出射された記録光の偏光面方向と、1/2波長板の光学軸とが一致していなくてもよく、1/2波長板4を回転させて、1/2波長板を通過した記録光の偏光面方向を所定方向、例えば、Wp1方向としてもよい。
図1に示すように、偏光ビームスプッリッター6では、入射光は、偏光面方向が異なる2種の光に分離される。第1の光および第2の光のうちのいずれか一方の偏光面方向に、偏光ビームスプッリッター6の一つの出力方向を合わせるように、偏光ビームスプッリッター6を配置しておくと、情報記録媒体で反射した光(再生光)は、偏光面方向が互いに90度の角度をなす2方向の光に分離される。ただし、情報記録媒体で反射した光(再生光)を、偏光面方向が互いに90度の角度をなす2方向の光に分離するためには、再生光の偏向面方向が、第1の光の偏向面方向および第2の光の偏向面方向のうちのいずれか一方の偏向面方向に対して実質的に90度傾いている必要がある。このようにすれば、後述するように、多重記録された記録ビットから、第1の光および第2の光のうちのいずれか一方により記録された記録ビットから得られる信号容量の2倍の信号容量を得ることができる。
情報を記録する際に記録層212に集光された光の直径は、対物レンズ10の開口数(NA)が例えば0.85の場合、約0.45μmである。記録層211と記録層212との層間距離が、例えば5μmである場合、記録層211を通過するときの光の最少直径は、約16μmである。従って、記録層211に照射される単位面積あたり照射光量は記録層212のそれの約(0.45/16)2以下(約1/1000以下)となる。図5に示したように、記録層212に照射される光量が、例えば、500(nJ/μm2)であれば、記録層211に照射される光量は、その約1/1000以下の、0.5(nJ/μm2)であり、記録層211における光の吸収率はほぼ、0%である。したがって、記録層を10層以上、さらには100層以上を備え、三次元記録が可能な情報記録媒体の実現が可能となる。
偏光面方向がWp1方向の記録光で記録ビット214(図1参照)を形成した場合、図2に示すように、記録ビット214では、記録ビット形成前にWp1方向と同方向に配向していた感光性ポリマー(第2の側鎖)の一部が、Wp1方向に対して直角な方向、すなわちEp方向に配向する。そのため、Ep方向からの屈折率は、例えば、Δn1ほど増加する。一方、Wp1方向と同方向に配向していた感光性ポリマー(第2の側鎖)は減少することから、Wp1方向からの屈折率は、Δn1ほど減少する(図2では、−Δn1と示している)。記録ビットが形成された領域(記録ビット214)の屈折率と、記録ビットが形成されていない領域の屈折率との差は、例えば、0.05〜0.25程度となる。
一方、偏光面方向がWp2方向の記録光で記録ビットと形成した場合、記録ビットでは、記録ビット形成前にWp2方向と同方向に配向していた感光性ポリマー(第2の側鎖)の一部が、Wp2方向に対して直角な方向、すなわちRp方向に配向する。そのため、Rp方向からの屈折率は、例えば、Δn2ほど増加する。一方、Wp2方向と同方向に配向していた感光性ポリマー(第2の側鎖)は減少することから、Wp2方向からの屈折率は、Δn2ほど減少する(図2では、−Δn2と示している)。
次に、記録マークの再生方法について説明する。
再生光を出射する光源2(発振波長655nm、図1参照)から出射されたレーザ光は、コリメータレンズ3により平行光となる。この時の再生光(レーザ光)の偏光面方向が、Wp1方向(図2参照)の記録光の偏光面方向に対しては45度、Wp2方向(図2参照)の記録光の偏光面方向に対しては90度ほど傾向くように、1/2波長板4を回転させる。
本実施の形態では、再生光の偏光面方向を、1/2波長板4を、所定の角度だけ回転することにより制御しているが、これに制限されない。例えば、再生光を出射する光源を所定の位置に配置することによっても、再生光の偏光面方向を、Wp1方向(図2参照)およびWp2方向(図2参照)のうちのいずれか一方の偏光面方向に対して90度傾けることができる。
次いで、再生光は対物レンズ10により記録層212に集光される。次に、記録ビット214からの反射光は、対物レンズ10によって平行光に戻され、平行光の一部はハーフミラー5で直角方向に曲げられ、偏光ビームスプリッター6に導かれる。反射光は、偏光ビームスプリッター6によって、偏光面方向がWp1方向、Ep方向の光に分光され、これらの光はそれぞれホトエディター7,8に導かれる。ホトエディター7,8は、それぞれ、偏光面方向がWp1方向、Ep方向の光を受光できる位置に配置されている。
次に、ホトエディター7,8からの出力について説明する。
上述のとおり、偏光面方向がWp1方向の記録光により記録ビットが形成されている場合、偏光面方向がWp1方向の光を受光したホトエディター7から出力される信号では、記録ビットが形成されていない領域で反射した光よりも、屈折率がΔn1だけ小さくなる。一方、偏光面方向がEp方向の光を受光したホトエディター8から出力される信号では、記録ビットが形成されていない領域で反射した光よりも、屈折率がΔn1だけ大きくなる。すなわち、ホトエディター7から出力される信号と、ホトエディター8から出力される信号は、屈折率に関しては逆位相となって検出される。
これらの屈折率に関する信号をAmp1、Amp2を通して出力すると、Amp1は差動アンプなので、ホトエディター7から出力される信号とホトエディター8から出力される信号とが加算され、DfOutから信号を得ることができる。尚、Amp2は加算アンプであるので、ホトエディター7から出力される信号とホトエディター8から出力される信号とが互いに打ち消され、AddOutからは信号を得ることはできない。
偏光面方向がWp2方向の記録光により記録ビットが形成されている場合、記録層の記録ビットが形成された領域では、記録ビット形成前にWp2方向と同方向に配向していた感光性ポリマー(第2の側鎖)の一部が、Wp2方向に直角な方向、すなわち、Rp方向に配向する。そのため、Rp方向からの屈折率は、例えば、Δn2ほど増加する。一方、Wp2方向と同方向に配向していた感光性ポリマー(第2の側鎖)は減少することから、Wp2方向からの屈折率は、Δn2ほど減少する。偏光ビームスプリッター6により反射光が偏光面方向がWp1方向とEp方向の光に分離されると、これにともない、上記の屈折率の増減も分離されて検出されることとなる。偏光面方向がWp1方向の光については、Δn2×cos45の屈折率増加と等分の屈折率低下が起こっているから、結局、偏光面方向がWp1方向の光からは、屈折率変化は検出されない。偏光面方向がEp方向の光からのみから屈折率変化が検出されることなる。
したがって、偏光面方向がWp1方向の光に含まれる信号を検出するホトディテクター7からは信号は出力されず、偏光面方向がEp方向の光に含まれる信号を検出するホトディテクター8のみから信号が出力される。この場合、差動アンプAmp1および加算アンプAmp2の両方からから信号を得ることができ、したがって、DfOutおよびaddOutの両方からから信号を得ることができる。しかし、アンプAmp3(図示せず)によって、差動アンプAmp1と加算アンプAmp2とから適当な量だけ差動をとり、DfOutから信号が得られないようにすることができる。この場合は、AddOutから信号が得られ、Dfoutからは信号は得られない。
以上のようにして、偏向面方向がWp1方向の第1の光と、偏光面方向(Wp2方向)がWp1方向に対して45度傾斜した第2の光の両方を用いて多重記録された記録ビットから、第1の光および第2の光のうちのいずれか一方により記録された記録ビットから得られる信号の2倍の信号を得ることができる。
次に、記録ビットの消去について説明する。
記録ビットを消去は、感光性ポリマーの光学軸をランダムに配向させることで行える。したがって、消去光には、円偏光を用いればよい。円偏光を用いれば、感光性ポリマーの光学軸の方向が回転されるので、全体として異方性が無い状態となる。配向性のない無定形のポリマーは複屈折を示さず、記録ビットは消去されることとなる。また、消去光としてランダム偏光を用い、または、加熱により、一度に記録層に形成された複数の記録ビットを削除するようにしてもよい。
(B)次に、情報記録媒体Bに対して情報を記録または再生する本実施形態の記録再生方法、情報の消去方法、および本実施形態の情報記録再生装置について説明する。
情報記録媒体Bは、例えば、図3に示すように、感光性ポリマーが単一方向の光学軸を有しており、その光学軸は、例えば、Pa方向に配向している。そのため、偏向面方向がWp1方向の第1の光および偏向面方向がWp2方向の第2の光のうちのいずれか一方の光の偏向面方向をPa方向に配向した光学軸に一致させると、記録にともなう記録層の屈折率変化を大きくすることができる。図3に示した例では、第1の光の偏向面方向(Wp1方向)をPa方向に一致させている。尚、情報記録媒体Bに対して情報を記録するに際しても、情報記録媒体Aに対して情報を記録する場合と同様に、第2の光の偏向面方向は、Wp1方向に対して実質的に45度傾いている。
記録ビットが形成された領域(記録ビット214)の屈折率と、記録ビットが形成されていない領域の屈折率との差は、例えば、0.5程度となる。この屈折率差は、初期状態に光学軸が一方向に配向していることから、情報記録媒体Aのそれよりも大きい。
以上のようにして、偏向面方向がWp1方向の第1の光と、偏光面方向(Wp2方向)がWp1方向に対して45度傾斜した第2の光の両方を用いて多重記録された記録ビットから、情報を再生する方法については、情報記録媒体Aに記録された情報の再生方法と同様であるので省略する。
次に、記録ビットの消去について説明する。
記録ビットの消去は、感光性ポリマーの光学軸をPa方向に配向させることで行える。消去光には、偏向面方向がPa方向に直行するレーザ光、すなわち偏向面方向がEp方向のレーザ光を用いればよい。このように、偏向面方向がPa方向に直行するレーザ光を照射すれば、感光性ポリマーの光学軸はPa方向に揃い、初期化状態にもどる。
(実施形態2)
実施形態2の情報記録媒体では、感光性ポリマーとして、3−ブロモ−4−[6−(2−メチルプロペノイル)ヘキソキシ]安息香酸4'−シアノ−2'、6'−ジブロモフェニル(構造式は下記式(10)に記載)含む感光性ポリマーBに(化5)のスチルベン系化合物(5)〜(9)が結合された感光性ポリマーCを用いる。このこと以外は実施形態1の情報記録媒体と同様である。尚、下記式(11)には、3−ブロモ−4−[6−(2−メチルプロペノイル)ヘキソキシ]安息香酸4'−シアノ−2',6'−ジブロモフェニルに、スチルベン系化合物(6)が結合された様子を示している。
Figure 2004104696
スチルベン系化合物(6)を含む感光性ポリマーCの最大吸収波長λmaxは430nmである。一方、感光性ポリマーBの最大吸収波長λmaxは380nmである。尚、スチルベン系化合物(5)を含む感光性ポリマーの最大吸収波長λmaxは400nmであり、スチルベン系化合物の長さ(長軸の長さ)が長いほど最大吸収波長が長い方にシフトすることが分かった。
スチルベン系化合物(6)を含む感光性ポリマーCの2光子吸収断面積は100GMR(GMR=10-5cm-1s・photon-1)程度であった。一方、感光性ポリマーBの2光子吸収断面積は、1GMRであった。また、スチルベン系化合物(5)を含む感光性ポリマーCの2光子吸収断面積は25GMR、スチルベン系化合物(7)を含む感光性ポリマーCの2光子吸収断面積は150GMR、スチルベン系化合物(8)を含む感光性ポリマーCの2光子吸収断面積は250GMRであった。この結果から、スチルベン系化合物の長さ(長軸の長さ)が長くなるにつれて、2光子吸収断面積が大きくなることが分かった。尚、2光子吸収断面積が大きほど、記録感度は向上する。
しかし、スチルベン系化合物の長軸の長さが長すぎると、感光性ポリマーの最大吸収波長が大きくなりすぎ、例えば、スチルベン系化合物(8)を含む感光性ポリマーでは、最大吸収波長が800nmとなってしまう。感光性ポリマーの吸収波長が長すぎると記録密度が低下してしまう。高密度記録の観点から、λmaxは最大でも400nm前後であることが好ましい。
したがって、記録感度および記録密度の双方を考慮すれば、特に、(化5)のスチルベン系化合物(6)が第1の側鎖または第2の側鎖のいずれか一方に結合されていると好ましい。
スチルベン系化合物(6)を含む感光性ポリマーCの最大吸収波長は430nmであるので、記録光の波長は860nmが最適であるが、例えば、波長800nmの記録光を用いて2光子吸収により情報を記録すると、感光性ポリマーCを用いた情報記録媒体の記録感度は、感光性ポリマーBを用いた情報記録媒体のそれの80倍に高まることが、分子軌道解析によるシミュレーションの結果分かった。そのため、記録光の光源(半導体レーザ)の出力が約1.25Wと比較的小さくても情報の記録が可能となる。
本発明の情報記録媒体およびその記録再生方法、並びに情報記録再生装置によれば、高速記録および高速消去が可能な情報記録媒体およびその記録再生方法、並びに情報記録再生装置を提供できる。
図1は、本発明の情報記録媒体の一例を示す断面構成、および情報記録再生装置の光学ヘッドを示す略構成図ある。 図2は、光学軸がランダムに配向した情報記録媒体に対して照射される記録光および再生光の偏光面方向を示す図である。 図3は、単一方向の光学軸を有するように初期化された情報記録媒体に対して照射される記録光および再生光の偏光面方向を示す図である。 図4は、図1に示した情報記録媒体を構成する感光性ポリマーの分光特性を示した図である。 図5は、図1に示した情報記録媒体を構成する感光性ポリマーに照射される照射光量と、感光性ポリマーの照射光に対する吸収率との関係を示した図である。 図6は、従来の情報記録媒体の一例の断面構成を示す図である。 図7は、従来の情報記録媒体の一例の断面構成を示す図である。

Claims (16)

  1. 記録層を含み、前記記録層に記録光が集光されると2光子吸収が起こって前記記録層に情報が記録される情報記録媒体であって、
    前記記録層は、アクリレートまたはメタクリレートを含む主鎖と、前記主鎖から分岐した第1の側鎖および第2の側鎖とを含む感光性ポリマーを含み、
    前記第1の側鎖は、前記記録光を吸収すると、シス−トランス異性化反応をし、
    前記第2の側鎖は、前記第1の側鎖が前記異性化反応すると、前記第1の側鎖とほぼ同じ方法へと配向する性質を有していることを特徴とする情報記録媒体。
  2. 前記第1の側鎖および前記第2の側鎖のうちの少なくとも一方に、スチルベン系化合物が結合されている請求の範囲1に記載の情報記録媒体。
  3. 前記スチルベン系化合物は、下記式:
    Figure 2004104696
    で表された構造をしている請求の範囲2に記載の情報記録媒体。
  4. 複数の前記記録層を含み、前記複数の記録層は前記記録光および前記再生光に対して実質的に透明な分離層を介して積層されている請求の範囲1に記載の情報記録媒体。
  5. 前記感光性ポリマーが単一方向の光学軸を有している請求の範囲1に記載の情報記録媒体。
  6. 請求の範囲1に記載の情報記録媒体に対して情報を記録または再生する記録再生方法であって、
    前記記録層に前記記録光を集光して記録ビットを形成する工程と、
    前記記録ビットに再生光を照射して情報を再生する工程とを含むことを特徴とする記録再生方法。
  7. 前記記録光は、第1の光と第2の光とを含み、前記第2の光の偏光面方向は、前記第1の光の偏向面方向に対して実質的に45度傾いていており、前記再生光の偏向面方向は、前記第1の光の偏向面方向および前記第2の光の偏向面方向のうちのいずれか一方に対して実質的に90度傾いている請求の範囲6に記載の記録再生方法。
  8. 前記記録光の波長と再生光の波長が同じである請求の範囲6に記載の記録再生方法。
  9. 請求の範囲5に記載の情報記録媒体に対して情報を記録または再生する記録再生方法であって、
    前記記録層に前記記録光を集光して記録ビットを形成する工程と、
    前記記録ビットに再生光を照射して情報を再生する工程とを含み、
    前記記録光は、第1の光と第2の光とを含み、前記第2の光の偏光面方向は、前記第1の光の偏向面方向に対して実質的に45度傾いており、前記第1の光の偏向面方向および前記第2の光の偏向面方向のうちのいずれか一方は、前記感光性ポリマーの前記光学軸の配向方向と一致しており、
    前記再生光の偏向面方向は、前記第1の光の偏向面方向および前記第2の光の偏向面方向のうちのいずれか一方に対して実質的に90度傾いていることを特徴とする記録再生方法。
  10. 前記記録光の波長と再生光の波長が同じである請求の範囲9に記載の記録再生方法。
  11. 請求の範囲1に記載の情報記録媒体に対して情報の記録または再生を行う情報記録再生装置であって、
    記録光を出射する光源と、
    再生光を出射する光源と、
    前記記録光および前記再生光が通過する1/2波長板と、
    前記記録光および前記再生光を前記情報記録媒体に集光する対物レンズと、を備え、
    前記1/2波長板は、前記1/2波長板を通過した記録光の偏光面方向を所定方向とすると、前記光源から出射された記録光の偏向面方向を、前記所定方向の偏光面方向に対して実質的に45度傾斜させることができ、前記所定方向の偏光面方向をWp1方向とし、前記所定方向に対して実質的に45度傾斜した偏光面方向をWp2方向とすると、前記光源から出射された再生光の偏光面方向を、前記Wp1方向および前記Wp2方向のうちのいずれか一方の偏光面方向に対して実質的に90度傾斜させることができるように、回転可能であることを特徴する情報記録再生装置。
  12. 前記記録光を出射する光源の波長と前記再生光を出射する光源の波長とがほぼ同じである請求の範囲11に記載の情報記録再生装置。
  13. 消去光を出射する光源をさらに備えた請求の範囲11に記載の情報記録再生装置。
  14. 請求の範囲5に記載の情報記録媒体に対して情報の記録または再生を行う情報記録再生装置であって、
    記録光を出射する光源と、
    再生光を出射する光源と、
    前記記録光および前記再生光が通過する1/2波長板と、
    前記記録光および前記再生光を前記情報記録媒体に集光する対物レンズと、を備え、
    前記1/2波長板は、前記1/2波長板を通過した記録光の偏光面方向を所定方向とすると、前記光源から出射された記録光の偏向面方向を、前記所定方向の偏光面方向に対して実質的に45度傾斜させることができ、前記所定方向の偏光面方向をWp1方向とし、前記所定方向に対して実質的に45度傾斜した偏光面方向をWp2方向とすると、前記Wp1方向および前記Wp2方向のうちのいずれか一方と、前記感光性ポリマーの前記光学軸とを一致させることができ、前記光源から出射された再生光の偏光面方向を、前記Wp1方向および前記Wp2方向のうちのいずれか一方の偏光面方向に対して実質的に90度傾斜させることができるように、回転可能であることを特徴とする情報記録再生装置。
  15. 前記記録光を出射する光源の波長と前記再生光を出射する光源の波長とがほぼ同じである請求の範囲14に記載の情報記録再生装置。
  16. 消去光を出射する光源をさらに備えた請求の範囲14に記載の情報記録再生装置。
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