JP2004241300A - 電界電子放出体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】多くの炭素網端を露出させることができて、より多くの放流電流を得ることができ、また、加工性や生産性にすぐれる電界電子放出体を提供する。
【解決手段】本発明に係る電界電子放出体は、底の無いカップ形状をなす炭素網層が多数積層し、該炭素網層の端面が露出した、気相成長法による多数の炭素繊維が、炭化された高分子樹脂の炭素によって結着されていることを特徴とする。
ヘリンボン構造の炭素繊維は各炭素網層の環状の端面が炭素繊維の外表面に露出し、この露出端がすべて電子の放出端として機能するから、大きな放出電流をえることが出来る。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明に係る電界電子放出体は、底の無いカップ形状をなす炭素網層が多数積層し、該炭素網層の端面が露出した、気相成長法による多数の炭素繊維が、炭化された高分子樹脂の炭素によって結着されていることを特徴とする。
ヘリンボン構造の炭素繊維は各炭素網層の環状の端面が炭素繊維の外表面に露出し、この露出端がすべて電子の放出端として機能するから、大きな放出電流をえることが出来る。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は電界電子放出体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カーボンナノチューブ(CNT)からの電界放出(field emission)が検討され、ディスプレー用材料や電子放出材料としての有用性に注目されている。
この電界放出を実現するためには、強電界を得る必要がある。そのため放出源材料として先端を鋭く尖らせる必要がある。この点、CNTは、アスペクト比が大きく、鋭い先端を持ち、化学的に安定で機械的にも強靭であって、かつ高温での安定性に優れていて、電界放出の放出源材料として有用である。
従来検討されているCNTには、▲1▼ヘリウムガス中アーク放電などで製造したMWCNT(マルチウオールCNT)、▲2▼水素ガス中アーク放電などで製造したSWCNT(シングルウオールCNT)を溶媒に浸漬し、乾燥させて束状にしたもの、▲3▼気相成長法による炭素繊維などがある。
これらCNTは、多数本のCNTを、基板上にスクリーン印刷法などによって向きを揃えて固定されることによって、発光デバイスにおける、大きな面積を有する冷陰極に形成される。
また、印刷された膜は後加工で基板との剥離の問題で切断切削加工に向いていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、▲1▼と▲2▼のCNTは、工業的な大量生産に不向きで、高価となる不具合がある。
この点、気相成長法による炭素繊維は比較的安価に大量生産できる利点がある。
一般的に気相成長法による炭素繊維は、炭素網層が、繊維の軸線を中心に同芯状に成長したものであり、繊維の両端でのみ開口している。この開口端が電子の放出端になるが、多くの放出端を得ようとすれば、開口端を増やさねばならず、電界放出の強電界を得る上で限界がある。また スクリーン印刷では任意の寸法形状に後加工が難しい。さらに、印刷された膜は後加工の切断切削加工等の際、基板と剥離しやすいという課題がある。
【0004】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、多くの炭素網端を露出させることができて、より多くの放流電流を得ることができ、また、加工性や生産性にすぐれる電界電子放出体およびその製造方法を提供するにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電界電子放出体は、底の無いカップ形状をなす炭素網層が多数積層し、該炭素網層の端面が露出した、気相成長法による多数の炭素繊維(以下ヘリンボン構造の炭素繊維ということがある)が、炭化された高分子樹脂の炭素によって結着されていることを特徴とする。
ヘリンボン構造の炭素繊維は各炭素網層の環状の端面が炭素繊維の外表面に露出し、この露出端がすべて電子の放出端として機能するから、大きな放出電流をえることが出来る。
また、上記炭化した炭素がアモルファス状をなすことを特徴とする。
前記ヘリンボン構造の炭素繊維以外に、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、黒鉛などの炭素成分を混入させてもよい。
【0006】
また、前記ヘリンボン構造の炭素繊維は節のない中空状をなすことを特徴とする。
また、前記ヘリンボン構造の炭素繊維が、前記底の無いカップ形状の炭素繊維層が数個〜数百個積層した炭素繊維であることを特徴とする。
また、前記ヘリンボン構造の炭素網層の露出端面が不揃いで、原子の大きさレベルでの微細な凹凸を呈していることを特徴とする。
これにより、より電界が炭素網層の露出端面に集中しやすく、必要とする強電界が得られる。
【0007】
また、本発明に係る電界電子放出体の製造方法は、底の無いカップ形状をなす炭素網層が多数積層した、気相成長法による多数の炭素繊維(ヘリンボン構造の炭素繊維)と、高分子樹脂とを混合する工程と、該混合材料を所要形状に成形する工程と、成形した前記混合材料を加熱して前記高分子樹脂に分子間架橋を生じさせる加熱工程と、該加熱工程を経た前記混合材料を不活性ガス雰囲気中で焼成して、前記高分子樹脂を炭化させる焼成工程を含むことを特徴とする。
【0008】
すなわち、賦形性を有し焼成後高い炭素残査収率を示す組成物(高分子樹脂)と、ヘリンボン構造の炭素繊維一種類、またはヘリンボン構造の炭素繊維とカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、黒鉛などの炭素粉末(炭素成分)の一種または二種以上をバインダーと共に混合し、
該混合物を(目的物の)寸法および形状に合わせて、また電界放出特性や電流密度などを制御する目的で所望の形状(細線状、板状および円盤状等)に賦形し、該賦形物を焼成することによって製造される。
【0009】
焼成工程は、高分子樹脂を炭化するために不活性ガス雰囲気中で行う。
なお、この焼成工程前に、前記混合材料を加熱して高分子樹脂に分子間架橋を生じさせる加熱工程を行うと好適である。これにより、高分子樹脂が炭化された際、炭素繊維、炭素成分を好適に結着する。
また、この加熱工程の間に、ヘリンボン構造の炭素繊維の表面を覆うアモルファス層が酸化し、消失して底のないカップ状をなす炭素網層の端面が露出する。
また、焼成体の表面をポリッシングするようにしてもよい。これによっても炭素網層の端面を露出させることができる。
その他、必要に応じて焼成体に切断、切削加工等の機械加工を施して、例えばチップ状に形成するようにしてもよい。その際、ヘリンボン構造の炭素繊維が炭素によって結着された構造をなしているので、剥離等の不具合が生じることはない。
【0010】
ヘリンボン構造の炭素繊維以外に混入させる炭素粉末(炭素成分)としては、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、黒鉛、カーボンブラック、コークス粉等が挙げられるが、使用するヘリンボン構造の炭素繊維と炭素粉末種の量は、目的とする電界放出特性により適宜選択され、単独でも二種以上の混合体でも使用することができる。特に形状制御の簡易さと電界放出特性からカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、黒鉛を使用することが好ましく、黒鉛であれば賦形性及び構造制御を容易とするために、平均粒径100μm以下の高配向性熱分解黒鉛(HOPG)、キッシュ黒鉛、天然黒鉛、人造黒鉛より選ばれることが望ましい。
【0011】
またさらに電子放出性を向上させる為に用いるカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーは、グラファイト六角網平面を筒状に丸めて形成される欠陥の無い「単層」或いはそれらが入れ子状に積層した「多層」のチューブ状物質をいう。直径15nm以下で長さが数十nm〜数μmのものがナノチューブ、直径が15〜100nm程度の領域のものがナノファイバーと呼ばれる。これらは、アーク放電法、気相熱分解法、レーザー昇華法、電解法、流動触媒法等によって生成されるが、最近ではポリマーブレンド法により中空のチューブ状或いは場合によっては無空のファイバーも提案されており、ここでは中空、無空の両方を含めた広義でカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーとして使用する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
まず、本発明に用いるヘリンボン構造の炭素繊維について、その製造方法の一例を含めて説明する。
【0013】
製造方法:
反応器は公知の縦型反応器を用いた。
原料にベンゼンに用い、ほぼ20℃の蒸気圧となる分圧で、水素気流により反応器に、流量0.3l/hでチャンバーに送り込んだ。触媒はフェロセンを用い、185℃で気化させ、ほぼ3×10−7mol/sの濃度でチャンバーに送り込んだ。反応温度は約1100℃、反応時間が約20分で、直径が平均約100nmのヘリンボン構造の炭素繊維が得られた。原料の流量、反応時間を調節する(反応器の大きさによって変更される)ことで、底の無いカップ形状をなす炭素網層が多数積層され、数十nm〜数十μmの範囲に亙って節(ブリッジ)の無い中空の炭素繊維が得られる。
【0014】
図1は、上記気相成長法によって製造したヘリンボン構造の炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真の複写図、図2はその拡大図、図3はその模式図である。
図から明らかなように、傾斜した炭素網層10を覆って、アモルファス状の余剰炭素が堆積した堆積層12が形成されていることがわかる。このような堆積層12の形成は、気相成長法による宿命的なものであって、さけることができない。
堆積層12の厚さは数nm程度であり、表面は不活性である。14は中心孔である。
【0015】
このような堆積層12が形成されている炭素繊維を、400℃以上、好ましくは500℃、一層好ましくは520℃以上530℃以下の温度で、大気中で1〜数時間加熱することにより、堆積層12が酸化されて熱分解し、除去されて炭素網層の端面(六員環端)が一部露出する。
あるいは、上記炭素繊維を塩酸または硫酸中に浸漬し、スターラーで攪拌しつつ80℃程度に加熱しても堆積層12を除去できる。
【0016】
図4は、上記のように約530℃の温度で、大気中1時間熱処理したヘリンボン構造の炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真の複写図、図5はその拡大図、図6はさらにその拡大図、図7はその模式図である。
図5〜図7から明らかなように、上記のように熱処理を行なうことによって、堆積層12の一部が除去され、炭素網層10の端面(炭素六員環端)が露出していることがわかる。なお、残留している堆積層12もほとんど分解されていて、単に付着している程度のものと考えられる。熱処理を数時間行い、また超臨界水での洗浄を併用すれば、堆積層12を100%除去することも可能である。
【0017】
また、図4に明らかなように、炭素繊維10は、底の無いカップ形状をなす炭素網層が多数積層しており、少なくとも数十nm〜数十μmの範囲で中空状をなしている。
中心線に対する炭素網層の傾斜角は20°〜35°位である。
また、図6や図7に明確なように、炭素網層10の端面が露出している外表面および内表面の部位が、端面が不揃いで、nm(ナノメーター)、すなわち原子の大きさレベルでの微細な凹凸16を呈していることがわかる。図2に示すように、堆積層12の除去前は明確でないが、上記の熱処理により堆積層12を除去することによって、凹凸16が現れた。
【0018】
露出している炭素網層10の端面は、他の原子と結びつきやすく、きわめて活性度の高いものである。これは大気中での熱処理により、堆積層12が除去されつつ、露出する炭素網層の端面に、フェノール性水酸基、カルボキシル基、キノン型カルボニル基、ラクトン基などの含酸素官能基が増大し、これら含酸素官能基が親水性、各種物質に対する親和性が高いからと考えられる。
また中空構造をなすこと、および凹凸16によるアンカー効果は大きい。
【0019】
図8は、ヘリンボン構造の炭素繊維(サンプルNO.24PS)を、大気中で、1時間、それぞれ500℃、520℃、530℃、540℃で熱処理した後の、炭素繊維のラマンスペクトルを示す。
上記熱処理を行うことによって、堆積層12が除去されることは図5〜図7で示したが、図8のラマンスペクトルから明らかなように、Dピーク(1360cm−1)およびGピーク(1580cm−1)が存在することから、このものは炭素繊維であるとともに、黒鉛化構造でない炭素繊維であることが示される。すなわち、上記ヘリンボン構造の炭素繊維は、炭素網面のずれた(グラインド)乱層構造(Turbostratic Structure)を有していると考えられる。
この乱層構造炭素繊維では、各炭素六角網面が平行な積層構造は有しているが各六角網面が平面方向にずれた、あるいは回転した積層構造となっていて、結晶学的規則性は有しない。
【0020】
図9は、上記熱処理を行って炭素網層の端面を露出させた、サンプルNO.19PSと、サンプルNO.24PSの炭素繊維のラマンスペクトルを示す。
また図10は、上記炭素網層の端面を露出させた、サンプルNO.19PSと、サンプルNO.24PSの炭素繊維に3000℃の熱処理(通常の黒鉛化処理)を行った後の炭素繊維のラマンスペクトルを示す。
図10に示すように、炭素網層の端面を露出させた炭素繊維に黒鉛化処理を行っても、Dピークが消失しないことがわかる。これは、黒鉛化処理を行っても黒鉛化していないことを示す。
【0021】
図示しないが、X線回折を行っても、112面の回折線が出てこないことからも、上記炭素繊維は黒鉛化していないことが判明した。
黒鉛化処理を行っても黒鉛化しないということは、黒鉛化しやすい堆積層12が除去されているからと考えられる。また、残ったヘリンボン構造の部位が黒鉛化しないということが明らかとなった。
高温雰囲気下でも黒鉛化しないことは、熱的に安定であることを意味する。
【0022】
図11は、上記のように、炭素網層の端面を露出させた炭素繊維の模式図である。
図のように、各炭素網層の環状の端面Pが炭素繊維の外表面に露出し、この露出端が全て電子の放出端として機能するから、大きな放出電流を得ることができる。
しかも、炭素網層の露出端面が不揃いで、原子の大きさレベルでの微細な凹凸を呈していることから、より電界が炭素網層の露出端面に集中しやすく、必要とする強電界が得られるのである。
【0023】
なお、上記炭素繊維を分断して、炭素網層が数個〜数百個積層されたものを電界電子エミッタ炭素繊維(電界電子放出源)として用いてもよい。
上記炭素繊維を分断するには、水あるいは溶媒を適宜量加えて、乳鉢を用いて乳棒により緩やかにすりつぶすことによって行える。
すなわち、上記炭素繊維(堆積層12が形成されたもの、堆積層12が一部あるいは全部除去されたもの、いずれでもよい)を乳鉢に入れ、乳棒により機械的に緩やかに炭素繊維をすりつぶすのである。
乳鉢での処理時間を経験的に制御することによって、単位炭素網層が数個〜数百個積層した炭素繊維体を得ることができる。
【0024】
その際、環状の炭素網層は比較的強度が高く、各炭素網層間は弱いファンデアワールス力によって結合しているにすぎないので、環状炭素網層はつぶれることはなく、特に弱い結合部分の炭素網層間で分離されることとなる。
なお、上記炭素繊維を液体窒素中で乳鉢によりすりつぶすようにすると好適である。液体窒素が蒸発する際、空気中の水分が吸収され、氷となるので、氷とともに炭素繊維を乳棒によりすりつぶすことによって、機械的ストレスを軽減し、上記の単位繊維層間での分離が行える。
【0025】
図12は、堆積層12が付いたままの炭素繊維を分断した状態の炭素繊維体を示す説明図である。堆積層12が付いていても、両端の炭素網層10の環状端面P、Qは、分離により露出する。
なお、中間の炭素網層10の外周に付着している堆積層12も、乳棒による機械的ストレスにより剥離し、該炭素網層の端面も露出することがある。
【0026】
図13は、上記あらかじめ熱処理して炭素網層10の端面を露出させた炭素繊維を分断した炭素繊維体の説明図である。
この場合には、両端の環状端面ばかりでなく、中間の炭素網層10の端面も露出していて、一層活性度の高いものとなる。
工業的には、上記炭素繊維をボールミリングによってグラインディング処理するとよい。
【0027】
以下にボールミリングによって炭素繊維の長さ調整をした実施例を説明する。
ボールミルはアサヒ理化製作所製のものを用いた。
使用ボールは直径5mmのアルミナ製である。上記炭素繊維を1g、アルミナボール200g、蒸留水50ccをセル中に入れ、350rpmの回転速度で処理をし、1、3、5,10、24の各時間経過毎にサンプリングした。
【0028】
図14は、レーザー粒度分布計を用いた計測した、各時間経過毎の炭素繊維の長さ分布を示す。
図14から明らかなように、ミリング時間が経過するにつれて、線長が短くなっていく。特に10時間経過後は、10μm以下に急激に線長が下がる。24時間経過後は、1μm前後に別のピークが発生しており、より細かい線長になっているのが明らかである。1μm前後にピークが現れたのは、長さと直径がほとんど等しくなり、直径分をダブルカウントした結果と考えられる。
【0029】
図15は、上記のようにして、底のないカップ形状をなす炭素網装置が数十個積層した状態に長さ調整された、非常に興味のある炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真の複写図である。節の無い中空状をなしている。また中空部の外表面および内表面側の炭素網層の端面が露出している。この炭素繊維は、長さおよび直径が約60nmで、肉厚の薄い、空洞部の大きなチューブ状をなしている。ボールミリングの条件により種々の長さのものに調整が可能となる。
【0030】
このように、底の無いカップ形状をなす炭素網層が抜け出すようにして、分離され、炭素網層の形状が壊されていないことがわかる。
この点、通常の、同心状をなすカーボンナノチューブをグラインディングすると、チューブが割れ、外表面に軸方向に亀裂が生じたり、ささくれ立ちが生じ、また、いわゆる芯が抜けたような状態が生じたりして、長さ調整が困難であった。
【0031】
上記のように露出した炭素網層10の端面は、他の原子と結びつきやすく、きわめて活性度の高いものである。これは、前記したように、大気中での熱処理により、堆積層12が除去されつつ、露出する炭素網層の端面に、フェノール性水酸基、カルボキシル基、キノン型カルボニル基、ラクトン基などの含酸素官能基が増大し、これら含酸素官能基が親水性、各種物質に対する親和性が高いからと考えられる。
【0032】
また中空構造をなすこと、および凹凸16によるアンカー効果は大きい。
図15に示す炭素繊維は、底の無いカップ形状をなす炭素網層が数十〜数百個積層し、そのチューブ状をなす繊維の表裏の炭素網層の端面(エッジ)が全て電子放出端として機能するから、大きな放出電流を得ることができる。
【0033】
以上、本発明に用いるヘリンボン構造の炭素繊維について説明した。
次に、このヘリンボン構造の炭素繊維を複合材料として用いた電界電子放出体(焼成体)について説明する。
本発明に係る電界電子放出体(焼成体)は、前記のように、底の無いカップ形状をなす炭素網層が多数積層し、該炭素網層の端面が露出した、気相成長法による多数の炭素繊維(ヘリンボン構造の炭素繊維)が、炭化された高分子樹脂の炭素によって結着されていることを特徴とするものである。
【0034】
上記高分子樹脂は、賦形性を有し、焼成後高い炭素残査収率を示す樹脂組成物であることが要求される。そして、焼成によりアモルファス状炭素、好ましくは、高温下での使用時に黒鉛化が進行しない難黒鉛化性炭素となり得る高分子樹脂であることが望ましい。また、炭素化前段階の加熱時に分子間架橋を生じ、三次元化するものが好ましく、これにより、焼成後、高い炭素残渣収率を示すものであり、かつ焼成炭素化時にヘリンボン構造の炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーや黒鉛などの炭素粉末(炭素成分)をパッキングし、結着する能力を有する。
【0035】
このような高分子樹脂は、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂の一種または二種以上の複合体である。
ここで熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、コプナ樹脂等が用いられ、経時熱構造変化の少ないことなどから、好ましくはフラン樹脂及びフェノール樹脂が用いられる。
また、熱可塑性樹脂としては、ポリ塩素化塩化ビニル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリイミド等が用いられ、成形性の容易さ及びフラン樹脂やフェノール樹脂と複合化した際の取り扱いの容易さから好ましくはポリ塩素化塩化ビニル樹脂が用いられる。
【0036】
電子放出源として必要な特性を具備せしめることを目的として、焼成後にアモルファス炭素となる高分子樹脂とヘリンボン構造の炭素繊維に、必要に応じてカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、黒鉛等とを適宜選択した後、可塑剤と共に混合機を用いて充分に分散させる。
次にこの混合体を、射出成形機、圧縮成型機や押出成形機のような通常のプラスチック成形を行う際に使用されている成形機を用い、任意の形状に成形する。該成形体は、エアオーブン中で炭素前駆体化処理及び固化処理を施した後、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で昇温速度を制御しつつ焼成することで炭化を終了させる。これにより、ヘリンボン構造の炭素繊維、アモルファス炭素さらにはカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、黒鉛等からなる電界電子放出体たるカーボン系複合材が得られる。
【0037】
ここで、炭素化は不活性ガス雰囲気もしくは真空下で700〜2800℃程度まで加熱昇温し行われるが、炭素化時の昇温速度が大きいと賦形体の形状が変形したり微細なクラックが生じるなどの欠陥が生じる。したがって、500℃までは毎時50℃以下、それ以降も毎時100℃以下で行うことが適切である。
【0038】
また本発明で、高温耐熱性および安定的な電子放出を得るために不活性雰囲気中または真空中で、電子放出源として使用する温度よりも260℃以上500℃以下の温度だけ高い温度、好ましくは約300℃高い温度まで焼成炭素化処理を施すことで、より安定した電界放出特性と長寿命化を達成することが可能となる。
【0039】
得られた焼成体を物理的研磨処理、あるいは電解研磨処理などにより表面を研磨するのが好ましい。これにより、カップ状をなす炭素網層の端面が確実に露出することとなり、高い電界電子放出特性が得られる。
焼成体は、適宜形状に切断され、絶縁基板に接着してカソード電極として使用できる。
また、その用途は、電界放出型ディスプレー(FED)、冷陰極、電子顕微鏡、蛍光灯、プラスイオンおよびマイナスイオン発生装置、エックス線装置、電子ビーム装置、電子殺菌装置などの電子源、また、電界電子放出型サージ吸収素子、発熱器などとして活用可能である。
【0040】
【実施例】
実施例1
樹脂組成物(高分子樹脂)として、塩素化塩化ビニル樹脂(日本カーバイド社製T−741)60重量部、フラン樹脂(日立化成製VF303)20重量部に、気相成長法によって得られたヘリンボン構造の炭素繊維(ジーエスアイクレオス社製カルベール、平均直径80〜100nm)20重量部と、可塑材(バインダー)としてジアリルフタレートモノマー20重量部を添加して、分散、混合し、押し出し成形で細線状に成形し、その後窒素ガス雰囲気中1000℃で加熱処理し、さらにアルゴンガス雰囲気中1400℃で焼成し、直径が0.5mmのカーボン系複合材を得た。
この焼成体を適宜大きさに切断して、電界電子放出装置のエミッタとして用いたところ、良好な電界放出特性が得られた。
【0041】
実施例2
高分子樹脂として、塩素化塩化ビニル樹脂(日本カーバイド社製T−741)40wt%、フラン樹脂(日立化成社製ヒタフランVF−302)10wt%、これに気相成長法によって得られたヘリンボン構造の炭素繊維(ジーエスアイクレオス社製カルベール、平均直径80〜100nm)50wt%からなる組成物に対し、可塑剤としてジアリルフタレートモノマーを20wt%添加して、ヘンシェル・ミキサーを用いて分散し、ミキシング用二本ロールを用いて十分に混練を繰り返した混合物をスクリュー型押し出し機により50mm角体を押出すとともに1mm厚み毎にスライス切断して板形状体を得た。これを治具に固定して180℃に加熱されたエアー・オーブン中で10時間処理して炭素前駆体化処理を施した。次にこれを窒素ガス中で500℃までを25℃/時の昇温速度で昇温し、その後1800℃までを100℃/時で昇温し、1800℃で3時間保持した後自然冷却して焼成を完了した。
得られた焼成体を炭化珪素粉末を用いた物理的研磨により厚み0.50mmまで研磨し、次いで、0.1N塩酸水溶液中で電解酸化処理を施し、物理研磨時に付着した炭化珪素粉末を除去した。
この炭素エミッタ板に絶縁基板を接着したものをカソード電極板とし、スペーサを介して対抗側に蛍光体および透明電導性膜を塗布したガラス基板からなるアノード電極板を設置し、真空中で電極間に電界を印加したところ、全面で蛍光体の発光現象が確認された。
【0042】
【発明の効果】
本発明に係る電界電子放出体によれば、各炭素網層の環状の端面が炭素繊維の外表面に露出し、この露出端が全て電子の放出端として機能するから、良好な電界電子放出特性が得られる。
しかも、炭素網層の露出端面が不揃いで、原子の大きさレベルでの微細な凹凸を呈していることから、より電界が炭素網層の露出端面に集中しやすく、低電圧での電子放出を得ることができる。
また、炭素繊維が炭化した高分子樹脂の炭素によって結着されているから、炭素繊維の脱落、剥離等を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】気相成長法によって製造したヘリンボン構造の炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真の複写図である。
【図2】図1の拡大図である。
【図3】図2の模式図である。
【図4】約530℃の温度で、大気中1時間熱処理したヘリンボン構造の炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真の複写図である。
【図5】図4の拡大図である。
【図6】図5のさらなる拡大図である。
【図7】図6の模式図である。
【図8】ヘリンボン構造の炭素繊維(サンプルNO.24PS)を、大気中で、1時間、それぞれ500℃、520℃、530℃、540℃で熱処理した後の、炭素繊維のラマンスペクトルを示す。
【図9】上記熱処理を行って炭素網層の端面を露出させた、サンプルNO.19PSと、サンプルNO.24PSの炭素繊維のラマンスペクトルを示す。
【図10】上記炭素網層の端面を露出させた、サンプルNO.19PSと、サンプルNO.24PSの炭素繊維に3000℃の熱処理を行った後の炭素繊維のラマンスペクトルを示す。
【図11】炭素網層の端面を露出させた炭素繊維の模式図である。
【図12】堆積層が付いたままの炭素繊維を分断した状態の炭素繊維体を示す説明図である。
【図13】あらかじめ熱処理して炭素網層の端面を露出させた炭素繊維を分断した炭素繊維体の説明図である。
【図14】ボールミリングでグラインディングした際の、経過時間毎の炭素繊維長の分布を示すグラフである。
【図15】底の無いカップ形状をなす炭素網層が数十個積層された炭素繊維体に分離された状態を示す透過型電子顕微鏡写真の複写図である。
【符号の説明】
10 炭素網層
12 堆積層
14 中心孔
16 凹凸
【産業上の利用分野】
本発明は電界電子放出体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カーボンナノチューブ(CNT)からの電界放出(field emission)が検討され、ディスプレー用材料や電子放出材料としての有用性に注目されている。
この電界放出を実現するためには、強電界を得る必要がある。そのため放出源材料として先端を鋭く尖らせる必要がある。この点、CNTは、アスペクト比が大きく、鋭い先端を持ち、化学的に安定で機械的にも強靭であって、かつ高温での安定性に優れていて、電界放出の放出源材料として有用である。
従来検討されているCNTには、▲1▼ヘリウムガス中アーク放電などで製造したMWCNT(マルチウオールCNT)、▲2▼水素ガス中アーク放電などで製造したSWCNT(シングルウオールCNT)を溶媒に浸漬し、乾燥させて束状にしたもの、▲3▼気相成長法による炭素繊維などがある。
これらCNTは、多数本のCNTを、基板上にスクリーン印刷法などによって向きを揃えて固定されることによって、発光デバイスにおける、大きな面積を有する冷陰極に形成される。
また、印刷された膜は後加工で基板との剥離の問題で切断切削加工に向いていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、▲1▼と▲2▼のCNTは、工業的な大量生産に不向きで、高価となる不具合がある。
この点、気相成長法による炭素繊維は比較的安価に大量生産できる利点がある。
一般的に気相成長法による炭素繊維は、炭素網層が、繊維の軸線を中心に同芯状に成長したものであり、繊維の両端でのみ開口している。この開口端が電子の放出端になるが、多くの放出端を得ようとすれば、開口端を増やさねばならず、電界放出の強電界を得る上で限界がある。また スクリーン印刷では任意の寸法形状に後加工が難しい。さらに、印刷された膜は後加工の切断切削加工等の際、基板と剥離しやすいという課題がある。
【0004】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、多くの炭素網端を露出させることができて、より多くの放流電流を得ることができ、また、加工性や生産性にすぐれる電界電子放出体およびその製造方法を提供するにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電界電子放出体は、底の無いカップ形状をなす炭素網層が多数積層し、該炭素網層の端面が露出した、気相成長法による多数の炭素繊維(以下ヘリンボン構造の炭素繊維ということがある)が、炭化された高分子樹脂の炭素によって結着されていることを特徴とする。
ヘリンボン構造の炭素繊維は各炭素網層の環状の端面が炭素繊維の外表面に露出し、この露出端がすべて電子の放出端として機能するから、大きな放出電流をえることが出来る。
また、上記炭化した炭素がアモルファス状をなすことを特徴とする。
前記ヘリンボン構造の炭素繊維以外に、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、黒鉛などの炭素成分を混入させてもよい。
【0006】
また、前記ヘリンボン構造の炭素繊維は節のない中空状をなすことを特徴とする。
また、前記ヘリンボン構造の炭素繊維が、前記底の無いカップ形状の炭素繊維層が数個〜数百個積層した炭素繊維であることを特徴とする。
また、前記ヘリンボン構造の炭素網層の露出端面が不揃いで、原子の大きさレベルでの微細な凹凸を呈していることを特徴とする。
これにより、より電界が炭素網層の露出端面に集中しやすく、必要とする強電界が得られる。
【0007】
また、本発明に係る電界電子放出体の製造方法は、底の無いカップ形状をなす炭素網層が多数積層した、気相成長法による多数の炭素繊維(ヘリンボン構造の炭素繊維)と、高分子樹脂とを混合する工程と、該混合材料を所要形状に成形する工程と、成形した前記混合材料を加熱して前記高分子樹脂に分子間架橋を生じさせる加熱工程と、該加熱工程を経た前記混合材料を不活性ガス雰囲気中で焼成して、前記高分子樹脂を炭化させる焼成工程を含むことを特徴とする。
【0008】
すなわち、賦形性を有し焼成後高い炭素残査収率を示す組成物(高分子樹脂)と、ヘリンボン構造の炭素繊維一種類、またはヘリンボン構造の炭素繊維とカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、黒鉛などの炭素粉末(炭素成分)の一種または二種以上をバインダーと共に混合し、
該混合物を(目的物の)寸法および形状に合わせて、また電界放出特性や電流密度などを制御する目的で所望の形状(細線状、板状および円盤状等)に賦形し、該賦形物を焼成することによって製造される。
【0009】
焼成工程は、高分子樹脂を炭化するために不活性ガス雰囲気中で行う。
なお、この焼成工程前に、前記混合材料を加熱して高分子樹脂に分子間架橋を生じさせる加熱工程を行うと好適である。これにより、高分子樹脂が炭化された際、炭素繊維、炭素成分を好適に結着する。
また、この加熱工程の間に、ヘリンボン構造の炭素繊維の表面を覆うアモルファス層が酸化し、消失して底のないカップ状をなす炭素網層の端面が露出する。
また、焼成体の表面をポリッシングするようにしてもよい。これによっても炭素網層の端面を露出させることができる。
その他、必要に応じて焼成体に切断、切削加工等の機械加工を施して、例えばチップ状に形成するようにしてもよい。その際、ヘリンボン構造の炭素繊維が炭素によって結着された構造をなしているので、剥離等の不具合が生じることはない。
【0010】
ヘリンボン構造の炭素繊維以外に混入させる炭素粉末(炭素成分)としては、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、黒鉛、カーボンブラック、コークス粉等が挙げられるが、使用するヘリンボン構造の炭素繊維と炭素粉末種の量は、目的とする電界放出特性により適宜選択され、単独でも二種以上の混合体でも使用することができる。特に形状制御の簡易さと電界放出特性からカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、黒鉛を使用することが好ましく、黒鉛であれば賦形性及び構造制御を容易とするために、平均粒径100μm以下の高配向性熱分解黒鉛(HOPG)、キッシュ黒鉛、天然黒鉛、人造黒鉛より選ばれることが望ましい。
【0011】
またさらに電子放出性を向上させる為に用いるカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーは、グラファイト六角網平面を筒状に丸めて形成される欠陥の無い「単層」或いはそれらが入れ子状に積層した「多層」のチューブ状物質をいう。直径15nm以下で長さが数十nm〜数μmのものがナノチューブ、直径が15〜100nm程度の領域のものがナノファイバーと呼ばれる。これらは、アーク放電法、気相熱分解法、レーザー昇華法、電解法、流動触媒法等によって生成されるが、最近ではポリマーブレンド法により中空のチューブ状或いは場合によっては無空のファイバーも提案されており、ここでは中空、無空の両方を含めた広義でカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーとして使用する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
まず、本発明に用いるヘリンボン構造の炭素繊維について、その製造方法の一例を含めて説明する。
【0013】
製造方法:
反応器は公知の縦型反応器を用いた。
原料にベンゼンに用い、ほぼ20℃の蒸気圧となる分圧で、水素気流により反応器に、流量0.3l/hでチャンバーに送り込んだ。触媒はフェロセンを用い、185℃で気化させ、ほぼ3×10−7mol/sの濃度でチャンバーに送り込んだ。反応温度は約1100℃、反応時間が約20分で、直径が平均約100nmのヘリンボン構造の炭素繊維が得られた。原料の流量、反応時間を調節する(反応器の大きさによって変更される)ことで、底の無いカップ形状をなす炭素網層が多数積層され、数十nm〜数十μmの範囲に亙って節(ブリッジ)の無い中空の炭素繊維が得られる。
【0014】
図1は、上記気相成長法によって製造したヘリンボン構造の炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真の複写図、図2はその拡大図、図3はその模式図である。
図から明らかなように、傾斜した炭素網層10を覆って、アモルファス状の余剰炭素が堆積した堆積層12が形成されていることがわかる。このような堆積層12の形成は、気相成長法による宿命的なものであって、さけることができない。
堆積層12の厚さは数nm程度であり、表面は不活性である。14は中心孔である。
【0015】
このような堆積層12が形成されている炭素繊維を、400℃以上、好ましくは500℃、一層好ましくは520℃以上530℃以下の温度で、大気中で1〜数時間加熱することにより、堆積層12が酸化されて熱分解し、除去されて炭素網層の端面(六員環端)が一部露出する。
あるいは、上記炭素繊維を塩酸または硫酸中に浸漬し、スターラーで攪拌しつつ80℃程度に加熱しても堆積層12を除去できる。
【0016】
図4は、上記のように約530℃の温度で、大気中1時間熱処理したヘリンボン構造の炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真の複写図、図5はその拡大図、図6はさらにその拡大図、図7はその模式図である。
図5〜図7から明らかなように、上記のように熱処理を行なうことによって、堆積層12の一部が除去され、炭素網層10の端面(炭素六員環端)が露出していることがわかる。なお、残留している堆積層12もほとんど分解されていて、単に付着している程度のものと考えられる。熱処理を数時間行い、また超臨界水での洗浄を併用すれば、堆積層12を100%除去することも可能である。
【0017】
また、図4に明らかなように、炭素繊維10は、底の無いカップ形状をなす炭素網層が多数積層しており、少なくとも数十nm〜数十μmの範囲で中空状をなしている。
中心線に対する炭素網層の傾斜角は20°〜35°位である。
また、図6や図7に明確なように、炭素網層10の端面が露出している外表面および内表面の部位が、端面が不揃いで、nm(ナノメーター)、すなわち原子の大きさレベルでの微細な凹凸16を呈していることがわかる。図2に示すように、堆積層12の除去前は明確でないが、上記の熱処理により堆積層12を除去することによって、凹凸16が現れた。
【0018】
露出している炭素網層10の端面は、他の原子と結びつきやすく、きわめて活性度の高いものである。これは大気中での熱処理により、堆積層12が除去されつつ、露出する炭素網層の端面に、フェノール性水酸基、カルボキシル基、キノン型カルボニル基、ラクトン基などの含酸素官能基が増大し、これら含酸素官能基が親水性、各種物質に対する親和性が高いからと考えられる。
また中空構造をなすこと、および凹凸16によるアンカー効果は大きい。
【0019】
図8は、ヘリンボン構造の炭素繊維(サンプルNO.24PS)を、大気中で、1時間、それぞれ500℃、520℃、530℃、540℃で熱処理した後の、炭素繊維のラマンスペクトルを示す。
上記熱処理を行うことによって、堆積層12が除去されることは図5〜図7で示したが、図8のラマンスペクトルから明らかなように、Dピーク(1360cm−1)およびGピーク(1580cm−1)が存在することから、このものは炭素繊維であるとともに、黒鉛化構造でない炭素繊維であることが示される。すなわち、上記ヘリンボン構造の炭素繊維は、炭素網面のずれた(グラインド)乱層構造(Turbostratic Structure)を有していると考えられる。
この乱層構造炭素繊維では、各炭素六角網面が平行な積層構造は有しているが各六角網面が平面方向にずれた、あるいは回転した積層構造となっていて、結晶学的規則性は有しない。
【0020】
図9は、上記熱処理を行って炭素網層の端面を露出させた、サンプルNO.19PSと、サンプルNO.24PSの炭素繊維のラマンスペクトルを示す。
また図10は、上記炭素網層の端面を露出させた、サンプルNO.19PSと、サンプルNO.24PSの炭素繊維に3000℃の熱処理(通常の黒鉛化処理)を行った後の炭素繊維のラマンスペクトルを示す。
図10に示すように、炭素網層の端面を露出させた炭素繊維に黒鉛化処理を行っても、Dピークが消失しないことがわかる。これは、黒鉛化処理を行っても黒鉛化していないことを示す。
【0021】
図示しないが、X線回折を行っても、112面の回折線が出てこないことからも、上記炭素繊維は黒鉛化していないことが判明した。
黒鉛化処理を行っても黒鉛化しないということは、黒鉛化しやすい堆積層12が除去されているからと考えられる。また、残ったヘリンボン構造の部位が黒鉛化しないということが明らかとなった。
高温雰囲気下でも黒鉛化しないことは、熱的に安定であることを意味する。
【0022】
図11は、上記のように、炭素網層の端面を露出させた炭素繊維の模式図である。
図のように、各炭素網層の環状の端面Pが炭素繊維の外表面に露出し、この露出端が全て電子の放出端として機能するから、大きな放出電流を得ることができる。
しかも、炭素網層の露出端面が不揃いで、原子の大きさレベルでの微細な凹凸を呈していることから、より電界が炭素網層の露出端面に集中しやすく、必要とする強電界が得られるのである。
【0023】
なお、上記炭素繊維を分断して、炭素網層が数個〜数百個積層されたものを電界電子エミッタ炭素繊維(電界電子放出源)として用いてもよい。
上記炭素繊維を分断するには、水あるいは溶媒を適宜量加えて、乳鉢を用いて乳棒により緩やかにすりつぶすことによって行える。
すなわち、上記炭素繊維(堆積層12が形成されたもの、堆積層12が一部あるいは全部除去されたもの、いずれでもよい)を乳鉢に入れ、乳棒により機械的に緩やかに炭素繊維をすりつぶすのである。
乳鉢での処理時間を経験的に制御することによって、単位炭素網層が数個〜数百個積層した炭素繊維体を得ることができる。
【0024】
その際、環状の炭素網層は比較的強度が高く、各炭素網層間は弱いファンデアワールス力によって結合しているにすぎないので、環状炭素網層はつぶれることはなく、特に弱い結合部分の炭素網層間で分離されることとなる。
なお、上記炭素繊維を液体窒素中で乳鉢によりすりつぶすようにすると好適である。液体窒素が蒸発する際、空気中の水分が吸収され、氷となるので、氷とともに炭素繊維を乳棒によりすりつぶすことによって、機械的ストレスを軽減し、上記の単位繊維層間での分離が行える。
【0025】
図12は、堆積層12が付いたままの炭素繊維を分断した状態の炭素繊維体を示す説明図である。堆積層12が付いていても、両端の炭素網層10の環状端面P、Qは、分離により露出する。
なお、中間の炭素網層10の外周に付着している堆積層12も、乳棒による機械的ストレスにより剥離し、該炭素網層の端面も露出することがある。
【0026】
図13は、上記あらかじめ熱処理して炭素網層10の端面を露出させた炭素繊維を分断した炭素繊維体の説明図である。
この場合には、両端の環状端面ばかりでなく、中間の炭素網層10の端面も露出していて、一層活性度の高いものとなる。
工業的には、上記炭素繊維をボールミリングによってグラインディング処理するとよい。
【0027】
以下にボールミリングによって炭素繊維の長さ調整をした実施例を説明する。
ボールミルはアサヒ理化製作所製のものを用いた。
使用ボールは直径5mmのアルミナ製である。上記炭素繊維を1g、アルミナボール200g、蒸留水50ccをセル中に入れ、350rpmの回転速度で処理をし、1、3、5,10、24の各時間経過毎にサンプリングした。
【0028】
図14は、レーザー粒度分布計を用いた計測した、各時間経過毎の炭素繊維の長さ分布を示す。
図14から明らかなように、ミリング時間が経過するにつれて、線長が短くなっていく。特に10時間経過後は、10μm以下に急激に線長が下がる。24時間経過後は、1μm前後に別のピークが発生しており、より細かい線長になっているのが明らかである。1μm前後にピークが現れたのは、長さと直径がほとんど等しくなり、直径分をダブルカウントした結果と考えられる。
【0029】
図15は、上記のようにして、底のないカップ形状をなす炭素網装置が数十個積層した状態に長さ調整された、非常に興味のある炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真の複写図である。節の無い中空状をなしている。また中空部の外表面および内表面側の炭素網層の端面が露出している。この炭素繊維は、長さおよび直径が約60nmで、肉厚の薄い、空洞部の大きなチューブ状をなしている。ボールミリングの条件により種々の長さのものに調整が可能となる。
【0030】
このように、底の無いカップ形状をなす炭素網層が抜け出すようにして、分離され、炭素網層の形状が壊されていないことがわかる。
この点、通常の、同心状をなすカーボンナノチューブをグラインディングすると、チューブが割れ、外表面に軸方向に亀裂が生じたり、ささくれ立ちが生じ、また、いわゆる芯が抜けたような状態が生じたりして、長さ調整が困難であった。
【0031】
上記のように露出した炭素網層10の端面は、他の原子と結びつきやすく、きわめて活性度の高いものである。これは、前記したように、大気中での熱処理により、堆積層12が除去されつつ、露出する炭素網層の端面に、フェノール性水酸基、カルボキシル基、キノン型カルボニル基、ラクトン基などの含酸素官能基が増大し、これら含酸素官能基が親水性、各種物質に対する親和性が高いからと考えられる。
【0032】
また中空構造をなすこと、および凹凸16によるアンカー効果は大きい。
図15に示す炭素繊維は、底の無いカップ形状をなす炭素網層が数十〜数百個積層し、そのチューブ状をなす繊維の表裏の炭素網層の端面(エッジ)が全て電子放出端として機能するから、大きな放出電流を得ることができる。
【0033】
以上、本発明に用いるヘリンボン構造の炭素繊維について説明した。
次に、このヘリンボン構造の炭素繊維を複合材料として用いた電界電子放出体(焼成体)について説明する。
本発明に係る電界電子放出体(焼成体)は、前記のように、底の無いカップ形状をなす炭素網層が多数積層し、該炭素網層の端面が露出した、気相成長法による多数の炭素繊維(ヘリンボン構造の炭素繊維)が、炭化された高分子樹脂の炭素によって結着されていることを特徴とするものである。
【0034】
上記高分子樹脂は、賦形性を有し、焼成後高い炭素残査収率を示す樹脂組成物であることが要求される。そして、焼成によりアモルファス状炭素、好ましくは、高温下での使用時に黒鉛化が進行しない難黒鉛化性炭素となり得る高分子樹脂であることが望ましい。また、炭素化前段階の加熱時に分子間架橋を生じ、三次元化するものが好ましく、これにより、焼成後、高い炭素残渣収率を示すものであり、かつ焼成炭素化時にヘリンボン構造の炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーや黒鉛などの炭素粉末(炭素成分)をパッキングし、結着する能力を有する。
【0035】
このような高分子樹脂は、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂の一種または二種以上の複合体である。
ここで熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、コプナ樹脂等が用いられ、経時熱構造変化の少ないことなどから、好ましくはフラン樹脂及びフェノール樹脂が用いられる。
また、熱可塑性樹脂としては、ポリ塩素化塩化ビニル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリイミド等が用いられ、成形性の容易さ及びフラン樹脂やフェノール樹脂と複合化した際の取り扱いの容易さから好ましくはポリ塩素化塩化ビニル樹脂が用いられる。
【0036】
電子放出源として必要な特性を具備せしめることを目的として、焼成後にアモルファス炭素となる高分子樹脂とヘリンボン構造の炭素繊維に、必要に応じてカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、黒鉛等とを適宜選択した後、可塑剤と共に混合機を用いて充分に分散させる。
次にこの混合体を、射出成形機、圧縮成型機や押出成形機のような通常のプラスチック成形を行う際に使用されている成形機を用い、任意の形状に成形する。該成形体は、エアオーブン中で炭素前駆体化処理及び固化処理を施した後、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で昇温速度を制御しつつ焼成することで炭化を終了させる。これにより、ヘリンボン構造の炭素繊維、アモルファス炭素さらにはカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、黒鉛等からなる電界電子放出体たるカーボン系複合材が得られる。
【0037】
ここで、炭素化は不活性ガス雰囲気もしくは真空下で700〜2800℃程度まで加熱昇温し行われるが、炭素化時の昇温速度が大きいと賦形体の形状が変形したり微細なクラックが生じるなどの欠陥が生じる。したがって、500℃までは毎時50℃以下、それ以降も毎時100℃以下で行うことが適切である。
【0038】
また本発明で、高温耐熱性および安定的な電子放出を得るために不活性雰囲気中または真空中で、電子放出源として使用する温度よりも260℃以上500℃以下の温度だけ高い温度、好ましくは約300℃高い温度まで焼成炭素化処理を施すことで、より安定した電界放出特性と長寿命化を達成することが可能となる。
【0039】
得られた焼成体を物理的研磨処理、あるいは電解研磨処理などにより表面を研磨するのが好ましい。これにより、カップ状をなす炭素網層の端面が確実に露出することとなり、高い電界電子放出特性が得られる。
焼成体は、適宜形状に切断され、絶縁基板に接着してカソード電極として使用できる。
また、その用途は、電界放出型ディスプレー(FED)、冷陰極、電子顕微鏡、蛍光灯、プラスイオンおよびマイナスイオン発生装置、エックス線装置、電子ビーム装置、電子殺菌装置などの電子源、また、電界電子放出型サージ吸収素子、発熱器などとして活用可能である。
【0040】
【実施例】
実施例1
樹脂組成物(高分子樹脂)として、塩素化塩化ビニル樹脂(日本カーバイド社製T−741)60重量部、フラン樹脂(日立化成製VF303)20重量部に、気相成長法によって得られたヘリンボン構造の炭素繊維(ジーエスアイクレオス社製カルベール、平均直径80〜100nm)20重量部と、可塑材(バインダー)としてジアリルフタレートモノマー20重量部を添加して、分散、混合し、押し出し成形で細線状に成形し、その後窒素ガス雰囲気中1000℃で加熱処理し、さらにアルゴンガス雰囲気中1400℃で焼成し、直径が0.5mmのカーボン系複合材を得た。
この焼成体を適宜大きさに切断して、電界電子放出装置のエミッタとして用いたところ、良好な電界放出特性が得られた。
【0041】
実施例2
高分子樹脂として、塩素化塩化ビニル樹脂(日本カーバイド社製T−741)40wt%、フラン樹脂(日立化成社製ヒタフランVF−302)10wt%、これに気相成長法によって得られたヘリンボン構造の炭素繊維(ジーエスアイクレオス社製カルベール、平均直径80〜100nm)50wt%からなる組成物に対し、可塑剤としてジアリルフタレートモノマーを20wt%添加して、ヘンシェル・ミキサーを用いて分散し、ミキシング用二本ロールを用いて十分に混練を繰り返した混合物をスクリュー型押し出し機により50mm角体を押出すとともに1mm厚み毎にスライス切断して板形状体を得た。これを治具に固定して180℃に加熱されたエアー・オーブン中で10時間処理して炭素前駆体化処理を施した。次にこれを窒素ガス中で500℃までを25℃/時の昇温速度で昇温し、その後1800℃までを100℃/時で昇温し、1800℃で3時間保持した後自然冷却して焼成を完了した。
得られた焼成体を炭化珪素粉末を用いた物理的研磨により厚み0.50mmまで研磨し、次いで、0.1N塩酸水溶液中で電解酸化処理を施し、物理研磨時に付着した炭化珪素粉末を除去した。
この炭素エミッタ板に絶縁基板を接着したものをカソード電極板とし、スペーサを介して対抗側に蛍光体および透明電導性膜を塗布したガラス基板からなるアノード電極板を設置し、真空中で電極間に電界を印加したところ、全面で蛍光体の発光現象が確認された。
【0042】
【発明の効果】
本発明に係る電界電子放出体によれば、各炭素網層の環状の端面が炭素繊維の外表面に露出し、この露出端が全て電子の放出端として機能するから、良好な電界電子放出特性が得られる。
しかも、炭素網層の露出端面が不揃いで、原子の大きさレベルでの微細な凹凸を呈していることから、より電界が炭素網層の露出端面に集中しやすく、低電圧での電子放出を得ることができる。
また、炭素繊維が炭化した高分子樹脂の炭素によって結着されているから、炭素繊維の脱落、剥離等を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】気相成長法によって製造したヘリンボン構造の炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真の複写図である。
【図2】図1の拡大図である。
【図3】図2の模式図である。
【図4】約530℃の温度で、大気中1時間熱処理したヘリンボン構造の炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真の複写図である。
【図5】図4の拡大図である。
【図6】図5のさらなる拡大図である。
【図7】図6の模式図である。
【図8】ヘリンボン構造の炭素繊維(サンプルNO.24PS)を、大気中で、1時間、それぞれ500℃、520℃、530℃、540℃で熱処理した後の、炭素繊維のラマンスペクトルを示す。
【図9】上記熱処理を行って炭素網層の端面を露出させた、サンプルNO.19PSと、サンプルNO.24PSの炭素繊維のラマンスペクトルを示す。
【図10】上記炭素網層の端面を露出させた、サンプルNO.19PSと、サンプルNO.24PSの炭素繊維に3000℃の熱処理を行った後の炭素繊維のラマンスペクトルを示す。
【図11】炭素網層の端面を露出させた炭素繊維の模式図である。
【図12】堆積層が付いたままの炭素繊維を分断した状態の炭素繊維体を示す説明図である。
【図13】あらかじめ熱処理して炭素網層の端面を露出させた炭素繊維を分断した炭素繊維体の説明図である。
【図14】ボールミリングでグラインディングした際の、経過時間毎の炭素繊維長の分布を示すグラフである。
【図15】底の無いカップ形状をなす炭素網層が数十個積層された炭素繊維体に分離された状態を示す透過型電子顕微鏡写真の複写図である。
【符号の説明】
10 炭素網層
12 堆積層
14 中心孔
16 凹凸
Claims (11)
- 底の無いカップ形状をなす炭素網層が多数積層し、該炭素網層の端面が露出した、気相成長法による多数の炭素繊維が、炭化された高分子樹脂の炭素によって結着されていることを特徴とする電界電子放出体。
- 棒状または板状をなすことを特徴とする請求項1記載の電界電子放出体。
- 炭化された前記炭素がアモルファス状をなすことを特徴とする請求項1または2記載の電界電子放出体。
- 前記炭素繊維以外に、カーボンナノチューブその他の炭素成分が混入していることを特徴とする請求項1、2または3記載の電界電子放出体。
- 前記炭素繊維が節のない中空状をなすことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の電界電子放出体。
- 前記炭素繊維が、前記底の無いカップ形状の炭素繊維層が数個〜数百個積層した炭素繊維であることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の電界電子放出体。
- 前記炭素網層の露出端面が不揃いで、原子の大きさレベルでの微細な凹凸を呈していることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の電界電子放出体。
- 底の無いカップ形状をなす炭素網層が多数積層した、気相成長法による多数の炭素繊維と、高分子樹脂とを混合する工程と、
該混合材料を所要形状に成形する工程と、
成形した前記混合材料を加熱して前記高分子樹脂に分子間架橋を生じさせる加熱工程と、
該加熱工程を経た前記混合材料を不活性ガス雰囲気中で焼成して、前記高分子樹脂を炭化させる焼成工程を含むことを特徴とする電界電子放出体の製造方法。 - 得られた焼成体を所要大きさ、形状に切断する工程を含むことを特徴とする請求項8記載の電界電子放出体の製造方法。
- 得られた焼成体の表面を研磨する研磨工程を含むことを特徴とする請求項8または9記載の電界電子放出体の製造方法。
- 前記炭素繊維以外に、カーボンナノチューブ等の炭素成分を混入させることを特徴とする請求項8、9または10記載の電界電子放出体の製造方法。
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