JP2007037640A - イオントフォレーシス装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 薬剤液の変色、薬剤液保持部での結晶の析出、薬効の低下、薬剤の変質による有害物資の生成などを生じることなく長期間存置することができるイオントフォレーシス装置を提供する
【解決手段】 溶液中において第1導電型の第1電解イオンと第2導電型の第2電解イオンに解離する電解質の溶液を保持する電解液保持部と、電解液保持部の前面側に配置され、溶液中において第1導電型の薬剤イオンと第2導電型の薬剤対イオンに解離する薬剤の溶液を保持する薬剤液保持部とを備えるイオントフォレーシス装置において、電解液保持部と薬剤液保持部の間に、第1導電型のイオン交換基が導入された第1イオン交換膜と、第2導電型のイオン交換基が導入された第2イオン交換膜を配置する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、作用側構造体に薬剤液を保持する薬剤液保持部と、電解液を保持する電解液保持部とを備えるイオントフォレーシス装置であって、上記薬剤液保持部における薬剤液の変質を抑止することができるイオントフォレーシス装置に関する。
特許文献1、2は、薬効成分がプラス又はマイナスの導電型の薬剤イオンに解離するイオン解離性の薬剤を投与するためのイオントフォレーシス装置を開示している。
図1は、特許文献1、2に開示されるイオントフォレーシス装置が備える作用側構造体Aの構成を模式的に示す説明図である。
図示されるように、この作用側構造体Aは、
(1)電極部材11、
(2)溶液中において第1導電型の第1電解イオン(E)と、第2導電型の第2電解イオン(E)に解離する電解質を溶解した電解液であって、電極部材11と接触を保つようにされた電解液を保持する電解液保持部12、
(3)電解液保持部12の前面側(皮膚側)に配置され、第2導電型のイオン交換基が導入されたイオン交換膜13、
(4)イオン交換膜13の前面側に配置され、溶液中において第1導電型の薬剤イオン(D)と、第2導電型の薬剤対イオン(D)に解離する薬剤を溶解した薬剤液を保持する薬剤液保持部14、及び、
(5)薬剤液保持部14の前面側に配置され、第1導電型のイオン交換基が導入されたイオン交換膜15を備えている。
この作用側構造体Aを備えるイオントフォレーシス装置において第1導電型の電圧(図の例ではプラス)を電極部材11に印加した場合、第1導電型のイオン交換基が導入されたイオン交換膜15は、第1導電型のイオンの通過を許容する一方、第2導電型のイオンの通過を抑制する作用を有するために、薬剤イオン(D)がイオン交換膜15を介して生体(ヒトや動物)に投与される一方、生体対イオン(B/生体表面又は生体内に存在するイオンであって、薬剤イオンとは反対導電型に荷電したイオン)の薬剤液保持部14への移行が抑制され、その結果、薬剤イオンの投与効率が上昇する。
また、第2導電型のイオン交換基が導入されたイオン交換膜13は、第2導電型のイオンの通過を許容する一方、第1導電型のイオンの通過を抑制する作用を有するために、薬剤イオン(D)の電解液保持部12への移行及び電極部材11近傍で発生するHイオンの薬剤液保持部14への移行が抑制され、薬剤が電極部材11近傍で分解されることによる有害物質の生成や、皮膚界面におけるpH値の急激な変動が防止される。
しかしながら、本発明者らの研究により、このイオントフォレーシス装置では、使用する電解質の種類、薬剤の種類又はその組み合わせによって、作用側構造体を組み立ててからある程度の時間が経過することにより薬剤液の変色、薬剤液保持部での結晶の析出、薬効の低下、薬剤の変質による有害物資の生成などの現象を生じる場合があることが明らかとなった。
特許第3040517号公報 国際公開第03/037425号パンフレット
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、作用側構造体又は作用側構造体を含むイオントフォレーシス装置(以下、「作用極構造体又はイオントフォレーシス装置の全体」を単に「装置」と称する場合がある)における薬剤液の変色、薬剤液保持部での結晶の析出、薬効の低下、薬剤の変質による有害物資の生成などを抑止又は抑制することができるイオントフォレーシス装置を提供することをその課題とする。
また本発明は、装置を一定以上の期間存置した場合における薬剤液の変色、薬剤液保持部での結晶の析出、薬効の低下、薬剤の変質による有害物資の生成などを抑止又は抑制することができるイオントフォレーシス装置を提供することをもその課題とする。
また本発明は、装置を一定以上の期間存置した後に薬剤の投与を行う場合に生じる薬剤の投与効率の低下を抑止又は抑制することができるイオントフォレーシス装置を提供することをもその課題とする。
また本発明は、装置を一定以上の期間存置した後に薬剤の投与を行う場合に電解液保持部で生じる薬剤の分解、或いはこれによる有害物質の生成を抑止又は抑制することができるイオントフォレーシス装置を提供することをもその課題とする。
また本発明は、2つの電解液保持部を有する非作用構造体を採用した場合における両電解液保持部における組成変化を抑止又は抑制することができるイオントフォレーシス装置を提供することをもその課題とする。
また本発明は、組み立てられた作用側構造体又は非作用側構造体又はこれらを含むイオントフォレーシス装置全体の長期間に渡る存置を可能にし、もって、組み立てられた形態での流通、保管などが可能とされたイオントフォレーシス装置を提供することをもその課題とする。
本発明は、上記課題を解決したものであり、
溶液中において第1導電型の第1電解イオンと第2導電型の第2電解イオンに解離する電解質の溶液を保持する電解液保持部と、
前記電解液保持部の前面側に配置され、溶液中において第1導電型の薬剤イオンと第2導電型の薬剤対イオンに解離する薬剤の溶液を保持する薬剤液保持部とを備えるイオントフォレーシス装置であって、
前記電解液保持部と前記薬剤液保持部の間に、第1導電型のイオン交換基が導入された第1イオン交換膜と、第2導電型のイオン交換基が導入された第2イオン交換膜が配置されていることを特徴とするイオントフォレーシス装置である。
本発明は、図1に示される作用側構造体Aにおける、
(1)溶液中において第1導電型の第1電解イオン、及び、前記第1導電型の反対の導電型である第2導電型の第2電解イオンに解離する電解質を溶解した電解液を保持する電解液保持部、
(2)前記電解液保持部の前面側に配置され、前記第2導電型のイオンを選択的に通過させるイオン交換膜、及び、
(3)前記第1イオン交換膜の前面側に配置され、溶液中において前記第1導電型の薬剤イオン、及び、前記第2導電型の薬剤対イオンに解離する薬剤を溶解した薬剤液を保持する薬剤液保持部を有する作用側構造体を備えるイオントフォレーシス装置を前提とするものである。
上記した通り、この構成の作用側構造体を一定以上の期間存置すると、長期間に渡って変質を生じない安定な薬剤を使用した場合であっても、電解質の種類、薬剤の種類又はその組み合わせによっては、薬剤液の変色、薬剤液保持部における結晶の析出、或いは、薬剤の変質による薬効の低下や有害物質の生成などの現象が生じる場合があることが本発明者らにより見出された。
本発明者らは、これらの現象の原因が、電解液保持部から薬剤液保持部に移行する第2電解イオンにあり、この第2電解イオンの存在による薬剤液のpHの変化などにより薬剤液の変色や薬剤液保持部における結晶の析出が生じ、或いは、この第2電解イオンが薬剤と反応を生じることで薬効が低下し、有害物質が生成されたとの推測のもとに鋭意検討を重ねた結果、電解液保持部と薬剤液保持部の間に第1導電型のイオン交換基が導入されたイオン交換膜(第1イオン交換膜)を更に配置することにより、第2電解イオンの薬剤液保持部への移行が効果的に遮断され、上記の各現象を生じることなく装置を存置できる期間を延長できること、及び、このような構成においても薬剤投与に必要な通電特性が十分に維持できることを見出すことにより、本発明を完成させたものである。
本発明者らは、本発明と同様の目的を達成する他の手段として、電解液保持部と薬剤液保持部の間に、適切な分子量分画特性を有する多孔質分離膜を配置する発明(以下、先の発明という)を案出し、既に特願2004−347814号として出願を行っているが、本発明は、この先の発明の改良発明に相当する。
即ち、先の発明は、第2電解イオンの通過を阻止する一方、薬剤対イオンの通過を許容できる程度の適切なサイズの小孔を有する多孔質分離膜を使用することで、薬剤液保持部における上記各現象の発生の抑制と、薬剤投与に必要な通電性の確保を両立するものである。
しかしながら、電解液保持部に保持される電解質や薬剤液保持部に保持される薬剤の種類によっては、上記の特性を満たす多孔質分離膜を入手することが困難な場合があり、また、多孔質分離膜中の小孔のサイズを全ての製造ロットで均一に保つことは容易ではないために、作用極構造体の存置期間として一定の期間を保障するには多孔質分離膜の品質管理をある程度厳格に行うことが必要となる問題を有していた。
本発明では、第2電解イオンの薬剤液保持部への移行は、第1イオン交換膜に導入されるイオン交換基の電気的作用により抑止されるため、電解液保持部や薬剤液保持部にどのような電解質、薬剤が保持される場合であっても何らの支障無く第2電解イオンの移行を抑制することが可能であり、また第1発明における程の厳格な品質管理を要せずして、より確実に第2電解イオンの薬剤液保持部への移行を抑止することができる。
ここで図2(a)、(b)を参照しつつ、薬効成分がプラスの薬剤イオンに解離する薬剤を投与するためのイオントフォレーシス装置を例にとり、本発明のメカニズムを説明する。なお、薬効成分がマイナスの薬剤イオンに解離する薬剤の投与を行うイオントフォレーシス装置の場合は、図2及び以下の説明における各イオン、印加電圧及び各イオン交換膜に導入されるイオン交換基の極性が逆転することになる。
図2中、11は電極部材であり、12はプラスの第1電解イオンEとマイナスの第2電解イオンEに解離する電解質の溶液を保持する電解液保持部であり、14はプラスの薬剤イオンDとマイナスの薬剤対イオンDに解離する薬剤の溶液を保持する薬剤液保持部である。電解液保持部12と薬剤液保持部の中間にはカチオン交換膜13C及びアニオン交換膜13Aが配置されている。
図2(a)に示されるように、装置の保管中、拡散の作用により電解液保持部12、薬剤液保持部14中の各イオンがそれぞれ薬剤液保持部14、電解液保持部12に移行しようとする。
しかし、薬剤イオンDの電解液保持部12への移行がアニオン交換膜13Aの作用により阻止ないし抑制されるため、装置を長期間存置した後に薬剤の投与を行った場合における電極部材11近傍での薬剤の分解を防止できる。
また第2電解イオンEの薬剤液保持部14への移行がカチオン交換膜13Cの作用により阻止ないし抑制されるため、薬剤液の変色、薬剤液保持部における結晶の析出、或いは、薬剤の変質による薬効の低下や有毒物質の生成などを生じることなく装置を存置できる期間を延長することができる。
上記における薬剤イオンD及び第2電解イオンEの移行の抑制能は、アニオン交換膜13A及びカチオン交換膜13Cのイオン交換容量(又はイオン交換膜の単位面積に導入されるイオン交換基の量)などにより容易に調整することが可能である。
一方、薬剤液保持部14を生体皮膚に当接させた状態で電極部材11にプラス電圧を印加すると(図2(b))、薬剤イオンDが生体内に投与される一方、第1電解イオンE及び薬剤対イオンDが、それぞれ、薬剤液保持部14、電解液保持部12側に引き寄せられる。
この場合、カチオン交換膜13C、アニオン交換膜13Aが、それぞれ薬剤対イオンD及び第1電解イオンEの移行を抑制する作用を及ぼすが、カチオン交換膜13C又はアニオン交換膜13Aの輸率をある程度低く設定することにより、薬剤イオンDの投与に必要な通電性を確保できる程度に薬剤対イオンDが電解液保持部12に移行でき、或いは第1電解イオンEが薬剤液保持部14に移行できるようにすることが可能である。
なお、カチオン交換膜13C又はアニオン交換膜13Aの輸率は、それぞれのイオン交換膜13C、13Aに導入するイオン交換基の種類やイオン交換容量などにより容易に調整することが可能である。
また、薬剤イオンDの投与に必要な通電性を十分に確保できる程度にカチオン交換膜13C又はアニオン交換膜13Aの輸率を低く設定した場合でも、無通電時におけるアニオン交換膜13Aによる薬剤イオンDの電解液保持部12への移行の阻止ないし抑制機能、カチオン交換膜13Cによる第2電解イオンの薬剤液保持部への移行の阻止ないし抑制機能は十分に発揮されることが実験的に確認されている。
本発明における第1イオン交換膜(図2におけるカチオン交換膜13C)は、第1導電型のイオン交換基(対イオンが第1導電型のイオンである交換基)が導入されたイオン交換膜である。本発明の第1イオン交換膜には、市場において入手できる任意のカチオン交換膜又はアニオン交換膜を使用することができ、特に好ましくは、多孔質フィルムの孔の一部または全部に、第1導電型のイオン交換基が導入されたイオン交換樹脂を充填させたタイプのイオン交換膜を使用することができる。
本発明における第2イオン交換膜(図2におけるアニオン交換膜13A)は、第2導電型のイオン交換基(対イオンが第2導電型のイオンである交換基)が導入されたイオン交換膜である。本発明の第2イオン交換膜には、市場において入手できる任意のカチオン交換膜又はアニオン交換膜を使用することができ、特に好ましくは、多孔質フィルムの孔の一部または全部に、第2導電型のイオン交換基が導入されたイオン交換樹脂を充填させたタイプのイオン交換膜を使用することができる。
上記第1イオン交換膜と第2イオン交換膜は、電解液保持部と薬剤液保持部の間に配置されるが、必ずしもこれらは接着などにより一体化されている必要はなく、単に電解液保持部と薬剤液保持部の間に第1、第2のイオン交換膜を並べて(積層して)使用することも可能である。
本発明における第1イオン交換膜の輸率は、電解液保持部と薬剤液保持部の間に第1イオン交換膜を配置して電解液保持部側から第1導電型の電圧を印加した場合に、第1イオン交換膜を介して運ばれる総電荷のうちの電解液保持部に存在する第1導電型のイオンが薬剤液保持部側に移行することにより運ばれる電荷量の割合として定義され、第2イオン交換膜の輸率は、電解液保持部と薬剤液保持部の間に第2イオン交換膜を配置して電解液保持部側から第1導電型の電圧を印加した場合に、第2イオン交換膜を介して運ばれる総電荷のうちの薬剤液保持部に存在する第2導電型のイオンが電解液保持部側に移行することにより運ばれる電荷量の割合として定義される。
本明細書において「薬剤」の語は、調製の有無を問わず、一定の薬効又は薬理作用を有し、病気の治療、回復、予防、健康の増進、維持などの目的で生体(人又は動物)に適用される物質の意味で用いている。
本明細書における「薬剤イオン」は、薬剤がイオン解離することにより生じるイオンであって、薬効ないし薬理作用を担うイオンを意味し、「薬剤対イオン」は、薬剤イオンの対イオンを意味する。薬剤の薬剤イオン及び薬剤対イオンへの解離は、薬剤を水、アルコール類、酸、アルカリなどの溶媒に溶解させることにより生じるものであっても良く、更に電圧の印加やイオン化剤の添加等を行うことにより生じるものであっても良い。
本発明における「第1導電型」は、プラス又はマイナスの電気極性を意味し、「第2導電型」は第1導電型と反対の電気極性(マイナス又はプラス)を意味する。
本発明における電解液保持部の電解液に含まれる第1電解イオン、第2電解イオンは必ずしもそれぞれ単一種類である必要はなく、いずれか一方又は双方が複数種類であっても構わない。同様に、薬剤液保持部に含まれる薬剤イオン、薬剤対イオンは必ずしもそれぞれ単一種類である必要はなく、いずれか一方又は双方が複数種類であっても構わない。
本発明では、第2イオン交換膜が第1イオン交換膜よりも高い輸率を有することが好ましい(請求項2)。
上記の通り、本発明においては、作用側構造体に印加される第1導電型の電圧により、薬剤液保持部から電解液保持部への薬剤対イオンの移行及び/又は電解液保持部から薬剤液保持部への第1電解イオンの移行が生じ、これにより、薬剤液保持部への通電が行われる。
しかし、薬剤液保持部における第1電解イオンの濃度が増大すると、特に第1電解イオンの移動度が薬剤イオンの移動度に比して大きい場合には、薬剤イオンの生体への投与効率が低下する問題を生じる。また、第1電解イオンの種類によっては、生体への安全性などの観点から生体に移行させることが好ましくない場合もある。
請求項2の発明はこのような問題を解決するものであり、第2イオン交換膜の輸率を第1イオン交換膜の輸率よりも高くすることで、通電時における薬剤液保持部から電解液保持部への薬剤対イオンの移行を増大させる一方で、電解液保持部から薬剤液保持部への第1電解イオンの移行を抑制することが可能となる。従って、薬剤液保持部における第1電解イオン濃度の増大及びこれによる薬剤イオンの投与効率の低下を抑止し、第1電解イオンが生体に移行することによる安全面での懸念を解消することができる。
このような目的を達成するための第1イオン交換膜の輸率の好ましい範囲は、無通電時における第2電解イオンの薬剤液保持部への移行を十分に抑止でき、通電時において薬剤投与に必要な通電性が確保できる程度に薬剤対イオンの電解液保持部への移行が生じる範囲である。薬剤対イオンの移行のみによって十分な通電性が確保される場合には、第2イオン交換膜の輸率はなるべく高く設定することが好ましい。
第1イオン交換膜の好ましい輸率の範囲としては0.7〜0.9を挙げることができ、第2イオン交換膜の好ましい輸率の範囲としては、0.9〜1.0を挙げることができる。
本発明においては、第1イオン交換膜を第2イオン交換膜の前面側に配置することが可能である(請求項3)。
上記の通り、本発明においては、薬剤液保持部への通電を行うためには、薬剤液保持部から電解液保持部への薬剤対イオンの移行及び/又は電解液保持部から薬剤液保持部への第1電解イオンの移行が生じることが必要であるが、第1、第2イオン交換膜の輸率がともに1に近い高い値を有している場合には、これらのイオンの移動が強く制限されるために薬剤液保持部への十分な通電が確保できない場合を生じ得る。
請求項3の発明はそのような場合に有用であり、第1イオン交換膜を第2イオン交換膜の前面側に配置することで第1、第2イオン交換膜の界面における水の電気分解を生じ易くさせることができ、この電気分解により生じたH+イオン、OH−イオンの電解液保持部、薬剤液保持部への移行により必要な通電性を確保することが可能となる。
しかしながら、薬剤液保持部におけるH+イオン、OH−イオンの濃度が増大すると、これらのイオンが薬剤イオンと競合する結果、薬剤の投与効率が低下し、また、皮膚界面におけるpH値が変動するなどの問題を生じ得る。
従って、薬剤液保持部への通電は、第1電解イオンの薬剤液保持部への移行及び/又は薬剤対イオンの電解液保持部への移行により確保することが好ましく、これらのイオンの移動による通電が確保される限り、水の電気分解はむしろ生じないようにすることが好ましい。
なお、第1イオン交換膜を第2イオン交換膜の前面側に配置した場合でも、第1イオン交換膜又は第2イオン交換膜の輸率をある程度低く設定すれば、薬剤対イオン又は第1電解イオンの移行による薬剤液保持部への通電を確保できると同時に、第1、第2イオン交換膜の界面における水の電気分解を抑制することができる。
本発明においては、第2イオン交換膜を第1イオン交換膜の前面に配置すること(請求項4)が好ましい。
上記の通り、第1電解イオンの薬剤液保持部への移行及び/又は薬剤対イオンの電解液保持部への移行により薬剤液保持部への通電が確保できる場合には、第1、第2イオン交換膜の界面における水の電気分解を抑制することが好ましいが、請求項4の発明によれば、この水の電気分解を効果的に抑制することが可能である。
本発明においては、第1イオン交換膜と第2イオン交換膜の間に、第1イオン交換膜と第2イオン交換膜を離間させるスペーサ層を更に配置すること(請求項5)が好ましい。
第1、第2イオン交換膜の輸率や配置によっては、その界面において水の電気分解が生じる場合があることは上記の通りであるが、これに加え、第1、第2イオン交換膜の輸率や第1電解イオン、薬剤対イオンの種類、濃度或いは通電条件などによっては、通電中に第1、第2イオン交換膜の界面において第1電解イオンと薬剤対イオンの塩の析出が生じる場合があり、この塩の析出が薬剤の投与特性に好ましくない影響を与える場合がある。
請求項5の発明は、このような問題を生じる場合に有用であり、第1、第2イオン交換膜を、イオンの通過を許容できる多孔質膜やゲル膜などからなるスペーサ層によって離間させることにより、第1、第2イオン交換膜の界面における水の電気分解や塩の析出を効果的に抑止することができる。
本発明においては、電解液保持部と薬剤液保持部の間に、電解液保持部の電解質の分子及び/又は薬剤分子の通過を遮断する多孔質分離膜を配置すること(請求項6)が好ましい。
本発明者らは、第2電解イオンが薬剤液保持部に移行することに起因する上記の現象(薬剤液の変色、薬剤液保持部における結晶の析出、或いは、薬剤の変質による薬効の低下や有毒物質の生成など)とは独立の現象として、図2の作用側構造体を一定以上の期間存置した場合に、電解質の種類、薬剤の種類又はその組み合わせによっては、薬剤の投与効率が低下し、薬剤の変質を生じ、或いは電解液保持部における薬剤の分解が生じる場合があることを見出しており、請求項6の発明は、このような現象を生じる場合に有用な発明である。
本発明者らの調査によれば、図2の作用側構造体においてこれらの現象が発生する場合には、第2イオン交換膜を通過できない筈の第1電解イオン又は薬剤イオンが、それぞれ、薬剤液保持部又は電解液保持部に経時的に移行し、或いは第1イオン交換膜を通過できない筈の第2電解イオンが薬剤液保持部に移行していることが確認されており、また輸率やイオン交換容量の高い第1、第2イオン交換膜を使用しても、上記の各イオンの経時的な移行を必ずしも抑制できないことが確認されている。
従って、未解離の状態で存在する電解質分子又は薬剤分子が、第1イオン交換膜の規制を受けずに、それぞれ薬剤液保持部又は電解液保持部に移行することが上記現象の原因であり、請求項6の発明では、この未解離の分子の移行を多孔質分離膜により遮断することで、これらの現象の抑止が達成されたものと考えられる。
上記多孔質分離膜(限外濾過膜、精密濾過膜などと呼ばれる場合がある)は、薄膜中に形成された多数の小孔により、一定以上の分子量の分子の通過を遮断するものであり、電解質分子や薬剤分子の通過を効果的に遮断するとともに、第1電解イオン又は薬剤対イオンの通過を許容できる適切なサイズの小孔を有する多孔質分離膜が使用される。
この多孔質分離膜には、ポリスルフォン系、ポリアクリロニトリル系、酢酸セルロース系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリビニルアルコール系などの高分子材料よりなる多孔質膜、或いは、アルミナなどのセラミクス系材料よりなる多孔質膜など任意の素材のものが使用できる。
ここで、多孔質分離膜を通過できない分子やイオンの分子量を示す指標として分画分子量があり、上記多孔質分離膜としては、分画分子量が第1電解イオン又は薬剤対イオンの分子量よりも大きく、電解質分子又は薬剤分子の分子量よりも小さい多孔質分離膜を使用することが可能である。
ただし、この分画分子量は、分子量の異なる複数のマーカー分子に対する阻止率R(阻止率Rは、膜を介した供給液側の溶質の濃度をCb、透過液側の溶質濃度Cpとしたときの1−Cp/Cbで定義される)をプロットすることにより得られる分画曲線における阻止率が90%となる分子量として求められるものであり、本発明に使用する多孔質分離膜の分画分子量が第1電解イオン又は薬剤対イオンの分子量に近い場合、或いは、電解質分子又は薬剤分子の分子量に近い場合には、薬剤投与の際の通電性に若干の低下を生じたり、薬剤の投与効率の低下や電解液保持部での薬剤の分解を生じることなく作用側構造体を存置できる期間が延長される程度が小さくなることも考えられる。
また多孔質分離膜に対する分子やイオンの通過特性は、分子やイオンの立体的形状などの影響も受けるため、この分画分子量は本発明に使用する多孔質分離膜を選定するための重要な目安ではあるものの、第1電解イオンや薬剤対イオンの分子量よりも十分に大きく、かつ、電解質分子や薬剤分子の分子量よりも十分に小さい分画分子量の多孔質分離膜を選定した場合でも、薬剤投与の際の通電性に若干の低下を生じたり、薬剤の投与効率の低下や電解液保持部での薬剤の分解を生じることなく作用側構造体を存置できる期間が延長される程度が小さくなる場合も生じ得る。
従って、本発明に使用する多孔質分離膜は、第1電解イオン又は薬剤対イオンの分子量から電解質分子又は薬剤分子の分子量迄の範囲、或いは、それに近い分画分子量を有する多孔質分離膜を用いた作用側構造体を試作し、その存置期間の延長の程度や通電特性を実験的に確認することにより選定することが好ましい。
なお、上記における「分子又はイオンの通過の遮断」は、必ずしも完全な遮断を意味するのではなく、例えば、ある程度の速度をもって電解質分子や薬剤分子の移行が生じる場合であっても、使用上必要となる期間に渡って、薬剤の投与効率の低下や電解液保持部での薬剤の分解を生じることなく作用側構造体を存置できる程度に電解質分子や薬剤分子の移行が制限される場合を含むものであり、同様に、「分子又はイオンの通過の許容」は、分子やイオンの通過に一切の制約が生じないことを意味するのではなく、例えば、第1電解イオンや薬剤対イオンの通過速度がある程度低下する場合であっても、使用上の支障を来さない程度の通電性が発現する程度をもってこれらのイオンの通過が確保される場合を含むものである。
本発明の電解液保持部には、2種類以上の電解質を溶解した電解液が使用される場合があり、薬剤液保持部には、2種類以上の薬剤を溶解した薬剤液が使用される場合があり、更に、電解液保持部に保持される電解質の種類によっては、薬剤液保持部に移行しても薬剤の投与効率に影響を与えない電解質も存在し、薬剤液保持部に保持される薬剤の種類によっては、電解液保持部に移行しても分解により有害物質を生じない薬剤も存在しうるが、そのような場合には、薬剤液保持部に移行した場合に薬剤の投与効率を低下させる電解質の分子、及び通電を受けた際に分解を生じて有害物質を生成する薬剤の分子のみの移行を遮断できる多孔質分離膜を使用すれば足りる。
本発明では、上記多孔質分離膜として袋状に形成された多孔質分離膜を使用し、当該袋状の多孔質分離膜によって電解液保持部又は薬剤液保持部を封入する構成とすることも可能である(請求項7)。
これにより、電解液保持部又は薬剤液保持部の保管、運搬の利便性や作用側構造体の組み立ての際の作業性が向上し、更には電解液保持部及び薬剤液保持部の端面における電解液と薬剤液の混合を容易かつ確実に防止できるという追加的な効果を得ることができる。
本発明では、請求項6の多孔質分離膜を配置する代わりに、第1又は第2イオン交換膜が電解質分子又は薬剤分子の通過を遮断するように構成すること(請求項8)も可能である。
第1、第2イオン交換膜としては、多孔質フィルムの小孔内にイオン交換樹脂が充填されたものを使用することができるが、そのような第1、第2イオン交換膜を使用する場合にあっては、この小孔やイオン交換樹脂の充填率などが適切に選択された第1イオン交換膜及び/又は第2イオン交換膜を使用することによって、電解質分子又は薬剤分子の通過を遮断する一方、第1電解イオン又は薬剤対イオンの通過を許容することが可能であり、これによっても請求項6の発明と同様の作用効果を達成することが可能である。
また、上記各本発明では、薬剤液保持部(例えば、薬剤液をガーゼなどの薄膜担体に含侵させたものを薬剤液保持部とすることができる)を直接生体に当接させた状態で、薬剤の投与を行うことも可能であるが、薬剤液保持部の前面側に、第1導電型のイオン交換基が導入された第3イオン交換膜を配置し、この第3イオン交換膜を介して薬剤の投与を行うことが好ましく、これにより、生体対イオンの薬剤液保持部への移行を遮断し、薬剤のの投与効率の一層の向上を図ることができる(請求項9)。
この場合、第1、第3イオン交換膜が袋状体を形成しており、薬剤液保持部がこの袋状体に封入されるようにすることが可能であり(請求項10)、この場合には、薬剤液保持部の保管、運搬の利便性や作用側構造体の組み立ての際の作業性が向上し、更には電解液保持部及び薬剤液保持部の端面における電解液と薬剤液の混合を容易かつ確実に防止できるという追加的な効果を得ることができる。
本発明においては、非作用側構造体に、それぞれ異なる組成の電解液を保持する2つの電解液保持部(第2、第3電解液保持部)を設けることが可能であるが、この2つの電解液保持部の間に、第2導電型のイオン交換基が導入された第4イオン交換膜と、第1導電型のイオン交換膜が導入された第5イオン交換膜を配置することにより、両電解液保持部における電解液の組成変化を抑止できるイオントフォレーシス装置を実現することができる。
この場合における第4、第5イオン交換膜としては、第1、第2イオン交換膜について上記したと同様のものを使用することができ、或いは更に、第1、第2イオン交換膜を離間させるためのスペーサ層を配置し、或いは更に、両電解液保持部の電解質分子の通過を遮断する多孔質分離膜を両電解液保持部の間に配置し、或いは更に、第3電解液保持部の前面側に第2導電型のイオン交換基が導入された第6イオン交換膜を配置することが可能である。
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
図3は、本発明に係るイオントフォレーシス装置の構成を示す概略断面図である。
なお、以下では、説明の便宜上、薬効成分がプラスの薬剤イオンに解離する薬剤(例えば、麻酔薬である塩酸リドカインや麻酔薬である塩酸モルヒネなど)を投与するためのイオントフォレーシス装置を例として説明するが、薬効成分がマイナスの薬剤イオンに解離する薬剤(例えば、ビタミン剤であるアスコルビン酸など)を投与するためのイオントフォレーシス装置の場合は、以下の説明における電源、各電極部材、各イオン交換膜の極性(プラスとマイナス)が逆転することになる。
図示されるように、本発明のイオントフォレーシス装置X1は、大きな構成要素(部材)として、作用側構造体A1、非作用側構造体B1及び電源Cを備えている。
作用側構造体A1は、電源Cのプラス極に接続された電極部材11、当該電極部材11と接触を保つようにされた電解液保持部12、当該電解液保持部12の前面側(皮膚側)に配置されたカチオン交換膜13C、当該カチオン交換膜13Cの前面側に配置されたアニオン交換膜13A、当該アニオン交換膜13Aの前面側に配置された薬剤液保持部14、当該薬剤液保持部14の前面側に配置されたカチオン交換膜15を備え、その全体が樹脂フィルム、プラスチックなどの材料で構成されるカバー又は容器16に収容されている。
一方、非作用側構造体B1は、電源Cのマイナス極に接続された電極部材21、当該電極部材21と接触を保つようにされた電解液保持部22、当該電解液保持部22の前面側に配置されたカチオン交換膜23、当該カチオン交換膜23の前面側に配置された電解液保持部24、当該電解液保持部24の前面側に配置されたアニオン交換膜25を備え、その全体が樹脂フィルム、プラスチックなどの材料で構成されるカバー又は容器26に収容されている。
このイオントフォレーシス装置X1において、電極部材11、21には、任意の導電性材料が特に制限無く使用でき、一般には、電極部材11、21近傍における水の電気分解を抑止できる銀/塩化銀などの活性電極を好ましく使用することができる。
しかしイオントフォレーシス装置X1では、電解液保持部12、22に、酸化還元電位の低い電解液や緩衝電解液を使用することで水の電気分解やこれによるpH値の変動を抑制することが可能であり、またH+イオンやOH−イオンの薬剤液保持部14、電解液保持部24への移行はアニオン交換膜13A、カチオン交換膜23により遮断することが可能である。従って、イオントフォレーシス装置X1では、銀や白金、カーボンなどの不活性電極を何らの支障なく使用することができる。特にポリマーマトリクスにカーボンを混入させた端子部11t、21tと、端子部11t、21tに取り付けられた炭素繊維又は炭素繊維紙からなる導電シート部11s、21sとを有する複合炭素電極11、21は、皮膚への追随性、電流密度の均一性に優れ、金属イオンの生体への移行の懸念を解消できる電極としてイオントフォレーシス装置X1に好適に使用することができる。
イオントフォレーシス装置X1における電解液保持部12、22、24は、通電性を確保するための電解液を保持するものであり、この電解液としては、リン酸緩衝食塩水、生理食塩水などが典型的に使用される。
また、電解液保持部12、22には、水の電解反応によるガスの発生やこれによる導電抵抗の増大、或いは水の電解反応によるpH変化をより効果的に防止するために、水の電解反応(プラス極での酸化及びマイナス極での還元)よりも酸化または還元されやすい電解質を添加することが可能であり、生体安全性、経済性(安価かつ入手の容易性)の観点からは、例えば、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄などの無機化合物、アスコルビン酸(ビタミンC)やアスコルビン酸ナトリウムなどの医薬剤、乳酸、シュウ酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸などの有機酸及び/又はその塩などを好ましく使用することができ、或いは、例えば、乳酸とフマル酸ナトリウムの混合水溶液など、これらを組み合わせて使用することもできる。
電解液保持部12、22、24は、上記のような電解液を液体状態で保持するものとしても構わないが、高分子材料などで形成された吸水性の薄膜担体に上記のような電解液を含浸させて構成することにより、その取り扱い性等を向上させることも可能である。なお、ここで使用される薄膜担体としては、薬剤液保持部14において使用可能な薄膜担体と同様のものが使用可能であるため、以下の薬剤液保持部14に関する説明において併せてその詳細を説明する。
イオントフォレーシス装置X1における薬剤液保持部14には、薬剤液として、溶解することにより薬効を担うプラスの薬剤イオンと、その対イオンであるマイナスの薬剤対イオンに解離する薬剤の水溶液が保持される。
薬剤液保持部14は、薬剤液を液体状態で保持するものとしても構わないが、下記のような吸水性の薄膜担体に薬剤液を含浸保持させることで、その取り扱い性等を向上させることも可能である。
この場合の吸水性の薄膜担体として使用できる材料としては、ガーゼや濾紙などの他、アクリルヒドロゲル、セグメント化ポリウレタン系ゲルなどよりなるゲル膜を使用することができ、上記水溶液を20〜60wt%の含浸率で含浸させることにより、高いドラッグデリバリー性を得ることができる。
上記アクリルヒドロゲル(例えば、(株)サンコンタクトレンズ社から入手できる)は、三次元網目構造(架橋構造)を持ったゲルであり、これに上記水溶液を添加したものは、イオン導電性を有する高分子吸着材となる。また、アクリルヒドロゲルの含浸率は、三次元網目構造の大きさや樹脂を構成するモノマーの種類や比率によって調製可能であり、含浸率20〜60%のアクリルヒドロゲルは、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとエチレングリコールジメタクリレート(モノマー比98〜99.5:0.5〜2)から調製することができる。
また、セグメント化ポリウレタン系ゲルは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)をセグメントとして有し、これらを構成するモノマーとジイソシアネートとにより調製することができる。セグメント化ポリウレタン系ゲルは、ウレタン結合によって架橋された三次元構造を有し、このものの含浸率や粘着力の強さは、前記アクリルヒドロゲルと同様にネットワークの網目の大きさ及びモノマーの種類や比率をコントロールすることにより容易に調製可能である。
イオントフォレーシス装置X1におけるカチオン交換膜13C、15、23としては、(株)トクヤマ製ネオセプタCM−1、CM−2、CMX、CMS、CMBなどの陽イオン交換基が導入されたイオン交換膜が使用でき、アニオン交換膜13A、25としては、例えば、(株)トクヤマ製ネオセプタAM−1、AM−3、AMX、AHA、ACH、ACSなどの陰イオン交換基が導入されたイオン交換膜を使用することができる。
ここで、イオン交換膜には、イオン交換樹脂を膜状に形成したものの他、イオン交換樹脂をバインダーポリマー中に分散させ、これを加熱成型などにより製膜することで得られる不均質イオン交換膜や、イオン交換基を導入可能な単量体、架橋性単量体、重合開始剤などからなる組成物や、イオン交換基を導入可能な官能基を有する樹脂を溶媒に溶解させたものを、布や網、或いは多孔質フィルムなどの基材に含浸充填させ、重合又は溶媒除去を行った後にイオン交換基の導入処理を行うことにより得られる均質イオン交換膜など各種のものが知られており、カチオン交換膜13C、15、23、アニオン交換膜13A、25には、これらのイオン交換膜を特別な制限無く使用することができる。
上記カチオン交換膜13C、15、23に導入される陽イオン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基等を挙げることができ、強酸性基であるスルホン酸基を使用することにより、輸率の高いカチオン交換膜を得ることができるなど、導入する陽イオン交換基の種類によってイオン交換膜の輸率を制御することが可能である。
アニオン交換膜13A、25に導入される陰イオン交換基としては、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウム基、4級イミダゾリウム基等を挙げることができ、強塩基性基である4級アンモニウム基や4級ピリジニウム基を使用することにより、輸率の高いアニオン交換膜を得ることができるなど、導入する陰イオン交換基の種類によってイオン交換膜の輸率を制御することが可能である。
陽イオン交換基の導入処理としては、スルホン化、クロロスルホン化、ホスホニウム化、加水分解などの種々の手法が、また陰イオン交換基の導入処理としては、アミノ化、アルキル化などの種々の手法が知られているが、このイオン交換基の導入処理の条件を調整することにより、イオン交換膜のイオン交換容量ないし輸率を調整することが可能である。
また、イオン交換膜中のイオン交換樹脂量や膜のポアサイズなどによってもイオン交換容量や輸率を調整することが可能である。例えば、多孔質フィルム中にイオン交換樹脂が充填されたタイプのイオン交換膜の場合にあっては、0.005〜5.0μm、より好ましくは0.01〜2.0μm、最も好ましくは0.02〜0.2μmの平均孔径(バブルポイント法(JIS K3832−1990)に準拠して測定される平均流孔径)の多数の小孔が、20〜95%、より好ましくは30〜90%、最も好ましくは30〜60%の空隙率で形成された5〜140μm、より好ましくは10〜120μm、最も好ましくは15〜55μmの膜厚を有する多孔質フィルムを使用し、5〜95質量%、より好ましくは10〜90質量%、特に好ましくは20〜60質量%の充填率でイオン交換樹脂を充填させたイオン交換膜を使用することができるが、これらの多孔質フィルムが有する小孔の平均孔径、空隙率、イオン交換樹脂の充填率によってもイオン交換容量ないし輸率を調整することが可能である。
イオントフォレーシス装置X1におけるカチオン交換膜15には、なるべく輸率が高いものを使用することが好ましく、例えば0.8以上、より好ましくは0.95以上、特に好ましくは0.98以上の輸率を有するカチオン交換膜15を使用することで、生体対イオンの薬剤液保持部14への移行を抑制し、薬剤イオンの効率的な投与を実現することができる。
また、水の電気分解やpH変動を効果的に抑制するために電解液保持部22の電解液としてアスコルビン酸とポリアクリル酸の混合水溶液を使用し、生体への安全性を高めるために電解液保持部24の電解液として生理食塩水を使用するなど、電解液保持部22、24に異なる組成の電解液が使用される場合があるが、そのような場合においては、カチオン交換膜23には、なるべく輸率が高いものを使用することが好ましく、例えば0.8以上、より好ましくは0.95以上、特に好ましくは0.98以上の輸率を有するカチオン交換膜23を使用することで、装置の存置期間中における両電解液保持部22、24の電解液組成の変化を抑止でき、また、薬剤投与中における電解液保持部22中のマイナスイオンが電解液保持部24に移行することを抑止できる。
なお、カチオン交換膜15についての輸率は、通電の際にカチオン交換膜15を介して運ばれる総電荷のうちの薬剤液保持部14中に含まれるプラスイオンがカチオン交換膜15を通過することにより運ばれる電荷の割合であり、カチオン交換膜23についての輸率は、通電の際にカチオン交換膜23を介して運ばれる総電荷のうちの電解液保持部24に含まれるプラスイオンがカチオン交換膜23を通過することにより運ばれる電荷の割合である。この輸率は、上記の通り、イオン交換樹脂に導入するイオン交換基の種類、導入条件、多孔質フィルムの平均孔径、空隙率、イオン交換樹脂の充填率などにより調整することが可能である。
カチオン交換膜13C及びアニオン交換膜13Aについては、少なくともいずれか一方の輸率をある程度低い値、例えば0.7〜0.95の範囲とすることが好ましく、これにより、通電時における薬剤対イオンの電解液保持部12への移行又は電解液保持部12に含まれるプラスイオンの薬剤液保持部14への移行を生じ易くし、薬剤投与に必要な通電量を確保することが可能である。
また、アニオン交換膜13Aの輸率を0.7〜0.95程度の比較的低い値にした場合でも、無通電時における薬剤イオンの電解液保持部12への移行は十分に抑止することが可能であるため、従来のイオントフォレーシス装置と同様に、装置の存置期間中における薬剤イオンの電解液保持部12への移行、或いは電解液保持部12に移行した薬剤の通電時における分解を抑止することが可能である。
更に、イオントフォレーシス装置X1では、電解液保持部12と薬剤液保持部14の間にカチオン交換膜13Cが配置されているために、装置の存置期間中における第2電解イオンの薬剤液保持部14への移行が抑制され、薬剤の変色、薬剤液保持部での結晶の析出、薬効の低下、薬剤の変質による有害物資の生成などの現象を生じることなく、長期間に渡って装置を存置することが可能となる。なお、カチオン交換膜13Cの輸率を0.7〜0.95程度の比較的低い値にした場合でも、無通電時における電解液保持部12のマイナスイオンの薬剤液保持部14への移行は十分に抑止することが可能であり、上記の各現象を生じることなく長期間に渡って装置を存置することが可能である。
また、電解液保持部12にNaなどの分子量が小さく、従って薬剤イオンの移動度と比肩できる程度或いはそれよりも大きい移動度を有するプラスイオンや、安全などの観点から生体に移行させることが好ましくないプラスイオンが含まれている場合には、アニオン交換膜13Aの輸率をなるべく高い値に設定する一方、カチオン交換膜13Cの輸率をある程度低い値とすることが好ましく、この場合には、薬剤投与の際における薬剤液保持部14への通電は、主として薬剤対イオンの電解液保持部12への移行により確保される一方、電解液保持部12に含まれるプラスイオンの薬剤液保持部14への移行はアニオン交換膜13Aにより効果的に抑止されることになり、薬剤の投与効率の低下を防止し、又は生体の安全性についての懸念を解消することができる。
この場合のカチオン交換膜13Cの輸率は、例えば0.7〜0.95とすることができ、アニオン交換膜13Aの輸率は、好ましくは0.9以上、より好ましくは0.95以上、特に好ましくは0.98以上とすることができる。
上記のような適切な輸率を有するカチオン交換膜13C及びアニオン交換膜13Aは、それぞれに導入するイオン交換基の種類、導入条件、多孔質フィルムが有する小孔の平均孔径、空隙率、多孔質フィルムへのイオン交換樹脂の充填率などを適切に選択することにより得ることができる。
なお、上記において、カチオン交換膜13Cについての輸率は、電解液保持部12と薬剤液保持部14の間にカチオン交換膜13Cのみを配置した状態で電極部材11にプラス電圧を印加したときに、カチオン交換膜13Cを介して運ばれる総電荷のうちの電解液保持部12中に含まれるプラスイオンがカチオン交換膜13Cを通過することにより運ばれる電荷の割合であり、アニオン交換膜13Aについての輸率は、電解液保持部12と薬剤液保持部14の間にアニオン交換膜13Aのみを配置した状態で電極部材11にプラス電圧を印加したときに、アニオン交換膜13Aを介して運ばれる総電荷のうちの薬剤液保持部14中に含まれるマイナスイオン(主として薬剤対イオン)がアニオン交換膜13Aを通過することにより運ばれる電荷の割合である。
また、上記のような適切な輸率を有するカチオン交換膜13C及びアニオン交換膜13Aを使用した場合でも、電解液保持部12の電解質及び/又は薬剤液保持部14の薬剤の種類によっては、装置の存置期間中に電解液保持部12の電解質分子が薬剤液保持部14に移行し、そのために薬剤の変質や投与効率の低下を生じる場合があり、また装置の存置期間中に未解離の薬剤分子が電解液保持部12に移行し、そのために通電時に電極部材11近傍において薬剤の分解を生じる場合がある。
そのような場合には、カチオン交換膜13C及びアニオン交換膜13Aの少なくとも一方に、上記電解質分子又は薬剤分子の通過を遮断し、薬剤対イオン又は電解液保持部12のプラスイオンの通過を許容できる分子量分画特性を有するイオン交換膜を使用することにより、長期間装置を存置した後に薬剤投与を行う際の電極部材11近傍における薬剤の分解や薬剤イオンの投与効率の低下、或いは薬剤の変質を抑止することができる。
なお、表裏を連通する多数の小孔を有する多孔質フィルムにイオン交換樹脂が充填されたタイプのイオン交換膜を使用する場合にあっては、その小孔のサイズやイオン交換樹脂の充填量などを適切に調整することにより、イオン交換膜に上記のような適切な分子量分画特性を付与することが可能である。
作用側構造体A1、非作用側構造体B1におけるカバーないし容器16、26は、電解液保持部12、22、24や薬剤液保持部14からの水分の蒸発や外部からの異物の混入を防ぐことができるプラスチックなどの任意の素材から形成することができ、その底部16b、26bには皮膚との密着性を高めるための粘着剤層を設けることが可能である。
本発明のイオントフォレーシス装置における電源Cとしては、電池、定電圧装置、定電流装置、定電圧・定電流装置などを使用することができるが、0.01〜1.0mA/cm、好ましくは、0.01〜0.5mA/cmの範囲で電流調整が可能であり、50V以下、好ましくは、30V以下の安全な電圧条件で動作する定電流装置を使用することが好ましい。
図4(a)〜(e)は、本発明の他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置が備える作用側構造体A2〜A6の構成を示す説明図である。
図4(a)の作用側構造体A2は、アニオン交換膜13Aが電解液保持部12の前面側に配置され、カチオン交換膜13Cがアニオン交換膜の前面側に配置されている点を除いて作用側構造体A1と同一の構成を有しており、作用側構造体A1をこの作用側構造体A2に置換したイオントフォレーシス装置は、上記したイオントフォレーシス装置X1と同様の作用効果を達成する。またこのイオントフォレーシス装置では、何らかの事情でアニオン交換膜13Aとカチオン交換膜13Cとして輸率が1に極めて近いものを使用せざるを得ない場合であっても、アニオン交換膜13Aとカチオン交換膜13Cの界面において水の加水分解を発生させ、これにより生じるH+イオンの薬剤液保持部14への移行及びOH−イオンの電解液保持部12への移行により、薬剤液保持部14への通電を確保することができる。
図4(b)、(c)の作用極構造体A3、A4は、作用極構造体A1、A2におけるカチオン交換膜13Cとアニオン交換膜13Aの間が、少なくとも薬剤対イオン又は電解液保持部12のプラスイオンの通過を許容できる多孔質膜やゲル膜などからなるスペーサ層Kにより離間されているために、通電条件などによってアニオン交換膜13Aとカチオン交換膜13Cの間において生じる可能性のある水の加水分解や塩の析出を効果的に抑止することができる。
図4(d)、(e)の作用極構造体A5、A6は、カチオン交換膜により構成される袋状体Wに薬剤液保持部14が封入されており、袋状体Wの一部がカチオン交換膜13C及び15として使用されている点を除いて作用側構造体A1と同一の構成を有しており、作用側構造体A1を作用側構造体A5又はA6に置換したイオントフォレーシス装置は、上記したイオントフォレーシス装置X1と同様の作用効果を達成する。
更にこのイオントフォレーシス装置では、電解液保持部12や薬剤液保持部14の端面において電解液と薬剤液の混合を生じることが確実に防止でき、また、薬剤液保持部14の取扱性や作用側構造体A5、A6の組み立ての作業性が向上するなどの追加的な作用効果が達成される。
図5(a)〜(c)は、本発明に係る更に他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置が備える作用側構造体A7〜A9の構成を示す説明図である。
図5(a)〜(c)の作用極構造体A7〜A9は、電解液保持部12と薬剤液保持部14の間に多孔質分離膜Fが更に配置されている点を除いて作用極構造体A1と同様の構成を有しており、作用側構造体A1を作用側構造体A7〜A9に置換したイオントフォレーシス装置は、上記したイオントフォレーシス装置X1と同様の作用効果を達成する。
またこの多孔質分離膜Fは、電解液保持部12に保持される電解質の分子又は薬剤液保持部14に保持される薬剤の分子の通過を遮断する一方で、電解液保持部12のプラスイオン又は薬剤液保持部のマイナスイオンの通過を許容できる分子量分画特性を有している。
例えば、電解液保持部12の電解液として、フマル酸ナトリウム水溶液を使用し、薬剤液保持部14の薬剤液として、塩酸リドカイン水溶液を使用した場合には、多孔質分離膜Fとして、分画分子量が50〜100程度の多孔質分離膜(例えば、Whatman plc社からNUCLEPOREとして、或いは、Spectrum Laboratories,Inc.社からPorTMCEとして入手可能)を使用することにより、装置の存置期間中におけるフマル酸ナトリウム分子(分子量137)の薬剤液保持部14への移行及び塩酸リドカイン分子(分子量268)の電解液保持部12への移行を遮断し、その一方で、通電時における電解液保持部12のNaイオンの薬剤液保持部14への移行及び薬剤液保持部14のClイオンの電解液保持部12への移行を許容することができる。
また、分画分子量が150〜200程度の多孔質分離膜(例えば、Whatman plc社からNUCLEPOREとして、或いは、Spectrum Laboratories,Inc.社からPorTMCEとして入手可能)を使用すれば、上記と同様に塩酸リドカイン分子(分子量268)の電解液保持部12への移行を遮断する一方で、通電時における電解液保持部12のNaイオン及び薬剤液保持部14のClイオンの薬剤液保持部14及び電解液保持部12への移行性をより高めることができる。
図6(a)〜(d)は、本発明に係る更に他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置が備える作用側構造体A10〜A12の構成を示す説明図である。
図6(a)〜(c)の作用極構造体A10〜A12は、袋状に形成された多孔質分離膜Fが使用され、袋状の多孔質分離膜Fに電解液保持部12が封入されている点を除いて作用極構造体A7〜A9と同様の構成を有しており、作用極構造体A10〜A12を備えるイオントフォレーシス装置は、作用極構造体A7〜A9を備える上記イオントフォレーシス装置と同様の作用効果を達成する。
更にこのイオントフォレーシス装置では、電解液保持部12や薬剤液保持部14の端面において電解液と薬剤液の混合を生じることが確実に防止でき、電解液保持部12の取扱性や作用側構造体A10〜A12の組み立ての作業性が向上するなどの追加的な作用効果が達成される。
なお、作用極構造体A10〜A12では袋状の多孔質分離膜Fに電解液保持部12が封入されているが、袋状の多孔質分離膜Fに薬剤液保持部14を封入するようにすることも可能であり、この場合も作用極構造体A10〜A12の場合と同様の作用効果が達成される。
図6(d)の作用極構造体A13では、電極部材11、電解液保持部12、アニオン交換膜13A及び多孔質分離膜Fが作用極構造体A11と同様の構成を有しており、カチオン交換膜13C、15により構成される袋状体W及び薬剤液保持部14の部分が作用極構造体A5と同様の構成を有している。
このように、電解液保持部12を袋状の多孔質分離膜Fに封入し、薬剤液保持部14を袋状のカチオン交換膜に封入した作用極構造体を備えるイオントフォレーシス装置では、イオントフォレーシス装置X1と同様の作用効果が達成されることに加え、電解液保持部12や薬剤液保持部14の端面において電解液と薬剤液の混合を生じることが確実に防止でき、電解液保持部12、薬剤液保持部14の取扱性や作用側構造体の組み立ての作業性が向上するなどの追加的な作用効果が達成される。
図7(a)、(b)は、本発明に係る更に他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置が備える非作用側構造体B2、B3の構成を示す説明図である。
非作用側構造体B2、B3では、2つの電解液保持部22、24の間に、アニオン交換膜23A及びカチオン交換膜23Cが配置されているために、装置の存置期間中に電解液保持部22のプラスイオンが電解液保持部24に移行することが防止される。
従って、非作用側構造体B2、B3は、電解液保持部22、24のそれぞれに異なる電解質が保持されるイオントフォレーシス装置の場合、或いは電解液保持部24に薬効成分がマイナスのイオンに解離する第2の薬剤が保持されるイオントフォレーシス装置に好適に使用することができる。
なお、非作用極構造体B2、B3は、作用極構造体A3〜A13と同様の態様でスペーサ層K及び/又は袋状体W及び/又は多孔質分離膜を備えることも可能である。
以上、いくつかの実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内において種々の改変が可能である。
例えば、上記実施形態では、最も好ましい形態として、作用側構造体が第3イオン交換膜15を有する場合について説明したが、第3イオン交換膜15を省略し、薬剤液保持部14を直接生体に当接させた状態で、薬剤イオンの投与を行うことも可能である。
同様に、上記実施形態では、非作用側構造体B1〜B3が、電極部材21、電解液保持部22、24、及び、イオン交換膜23、23A、25を備える場合について説明したが、これらの各要素22、24、23、23A、25は省略可能であり、或いは更に、イオントフォレーシス装置そのものには非作用側構造体を設けずに、例えば、生体皮膚に作用側構造体を当接させる一方、アースとなる部材にその生体の一部を当接させた状態で作用側構造体に電圧を印加して薬剤の投与を行うようにすることも可能であり、そのようなイオントフォレーシス装置は、非作用側構造体やアース部材と皮膚Sの当接面におけるpH変化の抑制性能などにおいてイオントフォレーシス装置X1に及ばないものの、その他の点においてはイオントフォレーシス装置X1と同等の性能を発揮し、特に、第2電解イオンの薬剤液保持部への移行を遮断することで、薬剤の変色、変質、分解、薬剤の投与効率の低下などの現象を生じることなく装置を存置できる期間が延長されるという、本発明に特有の作用効果を発揮するものであり、これらのイオントフォレーシス装置も本発明の範囲に含まれる。
また、上記実施形態では、作用側構造体、非作用側構造体、及び、電源がそれぞれ別体として構成されている場合について説明したが、これらの要素を単一のケーシング中に組み込み、或いは、これらを組み込んだ装置全体をシート状又はパッチ状に形成して、その取扱性を向上させることも可能であり、そのようなイオントフォレーシス装置も本発明の範囲に含まれる。
従来のイオントフォレーシス装置における作用側構造体の構成を示す説明図である。 本発明の作用効果発現のメカニズムを示す説明図である。 本発明の一実施形態に係るイオントフォレーシス装置の構成を示す説明図である。 本発明の他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置が備える作用側構造体の構成を示す説明図である。 本発明の他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置が備える作用側構造体の構成を示す説明図である。 本発明の他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置が備える作用側構造体の構成を示す説明図である。 本発明の他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置が備える非作用側構造体の構成を示す説明図である。
符号の説明
A、A1〜A13 作用側構造体
B1〜B3 非作用極構造体
C 電源
11、21 電極部材
12、22、24 電解液保持部
13C、15、23、23C カチオン交換膜
13A、23A、25 アニオン交換膜
14 薬剤液保持部
16、26 容器
K スペーサ層
F 多孔質分離膜
W 袋状体

Claims (12)

  1. 溶液中において第1導電型の第1電解イオンと第2導電型の第2電解イオンに解離する電解質の溶液を保持する電解液保持部と、
    前記電解液保持部の前面側に配置され、溶液中において第1導電型の薬剤イオンと第2導電型の薬剤対イオンに解離する薬剤の溶液を保持する薬剤液保持部とを備えるイオントフォレーシス装置であって、
    前記電解液保持部と前記薬剤液保持部の間に、第1導電型のイオン交換基が導入された第1イオン交換膜と、第2導電型のイオン交換基が導入された第2イオン交換膜が配置されていることを特徴とするイオントフォレーシス装置。
  2. 前記第2イオン交換膜が前記第1イオン交換膜よりも高い輸率を有していることを特徴とする請求項1に記載のイオントフォレーシス装置。
  3. 前記第1イオン交換膜が前記第2イオン交換膜の前面側に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のイオントフォレーシス装置。
  4. 前記第2イオン交換膜が前記第1イオン交換膜の前面側に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のイオントフォレーシス装置。
  5. 前記第1イオン交換膜と前記第2イオン交換膜の間に、前記第1イオン交換膜と前記第2イオン交換膜を離間させるスペーサ層が更に配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のイオントフォレーシス装置。
  6. 前記電解液保持部と前記薬剤液保持部の間に、
    前記電解質の分子及び/又は前記薬剤の分子の通過を遮断する多孔質分離膜が更に配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のイオントフォレーシス装置。
  7. 袋状に形成された前記多孔質分離膜に前記電解液保持部及び/又は前記薬剤液保持部が封入されていることを特徴とする請求項6に記載のイオントフォレーシス装置。
  8. 前記第1イオン交換膜及び/又は前記第2イオン交換膜が、前記電解質の分子及び/又は前記薬剤の分子の通過を遮断することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のイオントフォレーシス装置。
  9. 前記薬剤液保持部の前面側に配置され、第1導電型のイオン交換基が導入された第3イオン交換膜を更に備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のイオントフォレーシス装置。
  10. 前記第1、第3イオン交換膜が袋状体を形成しており、前記薬剤液保持部が、袋状体に封入されていることを特徴とする請求項9に記載のイオントフォレーシス装置。
  11. 溶液中において第1導電型の第3電解イオン及び第2導電型の第4電解イオンに解離する第2電解質の溶液を保持する第2電解液保持部と、
    溶液中において第1導電型の第5電解イオン及び第2導電型の第6電解イオンに解離する前記第2電解質とは異なる電解質である第3電解質の溶液を保持する第3電解液保持部とを備える非作用側構造体を更に有し、
    前記第2電解液保持部と前記第3電解液保持部の間に、第2導電型のイオン交換基が導入された第4イオン交換膜と、第1導電型のイオン交換基が導入された第5イオン交換膜が配置されていることを特徴とする請求項1〜10に記載のイオントフォレーシス装置。
  12. 前記第3電解液保持部の前面側に配置され、第2導電型のイオン交換基が導入された第6イオン交換膜を更に備えることを特徴とする請求項11に記載のイオントフォレーシス装置。
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