JP2008173221A - 浸透圧作用軽減イオントフォレーシス用電極構造体 - Google Patents

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JP2008173221A JP2007007904A JP2007007904A JP2008173221A JP 2008173221 A JP2008173221 A JP 2008173221A JP 2007007904 A JP2007007904 A JP 2007007904A JP 2007007904 A JP2007007904 A JP 2007007904A JP 2008173221 A JP2008173221 A JP 2008173221A
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Abstract

【課題】薬液保持部と電解液保持部との間における水分等の移動を引き起こす浸透圧の作用を軽減したイオントフォレーシス用電極構造体の提供。
【解決手段】イオン性薬物を保持するイオントフォレーシス用電極構造体であって、少なくとも電解液保持部と薬液保持部が、物質透過可能な膜を介して隣接して配置されてなり、少なくとも前記電解液または前記薬液の一方に、電気的に中性な浸透圧調整添加剤を含んでなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、イオントフォレーシス(iontophoresis)によって各種イオン性薬物を経皮的に投与する技術(経皮ドラッグデリバリー)に関し、特に、イオントフォレーシスに用いる電極構造体に関するものである。
生体の所定部位の皮膚ないし粘膜(以下、単に「皮膚」という)の表面上に配置されたイオン性薬物に対してこのイオン性薬物を駆動させる起電力を皮膚に与えて、薬物を皮膚を介して体内に導入(浸透)させる方法は、イオントフォレーシス(iontophoresis、イオントフォレーゼ、イオン導入法、イオン浸透療法)と呼ばれている(特許文献1等参照)。
たとえば、正電荷をもつイオンは、イオントフォレーシス装置の電気系統のアノード(陽極)側において皮膚内に駆動(輸送)される。一方、負電荷をもつイオンは、イオントフォレーシス装置の電気系統のカソード(陰極)側において皮膚内に駆動(輸送)される。
上記のようなイオントフォレーシス装置としては従来多くの提案がなされている。(たとえば、特許文献1〜7参照)。この中には、イオントフォレーシス用電極構造体として、電極、電解液保持部、イオン性薬物と反対の極性のイオンを選択するイオン交換膜、イオン性薬物を保持する薬液保持部、およびイオン性薬物と同極性のイオンを選択するイオン交換膜を積層した電極構造体を提案するものがある。
このような電極構造体では、イオントフォレーシスによる投与までの保存時に、薬液・電解液間の浸透圧の作用により、薬液保持部から電解液保持部に水分などが移動したり、逆に電解液保持部から、薬液保持部に水分などが移動したりして、必ずしも安定に電極構造体を保存できていなかった。また、薬液を保持しない非作用側電極においても、第1電解液保持部と第2電解液保持部間で同様な現象が生じることがあった。
従って、薬液保持部と電解液保持部との間、第1電解液保持部と第2電解液保持部との間における水分等の移動を引き起こす浸透圧の作用についてこれを軽減したイオントフォレーシス用電極構造体を提供することは重要な課題である。
特開昭63−35266号 特開平4−297277号 特開2000−229128号 特開2000−229129号 特開2000−237327号 特開2000−237328号 国際公開WO03/037425A1
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、薬液保持部と電解液保持部との間、第1電解液保持部と第2電解液保持部との間における水分等の移動を引き起こす浸透圧の作用を軽減したイオントフォレーシス用電極構造体を提供することを目的とするものである。
上記の課題を解決するために、本発明によるイオン性薬物を保持するイオントフォレーシス用電極構造体は、少なくとも電解液保持部と薬液保持部が、物質透過可能な膜を介して隣接して配置されてなり、少なくとも前記電解液または前記薬液の一方に、電気的に中性な浸透圧調整添加剤を含んでなるものである。
本発明によるイオン性薬物を保持するイオントフォレーシス用電極構造体の対極である非作用側イオントフォレーシス用電極構造体は、少なくとも第1電解液保持部と第2電解液保持部が、物質透過可能な膜を介して隣接して配置されてなり、少なくとも前記第1電解液または前記第2電解液の一方に、電気的に中性な浸透圧調整添加剤を含んでなるものである。
本発明の好ましい態様によるイオントフォレーシス用電極構造体は、前記イオントフォレーシス用電極構造体であって、前記浸透圧調整添加剤が、単糖、二糖、オリゴ糖、糖アルコール、多価アルコールおよび高分子からなる群より選ばれるものとする。
本発明のさらに好ましい態様によるイオントフォレーシス用電極構造体は、前記イオントフォレーシス用電極構造体であって、前記単糖が、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノースおよびアラビノースからなる群より選ばれるものとする。
本発明の別のさらに好ましい態様によるイオントフォレーシス用電極構造体は、前記イオントフォレーシス用電極構造体であって、前記二糖が、マルトース、ラクトース、スクロースおよびトレハロースからなる群より選ばれるものとする。
本発明の他のさらに好ましい態様によるイオントフォレーシス用電極構造体は、前記イオントフォレーシス用電極構造体であって、前記オリゴ糖が、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、イソマルトオリゴ糖およびパラチノースからなる群より選ばれるものとする。
本発明のまた別のさらに好ましい態様によるイオントフォレーシス用電極構造体は、前記イオントフォレーシス用電極構造体であって、前記糖アルコールが、グリセリン、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、ラクチトール、還元パラチノースおよびマンイトールからなる群より選ばれるものとする。
本発明のまた他のさらに好ましい態様によるイオントフォレーシス用電極構造体は、前記イオントフォレーシス用電極構造体であって、前記多価アルコールが、マクロゴール、プロピレングリコールおよびグリセリンからなる群より選ばれるものとする。
本発明のなお別のさらに好ましい態様によるイオントフォレーシス用電極構造体は、前記高分子が、ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースナトリウム、デキストリン、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、プルランおよびヒドロキシエチルセルロースからなる群より選ばれるものとする。
本発明の別の好ましい態様によるイオントフォレーシス用電極構造体は、前記イオントフォレーシス用電極構造体が、電極構造体中の前記イオン性薬物と同種の極性の電源装置に接続される電極と、該電極に隣接して配置された電解液を保持する電解液保持部と、
該電解液保持部に隣接して配置された前記イオン性薬物と反対の極性のイオンを選択するイオン交換膜と、該イオン交換膜に隣接して配置された前記イオン性薬物を保持する薬液保持部と、該薬液保持部に隣接して配置された、前記イオン性薬物と同極性のイオンを選択するイオン交換膜、とから少なくともなるものとする。
本発明の他の好ましい態様によるイオントフォレーシス用電極構造体は、前記非作用側イオントフォレーシス用電極構造体が、電極構造体中の前記イオン性薬物と反対の極性の電源装置に接続される電極と、該電極に隣接して配置された電解液を保持する非作用側第1電解液保持部と、該電解液保持部に隣接して配置された前記イオン性薬物と同極性のイオンを選択するイオン交換膜と、該イオン交換膜に隣接して配置された電解液を保持する非作用側第2電解液保持部と、該非作用側第2電解液保持部に隣接して配置された、前記イオン性薬物と反対の極性のイオンを選択するイオン交換膜、とから少なくともなるものとする。
このように本発明によるイオントフォレーシス用電極構造体(作用側)においては、 少なくとも前記電解液または前記薬液の一方に、電気的に中性な浸透圧調整添加剤を含むことにより、前記電解液と前記薬液との浸透圧差が緩和されるので、薬液保持部と電解液保持部との間における水分等の移動を引き起こす浸透圧の作用について、これを軽減したイオントフォレーシス用電極構造体を提供することができる。
また、このように本発明によるイオントフォレーシス用電極構造体(非作用側)においては、少なくとも前記第1電解液または前記第2電解液の一方に、電気的に中性な浸透圧調整添加剤を含むことにより、前記第1電解液と前記第2電解液との浸透圧差が緩和されるので、第1電解液保持部と第2電解液保持部との間における水分等の移動を引き起こす浸透圧の作用について、これを軽減したイオントフォレーシス用電極構造体を提供することができる。
以下、本発明を図面に例示した好ましい具体例に基づいて説明する。
図1に示す態様は、本発明の好適態様によるイオントフォレーシス用電極構造体A1の模式図である。この電極構造体A1は、イオントフォレーシス装置においてイオン性薬物を経皮的に投与するための作用側電極構造体として用いられる。イオントフォレーシス用電極構造体A1は、イオン性薬物の電荷と同種の極性の電源装置に電線を介して接続される電極11と、電極11に隣接して配置された電解液を保持する電解液保持部12と、電解液保持部12に隣接して配置されたイオン性薬物と反対の極性のイオンを選択するイオン交換膜13と、イオン交換膜13に隣接して配置された、イオン性薬物を保持する薬液保持部14と、薬液保持部14に隣接して配置された、イオン性薬物と同極性のイオンを選択するイオン交換膜15とを備え、その全体はカバー16によって収容されている。
このような電極構造体においては、電解液と薬液に浸透圧の差が存在すると、イオン交換膜13を介して電解液保持部12と薬液保持部14との間で水分等が移動して、薬液や電解液の濃度が変化してしまうなどの問題点があるが、本発明は、前述のように浸透圧調整添加剤を用いているので、この浸透圧の作用による水分移動作用を軽減することができる。
なお、本発明の別の態様である非作用側電極構造体では、上記作用側電極構造体の電解液保持部が第1電解液保持部に、薬液保持部が第2電解液保持部に変化する以外は上記と同様である。
本発明の作用側のイオントフォレーシス用電極構造体においては、少なくとも電解液または薬液の一方に、電気的に中性な浸透圧調整添加剤を含み、本発明の非作用側のイオントフォレーシス用電極構造体においては、少なくとも第1電解液または第2電解液の一方に、電気的に中性な浸透圧調整添加剤を含むことを特徴とする。
この浸透圧調整添加剤は、イオントフォレーシス投与時の通電時において電気的作用を生じさせないため、イオン性薬物や電解質と反応などの相互作用を生じさせないため、電気的に中性なものとする。
浸透圧調整添加剤としては、保存安定性があり、通電時の悪影響やイオン性薬物・電解質との相互作用がないものであって、薬液ないし電解液に溶解・分散して浸透圧を上昇することができるものであれば特に限定せずに用いることができる。このようなものとしては、特に限定されないが、例えば、単糖、二糖、オリゴ糖、糖アルコール、多価アルコールおよび高分子が挙げられる。具体的には、単糖としては、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノースおよびアラビノース等が挙げられ、二糖としては、マルトース、ラクトース、スクロースおよびトレハロース等が挙げられ、オリゴ糖としては、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、イソマルトオリゴ糖およびパラチノース等が挙げられる。また、糖アルコールとしては、グリセリン、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、ラクチトール、還元パラチノースおよびマンイトール等が挙げられ、多価アルコールとしては、マクロゴール、プロピレングリコールおよびグリセリンが挙げられ、高分子としては、ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースナトリウム、デキストリン、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、プルランおよびヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。高分子の分子量としては、物質透過可能な膜を通り抜けない範囲であれば特に限定されないが、例えば、分子量200〜100,000、あるいは薬物と同程度(例えば薬物分子量の1/2〜2倍)の分子量を有するものを用いることができる。なお、目的に応じて、本発明を薬液保持部が中性高分子を含む態様および第2電解液保持部が中性高分子を含む態様を除いて考えることもできる。
このような浸透圧調整添加剤を用いることにより、電解液と薬液との浸透圧差が緩和され、あるいは、第1電解液と第2電解液との浸透圧差が緩和されるので、それらの間の水分移動を抑制することができる。
電極構造体に使用される電解液保持部としては、電解液を保持する特性を有する薄膜体で構成することができる。なお、この薄膜体は、後述するイオン性薬物を保持するための薬液保持部に使用される材料と同種のものが使用可能である。電解液の機能としては、例えば、陽極側に水の酸化電位より酸化電位の低い化合物を組み合わせ、陰極側に水の還元電位より還元電位の高い化合物を組み合わせることにより、通電中に電解液中のイオン成分が、ガス化することと水の電気分解を防ぎ、さらに、これらの電解液成分の緩衝作用により、pHの変化を防ぐことにある。電解液としては、典型的には、上記機能を発揮するものであれば、適用する薬物等の条件に応じて適宜所望のものが使用できるが、電極反応により生体の皮膚に障害を与えるものは回避すべきである。本発明において好適な電解液としては、生体の代謝回路において存在する有機酸やその塩は無害性という観点から好ましい。たとえば、乳酸、フマル酸等が好ましく、具体的には、1Mの乳酸と1Mのフマル酸ナトリウムの1:1比率の水溶液が好ましい。このような電解液は、水に対する溶解度が高く、電流をよく通すものであり、定電流で電流を流した場合、電気抵抗が低く電源装置におけるpHの変化も比較的小さいため好ましい。また、必要に応じ浸透圧調整添加剤を含むことができるのは、上述の通りである。
薬液保持部は、イオン性薬物を保持する薄膜体により構成される。このような薄膜体としては、イオン性薬物を保持する能力が充分であり、所定の電場条件のもとで保持したイオン性薬物を皮膚側へ移行させる能力(イオン伝達性、イオン導電性)が充分であることが重要である。良好な保持特性と良好なイオン伝達性の双方を具備する材料としては、アクリル系樹脂のヒドロゲル体(アクリルヒドロゲル膜)、セグメント化ポリウレタン系ゲル膜、あるいはゲル状固体電解質形成用のイオン導電性多孔質シート等を挙げることができる(例えば特開昭11−273452に開示された、アクリロニトリルが50モル%以上、好ましくは70〜98モル%以上であり、空隙率が20〜80%であるアクリルニトリル共重合体をベースにした多孔質重合体)等を挙げることができる。また、上記のような薬液保持部においては、その保持率(乾燥時の重量をD、保持後の重量をWとして場合の100×(W−D)/D[%])は、好ましくは30〜95%である。また、必要に応じ浸透圧調整添加剤を含むことができるのは、上述の通りである。
薬液保持部に保持される薬物の具体例としては、以下のものが挙げられる。
正にイオン化しうるイオン性薬物としては、例えば、局所麻酔剤(塩酸プロカイン、塩酸リドカイン等)、胃腸疾患治療薬(塩化カルニチン等)、骨格筋弛緩剤(臭化バンクロニウム等)、抗生物質(テトラサイクリン系製剤、カナマイシン系製剤、ゲンタマイシン系製剤)等が挙げられる。
また、負にイオン化しうるイオン性薬物としては、ビタミン(リン酸リボフラビン、ニコチン酸、アスコルビン酸、葉酸等)、副腎皮質ホルモン(ヒドロコルチゾン系水溶性製剤、リン酸プレドニゾロンナトリウム、リン酸デキサメタゾンナトリウム等のデキサメサゾン系、プレドニソロン系水溶性製剤等)、抗菌薬(キノロン系製剤)等が挙げられる。
また、本発明におけるイオントフォレーシス用電極構造体に保持されるイオン性薬物は、疾患の種類、患者の状態等により適宜複数種類を組み合わせてもよい。これは、電極構造体ごとに異なるイオン性薬物を保持させることができるが、単一の電極構造体中で複数種類を組み合わせてもよい。例えば、降圧剤と降圧利尿剤との組み合わせとして、リシノプリルとヒドロクロロチアジド、メチルドパとヒドロクロロチアジド、塩酸クロニジンとクロルタリドン、および塩酸ベナゼプリルとヒドロクロロチアジド等が挙げられ、糖尿病薬の組み合わせとしてインスリンと塩酸メトホルミンが挙げられ、その他の組み合わせとして、塩酸オザグレルとオザグレルナトリウム、塩酸コデインと塩酸プロメタジン等が挙げられる。
イオン性薬物の量は、患者に適用した際に予め設定された有効な血中濃度を有効な時間得られるように、個々のイオン性薬物毎に決定され、薬液保持部等の大きさや厚みおよび薬物放出面の面積、電極装置における電圧、投与時間等に応じ、当業者によって設定される。
電極構造体に使用される電極としては、たとえば、炭素、白金のような導電性材料からなる不活性電極が好ましく用いられ得る。
電極構造体に使用されるイオン交換膜としては、カチオン交換膜とアニオン交換膜を併用することが好ましい。カチオン交換膜としては、好ましくは、(株)トクヤマ製ネオセプタ(NEOSEPTA,CM―1、CM―2、CMX、CMS、CMB)等が挙げられる。また、アニオン交換膜としては、好ましくは、(株)トクヤマ製ネオセプタ(NEOSEPTA,AM―1、AM―3、AMX、AHA、ACH、ACS)等が挙げられる。また、他の好ましい例としては、多孔質フィルムの空隙部の一部または全部に、陽イオン交換機能を有するイオン交換樹脂が充填されたイオン交換膜、または陰イオン交換機能を有するイオン交換樹脂が充填されたイオン交換膜が挙げられる。
ここで、上記イオン交換樹脂としては、パーフルオロカーボン骨格にイオン交換基が導入されたフッ素系のもの、またはフッ素化されていない樹脂を骨格とする炭化水素系のものが使用できるが、製造工程の簡便さから炭化水素系のイオン交換樹脂が好ましく用いられる。また、イオン交換樹脂の上記多孔質フィルムへの充填率は、多孔質フィルムの空隙率によって異なるが、例えば、5〜95質量%とすることができ、好ましく10〜90質量%であり、より好ましくは20〜60質量%である。
また、上記イオン交換樹脂が有するイオン交換基としては、水溶液中で負または正の電荷を有する基を生じる官能基であれば、特に限定されない。このような官能基は、遊離酸または塩の形で存在していてもよい。陽イオン交換基としては、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基等が挙げられ、好ましくはスルホン酸基である。また、陽イオン交換基の対カチオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ陽イオンやアンモニウムイオン等が挙げられる。また、陰イオン交換基としては、例えば、1〜3級アミノ基、4級アミノ基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジウム基または4級イミダゾリウム基等が挙げられ、好ましくは4級アンモニウム基または4級ピリジウム基である。また、陰イオン交換基の対カチオンとしては、塩素イオン等のハロゲンイオンやヒドロキシイオン等が挙げられる。
また、上記多孔質フィルムとしては、表裏を連通する細孔を多数有するフィルムもしくはシート状のものが特に制限されることなく使用されるが、高い強度と柔軟性を両立させるために、熱可塑性樹脂からなるものであることが好ましい。この多孔質フィルムを構成する熱可塑性樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1ペンテン、5−メチル−1−ヘプテン等のα−オレフィンの単独重合体または共重合体等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−オレフィン共重合体等の塩化ビニル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体等のフッ素系樹脂;ナイロン66等のポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂等が挙げられるが、機械的強度、柔軟性、化学的安定性、耐薬品性等を勘案すれば、好ましくはポリオレフィン樹脂であり、より好ましくはポリエチレンまたはポリプロピレンであり、さらに好ましくはポリエチレンである。
さらに、上記熱可塑性樹脂からなる多孔質フィルムの平均孔径は、好ましくは0.005〜5.0μmであり、より好ましくは0.01〜2.0μmであり、さらに好ましくは0.02〜0.2μmである。なお、上記平均孔径は、バルブポイント法(JISK3832−1990)に準拠して測定される平均流孔径を意味する。
また、多孔質フィルムの空隙率は、好ましくは20〜95%であり、より好ましくは30〜90%であり、さらに好ましくは30〜60%である。さらに、多孔質フィルムの厚みは、最終的に形成されるイオン交換膜の厚みを勘案すれば、好ましくは5〜140μmであり、より好ましくは10〜130μmであり、さらに好ましくは15〜55μmである。このような多孔質フィルムにより形成されるアニオン交換膜またはカチオン交換膜の厚さは、通常、多孔質フィルムの厚さ+0〜20μmである。
上述したような各構成材料の詳細については、本出願人に係る前記特許文献7に記載されており、本発明はこの文献に記載された内容を含めるものとする。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、イオン交換膜13としては、カチオン交換膜(CIP-03、トクヤマ社製、厚み28μm、サイズ3.14cm)またはアニオン交換膜(ALE04-02、トクヤマ社製、厚み 27μm、サイズ3.14cm)のいずれかを用い、これらイオン交換膜は予め生理食塩水に浸潤させた。また、電解液保持部12または薬物保持部14はそれぞれ、約1mLの電解液または薬液をその内部空間に保持することが可能な、ドーナツ状のデバイス(アクリル製、内径20mm、厚み 3mm)として構成した。また、塩酸アテノロールおよびD-グルコースは、和光純薬社製のものを用いた。塩酸アテノロールの濃度は、HPLC(LC-20A、堀場製作所)によって測定した。また、pHは、pH測定器(F-53S、堀場製作所)を用いて測定した。なお、各部材における精製水、薬液または電解液の注入および採取はシリンジを用いて行った。
試験例
図2に記載される通り、模擬イオントフォレーシス用電極構造体A2において、電解液0.8mLを注入した電解液保持部12と、薬液0.8mLを注入した薬液保持部14とを、イオン交換膜13を介して隣接して配置した。配置後、模擬イオントフォレーシス用電極構造体A2を24時間暗所にて放置した。24時間後、電解液保持部12または薬液保持部14から電解液または薬液を採取し、液量を測定した。さらに、電解液または薬液中の塩酸アテノロール濃度の測定値および液量に基づき、薬液保持部14から電解液保持部12への塩酸アテノロール移行量を算出した。また、電解液保持部12および薬液保持部におけるpHを併せて測定した。
上記試験において、電解液保持部12における電解液としては、120 mM L-アスコルビン酸 2-リン酸エステル三ナトリウムおよび150 mM 乳酸を含む水溶液(浸透圧算出値:630mOsm/L)を用いた。また、薬液保持部14における薬液としては、コントロールとしての薬液A(50 mM 塩酸アテノロールの水溶液;浸透圧算出値:100mOsm/L)を用いるか、または、浸透圧調整添加剤としてのD-グルコースを含む薬液として薬液B(50 mM 塩酸アテノロールおよび530 mM D-グルコースの水溶液;浸透圧算出値:630mOsm/L)または薬液C(50 mM 塩酸アテノロールおよび530 mM D-グルコースの水溶液;浸透圧算出値:850mOsm/L)のいずれかを用いた。
模擬イオントフォレーシス用電極構造体A2において、カチオン交換膜を用いた場合の結果は、以下の表1〜3に示される通りであった。
表1は、イオン交換膜13がカチオン交換膜であり、かつ薬液がコントロールとしての薬液Aである場合の結果である。
Figure 2008173221
表2は、イオン交換膜13がカチオン交換膜であり、かつ薬液が薬液Bである場合の結果である。
Figure 2008173221
表3は、イオン交換膜13がカチオン交換膜であり、かつ薬液が薬液Cである場合の結果である。
Figure 2008173221
アテノロール移行量は、コントロール(薬液A、表1)では403.8μgであったのに対し、薬液B(表2)を用いた場合では38.3μgであり、薬液C(表3)の場合では24.3μgであった。また、24時間後の電解液保持部における液量は、コントロールでは0.99mLであったのに対し、薬液Bを用いた場合では0.78mLであり、薬液Cを用いた場合では0.67mLであった。コントロールと比較して、浸透圧調整添加剤を含む薬液BまたはCを用いた方が、アテノロール移行量および水分の移行量についていずれも低い値を示すことが確認された。
また、模擬イオントフォレーシス用電極構造体A2において、アニオン交換膜を用いた場合の結果は、以下の表4〜6に示される通りであった。
表4は、イオン交換膜13がアニオン交換膜であり、かつ薬液がコントロールとしての薬液Aである場合の結果である。
Figure 2008173221
表5は、イオン交換膜13がアニオン交換膜であり、かつ薬液が薬液Bである場合の結果である。
Figure 2008173221
表6は、イオン交換膜13がアニオン交換膜であり、かつ薬液が薬液Cである場合の結果である。
Figure 2008173221
アテノロール移行量は、コントロール(薬液A、表4)では454.6μgであったのに対し、薬液B(表5)を用いた場合では40.5μgであり、薬液C(表6)を用いた場合では39.0μgであった。また、24時間後の電解液保持部における液量は、コントロールでは0.97mLであったのに対し薬液Bを用いた場合では0.81mLであり、薬液Cを用いた場合では0.66mLであった。コントロールと比較して、浸透圧調整添加剤(D-グルコース)を含む薬液BまたはCを用いた方が、アテノロール移行量および水分の移行量についていずれも低い値を示すことが確認された。
なお、浸透圧差による水分の移動以外の要素に基づく液量減損のレベルを確認するため、上記模擬イオントフォレーシス電極構造体A2において、薬液および電解液に代えて精製水0.8mLを用い、薬液保持部および電解液保持部のいずれにも注入したところ、24時間後の精製水の量は薬液保持部および電解液保持部において0.01〜0.02mL程度低下することを確認した。さらに、精製水に代えて薬液Bを用いても同様の結果が得られた。
本発明によるイオントフォレーシス用電極構造体の概要を示す図。 浸透圧調整添加剤の作用を確認するための模擬イオントフォレーシス用電極構造体の概要を示す図。
符号の説明
A1 作用側電極構造体
A2 模擬イオントフォレーシス用電極構造体
11 電極
12 作用側電解液保持部
13、15 イオン交換膜
14 薬液保持部
16 カバー

Claims (11)

  1. イオン性薬物を保持するイオントフォレーシス用電極構造体であって、少なくとも電解液保持部と薬液保持部が、物質透過可能な膜を介して隣接して配置されてなり、
    少なくとも前記電解液または前記薬液の一方に、電気的に中性な浸透圧調整添加剤を含んでなる、イオントフォレーシス用電極構造体。
  2. イオン性薬物を保持するイオントフォレーシス用電極構造体の対極である非作用側イオントフォレーシス用電極構造体であって、少なくとも第1電解液保持部と第2電解液保持部が、物質透過可能な膜を介して隣接して配置されてなり、
    少なくとも前記第1電解液または前記第2電解液の一方に、電気的に中性な浸透圧調整添加剤を含んでなる、イオントフォレーシス用電極構造体。
  3. 前記浸透圧調整添加剤が、単糖、二糖、オリゴ糖、糖アルコール、多価アルコールおよび高分子からなる群より選ばれるものである、請求項1または2に記載のイオントフォレーシス用電極構造体。
  4. 前記単糖が、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノースおよびアラビノースからなる群より選ばれるものである、請求項3に記載のイオントフォレーシス用電極構造体。
  5. 前記二糖が、マルトース、ラクトース、スクロースおよびトレハロースからなる群より選ばれるものである、請求項3に記載のイオントフォレーシス用電極構造体。
  6. 前記オリゴ糖が、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、イソマルトオリゴ糖およびパラチノースからなる群より選ばれるものである、請求項3に記載のイオントフォレーシス用電極構造体。
  7. 前記糖アルコールが、グリセリン、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、ラクチトール、還元パラチノースおよびマンイトールからなる群より選ばれるものである、請求項3に記載のイオントフォレーシス用電極構造体。
  8. 前記多価アルコールが、マクロゴール、プロピレングリコールおよびグリセリンからなる群より選ばれるものである、請求項3に記載のイオントフォレーシス用電極構造体。
  9. 前記高分子が、ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースナトリウム、デキストリン、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、プルランおよびヒドロキシエチルセルロースからなる群より選ばれるものである、請求項3に記載のイオントフォレーシス用電極構造体。
  10. 前記イオントフォレーシス用電極構造体が、
    電極構造体中の前記イオン性薬物と同種の極性の電源装置に接続される電極と、
    該電極に隣接して配置された電解液を保持する電解液保持部と、
    該電解液保持部に隣接して配置された前記イオン性薬物と反対の極性のイオンを選択するイオン交換膜と、
    該イオン交換膜に隣接して配置された前記イオン性薬物を保持する薬液保持部と、
    該薬液保持部に隣接して配置された、前記イオン性薬物と同極性のイオンを選択するイオン交換膜、とから少なくともなる、請求項1に記載のイオントフォレーシス用電極構造体。
  11. 前記非作用側イオントフォレーシス用電極構造体が、
    電極構造体中の前記イオン性薬物と反対の極性の電源装置に接続される電極と、
    該電極に隣接して配置された電解液を保持する非作用側第1電解液保持部と、
    該電解液保持部に隣接して配置された前記イオン性薬物と同極性のイオンを選択するイオン交換膜と、
    該イオン交換膜に隣接して配置された電解液を保持する非作用側第2電解液保持部と、
    該非作用側第2電解液保持部に隣接して配置された、前記イオン性薬物と反対の極性のイオンを選択するイオン交換膜、とから少なくともなる、請求項2に記載のイオントフォレーシス用電極構造体。
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