JPWO2004087218A1 - Ctコロノグラフィ又はmrコロノグラフィにおける、消化管の病変検出能改善剤ならびに腸管洗浄用組成物および腸管洗浄用キットまたは包装品 - Google Patents
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Abstract
Description
大腸内視鏡検査は、コロノスコープと呼ばれる光ファバーと内視鏡が一体となった可撓性のチューブを経肛門的に挿入し、スコープを通して可視的に大腸内腔を検査する方法である。
注腸X線検査には、大別すると充満法、二重造影法、圧迫法、粘膜法などの検査法があるが、これらの方法のうち注腸二重造影法は病変の描出とその診断に最適であり、現在の注腸X線検査の主体を占めている。注腸二重造影とは、硫酸バリウム水懸濁液よりなる造影剤を腸内に注入し、これを排出することなく被験者の体位変換により造影剤を深部大腸に到達させ、陽性造影剤である硫酸バリウムを大腸の内壁に薄い層として付着させ、陰性造影剤である空気を同時に注入して大腸を膨らませ、X線を透過させて、大腸粘膜面の状態をX線フィルム上に描き出す方法である。
しかし、大腸内視鏡検査は、比較的検査精度が高いものの、病変が半月ヒダの裏側に存在した場合など検出困難な病変も存在する。また、大腸内視鏡検査は、医師がチューブを操作して、大腸内腔の腫瘍等の病変を検出するもので、患者によっては体内に挿入されたチューブを不快と感じ検査時間も長いことから、時に苦痛を訴える場合があり、患者の受容性(コンプライアンス)の観点から必ずしも良い評価が得られていない。
注腸二重造影法は、硫酸バリウム等の造影剤を大腸内に注入しなくてはならない。また、大腸は複雑な立体構造をもっており、注腸された造影剤が体位変換によって大腸深部まで送り込まれるようにするには技術者に相当な熟練が必要とされる。さらに、造影剤を腸壁に充分に付着させるには、体位変換をきめ細かく種々の体位になるように行う必要があり、その場合、身体の不自由な患者や高齢者には負担の多いこととなる。適切な体位変換が行なわれないと、硫酸バリウムが深部大腸まで到達しないため、適切な腸管粘膜への付着具合やファイン・ネットワーク・パターンの描出が不良となるケースが問題となる。
前述の各検査法に続いて登場したものに、CTコロノグラフィ(CT colonography)やMRコロノグラフィがある。いずれも、経口的に造影剤を用いることによって前処置を省略できる可能性があるが、精密な検査のためには、注腸X線検査や大腸内視鏡検査におけると同じく、前処置として腸管洗浄が必要である。
詳述すると、コンピュータ断層撮影(CT)による大腸検査(CTコロノグラフィ)は、ヘリカルCTや多列検出器CTの開発によって、一般化しつつある検査法である。すでに欧米では大腸のスクリーニング検査として普及しつつある。従来から行われている注腸X線検査や大腸内視鏡検査にくらべて検査時間や患者への負担は格段に少なくなり、今後広く行われると期待される。
CTコロノグラフィは、大腸を含む腹部全体を一吸収停止だけの短時間で一度に撮影でき、大腸以外の臓器における病変も同時に診断できる可能性を有する。さらに、CTコロノグラフィは、撮影で得られたデジタルデータを仮想内視鏡像他に再構成して表示することが可能であり、大腸をさまざまな角度から診断できるとともに、高度のテクニックを要する腸管粘膜へ硫酸バリウムを付着させる操作を必要としない。
他方、CTコロノグラフィは、腸管洗浄により大腸内の便塊を洗浄した後、空気で大腸内腔を拡張させ、大腸組織と空気の僅かなX線コントラストの違いをもとに画像情報が構成、処理される。
また、MRコロノグラフィは、腸管洗浄した大腸から磁気共鳴画像撮像により画像情報を得る大腸検査で、断層画像を撮像する点でCTコロノグラフィと類似の検査方法といえる。CTコロノグラフィではX線を使って画像を得るのに対し、MRコロノグラフィは強い磁場と電波を使って画像を得る点で異なる。MRコロノグラフィは、強くて均一な静磁場(10,000ガウス近辺)の環境で、撮像部位に電波(RFパルス)をあて、各組織や病変部位の水素原子核の振るまいの違いをもとに各種再構成画像を表示することができる。
このように、CTコロノグラフィとMRコロノグラフィは、大腸内視鏡検査や注腸X線検査に比べ集団検診等スクリーニングの検査方法としてすぐれた患者受容性を有している反面、その検査精度と検査前処置には未だ検討の余地がある。
ところで、特公平3−54937号公報「特許請求の範囲」第1項に記載の一般式で表されるベンズアミド誘導体は、セロトニン5−HT4受容体刺激による消化管運動促進作用を有する消化器疾患治療薬として知られていて、制吐剤あるいは消化管運動促進剤として、急・慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃神経症、胃下垂などの疾患における食欲不振、悪心、嘔吐、腹部膨満感等の治療及び予防に、また食道・胆道系疾患、便秘症の治療及び予防に用いることができる薬物である。そして、各種の誘導体のなかで同第5項に記載の4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドのクエン酸塩(一般名:クエン酸モサプリド)は、慢性胃炎に伴う消化器症状(胸やけ、悪心・嘔吐)を適応症とした消化管運動促進剤として錠剤と散剤が上市されている(商品名「ガスモチン」、大日本製薬株式会社製)。
注腸X線検査において、前述の特公平3−54937号公報記載のセロトニン5−HT4受容体刺激剤として作用するベンズアミド誘導体は、消化管検査用のX線造影剤の造影能を改善する効果を有することが知られている(特開2002−53496号公報)。
しかし、この特開2002−53496号公報には、注腸X線検査とは異なり、硫酸バリウムを大腸内腔に付着させる必要のない、また、病変を仮想内視鏡とも云うべき画像を構成するなど病変の検出システムが全く異なるCTコロノグラフィ及びMRコロノグラフィにおけるセロトニン5−HT4受容体刺激剤の有用性やその具体的効果については当然のことながらなんら記載されていない。ましてや、CTコロノグラフィ及びMRコロノグラフィによるスクリーニング検査終了後の患者の腸内環境改善を考慮した適切な腸管洗浄液組成および腸管洗浄用キットまたは包装品の必要性についても述べられていない。
また、MRコロノグラフィは、その撮像原理からみて微弱な電波の違い、すなわち、水素原子のスピン状態の遷移の違いをもとに画像が形成されるため、CTコロノグラフィと同様に画像情報の得られない大腸内腔の領域を小さくし、検査の精度向上を図る必要がある。
かくして、本発明の目的は、例えばCTコロノグラフィおよびMRコロノグラフィによる大腸癌などの検査において、腸管洗浄後の大腸内腔にしばしば顕れる、腸管洗浄液の残水や腸液の貯留などによる検査不能領域についてスクリーニング検査等において問題となりうる点を解消する方法、すなわち、両コロノグラフィにおける病変検出不能領域を減少せしめる方法を提供し、併せてCTコロノグラフィおよびMRコロノグラフィの被検者による受容性を高める方法を提供することにある。
また、CTコロノグラフィ又はMRコロノグラフィによる大腸癌等のスクリーニング検査において、検査前処置に適切な腸管洗浄用組成物を検討するなか、膠質浸透圧調整剤および/または晶質浸透圧調整剤を有効成分として含有する組成が、CTコロノグラフィ又はMRコロノグラフィの腸管洗浄用組成物として有用であること、さらに膠質浸透圧調整剤および/または晶質浸透圧調整剤を含有する腸管洗浄用組成物の包装物と、セロトニン5−HT4受容体刺激剤の両者を一緒にもしくは別々に包装した包装物を組み合わせてなる腸管洗浄用キットまたは包装品が、CTコロノグラフィ又はMRコロノグラフィにおける検査、特に大腸癌検診等のスクリーニング検査の患者受容性の向上と処置の定型化を図りやすい点等に有効であること見出した。
本発明者は、これらの知見に基いて本発明を完成した。
すなわち、本発明は、セロトニン5−HT4受容体刺激剤を有効成分として含有することを特徴とする、CTコロノグラフィ又はMRコロノグラフィにおける消化管の病変検出能改善剤、膠質浸透圧調整剤および/または晶質浸透圧調整剤を有効成分として含有することを特徴とする、CTコロノグラフィ又はMRコロノグラフィの腸管洗浄用組成物、および(a)膠質浸透圧調整剤および/または晶質浸透圧調整剤を有効成分として含有する腸管洗浄用組成物および(b)セロトニン5−HT4受容体刺激剤の両者を一緒にもしくは別々に包装した包装物を組み合わせてなることを特徴とするCTコロノグラフィ又はMRコロノグラフィの腸管洗浄用キットまたは包装品等に関する。
本発明の、セロトニン5−HT4受容体刺激剤を有効成分として含有することを特徴とする、CTコロノグラフィ又はMRコロノグラフィにおける消化管の病変検出能改善剤は、CTコロノグラフィ又はMRコロノグラフィを用いた大腸癌等の検査において、画像情報の得られない大腸内腔の領域を減少させることにより、病変の検出能の改善が図られるものである。
本発明の病変検出能改善剤の有効成分であるセロトニン5−HT4受容体刺激剤としては、クエン酸モサプリドを含む前掲特公平3−54937号公報「特許請求の範囲」第1項に記載の一般式で表されるベンズアミド誘導体、シサプリド、メトクロプラミドなどを挙げることができる。これらの化合物のなかでは不整脈誘発等の副作用の少ない点でクエン酸モサプリドがもっとも好ましいと考えられる((株)メディカルレビュー社1998年発行「モサプリドと消化管運動」)。
本発明におけるセロトニン5−HT4受容体刺激剤の投与量としては、CTコロノグラフィまたはMRコロノグラフィによる検査の前処置としての腸管洗浄1回につき、腸管洗浄の前もしくは後にまたは前後に分けて、例えばクエン酸モサプリドの製剤であればクエン酸モサプリド換算で総量10〜30mgが好ましく、より好ましくは12.5〜25mgである。
CTコロノグラフィまたはMRコロノグラフィの前処置としての腸管洗浄に使用すべき本発明の腸管洗浄用組成物は、膠質浸透圧調整剤および/または晶質浸透圧調整剤を有効成分とする。
膠質浸透圧調整剤としては、ポリエチレングリコール、ポリデキストロース、デキストラン、デキストリン、ヒドロキシエチルスターチ、アラビアゴム、プルラン、ペクチン、カルボキシメチルセルロースなどを挙げることができる。これらの中では、ポリデキストロース、デキストラン、ヒドロキシエチルスターチ、アラビアゴム、プルランおよびペクチンから選ばれる高分子が、製剤的安定性等の面から特に好ましい。
晶質浸透圧調整剤としては、電解質または電解質と糖類の混合物が用いられる。CTコロノグラフィ又はMRコロノグラフィによる特にスクリーニング検査において好ましい腸管洗浄用組成物としては、製剤安定性や、服用の容易性等を含めた患者受容性が優れているとの理由から電解質と糖類の混合物を挙げることができる。
電解質とは、溶液中で解離してイオンとなる物質を言い、Na+、K+、Ca+ +、Mg++、Cl−、HCO3 −、SO4 −−、HPO4 −−、有機酸基、有機塩基などを挙げることができる。より具体杓には、静脈投与される電解質輸液などに用いられる化合物と同様のものを挙げることができる。ナトリウムイオン源としては、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、硫酸ナトリウム、乳酸ナトリウムなどが、カリウムイオン源としては、塩化カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸カリウム、乳酸カリウムなどが、カルシウムイオン源としては、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウムなどが、マグネシウムイオン源としては、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、クエン酸マグネシウムなどが、リン酸イオン源としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、グリセロリン酸ナトリウムなどが、塩素イオン源としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどが、また重炭酸イオン源としては、炭酸水素ナトリウムなどがそれぞれ例示され、これらの化合物は水和物の形態であってもよい。
電解質に混合する糖類には、糖のほか糖アルコールも含まれる。具体的な例として、ソルビトール、キシリトール、エリトリトール、マンニトール、トレハロース、ラクチトール、ラクチェロース、マルチトール、パラチノース、ラフィノース、グリセリンなどを挙げることができる。これらの中では、キシリトール、ソルビトール、ラクチュロース、ラクチトールおよびラフィノースが製剤安定性や、服用の容易性等を含めた患者受容性、検査後に大腸下部に少量残ることで腸内有用菌の増殖促進作用を併せ持つ点等の理由から特に好ましい。
本発明の腸管洗浄組成物の有効成分である、上述の膠質浸透圧調整剤および/または晶質浸透圧調整剤は、生体内の血清電解質バランスと浸透圧の変動を最小限に抑えるために重要な成分である。浸透圧調整剤として、膠質浸透圧調整剤および晶質浸透圧調整剤は、それぞれ、単独でまたは両者を配合して用いる。その量は、腸管洗浄後CTコロノグラフィ又はMRコロノグラフィの検査を受けるまでの時間や患者の検査前日の食事の内容等により調整するが、上記の理由から水に溶解して浸透圧が200〜440mOsm/Lの水溶液として使用することが好ましい。より好ましくは、280〜320mOsm/Lの等張もしくは等張に近い浸透圧範囲に調整可能なように各成分の種類と配合量を選択するのがよい。
膠質浸透圧調整剤の使用量は、水1Lに溶解する製剤中に5〜100グラム、好ましくは10〜60グラムである。腸管から吸収される電解質量と腸管内に分泌される電解質量を相殺させて血清電解質バランスを維持するため、腸管洗浄組成物を水に溶解したとき、Na+:30〜150mEq/L、K+:3〜20mEq/L、Cl−:20〜70mEq/L、そしてHCO3 −:10〜50mEq/Lとなるように電解質を添加するのが好ましい。水に溶解した腸管洗浄組成物の腸管での水分および電解質の吸収を抑制するためにマグネシウムイオン、硫酸イオンのような難吸収性イオンを添加する。マグネシウムイオンの場合は、腸管洗浄組成物を水に溶解したとき、40〜120mEq/Lとなるよう調整する。硫酸イオンの場合は、腸管洗浄組成物を水に溶解したとき、40〜120mEq/Lとなるよう調整する。晶質浸透圧調整剤として糖類を用いる場合の使用量は、水1Lに溶解する製剤中に5〜80グラム、好ましくは10〜60グラムである。好ましい処方は、膠質浸透圧調整剤と電解質の混合、または晶質浸透圧調整剤としての電解質と糖類の混合である。
本発明の腸管洗浄組成物に有効成分として含有される膠質浸透圧調整剤および/または晶質晶質浸透圧調整剤は、各成分が混合可能なように粒子径を調整したうえで、気密性の容器に充填、密封包装して流通に置くことが好ましい。そして、包装物1個が、例えば1Lもしくは2Lの水に溶解して使用されるよう内容量を調整するのが使用目的に適している。特に服用が容易でCTコロノグラフィ又はMRコロノグラフィの検査精度を上げるためには、包装物1個が1〜1.5Lに溶解して使用されるよう内容量を調整することが好ましい。
因みに、大腸手術や大腸内視鏡検査の前処置に利用されている腸管洗浄液の具体例としては、ポリエチレングリコールと電解質との組合せの組成からなるもの(例えば、特開平1−125319号公報に開示の発明に係わる「ニフレック」商品名、味の素ファルマ社製)を挙げられる。
また、大腸手術の前処置や大腸内視鏡検査用の腸管洗浄剤組成物としては、ポリエチレングリコールのほかに、デキストラン、デキストリン、ヒドロキシエチルスターチ、ポリデキストロース、アラビアゴム及びペクチンから選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子と電解質との組合せの組成からなるもの(特開平2−25424号公報、同3−206046号公報)、エリトリトールまたはキシリトールと電解質との組合せの組成からなるもの(特開平3−284620号公報)、フラクトオリゴ糖と電解質との組合せの組成からなるもの(特開平3−291228号公報)、およびラクチトール、マルチトールおよびカルボキシメチルセルロースから選ばれる少なくとも1種と電解質とを含有する組成物(特開平5−255092号公報)、等を挙げることができる。
これらの中から特にラクチトールと電解質を組合せた腸管洗浄組成物は、適度な甘味と等張に調整する際の配合量が比較的少量ですみ、洗浄液調製がたやすいこと、患者受容性、製剤安定性に優れている点からも、CTコロノグラフィ又はMRコロノグラフィの前処置に用いるに好ましい処方と言える。さらに、CTコロノグフィまたはMRコロノグラフィ検査後の腸内有用菌の増殖促進にも有用であることから、ラクチトールと電解質を組み合わせることが好ましい。
本発明の腸管洗浄組成物は有効成分の粉末乃至浸潤粉末の形態、有効成分を水に溶解した水溶液の形態など適宜の形態とすることができる。
このような腸管洗浄用組成物は、これに加えてセロトニン5−HT4受容体刺激剤を有効成分として配合した腸管洗浄用配合剤の形態とすることができる。
また、本発明の膠質浸透圧調整剤および/または晶質浸透圧調整剤を含有する腸管洗浄用組成物およびセロトニン5−HT4受容体刺激剤は両者を一緒にもしくは別々に包装した包装物を組み合わせたCTコロノグラフィ又はMRコロノグラフィの腸管洗浄用キットまたは包装品の形態で流通に置くことができるが、これについては後に再説する。
さて、腸管洗浄により腸内有用菌も失われる。従って、CTコロノグラフィ又はMRコロノグラフィによる検査終了後に種々の腸内有用菌を含有する腸内有用菌組成物を被検者に経口投与して腸内有用菌(腸内フローラ)を復元することが好ましい。
本発明の、このような腸内有用菌組成物に使用される有用菌としては、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス、ビフィドバクテリウム・プレーベ、ピフィドバクチリウム・インフアティス、ビフィドバクテリウム・ロンガムなどのビフィドバクテリウム属菌;ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・デルアルッキィー、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・フアーメンタム、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ゼアエなどのラクトバチルス属菌;ストレプトコッカス・サーモフィルスなどのストレプトコッカス属菌;エンテロコッカス・フェカーリス、エンテロコッカス・フェシウムなどのエンテロコッカス属菌;ラクトコッカス・ラクチスなどのラクトコッカス属菌等が好適である。特に、風味や食経験に基づく安全性などの点から、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクチリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトコッカス・ラクチス、ラクトバチルス・ガセリ、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、エンテロコッカス・フェカーリス、エンテロコッカス・フェシウムなどが好ましい。
なお、上記の腸内有用菌組成物の投与に際しては併せて腸内有用菌増殖促進剤を投与して腸内有用菌の増殖を促進する。
本発明の、そのような腸内有用菌増殖促進剤は、有用菌の栄養源となるもの、有用菌の生育を助長するもの、腸内腐敗物生成を抑制するものおよび有害菌の生育を抑制するもの等であり、これまで腸内有用菌の増殖に有効とされるあらゆる物質を用いることができる。CTコロノグラフィ又はMRコロノグラフィの検査後は、腸内環境のバランスが崩れやすいところ、食物繊維は腸管内で生成した有害物を吸着し、排便を促し、腸内細菌の発育を促進する。難消化性糖類は有用菌の栄養源となる。有用菌の生育を助長するものとしては、酵母、タンニン類等が挙げられる。短鎖脂肪酸、脂肪酸以外の有機酸、例えば、乳酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸は、有害菌の生育を抑制し、有用菌の生育を促進する。
本発明の腸内有用菌増殖促進剤として使用される食物繊維としては、水に可溶な水溶性繊維と水に不溶な不溶性繊維のいずれを用いてもよい。水溶性繊維としては、例えば、ペクチン、メトキシペクチン、ガラクトマンナン、アルギン酸およびその塩、テングサ、オゴノリ等のガラクタン(galactan)を含む海藻より抽出された寒天、カルボキシメチルセルロースおよびその塩を挙げることができる。水不溶性繊維としては、リンゴファイバー、コーンファイバー、パインファイバーなどの植物から得られた繊維や、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、ほうれん草などの野菜乾燥物、セルロース、ヘミセルロース、カラギーナン、リグニンなどを構成成分とする大豆や小麦のふすまなどを挙げることができる。
食物繊維の1日当たりの目標摂取量は20〜25グラムとされている。食事によって平均17グラムが摂取されていると言われているので、本発明の腸内有用菌増殖促進剤により食物繊維換算で1日当たり5〜15グラム、好ましくは3〜8グラムを補充すれば足りる。場合によって更に多くすることもできる。
糖類としては、キシリトール、ソルビトール、ラクチュロース、パラチノース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、スタキオース、キシロオリゴ糖などの種々の難消化性糖類が有用菌の増殖にとって有効である。短鎖脂肪酸としては2〜5個の炭素鎖長を有する脂肪酸であり、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カブロン酸が好ましい。酵母としては、ビール酵母やパン酵母があげられる。タンニン類としてはカテキン、ガロカテキン、エピカテキン等が好ましい。糖類、短鎖脂肪酸、酵母、タンニン類、その他に有機酸の量は、適宜設定することができる。1日当たり0.1〜10グラム、好ましくは0.5〜5グラムとなるようにするが、場合によっては更に多くすることもできる。
なお、腸管洗浄組成物、腸管洗浄配合剤、腸内有用菌組成物および腸内有用菌増殖促進剤には、その目的を損なわない範囲において、香味料、甘味料、補助剤、増量剤等を適宜加えてそれらの服用を容易にすることができることは言うまでもない。
先に説明したように、本発明の腸管洗浄配合剤は、本発明の腸管洗浄組成物と本発明の病変検出能改善剤であるセロトニン5−HT4受容体刺激剤とを有効成分として配合したものである。この腸管洗浄配合剤は、各成分を粉末状で均一に混合した粉末製剤(例えば、前掲特開平1−125319号公報記載の発明に係わる前掲「ニフレック」)、あるいは錠剤または顆粒剤の剤形に製剤化してもよい。さらに、各成分を水で溶解した混合溶解液をアルミ缶、プラスチック(合成樹脂)製の可撓性容器、プラスチック(合成樹脂)製の剛性もしくは準剛性の容器に充填した形態をとってもよい。この際、溶解液は常法により殺菌あるいは滅菌されることはもちろんである(特開平9−58747号公報、特開平8−253220号公報など参照)。
上記のセロトニン5−HT4受容体刺激剤と腸管洗浄組成物を有効成分とする本発明の腸管洗浄配合剤は、その調製には特別の制限はなく、適宜常法によることができる。
本発明の腸管洗浄用キットまたは包装品は、その作成には特別の制限はなく、適宜常法によることができる。すなわち、一つの包装形態において少なくとも前述の腸管洗浄組成物およびクエン酸モサプリドなどのセロトニン5−HT4受容体刺激剤の両者をそれぞれ有効成分とする各製剤が含まれておればよく、そして服用順序、服用方法を記載した指示書、服用を中止しなければならない症状、副作用時の対応が記載された注意書きをキットまたは包装品内に入れることが好ましい。さらに、コップ、服用量のチェックシート、時計、溶解液などを入れておくことができる。
一例として、腸管洗浄組成物をプラスチック容器に充填し(特開平4−259461号公報参照)、その容器にクエン酸モサプリドの錠剤並びに服用手順が記載された指示書及び副作用の症状とその対処法が記載された注意書きが分離収納されたブリスターパックを取り外し可能に装着する。そして、前記ブリスターパック付プラスチック容器を腸管洗浄組成物溶解用の2L容量の容器に挿入あるいは外壁に取り付ける形態が有用である。前記溶解用の容器にあらかじめミネラルウォーター等の溶解液を充填しておくと更に便宜性が高まる。
また、腸管洗浄組成物の水溶解液が充填された容器に前記ブリスターパックを取り付けてもよい。
他の例として、多室バッグとも称すべき、可撓性のプラスチック製バッグを融着部によって仕切られた2〜3個の区画に本発明の消化管の病変検出能改善剤、腸管洗浄用組成物および溶解液の3者を収容できるようにしたキット用バッグを良い例として挙げることができる(これは、3者を一緒に包装した例である)。このキット用バッグは使用時に手等で押圧することによって、中間の融着部を剥離し、粉末の腸管洗浄用組成物とその溶解液を混合して腸管洗浄液を調製することができる特徴を有している。そして、このキット用バッグの表面に指示書、注意書きを印刷しておけばバッグ一袋でキット化できる(意匠登録第1105622号)。
なお、消化管の病変検出能改善剤と腸管洗浄用組成物とは同時に使用しても効果の奏される限りは配合剤(組成物)の形態に調製することができるが、予め消化管の病変検出能改善剤を投与しておいてから腸管洗浄用組成物を水に溶解して調製した腸管洗浄液を服用するときのような、非同時投与が好ましい場合はキット又は包装品の形態とするのがよい。
本発明の腸管洗浄用キットまたは包装品において、前掲の腸内有用菌組成物及び腸内有用菌増殖促進剤の包装物は、CTコロノグラフィ又はMRコロノグラフィの検査終了した後開封され、内容物を経口的に服用することが容易である。CTコロノグラフィ又はMRコロノグラフィの検査後に、腸内有用菌組成物及び腸内有用菌増殖促進剤を服用することにより、腸内環境が個人差なく早期に整えられ、患者の検査後の体調維持が図られる。
試験例:大腸の病変検出能改善効果
CTコロノグラフィを用いた大腸検査に際して、クエン酸モサプリドによる大腸の病変検出能改善効果を調べるために、47歳の男性に、経口腸管洗浄組成物(商品名「ニフレック」、味の素ファルマ社製)1袋を水に溶解し2Lのみで前処置をした場合(対照例)と、前記腸管洗浄組成物の溶解液を服用する30分前にクエン酸モサプリド5mgを含有する錠剤(商品名「ガスモチン」、大日本製薬社製)を1錠服用し、さらに腸管洗浄組成物の溶解液を服用終了30分後に同錠2錠服用した(クエン酸モサプリド合計15mg)以外は対象例と同じ前処置をした場合(クエン酸モサプリド投与例)とで、ポリープ検出不能な撮像領域を体積(ml)として算出(画像データの積算処理による)した。
なお、両検査ともに検査直前に腸管運動抑制の目的で臭化メチルスコポラミン(商品名「ブスコパン注射液1ml管」)1アンプルを静脈投与し、経肛門的に約2リットルの空気を送気した。
検査結果を下記第1表に示す。
同表から分るように、クエン酸モサプリド投与例(本発明)では、背臥位および腹臥位ともに、約50mlの病変検出不能な領域の減少が図られ、クエン酸モサプリドがCTコロノグラフィにおけるポリープ探索可能な範囲を広げポリープ検出能を高める作用を有することが認められた。
<CTコロノグラフィ又はMRコロノグラフィの腸管洗浄用組成物の包装物>
塩化ナトリウム2.93g、塩化カリウム1.49g、炭酸水素ナトリウム3.37gおよび無水硫酸ナトリウム11.37gをラクチトール57gと混合し、水分不透過性フィルムの袋に密封包装する。この包装品1つは2Lの水に溶解して服用するものである。
<腸内有用菌組成物の包装物>
ビフィドバクテリウム・ビフィダムを1.0×1010個含有する培養物の乾燥粉末0.1gに澱粉0.9gおよび微量の甘味料、香料を混合し、水分不透過性フィルムの袋に密封包装した。
<腸内有用菌増殖促進剤の包装物>
顆粒状にした乳果オリゴ糖2.5gに、アップルファイバー0.5gを加え、1包3.0gを水分不透過性フィルムの袋に密封包装した。
<CTコロノグラフィ又はMRコロノグラフィ検査の腸管洗浄用キット>
クエン酸モサプリドを5mg含有する錠剤4錠を収容したPTP包装物とCTコロノグラフィ又はMRコロノグラフィの腸管洗浄用組成物の包装物を検査前に使用することを明記した可撓性袋に収納する。また、腸内有用菌組成物の包装物と腸内有用菌増殖促進剤の包装物を検査後に使用することを明記した可撓性袋に収納する。前述の検査前後に使用すべき両可撓性袋を化粧箱に収容してCTコロノグラフィ又はMRコロノグラフィ検査の腸管洗浄用キットとした。
Claims (11)
- セロトニン5−HT4受容体刺激剤を有効成分として含有することを特徴とする、CTコロノグラフィ又はMRコロノグラフィにおける消化管の病変検出能改善剤。
- 膠質浸透圧調整剤および/または晶質浸透圧調整剤を有効成分として含有することを特徴とする、CTコロノグラフィ又はMRコロノグラフィの腸管洗浄用組成物。
- 該膠質浸透圧調整剤がポリエチレングリコール、ポリデキストロース、デキストラン、デキストリン、ヒドロキシエチルスターチ、アラビアゴム、プルラン、ペクチン、アルブミンおよびカルボキシメチルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種類であることを特徴とする請求項2記載の腸管洗浄用組成物。
- 該晶質浸透圧調整剤が電解質または電解質と糖類であることを特徴とする請求項2記載の腸管洗浄用組成物。
- 該糖類がソルビトール、キシリトール、エリトリトール、マンニトール、トレハロース、ラクチトール、ラクチュロース、マルチトール、パラチノース、ラフィノースおよびグリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種類の糖類であることを特徴とする請求項4記載の腸管洗浄用組成物。
- 水に溶解して浸透圧が200〜440mOsm/Lの水溶液として使用することを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の腸管洗浄用組成物。
- 水に溶解したとき、Na+が30〜150mEq/L、K+が3〜20mEq/L、Cl−が20〜70mEq/L、そしてHCO3 −が10〜50mEq/Lとなるように電解質を含み、ポリエチレングリコール、ポリデキストロース、デキストラン、デキストリン、ヒドロキシエチルスターチ、アラビアゴム、プルラン、ペクチン、アルブミンおよびカルボキシメチルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種類の膠質浸透圧調整剤および/またはソルビトール、キシリトール、エリトリトール、マンニトール、トレハロース、ラクチトール、ラクチュロース、マルチトール、パラチノース、ラフィノースおよびグリセリンからなる群から選ぱれる少なくとも1種類の糖類を含む請求項6記載の腸管洗浄用組成物。
- 請求項2〜7のいずれかに記載の腸管洗浄用組成物およびこれに加えてセロトニン5−HT4受容体刺激剤を含有することを特徴とする腸管洗浄用配合剤。
- (a)膠質浸透圧調整剤および/または晶質浸透圧調整剤を有効成分として含有する腸管洗浄用組成物および(b)セロトニン5−HT4受容体刺激剤の両者を一緒にもしくは別々に包装した包装物を組み合わせてなることを特徴とするCTコロノグラフィ又はMRコロノグラフィの腸管洗浄用キットまたは包装品。
- ビフィドバクテリウム属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属およびエンテロコッカス属から選ばれる少なくとも1種類の微生物を含有する腸内有用菌組成物の包装物をさらに組み合わせたことを特徴とする、請求項9記載の腸管洗浄用キットまたは包装品。
- 食物繊維、糖類、短鎖脂肪酸、酵母、タンニン類および脂肪酸以外の有機酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類の腸内有用菌増殖促進剤の包装物をさらに組み合わせることを特徴とする請求項10記載の腸管洗浄用キットまたは包装品。
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