JPWO2004050739A1 - 硬化性ウレタン樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
硬化性ウレタン樹脂組成物は、ポリオール類と有機イソシアナート類とを重縮合させたウレタンプレポリマーの末端イソシアナート基がブロック化剤で保護されているブロック化ウレタンプレポリマー中に、分散または溶解した重合体が、含まれている。該ブロック化ウレタンプレポリマーを脱保護させて生じる該重縮合ウレタンプレポリマーの末端イソシアナート基に架橋して、該重合体を内包しつつ高分子量化させる架橋剤が、含まれていてもよい。
Description
本発明は、自動車車体の基材を塗装するような塗料に添加して用いられるもので、塗料の接着性、柔軟性、伸び性等の物性を改善するための硬化性ウレタン樹脂組成物に関する。
自動車車体等の基材であるプレス鉄板は、シーリング塗料や耐チッピング塗料のような下地塗料で下地を形成した上に、上塗り塗装が施されている。
この下地塗料として、例えば特開平5−65450号公報に記載されているようなポリ塩化ビニル樹脂を含有するプラスチゾル組成物が知られている。この組成物で形成された塗装被膜は、ポリ塩化ビニル樹脂に由来して柔軟性、伸び性、抗張力、難燃性、接着性等の物性が優れている。しかしポリ塩化ビニル樹脂は、焼却時に塩化水素やダイオキシン等の有害物質を発生するおそれがある。
そのため、ポリ塩化ビニル樹脂を含有しない安全な下地塗料として、水系エマルション樹脂、水性樹脂、ウレタン樹脂またはアクリル樹脂を含有する組成物が検討されている。しかし、ポリ塩化ビニル樹脂含有プラスチゾル組成物と比べ、十分なシーリング性、耐チッピング性、接着性等の優れた物性を塗装被膜に付与できるものは得られていなかった。
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、下地塗料に添加されて用いられ、この塗料で形成される塗装被膜に充分なシーリング性、耐チッピング性、柔軟性、伸び性、抗張力、接着性、界面破壊特性等の物性を付与でき、簡便に調製できる硬化性ウレタン樹脂組成物、および、この硬化性ウレタン樹脂組成物を含み下地塗料として使用される熱硬化性プラスチゾル組成物を提供することを目的とする。
この下地塗料として、例えば特開平5−65450号公報に記載されているようなポリ塩化ビニル樹脂を含有するプラスチゾル組成物が知られている。この組成物で形成された塗装被膜は、ポリ塩化ビニル樹脂に由来して柔軟性、伸び性、抗張力、難燃性、接着性等の物性が優れている。しかしポリ塩化ビニル樹脂は、焼却時に塩化水素やダイオキシン等の有害物質を発生するおそれがある。
そのため、ポリ塩化ビニル樹脂を含有しない安全な下地塗料として、水系エマルション樹脂、水性樹脂、ウレタン樹脂またはアクリル樹脂を含有する組成物が検討されている。しかし、ポリ塩化ビニル樹脂含有プラスチゾル組成物と比べ、十分なシーリング性、耐チッピング性、接着性等の優れた物性を塗装被膜に付与できるものは得られていなかった。
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、下地塗料に添加されて用いられ、この塗料で形成される塗装被膜に充分なシーリング性、耐チッピング性、柔軟性、伸び性、抗張力、接着性、界面破壊特性等の物性を付与でき、簡便に調製できる硬化性ウレタン樹脂組成物、および、この硬化性ウレタン樹脂組成物を含み下地塗料として使用される熱硬化性プラスチゾル組成物を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するためになされた本発明の硬化性ウレタン樹脂組成物は、ポリオール類および有機イソシアナート類を重縮合させたウレタンプレポリマーの末端イソシアナート基がブロック化剤で保護されているブロック化ウレタンプレポリマーと、該ブロック化ウレタンプレポリマー中に分散または溶解された重合体とが、含まれている。
硬化性ウレタン樹脂組成物は、このブロック化ウレタンプレポリマーを脱保護させて生じる該ウレタンプレポリマーの末端イソシアナート基に架橋する架橋剤が含まれていることが好ましい。この架橋剤は、架橋をすることによって重合体を内包しつつ高分子を形成するというものである。
本発明の塗料用の熱硬化性プラスチゾル組成物は、前記の硬化性ウレタン樹脂組成物と、アクリル樹脂微粉末とを含んでいる。
この硬化性ウレタン樹脂組成物が加熱されると、ブロック化ウレタンプレポリマーがウレタンプレポリマーとブロック化剤とに熱解裂する。複数のウレタンプレポリマーが、その末端イソシアナート基により網目状に架橋結合して重合し、高分子量化してウレタンのネットワークを形成する。そのネットワークに重合体が取り込まれて内包された状態となる。
そのため、このウレタン樹脂組成物とアクリル樹脂微粉末とを含んでいる熱硬化性プラスチゾル組成物で調製された塗料が加熱されると、硬化し、ウレタンのネットワークに取り込まれた重合体例えばアクリル系樹脂と、アクリル樹脂微粉末とが相溶し絡み合って強く相互作用しながら、塗装被膜が形成される。その結果、得られた塗装被膜は、柔軟性、伸び性、抗張力、難燃性、および接着性が優れたものとなる。そのうえこの塗装被膜は、繰り返しの耐摩擦特性が特に優れている。また、アクリル樹脂微粉末の量を大幅に減らしても良好な塗装被膜を形成することができる。
硬化性ウレタン樹脂組成物は、このブロック化ウレタンプレポリマーを脱保護させて生じる該ウレタンプレポリマーの末端イソシアナート基に架橋する架橋剤が含まれていることが好ましい。この架橋剤は、架橋をすることによって重合体を内包しつつ高分子を形成するというものである。
本発明の塗料用の熱硬化性プラスチゾル組成物は、前記の硬化性ウレタン樹脂組成物と、アクリル樹脂微粉末とを含んでいる。
この硬化性ウレタン樹脂組成物が加熱されると、ブロック化ウレタンプレポリマーがウレタンプレポリマーとブロック化剤とに熱解裂する。複数のウレタンプレポリマーが、その末端イソシアナート基により網目状に架橋結合して重合し、高分子量化してウレタンのネットワークを形成する。そのネットワークに重合体が取り込まれて内包された状態となる。
そのため、このウレタン樹脂組成物とアクリル樹脂微粉末とを含んでいる熱硬化性プラスチゾル組成物で調製された塗料が加熱されると、硬化し、ウレタンのネットワークに取り込まれた重合体例えばアクリル系樹脂と、アクリル樹脂微粉末とが相溶し絡み合って強く相互作用しながら、塗装被膜が形成される。その結果、得られた塗装被膜は、柔軟性、伸び性、抗張力、難燃性、および接着性が優れたものとなる。そのうえこの塗装被膜は、繰り返しの耐摩擦特性が特に優れている。また、アクリル樹脂微粉末の量を大幅に減らしても良好な塗装被膜を形成することができる。
以下に、本発明の硬化性ウレタン樹脂組成物について詳細に説明する。
硬化性ウレタン樹脂組成物は、ブロック化ウレタンプレポリマー中に均一に分散または溶解した重合体と、必要に応じて架橋剤とが含まれている。
ブロック化ウレタンプレポリマーを形成するブロック化剤は、オキシム類、第二アミン類、フェノール類、アルコール類、および水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類から選ばれる少なくとも1種類であることが好ましい。具体的には、オキシム類としてアセトオキシムのようなアルドオキシム、メチルエチルケトオキシムやメチルイソブチルケトオキシムのようなケトオキシムが挙げられ、第二アミン類としてジブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミンのような第二級アルキルアミンが挙げられる。フェノール類としてアルキルフェノール、ヒドロキシ安息香酸エステルが挙げられ、アルコール類としてアルキルアルコールが挙げられ、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとして、β−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート例えばライトエステル(共栄社化学株式会社の商品名)、エポキシエステル例えばエポライト(共栄社化学株式会社の商品名)が挙げられる。
このブロック化剤は、ウレタンプレポリマーを構成する有機イソシアナート類の種類に応じて、または硬化性ウレタン樹脂組成物を添加した塗料用のプラスチゾル組成物で塗装被膜を形成する際の加熱処理温度に応じて、適宜選択される。中でもメチルエチルケトオキシム、ジシクロヘキシルアミンであると一層好ましい。
ウレタンプレポリマーを形成するポリオール類は、ポリエーテルポリオールである。ポリエーテルポリオールとして、低分子アルコールや低分子アミンやフェノールのような2〜5個の活性水素含有官能基を有する低分子化合物に、炭素数2〜6のアルキレンオキサイドを付加させた付加物が挙げられる。
このような低分子アルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ジグリセリン、ひまし油、及びこれらの誘導体が好ましく、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリンであると一層好ましい。低分子アミンとして、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンのようなアルカノールアミン;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンのような脂肪族ポリアミン;これら脂肪族ポリアミンのn−アルキル基置換体、これら脂肪族ポリアミンのアリル基置換体;トリレンジアミンのような芳香族ポリアミンのn−アルキル基置換体、芳香族ポリアミンのアリル基置換体;ピペリジンやN−アミノエチルピペリジンのような複素環ポリアミン;エチレンジアミンやジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミンのような脂肪族ポリアミンへのアルキレンオキサイドの付加物が好ましく、中でも脂肪族ポリアミン1当量へのプロピレンオキサイド0.1〜16当量の付加物がなお一層好ましい。低分子アミンは、これらの混合物であってもよい。フェノールは、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、及びビスフェノールであることが好ましい。アルキレンオキサイドは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドのいずれか、またはこれらの二種以上の混合物が好ましく、プロピレンオキサイドを50重量%以上含有する混合物であると一層好ましい。二種以上のアルキレンオキサイドの混合物を用いると、低分子ポリオール等の低分子化合物に、ランダム重合、またはブロック重合したポリオールが得られる。
またウレタンプレポリマーを形成するポリオール類は、ポリエステルポリオールであってもよい。ポリエステルポリオールとして、ジカルボン酸、ジカルボン酸エステル、ジカルボン酸ハライドのいずれかのジカルボン酸の誘導体と、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコールのような低分子ポリオール好ましくはグリセリンやジグリセリンとを重縮合させたポリエステルポリオール;このジカルボン酸の誘導体が、アルキレンオキサイドに重付加した重付加物;ε−カプロラクトンやδ−バレロラクトンのようなラクトンを、前記の低分子ポリオールで開環重合させたポリラクトンポリオールエステルが挙げられる。ジカルボン酸は、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、ダイマー酸のような脂肪族ジカルボン酸、またはその酸無水物;テレフタル酸、イソフタル酸のような芳香族ジカルボン酸、またはその酸無水物が好ましく、脂肪族ジカルボン酸であると一層好ましく、アジピン酸であるとなお一層好ましい。
さらにウレタンプレポリマーを形成するポリオール類は、ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合ポリオールであってもよい。ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合ポリオールは、例えば、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸の誘導体、またはビニル基含有化合物とが共重合したものである。
これらのポリオール類は、前記のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合ポリオールを複数混合して用いてもよい。
これらのポリオール類は、水酸基当量、すなわちポリオール類の平均分子量を、一分子中の平均水酸基数で除した水酸基一個あたりの平均分子量が、50〜2000であると好ましい。水酸基当量が50未満であると、硬化性ウレタン樹脂組成物にアクリル樹脂微粉末が添加されたプラスチゾル組成物を加熱し硬化させた塗装被膜は、結晶性が高くなって柔軟性が低くなってしまう。水酸基当量が2000より大きいと、塗装被膜の強度が著しく低下してしまう。水酸基当量が100〜1500であると一層好ましい。
ウレタンプレポリマーを形成する有機イソシアナート類は、芳香族ジイソシアナート、鎖状脂肪族ジイソシアナート、及び環状脂肪族ジイソシアナートから選ばれる少なくとも1種類の単量体、またはそれの多量体であることが好ましい。
芳香族ジイソシアナートとして、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアナートや4,4′−ジフェニルメタンジイソシアナートやそれらの任意の割合の混合物、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメライズジフェニルメタンジイソシアナート、ウレタン変性ジフェニルメタンジイソシアナート、変性ジフェニルメタンジイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナートや2,6−トリレンジイソシアナートやそれらの任意の割合の混合物、キシリレンジイソシアナート、フェニレンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、トリフェニルメタンジイソシアナート、トルイジンジイソシアナート、テトラメチルキシリレンジイソシアナート、ジフェニルスルホンジイソシアナートが挙げられ、中でもトリレンジイソシアナート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアナート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアナート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアナートであると特に好ましい。鎖状脂肪族ジイソシアナートとして、ヘキサメチレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートが挙げられる。環状脂肪族ジイソシアナートとして、水添ジフェニルメタンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、3−イソシアナートメチル−3,5,5−トリエチルシクロヘキシルイソシアナートが挙げられる。有機イソシアナート類は、芳香族ジイソシアナートや鎖状脂肪族ジイソシアナートや環状脂肪族ジイソシアナートの各単量体の混合物であってもよい。有機イソシアナート類は、芳香族ジイソシアナート、鎮状脂肪族ジイソシアナート及び環状脂肪族ジイソシアナートのいずれかから選ばれるものであってもよく、またはそれらの任意比の混合物であってもよい。有機イソシアナート類は、ウレタン変性体、二量体、三量体、カルボジイミド変性体、アロハネート変性体、ウレア変性体、またはビュレット変性体のような有機イソシアナート多量体であってもよい。
ポリオール類と有機イソシアナート類とを重縮合させてウレタンプレポリマーを調製する際、ポリオール類がその水酸基の1当量に対し、有機イソシアナート類がそのイソシアナート基の1.2〜2.0当量、好ましくは1.5〜2.0当量となるモル比で用いられると好ましい。ウレタンプレポリマーの平均分子量を残存するイソシアナート基の平均数で除したイソシアナート当量は、200〜3000であることが好ましい。イソシアナート当量が200未満であると、硬化性ウレタン樹脂組成物にアクリル樹脂微粉末が添加されたプラスチゾル組成物を加熱し、硬化させた塗装被膜が硬くて脆くなり、一方3000を越えると塗装被膜の接着性が悪くなる。イソシアナート当量が300〜1500であると一層好ましい。また、ウレタンプレポリマー中のNCO%(−NCO基1つに対するウレタンプレポリマー分子量中に占める−NCO基の分子量の割合)は、1.0〜20%である事が好ましく、2.0〜10%であると一層好ましい。
ブロック化ウレタンプレポリマーの平均分子量が、1000〜500000であることが好ましい。
硬化性ウレタン樹脂組成物は、ブロック化ウレタンプレポリマー100重量部に対して、重合体が0.2〜60重量部含まれていることが好ましく、さらに1.0〜20重量部であると一層好ましい。
重合体は、この組成物やそれを含むプラスチゾル組成物に添加される溶剤、可塑剤等に溶解する樹脂であれば、分子量や重合度が様々な公知の樹脂が使用できる。この重合体は、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種類の樹脂であることが好ましい。
重合体は、200〜4000000、重合度が1〜40000であることが好ましく、平均分子量3000〜1000000であると一層好ましい。
アクリル系樹脂として、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリルレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルの重合体が挙げられる。また、アクリル系樹脂として(メタ)アクリル酸エステルの共重合体が挙げられ、より具体的には、前記のような(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸やマレイン酸等の不飽和基含有カルボン酸、ビニルエステル、ビニルメチルエーテルやビニルブチルエーテル等のビニルエーテル、ジエチルマレートやジブチルマレート等のマレイン酸エステル、ジエチルフマレートやジブチルフマレート等のフマル酸エステルから選ばれる少なくとも1種類のビニル基含有化合物類との共重合体が挙げられる。アクリル系樹脂は、その平均分子量が2000〜4000000、重合度が20〜40000であることが好ましく、平均分子量3000〜1000000であると一層好ましい。
フェノール系樹脂として、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール等から誘導されるノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。
エポキシ系樹脂として、例えばフェノール性多核化合物とエピクロルヒドリンとを反応させ、閉環させた化合物が挙げられ、より具体的にはシリーズ化した製品として入手可能なエピコート(JER社製の商品名)アラルダイト(日本チバガイギー社製の商品名)、エピクロン(DIC社製の商品名)が挙げられる。
硬化性ウレタン樹脂組成物にアクリル系樹脂やフェノール系樹脂やエポキシ系樹脂等の前記重合体を含ませるには、例えばブロック化ウレタンプレポリマー中で、アクリル系樹脂やフェノール系樹脂やエポキシ系樹脂等の前記重合体を合成する方法で行われる。または、予めポリオール類中で前記重合体を合成後、ウレタンプレポリマーを合成してそれをブロック化する方法であってもよい。または、ウレタンプレポリマーの合成時、前記重合体を添加、溶解し、ブロック化する方法であってもよい。
硬化性ウレタン樹脂組成物は、架橋剤が含まれていなくても、ウレタンプレポリマー分子同士が架橋する自己架橋型として作用して、硬化するものである。
硬化性ウレタン樹脂組成物は、架橋剤や架橋触媒が含まれていてもよい。
架橋剤は、ウレタンプレポリマーを形成するものとして挙げられた前記のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールやビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合ポリオールのようなポリオール類と同種のものが挙げられ、また、低級アルキルアミンにアルキレンオキサイドが付加したアミノポリエーテルポリオールのようなポリオール類が挙げられ、その水酸基当量が10〜1000であると好ましい。
また架橋剤として、シュウ酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジドのような酸ヒドラジド類;1−アミノ−3−サリチルグアニジン、トリアミノグアニジンのようなアミノグアニジン類;ジシアンジアミド、n−ブチルジシアンジアミドのようなジシアンジアミド類;メチレンビスグアニル尿素のようなグアニル尿素類;アセトグアナミン、アジポグアナミン、ベンゾグアナミン、フタログアナミンのようなグアナミン類;ヘキサメトキシメチルメラミンのようなメラミン類;ヒダントイン、1−アセチルヒダントイン、グリシジルヒダントインのようなヒダントイン類;アセチルイミド、フタルイミド、サクシンイミドのような酸イミド類;シアヌル酸、イソシアヌル酸、メラミン、メチロールメラミン、TGIC(トリグリシジルイソシアヌレート)、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのようなトリアジン環含有化合物類が挙げられる。
架橋剤は、これらの中から選ばれる少なくとも1種類であることが好ましい。中でも低級アルキルアミンにアルキレンオキサイドを付加したアミノポリエーテルポリオールであると一層好ましく、脂肪族アルキルアミンにアルキレンオキサイドを付加したアミノポリエーテルポリオールでその水酸基当量を10〜400とするものであるとなお一層好ましい。
架橋剤は、ウレタンプレポリマー中の−NCO基の1当量に対し、0.5〜1.2倍当量の範囲で添加されることが好ましい。
架橋剤が前記のポリオール類であるとき、硬化性を向上させるための架橋助剤または潜在性硬化剤としても作用するアジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドのような酸ヒドラジド類;n−ブチルジシアンジアミド、ジシアンジアミドのようなジシアンジアミド類;ヘキサメトキシメチルメラミンのようなメラミン類;サクシンイミドのような酸イミド類;イソシアヌル酸のようなトリアジン環含有化合物類;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、及びヘキサメチレンジアミンのいずれかとノボラックフェノールとの付加物が、ウレタン樹脂組成物に添加されていることが好ましい。より具体的には、アミキュアー(登録商標)PN−23、同MY−24、同PN−D、同MY−D、同PN−H(いずれも味の素株式会社);フジキュアー(登録商標)FXE−1000、同FXR−1030(いずれも富士化成工業株式会社);アジピン酸ジヒドラジド(ADH)、ステアリン酸ジヒドラジド(SDH)(いずれも日本ヒドラジン株式会社)が挙げられる。架橋助剤は、アミノグアニジン類、グアニル尿素類、グアナミン類、ヒダントイン類であってもよい。このような架橋助剤は、単独、又は複数組合わせて添加される。架橋助剤の総量は、ウレタンプレポリマー中の−NCO基の1当量に対し、0.2〜1.2倍当量の範囲で添加されることが好ましい。
これらの架橋剤や架橋助剤は、硬化性ウレタン樹脂組成物の貯蔵安定性や硬化性、またはそれを硬化させた塗装被膜の融点やガラス転移温度(Tg)のような物性に応じ適宜選択される。
硬化性ウレタン樹脂組成物には、架橋触媒としてウレタン化触媒、例えばジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、モノブチル錫オクトエートのような錫触媒が含まれていると、架橋性、硬化性が一層向上するので好ましい。架橋触媒は予め硬化性ウレタン樹脂組成物に添加されていてもよく、熱硬化性プラスチゾル組成物に添加されていてもよい。
本発明の塗料用の熱硬化性プラスチゾル組成物は、硬化性ウレタン樹脂組成物と、アクリル樹脂微粉末とを含むものである。
熱硬化性プラスチゾル組成物は、アクリル樹脂微粉末100重量部に対して、硬化性ウレタン樹脂組成物を5〜250重量部含んでいることが好ましい。アクリル樹脂微粉末100重量部に対して、ブロック化ウレタンプレポリマーを80〜0.5重量部含んでいてもよい。
アクリル樹脂微粉末は例えば、(メタ)アクリル酸エステルと不飽和基含有カルボン酸やそのエステルまたはビニルエーテルとが共重合したアクリル樹脂、(メタ)アクリル酸エステルが重合したアクリル樹脂からなる微粉末である。これらのアクリル樹脂は、平均分子量が50000〜4000000であり、ガラス転移温度(Tg)が20〜120℃であることが好ましい。アクリル樹脂微粉末は、その粒径が大きくても100μmであると好ましく、10μm以下であると一層好ましい。硬化性ウレタン樹脂組成物中の重合体がアクリル系樹脂であるとき、それとこのアクリル樹脂微粉末とが、同種であっても異種であってもよい。
塗料用の熱硬化性プラスチゾル組成物は、硬化触媒、可塑剤、溶剤、充填剤、安定剤、難燃剤、発泡剤のような添加剤を含んでいてもよい。硬化性触媒は、ウレタン化触媒として通常使用されているジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、モノブチル錫オクトエートのような有機錫化合物;トリエチルアミンやトリエチレンジアミン、ジメチルベンジルアミンのような第三級アミンであると、架橋性や硬化性が一層向上するので好ましい。なお、これらの添加剤は、予め硬化性ウレタン樹脂組成物に添加されていてもよい。
この熱硬化性プラスチゾル組成物を塗布し加熱すると、それに含まれているブロック化ウレタンプレポリマーが、ウレタンプレポリマーとブロック化剤とに熱解裂する。複数のウレタンプレポリマーの各末端イソシアナート基同士が、架橋剤を介して結合し、順次繰り返されて、ついには網目状に重合した塗装被膜が得られる。この塗装被膜の柔軟性、伸び性、抗張力、及び接着性は、塩化ビニル樹脂含有プラスチゾル組成物で形成した被膜と同等以上である。
硬化性ウレタン樹脂組成物は、ブロック化ウレタンプレポリマー中に均一に分散または溶解した重合体と、必要に応じて架橋剤とが含まれている。
ブロック化ウレタンプレポリマーを形成するブロック化剤は、オキシム類、第二アミン類、フェノール類、アルコール類、および水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類から選ばれる少なくとも1種類であることが好ましい。具体的には、オキシム類としてアセトオキシムのようなアルドオキシム、メチルエチルケトオキシムやメチルイソブチルケトオキシムのようなケトオキシムが挙げられ、第二アミン類としてジブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミンのような第二級アルキルアミンが挙げられる。フェノール類としてアルキルフェノール、ヒドロキシ安息香酸エステルが挙げられ、アルコール類としてアルキルアルコールが挙げられ、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとして、β−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート例えばライトエステル(共栄社化学株式会社の商品名)、エポキシエステル例えばエポライト(共栄社化学株式会社の商品名)が挙げられる。
このブロック化剤は、ウレタンプレポリマーを構成する有機イソシアナート類の種類に応じて、または硬化性ウレタン樹脂組成物を添加した塗料用のプラスチゾル組成物で塗装被膜を形成する際の加熱処理温度に応じて、適宜選択される。中でもメチルエチルケトオキシム、ジシクロヘキシルアミンであると一層好ましい。
ウレタンプレポリマーを形成するポリオール類は、ポリエーテルポリオールである。ポリエーテルポリオールとして、低分子アルコールや低分子アミンやフェノールのような2〜5個の活性水素含有官能基を有する低分子化合物に、炭素数2〜6のアルキレンオキサイドを付加させた付加物が挙げられる。
このような低分子アルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ジグリセリン、ひまし油、及びこれらの誘導体が好ましく、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリンであると一層好ましい。低分子アミンとして、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンのようなアルカノールアミン;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンのような脂肪族ポリアミン;これら脂肪族ポリアミンのn−アルキル基置換体、これら脂肪族ポリアミンのアリル基置換体;トリレンジアミンのような芳香族ポリアミンのn−アルキル基置換体、芳香族ポリアミンのアリル基置換体;ピペリジンやN−アミノエチルピペリジンのような複素環ポリアミン;エチレンジアミンやジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミンのような脂肪族ポリアミンへのアルキレンオキサイドの付加物が好ましく、中でも脂肪族ポリアミン1当量へのプロピレンオキサイド0.1〜16当量の付加物がなお一層好ましい。低分子アミンは、これらの混合物であってもよい。フェノールは、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、及びビスフェノールであることが好ましい。アルキレンオキサイドは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドのいずれか、またはこれらの二種以上の混合物が好ましく、プロピレンオキサイドを50重量%以上含有する混合物であると一層好ましい。二種以上のアルキレンオキサイドの混合物を用いると、低分子ポリオール等の低分子化合物に、ランダム重合、またはブロック重合したポリオールが得られる。
またウレタンプレポリマーを形成するポリオール類は、ポリエステルポリオールであってもよい。ポリエステルポリオールとして、ジカルボン酸、ジカルボン酸エステル、ジカルボン酸ハライドのいずれかのジカルボン酸の誘導体と、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコールのような低分子ポリオール好ましくはグリセリンやジグリセリンとを重縮合させたポリエステルポリオール;このジカルボン酸の誘導体が、アルキレンオキサイドに重付加した重付加物;ε−カプロラクトンやδ−バレロラクトンのようなラクトンを、前記の低分子ポリオールで開環重合させたポリラクトンポリオールエステルが挙げられる。ジカルボン酸は、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、ダイマー酸のような脂肪族ジカルボン酸、またはその酸無水物;テレフタル酸、イソフタル酸のような芳香族ジカルボン酸、またはその酸無水物が好ましく、脂肪族ジカルボン酸であると一層好ましく、アジピン酸であるとなお一層好ましい。
さらにウレタンプレポリマーを形成するポリオール類は、ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合ポリオールであってもよい。ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合ポリオールは、例えば、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸の誘導体、またはビニル基含有化合物とが共重合したものである。
これらのポリオール類は、前記のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合ポリオールを複数混合して用いてもよい。
これらのポリオール類は、水酸基当量、すなわちポリオール類の平均分子量を、一分子中の平均水酸基数で除した水酸基一個あたりの平均分子量が、50〜2000であると好ましい。水酸基当量が50未満であると、硬化性ウレタン樹脂組成物にアクリル樹脂微粉末が添加されたプラスチゾル組成物を加熱し硬化させた塗装被膜は、結晶性が高くなって柔軟性が低くなってしまう。水酸基当量が2000より大きいと、塗装被膜の強度が著しく低下してしまう。水酸基当量が100〜1500であると一層好ましい。
ウレタンプレポリマーを形成する有機イソシアナート類は、芳香族ジイソシアナート、鎖状脂肪族ジイソシアナート、及び環状脂肪族ジイソシアナートから選ばれる少なくとも1種類の単量体、またはそれの多量体であることが好ましい。
芳香族ジイソシアナートとして、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアナートや4,4′−ジフェニルメタンジイソシアナートやそれらの任意の割合の混合物、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメライズジフェニルメタンジイソシアナート、ウレタン変性ジフェニルメタンジイソシアナート、変性ジフェニルメタンジイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナートや2,6−トリレンジイソシアナートやそれらの任意の割合の混合物、キシリレンジイソシアナート、フェニレンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、トリフェニルメタンジイソシアナート、トルイジンジイソシアナート、テトラメチルキシリレンジイソシアナート、ジフェニルスルホンジイソシアナートが挙げられ、中でもトリレンジイソシアナート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアナート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアナート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアナートであると特に好ましい。鎖状脂肪族ジイソシアナートとして、ヘキサメチレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートが挙げられる。環状脂肪族ジイソシアナートとして、水添ジフェニルメタンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、3−イソシアナートメチル−3,5,5−トリエチルシクロヘキシルイソシアナートが挙げられる。有機イソシアナート類は、芳香族ジイソシアナートや鎖状脂肪族ジイソシアナートや環状脂肪族ジイソシアナートの各単量体の混合物であってもよい。有機イソシアナート類は、芳香族ジイソシアナート、鎮状脂肪族ジイソシアナート及び環状脂肪族ジイソシアナートのいずれかから選ばれるものであってもよく、またはそれらの任意比の混合物であってもよい。有機イソシアナート類は、ウレタン変性体、二量体、三量体、カルボジイミド変性体、アロハネート変性体、ウレア変性体、またはビュレット変性体のような有機イソシアナート多量体であってもよい。
ポリオール類と有機イソシアナート類とを重縮合させてウレタンプレポリマーを調製する際、ポリオール類がその水酸基の1当量に対し、有機イソシアナート類がそのイソシアナート基の1.2〜2.0当量、好ましくは1.5〜2.0当量となるモル比で用いられると好ましい。ウレタンプレポリマーの平均分子量を残存するイソシアナート基の平均数で除したイソシアナート当量は、200〜3000であることが好ましい。イソシアナート当量が200未満であると、硬化性ウレタン樹脂組成物にアクリル樹脂微粉末が添加されたプラスチゾル組成物を加熱し、硬化させた塗装被膜が硬くて脆くなり、一方3000を越えると塗装被膜の接着性が悪くなる。イソシアナート当量が300〜1500であると一層好ましい。また、ウレタンプレポリマー中のNCO%(−NCO基1つに対するウレタンプレポリマー分子量中に占める−NCO基の分子量の割合)は、1.0〜20%である事が好ましく、2.0〜10%であると一層好ましい。
ブロック化ウレタンプレポリマーの平均分子量が、1000〜500000であることが好ましい。
硬化性ウレタン樹脂組成物は、ブロック化ウレタンプレポリマー100重量部に対して、重合体が0.2〜60重量部含まれていることが好ましく、さらに1.0〜20重量部であると一層好ましい。
重合体は、この組成物やそれを含むプラスチゾル組成物に添加される溶剤、可塑剤等に溶解する樹脂であれば、分子量や重合度が様々な公知の樹脂が使用できる。この重合体は、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種類の樹脂であることが好ましい。
重合体は、200〜4000000、重合度が1〜40000であることが好ましく、平均分子量3000〜1000000であると一層好ましい。
アクリル系樹脂として、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリルレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルの重合体が挙げられる。また、アクリル系樹脂として(メタ)アクリル酸エステルの共重合体が挙げられ、より具体的には、前記のような(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸やマレイン酸等の不飽和基含有カルボン酸、ビニルエステル、ビニルメチルエーテルやビニルブチルエーテル等のビニルエーテル、ジエチルマレートやジブチルマレート等のマレイン酸エステル、ジエチルフマレートやジブチルフマレート等のフマル酸エステルから選ばれる少なくとも1種類のビニル基含有化合物類との共重合体が挙げられる。アクリル系樹脂は、その平均分子量が2000〜4000000、重合度が20〜40000であることが好ましく、平均分子量3000〜1000000であると一層好ましい。
フェノール系樹脂として、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール等から誘導されるノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。
エポキシ系樹脂として、例えばフェノール性多核化合物とエピクロルヒドリンとを反応させ、閉環させた化合物が挙げられ、より具体的にはシリーズ化した製品として入手可能なエピコート(JER社製の商品名)アラルダイト(日本チバガイギー社製の商品名)、エピクロン(DIC社製の商品名)が挙げられる。
硬化性ウレタン樹脂組成物にアクリル系樹脂やフェノール系樹脂やエポキシ系樹脂等の前記重合体を含ませるには、例えばブロック化ウレタンプレポリマー中で、アクリル系樹脂やフェノール系樹脂やエポキシ系樹脂等の前記重合体を合成する方法で行われる。または、予めポリオール類中で前記重合体を合成後、ウレタンプレポリマーを合成してそれをブロック化する方法であってもよい。または、ウレタンプレポリマーの合成時、前記重合体を添加、溶解し、ブロック化する方法であってもよい。
硬化性ウレタン樹脂組成物は、架橋剤が含まれていなくても、ウレタンプレポリマー分子同士が架橋する自己架橋型として作用して、硬化するものである。
硬化性ウレタン樹脂組成物は、架橋剤や架橋触媒が含まれていてもよい。
架橋剤は、ウレタンプレポリマーを形成するものとして挙げられた前記のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールやビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合ポリオールのようなポリオール類と同種のものが挙げられ、また、低級アルキルアミンにアルキレンオキサイドが付加したアミノポリエーテルポリオールのようなポリオール類が挙げられ、その水酸基当量が10〜1000であると好ましい。
また架橋剤として、シュウ酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジドのような酸ヒドラジド類;1−アミノ−3−サリチルグアニジン、トリアミノグアニジンのようなアミノグアニジン類;ジシアンジアミド、n−ブチルジシアンジアミドのようなジシアンジアミド類;メチレンビスグアニル尿素のようなグアニル尿素類;アセトグアナミン、アジポグアナミン、ベンゾグアナミン、フタログアナミンのようなグアナミン類;ヘキサメトキシメチルメラミンのようなメラミン類;ヒダントイン、1−アセチルヒダントイン、グリシジルヒダントインのようなヒダントイン類;アセチルイミド、フタルイミド、サクシンイミドのような酸イミド類;シアヌル酸、イソシアヌル酸、メラミン、メチロールメラミン、TGIC(トリグリシジルイソシアヌレート)、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのようなトリアジン環含有化合物類が挙げられる。
架橋剤は、これらの中から選ばれる少なくとも1種類であることが好ましい。中でも低級アルキルアミンにアルキレンオキサイドを付加したアミノポリエーテルポリオールであると一層好ましく、脂肪族アルキルアミンにアルキレンオキサイドを付加したアミノポリエーテルポリオールでその水酸基当量を10〜400とするものであるとなお一層好ましい。
架橋剤は、ウレタンプレポリマー中の−NCO基の1当量に対し、0.5〜1.2倍当量の範囲で添加されることが好ましい。
架橋剤が前記のポリオール類であるとき、硬化性を向上させるための架橋助剤または潜在性硬化剤としても作用するアジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドのような酸ヒドラジド類;n−ブチルジシアンジアミド、ジシアンジアミドのようなジシアンジアミド類;ヘキサメトキシメチルメラミンのようなメラミン類;サクシンイミドのような酸イミド類;イソシアヌル酸のようなトリアジン環含有化合物類;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、及びヘキサメチレンジアミンのいずれかとノボラックフェノールとの付加物が、ウレタン樹脂組成物に添加されていることが好ましい。より具体的には、アミキュアー(登録商標)PN−23、同MY−24、同PN−D、同MY−D、同PN−H(いずれも味の素株式会社);フジキュアー(登録商標)FXE−1000、同FXR−1030(いずれも富士化成工業株式会社);アジピン酸ジヒドラジド(ADH)、ステアリン酸ジヒドラジド(SDH)(いずれも日本ヒドラジン株式会社)が挙げられる。架橋助剤は、アミノグアニジン類、グアニル尿素類、グアナミン類、ヒダントイン類であってもよい。このような架橋助剤は、単独、又は複数組合わせて添加される。架橋助剤の総量は、ウレタンプレポリマー中の−NCO基の1当量に対し、0.2〜1.2倍当量の範囲で添加されることが好ましい。
これらの架橋剤や架橋助剤は、硬化性ウレタン樹脂組成物の貯蔵安定性や硬化性、またはそれを硬化させた塗装被膜の融点やガラス転移温度(Tg)のような物性に応じ適宜選択される。
硬化性ウレタン樹脂組成物には、架橋触媒としてウレタン化触媒、例えばジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、モノブチル錫オクトエートのような錫触媒が含まれていると、架橋性、硬化性が一層向上するので好ましい。架橋触媒は予め硬化性ウレタン樹脂組成物に添加されていてもよく、熱硬化性プラスチゾル組成物に添加されていてもよい。
本発明の塗料用の熱硬化性プラスチゾル組成物は、硬化性ウレタン樹脂組成物と、アクリル樹脂微粉末とを含むものである。
熱硬化性プラスチゾル組成物は、アクリル樹脂微粉末100重量部に対して、硬化性ウレタン樹脂組成物を5〜250重量部含んでいることが好ましい。アクリル樹脂微粉末100重量部に対して、ブロック化ウレタンプレポリマーを80〜0.5重量部含んでいてもよい。
アクリル樹脂微粉末は例えば、(メタ)アクリル酸エステルと不飽和基含有カルボン酸やそのエステルまたはビニルエーテルとが共重合したアクリル樹脂、(メタ)アクリル酸エステルが重合したアクリル樹脂からなる微粉末である。これらのアクリル樹脂は、平均分子量が50000〜4000000であり、ガラス転移温度(Tg)が20〜120℃であることが好ましい。アクリル樹脂微粉末は、その粒径が大きくても100μmであると好ましく、10μm以下であると一層好ましい。硬化性ウレタン樹脂組成物中の重合体がアクリル系樹脂であるとき、それとこのアクリル樹脂微粉末とが、同種であっても異種であってもよい。
塗料用の熱硬化性プラスチゾル組成物は、硬化触媒、可塑剤、溶剤、充填剤、安定剤、難燃剤、発泡剤のような添加剤を含んでいてもよい。硬化性触媒は、ウレタン化触媒として通常使用されているジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、モノブチル錫オクトエートのような有機錫化合物;トリエチルアミンやトリエチレンジアミン、ジメチルベンジルアミンのような第三級アミンであると、架橋性や硬化性が一層向上するので好ましい。なお、これらの添加剤は、予め硬化性ウレタン樹脂組成物に添加されていてもよい。
この熱硬化性プラスチゾル組成物を塗布し加熱すると、それに含まれているブロック化ウレタンプレポリマーが、ウレタンプレポリマーとブロック化剤とに熱解裂する。複数のウレタンプレポリマーの各末端イソシアナート基同士が、架橋剤を介して結合し、順次繰り返されて、ついには網目状に重合した塗装被膜が得られる。この塗装被膜の柔軟性、伸び性、抗張力、及び接着性は、塩化ビニル樹脂含有プラスチゾル組成物で形成した被膜と同等以上である。
以下、本発明を適用する硬化性ウレタン樹脂組成物、それを含有し塗装被膜を形成するためのプラスチゾル組成物について、詳細に説明する。
硬化性ウレタン樹脂組成物、およびプラスチゾル組成物の一例は、以下のようにして調製される。
ポリオール類であるポリエーテルポリオールとしてグリセリンのプロピレンオキサイド付加物、有機イソシアナート類として2,4−トリレンジイソシアナート、重合体としてアクリル系樹脂である(メタ)アクリル酸エステル重合物を仕込み、40〜120℃、好ましくは40〜90℃で加熱撹拌し、末端にイソシアナート基が残存しているウレタンプレポリマーが得られる。尚、反応促進のため触媒としてジブチル錫ジラウレート、モノブチル錫オクトエートのような有機錫化合物、トリエチルアミンやトリエチレンジアミン、ジメチルベンジルアミンのような第三級アミンを用いてもよい。
このウレタンプレポリマーに、ブロック化剤であるメチルエチルケトオキシムと、架橋剤であるエチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物とを加え、同温度で加熱撹拌する。ウレタンプレポリマーの末端イソシアナート基のうち50〜100%をブロック化剤と反応させると、ブロック化ウレタンプレポリマーが得られる。尚、ブロック化ウレタンプレポリマーは、末端イソシアナート基が全てブロック化剤で保護されていても良く、末端イソシアナート基の一部がブロック化剤で保護され、一部が架橋剤で予め架橋されていてもよい。下記化学反応式[I]には、ウレタンプレポリマー(1)の末端イソシアネート基が全てメチルエチルケトオキシム(2)で保護されてブロック化ウレタンプレポリマー(3)が生成した例を示している。
これによりブロック化ウレタンプレポリマー中にアクリル系樹脂が均一に分散した硬化性ウレタン樹脂組成物が得られる。
この硬化性ウレタン樹脂組成物に、アクリル樹脂微粉末と、可塑剤、フィラーである炭酸カルシウムとを混合する。これに、架橋剤ないしは架橋助剤として働く酸ヒドラジド類、ジシアンジアミド類、メラミン類、酸イミド類、およびトリアジン環含有化合物類を単独または複数組合わせて含有されていると、均一に混練したとき、架橋密度が一層増加し硬化性が格段に向上した塗料用の熱硬化性プラスチゾル組成物が得られる。
この塗料用熱硬化性プラスチゾル組成物を塗布し、110〜130℃程度で、30分間程度加熱処理する。すると、下記化学反応式[II]で示すように、ブロック化ウレタンプレポリマー(3)が分解して、メチルエチルケトンオキシムが熱解裂して、ウレタンプレポリマー(1)の末端イソシアナート基を再生する。
アミノポリエーテルポリオールとしてエチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物であるN−オキシプロピレン−エチレンジアミンで記載された架橋剤(4)が、この末端イソシアナート基に反応して架橋し、一部架橋化合物(5)が生成する。
架橋化合物(5)にさらに順次架橋が形成される。するとアクリル系重合体を内包しつつ、遂には強固な網目状の重合体となり、柔軟性、伸び性、抗張力、難燃性、接着性などの物性が優れた塗装被膜が形成される。なお、アジピン酸ジヒドラジドやイソシアヌル酸のような前記の架橋剤を用いた場合も同様に架橋を形成する。
また、硬化性ウレタン樹脂組成物は以下のようにして調製してもよい。
グリセリンのプロピレンオキサイド付加物と、不飽和化合物である(メタ)アクリル酸エステルを仕込み、重合開始剤としてAIBN(2,2′−アゾビスイソブチロニトリル)を使用して、40〜120℃にて窒素ガスを通じながらアクリル系重合体を合成し、次に2,4−トリレンジイソシアナートを仕込み、40〜120℃、好ましくは40〜90℃で加熱撹拌して、末端にイソシアナート基が残存しているウレタンプレポリマーを得る。前記と同様に反応促進の触媒として有機錫化合物や第三級アミンを用いてもよい。これにブロック化剤であるメチルエチルケトオキシムと、架橋剤であるエチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物、酸ヒドラジド類、ジシアンジアミド類、メラミン類、酸イミド類、トリアジン環含有化合物類等を加え、同温で加熱攪拌すると、ブロック化ウレタンプレポリマーが生成し、硬化性ウレタン樹脂組成物が得られる。
以下に、本発明を適用する硬化性ウレタン樹脂組成物を調製した例を調製例1〜12に、本発明を適用外の硬化性ウレタン樹脂組成物を調製した例を比較調製例1〜4に示す。
(調製例1)
攪拌機、温度計、及び窒素導入管の付いたフラスコへ、2,4−トリレンジイソシアナート174重量部、グリセリン1当量にプロピレンオキサイド50当量が付加した平均分子量3000のポリエーテルポリオール1000重量部、平均分子量200000、Tg:70℃のアクリル系重合体140重量部、ジブチル錫ジラウレート0.3重量部を加え、窒素気流下、内温45〜90℃で撹拌、反応させ、ウレタンプレポリマーを合成した。次に、この反応混合物へ、ブロック化剤であるメチルエチルケトオキシム78.3重量部(90%当量)を35〜45℃で滴下して反応させ、ブロック化ウレタンプレポリマーを合成した。この反応混合物に、エチレンジアミン1当量にプロピレンオキサイド4当量が付加したアミノポリエーテルポリオール73重量部を添加し、50〜80℃で加熱撹拌した。反応混合物を赤外吸収スペクトル測定したとき2260cm−1のイソシアナート基の吸収ピークが観測されなくなるまで反応し、一部架橋しているブロック化ウレタンプレポリマーが含まれている樹脂組成物を得た。
(調製例2)
攪拌機、温度計、及び窒素導入管の付いたフラスコに、調製例1で用いたものと同じくグリセリン1当量にプロピレンオキサイド50当量が付加した平均分子量3000のポリエーテルポリオール1000重量部、メチルメタクリレート126重量部、n−ブチルメタクリレート63重量部、イソブチルメタクリレート126重量部を仕込み、AIBN(2,2′−アゾイソブチロニトリル)0.5重量部を添加して、40〜120℃にて窒素気流中で反応させ、重合体であるアクリル系樹脂を合成する。次に、2,4−トリレンジイソシアナート174重量部と、ジブチル錫ジラウレート0.3重量部とを仕込み、40〜90℃にて反応させ、ウレタンプレポリマーを合成する。次に、メチルエチルケトオキシム78.3重量部(90%当量)を40〜50℃にて滴下、反応させ、ブロック化ウレタンプレポリマーを合成する。この反応混合物へ、エチレンジアミンにプロピレンオキサイド4当量を付加させたアミノポリエーテルポリオール73重量部を添加し、50〜80℃で加熱撹拌した。反応混合物を赤外吸収スペクトル測定したとき2260cm−1のイソシアナート基の吸収が観測できなくなるまで反応し、一部架橋しているブロック化ウレタンプレポリマーが含まれている樹脂組成物を得た。
(調製例3)
調製例1において合成したアクリル系樹脂を含んでいるウレタンプレポリマーに、メチルエチルケトオキシム87重量部(100%当量)を35〜45℃にて滴下、反応させる。この反応混合物の赤外吸収スペクトルを測定し、2260cm−1のイソシアナート基の吸収が観測できなくなるまで反応する。このブロック化ウレタンプレポリマーにエチレンジアミンにプロピレンオキサイド4当量を付加させたアミノポリエーテルポリオール73重量部を添加した硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例4)
調製例2において合成したアクリル系重合体入りウレタンプレポリマーに、メチルエチルケトオキシム87重量部(100%当量)を35〜45℃にて滴下、反応させる。この反応混合物の赤外吸収スペクトルを測定し、2260cm−1のイソシアナート基の吸収が観測できなくなるまで反応する。このブロック化ウレタンプレポリマーに、エチレンジアミンにプロピレンオキサイド4当量を付加させたアミノポリエーテルポリオール73重量部を添加した硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例5)
調製例1で用いたグリセリンにプロピレンオキサイドが付加したポリエーテルポリオールに代えて、グリセリンにδ−バレロラクトンを開環重合させたもので平均分子量が3000のポリエステルポリオールを用いたこと以外は、調製例1と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例6)
調製例2で用いた、グリセリンにプロピレンオキサイドが付加したポリエーテルポリオールに代えて、グリセリンにδ−バレロラクトンを開環重合した平均分子量が3000のポリエステルポリオールを用いたこと以外は、調製例2と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例7)
調製例1で用いた、メチルエチルケトオキシムに代えて、ジシクロヘキシルアミンを用いたこと以外は、調製例1と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例8)
調製例2で用いた、メチルエチルケトオキシムに代えて、ジシクロヘキシルアミンを用いたこと以外は、調製例2と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例9)
調製例1で用いた、2,4−トリレンジイソシアナートに代えて、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアナート及び4,4′−ジフェニルメタンジイソシアナートの混合物を用いたこと以外は、調製例1と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例10)
調製例2で用いた2,4−トリレンジイソシアナートに代えて、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアナート及び4,4′−ジフェニルメタンジイソシアナートの混合物を用いたこと以外は、調製例2と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例11)
調製例3の架橋剤であるアミノポリエーテルポリオールを用いなかったこと以外は、調製例3と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例12)
調製例4の架橋剤であるアミノポリエーテルポリオールを用いなかったこと以外は、調製例4と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(比較調製例1)
調製例1で用いたアクリル系重合体を用いなかったこと以外は、調製例1と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(比較調製例2)
調製例3において、アクリル系重合体を用いなかったこと以外は、調製例3と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(比較調製例3)
調製例3において、アクリル系重合体と、架橋剤であるアミノポリエーテルポリオールとを用いなかったこと以外は、調製例3と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(比較調製例4)
調製例5においてアクリル系重合体を用いなかったこと以外は、調製例5と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(実施例1〜12、及び比較例1〜4)
それぞれ調製例1〜12、及び比較調製例1〜4で調製した硬化性ウレタン樹脂組成物10重量部と、アクリル樹脂微粉末としてゼオンF−340(日本ゼオン株式会社製の商品名)24重量部、可塑剤としてジイソノニルフタレート(DINP)36重量部、充填剤として炭酸カルシウムであるカルシーズPL−10(神島化学工業株式会社製の商品名)40重量部、架橋触媒としてジブチル錫ジラウレート(DBTL)であるS−CAT−1(三共有機合成株式会社製の商品名)0.1重量部、潜在性硬化剤としてアジピン酸ジヒドラジド(ADH)0.2重量部とを混練機に仕込み、30分間混練、脱泡して、それぞれ実施例1〜12の塗料用熱硬化性プラスチゾル組成物、及び比較例1〜4のプラスチゾル組成物を調製した。
実施例1〜12、及び比較例1〜4の塗料用熱硬化性プラスチゾル組成物について、貯蔵安定試験を行った。また、これらプラスチゾル組成物をカチオン塗装鋼板に塗布し、加熱、硬化させて形成した塗装被膜について、接着強度を調べる耐チッピング試験、耐水後の耐チッピング試験、常温及び−30℃での伸び率試験、及び吸湿発泡試験を行った。
(貯蔵安定性試験)
各々の塗料用熱硬化性プラスチゾル組成物について、BH型粘度計を用いて25℃での粘度を測定した。その後、各々のプラスチゾル組成物を35℃で10日間貯蔵した後、再び25℃での粘度を測定した。貯蔵後の増粘率が30%未満のものを○、30%以上のものを×とする二段階で評価した。その結果を表1に示す。
(耐チッピング試験:接着強度試験)
各々の塗料用熱硬化性プラスチゾル組成物を、50〜100mm四方で厚さ0.5mmになるように、基材であるカチオン塗装鋼板に塗布して、120℃で30分間加熱処理した後、常温で1日間開放乾燥して試験片とした。この試験片を60°に傾け、その表面の直径4cmの円内に、直径6mm厚さ3mmのナットを30秒内に落下させる。ナットによって塗布被膜の表面が剥がれたり、塗布面が浮いたり、または擦り切れたりして、カチオン塗装面が露出するまで、ナットの落下を繰り返し行った時のナット総重量を接着強度値とする。接着強度値が40Kg以上の強接着性のものを○、40Kg未満の弱接着性のものを×とする二段階で評価した。その結果を表1に示す。
(耐水後耐チッピング試験:接着強度試験)
各々の塗料用熱硬化性プラスチゾル組成物を、50〜100mm四方で厚さ0.5mmのカチオン電着塗装鋼板である基材に塗布し、120℃で30分間、加熱処理した後、常温で1日間開放乾燥した試験片を40℃の水中に14日間浸漬した。これを取り出して水分を拭き取り、常温で1日間開放乾燥して試験片とした。耐水接着強度試験は、前記の接着強度試験と同様に行い、接着強度値が20Kg以上の強耐水接着性のものを○、20Kg未満の弱耐水接着性のものを×とする二段階で評価した。その結果を表1に示す。
(25℃伸び率測定試験)
ガラス板に各々の塗料用熱硬化性プラスチゾル組成物を膜厚1mmとなるように塗布し、120℃で30分間、加熱処理した後、常温で1日間開放乾燥し、ダンベル型に打ち抜き、試験片を作成した。これをレオメーター(Model:CR−2000D、または同CR−300(Sun Seientifie Co LTD社製)を用いて、同温で恒温恒湿の状態での試験片の伸び率を測定した。伸び率が300%以上のものを○、250〜299%のものを△、250%未満であったものを×とする三段階で評価した。その結果を表1に示す。
(−30℃伸び率測定試験)
前記25℃伸び率測定試験と同様にして、試験片を作成した。その後、−30℃の雰囲気中での試験片の伸び率を同じレオメーターを用いて測定した。伸び率が75%以上のものを○、75%未満であったものを×とする二段階で評価した。その結果を表1に示す。
(吸湿発泡試験)
カチオン電着塗装鋼板に、各々の塗料用熱硬化性プラスチゾル組成物を縦50mm、横100mm、厚さ0.5mmに塗布して試験片とした。この試験片を30℃、湿度80%の雰囲気中に1日間曝露後、110℃で10分間の仮加熱、140℃で30分間の加熱処理を行った。得られた塗装被膜表面の発泡、フクレの有無を目視で観測した。発泡、フクレが認められなかったものを○、発泡、フクレが認められたものを×とする二段階で評価した。その結果を表1に示した。
表1から明らかなように、実施例1〜12の塗料用熱硬化性プラスチゾル組成物は貯蔵安定性に優れ、それを加熱、硬化させた塗装被膜は接着性に優れ、伸び性や吸湿発泡性が良好であった。一方、比較例1〜4のプラスチゾル組成物を加熱、硬化させた塗装被膜は接着性、伸び性、吸湿発泡性が悪かった。
次に、本発明を適用する別な硬化性ウレタン樹脂組成物を作成した例を調製例13〜20に、本発明を適用外の別な硬化性ウレタン樹脂組成物を調製した例を比較調製例5〜10に示す。
(調製例13)
攪拌機、温度計、及び窒素導入管の付いたフラスコへ、2,4−トリレンジイソシアナート174重量部、グリセリン1当量にプロピレンオキサイド50当量が付加した平均分子量3000のポリエーテルポリオール1000重量部、平均分子量200000のアクリル樹脂140重量部、ジブチル錫ジラウレート0.3重量部を加え、窒素気流下、内温40〜90℃で撹拌、反応させ、ウレタンプレポリマーを合成した。次に、この反応混合物に、ブロック化剤であるメチルエチルケトオキシム78.3重量部(90%当量)を40〜50℃で滴下して反応させ、ブロック化ウレタンプレポリマーを合成した。この反応混合物へ、エチレンジアミン1当量にプロピレンオキサイド4当量が付加したアミノポリエーテルポリオール73重量部を添加し、50〜80℃で加熱撹拌した。反応混合物を赤外吸収スペクトルで測定したとき2260cm−1のイソシアナート基の吸収ピークが観測されなくなるまで反応し、一部架橋しているブロック化ウレタンプレポリマーが含まれている樹脂組成物を得た。
(調製例14)
攪拌機、温度計、及び窒素導入管の付いたフラスコに、調製例13で用いたものと同じくグリセリン1当量にプロピレンオキサイド50当量が付加した平均分子量3000のポリエーテルポリオール1000重量部、メチルメタクリレート126重量部、n−ブチルメタクリレート63重量部、イソブチルメタクリレート126重量部を仕込み、AIBN(2,2′−アゾイソブチロニトリル)0.5重量部を添加して、40〜120℃にて窒素気流中で反応させ、重合体であるアクリル系樹脂を合成する。次に、2,4−トリレンジイソシアナート174重量部と、ジブチル錫ジラウレート0.3重量部とを仕込み、40〜90℃にて反応させ、ウレタンプレポリマーを合成する。次に、メチルエチルケトオキシム78.3重量部(90%当量)を40〜50℃にて滴下、反応させ、ブロック化ウレタンプレポリマーを合成する。この反応混合物へ、エチレンジアミンにプロピレンオキサイド4当量を付加させたアミノポリエーテルポリオール73重量部を添加し、50〜80℃で加熱撹拌した。反応混合物を赤外吸収スペクトル測定したとき2260cm−1のイソシアナート基の吸収が観測できなくなるまで反応し、一部架橋しているブロック化ウレタンプレポリマーが含まれている樹脂組成物を得た。
(調製例15)
調製例13で用いたメチルエチルケトオキシムに代えて、ジシクロヘキシルアミン172.2重量部(95%当量)を40〜45℃にて滴下して反応させ、ブロック化ウレタンプレポリマーを合成したこと以外は、調製例13と同様にして、硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例16)
調製例13で用いた、グリセリンにプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールに代えて、グリセリンにδ−バレロラクトンを開環重合させたもので平均分子量が3000のポリエステルポリオールを用いたこと以外は、調製13と同様にして、硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例17)
調製例13で用いた、メチルエチルケトオキシムに代えて、ジシクロヘキシルアミン172.2重量部(95%当量)を40〜45℃にて滴下して反応させ、ブロック化ウレタンプレポリマーを合成したこと以外は、調製例13と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例18)
調製例13で用いた、2,4−トリレンジイソシアナートに代えて、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアナート及び4,4′−ジフェニルメタンジイソシアナートの混合物を用いたこと以外は、調製例13と同様にして、硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例19)
調製例18で用いた、メチルエチルケトオキシムに代えて、ジシクロヘキシルアミン172.2重量部(95%当量)を40〜45℃にて滴下、反応させ、ブロック化ウレタンプレポリマーを合成した以外は、調製例18と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例20)
調製例13で用いた、アクリル樹脂に代えて、ノボラック型フェノール樹脂(平均分子量:200〜4000)を用いたこと以外は、調製例13と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例21)
調製例13で用いた、アクリル樹脂に代えて、エポキシ樹脂(平均分子量:400〜2500)を用い、アミノポリエーテルポリオールに代えて、多官能ポリオール(ポリグリセリン:平均分子量1300〜1500)を用いたこと以外は、調製例13と同様にしてウレタン樹脂組成物を得た。
なお、得られた調製例13〜21までの硬化性ウレタン樹脂組成物は、架橋助剤として、表2に記載のとおり、酸ヒドラジド類であるアジピン酸ジヒドラジド(ADH)、ジシアンジアミド類、メラミン類であるヘキサメトキシメチルメラミン、酸イミド類であるサクシンイミド、トリアジン環含有化合物類であるイソシアヌル酸を単独、または複数添加し、また架橋触媒として、ジブチル錫ジラウレートを添加し、ウレタン樹脂組成物として、評価に用いた。
(比較調製例5)
調製例13で用いた、アクリル樹脂を使用しなかった以外は、調製例13と同様にしてウレタン樹脂組成物を得た。
(比較調製例6)
調製例13で用いたエチレンジアミン1当量にプロピレンオキサイド4当量を付加させたアミノポリエーテルポリオールを、使用しなかった以外は、調製例13と同様にしてウレタン樹脂組成物を得た。
(比較調製例7)
比較調製例7のウレタン樹脂組成物は、調製例13の硬化性ウレタン樹脂組成物に添加される架橋助剤が、含まれていないものである。
(比較調製例8)
比較調製例8のウレタン樹脂組成物は、調製例13の硬化性ウレタン樹脂組成物に添加される硬化触媒(ジブチル錫ジラウレート)が、含まれていないものである。
(比較調製例9)
比較調製例9のウレタン樹脂組成物は、比較調製例6で得た、アミノポリエーテルポリオールを含有しないウレタン樹脂組成物に、架橋助剤としてアジピン酸ジヒドラジドを表2のとおり添加したものである。
(比較調製例10)
比較調製例10のウレタン樹脂組成物は、比較調製例6で得たアミノポリエーテルポリオールを含有しないウレタン樹脂組成物に添加される硬化触媒(ジブチル錫ジラウレート)が、含まれていないものである。
(実施例13〜21、及び比較例5〜10)
調製例13〜21で得た硬化性ウレタン樹脂組成物及び比較調製例5〜10で得たウレタン樹脂組成物の各15重量部と、アクリル樹脂微粉末としてコア/シェル型で平均分子量700000であり平均粒径が0.5μmのものの24重量部、可塑剤としてジイソノニルフタレート(DINP)の35重量部、充填剤として炭酸カルシウムであるネオライトSP(竹原化学工業社製の商品名)の26重量部とを混練機に仕込み、30分間混練し、脱泡した後、実施例13〜21の塗料用熱硬化性プラスチゾル組成物、及び比較例5〜10のプラスチゾル組成物を調製した。
実施例13〜21、及び比較例5〜10のプラスチゾル組成物について、貯蔵安定性試験を行った。また、これらのプラスチゾル組成物をカチオン電着塗装鋼板に塗布し、加熱、硬化させて形成した塗装被膜について、耐チッピング性試験、耐水後耐チッピング性試験、接着剪断試験、及び吸湿発泡試験を行った。
(貯蔵安定性試験)
実施例13〜21、及び比較例5〜10のプラスチゾル組成物について、BH型粘度計を用いて25℃での粘度を測定した。その後、各々のプラスチゾルを40℃で10日間貯蔵した後、再び25℃での粘度を測定した。貯蔵後の増粘率が30%未満の物を○、30%以上の物を×、とする二段階で評価した。その結果を表2に示す。
(耐チッピング性試験:接着強度試験)
各々のプラスチゾル組成物を、50〜100mm四方で、ドライ膜厚0.4mmになるように、基材であるカチオン電着塗装鋼板に塗布して、120℃で30分間、加熱処理した後、常温で一日間開放乾燥して試験片とした。この試験片を60°に傾け、この塗膜面に垂直に立てた内径20mm、長さ2mのパイプの下端を当てて、パイプの上端からM−4号ナット(JIS)を落下させ、素地が露出するまでのナットの総重量を測定した。ナット総重量:35kg以上を○、35Kg未満の弱接着性のものを×とする二段階で評価した。その結果を表2に示す。
(耐水後耐チッピング性試験:接着強度試験)
各々のプラスチゾル組成物を、耐チッピング性試験と同様に試験片を作成し、常温で一日間開放乾燥した試験片を、40℃の水中に14日間浸漬した後、水中より取り出して水分を拭き取り、常温で一日間解放乾燥して試験片とした。耐水後チッピング試験は、前記のチッピング試験と同様に行い、素地が露出するまでのナットの総量を測定した。ナット総重量が20Kg以上のものを○、20Kg未満のものを×とする二段階で評価した。その結果を表2に示す。
(接着剪断試験)
各々の各々のプラスチゾル組成物を、カチオン電着塗装を施した、25mm幅の鋼板端部に、塗布し、スペーサーを入れて、プラスチゾルの塗布体積が25mm×25mm、厚さ3mmになる様に、2枚のカチオン電着塗装鋼板を貼り合わせ、130℃で30分間、加熱処理した後、常温で一日間開放乾燥して試験片とした。この試験片を引張り剪断試験器の両端に取り付け、50mm/minの速度で引っ張った。その引張り強度を確認し、また破壊面の状態について、凝集破壊(CF)であるか、界面破壊(AF)であるかを観察した。尚、界面破壊面の面積の欄の数値は、25mm×25mm中の界面破壊面の面積の割合を示す。その結果を表2に示す。
(吸湿発泡試験)
各々のプラスチゾル組成物を、50〜100mm四方でドライ膜厚が0.4mmとなるように塗布し、この試験片を30℃、湿度80%の雰囲気中に1日間暴露後、110℃で10分間の仮加熱、140℃30分間の加熱処理を行った。得られた塗装被膜表面の発泡、膨れの有無を目視で観察した。発泡、膨れが認められなかった物を○、発泡、膨れが認められた物を×とする二段階で評価した。結果を表2に示した。
表2から明らかなように、実施例13〜21のプラスチゾル組成物は、貯蔵安定性に優れ、それを加熱、硬化させた塗装被膜は接着性に優れ、伸び性や吸湿発泡性が良好であった。一方、比較例のプラスチゾル組成物は、比較例6、8、10のように硬化性が悪く評価の対象にならなかったり、比較例5、7、9のように硬化性が悪くなくても吸湿発泡性が悪かったり、比較例9のように耐水後の耐チッピング試験結果が極端に悪かったりした。
硬化性ウレタン樹脂組成物、およびプラスチゾル組成物の一例は、以下のようにして調製される。
ポリオール類であるポリエーテルポリオールとしてグリセリンのプロピレンオキサイド付加物、有機イソシアナート類として2,4−トリレンジイソシアナート、重合体としてアクリル系樹脂である(メタ)アクリル酸エステル重合物を仕込み、40〜120℃、好ましくは40〜90℃で加熱撹拌し、末端にイソシアナート基が残存しているウレタンプレポリマーが得られる。尚、反応促進のため触媒としてジブチル錫ジラウレート、モノブチル錫オクトエートのような有機錫化合物、トリエチルアミンやトリエチレンジアミン、ジメチルベンジルアミンのような第三級アミンを用いてもよい。
このウレタンプレポリマーに、ブロック化剤であるメチルエチルケトオキシムと、架橋剤であるエチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物とを加え、同温度で加熱撹拌する。ウレタンプレポリマーの末端イソシアナート基のうち50〜100%をブロック化剤と反応させると、ブロック化ウレタンプレポリマーが得られる。尚、ブロック化ウレタンプレポリマーは、末端イソシアナート基が全てブロック化剤で保護されていても良く、末端イソシアナート基の一部がブロック化剤で保護され、一部が架橋剤で予め架橋されていてもよい。下記化学反応式[I]には、ウレタンプレポリマー(1)の末端イソシアネート基が全てメチルエチルケトオキシム(2)で保護されてブロック化ウレタンプレポリマー(3)が生成した例を示している。
これによりブロック化ウレタンプレポリマー中にアクリル系樹脂が均一に分散した硬化性ウレタン樹脂組成物が得られる。
この硬化性ウレタン樹脂組成物に、アクリル樹脂微粉末と、可塑剤、フィラーである炭酸カルシウムとを混合する。これに、架橋剤ないしは架橋助剤として働く酸ヒドラジド類、ジシアンジアミド類、メラミン類、酸イミド類、およびトリアジン環含有化合物類を単独または複数組合わせて含有されていると、均一に混練したとき、架橋密度が一層増加し硬化性が格段に向上した塗料用の熱硬化性プラスチゾル組成物が得られる。
この塗料用熱硬化性プラスチゾル組成物を塗布し、110〜130℃程度で、30分間程度加熱処理する。すると、下記化学反応式[II]で示すように、ブロック化ウレタンプレポリマー(3)が分解して、メチルエチルケトンオキシムが熱解裂して、ウレタンプレポリマー(1)の末端イソシアナート基を再生する。
アミノポリエーテルポリオールとしてエチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物であるN−オキシプロピレン−エチレンジアミンで記載された架橋剤(4)が、この末端イソシアナート基に反応して架橋し、一部架橋化合物(5)が生成する。
架橋化合物(5)にさらに順次架橋が形成される。するとアクリル系重合体を内包しつつ、遂には強固な網目状の重合体となり、柔軟性、伸び性、抗張力、難燃性、接着性などの物性が優れた塗装被膜が形成される。なお、アジピン酸ジヒドラジドやイソシアヌル酸のような前記の架橋剤を用いた場合も同様に架橋を形成する。
また、硬化性ウレタン樹脂組成物は以下のようにして調製してもよい。
グリセリンのプロピレンオキサイド付加物と、不飽和化合物である(メタ)アクリル酸エステルを仕込み、重合開始剤としてAIBN(2,2′−アゾビスイソブチロニトリル)を使用して、40〜120℃にて窒素ガスを通じながらアクリル系重合体を合成し、次に2,4−トリレンジイソシアナートを仕込み、40〜120℃、好ましくは40〜90℃で加熱撹拌して、末端にイソシアナート基が残存しているウレタンプレポリマーを得る。前記と同様に反応促進の触媒として有機錫化合物や第三級アミンを用いてもよい。これにブロック化剤であるメチルエチルケトオキシムと、架橋剤であるエチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物、酸ヒドラジド類、ジシアンジアミド類、メラミン類、酸イミド類、トリアジン環含有化合物類等を加え、同温で加熱攪拌すると、ブロック化ウレタンプレポリマーが生成し、硬化性ウレタン樹脂組成物が得られる。
以下に、本発明を適用する硬化性ウレタン樹脂組成物を調製した例を調製例1〜12に、本発明を適用外の硬化性ウレタン樹脂組成物を調製した例を比較調製例1〜4に示す。
(調製例1)
攪拌機、温度計、及び窒素導入管の付いたフラスコへ、2,4−トリレンジイソシアナート174重量部、グリセリン1当量にプロピレンオキサイド50当量が付加した平均分子量3000のポリエーテルポリオール1000重量部、平均分子量200000、Tg:70℃のアクリル系重合体140重量部、ジブチル錫ジラウレート0.3重量部を加え、窒素気流下、内温45〜90℃で撹拌、反応させ、ウレタンプレポリマーを合成した。次に、この反応混合物へ、ブロック化剤であるメチルエチルケトオキシム78.3重量部(90%当量)を35〜45℃で滴下して反応させ、ブロック化ウレタンプレポリマーを合成した。この反応混合物に、エチレンジアミン1当量にプロピレンオキサイド4当量が付加したアミノポリエーテルポリオール73重量部を添加し、50〜80℃で加熱撹拌した。反応混合物を赤外吸収スペクトル測定したとき2260cm−1のイソシアナート基の吸収ピークが観測されなくなるまで反応し、一部架橋しているブロック化ウレタンプレポリマーが含まれている樹脂組成物を得た。
(調製例2)
攪拌機、温度計、及び窒素導入管の付いたフラスコに、調製例1で用いたものと同じくグリセリン1当量にプロピレンオキサイド50当量が付加した平均分子量3000のポリエーテルポリオール1000重量部、メチルメタクリレート126重量部、n−ブチルメタクリレート63重量部、イソブチルメタクリレート126重量部を仕込み、AIBN(2,2′−アゾイソブチロニトリル)0.5重量部を添加して、40〜120℃にて窒素気流中で反応させ、重合体であるアクリル系樹脂を合成する。次に、2,4−トリレンジイソシアナート174重量部と、ジブチル錫ジラウレート0.3重量部とを仕込み、40〜90℃にて反応させ、ウレタンプレポリマーを合成する。次に、メチルエチルケトオキシム78.3重量部(90%当量)を40〜50℃にて滴下、反応させ、ブロック化ウレタンプレポリマーを合成する。この反応混合物へ、エチレンジアミンにプロピレンオキサイド4当量を付加させたアミノポリエーテルポリオール73重量部を添加し、50〜80℃で加熱撹拌した。反応混合物を赤外吸収スペクトル測定したとき2260cm−1のイソシアナート基の吸収が観測できなくなるまで反応し、一部架橋しているブロック化ウレタンプレポリマーが含まれている樹脂組成物を得た。
(調製例3)
調製例1において合成したアクリル系樹脂を含んでいるウレタンプレポリマーに、メチルエチルケトオキシム87重量部(100%当量)を35〜45℃にて滴下、反応させる。この反応混合物の赤外吸収スペクトルを測定し、2260cm−1のイソシアナート基の吸収が観測できなくなるまで反応する。このブロック化ウレタンプレポリマーにエチレンジアミンにプロピレンオキサイド4当量を付加させたアミノポリエーテルポリオール73重量部を添加した硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例4)
調製例2において合成したアクリル系重合体入りウレタンプレポリマーに、メチルエチルケトオキシム87重量部(100%当量)を35〜45℃にて滴下、反応させる。この反応混合物の赤外吸収スペクトルを測定し、2260cm−1のイソシアナート基の吸収が観測できなくなるまで反応する。このブロック化ウレタンプレポリマーに、エチレンジアミンにプロピレンオキサイド4当量を付加させたアミノポリエーテルポリオール73重量部を添加した硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例5)
調製例1で用いたグリセリンにプロピレンオキサイドが付加したポリエーテルポリオールに代えて、グリセリンにδ−バレロラクトンを開環重合させたもので平均分子量が3000のポリエステルポリオールを用いたこと以外は、調製例1と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例6)
調製例2で用いた、グリセリンにプロピレンオキサイドが付加したポリエーテルポリオールに代えて、グリセリンにδ−バレロラクトンを開環重合した平均分子量が3000のポリエステルポリオールを用いたこと以外は、調製例2と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例7)
調製例1で用いた、メチルエチルケトオキシムに代えて、ジシクロヘキシルアミンを用いたこと以外は、調製例1と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例8)
調製例2で用いた、メチルエチルケトオキシムに代えて、ジシクロヘキシルアミンを用いたこと以外は、調製例2と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例9)
調製例1で用いた、2,4−トリレンジイソシアナートに代えて、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアナート及び4,4′−ジフェニルメタンジイソシアナートの混合物を用いたこと以外は、調製例1と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例10)
調製例2で用いた2,4−トリレンジイソシアナートに代えて、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアナート及び4,4′−ジフェニルメタンジイソシアナートの混合物を用いたこと以外は、調製例2と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例11)
調製例3の架橋剤であるアミノポリエーテルポリオールを用いなかったこと以外は、調製例3と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例12)
調製例4の架橋剤であるアミノポリエーテルポリオールを用いなかったこと以外は、調製例4と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(比較調製例1)
調製例1で用いたアクリル系重合体を用いなかったこと以外は、調製例1と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(比較調製例2)
調製例3において、アクリル系重合体を用いなかったこと以外は、調製例3と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(比較調製例3)
調製例3において、アクリル系重合体と、架橋剤であるアミノポリエーテルポリオールとを用いなかったこと以外は、調製例3と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(比較調製例4)
調製例5においてアクリル系重合体を用いなかったこと以外は、調製例5と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(実施例1〜12、及び比較例1〜4)
それぞれ調製例1〜12、及び比較調製例1〜4で調製した硬化性ウレタン樹脂組成物10重量部と、アクリル樹脂微粉末としてゼオンF−340(日本ゼオン株式会社製の商品名)24重量部、可塑剤としてジイソノニルフタレート(DINP)36重量部、充填剤として炭酸カルシウムであるカルシーズPL−10(神島化学工業株式会社製の商品名)40重量部、架橋触媒としてジブチル錫ジラウレート(DBTL)であるS−CAT−1(三共有機合成株式会社製の商品名)0.1重量部、潜在性硬化剤としてアジピン酸ジヒドラジド(ADH)0.2重量部とを混練機に仕込み、30分間混練、脱泡して、それぞれ実施例1〜12の塗料用熱硬化性プラスチゾル組成物、及び比較例1〜4のプラスチゾル組成物を調製した。
実施例1〜12、及び比較例1〜4の塗料用熱硬化性プラスチゾル組成物について、貯蔵安定試験を行った。また、これらプラスチゾル組成物をカチオン塗装鋼板に塗布し、加熱、硬化させて形成した塗装被膜について、接着強度を調べる耐チッピング試験、耐水後の耐チッピング試験、常温及び−30℃での伸び率試験、及び吸湿発泡試験を行った。
(貯蔵安定性試験)
各々の塗料用熱硬化性プラスチゾル組成物について、BH型粘度計を用いて25℃での粘度を測定した。その後、各々のプラスチゾル組成物を35℃で10日間貯蔵した後、再び25℃での粘度を測定した。貯蔵後の増粘率が30%未満のものを○、30%以上のものを×とする二段階で評価した。その結果を表1に示す。
(耐チッピング試験:接着強度試験)
各々の塗料用熱硬化性プラスチゾル組成物を、50〜100mm四方で厚さ0.5mmになるように、基材であるカチオン塗装鋼板に塗布して、120℃で30分間加熱処理した後、常温で1日間開放乾燥して試験片とした。この試験片を60°に傾け、その表面の直径4cmの円内に、直径6mm厚さ3mmのナットを30秒内に落下させる。ナットによって塗布被膜の表面が剥がれたり、塗布面が浮いたり、または擦り切れたりして、カチオン塗装面が露出するまで、ナットの落下を繰り返し行った時のナット総重量を接着強度値とする。接着強度値が40Kg以上の強接着性のものを○、40Kg未満の弱接着性のものを×とする二段階で評価した。その結果を表1に示す。
(耐水後耐チッピング試験:接着強度試験)
各々の塗料用熱硬化性プラスチゾル組成物を、50〜100mm四方で厚さ0.5mmのカチオン電着塗装鋼板である基材に塗布し、120℃で30分間、加熱処理した後、常温で1日間開放乾燥した試験片を40℃の水中に14日間浸漬した。これを取り出して水分を拭き取り、常温で1日間開放乾燥して試験片とした。耐水接着強度試験は、前記の接着強度試験と同様に行い、接着強度値が20Kg以上の強耐水接着性のものを○、20Kg未満の弱耐水接着性のものを×とする二段階で評価した。その結果を表1に示す。
(25℃伸び率測定試験)
ガラス板に各々の塗料用熱硬化性プラスチゾル組成物を膜厚1mmとなるように塗布し、120℃で30分間、加熱処理した後、常温で1日間開放乾燥し、ダンベル型に打ち抜き、試験片を作成した。これをレオメーター(Model:CR−2000D、または同CR−300(Sun Seientifie Co LTD社製)を用いて、同温で恒温恒湿の状態での試験片の伸び率を測定した。伸び率が300%以上のものを○、250〜299%のものを△、250%未満であったものを×とする三段階で評価した。その結果を表1に示す。
(−30℃伸び率測定試験)
前記25℃伸び率測定試験と同様にして、試験片を作成した。その後、−30℃の雰囲気中での試験片の伸び率を同じレオメーターを用いて測定した。伸び率が75%以上のものを○、75%未満であったものを×とする二段階で評価した。その結果を表1に示す。
(吸湿発泡試験)
カチオン電着塗装鋼板に、各々の塗料用熱硬化性プラスチゾル組成物を縦50mm、横100mm、厚さ0.5mmに塗布して試験片とした。この試験片を30℃、湿度80%の雰囲気中に1日間曝露後、110℃で10分間の仮加熱、140℃で30分間の加熱処理を行った。得られた塗装被膜表面の発泡、フクレの有無を目視で観測した。発泡、フクレが認められなかったものを○、発泡、フクレが認められたものを×とする二段階で評価した。その結果を表1に示した。
表1から明らかなように、実施例1〜12の塗料用熱硬化性プラスチゾル組成物は貯蔵安定性に優れ、それを加熱、硬化させた塗装被膜は接着性に優れ、伸び性や吸湿発泡性が良好であった。一方、比較例1〜4のプラスチゾル組成物を加熱、硬化させた塗装被膜は接着性、伸び性、吸湿発泡性が悪かった。
次に、本発明を適用する別な硬化性ウレタン樹脂組成物を作成した例を調製例13〜20に、本発明を適用外の別な硬化性ウレタン樹脂組成物を調製した例を比較調製例5〜10に示す。
(調製例13)
攪拌機、温度計、及び窒素導入管の付いたフラスコへ、2,4−トリレンジイソシアナート174重量部、グリセリン1当量にプロピレンオキサイド50当量が付加した平均分子量3000のポリエーテルポリオール1000重量部、平均分子量200000のアクリル樹脂140重量部、ジブチル錫ジラウレート0.3重量部を加え、窒素気流下、内温40〜90℃で撹拌、反応させ、ウレタンプレポリマーを合成した。次に、この反応混合物に、ブロック化剤であるメチルエチルケトオキシム78.3重量部(90%当量)を40〜50℃で滴下して反応させ、ブロック化ウレタンプレポリマーを合成した。この反応混合物へ、エチレンジアミン1当量にプロピレンオキサイド4当量が付加したアミノポリエーテルポリオール73重量部を添加し、50〜80℃で加熱撹拌した。反応混合物を赤外吸収スペクトルで測定したとき2260cm−1のイソシアナート基の吸収ピークが観測されなくなるまで反応し、一部架橋しているブロック化ウレタンプレポリマーが含まれている樹脂組成物を得た。
(調製例14)
攪拌機、温度計、及び窒素導入管の付いたフラスコに、調製例13で用いたものと同じくグリセリン1当量にプロピレンオキサイド50当量が付加した平均分子量3000のポリエーテルポリオール1000重量部、メチルメタクリレート126重量部、n−ブチルメタクリレート63重量部、イソブチルメタクリレート126重量部を仕込み、AIBN(2,2′−アゾイソブチロニトリル)0.5重量部を添加して、40〜120℃にて窒素気流中で反応させ、重合体であるアクリル系樹脂を合成する。次に、2,4−トリレンジイソシアナート174重量部と、ジブチル錫ジラウレート0.3重量部とを仕込み、40〜90℃にて反応させ、ウレタンプレポリマーを合成する。次に、メチルエチルケトオキシム78.3重量部(90%当量)を40〜50℃にて滴下、反応させ、ブロック化ウレタンプレポリマーを合成する。この反応混合物へ、エチレンジアミンにプロピレンオキサイド4当量を付加させたアミノポリエーテルポリオール73重量部を添加し、50〜80℃で加熱撹拌した。反応混合物を赤外吸収スペクトル測定したとき2260cm−1のイソシアナート基の吸収が観測できなくなるまで反応し、一部架橋しているブロック化ウレタンプレポリマーが含まれている樹脂組成物を得た。
(調製例15)
調製例13で用いたメチルエチルケトオキシムに代えて、ジシクロヘキシルアミン172.2重量部(95%当量)を40〜45℃にて滴下して反応させ、ブロック化ウレタンプレポリマーを合成したこと以外は、調製例13と同様にして、硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例16)
調製例13で用いた、グリセリンにプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールに代えて、グリセリンにδ−バレロラクトンを開環重合させたもので平均分子量が3000のポリエステルポリオールを用いたこと以外は、調製13と同様にして、硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例17)
調製例13で用いた、メチルエチルケトオキシムに代えて、ジシクロヘキシルアミン172.2重量部(95%当量)を40〜45℃にて滴下して反応させ、ブロック化ウレタンプレポリマーを合成したこと以外は、調製例13と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例18)
調製例13で用いた、2,4−トリレンジイソシアナートに代えて、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアナート及び4,4′−ジフェニルメタンジイソシアナートの混合物を用いたこと以外は、調製例13と同様にして、硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例19)
調製例18で用いた、メチルエチルケトオキシムに代えて、ジシクロヘキシルアミン172.2重量部(95%当量)を40〜45℃にて滴下、反応させ、ブロック化ウレタンプレポリマーを合成した以外は、調製例18と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例20)
調製例13で用いた、アクリル樹脂に代えて、ノボラック型フェノール樹脂(平均分子量:200〜4000)を用いたこと以外は、調製例13と同様にして硬化性ウレタン樹脂組成物を得た。
(調製例21)
調製例13で用いた、アクリル樹脂に代えて、エポキシ樹脂(平均分子量:400〜2500)を用い、アミノポリエーテルポリオールに代えて、多官能ポリオール(ポリグリセリン:平均分子量1300〜1500)を用いたこと以外は、調製例13と同様にしてウレタン樹脂組成物を得た。
なお、得られた調製例13〜21までの硬化性ウレタン樹脂組成物は、架橋助剤として、表2に記載のとおり、酸ヒドラジド類であるアジピン酸ジヒドラジド(ADH)、ジシアンジアミド類、メラミン類であるヘキサメトキシメチルメラミン、酸イミド類であるサクシンイミド、トリアジン環含有化合物類であるイソシアヌル酸を単独、または複数添加し、また架橋触媒として、ジブチル錫ジラウレートを添加し、ウレタン樹脂組成物として、評価に用いた。
(比較調製例5)
調製例13で用いた、アクリル樹脂を使用しなかった以外は、調製例13と同様にしてウレタン樹脂組成物を得た。
(比較調製例6)
調製例13で用いたエチレンジアミン1当量にプロピレンオキサイド4当量を付加させたアミノポリエーテルポリオールを、使用しなかった以外は、調製例13と同様にしてウレタン樹脂組成物を得た。
(比較調製例7)
比較調製例7のウレタン樹脂組成物は、調製例13の硬化性ウレタン樹脂組成物に添加される架橋助剤が、含まれていないものである。
(比較調製例8)
比較調製例8のウレタン樹脂組成物は、調製例13の硬化性ウレタン樹脂組成物に添加される硬化触媒(ジブチル錫ジラウレート)が、含まれていないものである。
(比較調製例9)
比較調製例9のウレタン樹脂組成物は、比較調製例6で得た、アミノポリエーテルポリオールを含有しないウレタン樹脂組成物に、架橋助剤としてアジピン酸ジヒドラジドを表2のとおり添加したものである。
(比較調製例10)
比較調製例10のウレタン樹脂組成物は、比較調製例6で得たアミノポリエーテルポリオールを含有しないウレタン樹脂組成物に添加される硬化触媒(ジブチル錫ジラウレート)が、含まれていないものである。
(実施例13〜21、及び比較例5〜10)
調製例13〜21で得た硬化性ウレタン樹脂組成物及び比較調製例5〜10で得たウレタン樹脂組成物の各15重量部と、アクリル樹脂微粉末としてコア/シェル型で平均分子量700000であり平均粒径が0.5μmのものの24重量部、可塑剤としてジイソノニルフタレート(DINP)の35重量部、充填剤として炭酸カルシウムであるネオライトSP(竹原化学工業社製の商品名)の26重量部とを混練機に仕込み、30分間混練し、脱泡した後、実施例13〜21の塗料用熱硬化性プラスチゾル組成物、及び比較例5〜10のプラスチゾル組成物を調製した。
実施例13〜21、及び比較例5〜10のプラスチゾル組成物について、貯蔵安定性試験を行った。また、これらのプラスチゾル組成物をカチオン電着塗装鋼板に塗布し、加熱、硬化させて形成した塗装被膜について、耐チッピング性試験、耐水後耐チッピング性試験、接着剪断試験、及び吸湿発泡試験を行った。
(貯蔵安定性試験)
実施例13〜21、及び比較例5〜10のプラスチゾル組成物について、BH型粘度計を用いて25℃での粘度を測定した。その後、各々のプラスチゾルを40℃で10日間貯蔵した後、再び25℃での粘度を測定した。貯蔵後の増粘率が30%未満の物を○、30%以上の物を×、とする二段階で評価した。その結果を表2に示す。
(耐チッピング性試験:接着強度試験)
各々のプラスチゾル組成物を、50〜100mm四方で、ドライ膜厚0.4mmになるように、基材であるカチオン電着塗装鋼板に塗布して、120℃で30分間、加熱処理した後、常温で一日間開放乾燥して試験片とした。この試験片を60°に傾け、この塗膜面に垂直に立てた内径20mm、長さ2mのパイプの下端を当てて、パイプの上端からM−4号ナット(JIS)を落下させ、素地が露出するまでのナットの総重量を測定した。ナット総重量:35kg以上を○、35Kg未満の弱接着性のものを×とする二段階で評価した。その結果を表2に示す。
(耐水後耐チッピング性試験:接着強度試験)
各々のプラスチゾル組成物を、耐チッピング性試験と同様に試験片を作成し、常温で一日間開放乾燥した試験片を、40℃の水中に14日間浸漬した後、水中より取り出して水分を拭き取り、常温で一日間解放乾燥して試験片とした。耐水後チッピング試験は、前記のチッピング試験と同様に行い、素地が露出するまでのナットの総量を測定した。ナット総重量が20Kg以上のものを○、20Kg未満のものを×とする二段階で評価した。その結果を表2に示す。
(接着剪断試験)
各々の各々のプラスチゾル組成物を、カチオン電着塗装を施した、25mm幅の鋼板端部に、塗布し、スペーサーを入れて、プラスチゾルの塗布体積が25mm×25mm、厚さ3mmになる様に、2枚のカチオン電着塗装鋼板を貼り合わせ、130℃で30分間、加熱処理した後、常温で一日間開放乾燥して試験片とした。この試験片を引張り剪断試験器の両端に取り付け、50mm/minの速度で引っ張った。その引張り強度を確認し、また破壊面の状態について、凝集破壊(CF)であるか、界面破壊(AF)であるかを観察した。尚、界面破壊面の面積の欄の数値は、25mm×25mm中の界面破壊面の面積の割合を示す。その結果を表2に示す。
(吸湿発泡試験)
各々のプラスチゾル組成物を、50〜100mm四方でドライ膜厚が0.4mmとなるように塗布し、この試験片を30℃、湿度80%の雰囲気中に1日間暴露後、110℃で10分間の仮加熱、140℃30分間の加熱処理を行った。得られた塗装被膜表面の発泡、膨れの有無を目視で観察した。発泡、膨れが認められなかった物を○、発泡、膨れが認められた物を×とする二段階で評価した。結果を表2に示した。
表2から明らかなように、実施例13〜21のプラスチゾル組成物は、貯蔵安定性に優れ、それを加熱、硬化させた塗装被膜は接着性に優れ、伸び性や吸湿発泡性が良好であった。一方、比較例のプラスチゾル組成物は、比較例6、8、10のように硬化性が悪く評価の対象にならなかったり、比較例5、7、9のように硬化性が悪くなくても吸湿発泡性が悪かったり、比較例9のように耐水後の耐チッピング試験結果が極端に悪かったりした。
以上、詳細に説明したように本発明の硬化性ウレタン樹脂組成物は、塗料用熱硬化性プラスチゾル組成物に使用されるもので、ウレタンプレポリマーの末端イソシアナート基が架橋結合して網目状に重合し、そのネットワークにアクリル系重合体が取り込まれて内包された状態となる。
そのため、硬化性ウレタン樹脂組成物と、アクリル樹脂微粉末とを含有する塗料用熱硬化性プラスチゾル組成物は、比較的低温、短時間の加熱処理で簡便に金属塗装面、特にカチオン電着塗装面に強固に接着した被膜を形成することができる。更に、塗装被膜は優れた柔軟性、伸び性、抗張力、接着強度、及び耐久性を有している。また、この塗料用熱硬化性プラスチゾル組成物は貯蔵安定性に優れている。
塗料用熱硬化性プラスチゾル組成物は、ポリ塩化ビニル樹脂含有プラスチゾル組成物に代えて、自動車工業における車体の防錆、飛石の緩衝、及び防水の為の目地止め等を目的とした耐チッピング塗料、コーティング塗料、シーリング剤として用いることができる。更に、既存のポリ塩化ビニル樹脂プラスチゾル組成物の塗装設備や熱処理設備等をそのまま使用することができる。
そのため、硬化性ウレタン樹脂組成物と、アクリル樹脂微粉末とを含有する塗料用熱硬化性プラスチゾル組成物は、比較的低温、短時間の加熱処理で簡便に金属塗装面、特にカチオン電着塗装面に強固に接着した被膜を形成することができる。更に、塗装被膜は優れた柔軟性、伸び性、抗張力、接着強度、及び耐久性を有している。また、この塗料用熱硬化性プラスチゾル組成物は貯蔵安定性に優れている。
塗料用熱硬化性プラスチゾル組成物は、ポリ塩化ビニル樹脂含有プラスチゾル組成物に代えて、自動車工業における車体の防錆、飛石の緩衝、及び防水の為の目地止め等を目的とした耐チッピング塗料、コーティング塗料、シーリング剤として用いることができる。更に、既存のポリ塩化ビニル樹脂プラスチゾル組成物の塗装設備や熱処理設備等をそのまま使用することができる。
Claims (14)
- ポリオール類および有機イソシアナート類を重縮合させたウレタンプレポリマーの末端イソシアナート基がブロック化剤で保護されているブロック化ウレタンプレポリマーと、該ブロック化ウレタンプレポリマー中に分散または溶解された重合体とが、含まれていることを特徴とする硬化性ウレタン樹脂組成物。
- 該ブロック化ウレタンプレポリマーを脱保護させて生じる該ウレタンプレポリマーの末端イソシアナート基に架橋する架橋剤が含まれており、該架橋剤が該架橋をすることによって該重合体を内包しつつ高分子を形成することを特徴とする請求項1に記載の硬化性ウレタン樹脂組成物。
- 該ブロック化ウレタンプレポリマーと、該重合体との重量比が100:0.2〜60であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性ウレタン樹脂組成物。
- 該ブロック化剤は、オキシム類、第二アミン類、フェノール類、アルコール類、および水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類から選ばれる少なくとも1種類であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性ウレタン樹脂組成物。
- 該ポリオール類は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、およびビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合ポリオールから選ばれる少なくとも1種類であって、その水酸基当量が50〜2000であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性ウレタン樹脂組成物。
- 該有機イソシアナート類は、芳香族ジイソシアナート、鎖状脂肪族ジイソシアナート、および環状脂肪族ジイソシアナートから選ばれる少なくとも1種類の単量体、またはそれの多量体であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性ウレタン樹脂組成物。
- 該架橋剤は、低級アルキルアミンにアルキレンオキサイドが付加したアミノポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、およびビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合ポリオールの少なくともいずれかであってその水酸基当量が10〜1000であるポリオール類、酸ヒドラジド類、アミノグアニジン類、ジシアンジアミド類、グアニル尿素類、グアナミン類、メラミン類、ヒダントイン類、酸イミド類、およびトリアジン環含有化合物類から選ばれる少なくとも1種類であることを特徴とする請求項2に記載の硬化性ウレタン樹脂組成物。
- 該重合体は、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性ウレタン樹脂組成物。
- 該重合体はアクリル系樹脂であって、不飽和基含有カルボン酸、ビニルエステル、ビニルエーテル、マレイン酸エステルおよびフマル酸エステルから選ばれる少なくとも1種類のビニル基含有化合物類と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、または(メタ)アクリル酸エステルの重合体であることを特徴とする請求項1の硬化性ウレタン樹脂組成物。
- 該重合体は、その平均分子量が200〜4000000、重合度が1〜40000であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性ウレタン樹脂組成物。
- 該ブロック化ウレタンプレポリマーの平均分子量が1000〜500000であることを特徴とする請求項1の硬化性ウレタン樹脂組成物。
- ポリオール類および有機イソシアナート類を重縮合させたウレタンプレポリマーの末端イソシアナート基がブロック化剤で保護されているブロック化ウレタンプレポリマーと、該ブロック化ウレタンプレポリマー中に均一に分散または溶解している重合体とを含んでいる硬化性ウレタン樹脂組成物と、アクリル樹脂微粉末とを含有していることを特徴とする塗料用の熱硬化性プラスチゾル組成物。
- 該ブロック化ウレタンプレポリマーを脱保護させて生じる該ウレタンプレポリマーの末端イソシアナート基に架橋する架橋剤が含まれており、該架橋剤が該架橋をすることによって該重合体を内包しつつ高分子を形成することを特徴とする請求項12に記載の塗料用の熱硬化性プラスチゾル組成物。
- 該ブロック化ウレタンプレポリマーは、その平均分子量を1000〜500000とし、該重合体はその平均分子量が200〜4000000、重合度が1〜40000とすることを特徴とする請求項12に記載の塗料用の熱硬化性プラスチゾル組成物。
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