JP4719563B2 - イオントフォレーシス装置 - Google Patents

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Description

本発明は、イオン解離した薬剤イオンを、当該薬剤イオンと同一導電型のイオンを選択するイオン交換膜を介して投与するタイプのイオントフォレーシス装置に関し、薬剤イオンの投与効率を更に向上させることができるイオントフォレーシス装置に関する。
イオントフォレーシス装置は、一般に、プラス又はマイナスのイオンに解離した薬剤イオンを保持する作用極構造体と、作用極構造体の対極の役割を有する非作用極構造体を備えており、これら両構造体を生体(ヒト又は動物)の皮膚に当接させた状態で、作用極構造体に薬剤イオンと同一極性の電圧を印加することにより薬剤イオンが生体内に投与される。
ここで、作用極構造体に給電された電荷は、薬剤イオンの生体への移動と、生体対イオン(生体内に存在するイオンであって、薬剤イオンとは反対導電型に荷電したイオン)の作用極構造体側への放出により消費されることになるが、生体からは、分子量が小さく、従って、移動度が大きい生体対イオン(例えば、NaやClなど)が主として放出されることになるため、この生体対イオンの放出により消費される電荷量の比率が高くなり、そのために、薬剤イオンの効果的な投与が行えない問題がある。
特許文献1〜10は、このような問題を解決したイオントフォレーシス装置を開示している。
即ち、特許文献1〜10のイオントフォレーシス装置では、作用極構造体を、電極と、電極の前面側(皮膚に当接する側)に配置された薬剤保持部と、当該薬剤保持部の前面側に配置され、当該薬剤保持部に保持される薬剤イオンと同一極性のイオンを選択するイオン交換膜とから構成し、薬剤イオンがイオン交換膜を介して投与されるようにすることで、生体対イオンの放出を抑制し、薬剤イオンの投与効率の向上が図られている。
なお、特許文献1〜10に記載されるイオントフォレーシス装置では、その作用極構造体が、電極と接触を保つようにされた電解液を保持する電解液保持部、及び、薬剤イオンと反対の導電型のイオンを選択するイオン交換膜を更に備えることにより、薬剤イオンを電極部材から隔離することによる薬剤イオンの分解の阻止や電極部材において発生するHやOHイオンの薬剤保持部、ひいては、生体皮膚界面への移行の阻止などの追加的な効果をも達成している。
ところで、これら特許文献1〜10のイオントフォレーシス装置では、比較的分子量の大きい薬剤イオンの通過を容易にし、かつ、生体からの生体対イオンの放出を効果的に抑制するために、ポリオレフィン、塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂などの素材よりなる多孔質フィルムにイオン交換樹脂(イオン交換機能を付与された樹脂)を充填させたタイプのイオン交換膜が使用されるが、これらの多孔質フィルムは生体皮膚に対する親和性が低いために、薬剤イオンの投与中、イオン交換膜と生体皮膚の接触を良好な状態に保つことが難しく、作用極構造体、非作用極構造体を当接させる皮膚の部位や投与中の生体(患者)の動作などによっては、薬剤イオンの投与効率を十分なレベルに維持できない問題がある。
このため、薬剤イオンの投与中、イオン交換膜と生体皮膚の間に電解液などを介在させ、或いは更に、何らかの付勢手段により両構造体を生体皮膚に押しつけた状態に保たなければならないという不便を生じている。
同種の問題は、低周波治療器など、生体への通電が行われる他の装置においても存在するが、これらの装置では、アクリルヒドロゲルなどに電解液を含侵させた粘着剤膜を使用することにより、電極と生体との密着性、乃至、導電性の確保を達成している。
しかしながら、イオン交換膜と皮膚との間にこのような電解質を含む粘着剤膜を介在させると、イオン交換樹脂による皮膚からの生体対イオンの放出の抑制機能が低下するために、本発明が対象とするイオン交換膜を介して薬剤イオンの投与を行うイオントフォレーシス装置では、この種の粘着剤膜の使用により、薬剤の投与効率を向上させる目的を達成することはできない。
特許第3030517号公報 特開2000−229128号公報 特開2000−229129号公報 特開2000−237326号公報 特開2000−237327号公報 特開2000−237328号公報 特開2000−237329号公報 特開2000−288097号公報 特開2000−288098号公報 国際公開第03/037425号パンフレット
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、イオン交換膜を介して生体への薬剤イオンの投与を行うイオントフォレーシス装置において、薬剤の投与効率を更に向上させることをその目的とする。
また本発明は、薬剤イオンの投与中に、イオン交換膜と生体皮膚の間に電解液を介在させ、或いは、何らかの付勢手段を使用して作用極構造体、及び/又は、非作用極構造体を生体に押しつけた状態に保たなければならないなどの不便を伴うことなく、薬剤イオンの投与効率を向上させることができるイオントフォレーシス装置を提供することをもその目的とする。
本発明は、表面と裏面を連通する多数の孔を有する第1多孔質フィルムと、当該第1多孔質フィルムの前記孔内に充填されたイオン交換樹脂から形成され、第1の導電型のイオンを選択する第1イオン交換膜と、当該第1イオン交換膜の裏面側に配置され、前記第1の導電型に荷電した薬剤イオンを含む薬剤液を保持する薬剤保持部とを有する作用極構造体を備え、作用極構造体に印加される第1の導電型の電圧により前記第1イオン交換膜を介して前記薬剤イオンの投与が行われるイオントフォレーシス装置を前提とするものであり、当該第1多孔質フィルムの表面に、第1多孔質フィルムを構成する物質に化学的に結合した水溶性高分子化合物の第1の層を形成することにより、上記の問題を解決し、薬剤の投与効率の向上を達成したものである。
本発明により薬剤の投与効率が顕著に向上するメカニズムは必ずしも明確にされている訳ではないが、第1多孔質フィルムの表面に化学的に結合させた水溶性高分子化合物がイオン交換膜の生体皮膚に対する親和性をある程度改善し、また、水溶性高分子化合物の第1の層に薬剤保持部から滲出した水分の層が保持されて、イオン交換樹脂と皮膚の間の導電性が向上することに加え、多孔質フィルムの表面に化学的に結合させた水溶性高分子化合物の第1の層は、その水溶性高分子化合物1分子か、せいぜい数十分子程度の厚みであるために、この層がイオン交換膜と皮膚との接触の実質的な妨げとはならず、水溶性高分子化合物の層が存在しない場合と同様に、イオン交換膜を介して薬剤イオンの投与を行うタイプのイオントフォレーシス装置が具備する本来の作用、即ち、イオン交換膜から皮膚への薬剤イオンの移行は可能である一方で、皮膚からの生体対イオンの流出はイオン交換膜により阻止される作用は、そのまま保持されることなどが寄与しているものと考えられる。
また、本発明のイオントフォレーシス装置は、上記作用極構造体の対極の構造体(作用極構造体と逆導電型の電圧が印加される、又は、グランドに接続される構造体)として、表面と裏面を連通する多数の孔を有する第2多孔質フィルムと、当該第2多孔質フィルムのこれらの孔内に充填されたイオン交換樹脂から形成され、第1の導電型と反対の導電型である第2の導電型のイオンを選択する第2イオン交換膜と、当該第2イオン交換膜の裏面側に配置され、電解液を保持する電解液保持部とを有する非作用極構造体を更に備えるものとし、当該第2多孔質フィルムの表面にも化学的に結合した水溶性高分子化合物の第1の層を形成することが可能であり、これにより、非作用極構造体においても、上記と同様の皮膚との密着性、乃至、導通性の向上の効果が達成され、薬剤の投与効率の更なる向上が図られることになる。
ここで、本発明における水溶性高分子化合物は、水に容易に溶解する例えば分子量50〜1000程度の高分子化合物であり、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリアクリルアミド、ポリ−N−メチルアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリメタアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリ−N−ジメチルアミノエチルメタアクリレート、ポリペプチドなどが特に好適に使用することができる。
また、多孔質フィルムとしては、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂が好適に使用されるが、このような多孔質フィルムと上述の各水溶性高分子化合物の化学的な結合(共有結合)は、その水溶性高分子化合物を溶解した水溶液中に多孔質フィルムを浸漬した状態で、紫外線、電子線、γ線、又は、プラズマを照射することにより形成することが可能である。
また、上に例示した各水溶性高分子化合物は、直鎖状の構造を有しているが、これらの水溶性高分子化合物を多孔質フィルムの表面に化学的に結合させる際の反応条件を適切に制御することで、水溶性高分子化合物を多孔質フィルムの表面にブラシ状に結合させることが可能であり、これにより、薬剤の投与効率を特に顕著に向上させることが可能であり、同様に、その反応条件を適切に制御することにより、水溶性高分子化合物を多孔質フィルムの表面に層状に結合させることも可能であり、この場合も、水溶性高分子化合物をブラシ状に結合させた場合に準じる程度で薬剤の投与効率を向上させることができる。
なお、多孔質フィルムの表面に水溶性高分子化合物を化学的に結合させる処理は、多孔質フィルムにイオン交換樹脂を充填させる前後、或いは、イオン交換樹脂にイオン交換基を導入する処理の前後のいずれのタイミングにおいて行うことも可能であるが、多孔質フィルムの孔壁への水溶性高分子化合物の付着を防止する必要からは、イオン交換樹脂の充填後に行うことが好ましく、イオン交換樹脂上に付着した水溶性高分子化合物が皮膚からの生体対イオンの放出を抑制する機能を阻害する懸念を生じない意味では、イオン交換樹脂の充填前に行うことが好ましい。
また、このような水溶性高分子化合物の第1の層は、必ずしも多孔質フィルムの表面のみに形成することは必要ではなく、多孔質フィルムの表面、及び、裏面の双方に水溶性高分子化合物の第1の層を形成しても特段の差し支えはない。
また、本発明では、多孔質フィルムの表面に化学的に結合させた水溶性高分子化合物の第1の層の上に、更に、水溶性高分子化合物の第2の層を形成することも可能である。
この第2の層は、薬剤イオンの投与に際しては、薬剤保持部から滲出する水分(或いは、必要により外部から補給される水分)を吸収して流動化するために、作用極構造体、及び/又は、非作用極構造体を皮膚に当接させることにより、皮膚の凸部とイオン交換樹脂の間の水溶性高分子化合物が、皮膚の凹部とイオン交換樹脂の間に形成される空間に移動し、作用極構造体、及び/又は、非作用極構造体と皮膚の密着性を一層向上させることになる。
なお、この第2の層は、使用時における上記の流動性を十分なものとするために、多孔質フィルムやイオン交換樹脂、水溶性高分子化合物と化学的な結合を生じない態様で形成することが好ましく、例えば、スピンコートやバーコートなどによる塗布、或いは、多孔質フィルムの水溶性高分子化合物の水溶液への浸漬などにより形成することが好ましい。
また、この第2の層を構成する水溶性高分子化合物としては、上記と同様、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリアクリルアミド、ポリ−N−メチルアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリメタアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリ−N−ジメチルアミノエチルメタアクリレート、ポリペプチドなど、水に容易に溶解する例えば分子量1000〜1000000程度の高分子化合物を特に制限無く使用することができる。
本発明によれば、皮膚からの生体対イオンの放出を最小限に押さえつつ、作用極構造体、及び/又は、非作用極構造体と生体皮膚との密着性、乃至、導電性を向上させ、薬剤イオンの生体への投与効率を向上させることができる。
また、上記作用効果が達成される結果、作用極構造体、及び/又は、非作用極構造体と生体皮膚の間に電解液などを介在させなくとも、或いは、作用極構造体、及び/又は、非作用極構造体を当接させる生体の部位などによっては、作用極構造体、及び/又は、非作用極構造体を生体に押しつけた状態を保つための付勢手段を使用しなくとも、高い投与効率をもって安定的に薬剤イオンを生体に投与することができるイオントフォレーシス装置を実現することができる。
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明に係るイオントフォレーシス装置X1の基本構成を示す概略断面図である。
なお、以下では、説明の便宜上、薬効成分がマイナスのイオンに解離する薬剤(例えば、ビタミン剤であるアスコルビン酸やワクチン用のアジュバントとして使用されるリピドAなど)を投与するためのイオントフォレーシス装置を例として説明するが、薬効成分がプラスのイオンに解離する薬剤(例えば、麻酔薬であるリドカイン、胃腸疾患治療薬である塩化カルチニン、骨格筋弛緩剤である臭化バンクロニウム、麻酔薬である塩酸モルヒネなど)を投与するためのイオントフォレーシス装置の場合は、以下の説明における電源、各電極部材、各イオン交換膜の極性(プラスとマイナス)が逆転することになる。
図示されるように、本発明のイオントフォレーシス装置X1は、大きな構成要素(部材)として、作用極構造体1、非作用極構造体2、及び、電源3を備えている。なお、参照符号4は皮膚(又は粘膜)を示している。
作用極構造体1は、電源3のマイナス極に接続された電極部材11、当該電極部材11と接触を保つようにされた電解液保持部12、当該電解液保持部12の前面に配置されたカチオン交換膜13、当該カチオン交換膜13の前面に配置された薬剤保持部14、当該薬剤保持部14の前面に配置されたアニオン交換膜15を備え、その全体が樹脂フィルム、プラスチックなどの材料で構成されるカバー、乃至、容器16に収容されている。
一方、非作用極構造体2は、電源3のプラス極に接続された電極部材21、当該電極部材21と接触を保つようにされた電解液保持部22、当該電解液保持部22の前面に配置されたアニオン交換膜23、当該アニオン交換膜23の前面に配置された電解液保持部24、当該電解液保持部24の前面に配置されたカチオン交換膜25を備え、その全体が樹脂フィルム、プラスチックなどの材料で構成されるカバー、乃至、容器26に収容されている。
このイオントフォレーシス装置X1において、電極部材11、21は、任意の導電性材料よりなる電極が特に制限無く使用できるが、特に、炭素、白金などから構成される不活性電極が好ましく使用でき、金属イオンの溶出、及び、その生体への移行の懸念を有さない炭素電極が特に好ましく使用できる。
しかしながら、この電極部材11を塩化銀、電極部材21を銀から構成される銀/塩化銀カップル電極とするなど、活性電極を採用することも可能である。
例えば、銀/塩化銀カップル電極を用いた場合、アノード(プラス極)である電極部材21においては銀電極と塩素イオン(Cl)は容易に反応し、AgCl→AgCl+eにより不溶性のAgClが生成し、カソード(マイナス極)である電極部材11においては塩化銀電極から塩素イオン(Cl)が溶出する反応が生じる結果、水の電気分解反応が抑止され、アノードでのH+イオンに基づく急激な酸性化、及びカソードでのOHイオンに基づく急激なアルカリ性化が防止できるという効果を得ることができる。
これに対して、図1のイオントフォレーシス装置X1における作用極構造体1、非作用極構造体2においては、アニオン交換膜、及び/又は、カチオン交換膜の作用により、電解液保持部12におけるOHイオンに基づく急激なアルカリ性化、乃至、電解液保持部22におけるH+イオンに基づく急激な酸性化が抑制されるため、銀/塩化銀カップル電極などの活性電極に代えて、安価で、かつ、金属イオン溶出の懸念が不要となる炭素電極を好適に使用することができる。
また、図1のイオントフォレーシス装置X1における電解液保持部12、22、24は、通電性を確保するための電解液を保持するものであり、この電解液としては、リン酸緩衝食塩水、生理食塩水などが典型的に使用される。
また、電解液保持部12、22には、水の電解反応によるガスの発生やこれによる導電抵抗の増大、或いは、水の電解反応によるpH変化をより効果的に防止するために、水の電解反応(プラス極での酸化及びマイナス極での還元)よりも酸化または還元されやすい化合物を添加することが可能であり、生体安全性、経済性(安価かつ入手の容易性)の観点からは、例えば、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄などの無機化合物、アスコルビン酸(ビタミンC)やアスコルビン酸ナトリウムなどの医薬剤、乳酸などの皮膚面に存在する酸性化合物、あるいはシュウ酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸などの有機酸及び/又はその塩などを好ましく使用することができ、或いは、例えば、1モル(M)乳酸と1モル(M)フマル酸ナトリウムの1:1混合水溶液など、これらを組み合わせて使用することもできる。
なお、電解液保持部12については、後述の薬剤保持部14中に保持される薬剤液との混合による組成変化を避けるため、薬剤保持部14に保持される薬剤液と同一組成の薬剤液を使用することも可能である。
また、電解液保持部22、24についても、両電解液保持部22中の電解液の混合による組成変化を避けるため、双方に同一組成の電解液を使用することが可能である。
また、これら電解液保持部12、22、24は、上記のような電解液を液体状態で保持するものとしても構わないが、高分子材料などで形成された吸水性の薄膜体に上記のような電解液を含浸させて構成することにより、その取り扱い性等を向上させることも可能である。なお、ここで使用される薄膜体としては、薬剤保持部14において使用可能な薄膜体と同様のものが使用可能であるため、以下の薬剤保持部14に関する説明において併せてその詳細を説明する。
本実施形態に係るイオントフォレーシス装置X1における薬剤保持部14には、薬剤液として、少なくとも、溶解することにより薬効成分がマイナスのイオンに解離する薬剤(例えば、アスコルビン酸)の水溶液が保持される。
ここで、薬剤保持部14は、薬剤液を液体状態で保持するものとしても構わないが、下記のような吸水性の薄膜体に薬剤液を含浸保持させることで、その取り扱い性等を向上させることも可能である。
この場合の吸水性の薄膜体として使用できる材料としては、例えば、アクリル系樹脂のヒドロゲル体(アクリルヒドロゲル膜)、セグメント化ポリウレタン系ゲル膜、ゲル状固体電解質形成用のイオン導電性多孔質シートなどを使用することができ、上記水溶液を20〜60%の含浸率で含浸させることにより、高い輸率(高いドラッグデリバリー性)、例えば、70〜80%を得ることができる。
なお、本明細書における含浸率は重量%であって、乾燥時の重量をD、含浸後の重量をWとしたときの100×(W−D)/D[%]である。また、含浸率の測定は、水溶液の含浸直後に測定すべきであり、経時的影響を排除すべきである。
また、本明細書における輸率は、作用極構造体に給電される全電流のうち薬剤イオンの移動に寄与する電流の割合である。輸率の測定も、薬剤液を含浸させた薄膜体をイオン交換膜13、15の間に介在させて他の構成部材を組立て、極力、経時的変化が生じないようにして測定すべきである。
ここで、上記アクリルヒドロゲル膜(例えば、(株)サンコンタクトレンズ社から入手できる)は、三次元網目構造(架橋構造)を持ったゲル体であり、これに分散媒である電解液を添加したものは、イオン導電性を有する高分子吸着材となる。また、アクリルヒドロゲル膜の含浸率と輸率の関係は、三次元網目構造の大きさや樹脂を構成するモノマーの種類や比率によって調製可能であり、上記した含浸率30〜40%、輸率70〜80%のアクリルヒドロゲル膜は、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとエチレングリコールジメタクリレート(モノマー比98〜99.5:0.5〜2)から調製することができ、通常の厚さ0.1〜1mmの範囲では上記含浸率及び輸率は殆ど同じであることが確認されている。
また、セグメント化ポリウレタン系ゲル膜は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)をセグメントとして有し、これらを構成するモノマーとジイソシアネートとにより調整することができる。セグメント化ポリウレタン系ゲル膜は、ウレタン結合によって架橋された三次元構造を有し、このものの含浸率と輸率、粘着力の強さは、前記アクリルヒドロゲル膜と同様にネットワークの網目の大きさ及びモノマーの種類や比率をコントロールすることにより容易に調製可能である。このセグメント化ポリウレタン系ゲル膜(多孔質ゲル膜)に分散媒である水と電解質(アルカリ金属塩など)を添加したものは、セグメントを形成するポリエーテルのエーテル結合部の酸素とアルカリ金属塩がコンプレックスを形成し、電気を流したとき金属塩のイオンは次の空白のエーテル結合部の酸素に移動し、通電性が発現される。
ゲル状固体電解質形成用のイオン導電性多孔質シートとしては、例えば、特開昭11−273452に開示されたものがあり、このものは、アクリルニトリル共重合体をベースとし、空隙率20〜80%の多孔質重合体がベースとなっている。より具体的には、アクリロニトリルが50モル%以上(好ましくは70〜98モル%)、空隙率が20〜80%のアクリロニトリル系共重合体である。なお、前記アクリロニトリル系のゲル状固体電解シート(固体電池)は非水溶媒に可溶であり、空隙率20〜80%のアクリロニトリル系共重合体シートに電解質を含む非水溶媒を含浸し、ゲル化して調整され、ゲル体はゲル状から硬質の膜状のものまでを含むものである。
前記非水溶媒に可溶なアクリロニトリル系共重合体シートは、イオン導電性、安全性などの観点から、好ましくはアクリロニトリル/C1〜C4アルキル(メタ)アクリレート共重合体、アクリロニトリル/酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/塩化ビニリデン共重合体などで構成される。なお、前記共重合体シートを多孔質シートにするには、湿(乾)式抄紙法、不織布製造法の一種であるニードルパンチ法、ウォータージェット法、溶融押出しシートの延伸多孔化や溶媒抽出による多孔化などの常法が採用される。本発明において、前記した固体電池に使用されるアクリロニトリル系共重合体のイオン導電性多孔質シートのうち、高分子鎖の三次元ネットワークの中に前記水溶液を保持し、前記した含浸率と輸率が達成されるゲル体(ゲル状体から硬質の膜状体)は、本発明の薬剤保持部14、或いは、電解液保持部12、22、24に使用する薄膜体として有用なものである。
本発明において、上記のような薄膜体に薬剤液、又は、電解液を含浸させる条件は、含浸量、含浸速度などの観点から最適条件を決めればよい。例えば40℃で30分という含浸条件を選べばよい。
また、本実施形態に係るイオントフォレーシス装置X1では、多孔質フィルムの孔の一部または全部に、陽イオン交換機能を有するイオン交換樹脂が充填されたイオン交換膜をカチオン交換膜13、25として、また、陰イオン交換機能を有するイオン交換樹脂が充填されたイオン交換膜をアニオン交換膜15、23として使用することができ、例えば、(株)トクヤマ製ネオセプタ(NEOSEPTA,CM−1、CM−2、CMX、CMS、CMB、CLE04−2など)をカチオン交換膜13、15として、(株)トクヤマ製ネオセプタ(NEOSEPTA,AM−1、AM−3、AMX、AHA、ACH、ACS、ALE04−2、AIP−21など)をイオン交換膜15、23として使用することができる。
ここで、上記イオン交換樹脂としては、パーフルオロカーボン骨格にイオン交換基が導入されたフッ素系のもの、又は、フッ素化されていない樹脂を骨格とする炭化水素系のものが使用できるが、製造工程の簡便さから炭化水素系のイオン交換樹脂が好ましく、また、イオン交換樹脂の充填率は、多孔質フィルムの空隙率とも関係するが、一般的には5〜95質量%であり、特に、10〜90質量%、更には、20〜60質量%とすることが好ましい。
また、上記イオン交換樹脂が有するイオン交換基としては、水溶液中で負又は正の電荷を有する基を生じる官能基であれば特に限定されない。このようなイオン交換基となり得る官能基を具体的に例示すれば、陽イオン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基等が挙げられる。また、これらの酸基は、遊離酸として或いは塩の形で存在していてもよい。塩の場合の対カチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属陽イオンや、アンモニウムイオン等が挙げられる。これらの陽イオン交換基の中でも、一般的に、強酸性基であるスルホン酸基が特に好ましい。また、陰イオン交換基としては、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウム基、4級イミダゾリウム基等が挙げられる。これら陰イオン交換基における対アニオンとしては、塩素イオン等のハロゲンイオンやヒドロキシイオン等が挙げられる。これら陰イオン交換基のなかでも、一般的に、強塩基性基である4級アンモニウム基や4級ピリジニウム基が好適に用いられる。
また、上記多孔質フィルムには、押し出し、カレンダー加工などにより形成される単一体としてのフィルム内に、上記イオン交換樹脂を担持可能な連続気泡構造の孔が形成されたものや、繊維状素材の織布又は不織布より形成されるフィルムであって、繊維と繊維の間隙から形成される孔内に上記イオン交換樹脂が担持されるものなど、表裏を連通する多数の孔を有するフィルム乃至シートが特に制限されることなく使用されるが、高い強度と柔軟性を両立させるために、熱可塑性樹脂からなるものであることが好ましい。
この多孔質フィルムを構成する熱可塑性樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘプテン等のα−オレフィンの単独重合体または共重合体等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−オレフィン共重合体等の塩化ビニル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体等のフッ素系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂等からなるものが制限なく使用されるが、機械的強度、柔軟性、化学的安定性、耐薬品性に優れ、イオン交換樹脂との馴染みがよいことからポリオレフィン樹脂を用いるのが好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンが特に好ましく、ポリエチレンが最も好ましい。
上記熱可塑性樹脂からなる多孔質フィルムの性状は、特に限定されないが、薄くかつ強度に優れ、さらに電気抵抗も低いイオン交換膜としやすい点で、孔の平均孔径が、好ましくは0.005〜5.0μm、より好ましくは0.01〜2.0μm、最も好ましくは0.02〜0.2μmであるのがよい。なお、上記平均孔径は、バブルポイント法(JIS K3832−1990)に準拠して測定される平均流孔径を意味する。同様に、多孔質フィルムの空隙率は、好ましくは20〜95%、より好ましくは30〜90%、最も好ましくは30〜60%であるのがよい。さらに、多孔質フィルムの厚みは、好ましくは5〜140μm、より好ましくは10〜120μm、最も好ましくは15〜55μmであるのがよい。通常、このような多孔質フィルムを使用したアニオン交換膜、カチオン交換膜は、多孔質フィルムの厚さ+0〜20μm程度の厚さになる。
また、アニオン交換膜15、及び、カチオン交換膜25に使用される多孔質フィルムについては、その表面(皮膚4に対向する側の面)に、上記イオン交換樹脂の充填、又は、イオン交換基の導入がなされる前、又は、後の段階で、水溶性高分子化合物を化学的に結合させることにより水溶性高分子化合物の第1の層を形成する処理が行われる。
この水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリアクリルアミド、ポリ−N−メチルアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリメタアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリ−N−ジメチルアミノエチルメタアクリレート、ポリペプチドなどの水に容易に溶解する例えば分子量50〜1000程度の高分子化合物を使用することができ、これらの水溶性高分子化合物を溶解させた水溶液中に多孔質フィルムを浸漬した状態で、紫外線、電子線、γ線、或いは、プラズマを照射することにより、水溶性高分子化合物を多孔質フィルムの表面に化学的に結合させることができる。
また、上記水溶性高分子化合物は、いずれも、直鎖状の構造を有しており、上記処理における水溶性高分子化合物の濃度や温度、或いは、紫外線、電子線、γ線、又は、プラズマの照射量などの反応条件を適切に制御することにより、水溶性高分子化合物を多孔質フィルムの表面にブラシ状に結合させることが可能であり、反応条件によっては、この第1の層を、水溶性高分子化合物の単一分子が多孔質フィルムの表面にブラシ状に結合した状態、或いは、複数(数個〜数十個程度)の水溶性高分子化合物が鎖長方向に連なって多孔質フィルムの表面にブラシ状に結合した状態で形成することが可能である。
また、このアニオン交換膜15、及び、カチオン交換膜25には、上記のようにして形成された水溶性高分子化合物の第1の層の上に、更に、水溶性高分子化合物よりなる第2の層を積層させた多孔質フィルムを使用することも可能である。
この第2の層に使用される水溶性高分子化合物も、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリアクリルアミド、ポリ−N−メチルアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリメタアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリ−N−ジメチルアミノエチルメタアクリレート、ポリペプチドなどの水に容易に溶解する例えば分子量1000〜1000000程度の高分子化合物を使用することができ、この第2の層の形成は、例えば、スピンコートやバーコートなどの定法により適度の濃度に薄められたこれら水溶性高分子化合物の水溶液を塗布乾燥することにより行うことができる。
なお、水溶性高分子化合物よりなる第2の層の膜厚は、1〜200μmの範囲とすることが好ましい。
図2は、表面にブラシ状に結合させた水溶性高分子化合物の第1の層M1を有する多孔質フィルム15aを用いたイオン交換膜15が、凹部4aや凸部4bを有する皮膚4に接触している状況を示す概念説明図である。
図示されるように、このようなイオン交換膜15を作用極構造体1に使用した場合、多孔質フィルム15aの表面にブラシ状に結合した水溶性高分子化合物の第1の層M1の存在により、皮膚4との接触面積が増加し、また、多孔質フィルム15aの開口15bから滲出する薬剤保持部14の水分が第1の層M1に保持されることにより、皮膚4とイオン交換膜15の密着度、乃至、導電性が向上することが期待される。
同時に、多孔質フィルム15aの開口15bに近接する皮膚の凸部4bなどの部分では、イオン交換膜を介して薬剤イオンの投与を行うタイプのイオントフォレーシス装置が具備する本来の作用、即ち、多孔質フィルム15aの孔に充填されたイオン交換樹脂15cから薬剤イオンが皮膚4内に移行する一方で、皮膚4からの生体対イオンの放出がイオン交換樹脂15cにより抑止される作用は、そのまま保持される。
また、皮膚の凹部4aにおいては、開口15bから滲出した水分の層が形成され、その結果、皮膚4とイオン交換膜15の密着度、乃至、導電性の向上の効果が期待される一方で、皮膚4から水分の層への生体対イオンの放出により作用極構造体に給電された電荷の一部が消費されることになると考えられるが、このような水分の層の体積は極く小さいものであるために、これにより消費される電荷量も無視できる程度になると考えられる。
図3(a)は、図2と同様の水溶性高分子化合物の第1の層M1の上に、更に、水溶性高分子化合物よりなる第2の層M2を形成した多孔質フィルム15aを用いたイオン交換膜15を示す概念説明図であり、図3(b)は、同イオン交換膜15が、凹部4aや凸部4bを有する皮膚4に接触している状況を示す概念説明図である。
図3(a)に示すように、第2の層M2は、第1の層M1上にある厚みをもって形成されるが、第2の層M2は、開口15bから滲出する水分により、容易に流動し得る状態となっており、イオン交換膜15を皮膚4に当接させた場合には、図3(b)に示すように、皮膚の凸部4bとイオン交換膜15の間の水溶性高分子化合物が皮膚の凹部4aとイオン交換膜15の間の空間に移動する。
このため、イオン交換膜15と皮膚4の密着性、乃至、導電性は一層良好なものとなり、その一方、皮膚の凸部4bとイオン交換膜15の間には、第2の層M2は全く存在しなくなるか、或いは、極く薄い膜となって存在することになるため、多孔質フィルム15aの開口15bに近接する皮膚の凸部4bでは、イオン交換膜を介して薬剤イオンの投与を行うタイプのイオントフォレーシス装置が具備する本来の作用、即ち、イオン交換樹脂15cからの薬剤イオンが皮膚4内に移行する一方で、皮膚4からの生体対イオンの放出がイオン交換樹脂15cにより抑止される作用ははそのまま保持されることになる。
また、非作用極構造体2のイオン交換膜25についても、上記と同様にして表面にブラシ状に結合させた水溶性高分子化合物の第1の層、或いは、更にその上に積層された水溶性高分子化合物の第2の層を有する多孔質フィルムを使用することが可能であり、上記と同様に、イオン交換膜25と皮膚4との間での密着性、乃至、導電性の向上の効果を得ることができる。
本発明のイオントフォレーシス装置における電源3としては、電池、定電圧装置、定電流装置(ガルバノ装置)、定電圧・定電流装置などを使用することができるが、0.01〜1.0mA、好ましくは、0.01〜0.5mAの範囲で任意電流調整が可能な、安全な電圧条件、具体的には、50V以下、好ましくは、30V以下で動作する定電流装置を使用することが好ましい。
図4、図5は、他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置X2、X3の構成を示す説明図である。
図4のイオントフォレーシス装置X2は、その非作用極構造体2が、イオン交換膜23、及び、電解液保持部24を有さず、図5のイオントフォレーシス装置X3は、その非作用極構造体2が、イオン交換膜23、25、及び、電解液保持部24を有さないない点を除いて図1に示すイオントフォレーシス装置X1と同一の構成を有しており、非作用極構造体2の皮膚4との当接面におけるpH変化の抑制性能においてイオントフォレーシス装置X1に及ばない点はあるものの、その他の点においてはイオントフォレーシス装置X1と同等の性能を発揮し、特に、アニオン交換膜15、及び/又は、カチオン交換膜25がその表面に水溶性高分子化合物の第1の層M1、或いは、更に第2の層M2を備えているために、従来のイオントフォレーシス装置に比較して、薬剤イオンを高い効率で安定的に投与できるという本発明に特有の作用効果を発揮する。
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲において、種々の改変が可能である。
例えば、上記実施形態では、作用極構造体1が電極部材11、薬剤保持部14、及び、イオン交換膜15に加えて、電解液保持部12、及び、イオン交換膜13を備える場合について説明したが、これら電解液保持部12、イオン交換膜13は省略することも可能であり、その場合には、薬剤の電極部材11近傍での分解の抑制機能やHイオンやOHイオンの皮膚界面への移動、及び、それによる皮膚界面におけるpHの変動の抑制機能などにおいて上記した実施形態に及ばない点はあるものの、本発明の基本的な作用効果である薬剤イオンの生体への投与効率の向上は同様に達成されるのであり、そのようなイオントフォレーシス装置も本発明の範囲に含まれる。
同様に、非作用極構造体2では、電解液保持部22、24、イオン交換膜23、25を省略し、例えば、電解液を塗布した皮膚上に非作用極構造体2の電極部材21を直接当接させて薬剤の投与を行うようにすること、更には、イオントフォレーシス装置そのものには非作用極構造体2を設けずに、例えば、生体皮膚に作用極構造体1を当接させる一方、アースとなる部材にその生体の一部を当接させた状態で作用極構造体1に電圧を印加して薬剤の投与を行うようにすることも可能であり、この場合には、電極部材21、或いは、アースとなる部材と皮膚との界面におけるpH変化の抑制性能などにおいて上記した実施形態に及ばない点はあるものの、本発明の基本的な作用効果である薬剤イオンの生体への投与効率の向上は同様に達成されるのであり、そのようなイオントフォレーシス装置も本発明の範囲に含まれる。
また、上記実施形態では、作用極構造体1、非作用極構造体、電源3がそれぞれ別体として構成されている場合について説明したが、これらの要素を単一のケーシング中に組み込み、或いは、これらを組み込んだ装置全体をシート状、乃至、パッチ状に形成して、その取扱性を向上させることも可能であり、そのようなイオントフォレーシス装置も本発明の範囲に含まれる。
本発明の一実施形態に係るイオントフォレーシス装置の基本構成を示す概略断面図である。 本発明のイオントフォレーシス装置に使用されるイオン交換膜が、皮膚に接触している状況を模式的に示す概念説明図である。 (a)は、本発明のイオントフォレーシス装置に使用されるイオン交換膜を模式的に示す概念説明図であり、(b)は、同イオン交換膜が、皮膚に接触している状況を模式的に示す概念説明図である。 本発明の他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置の構成を示す説明図である。 本発明の他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置の構成を示す説明図である。
符号の説明
1 作用極構造体
2 非作用極構造体
3 電源
4 皮膚
11、21 電極部材
12、22、24 電解液保持部
13、25 カチオン交換膜
14 薬剤保持部
15、23 アニオン交換膜
15a 多孔質フィルム
15b 開口
15c イオン交換樹脂
M1 第1の層
M2 第2の層

Claims (7)

  1. 表面と裏面を連通する多数の孔を有する第1多孔質フィルムと、当該第1多孔質フィルムの前記孔内に充填されたイオン交換樹脂から形成され、第1の導電型のイオンを選択する第1イオン交換膜と、当該第1イオン交換膜の裏面側に配置され、前記第1の導電型に荷電した薬剤イオンを含む薬剤液を保持する薬剤保持部とを有する作用極構造体を備え、前記第1イオン交換膜を介して前記薬剤イオンの投与が行われるイオントフォレーシス装置であって、
    前記第1多孔質フィルムの前記表面には、当該第1多孔質フィルムを構成する物質に化学的に結合した水溶性高分子化合物の第1の層が形成されていることを特徴とするイオントフォレーシス装置。
  2. 表面と裏面を連通する多数の孔を有する第2多孔質フィルムと、当該第2多孔質フィルムの前記孔内に充填されたイオン交換樹脂から形成され、前記第1の導電型と反対の導電型である第2の導電型のイオンを選択する第2イオン交換膜と、当該第2イオン交換膜の裏面側に配置され、電解液を保持する第1電解液保持部とを有し、前記作用極構造体の対極として動作する非作用極構造体を更に備え、
    前記第2多孔質フィルムの前記表面には、当該第2多孔質フィルムを構成する物質に化学的に結合した水溶性高分子化合物の第1の層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のイオントフォレーシス装置。
  3. 前記作用極構造体が、前記第1の導電型の電圧を印加される第1電極部材と、前記第1電極部材と電気的な接触を保つようにされた電解液を保持する第2電解液保持部と、当該第2電解液保持部の前面側に配置され、前記第2の導電型のイオンを選択する第3イオン交換膜とを更に備えており、
    前記薬剤保持部が前記第3イオン交換膜の前面側に配置され、
    前記第1イオン交換膜が前記薬剤保持部の前面側に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のイオントフォレーシス装置。
  4. 前記第1の層を構成する水溶性高分子化合物は、直鎖状の構造を有しているとともに、前記第1多孔質フィルム、又は、前記第2多孔質フィルムの前記表面にブラシ状に結合していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のイオントフォレーシス装置。
  5. 前記第1の層は、水溶性高分子化合物を溶解した水溶液中に、前記第1多孔質フィルム、又は、前記第2多孔質フィルムを浸漬した状態で、紫外線、電子線、γ線、又は、プラズマを照射することにより形成されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のイオントフォレーシス装置。
  6. 前記第1多孔質フィルム、又は、前記第2多孔質フィルムの前記表面には、前記水溶性高分子化合物の第1の層上に積層された水溶性高分子化合物よりなる第2の層を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のイオントフォレーシス装置。
  7. 前記第1の層、及び/又は、前記第2の層を形成する水溶性高分子化合物が、ポリビニルアルコール、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリアクリルアミド、ポリ−N−メチルアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリメタアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリ−N−ジメチルアミノエチルメタアクリレート、又は、ポリペプチド、又は、これらの混合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のイオントフォレーシス装置。
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