JP2013242939A - 記録層および光情報記録媒体 - Google Patents

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Mitsuaki Oyamada
光明 小山田
Kenji Takayanagi
建治 高柳
Daisuke Ueda
大輔 上田
Takashi Iwamura
貴 岩村
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Abstract

【課題】記録密度を向上することができ、かつ、添加剤の効果を引き出して記録感度を向上できる記録層およびそれを備える光情報記録媒体を提供する。
【解決手段】光情報記録媒体は、光の吸収により発泡し、記録マークとしての空洞を形成可能である記録層を備える。記録層は、ニトロセルロースと、光を吸収して発熱する添加剤とを含んでいる。
【選択図】図1

Description

本技術は、記録層およびそれを備える光情報記録媒体に関する。詳しくは、光の吸収により発泡し、記録マークとしての空洞を形成可能である記録層およびそれを備える光情報記録媒体に関する。
従来、光情報記録媒体としては、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)およびBlu−ray Disc(登録商標)などが広く普及している。しかし、近年では、テレビのハイビジョン化やPC(Personal Computer)で取り扱うデータの急激な増大に伴い、光情報記録媒体の更なる大容量化が求められている。
そこで、光情報記録媒体を大容量化する方法の一つとして、光情報記録媒体の厚み方向に3次元的に情報を記録する方法が提案されている。このような方法を採用した光情報記録媒体として、記録層中に光子吸収によって発泡する記録材料を含有させておき、光ビームを照射することにより空洞としての記録マークを形成するものがある(例えば特許文献1参照)。
上述の光情報記録媒体の記録材料としては、ポリアリレートやポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂を用いることが提案されている(例えば特許文献2参照)。しかしながら、ポリアリレートやポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂を用いた場合、記録密度を向上することは困難である。
また、上述の光情報記録媒体の記録材料に対して、記録感度向上のために、2光子吸収材料としての添加剤をさらに添加することが提案されている(例えば特許文献2参照)。しかしながら、ポリアリレートやポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂を母剤として含む記録層では、添加剤の効果が十分に引き出されないことがある。すなわち、添加剤を記録層に添加しても、添加剤を記録層に添加していない場合に比べて、ほとんど記録感度を向上できないことがある。
特開2005−37658号公報 特開2010−162846号公報
したがって、本技術の第1の目的は、記録密度を向上することができる記録層およびそれを備える光情報記録媒体を提供することにある。
また、本技術の第2の目的は、記録密度を向上することができ、かつ、添加剤の効果を引き出して記録感度を向上できる記録層およびそれを備える光情報記録媒体を提供することにある。
上述の課題を解決するために、第1の技術は、
光の吸収により発泡し、記録マークとしての空洞を形成可能である記録層を備え、
記録層は、ニトロセルロースと、光を吸収して発熱する添加剤とを含んでいる光情報記録媒体である。
第2の技術は、
ニトロセルロースと、光を吸収して発熱する添加剤とを含み、
光の吸収により発泡し、記録マークとしての空洞を形成可能である記録層である。
第3の技術は、
光の吸収により発泡し、記録マークとしての空洞を形成可能である記録層を備え、
記録層は、ニトロセルロースを含んでいる光情報記録媒体である。
第4の技術は、
ニトロセルロースを含み、
光の吸収により発泡し、記録マークとしての空洞を形成可能である記録層である。
第1〜第4の技術では、ニトロセルロースの分解温度(Tdec)とガラス転移温度(Tg)との差ΔTが小さいので、光の照射による記録マークとしての空洞の形成に際して、空洞周辺の熱による軟化を抑制し、空洞の径の拡大や空洞の流動を抑制することができる。したがって、記録密度を向上できる。
第1〜第2の技術では、ニトロセルロースおよび添加剤のうち添加剤が主として光を吸収し、その光吸収により発生した熱をニトロセルロースが受け取って熱分解する。したがって、ニトロセルロースと添加剤とが光吸収の過程で競争的となることを抑制して、添加剤の効果を引き出して記録感度を向上できる。また、この熱分解時にニトロセルロース自体が発熱し、その発熱によりニトロセルロースの分解がさらに促進される。したがって、記録感度を向上できる。
以上説明したように、本技術によれば、記録層がニトロセルロースを含んでいるので、記録密度を向上できる。また、記録層が添加剤をさらに含む場合には、添加剤の効果を引き出して記録感度を向上できる。
図1は、本技術の一実施形態に係る光情報記録媒体の一構成例を示す概略断面図である。 図2Aは、ニトロセルロースと添加剤とを主成分とする記録層の記録原理を説明するためのエネルギー状態図である。図2Bは、添加剤である非線形吸収材料の一重項間輻射熱の放出過程を説明するためのエネルギー状態図である。図2Cは、添加剤である非線形吸収材料の三重項間輻射熱の放出過程を説明するためのエネルギー状態図である。 図3は、本技術の一実施形態に係る光情報記録媒体の記録および再生時の動作の一例について説明するための概略断面図である。 図4は、実施例1、2、比較例1の光情報記録媒体のピークパワーと記録時間との関係を示すグラフである。 図5は、ニトロセルロースの示唆熱分析および熱重量分析の結果を示すグラフである。 図6は、比較例2〜11の光情報記録媒体の添加剤と記録時間との関係を示すグラフである。 図7は、実施例3−1〜4−5、5〜8の光情報記録媒体の添加剤と記録時間との関係を示すグラフである。 図8は、実施例9〜20の光情報記録媒体の1光子吸収係数と記録時間との関係を示すグラフである。 図9Aは、実施例21、比較例12〜15の光情報記録媒体の再生波形評価に用いたレーザ光照射パターンS1、S2を示す概略図である。図9Bは、図9Aに示すレーザ光照射パターンS1により情報信号を記録した実施例21、比較例12〜15の光情報記録媒体の再生波形を示す図である。図9Cは、図9Aに示すレーザ光照射パターンS2により情報信号を記録した比較例12〜15の光情報記録媒体の再生波形を示す図である。 図10は、ランダムパターン信号を記録した実施例22の光情報記録媒体の再生波形を示す図である。
本技術の実施形態について以下の順序で説明する。
1.光情報記録媒体の構成
2.光情報記録媒体の製造方法
3.光情報記録媒体の記録再生時の動作
4.効果
5.変形例
[1.光情報記録媒体の構成]
図1は、本技術の一実施形態に係る光情報記録媒体の一構成例を示す概略断面図である。この光情報記録媒体10は、その内部に3次元的に情報信号を記録する体積記録ディスクであり、図1に示すように、基板1上に、記録層2、中間層3、選択反射層4、カバー層5を順次積層した構成を有している。光情報記録媒体10は、全体として略円板状の形状を有し、その中央部にはチャッキング用の開口部(以下センターホールと称する。)が設けられている。
この一実施形態に係る光情報記録媒体10では、当該光情報記録媒体10を回転駆動させるとともに、そのカバー層5側の表面からレーザ光を記録層2に照射することにより、情報信号の記録または再生が行われる。
光情報記録媒体10は、ボイド記録方式の媒体である。ボイド記録方式は、記録層2に対して比較的高パワーでレーザ光照射を行い、記録層2内にボイド(空洞)を記録マークとして記録する記録方式である。このように形成されたボイド部分は、記録層2内における他の部分とは屈折率が異なる部分となり、それらの境界部分で光の反射率が高められることになる。したがって、上記ボイド部分は、記録マークとして機能し、これによってボイドマークの形成による情報信号の記録が実現される。
以下、光情報記録媒体10を構成するカバー層5、選択反射層4、中間層3、記録層2および基板1について順次説明する。
(カバー層)
カバー層5は、透明性を有するものであればよく特に限定されるものではなく種々の材料を用いることができ、例えば、透明性を有するプラスチック材料などの有機材料、ガラスなどの無機材料を用いることができる。プラスチック材料としては、例えば、公知の高分子材料を用いることができる。公知の高分子材料としては、例えば、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂(PMMA)、シクロオレフィンポリマー(COP)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステル(TPEE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。無機材料としては、例えば、石英、サファイア、ガラスなどが挙げられる。
カバー層5は、例えば、中央にセンターホールが形成された略円板形状を有する。このカバー層5の一主面は、例えば、凹凸面となっており、この凹凸面上に選択反射層4が設けられている。凹凸面は、記録または再生位置を案内するための案内溝により形成されている。光情報記録媒体10を一主面側から見たときの案内溝の全体形状としては、例えば、スパイラル状、同心円状などの各種形状が挙げられる。
案内溝としては、例えば、連続溝(グルーブ)、ピット列またはそれらの組合せを用いることができる。線速の安定化や位置情報(例えば回転角度情報や半径位置情報など)を付加するために案内溝を蛇行させるようにしてもよい。
(選択反射層)
選択反射層4は、カバー層5の凹凸面側に設けられている。バルク記録方式では、記録層2に対してマーク記録を行うための記録光(以下第1レーザ光と適宜称する。)とは別に、上記カバー層5の案内溝に基づきトラッキングやフォーカスのエラー信号を得るためのサーボ光(以下第2レーザ光と適宜称する。)が選択反射層4に別途照射される。サーボ光の照射に際して、サーボ光が記録層2に到達してしまうと、当該記録層2内におけるマーク記録に悪影響を与える虞がある。このため、サーボ光は反射し、記録光は透過するという選択性を有する反射層が必要とされる。
バルク記録方式では、記録光とサーボ光としてはそれぞれ、波長の異なるレーザ光が用いられる。選択反射層4としては、サーボ光と同一の波長帯の光は反射するのに対して、それ以外の波長による光(例えば記録光)は透過するという、波長選択性を有する選択反射層が用いられる。
選択反射層4としては、例えば、屈折率の異なる低屈折率層および高屈折率層を交互に積層してなる積層膜を用いることができる。低屈折率層および高屈折率層としては、例えば、誘電体層を用いることができる。誘電体層の材料としては、例えば、窒化シリコン、酸化シリコン、酸化タンタル、酸化チタン、フッ化マグネシウム、酸化亜鉛などを用いることができる。
(中間層)
中間層3は、記録層2と選択反射層4との間に設けられる。中間層3は、例えば、選択反射層4が設けられたカバー層5と、記録層2とを貼り合わせるための貼合層である。中間層3の材料としては、記録光の透過性に優れた材料を用いることが好ましく、例えば、紫外線硬化樹脂などの感光性樹脂、感圧性粘着剤(PSA:Pressure Sensitive Adhesive)などを用いることができる。
(記録層)
記録層2に対しては、記録層2の深さ方向における予め定められた各位置に対し、逐次レーザ光を合焦させてボイドマーク形成による情報記録が行われる。したがって、記録済みとなった光情報記録媒体10において、記録層2内には、複数のマーク形成層(以下情報記録層と適宜称する。)Lが形成される。図1では、情報記録層L0〜Lnとして示しているように、多数((n+1)個)の情報記録層が記録層2内には形成される。
記録層2の厚みやサイズなどは特に限定されるものではないが、例えば青色レーザ光(波長405nm)をNA=0.85の光学系で記録層2に照射することを考えた場合、記録媒体表面(カバー層5の表面)から深さ方向に50μm〜300μmの位置に情報記録層を形成することが好ましい。これは球面収差補正を考慮した範囲である。図1では、ディスク表面から70μm〜260μmの位置に情報記録層を形成する例が示されている。当然ながら、深さ方向の位置範囲が同一の条件では、層間隔を狭くするほど、多数の情報記録層を形成することができる。
また、各情報記録層においては、カバー層5に形成された案内溝を用いてトラッキングサーボがとられた状態でボイドマークによる記録が行われる。したがって、情報記録層に形成されるボイドマーク列は、光情報記録媒体10の一主面側から見ると、スパイラル状または同心円状などに形成されることになる。
記録層2は、光の吸収により発泡し、記録マークとしてのボイドを形成可能である体積記録型の記録層である。記録層2は、熱可塑性樹脂であるニトロセルロースを主成分として含んでいる。記録層2は、高感度化の観点からすると、レーザ光を吸収して発熱する添加剤さらに含んでいることが好ましい。ニトロセルロースは、励起状態のエネルギー準位が高いため、レーザ光をほとんど吸収しない材料である。これに対して、添加剤は、レーザ光を吸収する1光子または多光子吸収材料である。また、添加剤は、光を吸収し、吸収した光を熱としてニトロセルロースに与えて、ニトロセルロースの分解反応を促進させる光増感剤として作用する。
記録層2が、母剤としてエチルセルロースをさらに含むようにしてもよい。これにより、母剤の平均ニトロ化度を低減し、母剤の燃え広がりを抑制することができる。したがって、記録密度をさらに向上することができる。ニトロセルロース自体の平均ニトロ化度を低減することでも、上記と同様の効果を得ることができる。ここで、「ニトロ化度」とは、母剤(例えばニトロセルロースおよびエチルセルロース)の構成単位(1ユニット)当たりに含まれるニトロ基の個数をいい、エチルセルロースのニトロ化度は「0」である。また、「平均ニトロ化度」とは、母剤(例えばニトロセルロースおよびエチルセルロース)の構成単位(1ユニット)当たりに含まれるニトロ基の個数の平均値をいう。したがって、ニトロ化度が「0」であるエチルセルロースを母剤として含む場合には、母剤の平均ニトロ化度が低下することとなる。
図2Aは、ニトロセルロースと添加剤とを主成分とする記録層の記録原理を説明するためのエネルギー状態図である。レーザ光が記録層2に照射されると、ニトロセルロースは、励起状態S1のエネルギー準位が高いため、レーザ光をほとんど吸収せず、基底状態S0から励起状態S1へと遷移することはほとんどない(過程(1))。一方、添加剤は1光子または多光子吸収材料であるため、レーザ光を吸収して、基底状態S0から励起状態S1へと遷移する(過程(2))。そして、添加剤が励起状態S1から基底状態S0へと熱を発しながら無放射失活する(過程(3))。添加剤から発せられた熱は、ニトロセルロースに与えられ、ニトロセルロースが熱分解する(過程(4))。
したがって、ニトロセルロースと添加剤とが光吸収過程で競争的はとならず、添加剤の効果を十分に引き出すことができる。また、ニトロセルロース自体が熱分解の過程で発熱し、この発熱によりニトロセルロースの分解がさらに促進される。
なお、上述したように、ニトロセルロースはレーザ光をほとんど吸収しないが、レーザ光の記録パワーなどを適宜調整することで、ニトロセルロース単体からなる記録層2や、上記添加剤を添加していない記録層2であっても、レーザ光の照射により記録マークとしてのボイドを形成可能である。
(ニトロセルロース)
ニトロセルロースとしては、例えば、以下の構造式(I)に表すものを用いることができる。
Figure 2013242939
(式中、R1〜R6は独立してニトロ基(−NO2)または水素(H)を表し、R1〜R6のうちの1個以上がニトロ基である。)
(添加剤)
添加剤としては、例えば、情報信号の記録に用いられるレーザ光を吸収して発熱し、その熱をニトロセルロースに与える光増感剤を用いることができる。具体的には、添加剤としては、例えば、アセチレンカルボン酸、ジフェニルアセチレン、1,1,3-トリフェニル-2-プロピン-1-オール、2,4-ヘキサジイン-1,6-ジオール、4-4’-ジメトキシジフェニルアセチレン、ジフェニルブタジエン、4-フルオロ-4'-(フェニルエチニル)ベンゾフェノン、フェナントレン、ベンゾ[h]キノリン、9-フェニルカルバゾール、1,8-ジニトロナフタレン、ビス(2,4-ニトロフェニル)酢酸エチル、2-イソプロペニルナフタレン、2,6-ジヒドロキシアセトフェノン、1,1,3-トリフェニル-2-プロピン-1-オール、2,2'-メチレンビス[6-(ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール]、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾフェノン、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)-エンゾトリアゾールなどからなる群より選ばれる1種以上の化合物を用いることができる。
添加剤としては、例えば、非線形吸収材料および線形吸収材料の少なくとも一方を用いることができ、所望とする記録層2の特性に応じて適宜選択することが好ましい。例えば、レーザ光に対する透明性向上の観点からすると、添加剤としては非線形吸収材料を用いることが好ましい。また、レーザ光の吸収効率向上の観点からすると、添加剤としては線形吸収材料を用いることが好ましい。さらに、所望の透明性と光吸収効率とを達成するために、非線形吸収材料と線形吸収材料との両方を用い、それらの含有量を適宜調整するようにしてもよい。
ここでは、非線形吸収材料および線形吸収材料を以下のように定義する。すなわち、非線形吸収材料とは、非線形吸収および線形吸収のうち非線形吸収を主とする材料と定義し、線形吸収材料とは、非線形吸収および線形吸収のうち線形吸収を主とする材料と定義する。具体的には、5質量%以上の添加で厚み250μmにて50%を超える透過率Tを有する材料を非線形吸収材料(50%<T)、5質量%以上の添加で厚み250μmにて50%以下の透過率Tを有する材料を線形吸収材料(T≦50%)と定義する。さらにここでの非線形の意味は単なる二光子吸収(狭義非線形吸収)以外に励起状態吸収なども含んでいる(つまり広義的に1光子に対しての応答が1光子以上の振る舞いをする)。また、一般的な非線形吸収測定装置(使用レーザ:波長405nm、パルス幅2〜3psec、周波数1GHz、ピークパワー10〜20Wによるz−scan法)により非線形な応答が見られるものを非線形吸収材料として定義してもよい。
(非線形吸収材料)
非線形吸収材料としては、例えば、レーザ光の吸収により一重項間輻射熱および三重項間輻射熱の少なくとも一方を発生する非線形吸収材料を用いることができる。具体的には例えば、非線形吸収材料としては、(a)両輻射熱のうち一重項間輻射熱を主として発生する非線形吸収材料(以下「非線形吸収材料(a)」という。)、または(b)両輻射熱のうち三重項間輻射熱を主として発生する非線形吸収材料(以下「非線形吸収材料(b)」という。)を用いることができ、非線形吸収材料(b)を用いることが好ましい。非線形吸収材料(b)を用いると、繰り返し周波数の効果を利用して、記録時間をさらに短縮できるからである。
図2Bは、添加剤である非線形吸収材料の一重項間輻射熱の放出過程を説明するためのエネルギー状態図である。まず、非線形吸収材料がレーザ光を非線形吸収すると、一重項基底状態S0から一重項励起状態S1へと遷移する(過程(1))。その後、一重項励起状態S1から一重項基底状態S0へと熱を発しながら無放射失活する(過程(2))。ここでは、この一重項励起状態S1から一重項基底状態S0への無放射失活の際に輻射される熱を「一重項間輻射熱」という。この無放射失活の過程により放出された熱は、ニトロセルロースに与えられ、ニトロセルロースが熱分解する(過程(3))。
図2Cは、添加剤である非線形吸収材料の三重項間輻射熱の放出過程を説明するためのエネルギー状態図である。まず、非線形吸収材料がレーザ光を非線形吸収すると、一重項基底状態S0から一重項励起状態S1へと遷移する(過程(1))。次に、項間公差により一重項励起状態S1から三重項励起状態T1へと遷移する(過程(2))。次に、非線形吸収材料がレーザ光を線形吸収し、三重項励起状態T1からより上位の三重項励起状態T2へと遷移する(過程(3))。その後、上位の三重項励起状態T2から三重項励起状態T1へ熱を発しながら無放射失活する(過程(4))。ここでは、この三重項励起状態T2から三重項励起状態T1への無放射失活の際に輻射される熱を「三重項間輻射熱」という。この無放射失活の過程により放出された熱は、ニトロセルロースに与えられ、ニトロセルロースが熱分解する(過程(5))。
上述した過程において、三重項励起状態T1から一重項基底状態S0への遷移は、スピン変化禁止による禁制遷移であるため、比較的長く三重項励起状態T1の状態に留まる。したがって、過程(3)と過程(4)とからなるサイクルが繰り返され、そのサイクルが繰り返される時間も比較的長いと考えられる。また、高い繰り返し周波数ν(例えば1GHz以上)のレーザ光を用いた場合には、三重項励起状態T1−T2間の励起と無放射失活の繰り返しによる発熱確率を高め、更なる高感度化を実現できる。
上述した過程において、三重項励起状態T1と上位の三重項励起状態T2との間のエネルギー差Δε12は、一重項基底状態S0と一重項励起状態S1との間のエネルギー差Δε01に比べて小さい。このため、三重項励起状態T1からより上位の三重項励起状態T2への遷移は、一重項基底状態S0から一重項励起状態S1への遷移よりも高い確率で起こる。したがって、項間公差により一重項励起状態S1から三重項励起状態T1へと遷移する確率(S−T間遷移確率)が高い材料を用いることで、レーザ光照射に対する発熱確率を高めることでき、これにより、更なる高感度化を実現できる。この高感度の効果は、高い繰り返し周波数ν(例えば1GHz以上)のレーザ光を用いた場合に顕著に発現する。ここでは、このように三重項間輻射熱を発生する添加剤(非線形吸収材料または線形吸収材料)を記録層2の材料として用いた場合において、高い繰り返し周波数ν(例えば1GHz以上)のレーザ光を用いたときに顕著に発現する効果を、「繰り返し周波数の効果」という。
「非線形吸収材料(a)」および「非線形吸収材料(b)」はそれぞれ、以下の過程を主とする非線形吸収材料を意味する。
非線形吸収材料(a):レーザ光の非線形吸収により、一重項基底状態S0から一重項励起状態S1に遷移した後、一重項励起状態S1から三重項励起状態T1に項間公差により遷移せず、一重項励起状態S1から一重項基底状態S0に熱を発しながら無放射失活する非線形吸収材料
非線形吸収材料(b):レーザ光の非線形吸収により、一重項基底状態S0から一重項励起状態S1に遷移し、一重項励起状態S1から三重項励起状態T1に項間公差により遷移し、レーザ光の線形吸収により三重項励起状態T1から上位の三重項励起状態T2に遷移した後、三重項励起状態T2から三重項励起状態T1に熱を発しながら無放射失活する非線形吸収材料
非線形吸収材料(a)としては、例えば、炭素−炭素三重結合を有する非線形吸収材料、および縮合多環芳香族系の非線形吸収材料からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。非線形吸収材料(b)としては、例えば、ベンゾトリアゾール系の非線形吸収材料、およびベンゾフェノン系の非線形吸収材料からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
「炭素−炭素三重結合を有する非線形吸収材料」とは、分子内に炭素−炭素三重結合を1個以上有する非線形吸収材料を示す。すなわち、その構造の一部に炭素−炭素三重結合を1個以上有する限り、他の部分の構造に関わらず、「炭素−炭素三重結合の非線形吸収材料」に含まれる。炭素−炭素三重結合の非線形吸収材料としては、例えば、アセチレンカルボン酸、ジフェニルアセチレン、1,1,3-トリフェニル-2-プロピン-1-オール、2,4-ヘキサジイン-1,6-ジオール、4-4’-ジメトキシジフェニルアセチレン、およびジフェニルブタジエンからなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
「縮合多環芳香族系の非線形吸収材料」とは、縮合多環芳香族化合物、または縮合多環芳香族化合物を骨格もしくは置換基に有する非線形吸収材料のことを示す。すなわち、その構造の一部に縮合多環芳香族化合物を有する限り、他の部分の構造に関わらず、「縮合多環芳香族系の非線形吸収材料」に含まれる。
「ベンゾトリアゾール系の非線形吸収材料」とは、下記の構造式(II)〜(IV)で表されるベンゾトリアゾールを骨格または置換基に有する非線形吸収材料のことを示す。すなわち、その構造の一部に下記の構造式(II)〜(IV)で表されるベンゾトリアゾールを骨格または置換基に有する限り、他の部分の構造に関わらず、「ベンゾトリアゾール系の非線形吸収材料」に含まれる。
Figure 2013242939
Figure 2013242939
Figure 2013242939
「ベンゾフェノン系の非線形吸収材料」とは、下記構造式(V)で表されるベンゾフェノンを骨格または置換基に有する非線形吸収材料である。すなわち、その構造の一部に下記構造式(V)で表されるベンゾフェノン骨格を有する限り、他の部分の構造に関わらず、「ベンゾフェノン系の非線形吸収材料」に含まれる。ベンゾフェノン系の非線形吸収材料としては、例えば、4-フルオロ-4'-(フェニルエチニル)ベンゾフェノンを用いることができる。
Figure 2013242939
(線形吸収材料)
線形吸収材料としては、例えば、レーザ光の吸収により一重項間輻射熱および三重項間輻射熱の少なくとも一方を発生する線形吸収材料を用いることができる。具体的には例えば、線形吸収材料としては、(a)両輻射熱のうち一重項間輻射熱を主として発生する線形吸収材料(以下「線形吸収材料(a)」という。)、または(b)両輻射熱のうち三重項間輻射熱を主として発生する線形吸収材料(以下「線形吸収材料(b)」という。)を用いることができ、線形吸収材料(b)を用いることが好ましい。線形吸収材料(b)を用いると、繰り返し周波数の効果を利用して、記録時間をさらに短縮できるからである。
添加剤である線形吸収材料の一重項間輻射熱および三重項間輻射熱の放出過程は、一重項基底状態S0から一重項励起状態S1への遷移がレーザ光の線形吸収をトリガーとして起こる以外のことは、上述の非線形吸収材料の一重項間輻射熱および三重項間輻射熱の放出過程と同様である(図2B、図2C参照)。
「線形吸収材料(a)」および「線形吸収材料(b)」はそれぞれ、以下の過程を主とする線形吸収材料を意味する。
線形吸収材料(a):レーザ光の線形吸収により、一重項基底状態S0から一重項励起状態S1に遷移した後、一重項励起状態S1から三重項励起状態T1に項間公差により遷移せず、一重項励起状態S1から一重項基底状態S0に熱を発しながら無放射失活する線形吸収材料
線形吸収材料(b):レーザ光の線形吸収により、一重項基底状態S0から一重項励起状態S1に遷移し、一重項励起状態S1から三重項励起状態T1に項間公差により遷移し、レーザ光の線形吸収により三重項励起状態T1から上位の三重項励起状態T2に遷移した後、三重項励起状態T2から三重項励起状態T1に熱を発しながら無放射失活する線形吸収材料
線形吸収材料(a)としては、例えば、縮合多環芳香族系の線形吸収材料を用いることができる。線形吸収材料(b)としては、例えば、ベンゾトリアゾール系の線形吸収材料、およびベンゾフェノン系の線形吸収材料からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
「縮合多環芳香族系の線形吸収材料」とは、縮合多環芳香族化合物、または縮合多環芳香族化合物を骨格もしくは置換基に有する線形吸収材料のことを示す。すなわち、その構造の一部に縮合多環芳香族化合物を有する限り、他の部分の構造に関わらず、「縮合多環芳香族系の線形吸収材料」に含まれる。縮合多環芳香族系の線形吸収材料としては、例えば、フェナントレン、ベンゾ[h]キノリン、9-フェニルカルバゾール、1,8-ジニトロナフタレン、ビス(2,4-ニトロフェニル)酢酸エチル、2-イソプロペニルナフタレン、2,6-ジヒドロキシアセトフェノン、および1,1,3-トリフェニル-2-プロピン-1-オールからなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
「ベンゾトリアゾール系の線形吸収材料」とは、下記の構造式(II)〜(IV)で表されるベンゾトリアゾールを骨格または置換基に有する線形吸収材料のことを示す。すなわち、その構造の一部に下記の構造式(II)〜(IV)で表されるベンゾトリアゾールを骨格または置換基に有する限り、他の部分の構造に関わらず、「ベンゾトリアゾール系の線形吸収材料」に含まれる。ベンゾトリアゾール系の線形吸収材料としては、例えば、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)-エンゾトリアゾールを用いることができる。
Figure 2013242939
Figure 2013242939
Figure 2013242939
「ベンゾフェノン系の線形吸収材料」とは、下記構造式(V)で表されるベンゾフェノンを骨格または置換基に有する線形吸収材料である。すなわち、その構造の一部に下記構造式(V)で表されるベンゾフェノン骨格を有する限り、他の部分の構造に関わらず、「ベンゾフェノン系の線形吸収材料」に含まれる。ベンゾフェノン系の線形吸収材料としては、例えば、2,2'-メチレンビス[6-(ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール]、および2-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾフェノンからなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
Figure 2013242939
(添加剤の分類)
表1に、上述の添加剤の種類とその利点とを、第1種〜第4種までの4つに分類して示す。
Figure 2013242939
以下に、添加剤の構造式を第1種〜第4種まで順次示す。
(第1種)
以下に、第1種の添加剤の構造式(i)〜(vi)を示す。
Figure 2013242939
(アセチレンカルボン酸)
Figure 2013242939
(ジフェニルアセチレン)
Figure 2013242939
(1,1,3-トリフェニル-2-プロピン-1-オール)
Figure 2013242939
(2,4-ヘキサジイン-1,6-ジオール)
Figure 2013242939
(4-4'-ジメトキシジフェニルアセチレン)
Figure 2013242939
(ジフェニルブタジエン)
(第2種)
以下に、第2種の添加剤の構造式(vii)を示す。
Figure 2013242939
(4-フルオロ-4'-(フェニルエチニル)ベンゾフェノン)
(第3種)
以下に、第3種の添加剤の構造式(viii)〜(xv)を示す。
Figure 2013242939
(フェナントレン)
Figure 2013242939
(ベンゾ[h]キノリン)
Figure 2013242939
(9-フェニルカルバゾール)
Figure 2013242939
(1,8-ジニトロナフタレン)
Figure 2013242939
(ビス(2,4-ニトロフェニル)酢酸エチル)
Figure 2013242939
(2-イソプロペニルナフタレン)
Figure 2013242939
(2,6-ジヒドロキシアセトフェノン)
Figure 2013242939
(1,1,3-トリフェニル-2-プロピン-1-オール)
(第4種)
以下に、第4種の添加剤の構造式(xvi)〜(xviii)を示す。
Figure 2013242939
(2,2'-メチレンビス[6-(ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール])
Figure 2013242939
(2-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾフェノン)
Figure 2013242939
(2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)-エンゾトリアゾール)
(基板)
基板1は、例えば、中央部にセンターホールが設けられた略円板形状を有する。この基板1の一主面に記録層2が設けられる。基板1の材料としては、透明性または不透明性を有する材料のいずれも用いることが可能であり、例えば、プラスチック材料またはガラスを用いることができ、成形性の観点から、プラスチック材料を用いることが好ましい。プラスチック材料としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂などを用いることができ、コストの観点から、ポリカーボネート系樹脂を用いることが好ましい。
[2.光情報記録媒体の製造方法]
次に、本技術の一実施形態に係る光情報記録媒体の製造方法の一例について説明する。
(カバー層の形成工程)
まず、一主面に凹凸形状が形成されたカバー層5を形成する。カバー層5の形成方法としては、例えば、射出成形(インジェクション)法、フォトポリマー法(2P法:Photo Polymerization)などを用いて、スタンパの形状を樹脂材料に転写する方法を用いることができる。また、原反から巻き出された帯状のシートを円板状に打ち抜き、この円板状のシートにスタンパの凹凸形状を熱転写する方法も用いることができる。
(選択反射層の形成工程)
次に、例えばスパッタリング法により、カバー層5の凹凸面に選択反射層4を形成する。
(記録層の形成工程)
次に、例えば、熱可塑性樹脂としてのニトロセルロースと添加剤とを溶剤に溶解させて、記録層形成用樹脂組成物を調製する。溶剤としては、ニトロセルロースおよび添加剤を溶解可能なものであればよく特に限定されるものではなく、例えばアセトン、酢酸ブチルなどを用いることができる。
次に、例えばキャスティング法により、調製した記録層形成用樹脂組成物を用いて記録層形成用シートを形成する。次に、記録層形成用シートを円板状に打ち抜いて、円板状の記録層2を形成する。
(基板の成形工程)
次に、平面状の両主面を有する基板1を成形する。基板1の成形の方法としては、例えば、射出成形法、フォトポリマー法などを用いることができる。
(貼合工程)
次に、記録層2の一主面と、選択反射層4が形成されたカバー層5の凹凸面とを、感光性樹脂または感圧性粘着剤(PSA)を介して貼り合わせる。これにより、記録層2と選択反射層4との間に、感光性樹脂または感圧性粘着剤を主成分とする中間層3が形成される。
次に、記録層2の他主面と、基板1の一主面とを感光性樹脂または感圧性粘着剤(PSA)を介して貼り合わせる。これにより、記録層2と選択反射層4との間に、感光性樹脂または感圧性粘着剤を主成分とする貼合層が形成される。
以上により、目的とする光情報記録媒体が得られる。
[3.光情報記録媒体の記録再生]
次に、図3を参照しながら、本技術の一実施形態に係る光情報記録媒体の記録および再生時の動作の一例について説明する。
光情報記録媒体10に対して、情報信号の記録または再生をするための記録光または再生光としての第1レーザ光LZ1と共に、これとは波長の異なるサーボ光としての第2レーザ光LZ2を照射する。これら第1レーザ光LZ1と第2レーザ光LZ2は、例えば、記録再生装置における共通の対物レンズを介して光情報記録媒体10に照射される。
ここで図1に示したように光情報記録媒体10における記録層2には、例えばDVDやBlu−ray Discなどの多層の光情報記録媒体とは異なり、記録対象とする各層位置にはピットやグルーブなどによる案内溝を有する反射面が形成されていない。このため、未だマークの形成されていない記録時においては、第1レーザ光LZ1についてのフォーカスサーボやトラッキングサーボは、第1レーザ光LZ1自身の反射光を用いて行うことはできないことになる。このため、光情報記録媒体10に対する記録時において、第1レーザ光LZ1についてのトラッキングサーボ、フォーカスサーボは共に、サーボ光としての第2レーザ光LZ2の反射光を用いて行うことになる。したがって、記録再生装置には、第1レーザ光LZ1と第2レーザ光LZ2をそれぞれ独立してフォーカス制御できる機構が設けられる。
記録時には、第2レーザ光LZ2を選択反射層4(案内溝形成面)に合焦させる。その状態で選択反射層4(案内溝形成面)を基準とした図3のようなオフセットofを与えるように第1レーザ光LZ1のフォーカス制御を行う。図中では、記録層2に情報記録層L0〜Lnを設定するとした場合に対応した各オフセットofの例を示している。すなわち、情報記録層L0の層位置に対応したオフセットof−L0、情報記録層L1の層位置に対応したオフセットof−L1、・・・、情報記録層Lnの層位置に対応したオフセットof−Lnが設定される場合を示している。これらのオフセットofの値を用いて第1レーザ光LZ1についてのフォーカス機構を駆動することで、深さ方向におけるマークの形成位置(記録位置)を、情報記録層L0としての層位置から情報記録層Lnとしての層位置までのうちで適宜選択することができる。
また、記録時における第1レーザ光LZ1についてのトラッキングサーボに関しては、上述のように第1レーザ光LZ1と第2レーザ光LZ2とを共通の対物レンズを介して照射するという点を利用して、選択反射層4からの第2レーザ光LZ2の反射光を用いた対物レンズのトラッキングサーボを行うことで実現する。このようにサーボ制御が行われる状態で、第1レーザ光LZ1が記録データに基づいて変調され、所定の情報記録層位置に照射されることで、ボイド(空洞)によるマーク列が形成されていくことになる。
一方、再生時には、図1に示したように記録層2には情報記録層Lが形成された状態となるので、このような情報記録層Lからの第1レーザ光LZ1の反射光を得ることができる。このことから再生時において、第1レーザ光LZ1についてのフォーカスサーボは、第1レーザ光LZ1自身の反射光を利用して行う。
また、再生時における第1レーザ光LZ1のトラッキングサーボは、第2レーザ光LZ2の反射光に基づく対物レンズのトラッキングサーボを行うことによって実現する。ここで、再生時においても、選択反射層4としての案内溝形成面に記録された絶対位置情報の読み出しのために上記案内溝形成面(案内溝)を対象とした第2レーザ光LZ2のフォーカスサーボおよびトラッキングサーボが行われる。すなわち、再生時においても記録時と同様、対物レンズの位置制御は、第2レーザ光LZ2の反射光に基づいて上記案内溝形成面(案内溝)を対象とした第2レーザ光LZ2のフォーカスサーボおよびトラッキングサーボが行われることになる。
なお、再生時の第1レーザ光LZ1のトラッキングサーボは、ボイドマークの記録マーク列に対する第1レーザ光LZ1の反射光に基づいて対物レンズを制御することでトラッキングサーボを行うようにしてよい。また少なくともシーク後の再生中は、記録マーク列からアドレス情報を読み取ることができる。このため再生時には第2レーザ光LZ2を使用しないことも考えられる。
以上のサーボ制御がなされる状態において、ある情報記録層に第1レーザ光LZ1が照射され、その反射光情報としてボイドによるマーク列の情報が得られる。その反射光情報に基づく信号に対し、所定のデコード処理が行われて、再生データが得られる。
[4.効果]
本技術の一実施形態に係る光情報記録媒体では、記録層2は、分解温度(Tdec)とガラス転移温度(Tg)との差ΔTが小さいニトロセルロースを含んでいる。これにより、レーザ光の照射によるボイド(記録マーク)の形成に際して、ボイド周辺の熱による軟化を抑制し、ボイドの径の拡大やボイドの流動を抑制することができる。したがって、記録密度を向上できる。また、ボイド周辺の熱による軟化を抑制し、ボイドの流動を抑制することができるので、マークポジション記録が可能となる。
ニトロセルロースは酸素元素比率が高いので、ボイド(空洞)形成時にコンタミ(すす)が残りにくく、きれいな形状のボイドを形成できる。これにより、再生信号に現れるノイズを低減し、記録再生システムとしての信頼性を向上できる。
記録層2が添加剤をさらに含んでいる場合には、ニトロセルロースおよび添加剤のうち添加剤が主としてレーザ光を吸収し、その光吸収により発生した熱をニトロセルロースが受け取って熱分解する。したがって、ニトロセルロースと添加剤とが光吸収の過程で競争的となることを抑制して、添加剤の効果を引き出して記録感度を向上できる。また、この熱分解時にニトロセルロース自体が発熱し、その発熱によりニトロセルロースの分解がさらに促進される。したがって、記録感度をさらに向上できる。
[5.変形例]
以上、本技術の実施形態について具体的に説明したが、本技術は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本技術の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。
また、上述の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本技術の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
また、上述の実施形態では、記録層をキャスティング法により形成する場合を例として説明したが、記録層の形成方法はこの例に限定されるものではなく、例えば射出成形法により記録層を形成するようにしてもよい。この場合、ニトロセルロースの分解温度(Tdec)とガラス転移温度(Tg)との差ΔTを多少広げるための添加剤をさらに添加することが好ましい。このような添加剤の添加により、射出成形時における温度範囲のマージンを広げ、記録層の成形が容易となるからである。
また、上述の実施形態では、選択反射層をカバー層と記録層との間に設ける構成を例として説明したが、選択反射層を設ける位置はこの例に限定されるものではない。例えば、選択反射層を基板と記録層との間に設ける構成や、選択反射層を記録層内に設ける構成を採用するようにしてもよい。
また、上述の実施形態では、記録層と選択反射層との間に中間層を設ける構成を例として説明したが、中間層を省略して記録層と選択反射層とを隣接して設ける構成を採用してもよい。この場合、記録層の両主面のうち選択反射層側の一主面を凹凸面とすることが好ましい。
また、本技術は以下の構成を採用することもできる。
(1)
光の吸収により発泡し、記録マークとしての空洞を形成可能である記録層を備え、
上記記録層は、ニトロセルロースと、光を吸収して発熱する添加剤とを含んでいる光情報記録媒体。
(2)
上記添加剤が、非線形吸収材料である(1)記載の光情報記録媒体。
(3)
上記非線形吸収材料が、レーザ光の吸収により一重項間輻射熱および三重項間輻射熱のうち三重項間輻射熱を発生する非線形吸収材料である(2)記載の光情報記録媒体。
(4)
上記非線形吸収材料は、ベンゾトリアゾール系の非線形吸収材料、およびベンゾフェノン系の非線形吸収材料からなる群より選ばれる1種以上である(3)記載の光情報記録媒体。
(5)
上記非線形吸収材料は、4-フルオロ-4'-(フェニルエチニル)ベンゾフェノンである(3)または(4)記載の光情報記録媒体。
(6)
上記非線形吸収材料が、レーザ光の吸収により一重項間輻射熱および三重項間輻射熱のうち一重項間輻射熱を発生する非線形吸収材料である(2)記載の光情報記録媒体。
(7)
上記非線形吸収材料は、炭素−炭素三重結合を有する線形吸収材料、および縮合多環芳香族系の非線形吸収材料である(6)記載の光情報記録媒体。
(8)
上記非線形吸収材料は、アセチレンカルボン酸、ジフェニルアセチレン、1,1,3-トリフェニル-2-プロピン-1-オール、2,4-ヘキサジイン-1,6-ジオール、4-4’-ジメトキシジフェニルアセチレン、およびジフェニルブタジエンからなる群より選ばれる1種以上である(6)または(7)記載の光情報記録媒体。
(9)
上記添加剤が、線形吸収材料である(1)記載の光情報記録媒体。
(10)
上記線形吸収材料が、レーザ光の吸収により一重項間輻射熱および三重項間輻射熱のうち三重項間輻射熱を発生する線形吸収材料である(9)記載の光情報記録媒体。
(11)
上記線形吸収材料は、ベンゾトリアゾール系の線形吸収材料、およびベンゾフェノン系の線形吸収材料からなる群より選ばれる1種以上である(10)記載の光情報記録媒体。
(12)
上記線形吸収材料は、2,2'-メチレンビス[6-(ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール]、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾフェノン、および2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)-エンゾトリアゾールからなる群より選ばれる1種以上である(10)または(11)記載の光情報記録媒体。
(13)
上記線形吸収材料が、レーザ光の吸収により一重項間輻射熱および三重項間輻射熱のうち一重項間輻射熱を発生する線形吸収材料である(9)記載の光情報記録媒体。
(14)
上記線形吸収材料は、縮合多環芳香族系の線形吸収材料からなる群より選ばれる1種以上である(13)記載の光情報記録媒体。
(15)
上記線形吸収材料は、フェナントレン、ベンゾ[h]キノリン、9-フェニルカルバゾール、1,8-ジニトロナフタレン、ビス(2,4-ニトロフェニル)酢酸エチル、2-イソプロペニルナフタレン、2,6-ジヒドロキシアセトフェノン、および1,1,3-トリフェニル-2-プロピン-1-オールからなる群より選ばれる1種以上である(13)または(14)記載の光情報記録媒体。
(16)
ニトロセルロースと、光を吸収して発熱する添加剤とを含み、
光の吸収により発泡し、記録マークとしての空洞を形成可能である記録層。
(17)
ニトロセルロースと、光を吸収して発熱する添加剤とを含み、
光の吸収により発泡し、記録マークとしての空洞を形成可能である光情報記録媒体の記録層形成用シート。
(18)
光の吸収により発泡し、記録マークとしての空洞を形成可能である記録層を備え、
上記記録層は、ニトロセルロースを含んでいる光情報記録媒体。
(19)
ニトロセルロースを含み、
光の吸収により発泡し、記録マークとしての空洞を形成可能である記録層。
(20)
ニトロセルロースを含み、
光の吸収により発泡し、記録マークとしての空洞を形成可能である光情報記録媒体の記録層形成用シート。
以下、実施例により本技術を具体的に説明するが、本技術はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
本技術の実施例について以下の順序で説明する。
1.添加剤の効果発現についての検討(1)
2.添加剤の効果発現についての検討(2)
3.添加剤の濃度および種類と記録時間との関係
4.添加剤の種類と記録時間との関係
5.記録材料と記録密度との関係
6.ランダムパターン記録についての検討
<1.添加剤の効果発現についての検討(1)>
ニトロセルロースからなる記録層、ニトロセルロースおよび添加剤からなる記録層、およびポリアリレートからなる記録層をそれぞれ有する光情報記録媒体を作製し、それらの媒体のピークパワーと記録時間との関係を調べた。
(実施例1)
(カバー層の形成工程)
まず、シクロオレフィンポリマーからなる厚さ0.1mmのシートを準備した。このシートから直径12cmの円板を打ち抜いて、円板状のカバー層を形成した。次に、このカバー層の一主面に対してスタンパの凹凸形状を熱転写して、案内溝となるグルーブをスパイラル状に形成した。
(選択反射層の形成工程)
スパッタリング法により、カバー層のグルーブ形成面上に選択反射層を形成した。なお、選択反射層は、窒化シリコン層/酸化シリコン層/窒化シリコン層/酸化シリコン層/窒化シリコン層の5層構造とした。
(記録層の形成工程)
まず、キャスティング法により、ニトロセルロースからなる厚さ0.1mmの記録層形成用シートを成形した。次に、このシートから直径12cmの円板を打ち抜いて、円板状の記録層を形成した。
(基板の形成工程)
射出成形により、直径12cm、厚さ1.1mmのポリカーボネート基板を成形した。
(貼合工程)
まず、選択反射層が形成されたカバー層のグルーブ形成面を、記録層の一主面に感圧性粘着剤(PSA)を介して貼り合わせた。次に、記録層の他主面を、感圧性粘着剤を介してポリカーボネート基板に対して貼り合わせた。
以上により、厚さ1.3mm、直径12cmを有するとともに、中央部にセンターホールが設けられた光情報記録媒体が得られた。
(実施例2)
キャスティング法により、ニトロセルロースと、ビス(2,4-ニトロフェニル)酢酸エチルと、ジフェニルアセチレンとからなる記録層形成用シートを成形した。なお、シート中におけるニトロセルロース、ビス(2,4-ニトロフェニル)酢酸エチル、ジフェニルアセチレンの含有量をそれぞれ、81.8質量%、9.1質量%、9.1質量%に調製した。これ以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
(比較例1)
キャスティング法により、ポリアリレートからなる記録層形成用シートを成形する以外は実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
(記録時間測定)
上述のようにして得られた実施例1、2および比較例1の光情報記録媒体の記録時間を、チタンサファイアレーザ(Ti:Sapphire laser、76MHz)およびピコ秒パルスレーザダイオード(PLD、1GHz)を用いて測定した。以下、その具体的な測定方法について説明する。
(チタンサファイアレーザを用いた記録時間測定)
光源としてチタンサファイアレーザが備えられた評価装置を用いて、以下のようにして光情報記録媒体の記録時間を測定した。停止させた状態(回転させていない状態)の光情報記録媒体に対して、開口数NA=0.85の対物レンズを介して、波長405nmのレーザ光を表面深さf=50μmの位置に照射し、記録層に対する記録マークの記録時間を測定した。この記録時間の測定を、レーザ光の光強度(ピークパワーおよび平均出射光強度)を変化させて行った。なお、記録マークが記録されているか否かの判断は、レーザ光を照射した位置をCCDイメージセンサ(Charge Coupled Device Image Sensor)により観察することにより行った。
ピークパワーは、パルス出力されるレーザ光の最大出射光強度であり、測定された平均出射光強度から計算により算出されたものである。レーザ光のパルス幅は2.3ps、繰返周波数は76MHzとした。
(ピコ秒パルスレーザダイオードを用いた記録時間測定)
光源としてピコ秒パルスレーザダイオードが備えられた評価装置を用いて、レーザ光のパルス幅を2.3ps、繰返周波数を1GHzとする以外は、上述の「チタンサファイアレーザを用いた記録時間測定」と同様にして、光情報記録媒体の記録時間を測定した。
表2は、実施例1、2、比較例1の光情報記録媒体の記録層の構成を示す。
Figure 2013242939
以下に、実施例2の光情報記録媒体の記録層に含まれる添加剤の構造式を示す。
Figure 2013242939
(ビス(2,4-ニトロフェニル)酢酸エチル)
Figure 2013242939
(ジフェニルアセチレン)
図4は、実施例1、2、比較例1の光情報記録媒体のピークパワーと記録時間との関係を示すグラフである。なお、図4において、「NC」、「PAR」、「BNAA」および「DPA」は以下の母剤および添加剤を示す。また、「Ti:S laser」および「PLD」は以下のレーザの種類を示す。
NC:ニトロセルロース
PAR:ポリアリレート
BNAA:ビス(2,4-ニトロフェニル)酢酸エチル
DPA:ジフェニルアセチレン
Ti:S laser:チタンサファイアレーザ
PLD:ピコ秒パルスレーザダイオード
図4から以下のことがわかる。
チタンサファイアレーザを用いた実施例1、2の測定結果から、ニトロセルロースと添加剤とからなる記録層では、ニトロセルロースからなる記録層に比べて、記録時間を2桁(10-2)のオーダーで短縮できることがわかる。すなわち、記録感度を大幅に向上できることがわかる。したがって、ニトロセルロースを母剤として含む記録層では、添加剤の効果が大きいことがわかる。なお、後述するように、ニトロセルロース以外の熱可塑性樹脂を記録層の母剤として用いた場合には、ニトロセルロースを記録層の母剤として用いた場合に比べて記録感度向上の効果は非常に小さい。
チタンサファイアレーザおよびピコ秒パルスレーザダイオードを用いた実施例2の測定結果から、ピコ秒パルスレーザダイオードを用いて情報信号を記録した場合には、チタンサファイアレーザを用いて情報信号を記録した場合に比べて、記録時間を2桁(10-2)のオーダーで短縮できることがわかる。これは、高い繰り返し周波数(1GHz)の効果であると考えられる。
チタンサファイアレーザおよびピコ秒パルスレーザダイオードを用いた実施例2および比較例1の測定結果から、ニトロセルロースと添加剤とからなる記録層では、ポリアリレートからなる記録層に比べて、記録感度を向上できることがわかる。特に、ピコ秒パルスレーザダイオードを用いて情報信号を記録した場合に、両者の記録感度向上の効果の相違が顕著に現れることがわかる。
(示唆熱−熱重量分析)
実施例1、2の記録層に用いたニトロセルロースの示唆熱分析(DTA:Differential thermal Analysis)および熱重量分析(TGA:Thermo Gravimetry Analysis)を行った。その結果を図5に示す。なお、図5において、150℃近傍に現れたDTA曲線L2のピークは、雰囲気温度の上昇速度を150℃近傍で変化させたことに起因するものであり、ニトロセルロースの特性とは無関係である。
図5から、雰囲気温度が約150℃を超えると、ニトロセルロースの重量が急激に低下するとともに、ニトロセルロースが急激に発熱していることがわかる。この結果から、ニトロセルロースは、分解時に発熱していることがわかる。このようにニトロセルロースは熱分解の効率が高いことが、上述の記録感度の向上の要因の一つと考えられる。
<2.添加剤の効果発現についての検討(2)>
ポリアリレートからなる記録層に対して種々の添加剤を添加して光情報記録媒体を作製し、それらの媒体それぞれの記録時間を求め、添加剤の添加による記録感度向上の度合いを評価した。
(比較例2)
キャスティング法により、ポリアリレートからなる記録層形成用シートを成形する以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
(比較例3)
キャスティング法により、ポリアリレートとテトラチアフルバレンとからなる記録層形成用シートを成形する以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。なお、ポリアリレートの含有量を99.994質量%とし、テトラチアフルバレンの含有量を0.006質量%とした。
(比較例4)
キャスティング法により、ポリアリレートとビス(エチレンジチオ)テトラチアフルバレンとからなる記録層形成用シートを成形する以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。なお、ポリアリレートの含有量を99.99質量%とし、ビス(エチレンジチオ)テトラチアフルバレンの含有量を0.01質量%とした。
(比較例5)
キャスティング法により、ポリアリレートとビチオフェンとからなる記録層形成用シートを成形する以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。なお、ポリアリレートの含有量を95質量%とし、ビチオフェンの含有量を5質量%とした。
(比較例6)
キャスティング法により、ポリアリレートとジフェニルアセチレンとからなる記録層形成用シートを成形する以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。なお、ポリアリレートの含有量を97質量%とし、ジフェニルアセチレンの含有量を3質量%とした。
(比較例7)
キャスティング法により、ポリアリレートとアントラセンとからなる記録層形成用シートを成形する以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。なお、ポリアリレートの含有量を97.5質量%とし、アントラセンの含有量を2.5質量%とした。
(比較例8)
キャスティング法により、ポリアリレートとテトラシアノベンゼンとからなる記録層形成用シートを成形する以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。なお、ポリアリレートの含有量を99質量%とし、テトラシアノベンゼンンの含有量を1質量%とした。
(比較例9)
キャスティング法により、ポリアリレートとナフタロニトリルとからなる記録層形成用シートを成形する以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。なお、ポリアリレートの含有量を97質量%とし、ナフタロニトリルの含有量3質量%とした。
(比較例10)
キャスティング法により、ポリアリレートと3-フェニルチオフェンとからなる記録層形成用シートを成形する以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。なお、ポリアリレートの含有量を95質量%とし、3-フェニルチオフェンの含有量を5質量%とした。
(比較例11)
キャスティング法により、ポリアリレートとトリ-p-トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナートとからなる記録層形成用シートを成形する以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。なお、ポリアリレートの含有量を97質量%とし、トリ-p-トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナートの含有量を3質量%とした。
(記録時間測定)
上述のようにして得られた比較例2〜11の光情報記録媒体の記録時間を、チタンサファイアレーザを用いて測定した。レーザ光の平均出射光強度(平均パワー)を5.25mW、ピークパワーを30W、パルス幅を2.3s、周波数を76MHzとする以外は、実施例1の「チタンサファイアレーザを用いた記録時間測定」と同様にして、光情報記録媒体の記録時間を測定した。
表3は、比較例2〜11の光情報記録媒体の記録層の構成を示す。
Figure 2013242939
以下に、比較例3〜11の光情報記録媒体の記録層に含まれる添加剤の構造式を示す。
Figure 2013242939
(テトラチアフルバレン)
Figure 2013242939
(ビス(エチレンジチオ)テトラチアフルバレン)
Figure 2013242939
(ビチオフェン)
Figure 2013242939
(ジフェニルアセチレン)
Figure 2013242939
(アントラセン)
Figure 2013242939
(テトラシアノベンゼン)
Figure 2013242939
(ナフタロニトリル)
Figure 2013242939
(3-フェニルチオフェン)
Figure 2013242939
(トリ-p-トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート)
図6は、比較例2〜11の光情報記録媒体の添加剤と記録時間との関係を示すグラフである。この図6から以下のことがわかる。
ポリアリレートを母剤として含む記録層では、添加剤を記録層に添加しても、記録速度を大きく向上することは困難である。すなわち、ポリアリレートを母剤として含む記録層を用いた場合、添加剤による記録感度向上の度合いは小さい。これは、ポリアリレートなどの熱可塑性樹脂の分解反応は、光反応がトリガーであるため、熱可塑性樹脂と添加剤とが光吸収過程で競争的になり、添加剤の効果が十分に引き出されなかったためと考えられる。
これに対して、上述したように、ニトロセルロースを母剤として含む記録層を用いた場合には、添加剤を記録層に添加すると、記録速度を大きく向上することができる(図4参照)。すなわち、ニトロセルロースを母剤として含む記録層を用いた場合には、添加剤による記録感度向上の度合いは大きい。この効果の発現は、ニトロセルロースおよび添加剤のうち添加剤が光を主として吸収するため、ニトロセルロースと添加剤とが光吸収過程で競争的とはならず、添加剤の効果が十分に引き出されたことが一つの要因と考えられる。
<3.添加剤の濃度および種類と記録時間との関係>
ニトロセルロースからなる記録層に対して添加剤を添加するとともに、その濃度を変化させることにより、記録時間の濃度依存性を調べた。また、ニトロセルロースからなる記録層に種々の添加剤を添加して、その記録時間を調べた。
(実施例3−1)
実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
(実施例3−2)
キャスティング法により、ニトロセルロースとビス(2,4-ジニトロフェニル)酢酸エチルとからなる記録層形成用シートを成形する以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。なお、ポリアリレートの含有量を97質量%とし、ビス(2,4-ジニトロフェニル)酢酸エチルの含有量を3質量%とした。
(実施例3−3)
ニトロセルロースの含有量を95質量%とし、ビス(2,4-ジニトロフェニル)酢酸エチルの含有量を5質量%とする以外のことは実施例3−2と同様にして光情報記録媒体を得た。
(実施例3−4)
ニトロセルロースの含有量を90質量%とし、ビス(2,4-ジニトロフェニル)酢酸エチルの含有量を10質量%とする以外のことは実施例3−2と同様にして光情報記録媒体を得た。
(実施例4−1)
実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
(実施例4−2)
キャスティング法により、ニトロセルロースとジフェニルアセチレンとからなる記録層形成用シートを成形する以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。なお、ニトロセルロースの含有量を97質量%とし、ジフェニルアセチレンの含有量を3質量%とした。
(実施例4−3)
ニトロセルロースの含有量を95質量%とし、ジフェニルアセチレンの含有量を5質量%とする以外のことは実施例4−2と同様にして光情報記録媒体を得た。
(実施例4−4)
ニトロセルロースの含有量を90質量%とし、ジフェニルアセチレンの含有量を10質量%とする以外のことは実施例4−2と同様にして光情報記録媒体を得た。
(実施例4−5)
ニトロセルロースの含有量を85質量%とし、ジフェニルアセチレンの含有量を15質量%とする以外のことは実施例4−2と同様にして光情報記録媒体を得た。
(実施例5)
キャスティング法により、ニトロセルロースと4,4-ジメトキシジフェニルアセチレンとからなる記録層形成用シートを成形する以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。なお、ニトロセルロースの含有量を95質量%とし、4,4-ジメトキシジフェニルアセチレンの含有量を5質量%とした。
(実施例6)
キャスティング法により、ニトロセルロースとジフェニルブタジインとからなる記録層形成用シートを成形する以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。なお、ニトロセルロースの含有量を85質量%とし、ジフェニルブタジエンの含有量を15質量%とした。
(実施例7)
キャスティング法により、ニトロセルロースとビチオフェンとからなる記録層形成用シートを成形する以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。なお、ニトロセルロースの含有量を70質量%とし、ビチオフェンの含有量を30質量%とした。
(実施例8)
キャスティング法により、ニトロセルロースと9-フェニルカルバゾールとからなる記録層形成用シートを成形する以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。なお、ニトロセルロースの含有量を70質量%とし、9-フェニルカルバゾールの含有量を30質量%とした。
(記録時間測定)
上述のようにして得られた実施例3−1〜4−5、実施例5〜8の光情報記録媒体の記録時間を、チタンサファイアレーザを用いて測定した。レーザ光の平均出射光強度(平均パワー)を5.25mW、ピークパワーを30W、パルス幅を2.3s、周波数を76MHzとする以外は、実施例1の「チタンサファイアレーザを用いた記録時間測定」と同様にして、光情報記録媒体の記録時間を測定した。
表4は、実施例3−1〜4−5、実施例5〜8の光情報記録媒体の記録層の構成を示す。
Figure 2013242939
以下に、実施例3−1〜4−5、実施例5〜8の光情報記録媒体の記録層に含まれる添加剤の構造式を示す。
Figure 2013242939
(ビス(2,4-ニトロフェニル)酢酸エチル)
Figure 2013242939
(ジフェニルアセチレン)
Figure 2013242939
(4,4-ジメトキシジフェニルアセチレン)
Figure 2013242939
(ジフェニルブタジイン)
Figure 2013242939
(ビチオフェン)
Figure 2013242939
(9-フェニルカルバゾール)
図7は、実施例3−1〜4−5、5〜8の光情報記録媒体の添加剤と記録時間との関係を示すグラフである。なお、図7において、「NC」、「BNAA」、「DPA」、「MDPA」、「DPB」、「BT」および「PCz」は以下の母剤および添加剤を示す。
NC:ニトロセルロース
BNAA:ビス(2,4-ニトロフェニル)酢酸エチル
DPA:ジフェニルアセチレン
MDPA:4,4-ジメトキシジフェニルアセチレン
DPB:ジフェニルブタジエン
BT:ビチオフェン
PCz:9-フェニルカルバゾール
図7から以下のことがわかる。
実施例3−1〜4−5の測定結果から、ニトロセルロースを母剤として含む記録層では、添加剤の濃度を増加させるに従って、指数関数的に記録感度が向上することがわかる。その記録感度向上の度合いは添加剤の種類により異なっており、ビス(2,4-ニトロフェニル)酢酸エチルを用いた場合の方が、ジフェニルアセチレンを用いたい場合に比べて記録感度が向上の度合いが大きいことがわかる。また、添加剤としてジフェニルアセチレンを用いた場合には、添加量が3質量%以上で記録感度向上の効果が発現することがわかる。
実施例5〜8の測定結果から、ビス(2,4-ニトロフェニル)酢酸エチルおよびジフェニルアセチレン以外の添加剤を用いた場合にも、記録感度を向上できることがわかる。これは、光を吸収した添加剤は少なからず発熱するためと考えられる。
ジフェニルアセチレン、ビチオフェンを用いた実施例4−1〜4−5、実施例7の測定結果から、ニトロセルロースを記録層の母剤として用いた場合には、ポリアリレートを記録層の母剤として用いた場合にはほとんど記録感度向上の効果が得られなかった添加剤(図6、添加剤(4)、(5)参照)でも、記録感度を大きく向上できることがわかる。
実施例4−1〜4−5、実施例5、6の測定結果から、ジフェニルアセチレンの約10倍の2光子吸収断面積を有する4,4-ジメトキシジフェニルアセチレンおよびジフェニルブタジエンを添加剤として用いた場合には、ジフェニルアセチレンを添加剤として用いた場合に比べて、記録感度を向上できることがわかる。すなわち、2光子吸収がトリガーであっても、記録感度向上の効果が得られることがわかる。
<4.添加剤の種類と記録時間との関係>
ニトロセルロースからなる記録層に対して種々の添加剤(非線形吸収材料および線形吸収材料)を添加して光情報記録媒体を作製し、それらの媒体それぞれの記録時間を求めた。
(実施例9)
キャスティング法により、ニトロセルロースとアセチレンカルボン酸とからなる記録層形成用シートを成形した。なお、ニトロセルロースの含有量を95質量%とし、アセチレンカルボン酸の含有量を5質量%とした。これ以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
(実施例10)
キャスティング法により、ニトロセルロースと2,4-ヘキサジイン-1,6-ジオールとからなる記録層形成用シートを成形した。なお、ニトロセルロースの含有量を95質量%とし、2,4-ヘキサジイン-1,6-ジオールの含有量を5質量%とした。これ以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
(実施例11)
キャスティング法により、ニトロセルロースと4-フルオロ-4'-(フェニルエチニル)ベンゾフェノンとからなる記録層形成用シートを成形した。なお、ニトロセルロースの含有量を90質量%とし、4-フルオロ-4'-(フェニルエチニル)ベンゾフェノンの含有量を10質量%とした。これ以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
(実施例12)
キャスティング法により、ニトロセルロースと1,1,3-トリフェニル-2-プロピン-1-オールとからなる記録層形成用シートを成形した。なお、ニトロセルロースの含有量を90質量%とし、1,1,3-トリフェニル-2-プロピン-1-オールの含有量を10質量%とした。これ以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
(実施例13)
キャスティング法により、ニトロセルロースとフェナントレンとからなる記録層形成用シートを成形した。なお、ニトロセルロースの含有量を80質量%とし、フェナントレンの含有量を20質量%とした。これ以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
(実施例14−1)
キャスティング法により、ニトロセルロースと1,8-ジニトロナフタレンとからなる記録層形成用シートを成形した。なお、ニトロセルロースの含有量を97質量%とし、1,8-ジニトロナフタレンの含有量を3質量%とした。これ以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
(実施例14−2)
キャスティング法により、ニトロセルロースと1,8-ジニトロナフタレンとからなる記録層形成用シートを成形した。なお、ニトロセルロースの含有量を95質量%とし、1,8-ジニトロナフタレンの含有量を5質量%とした。これ以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
(実施例15)
キャスティング法により、ニトロセルロースと2-ヒドロキシ-4-メトキシ−ベンゾフェノンとからなる記録層形成用シートを成形した。なお、ニトロセルロースの含有量を90質量%とし、2-ヒドロキシ-4-メトキシ−ベンゾフェノンの含有量を10質量%とした。これ以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
(実施例16)
キャスティング法により、ニトロセルロースと2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)-エンゾトリアゾ−ルとからなる記録層形成用シートを成形した。なお、ニトロセルロースの含有量を90質量%とし、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)-エンゾトリアゾ−ルを10質量%とした。これ以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
(実施例17)
キャスティング法により、ニトロセルロースとベンゾ[h]キノリンとからなる記録層形成用シートを成形した。なお、ニトロセルロースの含有量を90質量%とし、ベンゾ[h]キノリンの含有量を10質量%とした。これ以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
(実施例18)
キャスティング法により、ニトロセルロースと2,2'-メチレンビス[6-(ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール]とからなる記録層形成用シートを成形した。なお、ニトロセルロースの含有量を95質量%とし、2,2'-メチレンビス[6-(ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール]の含有量を5質量%とした。これ以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
(実施例19)
キャスティング法により、ニトロセルロースと2,6-ジヒドロキシアセトフェノンとからなる記録層形成用シートを成形した。なお、ニトロセルロースの含有量を95質量%とし、2,6-ジヒドロキシアセトフェノンの含有量を5質量%とした。これ以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
(実施例20)
キャスティング法により、ニトロセルロースと2-イソプロペニルナフタレンとからなる記録層形成用シートを成形した。なお、ニトロセルロースの含有量を97質量%とし、2-イソプロペニルナフタレンの含有量を3質量%とした。これ以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
表5は、実施例9〜20の光情報記録媒体の記録層の構成を示す。
Figure 2013242939
以下に、実施例9〜20の光情報記録媒体の記録層に含まれる添加剤の構造式を示す。
Figure 2013242939
(アセチレンカルボン酸)
Figure 2013242939
(2,4-ヘキサジイン-1,6-ジオール)
Figure 2013242939
(4-フルオロ-4'-(フェニルエチニル)ベンゾフェノン)
Figure 2013242939
(1,1,3-トリフェニル-2-プロピン-1-オール)
Figure 2013242939
(フェナントレン)
Figure 2013242939
(1,8-ジニトロナフタレン)
Figure 2013242939
(2-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾフェノン)
Figure 2013242939
(2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)-エンゾトリアゾ−ル)
Figure 2013242939
(ベンゾ[h]キノリン)
Figure 2013242939
(2,2'-メチレンビス[6-(ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール])
Figure 2013242939
(2,6-ジヒドロキシアセトフェノン)
Figure 2013242939
(2-イソプロペニルナフタレン)
(記録時間測定)
上述のようにして得られた実施例9〜20の光情報記録媒体の記録時間を、ピコ秒パルスレーザダイオードを用いて測定した。レーザ光の平均出射光強度(平均パワー)を20〜25mW、ピークパワーを14〜17W、パルス幅を2.3s、周波数を1GHzとする以外は、実施例1の「ピコ秒パルスレーザダイオードを用いた記録時間測定」と同様にして、光情報記録媒体の記録時間を測定した。
図8は、実施例9〜20の光情報記録媒体の1光子吸収係数と記録時間との関係を示すグラフである。ここで、5質量%以上の添加で厚み250μmにて50%以下の透過率Tを有するものを線形吸収材料(T≦50%)、5質量%以上の添加で厚み250μmにて50%を超える透過率Tを有するものを非線形吸収材料(50%<T)と定義する。また、透過率T=50%は、1光子吸収係数ε=0.0011に対応し、1光子吸収係数εにより線形吸収材料および非線形吸収材料を定義すると、0.0011以上の1光子吸収係数εを有するものを線形吸収材料(0.0011≦ε)、0.0011未満の1光子吸収係数εを有するものを非線形吸収材料(ε<0.0011)と定義できる。
なお、1光子吸収係数は以下のようにして求めた。まず、吸光分光光度計にてフィルムサンプルの透過率(T%)と反射率(R%)を測定した。次に、それらの測定値と、フィルムサンプルの膜厚(d)とを以下の式に代入することで、1光子吸収係数を求めた。
「1光子吸収係数」=log(T/(100−R))/d
図8から以下のことがわかる。
実施例9〜20の測定結果から、ニトロセルロースを母剤として含む記録層では、光を吸収して発熱する添加剤として、線形吸収および非線形吸収のいずれの材料を用いた場合にも、記録感度を向上でき、その効果は添加剤の種類により異なっていることがわかる。線形吸収材料としては2-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾフェノン、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)-エンゾトリアゾ−ル、または2,2'-メチレンビス[6-(ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール]を用いた場合に、特に記録感度を向上できることがわかる。また、非線形吸収材料としては4-フルオロ-4'-(フェニルエチニル)ベンゾフェノンを用いた場合に、特に記録感度を向上できることがわかる。これらの記録感度を特に向上できる線形吸収材料および非線形吸収材料はいずれも、三重光励起状態の収率が高い材料である。三重光励起状態では高確率で励起状態吸収を行えるので、高い発熱確率が得られる。
<5.記録材料と記録密度との関係>
種々の熱可塑性樹脂からなる記録層を有する光情報記録媒体を作製し、それらの媒体に情報信号を記録し、再生波形を評価した。
(実施例21)
実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
(比較例12)
キャスティング法により、熱可塑性樹脂としてのポリアリレートからなる記録層形成用シートを成形する以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
(比較例13)
キャスティング法により、熱可塑性樹脂としてのポリサルフォンからなる記録層形成用シートを成形する以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
(比較例14)
キャスティング法により、熱可塑性樹脂としてのポリカーボネートからなる記録層形成用シートを成形する以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
(比較例15)
キャスティング法により、熱可塑性樹脂としてのポリエーテルサルフォンからなる記録層形成用シートを成形する以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。
表6は、実施例21、比較例12〜15の光情報記録媒体の記録層の構成を示す。
Figure 2013242939
(再生波形評価)
上述のようにして得られた実施例21、比較例12〜15の光情報記録媒体に対して、記録時のレーザ光照射パターンを変えて情報信号を記録し、その再生波形を評価した。以下にその評価方法の詳細を説明する。
まず、図9Aに示すレーザ光照射パターンS1により情報信号を、チタンサファイアレーザを用いて以下のようにして光情報記録媒体に記録した。回転させた光情報記録媒体に対して、開口数NA=0.85の対物レンズを介して、波長λ:405nm、ピークパワーPp:170W、パルス幅T:2.3ps、周波数f:76MHzのレーザ光を表面深さd:50μmの位置に照射した。なお、光情報記録媒体は、線速度v:0.15m/secのCLV(Constant Linear Velocity)方式により回転駆動させた。次に、回転させた光情報記録媒体に対してレーザ光を照射して、記録した情報信号を再生した。
次に、図9Aに示すレーザ光照射パターンS2を用いる以外は、図9A示すレーザ光照射パターンS1を用いた場合と同様に光情報記録媒体に情報信号を記録した。なお、図9Aに示すレーザ光照射パターンS2は、図9Aに示すレーザ光照射パターンS1のパルス間の間隔をΔT(=T/10、T:パルス幅)短くしたものである。次に、光情報記録媒体にレーザ光を照射して、記録した情報信号を再生した。
図9Bは、図9Aに示すレーザ光照射パターンS1により情報信号を記録した実施例21、比較例12〜15の光情報記録媒体の再生波形を示す。図9Cは、図9Aに示すレーザ光照射パターンS2により情報信号を記録した比較例12〜15の光情報記録媒体の再生波形を示す。なお、図9Aに示すレーザ光照射パターンS2により情報信号を記録した実施例21の再生波形は、図9Bに示した再生波形とほぼ同様であったので、図示を省略する。
上述の評価から、記録層の材料としてニトロセルロースを用いた場合には、記録層の材料としてポリアリレートやポリカーボネートなど熱可塑性樹脂を用いた場合に比べて、記録密度を向上できることがわかる。
この効果の相違は、以下の点に原因があると考えられる。ポリアリレートやポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂では、分解温度(Tdec)とガラス転移温度(Tg)との差ΔTが非常に大きい。このため、情報信号の記録に際して、軟化範囲が広く、ピット(ボイド)周辺が熱で軟化し、ピット(ボイド)径の拡大やピット(ボイド)の流動が生じる。これに対して、ニトロセルロースでは、分解温度(Tdec)とガラス転移温度(Tg)との差ΔTが小さく、約10℃程度である。このため、情報信号の記録に際して、軟化範囲が狭く、ピット(ボイド)周辺が熱で軟化することが抑制され、ピット(ボイド)径の拡大やピット(ボイド)の流動が抑えられる。
<6.ランダムパターン記録についての検討>
ニトロセルロースとジフェニルアセチレンとからなる記録層、ポリアリレートとジフェニルアセチレンとからなる記録層をそれぞれ有する光情報記録媒体を作製し、それらの媒体にランダムパターン信号を記録して再生波形を評価した。
(実施例22)
キャスティング法により、ニトロセルロースとジフェニルアセチレンとからなる記録層形成用シートを成形する以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。なお、ニトロセルロースの含有量を90質量%とし、ジフェニルアセチレンの含有量を10質量%とした。
(比較例16)
キャスティング法により、ポリアリレートとジフェニルアセチレンとからなる記録層形成用シートを成形する以外のことは実施例1と同様にして光情報記録媒体を得た。なお、ポリアリレートの含有量を90質量%とし、ジフェニルアセチレンの含有量を10質量%とした。
(再生波形評価)
上述のようにして得られた実施例22、比較例16の光情報記録媒体にランダムパターン信号を、チタンサファイアレーザを用いて以下のようにして記録した。回転させた光情報記録媒体に対して、開口数NA:0.85の対物レンズを介して、波長λ:405nm、ピークパワーPp:170W、パルス幅T:2.3ps、周波数f:76MHzのレーザ光を表面深さf=50μmの位置に照射することにより、ランダムパターン信号を記録した。なお、光情報記録媒体は、線速度v:0.15m/secのCLV(Constant Linear Velocity)方式により回転駆動させた。次に、回転させた光情報記録媒体に対してレーザ光を照射して、記録したランダムパターン信号を再生した。
図10は、ランダムパターン信号を記録した実施例22の光情報記録媒体の再生波形を示す。図10に示すように、実施例22の光情報記録媒体では、再生波形としてアイパターンが観察された。この観察結果から、実施例22の光情報記録媒体では、ランダムパターン信号を記録可能であることがわかる。これは、ニトロセルロースを記録層の材料として用いることで、情報信号の記録に際して、ピット(ボイド)径の拡大やピット(ボイド)の流動が抑制されて、ランダムパターン信号に対応したピット(ボイド)を形成できたためと考えられる。
一方、比較例16の光情報記録媒体では、再生波形としてアイパターンは観察されなかった。これは、ポリアリレートを記録層の材料として用いた場合には、ピット(ボイド)径の拡大やピット(ボイド)の流動が生じ、ランダムパターン信号に対応したピット(ボイド)を形成できなかったためと考えられる。
1 基板
2 記録層
3 中間層
4 選択反射層
5 カバー層
10 光情報記録媒体
L0〜Ln 情報記録層

Claims (18)

  1. 光の吸収により発泡し、記録マークとしての空洞を形成可能である記録層を備え、
    上記記録層は、ニトロセルロースと、光を吸収して発熱する添加剤とを含んでいる光情報記録媒体。
  2. 上記添加剤が、非線形吸収材料である請求項1記載の光情報記録媒体。
  3. 上記非線形吸収材料が、レーザ光の吸収により三重項間輻射熱を発生する非線形吸収材料である請求項2記載の光情報記録媒体。
  4. 上記非線形吸収材料は、ベンゾトリアゾール系の非線形吸収材料、およびベンゾフェノン系の非線形吸収材料からなる群より選ばれる1種以上である請求項3記載の光情報記録媒体。
  5. 上記非線形吸収材料は、4-フルオロ-4'-(フェニルエチニル)ベンゾフェノンである請求項3記載の光情報記録媒体。
  6. 上記非線形吸収材料が、レーザ光の吸収により一重項間輻射熱を発生する非線形吸収材料である請求項2記載の光情報記録媒体。
  7. 上記非線形吸収材料は、炭素−炭素三重結合を有する線形吸収材料、および縮合多環芳香族系の非線形吸収材料からなる群より選ばれる1種以上である請求項6記載の光情報記録媒体。
  8. 上記非線形吸収材料は、アセチレンカルボン酸、ジフェニルアセチレン、1,1,3-トリフェニル-2-プロピン-1-オール、2,4-ヘキサジイン-1,6-ジオール、4-4’-ジメトキシジフェニルアセチレン、およびジフェニルブタジエンからなる群より選ばれる1種以上である請求項6記載の光情報記録媒体。
  9. 上記添加剤が、線形吸収材料である請求項1記載の光情報記録媒体。
  10. 上記線形吸収材料が、レーザ光の吸収により三重項間輻射熱を発生する線形吸収材料である請求項9記載の光情報記録媒体。
  11. 上記線形吸収材料は、ベンゾトリアゾール系の線形吸収材料、およびベンゾフェノン系の線形吸収材料からなる群より選ばれる1種以上である請求項10記載の光情報記録媒体。
  12. 上記線形吸収材料は、2,2'-メチレンビス[6-(ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール]、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾフェノン、および2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)-エンゾトリアゾールからなる群より選ばれる1種以上である請求項10記載の光情報記録媒体。
  13. 上記線形吸収材料が、レーザ光の吸収により一重項間輻射熱を発生する線形吸収材料である請求項9記載の光情報記録媒体。
  14. 上記線形吸収材料は、縮合多環芳香族系の線形吸収材料である請求項13記載の光情報記録媒体。
  15. 上記線形吸収材料は、フェナントレン、ベンゾ[h]キノリン、9-フェニルカルバゾール、1,8-ジニトロナフタレン、ビス(2,4-ニトロフェニル)酢酸エチル、2-イソプロペニルナフタレン、2,6-ジヒドロキシアセトフェノン、および1,1,3-トリフェニル-2-プロピン-1-オールからなる群より選ばれる1種以上である請求項13記載の光情報記録媒体。
  16. ニトロセルロースと、光を吸収して発熱する添加剤とを含み、
    光の吸収により発泡し、記録マークとしての空洞を形成可能である記録層。
  17. 光の吸収により発泡し、記録マークとしての空洞を形成可能である記録層を備え、
    上記記録層は、ニトロセルロースを含んでいる光情報記録媒体。
  18. ニトロセルロースを含み、
    光の吸収により発泡し、記録マークとしての空洞を形成可能である記録層。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2021246066A1 (ja) * 2020-06-01 2021-12-09 パナソニックIpマネジメント株式会社 化合物、非線形光学材料、記録媒体、情報の記録方法及び情報の読出方法

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