JP2007244700A - イオントフォレーシス装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】作用側構造体、非作用側構造体及び電源の機能が組み込まれた単一のシート状の形態をなすイオントフォレーシス装置を提供する。
【解決手段】所定の方向(X方向)に離間された支持体30の上下面において開口する2つの空孔h1、h2が形成される第1領域と、第1領域の略中央部からX方向に略垂直な方向(Y方向)に延びる第2領域とを有する平板状の支持体30と、支持体30の第2領域の上面側に配置される電池40と、第1、第2空孔h1、h2の全体及び電池40の全体を被覆する回路板50とを備えるイオントフォレーシス装置において、第1、第2空孔h1、h2にそれぞれ電解液を保持し、電池40の両端子を第1、第2空孔h1、h2の電解液にそれぞれ電気的に接続する導電パターンを回路板50に形成する。
【選択図】図3
【解決手段】所定の方向(X方向)に離間された支持体30の上下面において開口する2つの空孔h1、h2が形成される第1領域と、第1領域の略中央部からX方向に略垂直な方向(Y方向)に延びる第2領域とを有する平板状の支持体30と、支持体30の第2領域の上面側に配置される電池40と、第1、第2空孔h1、h2の全体及び電池40の全体を被覆する回路板50とを備えるイオントフォレーシス装置において、第1、第2空孔h1、h2にそれぞれ電解液を保持し、電池40の両端子を第1、第2空孔h1、h2の電解液にそれぞれ電気的に接続する導電パターンを回路板50に形成する。
【選択図】図3
Description
本発明は、電圧の作用により薬物イオンを生体に投与するイオントフォレーシス装置に関し、製造の容易性や生体への適用の際のハンドリング性等に優れるイオントフォレーシス装置に関する。
イオントフォレーシス装置は一般に、薬効成分がプラス又はマイナスのイオン(薬物イオン)に解離する薬液を保持する作用側構造体と、作用側構造体の対極の役割を有する非作用側構造体を備えており、これら両構造体を生体の皮膚に当接させた状態で、作用側構造体に薬物イオンと同一極性の電圧を印加することにより薬物イオンの投与を行うものである。
図7は、一般的なイオントフォレーシス装置101の構成を示す説明図である。
図示されるように、イオントフォレーシス装置101は、電極111及び薬物イオンを含む薬液を保持する薬液保持部112から構成される作用側構造体110と、電極121及び電解液を保持する電解液保持部122から構成される非作用側構造体120を備えており、これら作用側構造体110及び非作用側構造体120を生体皮膚Sに当接させた状態で、電源140から薬物イオンと同一極性の電圧を電極111に、その反対極性の電圧を電極121に印加することにより薬液保持部112の薬物イオンが生体に投与される。
イオントフォレーシス装置101では、作用側構造体110、非作用側構造体120及び電源140がそれぞれ別体として構成されているが、これらの要素の全てが組み込まれたシート状又はパッチ状のイオントフォレーシス装置を実現することができれば、装置の保管、運搬時、或いは薬物イオンの投与に際してのハンドリング性を向上させることができる。
米国特許第4744787号公報
しかしながら、作用側構造体、非作用側構造体及び電源を単一のシート状の部材(平板状の柔軟な部材)に組み込むための具体的な手法は公知ではなく、これらを単一のシート状の部材に組み込んだ場合における最適な構造についても従来検討された例はない。
本発明は、上記状況に鑑みてなされたものであり、以下のいずれか一以上の目的を達成するものである。
即ち、本発明の目的は、作用側構造体、非作用側構造体及び電源が組み込まれた単一のシート状の形態をなすイオントフォレーシス装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、作用側構造体、非作用側構造体及び電源が組み込まれた単一のシート状の形態をなすイオントフォレーシス装置であって、生体の動きや生体皮膚の凹凸に対する追随性に優れた柔軟性のあるイオントフォレーシス装置を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、作用側構造体、非作用側構造体及び電源が組み込まれた単一のシート状の形態をなすイオントフォレーシス装置であって、装置の保管、運搬、或いは薬物イオン投与に際してのハンドリング性に優れるイオントフォレーシス装置を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、作用側構造体、非作用側構造体及び電源が組み込まれた単一のシート状の形態をなすイオントフォレーシス装置であって、製造が容易であり、製造コストを低減させることが可能なイオントフォレーシス装置を提供することにある。
本発明は、
上面及び下面を有し、
前記上面及び前記下面において開口する第1空孔と、前記第1空孔から第1の方向に離間され、前記上面及び前記下面において開口する第2空孔が形成された第1領域と、
前記第1領域の略中央部から前記第1の方向に略垂直な第2の方向に延びる第2領域とを有する平板状の支持体と、
前記第2領域において前記支持体の上面側に配置される電池と、
前記第1領域における前記第1、第2空孔の全体及び前記第2領域に配置された前記電池の全体を被覆できる寸法に形成された回路板とを備えるイオントフォレーシス装置であって、
前記第1空孔及び前記第2空孔にそれぞれ第1電解液及び第2電解液が保持されており、
前記回路板は、前記前記第1、第2空孔の全体及び前記電池の全体を被覆するように前記支持体の上面に貼着されており、
前記電池の第1、第2極性の端子と、前記第1電解液及び第2電解液とをそれぞれ電気的に接続する第1導電パターン及び第2導電パターンが前記回路板に形成されていることを特徴とするイオントフォレーシス装置(請求項1)である。
上面及び下面を有し、
前記上面及び前記下面において開口する第1空孔と、前記第1空孔から第1の方向に離間され、前記上面及び前記下面において開口する第2空孔が形成された第1領域と、
前記第1領域の略中央部から前記第1の方向に略垂直な第2の方向に延びる第2領域とを有する平板状の支持体と、
前記第2領域において前記支持体の上面側に配置される電池と、
前記第1領域における前記第1、第2空孔の全体及び前記第2領域に配置された前記電池の全体を被覆できる寸法に形成された回路板とを備えるイオントフォレーシス装置であって、
前記第1空孔及び前記第2空孔にそれぞれ第1電解液及び第2電解液が保持されており、
前記回路板は、前記前記第1、第2空孔の全体及び前記電池の全体を被覆するように前記支持体の上面に貼着されており、
前記電池の第1、第2極性の端子と、前記第1電解液及び第2電解液とをそれぞれ電気的に接続する第1導電パターン及び第2導電パターンが前記回路板に形成されていることを特徴とするイオントフォレーシス装置(請求項1)である。
本発明によれば、平板状の支持体の内部に薬物イオンの投与を行う作用側構造体部分と、その対極としての役割を果たす非作用側構造体部分とが形成され、当該支持体の上面に配置された電池からの電圧が第1、第2の導電パターンを介して作用側構造体部分及び非作用側構造体部分に印加され、作用側構造体部分から生体に薬物イオンが投与される。
本発明において生体に投与すべき薬物イオンを、作用側構造体部分におけるどの部材において担持するかについては種々の態様が考えられるが、その一態様として、第1電解液及び/又は第2電解液として薬物イオンを含む薬液を使用し、これを第1空孔及び/又は第2空孔において保持することが可能である。
本発明の電池には、薄型の電池(ペーパー電池など)を好ましく使用することができ、例えば、実公平4−036057号に開示されるような、正負両極端子が電池の一面(例えば、上面)に形成されたタイプの電池を好ましく使用することができ、更には可撓性を有する薄型の電池を特に好ましく使用することができる。
本発明は、前記支持体が円又は一部切欠円の形状を有していること(請求項2)が好ましい。
本発明では、第1、第2電解液を収容する第1、第2空孔や支持体に搭載される電池を所定のサイズに保ちつつ、装置全体の寸法を小さくすることができる。また、支持体の外形を角のない円又は一部切欠円の形状とすることで、粘着剤などを用いて支持体を生体皮膚に貼付した場合の引き剥がしの容易性を高め、或いは引き剥がしの際の生体に与える痛みを緩和することが可能になる。
本発明では、前記第1空孔の下面側が、第1極性のイオンの通過を選択的に許容する第1イオン選択膜により閉鎖されていること(請求項3)が好ましい。
かかる発明によれば、第1極性の薬物イオンが第1イオン選択膜を介して生体に投与されるために、生体対イオンの移動により消費される電流量が低減され、薬物イオンの投与効率又は投与速度を上昇させることができる。
本発明では、前記第1イオン選択膜が第1極性のイオン交換膜であり、前記第1イオン選択膜に第1極性の薬物イオンがドープされていること(請求項4)が好ましい。
かかる発明では、第1極性の薬物イオンが第1極性のイオン交換膜を介して投与されるため、生体対イオンの移動により消費される電流量が低減され、薬物イオンの投与効率を上昇させることができる。また、薬物イオンが、薬物イオンの投与に際して皮膚に当接して配置される部材である第1イオン選択膜にドープされているために、薬物イオンの投与効率を更に上昇させ、或いは薬物イオンの投与開始時点における急峻な投与量の立ち上がりを得るなどの効果を期待することができる。
また、第1イオン選択膜に薬物イオンをドープすることで、第1イオン選択膜内におけるNa+、H+、Cl−などの薬物イオンの競合イオン量を低減させることができるため、これによっても、薬物イオンの投与効率の一層の上昇を期待することができる。更には、薬物イオンが第1イオン選択膜にドープされた状態で保持されることにより、薬物イオンの保存安定性が向上することも考えられる。
本発明のイオントフォレーシス装置は、前記第1空孔の下面側に配置された第2極性のイオンの通過を選択的に許容する第2イオン選択膜と、前記第2イオン選択膜の下面側に配置された第1セパレータとを更に備え、前記第1空孔の下面側が、第2イオン選択膜により閉鎖され、前記第2イオン選択膜の全体及び前記セパレータの全体が、前記第1イオン選択膜により被覆されていること(請求項5)が好ましい。
かかる発明では、第1セパレータと第1空孔の間が第2イオン選択膜により仕切られることになるために、第1空孔内における電極反応により好ましくないイオンが生成されたとしても、これが第1セパレータへ、ひいては生体界面に移行することが防止されることになり、薬物イオン投与の安全性を高めることができる。
本発明では、薬物イオンを含む薬液を第1セパレータに含浸させることが可能であり、或いは第1イオン選択膜として第1極性のイオン交換膜を使用し、薬物イオンを第1イオン選択膜にドープすることが可能である。
本発明では、前記第2空孔の下面側が、第2極性のイオンの通過を選択的に許容する第3イオン選択膜により閉鎖されていること(請求項6)が好ましく、これにより、第2空孔の前面側の皮膚界面におけるイオンバランスを良好に保つことができ、通電中に生じる場合のある皮膚の炎症やかぶれなどの発生を抑制することができる。
本発明のイオントフォレーシス装置は、前記第2空孔の下面側に配置された第1極性のイオンの通過を選択的に許容する第4イオン選択膜と、前記第4イオン選択膜の下面側に配置された第2セパレータとを更に備え、前記第2空孔の下面側が、第4イオン選択膜により閉鎖され、前記第4イオン選択膜の全体及び前記第2セパレータの全体が、前記第3イオン選択膜により被覆されていること(請求項7)が好ましい。
かかる発明では、第2セパレータと第2空孔の間が第4イオン選択膜により仕切られることになるために、第2空孔内における電極反応により好ましくないイオンが生成されたとしても、これが第2セパレータへ、ひいては生体界面に移行することが防止されることになり、薬物イオン投与の安全性を高めることができる。
本発明では、前記第1空孔及び/又は前記第2空孔に分極性電極が収容されており、前記第1導電パターンから前記第1電解液への通電及び/又は第2導電パターンから前記第2電解液への通電が、前記分極性電極を介して行われるよう構成すること(請求項8)が好ましく、これにより、通電の際における第1及び/又は第2空孔における電極反応を抑止又は抑制することが可能となり、薬物イオン投与における安全性ないし安定性を向上させることができる。
請求項8の発明における分極性電極は、単位重量当たりの静電容量が1F/g以上の導電体を含有する電極とすること、或いは比表面積が10m2/g以上の導電体を含有する電極とすることが可能であり、これにより、分極性電極の表面に電気2重層が形成されることによる通電量を増大させ、電極反応を生じることなく、より多量の薬物イオンを投与することができるイオントフォレーシス装置を実現することができる。特に好ましくは、分極性電極の単位重量当たりの静電容量を1F/g以上とし、或いは分極性電極の比表面積を10m2/g以上とすることができる。
上記導電体としては、金、銀、アルミニウム、ステンレスなどの金属導電体、或いは活性炭や酸化ルテニウムなどの非金属導電体を使用することが可能であるが、この導電体として非金属導電体を使用することが特に好ましく、これにより、分極性電極から金属イオンが溶出して生体に移行する懸念を低減又は解消することが可能となる。なお、分極性電極を構成する導電体として、アルマイトなどの表面に不溶化処理が施された金属導電体を使用した場合も、同様の効果を得ることができる。
本発明における分極性電極は、活性炭を含有する電極とすることも可能であり、これにより、安価かつ安全であり、また静電容量の高い分極性電極を得ることができる。更にこの活性炭として活性炭繊維を使用した場合には、分極性電極の取扱性の向上という追加的な効果を得ることができる。活性炭繊維は、例えば、織布や不織布の形態のものを使用することができる。
分極性電極として、活性炭や活性炭繊維などの吸収性の素材を含む分極性電極が使用される場合には、分極性電極に電解液又は薬液を含浸させることが好ましく、これにより、分極性電極から電解液又は薬液への通電性を高めることができる。この場合、この電解液又は薬液にHPC(ヒドロキシプロピルセルロース)やPVA(ポリビニルアルコール)などの増粘剤を配合することが好ましく、これにより、分極性電極内における電解液や薬液の保持性を高め、分極性電極の取扱性を向上させることができる。HPCの適切な配合量の範囲は1〜5%程度であり、PVAの適切な配合量の範囲は5〜15%程度である。
本明細書における「薬物」は、調製されているか否かに関わらず、一定の薬効又は薬理作用を有し、病気の治療、回復又は予防、健康の増進又は維持、病状や健康状態などの診断、或いは美容の増進又は維持などの目的で生体に投与される物質を意味する。
本明細書における「薬物イオン」は、薬物がイオン解離することにより生じるイオンであって、薬効又は薬理作用を担うイオンを意味する。
本明細書における「薬液」は、薬物イオンを含む流動物を意味し、本明細書における「薬液」には、薬物を水などの溶媒に溶解させた溶液や薬物が液状である場合における原液などの液体状態のものだけでなく、薬物の少なくとも一部が薬物イオンに解離する限り、薬物を溶媒に懸濁又は乳濁させたもの、軟膏状又はペースト状に調整されたものなど各種の状態のものを含む。
本明細書における「薬物対イオン」は、薬液中に存在するイオンであって、薬物イオンとは反対極性のイオンを意味する。
本明細書における「皮膚」は、イオントフォレーシスによる薬物イオンの投与を行い得る生体表面を意味しており、例えば口腔内の粘膜なども含まれる。「生体」は人及び動物を含む。
本明細書における「生体対イオン」は、生体の皮膚上又は生体内に存在するイオンであって、薬物イオンと反対極性のイオンを意味する。
本明細書における「下面側」及び「上面側」は、それぞれ薬物イオンの投与に際して装置内を流れる電流の経路上における生体皮膚に近い側及び遠い側を意味する。また、ある部材についての「下面」及び「上面」は、その部材の下面側及び上面側の表面を意味する。
本明細書における「第1極性」は、プラス又はマイナスの電気極性を意味し、「第2極性」は第1極性と反対の電気極性(マイナス又はプラス)を意味する。
イオン交換膜としては、イオン交換樹脂を膜状に形成したものの他、不均質イオン交換膜や均質イオン交換膜など各種のイオン交換膜が知られているが、本発明のイオン交換膜には、これらのイオン交換膜を特段の制限無く使用することができる。なお、一般には、上記不均質イオン交換膜は、イオン交換樹脂をバインダーポリマー中に分散させ、これを加熱成型などにより製膜することで得られるイオン交換膜を言い、均質イオン交換膜は、イオン交換基を導入可能な単量体、架橋性単量体、重合開始剤などからなる組成物、又はイオン交換基を導入可能な官能基を有する樹脂を溶媒に溶解させたものを、布や網、或いは多孔質フィルムなどの基材に含浸充填させ、重合又は溶媒除去を行った後にイオン交換基の導入処理を行うことにより得られるイオン交換膜を言う。
本明細書におけるカチオン交換膜は、陽イオンの通過を許容する一方で陰イオンの通過を遮断する機能を有するイオン交換膜(即ち、陽イオンが陰イオンよりも通過し易いイオン交換膜)であり、具体的には、(株)トクヤマ製ネオセプタCM−1、CM−2、CMX、CMS、CMBなどを例示することができる。
同様に、本明細書におけるアニオン交換膜は、陰イオンの通過を許容する一方で陽イオンの通過を遮断する機能を有するイオン交換膜(即ち、陰イオンが陽イオンよりも通過し易いイオン交換膜)であり、具体的には、(株)トクヤマ製ネオセプタAM−1、AM−3、AMX、AHA、ACH、ACSなどの陰イオン交換基が導入されたイオン交換膜を例示することができる。
本発明のイオン交換膜には、多孔質フィルムの孔中にイオン交換樹脂が充填されたタイプのイオン交換膜を特に好ましく使用することができる。具体的には、0.005〜5.0μm、より好ましくは0.01〜2.0μm、最も好ましくは0.02〜0.2μmの平均孔径{バブルポイント法(JIS K3832−1990)に準拠して測定される平均流孔径}の多数の小孔が、20〜95%、より好ましくは30〜90%、最も好ましくは30〜60%の空隙率で形成された5〜140μm、より好ましくは10〜120μm、最も好ましくは15〜55μmの膜厚を有する多孔質フィルムを使用し、5〜95質量%、より好ましくは10〜90質量%、特に好ましくは20〜60質量%の充填率でイオン交換樹脂を充填させたイオン交換膜を使用することができる。
本明細書においてイオン選択膜又はイオン交換膜について述べる「イオンの通過の遮断」は、必ずしも一切のイオンを通過させないことを意味するのではなく、例えば、ある特定のイオンの通過速度又は通過量が他の特定のイオンよりも十分に小さいがために、当該イオン選択膜又はイオン交換膜に求められる機能が十全に発揮される場合を含む。同様に、イオン選択膜又はイオン交換膜について述べる「イオンの通過の許容」は、イオンの通過に一切の制約が生じないことを意味するのではなく、例えば、イオンの通過がある程度制約される場合であっても、当該イオン選択膜又はイオン交換膜に求められる機能が十全に発揮される程度のイオンの通過速度又は通過量が確保される場合を含む。
以下、図面に基づいて本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1、2は本発明の一実施形態に係るイオントフォレーシス装置1の主要な構成部材を示す説明図であり、図1には電池40が搭載された支持体30の平面図(図1(A))及びそのA−A断面図(図1(B))が示されており、図2には回路板50の底面図(図2(A))及びそのA−A断面図(図2(B))が示されている。
図1に示されるように、支持体30は、図中X方向に延在する領域R1と、この領域R1の概略中央付近からX方向に略垂直なY方向に延在する領域R2が確保された平面視円形の外形を有しており、領域R1には、支持体30の上下面における所定形状(図示の例では円形)の開口31t,31bに連通する第1空孔h1、及びこの第1空孔h1からX方向に離間し、支持体30の上下面における所定形状(図示の例では円形)の開口32t,32bに連通する第2空孔h2が形成されている。
また領域R2には、その上面に第1極性の端子40a及び第2極性の端子40bが形成された薄型で可撓性を有する電池40が搭載できるようになっている。このような電池40としては、例えば、ペーパーパワー社(イスラエル国ペタフティクバ)製STD−3を使用することができる。
支持体30は、イオントフォレーシス装置1の保管、使用環境下において変質しない安定な素材であって、薬液や電解液などに対する耐性を有する任意の素材により形成することができ、好ましくは、生体の動きや生体皮膚Sの凹凸に追随できる柔軟性を有する発泡ポリウレタンなどの素材により形成することができる。
支持体30の下面には、薬物イオンの投与に際して支持体30と生体皮膚Sとの密着性を高めるための粘着剤層33を形成することが好ましい。
図2に示されるように、回路板50は、基体51及びこの基体51の下面に形成された2つの導電パターン52,53とから構成されている。
上記導電パターン52,53は、それぞれ細長い領域41,42と、この細長い領域41,42に接続されたある面積を有する領域(図示の例では円形の領域)11,21とを有しており、領域11,21は上記第1、第2空孔h1,h2に収容されることになる薬液及び電解液への通電を行うための電極、或いは後述の分極性電極12,22への通電を行うための集電体として機能し、細長い領域41,42は、上記電池40の両端子40a,40bをそれぞれ領域11,21に接続する給電線として機能する。
回路板50の基体51は、支持体30の領域R1における開口31t,32t及び領域R2に配置された電池40の全体を被覆できる寸法に形成された薄膜状の部材であり、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどの絶縁性の素材により形成することができる。
導電パターン52,53は、金属のパターンメッキや金属フィルムのエッチングなどにより形成することができ、或いは導電粉を含む導電塗料の塗膜により形成することで、回路板50の形成に係るコストを低減することができる。
回路板50の下面における導電パターン52,53の周囲には、回路板50を支持体30の上面に張り付けるための接着剤層54を形成することができる。
図3(A)は、上記電池40を搭載した支持体30に回路板50を張り合わせることにより製作されるイオントフォレーシス装置1の平面図であり、図3(B)はそのA−A断面図である。
図示のように、回路板50の領域11,21をそれぞれ支持体30の第1、第2空孔h1,h2に上下で位置合わせさせ、更に領域41,42の端部をそれぞれ電池40の端子40a,40bに上下で位置合わせさせた状態で、回路板50が支持体30の上面に張り合わされている。
好ましい実施形態では、領域41及び42の端部と、電池40の端子40a,40bとをそれぞれ導電性接着剤により接着し、或いは半田付けすることにより、両者間の機械的、電気的な接続の確実性を高めることができる。
第1空孔h1には生体に投与すべき第1極性の薬物イオンを含む薬液Dが保持される。第1空孔h1には治療や診断などの目的に応じた任意の薬液Dを保持することができるが、その例を挙げれば、第1極性がプラスである場合の薬液Dとしては、塩酸リドカイン水溶液や塩酸モルヒネ水溶液を使用することができ、第1極性がマイナスである場合の薬液Dとしては、アスコルビン酸水溶液を使用することができる。
第2空孔h2には、電解液Eを保持することができる。この電解液Eには、生理食塩水など、領域21から生体皮膚Sへの導通を確保するための任意の電解液Eが使用できるが、水よりも酸化還元電位の低い電解質を溶解し、或いは複数種類の電解質を溶解した緩衝電解液を使用することで、通電時の電極反応によるガスの発生や好ましくないイオンの生成、或いはこれによるpH変化を抑制することができる。
上記の目的を達成することができる電解液Eとしては、例えば、0.5Mのフマル酸ナトリウムと0.5Mのポリアクリル酸の5:1混合液を例示することができる。
第1、第2空孔h1,h2は、上記薬液D、電解液Eのみを保持することも可能であるが、天然繊維又は人工繊維の織布や不織布、多孔質膜、或いはゲルなどの適当な吸収性の担体に上記薬液D、電解液Eを含浸させたものを保持することも可能である。
特に好ましい実施形態では、図示のように、第1空孔h1が上記薬液Dとともに、領域11と電気的な接触を保つようにされた分極性電極12を保持すること、及び/又は、第2空孔h2が上記電解液Eとともに、領域21と電気的な接触を保つようにされた分極性電極22を保持することが可能である。
なお、この場合、領域11,21は、分極性電極12,22への均一な電流密度での通電を実現するための集電体として機能する。
分極性電極(電気2重層容量キャパシタ(EDLC)とも呼ばれる)は、電極の表面での電気2重層の形成により電解液への通電を生じる性質を有する電極であり、好ましくは、単位重量当たりの静電容量が1F/g以上の導電体を含有する分極性電極、或いは比表面積が10m2/g以上の導電体を含有する分極性電極、或いは活性炭を含有する分極性電極を使用することができる。この場合、分極性電極12の静電容量を1F/g以上とし、或いは分極性電極の比表面積を10m2/g以上とすることが特に好ましい。
上記活性炭としては、ヤシ殻、木粉、石炭、ピッチ、コークスなどの炭素を含有する原料を炭化、賦活することで得られるごく普通の活性炭を使用することが可能である。上記活性炭は、単位重量当たりの静電容量が1F/g以上であること、或いは比表面積が10m2/g以上であることが好ましい。
分極性電極12,22に含有される上記活性炭としては活性炭繊維を使用することが可能であり、この場合には分極性電極12,22の取扱性の向上という追加的な効果を得ることができる。活性炭繊維は、例えば、織布や不織布の形態のものを使用することができ、特に、ノボロイド繊維(フェノール樹脂を繊維化した後、架橋処理し、分子構造を3次元化させた繊維)を炭化、賦活させたものを使用した場合には、取扱性や柔軟性、機械的強度(引っ張り強度など)に優れるとともに極めて比表面積が高く、静電容量の大きい分極性電極12,22を得ることができる。
活性炭又は活性炭繊維を含む分極性電極12,22は、活性炭又は活性炭繊維のみから構成されていても良く、賦型性や保型性、或いは取扱性向上のためのバインダーポリマーなどの他の成分が活性炭又は活性炭繊維に配合されていても良い。この場合に好適に使用することができるバインダーポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン又はポリフッ化ビニリデンフロライドを例示することができる。活性炭又は活性炭繊維97〜80重量部に対するバインダーポリマーの好ましい配合量は3〜20重量部である。
分極性電極12,22に活性炭や活性炭繊維などの吸収性の素材が使用される場合には、分極性電極12,22に上記薬液D、電解液Eを含浸させることが可能であり、これにより、分極性電極12,22から薬液D、電解液Eへの通電性を高めることができる。
この場合、分極性電極12,22に含浸させる薬液D又は電解液EにHPCやPVAなどの増粘剤を配合することが好ましく、これにより、分極性電極内での薬液Dや電解液Eの保持性を高め、分極性電極の取扱性を向上させることができる。特に好ましい実施形態では、ノボロイド繊維を炭化、賦活させた活性炭繊維に10%のPVAを配合した薬液D又は電解液Eを含浸させた分極性電極12,22が使用される。
なお、図示の例では、分極性電極12,22の下面側に、分極性電極12,22に吸収しきれなかった薬液D及び電解液Eの層が形成された状態が示されているが、第1空孔、第2空孔h1,h2に保持される薬液D、電解液Eの全てを分極性電極12,22に吸収させても良く、その場合は、第1、第2空孔h1,h2の下端まで分極性電極12,22を充填させることが好ましい。
支持体30の下面には、薬物イオンの投与に際して取り外されるリリースライナー(不図示)を貼付することが可能である。
イオントフォレーシス装置1では、支持体30の下面を生体皮膚Sに当接させることにより、電池40から、導電パターン52、第1空孔h1内の薬液、生体、第2空孔h2内の電解液及び導電パターン53を経て電池40に戻る電気回路が閉成され、電池40の端子40aからの第1極性の電圧の作用によって第1空孔h1中の薬物イオンが生体内に移行する。
イオントフォレーシス装置1は、作用側構造体としての役割を果たす領域11及び第1空孔h1の部分(作用側構造体部分10)、非作用側構造体としての役割を果たす領域21及び第2空孔h2の部分(非作用側構造体部分20)に加え、これら作用側構造体部分10及び非作用側構造体部分20に電圧を印加するための電池40が組み込まれた単一のシート状の形態に構成されているため、保管、運搬、或いは生体への適用の際のハンドリング性を向上させることができる。
また、イオントフォレーシス装置1は、電池40を搭載した支持体30に回路板50を張り合わせるのみで製造できるため、製造の容易化や製造コストの低減を達成することも可能である。
また、イオントフォレーシス装置1では、支持体30が平面視円形の形状を有しているため、生体皮膚Sに貼着した支持体30を引き剥がす際の生体への痛みを軽減することが可能である。
図4(A)は、本発明の他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置2の底面図であり、図4(B)はそのA−A断面図である。
イオントフォレーシス装置2は、イオントフォレーシス装置1と同様の支持体30、電池40及び回路板50を備えるとともに、第1空孔h1の下面側を閉鎖するイオン選択膜15及び第2空孔h2の下面側を閉鎖するイオン選択膜25が支持体30の下面に貼着されている。
イオン選択膜15は、通電の際に第1空孔h1の薬液から生体皮膚S側への薬物イオンの通過を選択的に許容する特性を有する膜状の部材であり、好ましくは、生体皮膚Sから第1空孔h1への生体対イオンの通過を遮断する特性を併せ有することができる。
イオン選択膜25は、通電の際に第2空孔h2の電解液から生体皮膚S側への第2極性のイオンの通過を選択的に許容する特性を有する膜状の部材であり、好ましくは、生体皮膚Sから第2空孔h2への第1極性のイオンの通過を遮断する特性を併せ有することができる。
イオン選択膜15,25は、イオンの分子量やサイズ、或いは立体的形状に基づいて上記イオンの通過の許容及び遮断を行う半透膜(限外濾過膜など)の形態を採ることが可能であり、電荷に基づいて上記イオンの通過の許容及び遮断を行う電荷選択膜の形態を採ることも可能である。
電荷選択膜の形態のイオン選択膜15,25を使用する場合、それぞれ第1極性のイオン交換膜及び第2極性のイオン交換膜を好ましく使用することができる。具体的には、第1極性がプラスである場合のイオン選択膜15,25としては、それぞれカチオン交換膜及びアニオン交換膜を使用することができ、第1極性がマイナスである場合のイオン選択膜15,25としては、それぞれアニオン交換膜及びカチオン交換膜を好ましく使用することができる。
第1空孔h1には、イオントフォレーシス装置1と同様の薬液、或いは同様の分極性電極12及び薬液を同様の態様で保持することが可能であり、第2空孔h2には、イオントフォレーシス装置1における第2空孔h2と同様の電解液、或いは同様の分極性電極22及び電解液を同様の態様で保持することが可能である。
また、イオントフォレーシス装置2では、イオン選択膜15として第1極性のイオン交換膜を使用する場合には、当該イオン選択膜15に第1極性の薬物イオンをドープすることも可能である。イオン選択膜15には治療や診断などの目的に応じた任意の薬物イオンをドープすることができるが、その例を挙げれば、リドカインイオンやモルヒネイオンなどのプラスの薬物イオンやアスコルビン酸イオンなどのマイナスの薬物イオンをドープすることができる。
なお、イオン選択膜15に第1極性の薬物イオンをドープする場合には、第1空孔h1には、第2空孔h2の電解液として上記したと同様の電解液、或いは分極性電極12及びそのような電解液を保持することも可能である。
イオントフォレーシス装置2では、支持体30の下面(イオン選択膜15,25)を生体皮膚Sに当接させることにより、電池40から、導電パターン52、第1空孔h1内の薬液(又は電解液)、生体、第2空孔h2内の電解液及び導電パターン53を経て電池40に戻る電気回路が閉成され、第1空孔h1中の薬物イオン、或いはイオン選択膜15にドープされた薬物イオンが生体内に移行する。
イオントフォレーシス装置2は、イオントフォレーシス装置1と同様の態様でシート状の形態に構成されているため、保管、運搬、或いは生体への適用の際のハンドリング性の向上、或いは製造の容易化、製造コストの低減などを達成することができ、生体皮膚Sに貼着した支持体30を引き剥がす際の生体への痛みを軽減することが可能である。
加えて、イオントフォレーシス装置2では、作用側構造体部分10における薬物イオンの投与がイオン選択膜15を介して行われるために、生体対イオンの移動により消費される電流量が低減され、薬物イオンの投与効率を上昇させることができる。
また、薬物イオンをイオン選択膜15にドープした場合には、イオン交換膜中の競合イオン濃度の低減などにより薬物イオンの投与効率を一層上昇させることができ、或いは薬物イオンの投与開始時点における投与量の立ち上がりの急峻性を高めることができ、或いは薬物イオンの保存安定性を向上させることができる。
また、イオントフォレーシス装置2では、非作用側構造体部分20における生体皮膚Sへの通電が、イオン選択膜25を介して行われるために、生体皮膚S界面におけるイオンバランスを良好に保つことができ、薬物イオンの投与時における炎症やかぶれなどの発生を抑制することができる。
図5(A)は、本発明の更に他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置3の底面図であり、図5(B)はそのA−A断面図である。
イオントフォレーシス装置3は、イオントフォレーシス装置1,2と同様の支持体30、電池40及び回路板50を備えるとともに、第1空孔h1の下面側には、イオン選択膜13、セパレータ14及びイオン選択膜15が配置され、第2空孔h2の下面側には、イオン選択膜23、セパレータ24及びイオン選択膜25が配置されている。
本実施形態において使用されるイオン選択膜13、セパレータ14及びイオン選択膜15は、好ましくは上記支持体30の開口31bと平面視において相似の形状(図示の例では円形)とされており、イオン選択膜13は開口31bの全体を、セパレータ14はイオン選択膜13の全体を、イオン選択膜15はセパレータ14の全体を被覆するように、それぞれが、その外周部において支持体30の下面に形成された粘着剤層33に貼着されている。
同様に、イオン選択膜23、セパレータ24及びイオン選択膜25は、好ましくは開口32bと平面視において相似の形状(図示の例では円形)とされており、イオン選択膜23は開口32bの全体を、セパレータ24はイオン選択膜23の全体を、イオン選択膜25はセパレータ24の全体を被覆するように、それぞれが、その外周部において支持体30の下面に形成された粘着剤層33に貼着されている。
従って、第1、第2空孔h1,h2は、その上面側が回路板50により、その下面側がイオン選択膜13,23によりそれぞれ液密となるよう封鎖され、セパレータ14,24は、その上面側がイオン選択膜13,23により、その下面側がイオン選択膜15,25によりそれぞれ液密となるように封鎖されている。
ここで、イオン選択膜13は、通電の際にセパレータ14から第1空孔h1への第2極性のイオンの通過を選択的に許容する膜状の部材であり、好ましくは、第1空孔h1からセパレータ14への第1極性のイオンの通過を遮断する特性を併せ有することができる。
イオン選択膜23は、通電の際にセパレータ24から第2空孔h2への第1極性のイオンの通過を選択的に許容する膜状の部材であり、好ましくは、第2空孔h2からセパレータ24への第2極性のイオンの通過を遮断する特性を併せ有することができる。
イオン選択膜13,23は、イオンの分子量やサイズ、或いは立体的形状に基づいて上記イオンの通過の許容及び遮断を行う半透膜(限外濾過膜など)の形態を採ることが可能であり、電荷に基づいて上記イオンの通過の許容及び遮断を行う電荷選択膜の形態を採ることも可能である。
電荷選択膜の形態のイオン選択膜13,23を使用する場合、それぞれ第2極性のイオン交換膜及び第1極性のイオン交換膜を好ましく使用することができる。具体的には、第1極性がプラスである場合のイオン選択膜13,23としては、それぞれアニオン交換膜及びカチオン交換膜を使用することができ、第1極性がマイナスである場合のイオン選択膜13,23としては、それぞれカチオン交換膜及びアニオン交換膜を好ましく使用することができる。
セパレータ14,24には、電解液や薬液を含浸保持することができる濾紙、天然繊維又は合成繊維の織布や不織布、多孔質膜などの吸収性の素材よりなる膜状の部材を使用でき、特に好ましくは、絶縁性及び耐薬品性に優れるポリカーボネートなどの不織布を使用できる。
イオン選択膜15,25には、イオントフォレーシス装置2について上記したと同様のイオン選択膜15,25を使用することができる。
第1、第2空孔h1,h2には、イオントフォレーシス装置1における第2空孔h2と同様の電解液を保持することが可能であり、或いはこれに加えてイオントフォレーシス装置1における分極性電極12,22と同様の分極性電極12,22を同様の態様で保持することが可能である。
セパレータ14には、イオントフォレーシス装置1における第1空孔h1と同様の薬液を保持することができ、セパレータ24には、イオントフォレーシス装置1における第2空孔h2と同様の電解液を保持することが可能である。
イオン選択膜15に第1極性のイオン交換膜が使用される場合には、イオントフォレーシス装置1と同様、第1極性の薬物イオンをイオン選択膜15にドープすることができる。この場合には、セパレータ14に、上記の薬液に代えて、イオントフォレーシス装置1における第2空孔h2と同様の電解液を保持することも可能である。或いはセパレータ14に電解質を含まない水(精製水や純水など)を保持することも可能であり、これにより、イオン選択膜15にドープされた薬物イオンがセパレータ14側に移行することによる装置特性の経時的変化を抑制することができる。
イオントフォレーシス装置3では、支持体30の下面(イオン選択膜15,25)を生体皮膚Sに当接させることによって電流回路が閉成され、セパレータ14に担持される薬液中の薬物イオン、或いはイオン選択膜15にドープされた薬物イオンが生体内に移行する。
イオントフォレーシス装置3は、イオントフォレーシス装置1,2と同様の態様でシート状の形態に構成されており、更には、作用側構造体部分10における薬物イオンの投与がイオン選択膜15を介して行われ、非作用側構造体部分20における通電がイオン選択膜25を介して行われるため、イオントフォレーシス装置2について上記したと同様の効果が達成される。
加えて、イオントフォレーシス装置3では、第1空孔h1とセパレータ14の間にイオン選択膜13が配置され、第2空孔h2とセパレータ24の間にイオン選択膜23が配置されているために、領域11,21、或いは分極性電極12,22における電極反応により好ましくないイオンが生成されたとしても、これがセパレータ14,24、ひいては生体界面に移行することが防止され、薬物イオン投与の安全性を高めることができる。
更に、イオントフォレーシス装置3では、イオン選択膜13とイオン選択膜15がセパレータ14により非接触に保たれ、イオン選択膜23とイオン選択膜25がセパレータ24により非接触に保たれる構成となっている。従って、イオン選択膜13とイオン選択膜15に第2極性のイオン交換膜及び第1極性のイオン交換膜を使用した場合、或いはイオン選択膜23とイオン選択膜25に第1極性のイオン交換膜及び第2極性のイオン交換膜を使用した場合であっても、これらを接触させて通電した場合に生じうる水の電気分解を防止することが可能である。
図6(A)、(B)は、本発明の更に他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置4,5を平面視で示す説明図である。
イオントフォレーシス装置4,5は、支持体30a,30bの平面視の形状がイオントフォレーシス装置1〜3の支持体30と相違するのみであり、他の点においてはイオントフォレーシス装置1〜3と同様の構成を有している。
図示のように、イオントフォレーシス装置4の支持体30aは、平面視において一部切欠円の形状を有しているが、図中X方向に延在し、第1、第2空孔h1,h2が形成される領域R1と、この領域R1の概略中央付近からX方向に略垂直なY方向に延在し、電池40を搭載できる領域R2が確保されており、イオントフォレーシス装置4は、イオントフォレーシス装置1〜3について上記したと同様の効果を達成する。
イオントフォレーシス装置5の支持体30bは、領域R1,R2を残して支持体30aの外周を更に部分的に切り欠いた形状を成しているが、支持体30,30aと同様の領域R1及び領域R2が確保されており、イオントフォレーシス装置5は、イオントフォレーシス装置1〜3について上記したと同様の効果を達成する。
以上、いくつかの実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内において種々の改変が可能である。
例えば、上記実施形態では、作用側構造体部分10から薬物イオンの投与が行われるイオントフォレーシス装置を例として説明したが、イオントフォレーシス装置1〜5における第2空孔h2又はセパレータ24に第2極性の薬物イオンを含む薬液を保持することにより、或いはイオン選択膜25に第2極性の薬物イオンをドープすることにより、非作用側構造体部分20から、或いは作用側構造体部分10及び非作用側構造体部分20の双方から薬物イオンの投与が行なわれるイオントフォレーシス装置を実現することが可能である。
同様に、上記実施形態では、単一の作用側構造体部分と単一の非作用側構造体部分とを備えるイオントフォレーシス装置を例として説明したが、作用側構造体部分及び/又は非作用側構造体部分を複数備えるイオントフォレーシス装置にも本発明を適用することが可能である。
上記実施形態おける各部材の形状、寸法、材質などは単なる例として記述したものであり、本発明はこれらの記述により限定されるものではない。また、上記実施形態の説明に用いた各図面には理解の容易化のための変形が加えられており、その縮尺等は正確なものではない。
1〜5・・・イオントフォレーシス装置
10・・・作用側構造体部分
20・・・非作用側構造体部分
11,21・・・電極又は集電体として使用される領域
12,22・・・分極性電極
13,15,23,25・・・イオン選択膜
14,24・・・セパレータ
30,30a,30b・・・支持体
31t,31b,32t,32b・・・開口
33・・・粘着剤層
h1・・・第1空孔
h2・・・第2空孔
R1・・・第1、第2空孔が形成される領域
R2・・・電池が載置される領域
40・・・電池
40a,40b・・・端子
41,42・・・給電線として使用される領域
50・・・回路板
51・・・基体
52,53・・・導電パターン
54・・・接着剤層
101・・・イオントフォレーシス装置
110・・・作用側構造体
120・・・非作用側構造体
111,121・・・電極
112・・・薬液保持部
122・・・電解液保持部
122・・・電解液保持部
140・・・電源
10・・・作用側構造体部分
20・・・非作用側構造体部分
11,21・・・電極又は集電体として使用される領域
12,22・・・分極性電極
13,15,23,25・・・イオン選択膜
14,24・・・セパレータ
30,30a,30b・・・支持体
31t,31b,32t,32b・・・開口
33・・・粘着剤層
h1・・・第1空孔
h2・・・第2空孔
R1・・・第1、第2空孔が形成される領域
R2・・・電池が載置される領域
40・・・電池
40a,40b・・・端子
41,42・・・給電線として使用される領域
50・・・回路板
51・・・基体
52,53・・・導電パターン
54・・・接着剤層
101・・・イオントフォレーシス装置
110・・・作用側構造体
120・・・非作用側構造体
111,121・・・電極
112・・・薬液保持部
122・・・電解液保持部
122・・・電解液保持部
140・・・電源
Claims (8)
- 上面及び下面を有し、
前記上面及び前記下面において開口する第1空孔と、前記第1空孔から第1の方向に離間され、前記上面及び前記下面において開口する第2空孔が形成された第1領域と、
前記第1領域の略中央部から前記第1の方向に略垂直な第2の方向に延びる第2領域とを有する平板状の支持体と、
前記第2領域において前記支持体の上面側に配置される電池と、
前記第1領域における前記第1、第2空孔の全体及び前記第2領域に配置された前記電池の全体を被覆できる寸法に形成された回路板とを備えるイオントフォレーシス装置であって、
前記第1空孔及び前記第2空孔にそれぞれ第1電解液及び第2電解液が保持されており、
前記回路板は、前記前記第1、第2空孔の全体及び前記電池の全体を被覆するように前記支持体の上面に貼着されており、
前記電池の第1、第2極性の端子と、前記第1電解液及び第2電解液とをそれぞれ電気的に接続する第1導電パターン及び第2導電パターンが前記回路板に形成されていることを特徴とするイオントフォレーシス装置。 - 前記支持体が円又は一部切欠円の形状を有していることを特徴とする請求項1に記載のイオントフォレーシス装置。
- 前記第1空孔の下面側が、第1極性のイオンの通過を選択的に許容する第1イオン選択膜により閉鎖されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のイオントフォレーシス装置。
- 前記第1イオン選択膜が第1極性のイオン交換膜であり、
前記第1イオン選択膜に第1極性の薬物イオンがドープされていることを特徴とする請求項3に記載のイオントフォレーシス装置。 - 前記第1空孔の下面側に配置された第2極性のイオンの通過を選択的に許容する第2イオン選択膜と、
前記第2イオン選択膜の下面側に配置された第1セパレータとを更に備え、
前記第1空孔の下面側が、第2イオン選択膜により閉鎖され、
前記第2イオン選択膜の全体及び前記セパレータの全体が、前記第1イオン選択膜により被覆されていることを特徴とする請求項3又は4に記載のイオントフォレーシス装置。 - 前記第2空孔の下面側が、第2極性のイオンの通過を選択的に許容する第3イオン選択膜により閉鎖されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のイオントフォレーシス装置。
- 前記第2空孔の下面側に配置された第1極性のイオンの通過を選択的に許容する第4イオン選択膜と、
前記第4イオン選択膜の下面側に配置された第2セパレータとを更に備え、
前記第2空孔の下面側が、第4イオン選択膜により閉鎖され、
前記第4イオン選択膜の全体及び前記第2セパレータの全体が、前記第3イオン選択膜により被覆されていることを特徴とする請求項6に記載のイオントフォレーシス装置。 - 前記第1空孔及び/又は前記第2空孔に分極性電極が収容されており、
前記第1導電パターンから前記第1電解液への通電及び/又は第2導電パターンから前記第2電解液への通電が、前記分極性電極を介して行われることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のイオントフォレーシス装置。
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JP2006073477A JP2007244700A (ja) | 2006-03-16 | 2006-03-16 | イオントフォレーシス装置 |
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Cited By (1)
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---|---|---|---|---|
CN108379734A (zh) * | 2018-05-14 | 2018-08-10 | 邱骅轩 | 一种区域化透皮离子电渗给药系统 |
-
2006
- 2006-03-16 JP JP2006073477A patent/JP2007244700A/ja active Pending
Cited By (2)
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CN108379734A (zh) * | 2018-05-14 | 2018-08-10 | 邱骅轩 | 一种区域化透皮离子电渗给药系统 |
CN108379734B (zh) * | 2018-05-14 | 2022-04-01 | 上海肤泰科技有限公司 | 一种区域化透皮离子电渗给药系统 |
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