JP2007229003A - イオントフォレーシス装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 製造が容易であり、薬物イオンの投与時におけるハンドリング性にも優れ、電解液や薬液をより容易に又はより確実に液密に保持することが可能なイオントフォレーシス装置を提供する。
【解決手段】 支持体に形成された空孔に電解液を保持し、その空孔の下面側に順次、第1イオン選択膜、セパレータ及び第2イオン選択膜を配置する。このとき、空孔、第1イオン選択膜、セパレータの全体が、それぞれ第1イオン選択膜、セパレータ及び第2イオン選択膜によって被覆されるように、第1イオン選択膜、セパレータ及び第2イオン選択膜の外周を支持体の下面に接着させ、第1イオン選択、第2イオン選択膜の外周における支持体のとの接着代の部分によって空孔及びセパレータの部分の液密を達成する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電圧の作用により薬物イオンを生体に投与するイオントフォレーシス装置に関し、製造の容易性や生体への適用の際のハンドリング性等に優れるイオントフォレーシス装置に関する。
イオントフォレーシス装置は一般に、薬効成分がプラス又はマイナスのイオン(薬物イオン)に解離する薬液を保持する作用側構造体と、作用側構造体の対極の役割を有する非作用側構造体を備えており、これら両構造体を生体の皮膚に当接させた状態で、作用側構造体に薬物イオンと同一極性の電圧を印加することにより薬物イオンの投与を行うものである。
特許文献1は、上記イオントフォレーシス装置における薬物イオンの投与を安全かつ効率的なものとするために、図12に示すイオントフォレーシス装置101を開示している。
図示されるように、イオントフォレーシス装置101は、電極111、電解液保持部112、薬物イオンと反対極性のイオン交換膜113、薬物イオンを含む薬液を保持する薬液保持部114及び薬物イオンと同一極性のイオン交換膜115並びにこれらを収容するための容器116を備える作用側構造体110と、電極121、電解液保持部122、薬物イオンと同一極性のイオン交換膜123、電解液保持部124及び薬物イオンの反対極性のイオン交換膜125並びにこれらを収容するための容器126を備える非作用側構造体120を有しており、薬物イオンの投与に際しては、電源140から薬物イオンと同一極性の電圧が給電線141を介して電極111に印加され、その反対極性の電圧が給電線142を介して電極121に印加される。
このイオントフォレーシス装置101は、下記の優れた作用効果を発揮する。
(1)電極反応により生じる可能性のある水素イオンや水酸基イオンなどの好ましくないイオンの薬液保持部114又は電解液保持部124、ひいては生体界面への移行がイオン交換膜113、123により遮断されるため、薬物イオン投与の安全性を高めることが可能である。
(2)薬物イオンの電解液保持部112への移行をイオン交換膜113により遮断できるので、通電による薬物イオンの変質などを防止できる。
(3)生体対イオンの薬液保持部114への移行がイオン交換膜115により遮断されるため、薬物イオンの投与効率を上昇させることができる。
(4)イオン交換膜125の作用により、皮膚界面のイオンバランスが良好に保たれるため、通電中に生じる場合のある皮膚の炎症やかぶれなどを抑制することができる。
特開2000−229129号公報
イオントフォレーシス装置101は、上記のように優れた特性を有しているものの、作用側構造体110及び非作用側構造体120が、電解液や薬液を担持する複数の含水部材(水分含有量の多い部材/電解液保持部112、122、124及び薬液保持部114)を容器116、126内に収容する構造であるために、装置の製造の容易性と装置の生体への適用の容易性の両立が難しいという問題を有している。
即ち、装置の保管或いは使用時における各含水部材からの電解液や薬液の漏出や含水部材相互間でのコンタミを防止するためには、各含水部材についての封止処理が必要であり、薬物イオン投与の際の生体との密着性を確保するためには、容器116、126を生体の動きや皮膚の凹凸に追随できる柔軟な素材で形成することが望ましい。
しかしながら、柔軟性のある素材で形成された容器116、126を用いて各含水部材を液密に保つことは容易ではなく、液密を確保するためのシール構造が複雑化したり、シール構造のために作用側構造体110、非作用側構造体120の剛性が高くなり、結局生体との十分な密着性を確保することが難しくなるなどの問題がある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、製造が容易であり、薬物イオンの投与時におけるハンドリング性にも優れ、電解液や薬液をより容易に又はより確実に液密に保つことができるイオントフォレーシス装置を提供することをその目的とする。
本発明は、
上面及び下面を有し、前記下面の第1開口に連通する第1空孔を有する第1支持体と、
前記第1空孔の上面側及び/又は前記第1空孔の内部に配置され、第1極性の電圧が印加される第1電極と、
前記第1空孔の下面側に配置され、第2極性のイオンの通過を選択的に許容する第1イオン選択膜であって、前記第1開口の全体を被覆できる寸法に形成された第1イオン選択膜と、
前記第1イオン選択膜の下面側に配置された第1セパレータと、
前記第1セパレータの下面側に配置され、第1極性のイオンの通過を選択的に許容する第2イオン選択膜であって、前記第1イオン選択膜の全体を被覆できるとともに、前記第1セパレータの全体を被覆できる寸法に形成された第2イオン選択膜とを備えるイオントフォレーシス装置であって、
前記第1イオン選択膜は、前記第1開口の全体を被覆するようにその外周が前記第1支持体の前記下面に接着され、前記第2イオン選択膜は、前記第1イオン選択膜及び前記第1セパレータの全体を被覆するようにその外周が前記第1支持体の前記下面に接着されていることを特徴とするイオントフォレーシス装置(請求項1)により上記課題を解決したものである。
本発明では、第1電極が第1空孔の上面側及び/又は内部に配置される一方、当該第1空孔の下面側に、順次第1イオン選択膜、第1セパレータ及び第2イオン選択膜が配置されているために、第1電極と第1イオン選択膜の間に電解液を保持する電解液保持部を形成することが可能であり、更に第1イオン選択膜と第2イオン選択膜の間に配置される第1セパレータの部分に電解液又は薬液を保持することが可能な構成となっている。
従って、本発明のイオントフォレーシス装置は、作用側構造体として使用することも可能であり、或いは非作用側構造体として使用することも可能である。
そして、第1イオン選択膜が第2極性のイオンの通過を選択的に許容し、第2イオン選択膜が第1極性のイオンの通過を選択的に許容する特性を有するが故に、本発明のイオントフォレーシス装置は、作用側構造体として使用する場合であっても、非作用側構造体として使用する場合であっても、従来のイオントフォレーシス装置101における作用側構造体110又は非作用側構造体120について上記したと同様の優れた作用効果を発揮できる。
加えて、第1イオン選択膜が第1開口の全体を被覆できる寸法に形成されており、第2イオン選択膜が第1イオン選択膜の全体を被覆できるとともに、第1セパレータの全体を被覆できる寸法に形成されており、第1イオン選択膜は、開口の全体を被覆するようにその外周が第1支持体の下面に接着され、第2イオン選択膜は、第1イオン選択膜及び第1セパレータの全体を被覆するようにその外周が第1支持体の下面に接着されているために、上記電解液や薬液を容易に液密に保つことが可能である。
即ち、第1電極と第1イオン選択膜の間に電解液を保持する場合、第1イオン選択膜と第1開口の寸法差を調整することで、上記電解液を液密に保つための封止代を容易に確保することができる。同様に、第1イオン選択膜と第2イオン選択膜の間に配置される第1セパレータの部分に電解液又は薬液を保持する場合、第1イオン選択膜と第2イオン選択膜の寸法差を調整することで、上記電解液や薬液を液密に保つための封止代を容易に確保することができる。
更に、本発明では、上記の封止代を十分な寸法にすることで各含水部材の液密を達成する構成であるが故に、第1、第2イオン選択膜との接着強度を十分に保つことができる限り、第1支持体に柔軟性の高い素材や薄型の素材を使用しても、含水部材の液密を確保する上で何らの支障も生じない。
加えて、本発明では、第1支持体の下面に第1イオン選択膜を張り合わせた後に、第1セパレータを挟み込むようにして第2イオン選択膜を張り合わせることにより、或いは第1支持体の下面に第1イオン選択膜、第1セパレータ及び第2イオン選択膜を順次張り合わせていくことによりイオントフォレーシス装置を製造することが可能であるため、製造の容易化やこれによる製造コストの低減などの効果を達成することができる。
本発明では、前記第1イオン選択膜及び第2イオン選択膜がそれぞれ第2極性及び第1極性のイオン交換膜であり、前記第1セパレータが前記第1イオン選択膜の全体を被覆できる寸法に形成され、前記第1セパレータの外周が前記第1支持体の前記下面に接着されていること(請求項2)が好ましい。
即ち、本発明の前記第1イオン選択膜及び第2イオン選択膜は、第2極性及び第1極性のイオン交換膜により構成することが好ましいが、第1イオン選択膜と第2イオン選択膜を接触させた状態で通電を行うと、両者の界面で水の電気分解を生じて大量の水素イオンや水酸基イオンが発生し、皮膚界面のpH値が急激に変動したり、輸率が大幅に低下するなどの問題を生じる場合がある。
本発明はこの問題を解決したものであり、第1セパレータで第1イオン選択膜の全体を被覆するように、第1セパレータの外周を第1支持体の下面に接着させることにより、第1イオン選択膜と第2イオン選択膜の接触を確実に防止することができる。
本発明における第1イオン選択膜には第1極性のイオン交換膜を使用するとともに、第1イオン選択膜に第1極性の薬物イオンをドープすること(請求項3)が可能であり、この場合には、本発明のイオントフォレーシス装置を作用側構造体として使用することができる。なお、本発明において薬物イオンをドープするとは、イオン交換膜中のイオン交換基に対イオンとして薬物イオンが結合した状態にすることをいう。
請求項3の発明では、第1極性の薬物イオンが第1極性のイオン交換膜を介して投与されるため、生体対イオンの移動による電流消費量を低減させて、薬物イオンの投与効率を上昇させることができる。また、薬物イオンが、薬物イオンの投与に際して皮膚に当接して配置される部材である第2イオン選択膜にドープされているために、薬物イオンの投与効率を更に上昇させ、或いは薬物イオンの投与開始時点における急峻な投与量の立ち上がりを得るなどの効果を期待することができる。
また、第1イオン選択膜に薬物イオンをドープすることで、第1イオン選択膜内におけるNa、H、Clなどの薬物イオンの競合イオン量を低減させることができるため、これによっても、薬物イオンの投与効率の一層の上昇を期待し得る。更には、薬物イオンが第1イオン選択膜にドープされた状態で保持されることにより、薬物イオンの安定性が向上することも考えられる。
本発明における第1セパレータには、第1極性の薬物イオンを含む薬液を保持すること(請求項4)が可能であり、この場合も、本発明のイオントフォレーシス装置を作用側構造体として使用することができる。
請求項4の発明において第1イオン選択膜にも薬物イオンをドープする場合には、第1セパレータ中の薬物イオンと第1イオン選択膜中の薬物イオンは、同一種類とすることが可能であり、異なる種類とすることも可能である。
本発明における第1電極は、分極性電極であること(請求項5)が可能であり、これにより、第1電極における電極反応を抑止又は抑制することによる薬物イオン投与における安全性ないし安定性の向上を達成することができる。
請求項5の発明における分極性電極は、単位重量当たりの静電容量が1F/g以上の導電体を含有する電極とすること、或いは比表面積が10m/g以上の導電体を含有する電極とすることが可能であり、これにより、分極性電極の表面に電気2重層が形成されることによる通電量を増大させ、電極反応によるガスや好ましくないイオンの発生、或いは薬物イオンの変質を生じることなく、より多量の薬物イオンを投与することができるイオントフォレーシス装置を実現することができる。特に好ましくは、分極性電極の単位重量当たりの静電容量を1F/g以上とし、或いは分極性電極の比表面積を10m/g以上とすることができる。
上記導電体としては、金、銀、アルミニウム、ステンレスなどの金属導電体、或いは活性炭や酸化ルテニウムなどの非金属導電体を使用することが可能であるが、この導電体として非金属導電体を使用することが特に好ましく、これにより、分極性電極から金属イオンが溶出して生体に移行する懸念を低減又は解消することが可能となる。なお、分極性電極を構成する導電体として、アルマイトなどの表面に不溶化処理が施された金属導電体を使用した場合も、同様の効果を得ることができる。
本発明における分極性電極は、活性炭を含有する電極とすることも可能であり、これにより、安価かつ安全であり、また静電容量の高い分極性電極を得ることができる。更にこの活性炭として活性炭繊維を使用した場合には、分極性電極の取扱性の向上という追加的な効果を得ることができる。活性炭繊維は、例えば、織布や不織布の形態のものを使用することができる。
分極性電極として、活性炭又は活性炭繊維などの吸収性の素材を含む分極性電極が使用される場合には、分極性電極に電解液を含浸させることが好ましく、これにより、分極性電極からの通電性を高めることができる。この場合、この電解液にHPC(ヒドロキシプロピルセルロース)やPVA(ポリビニルアルコール)などの増粘剤を配合することが好ましく、これにより、分極性電極内における電解液の保持性を高め、分極性電極の取扱性を向上させることができる。HPCの適切な配合量の範囲は1〜5%程度であり、PVAの適切な配合量の範囲は5〜15%程度である。
請求項1〜5の発明においては、前記第1支持体が、前記第1空孔から離間した位置に配置され、前記下面の第2開口に連通する第2空孔を更に有しており、前記第2空孔の上面側及び/又は前記第2空孔の内部に配置され、第2極性の電圧が印加される第2電極を更に備えること(請求項6)が可能であり、この場合には、単一の第1支持体に作用側構造体の役割を果たす部分(以下、「作用側構造体部分」という)と、その対極である非作用側構造体の役割を果たす部分(以下、「非作用側構造体部分」という)を備えるイオントフォレーシス装置を実現することができる。
請求項6の発明においては、前記第2空孔の下面側に配置され、第1極性のイオンの通過を選択的に許容する第3イオン選択膜であって、前記第2開口の全体を被覆できる寸法に形成された第3イオン選択膜と、前記第3イオン選択膜の下面側に配置され、前記第3イオン選択膜の全体を被覆できる寸法に形成された第2セパレータと、前記第2セパレータの下面側に配置され、第2極性のイオンの通過を選択的に許容する第4イオン選択膜であって、前記第2セパレータの全体を被覆できる寸法に形成された第4イオン選択膜とを更に備え、前記第3イオン選択膜、前記第2セパレータ及び前記第4イオン選択膜は、それぞれ前記第2開口、前記第3イオン選択膜及び前記第2セパレータの全体を被覆するように、それぞれの外周が前記第1支持体の前記下面に接着されていること(請求項7)が好ましく、この場合には、作用側構造体部分及び非作用側構造体部分の双方において含水部材を容易に液密に保つことができ、また第3、第4イオン選択膜にイオン交換膜を使用した場合における水の電気分解などの問題が解決されたイオントフォレーシス装置を実現できる。
この場合、第2電極を請求項4について上記したと同様の分極性電極とすること(請求項8)が好ましく、これにより、作用側部分及び非作用側部分の双方における電極反応が抑止又は抑制された、薬物イオン投与の安全性ないし安定性に優れるイオントフォレーシス装置を実現することができる。
請求項1〜8の発明においては、前記第1支持体の前記上面に接着される第2支持体を更に備えること(請求項9)が好ましく、これにより、第1空孔及び/又は第2空孔に収容される電解液保持部や分極性電極の上面側における液密を保つことが容易になる。
本明細書における「薬物」は、調製されているか否かに関わらず、一定の薬効又は薬理作用を有し、病気の治療、回復又は予防、健康の増進又は維持、病状や健康状態などの診断、或いは美容の増進又は維持などの目的で生体に投与される物質を意味する。
本明細書における「薬物イオン」は、薬物がイオン解離することにより生じるイオンであって、薬効又は薬理作用を担うイオンを意味する。
本明細書における「薬液」は、薬物イオンを含む流動物を意味し、本明細書における「薬液」には、薬物を水などの溶媒に溶解させた溶液や薬物が液状である場合における原液などの液体状態のものだけでなく、薬物の少なくとも一部が薬物イオンに解離する限り、薬物を溶媒に懸濁又は乳濁させたもの、軟膏状又はペースト状に調整されたものなど各種の状態のものを含む。
本明細書における「薬物対イオン」は、薬液中に存在するイオンであって、薬物イオンとは反対極性のイオンを意味する。
本明細書における「皮膚」は、イオントフォレーシスによる薬物イオンの投与を行い得る生体表面を意味しており、例えば口腔内の粘膜なども含まれる。「生体」は人及び動物を含む。
本明細書における「生体対イオン」は、生体の皮膚上又は生体内に存在するイオンであって、薬物イオンと反対極性のイオンを意味する。
本明細書における「下面側」及び「上面側」は、それぞれ薬物イオンの投与に際して装置内を流れる電流の経路上における生体皮膚に近い側及び遠い側を意味する。また、ある部材についての「下面」及び「上面」は、その部材の下面側及び上面側の表面を意味する。
イオン交換膜としては、イオン交換樹脂を膜状に形成したものの他、イオン交換樹脂をバインダーポリマー中に分散させ、これを加熱成型などにより製膜することで得られる不均質イオン交換膜や、イオン交換基を導入可能な単量体、架橋性単量体、重合開始剤などからなる組成物、又はイオン交換基を導入可能な官能基を有する樹脂を溶媒に溶解させたものを、布や網、或いは多孔質フィルムなどの基材に含浸充填させ、重合又は溶媒除去を行った後にイオン交換基の導入処理を行うことにより得られる均質イオン交換膜など各種のイオン交換膜が知られているが、本発明のイオン交換膜には、これらのイオン交換膜を特段の制限無く使用することができる。
本明細書におけるカチオン交換膜は、陽イオンの通過を許容する一方で陰イオンの通過を遮断する機能を有するイオン交換膜(即ち、陽イオンが陰イオンよりも通過し易いイオン交換膜)であり、具体的には、(株)トクヤマ製ネオセプタCM−1、CM−2、CMX、CMS、CMBなどを例示することができる。
同様に、本明細書におけるアニオン交換膜は、陰イオンの通過を許容する一方で陽イオンの通過を遮断する機能を有するイオン交換膜(即ち、陰イオンが陽イオンよりも通過し易いイオン交換膜)であり、具体的には、(株)トクヤマ製ネオセプタAM−1、AM−3、AMX、AHA、ACH、ACSなどの陰イオン交換基が導入されたイオン交換膜を例示することができる。
本発明のイオン交換膜には、多孔質フィルムの孔中にイオン交換樹脂が充填されたタイプのイオン交換膜を特に好ましく使用することができる。具体的には、0.005〜5.0μm、より好ましくは0.01〜2.0μm、最も好ましくは0.02〜0.2μmの平均孔径(バブルポイント法(JIS K3832−1990)に準拠して測定される平均流孔径)の多数の小孔が、20〜95%、より好ましくは30〜90%、最も好ましくは30〜60%の空隙率で形成された5〜140μm、より好ましくは10〜120μm、最も好ましくは15〜55μmの膜厚を有する多孔質フィルムを使用し、5〜95質量%、より好ましくは10〜90質量%、特に好ましくは20〜60質量%の充填率でイオン交換樹脂を充填させたイオン交換膜を使用することができる。
本明細書においてイオン選択膜又はイオン交換膜について述べる「イオンの通過の遮断」は、必ずしも一切のイオンを通過させないことを意味するのではなく、例えば、ある特定のイオンの通過速度又は通過量が他の特定のイオンよりも十分に小さいがために、当該イオン選択膜又はイオン交換膜に求められる機能が十全に発揮される場合を含む。同様に、イオン選択膜又はイオン交換膜について述べる「イオンの通過の許容」は、イオンの通過に一切の制約が生じないことを意味するのではなく、例えば、イオンの通過がある程度制約される場合であっても、当該イオン選択膜又はイオン交換膜に求められる機能が十全に発揮される程度のイオンの通過速度又は通過量が確保される場合を含む。
図1〜図3は、本発明の一実施形態に係るイオントフォレーシス装置1の主要な部材の構成を示す説明図であり、図1(A)には電極部材31の底面図が、図1(B)にはそのA−A断面図が示されており、図2(A)には、第1支持体32の底面図が、図2(B)にはそのA−A断面図が示されている。また、図3には、第1支持体32、第1イオン選択膜13、第1セパレータ14及び第2イオン選択膜15の大小関係が側面視で示されている。
図1に示されるように、電極部材31は、基体31a及び基体31aの下面側に形成された導電パターン31bにより構成されている。
上記導電パターン31bは、細長い領域41と、この細長い領域41に接続されたある面積を有する領域(図示の例では円形の領域)11とを有しており、領域11は後述の薬液又は電解液への通電を行うための電極又は後述の分極性電極12への通電を行うための集電体として機能し、細長い領域41は、不図示の電源からの第1極性の電圧を領域11に伝達するための給電線として機能する。
電極部材31の基体31aは、ポリエチレンテレフタレートなどの絶縁性の素材で形成することができ、導電パターン31bは、カーボン粉などの導電粉を含む導電塗料の塗膜により形成することで、電極部材31の形成に係るコストを低減することができる。
また導電パターン31bの領域11の周囲には、電極部材31を第1支持体32の上面に張り付けるための接着剤層31cが形成されている。
図2に示されるように、第1支持体32は、平面視円形の外形を有し、その概略中央には、第1支持体32の上下面に形成された開口to及びboに連通する空孔hを有している。
第1支持体32上面の開口toは、好ましくは領域11と相似の形状(図示の例では円形)で領域11と同じかそれよりもわずかに大きいサイズとされており、基体31aは、開口toの全体を被覆できる寸法に形成されている。
第1支持体32は、イオントフォレーシス装置1の保管、使用環境下において変質しない安定な素材であって、薬液や電解液などに対する耐性を有する任意の素材により形成することができ、好ましくは、生体の動きや生体皮膚Sの凹凸に追随できる柔軟性を有する発泡ポリウレタンなどの素材により形成することができる。
また、開口boの周囲には、第1、第2イオン選択膜13、15及び第1セパレータ14を接着させ、或いは薬物イオンの投与に際して生体皮膚Sとの密着性を高めるための接着剤層32aが形成される。
本実施形態において使用される第1イオン選択膜13、第1セパレータ14及び第2イオン選択膜15は、好ましくは上記第1支持体32の開口boと平面視において相似の形状(図示の例では円形)とされており、第1イオン選択膜13は開口boの全体を、第1セパレータ14は第1イオン選択膜13の全体を、第2イオン選択膜15は第1セパレータ14の全体をそれぞれ被覆できる寸法とされている。即ち、これらの部材が平面視円形である場合は、開口bo、第1イオン選択膜13、第1セパレータ14及び第2イオン選択膜15の外径をそれぞれr、r、r及びrとして、r<r<r<rの関係とされる(図3)。
図4(A)は、上記の各部材が組み上げられることにより製作されるイオントフォレーシス装置1の底面図であり、図4(B)はそのA−A断面図である。
図示のように、イオントフォレーシス装置1では、電極部材31が、領域11を開口toに位置合わせして第1支持体32の上面に張り合わされ、第1イオン選択膜13が、開口boの全体を被覆するように第1支持体32の下面に張り合わされている。
この結果、電極部材31の外周における第1支持体32との張り合わせ部分(封止代s1)によって、空孔hの上面側の液密が実現され、第1イオン選択膜13の外周における第1支持体32との張り合わせ部分(封止代s2)によって、空孔hの下面側の液密が実現される。
空孔hには、電解液を保持することができる。この電解液には、生理食塩水など、領域11から第1イオン選択膜13への導通を確保するための任意の電解液が使用できるが、水よりも酸化還元電位の低い電解質を溶解し、或いは複数種類の電解質を溶解した緩衝電解液を使用することで、通電時の電極反応によるガスの発生や好ましくないイオンの生成、或いはこれによるpH変化を抑制することができる。
上記の目的を達成することができる電解液としては、例えば、0.5Mのフマル酸ナトリウムと0.5Mのポリアクリル酸の11混合液を例示することができる。
この場合、空孔h中に電解液のみを保持することも可能であるが、天然繊維又は人工繊維の織布や不織布、多孔質膜、或いはゲルなどの適当な吸収性の担体に電解液を含浸させたものを保持することも可能である。
特に好ましい実施形態では、図示のように、空孔hに分極性電極12を保持することも可能である。なお、この場合、導電パターン31bの領域11は、分極性電極12に均一な電流密度での通電を実現するための集電体として機能する。
分極性電極12(電気2重層容量キャパシタ(ECDC)とも呼ばれる)は、電極の表面での電気2重層の形成により電解液への通電を生じる性質を有する電極であり、好ましくは、単位重量当たりの静電容量が1F/g以上の導電体を含有する分極性電極、或いは比表面積が10m/g以上の導電体を含有する分極性電極、或いは活性炭を含有する分極性電極を使用することができる。この場合、分極性電極12の静電容量を1F/g以上とし、或いは分極性電極の比表面積を10m/g以上とすることが特に好ましい。
上記活性炭としては、ヤシ殻、木粉、石炭、ピッチ、コークスなどの炭素を含有する原料を炭化、賦活することで得られるごく普通の活性炭を使用することが可能である。上記活性炭は、単位重量当たりの静電容量が1F/g以上であること、或いは比表面積が10m/g以上であることが好ましい。
分極性電極12に含有される上記活性炭としては活性炭繊維を使用することが可能であり、この場合には分極性電極12の取扱性の向上という追加的な効果を得ることができる。活性炭繊維は、例えば、織布や不織布の形態のものを使用することができ、特に、ノボロイド繊維(フェノール樹脂を繊維化した後、架橋処理し、分子構造を3次元化させた繊維)を炭化、賦活させたものを使用した場合には、取扱性や柔軟性、機械的強度(引っ張り強度など)に優れるとともに極めて比表面積が高く、静電容量の大きい分極性電極12を得ることができる。
活性炭又は活性炭繊維を含む分極性電極12は、活性炭又は活性炭繊維のみから構成されていても良く、賦型性や保型性、或いは取扱性向上のためのバインダーポリマーなどの他の成分が活性炭又は活性炭繊維に配合されていても良い。この場合に好適に使用することができるバインダーポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン又はポリフッ化ビニリデンフロライドを例示することができる。活性炭又は活性炭繊維97〜80重量部に対するバインダーポリマーの好ましい配合量は3〜20重量部である。
分極性電極12に活性炭又は活性炭繊維などの吸収性の素材が使用される場合には、分極性電極12に生理食塩水などの電解液を含浸させることが好ましく、これにより、分極性電極12からの通電性を高めることができる。
この場合、分極性電極12に含浸させる電解液にHPCやPVAなどの増粘剤を配合することが好ましく、これにより、分極性電極内での電解液の保持性を高め、分極性電極の取扱性を向上させることができる。特に好ましい実施形態では、ノボロイド繊維を炭化、賦活させた活性炭繊維に10%のPVAを配合した生理食塩水を含浸させた分極性電極12が使用される。
分極性電極12は、図示のように直接第1イオン選択膜13に接触させて第1イオン選択膜13への通電を行うようにしても良く、分極性電極12と第1イオン選択膜13の間に電解液の層、又は電解液を含浸させた適当な吸水性の担体を介在させても良い。
第1イオン選択膜13の下面側には、第1セパレータ14及び第2イオン選択膜15が配置される。この第1セパレータ14及び第2イオン選択膜15は、それぞれ第1イオン選択膜13及び第1セパレータ14の全体を被覆するように、接着剤層32aにより第1支持体32下面に張り合わされる。
この結果、第1イオン選択膜13の外周における第1支持体32との張り合わせ部分(図示の例における円環状の封止代s2)、及び第2イオン選択膜15の外周における第1支持体32との張り合わせ部分(図示の例における円環状の封止代s3)によって、空孔hの下面側における液密及び第1セパレータ14の部分の上下面側での液密が実現される。
ここで、第1イオン選択膜13は、通電の際に第1セパレータ14から空孔hへの第2極性のイオンの通過を選択的に許容する膜状の部材であり、好ましくは、空孔hから第1セパレータ14への第1極性のイオンの通過を遮断する特性を併せ有することができる。
第2イオン選択膜15は、通電の際に第1セパレータ14から生体皮膚S側への第1極性のイオンの通過を選択的に許容する特性を有する膜状の部材であり、好ましくは、生体皮膚Sから第1セパレータ14への第2極性のイオンの通過を遮断する特性を併せ有することができる。
第1、第2イオン選択膜13、15は、イオンの分子量やサイズ、或いは立体的形状に基づいて上記イオンの通過の許容及び遮断を行う半透膜(限外濾過膜など)の形態を採ることが可能であり、電荷に基づいて上記イオンの通過の許容及び遮断を行う電荷選択膜の形態を採ることも可能である。
電荷選択膜の形態のイオン選択膜13、15を使用する場合、それぞれ第2極性のイオン交換膜及び第1極性のイオン交換膜を好ましく使用することができる。具体的には、第1極性がプラスである場合の第1、第2イオン選択膜13、15としては、それぞれアニオン交換膜及びカチオン交換膜を使用することができ、第1極性がマイナスである場合の第1、第2イオン選択膜13、15としては、それぞれカチオン交換膜及びアニオン交換膜を好ましく使用することができる。
第2イオン選択膜15として第1極性のイオン交換膜を使用する場合、当該第2イオン選択膜15に第1極性の薬物イオンをドープすることが可能であり、この場合のイオントフォレーシス装置1は、作用側構造体として使用することができる。第2イオン選択膜15には治療や診断などの目的に応じた任意の薬物イオンをドープすることができるが、第1極性がプラスである場合の薬物イオンとしては、リドカインイオンやモルヒネイオンを例示することができ、第1極性がマイナスである場合の薬物イオンとしては、アスコルビン酸イオンを例示することができる。
第1セパレータ14には、電解液や薬液を含浸保持することができる濾紙、天然繊維又は合成繊維の織布や不織布、多孔質膜などの吸収性の素材よりなる膜状の部材を使用でき、特に好ましくは、絶縁性及び耐薬品性に優れるポリカーボネートなどの不織布を使用できる。
第1セパレータ14に、第1極性の薬物イオンを含む薬液を保持した場合には、イオントフォレーシス装置1を作用側構造体として使用することができる。第1セパレータ14には治療や診断などの目的に応じた任意の薬液を保持することができるが、第1極性がプラスである場合の薬液としては、塩酸リドカイン水溶液や塩酸モルヒネ水溶液を例示することができ、第1極性がマイナスである場合の薬液としては、アスコルビン酸水溶液を例示することができる。
一方、第1セパレータに薬液ではない電解液を保持し、第2イオン選択膜に薬物イオンのドープを行わない場合には、イオントフォレーシス装置1は、非作用側構造体として使用することができる。
イオントフォレーシス装置1を作用側構造体として使用する場合、イオントフォレーシス装置1及びその対極の役割を果たし得る任意の構成の非作用側構造体(例えば、イオントフォレーシス装置101における非作用側構造体120)を生体皮膚に当接させて、導電パターン31bに不図示の電源からの第1極性の電圧を印加し、上記非作用側構造体に第2極性の電圧を印加して薬物イオンの投与を行うことができる。
イオントフォレーシス装置1を非作用側構造体として使用する場合、第2極性の電圧を印加することで薬物イオンを放出し得る任意の構成の作用側構造体(例えば、イオントフォレーシス装置101における作用側構造体110)及びイオントフォレーシス装置1を生体皮膚に当接させて、上記作用側構造体に不図示の電源からの第2極性の電圧を印加し、導電パターン31bに第1極性の電圧を印加して薬物イオンの投与を行うことができる。
上記のように、イオントフォレーシス装置1では、電極部材31、第1イオン選択膜13及び第2イオン選択膜15を第1支持体32に張り合わせることで形成される封止代s1〜s3により空孔h及び第1セパレータ14を液密に保つ構成であるため、第1支持体32に発砲ウレタンフォームなどの柔軟な素材、或いは柔軟で薄型の素材を使用することによる生体への適用の容易性と、比較的簡易な作業による液密の確保を両立させることができる。
また、イオントフォレーシス装置1では、第1セパレータ14によって第1イオン選択膜13の全体が被覆される構成であるために、第1イオン選択膜13と第2イオン選択膜15を確実に非接触に保つことができる。従って、第1イオン選択膜13及び第2イオン選択膜15にそれぞれ第2極性及び第1極性のイオン交換膜を使用した場合でも、通電の際の水の電気分解による皮膚界面のpH値変動や輸率の低下などの問題を回避することが可能である。
図5〜図7は、上記イオントフォレーシス装置1の変形例に係るイオントフォレーシス装置1a〜1cの構成を示す説明図である。
図5に示すイオントフォレーシス装置1aは、第1セパレータ14の寸法(平面視の寸法)が第1イオン選択膜13よりも小さくなっている点においてイオントフォレーシス装置1と相違している。
この場合、第1イオン選択膜13と第2イオン選択膜15は図示のように部分的に接触することになるが、第1イオン選択膜13と第2イオン選択膜の双方にイオン交換膜を使用しない場合、或いは通電量が小さいなどのために両イオン交換膜の界面での水の電気分解が問題とならないような場合には、このような構成を採用することも可能である。
なお、この場合の第1セパレータ14は、第1イオン選択膜13と第2イオン選択膜15の間に挟み込むことで固定することができ、或いは熱圧着などの手法により第1セパレータ14と第1イオン選択膜13及び/又は第2イオン選択膜とを接着することもできる。
図6に示すイオントフォレーシス装置1bは、イオントフォレーシス装置1と同様の構成に加えて電極部材31の全体を被覆できる寸法に形成された第2支持体33を備えている。
第2支持体33は、例えば第2支持体33の下面に形成された接着剤層33aにより電極部材31及び第1支持体32の上面に張り付けることができる。
この場合には、第1支持体32の上面側において、空孔hの液密を実現するための2つの支持体(電極部材31と第2支持体33)による2重の封止が行われるために、より確実な液密を達成することができる。即ち、電極部材31の外周における第1支持体32との張り合わせ部分(封止代s1)に加えて、第2支持体33の外周における第1支持体32との張り合わせ部分(封止代s4)により空孔hの上面側におけるより確実な液密が実現される。
或いは、この変形例では、電極部材31の下面に接着剤層31cを形成せずに、第2支持体33と第1支持体32の間に挟み込むことで電極部材31を固定して、第2支持体33の外周における第1支持体32との張り合わせ部分(封止代s4)のみによって空孔hの上面側における液密を確保することも可能である。
第2支持体33は、第1支持体32と同様の素材により形成することができる。第2支持体33の平面形状は、電極部材31の全体を被覆できれば足り、一例としては、第1支持体32と同一寸法の同一形状にすることができる。
図7に示されるイオントフォレーシス装置1cは、金属やカーボンの成型体などにより構成され、円盤部分31dと、その概略中央から突出する端子部分31eとを有する電極部材31が使用される点、及び円盤部分31dの全体を被覆できる寸法に形成された第2支持体33を備える点においてイオントフォレーシス装置1と相違している。
このイオントフォレーシス装置1cでは、端子部分31eを第2支持体33に形成された小孔から外部に突出させることで、不図示の電源への接続が行われる。また、第2支持体33が、第2支持体33の下面側に形成された接着剤層33aによって第1支持体32に固定されるようになっており、この接着部分(封止代s5)によって、空孔hの上面側における液密を確保することが可能である。
図8〜図10は、本発明の他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置2に使用される主要な部材を示す説明図であり、図8(A)、(B)には、電極部材34の底面図及びそのA−A断面図が示されており、図9(A)、(B)には、第1支持体35の底面図及びそのA−A断面図が示されている。また、図10には、第1支持体35、第1〜第4イオン選択膜13、15、23、25及び第1、第2セパレータ14、24が側面視で示されている。
図8に示されるように、電極部材34は、イオントフォレーシス装置1の電極部材31と同様、基体34aと、その下面に形成された導電パターン34bを有しているが、導電パターン34bは、2本の細長い領域41、42と、この細長い領域41、42にそれぞれ接続されたある面積を有する領域(図示の例では円形の領域)11、12とで構成されている。電極部材34下面の領域11、12の周囲には、電極部材31と同様の接着剤層34cが形成されている。
図9に示されるように、第1支持体35は、平面視円形の外形を有し、その中央付近には、第1支持体35の上下面に形成された開口to1及びbo1に連通する空孔h1と、この空孔h1から離間した位置において第1支持体35の上下面に形成された開口to2及びbo2に連通する空孔h2が形成されている。
第1支持体35は、第1支持体32と同様の素材により形成することができる。
また、第1支持体35の下面の開口bo1、bo2の周囲には、第1〜第4イオン選択膜13、15、23、25及び第1、第2セパレータ14を接着させ、或いは薬物イオンの投与に際して生体皮膚Sへの密着性を高めるための接着剤層35aが形成される。
本実施形態において使用される第1イオン選択膜13、第1セパレータ14及び第2イオン選択膜15の形状及び寸法は、イオントフォレーシス装置1における対応する部材と同様の形状及び寸法とされており、第3イオン選択膜23、第2セパレータ24及び第4イオン選択膜25は、好ましくは開口bo2と平面視において相似の形状(図示の例では円形)とされており、第3イオン選択膜23は開口bo2の全体を、第2セパレータ24は第3イオン選択膜23の全体を、第4イオン選択膜25は第2セパレータ24の全体をそれぞれ被覆できる寸法とされている。即ち、これらの部材が平面視円形である場合は、開口bo2、第3イオン選択膜23、第2セパレータ24及び第4イオン選択膜25の外径をそれぞれr、r、r及びrとして、r<r<r<rの関係とされる(図10)。
図11(A)は、上記の各部材が組み上げられることにより製作されるイオントフォレーシス装置2の底面図であり、図11(B)はそのA−A断面図である。
図示のように、イオントフォレーシス装置2では、電極部材34が、領域11、12を開口to1、to2に位置合わせして第1支持体32の上面に張り合わされ、第1、第3イオン選択膜13、23が、それぞれ開口bo1、bo2の全体を被覆するように第1支持体32の下面に張り合わされている。
この結果、イオントフォレーシス装置1について上記したと同様の態様で空孔h1、h2の上下面側での液密が実現される。
空孔h1、h2には、イオントフォレーシス装置1と同様の電解液又は分極性電極12を同様の態様で保持することができる。
第1イオン選択膜13の下面側には、イオントフォレーシス装置1と同様の態様で第1セパレータ14及び第2イオン選択膜15が配置されて第1セパレータ14の部分の液密が実現される。
第3イオン選択膜23の下面側には、第2セパレータ24及び第4イオン選択膜25が配置される。この第2セパレータ24及び第4イオン選択膜25は、それぞれ第3イオン選択膜23及び第2セパレータ24の全体を被覆するように、接着剤層35aにより第1支持体35下面に張り合わされる。
この結果、第3イオン選択膜23の外周における第1支持体35との張り合わせ部分(図示の例における円環状の封止代s6)、及び第4イオン選択膜25の外周における第1支持体35との張り合わせ部分(図示の例における円環状の封止代s7)によって、第2セパレータ24の部分の液密が実現される。
ここで、第1、第4イオン選択膜13、25は、イオントフォレーシス装置1における第1イオン選択膜13と同様の構成とすることができ、第2、第3イオン選択膜15、23は、イオントフォレーシス装置1における第2イオン選択膜15と同様の構成とすることができる。
第2、第4イオン選択膜15、25のいずれか一方又は双方は、イオン交換膜により構成し、これに薬物イオンをドープすることが可能である。この場合のイオントフォレーシス装置2では、当該薬物イオンのドープが行われたイオン選択膜15、25からその薬物イオンが生体に投与される。なお、第2イオン選択膜15に薬物イオンをドープする場合には、その薬物イオンは第1極性の薬物イオンであり、第4イオン選択膜25に薬物イオンをドープする場合には、その薬物イオンは第2極性の薬物イオンである。
第1、第2セパレータ14、24は、イオントフォレーシス装置1における第1セパレータ14と同様の構成とすることができる。
第1、第2セパレータ14、24のいずれか一方又は双方は、薬物イオンを含む薬液を保持することが可能である。この場合のイオントフォレーシス装置2では、当該薬液を保持する第1、第2セパレータ14、24から第2、第4イオン選択膜15、25を介して当該薬液に含まれる薬物イオンが生体に投与される。なお、第1セパレータ14に薬液を保持する場合には、その薬液中に含まれる薬物イオンは第1極性の薬物イオンであり、第2セパレータ24に薬液を保持する場合には、その薬液中に含まれる薬物イオンは第2極性の薬物イオンである。
イオントフォレーシス装置1では、第2イオン選択膜15及び第4イオン選択膜25を生体皮膚Sに当接させて、不図示の電源からの第1極性及び第2極性の電圧をそれぞれ、領域11、21に印加することにより上記薬物イオンの投与が行われる。
上記のように、イオントフォレーシス装置2では、電極部材34、第1〜第4イオン選択膜13、15、23、25及び第1、第2セパレータ14、24を第1支持体35に張り合わせることで形成される封止代s1〜s3、s6及びs7により空孔h1、h2及び第1、第2セパレータ14、24を液密に保つ構成であるため、第1支持体35に発砲ウレタンフォームなどの柔軟な素材や薄型の素材を使用することによる生体への適用の容易性と、比較的簡易な作業による液密の確保を両立させることができる。
また、イオントフォレーシス装置2では、第1、第2セパレータ14、24によって第1、第3イオン選択膜13、23の全体が被覆される構成であるために、第1イオン選択膜13と第2イオン選択膜15、並びに、第3イオン選択膜23と第4イオン選択膜25を確実に非接触に保つことができる。従って、第1〜第4イオン選択膜13、15、23、25にそれぞれイオン交換膜を使用した場合でも、通電の際の水の電気分解による皮膚界面のpH値変動や輸率の低下などの問題を回避することが可能である。
なお、イオントフォレーシス装置2においても、イオントフォレーシス装置1に関して図5〜図7を用いて説明したと同様の変形を加えることが可能である。
以上、いくつかの実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内において種々の改変が可能である。
例えば、上記実施形態では、第1支持体に形成される空孔が、上下面の開口に連通する場合について説明したが、空孔の上面側を閉鎖し、空孔が第1支持体の下面の開口にのみ連通するようにすることで空孔の上面側における液密を達成することも可能であり、その場合の空孔への通電は、例えば先端を先鋭にした導体を例えば第1支持体の上面から空孔内に差し込むなどで行うことが可能である。
また、上記実施形態では、分極性電極が使用される場合における当該分極性電極への通電が集電体を介して行われる場合について説明したが、集電体を介在させずに給電線を直接分極性電極に接続するようにしても構わない。
また、上記実施形態では、特に好ましい態様として、導電パターンの領域11、21を集電体として機能させて、空孔h、h1、h2内に分極性電極12、22を収容する場合について説明したが、この態様における分極性電極12及び/又は22を、銀電極やカーボン電極などの分極性電極ではない電極に置換することも可能である。
また、上記実施形態では、第1、第2セパレータ14、24に電解液又は薬液が保持される場合について説明したが、これに電解質を含まない水を保持することも可能である。特に、第2イオン選択膜として第1極性のイオン交換膜を使用し、或いは第4イオン選択膜として第2極性のイオン交換膜を使用して当該イオン交換膜に薬物イオンをドープする場合であれば、第1セパレータ14又は第2セパレータ24に水を保持することで、薬物イオンがセパレータ中の電解質イオンに置換されてイオン交換膜中の薬物イオン濃度が低下することを防止できるため、装置特性の経時的変化が抑制されたイオントフォレーシス装置を提供することが可能となる。
上記実施形態おける各部材の形状、寸法、材質などは単なる例として記述したものであり、本発明はこれらの記述により限定されるものではない。また、上記実施形態の説明に用いた各図面は、理解の容易化のための変形が加えられており、その縮尺等は正確なものではない。
本発明の一実施形態に係るイオントフォレーシス装置に使用される電極部材の底面図(A)及びそのA−A断面図(B)。 本発明の一実施形態に係るイオントフォレーシス装置に使用される第1支持体の底面図(A)及びそのA−A断面図(B)。 本発明の一実施形態に係るイオントフォレーシス装置に使用される主要な構成部材を側面視で示す説明図。 本発明の一実施形態に係るイオントフォレーシス装置の底面図(A)及びそのA−A断面図(B)。 本発明の変形形態に係るイオントフォレーシス装置を示す説明図。 本発明の変形形態に係るイオントフォレーシス装置を示す説明図。 本発明の変形形態に係るイオントフォレーシス装置を示す説明図。 本発明の他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置に使用される電極部材の底面図(A)及びそのA−A断面図(B)。 本発明の他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置に使用される第1支持体の底面図(A)及びそのA−A断面図(B)。 本発明の他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置に使用される主要な構成部材を側面視で示す説明図。 本発明の他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置の底面図(A)及びそのA−A断面図(B)。 従来のイオントフォレーシス装置の構成を示す説明図。
符号の説明
1、1a〜1c、2・・・イオントフォレーシス装置
11、21・・・電極又は集電体として使用される領域
12・・・分極性電極
13・・・第1イオン選択膜
14・・・第1セパレータ
15・・・第2イオン選択膜
23・・・第3イオン選択膜
24・・・第2セパレータ
25・・・第4イオン選択膜
31、34・・・電極部材
31a、34a・・・基体
31b、34b・・・導電パターン
31c、34c・・・接着剤層
32、35・・・第1支持体
32a、35a・・・粘着剤層
33・・・第2支持体
33a・・・接着剤層
41、42・・・給電線として使用される領域
S・・・生体皮膚
bo、bo1、bo2、to、to1、to2・・・開口
h、h1、h2・・・空孔
s1〜s7・・・封止代
101・・・イオントフォレーシス装置
110・・・作用側構造体
120・・・非作用側構造体
111、121・・・電極
112、122、124・・・電解液保持部
113、115、123、125・・・イオン交換膜
114・・・薬液保持部
116、126・・・容器
140・・・電源
141、142・・・給電線

Claims (9)

  1. 上面及び下面を有し、前記下面の第1開口に連通する第1空孔を有する第1支持体と、
    前記第1空孔の上面側及び/又は前記第1空孔の内部に配置され、第1極性の電圧が印加される第1電極と、
    前記第1空孔の下面側に配置され、第2極性のイオンの通過を選択的に許容する第1イオン選択膜であって、前記第1開口の全体を被覆できる寸法に形成された第1イオン選択膜と、
    前記第1イオン選択膜の下面側に配置された第1セパレータと、
    前記第1セパレータの下面側に配置され、第1極性のイオンの通過を選択的に許容する第2イオン選択膜であって、前記第1イオン選択膜の全体を被覆できるとともに、前記第1セパレータの全体を被覆できる寸法に形成された第2イオン選択膜とを備えるイオントフォレーシス装置であって、
    前記第1イオン選択膜は、前記第1開口の全体を被覆するようにその外周が前記第1支持体の前記下面に接着され、前記第2イオン選択膜は、前記第1イオン選択膜及び前記第1セパレータの全体を被覆するようにその外周が前記第1支持体の前記下面に接着されていることを特徴とするイオントフォレーシス装置。
  2. 前記第1イオン選択膜及び第2イオン選択膜がそれぞれ第2極性及び第1極性のイオン交換膜であり、
    前記第1セパレータが前記第1イオン選択膜の全体を被覆できる寸法に形成され、
    前記第1セパレータは、前記第1イオン選択膜の全体を被覆するようにその外周が前記第1支持体の前記下面に接着されていることを特徴とする請求項1に記載のイオントフォレーシス装置。
  3. 前記第2イオン選択膜が第1極性のイオン交換膜であり、
    前記第2イオン選択膜に第1極性の薬物イオンがドープされていることを特徴とする請求項1又は2に記載のイオントフォレーシス装置
  4. 前記第1セパレータに第1極性の薬物イオンを含む薬液が保持されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のイオントフォレーシス装置。
  5. 前記第1電極が分極性電極であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のイオントフォレーシス装置
  6. 前記第1支持体が、前記第1空孔から離間した位置に配置され、前記下面の第2開口に連通する第2空孔を更に有しており、
    前記第2空孔の上面側及び/又は前記第2空孔の内部に配置され、第2極性の電圧が印加される第2電極を更に備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のイオントフォレーシス装置。
  7. 前記第2空孔の下面側に配置され、第1極性のイオンの通過を選択的に許容する第3イオン選択膜であって、前記第2開口の全体を被覆できる寸法に形成された第3イオン選択膜と、
    前記第3イオン選択膜の下面側に配置され、前記第3イオン選択膜の全体を被覆できる寸法に形成された第2セパレータと、
    前記第2セパレータの下面側に配置され、第2極性のイオンの通過を選択的に許容する第4イオン選択膜であって、前記第2セパレータの全体を被覆できる寸法に形成された第4イオン選択膜とを更に備え、
    前記第3イオン選択膜、前記第2セパレータ及び前記第4イオン選択膜は、それぞれ前記第2開口、前記第3イオン選択膜及び前記第2セパレータの全体を被覆するように、それぞれの外周が前記第1支持体の前記下面に接着されていることを特徴とする請求項6に記載のイオントフォレーシス装置。
  8. 前記第2電極が分極性電極であることを特徴とする請求項6又は7に記載のイオントフォレーシス装置。
  9. 前記第1支持体の前記上面に接着される第2支持体を更に備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のイオントフォレーシス装置。
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