JPWO2004079766A1 - 電子放射素子、蛍光体発光素子及び画像描画装置 - Google Patents

電子放射素子、蛍光体発光素子及び画像描画装置 Download PDF

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Abstract

本発明は、従来技術と同程度又はそれ以上の優れた性能を有する電子放射素子を効率的に提供することを主な目的とする。本発明の電子放射素子は、基材、前記基材上に設けられた電極層、前記電極層上に設けられた電子放射層及び前記電子放射層に接触しないように配置された制御電極層を備えた電子放射素子であって、前記電子放射層が、電界中で電子を放射する電子放射材料(20,30)を含み、前記電子放射材料は、網目構造骨格を有する多孔体であって、網目構造骨格が内部と表面部から構成され、表面部が、電子放射成分(21,31)を含み、内部がi)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種(22)、ii)空間(32)又はiii)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも一種ならびに空間、で占められていることに特徴を有する。

Description

本発明は、網目状骨格を有する電子放射材料を電子放射層として利用した電子放射素子、蛍光体発光素子及び画像描画装置に関する。
固体面からの電子放射現象は、1)熱印加によって電子を放射する熱電子放射、2)電界印加によって電子を放射する電界電子放射などがある。近年では、加熱を必要としない電界放射型冷陰極エミッタ(FE型エミッタ)が注目されている。このFE型エミッタとしては、例えばスピント(Spindt)型、薄膜型等が知られている。
スピント型電子放射素子は、FE型エミッタの基本型である。その作用は、シリコン(Si)、モリブデン(Mo)などの高融点金属材料によって形成された微小な円錐状エミッタ・チップの先端領域に高電界(>1×10V/m)を印加することにより、電子を真空中に放出させる(例えば、米国特許3665241号公報 参照)。
薄膜型電子放射素子は、スピント型電子放射素子を発展させたものである。これは、スピント型のような微小円錐構造を用いることなく、平面状エミッタから電子を放出させる。この素子では、エミッタ形状が平面であるため、円錐構造で得られる電界集中効果があまり期待できない。このため、薄膜型電子放射素子に適用できるエミッタ用材料が限定される。
エミッタ用材料としては、非晶質状炭素膜、ダイヤモンド、カーボンナノチューブ(CNT)などのカーボン材料が知られている(例えば、特開平8−505259号公報、特開平7−282715号公報、特開平10−012124号公報 参照)。このうち、CNTは、炭素のみからなる六員環ネットを円筒状に巻いた形状をもつ微細なチューブ状(直径:数〜数10nmオーダー)の材料である。これは、導電性であり、かつ、アスペクト比が大きい先鋭な形状を有する。このため、カーボン材料の中でも、特に有効なエミッタ用材料として有望視されている。
また、電界によって電子放出するエミッタ電極と電子加速層と引き出し電極を備えた電界電子放出素子において、前記電子加速層は、多孔質シリカ膜からなることを特徴とする電界電子放出素子が知られている(特開2000−285797)。上記多孔質シリカ膜として、その空孔内にグラファイト又はシリコンを析出させた材料が使用されているが、これは引き出し電極と接触して配置されることを前提とするものである。
スピント型電子放射素子は、半導体プロセスを駆使することにより、先鋭な円錐構造の先端部に対する電界集中効果により電子を放射する。このため、その特性は、先端形状又は表面状態により大きく左右される。そのため、所望の特性に安定させることが難しい。また、そのプロセス上、使用できる材料が限定されている。さらに、この素子では、大面積のディスプレイを作製することは困難である。
これに対し、薄膜型電子放射素子は、スピント型電子放射素子のようなエミッタ部を厳格に制御する必要性が少ない。このため、安定性又は大面積化に関してはスピント型電子放射素子よりも薄膜型電子放射素子のほうが有利と言える。ところが、前記のとおり、そのよう所望の特性を有するエミッタ用材料は限られている。すなわち、その材質又は微細構造を制御しなければ、エミッタ用材料として使用することができない。
前記のように、そのエミッタ用材料の有力な候補として、各種カーボン系材料が検討されてきたが、CNT以外の材料では十分な特性を得るに至っていない。このため、エミッタ用材料として、CNTに依存しなければならない。
しかしながら、現時点で最適材料とされているCNTも、依然として高価であり、工業的規模での生産に適した材料とは言い難い。また、CNTは、粉体状であるために取扱いが困難という問題もある。
したがって、本発明は、これら従来技術の問題を解消し、従来技術と同程度又はそれ以上の優れた性能を有する電子放射素子を効率的に提供することを主な目的とする。
すなわち、本発明は、下記の電子放射素子、蛍光体発光素子及び画像描画装置に係る。
1. (a)基材、(b)前記基材上に設けられた下部電極層、(c)前記下部電極層上に設けられた電子放射層および(d)前記電子放射層に接触しないように配置された制御電極層を備えた電子放射素子であって、
前記電子放射層が、電界中で電子を放射する電子放射材料を含み、
前記電子放射材料は、(1)網目構造骨格を有する多孔体であって、(2)網目構造骨格が内部と表面部から構成され、(3)表面部が、電子放射成分を含み、(4)内部が、i)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種、ii)空間又はiii)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種ならびに空間で占められている、電子放射素子。
2. 前記電子放射層の表面に、前記電子放射材料が露出している、前記項1記載の電子放射素子。
3. 前記電子放射層が、電界中で電子を放射する電子放射材料からなる、前記項2記載の電子放射素子。
4. 前記電子放射層が導電性を有している、前記項1記載の電子放射素子。
5. 前記電子放射層が、粉末状電子放射材料を含むペーストの塗膜を焼成して得られるものである前記項1記載の電子放射素子。
6. 内部が実質的にすべて無機酸化物で占められている前記項1記載の電子放射素子。
7. 内部が実質的にすべて空間で占められている前記項1記載の電子放射素子。
8. 電子放射成分が、炭素材料である前記項1記載の電子放射素子。
9. 炭素材料が、π結合を有する前記項8記載の電子放射素子。
10. 炭素材料が、グラファイトを主成分とする前記項8記載の電子放射素子。
11. 蛍光体層を有するアノード部及び電子放射素子を含み、前記電子放射素子から放出された電子が前記蛍光体層を発光させるように前記アノード部及び電子放射素子が配置されている蛍光体発光素子であって、前記電子放射素子が前記項1記載の素子である蛍光体発光素子。
12. 蛍光体層を有するアノード部及び二次元的に配列された複数の電子放射素子を含み、前記電子放射素子から放出された電子が蛍光体層を発光させるように前記アノード部及び電子放射素子が配置されている画像描画装置であって、前記電子放射素子が前記項1記載の素子である画像描画装置。
13. (1)網目構造骨格を有する多孔体であって、(2)網目構造骨格が内部と表面部から構成され、(3)表面部が、電子放射成分を含み、(4)内部が、i)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種、ii)空間又はiii)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種ならびに空間で占められている電子放射材料の製造方法であって、
網目構造骨格を有する無機酸化物のゲルにカーボン材料を付与してカーボン含有材料からなる電子放射材料を得る工程Aを含む製造方法。
14. カーボン含有材料から無機酸化物の一部又は全部を除去する工程をさらに含む前記項13記載の製造方法。
15. 無機酸化物のゲルとして乾燥ゲルを用い、かつ、工程Aとして、当該乾燥ゲルにカーボン材料を付与することにより、カーボン含有材料として多孔体を得る工程を実施する前記項13記載の製造方法。
16. カーボン前駆体が、有機高分子を含む前記項13に記載の製造方法。
17. カーボン前駆体が、有機高分子を含む前記項14に記載の製造方法。
18. 有機高分子が、炭素−炭素不飽和結合を有する前記項16記載の製造方法。
19. 有機高分子が、芳香環を有する前記項16記載の製造方法。
20. 有機高分子が、フェノール樹脂、ポリイミド及びポリアクリロニトリルの少なくとも1種である前記項16記載の製造方法。
21. (1)網目構造骨格を有する多孔体であって、(2)網目構造骨格が内部と表面部から構成され、(3)表面部が、電子放射成分を含み、(4)内部が、i)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種、ii)空間又はiii)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種ならびに空間で占められている電子放射材料の製造方法であって、
網目構造骨格を有する無機酸化物のゲルにカーボン前駆体を付与し、得られたカーボン前駆体含有ゲルを炭化処理することによりカーボン含有材料からなる電子放射材料を得る工程Bを含む製造方法。
22. カーボン前駆体含有ゲルから無機酸化物の一部又は全部を除去する工程をさらに含む前記項21記載の製造方法。
23. 無機酸化物のゲルとして湿潤ゲルを用い、かつ、工程Bとして、当該湿潤ゲルにカーボン前駆体を付与し、得られたカーボン前駆体含有ゲルを乾燥してカーボン前駆体含有乾燥ゲルを得た後、当該乾燥ゲルを炭化処理することにより、カーボン含有材料として多孔体を得る工程を実施する前記項21記載の製造方法。
24. 無機酸化物のゲルとして湿潤ゲルを用い、かつ、工程Bとして、当該湿潤ゲルにカーボン前駆体を付与し、得られたカーボン前駆体含有ゲルから無機酸化物の一部又は全部を除去した後、得られた材料を炭化処理することにより、カーボン含有材料として多孔体を得る工程を実施する前記項22記載の製造方法。
25. カーボン前駆体が、有機高分子を含む前記項21に記載の製造方法。
26. カーボン前駆体が、有機高分子を含む前記項22に記載の製造方法。
27. 有機高分子が、炭素−炭素不飽和結合を有する前記項25記載の製造方法。
28. 有機高分子が、芳香環を有する前記項25記載の製造方法。
29. 有機高分子が、フェノール樹脂、ポリイミド及びポリアクリロニトリルの少なくとも1種である前記項25記載の製造方法。
図1は、網目状骨格構造体の微細構造を模した模式図である。
図2は、網目状骨格からなる電子放射成分被膜複合構造体の模式図である。
図3は、網目状骨格からなり、かつ骨格が中空な電子放射成分構造体の模式図である。
図4は、本発明の製造工程例を示す模式図である。
図5は、本発明の製造工程例を示す模式図である。
図6は、本発明の製造工程例を示す模式図である。
図7は、本発明の製造工程例を示す模式図である。
図8は、本発明の電子放射素子の概略断面図である。
図9は、電子放射素子を用いた蛍光体発光素子の概略断面図である。
図10は、電子放射素子を二次元的に複数個配置した画像描画装置の断面斜視図である。
図11は、従来の電界電子放出素子の概要を示す図である。
符号の説明
10:ゲル構造(多孔質体)
11:微粒子
12:細孔
13:網目状骨格を表す樹枝状線図
20:電子放射材料(電子放射成分被膜複合構造体)
21:電子放射成分
22:絶縁性材料(あるいは半絶縁性材料)
30:電子放射材料(中空電子放射材構造体)
31:電子放射成分
32:中空
80:電子放射素子
81:基材
82:電極層
83:電子放射層
84:制御電極層
85:絶縁体層
86:制御電源
87:はみ出し部
88:空間領域
90:電子放射素子
91:基材
92:電極層
93:電子放射層
94:制御電極層
95:絶縁体層
96:制御電源
100:アノード部
97:蛍光体層
98:アノード電極層
99:前面基材
910:加速電源
911:真空容器
101:基材
102:電極層
103:電子放射層
104:制御電極層
105:蛍光体層
106:アノード電極層
107:前面基材
108、109 駆動ドライバ
201 多孔質シリカ膜
202 導電性基板
203 上部電極
1.電子放射素子
本発明の電子放射素子は、(a)基材、(b)前記基材上に設けられた下部電極層、(c)前記下部電極層上に設けられた電子放射層および(d)前記電子放射層に接触しないように配置された制御電極層を備えた電子放射素子であって、
前記電子放射層が、電界中で電子を放射する電子放射材料を含み、
前記電子放射材料は、(1)網目構造骨格を有する多孔体であって、(2)網目構造骨格が内部と表面部から構成され、(3)表面部が、電子放射成分を含み、(4)内部が、i)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種、ii)空間又はiii)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種ならびに空間で占められている、
ことを特徴とする。
まず、本発明素子の電子放射層を構成する電子放射材料とその製造方法について説明する。
(1)電子放射材料とその製造方法
(1−1)電子放射材料
本発明における電子放射材料(以下「本発明材料」ともいう。)は、電界中で電子を放出するものであり、具体的には次の(1)〜(4)を満たす材料を用いる。
電子放射材料は、(1)網目構造骨格を有する多孔体であって、(2)網目構造骨格が内部と表面部から構成され、(3)表面部が、電子放射成分を含み、(4)内部が、i)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種、ii)空間又はiii)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種ならびに空間で占められている。
電子放射材料の形状及び大きさも限定されず、その用途、使用目的等に応じて適宜決定すれば良い。なお、本発明材料は、上記(1)〜(4)の要件を満たす限り、粉砕処理されたものであっても良い。例えば、平均粒径0.5μm以上50μm以下の粉末も、本発明材料に包含される。
[多孔体]
上記多孔体の網目構造骨格は、三次元網目状の構造を有するものであれば良い。上記骨格は、多数の細孔を有することが好ましい。上記骨格は、望ましくは、太さが2〜30nm程度の微細な固体成分(線状体)が網目状に絡まり合ってネットワーク化し、その隙間は空孔となっている。多孔質体とは、連続細孔又は独立細孔を有した固体物質のことである。これは、後記に示すように、母材粉体の成形、粉体焼成、化学発泡、物理発泡、ゾル−ゲル法などの方法で作製することができる。
多孔体のかさ密度、BET比表面積及び平均細孔径は、絶縁材料の種類、多孔体の用途、使用方法等によって適宜設定し得る。かさ密度は、通常10〜500kg/m程度、特に50〜400kg/mの範囲から適宜決定すれば良い。比表面積は、通常50〜1500m/g程度、特に100〜1000m/gの範囲内から適宜設定することができる。比表面積は、窒素吸着法であるブルナウアー・エメット・テラー法(以下、BET法と略す)で測定した値である。また、多孔体の平均細孔径は、通常1〜1000nm、特に5〜50nmの範囲から適宜決定することができる。
[多孔体表面部]
表面部は、電子放射成分を含む。電子放射成分は、電界中で電子を放出する機能(電界放出機能)を有するものであればよい。特に、広バンドギャップ半導体材料、仕事関数(電子親和力)値が小さい材料等を好適に用いることができる。
具体的には、例えば、セシウム等のアルカリ金属又はその酸化物;ベリリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属又はその酸化物;カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック等)、活性炭、人造黒鉛、天然黒鉛、炭素繊維、熱分解炭素、ガラス状炭素、不浸透炭素、特殊炭素、コークス等の炭素材料、窒化アルミニウム、窒化ホウ素等の窒化物又はその混晶系材料等が挙げられる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
これらの中でも、特に炭素材料が好ましい。炭素材料は、結晶質又は非晶質のいずれであっても良い。炭素材料が結晶質のときは、その結晶構造は限定されず、たとえばダイヤモンド構造、黒鉛構造等のいずれあっても良い。また、炭素材料として、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノリボン、カーボンナノコイル、カーボンナノカプセル等も使用することが可能である。
炭素材料は、好ましくは、カーボン材料の原料から炭化生成されたカーボン材料及び/又はカーボン前駆体である有機高分子を炭化処理して得られたカーボン材料を用いることができる。これらは、ゲルの骨格表面上に良好に形成されやすい上に、生成条件、炭化処理条件等によってカーボンの構造、特性等を任意に制御できるという利点がある。
表面部は、特に、負の電子親和力(NEA;Negative Electron Affinity)と呼ばれる状態又は非常に小さな正の電子親和力になる状態では、電子が存在し得る伝導帯端のエネルギー準位が真空準位よりも高い又は同等程度となる。これにより、きわめて容易に電子放射面から真空中へ電子を放出することが可能となる。
表面部の厚さは、電子放射成分の種類等に応じて適宜決定できるが、一般的には3〜100nm程度、特に3〜20nm程度とすることが好ましい。この厚みは、後記の製造方法において条件を変更することによって制御することができる。
[多孔体内部]
多孔体の内部は、i)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種、ii)空間又はiii)絶縁性材料及び半絶縁性材料(以下、両者を「絶縁材料」と総称する。)の少なくとも1種ならびに空間で占められている。
すなわち、上記多孔体は、多孔体内部における絶縁材料の含有率(占有率)が0容量%以上100容量%以下の範囲を有する。したがって、本発明は、i)多孔体内部が実質的にすべて絶縁材料で形成されている場合、ii)多孔体内部が実質的にすべて空間(中空部)である場合、iii)多孔体内部の一部が絶縁材料であり、残りが空間になっている場合などのいずれの形態も包含する。
絶縁材料は、公知の絶縁材料又は半絶縁材料から選択することができる。一般的には、導電率が10−3S/cm以下(27℃)のものであれば良い。
特に、本発明では、網目構造骨格を有する多孔体を形成しやすいという点で無機酸化物を好適に用いることができる。無機酸化物としては、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等のほか、これらの混合物(混合酸化物)、複合酸化物等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を採用することができる。
また、上記i)およびiii)の場合、絶縁材料と電子放射成分の割合は、絶縁材料又は電子放射成分の種類、多孔体の用途等に応じて適宜決定することができる。
<実施の形態1>
以下、電子放射材料の好ましい態様について、図示しながら説明する。本発明において、網目構造骨格を有する多孔体を形成する方法については特に限定されるものではない。その中でも、ゾル−ゲル法は、簡便な方法であることから、本発明でも好適な実施例として挙げている。よって、ゾルゲル法による場合を中心に説明する。
図1(a)は、ゾル−ゲル法等で作製された多孔質体10(多数の細孔を有する網目状骨格構造体)の微細構造の模式図である。これは、直径が2〜30nmである微粒子11の凝集体が3次元的にネットワークを組み、固体としての形状を保ちながら、大きさが1μm以下の細孔12(気相)を多数含んだ多孔構造となっている。これにより、空孔率50%以上の低密度体とすることができ、その結果として比表面積の大きい多孔体構造を得ることができる。例えば、BET法による比表面積が100m/g以上の多孔体を得ることもできる。
図1(b)は、図1(a)に示した多孔質体の固体部分(骨格部分)の連結状態を線で表したものである。骨格部がランダム・ネットワークからなる網目状構造をしていることがわかる。
図1(c)は、図1(b)に基づき、より網目状骨格を表す線のみを抽出したものである。以下、このような微粒子の集合体からなる多孔質構造をこのような樹枝状線13で模する。
なお、図1では、微粒子集合体からなる多孔質構造の例であるが、本発明は限定的でない。例えば、線状物質の集合体、より大きな構造体に蜂の巣状の孔が空いた構造等の多数の細孔を有する多孔体構造であればよい。以下、図1(c)のように記したときは、これらの場合も包含するものとする。
<実施の形態2>
図2には、電子放射材料の好ましい形態を示す。本発明材料20の第1の構成は、図2に示すような微細な網目状骨格からなる電子放射成分被膜構造体21である。すなわち、絶録性材料(あるいは半絶縁性材料)22で構成された網目状骨格をコアとして、その骨格表面に電子放射成分21が被覆されている。
<実施の形態3>
本発明に係る電子放射材料の第2の構成を図3に示す。これは、網目状骨格構造からなり、かつ、その骨格内部が中空32である電子放射成分31からなる電子放射材料30である。すなわち、チューブ状の骨格が絡み合った構造を有する。
この構造では、網目状骨格構造の内部が中空32になっている。このため、中空でない場合に比べて比表面積がより高くなる。すなわち、網目状骨格構造に基づく性能に加え、さらなる性能向上が期待できる。これにより、より高い電子放射性能が要求される用途への応用が可能である。
(1−2)電子放射材料の製造方法
電子放射材料の製造方法は限定的ではない。例えば、絶縁材料および電子放射成分がそれぞれ無機酸化物およびカーボン材料である場合には、下記の第1方法又は第2方法により好適に製造することができる。
第1方法は、(1)網目構造骨格を有する多孔体であって、(2)網目構造骨格が内部と表面部から構成され、(3)表面部が、電子放射成分を含み、(4)内部が、i)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種、ii)空間又はiii)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種ならびに空間で占められている電子放射材料の製造方法であって、少なくとも(1)網目構造骨格を有する無機酸化物のゲルにカーボン材料を付与してカーボン含有材料を得る工程A又は(2)当該ゲルにカーボン前駆体を付与し、得られたカーボン前駆体含有ゲルを炭化処理することによりカーボン含有材料を得る工程Bを含む製造方法である。
第2方法は、第1方法において、カーボン含有材料又はカーボン前駆体含有材料から無機酸化物の一部又は全部を除去する工程をさらに含む方法である。
第1方法
第1方法は、少なくとも(1)当該ゲルにカーボン材料を付与してカーボン含有材料を得る工程A又は(2)当該ゲルにカーボン前駆体を付与し、得られたカーボン前駆体含有ゲルを炭化処理することによりカーボン含有材料を得る工程Bを含む製造方法である。
第1方法によれば、電子放射材料(多孔体)のうち、多孔体内部が実質的にすべて無機酸化物で占められているものを好適に製造することができる。第1方法では、工程Aまたは工程Bのいずれかを選択的に実施することができる。
[工程A]
工程Aは、前記ゲルにカーボンを付与してカーボン含有材料を得る工程である。
出発材料である網目構造骨格を有する無機酸化物のゲルは、網目構造骨格を有するものであれば特に限定されない。また、液体(溶媒)を含有するか否かによって、湿潤ゲル(網目構造骨格の隙間に溶媒を含むゲル)又は乾燥ゲル(網目構造骨格の隙間に溶媒が実質的に存在しないゲル)の2つのタイプがあるが、本発明ではいずれも採用することができる。
また、無機酸化物の種類は、電子放射材料の用途、使用方法等に応じて各種の金属酸化物の中から適宜選択できる。特に、網目構造骨格を形成させるためにゾルゲル法で形成できるものが好ましい。例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化コバルト等のほか、これらの混合酸化物、複合酸化物等も挙げられる。これらのうち、ゾルゲル法による湿潤ゲルの形成が容易であることから、シリカおよびアルミナの少なくとも1種がより好ましい。
ゲルは、公知の方法で製造されたものを使用できる。特に、前記のとおり、網目構造骨格をより確実に形成できるという点で、ゾルゲル法で調製されたゲルを好適に用いることができる。以下、ゾルゲル法により製造する場合を代表例として説明する。
原料としては、ゾルゲル反応により湿潤ゲルを形成するものであれば限定されない。公知のゾルゲル法で使用されている原料を使用することもできる。例えば、ケイ酸ナトリウム、水酸化アルミニウム等の無機材料、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウム−sec−ブトキシドなどの有機金属アルコキシドの有機材料などを用いることができる。これらは、目的とする無機酸化物の種類に応じて選択すればよい。
ゾルゲル法は、公知の条件に従って実施すれば良い。一般的には、上記の原料を溶媒に溶解させて溶液を調製し、室温又は加温下で反応させ、ゲル化すれば良い。たとえば、シリカ(SiO)の湿潤ゲルをつくる場合は、以下のように実施すればよい。
シリカの原料としては、たとえばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシランなどのアルコキシシラン化合物、これらのオリゴマー、ケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)、ケイ酸カリウムなどの水ガラス化合物、コロイダルシリカなどが挙げられる。これは、単独または混合して用いることができる。
溶媒としては、原料が溶解し、生成したシリカが溶解しないものであれば限定されない。例えば、水のほか、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、トルエン、ヘキサンなどが挙げられる。これらは1種または2種以上で用いることができる。
また、必要に応じて、触媒、粘度調整剤等の各種添加剤も配合することができる。触媒としては、水のほか、塩酸、硫酸、酢酸などの酸、アンモニア、ピリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基を用いることができる。粘度調整剤としては、エチレングリコール、グリセリン、ポリビニルアルコール、シリコーン油などを用いることができるが、湿潤ゲルを所定の使用形態にできるのであれば限定されない。
上記原料を溶媒に溶解して溶液を調製する。この場合の溶液の濃度は、用いる原料又は溶媒の種類、所望のゲルの性状などによって異なるが、一般的には骨格を形成する固体成分濃度が2重量%〜30重量%程度とすれば良い。上記溶液は、必要に応じて上記添加剤を加え、攪拌した後、注型、塗布などによって所望の使用形態にすれば良い。この状態で一定時間経過すれば、溶液はゲル化して所定の湿潤ゲルを得ることができる。具体的には、溶媒中で原料が反応しながらシリカの微粒子を形成し、その微粒子が集まって網目構造骨格を形成して湿潤ゲルが生成する。
この場合、溶液の温度は限定的でなく、常温又は加熱下とすれば良い。加熱する場合は、用いる溶媒の沸点未満の温度範囲内で適宜設定することができる。なお、原料等の組合せによっては、ゲル化する際に冷却しても良い。
また、生成した湿潤ゲルを後のカーボン前駆体形成などの工程において、溶媒の親和性を高めること等を目的として、必要に応じて表面処理を行うこともできる。この場合、湿潤ゲルの状態で溶媒中でその固体成分の表面に表面処理剤を化学反応させて処理することもできる。
表面処理剤としては、例えばトリメチルクロルシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、エチルトリクロルシラン、フェニルトリクロルシランなどのハロゲン系シラン処理剤; トリメチルメトシシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどのアルコキシ系シラン処理剤; ヘキサメチルジシロキサン、ジメチルシロキサンオリゴマーなどのシリコーン系シラン処理剤; ヘキサメチルジシラザンなどのアミン系シラン処理剤; プロピルアルコール、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクタノール、デカノールなどのアルコール系処理剤などを用いることができる。これらは、電子放射材料(多孔体)の用途等に応じて1種又は2種以上を選定すればよい。
ゲルに付与するカーボン材料としては、前記のとおり炭素又は炭素を主成分とする材料を使用することができる。例えば、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック等)、活性炭、人造黒鉛、天然黒鉛、炭素繊維、熱分解炭素、ガラス状炭素、不浸透炭素、特殊炭素、コークス等を挙げることができる。また、結晶構造も限定されず、ダイヤモンド構造、黒鉛構造等のいずれでも良い。また、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノリボン、カーボンナノコイル、カーボンナノカプセル等のナノカーボン材料も使用することが可能である。これらは、1種又は2種以上で用いることができる。これらは、多孔体の用途等に応じて適宜選択することができる。
カーボン材料を付与する方法は特に限定されず、気相法、液相法又は固相法のいずれも適用することができる。たとえば、a)カーボン材料を気相法にてゲル(好ましくは乾燥ゲル)の骨格表面上に堆積させる方法、b)カーボン材料(たとえば、平均粒径10nm以下のカーボン含有超微粒子)の分散液をゲル(好ましくは湿潤ゲル)に付与する方法などを挙げることができる。
上記a)の方法として、カーボン材料を気相法により付与する工程について説明する。
この方法は、カーボン材料を生成し得る原料にエネルギーを加え、それにより生成したカーボン材料をゲルの骨格表面上に堆積させる方法である。この方法によれば、カーボン材料をゲル上に形成できる。そのため、別途に炭化処理する必要がなく、効率的である。
上記原料としては、メタン、エタン、プロパン、ブタンなどの飽和炭化水素化合物; エチレン、アセチレン、プロピレンなどの不飽和炭化水素化合物; ベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素化合物; メタノール、エタノールなどのアルコール類; アクリロニトリルなどの窒素含有炭化水素; 一酸化炭素と水素の混合気体、二酸化炭素と水素の混合気体などの炭素含有ガスなどが挙げられる。これらは、1種又は2種以上で用いることができる。
これらの原料をカーボンに変えるためのエネルギーとしては、たとえば熱、プラズマ、イオン、光、触媒などを採用することができる。乾燥ゲルの中でカーボン化を進めるには、加熱による方法が制御性が高いので好ましい。
気相法は、通常の条件に従って実施すれば良い。たとえば、反応容器中にゲルを配置し、その反応雰囲気中に上記原料を蒸気とし、これを加熱下でゲルの骨格表面上にカーボンを堆積させれば良い。この場合の条件は、多孔体の用途、所望の特性等に応じて適宜調節することができる。
上記b)の方法は、好ましくは湿潤ゲルを用い、そのゲル中に含まれる溶媒にカーボンを分散させ、その後に乾燥処理を施すことによってカーボン含有材料を得ることができる。この場合、分散させるカーボン材料は、平均粒径1nm以上10nm以下の超微粒子であることが望ましい。
ゲルをカーボン材料で被覆する際におけるカーボン材料の使用量(被覆量)は、特に制限されず、電子放射材料の用途、使用方法、用いるカーボン材料の種類等に応じて適宜設定することができる。
工程Aで得られたカーボン含有材料は、そのまま電子放射材料として使用しても良い。また、必要に応じてゲル中の残存溶媒を取り除くこと等を目的として溶媒除去工程(乾燥工程)を実施しても良い。特に、ゲルとして湿潤ゲルを使用する場合には、溶媒除去工程を実施することが望ましい。かかる工程は、後記の乾燥処理と同様にすれば良い。
[工程B]
工程Bは、前記ゲルにカーボン前駆体を付与し、得られたカーボン前駆体含有ゲルを炭化処理することによりカーボン含有材料を得る工程である。
前記ゲルとしては、工程Aで示したものを使用することができる。したがって、ゲルとして湿潤ゲル又は乾燥ゲルのいずれも使用することができる。
カーボン前駆体としては、最終的に炭化してカーボンとなるものであれば特に限定されない。従って、炭素を含有する材料であればいずれの材料も使用することができ、一般的には有機材料を使用することができる。
このうち、本発明では、有機高分子を好適に用いることができる。例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフルフリルアルコール、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリフェノール(フェノール樹脂)、ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、アクリル共重合体等の重合体又は共重合体を挙げることができる。
この中でも、炭素−炭素不飽和結合を有する有機高分子が好ましい。すなわち、炭素−炭素二重結合および炭素−炭素三重結合の少なくとも1種を有する有機高分子を好適に用いることができる。このような有機高分子を用いることによって、より容易かつ確実に炭化させることができ、しかも所定の強度をもつカーボン材料を形成することができる。たとえば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリスチレン、ポリサルホン、ポリフェニレンエーテル、メラミン樹脂、芳香族ポリアミドなどを挙げることができる。これらは、1種又は2種以上で用いることができる。また、他の有機高分子と併用することも可能である。本発明では、特に、芳香環を有する有機高分子が好ましい。たとえば、フェノール樹脂、ポリイミド等の少なくとも1種を好適に用いることができる。
また、芳香環を有しない有機高分子(例えば、ポリアクリロニトリル、アクリル共重合体など)であっても、炭化の進行によって環化し、不飽和結合を生成するものも好適に用いることができる。換言すれば、炭化前は炭素−炭素不飽和結合を有していないが、炭化によって環化を起こして炭素−炭素不飽和結合を生成し得る有機高分子も好適に用いることができる。このような有機高分子のうち、特にポリアクリロニトリルが好ましい。
カーボン前駆体をゲルに付与してカーボン前駆含有ゲルを調製する方法としては、カーボン前駆体を支持体となる無機酸化物の網目構造骨格上に形成できる方法であれば特に限定されない。たとえば、(a)カーボン前駆体を無機酸化物の湿潤ゲルに含浸する方法のほか、(b)有機高分子を形成し得るモノマー又はオリゴマーを用い、これを湿潤ゲルに含浸させた後、重合させ、カーボン前駆体である有機高分子を生成させる方法、(c)無機酸化物の乾燥ゲル中で有機高分子を形成し得るモノマーを気相法により付与し、次いで重合させ、カーボン前駆体である有機高分子を生成させる方法などを好適に採用することができる。
上記(a)の方法は、具体的には、カーボン前駆体を溶媒に溶解させた溶液又は溶媒に分散させた分散液(エマルジョンなど)に湿潤ゲルを浸漬する。これによって、カーボン前駆体が網目構造骨格の表面に付着して被覆される。カーボン前駆体として有機高分子を用い、その溶液又は分散液と湿潤ゲルを接触させる場合には、湿潤ゲルはその内部に溶液または分散液を保持し、乾燥後は有機高分子が網目骨格構造中に残る。この場合、溶解している高分子は、網目骨格構造に物理的に吸着されていてもよい。また、有機高分子が溶解している溶液を含む湿潤ゲルを、その有機高分子に対して貧溶媒に浸漬すると、有機高分子が網目骨格構造上に析出し、表面部を形成することになる。
上記の溶液又は分散液に用いる溶媒としては、有機高分子の種類等に応じて公知の溶媒の中から適宜選択すればよい。たとえば、水のほか、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類などが挙げられる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
溶液又は分散液中のカーボン前駆体の濃度は、特に制限されず、カーボン前駆体の所望の付与量、カーボン前駆体の種類等に応じて適宜決定することができる。
上記(b)の方法は、具体的には、重合により有機高分子を形成し得る有機化合物(オリゴマーも含む。)を溶媒に溶解した溶液又は溶媒に分散した分散液に湿潤ゲルを浸漬して、そのゲル内部で重合(高分子化)を行わせ、カーボン前駆体である有機高分子を生成させることができる。この方法によると、網目構造骨格内部で有機高分子が成長するために、物理的に溶出しにくいカーボン前駆体含有湿潤ゲルを得ることが可能である。
上記有機化合物としては、目的の有機高分子に対応するモノマーを使用すればよい。たとえば、ポリアクリロニトリルを得る場合はアクリロニトリル、ポリフルフリルアルコールを得る場合はフルフリルアルコール、ポリアニリンを得る場合はアニリンなどを使用することができる。また、ポリイミドを生成させる場合は、イミド環を形成させる縮重合反応で生成させる場合、一般的なものとして無水テトラカルボン酸化合物およびジアミン化合物を用いることができる。ポリアミドを得る場合は、アミド結合を形成させる縮重合反応で生成させる場合、一般的なものとしてジカルボン酸化合物やジカルボン酸クロリド化合物と、ジアミン化合物を用いることができる。ポリウレタンを生成させる場合は、ポリオールなどのジオール化合物とジイソシアネート化合物、ポリウレアを得る場合は、ジイソシアネート化合物、ポリフェノールを得る場合には、フェノール化合物とアルデヒド化合物などを使用すればよい。
本発明の有機高分子としては、炭素−炭素不飽和結合を有するものが好ましいので、そのような有機高分子を生成させる有機化合物を好適に用いることができる。例えば、有機高分子がフェノール樹脂である場合は、フェノール化合物としてフェノール、クレゾール、レゾルシノール(1,3−ベンゼンジオール)、カテコール、フロログリシノール、サリチル酸、オキシ安息香酸などが挙げられる。この場合には、縮合剤であるアルデヒド化合物としてホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール、加熱によってホルムアルデヒドを生成するパラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミンなども使用する。縮合触媒としては、塩基触媒および/または酸触媒を用いることができる。塩基触媒は主にメチロール基などの付加反応を進行させ、酸触媒は主にメチレン結合などの重付加縮合反応を進行させればよい。塩基触媒としては、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸化物、アミン、アンモニアなど、一般的なフェノール樹脂製造用の触媒を用いることができる。酸触媒としては、たとえば硫酸、塩酸、リン酸、シュウ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸などを用いることができる。
有機化合物を溶解又は分散させるための溶媒としては特に限定されず、用いる有機化合物の種類等に応じて公知の溶媒の中から適宜採択すればよい。たとえば、水のほか、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類などが挙げられる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
溶液又は分散液中における有機化合物の濃度は特に限定されず、用いる有機化合物の種類等に応じて適宜決定すれば良い。
重合させる方法としては、特に限定されず、たとえば熱重合、触媒重合、光重合などの公知の方法により実施することができる。
上記(c)の方法では、無機酸化物の乾燥ゲル中でカーボン前駆体である有機高分子を形成し得るモノマーを気相法により付与し、次いで重合する方法である。具体的には、前述のポリアクリロニトリル、ポリフルフリルアルコール、ポリアニリンなどの有機高分子のモノマーを蒸気とし、ゲルの中に充填してから重合させる方法である。また、ポリフェノールなどではフェノール化合物を充填しておいてから縮合剤のホルムアルデヒドなどを蒸気として充填して縮重合させることができる。また、ポリイミド、ポリアミドなどにおいては、原料のカルボン酸化合物とジアミン化合物を蒸発させ、それをゲルの中に充填し、重縮合させることができる。
気相法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。たとえば、化学気相成長法(CVD)、物理的気相成長法(PVD)等の一般的な方法を用い、ポリマー又はそのモノマーを加熱等により気化または蒸発させる方法などを採用することができる。
重合させる方法としては、前記(b)の場合と同様にして実施することができる。
次の炭化処理工程では、得られたカーボン前駆体含有ゲルを熱処理することによって炭化処理を行う。
この場合、ゲルとして湿潤ゲルを使用する場合には、炭化処理に先立って予め乾燥して乾燥ゲルとしておくことが好ましい。
乾燥処理には、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥の通常乾燥法のほか、超臨界乾燥法、凍結乾燥法等も用いることができる。一般に、乾燥ゲルの表面積を高く、かつ、低密度化を図るため湿潤ゲル中の固体成分量を少なくすれば、ゲル強度が低下する。また、単に乾燥するだけでは、溶媒蒸発時のストレスによってゲルが収縮してしまうことが多い。湿潤ゲルから優れた多孔質性能を有する乾燥ゲルを得るためには、乾燥手段として超臨界乾燥又は凍結乾燥を好ましく用いることができる。これによって、乾燥時のゲルの収縮、すなわち高密度化を効果的に回避することができる。通常の溶媒蒸発させる乾燥手段においても、蒸発速度をゆっくりさせるための高沸点溶媒を使用したり、蒸発温度を制御することによって、乾燥時のゲルの収縮を抑制することができる。また、湿潤ゲルに対し、ゲルの固体成分の表面を撥水処理等を施して表面張力を制御することによっても、乾燥時のゲルの収縮を抑制することができる。
超臨界乾燥法又は凍結乾燥法では、溶媒を液体状態から相状態を変えることによって、気液界面をなくして表面張力によるゲル骨格へのストレスを与えることなく乾燥できる。このため、乾燥時のゲルの収縮を防ぐことができ、低密度の乾燥ゲルの多孔質体を得ることができる。本発明では、特に、超臨界乾燥法を用いることがより好ましい。
超臨界乾燥に用いる溶媒は、湿潤ゲルの保持している溶媒を用いることができる。また、必要に応じて、超臨界乾燥において扱いやすい溶媒に置換しておくのが好ましい。置換する溶媒としては、直接その溶媒を超臨界流体にするメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類のほか、二酸化炭素、水などが挙げられる。または、これらの超臨界流体で溶出しやすいアセトン、酢酸イソアミル、ヘキサンなどの有機溶剤に置換しておいてもよい。
超臨界乾燥は、オートクレーブなどの圧力容器中で行うことができる。たとえば、溶媒がメタノールではその臨界条件である臨界圧力8.09MPa以上、臨界温度239.4℃以上にし、温度一定の状態で圧力を徐々に開放することにより行う。たとえば、溶媒が二酸化炭素の場合には、臨界圧力7.38MPa以上、臨界温度31.1℃以上にして、同じように温度一定の状態で超臨界状態から圧力を開放して気体状態にして乾燥を行う。たとえば、溶媒が水の場合には、臨界圧力22.04MPa以上、臨界温度374.2℃以上にして乾燥を行う。乾燥に必要な時間としては、超臨界流体によって湿潤ゲル中の溶媒が1回以上入れ替わる時間以上を経過すればよい。
炭化処理は、カーボン前駆体が300℃程度以上で炭化が進行しはじめるため、300℃以上で行うことが好ましい。作業時間の効率性の観点から、400℃以上の温度がより好ましい。また、加熱温度の上限は、網目構造骨格の無機酸化物の融点未満の温度で適宜設定できる。たとえば、無機酸化物にシリカを用いた場合には、その乾燥ゲルは、600℃程度でやや収縮するが、1000℃以上では大きく収縮する。したがって、炭化処理温度は、その収縮抑制の効果の程度で選択すればよい。本発明では、特に1000℃未満(さらには800℃以下)で炭化処理を行うことが望ましい。
炭化処理の雰囲気は、特に限定されず、大気中、酸化性雰囲気中、還元性雰囲気中、不活性ガス雰囲気中、真空中等のいずれであっても良い。ただし、燃焼等を考慮すれば、温度を高く設定するときには、低濃度酸素雰囲気下で行うのが好ましい。本発明における低濃度酸素雰囲気下とは、雰囲気の酸素濃度が0〜10%であることをいう。乾留法、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気中での加熱、または真空中での加熱でも炭化処理を行うことができる。
第2方法
第2方法は、第1方法において、カーボン含有材料又はカーボン前駆体含有材料から無機酸化物の一部又は全部を除去する工程をさらに有する方法である。
第2方法では、多孔体のうち、内部が無機酸化物及び空間で占められている多孔体又は内部が空間で占められている多孔体を好適に得ることができる。すなわち、無機酸化物の一部を除去すれば、内部が無機酸化物及び空間で占められている多孔体が得られる。無機酸化物の全部を除去すれば、内部が実質的にすべて空間で占められている多孔体が得られる。
無機酸化物を除去する工程について説明する。第2方法では、カーボン含有材料又はカーボン前駆体含有材料から無機酸化物の一部又は全部を除去する。これらの除去工程は、第1方法のどの段階で実施しても良い。すなわち、本発明は、工程Aで得られるカーボン含有材料から無機酸化物の一部又は全部を除去する方法、工程Bでつくられるカーボン前駆体含有材料から無機酸化物の一部又は全部を除去した後、得られた材料を炭化する方法、工程Bで炭化して得られるカーボン含有材料から無機酸化物の一部又は全部を除去する方法等のいずれも包含する。
無機酸化物を除去する方法としては限定的でない。たとえば、蒸発、昇華、溶出などの公知の方法をいずれも用いることができる。特に、本発明では、ゲル骨格への影響が少ない温和な条件が好ましいことから、溶出による除去がより好ましい。
溶出する方法としては、無機酸化物を溶解する溶液に浸漬して行えばよい。このときに使用する溶液は、酸または塩基の溶液を好ましく用いることができる。一般にゾルゲル法によって形成される無機酸化物のゲルは結晶性が低く、非晶質である場合が多い。そのため、強い酸や塩基に対しての溶解性が高い。また、微粒子が凝集している網目構造骨格のゲルがほぐれてしまうという性質(解こう性)も高い。
酸または塩基は、無機酸化物の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、無機酸化物がシリカである場合等は、フッ化水素酸のほか、水酸化アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、炭酸アルカリ(炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム)などを好適に用いることができる。これらは、水溶液、アルコール溶液などの形態で使用することができる。なお、酸又は塩基の濃度は、用いる酸又は塩基の種類、無機酸化物の種類等に応じて適宜決定すれば良い。
無機酸化物を除去する第2方法では、第1方法で得られるカーボン含有多孔体よりも比表面積が大きい多孔体が得られる。このカーボン材料からなる網目構造骨格は、電子顕微鏡等の観察で中空構造が観察されることが多い。電子顕微鏡観察で明確な中空構造が観察されないものであっても、比表面積の大きなカーボン多孔体も得られる。
以下、本発明の電子放射材料の製造方法の好ましい形態を図示しながら説明する。
<実施の形態4>
カーボン含有多孔体からなる電子放射材料の第1の製造方法は、図4に示す基本的な工程からなる。基本的な工程としては、調合したゾル溶液(図4−▲1▼)よりゾル−ゲル法を用いて、無機酸化物の網目状骨格構造(ゲル構造:図4−▲2▼)を形成した後に、その湿潤ゲルの骨格表面にカーボン前駆体を形成し、カーボン前駆体含有多孔体(複合多孔体)(図4−▲3▼)とした後、骨格表面に被膜されたカーボン前駆体を炭化してカーボン化(図4−▲4▼)する方法である。
すなわち、無機酸化物の原料から無機酸化物の湿潤ゲルを合成する工程、得られた無機酸化物の湿潤ゲルに液相中でカーボン前駆体を形成してカーボン前駆体含有湿潤ゲルを得る工程、さらにカーボン前駆体含有湿潤ゲルを乾燥して複合乾燥ゲルを得る工程、その後に炭化処理してカーボン含有多孔体を得る工程からなる。これらの工程は基本的なものである。この工程を行うのに溶媒置換、触媒形成、表面処理などの処理工程が適宜追加されていてもよい。
この製造方法では、無機酸化物からなる網目状骨格構造が、カーボン前駆体が炭化される際に、その炭化に伴う収縮を抑制する支持体としての役割を有する。これにより、炭化に伴うカーボン前駆体の収縮を抑制ないしは防止することができる。その結果、カーボン前駆体がカーボン系被膜になる際の密度増加を抑制するとともに、比表面積の低下を抑えることが可能になる。
<実施の形態5>
カーボン含有多孔体からなる電子放射材料の第2の製造方法は、図5に示す基本的な工程からなる。この方法は、網目状骨格を有する無機酸化物の乾燥ゲルにカーボン材料を気相合成により付与する方法である。
すなわち、無機酸化物の原料(図5−▲1▼)から無機酸化物の湿潤ゲル(図5−▲2▼)を調製する工程、得られた湿潤ゲルを乾燥して無機酸化物の乾燥ゲル(図5−▲3▼)を得る工程、上記乾燥ゲルの骨格表面に気相反応によりカーボン系材料を形成する工程(図5−▲4▼)を経て、カーボン含有多孔体を得る。これらの工程は基本的なものであり、この工程を行なうために、たとえば溶媒置換、触媒形成、表面処理などの公知の処理工程を実施してもよい。
なお、気相でカーボン系材料を形成する方法としては、気相反応でいったんカーボン前駆体を付与した後にさらに炭化処理する方法のほか、気相反応により直接カーボン材料を形成する方法がある。本発明では、いずれの方法であってもよい。
この製造方法においても、無機酸化物からなる網目状骨格構造がカーボン系被膜を形成する際に、上記構造を保持する支持体としての役割を果たす。これにより、カーボン被膜形成時の収縮を抑制することができる。それによって、得られるカーボン複合体の密度増加を抑制することができるとともに、比表面積の低下を抑えることが可能になる。特に、気相中で直接カーボン材料を付与する場合には、カーボン前駆体の炭化による収縮等の歪を回避できるので有利である。
<実施の形態6>
中空カーボン多孔体からなる電子放射材料の第1の製造方法は、図6に示す基本的な工程からなる。この工程は、ゾル溶液(図6−▲1▼)より無機酸化物の網目状骨格構造(図6−▲2▼)を形成し、さらにその湿潤ゲルの骨格表面にカーボン前駆体を付与してカーボン含有多孔体(図6−▲3▼)を製造し、カーボン含有多孔体から無機酸化物の一部又は全部を除去することによってカーボン前駆体の乾燥ゲル(図6−▲4▼)を調製した後、その中空骨格のカーボン前駆体を炭化してカーボン化(図6−▲5▼)する方法である。
すなわち、無機酸化物の原料から無機酸化物の湿潤ゲルを合成する工程、得られた無機酸化物の湿潤ゲルに液相中でカーボン前駆体を形成してカーボン前駆体含有湿潤ゲルを得る工程、カーボン前駆体含有湿潤ゲルから無機酸化物を除去する工程、さらにカーボン前駆体湿潤ゲルを乾燥して乾燥ゲルを得る工程、その後に炭化してカーボン多孔体を得る工程からなる。これらの工程は基本的なものである。この工程を行なうのに、溶媒置換、触媒形成、表面処理などの公知の処理を実施してもよい。
この製造方法では、電子放射成分であるカーボン系材料自身で網目状骨格が形成されているために、比表面積が大きなカーボン多孔体を得ることができる。さらに、その網目状骨格の内部が中空になるため、さらなる比表面積の向上を図ることができる。その結果、低密度で、高比表面積なカーボン多孔体が得られる。この材料は、高い電子放射性能が要求される用途に適用することができる。
<実施の形態7>
カーボン多孔体からなる電子放射材料の第2の製造方法は、図7に示す基本的な工程からなる。この工程は、実施の形態3あるいは実施の形態4で得られたカーボン含有多孔体(図7−▲1▼〜▲4▼)から無機酸化物の一部又は全部を除去することによってカーボン多孔体(図7−▲5▼)を得る方法である。
この製造方法でも、電子放射成分であるカーボン材料自身で網目状骨格状に形成しているために、大きな比表面積を得ることができる。さらに、その網目状骨格の内部が中空であることから、より高い比表面積を実現することができる。その結果、低密度で高比表面積のカーボン多孔体を提供することが可能である。このような多孔体は、高い電子放射性能が求められる用途に適用可能である。
(2)電子放射素子
本発明の電子放射素子は、(a)基材、(b)前記基材上に設けられた下部電極層、(c)前記電極層上に設けられた電子放射層および(d)前記電子放射層に接触しないように配置された制御電極層を備える。
本発明の電子放射素子は、上記(a)〜(d)の構成を有し、かつ、電子放射層として前記(1)の電子放射材料を用いるほかは、公知の電子放射素子で採用されている要素(スペーサー等)を適用することができる。
基材は、公知の材質から適宜用いることができる。例えば、ガラス、石英、セラミックス(Al、ZrO等の酸化物セラミックス、Si、BN等の非酸化物セラミックス)等の絶縁性材料;低抵抗シリコン、金属・合金、金属間化合物等の導電性材料を用いることもできる。基材の厚みは限定的でなく、一般的には0.5〜2mm程度とすればよい。
下部電極層は、電子放射層へ電子を供給できる材質であれば特に限定されない。例えば、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、金、タングステン等の金属材料;シリコン、窒化ガリウム等の低抵抗n形半導体と金属とを積層した複合材料等を使用することができる。下部電極層の厚みは、一般的には1〜50μm程度とすればよい。
電子放射層は、その一部又は全部に本発明材料を用いる。これは、少なくとも電界中で電子を放出するものであればよい。換言すれば、本発明材料は、電界中で電子を放出する限りは、熱によって電子を放出するものであってもよい。電子放射材料は、1種又は2種以上で用いることができる。また、本発明材料以外の電子放射材料(例えば、シリコン、金属材料等)が含まれていてもよい。
さらに、本発明の効果を妨げない範囲内で電子放射材料以外の成分が含有されていてもよい。好ましくは、本発明材料が電子放射層中20体積%以上(特に50〜100体積%)含まれる。電子放射層の厚みは、用いる電子放射材料の種類等によって異なるが、一般的には0.5〜20μm程度とすればよい。
電子放射層の表面には本発明材料が露出している。電子放射層の全部が本発明材料(電子放射材料)から構成される場合、すなわち、電子放射層が本発明材料(電子放射材料)からなる場合には、当然、電子放射層の表面に本発明材料(電子放射材料)が露出することになる。一方、電子放射層の一部が本発明材料(電子放射材料)を含む場合には、当該本発明材料(電子放射材料)の一部または全部が電子放射層の表面に露出している。また、この電子放射層は、カーボンからなることに例示されるように、導電性を有する。
電子放射層は、粉末状電子放射材料を含むペーストの塗膜を焼成して得られるものであってもよい。例えば、平均粒径0.5〜10μm程度の粉末状電子放射材料に有機バインダー(イソプロピルメタアクリレート等)を混合して得られるペーストを下部電極層上に塗布し、得られた塗膜を焼成して有機バインダーを除去することによって所定の電子放射層が好適に得られる。このような電子放射層も、所望の電子放射性能を発揮することができる。
制御電極層は、電圧印加によって電子放射層に対して電界を与え、その電界強度によって放射電子量を制御する機能を有する。そのような機能を有する限りその材質は限定的でない。特に、隣接する層との密着性、パターン作製等の加工性等に富む金属を好適に使用することができる。一般的には、アルミニウム、ニッケル等を好適に用いることができる。制御電極層の厚みは、通常0.1〜3μm程度とすればよい。
本発明素子では、電子放射層と制御電極層とが接触しない限り、どのような配置をとってもよい。電子放射層と制御電極層との間は、空間及び絶縁体の少なくとも1種が介在すればよい。例えば、基材上に設けられた電子放射層が、空間を隔てて制御電極層と対向するように配置してもよい。具体的には、公知のスピント型電子放射素子におけるゲート電極とエミッタの配置と同様にすることもできる。上記空間は、真空又はそれに近い状態とすることが好ましい。両層間の距離は、所望の性能、電界強度等に応じて適宜定めることができる。一般的には、上記距離が短いほど、より低い電圧で済む。また、電子放射層と制御電極層とは、実質的に平行に配置されていることが好ましい。
「電子放射層と制御電極層とが接触しない」とは、後述する図8および図9に例示されるように、電子放出層と制御電極層とが離間し、これらの間で絶縁が保たれていることを意味する。先行例である特開2000−285797号公報では、図11に示されるように、多孔質シリカ膜からなる電子加速層101と引き出し電極103とが接していることが前提とされている。この先行例において、電子加速層101の材料をカーボンのような導電性の材料に置換すると、エミッタ電極102、電子加速層101、および引き出し電極103が短絡してしまい、電子放出素子として全く機能しなくなる。言い替えれば、この先行例に開示されている電子放出素子が、電子放出素子として機能するためには、電子加速層101を構成する物質(多孔質シリカ膜)が絶縁性でなければならない。従って、この先行例において、電子加速層101を構成する多孔質シリカ膜をカーボンのような導電性の材料に置換することはできない。なお、この先行例(図11)では、電子を放出するのが多孔質シリカ膜からなる電子加速層101のように見られるが、この先行例では、「電界によって電子放出するエミッタ電極」と開示されているように、電子を放出するのはエミッタ電極102であって、多孔質シリカ膜からなる電子加速層101でないことに留意すべきである。
電子放射層と制御電極層は、それぞれ独立して設置することができる。また、互いにスペーサ(絶縁体)を介して両者が固定されてもよい。スペーサとしては、例えばアルミナ、ジルコニア、二酸化ケイ素等の絶縁材料を好ましく使用することができる。
本発明素子の製造方法は、公知の薄膜製造技術、半導体製造技術等を利用すればよい。薄膜製造技術としては、例えばスパッタ法、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、化学的気相蒸着法(CVD)等を好適に用いることができる。
特に、電子放射層の形成方法についても、基板上に設けられた下部電極層上に固定できる限り、制限されない。例えば、1)導電性接着剤によって、基板上に設けられた下部電極層上に電子放射材料を接着する方法、2)電子放射材料を粉砕して得られる粉末を有機バインダーに混合して得られる混合物(電子放射材料含有ペースト)を下部電極層上にコーティング又は印刷する方法、3)下部電極層上で電子放射材料を製造し、そのまま電子放射層とする方法等を採用することができる。上記の導電性接着剤、有機バインダー等は、公知のもの又は市販品を使用することができる。
本発明の電子放出素子は、公知の電子放射素子と同様の方法で駆動させることができる。例えば、基板上に設けられた下部電極層と制御電極層に所定の電圧を印加すればよい。電圧は、電子放射層が電界強度1×10V/m以上の電界におかれるように調節すればよい。この場合、駆動雰囲気は、一般的に真空又はそれに近い状態とすることが好ましい。また、駆動温度は限定的ではないが、通常0〜60℃程度に設定することが望ましい。また、電流は、直流又はパルス状(矩形波)のいずれであってもよい。
<実施の形態8>
図8は、本発明の電子放射素子の概略断面図である。電子放射素子80は、基本的な構成要素として、基材81、電極層(下部電極層)82、電子を放射する電子放射層83、絶縁体層85、電子放射のための電圧(制御電源86)を印加する制御電極層84を有する。ここに、電子放射層83は、各実施の形態で説明した電子放射材料又はそれを含む複合材料から構成される。
基材81上には、電極層82及び電子放射層83が形成され、その近傍に絶縁層85を介して制御電極層84が設けられている。図8では、制御電極層84は、従来のスピント型電子放射素子のゲート電極と同様に、電子放射層83の上部周辺を取り囲むように形成されているが、他の態様であってもよい。
絶縁層85上に形成されている制御電極層84においては、制御電極層の一部が絶縁層85からはみ出た「はみ出し部87」を構成する。はみ出し部の形成は、必須ではなく、必要に応じて適宜行うことができる。図8では、このはみ出し部と電子放射層との間の領域88は、空間になっているが、絶縁体で充填されていてもよい。
基材81は、一般的にガラス基板又は石英基板が好ましく用いられる。また、前記のように、低抵抗シリコン基板、金属基板等の導電性基材を用いることも可能である。導電性基材を用いる場合は、電極層82の機能を導電性基材に持たせることもできる。
電極層82としては、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、金、タングステン等の金属材料のほか、シリコン、窒化ガリウム等からなる低抵抗n形半導体と金属を積層した構造が好適である。放出電流を安定化させるために、上記電極層と抵抗性膜を積層させた構造を電極層82として用いても良い。なお、電極層82の厚さは、一般的には1〜50μm程度とすることが好ましい。
電子放射層83は、電子放射成分を骨格部に有する多孔質体が適用される。その代表的な構造として、細孔サイズが数10nmの多孔質体が挙げられる。また、電子放射層83は、制御電極層84に印加された電圧によって生じる電界によって、電子を真空中に放射する機能を有する。その材料は、上記したものの中から適宜選択される。
制御電極層84は、電圧印加によって電子放射層83に対して電界を与え、その強度によって放射電子量を制御する機能を有する層である。これは、絶縁体層85上に形成されている。電圧は、電源86の正極に接続された制御電極84、電源86の負極に接続された電極層82に印加される。
図8では、電子放射層83は、絶縁体層85を介して制御電極層84に隣接しているが、電子放射層83と制御電極層84が接触しない限り、絶縁体層85を用いなくてもよい。
電子放射素子80では、電子放射層83に本発明材料を適用しているので、従来よりも効率的な電界集中効果を得ることができる。その結果、印加電圧も従来に比べて低くすることができる。
2.蛍光体発光素子
本発明の蛍光体発光素子は、蛍光体層を有するアノード部及び電子放射素子を含み、前記電子放射素子から放出された電子が前記蛍光体層を発光させるように前記アノード部及び電子放射素子が配置されている蛍光体発光素子であって、前記電子放射素子が本発明の電子放射素子であることを特徴とする。
本発明の蛍光体発光素子は、電子放射素子として本発明の電子放射素子を使用するものである。その他の要素(容器又はハウジング等)は、公知の蛍光体発光素子で用いられている要素を適用することができる。
アノード部は、基本構成として、電子放射素子に近い順で蛍光体層、アノード電極層及び基材が積層された積層体を好適に用いることができる。各層の構成及びその形成は、公知の技術に従えばよい。
アノード部を構成する各層は、前面(アノード部)から発光を取り出す場合は、公知の蛍光体発光素子で使用されている透明性材料をそれぞれ使用すればよい。基板は、例えばガラス基板、石英基板等を使用することができる。アノード電極層としては、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化スズ、酸化亜鉛等を例示することができる。
蛍光体層としては、所望の発色等に応じて適宜形成すればよい。すなわち、赤(R)・青(B)・緑(G)の3原色、これらの中間色等の各色に応じ、各種蛍光体(化合物)から適宜選択することができる。例えば、Y系、GdBO系等の赤色蛍光体;ZnS系、ZnO系等の緑色蛍光体;YSiO系、ZnS系等の青色蛍光体が挙げられる。蛍光体層の形成は、例えばこれらを含む溶液又は分散液をアノード電極層上に印刷又は塗布することにより薄膜として形成すればよい。
電子放射層とアノード部(特に蛍光体層)の配置は、電子放射層から放出される電子がアノード部の蛍光体層に衝突して発光できるようにすればよい。好ましくは、電子放射層とアノード部(蛍光体層)が互いに対向するように配置する。両者の間は、空間(特に真空空間)になっていることが好ましい。また、電子放射層と蛍光体層は、平行に配置することが望ましい。電子放射層と蛍光体層との距離は、一般的に100μm〜2mmの範囲内において、所望の性能等に応じて適宜調節することができる。
<実施の形態9>
図9には、本発明の蛍光体発光素子の概略断面図を示す。蛍光体発光素子は基本的な構成要素として、電子放射素子90、アノード部100、それらを内包するハウジング911とからなる。
図9によれば、電子放射素素子90及びアノード部100は、それぞれ容器911と独立している。このほかにも、ハウジングの内面にアノード部を直接形成しても良い。同様に、ハウジングの内面に電子放射素子を直接形成することもできる。また、ハウジングを用いずに、電子放射素子91部とアノード部100をスペーサーを介して貼り合わせ、その空隙部分を真空又はそれに近い状態にしても良い。
アノード部100は、電子放射素子90の電子放射層93から放出される電子eが蛍光体層97に効率的に衝突できるように配置すればよい。図9のように、蛍光体層97と電子放射層93が、互いに平行状態を保ちながら、空間を介して対面するように配置することが望ましい。
アノード部100は、電子放射素子から放射された電子を加速するための電圧印加を行うとともに、蛍光体を発光させる機能を有する。その構成要素としては、蛍光体層97/放射電子に対して加速電圧を印加するアノード電極98/前面基材99を含む。前面基材99側より発光を取り出す場合、アノード電極98として一般的に透明導電膜であるITO等を使用できる。また、前面基材99としてはガラス等が好ましく用いられる。
蛍光体層97に用いられる蛍光体としては、前記のような各種の蛍光体の中から所望の発光色等に応じて適宜選択すればよい。の場合、加速される放射電子が持つエネルギー値、すなわちアノード電圧値を考慮し、最も効率の良い蛍光体材料を選ぶことが好ましい。
3.画像描画装置
本発明の画像描画装置は、蛍光体層を有するアノード部及び二次元的に配列された複数の電子放射素子を含み、前記電子放射素子から放出された電子が蛍光体層を発光させるように前記アノード部及び電子放射素子が配置されている画像描画装置であって、前記電子放射素子が本発明の電子放射素子であることを特徴とする。
本発明の画像描画装置は、電子放射素子として本発明電子放射素子を使用するものである。その他の要素(ハウジング、駆動用ドライバ等)は、公知の画像描画装置で用いられている要素を適用することができる。
電子放射素子は、二次元状に複数個配列されている。すなわち、同一平面上に電子放射素子が配列され、電子放射素子のアレイを形成する。このようなアレイとしては、例えば電気的に絶縁された複数本の電極パターンに対し、そのパターンに直交するように複数本の制御電極パターンを有する構成(すなわち、マトリックス方式)が大画面の装置を製造する上で有利である。
蛍光体層の基本構成は、前記2の蛍光体発光素子の蛍光体層と同様の構成を採用することができる。蛍光体層の数・種類は、画素数、画面の大きさ等に応じて適宜決定すればよい。1画素に対応する電子放射素子の数は、所望の発光輝度等により異なるが、通常は1〜50個程度とすればよい。
特に、カラー画像を表示する場合には、各電子放射素子にそれぞれに対応するように、RGBの3原色を一組とする蛍光体層(1画素)の各々をアノード電極上に配置すればよい。3原色の配置方法は、縦ストライプ状、横ストライプ等の各種の配置方法を適用できる。カラー画像の場合、1画素に対応する電子放射素子の数は、通常は1〜100個程度とすることが好ましい。
蛍光体層を含むアノード部と各電子放射素子のレイアウトは、各電子放射素子からの電子放射量によって、個々の蛍光体層発光量を個別に制御できるように設置すればよい。特に、アノード部の蛍光体層の一部又は全部と、電子放射素子の電子放射層とが、両層が実質的に平行状態を保ちながら対面するような構成とすることが好ましい。
本発明の画像描画装置の駆動方法は、基本的には公知の電界放出ディスプレイ等と同様にすればよい。例えば、電子放出素子の電極層と制御電極層に駆動ドライバを取り付け、両層に所定の電圧を印加すればよい。
<実施の形態10>
図10は、図8等に示した電子放射素子を二次元的に複数個(この図では、3行×3列=9個)配置するとともに、放出された電子により発光する蛍光体層を備えた画像描画装置の断面斜視図である。
この構成により画像を描画する方法は、通常マトリックス駆動と呼ばれる方式である。基材101上に帯状に形成された下部電極層102を有する。また、放射電流量を制御する制御電極層104は、複数(図10では3本)の帯状として形成されている。これらの制御電極層104は、下部電極層102に接触せず、かつ、下部電極層102と直交するように配置される。
各下部電極層及び各制御電極層のそれぞれに駆動用ドライバ108、109が接続されている。
下部電極層上には電子放射層103が形成されている。電子放射層103は、下部電極層と制御電極層とが交差する部分の箇所になるように配置されることが好ましい。
下部電極層102及び制御電極層104の上方には、本発明蛍光体発光素子のアノード部と同様の構成をもつアノード部が設けられている。アノード部は、電子放射層に近いほうから、蛍光体層105、アノード電極層106及び前面基材107が順に積層された構成をなす。
図10では、蛍光体層105が1画素を構成する。したがって、それに対応する電子放射層109が合計9つ存在することになる。その他にも、蛍光体層を複数の画素から構成されていてもよい。
図10の画像描写装置を駆動する場合には、それぞれの駆動ドライバ108、109に対して同期信号にあわせて画像データを入力すれば、所望の電子放射面(各電極列が直交した個所)より所望の電子放射量で電子を放射させることが可能となる。これにより、個々の電子放射素子において、アノード電極106に印加された電圧によって、放出された電子を真空内で加速し、蛍光体層105に電子が衝突することによって、任意形状/任意輝度の画像を描画することができる。
本発明の電子放射素子によれば、電子放射層に特定の電子放射材料を適用し、かつ、電子放射層に接触しないように制御電極層が配置されているので、優れた電界集中効果等を達成することができる。
また、上記電子放射材料は、特に本発明の製造方法によりカーボンナノチューブ等に比べて比較的容易に製造できる。このため、カーボンナノチューブを用いた電子放射素子よりも安価に優れた電子放射素子を提供することが可能になる。
このような特長をもつ本発明の電子放射素子は、工業的規模での生産に適したものである。
本発明の蛍光体発光素子および画像描画装置は、本発明材料および本発明の電子放射素子を利用するものである。このため、従来品と同程度又はそれ以上の性能を発揮できる製品をより安く大量に供給することが可能になる。
本発明の電子放射素子は、従来品と同じ又はそれ以上の性能を有するので、これを利用した各種の電子デバイスに有効に利用することができる。例えば、蛍光体発光素子、画像描画装置(特に電界放出ディスプレイ)等に好適に用いることができる。画像描画装置にあっては、大画面のディスプレイの製造にも有利である。
本発明にかかる電子放射材料、電子放射素子等の具体的な実施例を以下に説明する。ただし、本発明の範囲は、これら実施例に限定されるものではない。
無機酸化物としてシリカを用い、湿潤ゲルを調製した。テトラメトキシシラン、エタノール及びアンモニア水溶液(0.1規定)をそれぞれモル比で1:3:4になるように混合して原料液を調製した。これを所定形状の型に入れ、ゲル化することにより、固形状のシリカ湿潤ゲルを得た。
続いて、シリカ湿潤ゲル中の網目状骨格表面にカーボン前駆体を被覆することによりカーボン前駆体含有湿潤ゲルを形成した。カーボン前駆体としては、水を溶媒として用いてレゾルシノール(0.3mol/L)、ホルムアルデヒド及び炭酸ナトリウムをそれぞれモル比で1:2:0.01になるように調製した原料水溶液を用いた。これに前記シリカ湿潤ゲルを浸漬することにより、ゲル内部に含浸させた。室温および約80℃でそれぞれ2日間放置した。これにより、ポリフェノール系高分子がシリカ湿潤ゲルの骨格表面に被覆されたカーボン前駆体含有湿潤ゲルを得た。
続いて、前記カーボン前駆体含有湿潤ゲルを乾燥した。乾燥処理は、湿潤ゲル内部に含まれる溶媒をアセトンに置換してから超臨界乾燥にて行った。内部の溶媒を除去することにより、カーボン前駆体含有乾燥ゲルを得た。この超臨界乾燥の条件は、二酸化炭素を乾燥媒体として用い、圧力12MPa、温度50℃の条件で4時間経過後に、圧力を徐々に開放し、大気圧にしてから降温して乾燥ゲルを得た。このとき、乾燥前後の大きさはほぼ同じであり、ほとんど収縮していなかった。みかけ密度が約220kg/mであり、空孔率は約90%であった。また、BET法で測定した比表面積は約800m/gという高い値であった。
最後に、カーボン前駆体含有乾燥ゲルを炭化してカーボン含有多孔体からなる電子放射材料を得た。この乾燥ゲルを窒素雰囲気中、100℃で1時間放置、200℃で1時間放置、300℃で1時間放置、400℃で1時間放置、500℃で1時間放置してから逆に400℃1時間、300℃1時間、200℃1時間、100℃1時間で降温した後に室温まで徐冷した。このとき、炭化処理前後の乾燥ゲルの寸法は、長さ方向で約90%になっていた。みかけ密度は約300kg/mであり、空孔率は約80%であった。BET法で測定した比表面積は約450m/gという高い値であった。
以上のようにして作製した電子放射材料(サイズ:縦約2mm×横約2mm×高さ約1mm)を金属電極上に導電性ペースト(製品名:グラファイトペースト)を介して接着し、真空槽内に配置した。さらに、電子放射材料の上方約1mmの位置にアノード電極を配置した。次いで、金属電極−制御電極間に電圧を印加して放射電流量を測定した。その結果、多孔質化していない同様の炭素材料(具体的には金属基板上に同様の工程(カーボン前駆体塗布工程及び焼成工程)により作製した炭素材料。以下同じ。)をエミッタとして用いた従来構造と比較して1桁以上放射電流が増加し、3kV程度のアノード電圧に対して40mA/cmの放射電流密度が得られた。
実施例1と同様の条件でシリカ湿潤ゲルを調製し、それを実施例1と同様の乾燥処理を施すことにより乾燥ゲルを得た。このシリカ乾燥ゲルを石英管状炉の中に入れ、約800℃でプロピレンを流通させ、気相で多孔質骨格表面にカーボン材料の付与を行うことにより、カーボン含有多孔体を得た。得られたカーボン含有多孔体を観察した結果、シリカ乾燥ゲルの骨格内部までカーボン被膜が形成されていた。このカーボン形成後での乾燥ゲルの大きさは、長さ方向で約85%になっており、収縮が比較的抑制されていることが確認された。また、みかけ密度は約350kg/mであり、比表面積は約450m/gという高い値であった。
以上のようにして作製した電子放射材料を実施例1と同様にして金属電極上に導電性ペーストを介して接着し、真空槽内に配置した。さらに、電子放射材料の上方約1mmの空間にアノード電極を配置し、金属電極−制御電極間に電圧を印加して放射電流量を測定した。その結果、多孔質化していない同様の炭素材料をエミッタとして用いた従来構造と比較して1桁以上放射電流が増加し、3kV程度のアノード電圧に対して40mA/cmの放射電流密度が得られた。
実施例1と同じ条件でカーボン前駆体含有湿潤ゲルを調製した。得られた湿潤ゲルをフッ化水素酸に室温で30分間浸漬することにより、カーボン前駆体のみからなる湿潤ゲルを得た。このカーボン前駆体湿潤ゲルを実施例1と同じ条件で乾燥処理することによって、カーボン前駆体乾燥ゲルを得た。この乾燥処理前後での大きさはほぼ同じであった。
さらに、カーボン前駆体乾燥ゲルを実施例1と同じ条件で炭化処理することにより、カーボン多孔体からなる電子放射材料を得た。炭化処理後の大きさは長さで約70%に収縮していたが、そのみかけ密度は約100kg/mと小さく、比表面積も約800m/gという高い値が得ちれた。電子顕微鏡観察により、このカーボン多孔体は中空構造であることが確認された。
以上のようにして作製した電子放射材料を実施例1と同様にして金属電極上に導電性ペーストを介して接着し、真空槽内に配置した。さらに電子放射材料の上方約1mmの空間にアノード電極を配置し、金属電極−制御電極間に電圧を印加して放射電流量を測定した。その結果、多孔質化していない同様の炭素材料をエミッタとして用いた従来構造と比較して1桁以上放射電流が増加し、3kV程度のアノード電圧に対して60mA/cmの放射電流密度が得られた。
実施例2で作製したカーボン含有多孔体をフッ化水素酸に室温で30分間浸漬し、その骨格部分を除去することによって、カーボン多孔体を得た。このカーボン多孔体のみかけ密度は約100kg/mと小さく、その比表面積は900m/kgという高い値であった。電子顕微鏡観察により、このカーボン多孔体は中空構造であることが確認された。それによって高比表面積が達成されたものと考えられる。
以上のようにして作製した電子放射材料を実施例1と同様にして金属電極上に導電性ペーストを介して接着し、真空槽内に配置した。さらに電子放射材料の上方約1mmの空間にアノード電極を配置し、金属電極−制御電極間に電圧を印加して放射電流量を測定した。その結果、多孔質化していない同様条件での炭素材料をエミッタとして用いた従来構造と比較して1桁以上放射電流が増加し、3kV程度のアノード電圧に対して70mA/cmの放射電流密度が得られた。
実施例1で作製したシリカ湿潤ゲルを、ポリアクリロニトリルの5重量%アセトニトリル溶液に浸漬すことにより、カーボン前駆体をゲル骨格に被覆した湿潤ゲルを得た。これを実施例1と同様の方法で乾燥処理を実施した。
得られたカーボン前駆体含有乾燥ゲルを200℃で2時間処理、400℃で2時間処理した後に、600℃まで昇温してから100℃まで降温してカーボン含有多孔体からなる電子放射材料を得た。この処理後のゲルの大きさは、長さで約85%になっており、収縮が抑制されていることが確認された。みかけ密度は約350kg/mであり、比表面積は約450m/gという高い値であった。
以上のようにして作製した電子放射材料を実施例1と同様にして金属電極上に導電性ペーストを介して接着し、真空槽内に配置した。さらに電子放射材料の上方約1mmの空間にアノード電極を配置し、金属電極−制御電極間に電圧を印加して放射電流量を測定した。その結果、多孔質化していない同様の炭素材料をエミッタとして用いた従来構造と比較して1桁以上放射電流が増加し、3kV程度のアノード電圧に対して40mA/cmの放射電流密度が得られた。
実施例5で作製したカーボン含有多孔体をpH10以上に調整した水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した。その後、アセトンに溶媒置換してから実施例1と同様にして乾燥処理を実施することによりカーボン多孔体からなる電子放射材料を得た。処理後の長さ方向の大きさは約90%になっていた。みかけ密度は約120kg/mと小さく、その比表面積は800m/kgという高い値が得られた。
以上のようにして作製した電子放射材料を実施例1と同様にして金属電極上に導電性ペーストを介して接着し、真空槽内に配置した。さらに電子放射材料の上方約1mmの空間にアノード電極を配置し、金属電極−制御電極間に電圧を印加して放射電流量を測定した。その結果、多孔質化していない同様の炭素材料をエミッタとして用いた従来構造と比較して1桁以上放射電流が増加し、3kV程度のアノード電圧に対して約50mA/cmの放射電流密度が得られた。
無水ピロメリット酸とオキシジアニリンから合成されたポリアミド酸をカーボン前駆体として用いた。このポリアミド酸の濃度が1重量%となるようにN−メチルピロリドンに溶解して溶液を調製した。この溶液に実施例1で作製したシリカ湿潤ゲルを浸漬することにより、ポリアミド酸を含浸した湿潤ゲルを得た。得られたポリアミド酸含有湿潤ゲルを、以下の2つの方法でイミド化/乾燥ゲル化した。
第1の方法は、ポリアミド酸含有湿潤ゲルを無水酢酸のピリジン溶液に浸漬することにより、化学イミド化を行った。このポリイミド含有湿潤ゲルを乾燥することによりポリイミド含有乾燥ゲルAを得た。
第2の方法は、ポリアミド酸含有湿潤ゲルを乾燥して乾燥ゲルとした後、この乾燥ゲルを窒素雰囲気下300℃で加熱することによりイミド化を行うことにより、ポリイミド含有乾燥ゲルBを得た。
得られたポリイミド含有乾燥ゲルAおよびBを窒素雰囲気下600℃で炭化することにより、炭化された多孔体をそれぞれ得た。これらの多孔体をさらに1200℃で加熱し、その後2000℃以上でシリカの骨格を蒸発させるとともに黒鉛化を促進させることによって、カーボン多孔体からなる電子放射材料をそれぞれ得た。このように、上記乾燥ゲルAおよびBのどちらも同じようにカーボン多孔体を得ることができた。得られたカーボン被膜は、上記実施例で形成されカーボン被膜と比べ、配向性の高いグラファイト構造を有していた。
以上のようにして作製された電子放射材料を実施例1と同様にして金属電極上に導電性ペーストを介して接着し、真空槽内に配置した。さらに電子放射材料の上方約1mmの空間にアノード電極を配置し、金属電極−制御電極間に電圧を印加して放射電流量を測定した。その結果、多孔質化していない同様の炭素材料をエミッタとして用いた従来構造と比較して1桁以上放射電流が増加し、3kV程度のアノード電圧に対して約90mA/cmの放射電流密度が得られた。
ケイ酸ソーダの電気透析を行い、pH9〜10のケイ酸水溶液(水溶液中のシリカ成分濃度14重量%)を調製した。そのケイ酸水溶液のpHを5.5に調整した後に、容器に充填した。その後、室温にてゲル化することにより、固体化されたシリカ湿潤ゲルを得た。続いて、このシリカ湿潤ゲルをジメチルジメトキシシランの5重量%イソプロピルアルコール溶液中で疎水化処理をした後に、通常乾燥法である減圧乾燥を行うことにより、シリカ乾燥ゲルを得た。乾燥条件は、圧力0.05MPa・温度50℃で3時間経過後に、圧力を大気圧してから降温した。得られたシリカの乾燥ゲルは、みかけ密度が約200kg/mであり、空孔率は約92%であった。BET法で測定した比表面積の値は約600m/gであった。なお、その平均細孔直径は約15nmであった。
次に、得られたシリカ乾燥ゲルの網目状骨格表面にカーボン材料を形成した。シリカ乾燥ゲルを真空成膜装置に設置し、周波数13.56MHz・電力200Wの高周波によってベンゼンガスを放電プラズマ形成し、200℃に温度調整したシリカ乾燥ゲル中に炭素膜を形成してカーボン含有多孔体からなる電子放射材料を得た。このカーボン含有多孔体のみかけ密度は、約220kg/mであり、収縮が少ないことがわかる。また、BET法による比表面積は約600m/gという高い値であった。
以上のようにして作製した電子放射材料を実施例1と同様にして金属電極上に導電性ペーストを介して接着し、真空槽内に配置した。さらに電子放射材料の上方約1mmの空間にアノード電極を配置し、金属電極−制御電極間に電圧を印加して放射電流量を測定した。その結果、多孔質化していない同様の炭素材料をエミッタとして用いた従来構造と比較して1桁以上放射電流が増加し、3kV程度のアノード電圧に対して約40mA/cmの放射電流密度が得られた。
実施例8と同様の方法でシリカ乾燥ゲルを調製した後、その網目状骨格表面に他のカーボン材料を付与した。シリカ乾燥ゲルを真空成膜装置に設置し、周波数2.45GHz・電力300Wのマイクロ波によって一酸化炭素と水素の混合ガスのプラズマを形成し、約800℃に試料温度でシリカ乾燥ゲル中にダイヤモンド膜を形成することにより、カーボン含有多孔体からなる電子放射材料を得た。このカーボン含有多孔体のみかけ密度は約220kg/mであり、収縮が少ないことを確認した。また、BET法による比表面積は約600m/gという高い値を示した。
以上のようにして作製した電子放射材料を実施例1と同様にして金属電極上に導電性ペーストを介して接着し、真空槽内に配置した。さらに電子放射材料の上方約1mmの空間にアノード電極を配置し、金属電極−制御電極間に電圧を印加して放射電流量を測定した。その結果、多孔質化していない同様の炭素材料をエミッタとして用いた従来構造と比較して1桁以上放射電流が増加し、3kV程度のアノード電圧に対して約40mA/cmの放射電流密度が得られた。
各実施例では電子放射成分としてカーボン材料を用いたが、電子を放出し易い材料、例えば窒化ホウ素、金属化合物(酸化バリウム等)等で網目状骨格を被覆して作製した電子放射材料の場合も同様に、従来構造よりも高い放射電流が得られることを確認した。
各実施例では絶縁性多孔質骨格構造体としてシリカ多孔体を用いたが、他の多孔体材料、例えばアルミナを網目状骨格とした電子放射材料の場合も同様に、従来構造よりも高い放射電流が得られることを確認した。
なお、各実施例では電子放射特性として電界印加による特性について記載したが、各実施例で得られた電子放射材料を加熱して熱電子放射特性を評価した結果、従来構造よりも低い温度で熱電子放射現象が起こることを確認した。
図8に示した第1の電子放射素子80の作製方法について説明する。
石英からなる基材81の一表面上に電極層82として金属膜を形成した。このように電極材料として特に限定はされないが、金属膜は厚さ2μmのタングステン膜とした。
次に、多孔質構造からなる電子放射層83を形成した。本実施例においてはゾル−ゲル法を用いて厚さ約1μmの多孔質シリカ層を形成した。具体的にはシリカ原料を含んだ溶液として、テトラメトキシシランとエタノールとアンモニア水溶液(0.1規定)をモル比で1:3:4の割合で調製し、撹拌処理した。その後、適度な粘度となったところで、このゲル原料液を試料上に厚さ1μmとなるようにスピンコート塗布した。なお、本実施例では厚さが約1μmの多孔質シリカ層を形成したが、その限りではない。素子構造にも依存するが、概ね0.1μm以上10μm以下が好ましい範囲である。
次に、このシリカ湿潤ゲルを形成した試料をエタノールで洗浄(溶媒置換)した後に、二酸化炭素による超臨界乾燥を行うことにより、乾燥ゲルからなる多孔質シリカ層を得た。超臨界乾燥条件は、圧力12MPa、温度50℃の条件の下で4時間経過後、圧力を徐々に開放し大気圧にしてから降温した。なお、得られた乾燥ゲルからなる多孔質シリカ層の空孔率は約92%であった。BET法により平均空孔直径を見積もったところ、約20nmであった。乾燥された試料は、最後に窒素雰囲気中で400℃のアニール処理を施すことにより、多孔質層への吸着物質を除去した。
その後、電子放射成分として、上記の方法でポリイミドからなるカーボン前駆体を形成し、約800℃の焼成処理によって、カーボン材料からなる電子放射層を形成した。
さらに、二酸化ケイ素からなる絶縁体層85及び制御電極84となる上部電極を形成し、一般的なリソグラフィー工程を用いて図8のような構造の電子放射素子80を作製した。
以上のようにして作製した電子放射素子80を真空槽内に配置し、電極層−制御電極間に制御電極側を正とした電圧を印加し、放射電流量を測定した。その結果、従来の10倍以上である約80mA/cmの放射電流密度が得られた。
続いて、実施例1で作製した電子放射材料を粉砕処理し、粉末化したものをバインダー(イソプロピルメタアクリレート)に混合することによって、電子放射材料含有ペーストを作製した。このペーストをインクジェットの方法で電極層上に塗布し、バインダーを除去する焼成工程をへて、図8に示したような電子放射素子80を作製した。
以上のようにして作製した電子放射素子80を真空槽内に配置し、電極層−制御電極間に制御電極側を正とした電圧を印加し、放射電流量を測定した。その結果、従来の10倍以上である約60mA/cmの放射電流密度が得られた。
前記実施例では電子放射素子について説明したが、それらに対向して蛍光体層を有するアノード部を配置することにより、蛍光体発光量を制御可能な蛍光体発光素子を作製することができる。
図9は本実施形態の蛍光体発光素子の概略断面図を示したものである。本蛍光体発光素子は基本的な構成要素として、実施例に記した電子放射素部90とアノード部100とそれらを内包する真空容器911とからなる。
また、図9の素子構造では、電子放射素部90及びアノード部100が真空容器内に完全に含まれている。
本実施例では、アノード部100はガラスからなる前面基材99にアノード電極98として機能する透明導電膜(ITO)を積層し、さらに蛍光体層97としてZnS系蛍光体を塗布により形成した。
以上のようにして作製した蛍光体発光装置を真空槽内に設置した。下部電極と制御電極の間に制御電極側を正とした電圧を印加して電子放射素子91から真空領域に電子を放射させるとともに、アノード電極98に3kVの加速電圧を印加し、放射電流及び蛍光体発光輝度を測定した。その結果、放射電流密度として50mA/cmが観測され、800cd/m以上の発光輝度が得られた。
実施例では、単独の電子放射素子について説明したが、それらを二次元的に複数個配置し、個々の蛍光体発光量を制御することで画像や文字を表示できる画像描画装置に適用できる。
図10は、図8等に示した電子放射素子を二次元的に複数個(この図では、3行×3列=9個)配置した画像描画装置の断面斜視図である。この構成を用いて画像を描画する方法は、通常マトリックス駆動と呼ばれる方式である。すなわち、基材101上に帯状に形成された下部電極層102と、同様に帯状の放射電流量を制御する制御電極層104となる上部電極とを直行して配置するとともに、それぞれに駆動用ドライバ108、109が接続されている。各駆動ドライバに対して同期信号にあわせて画像データを入力すれば、所望の電子放射面(各電極列が直交した個所)より所望の電子放射量で電子を放射させることができる。すなわち、個々の電子放射素子において、放射電子をアノード電極106に印加された電圧によって真空内で加速し、蛍光体層105に照射することにより、任意形状/任意輝度の画像を描画することができる。
本発明は、網目状骨格を有する電子放射材料を電子放射層として利用した電子放射素子、蛍光体発光素子及び画像描画装置に関する。
固体面からの電子放射現象は、1)熱印加によって電子を放射する熱電子放射、2)電界印加によって電子を放射する電界電子放射などがある。近年では、加熱を必要としない電界放射型冷陰極エミッタ(FE型エミッタ)が注目されている。このFE型エミッタとしては、例えばスピント(Spindt)型、薄膜型等が知られている。
スピント型電子放射素子は、FE型エミッタの基本型である。その作用は、シリコン(Si)、モリブデン(Mo)などの高融点金属材料によって形成された微小な円錐状エミッタ・チップの先端領域に高電界(>1×10V/m)を印加することにより、電子を真空中に放出させる(例えば、米国特許3665241号公報参照)。
薄膜型電子放射素子は、スピント型電子放射素子を発展させたものである。これは、スピント型のような微小円錐構造を用いることなく、平面状エミッタから電子を放出させる。この素子では、エミッタ形状が平面であるため、円錐構造で得られる電界集中効果があまり期待できない。このため、薄膜型電子放射素子に適用できるエミッタ用材料が限定される。
エミッタ用材料としては、非晶質状炭素膜、ダイヤモンド、カーボンナノチューブ(CNT)などのカーボン材料が知られている(例えば、特開平8−505259号公報、特開平7−282715号公報、特開平10−012124号公報 参照)。このうち、CNTは、炭素のみからなる六員環ネットを円筒状に巻いた形状をもつ微細なチューブ状(直径:数〜数10nmオーダー)の材料である。これは、導電性であり、かつ、アスペクト比が大きい先鋭な形状を有する。このため、カーボン材料の中でも、特に有効なエミッタ用材料として有望視されている。
また、電界によって電子放出するエミッタ電極と電子加速層と引き出し電極を備えた電界電子放出素子において、前記電子加速層は、多孔質シリカ膜からなることを特徴とする電界電子放出素子が知られている(特開2000−285797)。上記多孔質シリカ膜として、その空孔内にグラファイト又はシリコンを析出させた材料が使用されているが、これは引き出し電極と接触して配置されることを前提とするものである。
スピント型電子放射素子は、半導体プロセスを駆使することにより、先鋭な円錐構造の先端部に対する電界集中効果により電子を放射する。このため、その特性は、先端形状又は表面状態により大きく左右される。そのため、所望の特性に安定させることが難しい。また、そのプロセス上、使用できる材料が限定されている。さらに、この素子では、大面積のディスプレイを作製することは困難である。
これに対し、薄膜型電子放射素子は、スピント型電子放射素子のようなエミッタ部を厳格に制御する必要性が少ない。このため、安定性又は大面積化に関してはスピント型電子放射素子よりも薄膜型電子放射素子のほうが有利と言える。ところが、前記のとおり、そのよう所望の特性を有するエミッタ用材料は限られている。すなわち、その材質又は微細構造を制御しなければ、エミッタ用材料として使用することができない。
前記のように、そのエミッタ用材料の有力な候補として、各種カーボン系材料が検討されてきたが、CNT以外の材料では十分な特性を得るに至っていない。このため、エミッタ用材料として、CNTに依存しなければならない。
しかしながら、現時点で最適材料とされているCNTも、依然として高価であり、工業的規模での生産に適した材料とは言い難い。また、CNTは、粉体状であるために取扱いが困難という問題もある。
したがって、本発明は、これら従来技術の問題を解消し、従来技術と同程度又はそれ以上の優れた性能を有する電子放射素子を効率的に提供することを主な目的とする。
すなわち、本発明は、下記の電子放射素子、蛍光体発光素子及び画像描画装置に係る。
1. (a)基材、(b)前記基材上に設けられた下部電極層、(c)前記下部電極層上に設けられた電子放射層および(d)前記電子放射層に接触しないように配置された制御電極層を備えた電子放射素子であって、
前記電子放射層が、電界中で電子を放射する電子放射材料を含み、
前記電子放射材料は、(1)網目構造骨格を有する多孔体であって、(2)網目構造骨格が内部と表面部から構成され、(3)表面部が、電子放射成分を含み、(4)内部が、i)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種、ii)空間又はiii)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種ならびに空間で占められている、電子放射素子。
2. 前記電子放射層の表面に、前記電子放射材料が露出している、前記項1記載の電子放射素子。
3. 前記電子放射層が、電界中で電子を放射する電子放射材料からなる、前記項2記載の電子放射素子。
4. 前記電子放射層が導電性を有している、前記項1記載の電子放射素子。
5. 前記電子放射層が、粉末状電子放射材料を含むペーストの塗膜を焼成して得られるものである前記項1記載の電子放射素子。
6. 内部が実質的にすべて無機酸化物で占められている前記項1記載の電子放射素子。
7. 内部が実質的にすべて空間で占められている前記項1記載の電子放射素子。
8. 電子放射成分が、炭素材料である前記項1記載の電子放射素子。
9. 炭素材料が、π結合を有する前記項8記載の電子放射素子。
10. 炭素材料が、グラファイトを主成分とする前記項8記載の電子放射素子。
11. 蛍光体層を有するアノード部及び電子放射素子を含み、前記電子放射素子から放出された電子が前記蛍光体層を発光させるように前記アノード部及び電子放射素子が配置されている蛍光体発光素子であって、前記電子放射素子が前記項1記載の素子である蛍光体発光素子。
12. 蛍光体層を有するアノード部及び二次元的に配列された複数の電子放射素子を含み、前記電子放射素子から放出された電子が蛍光体層を発光させるように前記アノード部及び電子放射素子が配置されている画像描画装置であって、前記電子放射素子が前記項1記載の素子である画像描画装置。
13. (1)網目構造骨格を有する多孔体であって、(2)網目構造骨格が内部と表面部から構成され、(3)表面部が、電子放射成分を含み、(4)内部が、i)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種、ii)空間又はiii)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種ならびに空間で占められている電子放射材料の製造方法であって、
網目構造骨格を有する無機酸化物のゲルにカーボン材料を付与してカーボン含有材料からなる電子放射材料を得る工程Aを含む製造方法。
14. カーボン含有材料から無機酸化物の一部又は全部を除去する工程をさらに含む前記項13記載の製造方法。
15. 無機酸化物のゲルとして乾燥ゲルを用い、かつ、工程Aとして、当該乾燥ゲルにカーボン材料を付与することにより、カーボン含有材料として多孔体を得る工程を実施する前記項13記載の製造方法。
16. カーボン前駆体が、有機高分子を含む前記項13に記載の製造方法。
17. カーボン前駆体が、有機高分子を含む前記項14に記載の製造方法。
18. 有機高分子が、炭素−炭素不飽和結合を有する前記項16記載の製造方法。
19. 有機高分子が、芳香環を有する前記項16記載の製造方法。
20. 有機高分子が、フェノール樹脂、ポリイミド及びポリアクリロニトリルの少なくとも1種である前記項16記載の製造方法。
21. (1)網目構造骨格を有する多孔体であって、(2)網目構造骨格が内部と表面部から構成され、(3)表面部が、電子放射成分を含み、(4)内部が、i)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種、ii)空間又はiii)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種ならびに空間で占められている電子放射材料の製造方法であって、
網目構造骨格を有する無機酸化物のゲルにカーボン前駆体を付与し、得られたカーボン前駆体含有ゲルを炭化処理することによりカーボン含有材料からなる電子放射材料を得る工程Bを含む製造方法。
22. カーボン前駆体含有ゲルから無機酸化物の一部又は全部を除去する工程をさらに含む前記項21記載の製造方法。
23. 無機酸化物のゲルとして湿潤ゲルを用い、かつ、工程Bとして、当該湿潤ゲルにカーボン前駆体を付与し、得られたカーボン前駆体含有ゲルを乾燥してカーボン前駆体含有乾燥ゲルを得た後、当該乾燥ゲルを炭化処理することにより、カーボン含有材料として多孔体を得る工程を実施する前記項21記載の製造方法。
24. 無機酸化物のゲルとして湿潤ゲルを用い、かつ、工程Bとして、当該湿潤ゲルにカーボン前駆体を付与し、得られたカーボン前駆体含有ゲルから無機酸化物の一部又は全部を除去した後、得られた材料を炭化処理することにより、カーボン含有材料として多孔体を得る工程を実施する前記項22記載の製造方法。
25. カーボン前駆体が、有機高分子を含む前記項21に記載の製造方法。
26. カーボン前駆体が、有機高分子を含む前記項22に記載の製造方法。
27. 有機高分子が、炭素−炭素不飽和結合を有する前記項25記載の製造方法。
28. 有機高分子が、芳香環を有する前記項25記載の製造方法。
29. 有機高分子が、フェノール樹脂、ポリイミド及びポリアクリロニトリルの少なくとも1種である前記項25記載の製造方法。
網目状骨格構造体の微細構造を模した模式図である。 網目状骨格からなる電子放射成分被膜複合構造体の模式図である。 網目状骨格からなり、かつ骨格が中空な電子放射成分構造体の模式図である。 本発明の製造工程例を示す模式図である。 本発明の製造工程例を示す模式図である。 本発明の製造工程例を示す模式図である。 本発明の製造工程例を示す模式図である。 本発明の電子放射素子の概略断面図である。 は、電子放射素子を用いた蛍光体発光素子の概略断面図である。 は、電子放射素子を二次元的に複数個配置した画像描画装置の断面斜視図である。 は、従来の電界電子放出素子の概要を示す図である。
符号の説明
10:ゲル構造(多孔質体)
11:微粒子
12:細孔
13:網目状骨格を表す樹枝状線図
20:電子放射材料(電子放射成分被膜複合構造体)
21:電子放射成分
22:絶縁性材料(あるいは半絶縁性材料)
30:電子放射材料(中空電子放射材構造体)
31:電子放射成分
32:中空
80:電子放射素子
81:基材
82:電極層
83:電子放射層
84:制御電極層
85:絶縁体層
86:制御電源
87:はみ出し部
88:空間領域
90:電子放射素子
91:基材
92:電極層
93:電子放射層
94:制御電極層
95:絶縁体層
96:制御電源
100: アノード部
97:蛍光体層
98:アノード電極層
99:前面基材
910:加速電源
911:真空容器
101:基材
102:電極層
103:電子放射層
104:制御電極層
105:蛍光体層
106:アノード電極層
107:前面基材
108、109 駆動ドライバ
201 多孔質シリカ膜
202 導電性基板
203 上部電極
1.電子放射素子
本発明の電子放射素子は、(a)基材、(b)前記基材上に設けられた下部電極層、(c)前記下部電極層上に設けられた電子放射層および(d)前記電子放射層に接触しないように配置された制御電極層を備えた電子放射素子であって、
前記電子放射層が、電界中で電子を放射する電子放射材料を含み、
前記電子放射材料は、(1)網目構造骨格を有する多孔体であって、(2)網目構造骨格が内部と表面部から構成され、(3)表面部が、電子放射成分を含み、(4)内部が、i)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種、ii)空間又はiii)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種ならびに空間で占められている、
ことを特徴とする。
まず、本発明素子の電子放射層を構成する電子放射材料とその製造方法について説明する。
(1)電子放射材料とその製造方法
(1−1)電子放射材料
本発明における電子放射材料(以下「本発明材料」ともいう。)は、電界中で電子を放出するものであり、具体的には次の(1)〜(4)を満たす材料を用いる。
電子放射材料は、(1)網目構造骨格を有する多孔体であって、(2)網目構造骨格が内部と表面部から構成され、(3)表面部が、電子放射成分を含み、(4)内部が、i)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種、ii)空間又はiii)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種ならびに空間で占められている。
電子放射材料の形状及び大きさも限定されず、その用途、使用目的等に応じて適宜決定すれば良い。なお、本発明材料は、上記(1)〜(4)の要件を満たす限り、粉砕処理されたものであっても良い。例えば、平均粒径0.5μm以上50μm以下の粉末も、本発明材料に包含される。
[多孔体]
上記多孔体の網目構造骨格は、三次元網目状の構造を有するものであれば良い。上記骨格は、多数の細孔を有することが好ましい。上記骨格は、望ましくは、太さが2〜30nm程度の微細な固体成分(線状体)が網目状に絡まり合ってネットワーク化し、その隙間は空孔となっている。多孔質体とは、連続細孔又は独立細孔を有した固体物質のことである。これは、後記に示すように、母材粉体の成形、粉体焼成、化学発泡、物理発泡、ゾル−ゲル法などの方法で作製することができる。
多孔体のかさ密度、BET比表面積及び平均細孔径は、絶縁材料の種類、多孔体の用途、使用方法等によって適宜設定し得る。かさ密度は、通常10〜500kg/m程度、特に50〜400kg/mの範囲から適宜決定すれば良い。比表面積は、通常50〜1500m/g程度、特に100〜1000m/gの範囲内から適宜設定することができる。比表面積は、窒素吸着法であるブルナウアー・エメット・テラー法(以下、BET法と略す)で測定した値である。また、多孔体の平均細孔径は、通常1〜1000nm、特に5〜50nmの範囲から適宜決定することができる。
[多孔体表面部]
表面部は、電子放射成分を含む。電子放射成分は、電界中で電子を放出する機能(電界放出機能)を有するものであればよい。特に、広バンドギャップ半導体材料、仕事関数(電子親和力)値が小さい材料等を好適に用いることができる。
具体的には、例えば、セシウム等のアルカリ金属又はその酸化物;ベリリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属又はその酸化物;カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック等)、活性炭、人造黒鉛、天然黒鉛、炭素繊維、熱分解炭素、ガラス状炭素、不浸透炭素、特殊炭素、コークス等の炭素材料、窒化アルミニウム、窒化ホウ素等の窒化物又はその混晶系材料等が挙げられる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
これらの中でも、特に炭素材料が好ましい。炭素材料は、結晶質又は非晶質のいずれであっても良い。炭素材料が結晶質のときは、その結晶構造は限定されず、たとえばダイヤモンド構造、黒鉛構造等のいずれあっても良い。また、炭素材料として、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノリボン、カーボンナノコイル、カーボンナノカプセル等も使用することが可能である。
炭素材料は、好ましくは、カーボン材料の原料から炭化生成されたカーボン材料及び/又はカーボン前駆体である有機高分子を炭化処理して得られたカーボン材料を用いることができる。これらは、ゲルの骨格表面上に良好に形成されやすい上に、生成条件、炭化処理条件等によってカーボンの構造、特性等を任意に制御できるという利点がある。
表面部は、特に、負の電子親和力(NEA;Negative Electron Affinity)と呼ばれる状態又は非常に小さな正の電子親和力になる状態では、電子が存在し得る伝導帯端のエネルギー準位が真空準位よりも高い又は同等程度となる。これにより、きわめて容易に電子放射面から真空中へ電子を放出することが可能となる。
表面部の厚さは、電子放射成分の種類等に応じて適宜決定できるが、一般的には3〜100nm程度、特に3〜20nm程度とすることが好ましい。この厚みは、後記の製造方法において条件を変更することによって制御することができる。
[多孔体内部]
多孔体の内部は、i)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種、ii)空間又はiii)絶縁性材料及び半絶縁性材料(以下、両者を「絶縁材料」と総称する。)の少なくとも1種ならびに空間で占められている。
すなわち、上記多孔体は、多孔体内部における絶縁材料の含有率(占有率)が0容量%以上100容量%以下の範囲を有する。したがって、本発明は、i)多孔体内部が実質的にすべて絶縁材料で形成されている場合、ii)多孔体内部が実質的にすべて空間(中空部)である場合、 iii)多孔体内部の一部が絶縁材料であり、残りが空間になっている場合などのいずれの形態も包含する。
絶縁材料は、公知の絶縁材料又は半絶縁材料から選択することができる。一般的には、導電率が10−3S/cm以下(27℃)のものであれば良い。
特に、本発明では、網目構造骨格を有する多孔体を形成しやすいという点で無機酸化物を好適に用いることができる。無機酸化物としては、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等のほか、これらの混合物(混合酸化物)、複合酸化物等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を採用することができる。
また、上記i)およびiii)の場合、絶縁材料と電子放射成分の割合は、絶縁材料又は電子放射成分の種類、多孔体の用途等に応じて適宜決定することができる。
<実施の形態1>
以下、電子放射材料の好ましい態様について、図示しながら説明する。本発明において、網目構造骨格を有する多孔体を形成する方法については特に限定されるものではない。その中でも、ゾル−ゲル法は、簡便な方法であることから、本発明でも好適な実施例として挙げている。よって、ゾルゲル法による場合を中心に説明する。
図1(a)は、ゾル−ゲル法等で作製された多孔質体10(多数の細孔を有する網目状骨格構造体)の微細構造の模式図である。これは、直径が2〜30nmである微粒子11の凝集体が3次元的にネットワークを組み、固体としての形状を保ちながら、大きさが1μm以下の細孔12(気相)を多数含んだ多孔構造となっている。これにより、空孔率50%以上の低密度体とすることができ、その結果として比表面積の大きい多孔体構造を得ることができる。例えば、BET法による比表面積が100m/g以上の多孔体を得ることもできる。
図1(b)は、図1(a)に示した多孔質体の固体部分(骨格部分)の連結状態を線で表したものである。骨格部がランダム・ネットワークからなる網目状構造をしていることがわかる。
図1(c)は、図1(b)に基づき、より網目状骨格を表す線のみを抽出したものである。以下、このような微粒子の集合体からなる多孔質構造をこのような樹枝状線13で模する。
なお、図1では、微粒子集合体からなる多孔質構造の例であるが、本発明は限定的でない。例えば、線状物質の集合体、より大きな構造体に蜂の巣状の孔が空いた構造等の多数の細孔を有する多孔体構造であればよい。以下、図1(c)のように記したときは、これらの場合も包含するものとする。
<実施の形態2>
図2には、電子放射材料の好ましい形態を示す。本発明材料20の第1の構成は、図2に示すような微細な網目状骨格からなる電子放射成分被膜構造体21である。すなわち、絶縁性材料(あるいは半絶縁性材料)22で構成された網目状骨格をコアとして、その骨格表面に電子放射成分21が被覆されている。
<実施の形態3>
本発明に係る電子放射材料の第2の構成を図3に示す。これは、網目状骨格構造からなり、かつ、その骨格内部が中空32である電子放射成分31からなる電子放射材料30である。すなわち、チューブ状の骨格が絡み合った構造を有する。
この構造では、網目状骨格構造の内部が中空32になっている。このため、中空でない場合に比べて比表面積がより高くなる。すなわち、網目状骨格構造に基づく性能に加え、さらなる性能向上が期待できる。これにより、より高い電子放射性能が要求される用途への応用が可能である。
(1−2)電子放射材料の製造方法
電子放射材料の製造方法は限定的ではない。例えば、絶縁材料および電子放射成分がそれぞれ無機酸化物およびカーボン材料である場合には、下記の第1方法又は第2方法により好適に製造することができる。
第1方法は、(1)網目構造骨格を有する多孔体であって、(2)網目構造骨格が内部と表面部から構成され、(3)表面部が、電子放射成分を含み、(4)内部が、i)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種、ii)空間又はiii)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種ならびに空間で占められている電子放射材料の製造方法であって、
少なくとも(1)網目構造骨格を有する無機酸化物のゲルにカーボン材料を付与してカーボン含有材料を得る工程A又は(2)当該ゲルにカーボン前駆体を付与し、得られたカーボン前駆体含有ゲルを炭化処理することによりカーボン含有材料を得る工程Bを含む製造方法である。
第2方法は、第1方法において、カーボン含有材料又はカーボン前駆体含有材料から無機酸化物の一部又は全部を除去する工程をさらに含む方法である。
第1方法
第1方法は、少なくとも(1)当該ゲルにカーボン材料を付与してカーボン含有材料を得る工程A又は(2)当該ゲルにカーボン前駆体を付与し、得られたカーボン前駆体含有ゲルを炭化処理することによりカーボン含有材料を得る工程Bを含む製造方法である。
第1方法によれば、電子放射材料(多孔体)のうち、多孔体内部が実質的にすべて無機酸化物で占められているものを好適に製造することができる。第1方法では、工程Aまたは工程Bのいずれかを選択的に実施することができる。
[工程A]
工程Aは、前記ゲルにカーボンを付与してカーボン含有材料を得る工程である。
出発材料である網目構造骨格を有する無機酸化物のゲルは、網目構造骨格を有するものであれば特に限定されない。また、液体(溶媒)を含有するか否かによって、湿潤ゲル(網目構造骨格の隙間に溶媒を含むゲル)又は乾燥ゲル(網目構造骨格の隙間に溶媒が実質的に存在しないゲル)の2つのタイプがあるが、本発明ではいずれも採用することができる。
また、無機酸化物の種類は、電子放射材料の用途、使用方法等に応じて各種の金属酸化物の中から適宜選択できる。特に、網目構造骨格を形成させるためにゾルゲル法で形成できるものが好ましい。例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化コバルト等のほか、これらの混合酸化物、複合酸化物等も挙げられる。これらのうち、ゾルゲル法による湿潤ゲルの形成が容易であることから、シリカおよびアルミナの少なくとも1種がより好ましい。
ゲルは、公知の方法で製造されたものを使用できる。特に、前記のとおり、網目構造骨格をより確実に形成できるという点で、ゾルゲル法で調製されたゲルを好適に用いることができる。以下、ゾルゲル法により製造する場合を代表例として説明する。
原料としては、ゾルゲル反応により湿潤ゲルを形成するものであれば限定されない。公知のゾルゲル法で使用されている原料を使用することもできる。例えば、ケイ酸ナトリウム、水酸化アルミニウム等の無機材料、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウム−sec−ブトキシドなどの有機金属アルコキシドの有機材料などを用いることができる。これらは、目的とする無機酸化物の種類に応じて選択すればよい。
ゾルゲル法は、公知の条件に従って実施すれば良い。一般的には、上記の原料を溶媒に溶解させて溶液を調製し、室温又は加温下で反応させ、ゲル化すれば良い。たとえば、シリカ(SiO)の湿潤ゲルをつくる場合は、以下のように実施すればよい。
シリカの原料としては、たとえばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシランなどのアルコキシシラン化合物、これらのオリゴマー、ケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)、ケイ酸カリウムなどの水ガラス化合物、コロイダルシリカなどが挙げられる。これは、単独または混合して用いることができる。
溶媒としては、原料が溶解し、生成したシリカが溶解しないものであれば限定されない。例えば、水のほか、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、トルエン、ヘキサンなどが挙げられる。これらは1種または2種以上で用いることができる。
また、必要に応じて、触媒、粘度調整剤等の各種添加剤も配合することができる。触媒としては、水のほか、塩酸、硫酸、酢酸などの酸、アンモニア、ピリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基を用いることができる。粘度調整剤としては、エチレングリコール、グリセリン、ポリビニルアルコール、シリコーン油などを用いることができるが、湿潤ゲルを所定の使用形態にできるのであれば限定されない。
上記原料を溶媒に溶解して溶液を調製する。この場合の溶液の濃度は、用いる原料又は溶媒の種類、所望のゲルの性状などによって異なるが、一般的には骨格を形成する固体成分濃度が2重量%〜30重量%程度とすれば良い。上記溶液は、必要に応じて上記添加剤を加え、攪拌した後、注型、塗布などによって所望の使用形態にすれば良い。この状態で一定時間経過すれば、溶液はゲル化して所定の湿潤ゲルを得ることができる。具体的には、溶媒中で原料が反応しながらシリカの微粒子を形成し、その微粒子が集まって網目構造骨格を形成して湿潤ゲルが生成する。
この場合、溶液の温度は限定的でなく、常温又は加熱下とすれば良い。加熱する場合は、用いる溶媒の沸点未満の温度範囲内で適宜設定することができる。なお、原料等の組合せによっては、ゲル化する際に冷却しても良い。
また、生成した湿潤ゲルを後のカーボン前駆体形成などの工程において、溶媒の親和性を高めること等を目的として、必要に応じて表面処理を行うこともできる。この場合、湿潤ゲルの状態で溶媒中でその固体成分の表面に表面処理剤を化学反応させて処理することもできる。
表面処理剤としては、例えばトリメチルクロルシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、エチルトリクロルシラン、フェニルトリクロルシランなどのハロゲン系シラン処理剤; トリメチルメトシシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどのアルコキシ系シラン処理剤; ヘキサメチルジシロキサン、ジメチルシロキサンオリゴマーなどのシリコーン系シラン処理剤; ヘキサメチルジシラザンなどのアミン系シラン処理剤; プロピルアルコール、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクタノール、デカノールなどのアルコール系処理剤などを用いることができる。これらは、電子放射材料(多孔体)の用途等に応じて1種又は2種以上を選定すればよい。
ゲルに付与するカーボン材料としては、前記のとおり炭素又は炭素を主成分とする材料を使用することができる。例えば、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック等)、活性炭、人造黒鉛、天然黒鉛、炭素繊維、熱分解炭素、ガラス状炭素、不浸透炭素、特殊炭素、コークス等を挙げることができる。また、結晶構造も限定されず、ダイヤモンド構造、黒鉛構造等のいずれでも良い。また、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノリボン、カーボンナノコイル、カーボンナノカプセル等のナノカーボン材料も使用することが可能である。これらは、1種又は2種以上で用いることができる。これらは、多孔体の用途等に応じて適宜選択することができる。
カーボン材料を付与する方法は特に限定されず、気相法、液相法又は固相法のいずれも適用することができる。たとえば、a)カーボン材料を気相法にてゲル(好ましくは乾燥ゲル)の骨格表面上に堆積させる方法、b)カーボン材料(たとえば、平均粒径10nm以下のカーボン含有超微粒子)の分散液をゲル(好ましくは湿潤ゲル)に付与する方法などを挙げることができる。
上記a)の方法として、カーボン材料を気相法により付与する工程について説明する。
この方法は、カーボン材料を生成し得る原料にエネルギーを加え、それにより生成したカーボン材料をゲルの骨格表面上に堆積させる方法である。この方法によれば、カーボン材料をゲル上に形成できる。そのため、別途に炭化処理する必要がなく、効率的である。
上記原料としては、メタン、エタン、プロパン、ブタンなどの飽和炭化水素化合物; エチレン、アセチレン、プロピレンなどの不飽和炭化水素化合物; ベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素化合物; メタノール、エタノールなどのアルコール類; アクリロニトリルなどの窒素含有炭化水素; 一酸化炭素と水素の混合気体、二酸化炭素と水素の混合気体などの炭素含有ガスなどが挙げられる。これらは、1種又は2種以上で用いることができる。
これらの原料をカーボンに変えるためのエネルギーとしては、たとえば熱、プラズマ、イオン、光、触媒などを採用することができる。乾燥ゲルの中でカーボン化を進めるには、加熱による方法が制御性が高いので好ましい。
気相法は、通常の条件に従って実施すれば良い。たとえば、反応容器中にゲルを配置し、その反応雰囲気中に上記原料を蒸気とし、これを加熱下でゲルの骨格表面上にカーボンを堆積させれば良い。この場合の条件は、多孔体の用途、所望の特性等に応じて適宜調節することができる。
上記b)の方法は、好ましくは湿潤ゲルを用い、そのゲル中に含まれる溶媒にカーボンを分散させ、その後に乾燥処理を施すことによってカーボン含有材料を得ることができる。この場合、分散させるカーボン材料は、平均粒径1nm以上10nm以下の超微粒子であることが望ましい。
ゲルをカーボン材料で被覆する際におけるカーボン材料の使用量(被覆量)は、特に制限されず、電子放射材料の用途、使用方法、用いるカーボン材料の種類等に応じて適宜設定することができる。
工程Aで得られたカーボン含有材料は、そのまま電子放射材料として使用しても良い。また、必要に応じてゲル中の残存溶媒を取り除くこと等を目的として溶媒除去工程(乾燥工程)を実施しても良い。特に、ゲルとして湿潤ゲルを使用する場合には、溶媒除去工程を実施することが望ましい。かかる工程は、後記の乾燥処理と同様にすれば良い。
[工程B]
工程Bは、前記ゲルにカーボン前駆体を付与し、得られたカーボン前駆体含有ゲルを炭化処理することによりカーボン含有材料を得る工程である。
前記ゲルとしては、工程Aで示したものを使用することができる。したがって、ゲルとして湿潤ゲル又は乾燥ゲルのいずれも使用することができる。
カーボン前駆体としては、最終的に炭化してカーボンとなるものであれば特に限定されない。従って、炭素を含有する材料であればいずれの材料も使用することができ、一般的には有機材料を使用することができる。
このうち、本発明では、有機高分子を好適に用いることができる。例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフルフリルアルコール、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリフェノール(フェノール樹脂)、ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、アクリル共重合体等の重合体又は共重合体を挙げることができる。
この中でも、炭素−炭素不飽和結合を有する有機高分子が好ましい。すなわち、炭素−炭素二重結合および炭素−炭素三重結合の少なくとも1種を有する有機高分子を好適に用いることができる。このような有機高分子を用いることによって、より容易かつ確実に炭化させることができ、しかも所定の強度をもつカーボン材料を形成することができる。たとえば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリスチレン、ポリサルホン、ポリフェニレンエーテル、メラミン樹脂、芳香族ポリアミドなどを挙げることができる。これらは、1種又は2種以上で用いることができる。また、他の有機高分子と併用することも可能である。本発明では、特に、芳香環を有する有機高分子が好ましい。たとえば、フェノール樹脂、ポリイミド等の少なくとも1種を好適に用いることができる。
また、芳香環を有しない有機高分子(例えば、ポリアクリロニトリル、アクリル共重合体など)であっても、炭化の進行によって環化し、不飽和結合を生成するものも好適に用いることができる。換言すれば、炭化前は炭素−炭素不飽和結合を有していないが、炭化によって環化を起こして炭素−炭素不飽和結合を生成し得る有機高分子も好適に用いることができる。このような有機高分子のうち、特にポリアクリロニトリルが好ましい。
カーボン前駆体をゲルに付与してカーボン前駆含有ゲルを調製する方法としては、カーボン前駆体を支持体となる無機酸化物の網目構造骨格上に形成できる方法であれば特に限定されない。たとえば、(a)カーボン前駆体を無機酸化物の湿潤ゲルに含浸する方法のほか、(b)有機高分子を形成し得るモノマー又はオリゴマーを用い、これを湿潤ゲルに含浸させた後、重合させ、カーボン前駆体である有機高分子を生成させる方法、(c)無機酸化物の乾燥ゲル中で有機高分子を形成し得るモノマーを気相法により付与し、次いで重合させ、カーボン前駆体である有機高分子を生成させる方法などを好適に採用することができる。
上記(a)の方法は、具体的には、カーボン前駆体を溶媒に溶解させた溶液又は溶媒に分散させた分散液(エマルジョンなど)に湿潤ゲルを浸漬する。これによって、カーボン前駆体が網目構造骨格の表面に付着して被覆される。カーボン前駆体として有機高分子を用い、その溶液又は分散液と湿潤ゲルを接触させる場合には、湿潤ゲルはその内部に溶液または分散液を保持し、乾燥後は有機高分子が網目骨格構造中に残る。この場合、溶解している高分子は、網目骨格構造に物理的に吸着されていてもよい。また、有機高分子が溶解している溶液を含む湿潤ゲルを、その有機高分子に対して貧溶媒に浸漬すると、有機高分子が網目骨格構造上に析出し、表面部を形成することになる。
上記の溶液又は分散液に用いる溶媒としては、有機高分子の種類等に応じて公知の溶媒の中から適宜選択すればよい。たとえば、水のほか、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類などが挙げられる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
溶液又は分散液中のカーボン前駆体の濃度は、特に制限されず、カーボン前駆体の所望の付与量、カーボン前駆体の種類等に応じて適宜決定することができる。
上記(b)の方法は、具体的には、重合により有機高分子を形成し得る有機化合物(オリゴマーも含む。)を溶媒に溶解した溶液又は溶媒に分散した分散液に湿潤ゲルを浸漬して、そのゲル内部で重合(高分子化)を行わせ、カーボン前駆体である有機高分子を生成させることができる。この方法によると、網目構造骨格内部で有機高分子が成長するために、物理的に溶出しにくいカーボン前駆体含有湿潤ゲルを得ることが可能である。
上記有機化合物としては、目的の有機高分子に対応するモノマーを使用すればよい。たとえば、ポリアクリロニトリルを得る場合はアクリロニトリル、ポリフルフリルアルコールを得る場合はフルフリルアルコール、ポリアニリンを得る場合はアニリンなどを使用することができる。また、ポリイミドを生成させる場合は、イミド環を形成させる縮重合反応で生成させる場合、一般的なものとして無水テトラカルボン酸化合物およびジアミン化合物を用いることができる。ポリアミドを得る場合は、アミド結合を形成させる縮重合反応で生成させる場合、一般的なものとしてジカルボン酸化合物やジカルボン酸クロリド化合物と、ジアミン化合物を用いることができる。ポリウレタンを生成させる場合は、ポリオールなどのジオール化合物とジイソシアネート化合物、ポリウレアを得る場合は、ジイソシアネート化合物、ポリフェノールを得る場合には、フェノール化合物とアルデヒド化合物などを使用すればよい。
本発明の有機高分子としては、炭素−炭素不飽和結合を有するものが好ましいので、そのような有機高分子を生成させる有機化合物を好適に用いることができる。例えば、有機高分子がフェノール樹脂である場合は、フェノール化合物としてフェノール、クレゾール、レゾルシノール(1,3−ベンゼンジオール)、カテコール、フロログリシノール、サリチル酸、オキシ安息香酸などが挙げられる。この場合には、縮合剤であるアルデヒド化合物としてホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール、加熱によってホルムアルデヒドを生成するパラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミンなども使用する。縮合触媒としては、塩基触媒および/または酸触媒を用いることができる。塩基触媒は主にメチロール基などの付加反応を進行させ、酸触媒は主にメチレン結合などの重付加縮合反応を進行させればよい。塩基触媒としては、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸化物、アミン、アンモニアなど、一般的なフェノール樹脂製造用の触媒を用いることができる。酸触媒としては、たとえば硫酸、塩酸、リン酸、シュウ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸などを用いることができる。
有機化合物を溶解又は分散させるための溶媒としては特に限定されず、用いる有機化合物の種類等に応じて公知の溶媒の中から適宜採択すればよい。たとえば、水のほか、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類などが挙げられる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
溶液又は分散液中における有機化合物の濃度は特に限定されず、用いる有機化合物の種類等に応じて適宜決定すれば良い。
重合させる方法としては、特に限定されず、たとえば熱重合、触媒重合、光重合などの公知の方法により実施することができる。
上記(c)の方法では、無機酸化物の乾燥ゲル中でカーボン前駆体である有機高分子を形成し得るモノマーを気相法により付与し、次いで重合する方法である。具体的には、前述のポリアクリロニトリル、ポリフルフリルアルコール、ポリアニリンなどの有機高分子のモノマーを蒸気とし、ゲルの中に充填してから重合させる方法である。また、ポリフェノールなどではフェノール化合物を充填しておいてから縮合剤のホルムアルデヒドなどを蒸気として充填して縮重合させることができる。また、ポリイミド、ポリアミドなどにおいては、原料のカルボン酸化合物とジアミン化合物を蒸発させ、それをゲルの中に充填し、重縮合させることができる。
気相法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。たとえば、化学気相成長法(CVD)、物理的気相成長法(PVD)等の一般的な方法を用い、ポリマー又はそのモノマーを加熱等により気化または蒸発させる方法などを採用することができる。
重合させる方法としては、前記(b)の場合と同様にして実施することができる。
次の炭化処理工程では、得られたカーボン前駆体含有ゲルを熱処理することによって炭化処理を行う。
この場合、ゲルとして湿潤ゲルを使用する場合には、炭化処理に先立って予め乾燥して乾燥ゲルとしておくことが好ましい。
乾燥処理には、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥の通常乾燥法のほか、超臨界乾燥法、凍結乾燥法等も用いることができる。一般に、乾燥ゲルの表面積を高く、かつ、低密度化を図るため湿潤ゲル中の固体成分量を少なくすれば、ゲル強度が低下する。また、単に乾燥するだけでは、溶媒蒸発時のストレスによってゲルが収縮してしまうことが多い。湿潤ゲルから優れた多孔質性能を有する乾燥ゲルを得るためには、乾燥手段として超臨界乾燥又は凍結乾燥を好ましく用いることができる。これによって、乾燥時のゲルの収縮、すなわち高密度化を効果的に回避することができる。通常の溶媒蒸発させる乾燥手段においても、蒸発速度をゆっくりさせるための高沸点溶媒を使用したり、蒸発温度を制御することによって、乾燥時のゲルの収縮を抑制することができる。また、湿潤ゲルに対し、ゲルの固体成分の表面を撥水処理等を施して表面張力を制御することによっても、乾燥時のゲルの収縮を抑制することができる。
超臨界乾燥法又は凍結乾燥法では、溶媒を液体状態から相状態を変えることによって、気液界面をなくして表面張力によるゲル骨格へのストレスを与えることなく乾燥できる。このため、乾燥時のゲルの収縮を防ぐことができ、低密度の乾燥ゲルの多孔質体を得ることができる。本発明では、特に、超臨界乾燥法を用いることがより好ましい。
超臨界乾燥に用いる溶媒は、湿潤ゲルの保持している溶媒を用いることができる。また、必要に応じて、超臨界乾燥において扱いやすい溶媒に置換しておくのが好ましい。置換する溶媒としては、直接その溶媒を超臨界流体にするメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類のほか、二酸化炭素、水などが挙げられる。または、これらの超臨界流体で溶出しやすいアセトン、酢酸イソアミル、ヘキサンなどの有機溶剤に置換しておいてもよい。
超臨界乾燥は、オートクレーブなどの圧力容器中で行うことができる。たとえば、溶媒がメタノールではその臨界条件である臨界圧力8.09MPa以上、臨界温度239.4℃以上にし、温度一定の状態で圧力を徐々に開放することにより行う。たとえば、溶媒が二酸化炭素の場合には、臨界圧力7.38MPa以上、臨界温度31.1℃以上にして、同じように温度一定の状態で超臨界状態から圧力を開放して気体状態にして乾燥を行う。たとえば、溶媒が水の場合には、臨界圧力22.04MPa以上、臨界温度374.2℃以上にして乾燥を行う。乾燥に必要な時間としては、超臨界流体によって湿潤ゲル中の溶媒が1回以上入れ替わる時間以上を経過すればよい。
炭化処理は、カーボン前駆体が300℃程度以上で炭化が進行しはじめるため、300℃以上で行うことが好ましい。作業時間の効率性の観点から、400℃以上の温度がより好ましい。また、加熱温度の上限は、網目構造骨格の無機酸化物の融点未満の温度で適宜設定できる。たとえば、無機酸化物にシリカを用いた場合には、その乾燥ゲルは、600℃程度でやや収縮するが、1000℃以上では大きく収縮する。したがって、炭化処理温度は、その収縮抑制の効果の程度で選択すればよい。本発明では、特に1000℃未満(さらには800℃以下)で炭化処理を行うことが望ましい。
炭化処理の雰囲気は、特に限定されず、大気中、酸化性雰囲気中、還元性雰囲気中、不活性ガス雰囲気中、真空中等のいずれであっても良い。ただし、燃焼等を考慮すれば、温度を高く設定するときには、低濃度酸素雰囲気下で行うのが好ましい。本発明における低濃度酸素雰囲気下とは、雰囲気の酸素濃度が0〜10%であることをいう。乾留法、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気中での加熱、または真空中での加熱でも炭化処理を行うことができる。
第2方法
第2方法は、第1方法において、カーボン含有材料又はカーボン前駆体含有材料から無機酸化物の一部又は全部を除去する工程をさらに有する方法である。
第2方法では、多孔体のうち、内部が無機酸化物及び空間で占められている多孔体又は内部が空間で占められている多孔体を好適に得ることができる。すなわち、無機酸化物の一部を除去すれば、内部が無機酸化物及び空間で占められている多孔体が得られる。無機酸化物の全部を除去すれば、内部が実質的にすべて空間で占められている多孔体が得られる。
無機酸化物を除去する工程について説明する。第2方法では、カーボン含有材料又はカーボン前駆体含有材料から無機酸化物の一部又は全部を除去する。これらの除去工程は、第1方法のどの段階で実施しても良い。すなわち、本発明は、工程Aで得られるカーボン含有材料から無機酸化物の一部又は全部を除去する方法、工程Bでつくられるカーボン前駆体含有材料から無機酸化物の一部又は全部を除去した後、得られた材料を炭化する方法、工程Bで炭化して得られるカーボン含有材料から無機酸化物の一部又は全部を除去する方法等のいずれも包含する。
無機酸化物を除去する方法としては限定的でない。たとえば、蒸発、昇華、溶出などの公知の方法をいずれも用いることができる。特に、本発明では、ゲル骨格への影響が少ない温和な条件が好ましいことから、溶出による除去がより好ましい。
溶出する方法としては、無機酸化物を溶解する溶液に浸漬して行えばよい。このときに使用する溶液は、酸または塩基の溶液を好ましく用いることができる。一般にゾルゲル法によって形成される無機酸化物のゲルは結晶性が低く、非晶質である場合が多い。そのため、強い酸や塩基に対しての溶解性が高い。また、微粒子が凝集している網目構造骨格のゲルがほぐれてしまうという性質(解こう性)も高い。
酸または塩基は、無機酸化物の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、無機酸化物がシリカである場合等は、フッ化水素酸のほか、水酸化アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、炭酸アルカリ(炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム)などを好適に用いることができる。これらは、水溶液、アルコール溶液などの形態で使用することができる。なお、酸又は塩基の濃度は、用いる酸又は塩基の種類、無機酸化物の種類等に応じて適宜決定すれば良い。
無機酸化物を除去する第2方法では、第1方法で得られるカーボン含有多孔体よりも比表面積が大きい多孔体が得られる。このカーボン材料からなる網目構造骨格は、電子顕微鏡等の観察で中空構造が観察されることが多い。電子顕微鏡観察で明確な中空構造が観察されないものであっても、比表面積の大きなカーボン多孔体も得られる。
以下、本発明の電子放射材料の製造方法の好ましい形態を図示しながら説明する。
<実施の形態4>
カーボン含有多孔体からなる電子放射材料の第1の製造方法は、図4に示す基本的な工程からなる。基本的な工程としては、調合したゾル溶液(図4−(1))よりゾル−ゲル法を用いて、無機酸化物の網目状骨格構造(ゲル構造:図4−(2))を形成した後に、その湿潤ゲルの骨格表面にカーボン前駆体を形成し、カーボン前駆体含有多孔体(複合多孔体)(図4−(3))とした後、骨格表面に被膜されたカーボン前駆体を炭化してカーボン化(図4−(4))する方法である。
すなわち、無機酸化物の原料から無機酸化物の湿潤ゲルを合成する工程、得られた無機酸化物の湿潤ゲルに液相中でカーボン前駆体を形成してカーボン前駆体含有湿潤ゲルを得る工程、さらにカーボン前駆体含有湿潤ゲルを乾燥して複合乾燥ゲルを得る工程、その後に炭化処理してカーボン含有多孔体を得る工程からなる。これらの工程は基本的なものである。この工程を行うのに溶媒置換、触媒形成、表面処理などの処理工程が適宜追加されていてもよい。
この製造方法では、無機酸化物からなる網目状骨格構造が、カーボン前駆体が炭化される際に、その炭化に伴う収縮を抑制する支持体としての役割を有する。これにより、炭化に伴うカーボン前駆体の収縮を抑制ないしは防止することができる。その結果、カーボン前駆体がカーボン系被膜になる際の密度増加を抑制するとともに、比表面積の低下を抑えることが可能になる。
<実施の形態5>
カーボン含有多孔体からなる電子放射材料の第2の製造方法は、図5に示す基本的な工程からなる。この方法は、網目状骨格を有する無機酸化物の乾燥ゲルにカーボン材料を気相合成により付与する方法である。
すなわち、無機酸化物の原料(図5−(1))から無機酸化物の湿潤ゲル(図5−(2))を調製する工程、得られた湿潤ゲルを乾燥して無機酸化物の乾燥ゲル(図5−(3))を得る工程、上記乾燥ゲルの骨格表面に気相反応によりカーボン系材料を形成する工程(図5−(4))を経て、カーボン含有多孔体を得る。これらの工程は基本的なものであり、この工程を行なうために、たとえば溶媒置換、触媒形成、表面処理などの公知の処理工程を実施してもよい。
なお、気相でカーボン系材料を形成する方法としては、気相反応でいったんカーボン前駆体を付与した後にさらに炭化処理する方法のほか、気相反応により直接カーボン材料を形成する方法がある。本発明では、いずれの方法であってもよい。
この製造方法においても、無機酸化物からなる網目状骨格構造がカーボン系被膜を形成する際に、上記構造を保持する支持体としての役割を果たす。これにより、カーボン被膜形成時の収縮を抑制することができる。それによって、得られるカーボン複合体の密度増加を抑制することができるとともに、比表面積の低下を抑えることが可能になる。特に、気相中で直接カーボン材料を付与する場合には、カーボン前駆体の炭化による収縮等の歪を回避できるので有利である。
<実施の形態6>
中空カーボン多孔体からなる電子放射材料の第1の製造方法は、図6に示す基本的な工程からなる。この工程は、ゾル溶液(図6−(1))より無機酸化物の網目状骨格構造(図6−(2))を形成し、さらにその湿潤ゲルの骨格表面にカーボン前駆体を付与してカーボン含有多孔体(図6−(3))を製造し、カーボン含有多孔体から無機酸化物の一部又は全部を除去することによってカーボン前駆体の乾燥ゲル(図6−(4))を調製した後、その中空骨格のカーボン前駆体を炭化してカーボン化(図6−(5))する方法である。
すなわち、無機酸化物の原料から無機酸化物の湿潤ゲルを合成する工程、得られた無機酸化物の湿潤ゲルに液相中でカーボン前駆体を形成してカーボン前駆体含有湿潤ゲルを得る工程、カーボン前駆体含有湿潤ゲルから無機酸化物を除去する工程、さらにカーボン前駆体湿潤ゲルを乾燥して乾燥ゲルを得る工程、その後に炭化してカーボン多孔体を得る工程からなる。これらの工程は基本的なものである。この工程を行なうのに、溶媒置換、触媒形成、表面処理などの公知の処理を実施してもよい。
この製造方法では、電子放射成分であるカーボン系材料自身で網目状骨格が形成されているために、比表面積が大きなカーボン多孔体を得ることができる。さらに、その網目状骨格の内部が中空になるため、さらなる比表面積の向上を図ることができる。その結果、低密度で、高比表面積なカーボン多孔体が得られる。この材料は、高い電子放射性能が要求される用途に適用することができる。
<実施の形態7>
カーボン多孔体からなる電子放射材料の第2の製造方法は、図7に示す基本的な工程からなる。この工程は、実施の形態3あるいは実施の形態4で得られたカーボン含有多孔体(図7−(1)〜(4))から無機酸化物の一部又は全部を除去することによってカーボン多孔体(図7−(5))を得る方法である。
この製造方法でも、電子放射成分であるカーボン材料自身で網目状骨格状に形成しているために、大きな比表面積を得ることができる。さらに、その網目状骨格の内部が中空であることから、より高い比表面積を実現することができる。その結果、低密度で高比表面積のカーボン多孔体を提供することが可能である。このような多孔体は、高い電子放射性能が求められる用途に適用可能である。
(2)電子放射素子
本発明の電子放射素子は、(a)基材、(b)前記基材上に設けられた下部電極層、(c)前記電極層上に設けられた電子放射層および(d)前記電子放射層に接触しないように配置された制御電極層を備える。
本発明の電子放射素子は、上記(a)〜(d)の構成を有し、かつ、電子放射層として前記(1)の電子放射材料を用いるほかは、公知の電子放射素子で採用されている要素(スペーサー等)を適用することができる。
基材は、公知の材質から適宜用いることができる。例えば、ガラス、石英、セラミックス(Al、ZrO等の酸化物セラミックス、Si、BN等の非酸化物セラミックス)等の絶縁性材料;低抵抗シリコン、金属・合金、金属間化合物等の導電性材料を用いることもできる。基材の厚みは限定的でなく、一般的には0.5〜2mm程度とすればよい。
下部電極層は、電子放射層へ電子を供給できる材質であれば特に限定されない。例えば、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、金、タングステン等の金属材料;シリコン、窒化ガリウム等の低抵抗n形半導体と金属とを積層した複合材料等を使用することができる。下部電極層の厚みは、一般的には1〜50μm程度とすればよい。
電子放射層は、その一部又は全部に本発明材料を用いる。これは、少なくとも電界中で電子を放出するものであればよい。換言すれば、本発明材料は、電界中で電子を放出する限りは、熱によって電子を放出するものであってもよい。電子放射材料は、1種又は2種以上で用いることができる。また、本発明材料以外の電子放射材料(例えば、シリコン、金属材料等)が含まれていてもよい。
さらに、本発明の効果を妨げない範囲内で電子放射材料以外の成分が含有されていてもよい。好ましくは、本発明材料が電子放射層中20体積%以上(特に50〜100体積%)含まれる。電子放射層の厚みは、用いる電子放射材料の種類等によって異なるが、一般的には0.5〜20μm程度とすればよい。
電子放射層の表面には本発明材料が露出している。電子放射層の全部が本発明材料(電子放射材料)から構成される場合、すなわち、電子放射層が本発明材料(電子放射材料)からなる場合には、当然、電子放射層の表面に本発明材料(電子放射材料)が露出することになる。一方、電子放射層の一部が本発明材料(電子放射材料)を含む場合には、当該本発明材料(電子放射材料)の一部または全部が電子放射層の表面に露出している。また、この電子放射層は、カーボンからなることに例示されるように、導電性を有する。
電子放射層は、粉末状電子放射材料を含むペーストの塗膜を焼成して得られるものであってもよい。例えば、平均粒径0.5〜10μm程度の粉末状電子放射材料に有機バインダー(イソプロピルメタアクリレート等)を混合して得られるペーストを下部電極層上に塗布し、得られた塗膜を焼成して有機バインダーを除去することによって所定の電子放射層が好適に得られる。このような電子放射層も、所望の電子放射性能を発揮することができる。
制御電極層は、電圧印加によって電子放射層に対して電界を与え、その電界強度によって放射電子量を制御する機能を有する。そのような機能を有する限りその材質は限定的でない。特に、隣接する層との密着性、パターン作製等の加工性等に富む金属を好適に使用することができる。一般的には、アルミニウム、ニッケル等を好適に用いることができる。制御電極層の厚みは、通常0.1〜3μm程度とすればよい。
本発明素子では、電子放射層と制御電極層とが接触しない限り、どのような配置をとってもよい。電子放射層と制御電極層との間は、空間及び絶縁体の少なくとも1種が介在すればよい。例えば、基材上に設けられた電子放射層が、空間を隔てて制御電極層と対向するように配置してもよい。具体的には、公知のスピント型電子放射素子におけるゲート電極とエミッタの配置と同様にすることもできる。上記空間は、真空又はそれに近い状態とすることが好ましい。両層間の距離は、所望の性能、電界強度等に応じて適宜定めることができる。一般的には、上記距離が短いほど、より低い電圧で済む。また、電子放射層と制御電極層とは、実質的に平行に配置されていることが好ましい。
「電子放射層と制御電極層とが接触しない」とは、後述する図8および図9に例示されるように、電子放出層と制御電極層とが離間し、これらの間で絶縁が保たれていることを意味する。先行例である特開2000−285797号公報では、図11に示されるように、多孔質シリカ膜からなる電子加速層101と引き出し電極103とが接していることが前提とされている。この先行例において、電子加速層101の材料をカーボンのような導電性の材料に置換すると、エミッタ電極102、電子加速層101、および引き出し電極103が短絡してしまい、電子放出素子として全く機能しなくなる。言い替えれば、この先行例に開示されている電子放出素子が、電子放出素子として機能するためには、電子加速層101を構成する物質(多孔質シリカ膜)が絶縁性でなければならない。従って、この先行例において、電子加速層101を構成する多孔質シリカ膜をカーボンのような導電性の材料に置換することはできない。なお、この先行例(図11)では、電子を放出するのが多孔質シリカ膜からなる電子加速層101のように見られるが、この先行例では、「電界によって電子放出するエミッタ電極」と開示されているように、電子を放出するのはエミッタ電極102であって、多孔質シリカ膜からなる電子加速層101でないことに留意すべきである。
電子放射層と制御電極層は、それぞれ独立して設置することができる。また、互いにスペーサ(絶縁体)を介して両者が固定されてもよい。スペーサとしては、例えばアルミナ、ジルコニア、二酸化ケイ素等の絶縁材料を好ましく使用することができる。
本発明素子の製造方法は、公知の薄膜製造技術、半導体製造技術等を利用すればよい。薄膜製造技術としては、例えばスパッタ法、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、化学的気相蒸着法(CVD)等を好適に用いることができる。
特に、電子放射層の形成方法についても、基板上に設けられた下部電極層上に固定できる限り、制限されない。例えば、1)導電性接着剤によって、基板上に設けられた下部電極層上に電子放射材料を接着する方法、2)電子放射材料を粉砕して得られる粉末を有機バインダーに混合して得られる混合物(電子放射材料含有ペースト)を下部電極層上にコーティング又は印刷する方法、3)下部電極層上で電子放射材料を製造し、そのまま電子放射層とする方法等を採用することができる。上記の導電性接着剤、有機バインダー等は、公知のもの又は市販品を使用することができる。
本発明の電子放出素子は、公知の電子放射素子と同様の方法で駆動させることができる。例えば、基板上に設けられた下部電極層と制御電極層に所定の電圧を印加すればよい。電圧は、電子放射層が電界強度1×10V/m以上の電界におかれるように調節すればよい。この場合、駆動雰囲気は、一般的に真空又はそれに近い状態とすることが好ましい。また、駆動温度は限定的ではないが、通常0〜60℃程度に設定することが望ましい。また、電流は、直流又はパルス状(矩形波)のいずれであってもよい。
<実施の形態8>
図8は、本発明の電子放射素子の概略断面図である。電子放射素子80は、基本的な構成要素として、基材81、電極層(下部電極層)82、電子を放射する電子放射層83、絶縁体層85、電子放射のための電圧(制御電源86)を印加する制御電極層84を有する。ここに、電子放射層83は、各実施の形態で説明した電子放射材料又はそれを含む複合材料から構成される。
基材81上には、電極層82及び電子放射層83が形成され、その近傍に絶縁層85を介して制御電極層84が設けられている。図8では、制御電極層84は、従来のスピント型電子放射素子のゲート電極と同様に、電子放射層83の上部周辺を取り囲むように形成されているが、他の態様であってもよい。
絶縁層85上に形成されている制御電極層84においては、制御電極層の一部が絶縁層85からはみ出た「はみ出し部87」を構成する。はみ出し部の形成は、必須ではなく、必要に応じて適宜行うことができる。図8では、このはみ出し部と電子放射層との間の領域88は、空間になっているが、絶縁体で充填されていてもよい。
基材81は、一般的にガラス基板又は石英基板が好ましく用いられる。また、前記のように、低抵抗シリコン基板、金属基板等の導電性基材を用いることも可能である。導電性基材を用いる場合は、電極層82の機能を導電性基材に持たせることもできる。
電極層82としては、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、金、タングステン等の金属材料のほか、シリコン、窒化ガリウム等からなる低抵抗n形半導体と金属を積層した構造が好適である。放出電流を安定化させるために、上記電極層と抵抗性膜を積層させた構造を電極層82として用いても良い。なお、電極層82の厚さは、一般的には1〜50μm程度とすることが好ましい。
電子放射層83は、電子放射成分を骨格部に有する多孔質体が適用される。その代表的な構造として、細孔サイズが数10nmの多孔質体が挙げられる。また、電子放射層83は、制御電極層84に印加された電圧によって生じる電界によって、電子を真空中に放射する機能を有する。その材料は、上記したものの中から適宜選択される。
制御電極層84は、電圧印加によって電子放射層83に対して電界を与え、その強度によって放射電子量を制御する機能を有する層である。これは、絶縁体層85上に形成されている。電圧は、電源86の正極に接続された制御電極84、電源86の負極に接続された電極層82に印加される。
図8では、電子放射層83は、絶縁体層85を介して制御電極層84に隣接しているが、電子放射層83と制御電極層84が接触しない限り、絶縁体層85を用いなくてもよい。
電子放射素子80では、電子放射層83に本発明材料を適用しているので、従来よりも効率的な電界集中効果を得ることができる。その結果、印加電圧も従来に比べて低くすることができる。
2.蛍光体発光素子
本発明の蛍光体発光素子は、蛍光体層を有するアノード部及び電子放射素子を含み、前記電子放射素子から放出された電子が前記蛍光体層を発光させるように前記アノード部及び電子放射素子が配置されている蛍光体発光素子であって、前記電子放射素子が本発明の電子放射素子であることを特徴とする。
本発明の蛍光体発光素子は、電子放射素子として本発明の電子放射素子を使用するものである。その他の要素(容器又はハウジング等)は、公知の蛍光体発光素子で用いられている要素を適用することができる。
アノード部は、基本構成として、電子放射素子に近い順で蛍光体層、アノード電極層及び基材が積層された積層体を好適に用いることができる。各層の構成及びその形成は、公知の技術に従えばよい。
アノード部を構成する各層は、前面(アノード部)から発光を取り出す場合は、公知の蛍光体発光素子で使用されている透明性材料をそれぞれ使用すればよい。基板は、例えばガラス基板、石英基板等を使用することができる。アノード電極層としては、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化スズ、酸化亜鉛等を例示することができる。
蛍光体層としては、所望の発色等に応じて適宜形成すればよい。すなわち、赤(R)・青(B)・緑(G)の3原色、これらの中間色等の各色に応じ、各種蛍光体(化合物)から適宜選択することができる。例えば、Y系、GdBO系等の赤色蛍光体;ZnS系、ZnO系等の緑色蛍光体;YSiO系、ZnS系等の青色蛍光体が挙げられる。蛍光体層の形成は、例えばこれらを含む溶液又は分散液をアノード電極層上に印刷又は塗布することにより薄膜として形成すればよい。
電子放射層とアノード部(特に蛍光体層)の配置は、電子放射層から放出される電子がアノード部の蛍光体層に衝突して発光できるようにすればよい。好ましくは、電子放射層とアノード部(蛍光体層)が互いに対向するように配置する。両者の間は、空間(特に真空空間)になっていることが好ましい。また、電子放射層と蛍光体層は、平行に配置することが望ましい。電子放射層と蛍光体層との距離は、一般的に100μm〜2mmの範囲内において、所望の性能等に応じて適宜調節することができる。
<実施の形態9>
図9には、本発明の蛍光体発光素子の概略断面図を示す。蛍光体発光素子は基本的な構成要素として、電子放射素子90、アノード部100、それらを内包するハウジング911とからなる。
図9によれば、電子放射素素子90及びアノード部100は、それぞれ容器911と独立している。このほかにも、ハウジングの内面にアノード部を直接形成しても良い。同様に、ハウジングの内面に電子放射素子を直接形成することもできる。また、ハウジングを用いずに、電子放射素子91部とアノード部100をスペーサーを介して貼り合わせ、その空隙部分を真空又はそれに近い状態にしても良い。
アノード部100は、電子放射素子90の電子放射層93から放出される電子eが蛍光体層97に効率的に衝突できるように配置すればよい。図9のように、蛍光体層97と電子放射層93が、互いに平行状態を保ちながら、空間を介して対面するように配置することが望ましい。
アノード部100は、電子放射素子から放射された電子を加速するための電圧印加を行うとともに、蛍光体を発光させる機能を有する。その構成要素としては、蛍光体層97/放射電子に対して加速電圧を印加するアノード電極98/前面基材99を含む。前面基材99側より発光を取り出す場合、アノード電極98として一般的に透明導電膜であるITO等を使用できる。また、前面基材99としてはガラス等が好ましく用いられる。
蛍光体層97に用いられる蛍光体としては、前記のような各種の蛍光体の中から所望の発光色等に応じて適宜選択すればよい。の場合、加速される放射電子が持つエネルギー値、すなわちアノード電圧値を考慮し、最も効率の良い蛍光体材料を選ぶことが好ましい。
3.画像描画装置
本発明の画像描画装置は、蛍光体層を有するアノード部及び二次元的に配列された複数の電子放射素子を含み、前記電子放射素子から放出された電子が蛍光体層を発光させるように前記アノード部及び電子放射素子が配置されている画像描画装置であって、前記電子放射素子が本発明の電子放射素子であることを特徴とする。
本発明の画像描画装置は、電子放射素子として本発明電子放射素子を使用するものである。その他の要素(ハウジング、駆動用ドライバ等)は、公知の画像描画装置で用いられている要素を適用することができる。
電子放射素子は、二次元状に複数個配列されている。すなわち、同一平面上に電子放射素子が配列され、電子放射素子のアレイを形成する。このようなアレイとしては、例えば電気的に絶縁された複数本の電極パターンに対し、そのパターンに直交するように複数本の制御電極パターンを有する構成(すなわち、マトリックス方式)が大画面の装置を製造する上で有利である。
蛍光体層の基本構成は、前記2の蛍光体発光素子の蛍光体層と同様の構成を採用することができる。蛍光体層の数・種類は、画素数、画面の大きさ等に応じて適宜決定すればよい。1画素に対応する電子放射素子の数は、所望の発光輝度等により異なるが、通常は1〜50個程度とすればよい。
特に、カラー画像を表示する場合には、各電子放射素子にそれぞれに対応するように、RGBの3原色を一組とする蛍光体層(1画素)の各々をアノード電極上に配置すればよい。3原色の配置方法は、縦ストライプ状、横ストライプ等の各種の配置方法を適用できる。カラー画像の場合、1画素に対応する電子放射素子の数は、通常は1〜100個程度とすることが好ましい。
蛍光体層を含むアノード部と各電子放射素子のレイアウトは、各電子放射素子からの電子放射量によって、個々の蛍光体層発光量を個別に制御できるように設置すればよい。特に、アノード部の蛍光体層の一部又は全部と、電子放射素子の電子放射層とが、両層が実質的に平行状態を保ちながら対面するような構成とすることが好ましい。
本発明の画像描画装置の駆動方法は、基本的には公知の電界放出ディスプレイ等と同様にすればよい。例えば、電子放出素子の電極層と制御電極層に駆動ドライバを取り付け、両層に所定の電圧を印加すればよい。
<実施の形態10>
図10は、図8等に示した電子放射素子を二次元的に複数個(この図では、3行×3列=9個)配置するとともに、放出された電子により発光する蛍光体層を備えた画像描画装置の断面斜視図である。
この構成により画像を描画する方法は、通常マトリックス駆動と呼ばれる方式である。基材101上に帯状に形成された下部電極層102を有する。また、放射電流量を制御する制御電極層104は、複数(図10では3本)の帯状として形成されている。これらの制御電極層104は、下部電極層102に接触せず、かつ、下部電極層102と直交するように配置される。
各下部電極層及び各制御電極層のそれぞれに駆動用ドライバ108、109が接続されている。
下部電極層上には電子放射層103が形成されている。電子放射層103は、下部電極層と制御電極層とが交差する部分の箇所になるように配置されることが好ましい。
下部電極層102及び制御電極層104の上方には、本発明蛍光体発光素子のアノード部と同様の構成をもつアノード部が設けられている。アノード部は、電子放射層に近いほうから、蛍光体層105、アノード電極層106及び前面基材107が順に積層された構成をなす。
図10では、蛍光体層105が1画素を構成する。したがって、それに対応する電子放射層109が合計9つ存在することになる。その他にも、蛍光体層を複数の画素から構成されていてもよい。
図10の画像描写装置を駆動する場合には、それぞれの駆動ドライバ108、109に対して同期信号にあわせて画像データを入力すれば、所望の電子放射面(各電極列が直交した個所)より所望の電子放射量で電子を放射させることが可能となる。これにより、個々の電子放射素子において、アノード電極106に印加された電圧によって、放出された電子を真空内で加速し、蛍光体層105に電子が衝突することによって、任意形状/任意輝度の画像を描画することができる。
本発明の電子放射素子によれば、電子放射層に特定の電子放射材料を適用し、かつ、電子放射層に接触しないように制御電極層が配置されているので、優れた電界集中効果等を達成することができる。
また、上記電子放射材料は、特に本発明の製造方法によりカーボンナノチューブ等に比べて比較的容易に製造できる。このため、カーボンナノチューブを用いた電子放射素子よりも安価に優れた電子放射素子を提供することが可能になる。
このような特長をもつ本発明の電子放射素子は、工業的規模での生産に適したものである。
本発明の蛍光体発光素子および画像描画装置は、本発明材料および本発明の電子放射素子を利用するものである。このため、従来品と同程度又はそれ以上の性能を発揮できる製品をより安く大量に供給することが可能になる。
本発明の電子放射素子は、従来品と同じ又はそれ以上の性能を有するので、これを利用した各種の電子デバイスに有効に利用することができる。例えば、蛍光体発光素子、画像描画装置(特に電界放出ディスプレイ)等に好適に用いることができる。画像描画装置にあっては、大画面のディスプレイの製造にも有利である。
本発明にかかる電子放射材料、電子放射素子等の具体的な実施例を以下に説明する。ただし、本発明の範囲は、これら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
無機酸化物としてシリカを用い、湿潤ゲルを調製した。テトラメトキシシラン、エタノール及びアンモニア水溶液(0.1規定)をそれぞれモル比で1:3:4になるように混合して原料液を調製した。これを所定形状の型に入れ、ゲル化することにより、固形状のシリカ湿潤ゲルを得た。
続いて、シリカ湿潤ゲル中の網目状骨格表面にカーボン前駆体を被覆することによりカーボン前駆体含有湿潤ゲルを形成した。カーボン前駆体としては、水を溶媒として用いてレゾルシノール(0.3mol/L)、ホルムアルデヒド及び炭酸ナトリウムをそれぞれモル比で1:2:0.01になるように調製した原料水溶液を用いた。これに前記シリカ湿潤ゲルを浸漬することにより、ゲル内部に含浸させた。室温および約80℃でそれぞれ2日間放置した。これにより、ポリフェノール系高分子がシリカ湿潤ゲルの骨格表面に被覆されたカーボン前駆体含有湿潤ゲルを得た。
続いて、前記カーボン前駆体含有湿潤ゲルを乾燥した。乾燥処理は、湿潤ゲル内部に含まれる溶媒をアセトンに置換してから超臨界乾燥にて行った。内部の溶媒を除去することにより、カーボン前駆体含有乾燥ゲルを得た。この超臨界乾燥の条件は、二酸化炭素を乾燥媒体として用い、圧力12MPa、温度50℃の条件で4時間経過後に、圧力を徐々に開放し、大気圧にしてから降温して乾燥ゲルを得た。このとき、乾燥前後の大きさはほぼ同じであり、ほとんど収縮していなかった。みかけ密度が約220kg/mであり、空孔率は約90%であった。また、BET法で測定した比表面積は約800m/gという高い値であった。
最後に、カーボン前駆体含有乾燥ゲルを炭化してカーボン含有多孔体からなる電子放射材料を得た。この乾燥ゲルを窒素雰囲気中、100℃で1時間放置、200℃で1時間放置、300℃で1時間放置、400℃で1時間放置、500℃で1時間放置してから逆に400℃1時間、300℃1時間、200℃1時間、100℃1時間で降温した後に室温まで徐冷した。このとき、炭化処理前後の乾燥ゲルの寸法は、長さ方向で約90%になっていた。みかけ密度は約300kg/mであり、空孔率は約80%であった。BET法で測定した比表面積は約450m/gという高い値であった。
以上のようにして作製した電子放射材料(サイズ:縦約2mm×横約2mm×高さ約1mm)を金属電極上に導電性ペースト(製品名:グラファイトペースト)を介して接着し、真空槽内に配置した。さらに、電子放射材料の上方約1mmの位置にアノード電極を配置した。次いで、金属電極−制御電極間に電圧を印加して放射電流量を測定した。その結果、多孔質化していない同様の炭素材料(具体的には金属基板上に同様の工程(カーボン前駆体塗布工程及び焼成工程)により作製した炭素材料。以下同じ。)をエミッタとして用いた従来構造と比較して1桁以上放射電流が増加し、3kV程度のアノード電圧に対して40mA/cmの放射電流密度が得られた。
(実施例2)
実施例1と同様の条件でシリカ湿潤ゲルを調製し、それを実施例1と同様の乾燥処理を施すことにより乾燥ゲルを得た。このシリカ乾燥ゲルを石英管状炉の中に入れ、約800℃でプロピレンを流通させ、気相で多孔質骨格表面にカーボン材料の付与を行うことにより、カーボン含有多孔体を得た。得られたカーボン含有多孔体を観察した結果、シリカ乾燥ゲルの骨格内部までカーボン被膜が形成されていた。このカーボン形成後での乾燥ゲルの大きさは、長さ方向で約85%になっており、収縮が比較的抑制されていることが確認された。また、みかけ密度は約350kg/mであり、比表面積は約450m/gという高い値であった。
以上のようにして作製した電子放射材料を実施例1と同様にして金属電極上に導電性ペーストを介して接着し、真空槽内に配置した。さらに、電子放射材料の上方約1mmの空間にアノード電極を配置し、金属電極−制御電極間に電圧を印加して放射電流量を測定した。その結果、多孔質化していない同様の炭素材料をエミッタとして用いた従来構造と比較して1桁以上放射電流が増加し、3kV程度のアノード電圧に対して40mA/cmの放射電流密度が得られた。
(実施例3)
実施例1と同じ条件でカーボン前駆体含有湿潤ゲルを調製した。得られた湿潤ゲルをフッ化水素酸に室温で30分間浸漬することにより、カーボン前駆体のみからなる湿潤ゲルを得た。このカーボン前駆体湿潤ゲルを実施例1と同じ条件で乾燥処理することによって、カーボン前駆体乾燥ゲルを得た。この乾燥処理前後での大きさはほぼ同じであった。
さらに、カーボン前駆体乾燥ゲルを実施例1と同じ条件で炭化処理することにより、カーボン多孔体からなる電子放射材料を得た。炭化処理後の大きさは長さで約70%に収縮していたが、そのみかけ密度は約100kg/mと小さく、比表面積も約800m/gという高い値が得られた。電子顕微鏡観察により、このカーボン多孔体は中空構造であることが確認された。
以上のようにして作製した電子放射材料を実施例1と同様にして金属電極上に導電性ペーストを介して接着し、真空槽内に配置した。さらに電子放射材料の上方約1mmの空間にアノード電極を配置し、金属電極−制御電極間に電圧を印加して放射電流量を測定した。その結果、多孔質化していない同様の炭素材料をエミッタとして用いた従来構造と比較して1桁以上放射電流が増加し、3kV程度のアノード電圧に対して60mA/cmの放射電流密度が得られた。
(実施例4)
実施例2で作製したカーボン含有多孔体をフッ化水素酸に室温で30分間浸漬し、その骨格部分を除去することによって、カーボン多孔体を得た。このカーボン多孔体のみかけ密度は約100kg/mと小さく、その比表面積は900m/kgという高い値であった。電子顕微鏡観察により、このカーボン多孔体は中空構造であることが確認された。それによって高比表面積が達成されたものと考えられる。
以上のようにして作製した電子放射材料を実施例1と同様にして金属電極上に導電性ペーストを介して接着し、真空槽内に配置した。さらに電子放射材料の上方約1mmの空間にアノード電極を配置し、金属電極−制御電極間に電圧を印加して放射電流量を測定した。その結果、多孔質化していない同様条件での炭素材料をエミッタとして用いた従来構造と比較して1桁以上放射電流が増加し、3kV程度のアノード電圧に対して70mA/cmの放射電流密度が得られた。
(実施例5)
実施例1で作製したシリカ湿潤ゲルを、ポリアクリロニトリルの5重量%アセトニトリル溶液に浸漬すことにより、カーボン前駆体をゲル骨格に被覆した湿潤ゲルを得た。これを実施例1と同様の方法で乾燥処理を実施した。
得られたカーボン前駆体含有乾燥ゲルを200℃で2時間処理、400℃で2時間処理した後に、600℃まで昇温してから100℃まで降温してカーボン含有多孔体からなる電子放射材料を得た。この処理後のゲルの大きさは、長さで約85%になっており、収縮が抑制されていることが確認された。みかけ密度は約350kg/mであり、比表面積は約450m/gという高い値であった。
以上のようにして作製した電子放射材料を実施例1と同様にして金属電極上に導電性ペーストを介して接着し、真空槽内に配置した。さらに電子放射材料の上方約1mmの空間にアノード電極を配置し、金属電極−制御電極間に電圧を印加して放射電流量を測定した。その結果、多孔質化していない同様の炭素材料をエミッタとして用いた従来構造と比較して1桁以上放射電流が増加し、3kV程度のアノード電圧に対して40mA/cmの放射電流密度が得られた。
(実施例6)
実施例5で作製したカーボン含有多孔体をpH10以上に調整した水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した。その後、アセトンに溶媒置換してから実施例1と同様にして乾燥処理を実施することによりカーボン多孔体からなる電子放射材料を得た。処理後の長さ方向の大きさは約90%になっていた。みかけ密度は約120kg/mと小さく、その比表面積は800m/kgという高い値が得られた。
以上のようにして作製した電子放射材料を実施例1と同様にして金属電極上に導電性ペーストを介して接着し、真空槽内に配置した。さらに電子放射材料の上方約1mmの空間にアノード電極を配置し、金属電極−制御電極間に電圧を印加して放射電流量を測定した。その結果、多孔質化していない同様の炭素材料をエミッタとして用いた従来構造と比較して1桁以上放射電流が増加し、3kV程度のアノード電圧に対して約50mA/cmの放射電流密度が得られた。
(実施例7)
無水ピロメリット酸とオキシジアニリンから合成されたポリアミド酸をカーボン前駆体として用いた。このポリアミド酸の濃度が1重量%となるようにN−メチルピロリドンに溶解して溶液を調製した。この溶液に実施例1で作製したシリカ湿潤ゲルを浸漬することにより、ポリアミド酸を含浸した湿潤ゲルを得た。得られたポリアミド酸含有湿潤ゲルを、以下の2つの方法でイミド化/乾燥ゲル化した。
第1の方法は、ポリアミド酸含有湿潤ゲルを無水酢酸のピリジン溶液に浸漬することにより、化学イミド化を行った。このポリイミド含有湿潤ゲルを乾燥することによりポリイミド含有乾燥ゲルAを得た。
第2の方法は、ポリアミド酸含有湿潤ゲルを乾燥して乾燥ゲルとした後、この乾燥ゲルを窒素雰囲気下300℃で加熱することによりイミド化を行うことにより、ポリイミド含有乾燥ゲルBを得た。
得られたポリイミド含有乾燥ゲルAおよびBを窒素雰囲気下600℃で炭化することにより、炭化された多孔体をそれぞれ得た。これらの多孔体をさらに1200℃で加熱し、その後2000℃以上でシリカの骨格を蒸発させるとともに黒鉛化を促進させることによって、カーボン多孔体からなる電子放射材料をそれぞれ得た。このように、上記乾燥ゲルAおよびBのどちらも同じようにカーボン多孔体を得ることができた。得られたカーボン被膜は、上記実施例で形成されカーボン被膜と比べ、配向性の高いグラファイト構造を有していた。
以上のようにして作製された電子放射材料を実施例1と同様にして金属電極上に導電性ペーストを介して接着し、真空槽内に配置した。さらに電子放射材料の上方約1mmの空間にアノード電極を配置し、金属電極−制御電極間に電圧を印加して放射電流量を測定した。その結果、多孔質化していない同様の炭素材料をエミッタとして用いた従来構造と比較して1桁以上放射電流が増加し、3kV程度のアノード電圧に対して約90mA/cmの放射電流密度が得られた。
(実施例8)
ケイ酸ソーダの電気透析を行い、pH9〜10のケイ酸水溶液(水溶液中のシリカ成分濃度14重量%)を調製した。そのケイ酸水溶液のpHを5.5に調整した後に、容器に充填した。その後、室温にてゲル化することにより、固体化されたシリカ湿潤ゲルを得た。続いて、このシリカ湿潤ゲルをジメチルジメトキシシランの5重量%イソプロピルアルコール溶液中で疎水化処理をした後に、通常乾燥法である減圧乾燥を行うことにより、シリカ乾燥ゲルを得た。乾燥条件は、圧力0.05MPa・温度50℃で3時間経過後に、圧力を大気圧してから降温した。得られたシリカの乾燥ゲルは、みかけ密度が約200kg/mであり、空孔率は約92%であった。BET法で測定した比表面積の値は約600m/gであった。なお、その平均細孔直径は約15nmであった。
次に、得られたシリカ乾燥ゲルの網目状骨格表面にカーボン材料を形成した。シリカ乾燥ゲルを真空成膜装置に設置し、周波数13.56MHz・電力200Wの高周波によってベンゼンガスを放電プラズマ形成し、200℃に温度調整したシリカ乾燥ゲル中に炭素膜を形成してカーボン含有多孔体からなる電子放射材料を得た。このカーボン含有多孔体のみかけ密度は、約220kg/mであり、収縮が少ないことがわかる。また、BET法による比表面積は約600m/gという高い値であった。
以上のようにして作製した電子放射材料を実施例1と同様にして金属電極上に導電性ペーストを介して接着し、真空槽内に配置した。さらに電子放射材料の上方約1mmの空間にアノード電極を配置し、金属電極−制御電極間に電圧を印加して放射電流量を測定した。その結果、多孔質化していない同様の炭素材料をエミッタとして用いた従来構造と比較して1桁以上放射電流が増加し、3kV程度のアノード電圧に対して約40mA/cmの放射電流密度が得られた。
(実施例9)
実施例8と同様の方法でシリカ乾燥ゲルを調製した後、その網目状骨格表面に他のカーボン材料を付与した。シリカ乾燥ゲルを真空成膜装置に設置し、周波数2.45GHz・電力300Wのマイクロ波によって一酸化炭素と水素の混合ガスのプラズマを形成し、約800℃に試料温度でシリカ乾燥ゲル中にダイヤモンド膜を形成することにより、カーボン含有多孔体からなる電子放射材料を得た。このカーボン含有多孔体のみかけ密度は約220kg/mであり、収縮が少ないことを確認した。また、BET法による比表面積は約600m/gという高い値を示した。
以上のようにして作製した電子放射材料を実施例1と同様にして金属電極上に導電性ペーストを介して接着し、真空槽内に配置した。さらに電子放射材料の上方約1mmの空間にアノード電極を配置し、金属電極−制御電極間に電圧を印加して放射電流量を測定した。その結果、多孔質化していない同様の炭素材料をエミッタとして用いた従来構造と比較して1桁以上放射電流が増加し、3kV程度のアノード電圧に対して約40mA/cmの放射電流密度が得られた。
(実施例10)
各実施例では電子放射成分としてカーボン材料を用いたが、電子を放出し易い材料、例えば窒化ホウ素、金属化合物(酸化バリウム等)等で網目状骨格を被覆して作製した電子放射材料の場合も同様に、従来構造よりも高い放射電流が得られることを確認した。
各実施例では絶縁性多孔質骨格構造体としてシリカ多孔体を用いたが、他の多孔体材料、例えばアルミナを網目状骨格とした電子放射材料の場合も同様に、従来構造よりも高い放射電流が得られることを確認した。
なお、各実施例では電子放射特性として電界印加による特性について記載したが、各実施例で得られた電子放射材料を加熱して熱電子放射特性を評価した結果、従来構造よりも低い温度で熱電子放射現象が起こることを確認した。
(実施例11)
図8に示した第1の電子放射素子80の作製方法について説明する。
石英からなる基材81の一表面上に電極層82として金属膜を形成した。このように電極材料として特に限定はされないが、金属膜は厚さ2μmのタングステン膜とした。
次に、多孔質構造からなる電子放射層83を形成した。本実施例においてはゾル−ゲル法を用いて厚さ約1μmの多孔質シリカ層を形成した。具体的にはシリカ原料を含んだ溶液として、テトラメトキシシランとエタノールとアンモニア水溶液(0.1規定)をモル比で1:3:4の割合で調製し、撹拌処理した。その後、適度な粘度となったところで、このゲル原料液を試料上に厚さ1μmとなるようにスピンコート塗布した。なお、本実施例では厚さが約1μmの多孔質シリカ層を形成したが、その限りではない。素子構造にも依存するが、概ね0.1μm以上10μm以下が好ましい範囲である。
次に、このシリカ湿潤ゲルを形成した試料をエタノールで洗浄(溶媒置換)した後に、二酸化炭素による超臨界乾燥を行うことにより、乾燥ゲルからなる多孔質シリカ層を得た。超臨界乾燥条件は、圧力12MPa、温度50℃の条件の下で4時間経過後、圧力を徐々に開放し大気圧にしてから降温した。なお、得られた乾燥ゲルからなる多孔質シリカ層の空孔率は約92%であった。BET法により平均空孔直径を見積もったところ、約20nmであった。乾燥された試料は、最後に窒素雰囲気中で400℃のアニール処理を施すことにより、多孔質層への吸着物質を除去した。
その後、電子放射成分として、上記の方法でポリイミドからなるカーボン前駆体を形成し、約800℃の焼成処理によって、カーボン材料からなる電子放射層を形成した。
さらに、二酸化ケイ素からなる絶縁体層85及び制御電極84となる上部電極を形成し、一般的なリソグラフィー工程を用いて図8のような構造の電子放射素子80を作製した。
以上のようにして作製した電子放射素子80を真空槽内に配置し、電極層−制御電極間に制御電極側を正とした電圧を印加し、放射電流量を測定した。その結果、従来の10倍以上である約80mA/cmの放射電流密度が得られた。
(実施例12)
続いて、実施例1で作製した電子放射材料を粉砕処理し、粉末化したものをバインダー(イソプロピルメタアクリレート)に混合することによって、電子放射材料含有ペーストを作製した。このペーストをインクジェットの方法で電極層上に塗布し、バインダーを除去する焼成工程をへて、図8に示したような電子放射素子80を作製した。
以上のようにして作製した電子放射素子80を真空槽内に配置し、電極層−制御電極間に制御電極側を正とした電圧を印加し、放射電流量を測定した。その結果、従来の10倍以上である約60mA/cmの放射電流密度が得られた。
(実施例13)
前記実施例では電子放射素子について説明したが、それらに対向して蛍光体層を有するアノード部を配置することにより、蛍光体発光量を制御可能な蛍光体発光素子を作製することができる。
図9は本実施形態の蛍光体発光素子の概略断面図を示したものである。本蛍光体発光素子は基本的な構成要素として、実施例に記した電子放射素部90とアノード部100とそれらを内包する真空容器911とからなる。
また、図9の素子構造では、電子放射素部90及びアノード部100が真空容器内に完全に含まれている。
本実施例では、アノード部100はガラスからなる前面基材99にアノード電極98として機能する透明導電膜(ITO)を積層し、さらに蛍光体層97としてZnS系蛍光体を塗布により形成した。
以上のようにして作製した蛍光体発光装置を真空槽内に設置した。下部電極と制御電極の間に制御電極側を正とした電圧を印加して電子放射素子91から真空領域に電子を放射させるとともに、アノード電極98に3kVの加速電圧を印加し、放射電流及び蛍光体発光輝度を測定した。その結果、放射電流密度として50mA/cmが観測され、800cd/m以上の発光輝度が得られた。
(実施例14)
実施例では、単独の電子放射素子について説明したが、それらを二次元的に複数個配置し、個々の蛍光体発光量を制御することで画像や文字を表示できる画像描画装置に適用できる。
図10は、図8等に示した電子放射素子を二次元的に複数個(この図では、3行×3列=9個)配置した画像描画装置の断面斜視図である。この構成を用いて画像を描画する方法は、通常マトリックス駆動と呼ばれる方式である。すなわち、基材101上に帯状に形成された下部電極層102と、同様に帯状の放射電流量を制御する制御電極層104となる上部電極とを直行して配置するとともに、それぞれに駆動用ドライバ108、109が接続されている。各駆動ドライバに対して同期信号にあわせて画像データを入力すれば、所望の電子放射面(各電極列が直交した個所)より所望の電子放射量で電子を放射させることができる。すなわち、個々の電子放射素子において、放射電子をアノード電極106に印加された電圧によって真空内で加速し、蛍光体層105に照射することにより、任意形状/任意輝度の画像を描画することができる。

Claims (29)

  1. (a)基材、(b)前記基材上に設けられた下部電極層、(c)前記下部電極層上に設けられた電子放射層および(d)前記電子放射層に接触しないように配置された制御電極層を備えた電子放射素子であって、
    前記電子放射層が、電界中で電子を放射する電子放射材料を含み、
    前記電子放射材料は、(1)網目構造骨格を有する多孔体であって、(2)網目構造骨格が内部と表面部から構成され、(3)表面部が、電子放射成分を含み、(4)内部が、i)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種、ii)空間又はiii)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種ならびに空間で占められている、電子放射素子。
  2. 前記電子放射層の表面に、前記電子放射材料が露出している、請求項1記載の電子放射素子。
  3. 前記電子放射層が、電界中で電子を放射する電子放射材料からなる、請求項2記載の電子放射素子。
  4. 前記電子放射層が導電性を有している、請求項1記載の電子放射素子。
  5. 前記電子放射層が、粉末状電子放射材料を含むペーストの塗膜を焼成して得られるものである請求項1記載の電子放射素子。
  6. 内部が実質的にすべて無機酸化物で占められている請求項1記載の電子放射素子。
  7. 内部が実質的にすべて空間で占められている請求項1記載の電子放射素子。
  8. 電子放射成分が、炭素材料である請求項1記載の電子放射素子。
  9. 炭素材料が、π結合を有する請求項8記載の電子放射素子。
  10. 炭素材料が、グラファイトを主成分とする請求項8記載の電子放射素子。
  11. 蛍光体層を有するアノード部及び電子放射素子を含み、前記電子放射素子から放出された電子が前記蛍光体層を発光させるように前記アノード部及び電子放射素子が配置されている蛍光体発光素子であって、前記電子放射素子が請求項1記載の素子である蛍光体発光素子。
  12. 蛍光体層を有するアノード部及び二次元的に配列された複数の電子放射素子を含み、前記電子放射素子から放出された電子が蛍光体層を発光させるように前記アノード部及び電子放射素子が配置されている画像描画装置であって、前記電子放射素子が請求項1記載の素子である画像描画装置。
  13. (1)網目構造骨格を有する多孔体であって、(2)網目構造骨格が内部と表面部から構成され、(3)表面部が、電子放射成分を含み、(4)内部が、i)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種、ii)空間又はiii)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種ならびに空間で占められている電子放射材料の製造方法であって、
    網目構造骨格を有する無機酸化物のゲルにカーボン材料を付与してカーボン含有材料からなる電子放射材料を得る工程Aを含む製造方法。
  14. カーボン含有材料から無機酸化物の一部又は全部を除去する工程をさらに含む請求項13記載の製造方法。
  15. 無機酸化物のゲルとして乾燥ゲルを用い、かつ、工程Aとして、当該乾燥ゲルにカーボン材料を付与することにより、カーボン含有材料として多孔体を得る工程を実施する請求項13記載の製造方法。
  16. カーボン前駆体が、有機高分子を含む請求項13に記載の製造方法。
  17. カーボン前駆体が、有機高分子を含む請求項14に記載の製造方法。
  18. 有機高分子が、炭素−炭素不飽和結合を有する請求項16記載の製造方法。
  19. 有機高分子が、芳香環を有する請求項16記載の製造方法。
  20. 有機高分子が、フェノール樹脂、ポリイミド及びポリアクリロニトリルの少なくとも1種である請求項16記載の製造方法。
  21. (1)網目構造骨格を有する多孔体であって、(2)網目構造骨格が内部と表面部から構成され、(3)表面部が、電子放射成分を含み、(4)内部が、i)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種、ii)空間又はiii)絶縁性材料及び半絶縁性材料の少なくとも1種ならびに空間で占められている電子放射材料の製造方法であって、
    網目構造骨格を有する無機酸化物のゲルにカーボン前駆体を付与し、得られたカーボン前駆体含有ゲルを炭化処理することによりカーボン含有材料からなる電子放射材料を得る工程Bを含む製造方法。
  22. カーボン前駆体含有ゲルから無機酸化物の一部又は全部を除去する工程をさらに含む請求項21記載の製造方法。
  23. 無機酸化物のゲルとして湿潤ゲルを用い、かつ、工程Bとして、当該湿潤ゲルにカーボン前駆体を付与し、得られたカーボン前駆体含有ゲルを乾燥してカーボン前駆体含有乾燥ゲルを得た後、当該乾燥ゲルを炭化処理することにより、カーボン含有材料として多孔体を得る工程を実施する請求項21記載の製造方法。
  24. 無機酸化物のゲルとして湿潤ゲルを用い、かつ、工程Bとして、当該湿潤ゲルにカーボン前駆体を付与し、得られたカーボン前駆体含有ゲルから無機酸化物の一部又は全部を除去した後、得られた材料を炭化処理することにより、カーボン含有材料として多孔体を得る工程を実施する請求項22記載の製造方法。
  25. カーボン前駆体が、有機高分子を含む請求項21に記載の製造方法。
  26. カーボン前駆体が、有機高分子を含む請求項22に記載の製造方法。
  27. 有機高分子が、炭素−炭素不飽和結合を有する請求項25記載の製造方法。
  28. 有機高分子が、芳香環を有する請求項25記載の製造方法。
  29. 有機高分子が、フェノール樹脂、ポリイミド及びポリアクリロニトリルの少なくとも1種である請求項25記載の製造方法。
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