JP2007202759A - 浸透圧の作用を軽減したイオントフォレーシス用電極構造体 - Google Patents

浸透圧の作用を軽減したイオントフォレーシス用電極構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】浸透圧の作用により薬液保持部の水分が電解液保持部などに移動するといった現象を軽減したイオントフォレーシス用電極構造体の提供。
【解決手段】イオン性薬物を保持するイオントフォレーシス用電極構造体であって、少なくとも電解液保持部と薬液保持部が、物質透過可能な膜を介して隣接して配置されてなり、前記薬液保持部が、電気的に中性な高分子を含んでなる。
【選択図】図2

Description

本発明は、イオントフォレーシス(iontophoresis)によって各種イオン性薬物を経皮的に投与する技術(経皮ドラッグデリバリー)に関し、特に、イオントフォレーシスに用いる電極構造体に関するものである。
生体の所定部位の皮膚ないし粘膜(以下、単に「皮膚」という)の表面上に配置されたイオン性薬物に対してこのイオン性薬物を駆動させる起電力を皮膚に与えて、薬物を皮膚を介して体内に導入(浸透)させる方法は、イオントフォレーシス(iontophoresis、イオントフォレーゼ、イオン導入法、イオン浸透療法)と呼ばれている(特許文献1等参照)。
たとえば、正電荷をもつイオンは、イオントフォレーシス装置の電気系統のアノード(陽極)側において皮膚内に駆動(輸送)される。一方、負電荷をもつイオンは、イオントフォレーシス装置の電気系統のカソード(陰極)側において皮膚内に駆動(輸送)される。
上記のようなイオントフォレーシス装置としては従来多くの提案がなされている。(たとえば、特許文献1〜7参照)。この中には、イオントフォレーシス用電極構造体として、電極、電解液保持部、イオン性薬物と反対の極性のイオンを選択するイオン交換膜、イオン性薬物を保持する薬液保持部、およびイオン性薬物と同極性のイオンを選択するイオン交換膜を積層した電極構造体を提案するものがある。
このような電極構造体では、イオントフォレーシスによる投与時にイオン性薬物が薬液保持部から流出して皮膚に移動するとともに、イオン性薬物と反対の極性をもつイオンも薬液保持部から流出して電解液保持部に移動するため、投与時間の経過に伴い薬液保持部のイオン濃度が低下し、浸透圧が低下することになる。この結果、薬液保持部の水分が電解液保持部などに移動してイオントフォレーシスによる投与の継続及び効率に悪影響が生ずることがあった。また、薬液を保持しない非作用側電極においても、薬液保持部に相当する第2電解液保持部の水分減少といった同様な現象が生ずることがあった。
従って、薬液保持部(ないし第2電解液保持部)の水分が電解液保持部などに移動して薬液保持部(ないし第2電解液保持部)の水分が減少するといった浸透圧の作用についてこれを軽減したイオントフォレーシス用電極構造体を提供することは重要な課題である。
特開昭63−35266号 特開平4−297277号 特開2000−229128号 特開2000−229129号 特開2000−237327号 特開2000−237328号 国際公開WO03/037425A1
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、薬液保持部(ないし第2電解液保持部)の水分が電解液保持部などに移動するといった浸透圧の作用について、これを軽減したイオントフォレーシス用電極構造体を提供することを目的とするものである。
上記の課題を解決するために、本発明によるイオン性薬物を保持するイオントフォレーシス用電極構造体は、少なくとも電解液保持部と薬液保持部が、物質透過可能な膜を介して隣接して配置されてなり、前記薬液保持部が、電気的に中性な高分子を含んでなるものである。
本発明の他の態様によるイオン性薬物を保持するイオントフォレーシス用電極構造体は、少なくとも電解液保持部と薬液保持部が、物質透過可能な膜を介して隣接して配置されてなり、前記薬液保持部が、薬物の目的送達量より2倍以上の量の薬物を保持するものである。
本発明の別の態様によるイオン性薬物を保持するイオントフォレーシス用電極構造体は、少なくとも電解液保持部と薬液保持部が、物質透過可能な膜を介して隣接して配置されてなり、前記電解液保持部が硬質密閉容器内に封入されているものである。
本発明の好適態様によるイオン性薬物を保持するイオントフォレーシス用電極構造体は、 前記イオントフォレーシス用電極構造体が、電極構造体中の前記イオン性薬物と同種の極性の電源装置に接続される電極と、該電極に隣接して配置された電解液を保持する電解液保持部と、該電解液保持部に隣接して配置された前記イオン性薬物と反対の極性のイオンを選択するイオン交換膜と、該イオン交換膜に隣接して配置された前記イオン性薬物を保持する薬液保持部と、該薬液保持部に隣接して配置された、前記イオン性薬物と同極性のイオンを選択するイオン交換膜、とから少なくともなるものである。
本発明のイオン性薬物を保持するイオントフォレーシス用電極構造体の対極である非作用側イオントフォレーシス用電極構造体は、少なくとも第1電解液保持部と第2電解液保持部が、物質透過可能な膜を介して隣接して配置されてなり、前記非作用側第2電解液保持部が、電気的に中性な高分子を含んでなるものである。
本発明の他の態様によるイオン性薬物を保持するイオントフォレーシス用電極構造体の対極である非作用側イオントフォレーシス用電極構造体は、少なくとも第1電解液保持部と第2電解液保持部が、物質透過可能な膜を介して隣接して配置されてなり、前記非作用側第2電解液保持部が、薬物の目的送達イオン当量より2倍以上の当量の電解質を保持するものである。
本発明の別の態様によるイオン性薬物を保持するイオントフォレーシス用電極構造体の対極である非作用側イオントフォレーシス用電極構造体は、少なくとも第1電解液保持部と第2電解液保持部が、物質透過可能な膜を介して隣接して配置されてなり、前記非作用側第1電解液保持部が硬質密閉容器内に封入されているものである。
本発明の好適態様によるイオン性薬物を保持するイオントフォレーシス用電極構造体の対極である非作用側イオントフォレーシス用電極構造体は、前記非作用側イオントフォレーシス用電極構造体が、電極構造体中の前記イオン性薬物と反対の極性の電源装置に接続される電極と、該電極に隣接して配置された電解液を保持する非作用側第1電解液保持部と、該電解液保持部に隣接して配置された前記イオン性薬物と同極性のイオンを選択するイオン交換膜と、該イオン交換膜に隣接して配置された電解液を保持する非作用側第2電解液保持部と、該非作用側第2電解液保持部に隣接して配置された、前記イオン性薬物と反対の極性のイオンを選択するイオン交換膜、とから少なくともなるものである。
このように本発明によるイオントフォレーシス用電極構造体(作用側)においては、
薬液保持部が、電気的に中性な高分子を含んでなるものとし、
薬液保持部が、薬物の目的送達量より2倍以上の量の薬物を保持するものとし、または、
電解液保持部を硬質密閉容器内に封入して電解液保持部の体積が変化しないようにしたので、浸透圧の作用によって生ずる薬液保持部の水分が電解液保持部などに移動するといった現象を軽減したイオントフォレーシス用電極構造体を提供することが可能となる。
また、本発明によるイオントフォレーシス用電極構造体(非作用側)においては、
非作用側第2電解液保持部が、電気的に中性な高分子を含んでなるものとし、
非作用側第2電解液保持部が、薬物の目的送達イオン当量より2倍以上の当量の電解質を保持するものとし、または、
非作用側第1電解液保持部を硬質密閉容器内に封入して非作用側第1電解液保持部の体積が変化しないようにしたので、浸透圧の作用によって生ずる第2電解液保持部の水分が電解液保持部などに移動するといった現象を軽減したイオントフォレーシス用電極構造体を提供することが可能となる。
以下、本発明を図面に例示した好ましい具体例に基づいて説明する。
図1に示す態様は、皮膚S上に配置された、本発明の好適態様によるイオントフォレーシス用電極構造体A1の基本構造についての使用状態の模式図である。この電極構造体A1は、イオントフォレーシス装置においてイオン性薬物を経皮的に投与するための作用側電極構造体として用いられる。イオントフォレーシス用電極構造体A1は、イオン性薬物の電荷と同種の極性の電源装置に電線を介して接続される電極11と、電極11に隣接して配置された電解液を保持する電解液保持部12と、電解液保持部12に隣接して配置されたイオン性薬物と反対の極性のイオンを選択するイオン交換膜13と、イオン交換膜13に隣接して配置された、イオン性薬物を保持する薬液保持部14と、薬液保持部14に隣接して配置された、イオン性薬物と同極性のイオンを選択するイオン交換膜15とを備え、その全体はカバー16によって収容されている。
図2は、本発明の好適態様によるイオントフォレーシス用電極構造体(作用側電極構造体)A1と、電源装置Cと、イオントフォレーシス用電極構造体A1の対電極としての非作用側電極構造体B1とを備えたイオントフォレーシス装置X1が、皮膚S上に配置された状態を示す模式図である。
イオントフォレーシス用電極構造体A1は、電線を介し、電源装置Cにおけるイオン性薬物と同種の極性側に接続されている。また、非作用側電極構造体B1は、電線を介して電源装置Cにおけるイオン性薬物と反対の極性側に接続された電極21と、電極21に隣接して配置された電解液を保持する電解液保持部22と、電解液保持部22に隣接して配置されたイオン性薬物と同極性のイオンを選択するイオン交換膜23と、イオン交換膜23に隣接して配置された電解液を保持する電解液保持部24と、電解液保持部24に隣接して配置されたイオン性薬物と反対の極性のイオンを選択するイオン交換膜25とを備え、その全体はカバー26に収容されている。なお、上記非作用側電極構造体B1は、一つの好ましい態様として例示されるものであり、上記態様に限定されない。また、図2では、イオントフォレーシス用電極構造体A1が電源装置Cの+側、非作用側電極構造体B1が電源装置Cの−側に接続されているが、イオン性薬剤の極性に応じ、これが逆となることも当然あり得る。
図2のイオントフォレーシス装置X1にあっては、電源装置Cによって作用側電極構造体A1に通電した場合、イオン性薬物Dは、電場(電界)により電極の反対側(皮膚側)へ電気泳動により移動し、イオン交換膜15を介して経皮的に生体へ投与される。この際、電極側に配置されたイオン交換膜13は、イオン性薬物と反対の極性のイオンを選択するため、電解液中の陽イオンAの薬液保持部14への移動を防ぎ、一方、皮膚上に配置されたイオン交換膜15は、イオン性薬物と同極性のイオンを選択するため、皮膚から作用側電極構造体への陰イオンの移動を防ぐことによりイオン性薬物Dを効率的に放出し、皮膚Sに高い輸送効率にてイオン性薬物を投与することが可能となる。
他方、イオン性薬物Dの対イオンCは、電場(電界)により電極側へ電気泳動により移動し、イオン交換膜13を介して電解液保持部12に移動する。
これに対し、電解液保持部12中の陽イオンAは電場(電界)により電極の反対側へ電気泳動により移動するが、イオン交換膜13はAと反対の極性のイオンを選択するためAが通過できず、Aは電解液保持部12中に残留する。
非作用側電極構造体B1についても電極の極性が変わり、イオン性薬物の代わりに生体に安全な電解質イオンとなることが異なる以外は同様である。すなわち、非作用側電極構造体の皮膚側の第2電解液保持部24においては、イオン性薬物と反対の極性のイオンEがイオン交換膜25を介して皮膚に移動し、イオン性薬物と同極性のイオンFがイオン交換膜23を介して第1電解液保持部22に移動する。これに対し、非作用側電極構造体の電極側の第1電解液保持部22においては、陰イオンBは電場(電界)により電極の反対側へ電気泳動により移動するが、イオン交換膜23はBと反対の極性のイオンを選択するためBが通過できず、Bは電解液保持部22中に残留し、他方、陽イオンAは電場(電界)により電極側へ電気泳動により移動する。
このように、通電時間の経過にともない、作用側電極構造体の薬液保持部14、および非作用側電極構造体の第2電解液保持部24のイオン成分が減少し、作用側電極構造体の電解液保持部12、および非作用側電極構造体の第1電解液保持部22の成分が増加する。このため、何らの対策が採られないと、浸透圧の作用により、薬液保持部14、および非作用側電極構造体の第2電解液保持部24の水分が、作用側電極構造体の電解液保持部12、および非作用側電極構造体の第1電解液保持部22に移動し、薬液保持部14、および非作用側電極構造体の第2電解液保持部24の水分が減少してしまうことになる。本発明は、前述のような特徴を有するので、この浸透圧の作用による水分減少作用を軽減することができる。
また、イオントフォレーシス装置における好ましい通電条件としては、例えば、定電流条件、具体的には0.1〜0.5mA/cm、好ましくは0.1〜0.3mA/cm、上記定電流を実現させかつ安全な電圧条件、具体的には50V以下、好ましくは30V以下が挙げられる。
本発明においては、作用側電極構造体、非作用側電極構造体のいずれについても複数の電極構造体を含んで構成することができる。その場合、複数種類のイオン性薬物を1つの作用側電極構造体に保持させてもよい。さらに、極性の異なる複数のイオン性薬物を投与する場合には、アノード側に作用側電極構造体と非作用側電極構造体を設け、カソード側にも作用側電極構造体と非作用側電極構造体を設けることもできる。
また、複数の電極構造体を薬物投与手段として構成し、一つのパッケージに集合させて取り扱いの便宜等を図ってもよい。この場合のパッケージに用いられる材料は、イオン性薬物の投与に影響を与えない限り特に限定されず、例えば、医療機器用ポリオレフィン等が挙げられる。さらに、薬物を所定時間に所定量確実に投与するために電流制御手段を設けてもよく、この薬物投与手段、電流制御手段および電源装置を、例えば、電源装置をボタン電池とし、電流制御手段を集積回路として構成して小型化することにより、薬物投与手段と、電流制御手段と、電源装置とを一体に構成するようにしてもよい。
電極構造体に使用される電極としては、たとえば、炭素、白金のような導電性材料からなる不活性電極が好ましく用いられ得る。
電極構造体に使用される電解液保持部としては、電解液を保持する特性を有する薄膜体で構成することができる。なお、この薄膜体は、後述するイオン性薬物を保持するための薬液保持部に使用される材料と同種のものが使用可能である。電解液の機能としては、例えば、水の酸化電位より低い電解液成分と、水の還元電位より高い電解液成分を混合して用いることにより、通電中に電解液中のイオン成分が、ガス化することと水の電気分解を防ぎ、さらに、これらの電解液成分の緩衝作用により、pHの変化を防ぐことにある。電解液としては、典型的には、上記機能を発揮するものであれば、適用する薬物等の条件に応じて適宜所望のものが使用できるが、電極反応により生体の皮膚に障害を与えるものは回避すべきである。本発明において好適な電解液としては、生体の代謝回路において存在する有機酸やその塩は無害性という観点から好ましい。たとえば、乳酸、フマル酸等が好ましく、具体的には、1Mの乳酸と1Mのフマル酸ナトリウムの1:1比率の水溶液が好ましい。このような電解液は、水に対する溶解度が高く、電流をよく通すものであり、定電流で電流を流した場合、電気抵抗が低く電源装置におけるpHの変化も比較的小さいため好ましい。
本発明の作用側電極構造体の好適態様においては、電解液保持部を硬質密閉容器内に封入して電解液保持部の体積が変化しないようにすることができる。このようにすることで、電解液保持部の容積膨張を防止し、電解液保持部への水分の移動の物理的抑制が実現でき、これにより薬液保持部から電解液保持部への水分の流出を抑制することができ、結果として、浸透圧の作用による薬液保持部の水分減少を軽減することができる。
また、本発明の非作用側電極構造体の好適態様においては、第1電解液保持部を硬質密閉容器内に封入して、非作用側電極構造体の電極側の電解液保持部である第1電解液保持部の体積が変化しないようにすることができる。このようにすることで、第1電解液保持部の容積膨張を防止し、第1電解液保持部への水分の移動の物理的抑制が実現でき、これにより第2電解液保持部から第1電解液保持部への水分の流出を抑制することができ、結果として、浸透圧の作用による第2電解液保持部の水分減少を軽減することができる。
ここで、本発明において有用な硬質密閉容器は、浸透圧の作用により水分が流入しようとしても体積変化を生じないものが好ましいが、密閉容器がない場合と比べ水分流入を阻害するといえるものである限り、多少変形して体積変化をしてもよい。硬質密閉容器の材料は、電解液、酸やアルカリと反応しないものであれば、特に限定されないが、例えばポリエチレン、ポリカーボネート、ポリフェニルサルファイドが挙げられる。
薬液保持部は、イオン性薬物を保持する薄膜体により構成される。このような薄膜体としては、イオン性薬物を保持する能力が充分であり、所定の電場条件のもとで保持したイオン性薬物を皮膚側へ移行させる能力(イオン伝達性、イオン導電性)が充分であることが重要である。良好な保持特性と良好なイオン伝達性の双方を具備する材料としては、アクリル系樹脂のヒドロゲル体(アクリルヒドロゲル膜)、セグメント化ポリウレタン系ゲル膜、あるいはゲル状固体電解質形成用のイオン導電性多孔質シート等を挙げることができる(例えば特開昭11−273452に開示された、アクリロニトリルが50モル%以上、好ましくは70〜98モル%以上であり、空隙率が20〜80%であるアクリルニトリル共重合体をベースにした多孔質重合体)等を挙げることができる。また、上記のような薬液保持部においては、その保持率(乾燥時の重量をD、保持後の重量をWとして場合の100×(W−D)/D[%])は、好ましくは30〜95%である。
本発明の作用側電極構造体の好適態様においては、薬液保持部が、電気的に中性な高分子を含んでなるものとすることができる。このような高分子を含むことにより、投与時間の経過に伴い薬液保持部のイオンが流出しても、薬液保持部の浸透圧の低下を抑制することができ、結果として、浸透圧の作用による薬液保持部の水分減少を軽減することができる。ここで、本発明において薬液保持部に含有させるのに有用な、電気的に中性な高分子は、保存性があり、薬物と反応しないようなものであればよい。このような高分子としては、例えば、分子量200〜100,000を有するポリエチレングリコールが挙げられ、このうち例えば、薬物と同程度(例えば薬物分子量の1/2〜2倍)の分子量を有するものを用いてもよい。
本発明の作用側電極構造体の別の好適態様においては、薬液保持部が、薬物の目的送達量より2倍以上、好ましくは4倍以上、より好ましくは10倍以上の量の薬物を保持するものとすることができる。このようにすることにより、投与に伴い薬液保持部のイオン性薬物が流出しても、薬物の投与終了まで十分な量のイオン性薬物が薬液保持部に存在するため、薬液保持部の浸透圧の低下を抑制することができる。結果として、浸透圧の作用による薬液保持部の水分減少を軽減することができる。
本発明の非作用側電極構造体の好適態様においては、前述の薬液保持部の場合と同様に、非作用側第2電解液保持部が、電気的に中性な高分子を含んでなるものとすることができる。このような高分子を含むことにより、電流を流しながらの投与時間の経過に伴い非作用側第2電解液保持部のイオンが流出しても、非作用側第2電解液保持部の浸透圧の低下を抑制することができ、結果として、浸透圧の作用による第2電解液保持部の水分減少を軽減することができる。ここで、非作用側第2電解液保持部に含有させるのに有用な、電気的に中性な高分子は、前述の薬液保持部の場合と同様である。
本発明の非作用側電極構造体の他の好適態様においては、また、非作用側電極構造体の第2電解液保持部が、薬物の目的送達イオン当量より2倍以上、好ましくは4倍以上、より好ましくは10倍以上の当量の電解質を保持するものとすることができる。このようにすることにより、投与に伴い第2電解液保持部のイオンが流出しても、薬物の投与終了まで電解質が十分に第2電解液保持部に存在するため、第2電解液保持部の浸透圧の低下を抑制することができる。結果として、浸透圧の作用による第2電解液保持部の水分減少を軽減することができる。
電極構造体に使用されるイオン交換膜としては、カチオン交換膜とアニオン交換膜を併用することが好ましい。カチオン交換膜としては、好ましくは、(株)トクヤマ製ネオセプタ(NEOSEPTA,CM―1、CM―2、CMX、CMS、CMB)等が挙げられる。また、アニオン交換膜としては、好ましくは、(株)トクヤマ製ネオセプタ(NEOSEPTA,AM―1、AM―3、AMX、AHA、ACH、ACS)等が挙げられる。また、他の好ましい例としては、多孔質フィルムの空隙部の一部または全部に、陽イオン交換機能を有するイオン交換樹脂が充填されたイオン交換膜、または陰イオン交換機能を有するイオン交換樹脂が充填されたイオン交換膜が挙げられる。
ここで、上記イオン交換樹脂としては、パーフルオロカーボン骨格にイオン交換基が導入されたフッ素系のもの、またはフッ素化されていない樹脂を骨格とする炭化水素系のものが使用できるが、製造工程の簡便さから炭化水素系のイオン交換樹脂が好ましく用いられる。また、イオン交換樹脂の上記多孔質フィルムへの充填率は、多孔質フィルムの空隙率によって異なるが、例えば、5〜95質量%とすることができ、好ましく10〜90質量%であり、より好ましくは20〜60質量%である。
また、上記イオン交換樹脂が有するイオン交換基としては、水溶液中で負または正の電荷を有する基を生じる官能基であれば、特に限定されない。このような官能基は、遊離酸または塩の形で存在していてもよい。陽イオン交換基としては、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基等が挙げられ、好ましくはスルホン酸基である。また、陽イオン交換基の対カチオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ陽イオンやアンモニウムイオン等が挙げられる。また、陰イオン交換基としては、例えば、1〜3級アミノ基、4級アミノ基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジウム基または4級イミダゾリウム基等が挙げられ、好ましくは4級アンモニウム基または4級ピリジウム基である。また、陰イオン交換基の対カチオンとしては、塩素イオン等のハロゲンイオンやヒドロキシイオン等が挙げられる。
また、上記多孔質フィルムとしては、表裏を連通する細孔を多数有するフィルムもしくはシート状のものが特に制限されることなく使用されるが、高い強度と柔軟性を両立させるために、熱可塑性樹脂からなるものであることが好ましい。この多孔質フィルムを構成する熱可塑性樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1ペンテン、5−メチル−1−ヘプテン等のα−オレフィンの単独重合体または共重合体等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−オレフィン共重合体等の塩化ビニル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体等のフッ素系樹脂;ナイロン66等のポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂等が挙げられるが、機械的強度、柔軟性、化学的安定性、耐薬品性等を勘案すれば、好ましくはポリオレフィン樹脂であり、より好ましくはポリエチレンまたはポリプロピレンであり、さらに好ましくはポリエチレンである。
さらに、上記熱可塑性樹脂からなる多孔質フィルムの平均孔径は、好ましくは0.005〜5.0μmであり、より好ましくは0.01〜2.0μmであり、さらに好ましくは0.02〜0.2μmである。なお、上記平均孔径は、バルブポイント法(JISK3832−1990)に準拠して測定される平均流孔径を意味する。
また、多孔質フィルムの空隙率は、好ましくは20〜95%であり、より好ましくは30〜90%であり、さらに好ましくは30〜60%である。さらに、多孔質フィルムの厚みは、最終的に形成されるイオン交換膜の厚みを勘案すれば、好ましくは5〜140μmであり、より好ましくは10〜130μmであり、さらに好ましくは15〜55μmである。このような多孔質フィルムにより形成されるアニオン交換膜またはカチオン交換膜の厚さは、通常、多孔質フィルムの厚さ+0〜20μmである。
上述したように、本発明によるイオントフォレーシス用電極構造体においては、イオン性薬物を保持することを特徴とするものである。
薬物の具体例としては、以下のものが挙げられる。
正にイオン化しうるイオン性薬物としては、例えば、局所麻酔剤(塩酸プロカイン、塩酸リドカイン等)、胃腸疾患治療薬(塩化カルニチン等)、骨格筋弛緩剤(臭化バンクロニウム等)、抗生物質(テトラサイクリン系製剤、カナマイシン系製剤、ゲンタマイシン系製剤)等が挙げられる。
また、負にイオン化しうるイオン性薬物としては、ビタミン(リン酸リボフラビン、ニコチン酸、アスコルビン酸、葉酸等)、副腎皮質ホルモン(ヒドロコルチゾン系水溶性製剤、リン酸プレドニゾロンナトリウム、リン酸デキサメタゾンナトリウム等のデキサメサゾン系、プレドニソロン系水溶性製剤等)、抗菌薬(キノロン系製剤)等が挙げられる。
またイオントフォレーシスでは、イオン化可能なワクチン・アジュバントを投与することも可能である。イオン化可能なワクチンとしては、例えば、BCGワクチン、A型肝炎ワクチン、黒色腫ワクチン、麻疹ワクチン、ポリオワクチン、インフルエンザワクチン等が挙げられ、アジュバントとしては、例えば、MPL(Monophosphoryl lipid A)、DMPC(dimyristoylphosphatidylcholine)、QS-21、DDA(Dimethyldioctadecyl ammonium chloride)、RC-529等が挙げられる。
また、本発明におけるイオントフォレーシス用電極構造体に保持されるイオン性薬物は、疾患の種類、患者の状態等により適宜複数種類を組み合わせてもよい。これは、電極構造体ごとに異なるイオン性薬物を保持させることができるが、単一の電極構造体中で複数種類を組み合わせてもよい。例えば、上記ワクチンとアジュバントの組み合わせの他、降圧剤と降圧利尿剤との組み合わせとして、リシノプリルとヒドロクロロチアジド、メチルドパとヒドロクロロチアジド、塩酸クロニジンとクロルタリドン、および塩酸ベナゼプリルとヒドロクロロチアジド等が挙げられ、糖尿病薬の組み合わせとしてインスリンと塩酸メトホルミンが挙げられ、その他の組み合わせとして、塩酸オザグレルとオザグレルナトリウム、塩酸コデインと塩酸プロメタジン等が挙げられる。
イオン性薬物の量は、患者に適用した際に予め設定された有効な血中濃度を有効な時間得られるように、個々のイオン性薬物毎に決定され、薬液保持部等の大きさや厚みおよび薬物放出面の面積、電極装置における電圧、投与時間等に応じ、当業者によって設定される。
上述したような各構成材料の詳細については、本出願人に係る前記特許文献7に記載されており、本発明はこの文献に記載された内容を含めるものとする。
本発明によるイオントフォレーシス用電極構造体の概要を示す図。 本発明によるイオントフォレーシス用電極構造体を備えたイオントフォレーシス装置に通電することによって、薬物投与がなされている状況の概要を示す図。
符号の説明
X1 イオントフォレーシス装置
A1 作用側電極構造体
B1 非作用側電極構造体
C 電源装置
11、21 電極
12 作用側電解液保持部
22 非作用側第1電解液保持部
24 非作用側第2電解液保持部
13、15、23、25 イオン交換膜
14 薬液保持部
16、26 カバー
S 皮膚

Claims (8)

  1. イオン性薬物を保持するイオントフォレーシス用電極構造体であって、少なくとも電解液保持部と薬液保持部が、物質透過可能な膜を介して隣接して配置されてなり、前記薬液保持部が、電気的に中性な高分子を含んでなる、イオントフォレーシス用電極構造体。
  2. イオン性薬物を保持するイオントフォレーシス用電極構造体であって、少なくとも電解液保持部と薬液保持部が、物質透過可能な膜を介して隣接して配置されてなり、前記薬液保持部が、薬物の目的送達量より2倍以上の量の薬物を保持する、イオントフォレーシス用電極構造体。
  3. イオン性薬物を保持するイオントフォレーシス用電極構造体であって、少なくとも電解液保持部と薬液保持部が、物質透過可能な膜を介して隣接して配置されてなり、前記電解液保持部が硬質密閉容器内に封入されている、イオントフォレーシス用電極構造体。
  4. 前記イオントフォレーシス用電極構造体が、
    電極構造体中の前記イオン性薬物と同種の極性の電源装置に接続される電極と、
    該電極に隣接して配置された電解液を保持する電解液保持部と、
    該電解液保持部に隣接して配置された前記イオン性薬物と反対の極性のイオンを選択するイオン交換膜と、
    該イオン交換膜に隣接して配置された前記イオン性薬物を保持する薬液保持部と、
    該薬液保持部に隣接して配置された、前記イオン性薬物と同極性のイオンを選択するイオン交換膜、とから少なくともなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のイオントフォレーシス用電極構造体。
  5. イオン性薬物を保持するイオントフォレーシス用電極構造体の対極である非作用側イオントフォレーシス用電極構造体であって、少なくとも第1電解液保持部と第2電解液保持部が、物質透過可能な膜を介して隣接して配置されてなり、前記非作用側第2電解液保持部が、電気的に中性な高分子を含んでなる、イオントフォレーシス用電極構造体。
  6. イオン性薬物を保持するイオントフォレーシス用電極構造体の対極である非作用側イオントフォレーシス用電極構造体であって、少なくとも第1電解液保持部と第2電解液保持部が、物質透過可能な膜を介して隣接して配置されてなり、前記非作用側第2電解液保持部が、薬物の目的送達イオン当量より2倍以上の当量の電解質を保持する、イオントフォレーシス用電極構造体。
  7. イオン性薬物を保持するイオントフォレーシス用電極構造体の対極である非作用側イオントフォレーシス用電極構造体であって、少なくとも第1電解液保持部と第2電解液保持部が、物質透過可能な膜を介して隣接して配置されてなり、前記非作用側第1電解液保持部が硬質密閉容器内に封入されている、イオントフォレーシス用電極構造体。
  8. 前記非作用側イオントフォレーシス用電極構造体が、
    電極構造体中の前記イオン性薬物と反対の極性の電源装置に接続される電極と、
    該電極に隣接して配置された電解液を保持する非作用側第1電解液保持部と、
    該電解液保持部に隣接して配置された前記イオン性薬物と同極性のイオンを選択するイオン交換膜と、
    該イオン交換膜に隣接して配置された電解液を保持する非作用側第2電解液保持部と、
    該非作用側第2電解液保持部に隣接して配置された、前記イオン性薬物と反対の極性のイオンを選択するイオン交換膜、とから少なくともなる、請求項5〜7のいずれか1項に記載のイオントフォレーシス用電極構造体。
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