以下の説明において、何らかの具体的な詳細が、開示される種々の実施形態の完全な理解のために記述される場合がある。しかし、当業者は、これらの具体的な詳細のうちの一以上を除外して、又は他の方法、要素、材料などを伴って実施形態を実施できることを理解するであろう。他の面では、電圧及び/又は電流調整器には限られないが電圧調整器を含むコントローラーに関連する周知の構造が詳細には記述、説明されないことで、実施形態の記述が不必要に不明瞭化することが防がれている。
文意により否定される場合を除いて、明細書及びクレームを通して、「有する(comprise)」の語及び、その"comprises"、"comprising"などの変化形は、オープンで包含の意味、即ち、「有しているが、他のものも含みうる」の意味に解釈されるべきである。
本明細書を通して、「一の実施形態」又は「ある実施形態」との言及は、その実施形態との関連で記述される特定の特徴、構造、構成が少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書の各所における「一の実施形態において」又は「ある実施形態において」の表現は、常に同一の実施形態に言及しているとは限らない。更に、特定の特徴、構造、構成は、一以上の実施形態において任意の適切な態様で組み合わせることができる。
本明細書中の見出しは、利便性のみを目的とするものであり、実施形態の範囲や意味を解釈するものではない。
添付の各図において、同一の数字は類似の要素又は動作を示す。図中の要素の大きさや相対的な位置は、必ずしも寸法通りに記載されてはいない。例えば、種々の要素の形状や角度は、寸法通りではなく、これらの要素のいくつかは、図面の理解し易さを改善するために随意に拡大され、位置決めされている。更に、図に示される通りの要素の特定の形状は、その特定の要素の実際の形状に関する何らかの情報を伝えることを意図しておらず、図における見易さのみのために選択されている。
図1Aは、イオントフォレーシスによって皮膚や粘膜の一部などの生体界面18に作用薬24を供給するための電圧源16に電気的にそれぞれ接続された作用側及び対向側電極構造体12a、14を有する、本発明の一実施形態に係るイオントフォレーシス装置10aを示している。
作用側電極構造体12aは、電圧源16の第1極性(例えば、プラス又はマイナス)を有する第1極に電気的に接続され、作用側電極構造体12aの中に配置され、作用側電極構造体12aの他の様々な要素を介して作用薬を輸送するための起電力を印加するための電極要素20を有する。電極要素20は多様な形態を採ることができる。例えば、電極要素20は、例えば銀(Ag)や塩化銀(AgCl)を含む化合物やアマルガムなどの犠牲要素を含むことができる。通常、このような化合物やアマルガムは、製造、保存、使用及び/又は廃棄に関連する問題を発生させ得る鉛(Pb)などの一以上の重金属を含んでいる。従って、いくつかの実施形態では非金属の電極要素を使用することができる。そのような電極要素は、例えば、本願出願人による特願2004−317317号に開示されるポリマーマトリクスにカーボンを混入させた端子部材と、当該端子部材に取り付けられた炭素繊維又は炭素繊維紙よりなる導電シートから構成することができ、或いは本願出願人による特願2005−223282号に開示される炭素繊維又は炭素繊維紙よりなる導電シート部及び炭素繊維又は炭素繊維紙よりなる延長部から構成され、当該延長部の一部に撥水性ポリマーが含浸されたものとすることができる。
或いは、本願出願人による特願2005−229984号又は特願2005−363085号に開示される分極性電極により電極要素20を構成することも可能であり、この場合には、電極反応20における電極反応を抑止又は抑制した状態で後述の電解液26への通電を行うことが可能となる。
上記分極性電極は、単位重量当たりの静電容量が1F/g以上の導電体を含有する電極とすること、或いは比表面積が10m2/g以上の導電体を含有する電極とすることが可能であり、これにより、分極性電極の表面に電気2重層が形成されることによる通電量を増大させ、電極反応によるガスや好ましくないイオンの発生、或いは薬物イオンの変質を生じることなく、より多量の薬物イオンを投与することができるイオントフォレーシス装置を実現することができる。特に好ましくは、分極性電極の単位重量当たりの静電容量を1F/g以上とし、或いは分極性電極の比表面積を10m2/g以上とすることができる。
上記導電体としては、金、銀、アルミニウム、ステンレスなどの金属導電体、或いは活性炭や酸化ルテニウムなどの非金属導電体を使用することが可能であるが、この導電体として非金属導電体を使用することが特に好ましく、これにより、分極性電極から金属イオンが溶出して生体に移行する懸念を低減又は解消することが可能となる。なお、分極性電極を構成する導電体として、アルマイトなどの表面に不溶化処理が施された金属導電体を使用した場合も、同様の効果を得ることができる。
上記分極性電極は、活性炭を含有する電極とすることも可能であり、これにより、安価かつ安全であり、また静電容量の高い分極性電極を得ることができる。更にこの活性炭として活性炭繊維を使用した場合には、分極性電極の取扱性の向上という追加的な効果を得ることができる。活性炭繊維は、例えば、織布や不織布の形態のものを使用することができる。特に、活性炭繊維として、ノボロイド繊維(フェノール樹脂を繊維化した後、架橋処理し、分子構造を3次元化させた繊維)を炭化、賦活させたものを使用した場合には、取扱性や柔軟性、機械的強度(引っ張り強度など)に優れるとともに極めて比表面積が高く、静電容量の大きい分極性電極を得ることができる。
分極性電極として、活性炭又は活性炭繊維などの吸収性の素材を含む分極性電極が使用される場合には、分極性電極に後述の電解液26を含浸させることで、分極性電極から電解液26への通電性を高めることができる。この場合、この電解液にHPC(ヒドロキシプロピルセルロース)やPVA(ポリビニルアルコール)などの増粘剤を配合することが好ましく、これにより、分極性電極内における電解液の保持性を高め、分極性電極の取扱性を向上させることができる。HPCの適切な配合量の範囲は1〜5%程度であり、PVAの適切な配合量の範囲は5〜15%程度である。
作用側電極構造体12aは、作用側電極構造体12aを挟んで電極要素20にほぼ対向する最外部イオン選択膜22を有する。
最外部イオン選択膜22は、生体対イオンの通過を選択的に遮断する特性を有する膜状の部材である。かかる最外部イオン選択膜22を有することにより、生体対イオンの移動により消費される電流量が減少することになり、従って、作用薬の輸送効率を上昇させ、及び/又は、送達速度を上昇させ得る。
最外部イオン選択膜22は、好ましくは、電極要素20により起電力が印加されていない間は、例えば薬物や治療薬などの作用薬24を生体界面18の近くで一時的に保持又は貯蔵し、電極要素20により起電力が印加されている間は、作用薬を放出又は移送する。このように、作用薬24は、電力が印加される前は、最外部イオン選択膜22に事前に装填され、使用に供される迄は保存され、又は貯蔵されることができる。
作用薬24を装填した最外部イオン選択膜22を備えるイオントフォレーシス装置10aでは、作用薬24が生体界面18の近くに好適に貯蔵されることとなるために、ある実施形態では生体界面18に好適に直接接触することになり、従って、作用薬の輸送効率を上昇させ、及び/又は、送達速度を上昇させ得る。
最外部イオン選択膜22への作用薬24の事前の装填は、より高濃度の作用薬を含む溶液中に最外部イオン選択膜22を浸漬することにより、拡散のメカニズムを介して達成することができる。反復して浸漬を行うことで、最外部イオン選択膜22中における作用薬24の濃度を高めることができる。使用(作用薬の投与)の際には、電極要素20に印加される作用薬と同一極性(第1極性)の電圧の作用によって、作用薬24は最外部イオン選択膜22から生体界面18に移送される。作用薬24は、治療剤、医薬複合物、治療薬および同種のものを含みうる。作用薬24の例には、エピネフリン、フェンタニル、リドカイン、ピロカルピン、非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDS)、副腎皮質ステロイド、および同種のもの、またはその医薬用塩(pharmaceutical salt)が含まれる。少なくとも1つの実施形態では、作用薬24の装填に使用される上記溶液は、塩酸リドカインの水溶液、又は塩酸リドカイン(2%)のエピネフリン(0.00125%)混合液の形態を採り得る。
最外部イオン選択膜22は、多様な形態を採ることができる。例えば、最外部イオン選択膜22は、主としてイオンが担う電荷に基づいてイオンを実質的に通過させ、及び/又は、ブロックするカチオン交換膜又はアニオン交換膜などの電荷選択性のイオン交換膜の形態を採ることができる。例えばカチオン交換膜は、株式会社トクヤマからネオセプタ、CM−1、CM−2、CMX、CMS及びSMBの品名で入手できる。また例えばアニオン交換膜は、同様に株式会社トクヤマからネオセプタ、AM−1、AM−3、AMX、AHA、ACH及びACSの品名で入手できる。
最外部イオン選択膜22としてイオン選択膜が使用される場合には、作用薬24を、最外部イオン選択膜22のイオン交換基22gに結合させておくことができる。この場合には、作用薬24がイオン交換基22gに結合することによって最外部イオン選択膜22中における競合イオン濃度が低下するため、作用薬24の輸送効率を一層上昇させ、及び/又は、送達速度を一層上昇させ得る。また、作用薬24がイオン交換基22gと結合した状態で保持されることで、作用薬24の保存安定性が向上する場合があり、その場合には、装置の保存期間を延長でき、或いは安定化剤、抗菌剤、防腐剤などが不要となり、又はその使用量を低減させることができるなどの効果を達成できる。
この場合のイオン交換膜としては、多孔質フィルムに形成された多数の空洞(cavities)又は間隙(interstices)22iにイオン交換樹脂を充填させたタイプのイオン交換膜が特に好適に使用される。このタイプのイオン交換膜では、図示のように、多孔質フィルムの間隙22i内に多数のイオン交換基22gが導入されており、作用薬24はこのイオン交換基22gの少なくとも一部に結合して保持される。
最外部イオン選択膜22は、イオンのサイズ又は分子量に基づいてイオンを実質的に通過させ、及び/又は、ブロックする半透膜の形態を採ることもできる。例えば、このような実施形態では、最外部イオン選択膜22に作用薬24を保持するために他の方法、構造又は特性を使用することができる。
例えば、リリースライナーが使用時に取り外される迄の間、そのリリースライナーによって作用薬を最外部イオン選択膜22に保持しても良い。或いは、作用薬を脱水又は乾燥状態で最外部イオン選択膜22に保持し、作用薬24の水化により作用薬を起電力の作用の下で移動し得るようにしても良い。
最外部イオン選択膜22がイオン交換膜の形態を採るか、半透膜の形態を採るかにより、最外部イオン選択膜22は、多様な物理的形態を採ることができる。最外部イオン選択膜22は、固体、液体又はゲルの形態を採ることができる。最外部イオン選択膜22は、例えば、高分子などのように明確な格子構造(distinct lattice structure)を有する材料の形態、又は明確な格子構造を有さない材料の形態を採ることができる。
使用時には、最外部イオン選択膜22は、生体界面18に直接接触させて配置することができる。或いは、(不図示の)界面結合媒体を最外部イオン選択膜22と生体界面18の間に使用することもできる。この界面結合媒体は、例えば、接着剤やゲルの形態を採ることができる。ゲルは、例えば、水化ゲルの形態を採ることができる。使用する場合、このような界面結合媒体は、作用薬に対して透過性でなければならない。
上記のような界面結合媒体を使用する場合、当該界面結合媒体には作用薬24を配合することが好ましく、これにより、生体界面18における生体対イオン濃度を低下させることができるために、作用薬24の輸送効率及び/又は送達速度を一層上昇させる効果を発揮し得る。この場合、上記界面結合媒体には高濃度の作用薬24を配合することが好ましく、飽和濃度の作用薬24を配合することが特に好ましい。
作用側電極構造体12aは、また、電極要素20と最外部イオン選択膜22の間の電極要素20に近接する位置に電解液26を有する。
電解液26は、例えば、最外部イオン選択膜22のイオン交換基22gに結合する作用薬24を置換するなど、最外部イオン選択膜22の作用薬を置換するためのイオンを提供し、又は与える。これにより、例えば、投与速度を増加及び/又は安定化させるなど、作用薬24の生体界面18への移送が促進される。
特に好ましい実施形態では、電解液26は、電極要素20における気泡(例えば水素)の生成を抑止又は禁止するためのイオンを提供し、又は、電荷を与えて効率を高めることができ、酸又は塩基(例えばH+イオンやOH−イオン)の生成を抑止又は禁止し、或いはこれらを中和し、これにより効率を高め、送達率を上昇させ、及び/又は、生体界面18の炎症(irritation)の可能性を低減させることができる。
好適な電解液は、0.5Mフマル酸二ナトリウムと0.5Mポリアクリル酸の5:1溶液の形態を採ることができる。
また、電解液26は作用薬24の構造と同一の構造を有するイオンを提供するものでもよい。例えば、作用薬24がイオン化したリドカインおよび/またはエピネフリンにより構成されている場合においては、電極液26はイオン化したリドカインおよびエピネフリン、あるいはその塩でもよい。
電解液26は、例えば電解液26が液体の形態である場合には、電解液槽28に保持することができる。電解液槽28は、電解液26を一時的に保持できる多様な形態を採ることができる。例えば、電解液槽28は、1以上の膜により形成される空洞、多孔質膜又はゲルの形態を採ることができる。
電極要素20として分極性電極が使用され、外部イオン選択膜22としてイオン交換膜が使用される場合には、電解液槽28を多孔質膜の形態とするなどにより、電極要素20と外部イオン選択膜22の接触を防止することが好ましく、これにより、分極性電極とイオン交換膜を接触させた状態で通電を行った場合にイオン交換膜の周辺で生じうるガスの発生を防止することができる。
対向側電極構造体14は、第1極とは反対の極性を有する電圧源16の第2極に電気的に接続された電極要素40を有する。電極要素40は、電極要素20と同様の構成とすることができる。即ち、犠牲電極要素(例えば銀又は塩化銀)や非犠牲要素(例えばカーボン)の形態を採ることができ、特に好ましくは、分極性電極の形態を採ることができる。対向側電極構造体14により、作用側電極構造体12a及び生体界面18を介する電圧源16の両極間の電流経路が閉じられる。
対向側電極構造体14は、任意的な構成要素として、図示のような最外部イオン選択膜42、電解液46、緩衝物質50及び/又は内部イオン選択膜54を備えることも可能である。
最外部イオン選択膜42は、多様な形態を採り得る。例えば、最外部イオン選択膜42は、イオンが担う電荷に基づいて実質的にイオンを通過させ、及び/又は、ブロックするカチオン交換膜やアニオン交換膜などの電荷選択性のイオン交換膜の形態を採り得る。好適なイオン交換膜の例は上記の通りである。或いは、最外部イオン選択膜42は、イオンのサイズや分子量に基づいてイオンを実質的に通過させ、及び/又は、ブロックする半透膜の形態を採り得る。
ある実施形態では、最外部イオン選択膜42は、使用時に生体界面18と直接接触するように対向側電極構造体14中に配置される。或いは、最外部イオン選択膜42と生体界面18の間に、(不図示の)界面結合媒体を使用することもできる。この界面結合媒体は、例えば、接着剤及び/又はゲルの形態を採り得る。ゲルは、例えば水化ゲルの形態を採ることができる。
対向側電極構造体14の最外部イオン選択膜42は、作用側電極構造体12aの最外部イオン選択膜22とは逆の電荷又は極性を有するイオンに対して選択的であること、即ち、作用薬24と反対極性(第2極性)のイオンの通過を選択的に許容し、第1極性のイオンの通過を選択的に遮断する特性を有することが好ましく、これにより、生体界面18におけるイオンバランスを改善し、通電中に生じる場合のある皮膚の炎症やかぶれなどを抑制することができる。具体的には、作用側電極構造体12aの最外部イオン選択膜22が作用薬の負に荷電したイオンを生体界面18に移送する場合には、対向側電極構造体14の最外部イオン選択膜42は、生体界面18に正に荷電したイオンを移送する。他方、作用側電極構造体12aの最外部イオン選択膜22が作用薬24の正に荷電したイオンを生体界面18に移送する場合には、対向側電極構造体14の最外部イオン選択膜42は、生体界面18に負に荷電したイオンを移送する。
対向側電極構造体14の電解液46は、電極要素40と最外部イオン選択膜42の間の電極要素40に近接する位置に配置することができる。電解液46は、電極要素40における気泡(例えば水素)の生成を抑制又は禁止するためにイオンを供給し、又は、電荷を与えることができ、及び/又は、酸や塩基の生成を抑制又は禁止し、又はこれらを中和することができ、これにより、効率を高め、生体界面18の炎症の可能性を低減させることができる。電解液46は、例えば、電解液46が液体の形態である場合には、電解液槽48に保持することができる。電解液槽48は、電解液46を一時的に保持できる多様な形態を採ることができる。例えば、電解液槽48は、1以上の膜により形成される空洞、多孔質膜及び/又はゲルの形態を採ることができる。
対向側電極構造体14が、上記電解液46及びイオン選択膜42を備え、かつ、下記緩衝物質50を備えない場合には、電解液46は、最外部イオン選択膜42から生体界面18へ移送するイオンを供給する役割をも併せ有することができる。
対向側電極構造体14の緩衝物質50は、電解液46と最外部イオン選択膜42の間に配置することができる。緩衝物質50は、最外部イオン選択膜42から生体界面18へ移送するイオンを供給することができる。従って、緩衝物質50は、例えば塩(例えばNaCl)を有することができる。緩衝物質50は、緩衝槽52により一時的に保持されることができる。緩衝槽52は、緩衝物質50を一時的に保持できる様々な形態を採ることができる。例えば、緩衝槽52は、1以上の膜により形成される空洞、多孔質膜又はゲルの形態を採ることができる。
対向側電極構造体14における内部イオン選択膜54は、電解液46と緩衝物質50の間に配置することができる。内部イオン選択膜54は、多様な形態を有することができる。例えば、内部イオン選択膜54は、最外部イオン選択膜42が通過させるイオンと反対の電荷のイオンの通過を許容するイオン交換膜の形態を採り得る。或いは、内部イオン選択膜54は、半透膜などの分子量又はサイズ選択膜の形態を採り得る。内部イオン選択膜54は、望ましくない要素や化合物が緩衝物質50に移行することを防止し得る。例えば、内部イオン選択膜54は、水素イオン(H+)やナトリウムイオン(Na+)が電解液26から緩衝物質50に移行することを防止し得る。
電圧源16は、1以上の化学電池、スーパーキャパシター、ウルトラキャパシター又は燃料電池の形態を採ることができる。電圧源16は、例えば、公差0.8Vで12.8VのDC電圧で0.3mAの電流を供給し得る。電圧源16は、制御回路を介して、例えばカーボンファイバーリボンを介して作用側及び対向側電極構造体12a、14に選択的に電気的に接続されることができる。イオントフォレーシス装置10aは、電極構造体12a、14に送達される電圧、電流、及び/又は電力を制御するためのディスクリート回路及び/又は集積回路を有することができる。
上記したように、作用薬24は、カチオン性又はアニオン性の薬物又は他の治療薬の形態を採ることができる。従って、電圧源16の極又は端子は、逆転される場合がある。同様に、最外部イオン選択膜22、42及び内部イオン選択膜54の極性(選択性)は逆転される場合がある。
図1Bは、他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置10bを示している。この実施形態は、ある側面においては上記した実施形態に実質的に類似している。従って、共通の構造や動作は、同一の参照番号により示されている。種々の実施形態間の構造、動作の重要な相違点のみを以下に説明する。
図1Bに示される実施形態において、作用側電極構造体12bの最外部イオン選択膜22は、例えば3枚のイオン交換膜22a、22b、22cなどの複数のイオン選択膜が積層された形態を有している。上記したように、カチオン交換膜やアニオン交換膜などのイオン交換膜は市場において入手できる。多層のイオン交換膜22a、22b、22cの使用により、投与量を拡大させ、或いは作用側電極構造体12bに装填できる作用薬24の量を拡大させることができる。
図2Aは、他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置60aを示している。本実施形態は、実質的に上記実施形態と何らかの点で類似している。従って、共通の構造及び動作は同一の参照番号で示される。種々の実施形態における構造及び動作間の重要な相違のみを以下に説明する。
イオントフォレーシス装置60aの作用側電極構造体62aは、図1Aに示される作用側電極構造体12aと同様の構成要素に加えて、電解液26と最外部イオン選択膜22の間に配置される置換用緩衝物質30、及び、電解液26と緩衝物質30の間に配置され、又は、これらを分離するための内部イオン選択膜34を有している。
緩衝物質30は、作用薬24が最外部イオン選択膜22から生体界面18に移送されるにつれて、最外部イオン選択膜22中の作用薬24を置換するイオンを供給することができる。これのような置換は、効率を改善させ、生体界面18への送達率を上昇及び/又は安定化させ得る。従って、置換用緩衝物質30は、例えば、塩(例えばNaCl)及び/又はビタミン(例えばビタミンB12a溶液)を有することができる。
緩衝物質30は、一時的に緩衝槽32に保持されることができる。緩衝槽32は、緩衝物質30を一時的に保持できる様々な形態を採ることができる。例えば、緩衝槽32は、1以上の膜により規定される空洞、多孔質膜及び/又はゲルの形態を採ることができる。
内部イオン選択膜34は、緩衝物質30及び/又は緩衝槽32によって、最外部イオン選択膜22から離間されている。このように離間させることで、2つの膜34、22間の界面で生じ得る水の電気分解を好適に根絶させ、又は、低減させる場合がある。電気分解の根絶又は低減は、さもなければ効率の低下、移送率の低下及び/又は生体界面での炎症の可能性などの潜在的な不利益を招くであろう酸や塩基(例えばH+、OH−)の生成を禁止又は低減する。
内部イオン選択膜34は、作用薬24の通過を選択的に遮断する特性を有することが好ましく、これにより、作用薬24が最外部イオン選択膜22から置換用緩衝物質30を経て電解液26に移行し、これが電極反応などにより変質するなどの不都合を防止することができる。
内部イオン選択膜34は、例えば、ある実施形態では電荷選択性のイオン交換膜、他の実施形態では分子量又はサイズ選択性の半透膜、更に他の実施形態では「漏れ易い」電荷選択性イオン交換膜など、多様な形態を採ることができる。
典型的な電荷選択性膜は、カチオン(例:カチオン交換膜)またはアニオン(例:アニオン交換膜)いずれかの優先的移送を許容する。イオンの輸率は、そのイオンに担われる電流の割合を示す。アニオンとカチオンの輸率の和は1である。典型的な電荷選択性イオン交換膜において優先的に移送されるイオンの輸率は通常約1である。「漏れ易い」電荷選択性イオン交換膜の場合、「漏れ易い」という語は、優先的に移送されるイオンの輸率が1以下の膜を指しうる。「閾値サイズ」という語は、膜を通って拡散できる粒子(例:イオン)の最大サイズを指す。
ある実施形態において、内部イオン選択膜34は、第1極性の起電力が存在する状態で、内部イオン選択膜34が第1極性と反対の極性で閾値サイズよりほぼ小さいサイズのイオンを通過させること、そして、第1極性の起電力が存在する状態で、内部イオン選択膜34が、内部イオン選択膜34を介する第1極性のイオンに起因する総電荷流動の割合が、内部イオン選択膜34を介する総電荷流動の約0.05から約0.5の範囲に入るように、第1極性と同じ極性のイオンの流れを制限することを特徴とする。他の実施形態においては、内部イオン選択膜34は、第1極性の起電力が存在しない状態で、内部イオン選択膜34を介する第1極性のイオンに起因する総電荷流動の割合は原則的に零であることをさらに特徴とする。
また、他の実施形態においては、内部イオン選択膜34は、第1極性の起電力が存在する状態で、内部イオン選択膜34が、第1極性と反対の極性で閾値サイズよりほぼ小さいサイズのイオンを通過させること、そして、第1極性の起電力が存在する状態で、内部イオン選択膜34を介する電解液からの第1極性イオンの通過を、最外部イオン選択膜22を介する第1極性の1つかそれ以上の作用薬の流れとほぼ同等か、それより大きくなるよう内部イオン選択膜が第1極性と同じ極性のイオンの通過を制限することを特徴とする。他の実施形態において、内部イオン選択膜34は、第1極性の起電力が存在しない状態で、内部イオン選択膜34を介する第1極性のイオンに起因する総流動が原則的に零ということを特徴とする。
内部イオン選択膜34がイオン交換膜、半透膜又は「漏れ易い」イオン交換膜かによって、内部イオン選択膜34は多様な物理的形態を採ることができる。内部イオン選択膜34は、固体、液体又はゲルの形態を採り得る。内部イオン選択膜34は、例えば、ポリマーなどの明確な格子構造を有する材料や、明確な格子構造を有さない材料の形態を採り得る。
「漏れ易い」電荷選択性イオン交換膜の実施形態に関しては、内部イオン選択膜34は、実質的に自由に作用薬24の電荷と反対の電荷のイオンの通過を第1の度合いで許容し、更に、作用薬24が担う電荷と同じ電荷のイオンの通過を第1の度合いよりも小さい第2の度合いで許容する。これは、イオン交換膜のポアサイズが、閾値サイズよりも小さい分子サイズの作用薬24の電荷と反対の電荷のイオンの移送を許容できる程度に十分に大きいことの結果であり得、及び/又は、イオン交換基の数が十分に少ないために、作用薬24と同じ電荷のイオンがイオン交換膜を通過して漏れ出す、或いは濾されることの結果であり得る。
従って、内部イオン選択膜34としてイオン交換膜を使用する場合、作用薬24がカチオン性の薬物又は治療薬であれば、内部イオン選択膜34は、負に荷電したイオンを緩衝物質30から電解液26に向けて選択的に通過させるアニオン交換膜の形態を採ることができる。しかし、アニオン交換膜は、例えばナトリウムイオンなどの正に帯電したイオンの電解液26から最外部イオン選択膜22への通過を部分的に許容する。そのようなイオンにより、最外部イオン選択膜22又は置換用緩衝材料30中の作用薬24が置換され得る。
他方、作用薬24がアニオン性の薬剤又は治療薬である場合には、最外部イオン選択膜22はアニオンを外部に通過させ、内部イオン選択膜34は正に荷電したイオンを選択的に緩衝材料30から電解液26に向けて内側に通過させるカチオン交換膜の形態を採ることができる。しかし、カチオン交換膜は、塩素イオンなどの負に帯電したイオンの電解液26から最外部イオン選択膜22に向けての通過を部分的に許容する。そのようなイオンにより、最外部イオン選択膜22又は置換用緩衝材料30中の作用薬24が置換され得る。
イオントフォレーシスは概して、相当する極性の薬物を皮膚へ送達するために正または負いずれかの極性の直流を使用する。ある一定時間に印加された電流量は、薬物送達量を決定し、通常1分のミリアンペアー(mAmin)と表される。例えば、4mAの電流(I)を10分という時間(T)流すと、40(mAmin)の送達量に相当する。ファラデーの法則を使用すると、送達される薬物量(D)は、D=(IT)/ZFという関係で定めることができる。ここで、Zは薬物の価数で、Fはファラデー定数である。例えば、価数(+1)を有する薬物に対して4mAの電流を10分間流すと、理論送達率の約3X103nmol・min−1に相当する。価数(+1)を有する薬物に対して1mAの電流を10分間流すと、理論送達率の約6X102nmol・min−1に相当する。
ある実施形態において、内部イオン選択膜34は、第1の極性の起電力が存在する状態で、内部イオン選択膜34が、第1極性とは反対極性で、閾値サイズよりほぼ小さいサイズのイオンを通過させること、そして、第1の極性の起電力が存在する状態で、最外部イオン選択膜22を介する一つかそれ以上の第1極性の作用薬24の流動が約600 600 nl・min−1から約 3000 3000 nm・min−1の範囲に及ぶ時に内部イオン選択膜34を介する電解液26からの第1極性のイオンの流れが約600 600 nm・min−1から約 3000 3000 nm・min−1の範囲に及ぶように、内部イオン選択性膜34が、第1極性と同じ極性のイオンの通過を制限することを特徴とする。
少なくとも一つの実施形態において、一つあるいはそれ以上の作用薬24は、塩酸リドカイン、または塩酸リドカイン(2%)とエピネフリン(0.00125%)の形態を採りうる。イオン化されると、リドカインとエピネフリンはそれぞれ正の電荷を担う。そのような実施形態において、内部イオン選択膜34は、正の極性の起電力が存在する状態で、内部イオン選択膜34が、閾値サイズよりほぼ小さいサイズの負の極性のイオンを通過させること、そして、正の極性の起電力が存在する状態で、最外部イオン選択膜22を介する一つかそれ以上の第1極性の作用薬24の流動が約600 nmol・min−1から約3000 nmol・min−1の範囲に及ぶ時に内部イオン選択膜34を介する電解液26からの正の極性のイオンの流れが約600 nmol・min−1から約3000 nmol・min−1の範囲に及ぶように内部イオン選択膜34が正の極性のイオンの通過を制限することを特徴とするアニオン交換膜(AEM)の形態を採りうる。
電極要素20として分極性電極が使用され、内部イオン選択膜34としてイオン交換膜が使用される場合には、電解液槽28を多孔質膜の形態とするなどによって電極要素20と内部イオン選択膜34との接触を防止することが好ましく、これにより、分極性電極とイオン交換膜を接触させた状態で通電を行った場合にイオン交換膜の周辺で生じうるガスの発生を防止することができる。ただし、分極性電極とイオン交換膜とが直接的に接触したとしても、通電時に当該イオン交換膜の近傍においてガスなどが発生しない場合には、多孔質膜を設ける必要がない。かかる場合には、イオントフォレーシス装置60aの作用側電極構造体62aは、電極要素20としての分極性電極と内部イオン選択膜34が直接接触し、内部イオン選択膜34の生体側に、緩衝物質30、最外部イオン選択膜22が配置される。
本実施形態の内部イオン選択膜34に使用されるイオン選択膜の輸率には特段の制限はないが、作用薬24の通過をより確実に遮断するためにはなるべく輸率の高い(理想的には輸率が「1」の)イオン選択膜を使用することが好ましい。
図2Bは、図2Aのイオントフォレーシス装置に類似するが、3つのイオン交換膜22a、22b、22cにより作用側電極構造体62bの最外部イオン選択膜22が形成される他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置60bを示している。上記したように、多層のイオン交換膜22a、22b、22cを用いることで、作用側電極構造体62bにより多くの作用薬24を好適に装填することができる。
図3Aは、他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置70aを示している。本実施形態及びここに記載される他の実施形態は、実質的に上記実施形態と何らかの点で類似している。従って、共通の構造及び動作は同一の参照番号で示される。種々の実施形態における構造及び動作間の重要な相違のみを以下に説明する。
イオントフォレーシス装置70aの作用側電極構造体72aは、図2Aに示される実施形態における緩衝物質30及び/又は緩衝槽32に代えて、多孔質膜78を使用している。特に、多孔質膜78は、内部イオン選択膜34と最外部イオン選択膜22の間に配置される。多孔質膜78は、作用側電極構造体72a中に含まれ、又はその中で生成される特定の分子や化合物に対してサイズ選択性又は分子量選択性を持たない程度に十分に大きいサイズのポアを有している。多孔質膜78には、イオントフォレーシス装置60aにおける緩衝物質30と同様の電解液をその内部に保持することができる。多孔質膜78は、電荷や極性に対して選択性ではない。従って、多孔質膜78は、特定の用途、使用について非イオン選択性である。
多孔質膜78は、好ましくは、内部イオン選択膜34を最外部イオン選択膜22から離間させる。このように内部イオン選択膜34と最外部イオン選択膜22を離間させることで、2つのイオン選択膜34、22間の界面で生じる場合がある水の電気分解を効果的に根絶又は低減することができる。この電気分解の根絶又は低減が、さもなくば効率の低下、移送率の低下及び/又は生体界面18の炎症の可能性などの潜在的な不利益をもたらすであろう酸及び/又は塩基(例えばH+イオン、OH−イオン)の生成を禁止又は低減させる場合がある。多孔質膜78は、非イオン選択性であると説明したが、ある実施形態では、イオン選択膜に置換することもできる。
図3Bは、図3Aのイオントフォレーシス装置に類似するが、3つのイオン交換膜22a、22b、22cにより作用側電極構造体72bの最外部イオン選択膜22が形成される他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置70bを示している。上記したように、多層のイオン交換膜22a、22b、22cを用いることで、作用側電極構造体72bにより多くの作用薬24を好適に装填することができる。
図4Aは、更に他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置80aを示している。
イオントフォレーシス装置80aの作用側電極構造体82aは、図2Aの実施形態に示される緩衝物質30及び/又は緩衝槽32を有さない。緩衝物質30及び/又は緩衝槽32を有さないことで、イオントフォレーシス装置80aが簡素化され、製造コストやイオントフォレーシス装置80aの厚みが低減される。
この実施形態における内部イオン選択膜34は、作用薬24の通過を遮断する特性を有することに加えて、電解液26中における第1極性のイオン(作用薬24と同一極性のイオン)の通過を少なくとも部分的に許容する特性を有することが好ましい。即ち、内部イオン選択膜34は、実質的に自由に作用薬24の電荷と反対の電荷のイオンの通過を第1の度合いで許容し、更に、作用薬24が担う電荷と同じ電荷のイオンの通過を第1の度合いよりも小さい第2の度合いで許容する。これは、内部イオン選択膜のポアサイズが、閾値サイズよりも小さい分子サイズのイオンの移送を許容できる程度に十分に大きいことの結果であり得、及び/又は、イオン交換基の数が十分に少ないために、作用薬24と同じ電荷のイオンがイオン交換膜を通過して漏れ出す、或いは濾されることの結果であり得る。
上記特性を有するイオン選択膜34を使用することにより、通電によって最外部イオン選択膜22から生体界面18に移行した作用薬24を置換するためのイオンを電解液26からイオン選択膜22に供給することが可能となり、従って、作用薬24の安定的及び/又は効率的な生体界面18への投与が実現される。
内部イオン選択膜34としてイオン交換膜を使用する場合、ある程度輸率の低いイオン交換膜を使用することにより、上記の特性を実現することが可能である。特に好ましい輸率の範囲は0.7〜0.95である。なお、ここでの輸率は、作用薬24を適当な濃度で溶解させた薬液(作用薬24がリドカインイオンであれば、ここにおける薬液は、塩酸リドカイン水溶液とすることができる)と、電解液26とを内部イオン選択膜34によって隔離し、電解液26側に作用薬24と同一極性の電圧を印加し、薬液にその反対極性の電圧を印加して通電したときに、内部イオン選択膜34を介して運ばれる総電荷のうちの薬液の薬物対イオンにより運ばれる電荷の割合として定義される。
また、内部イオン選択膜34として輸率が0.7〜0.95程度のイオン交換膜を使用することにより、2つの膜34、22間の界面で生じ得る水の電気分解を好適に根絶させ、又は、低減させることができる場合がある。電気分解の根絶又は低減は、さもなければ効率の低下、移送率の低下及び/又は生体界面での炎症の可能性などの潜在的な不利益を招くであろう酸や塩基(例えばH+、OH−)の生成を禁止又は低減する。
図4Bは、図4Aのイオントフォレーシス装置に類似するが、3つのイオン交換膜22a、22b、22cにより作用側電極構造体82bの最外部イオン選択膜22が形成される他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置80bを示している。上記したように、これにより、他の場合に比較して、より多くの量又はドースの作用薬24の作用側電極構造体82bへの装填が可能になる。
図5Aは、更に他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置90aを示している。
イオントフォレーシス装置90aの作用側電極構造体92aは、図3Aに示される実施形態の作用側電極構造体に類似するが、図5Aの実施形態は、第1、第2内部イオン選択膜34a、34bを有している。第1内部イオン選択膜34aは、例えば、第1非イオン選択性多孔質膜78aにより、最外部イオン選択膜22から離間されている。第2内部イオン選択膜34bは、例えば、第2非イオン選択性多孔質膜78bにより、第1内部イオン選択膜34aから離間されている。第1、第2内部イオン選択膜34a、34bは、図2Aに関して上記した内部イオン選択膜34と同様の構成とすることができる。第1、第2非イオン選択性多孔質膜78a、78bは、非イオン選択性であると説明したが、いくつかの実施形態では、イオン選択膜に置換することができる。
図5Bは、図5Aのイオントフォレーシス装置に類似するが、3つのイオン交換膜22a、22b、22cにより作用側電極構造体92bの最外部イオン選択膜22が形成される他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置90bを示している。上記したように、これにより、他の場合に比較して、より多くの量又はドースの作用薬24の作用側電極構造体92bへの装填が可能になる。
上記した実施形態は、アブストラクトに記載される内容を含めて、クレームを開示された正確な形態として網羅又は限定することを意図していない。説明の目的で特定の実施形態や例が本明細書中に記述されるが、当業者が理解するように、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、様々な均等な改変を行うことができる。本明細書に記載される本発明の教示は、上において一般的に述べたイオントフォレーシス作用薬送達システム及び装置には必ずしも限られない他の作用薬送達システム及び装置にも適用できる。例えば、いくつかの実施形態では、追加的な構造を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、作用側及び対向側の電極要素20、40に印加される電圧、電流又は電力を制御する制御回路やサブシステムを含むことができる。同様に、例えば、いくつかの実施形態では、最外部イオン選択膜22と生体界面18の間に挿入される介在層(界面結合媒体)を含むことができる。いくつかの実施形態では、追加的なイオン選択膜、イオン交換膜、半透膜及び/又は多孔質膜や、電解液や緩衝物質のための追加的な槽を含むことができる。
多様な電気的な導通性を有するヒドロゲルが公知であり、医療分野において、対象者の皮膚へ、又は対象者に電気刺激を結合させる装置中に、電気接点を提供するために使用されており、このようなヒドロゲルを上述の界面結合媒体として使用することができる。ヒドロゲルは皮膚を水化させ、ヒドロゲルを介する電気刺激による加熱を防ぐ一方、皮膚を膨潤させ、有効成分のより効果的な移行を可能にする。そのようなヒドロゲルは、その全体が本明細書に組み込まれる第米国特許第6,803,420号、第6,576,712号、第6,908,681号、第6,596,401号、第6,329,488号、第6,197,324号、第5,290,585号、第6,797,276号、第5,800,685号、第5,660,178号、第5,573,668号、第5,536,768号、第5,489,624号、第5,362,420号、第5,338,490号及び第5,240995号に開示されている。そのようなヒドロゲルの他の例は、その全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開公報第2004/166147号、第2004/105834号及び第2004/247655号に開示されている。多様なヒドロゲル及びヒドロゲルシートの製品名には、Corium社のCorplexTM、3M社のTegagelTM、BD社のPuraMatrixTM、Bard社のVigilonTM、Conmed CorporationのClearSiteTM、Smith & Nephew社のFlexiGelTM、Medline社のDerma-GelTM、Johnson & Johnson社のNu-GelTM及びKendall社のCuragelTM、或いはSun Contact Lens 社のアクリルヒドロゲルフィルムが含まれる。
上記した多様な実施形態を組み合わせて更なる実施態様を実現することができる。本明細書中で言及された米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願及び非特許文献及び/又は出願データシートにリストされたものは、下記のものに限定されないが、下記のものを含めて、その全体が参照によりここに組み込まれる。
1991年3月27日に出願され、日本公開番号H04-297277を有し、日本特許3040517として2000年3月3日に発行された日本出願番号H03-86002
1999年2月10日に出願され、日本公開番号2000-229128を有する日本出願番号11-033076
1999年2月12日に出願され、日本公開番号2000-229129を有する日本出願番号11-033765
1999年2月19日に出願され、日本公開番号2000-237326を有する日本出願番号11-041415
1999年2月19日に出願され、日本公開番号2000-237327を有する日本出願番号11-041416
1999年2月22日に出願され、日本公開番号2000-237328を有する日本出願番号11-042752
1999年2月22日に出願され、日本公開番号2000-237329を有する日本出願番号11-042753
1999年4月6日に出願され、日本公開番号2000-288098を有する日本出願番号11-099008
1999年4月6日に出願され、日本公開番号2000-288097を有する日本出願番号11-099009
2002年5月15日に出願され、 PCT特許公開番号WO03037425を有するPCT特許出願WO 2002JP4696
2004年3月9日に出願された米国特許出願10/488970
2004年10月29日に出願された日本出願番号2004/317317
2004年11月16日に出願された米国仮特許出願番号60/627,952
2004年11月30日に出願された日本特許出願番号2004-347814
2004年12月9日に出願された日本特許出願番号2004-357313
2005年2月3日に出願された日本特許出願番号2005-027748
2005年3月22日に出願された日本特許出願番号2005-081220
2005年8月8日に出願された日本特許出願番号2005-229984
2005年12月16日に出願された日本特許出願番号2005-363085
種々の実施形態の各特徴は、必要であれば、種々の特許、出願、公報のシステム、回路及びコンセプトを使用して改変することで更なる実施形態が提供される。
上記詳述した記載に従って、様々な変更を行うことができる。一般に、下記のクレームにおいて、用語は、明細書及びクレーム中に記載された特定の実施形態に限定するように解釈されるべきではなく、クレームに従って動作する全てのシステム、装置及び/又は方法を含むように解釈されるべきである。従って、本発明は本開示によって限定されず、むしろ、その範囲は下記のクレームにより完全に決定される。
10a、10b、60a、60b、70a、70b、80a、80b、90a、90b・・・イオントフォレーシス装置、12a、12b、62a、62b、72a、72b、82a、82b、92A、92b・・・作用側電極構造体、14・・・対向側電極構造体、16・・・電圧源、18・・・生体界面、20・・・電極要素、22・・・最外部イオン選択膜、24・・・作用薬、26・・・電解液、28・・・電解液槽、30・・・緩衝物質、32・・・緩衝槽、34・・・内部イオン選択膜、40・・・電極要素、42・・・最外部イオン選択膜、46・・・電解液、48・・・電解液槽、50・・・緩衝物質、52・・・緩衝槽、54・・・内部イオン選択膜、78、78a、78b・・・多孔質膜