JPWO2004089992A1 - 改質アラビアガムおよびその用途 - Google Patents
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Abstract
本発明は、総食物繊維含量を増加してなる改質アラビアガム、並びにその用途を提供するものである。本発明の改質アラビアガムは、アラビアガムを加熱することによって得られる、総食物繊維含量(AOAC法)が90%以上、好ましくは更に重量平均分子量が100万以上である改質アラビアガムである。また、当該改質アラビアガムの用途としては、飲食物や医薬品の食物繊維原料または食物繊維強化用添加物を挙げることができる。ゆえに、本発明は、上記改質アラビアガムを食物繊維原料または食物繊維強化用添加物として含む、飲食物または医薬品を提供する。
Description
本発明は、改質されたアラビアガムに関する。より詳細には、本発明は高い総食物繊維含量を有するように改質されたアラビアガムに関する。
アラビアガムは、マメ科アカシア属に属する植物(アカシア:特にAcacia senegal及びAcacia seyal)の幹や枝から得られるゴム状の滲出液を乾燥して調製される天然樹脂である。アラビアガムは水に高濃度で溶解し、その水溶液は、比較的低濃度で、強い乳化安定性と保護コロイド性、及びフィルム形成性を有する。このため、アラビアガムは、従来から広く乳化剤、増粘剤、安定剤また皮膜剤として利用されている(「INDUSTRIAL GUMS−Polysaccharides and Their Derivatives−」,SECOND EDITION,ACADEMIC PRESS,New York and London,1973,pp.197−263)。さらに、アラビアガムはヒトの消化酵素によっては消化されない食物繊維を含んでいる。その含有量は、酵素−HPLC法によると80〜90%であり(月刊フードケミカル2002−6,p85−89)、AOAC法によると85%及びENGLYST法によると70%以上である(月刊フードケミカル1997−7,p102−104)が知られている。
近年、日本人の食生活の欧米化に伴い、食物繊維の不足と糖尿病、肥満及び動脈硬化などの生活習慣病の増加との関連性が多くの研究者から指摘されている。そして、食物繊維の生理機能が注目され、また食物繊維の摂取の必要性が唱えられている。
前述するように、アラビアガムは、他の食物繊維である高分子多糖類に比べて、極めて粘度が低く高濃度での使用が可能で、安全性に優れているという特徴を備えている。このため、飲料などの食品に添加してももとの食感を損なうことなく、食物繊維を多量に摂取するには有用な素材である。そこで、アラビアガムを食物繊維として利用した食品の開発が求められている。
近年、日本人の食生活の欧米化に伴い、食物繊維の不足と糖尿病、肥満及び動脈硬化などの生活習慣病の増加との関連性が多くの研究者から指摘されている。そして、食物繊維の生理機能が注目され、また食物繊維の摂取の必要性が唱えられている。
前述するように、アラビアガムは、他の食物繊維である高分子多糖類に比べて、極めて粘度が低く高濃度での使用が可能で、安全性に優れているという特徴を備えている。このため、飲料などの食品に添加してももとの食感を損なうことなく、食物繊維を多量に摂取するには有用な素材である。そこで、アラビアガムを食物繊維として利用した食品の開発が求められている。
本発明は、アラビアガムを食物繊維として利用した飲食物や医薬品の開発を目指して、食物繊維、特に総食物繊維をより多く含むようにアラビアガムを改質してなるアラビアガム(改質アラビアガム)を提供することを目的とする。さらに本発明はかかる改質アラビアガムを食物繊維原料として用いた飲食物を提供することを目的とする。
なお、本明細書において、改質に用いる原料としてのアラビアガムは、本発明の改質アラビアガムと区別するため、単に「アラビアガム」というか、または「天然アラビアガム」または「非改質アラビアガム」と称する。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねていたところ、天然から得られるアラビアガム(Acacia senegal種またはAcacia seyal種に属するアラビアガム)を特定条件で加熱処理することによって総食物繊維含量を増加させることができることを見いだした。
本発明は、かかる知見に基づくものであり、下記の態様を含むものである。
項1.総食物繊維含量(AOAC法)が90%以上である水溶性の改質アラビアガム。
項2.重量平均分子量が100万以上である項1記載の改質アラビアガム。
項3.飲食物または医薬品の食物繊維原料として用いられる項1または2に記載される改質アラビアガム。
項4.飲食物または医薬品の食物繊維強化用添加物として用いられる項1または2に記載される改質アラビアガム。
項5.アラビアガムを加熱することによって得られるものである項1乃至4のいずれかに記載の改質アラビアガム。
項6.アラビアガムを110℃で24時間以上加熱するか、それと同様な効果が得られる条件で処理することによって得られるものである項5に記載の改質アラビアガム。
項7.Acacia senegal種に由来する項1乃至6のいずれかに記載の改質アラビアガム。
項8.アラビアガムを110℃で24時間以上加熱するか、それと同様な効果が得られる条件で処理する工程を有する、項1乃至7のいずれかに記載する改質アラビアガムの製造方法。
項9.項1乃至7のいずれかに記載する改質アラビアガムからなるか、または当該改質アラビアガムを含有する飲食物または医薬品(好ましくは経口医薬品)用の食物繊維原料。
項10.項1乃至7のいずれかに記載する改質アラビアガムを、飲食物または医薬品(好ましくは経口医薬品)の食物繊維原料として使用する方法。
項11.項1乃至7のいずれかに記載する改質アラビアガムからなるか、または当該改質アラビアガムを含有する飲食物または医薬品(好ましくは経口医薬品)用の食物繊維強化用添加物。
項12.項1乃至7のいずれかに記載する改質アラビアガムを、飲食物または医薬品(好ましくは経口医薬品)の食物繊維強化用添加物として使用する方法。
項13.項1乃至7のいずれかに記載する改質アラビアガムを食物繊維原料として含有する飲食物または医薬品(好ましくは経口医薬品)。
項14.項1乃至7のいずれかに記載する改質アラビアガムを食物繊維原料として含有する食物繊維含量が増強されてなる飲食物。
項15.便性改善、整腸、腸内環境改善、肥満予防、血中脂質値調節、血中コレステロールの低下、血糖値調節または発ガン抑制を目的とする項13または14に記載する飲食物または医薬品(好ましくは経口医薬品)。
項16.項1乃至7のいずれかに記載する改質アラビアガムを食物繊維原料として用いて飲食物を製造することを特徴とする、飲食物の食物繊維含量の増強方法。
項17.項1乃至7のいずれかに記載する改質アラビアガムの、食物繊維原料としての使用。
項18.項1乃至7のいずれかに記載する改質アラビアガムの、食物繊維強化用添加物としての使用。
項19.項1乃至7のいずれかに記載する改質アラビアガムの、飲食物または医薬品(好ましくは経口医薬品)の製造のための使用。
項20.飲食物または医薬品が、便性改善、整腸、腸内環境改善、肥満予防、血中脂質値調節、血中コレステロールの低下、血糖値調節または発ガン抑制を目的とするものである、項19に記載する使用。
なお、本明細書において、改質に用いる原料としてのアラビアガムは、本発明の改質アラビアガムと区別するため、単に「アラビアガム」というか、または「天然アラビアガム」または「非改質アラビアガム」と称する。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねていたところ、天然から得られるアラビアガム(Acacia senegal種またはAcacia seyal種に属するアラビアガム)を特定条件で加熱処理することによって総食物繊維含量を増加させることができることを見いだした。
本発明は、かかる知見に基づくものであり、下記の態様を含むものである。
項1.総食物繊維含量(AOAC法)が90%以上である水溶性の改質アラビアガム。
項2.重量平均分子量が100万以上である項1記載の改質アラビアガム。
項3.飲食物または医薬品の食物繊維原料として用いられる項1または2に記載される改質アラビアガム。
項4.飲食物または医薬品の食物繊維強化用添加物として用いられる項1または2に記載される改質アラビアガム。
項5.アラビアガムを加熱することによって得られるものである項1乃至4のいずれかに記載の改質アラビアガム。
項6.アラビアガムを110℃で24時間以上加熱するか、それと同様な効果が得られる条件で処理することによって得られるものである項5に記載の改質アラビアガム。
項7.Acacia senegal種に由来する項1乃至6のいずれかに記載の改質アラビアガム。
項8.アラビアガムを110℃で24時間以上加熱するか、それと同様な効果が得られる条件で処理する工程を有する、項1乃至7のいずれかに記載する改質アラビアガムの製造方法。
項9.項1乃至7のいずれかに記載する改質アラビアガムからなるか、または当該改質アラビアガムを含有する飲食物または医薬品(好ましくは経口医薬品)用の食物繊維原料。
項10.項1乃至7のいずれかに記載する改質アラビアガムを、飲食物または医薬品(好ましくは経口医薬品)の食物繊維原料として使用する方法。
項11.項1乃至7のいずれかに記載する改質アラビアガムからなるか、または当該改質アラビアガムを含有する飲食物または医薬品(好ましくは経口医薬品)用の食物繊維強化用添加物。
項12.項1乃至7のいずれかに記載する改質アラビアガムを、飲食物または医薬品(好ましくは経口医薬品)の食物繊維強化用添加物として使用する方法。
項13.項1乃至7のいずれかに記載する改質アラビアガムを食物繊維原料として含有する飲食物または医薬品(好ましくは経口医薬品)。
項14.項1乃至7のいずれかに記載する改質アラビアガムを食物繊維原料として含有する食物繊維含量が増強されてなる飲食物。
項15.便性改善、整腸、腸内環境改善、肥満予防、血中脂質値調節、血中コレステロールの低下、血糖値調節または発ガン抑制を目的とする項13または14に記載する飲食物または医薬品(好ましくは経口医薬品)。
項16.項1乃至7のいずれかに記載する改質アラビアガムを食物繊維原料として用いて飲食物を製造することを特徴とする、飲食物の食物繊維含量の増強方法。
項17.項1乃至7のいずれかに記載する改質アラビアガムの、食物繊維原料としての使用。
項18.項1乃至7のいずれかに記載する改質アラビアガムの、食物繊維強化用添加物としての使用。
項19.項1乃至7のいずれかに記載する改質アラビアガムの、飲食物または医薬品(好ましくは経口医薬品)の製造のための使用。
項20.飲食物または医薬品が、便性改善、整腸、腸内環境改善、肥満予防、血中脂質値調節、血中コレステロールの低下、血糖値調節または発ガン抑制を目的とするものである、項19に記載する使用。
図1は、アラビアガム原料(A.senegal種)(球塊サイズ5mm、重量平均分子量5.36±0.02×105)70kgを100L容スチール製ドラム缶に入れて110℃のオーブンで36時間加熱して調製した改質アラビアガムを、GPC−MALLS(ゲル濾過クロマトグラフィー)にかけて得られたクロマトグラムを示す。
(1)改質アラビアガム
本発明の改質アラビアガムは、改質アラビアガム100重量%中に総食物繊維(AOAC法)を90%以上の割合で含有することを特徴とするものである。
ここで総食物繊維とは、体内に摂取したときに、人の消化酵素によって加水分解されない難消化性の多糖類及びリグニンを意味する。本発明の改質アラビアガム中に含まれている総食物繊維の量は、食物繊維定量法として規定されているProsky法(AOAC公定法:CEREAL FOODS CHAPER 32(2000),p.7−12“AOAC OFFICIAL METHODS OF ANALYSIS”,AOAC official method 991.43)に従って求めることができる。
Prosky法は、対象試料中に含まれる総食物繊維含量(水溶性食物繊維と不溶性食物繊維を含む)を定量する方法である。試料中の総食物繊維含量を求める方法は、具体的には、次の通りである。試料1g(固形物)を耐熱性α−アミラーゼ、プロテアーゼ、及びアミログルコシダーゼで段階的に処理し、デンプン及び蛋白質を加水分解した後、反応液に4倍量のエタノールを加えて水溶性食物繊維と不溶性食物繊維を包括的に沈殿させ、濾過して残渣を回収し、次いで回収した残渣をエタノール及びアセトンで洗浄した後、乾燥して重量(乾燥残渣重量)をはかり、得られた乾燥残渣重量から非消化性蛋白質量と灰分量を差し引くことによって、試料中の総食物繊維含量を求める。
なお、試料(本発明では、改質アラビアガム)中の総食物繊維含量は、簡便には、例えば日本バイオコン株式会社から販売されている「総食物繊維測定キット」を用いて測定することができる。
本発明の改質アラビアガムは、斯くして求められる総食物繊維含量が90%以上、好ましくは91重量%以上、より好ましくは93重量%以上であることを特徴とする。その上限は、100重量%を限度として、改質アラビアガムが全体として水溶性である限りにおいて特に制限されない。また、総食物繊維含量中に占める不溶性食物繊維の割合も、改質アラビアガムが全体として水溶性である限りにおいて特に制限されない。
ここで、「水溶性」とは、改質アラビアガムが過分量の水(イオン交換水やイオンを含む水の別を問わない。また水温は溶解する温度を用いればよく水温の別を問わない。)に対してほぼ完全に溶解する性質をいう。なお、一旦ヒドロゲル状になったアラビアガムは、水量を多くしても加温しても水に溶解しない。ゆえに、本発明でいう「水溶性」とは、水に溶解しないヒドロゲル状のアラビアガムと区別する意味で用いられる。言い換えれば、本発明の改質アラビアガムは、ヒドロゲル等のように水中で溶解しない高分子状態の改質アラビアガムを実質上含有しないものである。
さらにまた本発明の改質アラビアガムは、上記の割合で総食物繊維を含有し、全体として水溶性であって、さらに改質前のアラビアガム原料と免疫学的反応性において同等もしくは類似していることが好ましい。なお、ここで「アラビアガム原料と免疫学的反応性において同等もしくは類似する」とは、アラビアガムを定量可能な抗体(例えば、SYCC7が例示できる)を用いた間接的競合ELISA法〔Thurston,M.I,et al.,Detection of gum from Acacia seyal and species of combretum in mixtures with A.senegal using monoclonalantibodies,Food & Agric.Immunol.,10:237−241(1998)、Thurston,M.I,et al.,Effect of heat and pH on carbohydrate epitopes from Acacia senegal by specific monoclonal antibodies,Food & Agric.Immunol.,11:145−153(1999)〕において、アラビアガム原料と免疫学的阻害率の差が±10%以内であることを意味する。
なお本発明の改質アラビアガムは、その形状を特に制限するものではなく、塊状、玉状、粗粉砕状、顆粒状、粒状、及び粉末状のいずれの形状をも有することができる。
本発明の改質アラビアガムは、原料として用いるAcacia senegal種に属するアラビアガムまたはAcacia seyal種に属するアラビアガムをオーブンなどの恒温器または加熱器を用いて110℃で24時間以上加熱することによって調製することができる。
ここで原料となるアラビアガム(以下、「アラビアガム原料(A.senegal種)」、または「アラビアガム原料(A.seyal種)」という。またこれらを総称して「アラビアガム原料」ともいう。)は、マメ科植物であるアカシア属に属するアカシア・セネガル(Acacia senegal)、アカシア・セイアル(Acacia seyal)、またはこれらの同属植物の幹や枝から得られるゴム状の滲出液を乾燥して調製される天然樹脂(多糖類)である。または、これらをさらに精製処理、脱塩処理または粉砕もしくはドライスプレー等の加工処理を施したものであってもよい。
アラビアガム原料は、通常、エチオピアからセネガルにかけての北アフリカや西アフリカの各国(エチオピア、スーダン、セネガル、ナイジェリア、ニジェール、ガーナ)、ケニアやウガンダなど東アフリカの国々、アフリカのサハラ地帯、並びにナイル川支流の盆地地帯でも産出されるが、本発明においてはその由来を問うことなく、いずれの産地由来のものであってもよい。
また、アラビアガム原料は、その水分含量を特に制限するものではない。通常商業的に入手可能なアラビアガム原料は、105℃で6時間加温乾燥することによって減少する水分量(乾燥減量)が40重量%以下、好ましくは30重量%以下、特に好ましくは20重量%以下である。本発明においてもかかる水分含量(乾燥減量)を有するアラビアガム原料を任意に用いることができる。
また、通常アラビアガム原料は、塊状、玉状、粗粉砕状、顆粒状、粒状、または粉末状(スプレードライ粉末、ローラードライ粉末を含む)の形態で入手することができるが、本発明ではこれらの形状の別を問わず、いずれの形態のものをも改質処理対象の原料として使用することができる。例えば、平均粒子径が数十〜数百μm程度の粉末状物(スプレードライ粉末、ローラードライ粉末を含む)であってもよい。
平均粒子径の上限は特に制限されないが、改質効率の点から100mm以下であることが望ましい。好ましくは平均粒子径が1〜100mm、より好ましくは2〜50mmの範囲である。
かかるアラビアガム原料の加熱方法としては、上記するように具体的にはオーブン(恒温器又は加熱器)を用いて110℃で24時間以上加熱する方法を例示することができる。好ましくは110℃で48時間以上の加熱処理である。処理するアラビアガム原料やその種類(「A.senegal種」や「A.seyal種」などの種の別)にもよるが、110℃で加熱する場合、時間の上限としては72時間程度を挙げることができる。なお、上記の加熱温度や加熱時間は、本発明の改質アラビアガムを調製する方法(条件)の単なる一例である。ゆえに、上記条件は、本発明の改質アラビアガム取得のための目安とはなるものの、本発明の改質アラビアガムを限定するものではない。
すなわち、本発明で規定する特定の総食物繊維含量を有する水溶性の改質アラビアガムが取得できる方法であれば、加熱温度、加熱時間、加熱手段並びに加熱環境条件(相対湿度や閉鎖系の有無)は任意に選択使用することができ、上記加熱条件に特に制限されるものではない。例えば、上記条件での加熱処理によって得られる本発明の効果は、110℃よりも低温で24時間よりも長時間加熱処理する方法や、110℃よりも高温で短時間加熱処理する方法によっても同様に得ることができる。具体的には、前者の例として80℃で3日〜2週間以上かけて加熱する方法を挙げることができる。なお、上記オーブンによる加熱手段に代えてマイクロ波照射によれば、より短時間に同様な効果を得ることができる。その他、窒素置換条件下など、酸素のない条件下での加熱処理は、生成されるアラビアガムの着色を抑制することができるので、好ましい処理方法である。
さらに本発明の改質アラビアガムは、アラビアガム原料として「A.senegal種」のものを用いる場合は、特に重量平均分子量が100万以上であることが望ましい。
ここで重量平均分子量は、光散乱検出器(MALLS:Multi Angle Laser Light Scattering)、屈折率(RI)検出器及びUV検出器の3つの検出器をオンラインで接続したゲル濾過クロマトグラフィー(本明細書では、これを単に「GPC−MALLS」ともいう)の手法によって求めることができる。なお、当該GPC−MALLSによれば、光散乱検出器(MALLS)により分子量を、屈折率(RI)検出器により各成分の重量(組成比)を、さらにUV検出器により蛋白質を検出することができ、分子量既知の標準品と対比することなく分析成分の分子量並びに組成を求めることができる。その詳細な原理や特徴は、「Idris,O.H.M.,Williams,P.A.,Phillips,G.O.,;Food Hydrocolloids,12,375−388(1998)」に記載されている。
本発明で採用されるGPC−MALLSの測定条件は下記の通りである:
カラム :Superose(6HR)10/30(Pharmacia Biotech,Sweden)
流速 :0.5ml/分
溶出溶媒 :0.2M NaCl
試料の調製:分析試料を溶出溶媒(0.2M NaCl)にて溶解及び希釈
試料濃度 :0.4%(W/V)
試料液注入量:100μl
dn/dc:0.141
温度 :室温
検出器 :▲1▼MALLS(multi angle laser light scattering)検出器:DAWN DSP(Wyatt Technology社製,米国)、▲2▼RI(屈折率)検出器、▲3▼UV検出器(214nmでの吸収)。
上記条件で測定して得られたデータをASTRA Version 4.5(Wyatt Technology)ソフトウェアにて処理することにより、重量平均分子量、回収率(%Mass)、多分散性値(P)、慣性自乗半径(Rg)といった、アラビアガム成分の各種パラメーターを求めることができる。RI検出器によって求められたクロマトグラム上のピーク全体(「RIクロマトグラムのチャートのベースラインからの立ち上がり部を『起点』及び降下してベースラインと交わった部分を『終点』とした場合に、当該『起点』から『終点』までのチャート部を意味する。」)を1ピークとしてデータ処理した場合(processed as one peak)に、得られた分子量が本発明でいう「重量平均分子量」(より詳細には「重量平均分子量(Mwt processed as one peak)」)である。
例えば、一例として粗挽きしたアラビアガム原料(A.senegal種)(球塊サイズ5mm、重量平均分子量5.36±0.02×105)70kgを100L容スチール製ドラム缶に入れて110℃のオーブンで36時間加熱した改質アラビアガムをゲル濾過クロマトグラフィー(GPC−MALLS)にかけた結果を図1に示す。横軸の「Volume(ml)」はカラムを通過した溶出液の累積量を示し、また縦軸の「AUX,90°Detector」は、各検出器(MALLS検出器、RI検出器、UV検出器)の相対強度(relative intensity)を示す。MALLS検出器で得られるクロマトグラムは90°での光散乱強度を示したものであり、分子量の分布に相関する。RI検出器で得られるクロマトグラムは屈折率の強さを示したものであり、各溶出物中に含まれる成分の重量に相関する。また、UV検出器で得られるクロマトグラムは214nmで検出したUV吸収を示したものであり、蛋白質の分布に相関する。RI検出器によって求められたクロマトグラム上のピーク全体(RIクロマトグラムのチャートのベースラインからの立ち上がり部を『起点』(図1中の「A」点に相当)及び降下してベースラインと交わった部分を『終点』(図1中の「B」点に相当))とした場合に、当該『起点』から『終点』までの領域を意味する。」)を1ピークとしてデータ処理した場合(processed as one peak)に得られた分子量が、本発明でいう「重量平均分子量(Mwt)」(より詳細には「重量平均分子量(Mwt processed as one peak)」)である。
本発明の改質アラビアガムの重量平均分子量は好適には100万以上であればよく、特に制限されないが、好ましくは120万以上、より好ましくは150万以上、さらに好ましくは200万以上である。重量平均分子量の上限は、改質アラビアガムが総食物繊維を90重量%以上の割合で含み、水溶性である限りにおいて特に制限されないが、通常250万以下であることが好ましい。
(2)食物繊維原料/食物繊維強化用添加物
本発明は、AOAC公定法による測定に基づいて総食物繊維を90重量%以上の割合で含む上記の改質アラビアガムについて、飲食物原料または医薬品原料としての用途を提供するものである。当該改質アラビアガムは、飲食物または医薬品に対して食物繊維を増強するため(食物繊維含量を増加するため)に用いられる。具体的には、本発明は、飲食物や経口用の医薬品について食物繊維を増強するため(食物繊維含量を増加するため)に用いられる経口摂取可能な可食性添加物を提供する。本発明において、かかる可食性添加物は、食物繊維原料であり、また食物繊維強化用添加物である。
本発明の食物繊維原料または食物繊維強化用添加物は、上記本発明の改質アラビアガムだけからなるものであってもよいし、また上記本発明の改質アラビアガムを有効成分として、他に別途水溶性食物繊維や不溶性食物繊維、または食品衛生上若しくは薬学的に許容された担体や添加物を含有するものであってもよい。なお後者の場合、本発明の改質アラビアガムを少なくとも30重量%以上の割合で含むことが好ましい。
ここで、改質アラビアガム以外の水溶性食物繊維としては、ペクチン、グァーアガム、サイリウム、ガラクトマンナン、キシログルカン、ローカストビーンガム、グルコマンナン、アルギン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、低分子アルギン酸、低分子グァーガム、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、プルラン、及びファイパロンなどが挙げられる。
また不溶性食物繊維としては、セルロース、小麦ふすま、アップルファイバー、さつまいもファイバー、コーンファイバー、及びキチンなどが挙げられる。
また、食品衛生上若しくは薬学的に許容された担体や添加物としては、特に制限されないが、デキストリン、乳糖、マルトース、トレハロース、及びグルコースなどの糖類;ソルビトールやマンニトールなどの糖アルコール;グリセリンやプロピレングリコールなどの多価アルコールを挙げることができる。
当該食物繊維原料または食物繊維強化用添加物は、飲食物や経口用医薬品の食物繊維含量を増強するために、その製造過程で、飲食物や経口用医薬品の一成分として他の原料とともに添加され、飲食物や経口用医薬品の一構成成分として用いられる。
(3)飲食物、医薬品
本発明は、AOAC公定法による測定に基づいて総食物繊維を90重量%以上の割合で含む上記の改質アラビアガムを配合することによって、食物繊維含量が増強されてなる飲食物及び医薬品を提供する。当該飲食物及び医薬品は前述する改質アラビアガムに代えて、上記本発明の食物繊維原料または食物繊維強化用添加物を用いて調製することもできる。
本発明が対象とする飲食物は、本発明の改質アラビアガムを含有することに基づいて、総食物繊維が増強されてなるものであれば、その種類、改質アラビアガムの含有量、及び総食物繊維量を特に問うものではない。
本発明の改質アラビアガムの含有量として、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10%以上の割合を挙げることができる。上限は特に制限されないが、本発明の改質アラビアガムをそのまま健康食品(機能性食品)として用いる(食する)ことができることに鑑みれば、100重量%である。
飲食物の種類としては、制限されないが、清涼飲料、果汁飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、炭酸飲料、野菜飲料、スポーツ飲料、紅茶飲料、緑茶飲料、粉末飲料、コーヒー飲料、ココア飲料、スープ、しるこ等の飲料類;プリン、ゼリー、ヨーグルト等のデザート類;アイスクリーム、アイスキャンディー等の冷菓類;チューインガム、チョコレート、ソフトキャンディー、ビスケット、クッキーなどの製菓類;ドレッシング、ソース、ケチャップ等の調味料類;その他、ジャム類、麺類、水産練り製品、シロップ類、パン類、各種惣菜等の加工食品を挙げることができる。また、サプリメント(健康食品、機能性食品)として錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、または溶液(ドリンク剤)などの形態として提供することもできる。
本発明の飲食物が上記サプリメントの形態を有する場合、有効成分である本発明の改質アラビアガムの有効量(食物繊維増強量)とともに、食品衛生上許容される担体またはその他の添加剤を含むことができる。
上記飲食物中に配合される改質アラビアガムの量またはその摂取量は、特に限定されず、飲食物の種類、目的とする効果の種類や改善効果の度合い、並びにその他の諸条件などに応じて広範囲より適宜選択される。摂取量は、飲食物の種類によっても異なるが、体重60kgのヒトに対して1日摂取あたりの改質アラビアガムの量に換算して、約1〜100g/1日の範囲から適宜選択することができる。
本発明の飲食物は、多量の食物繊維を含むことによって、血中コレステロールの低下、血中脂質値の調節、便性改善(便秘改善を含む)、腸内環境を改善する整腸作用、肥満予防、血糖値調節、または発ガン抑制などの各種生理機能または疾病予防効果を有する。しかも本発明の飲食物は、改質アラビアガムの増粘性の低さに基づいて、多量に摂取しても食感を害せず、また下痢などの副作用を示さないという効果を有している。
本発明が対象とする医薬品は、本発明の改質アラビアガムを含有することに基づいて、血中コレステロールの低下、血中脂質値調節、便性改善(便秘改善を含む)、または腸内環境を改善する整腸作用、肥満防止、血糖値調節または発ガン抑制などの生理機能または疾病予防効果を有するものである。かかる機能または疾病予防効果を奏する限りにおいて、改質アラビアガムの含有量、及び総食物繊維量を特に問うものではない。なお、本発明が対象とする医薬品は経口的に用いられる医薬品(経口用医薬品)である。かかる医薬品は常法に従って、錠剤、丸剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤、及びドライシロップなどの固体投与形態、または溶液、懸濁剤、乳剤、及びシロップなどの液剤投与形態に、調合、成形乃至調製することができる。
本発明の医薬品は、改質アラビアガムとともに、薬学的に許容される担体またはその他の添加剤を含んでいてもよい。これらの医薬品の調製に利用される担体としては、製剤の投与形態に応じて通常使用される賦形剤、希釈剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、吸収促進剤、滑沢剤、溶解補助剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤などが例示できる。また添加剤としては、製剤の投与形態に応じて通常使用される安定化剤、保存剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、pH調整剤、界面活性剤、着色剤、香料、風味剤、甘味剤などが例示できる。
本発明の医薬品中に含まれる改質アラビアガムの量は、医薬品の製剤形態または投与経路によって種々異なり、一概に規定することはできないが、最終製剤中に、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上の割合を挙げることができる。上限は特に制限されないが、本発明の改質アラビアガムをそのまま医薬品として用いることができることに鑑みれば、100重量%である。
本発明の医薬品の投与量は、特に限定されず、所望の効果、投与法、治療期間、患者の年齢、性別その他の条件などに応じて広範囲より適宜選択される。投与量は、投与経路によっても異なるが、体重60kgのヒトに対して1日投与あたりの有効成分の量に換算して、約1〜100g/日の範囲から適宜選択することができる。
本発明の改質アラビアガムは、改質アラビアガム100重量%中に総食物繊維(AOAC法)を90%以上の割合で含有することを特徴とするものである。
ここで総食物繊維とは、体内に摂取したときに、人の消化酵素によって加水分解されない難消化性の多糖類及びリグニンを意味する。本発明の改質アラビアガム中に含まれている総食物繊維の量は、食物繊維定量法として規定されているProsky法(AOAC公定法:CEREAL FOODS CHAPER 32(2000),p.7−12“AOAC OFFICIAL METHODS OF ANALYSIS”,AOAC official method 991.43)に従って求めることができる。
Prosky法は、対象試料中に含まれる総食物繊維含量(水溶性食物繊維と不溶性食物繊維を含む)を定量する方法である。試料中の総食物繊維含量を求める方法は、具体的には、次の通りである。試料1g(固形物)を耐熱性α−アミラーゼ、プロテアーゼ、及びアミログルコシダーゼで段階的に処理し、デンプン及び蛋白質を加水分解した後、反応液に4倍量のエタノールを加えて水溶性食物繊維と不溶性食物繊維を包括的に沈殿させ、濾過して残渣を回収し、次いで回収した残渣をエタノール及びアセトンで洗浄した後、乾燥して重量(乾燥残渣重量)をはかり、得られた乾燥残渣重量から非消化性蛋白質量と灰分量を差し引くことによって、試料中の総食物繊維含量を求める。
なお、試料(本発明では、改質アラビアガム)中の総食物繊維含量は、簡便には、例えば日本バイオコン株式会社から販売されている「総食物繊維測定キット」を用いて測定することができる。
本発明の改質アラビアガムは、斯くして求められる総食物繊維含量が90%以上、好ましくは91重量%以上、より好ましくは93重量%以上であることを特徴とする。その上限は、100重量%を限度として、改質アラビアガムが全体として水溶性である限りにおいて特に制限されない。また、総食物繊維含量中に占める不溶性食物繊維の割合も、改質アラビアガムが全体として水溶性である限りにおいて特に制限されない。
ここで、「水溶性」とは、改質アラビアガムが過分量の水(イオン交換水やイオンを含む水の別を問わない。また水温は溶解する温度を用いればよく水温の別を問わない。)に対してほぼ完全に溶解する性質をいう。なお、一旦ヒドロゲル状になったアラビアガムは、水量を多くしても加温しても水に溶解しない。ゆえに、本発明でいう「水溶性」とは、水に溶解しないヒドロゲル状のアラビアガムと区別する意味で用いられる。言い換えれば、本発明の改質アラビアガムは、ヒドロゲル等のように水中で溶解しない高分子状態の改質アラビアガムを実質上含有しないものである。
さらにまた本発明の改質アラビアガムは、上記の割合で総食物繊維を含有し、全体として水溶性であって、さらに改質前のアラビアガム原料と免疫学的反応性において同等もしくは類似していることが好ましい。なお、ここで「アラビアガム原料と免疫学的反応性において同等もしくは類似する」とは、アラビアガムを定量可能な抗体(例えば、SYCC7が例示できる)を用いた間接的競合ELISA法〔Thurston,M.I,et al.,Detection of gum from Acacia seyal and species of combretum in mixtures with A.senegal using monoclonalantibodies,Food & Agric.Immunol.,10:237−241(1998)、Thurston,M.I,et al.,Effect of heat and pH on carbohydrate epitopes from Acacia senegal by specific monoclonal antibodies,Food & Agric.Immunol.,11:145−153(1999)〕において、アラビアガム原料と免疫学的阻害率の差が±10%以内であることを意味する。
なお本発明の改質アラビアガムは、その形状を特に制限するものではなく、塊状、玉状、粗粉砕状、顆粒状、粒状、及び粉末状のいずれの形状をも有することができる。
本発明の改質アラビアガムは、原料として用いるAcacia senegal種に属するアラビアガムまたはAcacia seyal種に属するアラビアガムをオーブンなどの恒温器または加熱器を用いて110℃で24時間以上加熱することによって調製することができる。
ここで原料となるアラビアガム(以下、「アラビアガム原料(A.senegal種)」、または「アラビアガム原料(A.seyal種)」という。またこれらを総称して「アラビアガム原料」ともいう。)は、マメ科植物であるアカシア属に属するアカシア・セネガル(Acacia senegal)、アカシア・セイアル(Acacia seyal)、またはこれらの同属植物の幹や枝から得られるゴム状の滲出液を乾燥して調製される天然樹脂(多糖類)である。または、これらをさらに精製処理、脱塩処理または粉砕もしくはドライスプレー等の加工処理を施したものであってもよい。
アラビアガム原料は、通常、エチオピアからセネガルにかけての北アフリカや西アフリカの各国(エチオピア、スーダン、セネガル、ナイジェリア、ニジェール、ガーナ)、ケニアやウガンダなど東アフリカの国々、アフリカのサハラ地帯、並びにナイル川支流の盆地地帯でも産出されるが、本発明においてはその由来を問うことなく、いずれの産地由来のものであってもよい。
また、アラビアガム原料は、その水分含量を特に制限するものではない。通常商業的に入手可能なアラビアガム原料は、105℃で6時間加温乾燥することによって減少する水分量(乾燥減量)が40重量%以下、好ましくは30重量%以下、特に好ましくは20重量%以下である。本発明においてもかかる水分含量(乾燥減量)を有するアラビアガム原料を任意に用いることができる。
また、通常アラビアガム原料は、塊状、玉状、粗粉砕状、顆粒状、粒状、または粉末状(スプレードライ粉末、ローラードライ粉末を含む)の形態で入手することができるが、本発明ではこれらの形状の別を問わず、いずれの形態のものをも改質処理対象の原料として使用することができる。例えば、平均粒子径が数十〜数百μm程度の粉末状物(スプレードライ粉末、ローラードライ粉末を含む)であってもよい。
平均粒子径の上限は特に制限されないが、改質効率の点から100mm以下であることが望ましい。好ましくは平均粒子径が1〜100mm、より好ましくは2〜50mmの範囲である。
かかるアラビアガム原料の加熱方法としては、上記するように具体的にはオーブン(恒温器又は加熱器)を用いて110℃で24時間以上加熱する方法を例示することができる。好ましくは110℃で48時間以上の加熱処理である。処理するアラビアガム原料やその種類(「A.senegal種」や「A.seyal種」などの種の別)にもよるが、110℃で加熱する場合、時間の上限としては72時間程度を挙げることができる。なお、上記の加熱温度や加熱時間は、本発明の改質アラビアガムを調製する方法(条件)の単なる一例である。ゆえに、上記条件は、本発明の改質アラビアガム取得のための目安とはなるものの、本発明の改質アラビアガムを限定するものではない。
すなわち、本発明で規定する特定の総食物繊維含量を有する水溶性の改質アラビアガムが取得できる方法であれば、加熱温度、加熱時間、加熱手段並びに加熱環境条件(相対湿度や閉鎖系の有無)は任意に選択使用することができ、上記加熱条件に特に制限されるものではない。例えば、上記条件での加熱処理によって得られる本発明の効果は、110℃よりも低温で24時間よりも長時間加熱処理する方法や、110℃よりも高温で短時間加熱処理する方法によっても同様に得ることができる。具体的には、前者の例として80℃で3日〜2週間以上かけて加熱する方法を挙げることができる。なお、上記オーブンによる加熱手段に代えてマイクロ波照射によれば、より短時間に同様な効果を得ることができる。その他、窒素置換条件下など、酸素のない条件下での加熱処理は、生成されるアラビアガムの着色を抑制することができるので、好ましい処理方法である。
さらに本発明の改質アラビアガムは、アラビアガム原料として「A.senegal種」のものを用いる場合は、特に重量平均分子量が100万以上であることが望ましい。
ここで重量平均分子量は、光散乱検出器(MALLS:Multi Angle Laser Light Scattering)、屈折率(RI)検出器及びUV検出器の3つの検出器をオンラインで接続したゲル濾過クロマトグラフィー(本明細書では、これを単に「GPC−MALLS」ともいう)の手法によって求めることができる。なお、当該GPC−MALLSによれば、光散乱検出器(MALLS)により分子量を、屈折率(RI)検出器により各成分の重量(組成比)を、さらにUV検出器により蛋白質を検出することができ、分子量既知の標準品と対比することなく分析成分の分子量並びに組成を求めることができる。その詳細な原理や特徴は、「Idris,O.H.M.,Williams,P.A.,Phillips,G.O.,;Food Hydrocolloids,12,375−388(1998)」に記載されている。
本発明で採用されるGPC−MALLSの測定条件は下記の通りである:
カラム :Superose(6HR)10/30(Pharmacia Biotech,Sweden)
流速 :0.5ml/分
溶出溶媒 :0.2M NaCl
試料の調製:分析試料を溶出溶媒(0.2M NaCl)にて溶解及び希釈
試料濃度 :0.4%(W/V)
試料液注入量:100μl
dn/dc:0.141
温度 :室温
検出器 :▲1▼MALLS(multi angle laser light scattering)検出器:DAWN DSP(Wyatt Technology社製,米国)、▲2▼RI(屈折率)検出器、▲3▼UV検出器(214nmでの吸収)。
上記条件で測定して得られたデータをASTRA Version 4.5(Wyatt Technology)ソフトウェアにて処理することにより、重量平均分子量、回収率(%Mass)、多分散性値(P)、慣性自乗半径(Rg)といった、アラビアガム成分の各種パラメーターを求めることができる。RI検出器によって求められたクロマトグラム上のピーク全体(「RIクロマトグラムのチャートのベースラインからの立ち上がり部を『起点』及び降下してベースラインと交わった部分を『終点』とした場合に、当該『起点』から『終点』までのチャート部を意味する。」)を1ピークとしてデータ処理した場合(processed as one peak)に、得られた分子量が本発明でいう「重量平均分子量」(より詳細には「重量平均分子量(Mwt processed as one peak)」)である。
例えば、一例として粗挽きしたアラビアガム原料(A.senegal種)(球塊サイズ5mm、重量平均分子量5.36±0.02×105)70kgを100L容スチール製ドラム缶に入れて110℃のオーブンで36時間加熱した改質アラビアガムをゲル濾過クロマトグラフィー(GPC−MALLS)にかけた結果を図1に示す。横軸の「Volume(ml)」はカラムを通過した溶出液の累積量を示し、また縦軸の「AUX,90°Detector」は、各検出器(MALLS検出器、RI検出器、UV検出器)の相対強度(relative intensity)を示す。MALLS検出器で得られるクロマトグラムは90°での光散乱強度を示したものであり、分子量の分布に相関する。RI検出器で得られるクロマトグラムは屈折率の強さを示したものであり、各溶出物中に含まれる成分の重量に相関する。また、UV検出器で得られるクロマトグラムは214nmで検出したUV吸収を示したものであり、蛋白質の分布に相関する。RI検出器によって求められたクロマトグラム上のピーク全体(RIクロマトグラムのチャートのベースラインからの立ち上がり部を『起点』(図1中の「A」点に相当)及び降下してベースラインと交わった部分を『終点』(図1中の「B」点に相当))とした場合に、当該『起点』から『終点』までの領域を意味する。」)を1ピークとしてデータ処理した場合(processed as one peak)に得られた分子量が、本発明でいう「重量平均分子量(Mwt)」(より詳細には「重量平均分子量(Mwt processed as one peak)」)である。
本発明の改質アラビアガムの重量平均分子量は好適には100万以上であればよく、特に制限されないが、好ましくは120万以上、より好ましくは150万以上、さらに好ましくは200万以上である。重量平均分子量の上限は、改質アラビアガムが総食物繊維を90重量%以上の割合で含み、水溶性である限りにおいて特に制限されないが、通常250万以下であることが好ましい。
(2)食物繊維原料/食物繊維強化用添加物
本発明は、AOAC公定法による測定に基づいて総食物繊維を90重量%以上の割合で含む上記の改質アラビアガムについて、飲食物原料または医薬品原料としての用途を提供するものである。当該改質アラビアガムは、飲食物または医薬品に対して食物繊維を増強するため(食物繊維含量を増加するため)に用いられる。具体的には、本発明は、飲食物や経口用の医薬品について食物繊維を増強するため(食物繊維含量を増加するため)に用いられる経口摂取可能な可食性添加物を提供する。本発明において、かかる可食性添加物は、食物繊維原料であり、また食物繊維強化用添加物である。
本発明の食物繊維原料または食物繊維強化用添加物は、上記本発明の改質アラビアガムだけからなるものであってもよいし、また上記本発明の改質アラビアガムを有効成分として、他に別途水溶性食物繊維や不溶性食物繊維、または食品衛生上若しくは薬学的に許容された担体や添加物を含有するものであってもよい。なお後者の場合、本発明の改質アラビアガムを少なくとも30重量%以上の割合で含むことが好ましい。
ここで、改質アラビアガム以外の水溶性食物繊維としては、ペクチン、グァーアガム、サイリウム、ガラクトマンナン、キシログルカン、ローカストビーンガム、グルコマンナン、アルギン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、低分子アルギン酸、低分子グァーガム、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、プルラン、及びファイパロンなどが挙げられる。
また不溶性食物繊維としては、セルロース、小麦ふすま、アップルファイバー、さつまいもファイバー、コーンファイバー、及びキチンなどが挙げられる。
また、食品衛生上若しくは薬学的に許容された担体や添加物としては、特に制限されないが、デキストリン、乳糖、マルトース、トレハロース、及びグルコースなどの糖類;ソルビトールやマンニトールなどの糖アルコール;グリセリンやプロピレングリコールなどの多価アルコールを挙げることができる。
当該食物繊維原料または食物繊維強化用添加物は、飲食物や経口用医薬品の食物繊維含量を増強するために、その製造過程で、飲食物や経口用医薬品の一成分として他の原料とともに添加され、飲食物や経口用医薬品の一構成成分として用いられる。
(3)飲食物、医薬品
本発明は、AOAC公定法による測定に基づいて総食物繊維を90重量%以上の割合で含む上記の改質アラビアガムを配合することによって、食物繊維含量が増強されてなる飲食物及び医薬品を提供する。当該飲食物及び医薬品は前述する改質アラビアガムに代えて、上記本発明の食物繊維原料または食物繊維強化用添加物を用いて調製することもできる。
本発明が対象とする飲食物は、本発明の改質アラビアガムを含有することに基づいて、総食物繊維が増強されてなるものであれば、その種類、改質アラビアガムの含有量、及び総食物繊維量を特に問うものではない。
本発明の改質アラビアガムの含有量として、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10%以上の割合を挙げることができる。上限は特に制限されないが、本発明の改質アラビアガムをそのまま健康食品(機能性食品)として用いる(食する)ことができることに鑑みれば、100重量%である。
飲食物の種類としては、制限されないが、清涼飲料、果汁飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、炭酸飲料、野菜飲料、スポーツ飲料、紅茶飲料、緑茶飲料、粉末飲料、コーヒー飲料、ココア飲料、スープ、しるこ等の飲料類;プリン、ゼリー、ヨーグルト等のデザート類;アイスクリーム、アイスキャンディー等の冷菓類;チューインガム、チョコレート、ソフトキャンディー、ビスケット、クッキーなどの製菓類;ドレッシング、ソース、ケチャップ等の調味料類;その他、ジャム類、麺類、水産練り製品、シロップ類、パン類、各種惣菜等の加工食品を挙げることができる。また、サプリメント(健康食品、機能性食品)として錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、または溶液(ドリンク剤)などの形態として提供することもできる。
本発明の飲食物が上記サプリメントの形態を有する場合、有効成分である本発明の改質アラビアガムの有効量(食物繊維増強量)とともに、食品衛生上許容される担体またはその他の添加剤を含むことができる。
上記飲食物中に配合される改質アラビアガムの量またはその摂取量は、特に限定されず、飲食物の種類、目的とする効果の種類や改善効果の度合い、並びにその他の諸条件などに応じて広範囲より適宜選択される。摂取量は、飲食物の種類によっても異なるが、体重60kgのヒトに対して1日摂取あたりの改質アラビアガムの量に換算して、約1〜100g/1日の範囲から適宜選択することができる。
本発明の飲食物は、多量の食物繊維を含むことによって、血中コレステロールの低下、血中脂質値の調節、便性改善(便秘改善を含む)、腸内環境を改善する整腸作用、肥満予防、血糖値調節、または発ガン抑制などの各種生理機能または疾病予防効果を有する。しかも本発明の飲食物は、改質アラビアガムの増粘性の低さに基づいて、多量に摂取しても食感を害せず、また下痢などの副作用を示さないという効果を有している。
本発明が対象とする医薬品は、本発明の改質アラビアガムを含有することに基づいて、血中コレステロールの低下、血中脂質値調節、便性改善(便秘改善を含む)、または腸内環境を改善する整腸作用、肥満防止、血糖値調節または発ガン抑制などの生理機能または疾病予防効果を有するものである。かかる機能または疾病予防効果を奏する限りにおいて、改質アラビアガムの含有量、及び総食物繊維量を特に問うものではない。なお、本発明が対象とする医薬品は経口的に用いられる医薬品(経口用医薬品)である。かかる医薬品は常法に従って、錠剤、丸剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤、及びドライシロップなどの固体投与形態、または溶液、懸濁剤、乳剤、及びシロップなどの液剤投与形態に、調合、成形乃至調製することができる。
本発明の医薬品は、改質アラビアガムとともに、薬学的に許容される担体またはその他の添加剤を含んでいてもよい。これらの医薬品の調製に利用される担体としては、製剤の投与形態に応じて通常使用される賦形剤、希釈剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、吸収促進剤、滑沢剤、溶解補助剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤などが例示できる。また添加剤としては、製剤の投与形態に応じて通常使用される安定化剤、保存剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、pH調整剤、界面活性剤、着色剤、香料、風味剤、甘味剤などが例示できる。
本発明の医薬品中に含まれる改質アラビアガムの量は、医薬品の製剤形態または投与経路によって種々異なり、一概に規定することはできないが、最終製剤中に、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上の割合を挙げることができる。上限は特に制限されないが、本発明の改質アラビアガムをそのまま医薬品として用いることができることに鑑みれば、100重量%である。
本発明の医薬品の投与量は、特に限定されず、所望の効果、投与法、治療期間、患者の年齢、性別その他の条件などに応じて広範囲より適宜選択される。投与量は、投与経路によっても異なるが、体重60kgのヒトに対して1日投与あたりの有効成分の量に換算して、約1〜100g/日の範囲から適宜選択することができる。
以下、本発明の内容を以下の実施例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。尚、下記の実施例において、特に記載しない限り、「部」とは「重量部」を、また「%」とは「重量%」を意味するものとする。
実験例1 改質アラビアガムの調製
(1)改質アラビアガムの調製
粗挽きされたAcacia senegal種に属するアラビアガム(アラビアガム原料(A.senegal種):Sample 1)(球塊サイズ5mm)1kgを、ステンレス容器に入れて、110℃でそれぞれ24時間、及び48時間、オーブン加熱した(24時間加熱処理したアラビアガムを「Sample 1/24」、48時間加熱処理したアラビアガムを「Sample 1/48」という)。
(2)食物繊維含量
上記で得られたアラビアガム試料(Sample 1、Sample 1/24、Sample 1/48)について、Prosky(AOAC)法に従って、総食物繊維含有量を測定した。
具体的には、各試料1gを2検体ずつ用意し、下記の手順に従って測定を行った。なお、2検体のうち、一方は非消化性蛋白質測定用、他の一方は灰分測定用に供する:
▲1▼試料1.0gを0.1mgの精度で2点秤量し、それぞれ400ml容量のビーカーにいれる。
▲2▼各試料1.0gに0.08Mのリン酸緩衝液(pH6.0)50mlと耐熱性のα−アミラーゼ(Novo社製,termamyl 120L)0.1mlを加え、ビーカー上部をアルミ箔で覆い、沸騰水浴中で5分ごと振盪しながら、ビーカーの内部温度が95℃に達してから30分間反応させる。
▲3▼室温まで冷却した後、0.275N水酸化ナトリウム水溶液10mlを加え、pH7.5±0.2に調整する。これにプロテアーゼ溶液〔プロテアーゼ[シグマ社製、P3910]を50mg/mlになるように0.08Mのリン酸緩衝液(pH6.0)に溶解したもの〕0.1mlを加え、ビーカー上部をアルミ箔で覆い、60℃水浴中で振盪しながら、中心部の温度が60℃に達してから30分間反応させる。
▲4▼室温まで冷却した後、0.325M塩酸水溶液10mlを加え、pH4.0〜4.6に調整する。これにアミログルコシダーゼ溶液〔アミログルコシダーゼ[シグマ社製、P−9913]0.3mlを加え、ビーカー上部をアルミ箔で覆い、60℃水浴中で振盪しながら、中心部の温度が60℃に達してから30分間反応させる。
▲5▼予め秤量し、60℃に加温しておいた95%エタノール280mlを上記ビーカーの酵素反応液に加え、室温下、正確に60分間放置して沈殿を生成させる。
▲6▼セライト(セライト545;シグマ社製C−8656)入りのガラス濾過器に洗浄瓶を用いて78v/v%エタノールを注入し、セライトを懸濁させ、それを真空で引いて均一なマット状の濾過面をつくる。この濾過器にエタノールで生成した沈殿を含む酵素反応液を流し込み、吸引濾過する。残渣は78v/v%エタノール20mlで3回、95v/v%エタノール10mlで2回、及びアセトン10mlで2回、順次洗浄する。
▲7▼残渣の入った濾過器を真空オーブン(70℃)で一夜乾燥させ、デシケーター中で放冷後、0.1mgの精度で秤量し、濾過器とセライトの重量を差し引いて真の残渣量を算出する。
▲8▼2検体のうち、一方の残渣は、セライトとともに掻き取って残渣中の窒素含量をセミミクロケルダール法によって定量し、換算係数6.25を乗じて蛋白質含量を求める。他方の残渣は525℃で5時間灰化し、デシケーター中で放冷後、0.1mgの精度で秤量し、残渣中の灰分含量を求める。
▲9▼なお、試料を加えずに、上記▲2▼以降の操作を同様に実施し、ブランク残渣、ブランク蛋白質量、ブランク灰分量を求める。
得られた値から、次式に基づいて、総食物繊維含量%を求める。
(3)重量平均分子量の測定
上記で得られたアラビアガム試料(Sample 1、Sample 1/24、Sample 1/48)について、下記条件のGPC−MALLS(Multi Angle Laser Light Scattering)法に従って、ゲル濾過クロマトグラフィーにかけクロマトグラムを得た。
カラム :Superose(6HR)10/30(Pharmacia Biotech)
流速 :0.5ml/分
溶出溶媒 :0.2M NaCl
試料の調製:分析試料を溶出溶媒(0.2M NaCl)に溶解
試料濃度 :0.4%(W/V)
試料液注入量:100μl
dn/dc:0.141
温度:室温
検出器:▲1▼MALLS(multi angle laser light scattering)検出器:DAWN DSP(Wyatt Technology社製)、▲2▼RI(屈折率)検出器、▲3▼UV検出器(214nmでの吸収)。
上記条件で測定して得られたデータをASTRA Version 4.5(Wyatt Technology)ソフトウェアにて処理することにより、重量平均分子量(Mwt processed as one peak)を求めた。具体的にはRI検出器によって求められたクロマトグラムのチャートのピーク全体(具体的にはチャートのベースラインの立ち上がり部を「起点」及び降下してベースラインと交わった部分を「終点」とした場合に、当該「起点」から「終点」までのチャート領域)を1ピークとしてデータ処理した場合(processed as one peak)に、得られた分子量が本発明でいう「重量平均分子量(Mwt processed as one peak)」である。
アラビアガム試料(Sample 1、Sample 1/24、Sample 1/48)の総食物繊維含量と重量平均分子量(Mwt processed as one peak)を表1に示す。
これらの結果から、本発明の改質アラビアガムSample 1/24、及びSample 1/48は、未処理のアラビアガム原料(Sample 1)の総食物繊維含量100重量%に比して、総食物繊維含量がそれぞれ7.1重量%(107.1%−100%=7.1%)、及び8.3重量%(108.3%−100%=7.1%)増加していた。さらに重量平均分子量(Mwt processed as one peak)がそれぞれ123.3%(223.3%−100%=123.3%)及び270.8%(370.8%−100%=270.8%)増加していた。
実験例2 改質アラビアガムの免疫反応
実験例1で得られたA.senegal種に属するアラビアガム試料(Sample 1,Sample 1/24及びSample 1/48)の各々について免疫反応性を評価した。免疫反応性は、具体的には各アラビアガム(濃度;0.005mg/ml,0.01mg/ml,0.05mg/ml,0.1mg/ml,0.5mg/ml,1mg/ml,5mg/ml)で固定化したプレートを用いてThurston,M.I.らの文献〔Thurston,M.I,et al.,Detection of gum from Acacia seyal and species of combretum in mixtures with A.senegal using monoclonalantibodies,Food & Agric.Immunol.,10:237−241(1998)、Thurston,M.I,et al.,Effect of heat and pH on carbohydrate epitopes from Acacia senegal by specific monoclonal antibodies,Food & Agric.Immunol.,11:145−153(1999)〕に記載された方法に従って間接的競合ELISA法を行うことで評価した。
ELISA法に先立って、まずアラビアガムの種に特異性を示すことなく定量的に交差性を示すモノクローナル抗体を作製した。具体的にいうと、A.senegal種のアラビアガムを1mg/ml含有した生理食塩水にアジュバンドを混合し、2Balb/cマウスの腹腔内に2週間間隔で3度免疫した。抗体力価の上がったマウスの脾臓細胞を採取し、ミエローマ細胞とポリエチレングリコールで融合した。培養プレートで10日間培養し、増殖した融合細胞の上清に産生された抗体の特異性を指標に、融合細胞を選択した。次いで、この融合細胞を再度、培養プレートで10日間培養し、同様に融合細胞を選択し、最終的に上記の特異性を示す抗体(SYCC7と命名)のみを産生する融合細胞を選択した。
斯くして調製した抗体SYCC7を用いて、下記に示すようにELISA法を行った。
▲1▼3種の試料(Sample 1、Sample 1/24、Sample 1/48)の1mg/mlおよび5mg/mlの溶液を3段階に10倍希釈する。
▲2▼プラスチックプレートのウェルに、これらの溶液を200μlずつ添加し、1時間、4℃で保存固定化した。生理食塩水で洗浄後、0.3%カゼイン含有した生理食塩水でブロッキングを行った後、0.05%Tween20含有生理食塩水で洗浄する。
▲3▼上記で調製した融合細胞の培養上清を添加し、1時間、固定化した。前と同様に洗浄後、生理食塩水で1000倍希釈したペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウス抗体(SIGMA)を添加し、1時間固定化する。
▲4▼洗浄後、基質としてテトラメチルベンジジンを添加し、発色を450nmで吸光度にて測定する。
なお、各濃度の試料の阻害率は、A.senegal種に属するアラビアガム原料(未処理のアラビアガム:Sample 1)の発色度を阻害率100%として表示した。
その結果、本発明の改質アラビアガム(Sample 1/24、Sample 1/48)は、試験したいずれの濃度においてもアラビアガム原料(Sample 1)と免疫学的阻害率の差が±10%以内であり、ほとんど差がなく、アラビアガム原料(Sample 1)と免疫学的反応において実質的に同様もしくは類似であることが示された。
実験例3
アラビアガム(sample 1)と改質アラビアガム(sample 1/24、sample 1/48)について、種々の濃度の水溶液を作成し、粘度を比べた。具体的には、アラビアガム試料(sample 1、sample 1/24、sample 1/48)10gを水90gに溶解して10重量%のアラビアガム水溶液を調製した。同様にして20重量%及び30%重量のアラビアガム水溶液を調製した。これを100mL容スクリュー管に入れ、20℃にてB型回転粘度計(BM型、株式会社東京計器製造所製)にて、ローターNo.1、回転数60rpmの条件で粘度(mPa・S)を測定した。結果を表2に示す。
なお、粘度300(mPa・S)は、物にもよるが、ガムシロップやコーンスープくらいの比較的低い粘度である。
これらの結果から、本発明の改質アラビアガムSample 1/24及びSample 1/48は、未処理のアラビアガム原料(Sample 1)よりも粘度が上昇していた。この粘度の上昇は、胃から小腸への食物の移動に関係し、種々の栄養素や食品成分の吸収を調整する際に、例えば、小腸からのグルコースの吸収速度をゆっくりとさせ、血糖値の上昇を遅らせ、インシュリン節約作用をもたらすと考えられる。また、粘性が高くなると、小腸の絨毛へ影響を及ぼし、その新陳代謝を促進することも考えられる。さらに、胃壁を守って胃潰瘍の予防効果を示すことも考えられる。
実施例1 アラビアガムパウダーの調製
実験例1で得られた改質アラビアガムは、下記の方法によりアラビアガムパウダーとして調製することができ、さらにこれを用いることによって実施例2〜4に示すように各種の飲食物を調製することができる。
<改質アラビアガムパウダー>
改質アラビアガム(Sample 1/24)1000gを水1500gに溶解し、アラビアガム水溶液を調製する。この溶液をスプレードライヤー(ANHYDRO社製)(インレット140℃、アウトレット80℃)にて噴霧乾燥し、改質アラビアガムパウダー950gを調製する。
実施例2 果汁入り清涼飲料(Brix10°)
下記の成分を混合した後、ジュース瓶に充填し、85℃で30分殺菌して、果汁入り清涼飲料を調製する。
<処方>
果糖ぶどう糖液糖(Brix75°) 13.3(重量%)
クエン酸 0.1
クエン酸ナトリウム 0.05
ビタミンC 0.05
5倍濃縮柑橘混合透明果汁 6.0
改質アラビアガムパウダー(実施例1) 3.0
水 77.5
合 計 100(重量%)
実施例3 ハードキャンディー
<処方>
砂糖 59.0 (重量%)
水飴 40.0
水 20.0
改質アラビアガムパウダー(実施例1) 1.0
クエン酸 0.4
L−アスコルビン酸 0.01
パイナップル香料 0.15
合 計(調製後) 100.0 (重量%)
砂糖、水飴および水を混合して155℃まで加熱し、溶解する。これを125℃まで冷却し、改質アラビアパウダー、クエン酸、L−アスコルビン酸、及びパイナップル香料を順に添加混合して、成型し、ハードキャンディーを調製する。
実施例4 サプリメント(食物繊維含有製剤)
下記の成分を粉体混合し、打錠機(打錠圧1トン)にて、サプリメント(錠剤)を調製する。
<処方>
改質アラビアガムパウダー(実施例1) 30(重量%)
ソルビトール 69
ショ糖脂肪酸エステル 1
合 計 100(重量%)
実験例1 改質アラビアガムの調製
(1)改質アラビアガムの調製
粗挽きされたAcacia senegal種に属するアラビアガム(アラビアガム原料(A.senegal種):Sample 1)(球塊サイズ5mm)1kgを、ステンレス容器に入れて、110℃でそれぞれ24時間、及び48時間、オーブン加熱した(24時間加熱処理したアラビアガムを「Sample 1/24」、48時間加熱処理したアラビアガムを「Sample 1/48」という)。
(2)食物繊維含量
上記で得られたアラビアガム試料(Sample 1、Sample 1/24、Sample 1/48)について、Prosky(AOAC)法に従って、総食物繊維含有量を測定した。
具体的には、各試料1gを2検体ずつ用意し、下記の手順に従って測定を行った。なお、2検体のうち、一方は非消化性蛋白質測定用、他の一方は灰分測定用に供する:
▲1▼試料1.0gを0.1mgの精度で2点秤量し、それぞれ400ml容量のビーカーにいれる。
▲2▼各試料1.0gに0.08Mのリン酸緩衝液(pH6.0)50mlと耐熱性のα−アミラーゼ(Novo社製,termamyl 120L)0.1mlを加え、ビーカー上部をアルミ箔で覆い、沸騰水浴中で5分ごと振盪しながら、ビーカーの内部温度が95℃に達してから30分間反応させる。
▲3▼室温まで冷却した後、0.275N水酸化ナトリウム水溶液10mlを加え、pH7.5±0.2に調整する。これにプロテアーゼ溶液〔プロテアーゼ[シグマ社製、P3910]を50mg/mlになるように0.08Mのリン酸緩衝液(pH6.0)に溶解したもの〕0.1mlを加え、ビーカー上部をアルミ箔で覆い、60℃水浴中で振盪しながら、中心部の温度が60℃に達してから30分間反応させる。
▲4▼室温まで冷却した後、0.325M塩酸水溶液10mlを加え、pH4.0〜4.6に調整する。これにアミログルコシダーゼ溶液〔アミログルコシダーゼ[シグマ社製、P−9913]0.3mlを加え、ビーカー上部をアルミ箔で覆い、60℃水浴中で振盪しながら、中心部の温度が60℃に達してから30分間反応させる。
▲5▼予め秤量し、60℃に加温しておいた95%エタノール280mlを上記ビーカーの酵素反応液に加え、室温下、正確に60分間放置して沈殿を生成させる。
▲6▼セライト(セライト545;シグマ社製C−8656)入りのガラス濾過器に洗浄瓶を用いて78v/v%エタノールを注入し、セライトを懸濁させ、それを真空で引いて均一なマット状の濾過面をつくる。この濾過器にエタノールで生成した沈殿を含む酵素反応液を流し込み、吸引濾過する。残渣は78v/v%エタノール20mlで3回、95v/v%エタノール10mlで2回、及びアセトン10mlで2回、順次洗浄する。
▲7▼残渣の入った濾過器を真空オーブン(70℃)で一夜乾燥させ、デシケーター中で放冷後、0.1mgの精度で秤量し、濾過器とセライトの重量を差し引いて真の残渣量を算出する。
▲8▼2検体のうち、一方の残渣は、セライトとともに掻き取って残渣中の窒素含量をセミミクロケルダール法によって定量し、換算係数6.25を乗じて蛋白質含量を求める。他方の残渣は525℃で5時間灰化し、デシケーター中で放冷後、0.1mgの精度で秤量し、残渣中の灰分含量を求める。
▲9▼なお、試料を加えずに、上記▲2▼以降の操作を同様に実施し、ブランク残渣、ブランク蛋白質量、ブランク灰分量を求める。
得られた値から、次式に基づいて、総食物繊維含量%を求める。
(3)重量平均分子量の測定
上記で得られたアラビアガム試料(Sample 1、Sample 1/24、Sample 1/48)について、下記条件のGPC−MALLS(Multi Angle Laser Light Scattering)法に従って、ゲル濾過クロマトグラフィーにかけクロマトグラムを得た。
カラム :Superose(6HR)10/30(Pharmacia Biotech)
流速 :0.5ml/分
溶出溶媒 :0.2M NaCl
試料の調製:分析試料を溶出溶媒(0.2M NaCl)に溶解
試料濃度 :0.4%(W/V)
試料液注入量:100μl
dn/dc:0.141
温度:室温
検出器:▲1▼MALLS(multi angle laser light scattering)検出器:DAWN DSP(Wyatt Technology社製)、▲2▼RI(屈折率)検出器、▲3▼UV検出器(214nmでの吸収)。
上記条件で測定して得られたデータをASTRA Version 4.5(Wyatt Technology)ソフトウェアにて処理することにより、重量平均分子量(Mwt processed as one peak)を求めた。具体的にはRI検出器によって求められたクロマトグラムのチャートのピーク全体(具体的にはチャートのベースラインの立ち上がり部を「起点」及び降下してベースラインと交わった部分を「終点」とした場合に、当該「起点」から「終点」までのチャート領域)を1ピークとしてデータ処理した場合(processed as one peak)に、得られた分子量が本発明でいう「重量平均分子量(Mwt processed as one peak)」である。
アラビアガム試料(Sample 1、Sample 1/24、Sample 1/48)の総食物繊維含量と重量平均分子量(Mwt processed as one peak)を表1に示す。
これらの結果から、本発明の改質アラビアガムSample 1/24、及びSample 1/48は、未処理のアラビアガム原料(Sample 1)の総食物繊維含量100重量%に比して、総食物繊維含量がそれぞれ7.1重量%(107.1%−100%=7.1%)、及び8.3重量%(108.3%−100%=7.1%)増加していた。さらに重量平均分子量(Mwt processed as one peak)がそれぞれ123.3%(223.3%−100%=123.3%)及び270.8%(370.8%−100%=270.8%)増加していた。
実験例2 改質アラビアガムの免疫反応
実験例1で得られたA.senegal種に属するアラビアガム試料(Sample 1,Sample 1/24及びSample 1/48)の各々について免疫反応性を評価した。免疫反応性は、具体的には各アラビアガム(濃度;0.005mg/ml,0.01mg/ml,0.05mg/ml,0.1mg/ml,0.5mg/ml,1mg/ml,5mg/ml)で固定化したプレートを用いてThurston,M.I.らの文献〔Thurston,M.I,et al.,Detection of gum from Acacia seyal and species of combretum in mixtures with A.senegal using monoclonalantibodies,Food & Agric.Immunol.,10:237−241(1998)、Thurston,M.I,et al.,Effect of heat and pH on carbohydrate epitopes from Acacia senegal by specific monoclonal antibodies,Food & Agric.Immunol.,11:145−153(1999)〕に記載された方法に従って間接的競合ELISA法を行うことで評価した。
ELISA法に先立って、まずアラビアガムの種に特異性を示すことなく定量的に交差性を示すモノクローナル抗体を作製した。具体的にいうと、A.senegal種のアラビアガムを1mg/ml含有した生理食塩水にアジュバンドを混合し、2Balb/cマウスの腹腔内に2週間間隔で3度免疫した。抗体力価の上がったマウスの脾臓細胞を採取し、ミエローマ細胞とポリエチレングリコールで融合した。培養プレートで10日間培養し、増殖した融合細胞の上清に産生された抗体の特異性を指標に、融合細胞を選択した。次いで、この融合細胞を再度、培養プレートで10日間培養し、同様に融合細胞を選択し、最終的に上記の特異性を示す抗体(SYCC7と命名)のみを産生する融合細胞を選択した。
斯くして調製した抗体SYCC7を用いて、下記に示すようにELISA法を行った。
▲1▼3種の試料(Sample 1、Sample 1/24、Sample 1/48)の1mg/mlおよび5mg/mlの溶液を3段階に10倍希釈する。
▲2▼プラスチックプレートのウェルに、これらの溶液を200μlずつ添加し、1時間、4℃で保存固定化した。生理食塩水で洗浄後、0.3%カゼイン含有した生理食塩水でブロッキングを行った後、0.05%Tween20含有生理食塩水で洗浄する。
▲3▼上記で調製した融合細胞の培養上清を添加し、1時間、固定化した。前と同様に洗浄後、生理食塩水で1000倍希釈したペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウス抗体(SIGMA)を添加し、1時間固定化する。
▲4▼洗浄後、基質としてテトラメチルベンジジンを添加し、発色を450nmで吸光度にて測定する。
なお、各濃度の試料の阻害率は、A.senegal種に属するアラビアガム原料(未処理のアラビアガム:Sample 1)の発色度を阻害率100%として表示した。
その結果、本発明の改質アラビアガム(Sample 1/24、Sample 1/48)は、試験したいずれの濃度においてもアラビアガム原料(Sample 1)と免疫学的阻害率の差が±10%以内であり、ほとんど差がなく、アラビアガム原料(Sample 1)と免疫学的反応において実質的に同様もしくは類似であることが示された。
実験例3
アラビアガム(sample 1)と改質アラビアガム(sample 1/24、sample 1/48)について、種々の濃度の水溶液を作成し、粘度を比べた。具体的には、アラビアガム試料(sample 1、sample 1/24、sample 1/48)10gを水90gに溶解して10重量%のアラビアガム水溶液を調製した。同様にして20重量%及び30%重量のアラビアガム水溶液を調製した。これを100mL容スクリュー管に入れ、20℃にてB型回転粘度計(BM型、株式会社東京計器製造所製)にて、ローターNo.1、回転数60rpmの条件で粘度(mPa・S)を測定した。結果を表2に示す。
なお、粘度300(mPa・S)は、物にもよるが、ガムシロップやコーンスープくらいの比較的低い粘度である。
これらの結果から、本発明の改質アラビアガムSample 1/24及びSample 1/48は、未処理のアラビアガム原料(Sample 1)よりも粘度が上昇していた。この粘度の上昇は、胃から小腸への食物の移動に関係し、種々の栄養素や食品成分の吸収を調整する際に、例えば、小腸からのグルコースの吸収速度をゆっくりとさせ、血糖値の上昇を遅らせ、インシュリン節約作用をもたらすと考えられる。また、粘性が高くなると、小腸の絨毛へ影響を及ぼし、その新陳代謝を促進することも考えられる。さらに、胃壁を守って胃潰瘍の予防効果を示すことも考えられる。
実施例1 アラビアガムパウダーの調製
実験例1で得られた改質アラビアガムは、下記の方法によりアラビアガムパウダーとして調製することができ、さらにこれを用いることによって実施例2〜4に示すように各種の飲食物を調製することができる。
<改質アラビアガムパウダー>
改質アラビアガム(Sample 1/24)1000gを水1500gに溶解し、アラビアガム水溶液を調製する。この溶液をスプレードライヤー(ANHYDRO社製)(インレット140℃、アウトレット80℃)にて噴霧乾燥し、改質アラビアガムパウダー950gを調製する。
実施例2 果汁入り清涼飲料(Brix10°)
下記の成分を混合した後、ジュース瓶に充填し、85℃で30分殺菌して、果汁入り清涼飲料を調製する。
<処方>
果糖ぶどう糖液糖(Brix75°) 13.3(重量%)
クエン酸 0.1
クエン酸ナトリウム 0.05
ビタミンC 0.05
5倍濃縮柑橘混合透明果汁 6.0
改質アラビアガムパウダー(実施例1) 3.0
水 77.5
合 計 100(重量%)
実施例3 ハードキャンディー
<処方>
砂糖 59.0 (重量%)
水飴 40.0
水 20.0
改質アラビアガムパウダー(実施例1) 1.0
クエン酸 0.4
L−アスコルビン酸 0.01
パイナップル香料 0.15
合 計(調製後) 100.0 (重量%)
砂糖、水飴および水を混合して155℃まで加熱し、溶解する。これを125℃まで冷却し、改質アラビアパウダー、クエン酸、L−アスコルビン酸、及びパイナップル香料を順に添加混合して、成型し、ハードキャンディーを調製する。
実施例4 サプリメント(食物繊維含有製剤)
下記の成分を粉体混合し、打錠機(打錠圧1トン)にて、サプリメント(錠剤)を調製する。
<処方>
改質アラビアガムパウダー(実施例1) 30(重量%)
ソルビトール 69
ショ糖脂肪酸エステル 1
合 計 100(重量%)
本発明の改質アラビアガムは、総食物繊維含量が90重量%以上と、食物繊維を高含量含むように改質されてなるものである。近年、食物繊維の不足と糖尿病、肥満及び動脈硬化などの生活習慣病の増加との関連性が多くの研究者から指摘されている。そして、食物繊維の生理機能が注目され、また食物繊維の摂取の必要性が唱えられている。本発明の改質アラビアガムによれば、食物繊維原料または食物繊維強化用添加物として飲食物に配合されることによって、飲食物の食物繊維含量を増加させることができ、それによって飲食物に各種の生理学的機能(血中コレステロール低下機能、便性改善機能、腸内環境改善機、整腸作用、血中脂質値調節作用、血糖値調節作用)または発ガン抑制作用を付与することができる。また、本発明の改質アラビアガムは、これらの生理学的機能(血中コレステロール低下機能、便性改善機能、腸内環境改善機、整腸作用、血中脂質値調節作用、血糖値調節作用)または発ガン抑制作用に基づいて、かかる機能を有する医薬品原料としても用いることもできる。さらに、本発明の改質アラビアガムは、高濃度にしても粘度が低いという特徴を備えている。このため、飲料などの飲食物に添加してももとの食感を損なうことなく、食物繊維を多量に摂取することが可能である。
本発明は、また、かかる改質アラビアガムを含むことによって食物繊維含量が増強されてなる飲食物を提供するものである。当該飲食物は、多くの食物繊維を含むことによって、食物繊維に起因する各種の生理学的機能(例えば、血中コレステロール低下機能、便性改善機能、腸内環境改善機、整腸作用、血中脂質値調節作用、血糖値調節作用)または発ガン抑制作用を有する、健康食品または機能性食品として提供することができる。さらに、本発明によれば、食物繊維に起因する各種の生理学的機能(例えば、血中コレステロール低下機能、便性改善機能、腸内環境改善機、整腸作用、血中脂質値調節作用、血糖値調節作用)または発ガン抑制作用に基づいて、かかる機能を有する医薬品として提供することができる。
本発明は、また、かかる改質アラビアガムを含むことによって食物繊維含量が増強されてなる飲食物を提供するものである。当該飲食物は、多くの食物繊維を含むことによって、食物繊維に起因する各種の生理学的機能(例えば、血中コレステロール低下機能、便性改善機能、腸内環境改善機、整腸作用、血中脂質値調節作用、血糖値調節作用)または発ガン抑制作用を有する、健康食品または機能性食品として提供することができる。さらに、本発明によれば、食物繊維に起因する各種の生理学的機能(例えば、血中コレステロール低下機能、便性改善機能、腸内環境改善機、整腸作用、血中脂質値調節作用、血糖値調節作用)または発ガン抑制作用に基づいて、かかる機能を有する医薬品として提供することができる。
Claims (20)
- 総食物繊維含量(AOAC法)が90%以上である水溶性の改質アラビアガム。
- 重量平均分子量が100万以上である請求項1記載の改質アラビアガム。
- 飲食物または医薬品の食物繊維原料として用いられる請求項1に記載される改質アラビアガム。
- 飲食物または医薬品の食物繊維強化用添加物として用いられる請求項1に記載される改質アラビアガム。
- アラビアガムを加熱することによって得られるものである請求項1に記載の改質アラビアガム。
- アラビアガムを110℃で24時間以上加熱するか、それと同様の効果が得られる条件で処理することによって得られるものである請求項5に記載の改質アラビアガム。
- Acacia senegal種に由来する請求項1のいずれかに記載の改質アラビアガム。
- アラビアガムを110℃で24時間以上加熱するか、それと同様の効果が得られる条件で処理する工程を有する、請求項1に記載する改質アラビアガムの製造方法。
- 請求項1に記載する改質アラビアガムからなるか、または当該改質アラビアガムを含有する飲食物または医薬品用の食物繊維原料。
- 請求項1に記載する改質アラビアガムを、飲食物または医薬品の食物繊維原料として使用する方法。
- 請求項1に記載する改質アラビアガムからなるか、または当該改質アラビアガムを含有する飲食物または医薬品用の食物繊維強化剤。
- 請求項1に記載する改質アラビアガムを、飲食物または医薬品の食物繊維強化剤として使用する方法。
- 請求項1に記載する改質アラビアガムを食物繊維原料として含有する飲食物または医薬品。
- 請求項1に記載する改質アラビアガムを食物繊維原料として含有する食物繊維含量が増強されてなる飲食物。
- 便性改善、整腸、腸内環境改善、肥満予防、血中脂質値調節、血中コレステロールの低下、血糖値調節または発ガン抑制を目的とする請求項13に記載する飲食物または医薬品。
- 請求項1に記載する改質アラビアガムを食物繊維原料として配合して飲食物を製造することを特徴とする、飲食物の食物繊維含量の増強方法。
- 請求項1に記載する改質アラビアガムの、食物繊維原料としての使用。
- 請求項1に記載する改質アラビアガムの、食物繊維強化剤としての使用。
- 請求項1に記載する改質アラビアガムの、飲食物または医薬品の製造のための使用。
- 飲食物または医薬品が、便性改善、整腸、腸内環境改善、肥満予防、血中脂質値調節、血中コレステロールの低下、血糖値調節または発ガン抑制を目的とするものである、請求項19に記載する使用。
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